特表-15016285IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年2月5日
【発行日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】脳機能改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20170210BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20170210BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170210BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20170210BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20170210BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20170210BHJP
   A61K 36/23 20060101ALI20170210BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20170210BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20170210BHJP
【FI】
   A61K31/192
   A61K33/06
   A61P43/00 121
   A61P25/28
   A61K33/00
   A61K36/82
   A61K36/23
   A61K36/185
   A23L1/30 A
   A23L1/30 B
   A23L1/30 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
【出願番号】特願2015-529605(P2015-529605)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2014年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-157324(P2013-157324)
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-99609(P2014-99609)
(32)【優先日】2014年5月13日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】303046934
【氏名又は名称】長谷川 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 亨
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD01
4B018MD04
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD09
4B018MD18
4B018MD23
4B018MD25
4B018MD54
4B018MD57
4B018MD59
4B018ME14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA18
4C086HA04
4C086HA18
4C086MA03
4C086MA06
4C086NA05
4C086ZA15
4C088AB12
4C088AB40
4C088MA08
4C088NA05
4C088ZA15
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA02
4C206DA21
4C206MA03
4C206MA06
4C206MA72
4C206NA05
4C206ZA15
(57)【要約】
ホモシステイン酸のレセプター(NMDAレセプター)への結合を阻害すると共に、ホモシステイン酸自体のレセプターへの結合能力を低下させて、ホモシステイン酸の毒性に由来する脳機能の低下を改善することのできる脳機能改善用組成物を提供する。0.3〜0.5重量部のけい皮酸誘導体化合物と、0.5〜0.7重量部の水素化カルシウム粉末と、を含有する脳機能改善用組成物とした。また、0.4〜0.6重量部の抹茶粉末と、0.4〜0.6重量部のココア粉末と、0.25〜0.35重量部のハイドロキシシリカ粉末と、0.9〜1.1重量部の日本山人参乾燥粉末とを更に含有させたことにも特徴を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.3〜0.5重量部のけい皮酸誘導体化合物と、0.5〜0.7重量部の水素化カルシウム粉末と、を含有する脳機能改善用組成物。
【請求項2】
0.3〜0.5重量部のアスコルビン酸及び/又は0.3〜0.5重量部のリコピンを含有させたことを特徴とする請求項1に記載の脳機能改善用組成物。
【請求項3】
0.4〜0.6重量部の抹茶粉末と、0.4〜0.6重量部のココア粉末と、0.25〜0.35重量部のハイドロキシシリカ粉末と、0.9〜1.1重量部の日本山人参乾燥粉末とを更に含有させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脳機能改善用組成物。
【請求項4】
前記けい皮酸誘導体化合物は、フェルラ酸、コーヒー酸、シナピン酸から選ばれるいずれか1つ、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の脳機能改善用組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項に記載の脳機能改善用組成物を含有させた補助食品。
【請求項6】
請求項1〜4いずれか1項に記載の脳機能改善用組成物を含有させた脳機能改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳機能改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会の到来にともない、高齢者の脳の変性疾患、特にアルツハイマー型、レヴィー小体認知症、パーキンソン病等に由来する脳機能の低下が広く問題視されつつある。
【0003】
このような脳の変性疾患に罹患し痴呆症を発症すると、ヒトの尊厳までも脅かされる深刻な事態を招く場合があることから、痴呆症の予防と治療の研究が、近年、精力的に進められている。
【0004】
しかしながら、痴呆症の発症の原因は不明な部分も多く残されており、医薬品の開発は勿論、治療法や予防法の開発も未だ確立していない。
【0005】
そのような現状の中、日々の食生活にて摂取することで、これらの疾患を予防したり改善できる脳機能改善用の組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
このような脳機能改善用組成物を含有する医薬品や飲食品によれば、ヒトが安全かつ日常的に手軽に摂取することができ、アルツハイマー病に代表される認知症などの脳神経疾患を効果的に改善できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2002−541194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のフェルラ酸を含有する組成物は、効果の点で未だ改良の余地が残されていた。
【0009】
神経変性疾患の研究に長年携わっている本発明者によれば、この従来の組成物では、フェルラ酸が、NMDA受容体に結合することによって神経細胞に毒性を及ぼすホモシステイン酸と拮抗することにより、僅かながらも脳機能の改善効果が生起されているものと考えている。
【0010】
しかしながら、上記従来のフェルラ酸を含有させた組成物は、神経細胞毒性を有する体内のホモシステイン酸自体の受容体への結合能力を奪うものではないため、未だ十分な脳機能改善効果を生起できるとは言い難い。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、ホモシステイン酸のレセプター(NMDAレセプター)への結合を阻害すると共に、ホモシステイン酸自体のレセプターへの結合能力を低下させて、ホモシステイン酸の毒性に由来する脳機能の低下を改善することのできる脳機能改善用組成物を提供する。
【0012】
また、本発明では、上記脳機能改善用組成物を含有させた補助食品や、脳機能改善剤についても提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る脳機能改善用組成物では、0.3〜0.5重量部のけい皮酸誘導体化合物と、0.5〜0.7重量部の水素化カルシウムと、を含有することとした。
【0014】
また、本発明に係る脳機能改善用組成物では、0.3〜0.5重量部のアスコルビン酸及び/又は0.3〜0.5重量部のリコピンを含有させたことにも特徴を有する。
【0015】
また、本発明に係る脳機能改善用組成物では、0.4〜0.6重量部の抹茶粉末と、0.4〜0.6重量部のココア粉末と、0.25〜0.35重量部のハイドロキシシリカ粉末と、0.9〜1.1重量部の日本山人参乾燥粉末とを更に含有させたことにも特徴を有する。
【0016】
また、本発明に係る脳機能改善用組成物では、前記けい皮酸誘導体化合物は、フェルラ酸、コーヒー酸、シナピン酸から選ばれるいずれか1つ、又はこれらの混合物であることにも特徴を有する。
【0017】
また、本発明に係る補助食品では、上記脳機能改善用組成物を含有させたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る脳機能改善剤では、上記脳機能改善用組成物を含有させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る脳機能改善用組成物では、0.3〜0.5重量部のけい皮酸誘導体化合物と、0.5〜0.7重量部の水素化カルシウム粉末と、を含有することとしたため、ホモシステイン酸のレセプター(NMDAレセプター)への結合を阻害すると共に、ホモシステイン酸自体のレセプターへの結合能力を低下させて、ホモシステイン酸の毒性に由来する脳機能の低下を改善することのできる脳機能改善用組成物を提供することができる。
【0020】
また、本発明に係る脳機能改善用組成物では、0.3〜0.5重量部のアスコルビン酸及び/又は0.3〜0.5重量部のリコピンを含有させたため、けい皮酸誘導体化合物と水素化カルシウム粉末とによるホモシステイン酸のレセプター結合阻害を更に助長することができる。
【0021】
また、本発明に係る脳機能改善用組成物では、0.4〜0.6重量部の抹茶粉末と、0.4〜0.6重量部のココア粉末と、0.25〜0.35重量部のハイドロキシシリカ粉末と、0.9〜1.1重量部の日本山人参乾燥粉末とを更に含有させることにより、新たな食味を有することで、継続的に日々摂取する場合、その患者の嗜好に合わせた脳機能改善用組成物を選択するに際し、新たなバリエーションを提供することができ、しかも、脳機能改善効果を助長することができる。
【0022】
また、本発明に係る脳機能改善用組成物では、前記けい皮酸誘導体化合物は、フェルラ酸、コーヒー酸、シナピン酸から選ばれるいずれか1つ、又はこれらの混合物とすることにより、より堅実な脳機能改善効果を生起させることができる。
【0023】
また、本発明に係る補助食品によれば、上記脳機能改善用組成物を含有させたため、ホモシステイン酸のレセプター(NMDAレセプター)への結合を阻害すると共に、ホモシステイン酸自体のレセプターへの結合能力を低下させて、ホモシステイン酸の毒性に由来する脳機能の低下を改善することのできる補助食品を提供することができる。
【0024】
また、本発明に係る脳機能改善剤によれば、上記脳機能改善用組成物を含有させたため、ホモシステイン酸のレセプター(NMDAレセプター)への結合を阻害すると共に、ホモシステイン酸自体のレセプターへの結合能力を低下させて、ホモシステイン酸の毒性に由来する脳機能の低下を改善することのできる脳機能改善剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る脳機能改善用組成物の効果確認結果を示した説明図である。
図2】本実施形態に係る脳機能改善用組成物の効果確認結果を示した説明図である。
図3】被験者のデータを示した説明図である。
図4】本実施形態に係る脳機能改善用組成物の効果確認結果を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、脳機能改善用組成物を提供するものであり、0.3〜0.5重量部のけい皮酸誘導体化合物と、0.5〜0.7重量部の水素化カルシウム粉末と、を含有する脳機能改善用組成物を提供するものである。
【0027】
本発明者は、アルツハイマー型、レヴィー小体認知症、パーキンソン病等の神経変性疾患の発症機序の一つとして、ホモシステイン酸の濃度上昇に伴うNMDAレセプターへの過剰結合が原因であると推測している。
【0028】
すなわち、体内に存在する過剰なホモシステイン酸が、NMDAレセプターに結合することで神経細胞の興奮が起こり、神経機能が障害を受け、神経細胞内にアミロイドタンパクが蓄積されることとなり、神経細胞が変性したり死に至ることとなる。
【0029】
前述のフェルラ酸を含有させた痴呆予防や治療に供する既知の組成物は、フェルラ酸がホモシステイン酸と拮抗してNMDAレセプターに結合することにより、ホモシステイン酸のNMDAレセプターへの結合を阻害することで、痴呆の予防や治療効果を生起させているものと考えられる。
【0030】
しかし、この従来の組成物は、フェルラ酸によりホモシステイン酸と拮抗させて、ホモシステイン酸のレセプターへの結合を阻害することはできたが、ホモシステイン酸自体のレセプターへの結合能力を低下させることはできていなかった。
【0031】
本実施形態に係る脳機能改善用組成物はこの点に着目し、水素化カルシウムを含有させることで、ホモシステイン酸自体のレセプターへの結合能力を低下させることとしている。
【0032】
この水素化カルシウムは、例えば末梢血中において、ホモシステイン酸のスルホ基と反応し、例えばノルバリンのようなスルホ基部分が改変又は脱落した物質(以下、スルホ基改変物質という。)に変化させてNMDAレセプターへの結合能力を低下させることを助長する役割を担うものである。
【0033】
これは、仮説の範囲内ではあるものの、水素化カルシウムが摂取され、体内の水分によってカルシウムがイオン化する際に水分子を還元して活性水素を発生させ、この活性水素がホモシステイン酸のスルホ基と反応しスルホ基改変物質に変化するものと考えられる。
【0034】
また、イオン化する際にカルシウム原子から放出された電子が、強い電子求引性を備えるホモシステイン酸のスルホ基と反応することで、ホモシステイン酸に比してNMDAレセプターへの結合能力が低い物質へ変化するのかも知れないと考えている。
【0035】
このように本実施形態に係る脳機能改善用組成物は、NMDAレセプターへの結合においてけい皮酸誘導体化合物とホモシステイン酸とを拮抗させると共に、神経毒性の高いホモシステイン酸をNMDAレセプターへの結合能力が低い物質へ変化させることにより、脳機能を改善させることとしている。
【0036】
水素化カルシウムは、ヒトや非ヒト動物が摂取可能なものであれば特に限定されるものではないが、特に、食品素材であるのが好ましい。このようなものとしては、例えば代表例として、サンゴカルシウム粉末等を挙げることができる。
【0037】
サンゴカルシウム粉末は、その粉末中約5%の割合で水素化カルシウムを含有しており、血中のホモシステイン酸の分解を助長する分解助長物質として機能させることができる。
【0038】
サンゴカルシウム粉末は、本実施形態に係る脳機能改善用組成物の摂取時に、後述のけい皮酸誘導体化合物の分散性を向上させる役割を果たす他、同サンゴカルシウム粉末中に含まれる水素化カルシウムによって発生する活性水素により、血中に存在するホモシステイン酸の硫酸基を分解して、前述のレセプターへの結合を阻止することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る脳機能改善用組成物中における水素化カルシウム粉末の含量は、けい皮酸誘導体化合物の含量を0.3〜0.5重量部とした場合、0.5〜0.7重量部とするのが望ましい。水素化カルシウム粉末の含量が0.5重量部を下回ると、ホモシステイン酸の効率的な分解を行うことができず、また、0.7重量部を上回ると食感が悪くなる可能性があるため好ましくない。水素化カルシウム粉末の含量を0.5〜0.7重量部とすることにより、食感が良く、ホモシステイン酸を効率的に分解することのできる脳機能改善用組成物とすることができる。例えば、前述のサンゴカルシウムを利用して脳機能改善用組成物中に水素化カルシウムを含有させる場合には、6〜10重量部のサンゴカルシウムを添加することで、サンゴカルシウム由来の水素化カルシウムを脳機能改善用組成物中に0.5〜0.7重量部存在させることができる。
【0040】
また、水素化カルシウムの添加量について更に付言すれば、脳機能改善用組成物に添加するけい皮酸誘導体化合物の約1.5倍量とすることができる。例えば、0.3〜0.5重量部のけい皮酸誘導体化合物を添加する場合、水素化カルシウム粉末は0.5〜0.7重量部とするのが望ましい。0.5重量部を下回るとホモシステイン酸の他の物質への変換能力が低下してしまうおそれがあるため好ましくない。また、0.7重量部を越えても、ホモシステイン酸の他の物質への変換能力向上への寄与は少ない。
【0041】
また、本実施形態に係る脳機能改善用組成物では、0.3〜0.5重量部のけい皮酸誘導体化合物を含有している。本明細書でいうけい皮酸誘導体化合物は、例えば、次に示す一般式で表される化合物である。
【化1】
【0042】
また、より限定的に言及するならば、けい皮酸誘導体化合物は、例えば、フェルラ酸、コーヒー酸、シナピン酸から選ばれるいずれか1つ、又はこれらの混合物とすることができる。
【0043】
フェルラ酸は、脳内の細胞表面に存在するホモシステイン酸受容体にホモシステイン酸が結合することを阻害する結合阻害物質として機能させるための物質であり、具体的には下記の化2に示すような構造を有する物質である。
【化2】
【0044】
本発明者は長年に亘る鋭意研究の結果より、ホモシステイン酸は、脳内の細胞に対し、NMDAレセプターを介して傷害を与え、細胞の機能を低下させたり破壊することにより、記憶障害などの脳機能の低下が惹起されると考えている。
【0045】
フェルラ酸は、このNMDAレセプターにホモシステイン酸が結合するのを拮抗阻害して、細胞が傷害されることを防止する。
【0046】
また、けい皮酸誘導体化合物は、例えば、化3に示すような構造を有するコーヒー酸とすることができる。コーヒー酸もまた、脳内の細胞表面に存在するホモシステイン酸受容体にホモシステイン酸が結合することを阻害する結合阻害物質として機能させるための物質である。
【化3】
【0047】
また、けい皮酸誘導体化合物は、例えば、化4に示すような構造を有するシナピン酸とすることができる。シナピン酸もまた、脳内の細胞表面に存在するホモシステイン酸受容体にホモシステイン酸が結合することを阻害する結合阻害物質として機能させるための物質である。
【化4】
【0048】
このように、本実施形態に係る脳機能改善用組成物では、水素化カルシウムの約2/3量のけい皮酸誘導体化合物、すなわち、0.3〜0.5重量部のけい皮酸誘導体化合物を含有させることにより、ホモシステイン酸と効率的に拮抗させて、脳機能の改善を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る脳機能改善用組成物では、0.3〜0.5重量部のアスコルビン酸及び/又は0.3〜0.5重量部のリコピンを含有させても良い。アスコルビン酸やリコピンは、スルホ基改変物質を生成するための活性水素の働きを助長することができ、ホモシステイン酸のレセプターへの結合阻害をより効果的に行うことができる。
【0050】
本発明者らの研究によれば、アスコルビン酸やリコピンを添加した脳機能改善用組成物は、これらを添加しない脳機能改善用組成物に比して、スルホ基改変物質の生成効率が7〜10倍に向上することが分かっている。
【0051】
また、本実施形態に係る脳機能改善用組成物では、0.4〜0.6重量部の抹茶粉末と、0.4〜0.6重量部のココア粉末と、0.25〜0.35重量部のハイドロキシシリカ粉末と、0.9〜1.1重量部の日本山人参乾燥粉末とを更に含有させても良い。
【0052】
抹茶粉末は、ホモシステイン酸の体外への排出を促進する排出促進物質として機能させるための物質である。
【0053】
本発明者の鋭意研究により、尿中に排出されるホモシステイン酸濃度が高い程、血中ホモシステイン酸濃度が低下すると共に、患者のMMSEスコアの向上が見られることが分かっており、ホモシステイン酸の体外への排出を促進させることで、脳機能の改善を促すようにしている。
【0054】
また、抹茶粉末は、後述するココア粉末と共に、けい皮酸誘導体化合物が有する独特の味をマスキングするマスキング助剤としての機能も有している。
【0055】
脳機能改善用組成物中における抹茶粉末の含量は、けい皮酸誘導体化合物の含量を0.3〜0.5重量部とした場合0.4〜0.6重量部とするのが好ましい。0.4重量部を下回ると顕著な利尿作用が見られなくなり、ホモシステイン酸の効率的な体外排出が行われなくなる可能性がある。また、けい皮酸誘導体化合物に対するマスキング効果も低減し、脳機能改善用組成物自体が飲みにくくなる可能性もある。一方、0.6重量部を上回っても、抹茶味が優位となって後述のココア粉末との味のバランスが崩れることとなり、けい皮酸誘導体化合物に対するマスキング効果は低下する。抹茶粉末を0.4〜0.6重量部とすることにより、ホモシステイン酸の効率的な排出を促しつつ、食味的に摂取しやすい脳機能改善用組成物とすることができる。
【0056】
ココア粉末は、ホモシステイン酸の代謝を促進する代謝促進物質として機能させるための物質である。具体的には、ココア粉末に含まれるピロロキノリンキノン(PQQ)が、ホモシステイン酸の代謝に関わるグルタミン酸デヒドロゲナーゼを活性化するために、代謝が促進される。
【0057】
脳機能改善用組成物中におけるココア粉末の含量は、けい皮酸誘導体化合物の含量を0.3〜0.5重量部とした場合0.4〜0.6重量部とするのが好ましい。0.4重量部を下回ると顕著な代謝促進作用が見られなくなり、ホモシステイン酸の効率的な代謝が行われなくなる可能性がある。また、けい皮酸誘導体化合物に対するマスキング効果も低減し、脳機能改善用組成物自体が飲みにくくなる可能性もある。一方、0.6重量部を上回っても、ココア味が優位となって前述の抹茶粉末との味のバランスが崩れることとなり、けい皮酸誘導体化合物に対するマスキング効果は低下する。ココア粉末を0.8〜1.2重量部とすることにより、ホモシステイン酸の効率的な代謝を促しつつ、摂取しやすい脳機能改善用組成物とすることができる。
【0058】
ハイドロキシシリカは、末梢血中の活性水素量を増やして、ホモシステイン酸のスルホ基改変物質への変換を更に効率的とする役割を果たす物質である。
【0059】
ハイドロキシシリカは、その結晶格子内に水素分子を吸蔵した構造を有する物質であり、末梢血中で水素を放出する能力を有する。この放出された水素は、同じく末梢血中のホモシステイン酸のスルホ基と反応することにより、ホモシステイン酸をスルホ基改変物質に変換させて、NMDAレセプターの興奮作用を低減させる。
【0060】
脳機能改善組成物中におけるハイドロキシシリカの含量は、水素化カルシウム粉末の添加量t1の約半分量(t1×1/2×0.8〜t1×1/2×1.2程度)、すなわち、0.5〜0.7重量部の水素化カルシウム粉末が添加されている脳機能改善組成物中、0.25〜0.35重量部のハイドロキシシリカ粉末を添加するのが望ましい。
【0061】
ハイドロキシシリカの含量が水素化カルシウム粉末の添加量t1×1/2×0.8(重量部)を下回るとホモシステイン酸のスルホ基改変物質への変換効率が低下するため望ましくない。また、水素化カルシウム粉末の添加量t1×1/2×0.8(重量部)を上回ってもホモシステイン酸のスルホ基改変物質への変換効率の向上効果が乏しく、むしろ経済的に好ましくない。ハイドロキシシリカの含量を水素化カルシウム粉末の添加量t1×1/2×0.8(重量部)〜t1×1/2×0.8(重量部)の範囲内、好ましくは、0.5〜0.7重量部の水素化カルシウム粉末が添加されている脳機能改善組成物中、0.25〜0.35重量部のハイドロキシシリカ粉末を添加することにより、経済的でありながら、ホモシステイン酸のスルホ基改変物質への変換効率をより向上させることができる。
【0062】
日本山人参乾燥粉末は、イヌトウキとも言われる植物の乾燥粉末であり、けい皮酸誘導体化合物によって副次的に生起される鎮静作用を緩和するためのものである。
【0063】
けい皮酸誘導体化合物は、比較的強い鎮静作用を生起するため、服用した者は眠気を催す場合がある。このような鎮静作用は、日常生活にて服用する場面においてしばしば問題となる場合がある。
【0064】
そこで、本実施形態に係る脳機能改善用組成物では、日本山人参乾燥粉末を含有させることにより、けい皮酸誘導体化合物によって誘発される鎮静作用を緩和して、日常生活においても気兼ねなく摂取できるものとしている。
【0065】
この日本山人参乾燥粉末は、脳機能改善用組成物中0.9〜1.1重量部添加するのが好ましい。0.9重量部を下回るとけい皮酸誘導体化合物に由来する鎮静作用の緩和効果が十分に発揮されない可能性があるため好ましくない。また、1.1重量部を上回っても、鎮静作用の緩和効果の更なる向上が見込めず、むしろ脳機能改善用組成物の製造コスト向上を招くため好ましくない。日本山人参乾燥粉末を、脳機能改善用組成物中0.9〜1.1重量部とすることにより、コストを抑制しつつも、けい皮酸誘導体化合物に由来する鎮静作用の緩和効果が十分に発揮できる脳機能改善用組成物とすることができる。
【0066】
このように、本実施形態に係る脳機能改善用組成物は、上述のような組成としているため、新たな食味を有しつつ、脳機能の改善を図ることのできる脳機能改善用組成物を提供することができる。
【0067】
また、脳機能改善用組成物は、補助食品の原料や、脳機能改善剤の原料として使用することもできる。
【0068】
本実施形態に係る脳機能改善用組成物は、粉体であっても良く、また、打錠した物であっても良い。前述の各原料は粉体としているが、脳機能改善用組成物とする際や、補助食品とする際、脳機能改善剤とする際には、各原料を粉体混合して得られる散剤として製品化しても良く、また、打錠成型を行っても良い。
【0069】
ここまで述べてきたように、本実施形態に係る脳機能改善用組成物によれば、0.3〜0.5重量部のけい皮酸誘導体化合物と、0.5〜0.7重量部の水素化カルシウム粉末と、を含有することとしたため、ホモシステイン酸のレセプター(NMDAレセプター)への結合を阻害すると共に、ホモシステイン酸自体のレセプターへの結合能力を低下させて、ホモシステイン酸の毒性に由来する脳機能の低下を改善することのできる脳機能改善用組成物を提供することができる。
【0070】
ところで、本実施形態に係る脳機能改善用組成物は、脳機能の改善を行うことができるものであるが、癌細胞の増殖抑制を行うことも可能である。すなわち、上述してきた脳機能改善用組成物は、癌細胞増殖抑制組成物としても使用することができる。
【0071】
本発明者の鋭意研究によれば、ホモシステイン酸は、癌化した細胞のNMDAレセプターに結合することにより、癌細胞の増殖を助長することを見出している。
【0072】
しかしながら、従来、癌細胞の増殖を抑制する組成物は種々提案されているものの、末梢血中において高濃度のホモシステイン酸が存在することに由来する癌細胞の増殖の加速化を抑制可能な組成物については提案されていない。
【0073】
この脳機能改善用組成物と同様の組成を備える癌細胞増殖抑制組成物によれば、癌細胞の増殖を効率的に抑制して、癌の治療機会の確保を行うことができる。
【0074】
以下、本実施形態に係る脳機能改善用組成物について、実験例を参照しつつ具体的に説明する。
【0075】
〔1.脳機能改善用組成物の調製及び検証試験(1)〕
まず、脳機能改善用組成物の調製を行った。なお、ここでは、後述する投与試験に供すべく、脳機能改善用組成物を含有させた補助食品の形態で調製を行った。
【0076】
脳機能改善用組成物は、けい皮酸誘導体化合物としてのフェルラ酸と水素化カルシウムを含む脳機能改善用組成物A1、けい皮酸誘導体化合物としてのコーヒー酸と水素化カルシウムを含む脳機能改善用組成物A2、けい皮酸誘導体化合物としてのシナピン酸と水素化カルシウムを含む脳機能改善用組成物A3の調製を行った。また、比較例として、規定含量以下のけい皮酸誘導体化合物としてフェルラ酸と水素化カルシウムとを含む比較組成物P1、規定含量以上のけい皮酸誘導体化合物としてのフェルラ酸と水素化カルシウムとを含む比較組成物P2も調製した。
【0077】
各組成物の調製について具体的に説明すると、脳機能改善用組成物A1は、0.3重量部に相当する5.607gのフェルラ酸と、8重量部に相当する149.533gのサンゴカルシウム粉末とに44.860gの賦形剤を添加して粉体混合し、200gのA1用粉体混合物を得た。次いで、同A1用粉体混合物をハードカプセルに200mgずつ封入して脳機能改善用組成物A1とした。
【0078】
脳機能改善用組成物A2は、0.3重量部に相当する5.607gのコーヒー酸と、8重量部に相当する149.533gのサンゴカルシウム粉末とに44.860gの賦形剤を添加して粉体混合し、200gのA2用粉体混合物を得た。次いで、同A2用粉体混合物をハードカプセルに200mgずつ封入して脳機能改善用組成物A2とした。
【0079】
脳機能改善用組成物A3は、0.3重量部に相当する5.607gのシナピン酸と、8重量部に相当する149.533gのサンゴカルシウム粉末とに44.860gの賦形剤を添加して粉体混合し、200gのA3用粉体混合物を得た。次いで、同A3用粉体混合物をハードカプセルに200mgずつ封入して脳機能改善用組成物A3とした。
【0080】
比較組成物P1は、0.2重量部に相当する3.738gのフェルラ酸と、8重量部に相当する149.533gのサンゴカルシウム粉末(水素化カルシウムとして0.6重量部に相当。)とに46.729gの賦形剤を添加して粉体混合し、200gのP1用粉体混合物を得た。次いで、同P1用粉体混合物をハードカプセルに200mgずつ封入して比較組成物P1とした。
【0081】
比較組成物P2は、1重量部に相当する18.692gのフェルラ酸と、8重量部に相当する149.533gのサンゴカルシウム粉末とに31.775gの賦形剤を添加して粉体混合し、200gのP2用粉体混合物を得た。次いで、同P2用粉体混合物をハードカプセルに200mgずつ封入して比較組成物P2とした。
【0082】
このようにして調製した脳機能改善用組成物A1〜A3及び比較用組成物P1、P2を用い、各組成物あたり被験者5人を割り当てて、脳機能の改善効果について検討を行った。なお、各組成物の投与は、1日3回、1回あたり4カプセルとし、10週に亘って行った。また、改善効果の検証は、N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)を用いた。このNMスケールは、50〜48点を正常、47〜43点を境界、42〜31点を軽度認知症、30〜17点を中等度認知症、16〜0点を重度認知症として評価するものである。また、投与開始前の状態において、各組成物に割り当てられた被験者のNMスケールの評価値には有意差は認められなかった。試験結果を図1に示す。
【0083】
図1からも分かるように、脳機能改善用組成物A1〜A3及び比較組成物P2において、投与開始前に比して投与終了時におけるNMスケールの評価点数が有意に上昇することが示された(P<0.01)。
【0084】
また、比較用組成物に着目すると、水素化カルシウムと規定含量以下のフェルラ酸とを含む比較組成物P1は、投与開始前と投与開始後のNMスケールの評価点数に有意差は認められなかった。
【0085】
また、水素化カルシウムと規定含量以上のフェルラ酸とを含む比較組成物P2は、投与開始前と投与開始後のNMスケールの評価点数に有意差が認められたものの、脳機能改善用組成物A1〜A3の結果と比較して有意差は認められず、けい皮酸誘導体化合物を過度に増量しても、評価点数の顕著な上昇は期待できないことが示唆された。
【0086】
これらの結果から、本実施形態に係る脳機能改善用組成物は、顕著な脳機能改善効果を有することが示された。
【0087】
〔2.脳機能改善用組成物の調製及び検証試験(2)〕
次に、本実施形態に係る脳機能改善用組成物について、アスコルビン酸やリコピン等の抗酸化物質を添加した場合の効果や、抹茶粉末とココア粉末とハイドロキシシリカ粉末と日本山人参乾燥粉末とを添加した場合の効果について検証を行った。
【0088】
具体的に本検証試験では、けい皮酸誘導体化合物としてのフェルラ酸と水素化カルシウムを含む脳機能改善用組成物Aと、脳機能改善用組成物Aにアスコルビン酸を含有させた脳機能改善用組成物B、脳機能改善用組成物Aにリコピンを含有させた脳機能改善用組成物C、脳機能改善用組成物Bにリコピンを含有させた脳機能改善用組成物D、脳機能改善用組成物Aに抹茶粉末とココア粉末とハイドロキシシリカ粉末と日本山人参乾燥粉末とを含有させた脳機能改善用組成物E、脳機能改善用組成物Bに抹茶粉末とココア粉末とハイドロキシシリカ粉末と日本山人参乾燥粉末とを含有させた脳機能改善用組成物Fとを調製した。
【0089】
脳機能改善用組成物Aの調製は、まず、0.4重量部に相当する7.477gのフェルラ酸と、8重量部に相当する149.533gのサンゴカルシウム粉末とに42.990gの賦形剤を添加して粉体混合し、200gのA用粉体混合物を得た。次いで、同A用粉体混合物をハードカプセルに200mgずつ封入して脳機能改善用組成物Aとした。
【0090】
脳機能改善用組成物Bは、0.4重量部に相当する7.477gのフェルラ酸と、8重量部に相当する149.533gのサンゴカルシウム粉末と、0.4重量部に相当する7.477gのアスコルビン酸とに35.513gの賦形剤を添加して粉体混合し、200gのB用粉体混合物を得た。次いで、同B用粉体混合物をハードカプセルに200mgずつ封入して脳機能改善用組成物Bとした。
【0091】
脳機能改善用組成物Cは、0.4重量部に相当する7.477gのフェルラ酸と、8重量部に相当する149.533gのサンゴカルシウム粉末と、0.4重量部に相当する7.477gのリコピンとに35.513gの賦形剤を添加して粉体混合し、200gのC用粉体混合物を得た。次いで、同C用粉体混合物をハードカプセルに200mgずつ封入して脳機能改善用組成物Cとした。
【0092】
脳機能改善用組成物Dは、0.4重量部に相当する7.477gのフェルラ酸と、8重量部に相当する149.533gのサンゴカルシウム粉末と、0.4重量部に相当する7.477gのアスコルビン酸と、0.4重量部に相当する7.477gのリコピンとに28.036gの賦形剤を添加して粉体混合し、200gのD用粉体混合物を得た。次いで、同D用粉体混合物をハードカプセルに200mgずつ封入して脳機能改善用組成物Dとした。
【0093】
脳機能改善用組成物Eは、0.4重量部に相当する7.477gのフェルラ酸と、8重量部に相当する149.533gのサンゴカルシウム粉末と、0.5重量部に相当する9.346gの抹茶粉末と、0.5重量部に相当する9.346gのココア粉末と、0.3重量部に相当する5.607gのハイドロキシシリカ粉末と、1重量部に相当する18.692gの日本山人参乾燥粉末とを粉体混合し、200gのE用粉体混合物を得た。次いで、同E用粉体混合物をハードカプセルに200mgずつ封入して脳機能改善用組成物Eとした。
【0094】
脳機能改善用組成物Fは、0.4重量部に相当する7.477gのフェルラ酸と、8重量部に相当する149.533gのサンゴカルシウム粉末と、0.4重量部に相当する7.477gのアスコルビン酸と、0.5重量部に相当する9.346gの抹茶粉末と、0.5重量部に相当する9.346gのココア粉末と、0.3重量部に相当する5.607gのハイドロキシシリカ粉末と、1重量部に相当する18.692gの日本山人参乾燥粉末とを粉体混合し、207.477gのE用粉体混合物を得た。次いで、同E用粉体混合物をハードカプセルに207.477mgずつ封入して脳機能改善用組成物Fとした。
【0095】
このようにして調製した脳機能改善用組成物A〜Fを用い、各組成物あたり被験者5人を割り当てて、脳機能の改善効果について検討を行った。なお、各組成物の投与は、1日3回、1回あたり4カプセルとし、10週に亘って行った。また、改善効果の検証は、N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)を用いた。また、投与開始前の状態において、各組成物に割り当てられた被験者のNMスケールの評価値には有意差は認められなかった。試験結果を図2に示す。
【0096】
図2からも分かるように、脳機能改善用組成物A〜Fにおいて、投与開始前に比して投与終了時におけるNMスケールの評価点数が有意に上昇することが示された(P<0.01)。
【0097】
また、アスコルビン酸やリコピン等の抗酸化物質を添加した組成物B〜D、Fは、抗酸化物質を添加していない組成物Aや組成物Eと比較して、評価点数の上昇傾向が見られた。
【0098】
また、抹茶粉末やココア粉末、ハイドロキシシリカ粉末、日本山人参乾燥粉末を添加した組成物Eは、これらを添加していない組成物Aと比較して評価点数の上昇傾向が見られた。
【0099】
これらの結果から、本実施形態に係る脳機能改善用組成物A〜Fは、顕著な脳機能改善効果を有することが示された。
【0100】
〔3.被験者規模を拡大した検証試験〕
次に、本実施形態に係る脳機能改善用組成物Eを用い、被験者規模を61名に拡大して、脳機能改善効果について検証を行った。被験者のデータを図3に示す。
【0101】
組成物の投与は、1日3回、1回あたり4カプセルとし、10週に亘って行った。また、改善効果の検証は、N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)を用いた。試験結果を図4に示す。
【0102】
図4からも分かるように、当該被験者群の投与開始前のNMスケールの評価点数は12.5±11.0であったが、投与終了時には28.3±13.1と有意な向上が認められた(p<0.001)。
【0103】
また、当該被験者群を重症患者群(N=40)と、中等度患者群(N=21)とに分けて統計解析を行ったところ、重症患者群の投与開始前のNMスケールの評価点数は5.5±4.1であったが、投与終了時には21.1±9.3と有意な向上が認められた(p<0.001)。付言すると、投与開始前ではNMスケールで重症に分類されていた患者群は、投与終了時にはNMスケールで中等度に分類されるまでに改善していた。
【0104】
また、中等度患者群の投与開始前のNMスケールの評価点数は25.9±7.0であったが、投与終了時には42.3±6.3と有意な向上が認められた(p<0.001)。すなわち、投与開始前ではNMスケールで中等度に分類されていた患者群は、投与終了時にはNMスケールで軽度〜境界に分類されるまでに改善していた。
【0105】
これらの結果から、本実施形態に係る脳機能改善用組成物は、様々な重症度の患者に対し脳機能改善効果を発揮することが示された。
【0106】
上述してきたように、本実施形態に係る脳機能改善用組成物は、0.3〜0.5重量部のけい皮酸誘導体化合物と、0.5〜0.7重量部の水素化カルシウム粉末と、を含有することとしたため、脳機能の低下を改善することのできる脳機能改善用組成物を提供することができる。また、同様の効果を生起可能な脳機能改善用組成物を含有させた補助食品や、脳機能改善剤についても提供することができる。
【0107】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】