特表-13161697IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧
<>
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000003
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000004
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000005
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000006
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000007
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000008
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000009
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000010
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000011
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000012
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000013
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000014
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000015
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000016
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000017
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000018
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000019
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000020
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000021
  • 再表WO2013161697-自動変速機の制御装置 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月31日
【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】自動変速機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/04 20060101AFI20151201BHJP
   F16H 59/56 20060101ALI20151201BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20151201BHJP
   F16H 61/688 20060101ALI20151201BHJP
【FI】
   F16H61/04
   F16H59/56
   F16H61/02
   F16H61/688
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】58
【出願番号】特願2014-512518(P2014-512518)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年4月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-100323(P2012-100323)
(32)【優先日】2012年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】貞清 雅行
(72)【発明者】
【氏名】高田 雄太
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA04
3J552MA05
3J552MA12
3J552MA30
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA19
3J552PA20
3J552RA02
3J552SA15
3J552SA26
3J552SA27
3J552SB02
3J552SB33
3J552SB38
3J552UA03
3J552VA03W
3J552VA07Z
3J552VA66Z
3J552VA74Z
3J552VB01Z
(57)【要約】
【解決手段】ツインクラッチ型の自動変速機において、変速段ギヤを入力軸などに締結可能な複数個のギヤ締結機構のうちのいずれかで構成される第1出力経路と別のギヤ締結機構で構成される第2出力経路の一方に油圧(シフト力)を供給して原動機の駆動力を変速して出力させると共に、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動しているか否か判定し(S700)、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了しているか否か判定し(S704)、両者で肯定されるとき、他方を構成するクラッチに油圧を供給して締結しつつ、一方を構成するクラッチから油圧を排出して解放する(S712,S714)如く構成したので、ギヤ締結機構のスリーブの意図しない挙動の変化を検知していち早く対応することで、乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される原動機に第1、第2クラッチを介して接続される第1、第2入力要素と、前記第1、第2入力要素と平行に配置される少なくとも1個の出力要素と、前記第1、第2入力要素と前記出力要素との間に配置される複数組の変速段ギヤと、シフト力を供給されるとニュートラル位置からギヤイン位置に移動して前記複数組をそれぞれ構成する変速段ギヤの一方を前記第1、第2入力要素の一方または前記出力要素に締結可能なスリーブを有する複数個のギヤ締結機構と、前記車両の走行状態に応じて前記第1入力要素から前記複数個のギヤ締結機構のうちの第1ギヤ締結機構と前記第1クラッチを介して前記出力要素に至る第1出力経路と前記第2入力要素から前記複数個のギヤ締結機構のうちの第2ギヤ締結機構と前記第2クラッチを介して前記出力要素に至る第2出力経路をそれぞれ構成する前記第1、第2ギヤ締結機構のうちの一方へのシフト力の供給を制御して前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介して前記原動機の駆動力を変速して出力させるシフト力供給制御手段とを備えた自動変速機の制御装置において、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記インギヤ位置から前記ニュートラル位置に向けて移動しているか否か判定するスリーブ位置判定手段と、前記第1出力経路と第2出力経路の他方を構成するギヤ締結機構にシフト力を供給してスリーブを前記インギヤ位置に向けて移動させるプリシフトが完了したか否か判定するプリシフト完了判定手段とを備え、前記シフト力供給制御手段は、前記インギヤ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されると共に、前記プリシフト完了判定手段によって前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記他方を構成するクラッチを締結しつつ、前記一方を構成するクラッチを解放することを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
前記シフト力供給制御手段は、前記インギヤ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していると判定されると共に、前記プリシフト完了判定手段によって前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了していないと判定されるとき、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記インギヤ位置から前記ニュートラル位置に向けて前記所定値より大きく設定される規定値以上移動しているか否か判定し、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記規定値以上移動していると判定されるとき、前記他方を構成するクラッチを締結しつつ、前記一方を構成するクラッチを解放することを特徴とする請求項1記載の自動変速機の制御装置。
【請求項3】
前記シフト力供給制御手段は、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記規定値以上移動していないと判定されるとき、前記一方を構成するギヤ締結機構にシフト力を供給して前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブを前記インギヤ位置に向けて復帰させることを特徴とする請求項2記載の自動変速機の制御装置。
【請求項4】
前記シフト力供給制御手段は、前記インギヤ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記一方を構成するクラッチの締結力を所定値低下させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動変速機の制御装置。
【請求項5】
前記他方を構成するギヤ締結機構は、予め設定された予測プリシフト特性に従ってプリシフトを実行することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の自動変速機の制御装置。
【請求項6】
前記シフト力供給制御手段は、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記他方を構成するクラッチを、前記原動機の駆動力を伝達しない程度の締結力で締結させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の自動変速機の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動変速機の制御装置に関し、より具体的にはツインクラッチ型の自動変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ツインクラッチ型の自動変速機の油圧供給装置の例としては、例えば特許文献1記載の技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術は、車両に搭載された原動機に第1、第2クラッチを介して接続される第1、第2入力軸(入力要素)と出力軸(出力要素)との間に配置される複数個の変速段ギヤのいずれかを入力軸などに締結可能なスリーブを有するギヤ締結機構を備え、それに油圧を供給してスリーブを中央のニュートラル位置から左右のギヤイン位置に移動させ、原動機の出力を締結された変速段ギヤで変速して出力するように構成している。
【0003】
そのようなツインクラッチ型の自動変速機を備えた車両が悪路などを走行するとき、車体側から予期しない振動を受けるなどしてギヤ締結機構のスリーブにギヤイン位置からニュートラル位置に向けて移動するなどの挙動の変化が生じることがある。
【0004】
それについて特許文献2は、変速機の操作がアクチュエータで行われる、いわゆるAutomatic Manual Transmissionと呼ばれる自動変速機においてスリーブの移動を検出し、スリーブの検出位置がギヤとの噛合い点を超えていないか否か判定し、肯定されるときはスリーブを押圧してギヤイン位置にそのまま復帰させる一方、否定されるときはスリーブを一旦ニュートラル位置に移動させてから改めてギヤイン位置にインギヤさせるように制御する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−052800号公報
【特許文献2】特開2000−205410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2記載の技術はスリーブの検出位置がギヤとの噛合い点を超えているときはスリーブを一旦ニュートラル位置に移動させてから改めてギヤイン位置にインギヤさせるように構成することでギヤ鳴りを回避しているが、反面、スリーブをニュートラル位置に移動させることで原動機の駆動力が一時的に零になるなど駆動力に変化を生じて乗員に違和感を与えることがあった。
【0007】
この発明の目的は上記した課題を解決し、ツインクラッチ型の自動変速機において、ギヤ締結機構のスリーブの意図しない挙動の変化を検知していち早く対応することで、乗員に違和感を与えることなく走行させるようにした自動変速機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては、車両に搭載される原動機に第1、第2クラッチを介して接続される第1、第2入力要素と、前記第1、第2入力要素と平行に配置される少なくとも1個の出力要素と、前記第1、第2入力要素と前記出力要素との間に配置される複数組の変速段ギヤと、シフト力を供給されるとニュートラル位置からギヤイン位置に移動して前記複数組をそれぞれ構成する変速段ギヤの一方を前記第1、第2入力要素の一方または前記出力要素に締結可能なスリーブを有する複数個のギヤ締結機構と、前記車両の走行状態に応じて前記第1入力要素から前記複数個のギヤ締結機構のうちの第1ギヤ締結機構と前記第1クラッチを介して前記出力要素に至る第1出力経路と前記第2入力要素から前記複数個のギヤ締結機構のうちの第2ギヤ締結機構と前記第2クラッチを介して前記出力要素に至る第2出力経路をそれぞれ構成する前記第1、第2ギヤ締結機構のうちの一方へのシフト力の供給を制御して前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介して前記原動機の駆動力を変速して出力させるシフト力供給制御手段とを備えた自動変速機の制御装置において、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記インギヤ位置から前記ニュートラル位置に向けて移動しているか否か判定するスリーブ位置判定手段と、前記第1出力経路と第2出力経路の他方を構成するギヤ締結機構にシフト力を供給してスリーブを前記インギヤ位置に向けて移動させるプリシフトが完了したか否か判定するプリシフト完了判定手段とを備え、前記シフト力供給制御手段は、前記インギヤ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されると共に、前記プリシフト完了判定手段によって前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記他方を構成するクラッチを締結しつつ、前記一方を構成するクラッチを解放する如く構成した。
【0009】
請求項2に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記シフト力供給制御手段は、前記インギヤ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していると判定されると共に、前記プリシフト完了判定手段によって前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了していないと判定されるとき、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記インギヤ位置から前記ニュートラル位置に向けて前記所定値より大きく設定される規定値以上移動しているか否か判定し、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記規定値以上移動していると判定されるとき、前記他方を構成するクラッチを締結しつつ、前記一方を構成するクラッチを解放する如く構成した。
【0010】
請求項3に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記シフト力供給制御手段は、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記規定値以上移動していないと判定されるとき、前記一方を構成するギヤ締結機構にシフト力を供給して前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブを前記インギヤ位置に向けて復帰させる如く構成した。
【0011】
請求項4に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記シフト力供給制御手段は、前記インギヤ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記一方を構成するクラッチの締結力を所定値低下させる如く構成した。
【0012】
請求項5に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記他方を構成するギヤ締結機構は、予め設定された予測プリシフト特性に従ってプリシフトを実行する如く構成した。
【0013】
請求項6に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記シフト力供給制御手段は、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記他方を構成するクラッチを、前記原動機の駆動力を伝達しない程度の締結力で締結させる如く構成した。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る自動変速機の制御装置にあっては、ニュートラル位置からギヤイン位置に移動して複数組をそれぞれ構成する変速段ギヤの一方を入力要素または出力要素に締結可能なスリーブを有する複数個のギヤ締結機構で第1出力経路と第2出力経路の一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置からニュートラル位置に向けて移動していると判定されると共に、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、車両に搭載される原動機に第1、第2入力要素を接続する第1、第2クラッチのうちの他方を構成するクラッチを締結しつつ、一方を構成するクラッチを解放する如く構成したので、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されると共に、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、他方を構成するクラッチを締結しつつ、一方を構成するクラッチから油圧を解放することで他方を構成するギヤ締結機構を介して次段に変速することができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができると共に、原動機の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けが生じるのを抑制することができる。
【0015】
請求項2に係る自動変速機の制御装置にあっては、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していると判定されると共に、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了していないと判定されるとき、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値より大きく設定される規定値以上移動しているか否か判定し、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが規定値以上移動していると判定されるとき、他方を構成するクラッチを締結しつつ、一方を構成するクラッチを解放する如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブの移動の程度、換言すればギヤ抜けの程度に応じて対応を異ならせることで、予測できない状況にあるときでも、他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速を一層早めることができる。
【0016】
請求項3に係る自動変速機の制御装置にあっては、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが規定値以上移動していないと判定されるとき、一方を構成するギヤ締結機構にシフト力を供給して一方を構成するギヤ締結機構のスリーブをインギヤ位置に向けて復帰させる如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を確実に抑制することができる。
【0017】
請求項4に係る自動変速機の制御装置にあっては、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、第1クラッチと第2クラッチのうちの一方を構成するクラッチの締結力を所定値低下させる如く構成したので、上記した効果に加え、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を一層確実に抑制することができる。
【0018】
請求項5に係る自動変速機の制御装置にあっては、他方を構成するギヤ締結機構は、予め設定された予測プリシフト特性に従ってプリシフトを実行する如く構成したので、上記した効果に加え、予測プリシフト特性を適宜設定することでプリシフトを早期に実行させることができ、よって検出から変速完了までの時間を一層早めることができる。
【0019】
請求項6に係る自動変速機の制御装置にあっては、第1クラッチと第2クラッチのうちの他方を構成するクラッチを、原動機の駆動力を伝達しない程度の締結力で締結させる如く構成したので、上記した効果に加え、クラッチのピストン室が空洞になるのを阻止できることで完全に締結させる際の油圧の立ち上がり特性を向上させることができ、従って他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速の応答性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の第1実施例に係る自動変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
図2図1に示す油圧供給装置の構成の一部を模式的に示す油圧回路図である。
図3図2に示す油圧供給装置のギヤ締結機構の構造を模式的に示す説明図である。
図4図3に示す油圧供給装置のギヤ締結機構の動作を模式的に示す説明図である。
図5図1に示す自動変速機の制御装置(シフトコントローラ)で使用される変速マップの特性を示す説明図である。
図6図1に示す自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図7図6フロー・チャートで算出される目標シフト荷重を説明する説明図である。
図8図6フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
図9】この発明の第2実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図10図9フロー・チャートの処理で使用される目標シフト荷重の加算分の特性を示す説明図である。
図11図9フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
図12】この発明の第3実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図13】この発明の第4実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図14】この発明の第5実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図15】この発明の第6実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図16】この発明の第7実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図17図16フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
図18】この発明の第8実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図19図18フロー・チャートで使用される変速マップの特性を示す説明図である。
図20図18フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照してこの発明に係る自動変速機の制御装置を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0022】
図1はこの発明の第1実施例に係る自動変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
【0023】
以下説明すると、符号Tは自動変速機(以下「変速機」という)を示す。変速機Tは車両1に搭載される、前進8速で後進1速の変速段を有するツインクラッチ型の自動変速機からなると共に、D,P,R,Nのレンジを有する。
【0024】
変速機Tは、エンジン(原動機)10のクランクシャフトに接続される駆動軸10aにトルクコンバータ12を介して接続される、2,4,6,8速の偶数段入力軸(入力要素)14を備えると共に、偶数段入力軸14と平行して1,3,5,7速の奇数段入力軸(入力要素)16を備える。エンジン10は例えばガソリンを燃料とする火花点火式の内燃機関からなる。
【0025】
トルクコンバータ12はエンジン10の駆動軸10aに直結されるドライブプレート12aに固定されるポンプインペラ12bと、偶数段入力軸14に固定されるタービンランナ12cと、ロックアップクラッチ12dを有し、よってエンジン10の駆動力(回転)はトルクコンバータ12を介して偶数段入力軸14に伝達される。
【0026】
偶数段入力軸14と奇数段入力軸16と平行にアイドル軸18が設けられる。偶数段入力軸14はギヤ14a,18aを介してアイドル軸18に接続されると共に、奇数段入力軸16はギヤ16a,ギヤ18aを介してアイドル軸18と接続され、よって偶数段入力軸14と奇数段入力軸16とアイドル軸18はエンジン10の回転につれて回転する。
【0027】
また、第1副入力軸(入力要素)20と第2副入力軸(入力要素)22とが奇数段入力軸16と偶数段入力軸14の外周にそれぞれ同軸かつ相対回転自在に配置される。
【0028】
奇数段入力軸16と第1副入力軸20は第1クラッチ24を介して接続されると共に、偶数段入力軸14と第2副入力軸22も第2クラッチ26を介して接続される。第1、第2クラッチ24,26は共に油圧作動の湿式多板クラッチからなる。第1、第2クラッチ24,26に油圧が供給されるとき、第1、第2副入力軸20,22を奇数段、偶数段入力軸16,14に締結(係合)する。
【0029】
偶数段入力軸14と奇数段入力軸16の間には、偶数段入力軸14と奇数段入力軸16と平行に出力軸(出力要素)28が配置される。偶数段入力軸14と奇数段入力軸16とアイドル軸18と出力軸28はベアリング30で回転自在に支承される。
【0030】
奇数段側の第1副入力軸20には1速ドライブギヤ32と、3速ドライブギヤ34と、5速ドライブギヤ36と、7速ドライブギヤ38が固定されると共に、偶数段側の第2副入力軸22には2速ドライブギヤ40と4速ドライブギヤ42と6速ドライブギヤ44と8速ドライブギヤ46が固定される。
【0031】
出力軸28には1速ドライブギヤ32と2速ドライブギヤ40に噛合する1速−2速ドリブンギヤ48と、3速ドライブギヤ34と4速ドライブギヤ42に噛合する3速−4速ドリブンギヤ50と、5速ドライブギヤ36と6速ドライブギヤ44と噛合する5速−6速ドリブンギヤ52と、7速ドライブギヤ38と8速ドライブギヤ46と噛合する7速−8速ドリブンギヤ54が固定される。
【0032】
アイドル軸18には、出力軸28に固定される1速−2速ドリブンギヤ48と噛合するRVS(後進)アイドルギヤ56が回転自在に支持される。アイドル軸18とRVSアイドルギヤ56はRVSクラッチ58を介して接続される。RVSクラッチ58は、第1、第2クラッチ24,26と同様、油圧作動の湿式多板クラッチからなるが、第1、第2クラッチ24,26に比して小径で摩擦材枚数も少なく構成される。
【0033】
奇数段入力軸16には1速ドライブギヤ32と3速ドライブギヤ34を選択的に第1副入力軸20に締結(固定)する1−3速ギヤ締結機構60と、5速ドライブギヤ36と7速ドライブギヤ38を選択的に第1副入力軸20に締結(固定)する5−7速ギヤ締結機構62が配置される。
【0034】
偶数段入力軸14には2速ドライブギヤ40と4速ドライブギヤ42を選択的に第2副入力軸22に締結(固定)する2−4速ギヤ締結機構64と、6速ドライブギヤ44と8速ドライブギヤ46を選択的に第2副入力軸22に締結(固定)する6−8速ギヤ締結機構66が配置される。
【0035】
エンジン10の駆動力は、第1クラッチ24あるいは第2クラッチ26が締結(係合)されるとき、奇数段入力軸16から第1副入力軸20あるいは偶数段入力軸14から第2副入力軸22に伝達され、さらに上記したドライブギヤとドリブンギヤを介して出力軸28に伝達される。
【0036】
尚、後進時には、エンジン10の駆動力は、偶数段入力軸14、ギヤ14a、ギヤ18a,RVSクラッチ58、アイドル軸18,RVSアイドルギヤ56,1速−2速ドリブンギヤ48を介して出力軸28に伝達される。出力軸28はギヤ70を介してディファレンシャル機構72に接続され、ディファレンシャル機構72はドライブシャフト74を介して車輪76に接続される。車両1を車輪76などで示す。
【0037】
ギヤ締結機構60,62,64,66は全て油圧(シフト力)を供給されて動作する。これらギヤ締結機構と第1、第2クラッチ24,26とRVSクラッチ58に油圧(シフト力)を供給するため、油圧供給装置80が設けられる。
【0038】
図2は油圧供給装置80の構成を詳細に示す油圧回路図である。
【0039】
図2を参照して説明すると、油圧供給装置80において、リザーバ80aからストレーナ(図示せず)を介して油圧ポンプ(送油ポンプ)80bによって汲み上げられた作動油ATFの吐出圧(油圧)は、レギュレータバルブ(調圧弁)80cによってライン圧PLに調圧(減圧)される。
【0040】
図示は省略するが、油圧ポンプ80bはギヤを介してトルクコンバータ12のポンプインペラ12bに連結され、よって油圧ポンプ80bはエンジン10に駆動されて動作するように構成される。
【0041】
調圧されたライン圧は、油路80dから第1リニアソレノイドバルブ(LA)80f、第2リニアソレノイドバルブ(LB)80g、第3リニアソレノイドバルブ(LC)80h、第4リニアソレノイドバルブ(LD)80i、第5リニアソレノイドバルブ(LE)80j、および第6リニアソレノイドバルブ(LF)80kの入力ポートに送られる。
【0042】
第1から第6リニアソレノイドバルブ80f,80g,80h,80i,80j,80kは油圧制御弁(電磁制御弁)であり、通電量に比例してスプールを移動させて出力ポートからの出力圧をリニアに変更する特性を備えると共に、通電されるとスプールが開放位置に移動するN/C(ノーマル・クローズ)型として構成される。
【0043】
第1リニアソレノイドバルブ(LA)80fの出力ポートは第1サーボシフトバルブ80mを介して前記した1−3速ギヤ締結機構60のピストン室に接続されると共に、第2リニアソレノイドバルブ(LB)80gの出力ポートは第2サーボシフトバルブ80nを介して前記した2−4速ギヤ締結機構64のピストン室に接続される。
【0044】
また、第3リニアソレノイドバルブ(LC)80hの出力ポートは第3サーボシフトバルブ80oを介して前記した5−7速ギヤ締結機構62のピストン室に接続されると共に、第4リニアソレノイドバルブ(LD)80iの出力ポートは第4サーボシフトバルブ80pを介して前記した6−8速ギヤ締結機構66のピストン室に接続される。
【0045】
サーボシフトバルブ80m,80n,80o,80pはそれぞれ、オン・オフソレノイドバルブ(油圧制御弁(電磁制御弁))SA,SB,SC,SDに接続され、それらのソレノイドの励磁・消磁によってリニアソレノイドバルブ80fなどから入力される油圧を出力ポートの(図において左右の)一方からライン圧として出力するように構成される。
【0046】
図3は4個のギヤ締結機構60,62,64,66のうちの一つ、例えば60の構造を模式的に示す断面図、図4はその動作を模式的に示す、図3の部分断面図である。図示は省略するが、他の3個のギヤ締結機構62,64,66の構造も同様である。
【0047】
図3に示す如く、ギヤ締結機構60においてシリンダ60a1,60a2の内部には1速用ピストン60b1と3速用ピストン60b2が図において左右に対向して配置される。ピストン60b1,60b2は共用のピストンロッド60cによって連結され、サーボシフトバルブ80mなどからの1速用ピストン室60d1と3速用ピストン室60d2への油圧の供給方向に応じて図で左右に移動する。
【0048】
ピストンロッド60cにはシフトフォーク60eが接続され、シフトフォーク60eはフォークシャフト60fに固定される。フォークシャフト60f上には、図示は省略するが、中央のニュートラル位置と左右のギヤイン(締結)位置に対応する位置にディテントが設けられ、ニュートラル位置と左右のインギヤ位置にあるときはディテントで保持されて油圧供給が不要となるように構成される。
【0049】
図3に示す如く、シフトフォーク60eは環状のスリーブ60gに接続される。スリーブ60gの内周側には第1、第2副入力軸20,22上を軸方向に移動自在なハブ60hがスプライン60g1,60h1で結合されて収容されると共に、ハブ60hの両側にはスプリング60jと、ブロッキングリング60kを介して1速ドライブギヤ32と3速ドライブギヤ34が配置される。
【0050】
ブロッキングリング60kにはスプライン60k1が形成されると共に、1速ドライブギヤ32と3速ドライブギヤ34にはドグ歯321,341が形成される。またブロッキングリング60kにはテーパコーン面60k2が形成されると共に、1速ドライブギヤ32と3速ドライブギヤ34にも対応するテーパコーン面322,342が形成される。
【0051】
次いで動作を説明すると、図3図4(a)に示すニュートラル(N)位置から、対向する3速用ピストン室60d2に油圧が供給されて1速用ピストン60b1とそれに連結されるピストンロッド60cが図3において右方向に前進すると、ピストンロッド60cにシフトフォーク60eを介して接続されるスリーブ60gが同方向に前進してスプリング60jに接触し、スプリング60jを介してブロッキングリング60kを1速ドライブギヤ32に向けて付勢する(図4(b))。
【0052】
スリーブ60gがさらに前進すると、スリーブ60gのスプライン60g1がブロッキングリング60kのスプライン60k1と当接すると共に、ブロッキングリング60kのテーパコーン面60k2とギヤ32のテーパコーン面322同士が接触して摩擦力によるトルクが発生する(図4(c))。
【0053】
スリーブ60gがさらに移動すると、発生トルクによってスリーブ60gとギヤ32は回転が同期し、スリーブ60gのスプライン60g1がブロッキングリング60kのスプライン60k1を掻き分け始める(図4(d))。
【0054】
ギヤ32とスリーブ60gの回転が同期して発生トルクが消滅すると、スリーブ60gはさらに前進してそのスプライン60g1はブロッキングリング60kのスプライン60k1と一体に結合し、さらに前進してギヤ32のドグ歯321と接触し(図4(e))、ギヤ32のドグ歯321を掻き分け始め(図4(f))、最終的にはギヤ32のドグ歯321と一体に結合するギヤイン(締結)状態となる(図4(g))。
【0055】
他のギヤ締結機構62,64,66も同様であり、スリーブ62g,64g,66g(図2に示す)を有すると共に、スリーブ62g,64g,66g(図2に示す)がニュートラル位置からインギヤ位置に移動(シフト)するとき、対応するドライブギヤ36,38,40,42,44,46のドグ歯に結合してドライブギヤ36などを、両者の回転を同期させつつ、第1、第2副入力軸20,22に締結するように構成される。
【0056】
図2の説明に戻ると、第5リニアソレノイドバルブ80jの出力ポートは前記した奇数段入力軸16の第1クラッチ(CL1)24に接続されると共に、第6リニアソレノイドバルブ80kの出力ポートは偶数段入力軸14の第2クラッチ(CL2)26のピストン室に接続される。
【0057】
第1あるいは第2クラッチ24,26は油圧を供給されるとき、第1あるいは第2副入力軸20,22を奇数段入力軸16あるいは偶数段入力軸14に締結(係合)する一方、油圧を排出されるとき、第1あるいは第2副入力軸20,22と奇数段入力軸16あるいは偶数段入力軸14の接続(締結)を遮断する。
【0058】
図示のツインクラッチ型の変速機Tにあっては、次の変速段に対応するギヤ締結機構(60から66のいずれか)に油圧を供給して第1、第2副入力軸20,22のいずれかに締結(係合)しておき(この動作を「プリシフト」という)、次いで現在の変速段に相応する側の第1、第2クラッチ24,26の一方から油圧を排出させつつ、第1、第2副入力軸20,22のうちの次の変速段に対応する副入力軸に相応する側の第1、第2クラッチ24,26の他方に油圧を供給して第1入力軸14あるいは第2入力軸16に締結(係合)する(この動作を「CtoC」(クラッチ・ツー・クラッチ)変速という)ことで変速される。変速は基本的には奇数段(1,3,5,7速)と偶数段(2,4,6,8速)の間で交互に行われる。
【0059】
尚、油圧供給装置にあっては、上記以外にも複数個のリニアソレノイドバルブなどを備え、それらの励磁・消磁を介してトルクコンバータ12のロックアップクラッチ12dの締結・解放動作も制御されるが、この発明と直接の関連を有しないので、その説明は省略する。
【0060】
図1の説明に戻ると、変速機Tはシフトコントローラ84を備える。シフトコントローラ84はマイクロコンピュータを備えた電子制御ユニット(ECU)として構成される。また、エンジン10の動作を制御するために同様にマイクロコンピュータを備えた電子制御ユニットから構成されるエンジンコントローラ86が設けられる。
【0061】
シフトコントローラ84はエンジンコントローラ86と通信自在に構成され、エンジンコントローラ86からエンジン回転数、スロットル開度、AP開度などの情報を取得する。
【0062】
また4個のギヤ締結機構60,62,64,66のシフトフォークに固定されるフォークシャフト(機構60では60f)には磁性体が取り付けられると共に、その付近にはストロークセンサ88がそれぞれ配置され、シフトフォーク、換言すればスリーブ60g,62g,64g,66gの軸方向のストローク(移動)を示す出力を通じてギヤ締結機構のスリーブ60g,62g,64g,66gの挙動の変化、具体的にはスリーブ60g,62g,64g,66gがギヤイン位置からニュートラル位置に向けて移動している移動状態を示す出力を生じる。
【0063】
より具体的には、ストロークセンサ88はスリーブ60g,62g,64g,66gが、図4(g)に示すギヤイン位置から図4(a)に示すニュートラル位置に向けてギヤ抜けしつつあるかを示す出力を生じる。同図でいえば図4(g)(f)ではスリーブ60gが1速ドライブギヤ32のドグ歯321と係合しているため、ギヤ抜けを生じない。
【0064】
他方、図4(e)あるいは(d)以降ではスリーブ60gとドグ歯321の係合が外れてギヤ抜けを生じる。その結果、第1クラッチ24に油圧が供給されてエンジン10の駆動力が奇数段入力軸16に入力されるとき、第1副入力軸20と奇数段入力軸16の間(ギヤ締結機構の入出力回転数の間)に差回転が生じてエンジン10の駆動力が零となる駆動力抜けが生じる。
【0065】
さらに、偶数段入力軸14の付近には第1の回転数センサ90が配置され、変速機Tの入力回転数NMを示す信号を出力すると共に、第1、第2副入力軸20,22にはそれぞれ第2、第3の回転数センサ92,94が配置され、それらの回転数を示す信号を出力する。また出力軸28には第4の回転数センサ96が配置され、出力軸28の回転数、即ち、変速機Tの出力回転数NCを示す信号を出力する。ドライブシャフト74の付近には第5の回転数センサ100が配置され、車速Vを示す信号を出力する。
【0066】
また油圧供給装置80の第1、第2クラッチ24,26に接続される油路には第1、第2の圧力センサ102,104が配置され、第1、第2クラッチ24,26に供給される作動油ATFの圧力(油圧)を示す信号を出力すると共に、リザーバ80aの付近には温度センサ106が配置され、油温(作動油ATFの温度)TATFを示す信号を出力する。
【0067】
また車両1の運転席に配置されたレンジセレクタ(図示せず)の付近にはレンジセレクタポジションセンサ110が配置され、レンジセレクタ上に運転者から見て上から順にP,R,N,Dと示されたレンジのうち運転者に操作(選択)されたレンジを示す信号を出力する。
【0068】
これらセンサの出力は全てシフトコントローラ84に入力される。シフトコントローラ84は、それらセンサの出力とエンジンコントローラ86と通信して得られる情報に基づき、第1から第6リニアソレノイドバルブ80fから80kを励磁・消磁を介して第1、第2クラッチ24,26とギヤ締結機構60から66の動作が制御することで変速機Tの動作を制御する。
【0069】
シフトコントローラ84は油圧(シフト力)供給制御手段として機能し、車両1の走行速度(車速)Vとアクセルペダルの開度(アクセル開度)APで規定される走行状態に応じて図5に示す変速マップに従って4個のギヤ締結機構60,62,64,66のうちの1−3速ギヤ締結機構60と5−7速ギヤ締結機構62のいずれかと第1クラッチ24で構成される第1入力軸(奇数段入力軸16と第1副入力軸20)車両1の走行状態に応じて第1入力軸(奇数段入力軸16と第1副入力軸20)と4個(複数個)のギヤ締結機構60,62,64,66のうちのいずれかの機構(より具体的には1−3速ギヤ締結機構60と5−7速ギヤ締結機構62のいずれか)と第1クラッチ24から出力軸28に至る第1出力経路と、第2入力軸(偶数段入力軸14と第2副入力軸22)と4個のギヤ締結機構のうちの別の機構(より具体的には2−4速ギヤ締結機構64と6−8速ギヤ締結機構66のいずれか)と第2クラッチ26から出力軸28に至る第2出力経路とのうちの一方に油圧を供給して一方を構成するギヤ締結機構60,62,64,66のスリーブ60g,62g,64g,66gのいずれかによって締結された1速ドライブギヤ32から7速−8速ドリブンギヤ54のうちの相応するギヤからなる変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させるように制御する。
【0070】
より具体的には、シフトコントローラ84は、ギヤ締結機構60,62,64,66のスリーブ60g,62g,64g,66gの意図しない挙動の変化、具体的にはスリーブのギヤイン位置からニュートラル位置に向けての移動、より具体的にはスリーブのギヤ抜けを検知していち早く対応して乗員に違和感を与えることなく走行させるように変速機Tの動作を制御する。
【0071】
図5に示す変速マップにおいては車両1の走行速度(車速)Vとアクセル開度APが同図の6種の境界線を超えた時点でその変速段へのプリシフトが実行され、次いで相応するクラッチに油圧が供給されるCtoC変速がなされることで、変速段が確立されて変速される。尚、図5にはアップシフトのみ図示するが、ダウンシフトも同様である。
【0072】
図6はこの発明の第1実施例に係る装置の動作、即ち、シフトコントローラ84のその動作を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは所定時間、例えば10msecごとに実行される。図6フロー・チャート(および以降のフロー・チャート)で「S」は処理ステップを示す。
【0073】
以下説明すると、S10においてストロークセンサ88の出力から4個のギヤ締結機構60,62,64,66のスリーブ60g,62g,64g,66gのうちの、現在締結されている変速段(以下「現段」という)を確立するスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上か否か、換言すればスリーブの挙動が変化しているか、あるいはスリーブがギヤイン位置からニュートラル位置に向けて移動しているか否か判断(判定)する。
【0074】
ギヤ抜け判定値は、図4に示す如く、当該スリーブ(例えばスリーブ60g)がギヤイン位置からニュートラル位置に向けてストローク(移動)するとき、ギヤ抜けを生じるストロークに相当する値を示し、具体的には入力回転数NMと出力回転数NCの間に差回転が生じるか/生じないかの境目となるストローク(図4(e)の値)とスリーブがドグ歯と部分的にも係合するストローク(図4(f)の値)の間に設定される。
【0075】
尚、S10の処理においては、ストロークセンサ88の出力に代え、第2回転数センサ92(あるいは第3回転数センサ94)と第4回転数センサ96の出力からギヤ締結機構60,62,64,66の入力回転数NMと出力回転数NCの差回転を直接算出し、算出された差回転を適宜設定されるギヤ抜け判定回転数と比較することでギヤ締結機構がギヤ抜けしつつあるか否か判定するようにしても良い。
【0076】
ただし、ストロークセンサ88から検出されたストロークを上記のように差回転を生じる位置よりもギヤイン側に設定されたギヤ抜け判定値と比較してギヤ抜けを判定(検知)することで差回転が生じる恐れがあるか否か、即ち、現段で走行すべきか否かをいち早く判定することができる。
【0077】
S10で否定されて現在締結されているギヤ締結機構のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上ではなく(ギヤ抜け判定値未満で)、ギヤ抜けが生じていないと判断されるときはS12に進み、通常走行とする。即ち、4個のギヤ締結機構60,62,64,66のうちの現在締結されているギヤ締結機構のスリーブにギヤ抜けが生じていないので、締結されているギヤ締結機構のスリーブで確立される変速段(現段)での走行を継続する。
【0078】
他方、S10で肯定されるときは現在締結されているギヤ締結機構のスリーブにギヤ抜けが生じて変速機Tはエンジン10の駆動力を伝達しない状態にあることを意味するので、S14に進み、目標変速段(以下「次段」という)を算出し、S16に進み、その次段ヘのプリシフトを実行する。
【0079】
前記した如く、変速機Tにおいて変速は基本的には奇数段(1,3,5,7速)と偶数段(2,4,6,8速)の間で交互に行われることから、S14では現段が奇数段であれば目標段(次段)は1速シフトアップ/ダウンされる偶数段、あるいは現段が偶数段であれば目標段(次段)は1速シフトアップ/ダウンされる奇数段が算出され、S16において算出された次段に対応するギヤ締結機構60,62,64,66のいずれかのピストンのピストン室に目標シフト荷重に従って算出される油圧を供給してスリーブ60g,62g,64g,66gを第1、第2副入力軸20,22のいずれかに締結(係合)するプリシフトが実行される。
【0080】
図7は目標シフト荷重を説明する説明図である。
【0081】
目標シフト荷重はギヤ締結機構のピストンをニュートラル位置からギヤイン位置に移動(シフト)させるべき油圧(シフト力)を意味するが、目標シフト荷重は図示の如く3種に区分され、(図4(a)(b)に示す)空走あるいは無効ストローク詰めに相当する比較的小さい初期値と、(図4(c)から(e)に示す)それに続いて対向するドライブギヤのドグ歯と回転数を同期させるのに必要とされる中期値と、(図4(f)(g)に示す)続いてそのドグ歯を掻き分けてギヤイン位置に到達するのに必要な終期値とからなる。尚、加算分については後述する。
【0082】
次いでS18に進み、次段に対応する第1、第2副入力軸20,22のうちの相応する側の第1、第2クラッチ24,26のいずれかに油圧を供給して第1入力軸14あるいは第2入力軸16に締結するCtoC(クラッチ・ツー・クラッチ)変速を行う。
【0083】
次いでS20に進み、現段シフト抜きを実行する。これは現段を確立していたギヤ締結機構において対向する側のピストンのピストン室に油圧を供給してスリーブをニュートラル位置に移動、例えば現段が1−3速ギヤ締結機構60で1速であったとすると、対向する3速のピストン室に油圧を供給して1速ピストンに接続されるスリーブをニュートラル位置に移動させる処理を意味する。
【0084】
次いでS22に進み、通常走行、即ち、4個のギヤ締結機構60,62,64,66のうちの締結されているギヤ締結機構で確立される変速段(次段)での走行を継続する。
【0085】
この実施例に係る自動変速機の制御装置にあっては一方を構成するギヤ締結機構のスリーブ(例えばギヤ締結機構60のスリーブ60g)がギヤイン位置からニュートラル位置に向けて移動、より具体的にはギヤ抜けしているか否か判定すると共に、移動していると判定されるとき、第1出力経路と第2出力経路の他方を構成するギヤ締結機構(例えばギヤ締結機構64)に油圧を供給してスリーブ(例えばスリーブ64g)をギヤイン位置に移動させるプリシフトを実行する如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を時間早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0086】
図8図6の処理を示すタイム・チャートである。
【0087】
同図上部に示す従来手法は特許文献2記載の技術から類推される処理であり、スリーブの検出位置がギヤとの噛合い点を超えてギヤ抜けしていると判定されるときはスリーブを一旦ニュートラル位置に移動させてから改めてギヤイン位置に移動させるため、ギヤ抜けが生じてエンジン10の駆動力が一時的に零になることがあった。
【0088】
一方、この発明の実施例においては、スリーブがギヤイン位置からニュートラル位置に向けて移動(ギヤ抜け)していると判定されるとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してスリーブをギヤイン位置に向けて移動させるプリシフトを実行するように構成したので、同図下部に示す如く、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を時間(t1−t2)だけ早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0089】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【実施例2】
【0090】
図9はこの発明の第2実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0091】
以下説明すると、第1実施例の処理と同様、S100において現段を確立するギヤ締結機構のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上か否か判断し、否定されるときはS102に進み、現段での走行を継続する。
【0092】
一方、肯定されるときはS104に進み、目標変速段(次段)を算出する。次いでS106に進み、第2回転数センサ92(あるいは第3回転数センサ94)と第4回転数センサ96の出力から入力回転数NMと出力回転数NCの差回転を算出し、算出された差回転が所定値以上か否か判断する。
【0093】
所定値は、ストロークでいえば例えば図4(e)などに相当する、差回転が生じる程度の値に設定される。尚、第1副入力軸20と奇数段入力軸16、あるいは第2副入力軸22と偶数段入力軸14には4種の変速段(変速比)が確立されることから、差回転を算出する際には現在締結されている変速段(変速比)を考慮する必要がある。
【0094】
S106で肯定されるときは現段を確立するギヤ締結機構のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上であると共に、差回転が生じてエンジン10の駆動力の伝達が困難な状態にあることからS108に進み、次段へのプリシフトを早めるべく、次段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を決定するシフト荷重として図7に示す加算分を使用して大きめの値に算出する。
【0095】
一方、S106で否定されるときはそのような状態にないことからS110に進み、次段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を決定するシフト荷重として加算分を使用しない(第1実施例と同様の)小さめの値に算出する。次いでS112からS118に進み、第1実施例のS16からS22までの処理と同様の処理を行う。
【0096】
図10は加算分の特性を示す説明図である。
【0097】
S108においては目標シフト荷重を算出するとき、図7に示す如く、初期値と中期値と終期値の全てにおいて加算分を追加して目標シフト荷重を増加する。図10に示す如く、加算分は差回転が増加するほど増大するように設定される。
【0098】
図11図9フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
【0099】
同図を参照して説明すると、第2実施例にあっては、算出された差回転が所定値以上のときは、図11の「次段スリーブストローク」に「加算あり」と示す如く、次段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を大きめな値に算出する一方、算出された差回転が所定値未満のときは、図11に「加算なし」と示すように次段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を「加算あり」と示す場合に比して小さめな値に算出するように構成した。尚、図11(および後述する図17図20)において現段側を実線、次段側を破線で示す。
【0100】
第2実施例においては上記のように構成したので、第1実施例と同様、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されたとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行することで、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0101】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0102】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、入力回転数NMと出力回転数NCの間の差回転が所定値以上か否か判定し、それに基づいて一方または他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を変化させる、より具体的には差回転が所定値以上と判定されるとき、他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を、差回転が所定値以上と判定されないときに比して増加させる如く構成したので、適切な油圧の量を供給することができる。換言すれば不要に過大な油圧を供給して耐久性を低下させることがない。また、シフト力が油圧の場合、高い油圧でインギヤさせることで早期にインギヤさせることができる。
【実施例3】
【0103】
図12はこの発明の第3実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0104】
第3実施例は第2実施例の変形例であり、第2実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第3実施例にあっては、S206で算出された差回転が所定値以上と判断されるときは差回転が生じてエンジン10の駆動力の伝達が困難な状態にあることからS208に進み、現段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を決定するギヤ締結荷重を零に算出する一方、否定されるときはそのような状態にないことからS210に進み、現段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を決定する目標シフト荷重として図7に示す加算分を使用して大きめの値に算出する。
【0105】
即ち、1速ドライブギヤ32などのギヤの歯先にバリや潰れが生じて最終的にインギヤ不能となり、その変速段をパスせざるを得なくなるため、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブのギヤイン位置からの移動状態に応じて一方を構成するギヤ締結機構のピストンのピストン室に供給する油圧の量を変化させるようにした。尚、残余のS200からS204およびS212からS218の処理は第2実施例と異ならない。
【0106】
第3実施例においては上記のように構成したので、第2実施例と同様、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されたとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行することで、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0107】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0108】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、入力回転数NMと出力回転数NCの間の差回転が所定値以上か否か判定し、それに基づいて一方または他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を変化させる、より具体的には差回転が所定値以上と判定されるとき、一方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を、差回転が所定値以上と判定されないときに比して減少させる如く構成したので、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を可能な限り抑制する、あるいは他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速の準備を一層早める、より具体的には前者を実現することができる。
【0109】
さらに、一方を構成するギヤ締結機構に適切なシフト力を供給する、換言すれば不要に過大なシフト力を供給して耐久性を低下させることがないと共に、油圧が低圧状態であってもスリーブの移動に要する時間が長期化することがない点でも耐久性を向上させることができる。
【実施例4】
【0110】
図13はこの発明の第4実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0111】
第4実施例は第1実施例の変形例であり、第1実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第4実施例にあっては、S300において現段を確立するギヤ締結機構のピストンのストロークがギヤ抜け判定値以上か否か判断し、否定されるときはS302に進み、現段での走行を継続する一方、肯定されるときはS304に進み、所定時間前からのアクセル開度APの変化(要求駆動力を示す)を検出すると共に、検出された値が既定値以上か否か判断する。
【0112】
アクセル開度APの変化は前回値との差分を求めることで算出する。「所定時間」は例えば1.0secである。尚、この値は図5に示す変速マップによる変速判断に使用されるアクセル開度APの変化値のしきい値と異ならせても良い。即ち、図5に示す変速マップによる変速判断ではアクセル開度APそれ自体に加え、アクセル開度APのある時間での変化から変速が判断される場合があるが、そのときのアクセル開度APおよび/または時間のしきい値を相違させても良い。
【0113】
S304で肯定されるときはS306に目標変速段(次段)としてダウン(DN)側の値、例えば現段が3速であれば2速を算出(決定)する一方、否定されるときはS308に進み、目標変速段としてアップ(UP)側の値、例えば現段が3速であれば4速を算出(決定)する。
【0114】
即ち、乗員による要求駆動力を示す、車両1のアクセル開度APの所定時間前からの経時変化を検出すると共に、検出されたアクセル開度変化に基づいてプリシフトすべき他方を構成するギヤ締結機構を選択、より具体的には検出されたアクセル開度APの変化に基づいて目標変速段を算出し、それに基づいてプリシフトすべき他方を構成するギヤ締結機構を選択するようにした。尚、残余のS300からS302およびS310からS316の処理は第1実施例と異ならない。
【0115】
第4実施例においては上記のように構成したので、従前の実施例と同様、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されたとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行することで、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0116】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0117】
また、アクセル開度APの経時変化を検出し、検出されたアクセル開度APの経時変化に基づいて目標変速段を算出し、それに基づいてプリシフトすべき他方を構成するギヤ締結機構を選択する如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結される変速段を、運転者の意思に沿って駆動力が伝達されるように、適正に選択することができる。
【0118】
尚、第4実施例の所定時間前からのアクセル開度APの変化から目標変速段を算出(決定)する構成は、第1から第3実施例など他の実施例に組み合わせても良い。
【実施例5】
【0119】
図14はこの発明の第5実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0120】
第5実施例は第2実施例の変形例であり、第2実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第5実施例にあっては、S400において現段を確立するギヤ締結機構のピストンのストロークがギヤ抜け判定値以上か否か判断し、否定されるときはS402に進み、現段での走行を継続する一方、肯定されるときはS404に進み、現段を確立するギヤ締結機構のピストンのストロークの速度、即ち、ギヤ抜け速度が所定速度以上か否か判断する。
【0121】
S404においては、ストロークセンサ88の出力から検出される、現在締結されている変速段(現段)を確立するスリーブのストローク速度を所定速度と比較することで判断(判定)する。所定速度は図4(d)などの完全に差回転が生じる状態を検出するに足る値に設定される。
【0122】
S404で肯定されるときは現段を確立するギヤ締結機構のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上であると共に、差回転が生じてエンジン10の駆動力の伝達が困難な状態にあることを意味するので、S406に進み、次段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を決定する目標シフト荷重として図7に示す加算分を使用して大きめの値に算出する一方、否定されるときはS408に進み、目標シフト荷重として加算分を使用しない(第1実施例と同様の)小さめの値に算出する。
【0123】
即ち、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブのギヤイン位置からの移動状態に応じて他方を構成するギヤ締結機構のピストンのピストン室に供給する油圧の量を変化させるようにした。尚、残余のS400からS402およびS410からS416の処理は第2実施例と異ならない。
【0124】
第5実施例においては上記のように構成したので、従前の実施例と同様、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されたとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行することで、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0125】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0126】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、そのスリーブの移動速度が所定速度以上か否か判定し、判定した結果に基づいて一方または他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を変化、より具体的には一方を構成するギヤ締結機構のスリーブの移動速度が所定速度以上と判定されるとき、他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を、差回転が所定値以上と判定されないときに比して増加させる構成したので、上記した効果に加え、スリーブの移動速度から判定することで、スリーブの抜け量を予測することが可能となり、より早期から対応することができる。尚、スリーブの移動速度に代え、移動加速度を用いても良い。
【0127】
尚、第5実施例においては現在締結されている変速段を確立するスリーブのストローク速度を所定速度と比較して次段を確立するギヤ締結機構の目標シフト荷重を算出するようにしたが、それに代え、現段を確立するギヤ締結機構への荷重を算出するようにしても良い。
【実施例6】
【0128】
図15はこの発明の第6実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0129】
以下説明すると、S500において現段を確立するギヤ締結機構のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上か否か判断し、否定されるときはS502に進み、現段での走行を継続する一方、肯定されるときはS504に進み、抜け量が規定値以上か否か判断する。
【0130】
S504の判断はS500で得られたスリーブのストロークを規定値と比較することで行う。規定値は例えば図4(e)に相当する、差回転が生じる程度のストローク値を意味する。尚、S504は現段を確立するギヤ締結機構のスリーブに差回転が生じているか否か判定する処理であるので、ストロークに代え、S106と同様、差回転を算出して所定値と比較することで判断しても良い。
【0131】
S504で否定されるときは現段を確立するギヤ締結機構のスリーブがギヤ抜け判定値以上移動しているが、未だ差回転が生じていない状態にあると判断されることからS506に進み、現段を確立するギヤ締結機構のピストンのピストン室に油圧を供給して再駆動する。
【0132】
一方、S504で肯定されるときは現段を確立するギヤ締結機構のスリーブは差回転が生じる状態にあると判断されることからS508に進み、次段(目標段)を確立するギヤ締結機構のピストン室に油圧を供給して次段ヘのプリシフトを実行する。S510からS514に進み、第1実施例のS18からS22までの処理と同様の処理を行う。
【0133】
第6実施例においては上記のように構成したので、従前の実施例と同様、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されたとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行することで、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0134】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0135】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していると判定されるとき、そのスリーブがギヤイン位置からニュートラル位置に向けて所定値より大きく設定される規定値以上移動しているか否か判定し、判定した結果に基づいて一方または他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を変化、より具体的には規定値以上移動していると判定されるとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行する反面、規定値以上移動していると判定されないとき、一方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給して一方を構成するギヤ締結機構のスリーブをギヤイン位置に向けて復帰させる如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を可能な限り抑制する、あるいは他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速の準備を一層早める、より具体的には前者を実現することができる。
【実施例7】
【0136】
図16はこの発明の第7実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0137】
第7実施例は第6実施例の変形例であり、第6実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、S600において現段を確立するギヤ締結機構のピストンのスリーブがギヤ抜け判定値以上か否か判断し、否定されるときはS602に進み、現段での走行を継続する一方、肯定されるときはS604に進み、抜け量が前記した規定値以上か否か判断する。尚、規定値は図15フロー・チャートのS504と同じ値とするが、相違させても良い。
【0138】
S604で否定されるときは同様に現段を確立するギヤ締結機構のスリーブがギヤ抜け判定値以上移動しているが、未だ差回転が生じていない状態にあると判断されることからS606に進み、現段を確立するギヤ締結機構のピストンのピストン室に油圧を供給して再駆動すると共に、次段(目標段)を確立するギヤ締結機構のピストン室に油圧を供給して次段ヘのプリシフトを実行する。
【0139】
他方、S604で肯定されるときはS608に進み、次段(目標段)を確立するギヤ締結機構のピストン室に油圧を供給して次段ヘのプリシフトを実行する。S610からS614に進み、第1実施例のS18からS22までの処理と同様の処理を行う。
【0140】
図17は第7実施例の処理を説明するタイム・チャートである。
【0141】
同図(a)に示す如く、時刻t1において現段を構成するギヤ締結機構のスリーブの抜け量が大きいと判断されるときは入力回転数NMと出力回転数NCの差回転も増加することから、次段へのプリシフトのみ行う。
【0142】
一方、同図(b)に示す如く、時刻t1において現段を構成するギヤ締結機構のスリーブの抜け量が小さいと判断されるときは、現段を確立するギヤ締結機構のピストン室に油圧を供給して現段のスリーブを再駆動すると共に、平行して次段を確立するギヤ締結機構のピストン室に油圧を供給して次段へのプリシフトを行い、現段を構成するギヤ締結機構のスリーブをギヤイン位置に復帰を可能とする。
【0143】
第7実施例においては上記のように構成したので、従前の実施例と同様、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されたとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行することで、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0144】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0145】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していると判定されるとき、そのスリーブがギヤイン位置からニュートラル位置に向けて所定値より大きく設定される規定値以上移動しているか否か判定し、判定した結果に基づいて一方または他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を変化、より具体的には規定値以上移動していると判定されるとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行する反面、規定値以上移動していると判定されないとき、一方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してそのスリーブをギヤイン位置に向けて復帰させると共に、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行する如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0146】
またクラッチのピストン室が空洞になるのを阻止できることで完全に締結させる際の油圧の立ち上がり特性を向上させることができ、従って他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速の応答性を一層向上させることができる。
【0147】
さらに、図17に示す如く、時刻t1において第1、第2クラッチ24,26のうち現段に相応する側のクラッチへの供給圧をエンジン10から入力される駆動力(トルク)を伝達できる程度まで低下させて油圧の不要な増加を抑制する一方、次段側のクラッチに少量の油圧を供給し、CtoC変速で次段に切り替えられるときの応答性を上げることができる。
【実施例8】
【0148】
図18はこの発明の第8実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0149】
第8実施例は予測的な手法を採用した実施例であり、以下説明すると、S700において現段を確立するギヤ締結機構のピストンのストロークがギヤ抜け判定値以上か否か判断し、否定されるときはS702に進み、現段での走行を継続する一方、肯定されるときはS704に進み、予測プリシフトが完了したか否か判断する。
【0150】
図19は第8実施例で使用される変速マップの特性を示す説明図である。
【0151】
第8実施例にあっては図示の如く、通常の変速特性に加えてプリシフト特性が設定される。この特性を「予測プリシフト」特性という。第1から第7実施例において「プリシフト」は車速Vとアクセル開度APが同図に実線で示す6種の境界線を超えた時点でその変速段へのプリシフトが実行されるが、第8実施例の場合、図19に示す特性の場合、車速Vとアクセル開度APがそれに先立つ破線で示す境界線を超えた時点でプリシフトが実行され、次いで実線で示す境界線を越えた時点でCtoC変速がなされるように構成される。即ち、プリシフトが従前の実施例に比して早期に実行されることから、それを「予測プリシフト」というようにした。尚、図19にはアップシフトのみ図示される点は図5の場合と同様である。
【0152】
図18フロー・チャートの説明に戻ると、S704で否定されるときはS706に進み、抜け量が前記した規定値以上か否か判断する。尚、規定値は図15フロー・チャートのS504と同じ値とするが、相違させても良いことは第7実施例と異ならない。
【0153】
S706で否定されるときはS708に進み、現段を確立するギヤ締結機構のピストンのピストン室に油圧を供給して再駆動する一方、S706で肯定されるときはS710に進み、次段(目標段)を確立するギヤ締結機構のピストン室に油圧を供給して次段ヘのプリシフトを実行する。次いでS712からS716に進み、第1実施例のS18からS22までの処理と同様の処理を行う。
【0154】
図20は第8実施例の処理を説明するタイム・チャートである。
【0155】
図18フロー・チャートのS700において現段のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上と判断されると共に、S704で予測プリシフトが完了したと判断されるときは、図20(a)に示すように、時刻t1においてCtoC変速を開始する。
【0156】
即ち、時刻t1において第1クラッチ24と第2クラッチ26のうち、一方を構成するクラッチ(現段を確立するギヤ締結機構を構成する側のクラッチ)から所定量(少量)油圧を排出させることで変速を開始する。
【0157】
また、同図(b)に示すように、現段のスリーブの抜け量が大きいが、予測プリシフトが完了したと判断されないときは、次段へのプリシフトを時刻t1で開始し、プリシフトが完了する時刻t2でCtoC変速を開始する。
【0158】
また、同図(c)に示すように、現段のスリーブの抜け量が小さく、予測プリシフトが完了したと判断されないときは、時刻t1で現段への再駆動と次段のプリシフトを平行して行う。
【0159】
第8実施例においては、上記の如く、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されると共に、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して締結しつつ、一方を構成するクラッチから油圧を排出して解放する如く構成したので、従前の実施例と同様、他方を構成するギヤ締結機構を介して次段に変速することができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができると共に、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けが生じるのを抑制することができる。
【0160】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していず、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了していないと判定されるとき、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが規定値以上移動しているか否か判定し、そのスリーブが規定値以上移動していると判定されるとき、他方を構成するクラッチに油圧を供給して締結しつつ、一方を構成するクラッチから油圧を排出して解放する如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブの移動の程度、換言すればギヤ抜けの程度に応じて対応を異ならせることで、予測できない状況にあるときでも、他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速を一層早めることができる。
【0161】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが規定値以上移動していないと判定されるとき、一方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給して一方を構成するギヤ締結機構のスリーブをインギヤ位置に向けて復帰させる如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を確実に抑制することができる。
【0162】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、一方を構成するクラッチから所定量油圧を排出させる如く構成したので、上記した効果に加え、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を一層確実に抑制することができる。
【0163】
即ち、図20(a)(b)に示す如く、現段のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値(所定値)以上と判断されるとき、時刻t1において第1クラッチ24と第2クラッチ26のうち、一方を構成するクラッチ(現段を確立するギヤ締結機構を構成する側のクラッチ)から所定量(少量)油圧を排出させることで変速を開始するようにしたので、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を一層確実に抑制することができる。
【0164】
さらに、図20(c)に示す如く、第7実施例と同様、現段側のクラッチへの供給油圧をエンジントルク相当値まで低下させて油圧の不要な増加を抑制する一方、次段(他方)側のクラッチへの供給油圧を少し上昇させるようにしたので、次段に切り替えられるときの変速応答性を向上させることができる。
【0165】
上記した如く、この発明の第8実施例にあっては、車両1に搭載される原動機(エンジン)10に第1、第2クラッチ24,26を介して接続される第1、第2入力要素(奇数段入力軸16と第1副入力軸20からなる第1入力要素、偶数段入力軸14と第2副入力軸22からなる第2入力要素)と、前記第1、第2入力要素と平行に配置される少なくとも1個の出力要素(出力軸28)と、前記第1、第2入力要素と前記出力要素との間に配置される複数組の変速段ギヤ(1速ドライブギヤ32から7速−8速ドリブンギヤ54)と、油圧(シフト力)を供給されるとニュートラル位置からギヤイン位置に移動して前記複数組をそれぞれ構成する変速段ギヤの一方を前記第1、第2入力要素の一方または前記出力要素に締結可能なスリーブ60g,62g,64g,66gを有する複数個のギヤ締結機構60,62,64,66、前記車両の走行状態に応じて前記第1入力要素から前記複数個のギヤ締結機構のうちの第1ギヤ締結機構(ギヤ締結機構60,62のいずれか)と前記第1クラッチ24を介して前記出力要素に至る第1出力経路と前記第2入力要素から前記複数個のギヤ締結機構のうちの第2ギヤ締結機構(ギヤ締結機構64,66のいずれか)と前記第2クラッチ26を介して前記出力要素に至る第2出力経路をそれぞれ構成する前記第1、第2ギヤ締結機構のうちの一方への油圧(シフト力)の供給を制御して前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介して前記原動機の駆動力を変速して出力させる油圧(シフト力)供給制御手段(シフトコントローラ84)とを備えた自動変速機の制御装置において、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブ(例えばギヤ締結機構60のスリーブ60g)が前記インギヤ位置から前記ニュートラル位置に向けて移動しているか否か判定するスリーブ位置判定手段(シフトコントローラ84,S700)と、前記第1出力経路と第2出力経路の他方を構成するギヤ締結機構(例えばギヤ締結機構64)に油圧(シフト力)を供給してスリーブ(例えばスリーブ64g)を前記インギヤ位置に向けて移動させるプリシフトが完了したか否か判定するプリシフト完了判定手段(シフトコントローラ84,S704)とを備え、前記油圧(シフト力)供給制御手段は、前記インギヤ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されると共に、前記プリシフト完了判定手段によって前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記他方を構成するクラッチを締結、より具体的にはクラッチに油圧を供給して締結しつつ、前記一方を構成するクラッチを解放、より具体的にはクラッチから油圧を排出して解放する(シフトコントローラ84,S712からS714)如く構成したので、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されると共に、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、他方を構成するクラッチに油圧を供給して締結しつつ、一方を構成するクラッチから油圧を排出して解放することで、他方を構成するギヤ締結機構を介して次段に変速することができて検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができると共に、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けが生じるのを抑制することができる。
【0166】
また、前記油圧(シフト力)供給制御手段は、前記インギヤ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していると判定されると共に、前記プリシフト完了判定手段によって前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了していないと判定されるとき、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記インギヤ位置から前記ニュートラル位置に向けて前記所定値より大きく設定される規定値以上移動しているか否か判定し(シフトコントローラ84,S700,S704,S706)、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記規定値以上移動していると判定されるとき、前記他方を構成するクラッチを締結、より具体的にはクラッチに油圧を供給して締結しつつ、前記一方を構成するクラッチを解放、より具体的にはクラッチから油圧を排出して解放する(シフトコントローラ84,S710からS716)如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブの移動の程度、換言すればギヤ抜けの程度に応じて対応を異ならせることで、予測できない状況にあるときでも、他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速を一層早めることができる。
【0167】
また、前記油圧供給制御手段は、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記規定値以上移動していないと判定されるとき、前記一方を構成するギヤ締結機構に油圧(シフト力)を供給して前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブを前記インギヤ位置に向けて復帰させる(シフトコントローラ84,S700,S704,S706,S708,S702)如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を確実に抑制することができる。
【0168】
また、前記油圧供給制御手段は、前記インギヤ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記一方を構成するクラッチの締結力を所定値低下、より具体的にはクラッチから所定量油圧を排出させる(シフトコントローラ84,S700,S712、図20(a)(b))如く構成したので、上記した効果に加え、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を一層確実に抑制することができる。
【0169】
また、前記他方を構成するギヤ締結機構は、予め設定された予測プリシフト特性に従ってプリシフトを実行する(シフトコントローラ84,S704)如く構成したので、上記した効果に加え、予測プリシフト特性を適宜設定することでプリシフトを早期に実行させることができ、よって検出から変速完了までの時間を一層早めることができる。
【0170】
また、前記油圧(シフト力)供給制御手段は、図17(b)と図20(c)の「クラッチ」に示す如く、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記他方を構成するクラッチを、前記原動機の駆動力を伝達しない程度の締結力で締結させる如く構成したので、上記した効果に加え、クラッチのピストン室が空洞になるのを阻止できることで完全に締結させる際の油圧の立ち上がり特性を向上させることができ、従って他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速の応答性を一層向上させることができる。
【0171】
尚、上記において油圧供給装置80を設け、ギヤ締結機構のスリーブを移動させるシフト力を油圧から構成したが、油圧に代え、電動など他の機械的な機構を設け、その出力をシフト力としてスリーブに供給するようにしても良い。
【0172】
また、上記においてギヤ締結機構の「スリーブ」はスリーブそれ自体に止まらず、それと等価なシフトフォーク、シフトフォークシャフト、あるいはシフトアクチュエータの全てを含む意味で使用する。
【0173】
また、上記において、ギヤ締結機構のスリーブのギヤ抜けをストロークまたは差回転それ自体から検知したが、それらの変化率を算出して適宜設定されるしきい値と比較するようにしても良い。
【0174】
また、ツインクラッチ型の自動変速機を説明したが、ツインクラッチ型の自動変速機は例示した構成に止まらず、どのような構成であっても良い。
【0175】
また、原動機としてエンジン(内燃機関)を例示したが、それに限られるものではなく、エンジンと電動機とのハイブリッドであっても良く、電動機であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0176】
この発明によれば、ツインクラッチ型の自動変速機において、変速段ギヤを入力軸などに締結可能な複数個のギヤ締結機構のうちのいずれかで構成される第1出力経路と別のギヤ締結機構で構成される第2出力経路の一方に油圧(シフト力)を供給して原動機の駆動力を変速して出力させると共に、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動しているか否か判定し(S700)、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了しているか否か判定し(S704)、両者で肯定されるとき、他方を構成するクラッチに油圧を供給して締結しつつ、一方を構成するクラッチから油圧を排出して解放する(S712,S714)如く構成したので、ギヤ締結機構のスリーブの意図しない挙動の変化を検知していち早く対応することで、乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【符号の説明】
【0177】
T 変速機(自動変速機)、1 車両、10 エンジン(原動機)、12 トルクコンバータ、12d ロックアップクラッチ、14 偶数段入力軸(入力要素)、16 奇数段入力軸(入力要素)、18 アイドル軸、20 第1副入力軸(入力要素)、22 第2副入力軸(入力要素)、24 第1クラッチ、26 第2クラッチ、28 出力軸(出力要素)、32,34,36,38,40,42,44,46 ドライブギヤ、48,50,52,54 ドリブンギヤ、56 RVSアイドルギヤ、58 RVSクラッチ、60,62,64,66 ギヤ締結機構、60g,62g,64g,66g スリーブ、76 車輪、80 油圧供給装置、80b 油圧ポンプ、80c レギュレータバルブ(調圧弁)、80f,80g,80h,80i,80j,80k 第1から第6リニアソレノイドバルブ、80m,80n,80o,80p 第1から第4サーボシフトバルブ、84 シフトコントローラ(油圧(シフト力)供給制御手段)、86 エンジンコントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20

【手続補正書】
【提出日】2014年10月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される原動機に第1、第2クラッチを介して接続される第1、第2入力要素と、前記第1、第2入力要素と平行に配置される少なくとも1個の出力要素と、前記第1、第2入力要素と前記出力要素との間に配置される複数組の変速段ギヤと、シフト力を供給されるとニュートラル位置からギヤイン位置に移動して前記複数組をそれぞれ構成する変速段ギヤの一方を前記第1、第2入力要素の一方または前記出力要素に締結可能なスリーブを有する複数個のギヤ締結機構と、前記車両の走行状態に応じて前記第1入力要素から前記複数個のギヤ締結機構のうちの第1ギヤ締結機構と前記第1クラッチを介して前記出力要素に至る第1出力経路と前記第2入力要素から前記複数個のギヤ締結機構のうちの第2ギヤ締結機構と前記第2クラッチを介して前記出力要素に至る第2出力経路をそれぞれ構成する前記第1、第2ギヤ締結機構のうちの一方へのシフト力の供給を制御して前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介して前記原動機の駆動力を変速して出力させるシフト力供給制御手段とを備えた自動変速機の制御装置において、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記インギヤ位置から前記ニュートラル位置に向けて移動しているか否か判定するスリーブ位置判定手段と、前記第1出力経路と第2出力経路の他方を構成するギヤ締結機構にシフト力を供給して前記他方を構成するギヤ締結機構のスリーブを前記インギヤ位置に向けて移動させるプリシフトが完了したか否か判定するプリシフト完了判定手段とを備え、前記シフト力供給制御手段は、前記スリーブ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されると共に、前記プリシフト完了判定手段によって前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記他方を構成するクラッチを締結しつつ、前記一方を構成するクラッチを解放することを特徴とする自動変速機の制御装置。
【請求項2】
前記シフト力供給制御手段は、前記スリーブ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していると判定されると共に、前記プリシフト完了判定手段によって前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了していないと判定されるとき、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記インギヤ位置から前記ニュートラル位置に向けて前記所定値より大きく設定される規定値以上移動しているか否か判定し、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記規定値以上移動していると判定されるとき、前記他方を構成するクラッチを締結しつつ、前記一方を構成するクラッチを解放することを特徴とする請求項1記載の自動変速機の制御装置。
【請求項3】
前記シフト力供給制御手段は、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記規定値以上移動していないと判定されるとき、前記一方を構成するギヤ締結機構にシフト力を供給して前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブを前記インギヤ位置に向けて復帰させることを特徴とする請求項2記載の自動変速機の制御装置。
【請求項4】
前記シフト力供給制御手段は、前記スリーブ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記一方を構成するクラッチの締結力を所定値低下させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の自動変速機の制御装置。
【請求項5】
前記シフト力供給制御手段は、前記車両の走行状態を示す車速とアクセル開度とから設定される第1の特性に従って前記第1、第2ギヤ締結機構のうちの一方へのシフト力の供給を制御すると共に、前記車速とアクセル開度とから設定される第2の特性に従って前記第1、第2ギヤ締結機構のうちの他方へのシフト力の供給を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の自動変速機の制御装置。
【請求項6】
前記第2の特性は、前記第1の特性に比して同一のアクセル開度に対して低車速でプリシフトが実行されるように設定されることを特徴とする請求項5記載の自動変速機の制御装置。
【請求項7】
前記シフト力供給制御手段は、前記第2の特性に従って前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトを実行することを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の自動変速機の制御装置。
【請求項8】
前記シフト力供給制御手段は、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記他方を構成するクラッチを、前記原動機の駆動力を伝達しない程度の締結力で締結させることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の自動変速機の制御装置。
【請求項9】
前記スリーブ位置判定手段は、前記スリーブの変位または前記第1、第2入力要素の一方と前記出力要素の回転数の差に基づいて前記スリーブが移動しているか否か判定することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の自動変速機の制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動変速機の制御装置に関し、より具体的にはツインクラッチ型の自動変速機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ツインクラッチ型の自動変速機の油圧供給装置の例としては、例えば特許文献1記載の技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術は、車両に搭載された原動機に第1、第2クラッチを介して接続される第1、第2入力軸(入力要素)と出力軸(出力要素)との間に配置される複数個の変速段ギヤのいずれかを入力軸などに締結可能なスリーブを有するギヤ締結機構を備え、それに油圧を供給してスリーブを中央のニュートラル位置から左右のギヤイン位置に移動させ、原動機の出力を締結された変速段ギヤで変速して出力するように構成している。
【0003】
そのようなツインクラッチ型の自動変速機を備えた車両が悪路などを走行するとき、車体側から予期しない振動を受けるなどしてギヤ締結機構のスリーブにギヤイン位置からニュートラル位置に向けて移動するなどの挙動の変化が生じることがある。
【0004】
それについて特許文献2は、変速機の操作がアクチュエータで行われる、いわゆるAutomatic Manual Transmissionと呼ばれる自動変速機においてスリーブの移動を検出し、スリーブの検出位置がギヤとの噛合い点を超えていないか否か判定し、肯定されるときはスリーブを押圧してギヤイン位置にそのまま復帰させる一方、否定されるときはスリーブを一旦ニュートラル位置に移動させてから改めてギヤイン位置にインギヤさせるように制御する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−052800号公報
【特許文献2】特開2000−205410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2記載の技術はスリーブの検出位置がギヤとの噛合い点を超えているときはスリーブを一旦ニュートラル位置に移動させてから改めてギヤイン位置にインギヤさせるように構成することでギヤ鳴りを回避しているが、反面、スリーブをニュートラル位置に移動させることで原動機の駆動力が一時的に零になるなど駆動力に変化を生じて乗員に違和感を与えることがあった。
【0007】
この発明の目的は上記した課題を解決し、ツインクラッチ型の自動変速機において、ギヤ締結機構のスリーブの意図しない挙動の変化を検知していち早く対応することで、乗員に違和感を与えることなく走行させるようにした自動変速機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては、車両に搭載される原動機に第1、第2クラッチを介して接続される第1、第2入力要素と、前記第1、第2入力要素と平行に配置される少なくとも1個の出力要素と、前記第1、第2入力要素と前記出力要素との間に配置される複数組の変速段ギヤと、シフト力を供給されるとニュートラル位置からギヤイン位置に移動して前記複数組をそれぞれ構成する変速段ギヤの一方を前記第1、第2入力要素の一方または前記出力要素に締結可能なスリーブを有する複数個のギヤ締結機構と、前記車両の走行状態に応じて前記第1入力要素から前記複数個のギヤ締結機構のうちの第1ギヤ締結機構と前記第1クラッチを介して前記出力要素に至る第1出力経路と前記第2入力要素から前記複数個のギヤ締結機構のうちの第2ギヤ締結機構と前記第2クラッチを介して前記出力要素に至る第2出力経路をそれぞれ構成する前記第1、第2ギヤ締結機構のうちの一方へのシフト力の供給を制御して前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介して前記原動機の駆動力を変速して出力させるシフト力供給制御手段とを備えた自動変速機の制御装置において、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記インギヤ位置から前記ニュートラル位置に向けて移動しているか否か判定するスリーブ位置判定手段と、前記第1出力経路と第2出力経路の他方を構成するギヤ締結機構にシフト力を供給して前記他方を構成するギヤ締結機構のスリーブを前記インギヤ位置に向けて移動させるプリシフトが完了したか否か判定するプリシフト完了判定手段とを備え、前記シフト力供給制御手段は、前記スリーブ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されると共に、前記プリシフト完了判定手段によって前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記他方を構成するクラッチを締結しつつ、前記一方を構成するクラッチを解放する如く構成した。
【0009】
請求項2に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記シフト力供給制御手段は、前記スリーブ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していると判定されると共に、前記プリシフト完了判定手段によって前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了していないと判定されるとき、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記インギヤ位置から前記ニュートラル位置に向けて前記所定値より大きく設定される規定値以上移動しているか否か判定し、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記規定値以上移動していると判定されるとき、前記他方を構成するクラッチを締結しつつ、前記一方を構成するクラッチを解放する如く構成した。
【0010】
請求項3に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記シフト力供給制御手段は、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記規定値以上移動していないと判定されるとき、前記一方を構成するギヤ締結機構にシフト力を供給して前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブを前記インギヤ位置に向けて復帰させる如く構成した。
【0011】
請求項4に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記シフト力供給制御手段は、前記スリーブ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記一方を構成するクラッチの締結力を所定値低下させる如く構成した。
【0012】
請求項5に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記シフト力供給制御手段は、前記車両の走行状態を示す車速とアクセル開度とから設定される第1の特性に従って前記第1、第2ギヤ締結機構のうちの一方へのシフト力の供給を制御すると共に、前記車速とアクセル開度とから設定される第2の特性に従って前記第1、第2ギヤ締結機構のうちの他方へのシフト力の供給を制御する如く構成した。
【0013】
請求項6に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記第2の特性は、前記第1の特性に比して同一のアクセル開度に対して低車速でプリシフトが実行されるように設定される如く構成した。
【0014】
請求項に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記シフト力供給制御手段は、前記第2の特性に従って前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトを実行する如く構成した。
【0015】
請求項に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記シフト力供給制御手段は、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記他方を構成するクラッチを、前記原動機の駆動力を伝達しない程度の締結力で締結させる如く構成した。
【0016】
請求項9に係る自動変速機の制御装置にあっては、前記スリーブ位置判定手段は、前記スリーブの変位または前記第1、第2入力要素の一方と前記出力要素の回転数の差に基づいて前記スリーブが移動しているか否か判定する如く構成した。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る自動変速機の制御装置にあっては、ニュートラル位置からギヤイン位置に移動して複数組をそれぞれ構成する変速段ギヤの一方を入力要素または出力要素に締結可能なスリーブを有する複数個のギヤ締結機構で第1出力経路と第2出力経路の一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置からニュートラル位置に向けて移動していると判定されると共に、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、車両に搭載される原動機に第1、第2入力要素を接続する第1、第2クラッチのうちの他方を構成するクラッチを締結しつつ、一方を構成するクラッチを解放する如く構成したので、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されると共に、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、他方を構成するクラッチを締結しつつ、一方を構成するクラッチから油圧を解放することで他方を構成するギヤ締結機構を介して次段に変速することができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができると共に、原動機の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けが生じるのを抑制することができる。
【0018】
請求項2に係る自動変速機の制御装置にあっては、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していると判定されると共に、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了していないと判定されるとき、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値より大きく設定される規定値以上移動しているか否か判定し、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが規定値以上移動していると判定されるとき、他方を構成するクラッチを締結しつつ、一方を構成するクラッチを解放する如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブの移動の程度、換言すればギヤ抜けの程度に応じて対応を異ならせることで、予測できない状況にあるときでも、他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速を一層早めることができる。
【0019】
請求項3に係る自動変速機の制御装置にあっては、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが規定値以上移動していないと判定されるとき、一方を構成するギヤ締結機構にシフト力を供給して一方を構成するギヤ締結機構のスリーブをインギヤ位置に向けて復帰させる如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を確実に抑制することができる。
【0020】
請求項4に係る自動変速機の制御装置にあっては、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、第1クラッチと第2クラッチのうちの一方を構成するクラッチの締結力を所定値低下させる如く構成したので、上記した効果に加え、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を一層確実に抑制することができる。
【0021】
請求項5に係る自動変速機の制御装置にあっては、車両の走行状態を示す車速とアクセル開度とから設定される第1の特性に従って第1、第2ギヤ締結機構のうちの一方へのシフト力の供給を制御すると共に、車速とアクセル開度とから設定される第2の特性に従って第1、第2ギヤ締結機構のうちの他方へのシフト力の供給を制御する如く構成したので、上記した効果に加え、第2の特性を適宜設定することでプリシフトを早期に実行させることができ、よって検出から変速完了までの時間を一層早めることができる。
【0022】
請求項6に係る自動変速機の制御装置にあっては、第2の特性は、第1の特性に比して同一のアクセル開度に対して低車速でプリシフトが実行されるように設定される如く構成したので、上記した効果に加え、プリシフトを早期に実行させることができ、よって検出から変速完了までの時間を一層早めることができる。
【0023】
請求項7に係る自動変速機の制御装置にあっては、第2の特性に従って他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトを実行する如く構成したので、上記した効果に加え、プリシフトを早期に実行させることができ、よって検出から変速完了までの時間を一層早めることができる。
【0024】
請求項に係る自動変速機の制御装置にあっては、第1クラッチと第2クラッチのうちの他方を構成するクラッチを、原動機の駆動力を伝達しない程度の締結力で締結させる如く構成したので、上記した効果に加え、クラッチのピストン室が空洞になるのを阻止できることで完全に締結させる際の油圧の立ち上がり特性を向上させることができ、従って他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速の応答性を一層向上させることができる。
【0025】
請求項9に係る自動変速機の制御装置にあっては、スリーブの変位または第1、第2入力要素の一方と出力要素の回転数の差に基づいてスリーブが移動しているか否か判定する如く構成したので、上記した効果に加え、スリーブの移動を精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明の第1実施例に係る自動変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
図2図1に示す油圧供給装置の構成の一部を模式的に示す油圧回路図である。
図3図2に示す油圧供給装置のギヤ締結機構の構造を模式的に示す説明図である。
図4図3に示す油圧供給装置のギヤ締結機構の動作を模式的に示す説明図である。
図5図1に示す自動変速機の制御装置(シフトコントローラ)で使用される変速マップの特性を示す説明図である。
図6図1に示す自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図7図6フロー・チャートで算出される目標シフト荷重を説明する説明図である。
図8図6フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
図9】この発明の第2実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図10図9フロー・チャートの処理で使用される目標シフト荷重の加算分の特性を示す説明図である。
図11図9フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
図12】この発明の第3実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図13】この発明の第4実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図14】この発明の第5実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図15】この発明の第6実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図16】この発明の第7実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図17図16フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
図18】この発明の第8実施例に係る自動変速機の制御装置の動作を示すフロー・チャートである。
図19図18フロー・チャートで使用される変速マップの特性を示す説明図である。
図20図18フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照してこの発明に係る自動変速機の制御装置を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0028】
図1はこの発明の第1実施例に係る自動変速機の制御装置を全体的に示す概略図である。
【0029】
以下説明すると、符号Tは自動変速機(以下「変速機」という)を示す。変速機Tは車両1に搭載される、前進8速で後進1速の変速段を有するツインクラッチ型の自動変速機からなると共に、D,P,R,Nのレンジを有する。
【0030】
変速機Tは、エンジン(原動機)10のクランクシャフトに接続される駆動軸10aにトルクコンバータ12を介して接続される、2,4,6,8速の偶数段入力軸(入力要素)14を備えると共に、偶数段入力軸14と平行して1,3,5,7速の奇数段入力軸(入力要素)16を備える。エンジン10は例えばガソリンを燃料とする火花点火式の内燃機関からなる。
【0031】
トルクコンバータ12はエンジン10の駆動軸10aに直結されるドライブプレート12aに固定されるポンプインペラ12bと、偶数段入力軸14に固定されるタービンランナ12cと、ロックアップクラッチ12dを有し、よってエンジン10の駆動力(回転)はトルクコンバータ12を介して偶数段入力軸14に伝達される。
【0032】
偶数段入力軸14と奇数段入力軸16と平行にアイドル軸18が設けられる。偶数段入力軸14はギヤ14a,18aを介してアイドル軸18に接続されると共に、奇数段入力軸16はギヤ16a,ギヤ18aを介してアイドル軸18と接続され、よって偶数段入力軸14と奇数段入力軸16とアイドル軸18はエンジン10の回転につれて回転する。
【0033】
また、第1副入力軸(入力要素)20と第2副入力軸(入力要素)22とが奇数段入力軸16と偶数段入力軸14の外周にそれぞれ同軸かつ相対回転自在に配置される。
【0034】
奇数段入力軸16と第1副入力軸20は第1クラッチ24を介して接続されると共に、偶数段入力軸14と第2副入力軸22も第2クラッチ26を介して接続される。第1、第2クラッチ24,26は共に油圧作動の湿式多板クラッチからなる。第1、第2クラッチ24,26に油圧が供給されるとき、第1、第2副入力軸20,22を奇数段、偶数段入力軸16,14に締結(係合)する。
【0035】
偶数段入力軸14と奇数段入力軸16の間には、偶数段入力軸14と奇数段入力軸16と平行に出力軸(出力要素)28が配置される。偶数段入力軸14と奇数段入力軸16とアイドル軸18と出力軸28はベアリング30で回転自在に支承される。
【0036】
奇数段側の第1副入力軸20には1速ドライブギヤ32と、3速ドライブギヤ34と、5速ドライブギヤ36と、7速ドライブギヤ38が固定されると共に、偶数段側の第2副入力軸22には2速ドライブギヤ40と4速ドライブギヤ42と6速ドライブギヤ44と8速ドライブギヤ46が固定される。
【0037】
出力軸28には1速ドライブギヤ32と2速ドライブギヤ40に噛合する1速−2速ドリブンギヤ48と、3速ドライブギヤ34と4速ドライブギヤ42に噛合する3速−4速ドリブンギヤ50と、5速ドライブギヤ36と6速ドライブギヤ44と噛合する5速−6速ドリブンギヤ52と、7速ドライブギヤ38と8速ドライブギヤ46と噛合する7速−8速ドリブンギヤ54が固定される。
【0038】
アイドル軸18には、出力軸28に固定される1速−2速ドリブンギヤ48と噛合するRVS(後進)アイドルギヤ56が回転自在に支持される。アイドル軸18とRVSアイドルギヤ56はRVSクラッチ58を介して接続される。RVSクラッチ58は、第1、第2クラッチ24,26と同様、油圧作動の湿式多板クラッチからなるが、第1、第2クラッチ24,26に比して小径で摩擦材枚数も少なく構成される。
【0039】
奇数段入力軸16には1速ドライブギヤ32と3速ドライブギヤ34を選択的に第1副入力軸20に締結(固定)する1−3速ギヤ締結機構60と、5速ドライブギヤ36と7速ドライブギヤ38を選択的に第1副入力軸20に締結(固定)する5−7速ギヤ締結機構62が配置される。
【0040】
偶数段入力軸14には2速ドライブギヤ40と4速ドライブギヤ42を選択的に第2副入力軸22に締結(固定)する2−4速ギヤ締結機構64と、6速ドライブギヤ44と8速ドライブギヤ46を選択的に第2副入力軸22に締結(固定)する6−8速ギヤ締結機構66が配置される。
【0041】
エンジン10の駆動力は、第1クラッチ24あるいは第2クラッチ26が締結(係合)されるとき、奇数段入力軸16から第1副入力軸20あるいは偶数段入力軸14から第2副入力軸22に伝達され、さらに上記したドライブギヤとドリブンギヤを介して出力軸28に伝達される。
【0042】
尚、後進時には、エンジン10の駆動力は、偶数段入力軸14、ギヤ14a、ギヤ18a,RVSクラッチ58、アイドル軸18,RVSアイドルギヤ56,1速−2速ドリブンギヤ48を介して出力軸28に伝達される。出力軸28はギヤ70を介してディファレンシャル機構72に接続され、ディファレンシャル機構72はドライブシャフト74を介して車輪76に接続される。車両1を車輪76などで示す。
【0043】
ギヤ締結機構60,62,64,66は全て油圧(シフト力)を供給されて動作する。これらギヤ締結機構と第1、第2クラッチ24,26とRVSクラッチ58に油圧(シフト力)を供給するため、油圧供給装置80が設けられる。
【0044】
図2は油圧供給装置80の構成を詳細に示す油圧回路図である。
【0045】
図2を参照して説明すると、油圧供給装置80において、リザーバ80aからストレーナ(図示せず)を介して油圧ポンプ(送油ポンプ)80bによって汲み上げられた作動油ATFの吐出圧(油圧)は、レギュレータバルブ(調圧弁)80cによってライン圧PLに調圧(減圧)される。
【0046】
図示は省略するが、油圧ポンプ80bはギヤを介してトルクコンバータ12のポンプインペラ12bに連結され、よって油圧ポンプ80bはエンジン10に駆動されて動作するように構成される。
【0047】
調圧されたライン圧は、油路80dから第1リニアソレノイドバルブ(LA)80f、第2リニアソレノイドバルブ(LB)80g、第3リニアソレノイドバルブ(LC)80h、第4リニアソレノイドバルブ(LD)80i、第5リニアソレノイドバルブ(LE)80j、および第6リニアソレノイドバルブ(LF)80kの入力ポートに送られる。
【0048】
第1から第6リニアソレノイドバルブ80f,80g,80h,80i,80j,80kは油圧制御弁(電磁制御弁)であり、通電量に比例してスプールを移動させて出力ポートからの出力圧をリニアに変更する特性を備えると共に、通電されるとスプールが開放位置に移動するN/C(ノーマル・クローズ)型として構成される。
【0049】
第1リニアソレノイドバルブ(LA)80fの出力ポートは第1サーボシフトバルブ80mを介して前記した1−3速ギヤ締結機構60のピストン室に接続されると共に、第2リニアソレノイドバルブ(LB)80gの出力ポートは第2サーボシフトバルブ80nを介して前記した2−4速ギヤ締結機構64のピストン室に接続される。
【0050】
また、第3リニアソレノイドバルブ(LC)80hの出力ポートは第3サーボシフトバルブ80oを介して前記した5−7速ギヤ締結機構62のピストン室に接続されると共に、第4リニアソレノイドバルブ(LD)80iの出力ポートは第4サーボシフトバルブ80pを介して前記した6−8速ギヤ締結機構66のピストン室に接続される。
【0051】
サーボシフトバルブ80m,80n,80o,80pはそれぞれ、オン・オフソレノイドバルブ(油圧制御弁(電磁制御弁))SA,SB,SC,SDに接続され、それらのソレノイドの励磁・消磁によってリニアソレノイドバルブ80fなどから入力される油圧を出力ポートの(図において左右の)一方からライン圧として出力するように構成される。
【0052】
図3は4個のギヤ締結機構60,62,64,66のうちの一つ、例えば60の構造を模式的に示す断面図、図4はその動作を模式的に示す、図3の部分断面図である。図示は省略するが、他の3個のギヤ締結機構62,64,66の構造も同様である。
【0053】
図3に示す如く、ギヤ締結機構60においてシリンダ60a1,60a2の内部には1速用ピストン60b1と3速用ピストン60b2が図において左右に対向して配置される。ピストン60b1,60b2は共用のピストンロッド60cによって連結され、サーボシフトバルブ80mなどからの1速用ピストン室60d1と3速用ピストン室60d2への油圧の供給方向に応じて図で左右に移動する。
【0054】
ピストンロッド60cにはシフトフォーク60eが接続され、シフトフォーク60eはフォークシャフト60fに固定される。フォークシャフト60f上には、図示は省略するが、中央のニュートラル位置と左右のギヤイン(締結)位置に対応する位置にディテントが設けられ、ニュートラル位置と左右のインギヤ位置にあるときはディテントで保持されて油圧供給が不要となるように構成される。
【0055】
図3に示す如く、シフトフォーク60eは環状のスリーブ60gに接続される。スリーブ60gの内周側には第1、第2副入力軸20,22上を軸方向に移動自在なハブ60hがスプライン60g1,60h1で結合されて収容されると共に、ハブ60hの両側にはスプリング60jと、ブロッキングリング60kを介して1速ドライブギヤ32と3速ドライブギヤ34が配置される。
【0056】
ブロッキングリング60kにはスプライン60k1が形成されると共に、1速ドライブギヤ32と3速ドライブギヤ34にはドグ歯321,341が形成される。またブロッキングリング60kにはテーパコーン面60k2が形成されると共に、1速ドライブギヤ32と3速ドライブギヤ34にも対応するテーパコーン面322,342が形成される。
【0057】
次いで動作を説明すると、図3図4(a)に示すニュートラル(N)位置から、対向する3速用ピストン室60d2に油圧が供給されて1速用ピストン60b1とそれに連結されるピストンロッド60cが図3において右方向に前進すると、ピストンロッド60cにシフトフォーク60eを介して接続されるスリーブ60gが同方向に前進してスプリング60jに接触し、スプリング60jを介してブロッキングリング60kを1速ドライブギヤ32に向けて付勢する(図4(b))。
【0058】
スリーブ60gがさらに前進すると、スリーブ60gのスプライン60g1がブロッキングリング60kのスプライン60k1と当接すると共に、ブロッキングリング60kのテーパコーン面60k2とギヤ32のテーパコーン面322同士が接触(ボーク)して摩擦力によるトルクが発生する(図4(c))。
【0059】
スリーブ60gがさらに移動すると、発生トルクによってスリーブ60gとギヤ32は回転が同期し、スリーブ60gのスプライン60g1がブロッキングリング60kのスプライン60k1を掻き分け始める(図4(d))。
【0060】
ギヤ32とスリーブ60gの回転が同期して発生トルクが消滅すると、スリーブ60gはさらに前進してそのスプライン60g1はブロッキングリング60kのスプライン60k1と一体に結合し、さらに前進してギヤ32のドグ歯321と接触し(図4(e))、ギヤ32のドグ歯321を掻き分け始め(図4(f))、最終的にはギヤ32のドグ歯321と一体に結合するギヤイン(締結)状態となる(図4(g))。
【0061】
他のギヤ締結機構62,64,66も同様であり、スリーブ62g,64g,66g(図2に示す)を有すると共に、スリーブ62g,64g,66g(図2に示す)がニュートラル位置からインギヤ位置に移動(シフト)するとき、対応するドライブギヤ36,38,40,42,44,46のドグ歯に結合してドライブギヤ36などを、両者の回転を同期させつつ、第1、第2副入力軸20,22に締結するように構成される。
【0062】
図2の説明に戻ると、第5リニアソレノイドバルブ80jの出力ポートは前記した奇数段入力軸16の第1クラッチ(CL1)24に接続されると共に、第6リニアソレノイドバルブ80kの出力ポートは偶数段入力軸14の第2クラッチ(CL2)26のピストン室に接続される。
【0063】
第1あるいは第2クラッチ24,26は油圧を供給されるとき、第1あるいは第2副入力軸20,22を奇数段入力軸16あるいは偶数段入力軸14に締結(係合)する一方、油圧を排出されるとき、第1あるいは第2副入力軸20,22と奇数段入力軸16あるいは偶数段入力軸14の接続(締結)を遮断する。
【0064】
図示のツインクラッチ型の変速機Tにあっては、次の変速段に対応するギヤ締結機構(60から66のいずれか)に油圧を供給して第1、第2副入力軸20,22のいずれかに締結(係合)しておき(この動作を「プリシフト」という)、次いで現在の変速段に相応する側の第1、第2クラッチ24,26の一方から油圧を排出させつつ、第1、第2副入力軸20,22のうちの次の変速段に対応する副入力軸に相応する側の第1、第2クラッチ24,26の他方に油圧を供給して第1入力軸14あるいは第2入力軸16に締結(係合)する(この動作を「CtoC」(クラッチ・ツー・クラッチ)変速という)ことで変速される。変速は基本的には奇数段(1,3,5,7速)と偶数段(2,4,6,8速)の間で交互に行われる。
【0065】
尚、油圧供給装置にあっては、上記以外にも複数個のリニアソレノイドバルブなどを備え、それらの励磁・消磁を介してトルクコンバータ12のロックアップクラッチ12dの締結・解放動作も制御されるが、この発明と直接の関連を有しないので、その説明は省略する。
【0066】
図1の説明に戻ると、変速機Tはシフトコントローラ84を備える。シフトコントローラ84はマイクロコンピュータを備えた電子制御ユニット(ECU)として構成される。また、エンジン10の動作を制御するために同様にマイクロコンピュータを備えた電子制御ユニットから構成されるエンジンコントローラ86が設けられる。
【0067】
シフトコントローラ84はエンジンコントローラ86と通信自在に構成され、エンジンコントローラ86からエンジン回転数、スロットル開度、AP開度などの情報を取得する。
【0068】
また4個のギヤ締結機構60,62,64,66のシフトフォークに固定されるフォークシャフト(機構60では60f)には磁性体が取り付けられると共に、その付近にはストロークセンサ88がそれぞれ配置され、シフトフォーク、換言すればスリーブ60g,62g,64g,66gの軸方向のストローク(移動)を示す出力を通じてギヤ締結機構のスリーブ60g,62g,64g,66gの挙動の変化、具体的にはスリーブ60g,62g,64g,66gがギヤイン位置からニュートラル位置に向けて移動している移動状態を示す出力を生じる。
【0069】
より具体的には、ストロークセンサ88はスリーブ60g,62g,64g,66gが、図4(g)に示すギヤイン位置から図4(a)に示すニュートラル位置に向けてギヤ抜けしつつあるかを示す出力を生じる。同図でいえば図4(g)(f)ではスリーブ60gが1速ドライブギヤ32のドグ歯321と係合しているため、ギヤ抜けを生じない。
【0070】
他方、図4(e)あるいは(d)以降ではスリーブ60gとドグ歯321の係合が外れてギヤ抜けを生じる。その結果、第1クラッチ24に油圧が供給されてエンジン10の駆動力が奇数段入力軸16に入力されるとき、第1副入力軸20と奇数段入力軸16の間(ギヤ締結機構の入出力回転数の間)に差回転が生じてエンジン10の駆動力が零となる駆動力抜けが生じる。
【0071】
さらに、偶数段入力軸14の付近には第1の回転数センサ90が配置され、変速機Tの入力回転数NMを示す信号を出力すると共に、第1、第2副入力軸20,22にはそれぞれ第2、第3の回転数センサ92,94が配置され、それらの回転数を示す信号を出力する。また出力軸28には第4の回転数センサ96が配置され、出力軸28の回転数、即ち、変速機Tの出力回転数NCを示す信号を出力する。ドライブシャフト74の付近には第5の回転数センサ100が配置され、車速Vを示す信号を出力する。
【0072】
また油圧供給装置80の第1、第2クラッチ24,26に接続される油路には第1、第2の圧力センサ102,104が配置され、第1、第2クラッチ24,26に供給される作動油ATFの圧力(油圧)を示す信号を出力すると共に、リザーバ80aの付近には温度センサ106が配置され、油温(作動油ATFの温度)TATFを示す信号を出力する。
【0073】
また車両1の運転席に配置されたレンジセレクタ(図示せず)の付近にはレンジセレクタポジションセンサ110が配置され、レンジセレクタ上に運転者から見て上から順にP,R,N,Dと示されたレンジのうち運転者に操作(選択)されたレンジを示す信号を出力する。
【0074】
これらセンサの出力は全てシフトコントローラ84に入力される。シフトコントローラ84は、それらセンサの出力とエンジンコントローラ86と通信して得られる情報に基づき、第1から第6リニアソレノイドバルブ80fから80kを励磁・消磁を介して第1、第2クラッチ24,26とギヤ締結機構60から66の動作が制御することで変速機Tの動作を制御する。
【0075】
シフトコントローラ84は油圧(シフト力)供給制御手段として機能し、車両1の走行速度(車速)Vとアクセルペダルの開度(アクセル開度)APで規定される走行状態に応じて図5に示す変速マップに従って4個のギヤ締結機構60,62,64,66のうちの1−3速ギヤ締結機構60と5−7速ギヤ締結機構62のいずれかと第1クラッチ24で構成される第1入力軸(奇数段入力軸16と第1副入力軸20)車両1の走行状態に応じて第1入力軸(奇数段入力軸16と第1副入力軸20)と4個(複数個)のギヤ締結機構60,62,64,66のうちのいずれかの機構(より具体的には1−3速ギヤ締結機構60と5−7速ギヤ締結機構62のいずれか)と第1クラッチ24から出力軸28に至る第1出力経路と、第2入力軸(偶数段入力軸14と第2副入力軸22)と4個のギヤ締結機構のうちの別の機構(より具体的には2−4速ギヤ締結機構64と6−8速ギヤ締結機構66のいずれか)と第2クラッチ26から出力軸28に至る第2出力経路とのうちの一方に油圧を供給して一方を構成するギヤ締結機構60,62,64,66のスリーブ60g,62g,64g,66gのいずれかによって締結された1速ドライブギヤ32から7速−8速ドリブンギヤ54のうちの相応するギヤからなる変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させるように制御する。
【0076】
より具体的には、シフトコントローラ84は、ギヤ締結機構60,62,64,66のスリーブ60g,62g,64g,66gの意図しない挙動の変化、具体的にはスリーブのギヤイン位置からニュートラル位置に向けての移動、より具体的にはスリーブのギヤ抜けを検知していち早く対応して乗員に違和感を与えることなく走行させるように変速機Tの動作を制御する。
【0077】
図5に示す変速マップにおいては車両1の走行速度(車速)Vとアクセル開度APが同図の6種の境界線を超えた時点でその変速段へのプリシフトが実行され、次いで相応するクラッチに油圧が供給されるCtoC変速がなされることで、変速段が確立されて変速される。尚、図5にはアップシフトのみ図示するが、ダウンシフトも同様である。
【0078】
図6はこの発明の第1実施例に係る装置の動作、即ち、シフトコントローラ84のその動作を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは所定時間、例えば10msecごとに実行される。図6フロー・チャート(および以降のフロー・チャート)で「S」は処理ステップを示す。
【0079】
以下説明すると、S10においてストロークセンサ88の出力から4個のギヤ締結機構60,62,64,66のスリーブ60g,62g,64g,66gのうちの、現在締結されている変速段(以下「現段」という)を確立するスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上か否か、換言すればスリーブの挙動が変化しているか、あるいはスリーブがギヤイン位置からニュートラル位置に向けて移動しているか否か判断(判定)する。
【0080】
ギヤ抜け判定値は、図4に示す如く、当該スリーブ(例えばスリーブ60g)がギヤイン位置からニュートラル位置に向けてストローク(移動)するとき、ギヤ抜けを生じるストロークに相当する値を示し、具体的には入力回転数NMと出力回転数NCの間に差回転が生じるか/生じないかの境目となるストローク(図4(e)の値)とスリーブがドグ歯と部分的にも係合するストローク(図4(f)の値)の間に設定される。
【0081】
尚、S10の処理においては、ストロークセンサ88の出力に代え、第2回転数センサ92(あるいは第3回転数センサ94)と第4回転数センサ96の出力からギヤ締結機構60,62,64,66の入力回転数NMと出力回転数NCの差回転を直接算出し、算出された差回転を適宜設定されるギヤ抜け判定回転数と比較することでギヤ締結機構がギヤ抜けしつつあるか否か判定するようにしても良い。
【0082】
ただし、ストロークセンサ88から検出されたストロークを上記のように差回転を生じる位置よりもギヤイン側に設定されたギヤ抜け判定値と比較してギヤ抜けを判定(検知)することで差回転が生じる恐れがあるか否か、即ち、現段で走行すべきか否かをいち早く判定することができる。
【0083】
S10で否定されて現在締結されているギヤ締結機構のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上ではなく(ギヤ抜け判定値未満で)、ギヤ抜けが生じていないと判断されるときはS12に進み、通常走行とする。即ち、4個のギヤ締結機構60,62,64,66のうちの現在締結されているギヤ締結機構のスリーブにギヤ抜けが生じていないので、締結されているギヤ締結機構のスリーブで確立される変速段(現段)での走行を継続する。
【0084】
他方、S10で肯定されるときは現在締結されているギヤ締結機構のスリーブにギヤ抜けが生じて変速機Tはエンジン10の駆動力を伝達しない状態にあることを意味するので、S14に進み、目標変速段(以下「次段」という)を算出し、S16に進み、その次段ヘのプリシフトを実行する。
【0085】
前記した如く、変速機Tにおいて変速は基本的には奇数段(1,3,5,7速)と偶数段(2,4,6,8速)の間で交互に行われることから、S14では現段が奇数段であれば目標段(次段)は1速シフトアップ/ダウンされる偶数段、あるいは現段が偶数段であれば目標段(次段)は1速シフトアップ/ダウンされる奇数段が算出され、S16において算出された次段に対応するギヤ締結機構60,62,64,66のいずれかのピストンのピストン室に目標シフト荷重に従って算出される油圧を供給してスリーブ60g,62g,64g,66gを第1、第2副入力軸20,22のいずれかに締結(係合)するプリシフトが実行される。
【0086】
図7は目標シフト荷重を説明する説明図である。
【0087】
目標シフト荷重はギヤ締結機構のピストンをニュートラル位置からギヤイン位置に移動(シフト)させるべき油圧(シフト力)を意味するが、目標シフト荷重は図示の如く3種に区分され、(図4(a)(b)に示す)空走あるいは無効ストローク詰めに相当する比較的小さい初期値と、(図4(c)から(e)に示す)それに続いて対向するドライブギヤのドグ歯と回転数を同期させるのに必要とされる中期値と、(図4(f)(g)に示す)続いてそのドグ歯を掻き分けてギヤイン位置に到達するのに必要な終期値とからなる。尚、加算分については後述する。
【0088】
次いでS18に進み、次段に対応する第1、第2副入力軸20,22のうちの相応する側の第1、第2クラッチ24,26のいずれかに油圧を供給して第1入力軸14あるいは第2入力軸16に締結するCtoC(クラッチ・ツー・クラッチ)変速を行う。
【0089】
次いでS20に進み、現段シフト抜きを実行する。これは現段を確立していたギヤ締結機構において対向する側のピストンのピストン室に油圧を供給してスリーブをニュートラル位置に移動、例えば現段が1−3速ギヤ締結機構60で1速であったとすると、対向する3速のピストン室に油圧を供給して1速ピストンに接続されるスリーブをニュートラル位置に移動させる処理を意味する。
【0090】
次いでS22に進み、通常走行、即ち、4個のギヤ締結機構60,62,64,66のうちの締結されているギヤ締結機構で確立される変速段(次段)での走行を継続する。
【0091】
この実施例に係る自動変速機の制御装置にあっては一方を構成するギヤ締結機構のスリーブ(例えばギヤ締結機構60のスリーブ60g)がギヤイン位置からニュートラル位置に向けて移動、より具体的にはギヤ抜けしているか否か判定すると共に、移動していると判定されるとき、第1出力経路と第2出力経路の他方を構成するギヤ締結機構(例えばギヤ締結機構64)に油圧を供給してスリーブ(例えばスリーブ64g)をギヤイン位置に移動させるプリシフトを実行する如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備時間を早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0092】
図8図6の処理を示すタイム・チャートである。
【0093】
同図上部に示す従来手法は特許文献2記載の技術から類推される処理であり、スリーブの検出位置がギヤとの噛合い点を超えてギヤ抜けしていると判定されるときはスリーブを一旦ニュートラル位置に移動させてから改めてギヤイン位置に移動させるため、ギヤ抜けが生じてエンジン10の駆動力が一時的に零になることがあった。
【0094】
一方、この発明の実施例においては、スリーブがギヤイン位置からニュートラル位置に向けて移動(ギヤ抜け)していると判定されるとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してスリーブをギヤイン位置に向けて移動させるプリシフトを実行するように構成したので、同図下部に示す如く、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を時間(t1−t2)だけ早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0095】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【実施例2】
【0096】
図9はこの発明の第2実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0097】
以下説明すると、第1実施例の処理と同様、S100において現段を確立するギヤ締結機構のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上か否か判断し、否定されるときはS102に進み、現段での走行を継続する。
【0098】
一方、肯定されるときはS104に進み、目標変速段(次段)を算出する。次いでS106に進み、第2回転数センサ92(あるいは第3回転数センサ94)と第4回転数センサ96の出力から入力回転数NMと出力回転数NCの差回転を算出し、算出された差回転が所定値以上か否か判断する。
【0099】
所定値は、ストロークでいえば例えば図4(e)などに相当する、差回転が生じる程度の値に設定される。尚、第1副入力軸20と奇数段入力軸16、あるいは第2副入力軸22と偶数段入力軸14には4種の変速段(変速比)が確立されることから、差回転を算出する際には現在締結されている変速段(変速比)を考慮する必要がある。
【0100】
S106で肯定されるときは現段を確立するギヤ締結機構のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上であると共に、差回転が生じてエンジン10の駆動力の伝達が困難な状態にあることからS108に進み、次段へのプリシフトを早めるべく、次段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を決定するシフト荷重として図7に示す加算分を使用して大きめの値に算出する。
【0101】
一方、S106で否定されるときはそのような状態にないことからS110に進み、次段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を決定するシフト荷重として加算分を使用しない(第1実施例と同様の)小さめの値に算出する。次いでS112からS118に進み、第1実施例のS16からS22までの処理と同様の処理を行う。
【0102】
図10は加算分の特性を示す説明図である。
【0103】
S108においては目標シフト荷重を算出するとき、図7に示す如く、初期値と中期値と終期値の全てにおいて加算分を追加して目標シフト荷重を増加する。図10に示す如く、加算分は差回転が増加するほど増大するように設定される。
【0104】
図11図9フロー・チャートの処理を説明するタイム・チャートである。
【0105】
同図を参照して説明すると、第2実施例にあっては、算出された差回転が所定値以上のときは、図11の「次段スリーブストローク」に「加算あり」と示す如く、次段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を大きめな値に算出する一方、算出された差回転が所定値未満のときは、図11に「加算なし」と示すように次段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を「加算あり」と示す場合に比して小さめな値に算出するように構成した。尚、図11(および後述する図17図20)において現段側を実線、次段側を破線で示す。
【0106】
第2実施例においては上記のように構成したので、第1実施例と同様、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されたとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行することで、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0107】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0108】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、入力回転数NMと出力回転数NCの間の差回転が所定値以上か否か判定し、それに基づいて一方または他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を変化させる、より具体的には差回転が所定値以上と判定されるとき、他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を、差回転が所定値以上と判定されないときに比して増加させる如く構成したので、適切な油圧の量を供給することができる。換言すれば不要に過大な油圧を供給して耐久性を低下させることがない。また、シフト力が油圧の場合、高い油圧でインギヤさせることで早期にインギヤさせることができる。
【実施例3】
【0109】
図12はこの発明の第3実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0110】
第3実施例は第2実施例の変形例であり、第2実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第3実施例にあっては、S206で算出された差回転が所定値以上と判断されるときは差回転が生じてエンジン10の駆動力の伝達が困難な状態にあることからS208に進み、現段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を決定するギヤ締結荷重を零に算出する一方、否定されるときはそのような状態にないことからS210に進み、現段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を決定する目標シフト荷重として図7に示す加算分を使用して大きめの値に算出する。
【0111】
即ち、1速ドライブギヤ32などのギヤの歯先にバリや潰れが生じて最終的にインギヤ不能となった場合、その変速段をパスせざるを得なくなるため、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブのギヤイン位置からの移動状態に応じて一方を構成するギヤ締結機構のピストンのピストン室に供給する油圧の量を変化させるようにした。尚、残余のS200からS204およびS212からS218の処理は第2実施例と異ならない。
【0112】
第3実施例においては上記のように構成したので、第2実施例と同様、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されたとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行することで、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0113】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0114】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、入力回転数NMと出力回転数NCの間の差回転が所定値以上か否か判定し、それに基づいて一方または他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を変化させる、より具体的には差回転が所定値以上と判定されるとき、一方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を、差回転が所定値以上と判定されないときに比して減少させる如く構成したので、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を可能な限り抑制する、あるいは他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速の準備を一層早める、より具体的には前者を実現することができる。
【0115】
さらに、一方を構成するギヤ締結機構に適切なシフト力を供給する、換言すれば不要に過大なシフト力を供給して耐久性を低下させることがないと共に、油圧が低圧状態であってもスリーブの移動に要する時間が長期化することがない点でも耐久性を向上させることができる。
【実施例4】
【0116】
図13はこの発明の第4実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0117】
第4実施例は第1実施例の変形例であり、第1実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第4実施例にあっては、S300において現段を確立するギヤ締結機構のピストンのストロークがギヤ抜け判定値以上か否か判断し、否定されるときはS302に進み、現段での走行を継続する一方、肯定されるときはS304に進み、所定時間前からのアクセル開度APの変化(要求駆動力を示す)を検出すると共に、検出された値が既定値以上か否か判断する。
【0118】
アクセル開度APの変化は前回値との差分を求めることで算出する。「所定時間」は例えば1.0secである。尚、この値は図5に示す変速マップによる変速判断に使用されるアクセル開度APの変化値のしきい値と異ならせても良い。即ち、図5に示す変速マップによる変速判断ではアクセル開度APそれ自体に加え、アクセル開度APのある時間での変化から変速が判断される場合があるが、そのときのアクセル開度APおよび/または時間のしきい値を相違させても良い。
【0119】
S304で肯定されるときはS306に進み、目標変速段(次段)としてダウン(DN)側の値、例えば現段が3速であれば2速を算出(決定)する一方、否定されるときはS308に進み、目標変速段としてアップ(UP)側の値、例えば現段が3速であれば4速を算出(決定)する。
【0120】
即ち、乗員による要求駆動力を示す、車両1のアクセル開度APの所定時間前からの経時変化を検出すると共に、検出されたアクセル開度変化に基づいてプリシフトすべき他方を構成するギヤ締結機構を選択、より具体的には検出されたアクセル開度APの変化に基づいて目標変速段を算出し、それに基づいてプリシフトすべき他方を構成するギヤ締結機構を選択するようにした。尚、残余のS300からS302およびS310からS316の処理は第1実施例と異ならない。
【0121】
第4実施例においては上記のように構成したので、従前の実施例と同様、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されたとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行することで、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0122】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0123】
また、アクセル開度APの経時変化を検出し、検出されたアクセル開度APの経時変化に基づいて目標変速段を算出し、それに基づいてプリシフトすべき他方を構成するギヤ締結機構を選択する如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結される変速段を、運転者の意思に沿って駆動力が伝達されるように、適正に選択することができる。
【0124】
尚、第4実施例の所定時間前からのアクセル開度APの変化から目標変速段を算出(決定)する構成は、第1から第3実施例など他の実施例に組み合わせても良い。
【実施例5】
【0125】
図14はこの発明の第5実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0126】
第5実施例は第2実施例の変形例であり、第2実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第5実施例にあっては、S400において現段を確立するギヤ締結機構のピストンのストロークがギヤ抜け判定値以上か否か判断し、否定されるときはS402に進み、現段での走行を継続する一方、肯定されるときはS404に進み、現段を確立するギヤ締結機構のピストンのストロークの速度、即ち、ギヤ抜け速度が所定速度以上か否か判断する。
【0127】
S404においては、ストロークセンサ88の出力から検出される、現在締結されている変速段(現段)を確立するスリーブのストローク速度を所定速度と比較することで判断(判定)する。所定速度は図4(d)などの完全に差回転が生じる状態を検出するに足る値に設定される。
【0128】
S404で肯定されるときは現段を確立するギヤ締結機構のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上であると共に、差回転が生じてエンジン10の駆動力の伝達が困難な状態にあることを意味するので、S406に進み、次段を確立するギヤ締結機構のピストン室に供給すべき油圧を決定する目標シフト荷重として図7に示す加算分を使用して大きめの値に算出する一方、否定されるときはS408に進み、目標シフト荷重として加算分を使用しない(第1実施例と同様の)小さめの値に算出する。
【0129】
即ち、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブのギヤイン位置からの移動状態に応じて他方を構成するギヤ締結機構のピストンのピストン室に供給する油圧の量を変化させるようにした。尚、残余のS400からS402およびS410からS416の処理は第2実施例と異ならない。
【0130】
第5実施例においては上記のように構成したので、従前の実施例と同様、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されたとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行することで、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0131】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0132】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、そのスリーブの移動速度が所定速度以上か否か判定し、判定した結果に基づいて一方または他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を変化、より具体的には一方を構成するギヤ締結機構のスリーブの移動速度が所定速度以上と判定されるとき、他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を、差回転が所定値以上と判定されないときに比して増加させる構成したので、上記した効果に加え、スリーブの移動速度から判定することで、スリーブの抜け量を予測することが可能となり、より早期から対応することができる。尚、スリーブの移動速度に代え、移動加速度を用いても良い。
【0133】
尚、第5実施例においては現在締結されている変速段を確立するスリーブのストローク速度を所定速度と比較して次段を確立するギヤ締結機構の目標シフト荷重を算出するようにしたが、それに代え、現段を確立するギヤ締結機構への荷重を算出するようにしても良い。
【実施例6】
【0134】
図15はこの発明の第6実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0135】
以下説明すると、S500において現段を確立するギヤ締結機構のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上か否か判断し、否定されるときはS502に進み、現段での走行を継続する一方、肯定されるときはS504に進み、抜け量が規定値以上か否か判断する。
【0136】
S504の判断はS500で得られたスリーブのストロークを規定値と比較することで行う。規定値は例えば図4(e)に相当する、差回転が生じる程度のストローク値を意味する。尚、S504は現段を確立するギヤ締結機構のスリーブに差回転が生じているか否か判定する処理であるので、ストロークに代え、S106と同様、差回転を算出して所定値と比較することで判断しても良い。
【0137】
S504で否定されるときは現段を確立するギヤ締結機構のスリーブがギヤ抜け判定値以上移動しているが、未だ差回転が生じていない状態にあると判断されることからS506に進み、現段を確立するギヤ締結機構のピストンのピストン室に油圧を供給して再駆動する。
【0138】
一方、S504で肯定されるときは現段を確立するギヤ締結機構のスリーブは差回転が生じる状態にあると判断されることからS508に進み、次段(目標段)を確立するギヤ締結機構のピストン室に油圧を供給して次段ヘのプリシフトを実行する。次いでS510からS514に進み、第1実施例のS18からS22までの処理と同様の処理を行う。
【0139】
第6実施例においては上記のように構成したので、従前の実施例と同様、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されたとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行することで、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0140】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0141】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していると判定されるとき、そのスリーブがギヤイン位置からニュートラル位置に向けて所定値より大きく設定される規定値以上移動しているか否か判定し、判定した結果に基づいて一方または他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を変化、より具体的には規定値以上移動していると判定されるとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行する反面、規定値以上移動していると判定されないとき、一方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給して一方を構成するギヤ締結機構のスリーブをギヤイン位置に向けて復帰させる如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を可能な限り抑制する、あるいは他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速の準備を一層早める、より具体的には前者を実現することができる。
【実施例7】
【0142】
図16はこの発明の第7実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0143】
第7実施例は第6実施例の変形例であり、第6実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、S600において現段を確立するギヤ締結機構のピストンのスリーブがギヤ抜け判定値以上か否か判断し、否定されるときはS602に進み、現段での走行を継続する一方、肯定されるときはS604に進み、抜け量が前記した規定値以上か否か判断する。尚、規定値は図15フロー・チャートのS504と同じ値とするが、相違させても良い。
【0144】
S604で否定されるときは同様に現段を確立するギヤ締結機構のスリーブがギヤ抜け判定値以上移動しているが、未だ差回転が生じていない状態にあると判断されることからS606に進み、現段を確立するギヤ締結機構のピストンのピストン室に油圧を供給して再駆動すると共に、次段(目標段)を確立するギヤ締結機構のピストン室に油圧を供給して次段ヘのプリシフトを実行する。
【0145】
他方、S604で肯定されるときはS608に進み、次段(目標段)を確立するギヤ締結機構のピストン室に油圧を供給して次段ヘのプリシフトを実行する。S610からS614に進み、第1実施例のS18からS22までの処理と同様の処理を行う。
【0146】
図17は第7実施例の処理を説明するタイム・チャートである。
【0147】
同図(a)に示す如く、時刻t1において現段を構成するギヤ締結機構のスリーブの抜け量が大きいと判断されるときは入力回転数NMと出力回転数NCの差回転も増加することから、次段へのプリシフトのみ行う。
【0148】
一方、同図(b)に示す如く、時刻t1において現段を構成するギヤ締結機構のスリーブの抜け量が小さいと判断されるときは、現段を確立するギヤ締結機構のピストン室に油圧を供給して現段のスリーブを再駆動すると共に、平行して次段を確立するギヤ締結機構のピストン室に油圧を供給して次段へのプリシフトを行い、現段を構成するギヤ締結機構のスリーブをギヤイン位置に復帰を可能とする。
【0149】
第7実施例においては上記のように構成したので、従前の実施例と同様、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されたとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行することで、他方を構成するギヤ締結機構を介しての変速の準備を早めることができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【0150】
またプリシフトを実行した後、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して動作させる如く構成したので、他方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介してエンジン10の駆動力を変速して出力させることができ、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0151】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していると判定されるとき、そのスリーブがギヤイン位置からニュートラル位置に向けて所定値より大きく設定される規定値以上移動しているか否か判定し、判定した結果に基づいて一方または他方を構成するギヤ締結機構に供給する油圧の量を変化、より具体的には規定値以上移動していると判定されるとき、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行する反面、規定値以上移動していると判定されないとき、一方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してそのスリーブをギヤイン位置に向けて復帰させると共に、他方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給してプリシフトを実行する如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を可能な限り抑制することができる。
【0152】
またクラッチのピストン室が空洞になるのを阻止できることで完全に締結させる際の油圧の立ち上がり特性を向上させることができ、従って他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速の応答性を一層向上させることができる。
【0153】
さらに、図17に示す如く、時刻t1において第1、第2クラッチ24,26のうち現段に相応する側のクラッチへの供給圧をエンジン10から入力される駆動力(トルク)を伝達できる程度まで低下させて油圧の不要な増加を抑制する一方、次段側のクラッチに少量の油圧を供給し、CtoC変速で次段に切り替えられるときの応答性を上げることができる。
【実施例8】
【0154】
図18はこの発明の第8実施例に係る装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0155】
第8実施例は予測的な手法を採用した実施例であり、以下説明すると、S700において現段を確立するギヤ締結機構のピストンのストロークがギヤ抜け判定値以上か否か判断し、否定されるときはS702に進み、現段での走行を継続する一方、肯定されるときはS704に進み、予測プリシフトが完了したか否か判断する。
【0156】
図19は第8実施例で使用される変速マップの特性を示す説明図である。
【0157】
第8実施例にあっては図示の如く、通常の変速特性に加えてプリシフト特性が設定される。この特性を「予測プリシフト」特性という。第1から第7実施例において「プリシフト」は車速Vとアクセル開度APが同図に実線で示す6種の境界線を超えた時点でその変速段へのプリシフトが実行されるが、第8実施例の場合、図19に示す特性の場合、車速Vとアクセル開度APがそれに先立つ破線で示す境界線を超えた時点でプリシフトが実行され、次いで実線で示す境界線を越えた時点でCtoC変速がなされるように構成される。即ち、プリシフトが従前の実施例に比して早期に実行されることから、それを「予測プリシフト」というようにした。尚、図19にはアップシフトのみ図示される点は図5の場合と同様である。
【0158】
図18フロー・チャートの説明に戻ると、S704で否定されるときはS706に進み、抜け量が前記した規定値以上か否か判断する。尚、規定値は図15フロー・チャートのS504と同じ値とするが、相違させても良いことは第7実施例と異ならない。
【0159】
S706で否定されるときはS708に進み、現段を確立するギヤ締結機構のピストンのピストン室に油圧を供給して再駆動する一方、S706で肯定されるときはS710に進み、次段(目標段)を確立するギヤ締結機構のピストン室に油圧を供給して次段ヘのプリシフトを実行する。次いでS712からS716に進み、第1実施例のS18からS22までの処理と同様の処理を行う。
【0160】
図20は第8実施例の処理を説明するタイム・チャートである。
【0161】
図18フロー・チャートのS700において現段のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値以上と判断されると共に、S704で予測プリシフトが完了したと判断されるときは、図20(a)に示すように、時刻t1においてCtoC変速を開始する。
【0162】
即ち、時刻t1において第1クラッチ24と第2クラッチ26のうち、一方を構成するクラッチ(現段を確立するギヤ締結機構を構成する側のクラッチ)から所定量(少量)油圧を排出させることで変速を開始する。
【0163】
また、同図(b)に示すように、現段のスリーブの抜け量が大きいが、予測プリシフトが完了したと判断されないときは、次段へのプリシフトを時刻t1で開始し、プリシフトが完了する時刻t2でCtoC変速を開始する。
【0164】
また、同図(c)に示すように、現段のスリーブの抜け量が小さく、予測プリシフトが完了したと判断されないときは、時刻t1で現段への再駆動と次段のプリシフトを平行して行う。
【0165】
第8実施例においては、上記の如く、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されると共に、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、第1クラッチ24と第2クラッチ26のうちの他方を構成するクラッチに油圧を供給して締結しつつ、一方を構成するクラッチから油圧を排出して解放する如く構成したので、従前の実施例と同様、他方を構成するギヤ締結機構を介して次段に変速することができ、検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができると共に、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けが生じるのを抑制することができる。
【0166】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していず、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了していないと判定されるとき、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが規定値以上移動しているか否か判定し、そのスリーブが規定値以上移動していると判定されるとき、他方を構成するクラッチに油圧を供給して締結しつつ、一方を構成するクラッチから油圧を排出して解放する如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブの移動の程度、換言すればギヤ抜けの程度に応じて対応を異ならせることで、予測できない状況にあるときでも、他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速を一層早めることができる。
【0167】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが規定値以上移動していないと判定されるとき、一方を構成するギヤ締結機構に油圧を供給して一方を構成するギヤ締結機構のスリーブをインギヤ位置に向けて復帰させる如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を確実に抑制することができる。
【0168】
また、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、一方を構成するクラッチから所定量油圧を排出させる如く構成したので、上記した効果に加え、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を一層確実に抑制することができる。
【0169】
即ち、図20(a)(b)に示す如く、現段のスリーブのストロークがギヤ抜け判定値(所定値)以上と判断されるとき、時刻t1において第1クラッチ24と第2クラッチ26のうち、一方を構成するクラッチ(現段を確立するギヤ締結機構を構成する側のクラッチ)から所定量(少量)油圧を排出させることで変速を開始するようにしたので、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を一層確実に抑制することができる。
【0170】
さらに、図20(c)に示す如く、第7実施例と同様、現段側のクラッチへの供給油圧をエンジントルク相当値まで低下させて油圧の不要な増加を抑制する一方、次段(他方)側のクラッチへの供給油圧を少し上昇させるようにしたので、次段に切り替えられるときの変速応答性を向上させることができる。
【0171】
上記した如く、この発明の第8実施例にあっては、車両1に搭載される原動機(エンジン)10に第1、第2クラッチ24,26を介して接続される第1、第2入力要素(奇数段入力軸16と第1副入力軸20からなる第1入力要素、偶数段入力軸14と第2副入力軸22からなる第2入力要素)と、前記第1、第2入力要素と平行に配置される少なくとも1個の出力要素(出力軸28)と、前記第1、第2入力要素と前記出力要素との間に配置される複数組の変速段ギヤ(1速ドライブギヤ32から7速−8速ドリブンギヤ54)と、油圧(シフト力)を供給されるとニュートラル位置からギヤイン位置に移動して前記複数組をそれぞれ構成する変速段ギヤの一方を前記第1、第2入力要素の一方または前記出力要素に締結可能なスリーブ60g,62g,64g,66gを有する複数個のギヤ締結機構60,62,64,66、前記車両の走行状態に応じて前記第1入力要素から前記複数個のギヤ締結機構のうちの第1ギヤ締結機構(ギヤ締結機構60,62のいずれか)と前記第1クラッチ24を介して前記出力要素に至る第1出力経路と前記第2入力要素から前記複数個のギヤ締結機構のうちの第2ギヤ締結機構(ギヤ締結機構64,66のいずれか)と前記第2クラッチ26を介して前記出力要素に至る第2出力経路をそれぞれ構成する前記第1、第2ギヤ締結機構のうちの一方への油圧(シフト力)の供給を制御して前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブによって締結された変速段ギヤを介して前記原動機の駆動力を変速して出力させる油圧(シフト力)供給制御手段(シフトコントローラ84)とを備えた自動変速機の制御装置において、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブ(例えばギヤ締結機構60のスリーブ60g)が前記インギヤ位置から前記ニュートラル位置に向けて移動しているか否か判定するスリーブ位置判定手段(シフトコントローラ84,S700)と、前記第1出力経路と第2出力経路の他方を構成するギヤ締結機構(例えばギヤ締結機構64)に油圧(シフト力)を供給して前記他方を構成するギヤ締結機構のスリーブ(例えばスリーブ64g)を前記インギヤ位置に向けて移動させるプリシフトが完了したか否か判定するプリシフト完了判定手段(シフトコントローラ84,S704)とを備え、前記油圧(シフト力)供給制御手段は、前記スリーブ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されると共に、前記プリシフト完了判定手段によって前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記他方を構成するクラッチを締結、より具体的にはクラッチに油圧を供給して締結しつつ、前記一方を構成するクラッチを解放、より具体的にはクラッチから油圧を排出して解放する(シフトコントローラ84,S712からS714)如く構成したので、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブがギヤイン位置から移動していることが検知されると共に、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了したと判定されるとき、他方を構成するクラッチに油圧を供給して締結しつつ、一方を構成するクラッチから油圧を排出して解放することで、他方を構成するギヤ締結機構を介して次段に変速することができて検出から変速完了までの時間を早めることができ、よって乗員に違和感を与えることなく走行させることができると共に、エンジン10の駆動力が一時的に零になる駆動力抜けが生じるのを抑制することができる。
【0172】
また、前記油圧(シフト力)供給制御手段は、前記スリーブ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが所定値以上移動していると判定されると共に、前記プリシフト完了判定手段によって前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了していないと判定されるとき、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記インギヤ位置から前記ニュートラル位置に向けて前記所定値より大きく設定される規定値以上移動しているか否か判定し(シフトコントローラ84,S700,S704,S706)、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記規定値以上移動していると判定されるとき、前記他方を構成するクラッチを締結、より具体的にはクラッチに油圧を供給して締結しつつ、前記一方を構成するクラッチを解放、より具体的にはクラッチから油圧を排出して解放する(シフトコントローラ84,S710からS716)如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブの移動の程度、換言すればギヤ抜けの程度に応じて対応を異ならせることで、予測できない状況にあるときでも、他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速を一層早めることができる。
【0173】
また、前記油圧供給制御手段は、前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが前記規定値以上移動していないと判定されるとき、前記一方を構成するギヤ締結機構に油圧(シフト力)を供給して前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブを前記インギヤ位置に向けて復帰させる(シフトコントローラ84,S700,S704,S706,S708,S702)如く構成したので、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を確実に抑制することができる。
【0174】
また、前記油圧供給制御手段は、前記スリーブ位置判定手段によって前記一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動していると判定されるとき、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記一方を構成するクラッチの締結力を所定値低下、より具体的にはクラッチから所定量油圧を排出させる(シフトコントローラ84,S700,S712、図20(a)(b))如く構成したので、上記した効果に加え、上記した効果に加え、一方を構成するギヤ締結機構を介しての現在の変速段での駆動力抜けの発生を一層確実に抑制することができる。
【0175】
また、前記シフト力供給制御手段は、前記車両の走行状態を示す車速とアクセル開度とから設定される第1の特性に従って前記第1、第2ギヤ締結機構のうちの一方へのシフト力の供給を制御すると共に、前記車速とアクセル開度とから設定される第2の特性に従って前記第1、第2ギヤ締結機構のうちの他方へのシフト力の供給を制御する(シフトコントローラ84,S704)如く構成したので、上記した効果に加え、第2の特性を適宜設定することでプリシフトを早期に実行させることができ、よって検出から変速完了までの時間を一層早めることができる。
【0176】
また、前記第2の特性は、前記第1の特性に比して同一のアクセル開度に対して低車速でプリシフトが実行されるように設定される如く構成したので、上記した効果に加え、プリシフトを早期に実行させることができ、よって検出から変速完了までの時間を一層早めることができる。
【0177】
また、前記シフト力供給制御手段は、前記第2の特性に従って前記他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトを実行する如く構成したので、上記した効果に加え、プリシフトを早期に実行させることができ、よって検出から変速完了までの時間を一層早めることができる。
【0178】
また、前記油圧(シフト力)供給制御手段は、図17(b)と図20(c)の「クラッチ」に示す如く、前記第1クラッチと第2クラッチのうちの前記他方を構成するクラッチを、前記原動機の駆動力を伝達しない程度の締結力で締結させる如く構成したので、上記した効果に加え、クラッチのピストン室が空洞になるのを阻止できることで完全に締結させる際の油圧の立ち上がり特性を向上させることができ、従って他方を構成するギヤ締結機構を介しての次段への変速の応答性を一層向上させることができる。
【0179】
また、前記スリーブ位置判定手段は、前記スリーブの変位または前記第1、第2入力要素の一方と前記出力要素の回転数の差に基づいて前記スリーブが移動しているか否か判定する如く構成したので、上記した効果に加え、スリーブの移動を精度良く判定することができる。
【0180】
尚、上記において油圧供給装置80を設け、ギヤ締結機構のスリーブを移動させるシフト力を油圧から構成したが、油圧に代え、電動など他の機械的な機構を設け、その出力をシフト力としてスリーブに供給するようにしても良い。
【0181】
また、上記においてギヤ締結機構の「スリーブ」はスリーブそれ自体に止まらず、それと等価なシフトフォーク、シフトフォークシャフト、あるいはシフトアクチュエータの全てを含む意味で使用する。
【0182】
また、上記において、ギヤ締結機構のスリーブのギヤ抜けをストロークまたは差回転それ自体から検知したが、それらの変化率を算出して適宜設定されるしきい値と比較するようにしても良い。
【0183】
また、ツインクラッチ型の自動変速機を説明したが、ツインクラッチ型の自動変速機は例示した構成に止まらず、どのような構成であっても良い。
【0184】
また、原動機としてエンジン(内燃機関)を例示したが、それに限られるものではなく、エンジンと電動機とのハイブリッドであっても良く、電動機であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0185】
この発明によれば、ツインクラッチ型の自動変速機において、変速段ギヤを入力軸などに締結可能な複数個のギヤ締結機構のうちのいずれかで構成される第1出力経路と別のギヤ締結機構で構成される第2出力経路の一方に油圧(シフト力)を供給して原動機の駆動力を変速して出力させると共に、一方を構成するギヤ締結機構のスリーブが移動しているか否か判定し(S700)、他方を構成するギヤ締結機構のプリシフトが完了しているか否か判定し(S704)、両者で肯定されるとき、他方を構成するクラッチに油圧を供給して締結しつつ、一方を構成するクラッチから油圧を排出して解放する(S712,S714)如く構成したので、ギヤ締結機構のスリーブの意図しない挙動の変化を検知していち早く対応することで、乗員に違和感を与えることなく走行させることができる。
【符号の説明】
【0186】
T 変速機(自動変速機)、1 車両、10 エンジン(原動機)、12 トルクコンバータ、12d ロックアップクラッチ、14 偶数段入力軸(入力要素)、16 奇数段入力軸(入力要素)、18 アイドル軸、20 第1副入力軸(入力要素)、22 第2副入力軸(入力要素)、24 第1クラッチ、26 第2クラッチ、28 出力軸(出力要素)、32,34,36,38,40,42,44,46 ドライブギヤ、48,50,52,54 ドリブンギヤ、56 RVSアイドルギヤ、58 RVSクラッチ、60,62,64,66 ギヤ締結機構、60g,62g,64g,66g スリーブ、76 車輪、80 油圧供給装置、80b 油圧ポンプ、80c レギュレータバルブ(調圧弁)、80f,80g,80h,80i,80j,80k 第1から第6リニアソレノイドバルブ、80m,80n,80o,80p 第1から第4サーボシフトバルブ、84 シフトコントローラ(油圧(シフト力)供給制御手段)、86 エンジンコントローラ
【国際調査報告】