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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2013年11月7日
【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】鋼製壁
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/04 20060101AFI20151201BHJP
【FI】
   E02D5/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2014-513324(P2014-513324)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2012年5月1日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(72)【発明者】
【氏名】永尾 直也
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏征
【テーマコード(参考)】
2D049
【Fターム(参考)】
2D049EA01
2D049EA02
2D049EA03
2D049FB03
2D049FB12
2D049FB13
2D049FB14
2D049FC03
2D049FE08
(57)【要約】
容易に高い止水性を持たせることができる鋼矢板を連結してなる壁体を鋼管またはH形鋼で補強し、かつ、施工が容易な鋼製壁を提供する。
複数のハット形鋼矢板1が継手により連結されて壁体4が設けられている。壁体4を補強する鋼管2が壁体4の長手方向に沿って並べて設けられている。壁体4と鋼管2との間に間隔が設けられている。壁体4は、鋼矢板壁として長手方向に凹凸を繰り返す波板状に形成されている。鋼管2は、壁体4の凹部に一部が入り込むように配置されている。壁体4の頭部と鋼管2の頭部とが連結されている。壁体4と鋼管2との連結は、コンクリートにより行われる。壁体4と鋼管2との間で荷重伝達が行われる。これにより、鋼製壁3は、作用する土圧や水圧を壁体4と鋼管2とで分担して受け持つ構造とすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼矢板が継手により連結されて長手方向に凹凸を繰り返す波板状の壁体が設けられ、
前記壁体を補強する鋼管またはH形鋼からなる複数の補強材が前記壁体の長手方向に沿って、前記壁体と間隔をあけて並べて設けられ、
前記補強材の一部が前記壁体の凹部内に入り込んだ状態にされ、
前記壁体と前記補強材とが頭部で連結されていることを特徴とする鋼製壁。
【請求項2】
前記補強材が前記鋼矢板に対して一枚おきまたは複数枚おきに設置されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製壁。
【請求項3】
前記壁体と前記補強材とは、両者の頭部に跨って打設されたコンクリートにより頭部で連結されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製壁。
【請求項4】
前記壁体と前記補強材とは、両者の間に設置された鋼板をそれぞれ両者に溶接接合することにより頭部で連結されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製壁。
【請求項5】
前記壁体と前記補強材とは、両者の頭部に跨って打設されたコンクリートにより頭部で連結されていることを特徴とする請求項4に記載の鋼製壁。
【請求項6】
前記補強材が前記鋼管であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鋼製壁。
【請求項7】
前記壁体と前記補強材との間には、前記壁体の前記鋼矢板と前記補強材とが施工中に接触することがない間隔が設定されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鋼製壁。
【請求項8】
前記壁体の相対的に大きな圧力を受ける側に、前記補強材が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鋼製壁。
【請求項9】
前記壁体の相対的に大きな圧力を受ける側の反対側に、前記補強材が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鋼製壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土留め工、締切工、護岸、埋立、堤防等で用いられる鋼製壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼矢板や鋼管矢板は、土留め工、締切工、護岸、埋立、堤防等の様々な工事で用いられている。鋼矢板と鋼管矢板は求められる剛性によって使い分けられる。一般に鋼矢板は剛性が低くてもよい場面、鋼管矢板は剛性の高いものが要求される場面で使用される。
【0003】
ここで、鋼管矢板は鋼矢板に比べて継手の余裕量が大きい。したがって、締切工や護岸などを構築する際に止水性が要求される場合には、一般に継手空間に袋詰めセメントモルタルを充填する方法が採用されている。この方法では、河川・港湾等の水辺環境で用いる場合にモルタルを詰める袋が破損するとモルタルが流出してしまう可能性がある。また、袋どうしの隙間が水みちになりうるので、厳しい止水性を求められる用途には必ずしも適さない。
【0004】
そこで、海面廃棄物処分場などの遮水性護岸等のように、処分場内部の水の漏洩防止が厳しく要求される場合の方策として以下のものが提案されている。すなわち、鋼管矢板の継手空間に漏れ防止対策が施され、この継手空間にモルタル等の充填剤が直接充填された構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようにモルタルを充填する場合は、鋼管矢板を地中に打ち込んだ後、継手内部の土砂をウォータージェット等で排土して、袋詰めモルタルやモルタルを継手内に充填するという作業を行う必要がある。したがって、鋼管矢板の現場作業に手間と時間とを要するという欠点を有している。
【0005】
これに対し、鋼矢板は、鋼管矢板に比べて剛性は低くなるものの、止水性に優れ、継手分の遊間が小さく、何も対策を行わない状態であっても鋼管矢板と比べて止水性が高い。また、予め継手に膨潤性止水材を塗装しておくことにより、鋼矢板の止水性をさらに高めることもできる。この方法により、上記対策を行った鋼管矢板と同等以上の止水性能を発揮することが可能である上、現場作業の手間の省略が可能になる。
【0006】
そこで、鋼矢板の剛性を高める技術として、護岸となる鋼矢板壁と、護岸より陸側に設けられた控え工とをタイロッドで連結するタイロッド式鋼矢板護岸等のタイロッド式の鋼矢板壁が知られている。
タイロッド式の鋼矢板壁では、鋼矢板壁と控え工とを長いタイロッドで連結するために、大きな施工スペースを必要とする。
また、同様にタイロッド式の鋼矢板壁では、鋼矢板壁と控え工を長いタイロッドで連結するために、タイロッドは引っ張り力を伝達できるが圧縮力を伝達できない。
【0007】
さらに、鋼矢板の剛性を高める技術として、壁体を構成するU形(ハット形)鋼矢板にH形鋼を一体化して補剛された組合せ鋼矢板を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このような構造の組合せ鋼矢板は、断面積が大きくなり、打設時の抵抗が大きくなるため、施工方法が限定される。特に、硬質地盤での施工が難しくなる。
【0008】
そこで、硬質地盤での施工のために、地盤を掘削するアースオーガ(掘削装置)を用いた工法を適用することが考えられる。しかし、組合せ鋼矢板の断面形状が広い範囲に渡るため、工夫が必要になる。その工夫の一例として、特許文献2の組合せ鋼矢板に類似する構造の組合せ鋼矢板を建て込む場合に、以下のような工法を用いることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。すなわち、前記組合せ鋼矢板の打設時にアースオーガで掘削する範囲と、この組合せ鋼矢板の前に打設された組合せ鋼矢板の建て込み時にアースオーガで掘削された範囲とに跨るように、前記組合せ鋼矢板を打設する工法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3756755号公報
【特許文献2】特開2002−212943号公報
【特許文献3】特許第4074241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、鋼製壁としての剛性は、鋼矢板壁より鋼管矢板壁の方が高い。一方、継手における止水性能は、鋼管矢板壁より鋼矢板壁の方が容易に高められる。
そこで、前記特許文献2に示されるように、止水性能を高くし易い鋼矢板壁に形鋼を組み合わせることにより、剛性と高い止水性能とを兼ね備えた鋼製壁を構築できる。
しかし、鋼矢板と形鋼とを組み合わせることにより、断面積が大きくなる。したがって、上述のように、使用可能な施工方法が制限される。
【0011】
ここで、鋼矢板と形鋼等の補強材とを接合して一体とせずに、鋼矢板と形鋼とを接触した状態として、鋼矢板からなる鋼矢板壁(壁体)を形鋼で補強することが考えられる。この場合には、それぞれを別々に施工することも可能になる。しかし、鋼矢板と補強材とを別々に施工する場合に、先に施工した部材に対して、後から施工する部材を先に施工した部材に接触させた状態で打設すると以下の問題が生じる。すなわち、鋼矢板と補強材との摺動抵抗により、打設時に大きな力が必要になったり、また、騒音や振動が発生したりする虞がある。施工精度によっては、これら鋼矢板と補強材とのいずれかに変形が生じる可能性もある。また、後から施工する部材を先に施工した部材に接触させた状態で打設するために、後から打設する部材の施工方法が制限される。例えば、補強材としての鋼管を回転圧入することが困難になるとともに、部材を振動させて打設するバイブロ系の施工方法を用いることが困難になる。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、容易に高い止水性を持たせることができる鋼矢板を連結してなる壁体を鋼管またはH形鋼で補強した構造としながら、施工が容易な鋼製壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明の鋼製壁は、複数の鋼矢板が継手により連結されて長手方向に凹凸を繰り返す波板状の壁体が設けられ、前記壁体を補強する鋼管またはH形鋼からなる複数の補強材が前記壁体の長手方向に沿って、前記壁体と間隔をあけて並べて設けられ、前記補強材の一部が前記壁体の凹部内に入り込んだ状態にされ、前記壁体と前記補強材とが頭部で連結されていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、壁体と補強材とが離れているので、施工方法の制約が少なく、補強材としての鋼管やH型鋼を地盤に打設可能な各種施工方法を状況に応じて選択して用いることができる。
すなわち、壁体と補強材とが離れているので、鋼矢板を地盤に打設するとともに連結して壁体を構築する施工と、補強材を地盤に打設する施工とを別々に行うことができる。それに加えて、これら壁体と補強材とが接触していないので、施工が容易になる。例えば、壁体と補強材との間に間隔を設けることによって、バイブロハンマ工法での施工が可能である。また、補強材が鋼管の場合は回転圧入工法で施工することも可能である。また、言うまでもなく油圧圧入工法等の静的圧入工法も可能である。このように、施工方法の制約が少ないので、鋼管やH形鋼を地盤に打設可能な各種施工方法を状況に応じて選択して用いることができる。
【0015】
また、従来の鋼矢板壁と同様の高い止水性能を得られる。
また、タイロッド式の壁体構造のような広い施工スペースを必要としない。特に、補強材が壁体の凹部側に入り込むことにより、鋼矢板高さと鋼管径の足し合わせよりも小さな壁幅とすることができ、施工スペースを省スペース化して鋼製壁を構築することができる。
【0016】
また、補強材が壁体の凹部側に入り込むことにより補強材と壁体の距離が短く、タイロッド式の鋼矢板壁と異なり、補強材と壁体を頭部で連結した場合に、引張力と圧縮力との両方を伝達できる構造にできる。
すなわち、鋼製壁に土圧や水圧が作用した場合に、壁体の頭部と補強材の頭部とが連結されているので、壁体と補強材との間で荷重伝達が行われる。これにより鋼製壁は、作用する土圧や水圧を壁体と補強材とで分担して受け持つ構造とすることができる。また、壁体の頭部と、補強材の頭部とを連結して固定することにより、壁体と補強材との鉛直方向のずれを規制し、せん断力を伝達することができる。
【0017】
また、タイロッド式鋼矢板構造であれば、壁体延長方向に離散的に配置したタイロッドに作用する力を分散させて壁体を一様に挙動させるために腹起し材が必要となる。しかし、本発明では、補強材が凹部側に入り込み、短い距離での力の伝達となるため、腹起し材を必要としない。
【0018】
特に、補強材を鋼矢板に対して一枚おきまたは複数枚おきに配置した場合には、補強材と鋼矢板の間隔を空けてしまうと、補強材の効果が部分的になってしまうために、腹起し材などの延長方向に力を分散させる部材が必要となる。しかし、補強材が壁体の凹部に入り込むことで、補強材が設置されていない鋼矢板に対しても補強材が効果を及ぼすことができ、腹起し材などを必要としない。
【0019】
なお、幅1957mm×高さ1000mm×奥行き940mmの剛な土槽内の中央に、鋼矢板壁を模擬した波形のアクリルと鋼管を模擬したアクリルパイプを接着剤により下端固定し、波形の左右にケイ砂5号(乾燥砂)を空中落下法により設置した状態から、片側を下端まで掘り下げて、壁体の挙動を確認する室内試験を行った。この実験により、鋼管のピッチが壁高の4/7以下であれば、補強材を壁体の凹部に入り込むように配置して頭部を連結することで、飛ばした部分についても補強材の効果が出ることを確認している。したがって、補強材のピッチLと壁高HがL≦4H/7を満たすことが好ましい。
【0020】
本発明の上記構成において、前記壁体と前記補強材とは、両者の頭部に跨って打設されたコンクリートにより頭部で連結されていることが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、補強材の頭部と壁体の頭部を、両者に跨って打設されるコンクリートで連結する構造としているので、鋼管や鋼矢板の頭部(上端部)を剥き出しにせずに、コンクリートで覆われた構造とすることが可能になる。これにより、鋼製壁の美観を高めることができる。また、補強材と壁体を跨るようにコンクリートが打設されるので、鋼管と壁体との間の天端が崩落する等の危険性が少ない。
【0022】
また、本発明の上記構成において、前記壁体と前記補強材とは、両者の間に設置された鋼板をそれぞれ両者に溶接接合することにより頭部で連結されていることが好ましい。
このような構成によれば、鋼板と補強材との頭部での連結が、鋼板を補強材と壁体とに溶接することにより行われるので、施工が楽で、施工の手間が少ない。たとえば、タイロッド式の場合のように、鋼矢板や鋼管矢板にタイロッドを通す孔をあけて、その孔にタイロッドを通す手間を必要としない。また、上述のコンクリートを打設する場合と比較した場合に、コンクリートの養生期間が不要であり、施工期間の短縮を図ることができる。
【0023】
また、本発明の上記構成において、前記壁体と前記補強材とは、両者の間に設置された鋼板をそれぞれ両者に溶接接合することにより頭部で連結されていることに加えて、前記壁体と前記補強材とは、両者の頭部に跨って打設されたコンクリートにより頭部で連結されていてもよい。
【0024】
このような構成によれば、鋼板の溶接による連結とコンクリートによる連結とを組み合わせているので、美観と、強度とを補い合える。例えば、コンクリートは、連結部分における圧縮力の伝達に優れ、溶接された鋼板は、連結部分における引張力の伝達に優れるので、強度を補い合うことができる。また、鋼板による引張力の伝達の向上と、コンクリートによる修景(風景の整備)および安全対策(例えば、天端の崩落の防止)とを補い合うことができる。
【0025】
また、本発明の上記構成において、前記補強材が前記鋼管であることが好ましい。
このような構成によれば、補強材として鋼管を用いることによって高い剛性を得ることができるとともに、回転圧入工法や中掘り工法を用いることが可能になり、騒音や振動を抑制した施工が容易になる。
【0026】
また、本発明の上記構成において、前記壁体と前記補強材との間には、前記壁体の前記鋼矢板と前記補強材とが施工中に接触することがない間隔が設定されていることが好ましい。
【0027】
このような構成によれば、壁体と補強材とを施工する際に、壁体の鋼矢板と補強材とが施工中に接触することがなく、上述の壁体と補強材とが施工中に接触することによる問題を防止できる。
【0028】
また、本発明の上記構成において、前記壁体の相対的に大きな圧力を受ける側に、前記補強材が設けられていてもよい。
【0029】
このような構成によれば、相対的に大きな圧力(土圧や水圧)を受ける面の側に補強材が設けられていることから、壁体と補強材とが圧力を受けることになる。この場合に、壁体には補強材から離れる方向に荷重が作用することになる。ここで、壁体の頭部と、補強材の頭部とが連結され、壁体と補強材との間で荷重伝達(引張力の伝達)が行われる構造になっているので、壁体と補強材とで荷重を分担して受けることができる。したがって、補強材を壁体の相対的に大きな圧力を受ける側に配置しても壁体に補強材を組み合わせることにより、十分に強度の向上を図ることができる。また、鋼製壁を、例えば護岸や土留め壁等として利用した場合に、補強材が背面側に配置されることになる。したがって、鋼製壁上部の露出する側では、壁体の側面だけが露出し、補強材が隠された状態になるので、外観が煩雑にならず、美観に優れたものになる。
【0030】
また、本発明の上記構成において、前記壁体の相対的に大きな圧力を受ける側の反対側に、前記補強材が設けられていてもよい。
【0031】
このような構成によれば、壁体の相対的に大きな圧力を受ける側の反対側に、前記補強材が設けられていることから、壁体に土圧や水圧が作用する。この場合に、壁体と、補強材との連結部分で荷重が壁体から補強材に伝達(圧縮力の伝達)され、壁体と補強材とで土圧や水圧を分担して受けることができる。また、護岸や土留め壁等として用いた場合に、補強材が壁体の前面側すなわち上部が露出する側に配置されることになる。したがって、例えば、施工時に補強材の頭部を露出するための掘削の必要がなく、露出した状態の補強材や補強材と壁体との連結部分の補修を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、従来の鋼矢板壁と同様の高い止水性能を得られるとともに、補強材に荷重が伝達されることで壁体に発生する曲げモーメントを低減することができる。また、鋼矢板と鋼管またはH形鋼を組み合わせた構造でありながら、それぞれを別に施工することが可能なので、施工を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1実施形態に係る鋼製壁を示す概略平面図である。
図2】第1実施形態の前記鋼製壁を示す要部概略平面図である。
図3】地盤中の第1実施形態の前記鋼製壁を示す概略断面図である。
図4】本発明の第1実施形態の変形例に係る鋼製壁を概略平面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る鋼製壁を示す要部概略平面図である。
図6】地盤中の第2実施形態の前記鋼製壁を示す概略断面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る鋼製壁を示す要部概略平面図である。
図8】地盤中の第3実施形態の前記鋼製壁を示す概略断面図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る鋼製壁を示す要部概略平面図である。
図10】本発明の第5実施形態に係る鋼製壁を示す要部概略平面図である。
図11】本発明の第5実施形態の変形例に係る鋼製壁を示す概略平面図である。
図12】本発明の第5実施形態の他の変形例に係る鋼製壁を示す要部概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1から図3に示すように、本発明の第1実施形態の鋼製壁3は、鋼矢板としてのハット形鋼矢板1と鋼管(補強材)2とを組み合わせて構成されている。複数のハット形鋼矢板1を連結して構成される壁体(矢板壁)4の長手方向に沿って、複数の鋼管2が1列に互いに間隔をあけて並べて配置されている。
【0035】
ハット形鋼矢板1は、ウェブ1aと、ウェブ1aの両側縁からそれぞれ互いに広がるように斜めに延出する一対のフランジ1bと、左右のフランジ1bの先端からウェブ1aと平行に左右に延出する一対のアーム1cと、アーム1cの先端に設けられた継手1dとを備えている。
【0036】
また、ハット形鋼矢板1と、鋼管2とは接しておらず、ハット形鋼矢板1と、鋼管2との間に間隔があけられた状態になっている。また、鋼管2の径は、ハット形鋼矢板1の幅(有効幅)よりも狭くなっている。この鋼管2は、その一部がハット形鋼矢板1で構成される壁体の一方の側面の谷部分になる凹部に入り込んだ状態になっている。
【0037】
複数のハット形鋼矢板1は、その継手1dどうしを連結して一列に並べられて鋼矢板壁としての上述の壁体4を構築している。また、ハット形鋼矢板1および鋼管2は地盤に打設されている。
【0038】
この鋼製壁3では、図2および図3に示すようにハット形鋼矢板1からなる壁体4の頭部と、鋼管2の頭部とがコーピング5により連結されている。すなわち、壁体4の頭部と、鋼管2の頭部とを巻き込んで打設されるコンクリートによりコーピング5が設けられている。このコーピング5になるコンクリート内に壁体4の頭部と、鋼管2の頭部とが入り込んでいることにより、壁体4の頭部と、鋼管2の頭部とが連結して固定されている。
また、コーピング5のコンクリートにより、鋼管2の上端開口が閉塞されている。コーピング5は、壁体4の長さ方向に沿って設けられており、一つの壁体4の長さと同様の長さのコーピング5により、全ての鋼管2が壁体4に連結されている。
【0039】
また、壁体4に対して、鋼管2が、土圧がかかる側の反対、すなわち、土圧がかからない側になる前面側に配置されている。
また、この例の鋼製壁3は、例えば、護岸になっており、高い側の地盤面aに対して低い側の地盤面b側が海、湖、河川等の水側になっている。なお、鋼製壁3は、護岸に限られるものではなく、土留め工、締切工、埋立、堤防等で用いることができる。
【0040】
ハット形鋼矢板1からなる壁体4と、鋼管2との間には、壁体4(ハット形鋼矢板1)と、鋼管2とを別々に施工した際に、これらが施工中に接触しない程度の間隔が設けられている。すなわち、先に施工された壁体4もしくは鋼管2に対して、後から施工する壁体4もしくは鋼管2が施工中に接触しない程度の間隔が設定されている。具体的には、施工時に壁体4と鋼管2との最も互いに接近する部分における間隔が50mm以上になっていることが好ましい。なお、前記間隔が、60mm以上や、70mm以上や、80mm以上であってもよい。但し、壁体4の頭部と、鋼管2の頭部のとの連結にかかるコストや、鋼製壁体の全体の厚さ等を考慮し、壁体4としての凹凸(山と谷と)を繰り返す波板状の矢板壁の谷側の凹部内に鋼管2の少なくとも一部が入り込んだ構成としている。
【0041】
壁体の凹部内に鋼管が入りこんだ構成とすることで、既に構築された鋼矢板壁の鋼矢板4や既に打設された鋼管を把持して鋼管2を油圧圧入または回転圧入することができる。既に構築された鋼矢板壁や鋼管から反力をとって油圧圧入または回転圧入する場合、安定して施工するためには、鋼管は可能な限り既に構築された鋼矢板壁や鋼管に対して近くに配置することが好ましい。
【0042】
この場合、例えば、ハット形鋼矢板1の型式等によって、凹部の深さ(ウェブ1aとアーム1cとの間のこれらに直交する方向に沿った距離)が異なるが、例えば、900mm幅のハット形鋼矢板の場合、凹部の深さは200mmから300mm程度なので、鋼管2と壁体4のハット形鋼矢板1のウェブ1aとの間隔をそれ以下とすることが好ましい。
【0043】
次に、鋼製壁3の施工方法について説明する。
鋼製壁3の施工においては、壁体4を構成するハット形鋼矢板1と、補強材になる鋼管2とをそれぞれ別々に地盤に打設する。
この際にハット形鋼矢板1を先に地盤に打設してもよいし、鋼管2を先に地盤に打設してもよい。また、壁体4が既設の鋼矢板壁であって、これを補強する目的等で鋼管を打設してもよい。
【0044】
また、ハット形鋼矢板1を順次、先に打設されたハット形鋼矢板1に連結しながら打設する工程と、鋼管2を一列に並べて順次打設していく工程とを並行して行ってもよい。
また、ハット形鋼矢板1の打設においては、先に圧入したハット形鋼矢板1から反力を取ってハット形鋼矢板1を圧入する油圧圧入工法を用いてもいいし、バイブロハンマ工法を用いてもよいし、打設に際してアースオーガによる掘削を行ってもよい。
鋼管2の圧入においても、ハット形鋼矢板1と同様の施工方法を用いることができる。さらに、鋼管2の場合には、回転圧入工法や、鋼管2内から地盤を掘削して鋼管2を圧入する中掘り工法を用いてもよい。
また、既に構築された鋼矢板壁の鋼矢板1や既に打設された鋼管を把持して鋼管2を油圧圧入または回転圧入してもよい。その際、鋼管が壁体の凹部分に入り込んでいることで、反力を取る鋼矢板壁や鋼管と施工する鋼管との位置が近くなり、安定して施工することができる。
【0045】
この鋼製壁3にあっては、矢板壁である壁体4と補強材としての鋼管2とが施工中に接触しない間隔、例えば、50mm以上の間隔をあけて地盤に打設されるので、壁体4と鋼管2が施工中に摺動して振動、騒音や変形が生じるのを抑制することができる。
【0046】
また、壁体4と鋼管2とが施工中に接触している場合には、例えば、打設時に打設する部材を振動させるバイブロ系の工法や回転圧入工法を採用すると、上述の騒音、振動や変形の可能性が高くなってしまう。それによって、使用可能な施工方法が制限されることになる。それに対して、この実施形態では、施工中に壁体4と鋼管2とが離れているので、施工方法の選択肢が広い。
【0047】
また、鋼矢板と補強材とを接合して一体化した場合には地盤に打設される部材の断面積が大きくなり、打設が難しくなる。それに対して、この実施形態の鋼製壁3は、壁体4と鋼管2とが別々に打設されるので、施工を容易にすることができる。また、壁体4と鋼管2とが施工中に接触しないように離れているので、上述のように壁体4と鋼管2とが接触している場合よりさらに施工が容易になる。
【0048】
鋼矢板1(壁体4)と鋼管2とを打設した後、壁体4と鋼管2とに跨ってコーピング5になるコンクリートを打設する。これにより、壁体4の頭部と鋼管2の頭部とが連結される。
【0049】
この鋼製壁3においては、壁体4の頭部と、鋼管2の頭部とが連結されているので、連結部分により、壁体4と鋼管2との間で荷重伝達が可能であり、鋼製壁3が受ける土圧や水圧を、壁体4と鋼管2とが分担して受けることになる。また、壁体4の頭部と、鋼管2の頭部とが連結されているので、鋼管2と壁体4との鉛直方向の位置ずれを防止することができる。以上のことから、鋼製壁3では、鋼管2で補強された壁体4に発生する曲げモーメントを単独の鋼矢板壁よりも減少させることができる。また、鋼製壁3の止水性は、鋼矢板壁と同等とすることができ、継手1dへのモルタルの充填等を行わなくても継手部分にモルタルが充填された鋼管矢板壁と同等レベルの止水性を得られる。
【0050】
この実施形態では、図3に示すように、鋼製壁3において、壁体4の土圧のかかる側の反対、すなわち、土圧のかからない前面側に鋼管2が配置されている。したがって、既設の鋼矢板壁の補強目的の場合、背面側の地上部または地中部に障害物があったとしても、前面側に鋼管を設置して補強することができる。さらに、同じ長さの鋼管で補強する場合であっても、背面に設置する場合に比べて、土中に打ち込む長さが短くなり、施工手間とコストを削減することが可能となる。
【0051】
この実施形態では、鋼製壁3が護岸として用いられ、コーピング5によって、鋼管2の頭部と、壁体4の頭部とが連結されている。したがって、コーピング5は、鋼管2の頭部と壁体4の頭部との連結材であるとともに、鋼管2の開口部を塞ぐという機能も備える。この形態では、タイロッドのような専用の連結部材を必ずしも必要としないことから、コストの低減を図ることができる。
【0052】
この実施形態の鋼製壁3においては、壁体4の上下長さ(ハット形鋼矢板1の長さ)より鋼管2の長さを長くしている。相対的に剛性の高い鋼管2の長さを長くすることによって、鋼管2で土圧を受け持ち、壁体4で土砂の流出を防ぐ役割を持たせるといった自由な設計が可能となる。これにより、鋼重や施工コストを低減する事が可能になる。例えば、鋼管2を壁体4より長くし、鋼管2だけを支持層に根入れするものとしてもよい。
なお、後述のように壁体4の上下長さより鋼管2の長さを短くしてもよいし、壁体4の上下長さと鋼管2の長さと同じとしてもよい。鋼管2の長さは、剛性と地盤条件の観点から決められる。また、壁体4の上下長さが鋼管2の長さと同程度ではボイリング、ヒービングや円弧すべりが懸念される場合は、壁体4の上下長さを、鋼管2に対して長くすればよい。また、地下水の止水のために、壁体4を鋼管2より長くしてもよい。
【0053】
この実施形態では、図1に示すように、壁体4の各ハット形鋼矢板1毎(壁体4の凹部毎)に、鋼管2が配置されている。しかし、求められる耐力によっては、全てのハット形鋼矢板1に鋼管2を配置する必要はない。例えば、図4に示すように鋼管2を一枚おきのハット形鋼矢板1毎(一つおきの凹部毎)に配置するものとしてもよく、二枚おきのハット形鋼矢板1毎(二つおきの凹部毎)に、配置するものとしてもよい。補強材が壁体の凹部に入り込んでいるために、全てのハット形鋼矢板1に鋼管を配置させなくても隣の鋼矢板に対して補強材の効果を及ぼすことができる。但し、鋼管2が壁体4の長手方向に沿って並べられた状態で、鋼管2の配置が略均等になっていることが好ましい。
【0054】
壁体4を構成する鋼矢板は、ハット形鋼矢板1に限られるものではなく、U形鋼矢板、Z形鋼矢板等の各種鋼矢板を用いることができる。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図5および図6に示すように、第2実施形態の鋼製壁31は、鋼管2の頭部と壁体4の頭部とをコーピング5とともに、連結部材として鋼製の枕材(例えば、所定長さに切断された鋼板や形鋼)6により連結されている。また、鋼管2と壁体4の上下長さを同じにしている。それ以外は、第1実施形態の鋼製壁3と同様の構成を有する。そこで、第1実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
第2実施形態においては、連結部材として鋼製の枕材6(鋼材)が鋼管2の頭部と壁体4の頭部との間に挟まれた状態に設けられている。この枕材6が鋼管2と壁体4とに、例えば溶接、ボルト、ドリルねじ等で固定されている。これにより、鋼管2と壁体4とが離れた状態で、鋼管2の頭部と壁体4の頭部とが連結されている。
また、第2実施形態においては、上述のように鋼管2の長さと壁体4の上下長さ(ハット形鋼矢板1の長さ)とが略同じとされている。
【0057】
第2実施形態の鋼製壁31の施工方法は、次のとおりである。
まず、鋼矢板1及び鋼管2を第1実施形態と同様に打設する。次に、枕材6となる鋼材を、鋼矢板1(壁体4)と鋼管2との間に設置し、溶接、ボルト、ドリルねじ等で鋼矢板1(壁体4)と鋼管2にそれぞれ固定する。その後、第1実施形態と同様に、壁体4と鋼管2に跨ってコーピングを打設する。
【0058】
第2実施形態の鋼製壁31においては、鋼管2の頭部と壁体4の頭部とがコーピング5と枕材6との両方で連結されている。これにより、壁体4に受ける荷重をより確実に鋼管2に伝達することができる。この点と、鋼管2とハット形鋼矢板1とが同じ長さになっていることに基づく効果以外は、第1実施形態の鋼製壁3と同様の作用効果を奏することができる。
【0059】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
図7および図8に示すように、第3実施形態の鋼製壁32は、鋼管2の頭部と壁体4の頭部とをコーピング5だけではなく連結部材として一対の板材7を用いて連結している。さらに、鋼管2より壁体4の上下長さを長くしている。また、鋼管2を壁体4の土圧がかかる背面側に配置している。これら以外は、第1実施形態の鋼製壁3と同様の構成を有する。そこで、第1実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0060】
第3実施形態においては、鋼製の板材7が鋼管2の頭部と壁体4の頭部との間に挟まれた状態に設けられている。また、板材7が鋼管2と壁体4とにそれぞれ溶接やボルト等で固定されている。また、鋼管2と壁体4とが離れた状態で、鋼管2の頭部と壁体4の頭部とが連結されている。さらに、板材7で連結された鋼管2の頭部と壁体4の頭部とに跨って、コンクリートで巻き込んでコーピング5を設けることにより、コーピング5によっても鋼管2の頭部と壁体4の頭部とを連結している。
【0061】
また、第3実施形態においては、上述のように鋼管2の長さより壁体4の上下長さ(ハット形鋼矢板1の長さ)を長くしている。このことにより、ボイリング、ヒービングや円弧すべりの防止を図ったり、地下水の止水を図ったりすることができる。また、コーピング5による連結に加えて板材7による連結を行うことによって、鋼管2の頭部と、壁体4の頭部との連結部分の強度を高めることができる。特に、この構造では、壁体4と鋼管2との間には引張荷重が働くので、鋼製の板材7による連結がさらに有効である。
また、壁体4の背面側に鋼管2を設けることによって、鋼管2を壁体4の前側に露出させずに隠すことができるので、鋼製壁32の美観を高めることができる。
第3実施形態の鋼製壁32では、連結部分の構造、鋼管2と壁体4の長さ、壁体4に対する鋼管2の配置に基づく作用効果を除いて、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0062】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
図9に示すように、第4実施形態の鋼製壁33は、補強材を鋼管2に代えてH形鋼9としたものであり、それ以外の構成は、第1実施形態の鋼製壁3と同様の構成になっている。そこで、第1実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0063】
第4実施形態の鋼製壁33は、補強材としてH形鋼9を用いたものである。H形鋼9は、ハット形鋼矢板1が連接された壁体4の長手方向に沿って、第1実施形態の鋼管2の場合と同様に間隔をあけて一列に並んで配置されている。また、H形鋼9と壁体4との間には、第1実施形態の鋼管2の場合と同様に間隔が設けられている。
【0064】
また、H形鋼9は、その一部がハット形鋼矢板1で構成される壁体の一方の側面の谷部分になる凹部に入り込んだ状態になっている。また、H形鋼9は、壁体4の長手方向に対して、ウェブ9aが直交するように配置されている。したがって、フランジ9bは、壁体4の長手方向に平行になっている。
【0065】
この壁体4の頭部と、H形鋼9の頭部とが連結されている。鋼製壁33と補強材としてのH形鋼9との連結方法は、第1実施形態から第3実施形態と同様の方法を用いることができる。すなわち、コーピング5より壁体4とH形鋼9とを連結する。なお、壁体4とH形鋼9とを鋼材を介して溶接やボルトによる締結で連結してもよい。また、これらの連結方法を組み合わせて、壁体4の頭部とH形鋼9の頭部とを連結することができる。
壁体4の長さとH形鋼9の長さとの関係、壁体4に対するH形鋼9の配置(壁体4とH形鋼9の間隔を含む)等の補強材を鋼管2に代えてH形鋼9とした以外の構成は、第1実施形態から第3実施形態と同様とすることができる。
【0066】
鋼製壁33の施工方法においては、H形鋼9を中掘り工法や回転圧入工法で施工することができないことを除いて、第1実施形態から第3実施形態の鋼製壁の施工方法と同様とすることができる。
第4実施形態の鋼製壁33は、鋼管2による作用効果以外は、第1実施形態から第3実施形態の鋼製壁3と同様の作用効果を奏することができる。
【0067】
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
図10に示すように、第5実施形態の鋼製壁34は、上述の各実施形態において、鋼管2の頭部と壁体4の頭部との連結が鋼板8の溶接により行われている。鋼管2の頭部と壁体4の頭部との連結にコンクリートが用いられていない。この鋼管2の頭部と壁体4の頭部との連結の構造以外の構成は、第1実施形態の鋼製壁3と同様の構成になっている。そこで、同様の構成要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
第5実施形態の鋼製壁34は、第1実施形態と同様に、複数のハット形鋼矢板1を連結して構成される壁体(矢板壁)4の長手方向に沿って、複数の鋼管2が1列に互いに間隔をあけて並べて配置されている。また、凹凸を繰り返す波状の鋼矢板1の凹部に鋼管2の一部が入り込んだ状態に配置されている。
【0069】
壁体4のハット形鋼矢板1と鋼管2との間には、鋼板8が配置されている。この実施形態では、鋼板8が、ハット形鋼矢板1のアーム1cと鋼管2の外周との間に配置されている。鋼板8は、左右のアーム1cに対応して、1つのハット形鋼矢板1と1つの鋼管2に対して左右一対ずつ設けられている。
【0070】
また、鋼板8の一方の端部は、ハット形鋼矢板1のアーム1cに溶接され、他方の端部は鋼管2の外周に溶接されている。
鋼製壁34の施工においては、壁体4の構築および鋼管2の打設は、第1実施形態と同様に行われる。壁体4の構築と鋼管2の打設が終了した後に、鋼板8を壁体4のハット形鋼矢板1と鋼管2とに溶接する。
【0071】
第5実施形態の鋼製壁34においては、壁体4と鋼管2との頭部どうしの連結が鋼板8の溶接により行われるので、施工が容易になる。また、コンクリートで連結する場合のように、養生期間を必要とせず、工期が短い。
【0072】
なお、この実施形態において、図11に示すように、鋼板8をハット形鋼矢板1のウェブ1aと鋼管2の外周面との間に配置してもよいし、フランジ1bと鋼管2の外周面との間に配置してもよい。
また、ハット形鋼矢板1に対して鋼管2のピッチを飛ばして(例えば、一つまたは複数おきのハット形鋼矢板1に鋼管2を配置するようにして)、ハット形鋼矢板1の有効幅よりも大きな径の鋼管2を用いてもよい。
また、鋼管2を壁体4の相対的に大きな圧力を受ける側に配置してもよいし、その反対側に配置してもよい。
【0073】
また、図12に示す鋼製壁34Aのように、鋼板8の溶接による連結に加えて、第1実施形態と同様に、壁体4の頭部と鋼管2の頭部とを巻き込んで打設されるコンクリートによりコーピング5を設けてもよい。この場合に、鋼板8の溶接後にコンクリートを打設することになる。
また、壁体4と鋼管2とが、鋼板8の溶接に加えてコンクリートによっても連結されることになる。
【0074】
この場合に、例えば、壁体4と鋼管2との間の圧縮力の伝達を主にコンクリートが行い、引張力の伝達を主に鋼板8が行うように、補い合う構造とすることができる。また、上述のコンクリートによる鋼管2の上端開口の閉塞や、天端の崩壊の防止などを図ることができる。
【0075】
なお、既設の鋼矢板壁を壁体4とし、この壁体4に対して、鋼管2やH形鋼9を打設することによって、鋼製壁3,31,32,33,34,34Aを構築するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 ハット形鋼矢板(鋼矢板)
1d 継手
2 鋼管(補強材)
3 鋼製壁
5 コーピング
8 鋼板
9 H形鋼(補強材)
31 鋼製壁
32 鋼製壁
33 鋼製壁
34 鋼製壁
34A 鋼製壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12

【手続補正書】
【提出日】2013年4月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼矢板が継手により連結されて長手方向に凹凸を繰り返す波板状の壁体が設けられ、
前記壁体を補強する鋼管からなる複数の補強材が前記壁体の長手方向に沿って、前記壁体と間隔をあけて並べて設けられ、
前記補強材の一部が前記壁体の凹部内に入り込んだ状態にされ、
前記壁体と前記補強材とが施工中に接触しないように離され、前記壁体と前記補強材とが頭部のみで連結され、前記頭部の連結により、前記壁体と前記補強材との間で荷重伝達が行われているとともに、前記壁体と前記補強材との鉛直方向への位置ずれが規制されていることを特徴とする鋼製壁。
【請求項2】
前記補強材が前記鋼矢板に対して一枚おきまたは複数枚おきに設置されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製壁。
【請求項3】
前記壁体と前記補強材とは、両者の頭部に跨って打設されたコンクリートにより頭部で連結されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製壁。
【請求項4】
前記壁体と前記補強材とは、両者の間に設置された鋼板をそれぞれ両者に溶接接合することにより頭部で連結されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製壁。
【請求項5】
前記壁体と前記補強材とは、両者の頭部に跨って打設されたコンクリートにより頭部で連結されていることを特徴とする請求項4に記載の鋼製壁。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
前記補強材のピッチLと前記壁体の壁高HがL≦4H/7を満たすことを特徴とする請求項1に記載の鋼製壁。
【請求項11】
前記補強材が前記鋼管であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項または請求項10に記載の鋼製壁。
【請求項12】
前記壁体と前記鋼管との最もお互いに接近する場合における間隔が50mm以上300mm以下であることを特徴とする請求項11に記載の鋼製壁。

【手続補正書】
【提出日】2014年10月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼矢板が継手により連結されて長手方向に凹凸を繰り返す波板状の壁体が設けられ、
前記壁体を補強する鋼管からなる複数の補強材が前記壁体の長手方向に沿って、前記壁体と間隔をあけて並べて設けられ、
前記補強材の一部が前記壁体の凹部内に入り込んだ状態にされ、
前記壁体と前記補強材とが施工中に接触しないように離され、前記壁体と前記補強材とが頭部のみで連結され、前記頭部の連結により、前記壁体と前記補強材との間で荷重伝達が行われているとともに、前記壁体と前記補強材との鉛直方向への位置ずれが規制されていることを特徴とする鋼製壁。
【請求項2】
前記補強材が前記鋼矢板に対して一枚おきまたは複数枚おきに設置されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製壁。
【請求項3】
前記壁体と前記補強材とは、両者の頭部に跨って打設されたコンクリートにより頭部で連結されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製壁。
【請求項4】
前記壁体と前記補強材とは、両者の間に設置された鋼板をそれぞれ両者に溶接接合することにより頭部で連結されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼製壁。
【請求項5】
前記壁体と前記補強材とは、両者の頭部に跨って打設されたコンクリートにより頭部で連結されていることを特徴とする請求項4に記載の鋼製壁。
【請求項6】
前記補強材のピッチLと前記壁体の壁高HがL≦4H/7を満たすことを特徴とする請求項1に記載の鋼製壁。
【請求項7】
前記壁体と前記鋼管との最もお互いに接近する場合における間隔が50mm以上300mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の鋼製壁。
【国際調査報告】