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再表2014-34732核酸変性装置、核酸変性方法および核酸の増幅方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2014年3月6日
【発行日】2016年8月8日
(54)【発明の名称】核酸変性装置、核酸変性方法および核酸の増幅方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20160711BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20160711BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20160711BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20160711BHJP
【FI】
   C12M1/00 AZNA
   C12Q1/68 Z
   C12M1/42
   C12N15/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2014-533050(P2014-533050)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2013年8月28日
(31)【優先権主張番号】特願2012-189441(P2012-189441)
(32)【優先日】2012年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 栄雄
【テーマコード(参考)】
4B024
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B024AA11
4B024AA20
4B024CA01
4B024CA11
4B024HA12
4B024HA14
4B024HA20
4B029AA11
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA15
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA11
4B063QA17
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QS25
4B063QS26
4B063QS34
4B063QS39
(57)【要約】
【課題】熱変性の代替手段となりうる、二本鎖核酸の一本鎖核酸への変性装置および二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性させる方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る核酸変性装置100は、二本鎖核酸を含む核酸溶液に付与する振動を発生する振動発生部10を有し、振動発生部において発生した振動を核酸溶液に付与することによって、核酸溶液中の二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖核酸を含む核酸溶液に付与する振動を発生する振動発生部を有し、
前記振動発生部において発生した振動を前記核酸溶液に付与することによって、前記核酸溶液中の二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性させることを特徴とする核酸変性装置。
【請求項2】
前記振動発生部は、可聴領域の振動を発生させる、請求項1に記載の核酸変性装置。
【請求項3】
前記可聴領域の周波数は、20Hz乃至20,000Hzである請求項2に記載の核酸変性装置。
【請求項4】
前記核酸溶液を収容する核酸溶液収容部と、
前記振動発生部と前記核酸溶液収容部との間に設けられ、前記振動発生部において発生した振動を前記核酸溶液収容部に伝達する振動伝達部材と、
をさらに有する請求項1〜3のいずれかに記載の核酸変性装置。
【請求項5】
前記核酸溶液収容部は、前記核酸溶液を収容する容器を有する請求項4に記載の核酸変性装置。
【請求項6】
前記核酸溶液収容部は、前記容器を着脱自在に保持する容器保持部材をさらに有する請求項5に記載の核酸変性装置。
【請求項7】
前記容器保持部材は、前記振動発生部において発生した振動が与えられた際に前記容器の離脱を防止する離脱防止機構を備える請求項6に記載の核酸変性装置。
【請求項8】
二本鎖核酸を含む核酸溶液に振動発生部において発生した振動を付与し、前記核酸溶液中の二本鎖核酸を一本鎖核酸へ変性させる工程と、を含む核酸変性方法。
【請求項9】
前記振動は可聴領域の振動である、請求項8に記載の核酸変性方法。
【請求項10】
前記可聴領域の周波数は、20Hz乃至20,000Hzである請求項9に記載の核酸変性方法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の核酸変性方法により一本鎖核酸を得る工程と、前記一本鎖核酸を用いて二本鎖核酸を増幅させる工程と、を含む核酸の増幅方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は核酸変性装置、核酸変性方法および核酸の増幅方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などにおいて、試料から準備されるDNA等の二本鎖を一本鎖に変性させることが要求される。従来、二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性させる方法としては、二本鎖核酸の核酸塩基間の水素結合が熱により切断される性質を利用して、熱変性が主に用いられてきた。
【0003】
例えば、PCR法における典型的な熱変性は、約90〜95℃でDNAを含む試料に熱を付加し、二本鎖核酸を一本鎖核酸に解離させる。次いで、アニーリング工程で、試料を約50〜65℃に冷却し、DNAに相補的なプライマーをアニーリングさせ、伸長工程で、試料を約70〜72℃とし、ポリメラーゼを用いてプライマーを起点として一本鎖に相補的な鎖を伸長させる(例えば国際公開第2008/057375号(JP−A−2010−508813)参照)。これらの工程は、典型的には25〜40回繰り返される。
【0004】
したがって、PCRに使用されるDNAポリメラーゼは、熱サイクルにおいて、特に90〜95℃という高温域で活性を維持する必要がある。
【0005】
一方、二本鎖DNAをアルカリによって変性させて一本鎖とすることも従来より行われている。これは、二本鎖DNAがpH10以上の環境において解離し、一本鎖に変性するという性質を用いたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱変性の場合、上記のように熱変性時に耐えうる耐熱性のポリメラーゼを用いる必要があり、用いられる酵素が限定されるという問題点があった。例えば、PCRに典型的に利用されるTaqポリメラーゼは最適温度が高いため、熱変性のサイクルに耐えることができるが、エキソヌクレアーゼ活性が低いため、誤ったヌクレオチドを取り込む確率が若干高い。また、変性が起こる温度は、DNAの塩基構成および長さ(塩基数)によって異なり、長いDNAほどより高い温度が必要となる場合がある。また、Taqポリメラーゼは非常に高価であることも問題となる。
【0007】
また、アルカリ変性の場合、例えば、PCR法で用いられるポリメラーゼ等をアルカリ変性時には添加することができず、各工程において、アルカリ変性液、中和液、及びDNAポリメラーゼを添加する必要がある。このため、操作が煩雑となり、多種類のサンプルを同時にPCR増幅することは困難である。
【0008】
したがって、高温の熱を付加させる必要のある熱変性や環境が過酷なアルカリ変性に代わる手法により、酵素、例えばポリメラーゼの選択は格段に広がるものと考えられる。
【0009】
したがって、本発明は、熱変性の代替手段となりうる、二本鎖核酸を一本鎖核酸へ変性させる核酸変性装置、核酸変性方法および核酸の増幅方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明に係る核酸変性装置は、二本鎖核酸を含む核酸溶液に付与する振動を発生する振動発生部を有し、振動発生部において発生した振動を核酸溶液に付与することによって、核酸溶液中の二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性させる点に特徴を有している。
【0011】
また、本発明に係る核酸変性方法は、二本鎖核酸を含む核酸溶液に振動発生部において発生した振動を付与し、核酸溶液中の二本鎖核酸を一本鎖核酸へ変性させる工程を有している。さらに、本発明に係る核酸の増幅方法は、上記核酸変性方法により一本鎖核酸を得る工程と、前記一本鎖核酸を用いて二本鎖核酸を増幅させる工程を有している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る核酸変性装置を示す正面図である。
図2図1の2−2線に沿う断面図である。
図3図3(A)、(B)は振動発生部の発生する振動の振幅について説明するための説明図である。
図4】本発明の変形例を示す図2と同様の位置における断面図である。
図5】本発明の変形例に係る核酸変性装置について示す斜視図である。
図6】振動発生部と容器保持部材との接続についての変形例を示すスピーカーの振動板の軸線を通る位置における断面図である。
図7】本発明に係る核酸変性装置を使用して二本鎖DNAに振動を加えて、SYBRGreenIにより染色した実験結果を示す電気泳道写真である。
図8】同装置を使用して二本鎖DNAに振動を加えて、SYBRGreenIIにより染色した実験結果を示す電気泳動写真である。
図9】PCR法により二本鎖DNAを増幅させる際のサイクルを示す図である。
図10】本発明に係る核酸変性装置を使用してPCR法を行った実験結果を示す電気泳動写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る核酸変性装置は、二本鎖核酸を含む核酸溶液に付与する振動を発生する振動発生部を有し、振動発生部において発生した振動を核酸溶液に付与することによって、核酸溶液中の二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性させる点に特徴を有している。
【0014】
また、本発明に係る核酸変性方法は、二本鎖核酸を含む核酸溶液に振動発生部において発生した振動を付与し、核酸溶液中の二本鎖核酸を一本鎖核酸へ変性させる工程を有している。さらに、本発明に係る核酸の増幅方法は、上記核酸変性方法により一本鎖核酸を得る工程と、前記一本鎖核酸を用いて二本鎖核酸を増幅させる工程を有している。
【0015】
本発明に係る核酸変性装置及び核酸変性方法では、二本鎖核酸を含む核酸溶液に振動発生部において発生した振動を付与し、核酸溶液中の二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性させている。そのため、二本鎖核酸は振動をきっかけにして一本鎖核酸に変性させることができ、熱による付加を必要としない。よって、振動という極めて簡便な方法により二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性させることができる。
【0016】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る核酸変性装置を示す正面図、図2図1の2−2線に沿う断面図である。
【0018】
図1及び図2を参照して概説すれば、本実施形態に係る核酸変性装置100は、二本鎖核酸を含む核酸溶液に付与する振動を発生する振動発生部10を有する。核酸変性装置100は、振動発生部10において発生した振動を核酸溶液に付与することによって核酸溶液中の二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性させている。
【0019】
また、本実施形態において核酸変性装置100は、核酸溶液を収容する核酸溶液収容部20を有し、核酸溶液収容部20は容器21と、容器保持部材22と、を有する。核酸溶液は容器21に収容され、容器21は容器保持部材22によって保持されている。
【0020】
容器保持部材22は接着剤Bにより振動発生部10と接続されている。これにより、振動発生部10と核酸溶液は、容器21及び容器保持部材22を介して接続される。なお、本発明において、核酸溶液収容部20は容器21のみを有し、容器保持部材22を含まない場合をも包含する。つまり、振動発生部10と核酸溶液は、容器保持部材22を介さず、容器21のみを介して接続する形態も含む。本実施形態では振動発生部10において発生した振動を容器保持部材22に支持される容器21に収容された核酸溶液に付与することによって、核酸溶液中の二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性させている。
【0021】
本実施形態では使用時に容器21及び容器保持部材22を介して核酸溶液を振動発生部10に接続することによって、容器21および容器保持部材22を介して核酸溶液自体を振動させる。かように核酸溶液自体に振動を付加して流体全体を振動させることにより、効率的に二本鎖核酸を一本鎖核酸へと変性させることが可能となる。以下、詳述する。
【0022】
振動発生部10は、本実施形態においてスピーカーにおいて振動を発生させるボイスコイル11と、ボイスコイル11が巻き回されるボイスコイルボビン12と、ボイスコイルボビン12を支持するダンパー17と、ボイスコイル11に駆動力を与える磁気回路13と、ボイスコイル11による振動を受けて振動する振動板14と、振動板14の周縁部を支持するフレーム15と、を有する。
【0023】
ボイスコイル11は、振動板14の振動の伝達方向よりも上流側に設けられる。ボイスコイル11はボイスコイルボビン12に巻き回されている。ボイスコイルボビン12の端部はキャップ16により覆われている。ダンパー17はボイスコイルボビン12の径方向における外方に配置され、ボイスコイルボビン12を支持する。
【0024】
振動板14は、ボイスコイルボビン12と直接連結されている。これにより、振動板14はボイスコイル11からの振動を受け、ボイスコイルボビン12を介してボイスコイル11と共に振動する。振動板14は地面Gに対して水平方向を向くように配置されている。
【0025】
磁気回路13は、プレート13Aと、マグネット13Bと、ヨーク13Cと、を有する。プレート13Aはフレーム15に固定されている。マグネット13Bはプレート13Aとヨーク13Cによって挟持されている。このような構成からなる磁気回路10によって磁界が形成され、音声電流をボイスコイル11に与えることによってボイスコイル11が振動し、ボイスコイル11に接続された振動板14が振動する。振動板14の材料や厚さなどは使用する容器21や核酸溶液の量などを考慮して定めることができる。
【0026】
振動発生部10は、図1に示すようにプラスチック板31、32によって水平方向から挟まれる。振動発生部10は、プラスチック板31、32によって挟まれた状態で振動発生部10の振動方向に障害物が存在せず、振動発生部10の振動が極力妨げられないように地面Gからも一定距離離した状態となるように維持される。プラスチック板31、32は振動発生部10を挟んだ状態でボルト33、34等の締結手段によって固定される。
【0027】
振動発生部10がスピーカー等に使用される振動板14を用いることで、振動発生部10は可聴領域の周波数の振動を発生させる。振動発生部10より発生する振動は、容器21の形状または大きさ、変性させる二本鎖核酸の特性等により適宜設定すればよいが、可聴領域であることが好ましく、20〜20,000Hzであることがより好ましく、より好ましくは50〜2,000Hzである。
【0028】
この範囲の振動を付加することによって、二本鎖を一本鎖へ効率的に変性させることができるとともに、高周波数振動によるDNAへの損傷を懸念する必要がない。上記可聴領域の振動は、例えば撹拌子による溶液の撹拌の周波数よりは高い一方で、超音波周波数よりは低い周波数となっている。なお、上記実施形態では、可聴領域の周波数の振動を発生させるためにスピーカーを用いているが、可聴領域の振動を発生させる振動源であれば、その他の振動発生源、例えば圧電振動子であってもよい。
【0029】
図3(A)、(B)は振動発生部の発生する振動の振幅について説明するための説明図である。上記振動発生部より発生する振動の振幅は、核酸溶液を収容する容器の形状等により適宜設定すればよい。振動の振幅について例示すれば、図3(A)に示すように、振動板14の円錐台形状の軸線と直交するように振動が発生する場合の振動板14の中央部分における直径をD、また図3(B)に示すように振動板14の軸線の方向に振動が発生する場合の振動板14の軸線方向における一端部から他端部までの距離をDとすると、振幅の範囲は(DorD)/10000〜10×(DorD)であることが好ましい。
【0030】
本実施形態において使用する核酸はDNAであるが、核酸としては特に制限が無く、多様な核酸を使用することができる。核酸の具体例としては、DNA、RNA、PNA、オリゴデオキシリボヌクレオチド(oligodeoxyribonucleotides)、オリゴリボヌクレオチド(oligoribonucleotides)等、また、前記核酸の化学的修飾核酸を挙げることができる。化学的修飾核酸として2’−O−メチル(Me)RNA等を例示することができる。二本鎖核酸の例としては、具体的には、DNAとDNAとの組み合わせ;RNAとRNAとの組み合わせ等があるが、好ましくはDNAとDNAとの組み合わせである。
【0031】
二本鎖核酸の調製方法は従来公知の方法を用いることができ、人の血液や細胞などのような生体試料や、食品、土壌や河川水、海水などの環境試料から作製される。これらの試料から二本鎖核酸を抽出する方法としては、例えば、市販のDNA抽出用キット等を用いることができる。
【0032】
二本鎖核酸の溶液中の濃度は、検出手法や検出装置の検出感度に依存するので、仕様や予備検討により決定することができる。好ましい一実施形態は、試料1mlあたり1ng〜1mg/mLである。
【0033】
核酸溶液が収容された容器21は、振動により核酸溶液が飛散するおそれがあるため、蓋付きの容器である方が望ましい。容器としては特に限定されるものではなく、例えば、0.1〜2.0ml程度のマイクロチューブが挙げられる。その材質としてはプラスチックやガラスなどが挙げられ、好ましくはポリプロピレンやポリエチレンを挙げることができる。また、マイクロチューブの容積は0.1〜2.0ml程度であることが好ましい。また、マイクロチューブの形状として具体的には、アシスト社製のアシストチューブ型のマイクロチューブやエッペンドルフ社製のエッペンドルフチューブ型のマイクロチューブを挙げることができるが、他社で販売されているほぼ同規格の製品の形状のものも使用することができる。
【0034】
容器保持部材22は、二本鎖核酸を含む核酸溶液を収容した容器21を核酸変性装置上において固定して保持する部材である。本実施形態において容器保持部材22には銅を用いているが、容器21を支持できれば材料はこれに限定されない。
【0035】
また、容器保持部材22は容器21の外観形状に沿った収納部22Aを有しており、これにより容器21を容器保持部材22に載置するだけで容器保持部材22によって容器21を保持でき、容器21を容易に着脱することができる。これにより、二本鎖核酸を変性させた際に容器21から核酸溶液を取り出すことなく、核酸溶液の収容された容器毎、容器保持部材22から取り出し、核酸溶液を収容した別の容器を載置するだけで次の変性作業を行うことができる。よって、変性作業を簡便に行うことができる。
【0036】
また、容器保持部材22の収納部22Aにはゴム等の滑り止めを設けることができる。このように容器保持部材22に滑り止め部材を設ければ、容器21が容器保持部材22から離脱するような大きさの振動を受けたとしても、容器21は摩擦により容器保持部材22から容易に離脱することはなく、強固に固定される。よって、振動が大きい場合に容器が容器保持部材22から離脱して核酸溶液に振動が伝達しない、といった事態や、振動により容器内の核酸溶液が漏れ出てしまうといった事態を防止することができる。
【0037】
また、本実施形態において容器保持部材22には容器21を1つ設置しているが、複数設置してもよく、複数設置できることで、複数のサンプルを一度に変性させることが可能となる。
【0038】
図4は、振動発生部と容器保持部材との接続についての変形例を示す図2と同様の位置における断面図である。図2では、容器保持部材22が接着剤Bによって振動板14の中でも周辺部分である傾斜部分に接続されているが、容器内の核酸溶液に振動を伝達できれば、図4に示すように振動発生部10の中央部分であるキャップ16の部位に容器保持部材22を接続してもよい。
【0039】
図5は本発明の変形例に係る核酸変性装置について示す斜視図である。容器保持部材22は、振動発生部10と容器21との間において、振動発生部10からの振動を伝達する振動伝達部材としての機能をも有している。容器保持部材22以外における振動伝達部材の構成には、例えば図5に示すように固定板42により振動子14Aに固定され、かつ容器21の挿入が可能な容器挿入孔41Aが設けられたL字形状の支持板41が挙げられる。
【0040】
振動子14Aで発生した図5に示す水平方向Aの振動は、支持板41を介して容器21にも伝達され、これにより容器21内の核酸溶液の変性が促される。このように振動伝達部材を構成することによって、容器21を直接振動発生部10に接続することが難しい場合にも振動伝達部材を介して容器21内の核酸溶液に振動を伝達させることができる。よって、二本鎖核酸の変性専用の容器等を用意しなくても変性作業を行うことができる。
【0041】
上記実施形態では、容器保持部材22および接着剤Bを有する核酸変性装置100について説明したが、振動発生部を有し、該振動発生部により発生する振動により二本鎖核酸が一本鎖核酸に変性する作用を有する装置である限り、他のいかなる形態も本発明は包含する。例えば、使用時において接着部材(例えば接着剤)を用いて容器を振動発生部に直接接続してもよい。
【0042】
次に本実施形態に係る核酸変性装置100を用いた二本鎖核酸の変性方法について説明する。まず、核酸溶液が収容された容器21を容器保持部材22に設置し、固定する。次に振動発生部10のボイスコイル11に音声電流を流して、ボイスコイル11を振動させ、振動板14を振動させる。容器保持部材22は接着剤Bによって振動板14に接続されており、振動板14の振動を受けて容器保持部材22が振動し、さらに容器保持部材22に固定された容器21が振動して、容器中の核酸溶液に振動が伝達される。
【0043】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、DNAのような核酸に熱を付加するのではなく、振動を核酸溶液に付与するという至極簡便な方法によってDNA等の二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性できることを見つけるに至った。
【0044】
すなわち、本発明の他の実施形態は、二本鎖核酸を含む核酸溶液に振動発生部10において発生した振動を付与し、核酸溶液中の二本鎖核酸を一本鎖核酸へ変性させる変性工程と、を含む、二本鎖核酸の一本鎖核酸への変性方法である。
【0045】
振動により二本鎖核酸が一本鎖核酸に変性する機構は詳細ではないが、外部からの振動エネルギーにより核酸同士の水素結合が切断され一本鎖核酸に変性するものと推察される。
【0046】
後にPCR法等により、核酸を増幅させる場合には、核酸の増幅に必要な4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、一対のプライマー及びDNAポリメラーゼ等を上記溶液に含有させてもよい。
【0047】
上記変性工程は、上述した核酸変性装置100を用いて行うことができる。
【0048】
以上説明したように本実施形態に係る核酸変性装置及び核酸変性方法によれば、二本鎖核酸を含む核酸溶液に振動発生部10において発生した振動を付与し、核酸溶液中の二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性させている。
【0049】
振動による変性は、非常に簡便であり、かつ試料環境が過酷ではないため、従来の熱やアルカリによる変性による種々の制限を受けることなく、二本鎖核酸を一本鎖核酸に変性させることができる。そのため、ハイブリダイゼーションへの応用、PCRとの組み合わせ等に広く利用でき、また生きた細胞や生体での局所的な遺伝子増幅などへの応用も期待でき、遺伝子発現機構の解明に貢献することができると考えられる。
【0050】
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、特許請求の範囲において種々の改変が可能である。
【0051】
図6は振動発生部と容器保持部材との接続についての変形例を示すスピーカーの振動板の軸線を通る位置における断面図である。容器保持部材22は、図2又は図4に示すように、振動発生部10の振動板14を地面Gに対して水平方向を向くように設置し、その状態において振動板14又はキャップ16の部位に容器保持部材22を介して容器21に収容された核酸溶液に振動を付与する実施形態について説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0052】
振動板14は、図6に示すように地面Gに対して鉛直方向を向くように設置して核酸溶液に振動を付与するように構成してもよい。
【0053】
また、上記で得られた一本鎖核酸は、種々の用途に用いることができる。
【0054】
一実施形態としては、上記一本鎖核酸を用いてPCRにより二本鎖核酸を増幅させることができる。すなわち、本発明の他の好適な一実施形態は、二本鎖核酸を含む核酸溶液に振動発生部において発生した振動を付与し、前記二本鎖核酸を一本鎖核酸へ変性させる工程(1)と、前記一本鎖核酸を鋳型として用いて二本鎖核酸を増幅させる工程(2)と、を含む核酸の増幅方法である。
【0055】
工程(1)については、上述したので、ここでは説明を割愛する。
【0056】
従来、PCR法やLCR法において、熱変性により二本鎖核酸を一本鎖核酸に解離していた工程の代わりに、本発明では、上記工程(1)を用いる。したがって、核酸の増幅方法としては、熱変性の工程以外は、従来のPCR法およびLCR法の工程を用いて二本鎖核酸を増幅することができる。
【0057】
上述のように、本発明における変性方法によれば、加熱による変性のように、高価で較正機能に劣る耐熱性のDNAポリメラーゼを使用する必要がない。また、温度変動型のPCR法のように温度変性を必ずしも必要とせず、一定の温度で核酸の増幅を行うことができる。さらに、アルカリによる変性のように、各工程において、アルカリ変性液、中和液、及びDNAポリメラーゼを添加する必要がなく、試料溶液を準備した後、変性、アニーリングおよび伸長を行うことができる。したがって、本発明の核酸の増幅方法は非常に簡便に核酸の増幅を行うことができる。
【0058】
PCR法等により、核酸を増幅させる場合には、工程(1)において、一本鎖に変性させる試料に、後の二本鎖核酸への増幅に必要な各種試薬を含ませることができる。核酸の増幅に必要な試薬としては、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸(dATP,dGTP,dCTP,dTTP)、一対のプライマー、DNAポリメラーゼ、緩衝液等が挙げられる。
【0059】
二本鎖核酸を増幅させる方法としては、等温もしくは可変温度条件で行う2つの方法があり、本発明ではいずれの手法でも実施することが可能である。本発明では等温条件下でも二本鎖核酸の増幅を行うことができることから、操作の簡便性を考慮すると、等温条件下で増幅を行うことが好ましい。
【0060】
等温条件下とは、PCR反応溶液を含有するPCR反応用容器が設置されている環境の温度が各工程において一定となるように制御されている条件下を意味し、PCR反応溶液自体の温度が厳密に一定である必要はない。また、等温とは、厳密に同じ温度である必要はなく、例えば、一定範囲の温度で操作が行われることを指す。例えば、校正機能に優れたDNAポリメラーゼの至適温度は通常、あまり高温ではないため、10〜42℃であることが好ましい。
【0061】
なお、操作の簡便性を考慮すると、工程(1)においても等温条件下で操作を行うことが好ましい。
【0062】
また、利用可能なDNAポリメラーゼとしては、限定されるものではないが、Taqポリメラーゼや、EX−Taq、LA−Taq、Expandシリーズ、Platinumシリーズ、Tbr、Tfl、Tru、Tth、T1i、Tac、Tne、Tma、Tih、及び、Tfi等に代表されるPolI型酵素、Pfu、Pfuturbo、Pyrobest、Pwo、KOD、Bst、Sac、Sso、Poc、Pab、Mth、Pho、ES4、VENT、及び、DEEPVENTに代表されるα型酵素、Bca(exo−)DNAポリメラーゼ、E. coli DNA ポリメラーゼIのクレノウフラグメント、Vent DNAポリメラーゼ、Vent(Exo−)DNAポリメラーゼ(Vent DNAポリメラーゼからエクソヌクレアーゼ活性を除いたもの)、DeepVent DNAポリメラーゼ、DeepVent(Exo−)DNAポリメラーゼ(DeepVent DNAポリメラーゼからエクソヌクレアーゼ活性を除いたもの)、Φ29ファージDNAポリメラーゼ、MS−2ファージDNAポリメラーゼ、Z−Taq DNAポリメラーゼ等が挙げられる。これらを単独で用いても良いし、複数組み合わせて用いても良い。これらのDNAポリメラーゼは市販のものを用いることができる。
【0063】
また、核酸増幅産物の検出は、アガロースゲル電気泳動後にエチジウムブロマイドで染色したり、或いは、蛍光インターカレーター存在下で核酸増幅を行った後UVを照射することより行うことができる。また、定量Real−Time PCR法により定量的に分析することも可能である。
【0064】
また、一本鎖同士の核酸ハイブリダイゼーションを行う際に用いる一本鎖核酸を調製する際に、本発明の一本鎖解離方法を用いることもできる。一般的に、核酸ハイブリダイゼーション反応は、サザン(Southern)ハイブリダイゼーション、ノーザン(Northern)ハイブリダイゼーションなどをいう。
【実施例】
【0065】
以下、実施例および比較例を説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0066】
(1)実施例1:二本鎖核酸の変性
次に図6に記載の核酸変性装置を使用して二本鎖核酸の変性について確認する実験を行った。
【0067】
Dneasy Plant Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてシロイヌナズナから100ng/μLのゲノムDNAを抽出した。
【0068】
得られたゲノムDNA0.1μlを0.1mlのマイクロチューブ(BIOplastics社製、型番BPB77201)に添加し、Tris−EDTAバッファー(TE)9.9μlで希釈してDNA希釈物を得た後、ローディングバッファー(タカラバイオ社製、6×Loading Buffer)1μlを添加した。このサンプルを11サンプル用意した。
【0069】
そして、サンプルである核酸溶液に振動板からの振動が鉛直方向に伝達する状態において100〜1000Hz及び振動無しの11パターンの振動を振幅0.5mmで各120秒間、各核酸溶液に入力した。得られた試料を1%のアガロースゲルで電気泳動後、dsDNAを検出するSYBR(登録商標)GreenI(タカラバイオ社製)及びssDNAを検出するSYBR(登録商標)GreenII(タカラバイオ社製)で染色した。電気泳動の印加電圧はDC100Vである。
【0070】
図7は、本発明に係る核酸変性装置を使用してSYBRGreenIにより染色した実験結果を示す電気泳動写真、図8は同装置を使用してSYBRGreenIIにより染色した実験結果を示す電気泳動写真である。図7図8では、いずれも図における一番左側から100、200、300と100Hz毎に1,000Hzまで周波数を増やした振動を入力した場合の実験結果を実施例として表示し、一番右側は振動無しの場合の実験結果を比較例として表示している。
【0071】
図7において、グラフ中におけるライン部分は使用した指示薬であるSYBRGreen Iが二本鎖DNAに反応した場合に現れる。SYBRGreenIでライン部分が現れず、SYBRGreenIIでライン部分が現れると、二本鎖DNAが一本鎖DNAに変性していることが確認できる。
【0072】
図7において、振動無しの場合にラインが表示されているのは二本鎖DNAが残っていることを表している。一方で周波数100〜1,000Hzの振動を付加したサンプルには蛍光がなくなった。この結果から、振動を付加することにより、二本鎖DNAは一本鎖DNAに変性していることが確認できる。
【0073】
また、図8によれば、強弱の差はあるものの、ライン部分は十分に視認できることが確認できる。これらを総合すると、二本鎖DNAは100〜1,000Hzの周波数の振動を加えることによって一本鎖DNAに変性させることができると考えられる。
【0074】
このように核酸溶液に振動を加えることにより、熱による付加をかけずに二本鎖DNAを一本鎖DNAに変性できることが確認できた。
【0075】
(2)実施例2:PCR法による二本鎖核酸の増幅
下記のように反応液を調製した。
【0076】
【表1】
【0077】
配列番号1の配列は、5’−GATGAGTTCGTGTCCGTACAACT−3’、配列番号2の配列は、5’−GGTTATCGAAATCAGCCACAGCGCC−3’である。
【0078】
上記反応液15μlを0.1mlのマイクロチューブ(BIOplastics社製、型番BPB77201)に入れ、サンプルとした。
【0079】
次いで、図6の装置を用いて、サンプルである核酸溶液に振動板からの振動が鉛直方向に伝達する状態において、130Hz(波形サイン波)で、15秒振動を与え、その後、15秒静止した。振動15秒、静止15秒を1サイクルとし、11、13、15のサイクル数で実験を行った(図9)。したがって、トータル時間は、30秒×サイクル数となる。この際、温度は37℃に一定に保って行った。一方、比較として、振動を一切与えず、温度だけ37℃に一定に保ったこと以外は上記実施例と同様に実験を行った。保持時間は、上記のトータル時間に合わせた。電気泳動の結果を図10に示す。図10において、振動および静止のサイクルを行ったものを「振動PCR」と、振動を一切与えなかったものを「無振動」と表記した。
【0080】
図10の結果によれば、サイクル数が11では振動PCRのバンドの明るさは無振動のものより暗いが、サイクル数13では同程度の明るさとなり、サイクル数15で無振動のものよりもバンドが濃くなっている。これらのことから、サイクル数を増やすに従い、DNAが増幅されていることがわかる。
【0081】
本出願は、2012年8月30日に出願された日本特許出願番号2012−189441号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
【符号の説明】
【0082】
10 振動発生部、
11 ボイスコイル、
12 ボイスコイルボビン、
13 磁気回路、
13A プレート、
13B マグネット、
13C ヨーク、
14 振動板、
14A 振動子、
15 フレーム、
16 キャップ、
17 ダンパー、
100 核酸変性装置、
20 核酸溶液収容部、
21 容器、
22 容器保持部材、
22A 収納部、
31、32 プラスチック板、
33、34 ボルト、
41 支持板、
41A 容器挿入孔、
42 固定板、
A (地面に対して水平の)振動方向、
B 接着剤、
G 地面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【国際調査報告】