特表-13161774IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 再表WO2013161774-リチウム二次電池 図000017
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月31日
【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20151201BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20151201BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20151201BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20151201BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20151201BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20151201BHJP
【FI】
   H01M10/0569
   H01M10/0567
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M10/052
   H01M4/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
【出願番号】特願2014-512564(P2014-512564)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-104161(P2012-104161)
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 有光
(72)【発明者】
【氏名】野口 健宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 英明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 牧子
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 信作
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ07
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL04
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL12
5H029AL16
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ18
5H050AA05
5H050AA07
5H050AA13
5H050BA17
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB05
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB12
5H050CB21
5H050CB22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA18
(57)【要約】
本実施形態は、正極活物質を含む正極と、非水電解溶媒を含む電解液と、を有するリチウム二次電池であって、前記正極活物質は、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作し、前記電解液は、所定の式で表されるフッ素含有リン酸エステルを含む非水電解溶媒と、所定の式で表される環状スルホン酸エステルとを含むことを特徴とするリチウム二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含む正極と、非水電解溶媒を含む電解液と、を有するリチウム二次電池であって、
前記正極活物質は、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作し、
前記電解液は、下記式(1)で表されるフッ素含有リン酸エステルを含む非水電解溶媒と、下記式(2)で表される環状スルホン酸エステルとを含むことを特徴とするリチウム二次電池。
【化1】
(式(1)において、R,R及びRは、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基であって、R,R及びRの少なくとも1つはフッ素含有アルキル基である。)。
【化2】
(式(2)において、AおよびBはそれぞれ独立にアルキレン基またはフルオロアルキレン基、XはC−C単結合または−OSO−基である。)。
【請求項2】
前記フッ素含有リン酸エステルの含有率が前記非水電解溶媒中5体積%以上95体積%以下である請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
,R及びRのうち少なくとも1つは、対応する無置換のアルキル基が有する水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されたフッ素含有アルキル基である請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記フッ素含有リン酸エステルが、下記式(3)で表される化合物である請求項1乃至3のいずれかに記載のリチウム二次電池。
【化3】
【請求項5】
前記環状スルホン酸エステルが、下記式(4)および/または下記式(5)で表される環状スルホン酸エステルを含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の二次電池。
【化4】
(式(4)中、R101及びR102は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。nは0、1、2、3、又は4である。)。
【化5】
(式(5)中、R201乃至R204は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。nは1、2、3、又は4である。また、nが2,3,又は4であるとき、n個存在するR203は互いに同一であっても異なっていてもよく、かつ、n個存在するR204は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)。
【請求項6】
前記環状スルホン酸エステルの電解液中の含有量は0.01〜10質量%である請求項1乃至5のいずれかに記載の二次電池。
【請求項7】
前記正極活物質が下記式(6)で表されるリチウムマンガン複合酸化物を含む請求項1乃至6のいずれかに記載のリチウム二次電池。
Li(MMn2−x−y)(O4−w) (6)
(式中、0.5≦x≦1.2、0≦y、x+y<2、0≦a≦1.2、0≦w≦1である。Mは、Co、Ni、Fe、Cr及びCuからなる群より選ばれる少なくとも一種である。Yは、Li、B、Na、Al、Mg、Ti、Si、K及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種である。Zは、F及びClからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)
【請求項8】
前記正極活物質が下記式(7)、(8)又は(9)で表されるリチウム金属複合酸化物を含む請求項1乃至7のいずれかに記載のリチウム二次電池。
LiMPO (7)
(式(7)中、MがCo及びNiのうちの少なくとも一種である。)
Li(M1−zMn)O (8)
(式(8)中、0.7≧z≧0.33、MがLi、Co及びNiのうちの少なくとも一種である。)
Li(Li1−x−zMn)O (9)
(式(9)中、0.3>x≧0.1、0.7≧z≧0.33、MはCo及びNiのうちの少なくとも一種である。)
【請求項9】
前記非水電解溶媒が、環状カーボネートおよび/または鎖状カーボネートを含む請求項1乃至8のいずれかに記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記非水電解溶媒が下記式(10)で表されるフッ素化鎖状エーテルを含む請求項1乃至9のいずれかに記載のリチウム二次電池。
2n+1−l−O−C2m+1−k (10)
(式(10)中、nは1,2,3,4,5又は6であり、mは1,2,3又は4であり、lは0から2n+1までのいずれかの整数であり、kは0から2m+1までのいずれかの整数であり、l及びkのうち少なくともいずれかは1以上の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、小型で大容量であることから、携帯型電子機器やパソコン等の用途に広く利用されている。しかし、近年の携帯型電子機器の急速な発達や電気自動車への利用が実現される中で、更なるエネルギー密度の向上が重要な技術的課題となっている。
【0003】
リチウム二次電池のエネルギー密度を高める方法としては幾つかの方法が考えられるが、その中でも電池の動作電位を上昇させることが有効である。従来のコバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムを正極活物質として用いたリチウム二次電池では、動作電位は何れも4V級(平均動作電位=3.6〜3.8V:対リチウム電位)である。これは、CoイオンもしくはMnイオンの酸化還元反応(Co3+←→Co4+もしくはMn3+←→Mn4+)によって発現電位が規定されるためである。
【0004】
これに対し、たとえばマンガン酸リチウムのMnをNiやCo、Fe、Cu、Crなどにより置換したスピネル化合物を活物質として用いることにより、5V級の動作電位を実現できることが知られている。具体的には、特許文献1のように、LiNi0.5Mn1.5等のスピネル化合物が4.5V以上の領域に電位プラトーを示すことが知られている。こうしたスピネル化合物において、Mnは4価の状態で存在し、Mn3+←→Mn4+の酸化還元に代わってNi2+←→Ni4+の酸化還元によって動作電位が規定される。
【0005】
LiNi0.5Mn1.5は容量が130mAh/g以上であり、平均動作電圧は金属リチウムに対して4.6V以上である。容量としてはLiCoOより小さいものの、電池のエネルギー密度はLiCoOよりも高い。更に、スピネル型リチウムマンガン酸化物は三次元のリチウム拡散経路を持ち、熱力学的安定性に優れている、合成が容易といった利点もある。このような理由からLiNi0.5Mn1.5は、将来の正極材料として有望である。
【0006】
リチウム二次電池に用いられる電解液としては、以下の文献に記載されるような例が提案されている。
【0007】
特許文献2には、リン酸エステルとスルホン構造を有する化合物とを含有する電解液が開示されている。本文献によると、4V級電極を用いたリチウム二次電池にて、高温保存時における電池外挿の膨れ変形を防止できることが述べられている。
【0008】
特許文献3には、(A)成分として、不飽和リン酸エステル化合物、(B)成分として、亜硫酸エステル化合物、スルホン酸エステル化合物、アルカリ金属のイミド塩化合物、フルオロシラン化合物、及び有機ジシラン若しくは有機ジシロキサン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物、(C)成分として、有機溶媒、及び(D)成分として、電解質塩を含有する電池用非水電解液が開示されている。また、不飽和リン酸エステル化合物をハロゲン化する場合についても開示されている。本文献によると、グラファイト等の結晶性の高い結晶性炭素材料を活物質とし、高分子カルボン酸化合物を結着剤として製造された負極を使用した非水電解液二次電池において、小さな内部抵抗と高い電気容量を長期使用において維持することが可能となることが述べられている。
【0009】
特許文献4には、フッ素を含有するリン酸エステルを含む電解液を有する二次電池が開示されている。
【0010】
特許文献5及び6では、高温での保存特性を改善するために電解液中に添加剤として環状スルホン酸エステルを加えることが示されている。
【0011】
特許文献7では、5V級の正極活物質を用いた電池において、環状スルホン酸エステル誘導体を含む電解液を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−123707号公報
【特許文献2】特開2008−41635号公報
【特許文献3】特開2011−124039号公報
【特許文献4】特開2008−021560号公報
【特許文献5】特開2005−149750号公報
【特許文献6】特開2005−251677号公報
【特許文献7】特開2006−344390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、LiNi0.5Mn1.5等の高い放電電位を有する正極材料を活物質として用いた電池においては、正極がLiCoO、LiMnなどを用いた場合よりもさらに高電位となるため、正極との接触部分で電解液の分解反応が発生しやすい。したがって、充放電サイクルに伴うガス発生による体積膨張と、容量低下が顕著となる場合があった。特に電解液の劣化は温度上昇とともに顕著になる傾向があり、40℃以上のような高温での動作において、寿命改善の課題があった。
【0014】
そこで、本発明は、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する正極活物質を含むことによって高いエネルギー密度を有し、かつ優れたサイクル特性を実現できるリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本実施形態は、正極活物質を含む正極と、非水電解溶媒を含む電解液と、を有するリチウム二次電池であって、前記正極活物質は、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作し、前記電解液は、下記式(1)で表されるフッ素含有リン酸エステルを含む非水電解溶媒と、下記式(2)で表される環状スルホン酸エステルとを含むことを特徴とするリチウム二次電池である。
【0016】
【化1】
(式(1)において、R,R及びRは、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基であって、R,R及びRのうち、少なくとも1つはフッ素含有アルキル基である。)。
【0017】
【化2】
(式(2)において、AおよびBはそれぞれ独立にアルキレン基またはフルオロアルキレン基、XはC−C単結合または−OSO−基である。)。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する正極活物質を用いた場合でも、優れたサイクル特性を有する二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る二次電池の断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態のリチウム二次電池は、正極活物質を含む正極と、非水電解溶媒を含む電解液と、を有する。前記正極活物質は、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する。前記電解液は、式(1)で表されるフッ素含有リン酸エステルを含む非水電解溶媒と、式(2)で表される環状スルホン酸エステルとを含む。電解液は、フッ素含有リン酸エステルを含むことにより耐酸化性が向上し、環状スルホン酸エステルが被膜を形成することにより、電解液の反応を抑え体積膨張を抑制する。さらに、式(1)で表されるフッ素含有リン酸エステルと、式(2)で表される環状スルホン酸エステルとを併用することによりそれぞれを単独で使用した場合より、はるかにサイクル特性が向上する。本実施形態は、電解液の分解が大きな問題となりやすい高電位な正極活物質、特にはリチウムに対して4.5V以上の電位で動作する正極活物質を用いたリチウム二次電池において、顕著な効果を発揮する。なお、本明細書において、単に「環状スルホン酸エステル」と記載したときは、明示的な記載がない限り、「環状モノスルホン酸エステル」と「環状ジスルホン酸エステル」の両方を意味するものとする。
【0021】
【化3】
(式(1)において、R,R及びRは、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基であって、R,R及びRの少なくとも1つはフッ素含有アルキル基である。)。
【0022】
【化4】
(式(2)において、AおよびBはそれぞれ独立にアルキレン基またはフルオロアルキレン基、XはC−C単結合または−OSO−基である。)。
【0023】
(電解液)
電解液は、支持塩と、上記式(1)で表されるフッ素含有リン酸エステルを含む非水電解溶媒と、上記式(2)で表される環状スルホン酸エステルとを含む。
【0024】
(フッ素含有リン酸エステル)
非水電解溶媒に含まれるフッ素含有リン酸エステルの含有率は、特に制限されるものではないが、非水電解溶媒中5体積%以上95体積%以下が好ましい。フッ素含有リン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率が5体積%以上であると、耐電圧性を高める効果がより向上する。また、フッ素含有リン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率が95体積%以下であると、電解液のイオン伝導性が向上して電池の充放電レートがより良好になる。また、フッ素含有リン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率は、10体積%以上がより好ましい。また、フッ素含有リン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率は、70体積%以下がより好ましく、60体積%以下がさらに好ましく、59体積%以下が特に好ましく、55体積%以下がより特に好ましい。
【0025】
式(1)で表されるフッ素含有リン酸エステルにおいて、R,R及びRは、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基であって、R,R及びRの少なくとも1つはフッ素含有アルキル基である。フッ素含有アルキル基とは、少なくとも1つのフッ素原子を有するアルキル基である。アルキル基R、R、及びRの炭素数は、それぞれ独立に、1以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。アルキル基の炭素数が4以下であると、電解液の粘度の増加が抑えられ、電解液が電極やセパレータ内の細孔に浸み込み易くなるとともに、イオン伝導性が向上し、電池の充放電特性において電流値が良好になるためである。
【0026】
また、式(1)において、R,R及びRの全てがフッ素含有アルキル基であることが好ましい。
【0027】
また、R,R及びRの少なくとも1つは、対応する無置換のアルキル基が有する水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されたフッ素含有アルキル基であることが好ましい。また、R,R及びRの全てがフッ素含有アルキル基であり、該R,R及びRが対応する無置換のアルキル基の水素原子の50%以上がフッ素原子に置換されたフッ素含有アルキル基であることがより好ましい。フッ素原子の含有率が多いと、耐電圧性がより向上し、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する正極活物質を用いた場合でも、サイクル後における電池容量の劣化をより低減することできるからである。また、フッ素含有アルキル基における水素原子を含む置換基中のフッ素原子の比率は55%以上がより好ましい。
【0028】
また、R乃至Rは、フッ素原子の他に置換基を有していても良く、置換基としては、アミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、並びにハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。なお、上記の炭素数は置換基も含む概念である。
【0029】
フッ素含有リン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリス(トリフルオロメチル)、リン酸トリス(トリフルオロエチル)、リン酸トリス(テトラフルオロプロピル)、リン酸トリス(ペンタフルオロプロピル)、リン酸トリス(ヘプタフルオロブチル)、リン酸トリス(オクタフルオロペンチル)等が挙げられる。また、フッ素含有リン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリフルオロエチルジメチル、リン酸ビス(トリフルオロエチル)メチル、リン酸ビストリフルオロエチルエチル、リン酸ペンタフルオロプロピルジメチル、リン酸ヘプタフルオロブチルジメチル、リン酸トリフルオロエチルメチルエチル、リン酸ペンタフルオロプロピルメチルエチル、リン酸ヘプタフルオロブチルメチルエチル、リン酸トリフルオロエチルメチルプロピル、リン酸ペンタフルオロプロピルメチルプロピル、リン酸ヘプタフルオロブチルメチルプロピル、リン酸トリフルオロエチルメチルブチル、リン酸ペンタフルオロプロピルメチルブチル、リン酸ヘプタフルオロブチルメチルブチル、リン酸トリフルオロエチルジエチル、リン酸ペンタフルオロプロピルジエチル、リン酸ヘプタフルオロブチルジエチル、リン酸トリフルオロエチルエチルプロピル、リン酸ペンタフルオロプロピルエチルプロピル、リン酸ヘプタフルオロブチルエチルプロピル、リン酸トリフルオロエチルエチルブチル、リン酸ペンタフルオロプロピルエチルブチル、リン酸ヘプタフルオロブチルエチルブチル、リン酸トリフルオロエチルジプロピル、リン酸ペンタフルオロプロピルジプロピル、リン酸ヘプタフルオロブチルジプロピル、リン酸トリフルオロエチルプロピルブチル、リン酸ペンタフルオロプロピルプロピルブチル、リン酸ヘプタフルオロブチルプロピルブチル、リン酸トリフルオロエチルジブチル、リン酸ペンタフルオロプロピルジブチル、リン酸ヘプタフルオロブチルジブチル等が挙げられる。リン酸トリス(テトラフルオロプロピル)としては、例えば、リン酸トリス(2,2,3,3−テトラフルオロプロピル)が挙げられる。リン酸トリス(ペンタフルオロプロピル)としては、例えば、リン酸トリス(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)が挙げられる。リン酸トリス(トリフルオロエチル)としては、例えば、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(以下、PTTFEとも略す)などが挙げられる。リン酸トリス(ヘプタフルオロブチル)としては、例えば、リン酸トリス(1H,1H−ヘプタフルオロブチル)等が挙げられる。リン酸トリス(オクタフルオロペンチル)としては、例えば、リン酸トリス(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル)等が挙げられる。これらの中でも、高電位における電解液分解の抑制効果が高いことから、下記式(3)で表されるリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)が好ましい。フッ素含有リン酸エステルは、一種を単独で又は二種以上を併用して用いることができる。
【0030】
【化5】
【0031】
(環状スルホン酸エステル)
式(2)で表される環状スルホン酸エステルにおいて、AおよびBはそれぞれ独立にアルキレン基またはフッ化アルキレン基、XはC−C単結合または−OSO−基を示す。式(2)において、アルキレン基の炭素数は、例えば1〜8であり、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。
【0032】
フッ化アルキレン基とは、無置換アルキレン基のうちの少なくとも一つの水素原子がフッ素原子で置換された構造を有する置換アルキレン基を表す。式(2)において、フッ化アルキレン基の炭素数は、例えば1〜8であり、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜4である。
【0033】
なお、−OSO−基は、どちらの向きであってもよい。
【0034】
式(2)において、Xが単結合の場合、環状スルホン酸エステルは環状モノスルホン酸エステルとなるが、環状モノスルホン酸エステルとしては、下記式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0035】
【化6】
(式(4)中、R101及びR102は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。nは0、1、2、3、又は4である。)。
【0036】
式(2)において、Xが−OSO−基の場合、環状スルホン酸エステルは環状ジスルホン酸エステルとなるが、環状ジスルホン酸エステルとしては下記式(5)で表される化合物であることが好ましい。
【0037】
【化7】
(式(5)中、R201乃至R204は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。nは1、2、3、又は4である。また、nが2,3,又は4であるとき、n個存在するR203は互いに同一であっても異なっていてもよく、かつ、n個存在するR204は、互いに同一であっても異なっていてもよい。)。
【0038】
環状スルホン酸エステルとしては、例えば、1,3−プロパンスルトン、1,2−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,2−ブタンスルトン、1,3−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,3−ペンタンスルトン等のモノスルホン酸エステル(式(2)中のXが単結合の場合)、メチレンメタンジスルホン酸エステル(1,5,2,4−ジオキサジチアン−2,2,4,4−テトラオキシド)、エチレンメタンジスルホン酸エステル等のジスルホン酸エステル(式(2)中のXが−OSO−基の場合)などが挙げられる。これらの中でも、被膜形成効果、入手容易性、コストの点から、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メチレンメタンジスルホン酸エステルが好ましい。
【0039】
環状スルホン酸エステルの電解液中の含有量は、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。環状スルホン酸エステルの含有量が0.01質量%以上の場合、正極表面に被膜をより効果的に形成して電解液の分解を抑制することができる。
【0040】
電解液は、上記フッ素含有リン酸エステルと上記環状スルホン酸エステルとに加えて、非水電解溶媒として環状カーボネートおよび/又は鎖状カーボネートをさらに含むことが好ましい。
【0041】
環状カーボネート又は鎖状カーボネートは比誘電率が大きいため、これらの添加により、支持塩の解離性が向上し、十分な導電性を付与し易くなる。また、環状カーボネート及び鎖状カーボネートは、耐電圧性及び導電率が高いことから、フッ素含有リン酸エステルとの混合に適している。さらに、電解液の粘度を下げる効果がある材料を選択することで、電解液におけるイオン移動度を向上させることも可能である。
【0042】
環状カーボネートとしては、特に制限されるものではないが、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、又はビニレンカーボネート(VC)等を挙げることができる。また、環状カーボネートは、フッ素化環状カーボネートを含む。フッ素化環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、又はビニレンカーボネート(VC)等の一部又は全部の水素原子をフッ素原子に置換した化合物等を挙げることができる。フッ素化環状カーボネートとしては、より具体的には、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、(cis又はtrans)4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−フルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン等を用いることができる。環状カーボネートとしては、上で列記した中でも、耐電圧性や、導電率の観点から、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、又はこれらの一部をフッ素化した化合物等が好ましく、エチレンカーボネートがより好ましい。環状カーボネートは、一種を単独で又は二種以上を併用して用いることができる。
【0043】
環状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、支持塩の解離度を高める効果と電解液の導電性を高める効果の観点から、0.1体積%以上が好ましく、5体積%以上がより好ましく、10体積%以上がさらに好ましく、15体積%以上が特に好ましい。また、環状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、同様の観点から、70体積%以下が好ましく、50体積%以下がより好ましく、40体積%以下がさらに好ましい。
【0044】
鎖状カーボネートとしては、特に制限されるものではないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等を挙げることができる。また、鎖状カーボネートは、フッ素化鎖状カーボネートを含む。フッ素化鎖状カーボネートとしては、例えば、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の一部又は全部の水素原子をフッ素原子に置換した構造を有する化合物等を挙げることができる。フッ素化鎖状カーボネートとしては、より具体的には、例えば、ビス(フルオロエチル)カーボネート、3−フルオロプロピルメチルカーボネート、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルエチルカーボネート、モノフルオロメチルメチルカーボネート、メチル2,2,3,3,テトラフルオロプロピルカーボネート、エチル2,2,3,3,テトラフルオロプロピルカーボネート、ビス(2,2,3,3,テトラフルオロプロピル)カーボネート、ビス(2,2,2トリフルオロエチル)カーボネート、1−モノフルオロエチルエチルカーボネート、1−モノフルオロエチルメチルカーボネート、2−モノフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(1−モノフルオロエチル)カーボネート、ビス(2−モノフルオロエチル)カーボネート、ビス(モノフルオロメチル)カーボネート、等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、モノフルオロメチルメチルカーボネート、メチル2,2,3,3,テトラフルオロプロピルカーボネートなどが耐電圧性と導電率の観点から好ましい。鎖状カーボネートは、一種を単独で又は二種以上を併用して用いることができる。
【0045】
鎖状カーボネートは、「−OCOO−」構造に付加する置換基の炭素数が小さい場合、粘度が低いという利点がある。一方、炭素数が大きすぎると、電解液の粘度が高くなってLiイオンの導電性が下がる場合がある。このような理由から、鎖状カーボネートの「−OCOO−」構造に付加する2つの置換基の総炭素数は2以上6以下であることが好ましい。また、「−OCOO−」構造に付加する置換基がフッ素原子を含有する場合、電解液の耐酸化性が向上する。このような理由から、鎖状カーボネートは下記式(6)で表されるフッ素化鎖状カーボネートであることが好ましい。
【0046】
2n+1−l−OCOO−C2m+1−k(6)
(式(6)中、nは1,2又は3であり、mは1,2又は3であり、lは0から2n+1までのいずれかの整数であり、kは0から2m+1までのいずれかの整数であり、l及びkのうち少なくともいずれかは1以上の整数である。)。
【0047】
式(6)で示されるフッ素化鎖状カーボネートにおいて、フッ素置換量が少ないと、フッ素化鎖状カーボネートが高電位の正極と反応することにより電池の容量維持率が低下したり、ガスが発生したりする場合がある。一方、フッ素置換量が多すぎると、鎖状カーボネートの他溶媒との相溶性が低下したり、鎖状カーボネートの沸点が下がったりする場合がある。このような理由から、フッ素置換量は、1%以上90%以下であることが好ましく、5%以上85%以下であることがより好ましく、10%以上80%以下であることがさらに好ましい。つまり、式(6)のl、m、nが以下の関係式を満たすことが好ましい。
【0048】
0.01≦(l+k)/(2n+2m+2)≦0.9
鎖状カーボネートは、電解液の粘度を下げる効果があり、電解液の導電率を高めることができる。これらの観点から、鎖状カーボネートの非水電解溶媒中の含有量は、5体積%以上が好ましく、10体積%以上がより好ましく、15体積%以上がさらに好ましい。また、鎖状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、90体積%以下が好ましく、80体積%以下がより好ましく、70体積%以下がさらに好ましい。
【0049】
また、フッ素化鎖状カーボネートの含有率は、特に制限されるものではないが、非水電解溶媒中0.1体積%以上70体積%以下が好ましい。フッ素化鎖状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率が0.1体積%以上であると、電解液の粘度を下げることができ、導電性を高めることができる。また、耐酸化性を高める効果が得られる。また、フッ素化鎖状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率が70体積%以下であると、電解液の導電性を高く保つことが可能である。また、フッ素化鎖状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、1体積%以上がより好ましく、5体積%以上がさらに好ましく、10体積%以上が特に好ましい。また、フッ素化鎖状カーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、65体積%以下がより好ましく、60体積%以下がさらに好ましく、55体積%以下が特に好ましい。
【0050】
非水電解溶媒は、フッ素含有リン酸エステルに加えて、カルボン酸エステルを含むことができる。
【0051】
カルボン酸エステルとしては、特に制限されるものではないが、例えば、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、ギ酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酢酸メチル、ギ酸メチル等が挙げられる。また、カルボン酸エステルは、フッ素化カルボン酸エステルも含み、フッ素化カルボン酸エステルとしては、例えば、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、ギ酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酢酸メチル、又はギ酸メチルの一部又は全部の水素原子をフッ素原子で置換した構造を有する化合物等が挙げられる。また、フッ素化カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、ペンタフルオロプロピオン酸エチル、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸エチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸メチル、酢酸2,2−ジフルオロエチル、ヘプタフルオロイソ酪酸メチル、2,3,3,3−テトラフルオロプロピオン酸メチル、ペンタフルオロプロピオン酸メチル、2−(トリフルオロメチル)−3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル、ヘプタフルオロ酪酸エチル、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル、酢酸2,2,2−トリフルオロエチル、トリフルオロ酢酸イソプロピル、トリフルオロ酢酸tert−ブチル、4,4,4−トリフルオロ酪酸エチル、4,4,4−トリフルオロ酪酸メチル、2,2−ジフルオロ酢酸ブチル、ジフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸n−ブチル、酢酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、3−(トリフルオロメチル)酪酸エチル、テトラフルオロ−2−(メトキシ)プロピオン酸メチル、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸3,3,3トリフルオロプロピル、ジフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、酢酸1H,1H−ヘプタフルオロブチル、ヘプタフルオロ酪酸メチル、トリフルオロ酢酸エチルなどが挙げられる。これらの中でも、耐電圧と沸点などの観点から、カルボン酸エステルとしては、プロピオン酸エチル、酢酸メチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピオン酸メチル、トリフルオロ酢酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピルが好ましい。カルボン酸エステルは、鎖状カーボネートと同様に電解液の粘度を低減する効果がある。したがって、例えば、カルボン酸エステルは、鎖状カーボネートの代わりに使用することが可能であり、また、鎖状カーボネートと併用することも可能である。
【0052】
鎖状カルボン酸エステルは、「−COO−」構造に付加する置換基の炭素数が小さい場合、粘度が低いという特長があるが、沸点も低くなる傾向がある。沸点が低い鎖状カルボン酸エステルは電池の高温動作時に気化してしまう場合がある。一方、炭素数が大きすぎると、電解液の粘度が高くなって導電性が下がる場合がある。このような理由から、鎖状カルボン酸エステルの「−COO−」構造に付加する2つの置換基の総炭素数は3以上8以下であることが好ましい。また、「−COO−」構造に付加する置換基がフッ素原子を含有する場合、電解液の耐酸化性を向上することができる。このような理由から、鎖状カルボン酸エステルは下記式(7)で表されるフッ素化鎖状カルボン酸エステルであることが好ましい。
【0053】
2n+1−l−COO−C2m+1−k(7)
(式(7)中、nは1,2,3又は4であり、mは1,2,3又は4であり、lは0から2n+1までのいずれかの整数であり、kは0から2m+1までのいずれかの整数であり、l及びkのうち少なくともいずれかは1以上の整数である。)。
【0054】
式(7)で示されるフッ素化鎖状カルボン酸エステルにおいて、フッ素置換量が少ないと、フッ素化鎖状カルボン酸エステルが高電位の正極と反応することにより電池の容量維持率が低下したり、ガスが発生したりする場合がある。一方、フッ素置換量が多すぎると、鎖状カルボン酸エステルの他溶媒との相溶性が低下したり、フッ素化鎖状カルボン酸エステルの沸点が下がったりする場合がある。このような理由から、フッ素置換量は、1%以上90%以下であることが好ましく、10%以上85%以下であることがより好ましく、20%以上80%以下であることがさらに好ましい。つまり、式(7)のl、m、nが以下の関係式を満たすことが好ましい。
【0055】
0.01≦(l+k)/(2n+2m+2)≦0.9
カルボン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率は、0.1体積%以上が好ましく、0.2体積%以上がより好ましく、0.5体積%以上がさらに好ましく、1体積%以上が特に好ましい。カルボン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率は、50体積%以下が好ましく、20体積%以下がより好ましく、15体積%以下がさらに好ましく、10体積%以下が特に好ましい。カルボン酸エステルの含有率を0.1体積%以上とすることにより、低温特性をより向上でき、また導電率をより向上できる。また、カルボン酸エステルの含有率を50体積%以下とすることにより、電池を高温放置した場合に蒸気圧が高くなりすぎることを低減することができる。
【0056】
また、フッ素化鎖状カルボン酸エステルの含有率は、特に制限されるものではないが、非水電解溶媒中0.1体積%以上50体積%以下が好ましい。フッ素化鎖状カルボン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率が0.1体積%以上であると、電解液の粘度を下げることができ、導電性を高めることができる。また、耐酸化性を高める効果が得られる。また、フッ素化鎖状カルボン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率が50体積%以下であると、電解液の導電性を高く保つことが可能であり、電解液の相溶性を確保することができる。また、フッ素化鎖状カルボン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率は、1体積%以上がより好ましく、5体積%以上がさらに好ましく、10体積%以上が特に好ましい。また、フッ素化鎖状カルボン酸エステルの非水電解溶媒中の含有率は、45体積%以下がより好ましく、40体積%以下がさらに好ましく、35体積%以下が特に好ましい。
【0057】
非水電解溶媒は、フッ素含有リン酸エステルに加えて、下記式(8)で表されるアルキレンビスカーボネートを含むことができる。アルキレンビスカーボネートの耐酸化性は、鎖状カーボネートと同等かやや高いことから、電解液の耐電圧性を向上することができる。
【0058】
【化8】
(R及びRは、それぞれ独立に、置換又は無置換のアルキル基を表す。Rは、置換又は無置換のアルキレン基を表す。)。
【0059】
式(8)において、アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状のものを含み、炭素数が1〜6であることが好ましく、炭素数が1〜4であることがより好ましい。アルキレン基は、二価の飽和炭化水素基であり、直鎖状又は分岐鎖状のものを含み、炭素数が1〜4であることが好ましく、炭素数が1〜3であることがより好ましい。
【0060】
式(8)で表されるアルキレンビスカーボネートとしては、例えば、1,2−ビス(メトキシカルボニルオキシ)エタン、1,2−ビス(エトキシカルボニルオキシ)エタン、1,2−ビス(メトキシカルボニルオキシ)プロパン、又は1−エトキシカルボニルオキシ−2−メトキシカルボニルオキシエタン等が挙げられる。これらの中でも、1,2−ビス(メトキシカルボニルオキシ)エタンが好ましい。
【0061】
アルキレンビスカーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、0.1体積%以上が好ましく、0.5体積%以上がより好ましく、1体積%以上がさらに好ましく、1.5体積%以上が特に好ましい。アルキレンビスカーボネートの非水電解溶媒中の含有率は、70体積%以下が好ましく、60体積%以下がより好ましく、50体積%以下がさらに好ましく、40体積%以下が特に好ましい。
【0062】
アルキレンビスカーボネートは誘電率が低い材料である。そのため、例えば、鎖状カーボネートの代わりに使用することが可能であり、又は鎖状カーボネートと併用することが可能である。
【0063】
非水電解溶媒は、フッ素含有リン酸エステルに加えて、鎖状エーテルを含むことができる。
【0064】
鎖状エーテルとしては、特に制限されるものではないが、例えば、1,2−ジエトキシエタン(DEE)若しくはエトキシメトキシエタン(EME)等が挙げられる。また、鎖状エーテルは、フッ素化鎖状エーテルも含む。フッ素化鎖状エーテルは、耐酸化性が高く、高電位で動作する正極の場合に好ましく用いられる。フッ素化鎖状エーテルとしては、例えば、1,2−ジエトキシエタン(DEE)若しくはエトキシメトキシエタン(EME)の一部又は全部の水素原子をフッ素原子で置換した構造を有する化合物等が挙げられる。また、フッ素化鎖状エーテルとしては、具体的には、例えば、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、1H,1H,2’H,3H−デカフルオロジプロピルエーテル、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロピル−2,2−ジフルオロエチルエーテル、イソプロピル1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、プロピル1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル、1H,1H,5H−パーフルオロペンチル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1H,1H,2’H−パーフルオロジプロピルエーテル、1H−パーフルオロブチル−1H−パーフルオロエチルエーテル、メチルパーフルオロペンチルエーテル、メチルパーフルオロへキシルエーテル、メチル1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロピルエーテル、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチル1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルエーテル、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、1H,1H,2’H−パーフルオロジプロピルエーテル、ヘプタフルオロプロピル1,2,2,2‐テトラフルオロエチルエーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、耐電圧と沸点などの観点から、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル、1H,1H,2’H,3H−デカフルオロジプロピルエーテル、1H,1H,2’H−パーフルオロジプロピルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテルなどが好ましい。鎖状エーテルは、鎖状カーボネートと同様に電解液の粘度を低減する効果がある。したがって、例えば、鎖状エーテルは、鎖状カーボネート、カルボン酸エステルの代わりに使用することが可能であり、また、鎖状カーボネート、カルボン酸エステルと併用することも可能である。
【0065】
鎖状エーテルは、炭素数が小さい場合、沸点が低くなる傾向があるため、電池の高温動作時に気化してしまう場合がある。一方、炭素数が大きすぎると、鎖状エーテルの粘度が高くなって、電解液の導電性が下がる場合がある。したがって、炭素数は4以上10以下であることが好ましい。このような理由から、鎖状エーテルは下記式(9)で表されるフッ素化鎖状エーテルであることが好ましい。
【0066】
2n+1−l−O−C2m+1−k(9)
(式(9)中、nは1,2,3,4,5又は6であり、mは1,2,3又は4であり、lは0から2n+1までのいずれかの整数であり、kは0から2m+1までのいずれかの整数であり、l及びkのうち少なくともいずれかは1以上の整数である。)。
【0067】
式(9)で示されるフッ素化鎖状エーテルにおいて、フッ素置換量が少なすぎると、フッ素化鎖状エーテルが高電位の正極と反応することにより電池の容量維持率が低下したり、ガスが発生したりする場合がある。一方、フッ素置換量が多すぎると、フッ素化鎖状エーテルの他の溶媒との相溶性が低下したり、フッ素化鎖状エーテルの沸点が下がったりする場合がある。このような理由から、フッ素置換量は、10%以上90%以下であることが好ましく、20%以上85%以下であることがさらに好ましく、30%以上80%以上であることがさらに好ましい。つまり、式(9)のl、m、nが以下の関係式を満たすことが好ましい。
【0068】
0.1≦(l+k)/(2n+2m+2)≦0.9
また、フッ素化鎖状エーテルの含有率は、特に制限されるものではないが、非水電解溶媒中0.1体積%以上70体積%以下が好ましい。フッ素化鎖状エーテルの非水電解溶媒中の含有率が0.1体積%以上であると、電解液の粘度を下げることができ、導電性を高めることができる。また、耐酸化性を高める効果が得られる。また、フッ素化鎖状エーテルの非水電解溶媒中の含有率が70体積%以下であると、電解液の導電性を高く保つことが可能であり、また、電解液の相溶性を確保することができる。また、フッ素化鎖状エーテルの非水電解溶媒中の含有率は、1体積%以上がより好ましく、5体積%以上がさらに好ましく、10体積%以上が特に好ましい。また、フッ素化鎖状エーテルの非水電解溶媒中の含有率は、65体積%以下がより好ましく、60体積%以下がさらに好ましく、55体積%以下が特に好ましい。
【0069】
非水電解溶媒としては、上記以外に以下のものを含んでいても良い。非水電解溶媒は、例えば、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−エトキシエタン(DEE)若しくはエトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン若しくは2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類等を含むことができる。また、これらの材料の水素原子の一部をフッ素原子で置換したものを含んでも良い。また、その他にも、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンスルトン、アニソール、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒を含んでも良い。
【0070】
支持塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiAlCl、LiClO、LiBF、LiSbF、LiCFSO、LiCCO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiB10Cl10等のリチウム塩が挙げられる。また、支持塩としては、他にも、低級脂肪族カルボン酸カルボン酸リチウム、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiBr、LiI、LiSCN、LiCl等が挙げられる。支持塩は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
また、非水電解溶媒にイオン伝導性ポリマーを添加することができる。イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン等を挙げることができる。また、イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルフルオライド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリメタクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンアシパミド、ポリカプロラクタム、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン、ポリスチレン、若しくはポリイソプレン、又はこれらの誘導体を挙げることができる。イオン伝導性ポリマーは、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記ポリマーを構成する各種モノマーを含むポリマーを用いてもよい。
【0072】
(正極)
正極は正極活物質を含み、該正極活物質はリチウムに対して4.5V以上の電位で動作する。正極は、例えば、正極活物質が正極用結着剤によって正極集電体を覆うように結着されてなる。
【0073】
また、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する正極活物質は、例えば、以下のような方法によって選択することができる。まず、正極活物質を含む正極とLi金属とをセパレータを挟んで対向させた状態で電池内に配置させ、電解液を注液し、電池を作製する。そして、正極内の正極活物質質量あたり例えば5mAh/gとなる定電流で充放電を行った場合に、活物質質量あたり10mAh/g以上の充放電容量をリチウムに対して4.5V以上の電位で持つものを、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する正極活物質とすることができる。また、正極内の正極活物質質量あたり5mAh/gとなる定電流で充放電を行った場合に、リチウムに対して4.5V以上の電位における活物質質量あたりの充放電容量が20mAh/g以上であることが好ましく、50mAh/g以上であることがより好ましく、100mAh/g以上であることがさらに好ましい。電池の形状としては例えばコイン型とすることができる。
【0074】
正極活物質は、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質を含み、下記式(10)で表されるリチウムマンガン複合酸化物を含むことが好ましい。下記式(10)で表されるリチウムマンガン複合酸化物はリチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質である。
【0075】
Li(MMn2−x−y)(O4−w) (10)
(式中、0.5≦x≦1.2、0≦y、x+y<2、0≦a≦1.2、0≦w≦1である。Mは、Co、Ni、Fe、Cr及びCuからなる群より選ばれる少なくとも一種である。Yは、Li、B、Na、Al、Mg、Ti、Si、K及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種である。Zは、F及びClからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)。
【0076】
式(10)において、Mは、Niを含むことが好ましく、Niのみであることがより好ましい。MがNiを含む場合、比較的容易に高容量の活物質が得られるためである。MがNiのみからなる場合において、高容量の活物質を得られる観点から、xが0.4以上0.6以下であることが好ましい。また、正極活物質がLiNi0.5Mn1.5であると、130mAh/g以上の高い容量が得られることからより好ましい。
【0077】
また、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質として、例えば、LiCrMnO、LiFeMnO、LiCoMnO、LiCu0.5Mn1.5等が挙げられ、これらの正極活物質は高容量である。また、正極活物質は、これらの活物質と、LiNi0.5Mn1.5とを混合した組成としてもよい。
【0078】
また、これらの活物質のMnの部分の一部をLi、B、Na、Al、Mg、Ti、SiK又はCa等で置換することによって、寿命面の改善が可能となる場合がある。つまり、式(10)において、0<yの場合、寿命が改善できる場合がある。これらの中でも、YがAl、Mg、Ti、Siの場合に寿命改善効果が高い。また、YがTiの場合、高容量を保ったまま寿命改善効果を奏することからより好ましい。yの範囲は、0より大きく、0.3以下であることが好ましい。yを0.3以下とすることにより、容量の低下を抑制することが容易となる。
【0079】
また、酸素の部分をFやClで置換することが可能である。式(10)において、wを0より大きく1以下とすることにより、容量の低下を抑制することができる。
【0080】
また、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質としては、スピネル型やオリビン型のものが挙げられる。スピネル型の正極活物質としては、例えば、LiNi0.5Mn1.5、LiCrMn2−x(0.4≦x≦1.1)、LiFeMn2−x(0.4≦x≦1.1)、LiCuMn2−x(0.3≦x≦0.6)、又はLiCoMn2−x(0.4≦x≦1.1)等及びこれらの固溶体が挙げられる。また、オリビン型の正極活物質としては、
LiMPO (11)
(式(11)中、MがCo及びNiのうちの少なくとも一種である。)が挙げられ、
例えば、LiCoPO、又はLiNiPO等が挙げられる。
【0081】
また、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質としては、Si複合酸化物も挙げられ、Si複合酸化物としては、例えば、LiMSiO(M:Mn、Fe、Coのうちの少なくとも一種)が挙げられる。
【0082】
また、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質としては、層状構造を有するものも含み、層状構造を含む正極活物質としては、例えば、Li(M1M2Mn2−x−y)O(M1:Ni,Co及びFeからなる群より選ばれる少なくとも一種、M2:Li、Mg及びAlからなる群から選ばれる少なくとも一種、0.1<x<0.5、0.05<y<0.3)等が挙げられる。
【0083】
また、層状構造を有する正極活物質として、下記式(12)または下記式(13)で表される化合物も挙げられる。
【0084】
Li(M1−zMn)O (12)
(式(12)中、0.7≧z≧0.33、MがLi、Co及びNiのうちの少なくとも一種である。)
Li(Li1−x−zMn)O (13)
(式(13)中、0.3>x≧0.1、0.7≧z≧0.33、MはCo及びNiのうちの少なくとも一種である。)
【0085】
前記式(10)で表されるリチウムマンガン複合酸化物の比表面積は、例えば0.01〜5m/gであり、0.05〜4m/gが好ましく、0.1〜3m/gがより好ましく、0.2〜2m/gがさらに好ましい。比表面積をこのような範囲とすることにより、電解液との接触面積を適当な範囲に調整することができる。つまり、比表面積を0.01m/g以上とすることにより、リチウムイオンの挿入脱離がスムーズに行われ易くなり、抵抗をより低減することができる。また、比表面積を5m/g以下とすることにより、電解液の分解が促進することや、活物質の構成元素が溶出することをより抑制することができる。
【0086】
前記リチウムマンガン複合酸化物の中心粒径は、0.1〜50μmであることが好ましく、0.2〜40μmがより好ましい。粒径を0.1μm以上とすることにより、Mnなどの構成元素の溶出をより抑制でき、また、電解液との接触による劣化をより抑制できる。また、粒径を50μm以下とすることにより、リチウムイオンの挿入脱離がスムーズに行われ易くなり、抵抗をより低減することができる。粒径の測定はレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置によって実施することができる。
【0087】
正極活物質は、上述のように、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質を含むが、4V級の活物質を含んでも良い。
【0088】
正極用結着剤としては、負極用結着剤と同様のものと用いることができる。中でも、汎用性や低コストの観点から、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。使用する正極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある「十分な結着力」と「高エネルギー化」の観点から、正極活物質100質量部に対して、2〜10質量部が好ましい。
【0089】
正極集電体としては、特に制限されるものではないが、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。
【0090】
正極活物質を含む正極活物質層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子が挙げられる。
【0091】
(負極)
負極は、負極活物質として、リチウムを吸蔵及び放出し得る材料を含むものであれば特に限定されない。
【0092】
負極活物質としては、特に制限されるものではなく、例えば、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る炭素材料(a)、リチウムと合金可能な金属(b)、又はリチウムイオンを吸蔵、放出し得る金属酸化物(c)等が挙げられる。
【0093】
炭素材料(a)としては、黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、またはこれらの複合物を用いることができる。ここで、結晶性の高い黒鉛は、電気伝導性が高く、銅などの金属からなる正極集電体との接着性および電圧平坦性が優れている。一方、結晶性の低い非晶質炭素は、体積膨張が比較的小さいため、負極全体の体積膨張を緩和する効果が高く、かつ結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する劣化が起きにくい。炭素材料(a)は、それ単独で又はその他の物質と併用して用いることができるが、負極活物質中2質量%以上80質量%以下の範囲であることが好ましく、2質量%以上30質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0094】
金属(b)としては、Al、Si、Pb、Sn、Zn、Cd、Sb、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、La等を主体とした金属、又はこれらの2種以上の合金、あるいはこれら金属又は合金とリチウムとの合金等を用いることができる。特に、金属(b)としてシリコン(Si)を含むことが好ましい。金属(b)は、それ単独で又はその他の物質と併用して用いることができるが、負極活物質中5質量%以上90質量%以下の範囲であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0095】
金属酸化物(c)としては、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化リチウム、またはこれらの複合物を用いることができる。特に、金属酸化物(c)として酸化シリコンを含むことが好ましい。これは、酸化シリコンは、比較的安定で他の化合物との反応を引き起こしにくいからである。また、金属酸化物(c)に、窒素、ホウ素およびイオウの中から選ばれる一種または二種以上の元素を、例えば0.1〜5質量%添加することもできる。こうすることで、金属酸化物(c)の電気伝導性を向上させることができる。金属酸化物(c)は、それ単独で又はその他の物質と併用して用いることができるが、負極活物質中5質量%以上90質量%以下の範囲であることが好ましく、40質量%以上70質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0096】
金属酸化物(c)の具体例としては、例えば、LiFe、WO、MoO、SiO、SiO、CuO、SnO、SnO、Nb、LiTi2−x(1≦x≦4/3)、PbO、Pb等が挙げられる。
【0097】
また、負極活物質としては、他にも、例えば、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る金属硫化物(d)が挙げられる。金属硫化物(d)としては、例えば、SnSやFeS等が挙げられる。また、負極活物質としては、他にも、例えば、金属リチウム若しくはリチウム合金、ポリアセン若しくはポリチオフェン、又はLi(LiN)、LiMnN、LiFeN、Li2.5Co0.5N若しくはLiCoN等の窒化リチウム等を挙げる事ができる。
【0098】
以上の負極活物質は、単独でまたは二種以上を混合して用いることができる。
【0099】
また、負極活物質は、炭素材料(a)、金属(b)、及び金属酸化物(c)を含む構成とすることができる。以下、この負極活物質について説明する。
【0100】
金属酸化物(c)はその全部または一部がアモルファス構造を有することが好ましい。アモルファス構造の金属酸化物(c)は、炭素材料(a)や金属(b)の体積膨張を抑制することができ、電解液の分解を抑制することができる。このメカニズムは、金属酸化物(c)がアモルファス構造であることにより、炭素材料(a)と電解液の界面への被膜形成に何らかの影響があるものと推定される。また、アモルファス構造は、結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する要素が比較的少ないと考えられる。なお、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造を有することは、エックス線回折測定(一般的なXRD測定)にて確認することができる。具体的には、金属酸化物(c)がアモルファス構造を有しない場合には、金属酸化物(c)に固有のピークが観測されるが、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造を有する場合が、金属酸化物(c)に固有ピークがブロードとなって観測される。
【0101】
金属酸化物(c)は、金属(b)を構成する金属の酸化物であることが好ましい。また、金属(b)及び金属酸化物(c)は、それぞれシリコン(Si)及び酸化シリコン(SiO)であることが好ましい。
【0102】
金属(b)は、その全部または一部が金属酸化物(c)中に分散していることが好ましい。金属(b)の少なくとも一部を金属酸化物(c)中に分散させることで、負極全体としての体積膨張をより抑制することができ、電解液の分解も抑制することができる。なお、金属(b)の全部または一部が金属酸化物(c)中に分散していることは、透過型電子顕微鏡観察(一般的なTEM観察)とエネルギー分散型X線分光法測定(一般的なEDX測定)を併用することで確認することができる。具体的には、金属(b)粒子を含むサンプルの断面を観察し、金属酸化物(c)中に分散している金属(b)粒子の酸素濃度を測定し、金属(b)粒子を構成している金属が酸化物となっていないことを確認することができる。
【0103】
上述のように、炭素材料(a)、金属(b)、及び金属酸化物(c)の合計に対するそれぞれの炭素材料(a)、金属(b)、及び金属酸化物(c)の含有率は、それぞれ、2質量%以上80質量%以下、5質量%以上90質量%以下、及び5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。また、炭素材料(a)、金属(b)、及び金属酸化物(c)の合計に対するそれぞれの炭素材料(a)、金属(b)、及び金属酸化物(c)の含有率は、それぞれ、2質量%以上30質量%以下、20質量%以上50質量%以下、及び40質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0104】
金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造であり、金属(b)の全部または一部が金属酸化物(c)中に分散しているような負極活物質は、例えば、特開2004−47404号公報で開示されているような方法で作製することができる。すなわち、金属酸化物(c)をメタンガスなどの有機物ガスを含む雰囲気下でCVD処理を行うことで、金属酸化物(c)中の金属(b)がナノクラスター化し、かつ表面が炭素材料(a)で被覆された複合体を得ることができる。また、炭素材料(a)と金属(b)と金属酸化物(c)とをメカニカルミリングで混合することでも、上記負極活物質を作製することができる。
【0105】
また、炭素材料(a)、金属(b)、及び金属酸化物(c)は、特に制限するものではないが、それぞれ粒子状のものを用いることができる。例えば、金属(b)の平均粒子径は、炭素材料(a)の平均粒子径および金属酸化物(c)の平均粒子径よりも小さい構成とすることができる。このようにすれば、充放電時にともなう体積変化の大きい金属(b)が相対的に小粒径となり、体積変化の小さい炭素材料(a)や金属酸化物(c)が相対的に大粒径となるため、デンドライト生成および合金の微粉化がより効果的に抑制される。また、充放電の過程で大粒径の粒子、小粒径の粒子、大粒径の粒子の順にリチウムが吸蔵、放出されることとなり、この点からも、残留応力、残留歪みの発生が抑制される。金属(b)の平均粒子径は、例えば20μm以下とすることができ、15μm以下とすることが好ましい。
【0106】
また、金属酸化物(c)の平均粒子径が炭素材料(a)の平均粒子径の1/2以下であることが好ましく、金属(b)の平均粒子径が金属酸化物(c)の平均粒子径の1/2以下であることが好ましい。さらに、金属酸化物(c)の平均粒子径が炭素材料(a)の平均粒子径の1/2以下であり、かつ金属(b)の平均粒子径が金属酸化物(c)の平均粒子径の1/2以下であることがより好ましい。平均粒子径をこのような範囲に制御すれば、金属および合金相の体積膨脹の緩和効果がより有効に得ることができ、エネルギー密度、サイクル寿命と効率のバランスに優れた二次電池を得ることができる。より具体的には、シリコン酸化物(c)の平均粒子径を黒鉛(a)の平均粒子径の1/2以下とし、シリコン(b)の平均粒子径をシリコン酸化物(c)の平均粒子径の1/2以下とすることが好ましい。また、より具体的には、シリコン(b)の平均粒子径は、例えば20μm以下とすることができ、15μm以下とすることが好ましい。
【0107】
負極活物質として、表面が低結晶性炭素材料で覆われた黒鉛を用いることができる。黒鉛の表面が低結晶性の炭素材料で覆われることにより、エネルギー密度が高く、高伝導性の黒鉛を負極活物質として用いた場合であっても、負極活物質と電解液との反応を抑制することができる。そのため、低結晶性炭素材料で覆われた黒鉛を負極活物質として用いることにより、電池の容量維持率を向上することができ、また、電池容量を向上することができる。
【0108】
黒鉛表面を覆う低結晶性炭素材料は、レーザーラマン分析によるラマンスペクトルの1550cm−1から1650cm−1の範囲に生じるGピークの強度Iに対する、1300cm−1から1400cm−1の範囲に生じるDピークのピーク強度Iの比I/Iが、0.08以上0.5以下であることが好ましい。一般に、結晶性が高い炭素材料は低いI/I値を示し、結晶性が低い炭素は高いI/I値を示す。I/Iが0.08以上であれば、高電圧で動作する場合でも、黒鉛と電解液との反応を抑制することができ、電池の容量維持率を向上することができる。I/Iが0.5以下であれば、電池容量を向上することができる。また、I/Iは、0.1以上0.4以下であることがより好ましい。
【0109】
低結晶性炭素材料のレーザーラマン分析は、例えば、アルゴンイオンレーザーラマン分析装置を用いることができる。炭素材料のようなレーザー吸収の大きい材料の場合、レーザーは表面から数10nmまでで吸収される。そのため、低結晶性炭素材料で表面が覆われた黒鉛に対するレーザーラマン分析により、表面に配置された低結晶性炭素材料の情報が実質的に得られる。
【0110】
値又はI値は、例えば、以下の条件により測定したレーザーラマンスペクトルから求めることができる。
【0111】
レーザーラマン分光装置:Ramanor T−64000(Jobin Yvon/愛宕物産社製)
測定モード:マクロラマン
測定配置:60°
ビーム径:100μm
光源:Ar+レーザー/514.5nm
レザーパワー:10mW
回折格子:Single600gr/mm
分散:Single21A/mm
スリット:100μm
検出器:CCD/Jobin Yvon1024256
低結晶性炭素材料で覆われた黒鉛は、例えば、粒子状の黒鉛に低結晶性炭素材料を被覆することにより得ることができる。黒鉛粒子の平均粒子径(体積平均:D50)は5μm以上30μm以下であることが好ましい。黒鉛は結晶性を有することが好ましく、黒鉛のI/I値が0.01以上0.08以下であることがより好ましい。
【0112】
低結晶性炭素材料の厚さは、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.02μm以上1μm以下であることがより好ましい。
【0113】
平均粒子径(D50)は、例えば、レーザ回折・散乱式粒子径・粒度分布測定装置マイクロトラックMT3300EX(日機装)を使用して、測定することができる。
【0114】
低結晶性炭素材料は、例えば、プロパンやアセチレン等の炭化水素を熱分解させて炭素を堆積させる気相法を用いることにより、黒鉛の表面に形成することができる。また、低結晶性炭素材料は、例えば、黒鉛の表面にピッチやタール等を付着させ、800〜1500℃で焼成する方法を用いることにより、形成することができる。
【0115】
黒鉛は、結晶構造において、002面の層間隔d002が、0.33nm以上0.34nm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.333nm以上0.337nm以下、更に好ましくは、0.336nm以下である。このような高結晶性の黒鉛は、リチウム吸蔵容量が高く、充放電効率の向上を図ることができる。
【0116】
黒鉛の層間隔は、例えば、X線回折により測定することができる。
【0117】
低結晶性炭素材料で覆われた黒鉛の比表面積は、例えば、0.01〜20m/gであり、0.05〜10m/gであることが好ましく、0.1〜5m/gであることがより好ましく、0.2〜3m/gであることがさらに好ましい。低結晶性炭素で覆われた黒鉛の比表面積を0.01m/g以上とすることにより、リチウムイオンの挿入脱離がスムーズに行われ易くなるため、抵抗をより低減することができる。低結晶性炭素で覆われた黒鉛の比表面積を20m/g以下とすることにより、電解液の分解をより抑制でき、また、活物質の構成元素の電解液への溶出をより抑制することができる。
【0118】
基材となる黒鉛としては、高結晶性のものが好ましく、例えば人造黒鉛や天然黒鉛を使用することができるが、特にこれらに制限されるものではない。低結晶性炭素の材料としては、例えば、コールタール、ピッチコークス、フェノール系樹脂を使用し、高結晶炭素と混合したものを用いることができる。高結晶炭素に対して低結晶性炭素の材料を5〜50質量%で混合して混合物を調製する。該混合物を150℃〜300℃に加熱した後、さらに、600℃〜1500℃の範囲で、熱処理を行う。これにより、表面に低結晶性炭素が被覆された表面処理黒鉛を得ることができる。熱処理は、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガス雰囲気が好ましい。負極活物質は、低結晶性炭素材料で覆われた黒鉛以外にも、他の活物質を含んでいてもよい。
【0119】
負極用結着剤としては、特に制限されるものではないが、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。
【0120】
負極結着剤の含有率は、負極活物質と負極結着剤の総量に対して1〜30質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%であることがより好ましい。1質量%以上とすることにより、活物質同士あるいは活物質と集電体との密着性が向上し、サイクル特性が良好になる。また、30質量%以下とすることにより、活物質比率が向上し、負極容量を向上することができる。
【0121】
負極集電体としては、特に制限されるものではないが、電気化学的な安定性から、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、およびそれらの合金が好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
【0122】
負極は、負極集電体上に、負極活物質と負極用結着剤を含む負極活物質層を形成することで作製することができる。負極活物質層の形成方法としては、ドクターブレード法、ダイコーター法、CVD法、スパッタリング法などが挙げられる。予め負極活物質層を形成した後に、蒸着、スパッタ等の方法でアルミニウム、ニッケルまたはそれらの合金の薄膜を形成して、負極集電体としてもよい。
【0123】
(セパレータ)
二次電池は、その構成として正極、負極、セパレータ、及び非水電解質との組み合わせからなることができる。セパレータとしては、例えば、織布、不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリイミド、多孔性ポリフッ化ビニリデン膜等の多孔性ポリマー膜、又はイオン伝導性ポリマー電解質膜等が挙げられる。これらは単独または組み合わせで使用することができる。
【0124】
(電池の形状)
電池の形状としては、例えば、円筒形、角形、コイン型、ボタン型、ラミネート型等が挙げられる。電池の外装体としては、例えば、ステンレス、鉄、アルミニウム、チタン、又はこれらの合金、あるいはこれらのメッキ加工品等が挙げられる。メッキとしては例えばニッケルメッキを用いることができる。
【0125】
また、ラミネート型に用いるラミネート樹脂フィルムとしては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン箔等が挙げられる。金属ラミネート樹脂フィルムの熱溶着部の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性高分子材料が挙げられる。また、金属ラミネート樹脂層や金属箔層はそれぞれ1層に限定されるものではなく2層以上であっても構わない。
【0126】
外装体としては、電解液に安定で、かつ十分な水蒸気バリア性を持つものであれば、適宜選択することができる。例えば、積層ラミネート型の二次電池の場合、外装体としては、アルミニウム、シリカをコーティングしたポリプロピレン、ポリエチレン等のラミネートフィルムを用いることができる。特に、体積膨張を抑制する観点から、アルミニウムラミネートフィルムを用いることが好ましい。
【実施例】
【0127】
(実施例1)
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、その主旨を超えない範囲において適宜変更して実施することが可能である。図1は本実施例で作製したリチウム二次電池の構成を示す模式図である。
【0128】
図1に示すように、リチウム二次電池は、アルミニウム箔等の金属からなる正極集電体3上に正極活物質を含有する正極活物質層1と、銅箔等の金属からなる負極集電体4上に負極活物質を含有する負極活物質層2と、を有する。正極活物質層1及び負極活物質層2は、電解液、およびこれを含む不織布、ポリプロピレン微多孔膜などからなるセパレータ5を介して対向して配置されている。図1において、6及び7は外装体、8は負極タブ、9は正極タブを示す。
【0129】
本実施例の正極活物質は以下のように作製した。原料として、MnO、NiO、Fe、TiO、B、CoO、LiCO、MgO、Al、LiFから材料を選択して目的の金属組成比になるように秤量し、粉砕混合した。原料混合後の粉末を焼成温度500〜1000℃で8時間焼成することで、LiNi0.5Mn1.5を作製した。正極活物質としてのLiNi0.5Mn1.5と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)(5質量%)と、導電剤としてカーボンブラック(5質量%)と、を混合して正極合剤とした。該正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンに分散させることにより、正極用スラリーを調製した。この正極用スラリーを厚さ20μmのアルミニウム製集電体の片面に、均一に塗布した。単位面積当たりの初回充電容量が2.5mAh/cmとなるように塗布膜の厚さを調整した。乾燥させた後、ロールプレスで圧縮成型することにより正極を作製した。
【0130】
負極活物質としては人造黒鉛を用いた。人造黒鉛と、N−メチルピロリドンにPVDFを溶かしたものに分散させ、負極用スラリーを調製した。負極活物質、結着剤の質量比は90/10とした。この負極用スラリーを厚さ10μmのCu集電体上に均一に塗布した。乾燥させた後、ロールプレスで圧縮成型することにより負極を作製した。
【0131】
1.5cm×3cmに切り出した正極と負極をセパレータを介して対向するように配置させた。正極は5枚、負極は6枚を交互に重ねた。セパレータには、厚さ25μmの微多孔性ポリプロピレンフィルムを用いた。
【0132】
非水電解溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジメチルカーボネート(DMC)と、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)(PTTFE)と、フッ素化鎖状エーテル(1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,3,3−テトラフルオロプロピルエーテル)(TFETFPE)とを混合した溶媒を用いた。以下、本溶媒を溶媒EC/DMC/PTTFE/TFETFPEとも略す。PTTFEの体積割合は40%とした(体積比:EC/DMC/PTTFE/TFETFPE=3/1/4/2)。この非水電解溶媒にLiPFを1mol/lの濃度で溶解させ、電解液を調製した。これに、添加剤として下記式(11)で表される環状ジスルホン酸エステル(1,5,2,4−ジオキサジチアン−2,2,4,4−テトラオキシド)を0.67wt%入れた。
【0133】
【化9】
【0134】
上記の正極、負極、セパレータ、及び電解液を、ラミネート外装体の中に配置し、ラミネートを封止し、リチウム二次電池を作製した。正極と負極は、タブが接続され、ラミネートの外部から電気的に接続された状態とした。
【0135】
まず、下記の充電条件で充放電を行った。
【0136】
充電条件:定電流定電圧方式、充電終止電圧4.75V、充電電流10mA、全充電時間2.5時間
放電条件:定電流放電、放電終止電圧3.0V、放電電流50mA
【0137】
次に、温度20℃または45℃とし、下記の条件で充放電サイクル試験を行った。
【0138】
充電条件:定電流定電圧方式、充電終止電圧4.75V、充電電流50mA、全充電時間2.5時間
放電条件:定電流放電、放電終止電圧3.0V、放電電流50mA
【0139】
20℃500サイクル後の容量維持率は84%、45℃200サイクルでのガス発生量は0.3ccであった。ガス発生量は、セルの重量を大気中と水中で測定し、アルキメデス法で体積を求め、評価前後での体積変化から計算した。容量維持率(%)は、1サイクル目の放電容量(mAh)に対する500サイクル後の放電容量(mAh)の割合である。
【0140】
(比較例1)
非水電解溶媒としてEC/DMC/TFETFPEを混合した溶媒(体積比:EC/DMC/TFETFPE=4/2/4)を用い、添加剤(環状スルホン酸エステル)を入れていない以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製した。20℃500サイクル後の容量維持率は70%、45℃300サイクル後の容量維持率は55%、45℃200サイクルでのガス発生量は0.7ccであった。
【0141】
(比較例2)
非水電解溶媒として前述のEC/DMC/TFETFPE溶媒(体積比:EC/DMC/TFETFPE=4/2/4)に上記式(11)で表される環状ジスルホン酸エステルを1.5wt%加えた。この溶媒を用いた以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製した。45℃300サイクル後の容量維持率は45%、45℃200サイクルでのガス発生量は2.2ccであった。
【0142】
(比較例3)
非水電解溶媒としてEC/DMC/PTTFE/TFETFPE(体積比:EC/DMC/PTTFE/TFETFPE=3/1/4/2)を用い、添加剤(環状スルホン酸エステル)をいれていない以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製した。20℃500サイクル後の容量維持率は20%、45℃300サイクルでのガス発生量は0.3ccであった。
【0143】
上記実施例1および比較例1〜3においては、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する正極活物質を用いた。実施例1においては、環状スルホン酸エステルとして1,5,2,4−ジオキサジチアン−2,2,4,4−テトラオキシド、およびフッ素含有リン酸エステルとしてPTTFEを含有する電解液を用いた。比較例1においては、環状スルホン酸エステルもフッ素含有リン酸エステルも含まない電解液を用いた。比較例2においては、環状スルホン酸エステルを含むが、フッ素含有リン酸エステルを含まない電解液を用いた。比較例3においては、フッ素含有リン酸エステルを含むが、環状スルホン酸エステルを含まない電解液を用いた。
【0144】
比較例2では、電解液に環状ジスルホン酸エステルを加えることにより、比較例1と比べて、容量維持率はほとんど変わらなかったが、ガス発生量が増加した。また、比較例3では、電解液にPTTFEを加えることにより、比較例1と比べて、ガス発生量は大きく減少したが、容量低下が顕著であった。これに対して実施例1では、環状ジスルホン酸エステルとPTTFEとを加えたことにより、ガス発生量は比較例3と同程度まで減少し、容量維持率は比較例1,2,3いずれよりもはるかに向上した。すなわち、環状ジスルホン酸エステルとフッ素含有リン酸エステルの両者を加えることにより、容量維持率の向上およびガス発生量の抑制という効果が、それぞれ一方のみを加えた場合より遙かに良好な結果を示した。
【0145】
(実施例2)
非水電解溶媒としてECと、PTTFEと、TFETFPEとを混合した溶媒(体積比:EC/PTTFE/TFETFPE=3/5/2)に環状モノスルホン酸エステル(プロパンスルトン)を3wt%加えた。PTTFEの体積割合は50%である。この溶媒を用いた以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製した。45℃300サイクル後の容量維持率は61%、45℃200サイクルでのガス発生量は0.5ccであった。
【0146】
(比較例4)
非水電解溶媒として前述のEC/PTTFE/TFETFPE(体積比:EC/PTTFE/TFETFPE=3/5/2)を用い、添加剤(環状スルホン酸エステル)を入れていない以外は、実施例2と同様にして二次電池を作製した。45℃300サイクル後の容量維持率は51%、45℃200サイクルでのガス発生量は0.5ccであった。
【0147】
実施例2では、添加剤としてプロパンスルトン(PS)を用いたが、ガス発生量は変わらず、維持率を向上させることができた。
【0148】
(実施例3)
非水電解溶媒としてECと、プロピレンカーボネート(PC)と、PTTFEと、TFETFPEとを混合した溶媒(体積比:EC/PC/PTTFE/TFETFPE=3/1/4/2)に環状ジスルホン酸エステル(1,5,2,4−ジオキサジチアン−2,2,4,4−テトラオキシド)を0.57wt%加えた。PTTFEの体積割合は40%である。この溶媒を用いた以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製した。20℃500サイクル後の容量維持率は77%、45℃200サイクルでのガス発生量は0.2ccであった。
【0149】
(実施例4)
非水電解溶媒としてECと、PCと、PTTFEと、TFETFPEとを混合した溶媒(体積比:EC/PC/PTTFE/TFETFPE=2/1/2/5)に環状ジスルホン酸エステル(1,5,2,4−ジオキサジチアン−2,2,4,4−テトラオキシド)を0.8wt%加えた。PTTFEの体積割合は20%である。この非水電解溶媒にLiPFを0.8mol/lの濃度で溶解させた。この溶媒を用いた以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製した。20℃200サイクル後の容量維持率は83%、45℃100サイクルでのガス発生量は0.03ccであった。
【0150】
実施例3,4は、電解液の非水電解溶媒としてDMCの代わりにPCを用いて、組成比を変えたものだが、ガス発生量が抑制されており、容量維持率も良好な値であった。
【0151】
上記結果は、本実施形態の電解液が、4.6V以上の高電圧に適していることを示しており、同程度の電位を示すLiCoPO、Li(Co0.5Mn0.5)O、Li(Li0.20.3Mn0.5)O等の正極材料においても有効であることが示唆される。
【符号の説明】
【0152】
1 正極活物質層
2 負極活物質層
3 正極集電体
4 負極集電体
5 セパレータ
6 ラミネート外装体
7 ラミネート外装体
8 負極タブ
9 正極タブ
図1
【国際調査報告】