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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年9月3日
【発行日】2017年3月30日
(54)【発明の名称】消火体及び消火体投下装置
(51)【国際特許分類】
   A62C 5/033 20060101AFI20170310BHJP
   A62C 19/00 20060101ALI20170310BHJP
   A62C 3/02 20060101ALI20170310BHJP
   A62D 1/00 20060101ALI20170310BHJP
   B64D 1/16 20060101ALI20170310BHJP
【FI】
   A62C5/033
   A62C19/00
   A62C3/02
   A62D1/00
   B64D1/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】37
【出願番号】特願2016-505274(P2016-505274)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年2月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-39711(P2014-39711)
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】302036529
【氏名又は名称】株式会社イルカカレッジ
(71)【出願人】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】朝山 規子
(72)【発明者】
【氏名】松原 雄平
【テーマコード(参考)】
2E191
【Fターム(参考)】
2E191AA07
2E191AB12
2E191AB22
2E191AB45
(57)【要約】
ゲル状の消火剤を用いた消火作業において、前記消火剤の搬送や投下を円滑に行なうことのできる投下消火体を提供する。
火災現場に投下されてその消火をなす投下消火体1であって、透水性を有する材料によって形成された袋体2にゲル化剤3を収納しておき、この袋体内に水を浸透させるとともに前記ゲル化剤と混合させてゲル状の消火剤とすることにより、前記袋体の内部にゲル状の消火剤を充填してなることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災現場に投下されてその消火をなす投下消火体であって、透水性を有する材料によって形成された袋体にゲル化剤を収納しておき、この袋体内に水を浸透させるとともに前記ゲル化剤に含水させてゲル状の消火剤とすることにより、前記袋体の内部にゲル状の消火剤を充填してなることを特徴とする投下消火体。
【請求項2】
前記袋体が、耐衝撃性の低い材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の投下消火体。
【請求項3】
前記袋体が、耐衝撃性の低い結合部を有することを特徴とする請求項1に記載の投下消火体。
【請求項4】
前記袋体が、熱によって溶けやすい材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の投下消火体。
【請求項5】
前記袋体の材料は、ポリ乳酸が含有されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の投下消化体。
【請求項6】
前記ポリ乳酸の含有量は、80質量%以上であることを特徴とする、請求項5に記載の投下消化体。
【請求項7】
前記ポリ乳酸の坪量は、10〜30g/mであることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の投下消化体。
【請求項8】
前記袋体内には、界面活性剤がさらに収納されていることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の投下消化体。
【請求項9】
水が浸透させられてゲル状の消火剤を内包した時の前記袋体の外形形状は、三角錐状若しくは立方体状であることを特徴とする、請求項1〜8の何れかに記載の投下消化体。
【請求項10】
前記ゲル化剤は、ゼラチン、カラギナン、寒天、及び、多糖類から選ばれる食用ゲル化剤であることを特徴とする、請求項1〜9の何れかに記載の投下消化体。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10の何れかに記載の投下消火体の製造に用いられるゲル化剤収納体であって、ゲル化剤と、該ゲル化剤を収納する透水性を有する材料からなる袋体とを備えることを特徴とする、ゲル化剤収容体。
【請求項12】
透水性を有する材料によって形成された袋体にゲル化剤を収納しておき、この袋体内に水を浸透させるとともに前記ゲル化剤と混合させることにより、前記袋体の内部にゲル状の消火剤を充填することを特徴とする投下消火体の製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし請求項10の何れかに記載の投下消火体が装填され、火災現場の上方に位置させられるとともに、この火災現場に、前記投下消火体を投下するようになされていることを特徴とする投下消火体投下装置。
【請求項14】
請求項13に記載の投下消火体投下装置が搭載されていることを特徴とする航空機。
【請求項15】
請求項11に記載のゲル化剤収納体が装填され、火災現場の上方に位置させられるとともに、この火災現場に、前記投下消火体を投下するようになされていることを特徴とする投下消火体投下装置。
【請求項16】
請求項15に記載の投下消火体投下装置が搭載されていることを特徴とする航空機。
【請求項17】
請求項14に記載の航空機を用い、この航空機の火災現場への移動中に、前記航空機内において、前記ゲル化剤と水とを混合することにより、前記投下消火体を形成するとともに、この投下消火体を前記投下消火体投下装置に装填しておき、火災現場の上空に至った際に、前記投下消火体投下装置により、前記投下消火体を火災現場へ投下することを特徴とする消火方法。
【請求項18】
請求項14に記載の航空機を用い、この航空機の火災現場への出動時に、前記投下消火体が予め装填された投下消火体投下装置を搭載し、航空機が火災現場の上空に至った際に、前記投下消火体投下装置により、前記投下消火体を火災現場へ投下することを特徴とする消火方法。
【請求項19】
前記投下消化体の形状及び重量と、火災現場の風向風速情報及び火災位置情報と、航空機の位置情報、高度情報、針路情報及び速力情報と、を取得して前記投下消化体の最適投下位置を算出することにより、前記投下消火体を火災現場へ投下する位置を高精度に予測して投下することを特徴とする、請求項17及び請求項18に記載の消火方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消火剤放出装置に係わり、特に、ゲル化された消火剤の放出に好適に用いられる消火剤放出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、消火する場合、消火剤として水を用い、この水を消防車から火元に放水して火元の温度を下げ、あるいは、火元回りの酸素を減少させること(いわゆる窒息消火)が行なわれている。
【0003】
ところで、災害時や山火事等のように、消防車が火元に近づけない状況下では、地上からの効果的な消火活動が行えない。
【0004】
その対策として、ヘリコプターや水上艦船の航空機を用いて、火元の上空から水を散布する方法がとられている。
【0005】
そして、前述した航空機を用いて水を散布するにあたっては、火元の熱や上昇気流に対する航空機の安全を確保するために、ある程度の高度を保つ必要がある。
【0006】
しかしながら、航空機から散布される水は、火元との距離が離れるほど外力の影響により広範囲に飛散しやすくなり、水を火元へ集中させにくくなるばかりでなく、火元に到達する前に霧散して効果的な消火が行なえない。
【0007】
このような不具合に対処すべく、前記消火剤をゲル状にして投下することにより、消火剤の飛散範囲を減少させるとともに使用した消火剤の全量を消火に充てることができる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−167357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した従来の技術においても、なお、つぎのような改善すべき問題点が残されている。
【0010】
すなわち、ゲル状の消火剤は、消火現場に持ち込む際に容器に収容して搬送し、消火にあたって、消火剤を容器から火元へ向けて投下する作業が必要であるが、迅速な消火作業を行なう観点から、前述した消火剤の迅速なゲル化及び投下操作並びに有効な投下散布界を得ることが必要である。
【0011】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、ゲル状の消火剤を用いた消火作業において、前記消火剤の生成や投下を管制し効果的に行なうことのできる投下消火体及び投下・管制装置を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の投下消火体は、火災現場に投下されてその消火をなす投下消火体であって、透水性を有する材料によって形成された袋体にゲル化剤を収納しておき、この袋体を消火剤タンクに投入し前記ゲル化剤に含水させてゲル状の消火剤とすることにより、前記袋体の内部が消火剤を吸水充満してなることを特徴としている。
【0013】
このような構成とすることにより、袋体内に水を浸透させるだけで、ゲル状の消火剤が生成されるとともに、その表面が前記袋体によって覆われて外形形状が均一に保持された投下消火体が得られる。
【0014】
この投下消火体はたとえば、消火活動の直前に生成し、はしご車によって火災現場の上方に搬送する、あるいは、航空機に搭載される投下消火体投下装置に装填されて火災現場へ搬送されるまでに前記投下消火体が形成されて、火災現場の上方から火元へ向けて投下される。
【0015】
ここで、前記投下消火体は、ゲル状の消火剤が袋体の内部に充填された形態となっているので、消火剤の飛散が防止されて、その投下消火体(袋体)の表面積と重さ、及び投下位置の高さとから、投下消火体の落下地点を容易にかつ高精度に予測することが可能になる。また、その予測を管制システムに計算させ投下時期を得て高確率で火元へ投下される。
【0016】
そして、前記投下消火体は、火元に近づいた時点で、その熱により前記袋体が溶融し、あるいは、落下時の衝撃によって前記袋体が破裂することにより、その内部のゲル状の消火剤が飛散し消火する。
したがって、ゲル状の消火剤を火元に確実に作用させて効果的な消火を行なうことができるとともに、より高い位置からの消火を可能にして、消火活動の安全性を高めることができる。
【0017】
一方、前記投下消火体は、乾燥状態で保存しておくことができるうえ、その袋体によって形状が保持されていることから、その取り扱いが容易である。たとえば、注水された前記投下消火体投下装置に装填する作業が簡便なものとなり、ゲル状の消火剤の生成搬送と火元への投下操作といった作業を一連の操作によって行なうことができ、これらの作業を簡便なものとして、その結果、消火活動の迅速化を図ることができる。
【0018】
そして、前記袋体を、耐衝撃性の低い材料や、熱によって溶けやすい材料によって形成することによって、火元への投下後における袋体の除去を容易にして、火元でのゲル状の消火剤の飛散を迅速に行なわせることができ、その消火性能を十分に引き出すことができる。
【0019】
また、本発明の好ましい形態では、前記袋体の材料は、ポリ乳酸が含有されていることを特徴とする。
このように袋体の主な材料にポリ乳酸を使用することで、生分解性が高い袋体を形成することができる。
【0020】
また、本発明の好ましい形態では、前記ポリ乳酸の含有量は、80質量%以上であることを特徴とする。
このような範囲でポリ乳酸を含むことによって、袋体に攣れが発生してしまうことを抑制し、水に浸けた際の強度を十分に保つことができる。
【0021】
また、本発明の好ましい形態では、前記ポリ乳酸の坪量は、10〜30g/mであることを特徴とする。
このような坪量とすることで、袋体の透水性能を高くして、投下消化体に適した引張強度を十分に保つことができる。
【0022】
また、火災の規模と種類及び場所によって、前記袋体内には、界面活性剤がさらに収納されていることを特徴とする。
このように、界面活性剤を袋体内に収納することで、投下消化体の給水量を増加させることができる。
【0023】
また、本発明の好ましい形態では、前記袋体は、水が浸透させられてゲル状の消火剤となった時に、三角錐状または立方体状の外形形状を形成することを特徴とする。
このように、袋体を三角錐状及び立方体状に形成することにより、より容易に機械で製造することができる。
【0024】
また、本発明の好ましい形態では、前記ゲル化剤は、ゼラチン、カラギナン、寒天、及び、多糖類から選ばれる食用ゲル化剤であることを特徴とする。
このように、食用ゲル化剤を採用することで、消火活動後に残渣が環境に与える悪影響がなく、環境に優しい消火剤とすることができる。
【0025】
一方、前記投下消火体投下装置を航空機に搭載し、この航空機の火災現場への移動中に、前記航空機搭載投下装置内において、前記ゲル化剤と水とを混合することにより、前記投下消火体を形成する。この充填された投下消火体を火災現場の上空に至った際に、前記投下消火体投下装置により火災現場へ投下することもできる。
【0026】
これによれば、前記投下消火体の生成と、この投下消火体を投下消火体投下装置へ装填する作業を、火災現場へ移動中の航空機搭載投下装置内で行なうことにより、出動の要請から消火活動開始までの時間を短縮することができる。
【0027】
また、前記投下消化体は、袋体内に水を浸透させるだけで、ゲル状の消火剤が生成されるため、航空機内で液体とゲル化剤を混合させるための撹拌動作を行う必要がなく、飛行中の安全性を高めることができる。
【0028】
そして、前記投下消火体を前記投下消火体投下装置に装填する方法として、ゲル化剤が収納された袋体を、消火水が充填された前記消火体投下装置に前記乾燥状態の投下消火体を装填するか、又は予め、前記投下消火体投下装置に乾燥状態の投下消火体を装填しておき、この投下消火体投下装置内に水を充填して、投下消火体投下装置内で前記投下消火体を生成することが考えられる。あるいは、前記投下消火体を前記投下消火体投下装置の外部で生成し、その生成された投下消火体を、前記投下消火体投下装置の内部へ手作業により装填する。
【0029】
また、継続して消火活動を行う場合には、前記投下消化体を一度投下した後、水と投下消化体を投下消化体投下装置に再装填する。
【0030】
ここで、前記ゲル状の消火剤の主体は、水単体、あるいは、水と消火補助剤との混合水を用いることができる。
【0031】
一方、前記投下消火体を装填した投下消火体投下装置を、予め用意しておき、この投下消火体投下装置を、消火活動の出動時に航空機に搭載するようにすることも可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ゲル状の消火剤を用いた消火作業において、火元への投下前の形状を安定なものとしてその取り扱いを容易にし、かつ、前記消火剤の搬送や火元への投下操作を一連の操作に集約して、その操作を円滑なものとすることができ、これによって、消火活動の迅速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態の投下消火体を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態が適用されたヘリコプターの側面図である。
図3】本発明の一実施形態の適用されたヘリコプターの側面図である。
図4】本発明の一実施形態を示すもので、投下消火体投下装置を示す分解斜視図である。
図5】本発明の一実施形態を示すもので、投下消火体投下装置を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態を示すもので、投下消火体投下装置を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態が適用されたヘリコプターの正面図である。
図8】本発明の一実施形態の投下消火体の変形例を示す斜視図である。
図9】本発明の一実施形態の投下消火体の変形例を示す斜視図である。
図10】本発明の一実施形態の投下消火体の変形例を示す斜視図である。
図11】本発明の一実施形態の投下消火体の変形例を示す斜視図である。
図12】本発明の一実施形態の投下消火体の変形例を示す斜視図である。
図13】本発明の消火剤収納ボックスの変形例を示す縦断面図で柄ある。
図14図13に示す消火剤収納ボックスの作用を説明するための縦断面図である。
図15図13に示す消火剤収納ボックスの作用を説明するための縦断面図である。
図16】本発明の一実施形態を示すもので、空中消火用バケツを示す側面図である。
図17】本発明の一実施形態を示すもので、空中消火用バケツの底部投下装置を示す縦断面図である。
図18】界面活性剤を収納した袋体を水に浸透させた場合の投下消化体の重量変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づき説明する。
図1中、符号1は、本実施形態に係わる投下消火体を示し、透水性を有する材料によって形成された袋体2にゲル化剤3を収納しておき、この袋体内に水を浸透させるとともに前記ゲル化剤と混合させてゲル状の消火剤とすることにより、前記袋体2の内部にゲル状の消火剤を充填した構成となっている。
【0035】
前記袋体2は、好ましくは、耐衝撃性の低い材料で、熱によって溶けやすい材料によって形成される。
これは、前記投下消火体1を火元に投下した際に、その衝撃によって前記袋体2が容易に破れるようにし、また、火元の熱によって容易に溶融するようにして、内部のゲル状の消火剤を迅速にインパクトさせるためである。
【0036】
さらに、前記袋体2は、収容する前記ゲル化剤3の飛散を防止するために、前記ゲル化剤3の粒径よりも小さい微細孔を備えた材料が用いられる。
【0037】
そして、このような諸条件を満たす具体的な材料として、紙、あるいは、ケナフ、木材パルプ、再生PET、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等、またはそれらの混合材料かなる不織布等が挙げられる。
【0038】
中でも、ポリエステル類のポリ乳酸は、生分解性を有していることに加え、熱圧着や超音波接着によって容易に接着可能であり、この接着箇所が投下時の衝撃によって容易に破れるため、袋体2の材料として好適である。
【0039】
このポリ乳酸は、通常の室温環境下ではほとんど分解せずに、長時間使用可能であるが、コンポストや土中などの、水分と温度が適度な環境下に置くことで加水分解が促進され、その後、微生物による分解が進行する生分解性を有しており、最終的にはCOと水に完全に分解される。そのため、消火活動後の環境に悪影響を与えることがない。
【0040】
また、このポリ乳酸を抄紙する際に、パルプを混入させることも考えられるが、パルプを20%以上混入させると、攣れが発生してしまうことに加え、水に浸けた際に強度がおちてしまう。そのため、抄紙する際のポリ乳酸の好ましい含有範囲は80〜100質量%であり、さらに好ましい含有範囲は90〜100質量%である。
また、ポリ乳酸の透水性を発揮するための坪量の範囲は10〜30g/mであり、さらに好ましくは15〜20g/mである。坪量が大きくなると厚くなり、透水性が阻害される傾向にあるし、また、原価が高くなってしまう。
【0041】
また、袋体に使用される不織布等を形成する方法には、乾式法と湿式法とがあるが、この乾式法によって形成されたポリ乳酸の袋体2は、湿式法によって形成されたものに比べて強度が保ちやすい。また、湿式法によって形成された袋体2を用いることもできるが、水に浸けてから一日以上形状を保たなければならない場合等には、強度の保ちやすい乾式法によって形成された袋体2が用いられることが望ましい。
【0042】
一方、前記ゲル化剤3は、水をゲル化する作用を有するものであって、水の消火能を損なわないものであれば特段の制限なく用いることができる。
ゲル化剤としては、塊を形成する粘弾性を有するもの、水温にかかわらず、10分以内、好ましくは5分以内にゲル化するものが好ましく用いられる。
ゲル化剤として、例えば、寒天、カラギナン、ゼラチン、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム等の天然のゲル化剤の他、高分子吸収材料が挙げられる。
高分子吸収材料としては、デンプン系、セルロース系、多糖類、ポリビニル系、アクリル酸系等を用いることができる。
ゲル化剤は、粒状、粉状であることが好ましい。
【0043】
中でも、動物が残渣を食べても無害な食用ゲル化剤を用いることで、自然環境に無害な消火剤とすることができる。特に、ゼラチンやカラギナン、天然の多糖類は、給水力が大きく給水速度が速いため、投下消化体のゲル化剤に好ましく用いられる。
【0044】
そして、これらのゲル化剤3に水を混合して生成されるゲル状の消火剤は、混合後の時間経過に伴う前記ゲル化剤3の吸水量の増加によって、その重量が変化する。表1に投下消化体の重量の変化量を示す。この時、投下消化体である検体1〜4の初期重量は1.1gであり、0.2gの袋体2と、0.9gのゲル化剤3とから形成されている。また、検体1及び検体2は湿式法により形成されたポリ乳酸を、検体3及び検体4は乾式法により形成されたポリ乳酸を袋体2として使用している。
【0045】
【表1】
【0046】
前述したように生成されるゲル状の消火剤は、前記袋体2とともに投下消火体1を構成するが、この投下消火体1を投下した際の衝撃力が大きいと、たとえば、火元に建築物がある場合、この建築物が、前記投下消火体1の落下の衝撃力によって破壊されることが想定される。
【0047】
このような現象を抑制するためには、前記投下消火体1の重量を100g〜200gにすることが好ましいことから、前記ゲル化剤3の最大吸水量からこのゲル化剤3の使用量を設定し、この設定量のゲル化剤3を前記袋体2に充填しておく。
表1によれば、ゲル化剤3の量を0.9gに設定することで、ゲル状の消火剤に吸水充満させられた100g程度の投下消化体1が得られている。そのため、100g程度の消火剤を得たい場合には、ゲル化剤3を投下消火体1の重量の質量パーセント濃度1%程度で水に溶解させることで、好適な投下消化体1が得られることが分かった。また、表1の結果から、湿式法で形成したポリ乳酸と乾式法で形成したポリ乳酸とでは、吸水率の差はみられなかった。
【0048】
また、袋体2内に給水させる量を増やすために、さらに界面活性剤を袋体2の中に混入させても良い。
この界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤を用いることができる。特に、やし油や多糖類から生成される界面活性剤は投下地点の環境負荷が少ないため好ましく用いられる。
【0049】
図18は、界面活性剤を収納した場合と、界面活性剤を収納しなかった場合の投下消化体1を、それぞれ水に浸透させた時の、投下消化体1の重量の時間変化を表すグラフである。表2は、図18に示された実施例1〜7の袋体2内に収納した多糖類系ゲル化剤(WA−702)と、界面活性剤の量をそれぞれ示している。また、この時使用した界面活性剤はジョリーブ(登録商標)であり、図18に示した値はそれぞれの検証個数の平均値を示している。
【0050】
【表2】
【0051】
図18を参照してWA−702を0.7g収納させた実施例1〜4を比較すると、界面活性剤を0g、0.1g収納させた実施例1及び実施例2に比べて、界面活性剤を0.2g、0.3g収納させた実施例3及び実施例4は、袋体2内の給水量が10g程増加していることが分かる。
同様に、WA−702を0.8gの収納させた実施例5〜7を比較しても、界面活性剤を収納していない実施例5に比べて、界面活性剤を0.1g、0.2g収納させた実施例6及び実施例7のほうが、多くの水を給水していることが分かる。
【0052】
前述したように形成される本実施形態に係わる投下消火体1は、その多数を収納する投下消火体投下装置を装備した航空機を火災現場の上方に位置させて、この投下装置によって前記火災現場に投下される。あるいは投下消火体投下装置はしご車によって火災現場の上方に位置させて、この投下装置によって前記火災現場に投下される。
【0053】
前記投下消火体1は、前述したように、前記ゲル化剤3が収納された袋体2を水に浸して生成されるが、これを予め生成しておき、この生成された投下消火体1を前記投下消火体投下装置に装填した後に、この投下消火体投下装置とともに火災現場の上方に航空機で搬送するか、あるいは、前記投下消火体投入装置に、前記ゲル化剤3が収納された袋体2の多数を装填しておき、この投下消火体投入装置を火災現場の上方への搬送時に、この投下消火体投入装置内に水を充填して前記袋体2を水に浸すことにより、前記投下消火体1を生成するか、または消火水をあらかじめ充填した前記投下消火体投入装置に前記ゲル化剤が収納された袋体2を投入することも可能である。
【0054】
一方、消火活動を、航空機を用いて行なう場合には、前記消火体投入装置を航空機に搭載して行なう。
図2は、前述した航空消火に用いられる航空機としてのヘリコプター4を示し、両側部にスライド式の扉5(図示例では一方のみを示した)が設けられている。
【0055】
本実施形態に係わる投下消火体投入装置6は、図3に示すように、前記ヘリコプター4の内部で、前記扉5の内側に搭載されている。
【0056】
さらに詳述すれば、前記投下消火体投入装置6は、図4に示すように、中空の直方体状に形成され、水が含浸させられていない袋体2が装填される消火剤収納ボックス7と、その側部に一体に設けられ、圧縮空気が貯留される水タンク31と、前記消火剤収納ボックス7の側部で、前記水タンク31の下方に一体に設けられたカウンターウェイト6とを備えている。
【0057】
前記水タンク31は、貯留された圧縮空気により前記消火剤Zに圧力を付加して、この消火剤Zを前記消火剤収納ボックス7から吐出させる吐出手段を構成している。
【0058】
前記消火剤収納ボックス7は、上下が開放されており、その下部には、前記下方の開口部を開閉する開閉部材としてのボトムプレート8が回動可能に装着され、さらに、上部には、上方の開口部を開閉するトッププレート9が回動可能に装着されている。
【0059】
前記ボトムプレート8の回動端部の側縁と、前記消火剤収納ボックス7の側面との間には、前記ボトムプレート8を、前記下方の開口部を閉塞する位置に固定するための第1の係止手段10が設けられている。
【0060】
この第1の係止手段10は、前記ボトムプレート8の側縁に取り付けられ、このボトムプレート8の面と直交する面に沿って回動可能なロックボルト11と、前記消火剤収納ボックス7の側面に突設され、前記ボトムプレート8が閉位置に位置させられた状態において、前記ロックボルト11の回動に伴って、前記消火剤収納ボックス7の側面と直交する方向から嵌合させられる係止プレート12と、前記ロックボルト11に螺合させられて、このロックボルト11が前記係止プレート12と嵌合位置にある状態において前記係止プレート12に圧接させられることにより、前記ロックボルト11を前記係止プレート12に固定するロックナット13とによって構成されている。
【0061】
前記トッププレート9の回動端部の側縁と、前記消火剤収納ボックス7の側面との間には、前記トッププレート9を、前記上方の開口部を閉塞する位置に固定するための第2の係止手段14が設けられている。
【0062】
この第2の係止手段14は、前記消火剤収納ボックス7の側面に取り付けられ、この消火剤収納ボックス7の面と直交する面に沿って回動可能なロックボルト15と、前記トッププレート9に、その側縁から突出するように固着され、このトッププレート9が閉位置に位置させられた状態において、前記ロックボルト15の回動に伴って、前記消火剤収納ボックス7の側面と直交する方向から嵌合させられる係止プレート16と、前記ロックボルト15に螺合させられて、このロックボルト15が前記係止プレート16と嵌合位置にある状態において前記係止プレート16に圧接させられることにより、前記ロックボルト15を前記係止プレート16に固定するロックナット17とによって構成されている。
【0063】
前記消火剤収納ボックス7の側部下方には、カウンターウェイト30が取り付けられ、このカウンターウェイト30の上部には、ゲル状の消火剤を生成するための水が貯留された水タンク31が形成されている。
【0064】
そして、前記水タンク31と前記消火剤収納ボックス7との間には、これらを相互に連通させる給水管19が設けられており、この給水管19の途中には、前記水タンク31と前記消火剤収納ボックス7との連通および遮断をなす開閉弁20が設けられている。
【0065】
一方、前記カウンターウェイト30の両側部には、前記消火剤収納ボックス7の下方の開口部の面方向に沿ってステー25が一体に取り付けられ、これらのステー25のそれぞれに、複数のガイドローラー26が回転自在に所定間隔をおいて取り付けられている。
【0066】
そして、前記ガイドローラー26は、前記ヘリコプター4の内部の床面に平行に設置される一対のガイドレール27のそれぞれに嵌合させられることによって、前記消火剤収納ボックス7、水タンク31、および、カウンターウェイト30を、前記ヘリコプター4の内部に係止するようになっている。
【0067】
一方、前記各ガイドレール27には、前記ガイドローラー26の移動軌跡上に突出してこのガイドローラー26の移動を拘束することにより、前記消火剤収納ボックス7の位置決めをなすストッパー28が着脱可能に装着されるようになっている。
【0068】
このように構成された本実施形態に係わる投下消火体投入装置6は、たとえば、ヘリポートにおいて、ゲル化剤3が収納された多数の袋体2が、前記消火剤収納ボックス7に装填されて待機状態で保管される。
【0069】
すなわち、図4に示すように、ボトムプレート8を第1の係止手段10によって閉位置に固定した状態で、前記消火剤収納ボックス7の上端部から多数の袋体2を装填し、前記トッププレート9を閉位置に固定する。
【0070】
また、前記開閉弁20を閉位置に保持した状態で、前記水タンク31内に所定量の水を充填する。
以上の操作で、本実施形態の投下消火体投入装置6が待機状態となされる。
【0071】
そして、ヘリコプター4による消火が要請された場合にあっては、待機状態にある投下消火体投入装置6を、そのガイドローラー26を、前記ヘリコプター4内に設置されている一対のガイドレール27間に挿入した後に、これらのガイドレール27にストッパー28を装着して前記ガイドローラー26の移動を拘束することにより、図5に示すように、ヘリコプター4に搭載する。
【0072】
これと同時に、前記開閉弁20を開放して、前記水タンク31内の水を前記消火剤収納ボックス7へ送り込んで、前記袋体2を水に浸し、この袋体2に収納されているゲル化剤3が水を吸収することにより、ゲル状の消火剤の生成を開始する。この際、投下消火体1の生成後に、消火剤収納ボックス7内において各投下消火体1に浮力が生じない程度に十分に水が残存する程度の水量を供給しておく。投下装置内に持ち込める消火水を5〜15分以内に給水できるゲル化剤の能力に応じた量の水を用意する必要がある。
【0073】
前記開閉弁20の開操作は、前記ゲル状の消火剤の生成が、前記ヘリコプター4が離陸し消火現場上空に到達する間に完了するように行なわれる。
【0074】
消火現場に到着すると、搭載されている投下消火体投入装置6の第1の係止手段10を開放するとともに、解放固定されている航空機の扉5から前記投下消火体投入装置6を外部へ所定距離に押し出し、前記ストッパー28によって前記押し出し位置に固定する。
【0075】
この時点で、前記第1の係止手段10による係止が解除されていることから、前記ボトムプレート8がその自重によって下方へ回動して、図6に示すように、前記消火剤収納ボックス7の下部が開放される。
【0076】
これによって、前記消火剤収納ボックス7に装填されている投下消火体1が自重で落下し、火元へ向けて投下される。この際、投下消火体1の生成後においても、各投下消火体1間やそれら投下消火体1と消火剤収納ボックス7の内面との間に水が残存しているので、消火剤収納ボックス7の内面に投下消火体1が付着しにくい。したがって、消火剤収納ボックス7内の水全体をゲル化させてから投下する方法に比べて、極めて容易に投下することができる。
また、消火剤収納ボックス7内の水全体をゲル化させてから投下する方法では、投下後に消火剤収納ボックス7内にゲルが残る可能性がある。本発明のように投下消火体1を投下する構成とすることにより、消火剤収納ボックス7内の消火剤を完全に投下することができる。
【0077】
投下された投下消火体1は、その形状を前記袋体2によって覆われた状態で落下することから、その形状を維持し、かつ、融解ないしは蒸発が抑制された状態で火元へ投入され、火元へ近づいた時点であるいは到達した後に袋が崩壊し液化し、消火剤として、消火に供される。
【0078】
したがって、前記投下消火体1は、ある塊のまま火元へ向けて投入されることから、火災風等の風にあおられることが少なく、安定した軌跡で投下される。
この結果、火元への効果的な投入がなされるとともに、火元に近い位置での除熱若しくは酸素消滅の作用を行なうことができ、効果的な消火が行なわれる。
【0079】
この投下消化体1の除熱効果を確かめるために、セイコーインスツルメンツ株式会社製の示差走査熱量計DSC6300を用いて、ゲル状の消火剤の吸熱反応について熱分析を行った。常温から1000℃まで加熱してゲル状の消火剤の熱量を測定したところ、100℃を越えると水の蒸発熱による吸熱反応が起き、1932J/g程の熱量が吸収されることを確認した。
【0080】
前述した例においては、前記ヘリコプター4の一側面側における投下消火体1の投下作業について説明したが、図7に示すように、前記ヘリコプター4の両側面において実施することが可能である。
【0081】
このように、前記ヘリコプター4の両側面から同期して投下作業を行なうことにより、前記投下消火体1の投下エリアを拡大することができるとともに、前記ヘリコプター4の左右の重量バランスをとることができることにより、姿勢の安定性を高めることができる。
【0082】
そして、前述したように、ゲル状の消火剤の生成、搬送、火元への投下の諸作業を一つの投下消火体投入装置6によって行なうことができるので、これらの作業を円滑なものとすることができる。
【0083】
このようなゲル状の消火剤を袋体2によって形状を維持させられて形成された投下消火体1による消化効率の高さから、航空機による高高度の消火が極めて有効なものとすることができるとともに、航空機による消火作業における航空機の安全性を確保して、山火事や災害時の火災のように、陸上から近づけない火災現場への迅速な対応が可能となる。
【0084】
なお、前記実施形態においては、消火現場への移動中に、この投下消火体1を生成する例について示したが、前記投下消火体投入装置6を航空機に搭載する前に、前記投下消火体1を生成しておくこともできる。
【0085】
また、前記実施形態においては、前記袋体2の形状を箱形とした例について示したが、その形状は任意であり、たとえば、図8に示すような円柱状や円盤状、図9に示すような三角錐状、図10に示すような球状、図11に示すような立方体状、あるいは、図12に示すようなカプセル状等の種々の形状とすることができる。
【0086】
特に、三角錐状や立方体状の袋体2は、一定幅のロール紙から機械で均一に連続して製造することができることに加え、投下消化体投入装置6に大量に装填可能なため、より好ましく用いられる。すなわち、三角錐状や立方体状の袋体2は、同一形状の正三角形または正方形を組み合わせることで形成することができるため製造が容易である。
また、このような三角錐状の袋体2を形成する場合には、1辺が8cmの正三角錐を形成することで、本発明の投下消化体1の好ましい重量である100g程の投下消化体1を得ることができる。
【0087】
さらに、前記消火剤収納ボックス7に多数の袋体2を装填するとともに、この消火剤収納ボックス7内に水を注入することにより、前記投下消火体1を生成する例について示したが、この場合、多数の前記投下消火体1が積層されることによって、下方の投下消火体1が、上方の投下消火体1の重みで潰れてしまう場合があることも想定される。即ち、投下消火体1の生成後に、消火剤収納ボックス7内において各投下消火体1に浮力が生じる程度に十分に水が残っている場合には問題ないが、この残水がほとんどない場合は下部の投下消火体ほど潰れる場合も想定される。なお、残水とは、各投下消火体1間やそれら投下消火体1と消火剤収納ボックス7の内面との間に残存する水のことを示す。
【0088】
これを防止するために、図13に示すように、前記消火剤収納ボックス7内に、その内部を上下に複数に分割する複数の隔壁40を設け、これらの各隔壁40を多数の貫通孔を有するパンチプレート等によって形成するとともに、それぞれの一端部を前記消火剤収納ボックス7の内壁にヒンジ41を介して回動自在に連結し、さらに、それぞれの他端部と前記消火剤収納ボックス7の内壁との間に、前記各隔壁40および前記ボトムプレート8とに係脱させられて、前記ボトムプレート8および前記各隔壁40を、前記消火剤収納ボックス7内を上下に区画する位置に係止する第3の係止手段42を設けた構成とし、前記投下消火体1を前記区画された領域に分散して装填するようにすることも可能である。
【0089】
そして、前記第3の係止手段42は、その回転によって、係止状態にある前記ボトムプレート8や各隔壁40との係合状態を、下方から順次解除するようになっている。
【0090】
したがって、前記第3の係止手段42の回転に伴って、前記ボトムプレート8、下方の隔壁40、そして、上方隔壁40が、それぞれの自重によって順次下方へ回動させられ、それぞれに載置されている前記投下消火体1が順次投下される(図14および図15参照)。
【0091】
一方、前述した消火剤収納ボックス7に前記袋体2を収納するには、前記トッププレート9を開放した状態において、前記各隔壁40を上方へ回動させておき、まず、前記ボトムプレート8を前記第3の係止手段42に係合させて閉位置に係止するとともに、このボトムプレート8上に前記袋体2の複数を載置し、ついで、下方の隔壁40を下方へ回動させて前記第3の係止手段42に係合させることにより、前記消火剤収納ボックス7内を区画する位置に係止して、その上に前記袋体2の複数を載置し、ついで、上方の隔壁40を、下方の隔壁40と同様に前記第3の係止手段42に係合させるとともに、その上に前記袋体2を載置する。
【0092】
そして、前記トッププレート9を閉位置に固定することによって、前記消火剤収納ボックス7を待機状態とすることができる。
【0093】
ここで、前記消火剤収納ボックス7内に注水すると、この水が、前記隔壁40の貫通孔から下方へ流入することにより、前記消火剤収納ボックス7内を前記水によって充満させることができる。
【0094】
このように水が充満させられると、前記各袋体2内に水が浸入し、ゲル状の消火剤が生成されて投下消火剤1が生成され、かつ、これらの投下消火剤1は、複数の区画領域毎に前記ボトムプレート8と各隔壁40によって分散支持される。
【0095】
これによって、下方に位置する投下消火体1にかかる荷重を減少させて、その潰れ等を防止することができる。
なお、パンチプレート等からなる横置きの隔壁40を2段設けた例を示したが、3段ないし5段設ける構成としてもよい。その場合には、隔壁40を例えば水平又は水平に近い横方向へスライドさせて出し入れする構造とすることもできる。
【0096】
また、図16に示すように、航空機から吊り下げて消火活動を行う空中消火用バケツ51を投下消火体投入装置6として用いても良い。本発明の投下消火剤1は、この空中消火用バケツ51内に収容される水に浸透させるだけで使用することができる。
【0097】
この空中消火用バケツ51の底部には、信号を受け付けて開弁される底部投下装置52を設けても良い。
底部投下装置52には、図17に示すように、防水の電動ロック53が設けられており、人若しくはプログラムからの信号を受け付けて開弁されるように構成されている。
【0098】
本実施形態によれば、空中消火用バケツ51を使用する場合であっても、袋体によって外形が保持されたゲル状の消火剤を投下することができる。そのため、ゲル状の消火剤が飛散されることを防止して、高確率で火災現場に投下することができる。
また、ゲル状の消火剤は袋体2内のみに形成されるため、空中消火用バケツ51にゲル状の消火剤が付着しにくく、投下消火剤1を容易、かつ、完全に排出することができる。
【0099】
また、航空消防機として充当される航空機の種類(回転翼・固定翼)によって、その構造を最大限に活用する投下消火体投下装置を新たにデザイン、または既存の消火水投下装置をそのまま用いて投下消火体を投下することができる。
たとえば、ファイヤーアタッカーとして運用されている航空機底部に装着されるベリータンクは投下消火体の大きさがその開口部によって投下が制限されなければ、そのまま流用することが可能である。
【0100】
また、本実施形態によれば、ゲル状の消火剤が袋体の内部に充填された形態となっているので、その投下消火体1(袋体2)の表面積と重さ、及び投下位置の高さとから、投下消火体1の落下地点を容易かつ高精度に予測することが可能である。
詳細には、風向風速情報や火災位置情報、航空機等の位置・高度情報、航空機の針路・速力、投下消化体1の重量や形状等の情報から、投下消化体1の落下特性を加味した最適投下地点を算出することにより、前記投下消火体を火災現場へ投下する位置を高精度に予測して投下することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 投下消火体
2 袋体
3 ゲル化剤
4 ヘリコプター
5 扉
6 投下消火剤投入装置
7 消火剤収納ボックス
8 ボトムプレート
9 トッププレート
10 第1の係止手段
11 ロックボルト
12 係止プレート
13 ロックナット
14 第2の係止手段
15 ロックボルト
16 係止プレート
17 ロックナット
19 給水管
20 開閉弁
25 ステー
26 ガイドローラー
27 ガイドレール
28 ストッパー
30 カウンターウェイト
31 水タンク
40 隔壁
41 ヒンジ
42 第3の係止手段
51 空中消火用バケツ
52 底部投下装置
53 電動ロック
54 ゴムパッキン

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18

【手続補正書】
【提出日】2016年8月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災現場に投下されてその消火をなす投下消火体であって、透水性を有する材料によって形成された袋体にゲル化剤を収納しておき、この袋体内に水を浸透させるとともに前記ゲル化剤に含水させてゲル状の消火剤とすることにより、前記袋体の内部にゲル状の消火剤を充填してなることを特徴とする投下消火体。
【請求項2】
前記袋体が、耐衝撃性の低い材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の投下消火体。
【請求項3】
前記袋体が、耐衝撃性の低い結合部を有することを特徴とする請求項1に記載の投下消火体。
【請求項4】
前記袋体が、熱によって溶けやすい材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の投下消火体。
【請求項5】
前記袋体の材料は、ポリ乳酸が含有されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の投下消体。
【請求項6】
前記ポリ乳酸の含有量は、80質量%以上であることを特徴とする、請求項5に記載の投下消体。
【請求項7】
前記ポリ乳酸の坪量は、10〜30g/mであることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の投下消体。
【請求項8】
前記袋体内には、界面活性剤がさらに収納されていることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載の投下消体。
【請求項9】
水が浸透させられてゲル状の消火剤を内包した時の前記袋体の外形形状は、三角錐状若しくは立方体状であることを特徴とする、請求項1〜8の何れかに記載の投下消体。
【請求項10】
前記ゲル化剤は、ゼラチン、カラギナン、寒天、及び、多糖類から選ばれる食用ゲル化剤であることを特徴とする、請求項1〜9の何れかに記載の投下消体。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10の何れかに記載の投下消火体の製造に用いられるゲル化剤収納体であって、ゲル化剤と、該ゲル化剤を収納する透水性を有する材料からなる袋体とを備えることを特徴とする、ゲル化剤収容体。
【請求項12】
透水性を有する材料によって形成された袋体にゲル化剤を収納しておき、この袋体内に水を浸透させるとともに前記ゲル化剤と混合させることにより、前記袋体の内部にゲル状の消火剤を充填することを特徴とする投下消火体の製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし請求項10の何れかに記載の投下消火体が装填され、火災現場の上方に位置させられるとともに、この火災現場に、前記投下消火体を投下するようになされていることを特徴とする投下消火体投下装置。
【請求項14】
請求項13に記載の投下消火体投下装置が搭載されていることを特徴とする航空機。
【請求項15】
請求項11に記載のゲル化剤収納体が装填され、火災現場の上方に位置させられるとともに、この火災現場に、前記投下消火体を投下するようになされていることを特徴とする投下消火体投下装置。
【請求項16】
請求項15に記載の投下消火体投下装置が搭載されていることを特徴とする航空機。
【請求項17】
請求項14に記載の航空機を用い、この航空機の火災現場への移動中に、前記航空機内において、前記ゲル化剤と水とを混合することにより、前記投下消火体を形成するとともに、この投下消火体を前記投下消火体投下装置に装填しておき、火災現場の上空に至った際に、前記投下消火体投下装置により、前記投下消火体を火災現場へ投下することを特徴とする消火方法。
【請求項18】
請求項14に記載の航空機を用い、この航空機の火災現場への出動時に、前記投下消火体が予め装填された投下消火体投下装置を搭載し、航空機が火災現場の上空に至った際に、前記投下消火体投下装置により、前記投下消火体を火災現場へ投下することを特徴とする消火方法。
【請求項19】
前記投下消体の形状及び重量と、火災現場の風向風速情報及び火災位置情報と、航空機の位置情報、高度情報、針路情報及び速力情報と、を取得して前記投下消体の最適投下位置を算出することにより、前記投下消火体を火災現場へ投下する位置を高精度に予測して投下することを特徴とする、請求項17又は請求項18に記載の消火方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消火体及び消火体投下装置に係わり、特に、ゲル化された消火体と、この消化体の放出に好適に用いられる消火体投下装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、消火する場合、消火剤として水を用い、この水を消防車から火元に放水して火元の温度を下げ、あるいは、火元回りの酸素を減少させること(いわゆる窒息消火)が行なわれている。
【0003】
ところで、災害時や山火事等のように、消防車が火元に近づけない状況下では、地上からの効果的な消火活動が行えない。
【0004】
その対策として、ヘリコプターや水上艦船の航空機を用いて、火元の上空から水を散布する方法がとられている。
【0005】
そして、前述した航空機を用いて水を散布するにあたっては、火元の熱や上昇気流に対する航空機の安全を確保するために、ある程度の高度を保つ必要がある。
【0006】
しかしながら、航空機から散布される水は、火元との距離が離れるほど外力の影響により広範囲に飛散しやすくなり、水を火元へ集中させにくくなるばかりでなく、火元に到達する前に霧散して効果的な消火が行なえない。
【0007】
このような不具合に対処すべく、前記消火剤をゲル状にして投下することにより、消火剤の飛散範囲を減少させるとともに使用した消火剤の全量を消火に充てることができる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−167357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した従来の技術においても、なお、つぎのような改善すべき問題点が残されている。
【0010】
すなわち、ゲル状の消火剤は、消火現場に持ち込む際に容器に収容して搬送し、消火にあたって、消火剤を容器から火元へ向けて投下する作業が必要であるが、迅速な消火作業を行なう観点から、前述した消火剤の迅速なゲル化及び投下操作並びに有効な投下散布界を得ることが必要である。
【0011】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、ゲル状の消火剤を用いた消火作業において、前記消火剤の生成や投下を管制し効果的に行なうことのできる投下消火体及び投下・管制装置を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の投下消火体は、火災現場に投下されてその消火をなす投下消火体であって、透水性を有する材料によって形成された袋体にゲル化剤を収納しておき、この袋体を消火剤タンクに投入し前記ゲル化剤に含水させてゲル状の消火剤とすることにより、前記袋体の内部が消火剤を吸水充満してなることを特徴としている。
【0013】
このような構成とすることにより、袋体内に水を浸透させるだけで、ゲル状の消火剤が生成されるとともに、その表面が前記袋体によって覆われて外形形状が均一に保持された投下消火体が得られる。
【0014】
この投下消火体はたとえば、消火活動の直前に生成し、はしご車によって火災現場の上方に搬送する、あるいは、航空機に搭載される投下消火体投下装置に装填されて火災現場へ搬送されるまでに前記投下消火体が形成されて、火災現場の上方から火元へ向けて投下される。
【0015】
ここで、前記投下消火体は、ゲル状の消火剤が袋体の内部に充填された形態となっているので、消火剤の飛散が防止されて、その投下消火体(袋体)の表面積と重さ、及び投下位置の高さとから、投下消火体の落下地点を容易にかつ高精度に予測することが可能になる。また、その予測を管制システムに計算させ投下時期を得て高確率で火元へ投下される。
【0016】
そして、前記投下消火体は、火元に近づいた時点で、その熱により前記袋体が溶融し、あるいは、落下時の衝撃によって前記袋体が破裂することにより、その内部のゲル状の消火剤が飛散し消火する。
したがって、ゲル状の消火剤を火元に確実に作用させて効果的な消火を行なうことができるとともに、より高い位置からの消火を可能にして、消火活動の安全性を高めることができる。
【0017】
一方、前記投下消火体は、乾燥状態で保存しておくことができるうえ、その袋体によって形状が保持されていることから、その取り扱いが容易である。たとえば、注水された前記投下消火体投下装置に装填する作業が簡便なものとなり、ゲル状の消火剤の生成搬送と火元への投下操作といった作業を一連の操作によって行なうことができ、これらの作業を簡便なものとして、その結果、消火活動の迅速化を図ることができる。
【0018】
そして、前記袋体を、耐衝撃性の低い材料や、熱によって溶けやすい材料によって形成することによって、火元への投下後における袋体の除去を容易にして、火元でのゲル状の消火剤の飛散を迅速に行なわせることができ、その消火性能を十分に引き出すことができる。
【0019】
また、本発明の好ましい形態では、前記袋体の材料は、ポリ乳酸が含有されていることを特徴とする。
このように袋体の主な材料にポリ乳酸を使用することで、生分解性が高い袋体を形成することができる。
【0020】
また、本発明の好ましい形態では、前記ポリ乳酸の含有量は、80質量%以上であることを特徴とする。
このような範囲でポリ乳酸を含むことによって、袋体に攣れが発生してしまうことを抑制し、水に浸けた際の強度を十分に保つことができる。
【0021】
また、本発明の好ましい形態では、前記ポリ乳酸の坪量は、10〜30g/mであることを特徴とする。
このような坪量とすることで、袋体の透水性能を高くして、投下消体に適した引張強度を十分に保つことができる。
【0022】
また、火災の規模と種類及び場所によって、前記袋体内には、界面活性剤がさらに収納されていることを特徴とする。
このように、界面活性剤を袋体内に収納することで、投下消体の給水量を増加させることができる。
【0023】
また、本発明の好ましい形態では、前記袋体は、水が浸透させられてゲル状の消火剤となった時に、三角錐状または立方体状の外形形状を形成することを特徴とする。
このように、袋体を三角錐状及び立方体状に形成することにより、より容易に機械で製造することができる。
【0024】
また、本発明の好ましい形態では、前記ゲル化剤は、ゼラチン、カラギナン、寒天、及び、多糖類から選ばれる食用ゲル化剤であることを特徴とする。
このように、食用ゲル化剤を採用することで、消火活動後に残渣が環境に与える悪影響がなく、環境に優しい消火剤とすることができる。
【0025】
一方、前記投下消火体投下装置を航空機に搭載し、この航空機の火災現場への移動中に、前記航空機搭載投下装置内において、前記ゲル化剤と水とを混合することにより、前記投下消火体を形成する。この充填された投下消火体を火災現場の上空に至った際に、前記投下消火体投下装置により火災現場へ投下することもできる。
【0026】
これによれば、前記投下消火体の生成と、この投下消火体を投下消火体投下装置へ装填する作業を、火災現場へ移動中の航空機搭載投下装置内で行なうことにより、出動の要請から消火活動開始までの時間を短縮することができる。
【0027】
また、前記投下消体は、袋体内に水を浸透させるだけで、ゲル状の消火剤が生成されるため、航空機内で液体とゲル化剤を混合させるための撹拌動作を行う必要がなく、飛行中の安全性を高めることができる。
【0028】
そして、前記投下消火体を前記投下消火体投下装置に装填する方法として、ゲル化剤が収納された袋体を、消火水が充填された前記消火体投下装置に前記乾燥状態の投下消火体を装填するか、又は予め、前記投下消火体投下装置に乾燥状態の投下消火体を装填しておき、この投下消火体投下装置内に水を充填して、投下消火体投下装置内で前記投下消火体を生成することが考えられる。あるいは、前記投下消火体を前記投下消火体投下装置の外部で生成し、その生成された投下消火体を、前記投下消火体投下装置の内部へ手作業により装填する。
【0029】
また、継続して消火活動を行う場合には、前記投下消体を一度投下した後、水と投下消体を投下消体投下装置に再装填する。
【0030】
ここで、前記ゲル状の消火剤の主体は、水単体、あるいは、水と消火補助剤との混合水を用いることができる。
【0031】
一方、前記投下消火体を装填した投下消火体投下装置を、予め用意しておき、この投下消火体投下装置を、消火活動の出動時に航空機に搭載するようにすることも可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ゲル状の消火剤を用いた消火作業において、火元への投下前の形状を安定なものとしてその取り扱いを容易にし、かつ、前記消火剤の搬送や火元への投下操作を一連の操作に集約して、その操作を円滑なものとすることができ、これによって、消火活動の迅速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態の投下消火体を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態が適用されたヘリコプターの側面図である。
図3】本発明の一実施形態の適用されたヘリコプターの側面図である。
図4】本発明の一実施形態を示すもので、投下消火体投下装置を示す分解斜視図である。
図5】本発明の一実施形態を示すもので、投下消火体投下装置を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態を示すもので、投下消火体投下装置を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施形態が適用されたヘリコプターの正面図である。
図8】本発明の一実施形態の投下消火体の変形例を示す斜視図である。
図9】本発明の一実施形態の投下消火体の変形例を示す斜視図である。
図10】本発明の一実施形態の投下消火体の変形例を示す斜視図である。
図11】本発明の一実施形態の投下消火体の変形例を示す斜視図である。
図12】本発明の一実施形態の投下消火体の変形例を示す斜視図である。
図13】本発明の消火剤収納ボックスの変形例を示す縦断面図で柄ある。
図14図13に示す消火剤収納ボックスの作用を説明するための縦断面図である。
図15図13に示す消火剤収納ボックスの作用を説明するための縦断面図である。
図16】本発明の一実施形態を示すもので、空中消火用バケツを示す側面図である。
図17】本発明の一実施形態を示すもので、空中消火用バケツの底部投下装置を示す縦断面図である。
図18】界面活性剤を収納した袋体を水に浸透させた場合の投下消体の重量変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づき説明する。
図1中、符号1は、本実施形態に係わる投下消火体を示し、透水性を有する材料によって形成された袋体2にゲル化剤3を収納しておき、この袋体内に水を浸透させるとともに前記ゲル化剤と混合させてゲル状の消火剤とすることにより、前記袋体2の内部にゲル状の消火剤を充填した構成となっている。
【0035】
前記袋体2は、好ましくは、耐衝撃性の低い材料で、熱によって溶けやすい材料によって形成される。
これは、前記投下消火体1を火元に投下した際に、その衝撃によって前記袋体2が容易に破れるようにし、また、火元の熱によって容易に溶融するようにして、内部のゲル状の消火剤を迅速にインパクトさせるためである。
【0036】
さらに、前記袋体2は、収容する前記ゲル化剤3の飛散を防止するために、前記ゲル化剤3の粒径よりも小さい微細孔を備えた材料が用いられる。
【0037】
そして、このような諸条件を満たす具体的な材料として、紙、あるいは、ケナフ、木材パルプ、再生PET、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等、またはそれらの混合材料かなる不織布等が挙げられる。
【0038】
中でも、ポリエステル類のポリ乳酸は、生分解性を有していることに加え、熱圧着や超音波接着によって容易に接着可能であり、この接着箇所が投下時の衝撃によって容易に破れるため、袋体2の材料として好適である。
【0039】
このポリ乳酸は、通常の室温環境下ではほとんど分解せずに、長時間使用可能であるが、コンポストや土中などの、水分と温度が適度な環境下に置くことで加水分解が促進され、その後、微生物による分解が進行する生分解性を有しており、最終的にはCOと水に完全に分解される。そのため、消火活動後の環境に悪影響を与えることがない。
【0040】
また、このポリ乳酸を抄紙する際に、パルプを混入させることも考えられるが、パルプを20%以上混入させると、攣れが発生してしまうことに加え、水に浸けた際に強度がおちてしまう。そのため、抄紙する際のポリ乳酸の好ましい含有範囲は80〜100質量%であり、さらに好ましい含有範囲は90〜100質量%である。
また、ポリ乳酸の透水性を発揮するための坪量の範囲は10〜30g/mであり、さらに好ましくは15〜20g/mである。坪量が大きくなると厚くなり、透水性が阻害される傾向にあるし、また、原価が高くなってしまう。
【0041】
また、袋体に使用される不織布等を形成する方法には、乾式法と湿式法とがあるが、この乾式法によって形成されたポリ乳酸の袋体2は、湿式法によって形成されたものに比べて強度が保ちやすい。また、湿式法によって形成された袋体2を用いることもできるが、水に浸けてから一日以上形状を保たなければならない場合等には、強度の保ちやすい乾式法によって形成された袋体2が用いられることが望ましい。
【0042】
一方、前記ゲル化剤3は、水をゲル化する作用を有するものであって、水の消火能を損なわないものであれば特段の制限なく用いることができる。
ゲル化剤としては、塊を形成する粘弾性を有するもの、水温にかかわらず、10分以内、好ましくは5分以内にゲル化するものが好ましく用いられる。
ゲル化剤として、例えば、寒天、カラギナン、ゼラチン、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム等の天然のゲル化剤の他、高分子吸収材料が挙げられる。
高分子吸収材料としては、デンプン系、セルロース系、多糖類、ポリビニル系、アクリル酸系等を用いることができる。
ゲル化剤は、粒状、粉状であることが好ましい。
【0043】
中でも、動物が残渣を食べても無害な食用ゲル化剤を用いることで、自然環境に無害な消火剤とすることができる。特に、ゼラチンやカラギナン、天然の多糖類は、給水力が大きく給水速度が速いため、投下消体のゲル化剤に好ましく用いられる。
【0044】
そして、これらのゲル化剤3に水を混合して生成されるゲル状の消火剤は、混合後の時間経過に伴う前記ゲル化剤3の吸水量の増加によって、その重量が変化する。表1に投下消体の重量の変化量を示す。この時、投下消体である検体1〜4の初期重量は1.1gであり、0.2gの袋体2と、0.9gのゲル化剤3とから形成されている。また、検体1及び検体2は湿式法により形成されたポリ乳酸を、検体3及び検体4は乾式法により形成されたポリ乳酸を袋体2として使用している。
【0045】
[表1]
【0046】
前述したように生成されるゲル状の消火剤は、前記袋体2とともに投下消火体1を構成するが、この投下消火体1を投下した際の衝撃力が大きいと、たとえば、火元に建築物がある場合、この建築物が、前記投下消火体1の落下の衝撃力によって破壊されることが想定される。
【0047】
このような現象を抑制するためには、前記投下消火体1の重量を100g〜200gにすることが好ましいことから、前記ゲル化剤3の最大吸水量からこのゲル化剤3の使用量を設定し、この設定量のゲル化剤3を前記袋体2に充填しておく。
表1によれば、ゲル化剤3の量を0.9gに設定することで、ゲル状の消火剤に吸水充満させられた100g程度の投下消体1が得られている。そのため、100g程度の消火剤を得たい場合には、ゲル化剤3を投下消火体1の重量の質量パーセント濃度1%程度で水に溶解させることで、好適な投下消体1が得られることが分かった。また、表1の結果から、湿式法で形成したポリ乳酸と乾式法で形成したポリ乳酸とでは、吸水率の差はみられなかった。
【0048】
また、袋体2内に給水させる量を増やすために、さらに界面活性剤を袋体2の中に混入させても良い。
この界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤を用いることができる。特に、やし油や多糖類から生成される界面活性剤は投下地点の環境負荷が少ないため好ましく用いられる。
【0049】
図18は、界面活性剤を収納した場合と、界面活性剤を収納しなかった場合の投下消体1を、それぞれ水に浸透させた時の、投下消体1の重量の時間変化を表すグラフである。表2は、図18に示された実施例1〜7の袋体2内に収納した多糖類系ゲル化剤(WA−702)と、界面活性剤の量をそれぞれ示している。また、この時使用した界面活性剤はジョリーブ(登録商標)であり、図18に示した値はそれぞれの検証個数の平均値を示している。
【0050】
[表2]
【0051】
図18を参照してWA−702を0.7g収納させた実施例1〜4を比較すると、界面活性剤を0g、0.1g収納させた実施例1及び実施例2に比べて、界面活性剤を0.2g、0.3g収納させた実施例3及び実施例4は、袋体2内の給水量が10g程増加していることが分かる。
同様に、WA−702を0.8gの収納させた実施例5〜7を比較しても、界面活性剤を収納していない実施例5に比べて、界面活性剤を0.1g、0.2g収納させた実施例6及び実施例7のほうが、多くの水を給水していることが分かる。
【0052】
前述したように形成される本実施形態に係わる投下消火体1は、その多数を収納する投下消火体投下装置を装備した航空機を火災現場の上方に位置させて、この投下装置によって前記火災現場に投下される。あるいは投下消火体投下装置はしご車によって火災現場の上方に位置させて、この投下装置によって前記火災現場に投下される。
【0053】
前記投下消火体1は、前述したように、前記ゲル化剤3が収納された袋体2を水に浸して生成されるが、これを予め生成しておき、この生成された投下消火体1を前記投下消火体投下装置に装填した後に、この投下消火体投下装置とともに火災現場の上方に航空機で搬送するか、あるいは、前記投下消火体投装置に、前記ゲル化剤3が収納された袋体2の多数を装填しておき、この投下消火体投装置を火災現場の上方への搬送時に、この投下消火体投装置内に水を充填して前記袋体2を水に浸すことにより、前記投下消火体1を生成するか、または消火水をあらかじめ充填した前記投下消火体投装置に前記ゲル化剤が収納された袋体2を投入することも可能である。
【0054】
一方、消火活動を、航空機を用いて行なう場合には、前記投下消火体投装置を航空機に搭載して行なう。
図2は、前述した航空消火に用いられる航空機としてのヘリコプター4を示し、両側部にスライド式の扉5(図示例では一方のみを示した)が設けられている。
【0055】
本実施形態に係わる投下消火体投装置6は、図3に示すように、前記ヘリコプター4の内部で、前記扉5の内側に搭載されている。
【0056】
さらに詳述すれば、前記投下消火体投装置6は、図4に示すように、中空の直方体状に形成され、水が含浸させられていない袋体2が装填される消火剤収納ボックス7と、その側部に一体に設けられ、圧縮空気が貯留される水タンク31と、前記消火剤収納ボックス7の側部で、前記水タンク31の下方に一体に設けられたカウンターウェイト30とを備えている。
【0057】
前記水タンク31は、貯留された圧縮空気により前記消火剤Zに圧力を付加して、この消火剤Zを前記消火剤収納ボックス7から吐出させる吐出手段を構成している。
【0058】
前記消火剤収納ボックス7は、上下が開放されており、その下部には、前記下方の開口部を開閉する開閉部材としてのボトムプレート8が回動可能に装着され、さらに、上部には、上方の開口部を開閉するトッププレート9が回動可能に装着されている。
【0059】
前記ボトムプレート8の回動端部の側縁と、前記消火剤収納ボックス7の側面との間には、前記ボトムプレート8を、前記下方の開口部を閉塞する位置に固定するための第1の係止手段10が設けられている。
【0060】
この第1の係止手段10は、前記ボトムプレート8の側縁に取り付けられ、このボトムプレート8の面と直交する面に沿って回動可能なロックボルト11と、前記消火剤収納ボックス7の側面に突設され、前記ボトムプレート8が閉位置に位置させられた状態において、前記ロックボルト11の回動に伴って、前記消火剤収納ボックス7の側面と直交する方向から嵌合させられる係止プレート12と、前記ロックボルト11に螺合させられて、このロックボルト11が前記係止プレート12と嵌合位置にある状態において前記係止プレート12に圧接させられることにより、前記ロックボルト11を前記係止プレート12に固定するロックナット13とによって構成されている。
【0061】
前記トッププレート9の回動端部の側縁と、前記消火剤収納ボックス7の側面との間には、前記トッププレート9を、前記上方の開口部を閉塞する位置に固定するための第2の係止手段14が設けられている。
【0062】
この第2の係止手段14は、前記消火剤収納ボックス7の側面に取り付けられ、この消火剤収納ボックス7の面と直交する面に沿って回動可能なロックボルト15と、前記トッププレート9に、その側縁から突出するように固着され、このトッププレート9が閉位置に位置させられた状態において、前記ロックボルト15の回動に伴って、前記消火剤収納ボックス7の側面と直交する方向から嵌合させられる係止プレート16と、前記ロックボルト15に螺合させられて、このロックボルト15が前記係止プレート16と嵌合位置にある状態において前記係止プレート16に圧接させられることにより、前記ロックボルト15を前記係止プレート16に固定するロックナット17とによって構成されている。
【0063】
前記消火剤収納ボックス7の側部下方には、カウンターウェイト30が取り付けられ、このカウンターウェイト30の上部には、ゲル状の消火剤を生成するための水が貯留された水タンク31が形成されている。
【0064】
そして、前記水タンク31と前記消火剤収納ボックス7との間には、これらを相互に連通させる給水管19が設けられており、この給水管19の途中には、前記水タンク31と前記消火剤収納ボックス7との連通および遮断をなす開閉弁20が設けられている。
【0065】
一方、前記カウンターウェイト30の両側部には、前記消火剤収納ボックス7の下方の開口部の面方向に沿ってステー25が一体に取り付けられ、これらのステー25のそれぞれに、複数のガイドローラー26が回転自在に所定間隔をおいて取り付けられている。
【0066】
そして、前記ガイドローラー26は、前記ヘリコプター4の内部の床面に平行に設置される一対のガイドレール27のそれぞれに嵌合させられることによって、前記消火剤収納ボックス7、水タンク31、および、カウンターウェイト30を、前記ヘリコプター4の内部に係止するようになっている。
【0067】
一方、前記各ガイドレール27には、前記ガイドローラー26の移動軌跡上に突出してこのガイドローラー26の移動を拘束することにより、前記消火剤収納ボックス7の位置決めをなすストッパー28が着脱可能に装着されるようになっている。
【0068】
このように構成された本実施形態に係わる投下消火体投装置6は、たとえば、ヘリポートにおいて、ゲル化剤3が収納された多数の袋体2が、前記消火剤収納ボックス7に装填されて待機状態で保管される。
【0069】
すなわち、図4に示すように、ボトムプレート8を第1の係止手段10によって閉位置に固定した状態で、前記消火剤収納ボックス7の上端部から多数の袋体2を装填し、前記トッププレート9を閉位置に固定する。
【0070】
また、前記開閉弁20を閉位置に保持した状態で、前記水タンク31内に所定量の水を充填する。
以上の操作で、本実施形態の投下消火体投装置6が待機状態となされる。
【0071】
そして、ヘリコプター4による消火が要請された場合にあっては、待機状態にある投下消火体投装置6を、そのガイドローラー26を、前記ヘリコプター4内に設置されている一対のガイドレール27間に挿入した後に、これらのガイドレール27にストッパー28を装着して前記ガイドローラー26の移動を拘束することにより、図5に示すように、ヘリコプター4に搭載する。
【0072】
これと同時に、前記開閉弁20を開放して、前記水タンク31内の水を前記消火剤収納ボックス7へ送り込んで、前記袋体2を水に浸し、この袋体2に収納されているゲル化剤3が水を吸収することにより、ゲル状の消火剤の生成を開始する。この際、投下消火体1の生成後に、消火剤収納ボックス7内において各投下消火体1に浮力が生じない程度に十分に水が残存する程度の水量を供給しておく。投下消火体投下装置内に持ち込める消火水を5〜15分以内に給水できるゲル化剤の能力に応じた量の水を用意する必要がある。
【0073】
前記開閉弁20の開操作は、前記ゲル状の消火剤の生成が、前記ヘリコプター4が離陸し消火現場上空に到達する間に完了するように行なわれる。
【0074】
消火現場に到着すると、搭載されている投下消火体投装置6の第1の係止手段10を開放するとともに、解放固定されている航空機の扉5から前記投下消火体投装置6を外部へ所定距離に押し出し、前記ストッパー28によって前記押し出し位置に固定する。
【0075】
この時点で、前記第1の係止手段10による係止が解除されていることから、前記ボトムプレート8がその自重によって下方へ回動して、図6に示すように、前記消火剤収納ボックス7の下部が開放される。
【0076】
これによって、前記消火剤収納ボックス7に装填されている投下消火体1が自重で落下し、火元へ向けて投下される。この際、投下消火体1の生成後においても、各投下消火体1間やそれら投下消火体1と消火剤収納ボックス7の内面との間に水が残存しているので、消火剤収納ボックス7の内面に投下消火体1が付着しにくい。したがって、消火剤収納ボックス7内の水全体をゲル化させてから投下する方法に比べて、極めて容易に投下することができる。
また、消火剤収納ボックス7内の水全体をゲル化させてから投下する方法では、投下後に消火剤収納ボックス7内にゲルが残る可能性がある。本発明のように投下消火体1を投下する構成とすることにより、消火剤収納ボックス7内の消火剤を完全に投下することができる。
【0077】
投下された投下消火体1は、その形状を前記袋体2によって覆われた状態で落下することから、その形状を維持し、かつ、融解ないしは蒸発が抑制された状態で火元へ投入され、火元へ近づいた時点であるいは到達した後に袋が崩壊し液化し、消火剤として、消火に供される。
【0078】
したがって、前記投下消火体1は、ある塊のまま火元へ向けて投入されることから、火災風等の風にあおられることが少なく、安定した軌跡で投下される。
この結果、火元への効果的な投入がなされるとともに、火元に近い位置での除熱若しくは酸素消滅の作用を行なうことができ、効果的な消火が行なわれる。
【0079】
この投下消体1の除熱効果を確かめるために、セイコーインスツルメンツ株式会社製の示差走査熱量計DSC6300を用いて、ゲル状の消火剤の吸熱反応について熱分析を行った。常温から1000℃まで加熱してゲル状の消火剤の熱量を測定したところ、100℃を越えると水の蒸発熱による吸熱反応が起き、1932J/g程の熱量が吸収されることを確認した。
【0080】
前述した例においては、前記ヘリコプター4の一側面側における投下消火体1の投下作業について説明したが、図7に示すように、前記ヘリコプター4の両側面において実施することが可能である。
【0081】
このように、前記ヘリコプター4の両側面から同期して投下作業を行なうことにより、前記投下消火体1の投下エリアを拡大することができるとともに、前記ヘリコプター4の左右の重量バランスをとることができることにより、姿勢の安定性を高めることができる。
【0082】
そして、前述したように、ゲル状の消火剤の生成、搬送、火元への投下の諸作業を一つの投下消火体投装置6によって行なうことができるので、これらの作業を円滑なものとすることができる。
【0083】
このようなゲル状の消火剤を袋体2によって形状を維持させられて形成された投下消火体1による消効率の高さから、航空機による高高度の消火が極めて有効なものとすることができるとともに、航空機による消火作業における航空機の安全性を確保して、山火事や災害時の火災のように、陸上から近づけない火災現場への迅速な対応が可能となる。
【0084】
なお、前記実施形態においては、消火現場への移動中に、この投下消火体1を生成する例について示したが、前記投下消火体投装置6を航空機に搭載する前に、前記投下消火体1を生成しておくこともできる。
【0085】
また、前記実施形態においては、前記袋体2の形状を箱形とした例について示したが、その形状は任意であり、たとえば、図8に示すような円柱状や円盤状、図9に示すような三角錐状、図10に示すような球状、図11に示すような立方体状、あるいは、図12に示すようなカプセル状等の種々の形状とすることができる。
【0086】
特に、三角錐状や立方体状の袋体2は、一定幅のロール紙から機械で均一に連続して製造することができることに加え、投下消体投装置6に大量に装填可能なため、より好ましく用いられる。すなわち、三角錐状や立方体状の袋体2は、同一形状の正三角形または正方形を組み合わせることで形成することができるため製造が容易である。
また、このような三角錐状の袋体2を形成する場合には、1辺が8cmの正三角錐を形成することで、本発明の投下消体1の好ましい重量である100g程の投下消体1を得ることができる。
【0087】
さらに、前記消火剤収納ボックス7に多数の袋体2を装填するとともに、この消火剤収納ボックス7内に水を注入することにより、前記投下消火体1を生成する例について示したが、この場合、多数の前記投下消火体1が積層されることによって、下方の投下消火体1が、上方の投下消火体1の重みで潰れてしまう場合があることも想定される。即ち、投下消火体1の生成後に、消火剤収納ボックス7内において各投下消火体1に浮力が生じる程度に十分に水が残っている場合には問題ないが、この残水がほとんどない場合は下部の投下消火体ほど潰れる場合も想定される。なお、残水とは、各投下消火体1間やそれら投下消火体1と消火剤収納ボックス7の内面との間に残存する水のことを示す。
【0088】
これを防止するために、図13に示すように、前記消火剤収納ボックス7内に、その内部を上下に複数に分割する複数の隔壁40を設け、これらの各隔壁40を多数の貫通孔を有するパンチプレート等によって形成するとともに、それぞれの一端部を前記消火剤収納ボックス7の内壁にヒンジ41を介して回動自在に連結し、さらに、それぞれの他端部と前記消火剤収納ボックス7の内壁との間に、前記各隔壁40および前記ボトムプレート8とに係脱させられて、前記ボトムプレート8および前記各隔壁40を、前記消火剤収納ボックス7内を上下に区画する位置に係止する第3の係止手段42を設けた構成とし、前記投下消火体1を前記区画された領域に分散して装填するようにすることも可能である。
【0089】
そして、前記第3の係止手段42は、その回転によって、係止状態にある前記ボトムプレート8や各隔壁40との係合状態を、下方から順次解除するようになっている。
【0090】
したがって、前記第3の係止手段42の回転に伴って、前記ボトムプレート8、下方の隔壁40、そして、上方隔壁40が、それぞれの自重によって順次下方へ回動させられ、それぞれに載置されている前記投下消火体1が順次投下される(図14および図15参照)。
【0091】
一方、前述した消火剤収納ボックス7に前記袋体2を収納するには、前記トッププレート9を開放した状態において、前記各隔壁40を上方へ回動させておき、まず、前記ボトムプレート8を前記第3の係止手段42に係合させて閉位置に係止するとともに、このボトムプレート8上に前記袋体2の複数を載置し、ついで、下方の隔壁40を下方へ回動させて前記第3の係止手段42に係合させることにより、前記消火剤収納ボックス7内を区画する位置に係止して、その上に前記袋体2の複数を載置し、ついで、上方の隔壁40を、下方の隔壁40と同様に前記第3の係止手段42に係合させるとともに、その上に前記袋体2を載置する。
【0092】
そして、前記トッププレート9を閉位置に固定することによって、前記消火剤収納ボックス7を待機状態とすることができる。
【0093】
ここで、前記消火剤収納ボックス7内に注水すると、この水が、前記隔壁40の貫通孔から下方へ流入することにより、前記消火剤収納ボックス7内を前記水によって充満させることができる。
【0094】
このように水が充満させられると、前記各袋体2内に水が浸入し、ゲル状の消火剤が生成されて投下消火1が生成され、かつ、これらの投下消火1は、複数の区画領域毎に前記ボトムプレート8と各隔壁40によって分散支持される。
【0095】
これによって、下方に位置する投下消火体1にかかる荷重を減少させて、その潰れ等を防止することができる。
なお、パンチプレート等からなる横置きの隔壁40を2段設けた例を示したが、3段ないし5段設ける構成としてもよい。その場合には、隔壁40を例えば水平又は水平に近い横方向へスライドさせて出し入れする構造とすることもできる。
【0096】
また、図16に示すように、航空機から吊り下げて消火活動を行う空中消火用バケツ51を投下消火体投装置6として用いても良い。本発明の投下消火1は、この空中消火用バケツ51内に収容される水に浸透させるだけで使用することができる。
【0097】
この空中消火用バケツ51の底部には、信号を受け付けて開弁される底部投下装置52を設けても良い。
底部投下装置52には、図17に示すように、防水の電動ロック53が設けられており、人若しくはプログラムからの信号を受け付けて開弁されるように構成されている。
【0098】
本実施形態によれば、空中消火用バケツ51を使用する場合であっても、袋体によって外形が保持されたゲル状の消火剤を投下することができる。そのため、ゲル状の消火剤が飛散されることを防止して、高確率で火災現場に投下することができる。
また、ゲル状の消火剤は袋体2内のみに形成されるため、空中消火用バケツ51にゲル状の消火剤が付着しにくく、投下消火1を容易、かつ、完全に排出することができる。
【0099】
また、航空消防機として充当される航空機の種類(回転翼・固定翼)によって、その構造を最大限に活用する投下消火体投下装置を新たにデザイン、または既存の消火水投下装置をそのまま用いて投下消火体を投下することができる。
たとえば、ファイヤーアタッカーとして運用されている航空機底部に装着されるベリータンクは投下消火体の大きさがその開口部によって投下が制限されなければ、そのまま流用することが可能である。
【0100】
また、本実施形態によれば、ゲル状の消火剤が袋体の内部に充填された形態となっているので、その投下消火体1(袋体2)の表面積と重さ、及び投下位置の高さとから、投下消火体1の落下地点を容易かつ高精度に予測することが可能である。
詳細には、風向風速情報や火災位置情報、航空機等の位置・高度情報、航空機の針路・速力、投下消体1の重量や形状等の情報から、投下消体1の落下特性を加味した最適投下地点を算出することにより、前記投下消火体を火災現場へ投下する位置を高精度に予測して投下することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 投下消火体
2 袋体
3 ゲル化剤
4 ヘリコプター
5 扉
6 投下消火装置
7 消火剤収納ボックス
8 ボトムプレート
9 トッププレート
10 第1の係止手段
11 ロックボルト
12 係止プレート
13 ロックナット
14 第2の係止手段
15 ロックボルト
16 係止プレート
17 ロックナット
19 給水管
20 開閉弁
25 ステー
26 ガイドローラー
27 ガイドレール
28 ストッパー
30 カウンターウェイト
31 水タンク
40 隔壁
41 ヒンジ
42 第3の係止手段
51 空中消火用バケツ
52 底部投下装置
53 電動ロック
54 ゴムパッキン
【国際調査報告】