(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年9月24日
【発行日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】シリコーンハイドロゲルレンズ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20170317BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20170317BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20170317BHJP
C09B 35/033 20060101ALN20170317BHJP
B41M 5/00 20060101ALN20170317BHJP
【FI】
G02C7/04
C09D11/037
C09D11/322
C09B35/033
B41M5/00 A
B41M5/00 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】55
【出願番号】特願2016-508402(P2016-508402)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2014年3月19日
(11)【特許番号】特許第5986699号(P5986699)
(45)【特許公報発行日】2016年9月6日
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000138082
【氏名又は名称】株式会社メニコン
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】松下 良
(72)【発明者】
【氏名】後藤 裕二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 剛
(72)【発明者】
【氏名】河野 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】平田 直毅
【テーマコード(参考)】
2H006
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB03
2H006BB05
2H006BB07
2H006BB09
2H006BC06
2H186AA18
2H186AB11
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA08
2H186FB04
2H186FB36
2H186FB37
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB53
4J039BC33
4J039BC36
4J039BC40
4J039GA34
(57)【要約】
着色剤を含む重合性組成物を重合することにより製造した場合であっても、また、レンズ前駆体に対して、着色剤を含むインク組成物をインクジェット印刷等の公知の印刷手法に従って印刷し、かかる着色剤をレンズ前駆体内に浸透せしめて眼用レンズとした場合にあっても、着色剤の溶出が効果的に抑制される眼用レンズを提供すること。
所定の構造式で表わされる非重合性化合物を着色剤として用いて、眼用レンズを構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表わされる着色剤を含む眼用レンズ。
【化1】
(上記一般式(I)中、R
1 、R
2 及びR
3 は、それぞれ独立し
て、水素原子、置換若しくは非置換の芳香族残基、又は下記一般式
(II)で表わされる原子団である。但し、R
1 、R
2 及びR
3 のう
ちの少なくとも一つは、下記一般式(II)で表わされる原子団であ
る。)
【化2】
(上記一般式(II)中、R
4 及びR
5 は、それぞれ独立して、水
素原子、ホルミル基、炭素数が1〜20のアシル基、メタクリロイ
ル基、アクリロイル基、又は下記一般式(III )で表わされる原子
団であり、Xは、置換又は非置換のナフタレン環若しくはベンゾカ
ルバゾール環であり、Yは、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数
が1〜5のアルコキシ基である。)
【化3】
(上記一般式(III )中、R
6 は、炭素数が1〜20の脂肪族炭
化水素若しくは脂環式炭化水素、炭素数が6〜20の芳香族炭化水
素、メタクリロイルオキシアルキル基、又はアクリロイルオキシア
ルキル基である。)
【請求項2】
前記着色剤と、少なくとも一種以上の重合性化合物とを含む重合性組成物の重合体よりなる請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項3】
少なくとも一種以上の重合性化合物を含む重合性組成物の重合体よりなる眼用レンズ前駆体を、前記着色剤を含むインク組成物にて着色せしめてなる請求項1に記載の眼用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼用レンズに係り、特に、着色された眼用レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンタクトレンズを始めとする種々の眼用レンズについて、その全体乃至は一部が着色されたものが要求されており、その需要は高まる傾向にある。
【0003】
そのような着色された眼用レンズは、現在、様々な手法にて製造されているところ、例えば、レンズポリマーの重合段階で着色剤を使用する方法が広く知られている。かかる手法は、具体的に、レンズポリマーを形成する重合性組成物に、重合性色素や高分子色素等の着色剤を配合し、そのような着色剤を含む重合性組成物を重合せしめ、必要に応じて得られた重合体を加工等することにより、目的とする眼用レンズを製造する方法である。そのようにして得られた眼用レンズにあっては、着色剤の溶出等に起因する脱色や変色等が見られず、また、光や化学薬剤に対する耐久性乃至は堅牢性にも優れたものとなるのである。
【0004】
また、眼用レンズの全体ではなく、その一部についてのみ着色する場合には、所定の着色剤を含む液状のインク組成物を用いて、スクリーン印刷やインクジェット印刷等の印刷手法によって、眼用レンズの表面にインク組成物を付着させ、かかるインク組成物をレンズ内に浸透させることによってレンズを着色する方法も、広く知られている。
【0005】
このような状況の下、特許文献1(特開2010−97225号公報)においては、眼用レンズの着色剤として、重合可能な官能基をアゾ色素からなる新規なものが提案されている。また、特許文献2(国際公開第2009/044853号)においては、レンズポリマーを形成する重合性組成物に、アゾ色素とポリジメチルシロキサンを予め重合させたものを配合し、そのような重合性組成物を重合せしめることによって眼用レンズを製造する方法が、明らかにされている。
【0006】
重合性色素や高分子色素については、上記した特許文献以外においても種々、提案されており、それら従来の重合性色素や高分子色素の多くは、レンズ内からの溶出が効果的に抑制されるものであったり、また、光や化学薬剤に対する耐久性等に優れたレンズを製造可能なものとなっている。
【0007】
しかしながら、従来の重合性色素は、その分子内に重合性基を有することに起因して、保存安定性に劣るものが多い。また、重合性色素は、一般に、その製造工程において重合性基を付与する工程が必要となり、その製造が煩雑になるという問題をも内在している。一方、高分子色素は、重合性色素や非重合性色素に高分子量の物質を予め重合させてなるものであるところ、そのような高分子色素にあっても、先述した重合性色素と同様に、その製造が煩雑であるという問題を内在している。加えて、色素を高分子化すると、色素のモル吸光度の低下を招く恐れがあり、眼用レンズにおいて所望とする着色度合を発現させるためには、高分子色素の使用量を増やさざるを得ないこととなり、眼用レンズの物性に悪影響を与える恐れがある。更にまた、従来の高分子色素にあっては、その分子の大きさ等に起因して、レンズポリマーに浸透し難いものであり、例えば、インク組成物を調製し、このインク組成物をインクジェット印刷等により眼用レンズの表面に付着させても、レンズ内に効果的に浸透しない恐れがある、との問題を有しているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−97225号公報
【特許文献2】国際公開第2009/044853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、着色剤の溶出が効果的に抑制される眼用レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は、かかる課題を解決すべく、下記一般式(I)で表わされる着色剤を含む眼用レンズを、その要旨とするものである。
【化1】
(上記一般式(I)中、R
1 、R
2 及びR
3 は、それぞれ独立して、水素
原子、置換若しくは非置換の芳香族残基、又は下記一般式(II)で表わさ
れる原子団である。但し、R
1 、R
2 及びR
3 のうちの少なくとも一つは、
下記一般式(II)で表わされる原子団である。)
【化2】
(上記一般式(II)中、R
4 及びR
5 は、それぞれ独立して、水素原子、
ホルミル基、炭素数が1〜20のアシル基、メタクリロイル基、アクリロ
イル基、又は下記一般式(III )で表わされる原子団であり、Xは、置換
又は非置換のナフタレン環若しくはベンゾカルバゾール環であり、Yは、
水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数が1〜5のアルコキシ基である。)
【化3】
(上記一般式(III )中、R
6 は、炭素数が1〜20の脂肪族炭化水素若
しくは脂環式炭化水素、炭素数が6〜20の芳香族炭化水素、メタクリロ
イルオキシアルキル基、又はアクリロイルオキシアルキル基である。)
【0011】
なお、本発明に従う眼用レンズの、好ましい第一の態様においては、前記着色剤と、少なくとも一種以上の重合性化合物とを含む重合性組成物の重合体よりなるものである。
【0012】
また、本発明に従う眼用レンズの、好ましい第二の態様においては、少なくとも一種以上の重合性化合物を含む重合性組成物の重合体よりなる眼用レンズ前駆体を、前記着色剤を含むインク組成物にて着色せしめてなるものである。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明に従う眼用レンズにあっては、特定の構造を有する着色剤を含むものである。従って、例えば、そのような着色剤を含む重合性組成物を重合して得られる眼用レンズや、かかる着色剤を含むインク組成物を用いて着色されてなる眼用レンズにあっては、着色剤の構造に起因して、レンズ外への着色剤の溶出が効果的に抑制されたものとなるのである。
【0014】
また、本発明で用いられる着色剤は、従来の重合性色素や高分子色素と比較して、重合性基の付与や高分子化等の特別の操作が不要なものである。従って、本発明の眼用レンズは、従来の重合性色素等を使用して眼用レンズを製造する場合と比較すると、比較的簡易に製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ところで、本発明に従う眼用レンズは、着色剤として下記一般式(I)で表わされる化合物を含むものである。そのような特定の構造を有する化合物を着色剤として用いることにより、本発明の眼用レンズにあっては、レンズ外への着色剤の溶出が効果的に抑制されたものとなっているのである。尚、以下の記載において、眼用レンズとは、最終製品として眼用レンズは勿論のこと、重合後の、水和処理や表面処理等が施されていない状態のものをも含むものである。また、重合後の、水和処理や表面処理等が施されていない状態の眼用レンズを、特に眼用レンズ前駆体と表現する。
【化4】
【0016】
上記一般式(I)において、R
1 、R
2 及びR
3 は、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換の芳香族残基、又は下記一般式(II)で表わされる原子団である。但し、R
1 、R
2 及びR
3 のうちの少なくとも一つは、下記一般式(II)で表わされる原子団である。
【化5】
【0017】
上記一般式(II)中、R
4 及びR
5 は、それぞれ独立して、水素原子、ホルミル基、炭素数が1〜20のアシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、又は下記一般式(III )で表わされる原子団であり、Xは、置換又は非置換のナフタレン環若しくはベンゾカルバゾール環であり、Yは、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数が1〜5のアルコキシ基である。
【化6】
【0018】
上記一般式(III )中、R
6 は、炭素数が1〜20の脂肪族炭化水素若しくは脂環式炭化水素、炭素数が6〜20の芳香族炭化水素、メタクリロイルオキシアルキル基、又はアクリロイルオキシアルキル基である。
【0019】
このような構造を有する、本発明の眼用レンズにて使用される着色剤は、従来より公知の方法により、合成することが可能である。本発明にて用いられる着色剤は、例えば、以下の手法に従って合成される。
【0020】
先ず、所定のニトロ基含有化合物(出発物質)中のニトロ基を、従来より公知の手法に従って還元し、得られる還元物と、酸無水物、酸クロライド又はモノイソシアネートとを反応させて、カップラーを合成する。
【0021】
ここで、出発物質として使用されるニトロ基含有化合物としては、3−ヒドロキシ−3’−ニトロ−2−ナフトアニリド(慣用名:ナフトールAS−BS)、3−ヒドロキシ−7−メトキシ−N−(3−ニトロフェニル)ナフトアミド、6−ヒドロキシ−N−(3−ニトロフェニル)ナフトアミド、1−ヒドロキシ−N−(3−ニトロフェニル)ナフトアミド、6−ヒドロキシ−N−(2−ニトロフェニル)−2−ナフトアミド等のN−ニトロフェニル−ヒドロキシ−ナフトアミド類似体等を、例示することが出来る。また、それらN−ニトロフェニル−ヒドロキシ−ナフトアミド類似体の還元は、例えば、鉄触媒の存在下において、N−ニトロフェニル−ヒドロキシ−ナフトアミド類似体と濃塩酸とを反応させることにより、実施可能である。
【0022】
また、ニトロ基含有化合物(出発物質)の還元物と反応せしめられる酸無水物としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物やイソ酪酸無水物等を例示することが出来る。また、出発物質の還元物と反応せしめられる酸クロライドとしては、一般式:RCOCl(但し、Rは炭素数が2〜17のアルキル基である。)で表わされる化合物、より具体的には、プロピオン酸クロライド、バレリル酸クロライドやステアリン酸クロライド等の他、o−トルイル酸クロライドやm−トルイル酸クロライド等を例示することが出来る。更に、出発物質の還元物と反応せしめられるモノイソシアネートとしては、メチルイソシアネート、n−ブチルイソシアネート、オクタデカイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネートやフェニルイソシアネート等を、例示することが出来る。
【0023】
上述の如くしてカップラーを準備する一方で、所定のアミンを、酸性水溶液(例えば塩酸)中にて亜硝酸塩等と作用させることにより、ジアゾニウム塩を合成する。ここで使用されるアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノトリフェニルアミン、4−アミノジフェニルアミンや4,4’、4’’−トリアミノトリフェニルアミン等を、例示することが出来る。
【0024】
そして、得られたカップラーとジアゾニウム塩とを反応させることにより、目的とする着色剤が得られるのである。
【0025】
本発明に従う含水性コンタクトレンズ用インク組成物において使用される着色剤としては、例えば、下記構造式(a)〜(o)で示される化合物を挙げることが出来る。
【0041】
ところで、本発明に従う眼用レンズは、上述した所定の着色剤を含むものであるところ、かかる眼用レンズは、従来より公知の種々の方法に従って製造することが可能である。例えば、以下に詳述する方法に従って、本発明の眼用レンズを有利に製造可能である。
【0042】
A.着色剤を含む重合性組成物を用いる製造方法
この方法は、着色剤と、少なくとも一種以上の重合性化合物を含む重合性組成物を重合せしめ、必要に応じて水和処理や表面処理等を施すことにより、目的とする眼用レンズを製造する方法である。
【0043】
かかる製造方法においては、先ず、重合性組成物が調製される。重合性組成物の調製に際して用いられる各成分は、眼用レンズを製造する際に従来より使用されている各種の成分の中から、目的とする眼用レンズに応じたものが適宜に選択され、使用されることとなる。重合性組成物の調製に際して使用される成分としては、疎水性モノマー、親水性モノマーや架橋剤等を、例示することが出来る。
【0044】
より具体的に、疎水性モノマーとしては、従来より眼用レンズ材料に使用されているシリコン含有モノマーやフッ素含有アルキル(メタ)アクリレート等を、挙げることが出来る。シリコン含有モノマーは、眼用レンズの酸素透過性を有利に向上せしめるものである。また、フッ素含有アルキル(メタ)アクリレートは、眼用レンズにおける酸素透過性の一つの要因である、レンズ(重合体)への酸素の溶解性を向上せしめると共に、レンズ表面の粘着性(タック)を低減し、また、その疎水性及び疎油性によって、脂質等の付着を効果的に防止し、レンズの耐汚染性を向上せしめるものである。なお、本明細書における「・・(メタ)アクリレート」なる表記は、「・・アクリレート」及び「・・メタクリレート」を含む総称として用いられていることが、理解されるべきである。
【0045】
前述のシリコン含有モノマーとしては、特に、ウレタン結合を介してエチレン型不飽和基およびポリジメチルシロキサン構造を有するシリコン含有モノマーが、有利に用いられる。また、そのようなシリコン含有モノマーと共に、或いは、かかるシリコン含有モノマーに代えて、ペンタメチルジシロキシメチル基、ビス(トリメチルシロキシ)(メチル)シリルメチル基、ビス(トリメチルシロキシ)(メチル)シリルプロピル基、トリス(トリメチルシロキシ)シリルメチル基、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル基等が、(メタ)アクリレートやスチレン等に導入された、シロキサニル(メタ)アクリレートや、シロキサニルスチレン等の、一般的なシリコン含有モノマーであっても、本発明において使用することが可能である。そのような一般的なシリコン含有モノマーの中では、ビス(トリメチルシロキシ)(メチル)シリルプロピル(メタ)アクリレートや、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレートが、精製の容易さ、酸素透過性、入手のし易さ、相溶性等の点から、特に好適に用いられる。
【0046】
また、フッ素含有アルキル(メタ)アクリレートとしては、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロドデシル)エチル(メタ)アクリレート等を、例示することが出来る。このようなフッ素含有アルキル(メタ)アクリレートの中でも、特に、フッ素部分が大きなもの程、より優れた酸素透過性を確保するために都合が良く、且つ、レンズを適度に軟らかくすることが出来るところから、より好適に採用され得ることとなる。そのようなフッ素部分が大きなフッ素含有アクリル(メタ)アクリレートとしては、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの中でも、特に、(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレートは、市販され、減圧蒸留等で容易に精製し得るものであるところから、最も望ましいものである。
【0047】
一方、親水性モノマーとしては、N−ビニルピロリドン(NVP);アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のアクリルアミド系モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート;2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ブチルアミノエチルアクリレート等の(アルキル)アミノアルキルアクリレート;エチレングリコールモノアクリレート、プロピレングリコールモノアクリレート等のアルキレングリコールモノアクリレート;ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート等のポリアルキレングリコールモノアクリレート;エチレングリコールアリルエーテル;エチレングリコールビニルエーテル;アクリル酸;アミノスチレン;ヒドロキシスチレン;酢酸ビニル;グリシジルアクリレート;アリルグリシジルエーテル;プロピオン酸ビニル;N−ビニル−3−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4,4−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4,6−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5,7−トリメチル−2−カプロラクタム等のN−ビニルラクタム;N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルフタルイミド等のN−ビニルアミド等を、例示することが出来る。これらの中でも、特に、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のアクリルアミド系モノマーや、N−ビニルピロリドン(NVP)等の窒素含有化合物が、有利に用いられる。
【0048】
加えて、架橋剤は、眼用レンズの機械的強度や形状安定性等の向上を目的として、必要に応じて添加されるものであ。例えば、使用する疎水性モノマーが、1分子中に多数の重合性基を有するものである場合には、架橋剤が必要とされることは少ないが、重合性基の少ない疎水性モノマーを用いる場合や、疎水性モノマーの使用量が少ない場合等には、眼用レンズの形状安定性や強度、耐久性等が問題となる恐れがあるところから、適当な架橋剤を使用することが望ましい。
【0049】
そのような架橋剤としては、重合性基を2つ以上有する、従来から眼用レンズに使用されている公知の各種架橋剤であれば、何れも使用可能である。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールの(メタ)アクリレート;アジピン酸ジビニル、アジピン酸ジアリル、アジピン酸アリルエステルビニルエステル、セバシン酸ジビニル、セバシン酸ジアリル、セバシン酸アリルエステルビニルエステル、その他、蓚酸、マロン酸、マレイン酸、メチルマロン酸、琥珀酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、メチル琥珀酸、グルタル酸、ジメチル琥珀酸、イソプロピルマロン酸、メチルグルタル酸、メチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ジ−n−プロピルマロン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,3−フェニレンジ酢酸、フェニル琥珀酸、ベンジルマロン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の多塩基カルボン酸のビニルエステルやアリルエステル(多塩基カルボン酸の全てのカルボキシル基がエステル化(完全エステル化)しているものが、溶解性の面から、より望ましい);ジビニルベンゼン;トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート;ジエチレングリコールビスアリルカーボネート;トリメリット酸トリアリル;アリルエーテル;アルキレングリコール若しくはポリアルキレングリコールのジアリルエーテル;アルキレングリコール若しくはポリアルキレングリコールのジビニルエーテル;アルキレングリコール若しくはポリアルキレングリコールのアリルエーテルビニルエーテル;ジアリリデンペンタエリスリット;1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン等を、例示することが出来る。また、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、4−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、2,2−ビス[p−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[m−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[o−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[p−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[m−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[o−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、1,4−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル]ベンゼン、1,2−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル]ベンゼン、1,2−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル]ベンゼン等も、使用することが出来る。このような従来より公知の架橋剤のうちの少なくとも1種以上のものが、適宜に選択されて用いられることとなる。
【0050】
なお、上述せる如き架橋剤は、前述したモノマー成分(疎水性モノマー及び親水性モノマー)を合計した100重量部に対して、0.05〜1重量部となる量的割合において、好ましくは0.1〜0.8重量部となる量的割合において、重合性組成物に配合されることが好ましい。けだし、架橋剤が必要な際に、架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋剤による充分な効果が得られず、含水後の眼用レンズにおいて必要とされる、円形等の形状保持性や適度な弾性等が得られなくなる恐れがあり、その一方で、配合量が多すぎると、重合体中に架橋点が多くなり過ぎて、眼用レンズが脆くなり、容易に破損する恐れがあるからである。
【0051】
本発明の眼用レンズを製造するに際しては、上記した疎水性モノマー等に加えて、補強剤や親水化剤、重合性紫外線吸収剤等を、必要に応じて、使用することが可能である。
【0052】
補強剤は、眼用レンズの機械的強度の調整を図るために添加されるものである。例えば、疎水性モノマーが、1分子中に多数の重合性基を有するものである場合には、疎水性モノマー自体が架橋効果を有することとなり、かかるモノマーによって、反発性に優れた眼用レンズが得られることとなるのであるが、一方で、そのような疎水性モノマーの架橋効果によって眼用レンズの強度が低下するような場合には、補強剤が使用されることが望ましいのである。
【0053】
ここにおいて、補強剤としては、従来より眼用レンズに使用されている公知の各種の補強剤であれば、何れも使用することが可能である。具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸アリル等の有機カルボン酸のビニルエステルやアリルエステル、(メタ)アクリル酸エステルやそのマクロモノマー、スチレン誘導体等を例示することが出来る。このような従来より公知の補強剤のうちの少なくとも1種が適宜に選択されて、用いられるのである。
【0054】
なお、上述せる如き補強剤の配合割合は、前述したモノマー成分(疎水性モノマー及び親水性モノマー)を合計した100重量部に対して、1〜20重量部となるような量的割合において、重合性組成物に配合されることが好ましい。けだし、そのような補強剤が用いられる際に、その配合割合が、モノマー成分の100重量部に対して1重量部未満である場合には、充分な補強効果が得られなくなる恐れがあり、その一方、20重量部を超える場合には、所望とする酸素透過性が得られ難くなったり、充分な含水率が得られなくなる恐れがあるからである。
【0055】
一方、親水化剤は、眼用レンズに親水性を付与するための成分であり、例えば、前述のモノマー成分を含有する重合性組成物を共重合して得られる眼用レンズが、所望とする含水率は達成されるものの、その表面の親水性乃至は水濡れ性が充分でなかったり、重合性モノマー同士の相溶性が不足したり、眼用レンズの弾性が大き過ぎたり、重合容器材料或いは成形容器材料との親和性が大き過ぎたりするような場合に、適宜に使用されることが望ましい。
【0056】
そのような親水化剤としては、従来から眼用レンズに使用されている公知の親水化剤であれば、何れも使用可能である。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等の多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;N−(メタ)アクリロイルモルホリン;N−(メタ)アクリロイルピペリジン;N−ビニルピペリドン;N−ビニル−N−メチルアセトアミド;N−ビニル−N−エチルアセトアミド;N−ビニル−N−メチルホルムアミド;N−メチル−α−メチレン−2−ピロリドン等を、例示することが出来る。これら従来より公知の親水化剤のうちの少なくとも1種が、適宜に選択されて、用いられる。
【0057】
なお、上述せる如き親水化剤の配合割合は、前述したモノマー成分(疎水性モノマー及び親水性モノマー)を合計した100重量部に対して、1〜30重量部となるような量的割合において、重合性組成物に配合される。けだし、親水化剤が必要な場合に、その配合割合が、前述したモノマー成分の100重量部に対して、1重量部未満である場合には、最終的に得られる眼用レンズにおいて充分な親水化効果を享受し得ない恐れがあり、その一方、配合割合が30重量部を超えると、モノマー同士の相溶性が悪化したり、所望とする酸素透過性が得られ難くなる恐れがあるからである。
【0058】
加えて、重合性紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−5−t−ブチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2’,4’−ジクロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール[HMEPBT]、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−3’−t−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(2”−メタクリロイルオキシエトキシ)−3’−t−ブチルフェニル)−5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシメチル安息香酸フェニル等のサリチル酸誘導体系重合性紫外線吸収剤;2−シアノ−3−フェニル−3−(3’−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロペニル酸メチルエステル等を、挙げることが出来る。これらは単独で、又は2種以上を混合して、使用することが可能である。
【0059】
なお、上記の如き重合性紫外線吸収剤は、前述したモノマー成分(疎水性モノマー及び親水性モノマー)を合計した100重量部に対して、3質量部以下となるような量的割合において、重合性組成物に配合されることが好ましく、より好ましくは0.01〜2質量部となるような量的割合において、重合性組成物に配合される。重合性紫外線吸収剤の配合割合が3質量部を超えると、得られる眼用レンズの機械的強度等が低下する傾向にあり、また、重合性紫外線吸収剤の毒性も考慮すると、その配合量は少ない方が好ましいからである。
【0060】
かくして、上記した着色剤と、上記の如き各成分を含む重合性組成物を用いて、目的とする眼用レンズを得るには、調製した重合性組成物を、従来より公知の各種の重合法に従って共重合せしめることとなる。
【0061】
より具体的には、重合性組成物の重合手法としては、重合性組成物に熱重合開始剤を添加した後、室温〜約150℃の温度範囲にて徐々に、或いは段階的に加熱して重合せしめる方法(熱重合法)や、光重合開始剤(及び光増感剤)を重合性組成物に添加した後、適当な光線(例えば、紫外線等)を照射して、重合を行なう方法(光重合法)、更には、それら熱重合法と光重合法とを組み合わせて重合を行なう方法等、例示することが出来る。また、重合形式としては、塊状重合法を挙げることが出来るが、その他公知の各種の手法であっても、何等差し支えない。
【0062】
また、眼用レンズを成形する方法(加工方法)としては、特に限定されるものではなく、重合性組成物を適当な重合型内又は重合容器内に収容して、かかる重合型内又は重合容器内で重合を行ない、重合性組成物の重合体からなる、棒状、ブロック状、板状等のレンズ材料を得た後、切削加工、研磨加工等の機械的加工によって所望の形状に成形する切削加工法や、所望とする眼用レンズ形状を与える重合型を用意し、この重合型の成形キャビティ内に、所定の重合性モノマー組成物を収容して、型内で前記した重合成分の重合を行なって成形物を得る鋳型(モールド)法、更に必要に応じて、機械的に仕上げ加工を施すモールド法と切削加工法を組み合わせた方法等、当業者に従来から公知の各種の手法が、何れも採用可能である。上記した方法の中でも、特に、モールド法が、生産コストを効果的に低減せしめることが出来るところから、好適に採用されることとなる。
【0063】
なお、重合性組成物を熱重合法に従って重合せしめる場合、使用される熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシヘキサノエート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等を、例示することが出来る。これらの熱重合開始剤は単独で、又は2種以上を混合して、使用することが可能である。熱重合開始剤の使用量は、上記重合性組成物の全モノマー成分の100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0064】
また、熱重合法に際して、重合性組成物の加熱温度は、好ましくは50〜150℃であり、より好ましくは60〜140℃である。また、重合性組成物の加熱時間は、好ましくは10〜120分、より好ましくは20〜60分である。重合性組成物の加熱温度を50℃以上とすることで、重合時間の短縮化を図ることが出来、また、加熱時間を10分以上とすることによって、残留モノマー成分の低減を図ることが可能となる。一方、加熱温度を150℃以下とし、加熱時間を120分以下とすることによって、各モノマー成分の揮発を効果的に抑制することが出来る。
【0065】
一方、重合性組成物を光重合法に従って重合せしめる場合、使用される光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(TPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系光重合開始剤;メチルオルソベンゾイルベンゾエート、メチルベンゾイルフォルメート、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(HMPPO)、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、N,N−テトラエチル−4,4−ジアミノベンゾフェノン等のフェノン系光重合開始剤;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム;2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤;ジベンゾスバロン;2−エチルアンスラキノン;ベンゾフェノンアクリレート;ベンゾフェノン;ベンジル等を、例示することが出来る。これらの光重合開始剤は単独で、又は2種以上を混合して、使用することが可能である。また、光重合開始剤と共に光増感剤を用いてもよい。これら光重合開始剤及び光増感剤の使用割合は、上記重合性組成物の全モノマー成分の100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0066】
なお、光重合法にて重合性組成物を重合せしめる場合には、照射する光の波長域によって、使用する光重合開始剤の種類を選択する必要がある。光照度は、好ましくは0.1〜100mW/cm
2 の範囲内とされる。光重合を実施するに際しては、異なる照度の光を段階的に照射してもよく、また、光の照射時間は1分以上が好ましい。このような光照度及び照射時間とすることによって鋳型材料(又は重合容器材料)の劣化を防ぎつつ、重合性組成物を十分に硬化させることができる。さらに、光の照射と同時に、重合性組成物を加熱してもよく、これによって重合反応が促進され、容易に共重合体を形成することが可能ならしめられる。光重合に供される鋳型又は重合容器は、重合性組成物の重合(硬化)に必要な光を透過しうる材質である限り、特に限定されるものではないが、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリエステル等の汎用樹脂からなるものが好ましい。
【0067】
そして、上述の如き重合法に従うことにより、或いは、上記の重合法に従って得られた重合体に対して水和処理を施すことにより、目的とする眼用レンズが製造されるのである。なお、得られた眼用レンズに対して、生体に対する充分な安全性が確保されるように、滅菌処理等が適宜に実施されることは、言うまでもないところである。
【0068】
また、必要に応じて、上述せる如きモールド法や切削加工法等による成形加工の後に、乾燥状態又は含水状態の眼用レンズに対して、プラズマガスや紫外線、エキシマレーザー、電子線等による表面処理や、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアクリルアミド等の親水性剤による表面コーティングが実施されて、レンズ表面を親水性化せしめて、更に優れた水濡れ性を付与することも、有効である。
【0069】
B.着色剤を含むインク組成物を用いる製造方法
この方法では、着色剤を含むインク組成物を準備し、少なくとも一種以上の重合性化合物を含む重合性組成物の重合体よりなる眼用レンズ前駆体の所望とする部位に、別途準備したインク組成物を着色せしめることにより、目的とする眼用レンズを製造する方法である。
【0070】
かかる製造方法においては、先ず、着色剤を含むインク組成物が調製されるところ、かかる調製は、着色剤を各種溶媒に添加し、着色剤を溶解乃至は分散せしめることによって実施されることが好ましい。
【0071】
本発明の眼用レンズを製造するに際して、所定の着色剤を含むインク組成物を調製する際に用いられる溶媒は、着色剤を効果的に溶解乃至分散せしめることが可能なものであれば、如何なるものであっても使用可能である。特に、有機溶媒が好ましく、より好ましくは、80℃での蒸気圧が760mmHg以下の有機溶媒であり、最も好ましい溶媒は、80℃での蒸気圧が760mmHg以下であって、且つ、水溶性を示す有機溶媒である。この、80℃での蒸気圧が760mmHg以下であって、且つ、水溶性を示す有機溶媒を使用することにより、以下の効果を享受することが可能である。
1)有機溶媒の揮発性が低いために、経時変化や環境変化等によるインク組
成物の成分変化が生じ難くなり、例えば、調製から時間が経過したインク
組成物をインクジェット式印刷装置に用いた場合にあっても、かかる印刷
装置における目詰まりの発生を効果的に抑制し得る。
2)眼用レンズの中でも特に含水性コンタクトレンズは、通常、所望とする
形状を呈する重合体(レンズ前駆体)を作製後、かかるレンズ前駆体に対
して水和処理を施して、前駆体を膨潤させることによって製造されている
。例えば、本発明に係るインク組成物を用いて、レンズ前駆体に対して加
熱を伴う印刷処理(着色処理)を施す場合、かかる加熱の際に、揮発性の
低い有機溶媒は、レンズ表面より揮発することなく、着色剤のレンズ前駆
体内へ浸透に大きく寄与する。また、加熱を伴う印刷処理(着色処理)後
のレンズ前駆体に対して、水和処理を施すと、かかる水和処理において、
着色剤は溶出することなくレンズ前駆体内に止まる一方で、レンズ前駆体
内に着色剤と共に浸透した有機溶媒は、水和処理のための水と置換され、
前駆体の外部へ効果的に排出されることとなり、その結果、水和処理によ
って得られる含水性コンタクトレンズが、眼球に対して悪影響を与える恐
れがある有機溶媒が効果的に排除されるものとなる。
【0072】
上記の如き有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、リン酸トリエチル、プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ε−カプロラクタム等を、例示することが出来、これらのうちの一種、又は二種以上のものを適宜に選択して、使用することが出来る。これらの中でも、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが好ましく、最も好ましくはN−メチル−2−ピロリドン及び/又は2−ピロリドンである。
【0073】
なお、本発明の眼用レンズを製造する際に使用されるインク組成物には、従来の眼用レンズ用インク組成物を調製する際に用いられる他の成分であっても、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、使用することが出来る。そのような成分としては、増粘剤を例示することが出来る。また、本発明に係る眼用レンズの製造に際して、使用されるインク組成物には、上述した着色剤以外にも、従来より公知の重合性の着色剤(重合性色素)を配合することが可能であり、重合性着色剤(重合性色素)を用いる場合には、重合性モノマーを併せて配合することが可能である。
【0074】
そのような重合性モノマーとしては、例えば、国際公開第2005/116728号の第15頁に例示された親水性モノマーや、国際公開第2004/063795号の第15頁、20〜21頁及び23〜24頁に例示されたピロリドン誘導体、N−置換アクリルアミド及び親水性モノマー等を、挙げることが出来る。
【0075】
より具体的に、重合性着色剤(重合性色素)と併用される重合性モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(アルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;エチレングリコールアリルエーテル;エチレングリコールビニルエーテル;(メタ)アクリル酸;アミノスチレン;ヒドロキシスチレン;酢酸ビニル;グリシジル(メタ)アクリレート;アリルグリシジルエーテル;プロピオン酸ビニル;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4,4−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4,6−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5,7−トリメチル−2−カプロラクタム等のN−ビニルラクタム;N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルフタルイミド等のN−ビニルアミド;1−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−i−プロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−i−プロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−n−ブチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−t−ブチル−3−メチレン−2−ピロリドン等の、重合性基がメチレン基であるピロリドン誘導体等を、例示することが出来る。なお、上記記載において、「・・(メタ)アクリレート」なる表記は「・・アクリレート」及び「・・メタクリレート」を含む総称として、また、「・・(メタ)アクリル・・」なる表記は「・・アクリル・・」及び「・・メタクリル・・」を含む総称として、各々、用いられていることが理解されるべきである。
【0076】
尤も、上述した着色剤及び有機溶媒のみから構成されるインク組成物であることが望ましい。けだし、上述した着色剤及び有機溶媒のみを用いてインク組成物を構成し、かかるインク組成物を、特に含水性コンタクトレンズに対して、後述する印刷処理(着色処理)に印刷(着色)すると、含水性コンタクトレンズ表面におけるインク組成物の残渣を効果的に低減することが可能となるからである。
【0077】
上記の如きインク組成物は、上述した各成分を用いて形成される各種の眼用レンズに対して使用可能であるが、特に、含水性コンタクトレンズに対して有利に適用可能である。
【0078】
そして、上記したインク組成物を用いて、例えば含水性コンタクトレンズに対して印刷処理(着色処理)を実施する場合には、有利には、以下の手順に従って実施される。
【0079】
先ず、本発明に従う含水性コンタクトレンズ用インク組成物を、乾燥状態(非膨潤状態)にある含水性コンタクトレンズの前駆体(レンズ前駆体)の表面に付着させる。インク組成物をレンズ前駆体の表面に付着させる方法としては、液状のインク組成物をレンズ前駆体表面に塗布する方法等、従来より公知の方法を使用することが可能である。特に、インク組成物をレンズ前駆体表面に塗布する方法としては、例えば、パッド印刷方法、スクリーン印刷方法、インクジェット式印刷装置を用いる方法等を、挙げることが出来る。これらの中で、所望の文字や数字、虹彩模様等の図形のパターン(以下、本段落において文字等と総称する。)を簡便に印刷できる観点から、インクジェット式印刷装置を用いることが特に好ましい。インクジェット式印刷装置は、液状のインク組成物を、非常に微細な液滴としてレンズ表面に噴霧するものであり、表面に着弾した液滴は一つのドットを形成し、このドットの集まりによって、所望とする文字等が形成される。一般に、小さなドットが高密度で集合してなる文字等は、鮮鋭なコントラストを与え、優れた視認性を発揮する。インクジェット式印刷装置にて印字、描画する際、液滴の大きさ、液滴が着弾する地点などは、コンピューター等によって正確に制御することが可能であり、コンピューターのプログラムを変更することによって、文字等の形や大きさを容易に変更することが可能である。このように、インクジェット式印刷装置を用いた塗布方法は、非常に生産性が高く、また一定した高品質の印刷ができるという優れた利点を有する。更に、インクジェット式印刷装置によれば、塗布される液滴が微細であり、レンズへ着弾した際の界面面積に比して液滴量が少ないので、より迅速に、レンズ前駆体に浸透し易くなる。従って、インクジェット式印刷装置は、上記した利点以外に、レンズ表面への着色剤の析出や残渣の発生をより低減させて、着色剤をレンズ内部へ浸透させることが可能ならしめられ、この点においても、非常に有利な方法である。
【0080】
なお、本発明の眼用レンズを製造するに際しては、従来より公知の各種インクジェット式印刷装置の何れであっても、使用することが可能である。代表的なインクジェット式印刷装置は、インク組成物供給系とピエゾ素子等の圧電素子を備えたノズルから構成された吐出装置とからなり、圧電素子に電圧を負荷することによって生じる振動で、インク組成物を微細な液滴として、ノズルから吐出する機構を有している。所望の液滴を吐出できるものである限り、何れのインクジェット式印刷装置であっても好適に用いることができる。なお、ノズルは、単一であっても、複数であっても構わない。
【0081】
インク組成物をレンズ前駆体の表面に付着するために要する時間は、インク組成物を接触させる方法や、印刷面積やその形状等によって変化することとなるが、例えば、インクジェット式印刷装置を用いる場合、通常、数秒〜10分程度である。
【0082】
次いで、インク組成物が付着せしめられたレンズ前駆体に対して、加熱処理が施される。この加熱処理によって、インク組成物を構成する着色剤及び溶媒が、効果的にレンズ前駆体内に浸透するのである。
【0083】
ここで、上記加熱処理は、90〜130℃の加熱温度において、好ましくは数秒〜1分程度の加熱時間にて、より好ましくは5〜30秒の加熱時間にて、実施することが好ましい。加熱温度が低すぎたり、加熱時間が短すぎると、加熱処理の効果を享受し得ない恐れがあり、その一方、加熱温度が高すぎたり、加熱時間が長すぎると、レンズ前駆体が変形、変質等する恐れがあるからである。なお、加熱処理は、コンタクトレンズの加熱方法として従来より公知の方法の何れかに従って、実施することが可能である。
【0084】
加熱処理が施されたレンズ前駆体に対しては、必要に応じて、レンズ内に侵入(浸透)した溶媒の除去処理が施される。尤も、上記したように、所定の有機溶媒を用いてインク組成物を構成することにより、この除去処理は不要である。
【0085】
そして、以上の処理が施されたレンズ前駆体に対して、従来と同様の手法に従って水和処理を施すことにより、着色された含水性コンタクトレンズが得られることとなるのである。また、上記の如き、所定の有機溶媒を含むインク組成物を用いた場合には、この水和処理の際に、着色剤は溶出することなくレンズ前駆体内に止まる一方で、レンズ前駆体内に着色剤と共に浸透した有機溶媒は、水和処理のための水と置換され、前駆体の外部へ効果的に排出されることとなる。
【0086】
以上の如くして得られた、本発明に従う眼用レンズにあっては、そこに含まれる着色剤が特定の構造を有しているところから、レンズ内からの着色剤の溶出が効果的に抑制されたものとなっているのである。
【実施例】
【0087】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0088】
なお、以下の記載において、略称にて示した各化合物は以下の通りである。
・着色剤A:上記構造式(a)で示される化合物
・着色剤B:上記構造式(b)で示される化合物
・着色剤C:上記構造式(c)で示される化合物
・着色剤D:上記構造式(d)で示される化合物
・マクロモノマー:国際公開第2004/063795号の第48、4
9頁に記載の製造方法に従って得られる、ウレタン
結合を介してエチレン型不飽和基およびポリジメチ
ルシロキサン構造を有するシリコン含有モノマー
・TRIS:トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレ
ート
・2−MTA:2−メトキシエチルアクリレート
・N−VP:N−ビニルピロリドン
・AMA:アリルメタクリレート
・DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
・N−MMP:1−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン
・EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
・HMPPO:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−
1−オン
【0089】
また、以下の実施例及び比較例において得られた含水性コンタクトレンズ(シリコーンハイドロゲルレンズ)について、各々、以下の手法に従って、耐オートクレーブ性及び耐油性を評価した。
【0090】
−耐オートクレーブ性の評価−
試料としての含水性コンタクトレンズに対して、生理食塩水中にて、121℃で20分間の高圧蒸気滅菌処理を施した。実施例1〜実施例8及び比較例1、比較例2に係る各レンズについては、処理後のレンズ全体を肉眼で観察し、下記評価基準A−1に従い、評価した。一方、実施例9〜実施例16及び比較例3、比較例4に係る各レンズについては、処理後のレンズの外面側表面を肉眼で観察し、下記評価基準B−1に従い、評価した。
・評価基準A−1
○:褪色が認められない。
×:褪色が認められる。
・評価基準B−1
○:パターンのラインを明確に識別でき、視認性は良好である。
×:パターンのラインが不明確であり、視認性は不良である。
【0091】
−耐油性の評価−
試料としての含水性コンタクトレンズを、室温下、約2mLの眼脂成分(ワックスエステル)中に約24時間、浸漬せしめた。実施例1〜実施例8及び比較例1、比較例2に係る各レンズについては、浸漬後のレンズ全体を肉眼で観察し、下記評価基準A−2に従い、評価した。一方、実施例9〜実施例16及び比較例3、比較例4に係る各レンズについては、浸漬後のレンズの外面側表面を肉眼で観察し、下記評価基準B−2に従い、評価した。
・評価基準A−2
○:褪色が認められない。
×:褪色が認められる。
・評価基準B−2
○:パターンのラインを明確に識別でき、視認性は良好である。
×:パターンのラインが不明確であり、視認性は不良である。
【0092】
−実施例1〜実施例8、比較例1、比較例2−
下記表1に示す配合組成に従い、コンタクトレンズ用の重合性組成物を10種類、調製した。各組成物を、コンタクトレンズ形状を有するポリプロピレン製の鋳型(直径:約14mm、厚さ0.1mmのコンタクトレンズに対応)内に注入し、次いで、この鋳型に対して紫外線を20分間、照射することにより、重合性組成物の光重合を実施した。かかる重合の後、鋳型より、コンタクトレンズ形状を呈する重合体を取り出し、更に、重合体の表面に対して、二酸化炭素雰囲気下、プラズマ照射(出力:50W、圧力:100Pa)を実施し、表面処理を施した。そして、かかる表面処理後の重合体を、生理食塩水中に浸漬せしめることにより、全体が着色された含水性コンタクトレンズ(シリコーンハイドロゲルレンズ)を10種類、得た(実施例1〜実施例8、比較例1、比較例2)。得られた各レンズの外観を目視で観察し、その結果を下記表1に併せて示す。また、各レンズについて、耐オートクレーブ性及び耐油性の評価を行ない、その評価結果を下記表1に併せて示す。
【0093】
【表1】
【0094】
かかる表1の結果からも明らかなように、本発明の如く、特定の着色剤と、少なくとも一種以上の重合性化合物とを含む重合性組成物の重合体よりなるコンタクトレンズにあっては、着色剤がレンズ外へ容易に溶出乃至は析出するものでないことが、認められる。
【0095】
−実施例9〜実施例16、比較例3、比較例4−
下記表2に示す配合組成に従い、コンタクトレンズに着色するためのインク組成物を10種類、調製した。その一方、2種類のコンタクトレンズ用の重合性組成物を調製し、かかる重合性組成物を、コンタクトレンズ形状を有するポリプロピレン製の鋳型(直径:約14mm、厚さ0.1mmのコンタクトレンズに対応)内に注入し、次いで、この鋳型に対して紫外線を20分間、照射し、重合性組成物の光重合を実施して、コンタクトレンズの前駆体を得た。下記表2に示すインク組成物及びレンズ前駆体の組合せにおいて、レンズ前駆体の外面側表面に、ドットで構成された所定のパターンを形成するように、ピエゾ式インクジェット印刷装置を用いてインク組成物を印刷(塗布)した。かかる印刷(塗布)の後、レンズ前駆体を、約90℃で15秒間、加熱し、インク組成物をレンズ前駆体に浸透させた。その後、レンズ前駆体を生理食塩水中に浸漬せしめることにより、外面側表面に所定のパターンが印刷されてなる含水性コンタクトレンズを10種類、得た(実施例9〜実施例16、比較例3、比較例4)。得られた各レンズの外観を目視で観察し、その結果を下記表2に併せて示す。また、各レンズについて、耐オートクレーブ性及び耐油性の評価を行ない、その評価結果を下記表2に併せて示す。
【0096】
【表2】
【0097】
かかる表2の結果からも明らかなように、本発明の如く、少なくとも一種以上の重合性化合物を含む重合性組成物の重合体よりなるレンズ前駆体を、特定の着色剤を含むインク組成物にて着色せしめてなるコンタクトレンズにあっては、着色剤がレンズ外へ容易に溶出乃至は析出するものでないことが、認められたのである。
【手続補正書】
【提出日】2016年6月24日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(b)〜(d)で表わされる着色剤のうちの何れか一種以上を含む
シリコーンハイドロゲルレンズ。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項2】
前記着色剤と、少なくとも一種以上の重合性化合物とを含む重合性組成物の重合体よりなる請求項1に記載のシリコーンハイドロゲルレンズ。
【請求項3】
複数のドットで構成されるパターンを有し、該複数のドットの各々が、前記構造式 (b)〜(d)で表わされる着色剤のうちの何れか一種以上にて構成されている請求項1又は請求項2に記載のシリコーンハイドロゲルレンズ。
【請求項4】
下記構造式(b)〜(d)で表される着色剤のうちの何れか一種以上と、水溶性有機溶媒とを含む液状のインク組成物を調製する工程と、
少なくとも一種以上の重合性化合物を含む重合性化合物の重合体よりなる、乾燥状態のシリコーンハイドロゲルレンズ前駆体を準備する工程と、
前記シリコーンハイドロゲルレンズ前駆体の表面に、前記液状のインク組成物からなる複数の液滴を噴霧することにより、該液滴を付着せしめる工程と、
前記液滴が付着したシリコーンハイドロゲルレンズ前駆体を加熱し、該液滴中の着色剤を該シリコーンハイドロゲルレンズ前駆体の内部に浸透させることにより、該着色剤からなる複数のドットにて構成されるパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成されたシリコーンハイドロゲルレンズ前駆体に水和処理を施す工程と、
を有するシリコーンハイドロゲルレンズの製造方法。
【化4】
【化5】
【化6】
【請求項5】
前記水溶性有機溶剤が、少なくともN−メチル−2−ピロリドンを含む請求項4に記載のシリコーンハイドロゲルレンズの製造方法。
【請求項6】
前記液滴が付着したシリコーンハイドロゲルレンズ前駆体の加熱が、90〜130℃の加熱温度にて5秒〜30秒間、実施される請求項4又は請求項5に記載のシリコーンハイドロゲルレンズの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
シリコーンハイドロゲルレンズ及びその製造方法に係り、特に、着色された
シリコーンハイドロゲルレンズ、並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンタクトレンズを始めとする種々の眼用レンズについて、その全体乃至は一部が着色されたものが要求されており、その需要は高まる傾向にある。
【0003】
そのような着色された眼用レンズは、現在、様々な手法にて製造されているところ、例えば、レンズポリマーの重合段階で着色剤を使用する方法が広く知られている。かかる手法は、具体的に、レンズポリマーを形成する重合性組成物に、重合性色素や高分子色素等の着色剤を配合し、そのような着色剤を含む重合性組成物を重合せしめ、必要に応じて得られた重合体を加工等することにより、目的とする眼用レンズを製造する方法である。そのようにして得られた眼用レンズにあっては、着色剤の溶出等に起因する脱色や変色等が見られず、また、光や化学薬剤に対する耐久性乃至は堅牢性にも優れたものとなるのである。
【0004】
また、眼用レンズの全体ではなく、その一部についてのみ着色する場合には、所定の着色剤を含む液状のインク組成物を用いて、スクリーン印刷やインクジェット印刷等の印刷手法によって、眼用レンズの表面にインク組成物を付着させ、かかるインク組成物をレンズ内に浸透させることによってレンズを着色する方法も、広く知られている。
【0005】
このような状況の下、特許文献1(特開2010−97225号公報)においては、眼用レンズの着色剤として、重合可能な官能基をアゾ色素からなる新規なものが提案されている。また、特許文献2(国際公開第2009/044853号)においては、レンズポリマーを形成する重合性組成物に、アゾ色素とポリジメチルシロキサンを予め重合させたものを配合し、そのような重合性組成物を重合せしめることによって眼用レンズを製造する方法が、明らかにされている。
【0006】
重合性色素や高分子色素については、上記した特許文献以外においても種々、提案されており、それら従来の重合性色素や高分子色素の多くは、レンズ内からの溶出が効果的に抑制されるものであったり、また、光や化学薬剤に対する耐久性等に優れたレンズを製造可能なものとなっている。
【0007】
しかしながら、従来の重合性色素は、その分子内に重合性基を有することに起因して、保存安定性に劣るものが多い。また、重合性色素は、一般に、その製造工程において重合性基を付与する工程が必要となり、その製造が煩雑になるという問題をも内在している。一方、高分子色素は、重合性色素や非重合性色素に高分子量の物質を予め重合させてなるものであるところ、そのような高分子色素にあっても、先述した重合性色素と同様に、その製造が煩雑であるという問題を内在している。加えて、色素を高分子化すると、色素のモル吸光度の低下を招く恐れがあり、眼用レンズにおいて所望とする着色度合を発現させるためには、高分子色素の使用量を増やさざるを得ないこととなり、眼用レンズの物性に悪影響を与える恐れがある。更にまた、従来の高分子色素にあっては、その分子の大きさ等に起因して、レンズポリマーに浸透し難いものであり、例えば、インク組成物を調製し、このインク組成物をインクジェット印刷等により眼用レンズの表面に付着させても、レンズ内に効果的に浸透しない恐れがある、との問題を有しているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−97225号公報
【特許文献2】国際公開第2009/044853号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、着色剤の溶出が効果的に抑制される
シリコーンハイドロゲルレンズを提供することにある。
また、本発明は、着色剤の溶出が効果的に抑制されるシリコーンハイドロゲルレンズを、有利に製造することが出来る方法を提供することも、その解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明は、かかる課題を解決すべく、
下記構造式(b)〜(d)で表わされる着色剤のうちの何れか一種以上を含む
シリコーンハイドロゲルレンズを、その要旨とするものである。
【化1】
【化2】
【化3】
【0011】
なお、本発明に従う
シリコーンハイドロゲルレンズの、好ましい第一の態様においては、前記着色剤と、少なくとも一種以上の重合性化合物とを含む重合性組成物の重合体よりなるものである。
【0012】
また、本発明に従う
シリコーンハイドロゲルレンズの、好ましい第二の態様においては、
複数のドットで構成されるパターンを有し、該複数のドットの各々が、前記構造式 (b)〜(d)で表わされる着色剤のうちの何れか一種以上にて構成されている。
【0013】
一方、本発明は、1)上記した構造式(b)〜(d)で表される着色剤のうちの何れか一種以上と、水溶性有機溶媒とを含む液状のインク組成物を調製する工程と、2)少なくとも一種以上の重合性化合物を含む重合性化合物の重合体よりなる、乾燥状態のシリコーンハイドロゲルレンズ前駆体を準備する工程と、3)前記シリコーンハイドロゲルレンズ前駆体の表面に、前記液状のインク組成物からなる複数の液滴を噴霧することにより、該液滴を付着せしめる工程と、4)前記液滴が付着したシリコーンハイドロゲルレンズ前駆体を加熱し、該液滴中の着色剤を該シリコーンハイドロゲルレンズ前駆体の内部に浸透させることにより、該着色剤からなる複数のドットにて構成されるパターンを形成する工程と、5)前記パターンが形成されたシリコーンハイドロゲルレンズ前駆体に水和処理を施す工程と、を有するシリコーンハイドロゲルレンズの製造方法をも、その要旨とするものである。
【0014】
なお、本発明に従うシリコーンハイドロゲルレンズの製造方法の、好ましい第一の態様においては、前記水溶性有機溶剤が、少なくともN−メチル−2−ピロリドンを含む。
【0015】
また、本発明に従うシリコーンハイドロゲルレンズの製造方法の、好ましい第二の態様においては、前記液滴が付着したシリコーンハイドロゲルレンズ前駆体の加熱が、90〜130℃の加熱温度にて5秒〜30秒間、実施される。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明に従う
シリコーンハイドロゲルレンズにあっては、特定の構造を有する着色剤を含むものである。従って、例えば、そのような着色剤を含む重合性組成物を重合して得られる
シリコーンハイドロゲルレンズや、かかる着色剤を含むインク組成物を用いて着色されてなる
シリコーンハイドロゲルレンズにあっては、着色剤の構造に起因して、レンズ外への着色剤の溶出が効果的に抑制されたものとなるのである。
【0017】
また、本発明で用いられる着色剤は、従来の重合性色素や高分子色素と比較して、重合性基の付与や高分子化等の特別の操作が不要なものである。従って、本発明の
シリコーンハイドロゲルレンズは、従来の重合性色素等を使用して
シリコーンハイドロゲルレンズを製造する場合と比較すると、比較的簡易に製造することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ところで、本発明に従う
シリコーンハイドロゲルレンズは、着色剤として
下記構造式(b)〜(d)で表わされる化合物のうちの何れか一種以上を含むものである。そのような特定の構造を有する化合物を着色剤として用いることにより、本発明の
シリコーンハイドロゲルレンズにあっては、レンズ外への着色剤の溶出が効果的に抑制されたものとなっているのである。尚、以下の記載において、眼用レンズとは、最終製品として眼用レンズは勿論のこと、重合後の、水和処理や表面処理等が施されていない状態のものをも含むものである。また、重合後の、水和処理や表面処理等が施されていない状態の眼用レンズを、特に眼用レンズ前駆体と表現する。
【化4】
【化5】
【化6】
【0019】
このような構造を有する、本発明の
シリコーンハイドロゲルレンズにて使用される着色剤は、従来より公知の方法により、合成することが可能である。本発明にて用いられる着色剤は、例えば、以下の手法に従って合成される。
【0020】
先ず、所定のニトロ基含有化合物(出発物質)中のニトロ基を、従来より公知の手法に従って還元し、得られる還元物と、酸無水物、酸クロライド又はモノイソシアネートとを反応させて、カップラーを合成する。
【0021】
ここで、出発物質として使用されるニトロ基含有化合物としては、3−ヒドロキシ−3’−ニトロ−2−ナフトアニリド(慣用名:ナフトールAS−BS)、3−ヒドロキシ−7−メトキシ−N−(3−ニトロフェニル)ナフトアミド、6−ヒドロキシ−N−(3−ニトロフェニル)ナフトアミド、1−ヒドロキシ−N−(3−ニトロフェニル)ナフトアミド、6−ヒドロキシ−N−(2−ニトロフェニル)−2−ナフトアミド等のN−ニトロフェニル−ヒドロキシ−ナフトアミド類似体等を、例示することが出来る。また、それらN−ニトロフェニル−ヒドロキシ−ナフトアミド類似体の還元は、例えば、鉄触媒の存在下において、N−ニトロフェニル−ヒドロキシ−ナフトアミド類似体と濃塩酸とを反応させることにより、実施可能である。
【0022】
また、ニトロ基含有化合物(出発物質)の還元物と反応せしめられる酸無水物としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物やイソ酪酸無水物等を例示することが出来る。また、出発物質の還元物と反応せしめられる酸クロライドとしては、一般式:RCOCl(但し、Rは炭素数が2〜17のアルキル基である。)で表わされる化合物、より具体的には、プロピオン酸クロライド、バレリル酸クロライドやステアリン酸クロライド等の他、o−トルイル酸クロライドやm−トルイル酸クロライド等を例示することが出来る。更に、出発物質の還元物と反応せしめられるモノイソシアネートとしては、メチルイソシアネート、n−ブチルイソシアネート、オクタデカイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネートやフェニルイソシアネート等を、例示することが出来る。
【0023】
上述の如くしてカップラーを準備する一方で、所定のアミンを、酸性水溶液(例えば塩酸)中にて亜硝酸塩等と作用させることにより、ジアゾニウム塩を合成する。ここで使用されるアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノトリフェニルアミン、4−アミノジフェニルアミンや4,4’、4’’−トリアミノトリフェニルアミン等を、例示することが出来る。
【0024】
そして、得られたカップラーとジアゾニウム塩とを反応させることにより、目的とする着色剤が得られるのである。
【0025】
上述した手法に従って製造される着色剤としては、例えば、下記構造式(a)〜(o)で示される化合物を挙げることが出来る。
これらの中でも、本発明においては、下記構造式(b)〜(d)で示される化合物のうちの一種以上が用いられる。
【0041】
ところで
、着色剤を含
む眼用レンズは、従来より公知の種々の方法に従って製造することが可能である。例えば、以下に詳述する方法に従って、本発明の
シリコーンハイドロゲルレンズを有利に製造可能である。
【0042】
A.着色剤を含む重合性組成物を用いる製造方法
この方法は、着色剤と、少なくとも一種以上の重合性化合物を含む重合性組成物を重合せしめ、必要に応じて水和処理や表面処理等を施すことにより、目的とする眼用レンズを製造する方法である。
【0043】
かかる製造方法においては、先ず、重合性組成物が調製される。重合性組成物の調製に際して用いられる各成分は、眼用レンズを製造する際に従来より使用されている各種の成分の中から、目的とする眼用レンズに応じたものが適宜に選択され、使用されることとなる。重合性組成物の調製に際して使用される成分としては、疎水性モノマー、親水性モノマーや架橋剤等を、例示することが出来る。
【0044】
より具体的に、疎水性モノマーとしては、従来より眼用レンズ材料に使用されているシリコン含有モノマーやフッ素含有アルキル(メタ)アクリレート等を、挙げることが出来る。シリコン含有モノマーは、眼用レンズの酸素透過性を有利に向上せしめるものである。また、フッ素含有アルキル(メタ)アクリレートは、眼用レンズにおける酸素透過性の一つの要因である、レンズ(重合体)への酸素の溶解性を向上せしめると共に、レンズ表面の粘着性(タック)を低減し、また、その疎水性及び疎油性によって、脂質等の付着を効果的に防止し、レンズの耐汚染性を向上せしめるものである。なお、本明細書における「・・(メタ)アクリレート」なる表記は、「・・アクリレート」及び「・・メタクリレート」を含む総称として用いられていることが、理解されるべきである。
【0045】
前述のシリコン含有モノマーとしては、特に、ウレタン結合を介してエチレン型不飽和基およびポリジメチルシロキサン構造を有するシリコン含有モノマーが、有利に用いられる。また、そのようなシリコン含有モノマーと共に、或いは、かかるシリコン含有モノマーに代えて、ペンタメチルジシロキシメチル基、ビス(トリメチルシロキシ)(メチル)シリルメチル基、ビス(トリメチルシロキシ)(メチル)シリルプロピル基、トリス(トリメチルシロキシ)シリルメチル基、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル基等が、(メタ)アクリレートやスチレン等に導入された、シロキサニル(メタ)アクリレートや、シロキサニルスチレン等の、一般的なシリコン含有モノマーであっても、本発明において使用することが可能である。そのような一般的なシリコン含有モノマーの中では、ビス(トリメチルシロキシ)(メチル)シリルプロピル(メタ)アクリレートや、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレートが、精製の容易さ、酸素透過性、入手のし易さ、相溶性等の点から、特に好適に用いられる。
【0046】
また、フッ素含有アルキル(メタ)アクリレートとしては、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロドデシル)エチル(メタ)アクリレート等を、例示することが出来る。このようなフッ素含有アルキル(メタ)アクリレートの中でも、特に、フッ素部分が大きなもの程、より優れた酸素透過性を確保するために都合が良く、且つ、レンズを適度に軟らかくすることが出来るところから、より好適に採用され得ることとなる。そのようなフッ素部分が大きなフッ素含有アクリル(メタ)アクリレートとしては、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの中でも、特に、(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレートは、市販され、減圧蒸留等で容易に精製し得るものであるところから、最も望ましいものである。
【0047】
一方、親水性モノマーとしては、N−ビニルピロリドン(NVP);アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のアクリルアミド系モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート;2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−ブチルアミノエチルアクリレート等の(アルキル)アミノアルキルアクリレート;エチレングリコールモノアクリレート、プロピレングリコールモノアクリレート等のアルキレングリコールモノアクリレート;ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート等のポリアルキレングリコールモノアクリレート;エチレングリコールアリルエーテル;エチレングリコールビニルエーテル;アクリル酸;アミノスチレン;ヒドロキシスチレン;酢酸ビニル;グリシジルアクリレート;アリルグリシジルエーテル;プロピオン酸ビニル;N−ビニル−3−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4,4−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4,6−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5,7−トリメチル−2−カプロラクタム等のN−ビニルラクタム;N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルフタルイミド等のN−ビニルアミド等を、例示することが出来る。これらの中でも、特に、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のアクリルアミド系モノマーや、N−ビニルピロリドン(NVP)等の窒素含有化合物が、有利に用いられる。
【0048】
加えて、架橋剤は、眼用レンズの機械的強度や形状安定性等の向上を目的として、必要に応じて添加されるものであ。例えば、使用する疎水性モノマーが、1分子中に多数の重合性基を有するものである場合には、架橋剤が必要とされることは少ないが、重合性基の少ない疎水性モノマーを用いる場合や、疎水性モノマーの使用量が少ない場合等には、眼用レンズの形状安定性や強度、耐久性等が問題となる恐れがあるところから、適当な架橋剤を使用することが望ましい。
【0049】
そのような架橋剤としては、重合性基を2つ以上有する、従来から眼用レンズに使用されている公知の各種架橋剤であれば、何れも使用可能である。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールの(メタ)アクリレート;アジピン酸ジビニル、アジピン酸ジアリル、アジピン酸アリルエステルビニルエステル、セバシン酸ジビニル、セバシン酸ジアリル、セバシン酸アリルエステルビニルエステル、その他、蓚酸、マロン酸、マレイン酸、メチルマロン酸、琥珀酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、メチル琥珀酸、グルタル酸、ジメチル琥珀酸、イソプロピルマロン酸、メチルグルタル酸、メチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ジ−n−プロピルマロン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,3−フェニレンジ酢酸、フェニル琥珀酸、ベンジルマロン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の多塩基カルボン酸のビニルエステルやアリルエステル(多塩基カルボン酸の全てのカルボキシル基がエステル化(完全エステル化)しているものが、溶解性の面から、より望ましい);ジビニルベンゼン;トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート;ジエチレングリコールビスアリルカーボネート;トリメリット酸トリアリル;アリルエーテル;アルキレングリコール若しくはポリアルキレングリコールのジアリルエーテル;アルキレングリコール若しくはポリアルキレングリコールのジビニルエーテル;アルキレングリコール若しくはポリアルキレングリコールのアリルエーテルビニルエーテル;ジアリリデンペンタエリスリット;1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン等を、例示することが出来る。また、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、4−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、3−ビニルベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、2,2−ビス[p−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[m−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[o−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[p−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[m−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[o−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、1,4−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル]ベンゼン、1,2−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシヘキサフルオロイソプロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル]ベンゼン、1,3−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル]ベンゼン、1,2−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル]ベンゼン等も、使用することが出来る。このような従来より公知の架橋剤のうちの少なくとも1種以上のものが、適宜に選択されて用いられることとなる。
【0050】
なお、上述せる如き架橋剤は、前述したモノマー成分(疎水性モノマー及び親水性モノマー)を合計した100重量部に対して、0.05〜1重量部となる量的割合において、好ましくは0.1〜0.8重量部となる量的割合において、重合性組成物に配合されることが好ましい。けだし、架橋剤が必要な際に、架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋剤による充分な効果が得られず、含水後の眼用レンズにおいて必要とされる、円形等の形状保持性や適度な弾性等が得られなくなる恐れがあり、その一方で、配合量が多すぎると、重合体中に架橋点が多くなり過ぎて、眼用レンズが脆くなり、容易に破損する恐れがあるからである。
【0051】
眼用レンズを製造するに際しては、上記した疎水性モノマー等に加えて、補強剤や親水化剤、重合性紫外線吸収剤等を、必要に応じて、使用することが可能である。
【0052】
補強剤は、眼用レンズの機械的強度の調整を図るために添加されるものである。例えば、疎水性モノマーが、1分子中に多数の重合性基を有するものである場合には、疎水性モノマー自体が架橋効果を有することとなり、かかるモノマーによって、反発性に優れた眼用レンズが得られることとなるのであるが、一方で、そのような疎水性モノマーの架橋効果によって眼用レンズの強度が低下するような場合には、補強剤が使用されることが望ましいのである。
【0053】
ここにおいて、補強剤としては、従来より眼用レンズに使用されている公知の各種の補強剤であれば、何れも使用することが可能である。具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸アリル等の有機カルボン酸のビニルエステルやアリルエステル、(メタ)アクリル酸エステルやそのマクロモノマー、スチレン誘導体等を例示することが出来る。このような従来より公知の補強剤のうちの少なくとも1種が適宜に選択されて、用いられるのである。
【0054】
なお、上述せる如き補強剤の配合割合は、前述したモノマー成分(疎水性モノマー及び親水性モノマー)を合計した100重量部に対して、1〜20重量部となるような量的割合において、重合性組成物に配合されることが好ましい。けだし、そのような補強剤が用いられる際に、その配合割合が、モノマー成分の100重量部に対して1重量部未満である場合には、充分な補強効果が得られなくなる恐れがあり、その一方、20重量部を超える場合には、所望とする酸素透過性が得られ難くなったり、充分な含水率が得られなくなる恐れがあるからである。
【0055】
一方、親水化剤は、眼用レンズに親水性を付与するための成分であり、例えば、前述のモノマー成分を含有する重合性組成物を共重合して得られる眼用レンズが、所望とする含水率は達成されるものの、その表面の親水性乃至は水濡れ性が充分でなかったり、重合性モノマー同士の相溶性が不足したり、眼用レンズの弾性が大き過ぎたり、重合容器材料或いは成形容器材料との親和性が大き過ぎたりするような場合に、適宜に使用されることが望ましい。
【0056】
そのような親水化剤としては、従来から眼用レンズに使用されている公知の親水化剤であれば、何れも使用可能である。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等の多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;N−(メタ)アクリロイルモルホリン;N−(メタ)アクリロイルピペリジン;N−ビニルピペリドン;N−ビニル−N−メチルアセトアミド;N−ビニル−N−エチルアセトアミド;N−ビニル−N−メチルホルムアミド;N−メチル−α−メチレン−2−ピロリドン等を、例示することが出来る。これら従来より公知の親水化剤のうちの少なくとも1種が、適宜に選択されて、用いられる。
【0057】
なお、上述せる如き親水化剤の配合割合は、前述したモノマー成分(疎水性モノマー及び親水性モノマー)を合計した100重量部に対して、1〜30重量部となるような量的割合において、重合性組成物に配合される。けだし、親水化剤が必要な場合に、その配合割合が、前述したモノマー成分の100重量部に対して、1重量部未満である場合には、最終的に得られる眼用レンズにおいて充分な親水化効果を享受し得ない恐れがあり、その一方、配合割合が30重量部を超えると、モノマー同士の相溶性が悪化したり、所望とする酸素透過性が得られ難くなる恐れがあるからである。
【0058】
加えて、重合性紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−5−t−ブチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2’,4’−ジクロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2’−ヒドロキシ−3’−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合性紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール[HMEPBT]、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−3’−t−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−(2”−メタクリロイルオキシエトキシ)−3’−t−ブチルフェニル)−5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系重合性紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシメチル安息香酸フェニル等のサリチル酸誘導体系重合性紫外線吸収剤;2−シアノ−3−フェニル−3−(3’−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロペニル酸メチルエステル等を、挙げることが出来る。これらは単独で、又は2種以上を混合して、使用することが可能である。
【0059】
なお、上記の如き重合性紫外線吸収剤は、前述したモノマー成分(疎水性モノマー及び親水性モノマー)を合計した100重量部に対して、3質量部以下となるような量的割合において、重合性組成物に配合されることが好ましく、より好ましくは0.01〜2質量部となるような量的割合において、重合性組成物に配合される。重合性紫外線吸収剤の配合割合が3質量部を超えると、得られる眼用レンズの機械的強度等が低下する傾向にあり、また、重合性紫外線吸収剤の毒性も考慮すると、その配合量は少ない方が好ましいからである。
【0060】
かくして、上記した着色剤と、上記の如き各成分を含む重合性組成物を用いて、目的とする眼用レンズを得るには、調製した重合性組成物を、従来より公知の各種の重合法に従って共重合せしめることとなる。
【0061】
より具体的には、重合性組成物の重合手法としては、重合性組成物に熱重合開始剤を添加した後、室温〜約150℃の温度範囲にて徐々に、或いは段階的に加熱して重合せしめる方法(熱重合法)や、光重合開始剤(及び光増感剤)を重合性組成物に添加した後、適当な光線(例えば、紫外線等)を照射して、重合を行なう方法(光重合法)、更には、それら熱重合法と光重合法とを組み合わせて重合を行なう方法等、例示することが出来る。また、重合形式としては、塊状重合法を挙げることが出来るが、その他公知の各種の手法であっても、何等差し支えない。
【0062】
また、眼用レンズを成形する方法(加工方法)としては、特に限定されるものではなく、重合性組成物を適当な重合型内又は重合容器内に収容して、かかる重合型内又は重合容器内で重合を行ない、重合性組成物の重合体からなる、棒状、ブロック状、板状等のレンズ材料を得た後、切削加工、研磨加工等の機械的加工によって所望の形状に成形する切削加工法や、所望とする眼用レンズ形状を与える重合型を用意し、この重合型の成形キャビティ内に、所定の重合性モノマー組成物を収容して、型内で前記した重合成分の重合を行なって成形物を得る鋳型(モールド)法、更に必要に応じて、機械的に仕上げ加工を施すモールド法と切削加工法を組み合わせた方法等、当業者に従来から公知の各種の手法が、何れも採用可能である。上記した方法の中でも、特に、モールド法が、生産コストを効果的に低減せしめることが出来るところから、好適に採用されることとなる。
【0063】
なお、重合性組成物を熱重合法に従って重合せしめる場合、使用される熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシヘキサノエート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等を、例示することが出来る。これらの熱重合開始剤は単独で、又は2種以上を混合して、使用することが可能である。熱重合開始剤の使用量は、上記重合性組成物の全モノマー成分の100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0064】
また、熱重合法に際して、重合性組成物の加熱温度は、好ましくは50〜150℃であり、より好ましくは60〜140℃である。また、重合性組成物の加熱時間は、好ましくは10〜120分、より好ましくは20〜60分である。重合性組成物の加熱温度を50℃以上とすることで、重合時間の短縮化を図ることが出来、また、加熱時間を10分以上とすることによって、残留モノマー成分の低減を図ることが可能となる。一方、加熱温度を150℃以下とし、加熱時間を120分以下とすることによって、各モノマー成分の揮発を効果的に抑制することが出来る。
【0065】
一方、重合性組成物を光重合法に従って重合せしめる場合、使用される光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(TPO)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系光重合開始剤;メチルオルソベンゾイルベンゾエート、メチルベンゾイルフォルメート、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(HMPPO)、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、p−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、N,N−テトラエチル−4,4−ジアミノベンゾフェノン等のフェノン系光重合開始剤;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム;2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤;ジベンゾスバロン;2−エチルアンスラキノン;ベンゾフェノンアクリレート;ベンゾフェノン;ベンジル等を、例示することが出来る。これらの光重合開始剤は単独で、又は2種以上を混合して、使用することが可能である。また、光重合開始剤と共に光増感剤を用いてもよい。これら光重合開始剤及び光増感剤の使用割合は、上記重合性組成物の全モノマー成分の100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0066】
なお、光重合法にて重合性組成物を重合せしめる場合には、照射する光の波長域によって、使用する光重合開始剤の種類を選択する必要がある。光照度は、好ましくは0.1〜100mW/cm
2 の範囲内とされる。光重合を実施するに際しては、異なる照度の光を段階的に照射してもよく、また、光の照射時間は1分以上が好ましい。このような光照度及び照射時間とすることによって鋳型材料(又は重合容器材料)の劣化を防ぎつつ、重合性組成物を十分に硬化させることができる。さらに、光の照射と同時に、重合性組成物を加熱してもよく、これによって重合反応が促進され、容易に共重合体を形成することが可能ならしめられる。光重合に供される鋳型又は重合容器は、重合性組成物の重合(硬化)に必要な光を透過しうる材質である限り、特に限定されるものではないが、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリエステル等の汎用樹脂からなるものが好ましい。
【0067】
そして、上述の如き重合法に従うことにより、或いは、上記の重合法に従って得られた重合体に対して水和処理を施すことにより、目的とする眼用レンズが製造されるのである。なお、得られた眼用レンズに対して、生体に対する充分な安全性が確保されるように、滅菌処理等が適宜に実施されることは、言うまでもないところである。
【0068】
また、必要に応じて、上述せる如きモールド法や切削加工法等による成形加工の後に、乾燥状態又は含水状態の眼用レンズに対して、プラズマガスや紫外線、エキシマレーザー、電子線等による表面処理や、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアクリルアミド等の親水性剤による表面コーティングが実施されて、レンズ表面を親水性化せしめて、更に優れた水濡れ性を付与することも、有効である。
【0069】
B.着色剤を含むインク組成物を用いる製造方法
この方法では、着色剤を含むインク組成物を準備し、少なくとも一種以上の重合性化合物を含む重合性組成物の重合体よりなる眼用レンズ前駆体の所望とする部位に、別途準備したインク組成物を着色せしめることにより、目的とする眼用レンズを製造する方法である。
【0070】
かかる製造方法においては、先ず、着色剤を含むインク組成物が調製されるところ、かかる調製は、着色剤を各種溶媒に添加し、着色剤を溶解乃至は分散せしめることによって実施されることが好ましい。
【0071】
眼用レンズを製造するに際して、所定の着色剤を含むインク組成物を調製する際に用いられる溶媒は、着色剤を効果的に溶解乃至分散せしめることが可能なものであれば、如何なるものであっても使用可能である。特に、有機溶媒が好ましく、より好ましくは、80℃での蒸気圧が760mmHg以下の有機溶媒であり、最も好ましい溶媒は、80℃での蒸気圧が760mmHg以下であって、且つ、水溶性を示す有機溶媒である。この、80℃での蒸気圧が760mmHg以下であって、且つ、水溶性を示す有機溶媒を使用することにより、以下の効果を享受することが可能である。
1)有機溶媒の揮発性が低いために、経時変化や環境変化等によるインク組成物の成分変 化が生じ難くなり、例えば、調製から時間が経過したインク組成物をインクジェット式 印刷装置に用いた場合にあっても、かかる印刷装置における目詰まりの発生を効果的に 抑制し得る。
2)眼用レンズの中でも特に含水性コンタクトレンズは、通常、所望とする形状を呈する 重合体(レンズ前駆体)を作製後、かかるレンズ前駆体に対して水和処理を施して、前 駆体を膨潤させることによって製造されている。例えば、本発明に係るインク組成物を 用いて、レンズ前駆体に対して加熱を伴う印刷処理(着色処理)を施す場合、かかる加 熱の際に、揮発性の低い有機溶媒は、レンズ表面より揮発することなく、着色剤のレン ズ前駆体内へ浸透に大きく寄与する。また、加熱を伴う印刷処理(着色処理)後のレン ズ前駆体に対して、水和処理を施すと、かかる水和処理において、着色剤は溶出するこ となくレンズ前駆体内に止まる一方で、レンズ前駆体内に着色剤と共に浸透した有機溶 媒は、水和処理のための水と置換され、前駆体の外部へ効果的に排出されることとなり 、その結果、水和処理によって得られる含水性コンタクトレンズが、眼球に対して悪影 響を与える恐れがある有機溶媒が効果的に排除されるものとなる。
【0072】
上記の如き有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、リン酸トリエチル、プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、ε−カプロラクタム等を、例示することが出来、これらのうちの一種、又は二種以上のものを適宜に選択して、使用することが出来る。これらの中でも、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが好ましく、最も好ましくはN−メチル−2−ピロリドン及び/又は2−ピロリドンである。
【0073】
なお、本発明の
シリコーンハイドロゲルレンズを製造する際に使用されるインク組成物には、従来の眼用レンズ用インク組成物を調製する際に用いられる他の成分であっても、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、使用することが出来る。そのような成分としては、増粘剤を例示することが出来る。また、本発明に係る
シリコーンハイドロゲルレンズの製造に際して、使用されるインク組成物には、上述した着色剤以外にも、従来より公知の重合性の着色剤(重合性色素)を配合することが可能であり、重合性着色剤(重合性色素)を用いる場合には、重合性モノマーを併せて配合することが可能である。
【0074】
そのような重合性モノマーとしては、例えば、国際公開第2005/116728号の第15頁に例示された親水性モノマーや、国際公開第2004/063795号の第15頁、20〜21頁及び23〜24頁に例示されたピロリドン誘導体、N−置換アクリルアミド及び親水性モノマー等を、挙げることが出来る。
【0075】
より具体的に、重合性着色剤(重合性色素)と併用される重合性モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(アルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;エチレングリコールアリルエーテル;エチレングリコールビニルエーテル;(メタ)アクリル酸;アミノスチレン;ヒドロキシスチレン;酢酸ビニル;グリシジル(メタ)アクリレート;アリルグリシジルエーテル;プロピオン酸ビニル;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4,4−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4,6−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5,7−トリメチル−2−カプロラクタム等のN−ビニルラクタム;N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−エチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルフタルイミド等のN−ビニルアミド;1−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−n−プロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−i−プロピル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−i−プロピル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−n−ブチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−t−ブチル−3−メチレン−2−ピロリドン等の、重合性基がメチレン基であるピロリドン誘導体等を、例示することが出来る。なお、上記記載において、「・・(メタ)アクリレート」なる表記は「・・アクリレート」及び「・・メタクリレート」を含む総称として、また、「・・(メタ)アクリル・・」なる表記は「・・アクリル・・」及び「・・メタクリル・・」を含む総称として、各々、用いられていることが理解されるべきである。
【0076】
尤も、上述した着色剤及び有機溶媒のみから構成されるインク組成物であることが望ましい。けだし、上述した着色剤及び有機溶媒のみを用いてインク組成物を構成し、かかるインク組成物を、特に含水性コンタクトレンズに対して、後述する印刷処理(着色処理)に印刷(着色)すると、含水性コンタクトレンズ表面におけるインク組成物の残渣を効果的に低減することが可能となるからである。
【0077】
上記の如きインク組成物は、上述した各成分を用いて形成される各種の眼用レンズに対して使用可能であるが、特に、含水性コンタクトレンズに対して有利に適用可能である。
【0078】
そして、上記したインク組成物を用いて、例えば含水性コンタクトレンズに対して印刷処理(着色処理)を実施する場合には、有利には、以下の手順に従って実施される。
【0079】
先ず
、インク組成物を、乾燥状態(非膨潤状態)にある含水性コンタクトレンズの前駆体(レンズ前駆体)の表面に付着させる。インク組成物をレンズ前駆体の表面に付着させる方法としては、液状のインク組成物をレンズ前駆体表面に塗布する方法等、従来より公知の方法を使用することが可能である。特に、インク組成物をレンズ前駆体表面に塗布する方法としては、例えば、パッド印刷方法、スクリーン印刷方法、インクジェット式印刷装置を用いる方法等を、挙げることが出来る。これらの中で、所望の文字や数字、虹彩模様等の図形のパターン(以下、本段落において文字等と総称する。)を簡便に印刷できる観点から、インクジェット式印刷装置を用いることが特に好ましい。インクジェット式印刷装置は、液状のインク組成物を、非常に微細な液滴としてレンズ表面に噴霧するものであり、表面に着弾した液滴は一つのドットを形成し、このドットの集まりによって、所望とする文字等が形成される。一般に、小さなドットが高密度で集合してなる文字等は、鮮鋭なコントラストを与え、優れた視認性を発揮する。インクジェット式印刷装置にて印字、描画する際、液滴の大きさ、液滴が着弾する地点などは、コンピューター等によって正確に制御することが可能であり、コンピューターのプログラムを変更することによって、文字等の形や大きさを容易に変更することが可能である。このように、インクジェット式印刷装置を用いた塗布方法は、非常に生産性が高く、また一定した高品質の印刷ができるという優れた利点を有する。更に、インクジェット式印刷装置によれば、塗布される液滴が微細であり、レンズへ着弾した際の界面面積に比して液滴量が少ないので、より迅速に、レンズ前駆体に浸透し易くなる。従って、インクジェット式印刷装置は、上記した利点以外に、レンズ表面への着色剤の析出や残渣の発生をより低減させて、着色剤をレンズ内部へ浸透させることが可能ならしめられ、この点においても、非常に有利な方法である。
【0080】
なお、本発明の
シリコーンハイドロゲルレンズを製造するに際しては、従来より公知の各種インクジェット式印刷装置の何れであっても、使用することが可能である。代表的なインクジェット式印刷装置は、インク組成物供給系とピエゾ素子等の圧電素子を備えたノズルから構成された吐出装置とからなり、圧電素子に電圧を負荷することによって生じる振動で、インク組成物を微細な液滴として、ノズルから吐出する機構を有している。所望の液滴を吐出できるものである限り、何れのインクジェット式印刷装置であっても好適に用いることができる。なお、ノズルは、単一であっても、複数であっても構わない。
【0081】
インク組成物をレンズ前駆体の表面に付着するために要する時間は、インク組成物を接触させる方法や、印刷面積やその形状等によって変化することとなるが、例えば、インクジェット式印刷装置を用いる場合、通常、数秒〜10分程度である。
【0082】
次いで、インク組成物が付着せしめられたレンズ前駆体に対して、加熱処理が施される。この加熱処理によって、インク組成物を構成する着色剤及び溶媒が、効果的にレンズ前駆体内に浸透するのである。
【0083】
ここで、上記加熱処理は、90〜130℃の加熱温度において、好ましくは数秒〜1分程度の加熱時間にて、より好ましくは5〜30秒の加熱時間にて、実施することが好ましい。加熱温度が低すぎたり、加熱時間が短すぎると、加熱処理の効果を享受し得ない恐れがあり、その一方、加熱温度が高すぎたり、加熱時間が長すぎると、レンズ前駆体が変形、変質等する恐れがあるからである。なお、加熱処理は、コンタクトレンズの加熱方法として従来より公知の方法の何れかに従って、実施することが可能である。
【0084】
加熱処理が施されたレンズ前駆体に対しては、必要に応じて、レンズ内に侵入(浸透)した溶媒の除去処理が施される。尤も、上記したように、所定の有機溶媒を用いてインク組成物を構成することにより、この除去処理は不要である。
【0085】
そして、以上の処理が施されたレンズ前駆体に対して、従来と同様の手法に従って水和処理を施すことにより、着色された含水性コンタクトレンズが得られることとなるのである。また、上記の如き、所定の有機溶媒を含むインク組成物を用いた場合には、この水和処理の際に、着色剤は溶出することなくレンズ前駆体内に止まる一方で、レンズ前駆体内に着色剤と共に浸透した有機溶媒は、水和処理のための水と置換され、前駆体の外部へ効果的に排出されることとなる。
【0086】
以上の如くして得られ
る、本発明に従う
シリコーンハイドロゲルレンズにあっては、そこに含まれる着色剤が特定の構造を有しているところから、レンズ内からの着色剤の溶出が効果的に抑制されたものとなっているのである。
【実施例】
【0087】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0088】
なお、以下の記載において、略称にて示した各化合物は以下の通りである。
・着色剤A:上記構造式(a)で示される化合物
・着色剤B:上記構造式(b)で示される化合物
・着色剤C:上記構造式(c)で示される化合物
・着色剤D:上記構造式(d)で示される化合物
・マクロモノマー:国際公開第2004/063795号の第48、49頁に記載の 製造方法に従って得られる、ウレタン結合を介してエチレン型不 飽和基およびポリジメチルシロキサン構造を有するシリコン含有 モノマー
・TRIS:トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート
・2−MTA:2−メトキシエチルアクリレート
・N−VP:N−ビニルピロリドン
・AMA:アリルメタクリレート
・DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
・N−MMP:1−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン
・EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
・HMPPO:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
【0089】
また、以下の実施例及び比較例において得られた含水性コンタクトレンズ(シリコーンハイドロゲルレンズ)について、各々、以下の手法に従って、耐オートクレーブ性及び耐油性を評価した。
【0090】
−耐オートクレーブ性の評価−
試料としての含水性コンタクトレンズに対して、生理食塩水中にて、121℃で20分間の高圧蒸気滅菌処理を施した。実施例1〜実施例8及び比較例1、比較例2に係る各レンズについては、処理後のレンズ全体を肉眼で観察し、下記評価基準A−1に従い、評価した。一方、実施例9〜実施例16及び比較例3、比較例4に係る各レンズについては、処理後のレンズの外面側表面を肉眼で観察し、下記評価基準B−1に従い、評価した。
・評価基準A−1
○:褪色が認められない。
×:褪色が認められる。
・評価基準B−1
○:パターンのラインを明確に識別でき、視認性は良好である。
×:パターンのラインが不明確であり、視認性は不良である。
【0091】
−耐油性の評価−
試料としての含水性コンタクトレンズを、室温下、約2mLの眼脂成分(ワックスエステル)中に約24時間、浸漬せしめた。実施例1〜実施例8及び比較例1、比較例2に係る各レンズについては、浸漬後のレンズ全体を肉眼で観察し、下記評価基準A−2に従い、評価した。一方、実施例9〜実施例16及び比較例3、比較例4に係る各レンズについては、浸漬後のレンズの外面側表面を肉眼で観察し、下記評価基準B−2に従い、評価した。
・評価基準A−2
○:褪色が認められない。
×:褪色が認められる。
・評価基準B−2
○:パターンのラインを明確に識別でき、視認性は良好である。
×:パターンのラインが不明確であり、視認性は不良である。
【0092】
−実施例1〜実施例8、比較例1、比較例2−
下記表1に示す配合組成に従い、コンタクトレンズ用の重合性組成物を10種類、調製した。各組成物を、コンタクトレンズ形状を有するポリプロピレン製の鋳型(直径:約14mm、厚さ0.1mmのコンタクトレンズに対応)内に注入し、次いで、この鋳型に対して紫外線を20分間、照射することにより、重合性組成物の光重合を実施した。かかる重合の後、鋳型より、コンタクトレンズ形状を呈する重合体を取り出し、更に、重合体の表面に対して、二酸化炭素雰囲気下、プラズマ照射(出力:50W、圧力:100Pa)を実施し、表面処理を施した。そして、かかる表面処理後の重合体を、生理食塩水中に浸漬せしめることにより、全体が着色された含水性コンタクトレンズ(シリコーンハイドロゲルレンズ)を10種類、得た(実施例1〜実施例8、比較例1、比較例2)。得られた各レンズの外観を目視で観察し、その結果を下記表1に併せて示す。また、各レンズについて、耐オートクレーブ性及び耐油性の評価を行ない、その評価結果を下記表1に併せて示す。
【0093】
【表1】
【0094】
かかる表1の結果からも明らかなように、本発明の如く、特定の着色剤と、少なくとも一種以上の重合性化合物とを含む重合性組成物の重合体よりなるコンタクトレンズにあっては、着色剤がレンズ外へ容易に溶出乃至は析出するものでないことが、認められる。
【0095】
−実施例9〜実施例16、比較例3、比較例4−
下記表2に示す配合組成に従い、コンタクトレンズに着色するためのインク組成物を10種類、調製した。その一方、2種類のコンタクトレンズ用の重合性組成物を調製し、かかる重合性組成物を、コンタクトレンズ形状を有するポリプロピレン製の鋳型(直径:約14mm、厚さ0.1mmのコンタクトレンズに対応)内に注入し、次いで、この鋳型に対して紫外線を20分間、照射し、重合性組成物の光重合を実施して、コンタクトレンズの前駆体を得た。下記表2に示すインク組成物及びレンズ前駆体の組合せにおいて、レンズ前駆体の外面側表面に、ドットで構成された所定のパターンを形成するように、ピエゾ式インクジェット印刷装置を用いてインク組成物を印刷(塗布)した。かかる印刷(塗布)の後、レンズ前駆体を、約90℃で15秒間、加熱し、インク組成物をレンズ前駆体に浸透させた。その後、レンズ前駆体を生理食塩水中に浸漬せしめることにより、外面側表面に所定のパターンが印刷されてなる含水性コンタクトレンズを10種類、得た(実施例9〜実施例16、比較例3、比較例4)。得られた各レンズの外観を目視で観察し、その結果を下記表2に併せて示す。また、各レンズについて、耐オートクレーブ性及び耐油性の評価を行ない、その評価結果を下記表2に併せて示す。
【0096】
【表2】
【0097】
かかる表2の結果からも明らかなように、本発明の如く、少なくとも一種以上の重合性化合物を含む重合性組成物の重合体よりなるレンズ前駆体を、特定の着色剤を含むインク組成物にて着色せしめてなるコンタクトレンズにあっては、着色剤がレンズ外へ容易に溶出乃至は析出するものでないことが、認められたのである。
【国際調査報告】