特表-13161856IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年10月31日
【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】移動体通信用マーカー
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/59 20060101AFI20151201BHJP
【FI】
   H04B1/59
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
【出願番号】特願2014-512635(P2014-512635)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年4月24日
(11)【特許番号】特許第5774777号(P5774777)
(45)【特許公報発行日】2015年9月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-100538(P2012-100538)
(32)【優先日】2012年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植木 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】大内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】荒玉 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】松島 清人
(72)【発明者】
【氏名】小渡 武彦
(57)【要約】
日中の日射による電子回路基板の温度上昇および夜間の放射冷却による温度低下の抑制と、基板に実装された電子部品からの発熱の効率的放熱を両立した移動体通信用のマーカーを提供する。
地上に設置される無線通信用のマーカー(1)であって、電子回路基板(9)と筐体(7)上面の間には空気層あるいは真空層あるいは発泡材層あるいは繊維材層などの断熱層を有することと、電子回路基板(9)より下側部分は前記断熱層よりも熱伝導率が大きい材料のみで構成されることを特徴とするマーカー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置され、移動体に取り付けられた無線通信装置との間で無線通信を行うマーカーであって、
樹脂材料に覆われた電子回路基板と、
前記電子回路基板の少なくとも移動体側である上側を覆う筐体を有し、
前記筐体の上側部分と前記電子回路基板の間には第1材料または空間を有し、
前記電子回路基板よりも下側は前記第1材料または前記空間よりも熱伝導率が大きい材料で構成されることを特徴とするマーカー。
【請求項2】
前記樹脂材料は、前記第1材料または前記空間よりも熱伝導率が大きい材料であることを特徴とする請求項1に記載のマーカー。
【請求項3】
前記空間は空気層であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマーカー。
【請求項4】
前記空間内は、気体が封入された気体層であり、
前記気体層は、マーカーの外気に対して負圧となっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマーカー。
【請求項5】
前記第1材料は、発泡材料で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマーカー。
【請求項6】
前記第1材料は、繊維材料で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマーカー。
【請求項7】
前記筐体は、マーカーの上面部及び側面部及び下面部を覆うように構成されており、かつ、上面部と側面部が一体構成された部品と、下面部を構成する部品の二つに分割されていることを特徴とする請求項1に記載のマーカー。
【請求項8】
前記電子回路基板は、前記樹脂材料を介して前記筐体下面部の内側に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のマーカー。
【請求項9】
前記筐体は、マーカーの上面部及び側面部及び下面部を覆うように構成されており、
前記筐体の下面部には、矩形溝状の凹凸を有することを特徴とする請求項1に記載のマーカー。
【請求項10】
前記電子回路基板は、電子部品及び無線通信用のアンテナを備えていることを特徴とする請求項1に記載のマーカー。
【請求項11】
前記電子回路基板とは別体の無線通信用アンテナを有し、前記アンテナは前記樹脂材料に覆われていないことを特徴とした請求項1に記載のマーカー。
【請求項12】
前記筐体は、マーカーの上面部及び側面部及び下面部を覆うように構成されており、かつ、上面部と側面部が一体構成された部品と、下面部を構成する部品の二つに分割されており、
前記アンテナは前記筐体の下面部を構成する部品に設置されることを特徴とした請求項11に記載のマーカー。
【請求項13】
前記アンテナは、前記電子回路基板とは異なる高さに設置されることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のマーカー。
【請求項14】
前記筐体は、下面部が開放構造である単一の部品から構成され、
前記第1材料は、固体材料で構成され、
前記電子回路基板を覆う前記樹脂材料は、前記固定材料で構成された前記第1材料に接着されることを特徴とする請求項1に記載のマーカー。
【請求項15】
請求項14に記載のマーカーにおいて、
前記マーカーの下面は、表面に凹凸形状を有する前記樹脂材料で構成されることを特徴とするマーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や鉄道車両などの移動体との無線通信に用いられる地上固定型の無線通信ユニットであるマーカーに係り、特に、マーカーに搭載される電子回路基板の温度変化を抑制するための基板の実装構造にかかる。
【背景技術】
【0002】
移動体通信におけるマーカーとしては、例えば自動車との通信に用いられる路面固定型のマーカーが挙げられる。このような地上固定型のマーカーに関しては、特許文献1および特許文献2の技術がある。
【0003】
特許文献1には、マーカー内部に収納するアンテナの上方部分のレドーム材上面に、比誘電率がレドーム材の比誘電率以下である衝撃吸収材を積層してマーカーを構成することにより、耐衝撃性に優れたマーカーを提供することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、マーカーの開口部を段部に装着した第1蓋で封鎖し、第1蓋の外周面と開口部の内周面との隙間を第2蓋で封鎖することにより、マーカーに加わる衝撃の吸収と、開口部からマーカー内部に侵入しようとする雨水等を阻止することを達成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−258330号公報
【特許文献2】特開2003−209490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題について、図2を用いて説明する。図2に示すマーカー1は、特許文献1及び2に記載されたマーカーを一般化したものである。
【0007】
マーカー1の大部分は、屋根のない屋外環境に設置されるため、太陽からの日射6に曝される。日射6の一部は筐体7の上面部で反射されるが、残りの日射エネルギは筐体材料に吸収されて熱に変換され、筐体の表面温度を上昇させる。発明者らの見積もりでは、筐体の材料特性とマーカー設置環境の組み合わせによっては、筐体表面温度は100℃以上にも達する。この熱は筐体7および基板を覆う材料5を介した熱伝導8により電子回路基板9へと伝わるため、結果として電子回路基板9の温度を上昇させる。一方、夜間には筐体7上面から天空への熱放射により、外気温よりも筐体表面温度が低下する現象が生じる。すなわち、一日の外気温変動よりも筐体表面温度の変動は大きくなる。この筐体表面温度の変動が内部へ伝わると、電子回路基板9もまた厳しい温度変動に曝される。
【0008】
マーカーがこの温度変動が大きくなる厳しい環境に置かれた場合には、電子回路基板9上の電子部品やはんだ接合部の寿命が低下するという課題がある。また、昼間の高温時には、熱によって電子回路が異常動作を起こす可能性もある。
【0009】
このような筐体表面温度の変動に伴う電子回路基板の温度変動の問題の対策としては、基板を覆う材料5として発泡ウレタン材などの熱伝導率の低い材料を用いることが考えられる。しかし、一方で基板に搭載された電子部品自体も発熱し、この電子部品から発生する熱を筐体外部へと逃がす必要もあるため、熱伝導率の低い材料で基板を覆う構造では、電子部品から発生する熱を筐体外部へと逃がし難くなる。
【0010】
本発明は、筐体7上面における日射6および放射冷却に起因した温度変動から基板を保護し、基板に実装された電子部品からの発熱を効率良くマーカーの外部へ放熱することができるマーカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、地上に設置される移動体通信用のマーカーであって、電子回路基板と筐体上側部分の間には空気層あるいは真空層あるいは発泡材層あるいは繊維材層などの断熱層を有することと、電子回路基板より下側は前記断熱層よりも熱伝導率が大きい材料で構成されることを特徴とするマーカーである。
【0012】
ここで、本願における「断熱層」は、上述した空気層、真空層、発泡材層、繊維材層や、断熱効果が著しく高い部材で構成された層に限られるものではなく、広義的には、電子回路基板より下側に配置された部材よりも熱伝導率が低い材料を広く含む。
【発明の効果】
【0013】
日射および放射冷却に起因した電子回路基板の温度変動を抑制し、基板に実装された電子部品からの発熱を効率良くマーカーの外部へ放熱することができるマーカーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は自動車用マーカーの設置形態の斜視図である。
図2図2は従来のマーカーの図1中A−A′断面図である。
図3図3は本発明の実施例1の一形態によるマーカーの分解図である。
図4図4は本発明の実施例1の一形態によるマーカーの上面側からの斜視図である。
図5図5は本発明の実施例1の一形態によるマーカーの下面側からの斜視図である。
図6図6は本発明の実施例1の一形態によるマーカーの図4中B−B′断面図である。
図7図7は本発明の実施例2の一形態によるマーカーの図4中B−B′断面図である。
図8図8は本発明の実施例3の一形態によるマーカーの断面図である。
図9図9は本発明の実施例4の一形態によるマーカーの断面図である。
図10図10はマーカー−車両側アンテナ間の無線通信の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、各実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0016】
移動体として自動車を例にとり、マーカーと車両間の無線通信について図10を用いて説明する。路面に固定されたマーカー1は、その上を通過する車両23に搭載された車上側アンテナ24と無線通信25を行う。例えば有料道路上などに設置する場合では、車両23からは車種や流入料金所の情報などを受信し、これらの情報から計算された通行料金情報などを算出して車両23に伝送することが可能である。これによって、車両23を停止させることなく、料金の収受が可能となる。また、走行区間の制限速度の情報や、進路上のカーブや交差点の情報などを車両23に伝送し、車両23側でこれらの情報を処理して視覚情報や音声情報としてドライバーに通知したり、車両23の速度や加速度と照合した上で、自動的に安全な速度まで減速させたりすることも可能である。このように移動体通信における無線通信は、金銭授受の管理や安全性の向上に利用されることが多いため、高い信頼性を要求される。
【0017】
マーカーの路面上の設置形態を図1に示す。図1に示すように、マーカー1の大部分は、屋外に設置されるため、昼間の直射日光により外気温よりも高温となり、夜間は放射冷却によって外気温よりも低温となり、マーカーは非常に苛酷な温度サイクル環境に曝される。この温度サイクルがマーカー内部の電子回路基板に及ぶと、マーカーの内部の電子部品や電子回路上のはんだ接合部の寿命を低下させる可能性があるほか、昼間の日射により電気回路基板の温度上昇が非常に大きくなると電子回路の異常動作が生じる可能性もある。
【0018】
図3に本実施例におけるマーカーの分解図を示す。マーカー1は、上面および側面を構成する上側筐体部12と、下面を構成する下側筐体部13と、電子部品および無線通信アンテナが搭載された電子回路基板9と、および上側筐体部12に直接モールドされたボルト固定用のインサート14を備えている。
【0019】
当該上側筐体部12、下側筐体部13は、内部電子回路基板9およびアンテナを外的環境から保護する役目を担っており、無線通信における電波透過性および振動や踏みつけに対する強度を考慮して、繊維強化樹脂材料であるFRP(Fiber Reinforced Plastics)などの硬質材料で構成される。また、電子回路基板9はゴム状の基板封止樹脂11によって全面が覆われるように封止される。なお、マーカーはボルト2によって取付台10に対して固定されるため、マーカーの下面が路面や台座に直接接触することはない。取付台10の路面または台座への固定方法は、路面または台座へ直接ボルト締結する方法や、台座の場合はベルトで固定する方法などがある。
【0020】
下側筐体部13の内側には外周部とボルト貫通部に内壁15が設けられており、マーカーの製造時には、まず、下側筐体部13の内側底面との間に隙間を保った状態で電子回路基板9を下側筐体部13に設置した後、流動状態となった基板封止樹脂11を直接注型することで、電子回路基板9を下側筐体部13に密着した状態で固定し、電子回路基板9の全面を基板封止樹脂11で覆うことが可能となる。その後、上側筐体部12と、電子回路基板9が固定された下側筐体部13を組み合わせ、ボルト2及びボルト固定用のインサート14により、マーカーと取付台10を固定する。上側筐体部12と下側筐体部13を組合せる時、上側筐体部12の内側上面と基板封止樹脂11の間に空間を有するマーカーを構成することが可能である。
【0021】
図4にマーカーを上面側から見た斜視図を示す。マーカーは、ボルト2によりマーカーと取付台10を固定するための貫通部を2箇所有する。また、マーカーの側面にはマーカーと上位地上装置とを通信線で接続するためのコネクタを有し、当該コネクタの両側面には突起部を備えている。車両通過の際にタイヤ等に弾かれて路面上の異物が衝突するため、当該突起部を有することにより、マーカーと通信線の接続部分に異物が衝突し、接続部分を破損するのを防止できる。
【0022】
図5にマーカーを下面側から見た斜視図を示す。図5に示すように、下側筐体部13は、凹凸部16を設けており、この凹凸部により、筐体の下側面の表面積を大きくし、マーカー下側部分からの放熱効果の向上を図っている。また、下側筐体部13は上側筐体部12の側面部の内側に入り込むように配置されている。このような構成により、雨水がマーカーの内部へ浸入し難くすることを可能とする。また、取付台10が、下側筐体部13の全面を覆う構成とすると、下側筐体部13の下側面からの放熱性能を低下させる虞があるため、取付台10は、下側筐体部13の一部分を覆うように構成される。
【0023】
図6図4に記載のB−B′間でマーカーを切断した際のB−B′断面図を示す。図6において、斜線で示した部分は切断された面を示している。図6に示すように、上側筐体部12と電子回路基板9を覆う基板封止樹脂11の間には空間17が設けられる。
【0024】
この空間17すなわち空気層(空気以外の他の気体層であっても良い)は、そのまま断熱層として機能し、日射により高温となるマーカー上面部から電子回路基板9への熱伝導を効果的に抑制することができる。この空間17に、例えば発泡ウレタンやグラスウールなどの断熱材を設置しても断熱層として機能させることができる。また、この空間を真空状態とし、空気層よりもさらに断熱効果の向上を図ることも可能である。なお、この場合には完全に真空状態とすることは容易ではないため、大気圧よりも気圧が低い状態の空気層または他の気体を封入することによっても、空気層よりも大きな断熱効果を発揮することが可能である。
【0025】
このような構造を採用することは、昼間の日射による温度上昇から電子回路基板9を保護するだけではなく、放射冷却による夜間の温度低下から電子回路基板9を保護する上でも効果的である。
【0026】
一方、電子回路基板9は基板封止樹脂11を介して下側筐体部13に接触するため、マーカー下面側との熱伝導は、マーカー上面側と比較して大きくなる。日中において、マーカーの下面側は日陰となるため、下面側の表面温度は、上面側のように直射日光によって表面温度が上昇するという懸念はない。路面または台座は直接日射に曝されるため、昼間の温度上昇は大きくなるが、取付台10によって路面または台座とマーカー下面が直接接触することはなく、マーカー下面の大部分は外気と接触する構造となるため、高温となった路面または台座からの熱伝導の影響は少なく、マーカー下面側の温度変化は、周囲の気温変化と同程度である。したがって、電子回路基板9はマーカー1のより下側に搭載することが望ましい。ここで、取付台10はボルト接合部分に突起部19を備えており、マーカーと固定された際に、当該突起部19によりマーカー下面と取付台10との間に空間を設けている。このようにマーカー下面と取付台10との間に空間を設けることにより、マーカー下面からの放熱機能を確保することが可能となる。
【0027】
上記の日射による温度上昇に加えて考慮すべき課題は、電子回路基板に実装された素子の発熱である。マーカーは、基本的には車両通過時のみに動作するため、定常的な素子発熱が発生する可能性は小さい。しかし、車上アンテナ位置とマーカー位置が一致した状態で車両が停止した場合には、車上アンテナによる無線給電が継続され、マーカーに搭載された素子の発熱が増大する可能性がある。仮に前記断熱層と同一の材質で基板を覆うと、日射による基板の温度上昇を抑制する効果は高まるものの、素子発熱を放熱する上では逆効果となる。そこで基板封止樹脂11に熱伝導率の高い(少なくとも断熱層よりも熱伝導率の高い)ゴム状のポリウレタン系ポッティング剤などを採用することで、熱を効果的に素子外へと逃がし、発熱時の素子温度の上昇を抑制することができる。この熱は最終的には基板封止樹脂11からマーカー外部へと逃がす必要があるが、マーカー上面側は前述のように日射によって高温となるため、比較的低温である筐体下面側から放熱を図るのが望ましい。また、電子回路基板9と下側筐体部13の内側面の間は、基板封止樹脂11によって密着される。本実施例の構造を採用すれば、電子回路基板9はマーカー上面よりも下面に近接しており、さらに、電子回路基板9の下側には断熱層を設けていないため、マーカーの下側から効率的に放熱を行うことができる。
【0028】
基板封止樹脂11の厚さは、電子回路基板9に実装された電子部品の高さや、製造時における封止樹脂の流動性、水分透過性と厚さの関係などを考慮しながら極力薄く設定することが望ましい。封止樹脂厚を薄くすることにより、基板搭載位置が筐体下面により接近し、下面からの放熱性能はさらに向上する。したがって、電子回路基板9に実装された電子部品が発熱した場合でも、本構造のマーカー1では、低温となる筐体7下面側から効率的に放熱することが可能となる。
【0029】
また、アンテナの周囲あるいは近傍に誘電損失が高い材料が存在すると、電力損失が大きくなり無線通信性能が低下するため、設計時にはアンテナの実装構造には注意を払う必要があるが、特にアンテナを電子回路基板上に実装し、基板封止樹脂11に誘電損失が大きい材料を用いた場合には、アンテナと誘電損失が大きい材料が密着するため、無線通信性能が大きく低下する可能性がある。そのため、封止樹脂厚を薄くすることにより、電子回路基板9に搭載されたアンテナの無線通信を良好に行うことが可能となる。
【0030】
また、マーカー上面にはアスファルトの粉末や鉄粉、水滴などの無線通信を妨げるデブリが付着する場合がある。場合によっては、マーカー1が冠水する可能性もある。これらの場合、アンテナをマーカー筐体の上面側に設置した場合と比較すると、本構造では電子回路基板9に搭載されたアンテナと、マーカー上面に付着したデブリとの間の距離を大きくとることができるため、電波の減衰量をより小さくすることが可能である。
【0031】
また、マーカーは路面からやや上方に設置されるため、車両通過の際にタイヤ等に異物が弾かれて、マーカー1下面に衝突する可能性がある。この場合でも、下側筐体部13によりマーカーの下側を覆う本構造を採用すれば、筐体下面側が硬質材料で覆われているため、異物衝突から電子回路基板9を保護することができる。
【0032】
また、マーカー内部への水分などの浸入を防ぐためには、上側筐体部12および下側筐体部13の接合面端部18は、直接雨滴がかからないマーカー下面側となるような構造をとることが望ましい。つまり、下側筐体部13は上側筐体部12の側面部の内側に入り込むように配置することが望ましい。
【0033】
また、下側筐体部13のマーカー下面側には、図5に示すように凹凸部16を設けて、表面積を大きくし、マーカー下側部分からの放熱効果の向上を図ってもよい。また、無線通信アンテナより下側は、通信用電波の透過面とはならないため、下側筐体部13には熱伝導率のより大きいアルミニウム合金などの金属材料を用いてもよい。
【0034】
上述した本実施例におけるマーカーは、筐体上面部と樹脂封止された電子回路基板9の間に設けられた断熱層によって、筐体上面部から電子回路基板9への熱伝導を大幅に低減することが可能となる。このことにより、低緯度地域などで高日射環境に置かれた場合でも、電子回路基板の温度上昇を大幅に抑制することが可能となり、マーカーのロバスト性を高めることが可能となる。
【0035】
また夜間は、筐体から外部への熱放射により表面温度は気温よりも小さくなるが、この際には上記断熱層により、電子回路基板から筐体上面への熱伝導を大幅に抑制することが可能となり、結果として電子回路基板が曝される一日の温度変動をより小さくできる。これによって、温度環境が苛酷な環境に設置された場合であっても、電子回路基板に実装されている電子部品やはんだ接合部の寿命を向上させることが可能となり、マーカーの長期信頼性の向上に寄与することができる。
【0036】
一方で、電子回路基板から筐体下面側の間には上記断熱層を設けずに、逆に断熱層よりも熱伝導の大きい材料で構成することにより、電子回路部品より発生した熱を、日射が直接当たらない筐体下面から効率的に放熱することが可能となる。
【0037】
また、筐体下面への熱伝導の向上を目的として、電子回路基板を熱伝導に優れる樹脂によって封止する場合、無線通信用アンテナの一部あるいは全部を電子回路基板から分離して、樹脂封止されない構造とすることで、基板封止樹脂によって吸収されるエネルギを少なくすることが可能である。
【実施例2】
【0038】
実施例1では、電子回路基板9上に無線通信用アンテナを搭載した図6の構造を採用していたが、実施例2では、無線通信用アンテナを分離アンテナ20として電子回路基板9から分離した図7に示す構造とするものである。他の構造及び製造方法は、実施例1と同様である。
【0039】
実施例1の構造では無線通信アンテナ上にも基板封止樹脂11が充填されることになる。基板封止用途に用いられる樹脂材料の中には、誘電損失が大きいものも存在するため、誘電損失が大きい樹脂を採用した場合は、実施例1の構造では無線電力損失が大きく、無線通信の信頼性が低下する可能性がある。
【0040】
その場合は、図7に示すように、無線通信用アンテナを分離アンテナ20として電子回路基板9から分離した構造とすることが望ましい。分離アンテナ20の設置位置としては、上側筐体部12に固定する方法も考えられるが、本実施例のマーカーは、電子回路基板9は下側筐体部に設置されているため、電子回路基板9と分離アンテナ20間の配線や、組み立て方法が煩雑となる。そのため分離アンテナ20は下側筐体部13に設置することが望ましく、内壁15の外側あるいは上部に固定する方法が最適である。特に後者の内壁15の上部に固定する方法をとれば、アンテナ面と基板封止樹脂11の高さをずらすことが可能になり、無線電力損失を抑制する効果は大きい。
【実施例3】
【0041】
実施例1および2においては、マーカー筐体は上側筐体部12と下側筐体部13の二つの部材から構成されているが、実施例3では、図8に示すように上側筐体部12のみとし、下側筐体部13の無い構造としたものである。他の構造は、実施例1と同様である。つまり、基板封止樹脂11がマーカー下部の外面を構成している構造となっている。また、車上側と通信を行うためのアンテナを電子回路基板9内に配置した場合には、通信性能を向上させるために、電子回路基板をマーカーの上面に近い位置に配置したいという技術的な要求があるが、日射によるマーカー上面からの熱を考慮すると、電子回路基板9は、マーカーの上面から離れた位置に配置したいという相反する技術的な要求がある。そのため、本実施例のように、電子回路基板9の上面を覆う固体断熱材21よりも熱伝導率の大きな材料で基板封止樹脂11を構成することにより、電子回路基板の下側に配置される材料を、電子回路基板の上側に配置される材料よりも熱伝導率が高い材料とすることができる。本構成により、通信性能を確保しつつマーカー上面から電子回路基板へ伝達される熱量を最小限に抑えながら、回路発熱時にはマーカー下面側から効果的に放熱を行うことができる。
【0042】
このような構造をとることで、実施例1や2と比較して、電子回路基板9をマーカー下面のより近くに配置することが可能となるため、筐体下面側からの放熱をより効果的に促進することが可能である。また、筐体部材の部品点数を1点のみとすることができ、製品の低コスト化に寄与できる。さらに、実施例1や2のような上側筐体部12と下側筐体部13の筐体部間の接触部分が存在しないため、電子回路基板9の水密性を確保する上では有効な手段である。また、図8では示していないが、基板封止樹脂11の外面を凹凸形状とすることにより、筐体の下側面の表面積を大きくし、マーカー下側部分からの放熱効果の向上を図ることができる。
【0043】
しかしながら、実施例1や実施例2の構造であれば、製造時に、電子回路基板9を下側筐体部13に固定した後に、基板封止樹脂11を注型して電子回路基板9を封止することが可能であるが、一方、下側筐体部の無い本実施例では、この製造方法をとることはできない。したがって、本実施例の構造を実現するためには、はじめに上側筐体部12に発泡ウレタンなどの固体断熱材21を予め充填して断熱層の厚さを確保しておき、その後、固体断熱材21との間に隙間を保った状態で電子回路基板9を設置し、その後に、基板封止樹脂11を注型するといった製造方法が望ましい。
【0044】
本構造は、マーカー下面側で基板封止樹脂11がむき出しとなるため、実施例1と比較して冷却性能は高いが、物体の衝突に対する強度が低いという特徴を有する、そのため、マーカー下面からの物体衝突の可能性の無い路面に設置されるマーカーなどには最適な構造である。
【実施例4】
【0045】
前述のように、実施例3においては、マーカー下面側で基板封止樹脂11がむき出しとなっており、基板封止樹脂11に軟質材料を用いた場合では車両走行時にタイヤなどで弾かれた異物の衝突からの基板保護性能は、実施例1および実施例2と比較すると低下する。実施例4では、これを補うために、図9に示すように基板封止樹脂11の下面部分に、硬質材料で構成された保護部22を設けた構造である。保護部22の形成方法には、エポキシ系樹脂などの硬質樹脂を注型する方法や、予め成形したFRP板、あるいは金属板を固定する方法などが挙げられる。
【0046】
なお、他の構造は、実施例1と同様である。
【符号の説明】
【0047】
1 マーカー
2 ボルト
3 路面
4 台座
5 基板を覆う材料
6 日射
7 筐体
8 熱伝導
9 電子回路基板
10 取付台
11 基板封止樹脂
12 上側筐体部
13 下側筐体部
14 インサート
15 内壁
16 凹凸部
17 空間
18 接合面端部
19 突起部
20 分離アンテナ
21 固体断熱材
22 保護部
23 車両
24 車上側アンテナ
25 無線通信
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10

【手続補正書】
【提出日】2014年10月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
マーカーの路面上の設置形態を図1に示す。図1に示すように、マーカー1の大部分は、屋外に設置されるため、昼間の直射日光により外気温よりも高温となり、夜間は放射冷却によって外気温よりも低温となり、マーカーは非常に苛酷な温度サイクル環境に曝される。この温度サイクルがマーカー内部の電子回路基板に及ぶと、マーカーの内部の電子部品や電子回路上のはんだ接合部の寿命を低下させる可能性があるほか、昼間の日射により電子回路基板の温度上昇が非常に大きくなると電子回路の異常動作が生じる可能性もある。

【手続補正書】
【提出日】2015年5月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置され、移動体に取り付けられた無線通信装置との間で無線通信を行うマーカーであって、
樹脂材料に覆われた電子回路基板と、
前記電子回路基板の少なくとも移動体側である上側を覆う筐体を有し、
前記筐体の上側部分と前記電子回路基板の間には第1材料または空間を有し、
前記電子回路基板よりも下側は前記第1材料または前記空間よりも熱伝導率が大きい材料で構成され
前記電子回路基板とは別体の無線通信用アンテナを有し、
前記アンテナは前記樹脂材料に覆われていないことを特徴とするマーカー。
【請求項2】
前記筐体は、マーカーの上面部及び側面部及び下面部を覆うように構成されており、かつ、上面部と側面部が一体構成された部品と、下面部を構成する部品の二つに分割されており、
前記アンテナは前記筐体の下面部を構成する部品に設置されることを特徴とする請求項1に記載のマーカー。
【請求項3】
前記アンテナは前記電子回路基板とは異なる高さに設置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマーカー。
【請求項4】
地上に設置され、移動体に取り付けられた無線通信装置との間で無線通信を行うマーカーであって、
樹脂材料に覆われた電子回路基板と、
前記電子回路基板の少なくとも移動体側である上側を覆う筐体を有し、
前記筐体の上側部分と前記電子回路基板の間には第1材料または空間を有し、
前記電子回路基板よりも下側は前記第1材料または前記空間よりも熱伝導率が大きい材料で構成され、
前記筐体は、下面部が開放構造である単一の部品から構成され、
前記第1材料は固体材料で構成され、
前記電子回路基板を覆う前記樹脂材料は、前記固体材料で構成された前記第1材料に接着されることを特徴とするマーカー。
【請求項5】
前記マーカーの下面は表面に凹凸形状を有する前記樹脂材料で構成されることを特徴とする請求項に記載のマーカー。
【国際調査報告】