(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年8月27日
【発行日】2017年3月30日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/11 20060101AFI20170310BHJP
H01R 13/24 20060101ALI20170310BHJP
H01R 12/71 20110101ALI20170310BHJP
【FI】
H01R13/11 302N
H01R13/24
H01R12/71
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2016-504141(P2016-504141)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-28906(P2014-28906)
(32)【優先日】2014年2月18日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】390012977
【氏名又は名称】イリソ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝正
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘明
【テーマコード(参考)】
5E123
【Fターム(参考)】
5E123AB45
5E123AC12
5E123BA01
5E123BA07
5E123BB01
5E123BB12
5E123CB22
5E123CB39
5E123CB46
5E123CD01
5E123DB08
5E123DB11
5E123EA04
5E123EA13
(57)【要約】
ハウジング(4)とコネクタ端子(3)とを備え、コネクタ端子(3)が、ハウジング(4)の挿入口(4c)から挿入されるプラグコネクタ(2)と接触する接触部(8b)と、この接触部(8b)を変位可能に支持する弾性腕(8a)とを有するフロント端子(8)と、フロント端子(8)の接触部(8b)に続いてプラグコネクタ(2)と接触する接触部(9b)と、この接触部(9b)を変位可能に支持する弾性腕(9a)とを有するリア端子(9)と、を備えるコネクタ(1)について、リア端子(9)は、接触部(9b)に設けられ挿入口(4c)から挿入されるプラグコネクタ(2)と接触するリア接点部(9b1)を有し、弾性腕(9a)は、その変位支点(9c)がリア接点部(9b1)よりもハウジング(4)に挿入されたプラグコネクタ(2)の側に位置するように形成する。これにより、リア端子(9)をフロント端子(8)と接触しないように変位させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとコネクタ端子とを備え、コネクタ端子が、
ハウジングの挿入口から挿入される接続対象物と接触する接触部と、この接触部を変位可能に支持する弾性片部とを有するフロント端子と、
フロント端子の接触部に続いて接続対象物と接触する接触部と、この接触部を変位可能に支持する弾性片部とを有するリア端子と、を備えるコネクタにおいて、
前記リア端子は、前記接触部に設けられ前記挿入口から挿入される接続対象物と接触する接点部を有し、当該弾性片部は、その変位支点が前記接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記フロント端子は、前記挿入口から挿入される接続対象物と接触する接点部を有し、当該接点部は前記弾性片部の変位支点よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成されている請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記フロント端子は、その接触部と弾性片部との間に、前記リア端子の接触部の前記挿入口側の先端が入り込む隙間を有する請求項1又は請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記リア端子の接点部が、前記挿入口から挿入される接続対象物と最初に接触する接触部位から、接続対象物との正規の嵌合位置で接触する接触部位までの板縁部分である請求項1〜請求項3何れか1項記載のコネクタ。
【請求項5】
前記フロント端子の接点部が、前記挿入口から挿入される接続対象物と最初に接触する接触部位から、接続対象物との正規の嵌合位置で接触する接触部位までの板縁部分である請求項2〜請求項4何れか1項記載のコネクタ。
【請求項6】
前記フロント端子の接点部と前記リア端子の接点部とが接続対象物と接触することで互いに非接触のまま異方向へ変位する請求項2〜請求項5何れか1項記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続対象物と導通接続するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
FPCやプラグコネクタ等の接続対象物と接触するフロント端子と、フロント端子の次に接続対象物と接触するリア端子とを有するコネクタ端子を備えるコネクタが知られている。このコネクタ端子では、フロント端子とリア端子がそれぞれ接続対象物と押圧接触する接触縁が形成された接触部を有しており、コネクタのハウジングに固定されている。このハウジングには接続対象物の挿入口と、挿入口から挿入された接続対象物に対してコネクタ端子が接触する嵌合室とが設けられている。前記各接触部は、その嵌合室を形成する内壁に設けられた端子収容溝の開口となるスリットから嵌合室の内部に突出して、挿入口から挿入される接続対象物と接触することができる(一例として特許文献1参照)。
【0003】
このようなコネクタ端子では、製造上、形状にわずかなばらつきが生じたり、組立位置にずれが生じたりして、リア端子の接触部の先端がスリットから突出し、接続対象物が嵌合時に突き当たって嵌合室内に座屈したり、折れたりする場合がある。このような不具合については、リア端子の接触部におけるハウジングの挿入口側の先端の上側を覆うようにフロント端子の接触部を設けることで、先ずフロント端子の接触部で接続対象物の挿入を受けてからリア端子の接触部に受け流すことで、一定の予防効果を得ることができる(特許文献1の第1実施形態参照。)。その予防効果を更に高めるために、フロント端子の接触部にリア端子の接触部の先端側を収容する間隙を設ける端子構造とすることが考えられる(類似構造を開示するものとして特許文献1の第2実施形態参照。)。このコネクタ端子を用いれば、リア端子の接触部の先端位置はフロント端子の間隙の内側に限定される。よって、接続対象物が突き当たるといった事態が生じにくくなるため、リア端子の接触部が嵌合室に飛び出す上記不具合をより確実に解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−40309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1の第2実施形態のコネクタのように、フロント端子の接触部が変位する際にリア端子を引っ掛けて同じ方向に変位させると、フロント端子によりリア端子をも変位させるため、接続対象物の挿入時におけるフロント端子の挿入が硬くなり挿入性が悪化するという問題がある。
【0006】
また、フロント端子の接触部とリア端子の接触部が、接続対象物に対して確実に接触するためには、それらの接圧が十分に高く設定される必要がある。しかし、フロント端子とリア端子が相互に接触してしまうと、互いの接圧に影響を与えることになる。
【0007】
さらに、フロント端子やリア端子は、切断縁のバリを取るために角を丸める加工が行われることから、板縁が本来の端子材料の板厚よりも薄くなるのが通常である。そのため、フロント端子の接触部がリア端子の接触部と接触する際に、フロント端子の板縁が端子収容溝の内部でフロント端子の板縁とリア端子の板縁とが重なって変位できなくなり、フロント端子の接触部とリア端子の接触部とを適切に接続対象物に導通接触できないというおそれがある。
【0008】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明である。その目的は、コネクタ端子に接続対象物と接触する複数の端子を有しており、それらの複数の端子が接続対象物と接触して変位する際に相互に接触することなく接続対象物と確実に接触できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は以下のように構成される。
【0010】
本発明は、ハウジングとコネクタ端子とを備え、コネクタ端子が、ハウジングの挿入口から挿入される接続対象物と接触する接触部と、この接触部を変位可能に支持する弾性片部とを有するフロント端子と、フロント端子の接触部に続いて接続対象物と接触する接触部と、この接触部を変位可能に支持する弾性片部とを有するリア端子とを備えるコネクタについて、前記リア端子が、前記接触部に設けられ前記挿入口から挿入される接続対象物と接触する接点部を有し、当該弾性片部は、その変位支点が前記接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成されていることを特徴とするコネクタを提供する。
【0011】
本発明の前記リア端子は、前記接触部に設けられ前記挿入口から挿入される接続対象物と接触する接点部を有し、当該弾性片部は、その変位支点が前記接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置する。このためリア端子は、弾性片部が変位支点を回動中心として倒れる方向に回動することで、接触部が斜め下方に向けて回動変位する。これにより、リア端子の接触部がフロント端子の接触部から離れるように変位する。このようにリア端子が変位することで、接続対象物と接触する嵌合過程で、フロント端子とリア端子とが同一の端子収容溝に設けられていても互いに接触しないようにすることができ、接続対象物と確実に接触することができる。
【0012】
前記本発明のフロント端子は、前記挿入口から挿入される接続対象物と接触する接点部を有し、当該接点部が前記弾性片部の変位支点よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成することができる。
【0013】
本発明のフロント端子は、前記挿入口から挿入される接続対象物と接触する接点部が、前記弾性片部の変位支点よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置する。このためフロント端子は、弾性片部が変位支点を回動中心として起き上がるように回動することで、接触部が斜め上方に向けて回動変位する。これにより、フロント端子の接触部がリア端子の接触部から離れるように変位する。しかも、リア端子は倒れる方向に回動し、フロント端子は起き上がる方向に回動するため、リア端子の接触部とフロント端子の接触部は相互に離れるように変位する。つまりそれらの接触部は互いに異方向に変位する。これによってさらにフロント端子とリア端子が相互に接触しないようにすることができる。
【0014】
前記本発明のフロント端子は、その接触部と弾性片部との間に、前記リア端子の接触部の前記挿入口側の先端が入り込む隙間を有する。
【0015】
こうすることで、リア端子における接触部の先端位置を前記隙間の内側に限定することができる。よってリア端子の接触部の先端はフロント端子よりも接続対象物の側に突出しないため、接続対象物が嵌合時に突き当たり、リア端子が折れ曲がったり座屈したりするといった不具合が生じない。前記隙間は、リア端子の接触部と弾性片部との間に形成される凹部として設けることができる。
【0016】
前記本発明については、前記リア端子の接点部が、前記挿入口から挿入される接続対象物と最初に接触する接触部位から、接続対象物との正規の嵌合位置で接触する接触部位までの板縁部分であるものとして構成できる。
【0017】
リア端子の接点部を前記板縁部分として設定し、当該板縁部分が接続対象部材と接触することで、前述したリア端子の回動動作を得ることができる。
【0018】
前記本発明については、前記フロント端子の接点部が、前記挿入口から挿入される接続対象物と最初に接触する接触部位から、接続対象物との正規の嵌合位置で接触する接触部位までの板縁部分であるものとして構成できる。
【0019】
フロント端子の接点部を前記板縁部分として設定し、当該板縁部分が接続対象部材と接触することで、前述したフロント端子の回動動作を得ることができる。
【0020】
前記本発明については、前記フロント端子の接点部と前記リア端子の接点部とが接続対象物と接触することで互いに非接触のまま異方向へ変位するものとして構成できる。
【0021】
フロント端子の接点部とリア端子の接点部とが接続対象物と接触することで互いに非接触のまま異方向へ変位できるので、接触部どうしが相互に接触することなく、確実に導通接触することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のコネクタによれば、コネクタ端子が接続対象物に押圧されて折れ曲がったり、座屈したりするといった事態を生じにくくすることができる。また、コネクタ端子のフロント端子とリア端子が接続対象物と接触する過程で相互に接触しないので、それらの端子の各接点部で接続対象物と確実に接触することができる。そのため、接続信頼性の高いコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図6】
図1のコネクタの接触部を示す部分拡大断面図。
【
図9】
図1のコネクタに接続対象物を嵌合させる状態を示す説明図。
【
図10】
図9のコネクタに接続対象物をさらに嵌合させる状態を示す説明図。
【
図13】変形例のコネクタ端子を示す
図8相当の部分拡大図であって、分図(a)はフロント端子の接触部の下端とリア端子の接触部の先端部の高さ位置が同じ場合を示し、分図(b)はフロント端子の接触部の下端がリア端子の先端部よりも上側に設けられる場合を示す部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態ではプラグコネクタ2と嵌合して接続する基板対基板用のソケット側のコネクタ1の例を説明する。以下の各実施形態で共通する構成については同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0025】
また本明細書、特許請求の範囲、図面では、
図1〜
図4で示すようにコネクタ1の長手方向をX方向(左右方向)、短手方向をY方向(前後方向)、「接続対象物」としてのプラグコネクタ2とコネクタ1との挿抜方向をZ方向(上下方向)として説明する。また、本明細書中では、上下方向Zにおいてプラグコネクタ2側を「上側」、コネクタ1側を「下側」として説明する。なお、上下、左右、前後の方向の説明は本発明のコネクタ端子及びコネクタの実装方向、使用方向を限定するものではない。
【0026】
第1実施形態〔図1〜図10〕:
本実施形態のコネクタ1は、
図1〜
図4で示すようにコネクタ端子3と、ハウジング4とを備える。
図5、
図9、
図10で示すように、コネクタ1は基板Pに実装されており、プラグコネクタ2は図示しない基板に実装される。コネクタ1とプラグコネクタ2とが嵌合することで基板Pとプラグコネクタ2を実装した基板とが導通接続される。
【0027】
〔ハウジング〕
ハウジング4は絶縁性樹脂でなり、略直方体形状に設けられる。またハウジング4は、コネクタ端子3を収容するスリット状の端子収容溝4aと、コネクタ端子3を固定する固定孔4bとを有する。端子収容溝4aはコネクタ1の長手方向Xに沿って複数並列に設けられ、各端子収容溝4aにはコネクタ端子3が1本ずつ収容されている。
【0028】
また、ハウジング4にはプラグコネクタ2の挿入口4cと、挿入口4cに連通する嵌合室4dが形成されている。嵌合室4dは前記コネクタ端子3の端子収容溝4aと連通し、その内壁4eのスリット4e1からはコネクタ端子3の後述する接触部8b、9bが部分的に突出する。そしてコネクタ端子3は、嵌合室4dでプラグコネクタ2のプラグ端子5と導通接続する。
【0029】
〔コネクタ端子〕
本実施形態のコネクタ端子3は、平板の導電性金属をプレス加工で打ち抜いた抜き端子として形成したものである。このコネクタ端子3はハウジング4の端子収容溝4aに収容されており、コネクタ1の長手方向Xに沿って等間隔に複数並列に設けられる。コネクタ端子3は
図5〜
図10で示すように、基板に接続する基板接続部6と、基端部7と、フロント端子8と、リア端子9とを有する。
【0030】
〔基板接続部〕
基板接続部6は、コネクタ端子3の末端に設けられて基板Pに接続する。また、コネクタ端子3は板面がハウジング4の短手方向Yに対して平行になるように取り付けられる。そして、ハウジング4の嵌合室4dを介して対向した状態で対をなして取り付けられている。また、後述の固定片部10がハウジング4に固定された状態で、基板接続部6は下側に向けて突出しており、ハウジング4を基板Pから浮かせた状態で支持する。
【0031】
〔基端部〕
コネクタ端子3の基端部7は、
図7、
図8で示すように基板接続部6に隣接して設けられる。その上端には、フロント端子8が上側に向けて片持ち梁状に設けられている。また、前後方向Yにおいて基板接続部6が設けられる側とは反対側の縁には、リア端子9がフロント端子8と略平行して上側に向けて片持ち梁状に設けられている。また基端部7には、ハウジング4に固定される固定片部10が上側に向けて設けられている。この固定片部10には係止部10aが設けられており、ハウジング4の固定孔4bに圧入されて噛み込ませることで固定されている。
【0032】
〔フロント端子〕
フロント端子8は、
図7、
図8で示すように「弾性片部」としての弾性腕8aと、挿入口4c側に向けて突出する接触部8bとを有する。弾性腕8aは基端部7から延出し、接触部8bを変位可能に支持する。そして接触部8bは弾性腕8aの先端側に設けられている。接触部8bは、接触縁8Aと、後縁8b3とを有する。接触縁8Aは、略三角形状でなる接触部8bの3辺のうち、嵌合位置にあるプラグコネクタ2の側の1辺の板縁に設けられ、プラグコネクタ2の挿入方向に沿う仮想線L3に対して傾斜する(
図8)。また、接触縁8Aはフロント接点部8b1を有しており、このフロント接点部8b1はハウジング4の内壁4eのスリット4e1から突出し、嵌合室4dの内側でプラグ端子5と押圧接触する。フロント接点部8b1は、スリット4e1から突出している部分の板縁に設けられる。より具体的には、挿入口4cから挿入されるプラグコネクタ2と最初に接触する接触部位から、プラグコネクタ2との正規の嵌合位置で接触する接触部位までの板縁部分である。フロント接点部8b1は、プラグコネクタ2とコネクタ1の嵌合時に、プラグ端子5の端子面5aに付着する異物の除去機能を発揮する。フロント接点部8b1の下端側には嵌合接点部8b2が設けられており、この嵌合接点部8b2がハウジング4の内壁4eのスリット4e1から突出し、正規の接触位置として嵌合室4dの内側で嵌合状態にあるプラグ端子5の端子面5aと接触する。また、後縁8b3はフロント接点部8b1と鋭角をなすように形成されており、弾性腕8aとの間に隙間11を形成する。
【0033】
〔リア端子〕
リア端子9はフロント端子8と隣接して設けられ、基端部7から上側に向けて延出して形成される。リア端子9は、
図7、
図8で示すように「弾性片部」としての弾性腕9aと、挿入口4c側に向けて突出する接触部9bとを有する。弾性腕9aは基端部7から延出し、接触部9bを変位可能に支持する。弾性腕9aの基端部7との連結部分は、前後方向Yにおいて内壁4eよりも嵌合室4dの内部側に位置している。弾性腕9aには、その連結位置から嵌合室4dに沿って迂回するように伸長する屈曲部9a1を有している。このように接触部9bが屈曲部9a1を有することで、弾性腕9aを直線的に伸長させる場合と比較して、狭いハウジング4の内部で弾性腕9aのばね長を長くすることができる。
【0034】
リア端子9の接触部9bは弾性腕9aの先端側に設けられており、フロント端子8の接触部8bの下側に設けられる。接触部9bは接触縁9Aを有しており、この接触縁9Aは、略三角形状でなる接触部9bの3辺のうち、嵌合位置にあるプラグコネクタ2の側の1辺の板縁に設けられ、プラグコネクタ2の挿入方向に沿う仮想線L2に対して傾斜する。また、接触縁9Aはリア接点部9b1を有しており、このリア接点部9b1はハウジング4の内壁4eのスリット4e1から突出し、嵌合室4dの内側でプラグ端子2と押圧接触する。リア接点部9b1は、スリット4e1から突出している部分の板縁に設けられる。より具体的には、挿入口4cから挿入されるプラグコネクタ2と最初に接触する接触部位から、プラグコネクタ2との正規の嵌合位置で接触する接触部位までの板縁部分である。リア接点部9b1は、嵌合室4dの内側でプラグ端子5の端子面2aと押圧接触する。また、このリア接点部9b1の下端側にはプラグ端子5と押圧接触する嵌合接点部9b2が設けられる。嵌合接点部9b2はハウジング4の内壁4eのスリット4e1から突出し、正規の接触位置として嵌合室4dの内側でプラグ端子5の端子面5aと接触する。
【0035】
また、接触部9bの先端部9b3を上側に向けて山型に突出して形成し、先端部9b3の高さ位置をフロント端子8の接触部8bの下端よりも高く設けて前記隙間11に収容する。こうすることで先端部9b3の位置は隙間11の内部に限定される。したがって、リア端子9の前記先端部9b3が端子収容溝4aの中からハウジング4の嵌合室4dへ突出して、嵌合時にプラグコネクタ2が突き当たって折れ曲がったり、嵌合室4dの内部に向けて座屈したりするといった事態が生じない。また、このように接触部9bの先端部9b3を隙間11に収容することで、狭いハウジング4の内部で弾性腕9aのばね長を長くすることができる。
【0036】
コネクタ端子3はハウジング4への取付け等に外力を受けることで、例えばリア端子9の弾性腕9aが基端部7との連続部分から嵌合室4d側に向けて曲がる場合がある。しかしながら、仮にこうした不具合が発生した場合であっても、本実施形態のコネクタ端子3ではリア端子9の接触部9bにおける先端部9b3がフロント端子8の接触部8bと接触する。したがって接触部9bが嵌合室4dへ飛び出す不具合の発生を防ぐことができる。そのため、嵌合時にプラグコネクタ2がリア端子9の接触部9bの先端部9b3に突き当たって、リア端子9が嵌合室4d内に座屈したり折れたりして、プラグコネクタ2との嵌合不良が生じないようにしている。なお、この場合には、リア端子9がプラグコネクタ2と接触して変位する際には、フロント端子8と接触するという不都合が生じる場合がある。しかし、リア端子9の前記先端部9b3が嵌合室4d内に入り込み、プラグコネクタ2が嵌合時に突き当たって嵌合室4d内に座屈したり、折れたりするといった大きな問題は回避することができるため、リア端子9の接触部9bによる接触も確保することは可能である。
【0037】
リア端子9の接圧はフロント端子8の接圧よりも高く設定されている。こうした接圧の関係は、例えばハウジング4内部で嵌合室4dを介して対向するコネクタ端子5,5のリア端子9,9が有する嵌合接点部9b2,9b2の間隔を、同じくフロント端子8,8の嵌合接点部8b2,8b2の間隔をよりも狭くすることで実現することができる。また、このような構成とすることで、リア端子9をフロント端子8よりも、嵌合状態にあるプラグコネクタ2の側に配置することができる。よって、嵌合室4dにおいてプラグコネクタ2の挿入方向奥側に配置されるリア端子9の接触縁9Aや嵌合接点部9b2を確実にプラグコネクタ2と接触させることができる。さらに、ばね定数についてもまた、リア端子9ではフロント端子8よりも高く設定されている。これらにより、プラグコネクタ2と確実に接触することができるため、リア端子9の接続信頼性をより高めることができる。
【0038】
〔フロント端子による異物除去機能〕
プラグコネクタ2をコネクタ1に嵌合させることで、プラグ端子5とコネクタ端子3とが接触し導通接続する。しかし、このプラグ端子5の端子面5aには、例えば基板かすやほこりなどの異物が付着している場合がある。この状態でリア接点部9b1がプラグ端子5の端子面5aに対して接触すると、リア接点部9b1とプラグ端子5の端子面5aとの間に異物が挟まり、リア接点部9b1とプラグ端子5との導通接続が不安定になるおそれがある。
【0039】
これに対し、本実施形態のコネクタ1では、
図5〜
図10で示すようにリア接点部9b1よりも上側にフロント端子8のフロント接点部8b1を設ける。こうすることで、プラグコネクタ2をコネクタ1に挿入した際に、プラグ端子5の端子面5aに対してフロント接点部8b1とリア接点部9b1を順次摺動接触させて、フロント接点部8b1によりプラグ端子5の端子面5aに付着している異物をワイピングすることができる。その後、リア接点部9b1が、そのワイピングされた部分に接触することで、リア接点部9b1とプラグ端子5の間に異物が挟まることなく両者が安定して導通接続することができる。
【0040】
〔リア端子とフロント端子との接触防止構造〕
本実施形態では、非嵌合状態で、フロント端子8のフロント接点部8b1を前後方向Yにおいて弾性腕8aの変位支点8cよりも、嵌合位置にあるプラグ端子5の側に位置するように設けている。そのため弾性腕8aは、基端部7との連結部分から先端側に向けて、プラグ端子5との嵌合方向に向けて倒れ込むように傾斜して形成されている。また、プラグコネクタ2とコネクタ1の嵌合時においては、フロント端子8のフロント接点部8b1にプラグ端子5が押圧接触すると、弾性腕8aは、付け根の部分に位置する変位支点8cを回動中心として、直立する方向(
図7中矢示L1)に向けて起き上がるように回動する。この時、フロント接点部8b1と変位支点8cとの距離は変わらないため、フロント接点部8b1はプラグ端子5から離れる方向に変位しながら、変位支点8cを避けるように弧を描いて斜め上方に向けて変位する。なお、フロント接点部8b1の全長に渡って変位支点8cよりも嵌合位置にあるプラグ端子5の側に位置するようにすることで、フロント端子8の接触部8bが確実にリア端子9から離れるように、上記の方向に向けて回動することができる。
【0041】
その一方で、リア端子9では弾性腕9aの付け根の部分に位置する変位支点9cが、非嵌合状態で、前後方向Yにおいてリア接点部9b1よりも嵌合位置にあるプラグ端子5の側に位置するように設けられている。よって、変位支点9cとリア接点部9b1とを結ぶ直線(図示略)は、矢示L2(
図8)方向に向けてフロント端子8側に倒れるように傾斜する。この場合、リア端子9のリア接点部9b1にプラグ端子5が押圧接触すると、接触部9bはフロント端子8の接触部8bとは反対に、斜め下方に向けて変位する。
【0042】
このようにフロント端子8の接触部8bが斜め上方に変位し、リア端子9の接触部9bが斜め下方に変位することで、リア端子9の接触部9bの先端部9b3は、フロント端子8とは接触することなくフロント端子8の隙間11から抜けることができる。そしてフロント端子8の接触部8bとリア端子9の接触部9bは相互に離間するように変位した状態でプラグ端子5と接続する。
【0043】
また、本実施形態ではプラグコネクタ2の挿入方向がコネクタ1の下方向であり、プラグコネクタ2を挿入する際にリア端子9の接触部9bが斜め下方に変位する。即ち、作業者はプラグコネクタ2をコネクタ1に挿入する際に、上下方向Zにおける下方向に向かう押圧力を掛けてプラグコネクタ2をコネクタ1に挿入する。その際、リア端子9がプラグコネクタ2から受ける押圧力に対して強く逆らうことなく、その挿入方向である下側に向けて変位する。よって、作業者にとって、プラグコネクタ2をコネクタ1に挿入する際に手元に受ける抵抗を軽減し、より楽に嵌合操作を行うことができる。
【0044】
上記、本実施形態のコネクタ1によれば、リア端子9がプラグコネクタ2から押圧されて変位しても、フロント端子8の弾性腕8aに接触しにくくすることができる。よって、コネクタ端子3がプラグコネクタ2に押圧されて折れ曲がったり、座屈したりするといった事態を生じにくくすることができる。また、リア端子9の接圧を容易に維持することができるため、接続信頼性の高いコネクタ1とすることができる。
【0045】
第2実施形態〔図11〕:
第1実施形態では、リア端子9の弾性腕9aの変位支点9cが、プラグコネクタ2と押圧接触する接触部9bのリア接点部9b1よりも、嵌合位置にあるプラグコネクタ2の側に位置するように形成される例を示した。これに対して、
図11で示すように、リア端子9の弾性腕9aの変位支点9cと、リア接点部9b1とが、プラグコネクタ2との接触方向において同じ位置(接触線L1上)に配置されるものとしても良い。この場合、リア端子9の接触部9bが変位する場合にはフロント端子8の側に向けて、わずかに前後方向Yに沿って変位し、その後、リア端子9の接触部9bが斜め下方に向けて変位する。よって、この場合でも、リア端子9の接触部9bがフロント端子8の接触部8bから離れる方向に向けて変位することができる。また、この場合、特にリア端子9の弾性腕9aの変位支点9cと、嵌合接点部9b2が、プラグコネクタ2との接触方向において同じ位置に配置されるものとしても良い。こうすることで、接触部9bの略全体が斜め下方に向かうように円弧状に回動することができる。そのため、接触部9bの略全体がフロント端子8の接触部8bから離れる方向である斜め下方に向けて変位することができる。
【0046】
第3実施形態〔図12〕:
前記各実施形態では、リア端子9の弾性腕9aが屈曲部9a1を有する例を示した。これに対して、リア端子9の弾性腕9aが屈曲部9a1を有さず、略直線的に形成されるものとすることができる。この場合、屈曲部9a1を有する場合よりも弾性腕9aのばね長が短くなるが、ばね長を長くする必要が無い場合には、こうすることでコネクタ端子3の材料費を抑えることができる。
【0047】
変形例〔図13〕:
前記各実施形態では、フロント端子8の後縁8b3と弾性腕8aとの間に隙間11を形成し、リア端子9の接触部9bの先端部9b3の高さ位置をフロント端子8の接触部8bの下端よりも高く設けて、前記隙間11にリア端子9の接触部9bの先端部9b3を収容する例を示した。しかし、
図13分図(a)で示すように、フロント端子8の接触部8bの下端部8b4とリア端子9の接触部9bの先端部9b3の高さ位置を等しくしても良い。この場合、フロント端子8がリア端子9の接触部9bの先端部9b3の上側を覆うことで、プラグコネクタ2がリア端子9の接触部9bの先端部9b3に突き当たることを抑えることができる。また、上記のように隙間11にリア端子9の接触部9bの先端部9b3を収容する場合よりもリア端子9の接触部9bとフロント端子8の接触部8bとが互いに離れるため、それらをより接触しにくくすることができる。
【0048】
また、
図13分図(b)で示すようにリア端子9の接触部9bの先端部9b3をフロント端子8の接触部8bの下端部8b4よりも下側に設けても良い。この場合、フロント端子8の接触部8bとリア端子9の接触部9bが互いに離れた位置に配置されるため、それらがより接触しにくいようにすることができる。
【0049】
さらに、リア端子9のリア接点部9b1の、プラグコネクタ2の挿入方向に沿う仮想線L2に対する角度θ1をフロント端子8のフロント接点部8b1の仮想線L3に対する角度θ2よりも小さく設定することができる(
図8)。こうすることでリア端子9の接圧を大きくして確実な接触力を実現しつつプラグコネクタ2を挿入する際の挿入力を低くすることができ嵌合時の作業性を改善することができる。
【0050】
前記本実施形態では、リア端子9が製造上の問題等で変形しても、先端部9b3がフロント端子8に接触して嵌合室4dに飛び出ることがない例を示した。これに対し、そのような問題に対処する必要が無ければ、リア端子9がフロント端子8に接触しないようにしても良い(一例として
図13分図(b)参照)。
【符号の説明】
【0051】
1 コネクタ(第1実施形態)
2 プラグコネクタ
2a 端子面
3 コネクタ端子
4 ハウジング
4a 端子収容溝
4b 固定孔
4c 挿入口
4d 嵌合室
4e 内壁
4e1 スリット
5 プラグ端子
5a 端子面
6 基板接続部
7 基端部
8 フロント端子
8A 接触縁
8a 弾性腕
8b 接触部
8b1 フロント接点部
8b2 嵌合接点部
8b3 後縁
8b4 下端部
8c 変位支点
9 リア端子
9A 接触縁
9a 弾性腕
9a1 屈曲部
9b 接触部
9b1 リア接点部
9b2 嵌合接点部
9b3 先端部
9c 変位支点
10 固定片部
10a 係止部
11 隙間
X 長手方向、幅方向
Y 短手方向、前後方向
Z 挿抜方向、上下方向
P 基板
L1 接触線
L2 仮想線
L3 仮想線
【国際調査報告】