(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2014年5月8日
【発行日】2016年9月8日
(54)【発明の名称】リブの加工方法
(51)【国際特許分類】
B23C 5/12 20060101AFI20160815BHJP
B23C 5/28 20060101ALI20160815BHJP
B23C 5/16 20060101ALI20160815BHJP
【FI】
B23C5/12 B
B23C5/28
B23C5/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2014-544126(P2014-544126)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2012年10月31日
(11)【特許番号】特許第5940167号(P5940167)
(45)【特許公報発行日】2016年6月29日
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC
(71)【出願人】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】上野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】宮本 了一
(57)【要約】
T形カッタのシャンク(12)の一端に結合されたヘッド(14)の周囲に、該T形カッタ(10)の先端側に切刃(16a)を有した複数の底刃部(16)と、基端側に切刃(18a)を有した複数の上刃部(18)とを、該T形カッタの周方向に交互に配置し、底刃部(16)及び上刃部(18)の切刃(16a、18a)が、シャンク(12)及びヘッド(14)と一体構造とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削加工を行うT形カッタにおいて、
シャンクと、
前記シャンクの一端に設けられ、前記シャンクとは反対側である該T形カッタの先端側に切刃を有した複数の底刃部と、前記シャンク側に接近する該T形カッタの基端側に切刃を有した複数の上刃部とを、該T形カッタの周方向に交互に配置したヘッドと、
を具備し、前記底刃部及び前記上刃部の切刃が、前記シャンク及び前記ヘッドと一体構造をなすことを特徴としたT形カッタ。
【請求項2】
前記底刃部のすくい面が前記シャンクを臨むように該T形カッタの基端側に傾斜しており、前記上刃部のすくい面が、前記底刃部のすくい面とは反対側に該T形カッタの先端方向を臨むように傾斜している請求項1に記載のT形カッタ。
【請求項3】
該T形カッタの回転中心軸線に沿って前記シャンクを貫通し、次いで半径方向に前記ヘッドを貫通して、前記底刃部及び前記上刃部のすくい面に向けて開口し、前記底刃部及び前記上刃部の切刃にクーラントを供給するクーラント通路を更に具備する請求項1または2に記載のT形カッタ。
【請求項4】
前記T形カッタは、前記シャンク、前記ヘッド、前記底刃部の切刃及び前記上刃部の切刃が超硬合金でなる1つの母材で形成された一体構造をなす請求項1〜3の何れか1項に記載のT形カッタ。
【請求項5】
折返し部を有するリブをワークに切削加工するリブの加工方法において、
前記ワークのリブ部を前記折返し部の幅寸法以上の厚みを残して加工し、
シャンクと、前記シャンクの一端に設けられ、前記シャンクとは反対側である該T形カッタの先端側に切刃を有した複数の底刃部と、前記シャンク側に接近する該T形カッタの基端側に切刃を有した複数の上刃部とを、該T形カッタの周方向に交互に配置したヘッドとを具備し、前記底刃部及び前記上刃部の切刃が、前記シャンク及び前記ヘッドと一体構造をなすT形カッタを工作機械の主軸に装着して回転させ、
前記ワークと前記T形カッタとを相対移動させて前記折返し部が残るように前記リブを切削加工することを特徴としたリブの加工方法。
【請求項6】
前記折返し部を有するリブは、前記T形カッタの軸線と垂直な平面に対して傾いた平面または曲面でなる三次元アンダーカット形状をしている請求項5に記載のリブの加工方法。
【請求項7】
工作機械でワーク素材を切削加工して形成する折返し部を有するリブを航空機部品において、
前記ワーク素材のリブ部を前記折返し部の幅寸法以上の厚みを残して加工し、
シャンクと、前記シャンクの一端に設けられ、前記シャンクとは反対側である該T形カッタの先端側に切刃を有した複数の底刃部と、前記シャンク側に接近する該T形カッタの基端側に切刃を有した複数の上刃部とを、該T形カッタの周方向に交互に配置したヘッドとを具備し、前記底刃部及び前記上刃部の切刃が、前記シャンク及び前記ヘッドと一体構造をなすT形カッタを工作機械の主軸に装着して回転させ、
前記ワーク素材と前記T形カッタとを相対移動させて前記折返し部が残るように前記リブを切削加工することを特徴とした航空機部品。
【請求項8】
前記折返し部は、前記T形カッタの軸線と垂直な平面に対して傾いた平面または曲面でなる三次元アンダーカット形状をしている請求項7に記載の航空機部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、T形カッタ及びT形カッタを用いて折返し部を有するリブを切削加工するリブの加工方法、及び折返し部のあるリブを有した航空機部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、所謂Tスロットと称される溝を形成するために、従来からTスロットカッタと称されるT形カッタが用いられている。こうしたT形カッタは、また、ワーク側面にアンダーカットを形成するためにも用いられる。こうしたワーク側面にアンダーカットを形成する方法は、例えば、航空機の翼のスキンパネルのリブにリターンフランジを形成する場合にも適用される。
【0003】
T形カッタは、シャンクと、該シャンクの先端に結合されたヘッドとを有しており、通常、ヘッドには、超硬合金製のチップがネジ止め或いはロー付けされる。多結晶ダイヤモンド(PCD)製のチップをヘッドにロー付けしたT形カッタもある。
【0004】
例えば、特許文献1には、刃部側から刃部とは反対側へ軸心に対して回転方向とは逆方向へ傾斜するように延びる溝部をシャンクの外周面に設け、切り屑の排出性を改善したTスロットカッタが記載されている。このTスロットカッタは、刃部に超硬合金製のスロアウエーチップがネジ止めされている。
【0005】
特許文献2には、先端部側チップと基端部側チップとを工具の回転方向に交互に配置してカッティングヘッドにネジ止めしたTスロットカッタが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−18354号公報
【特許文献2】特許第4830597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2に記載されているように超硬合金製のチップをネジ止めしたT形カッタでは、遠心力や各チップの回転半径のバラツキのために、主軸の回転速度が約1000回転/分、送り速度が数百mm/min程度に制限されるため、単位時間あたりにワークから除去される材料の量(MRR(cm
3/min))で示される加工効率が低くなる。また、
図13に示すような湾曲面に沿って加工する場合や、
図14に示すような傾斜面をチップをロー付けしたT形カッタで加工する場合に、工具の軸方向に切削力が作用するためチップがT形カッタのヘッドから脱落し易くなる問題があり、それを防止するために、工具の回転速度や送り速度を更に低減しなければならない。こうした、湾曲面や傾斜面の加工は、例えば、航空機の翼のスキンパネルやリーディングエッジ等の製造工程に必要となる。
【0008】
一方、多結晶ダイヤモンド(PCD)製のチップをヘッドにロー付けしたT形カッタは、超硬合金製のチップをネジ止め或いはロー付けしたT形カッタと比較して、工具の回転速度を高めて加工効率を高くすることができる。然しながら、
図13に示すような湾曲面に沿って加工する場合や、工具の軸方向に切削力が作用する
図14に示すような傾斜面を加工する場合には、超硬合金製のチップの場合と同様に、ヘッドからチップが脱落し易くなる問題があり、やはり工具の回転速度や送り速度を高くすることができない。
【0009】
従って、本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、高速回転、高速送りで折返し部を有するリブの加工、特に三次元アンダーカット形状を加工可能なT形カッタ、リブの加工方法及び航空機部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
既述した目的を達成するために、本発明によれば、T形カッタにおいて、シャンクと、前記シャンクの一端に設けられ、前記シャンクとは反対側である該T形カッタの先端側に切刃を有した複数の底刃部と、前記シャンク側に接近する該T形カッタの基端側に切刃を有した複数の上刃部とを、該T形カッタの周方向に交互に配置したヘッドと、を具備し、前記底刃部及び前記上刃部の切刃が、前記シャンク及び前記ヘッドと一体構造としたT形カッタが提供される。
【0011】
また、本発明によれば、折返し部を有するリブをワークに切削加工するリブの加工方法において、前記ワークのリブ部を前記折返し部の幅寸法以上の厚みを残して加工し、シャンクと、前記シャンクの一端に設けられ、前記シャンクとは反対側である該T形カッタの先端側に切刃を有した複数の底刃部と、前記シャンク側に接近する該T形カッタの基端側に切刃を有した複数の上刃部とを、該T形カッタの周方向に交互に配置したヘッドとを具備し、前記底刃部及び前記上刃部の切刃が、前記シャンク及び前記ヘッドと一体構造をなすT形カッタを工作機械の主軸に装着して回転させ、前記ワークと前記T形カッタとを相対移動させて前記折返し部が残るように前記リブを切削加工するリブの加工方法が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、工作機械でワーク素材を切削加工して形成する折返し部を有するリブを航空機部品において、前記ワーク素材のリブ部を前記折返し部の幅寸法以上の厚みを残して加工し、シャンクと、前記シャンクの一端に設けられ、前記シャンクとは反対側である該T形カッタの先端側に切刃を有した複数の底刃部と、前記シャンク側に接近する該T形カッタの基端側に切刃を有した複数の上刃部とを、該T形カッタの周方向に交互に配置したヘッドとを具備し、前記底刃部及び前記上刃部の切刃が、前記シャンク及び前記ヘッドと一体構造をなすT形カッタを工作機械の主軸に装着して回転させ、前記ワーク素材と前記T形カッタとを相対移動させて前記折返し部が残るように前記リブを切削加工した航空機部品が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、T形カッタは、刃部を含むヘッド及びシャンクがロー付け等の結合手段を介することなく一体的に形成されたソリッドタイプの切削工具となっているため、超硬合金製のチップをネジ止め或いはロー付けした従来のT形カッタや、PCDチップをヘッドにロー付けした従来技術によるT形カッタと比較して、二次元的な加工をする場合のみならず、湾曲面に沿って加工する場合や、傾斜面を加工する三次元アンダーカット形状の場合であっても、チップが脱落することなく、回転速度及び送り速度を非常に高速にすることができ、加工効率を非常に高めることができる。
【0014】
特に、折返し部のあるリブを有した航空機部品、例えば、翼のスキンパネル、リーディングエッジ、ウイングリブ等の翼部材の加工に本T形カッタ及びリブの加工方法を適用することによって、高いMRRを得ることができる。アルミニウム合金の大きなブロック材の殆どを切り屑にして折返し部を有するリブ加工を行う航空機部品の製造に威力を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の好ましい実施の形態によるT形カッタの斜視図である。
【
図3】
図2の矢視線III-IIIに沿うT形カッタのヘッドの断面図である。
【
図4】
図2の矢視線IV-IVに沿うT形カッタのヘッドの端面図である。
【
図5】
図1のT形カッタのヘッドを示す部分拡大側面図である。
【
図6】
図5とは異なる回転位置で示す
図5と同様の部分拡大側面図である。
【
図7】本発明によるT形カッタの製造方法を示す略図である。
【
図8】従来技術によるT形カッタの製造方法を示す略図である。
【
図9】本発明のT形カッタによって加工される航空機の翼のスキンパネルの一部を示す斜視図である。
【
図10】本発明のT形カッタによって加工される航空機の翼のスキンパネルの一部を示す拡大断面図である。
【
図11】航空機の翼のスキンパネルの裏面を示す斜視図である。
【
図12】本発明のT形カッタを用いて三次元リターンフランジを形成するための工作機械の一例として示す横形5軸マシニングセンタの側面図である。
【
図13】従来技術によるT形カッタによって湾曲面を切削加工する場合の問題点を示す略図である。
【
図14】従来技術によるT形カッタによって傾斜面を切削加工する場合の問題点を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
先ず、
図1〜
図6を参照して、本発明のT形カッタの好ましい実施の形態を説明する。
T形カッタ10は、主軸116の先端部に装着されるシャンク12、該シャンク12の先端に形成されるヘッド14とを具備しており、ヘッド14には複数の、本実施の形態では6つの刃部が形成されている。該刃部は、T形カッタ10の先端側つまりシャンク12とは反対側に切刃16aを有した3つの底刃部16と、T形カッタ10の基端側つまりシャンク12側に切刃18aを有した3つの上刃部18とから成る。T形カッタ10は、上記刃部16、18を含むヘッド14及びシャンク12がロー付け等の結合手段を介することなく超硬合金の1つの母材で一体的に形成されており、いわゆるソリッドタイプの切削工具となっている。
【0017】
底刃部16の切刃16aは、底刃部16の底面、側面及び両者間のコーナーRがすくい面16bと交差する稜線P
A−P
B(
図6参照)によって形成される。同様に、上刃部18の切刃18aは、上刃部18の上面、側面及び両者間のコーナーRがすくい面18bと交差する稜線P
C−P
D(
図5参照)によって形成される。コーナーRの大きさはワークに加工されるフィレットRの大きさに合わせて決められる。また、底刃部16と、上刃部18とはヘッド14の周方向に交互に等間隔に配置されている。また、特に
図5、6を参照すると、底刃部16のすくい面16bは上方に、つまりシャンク12を臨むように傾斜しており、上刃部18のすくい面18bは、底刃部16のすくい面16bとは反対にT形カッタ10の先端方向を臨むように傾斜している。
【0018】
更に、T形カッタ10には加工領域にクーラントを供給するためのクーラント通路が形成されており、該クーラント通路は、中心軸線Oに沿ってシャンク12を貫通する軸方向通路12aと、該軸方向通路12aから半径方向にヘッド14を貫通して底刃部16及び上刃部18のすくい面16b、18bの方向に延設され、切刃16a、18aへ向けてクーラントを噴出させるように開口する半径方向通路14aとから成る。主軸116の内部に設けられたクーラント供給管(図示せず)に連通したクーラント通路によって、クーラントが切刃16a、18aに向けて供給され、発熱が低減し、また工具寿命と切りくずの排出が良好になる。
【0019】
次に、
図7、8を参照すると、従来、こうしたソリッドタイプのT形カッタを製造する際には、
図8に示すように、超硬合金の粉体を円筒形状に成形、焼結して超硬合金製の円筒部材を作成し、該円筒部材から研削加工によって、T形カッタを創成している。これに対して、本願発明では、
図7に示すように、T形カッタ10の最終形状に近い側面視において概ねT形を呈する形状に超硬合金の粉体を成形、焼結して、そこから研削加工によって、T形カッタ10のシャンク12及びヘッド14を創成するようにできる。これによって、
図7、8において、ハッチングで示す研削加工によって除去される材料が著しく低減され、T形カッタ10の材料費、製造時間及び製造コストが低減される。更に、研削加工に用いる研削砥石の寿命も著しく長くなる。クーラント通路12a、14aは、放電加工等の周知の細穴加工方法によって形成することができる。
【0020】
次いで、
図9〜
図12を参照して、三次元アンダーカット形状として、航空機の翼のスキンパネルのリブ加工を一例として、T形カッタ10を用いた折返し部を有するリブ、すなわちリターンフランジ部の切削加工方法を説明する。
【0021】
図11に一例として示す航空機の翼のスキンパネル50は、アウタースキン52と、該アウタースキン52の内面に沿って長手方向に延びる一対の長手リブ54、56と、該長手リブ54、56の間に延設された複数の横断リブ58とを備えている。横断リブ58において、アウタースキン52とは反対側の縁部に沿ってリターンフランジ(折返し部)60が延在している。アウタースキン52、長手リブ54、56、横断リブ58及びリターンフランジ60は、1つのアルミニウム合金製のブロックから削り出される。また、航空機の翼の一部をなすスキンパネル50のアウタースキン52は、二次元的な平面ではなく、翼表面の形状に沿って翼形の一部を形成するように三次元的に延在している。こうしたアウタースキン52の三次元的な形状に適合するように、長手リブ54、56、横断リブ58及びリターンフランジ60もまた三次元的に湾曲している。
【0022】
次に、
図12を参照すると、T形カッタ10を用いて
図11に示す航空機の翼のスキンパネル50のような、三次元リターンフランジを有したリブを加工する工作機械100が示されている。工作機械100は、横形マシニングセンタとして構成されており、工場の床面に固定される基台となるベッド102、該ベッド102の後方部分の上面にZ軸送り機構を介して前後方向(Z軸方向、
図7では左右方向)に移動可能に取り付けられたコラム104、該コラム104の前面にY軸送り機構(図示せず)を介して上下方向(Y軸方向)に移動可能に取り付けられた主軸台106、ベッド102の前方部分の上面にX軸送り機構を介して左右方向(X軸方向、
図7では紙面に垂直な方向)に移動可能に取り付けられたテーブル108を具備する。テーブル108には、ワークWを固定したパレットPが取り付けられる。また、テーブル108上の加工済ワークWを固定したパレットPは、不図示のパレット交換装置によって、未加工ワークを固定したパレットPと交換される。本実施の形態ではワークWは、例えば、航空機の翼のスキンパネル50とすることができる。尚、NC工作機械として立形マシニングセンタを採用することもできる。
【0023】
主軸台106には、旋回台110がZ軸回りのC軸方向に回転可能に支持されている。旋回台110は該旋回台110の回転軸線を挟んで両側部にブラケット部112を有している。ブラケット部112には、主軸頭114がX軸に平行な回転軸112aによってA軸方向に回転可能に取り付けられている。主軸頭114には、主軸116が長手方向の回転軸線Osを中心に回転可能に支持されており、該主軸116の先端部にT形カッタ10が取り付けられている。
【0024】
なお、X軸送り機構は、ベッド102の上面において左右方向に水平に延設された一対のX軸ガイドレール102a、該X軸ガイドレール102a沿いに摺動可能にテーブル108の下面に取り付けられたガイドブロック(図示せず)、ベッド102内においてX軸方向に延設されたX軸ボールねじ(図示せず)、テーブル108の下端部分に取り付けられ前記X軸ボールねじに係合するナット(図示せず)、および、前記X軸ボールねじの一端に連結され該X軸ボールねじを回転駆動するサーボモータ(図示せず)を具備することができる。
【0025】
同様に、Y軸送り機構は、コラム104内に鉛直に延設された一対のY軸ガイドレール(図示せず)、該Y軸ガイドレール沿いに摺動可能に主軸台106に取り付けられたガイドブロック(図示せず)、コラム104内においてY軸方向に延設されたY軸ボールねじ(図示せず)、主軸台106内に取り付けられ前記Y軸ボールねじに係合するナット(図示せず)、および、前記Y軸ボールねじの一端に連結され該Y軸ボールねじを回転駆動するサーボモータ(図示せず)を具備することができる。
【0026】
同様に、Z軸送り機構は、ベッド102の上面において前後方向に水平かつZ軸ガイドレール102b沿いに摺動可能にコラム104の下面に取り付けられたガイドブロック(図示せず)、ベッド102内においてZ軸方向に延設されたZ軸ボールねじ(図示せず)、コラム104の下面に取り付けられ前記Z軸ボールねじに係合するナット(図示せず)、および、前記Z軸ボールねじの一端に連結され該Z軸ボールねじを回転駆動するサーボモータ(図示せず)を具備することができる。
こうして、工作機械100は、X軸、Y軸及びZ軸の3つの直線送り軸と、A軸及びC軸の2つの回転送り軸を有した5軸のNC工作機械を構成している。
【0027】
T形カッタ10を用いて、航空機の翼のスキンパネルにリターンフランジを形成するために、先ず、スキンパネル50よりも大きな寸法を有したアルミニウム合金製のブロックをワークWとして、パレットPに固定した状態でテーブル108に取り付ける。次いで、例えば、エンドミル(図示せず)のような回転切削工具を工作機械100の主軸116に装着し、工作機械100の5軸の送り制御によって、該ワークWを加工し、アウタースキン52、長手リブ54、56及びリターンフランジ60を備えていない横断リブ58(リブ部)を有したスキンパネルが形成される。このとき、横断リブ(リブ部)58は、リターンフランジ60を形成可能な、リターンフランジ60の幅寸法以上の厚みを有している。
【0028】
次いで、例えば、工作機械100の自動工具交換装置(図示せず)を用いて、従前のエンドミルがT形カッタ10に交換される。次いで、工作機械100のX軸、Y軸及びZ軸の3つの直線送り軸と、A軸及びC軸の2つの回転送り軸の5軸の送り制御によって、
図9、10に示すように、横断リブ58の側面に対して所定の切り込み深さを与えつつ、T形カッタ10をアウタースキン52の内面及び横断リブ58の側面に沿って相対移動させる。これによって、横断リブ58の側面に三次元アンダーカット形状が切削加工され、横断リブ58においてアウタースキン52とは反対側の縁部(
図9、10では上縁部)に沿って、リターンフランジ60が形成される。リターンフランジ60は、横断リブ58の一方の側にのみ突出していても、或いは、横断リブ58の両側に突出していてもよい。
【0029】
本実施の形態によれば、T形カッタ10は、切刃16a、18aを含むヘッド14及びシャンク12がロー付け等の結合手段を介することなく一体的に形成されたソリッドタイプの超硬合金製の切削工具となっているため、超硬合金製のチップをネジ止め或いはロー付けした従来のT形カッタと比較して、二次元的な加工をする場合のみならず、T形カッタ10の軸線Oに垂直な平面に対して傾いた
図13に示すような湾曲面に沿って加工する場合や、
図14に示すような傾斜面を加工する場合であっても、回転速度や送り速度を非常に高速にすることができ、加工効率を非常に高めることができる。
【0030】
ここで加工結果の一例を示す。アルミニウム合金のワークにφ45の外径のT形カッタを用いて三次元アンダーカット形状の加工を行った。T形カッタとして、超硬合金のロー付け刃を有した従来のカッタと、超硬合金のソリッドでなる本発明のカッタの二種類を用意した。底刃部から上刃部までの刃の高さは両カッタ共に16mmである。従来のカッタは、回転速度1000rpm、送り速度263mm/min、半径方向切込み量11mmで、やや振動が発生し、加工能力の限界に近づいた。このときのMRRは46cm
3/minである。これに対して、本発明のカッタは、回転速度33000rpm、送り速度11000mm/min、半径方向切込み量4mmでやや振動が発生し、加工能力の限界に近づいた。このときのMRRは704cm
3/minである。本発明のカッタは従来のカッタと比較して、15.3倍能率が高かった。従って、本発明のT形カッタはMRRが100cm
3/minから1000cm
3/minの間の加工条件で用いると顕著な効果を奏する。
【符号の説明】
【0031】
10 T形カッタ
12 シャンク
12a 軸方向通路(クーラント通路)
14 ヘッド
14a 半径方向通路(クーラント通路)
16 底刃部
18 上刃部
50 スキンパネル
60 リターンフランジ
100 工作機械
102 ベッド
104 コラム
108 テーブル
114 主軸頭
116 主軸
【手続補正書】
【提出日】2015年10月23日
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
既述した目的を達成するために、本発明によれば、
ワークの切削加工を行うT形カッタ
の製造方法において、
前記T形カッタは、シャンクと、前記シャンクの一端に設けられ、前記シャンクとは反対側である該T形カッタの先端側に切刃を有した複数の底刃部と、前記シャンク側に接近する該T形カッタの基端側に切刃を有した複数の上刃部とを、該T形カッタの周方向に交互に配置したヘッドと、を具備し、
前記シャンクと前記ヘッドとでなるT形カッタの最終形状に近い側面視が概ねT形を呈する形状に超硬合金の粉末を成形、焼結した超硬合金製の工具素材を製作し、前記工具素材を研削加工によって前記シャンク、前記ヘッド、前記底刃部の切刃及び前記上刃部の切刃を超硬合金でなる1つの母材で形成した一体構造のT形カッタを製造するT形カッタ
の製造方法が提供される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
また、本発明によれば、折返し部を有するリブをワークに切削加工するリブの加工方法において、前記ワークのリブ部を前記折返し部の幅寸法以上の厚みを残して加工し、シャンクと、前記シャンクの一端に設けられ、前記シャンクとは反対側であ
る先端側に切刃を有した複数の底刃部と、前記シャンク側に接近す
る基端側に切刃を有した複数の上刃部とを、
前記シャンクの軸線周りの周方向に交互に配置したヘッドとを具備
するT形カッタであって、前記シャンクと前記ヘッドとでなるT形カッタの最終形状に近い側面視が概ねT形を呈する形状に超硬合金の粉末を成形、焼結した超硬合金製の工具素材を製作し、前記工具素材を研削加工によって前記シャンク、前記ヘッド、前記底刃部の切刃及び前記上刃部の切刃を超硬合金でなる1つの母材で形成した一体構造のT形カッタを製造し、前記
製造したT形カッタを工作機械の主軸に装着して回転させ、前記ワークと前記T形カッタとを
該T形カッタの軸線と垂直な平面に対して傾いた平面または曲面でなる三次元アンダーカット形状の折返し部に沿って相対移動させて前記折返し部が残るように前記リブを切削加工するリブの加工方法が提供される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
底刃部16の切刃16aは、底刃部16の底面、側面及び両者間のコーナーRがすくい面16bと交差する稜線P
A−P
B(図
5参照)によって形成される。同様に、上刃部18の切刃18aは、上刃部18の上面、側面及び両者間のコーナーRがすくい面18bと交差する稜線P
C−P
D(図
6参照)によって形成される。コーナーRの大きさはワークに加工されるフィレットRの大きさに合わせて決められる。また、底刃部16と、上刃部18とはヘッド14の周方向に交互に等間隔に配置されている。また、特に
図5、6を参照すると、底刃部16のすくい面16bは上方に、つまりシャンク12を臨むように傾斜しており、上刃部18のすくい面18bは、底刃部16のすくい面16bとは反対にT形カッタ10の先端方向を臨むように傾斜している。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの切削加工を行うT形カッタの製造方法において、
前記T形カッタは、シャンクと、前記シャンクの一端に設けられ、前記シャンクとは反対側である該T形カッタの先端側に切刃を有した複数の底刃部と、前記シャンク側に接近する該T形カッタの基端側に切刃を有した複数の上刃部とを、該T形カッタの周方向に交互に配置したヘッドと、を具備し、
前記シャンクと前記ヘッドとでなるT形カッタの最終形状に近い側面視が概ねT形を呈する形状に超硬合金の粉末を成形、焼結した超硬合金製の工具素材を製作し、
前記工具素材を研削加工によって前記シャンク、前記ヘッド、前記底刃部の切刃及び前記上刃部の切刃を超硬合金でなる1つの母材で形成した一体構造のT形カッタを製造することを特徴としたT形カッタの製造方法。
【請求項2】
前記底刃部のすくい面が前記シャンクを臨むように該T形カッタの基端側に傾斜しており、前記上刃部のすくい面が、前記底刃部のすくい面とは反対側に該T形カッタの先端方向を臨むように傾斜している請求項1に記載のT形カッタの製造方法。
【請求項3】
該T形カッタの回転中心軸線に沿って前記シャンクを貫通し、次いで半径方向に前記ヘッドを貫通して、前記底刃部及び前記上刃部のすくい面に向けて開口し、前記底刃部及び前記上刃部の切刃にクーラントを供給するクーラント通路を細穴放電加工する請求項1または2に記載のT形カッタの製造方法。
【請求項4】
前記底刃部の切刃及び前記上刃部の切刃のコーナRは、前記ワークに加工されるフィレットRの大きさに合わせて研削加工される請求項1〜3の何れか1項に記載のT形カッタの製造方法。
【請求項5】
折返し部を有するリブをワークに切削加工するリブの加工方法において、
前記ワークのリブ部を前記折返し部の幅寸法以上の厚みを残して加工し、
シャンクと、前記シャンクの一端に設けられ、前記シャンクとは反対側である先端側に切刃を有した複数の底刃部と、前記シャンク側に接近する基端側に切刃を有した複数の上刃部とを、前記シャンクの軸線周りの周方向に交互に配置したヘッドとを具備するT形カッタであって、前記シャンクと前記ヘッドとでなるT形カッタの最終形状に近い側面視が概ねT形を呈する形状に超硬合金の粉末を成形、焼結した超硬合金製の工具素材を製作し、前記工具素材を研削加工によって前記シャンク、前記ヘッド、前記底刃部の切刃及び前記上刃部の切刃を超硬合金でなる1つの母材で形成した一体構造のT形カッタを製造し、
前記製造したT形カッタを工作機械の主軸に装着して回転させ、
前記ワークと前記T形カッタとを該T形カッタの軸線と垂直な平面に対して傾いた平面または曲面でなる三次元アンダーカット形状の折返し部に沿って相対移動させて前記折返し部が残るように前記リブを切削加工することを特徴としたリブの加工方法。
【手続補正書】
【提出日】2016年3月28日
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
また、本発明によれば、折返し部を有するリブを
アルミニウム合金製のワークに切削加工するリブの加工方法におい
て、シャンクと、前記シャンクの一端に設けられ、前記シャンクとは反対側である先端側に切刃を有した複数の底刃部
であって該底刃部の底面、側面及び両者間のコーナーRがすくい面と交差する稜線によって形成される切刃を有した複数の底刃部と、前記シャンク側に接近する基端側に切刃を有した複数の上刃部
であって該上刃部の上面、側面及び両者間のコーナーRがすくい面と交差する稜線によって形成される切刃を有した複数の上刃部とを、前記シャンクの軸線周りの周方向に交互に配置したヘッドとを具備するT形カッタであって、前記シャンクと前記ヘッドとでなるT形カッタの最終形状に近い側面視が概ねT形を呈する形状に超硬合金の粉末を成形、焼結した超硬合金製の工具素材を製作し、前記工具素材を研削加工によって前記シャンク、前記ヘッド、前記底刃部の切刃及び前記上刃部の切刃を超硬合金でなる1つの母材で形成した一体構造のT形カッタを製造し、
前記ワークを3つの直線送り軸と、2つの回転送り軸とを有する5軸制御の工作機械のテーブルに固定し、前記工作機械の主軸にエンドミルを装着して、前記ワークのリブ部を前記折返し部の幅寸法以上の厚みを残して加工し、前記製造したT形カッタを
前記工作機械の主軸に装着して回転させ、
前記T形カッタの軸線と垂直な平面に対して傾い
た曲面でなる三次元アンダーカット形状の折り返し部に沿って
、前記工作機械の5軸の制御で前記ワークと前記T形カッタとを相対移動させて
、単位時間あたりにワークから除去される材料の量である材料除去率(MRR)を100cm3/minから1000cm3/minとして、前記折返し部が残るように前記リブ
の側面を切削加工するリブの加工方法が提供される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折返し部を有するリブをアルミニウム合金製のワークに切削加工するリブの加工方法において、
シャンクと、前記シャンクの一端に設けられ、前記シャンクとは反対側である先端側に切刃を有した複数の底刃部であって該底刃部の底面、側面及び両者間のコーナーRがすくい面と交差する稜線によって形成される切刃を有した複数の底刃部と、前記シャンク側に接近する基端側に切刃を有した複数の上刃部であって該上刃部の上面、側面及び両者間のコーナーRがすくい面と交差する稜線によって形成される切刃を有した複数の上刃部とを、前記シャンクの軸線周りの周方向に交互に配置したヘッドとを具備するT形カッタであって、前記シャンクと前記ヘッドとでなるT形カッタの最終形状に近い側面視が概ねT形を呈する形状に超硬合金の粉末を成形、焼結した超硬合金製の工具素材を製作し、前記工具素材を研削加工によって前記シャンク、前記ヘッド、前記底刃部の切刃及び前記上刃部の切刃を超硬合金でなる1つの母材で形成した一体構造のT形カッタを製造し、
前記ワークを3つの直線送り軸と、2つの回転送り軸とを有する5軸制御の工作機械のテーブルに固定し、前記工作機械の主軸にエンドミルを装着して、前記ワークのリブ部を前記折返し部の幅寸法以上の厚みを残して加工し、
前記製造したT形カッタを前記工作機械の主軸に装着して回転させ、
前記T形カッタの軸線と垂直な平面に対して傾いた曲面でなる三次元アンダーカット形状の折り返し部に沿って、前記工作機械の5軸の制御で前記ワークと前記T形カッタとを相対移動させて、単位時間あたりにワークから除去される材料の量である材料除去率(MRR)を100cm3/minから1000cm3/minとして、前記折返し部が残るように前記リブの側面を切削加工することを特徴としたリブの加工方法。
【国際調査報告】