(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年10月29日
【発行日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】親水性基を有する含フッ素共重合体および該共重合体を含む表面改質剤
(51)【国際特許分類】
C08F 220/28 20060101AFI20170331BHJP
C08F 220/24 20060101ALI20170331BHJP
C08F 2/48 20060101ALI20170331BHJP
C08F 2/38 20060101ALI20170331BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20170331BHJP
C08F 290/04 20060101ALI20170331BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20170331BHJP
C09D 127/12 20060101ALI20170331BHJP
C08J 7/04 20060101ALN20170331BHJP
【FI】
C08F220/28
C08F220/24
C08F2/48
C08F2/38
C08F8/30
C08F290/04
C09D4/02
C09D127/12
C08J7/04 LCER
C08J7/04CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
【出願番号】特願2016-515188(P2016-515188)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-92087(P2014-92087)
(32)【優先日】2014年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】市原 豊
【テーマコード(参考)】
4F006
4J011
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4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4F006AA35
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4J011SA21
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4J011SA63
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4J011UA01
4J011UA03
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4J100AL08P
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4J127BG071
4J127BG07X
4J127BG191
4J127BG19X
4J127CB371
4J127CC111
4J127FA08
4J127FA21
(57)【要約】
本発明は、樹脂、フィルム、繊維、ガラス、金属等の表面処理剤、表面改質剤等の分野で適度な親水性や平滑性の要求に対応できる、新規な含フッ素共重合体、すなわち、一般式AおよびCで表される(メタ)アクリレート化合物をモノマー単位として含む含フッ素共重合体であって、前記含フッ素共重合体は一般式(I)で表されるラジカル重合反応の連鎖移動剤の残基を含むことを特徴とする、含フッ素共重合体を提供する。Rfは特定のフッ素含有基を表す。
[化1]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一般式AおよびCで表される(メタ)アクリレート化合物をモノマー単位として含む含フッ素共重合体であって、前記含フッ素共重合体は一般式(I)で表されるラジカル重合反応の連鎖移動剤の残基を含むことを特徴とする、含フッ素共重合体:
【化1】
[式中、Rfは下記式(1)または(2)で示される基である。
【化2】
R
1は炭素原子数が2〜50の二価の基である。R
2はHまたはメチル基である。]
【化3】
[R
5はHまたはメチル基である。EOはエチレンオキシド基あり、nは繰り返し単位数であり2から20の整数である。R
6はHまたはメチル基である。]
【化4】
[R
7は炭素原子数が2〜10の二価または三価の炭化水素基である。Zは、COOHまたはOHを表し、xは1または2の整数である。]。
【請求項2】
さらに、下記一般式B:
【化5】
[R
3は、置換されていてもよい二価の基である。R
4は、Hまたはメチル基である。]
で表される(メタ)アクリレート化合物モノマー単位を含む、請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項3】
連鎖移動剤が下記一般式Dで表される、請求項1または2に記載の含フッ素共重合体:
【化6】
[R
8は炭素原子数が2〜10の二価または三価の炭化水素基である。Zは、COOHまたはOHを表し、xは1または2の整数である。]。
【請求項4】
共重合体中のフッ素含有量が質量で1%〜15%であることを特徴とする、請求項1〜3いずれかに記載の含フッ素共重合体。
【請求項5】
一般式B、Cで表される(メタ)アクリレート化合物の質量比が0.2≦B/C≦2の割合である請求項2〜4のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体。
【請求項6】
請求項1〜5いずれかに記載の含フッ素共重合体中の水酸基に対して、下記一般式Eで表されるイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させてなる、含フッ素共重合体。
【化7】
[式中、R
9は、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。R
10はHまたはメチル基を示す。yは、1または2の整数である。]。
【請求項7】
含フッ素共重合体を構成するモノマー単位のうち水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物のモル数をp、一般式Eで表される(メタ)アクリレート化合物のモル数をqとしたとき、そのモル比が0.01≦q/p≦0.8の割合であることを特徴とする請求項6に記載の含フッ素共重合体。
【請求項8】
前記含フッ素共重合体を含有する活性エネルギー線硬化型コート液を硬化して得られた硬化膜表面の水の接触角が、含フッ素共重合体未添加の場合の接触角よりも低いことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体を含有する表面改質剤。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体、多官能(メタ)アクリル化合物および光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型コート液。
【請求項11】
請求項10に記載の活性エネルギー線硬化型コート液を硬化して得られる硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、樹脂、フィルム、光学材料、塗料等の分野で用いられる、表面をより親水傾向に改質すると同時に、表面の平滑性にも優れる表面改質剤として使用可能な含フッ素共重合体もしくは反応性含フッ素共重合体、および該含フッ素共重合体もしくは反応性含フッ素共重合体を含有する表面改質剤、活性エネルギー線硬化型コート液、硬化膜に関する。
【0002】
本明細書において、含フッ素共重合体と反応性含フッ素共重合体を合わせて単に「含フッ素共重合体」と記載する場合がある。
【背景技術】
【0003】
樹脂、光学材料、塗料などの分野で用いられている塗工液には、塗膜に様々な特性を付与することを目的として各種添加剤が添加されている。平滑な表面状態を得るための添加剤として、炭化水素系、フッ素系、シリコーン系等の界面活性剤であるレベリング剤が使用されている。中でも、フッ素系または、シリコーン系レベリング剤は表面平滑性能が高く、広く一般的に使用されている。
【0004】
フッ素系あるいはシリコーン系の界面活性剤は表面張力低下能が高く、これらを含有する塗膜表面は撥水性を示す。これらの塗膜表面上に水溶性や水性の塗料などを塗布しようとした場合、ハジキの原因になり、塗工不良のため後加工しにくいという問題があった。一方、炭化水素系のレベリング剤はこのような塗工不良は起きにくいものの、表面平滑性能が低い。
【0005】
そこで、例えば特許文献1に示されるように、ハードコート塗液にイオン性界面活性剤を添加することにより、表面を親水化して塗工不良を改善する方法が提案されている。しかしながら、この方法では、樹脂組成物が本来有する硬度などの基本性能を阻害することがある。また、イオン性界面活性剤を添加したハードコート塗液の溶媒はメタノールであり、一般的にUV硬化ハードコートで使用されるケトン系、エステル系の有機溶媒には界面活性剤が十分に溶解しない場合がある。
【0006】
このような状況の中で、樹脂組成物が本来有する塗膜硬度などの基本性能を阻害することなく、表面を親水傾向にすることで後加工をし易くし、かつ平滑な表面状態が得られるレベリング性を有する表面改質剤が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−272503
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ガラス、樹脂、フィルム、光学材料、塗料等の表面をより親水傾向に改質すると同時に、表面の平滑性にも優れる表面改質剤として使用可能な含フッ素共重合体および表面改質剤を提供することを目的とする。また、これらを含有する活性エネルギー線硬化型コート液、硬化膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は、下記項1〜11の含フッ素共重合体、反応性含フッ素共重合体、表面改質剤、活性エネルギー線硬化型コート液、硬化膜を提供するものである。
【0010】
項1
少なくとも、一般式AおよびCで表される(メタ)アクリレート化合物をモノマー単位として含む含フッ素共重合体であって、前記含フッ素共重合体は一般式(I)で表されるラジカル重合反応の連鎖移動剤の残基を含むことを特徴とする、含フッ素共重合体:
【化1】
[式中、Rfは下記式(1)または(2)で示される基である。
【化2】
R
1は炭素原子数が2〜50の二価の基である。R
2はHまたはメチル基である。]
【化3】
[R
5はHまたはメチル基である。EOはエチレンオキシド基あり、nは繰り返し単位数であり2から20の整数である。R
6はHまたはメチル基である。]
【化4】
[R
7は炭素原子数が2〜10の二価または三価の炭化水素基である。Zは、COOHまたはOHを表し、xは1または2の整数である。]。
【0011】
項2
さらに、下記一般式B:
【化5】
[R
3は、置換されていてもよい二価の基である。R
4は、Hまたはメチル基である。]
で表される(メタ)アクリレート化合物モノマー単位を含む、項1に記載の含フッ素共重合体。
【0012】
項3
連鎖移動剤が下記一般式Dで表される、項1または2に記載の含フッ素共重合体:
【化6】
[R
8は炭素原子数が2〜10の二価または三価の炭化水素基である。Zは、COOHまたはOHを表し、xは1または2の整数である。]。
【0013】
項4
共重合体中のフッ素含有量が質量で1%〜15%であることを特徴とする、項1〜3いずれかに記載の含フッ素共重合体。
【0014】
項5
一般式B、Cで表される(メタ)アクリレート化合物の質量比が0.2≦B/C≦2の割合である項2〜4のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体。
【0015】
項6
項1〜5いずれかに記載の含フッ素共重合体中の水酸基に対して、下記一般式Eで表されるイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させてなる、含フッ素共重合体。
【化7】
[式中、R
9は、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。R
10はHまたはメチル基を示す。yは、1または2の整数である。]
【0016】
項7
含フッ素共重合体を構成するモノマー単位のうち水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物のモル数をp、一般式Eで表される(メタ)アクリレート化合物のモル数をqとしたとき、そのモル比が0.01≦q/p≦0.8の割合であることを特徴とする項6に記載の含フッ素共重合体。
【0017】
項8
前記含フッ素共重合体を含有する活性エネルギー線硬化型コート液を硬化して得られた硬化膜表面の水の接触角が、含フッ素共重合体未添加の場合の接触角よりも低いことを特徴とする項1〜7のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体。
【0018】
項9
項1〜8のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体を含有する表面改質剤。
【0019】
項10
項1〜8のいずれか1項に記載の含フッ素共重合体、多官能(メタ)アクリル化合物および光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型コート液。
【0020】
項11
項10に記載の活性エネルギー線硬化型コート液を硬化して得られる硬化膜。
【発明の効果】
【0021】
本発明の含フッ素共重合体は、樹脂、フィルム、繊維、ガラス、金属等の表面の水の接触角を低下させることができると同時に平滑性を付与することができる。従って、本発明の含フッ素共重合体はこれらの表面を親水傾向にし、表面平滑性を付与するための表面改質剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書中、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0023】
含フッ素共重合体
本発明の含フッ素共重合体は、一般式A、C、及び必要に応じてそれ以外の(メタ)アクリレート化合物(モノマー単位)をラジカル重合することにより得ることができる。ラジカル重合反応の際に一般式Dで表される連鎖移動剤を使用するため、本発明の含フッ素共重合体は主鎖の末端にCOOH基又はOH基を有する。
【0024】
一般式A、Cで表される(メタ)アクリレート化合物以外の(メタ)アクリレート化合物としては、一般式Bで表される(メタ)アクリレート化合物、一般式Fで表される(メタ)アクリレート化合物、またはそれらの化合物の2種以上を使用することが好ましい。一般式Bで表される(メタ)アクリレート化合物の使用は、親水性向上、一般式Eと反応して(メタ)アクリロイル基などの官能基を導入できる点で好ましい。一般式Fで表される(メタ)アクリレート化合物の使用は、親水性向上、樹脂組成物との相溶性の向上の点で好ましい。一般式Eで表される(メタ)アクリレート化合物の使用は、UV硬化樹脂との反応しうる基を導入できる点で好ましい。
【0025】
少なくとも一般式AおよびC等で表される(メタ)アクリレート化合物を含むモノマーを重合して得られる共重合体を本明細書では「含フッ素共重合体」と記載し、A、C等で表される(メタ)アクリレート化合物を含むモノマーを重合して得られる共重合体と一般式Eで表される(メタ)アクリレート化合物をさらに反応させて得られた共重合体は、アクリレート由来の反応性の炭素-炭素二重結合を含むので特に「反応性含フッ素共重合体」と記載することがある。
【0026】
共重合体中のフッ素含有量は、好ましくは質量で1%〜15%、より好ましくは、2〜14%、さらに好ましくは、3〜13%、よりさらに好ましくは4〜12%である。実用的には、より狭い範囲1〜10%、さらに狭い範囲2〜8%の含有量で使用することが可能である。
【0027】
含フッ素共重合体のフッ素含有量は、((フッ素原子量×全共重合体中のフッ素原子数)×100/全共重合体の質量)で表される。フッ素含有量が多すぎると、フッ素の効果により撥水撥油性が発現することで、親水性が発現しないため不適である。
【0028】
本発明の含フッ素共重合体における、一般式Aで表される(メタ)アクリレート化合物(「化合物A」ということもある)は、次式で表される。
【化8】
上記式中、Rfは下記式(1)または(2)で示される基である。
【化9】
【0029】
R
1は炭素原子数が2〜50、好ましくは2〜10の二価の基である。R
2はHまたはメチル基である。
R
1で表される炭素原子数が2〜50の二価の基としては、以下の基が挙げられる。
−(CH
2)
n1− (n1=2〜50)
−X−Y-(CH
2)
n2− (n2=2〜43)
−X−(CH
2)
n3− (n3=1〜44)
−CH
2CH
2(OCH
2CH
2)
n4− (n4=1〜24)
−XCO(OCH
2CH
2)
n5− (n5=1〜21)
(式中、Xは炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基を1〜3個有していてもよいフェニレン、ビフェニレンもしくはナフチレンを示す。Yは、-O-CO-、-CO-O-、−CONH−または−NHCO−を示す。)
【0030】
Xは1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレンが好ましく、1,4-フェニレンが特に好ましい。Yは、-CO-O-が好ましい。
【0031】
特に好ましいR
1で表される炭素原子数が2〜50の二価の基としては、具体的に以下の構造の二価の基が挙げられる。
−(CH
2)
n6− (n6=2〜10)
−C
6H
4OCO(CH
2)
n7− (n7=2〜10)
−C
6H
4(CH
2)
n8− (n8=1〜10)
−CH
2CH
2(OCH
2CH
2)
n9− (n9=1〜10)
−C
6H
4CO(OCH
2CH
2)
n10− (n10=1〜10)
【0032】
R
2はH又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。
【0033】
一般式Aで表される(メタ)アクリレート化合物は公知の方法により製造することができる。
【0034】
化合物Aの含有量は、全(メタ)アクリレート化合物の2〜30質量%、好ましくは4〜18質量%である。
【0035】
本発明の含フッ素共重合体における、一般式Cで表される(メタ)アクリレート化合物(「化合物C」ということもある)は、次式で表される。
【化10】
【0036】
R
5はHまたはメチル基である。EOはエチレンオキシド基あり、nは繰り返し単位数であり2から20である。R
6はHまたはメチル基である。
【0037】
(EO)
nは繰り返し単位数が2〜20のエチレンオキシド基を表し、エチレンオキシド基の繰り返し単位数は好ましくは4〜15である。
【0038】
一般式Cで表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。一般式Cで表される化合物の市販品として、日油(株)社製ブレンマーAE−90、日油(株)社製ブレンマーAE−200、日油(株)社製ブレンマーAE−400、日油(株)社製ブレンマーAME−90、日油(株)社製ブレンマーAME−200、日油(株)社製ブレンマーAME−400、日油(株)社製ブレンマーPE−350等が挙げられる。
【0039】
一般式Cで表される(メタ)アクリレート化合物におけるR
5がHの場合、一般式Cで表される(メタ)アクリレート化合物におけるR
5がメチルである化合物を併用することができる。併用する場合、R
5がメチルである化合物は、R
5がHの化合物と同量かそれ以下の量で使用することができる。
一般式Cで表される(メタ)アクリレート化合物におけるR
5がHの場合の化合物を、一般式Cで表される(メタ)アクリレート化合物として使用する場合、一般式Eで表される(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
【0040】
化合物Cの使用量は、化合物A 1質量部の使用量に対して2〜8質量部である。
【0041】
本発明の含フッ素共重合体における、共重合成分として一般式A、C以外の一般式B、Fで表される(メタ)アクリレート化合物およびそれらの2種以上の混合物を使用することができる。
【0042】
一般式Bで表される(メタ)アクリレート化合物(「化合物B」ということもある)は、次式で表される。
【化11】
【0043】
R
3は、置換されていてもよい二価の基である。R
4は、Hまたはメチル基である。
【0044】
一般式Bにおいて、R
3で表される炭素原子数が2〜50の二価の基としては、上記R
3で例示された二価の基が挙げられる。この二価の基の炭素数は、2〜30が好ましい。
【0045】
一般式Bで表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。一般式Bで表される化合物の市販品として、2−ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)社製、ライトエステルHO−250)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)社製、ライトエステルHOA)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)社製、4−HBA)等が挙げられる。
【0046】
本発明の含フッ素共重合体において、化合物Bを使用する場合、一般式B、Cで表される(メタ)アクリレート化合物の質量比は0.2≦B/C≦2の割合であり、特に好ましくは0.4≦B/C≦1である。
【0047】
一般式Fで表される(メタ)アクリレート化合物(「化合物F」ということもある)は、次式で表される。
【化12】
【0048】
上記式中、R
11はHまたは炭素原子数が1〜20の基である。R
12はHまたはメチル基である。
【0049】
一般式Fにおいて好ましい化合物の具体例としては、
メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクレート、エチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、ベンジルメタクリレート等、好ましくはメタクリル酸、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等、より好ましくはメタクリル酸が挙げられる。
化合物Fの使用量は、化合物A 1質量部に対して1〜4質量部の量を使用する。
【0050】
本発明の含フッ素共重体は、共重合反応の際に連鎖移動剤として、一般式Dで表されるチオール化合物(「化合物D」ということもある)を使用し、チオール化合物は次式で表される。
【化13】
【0051】
上記式中、R
8は炭素原子数が2〜10の二価または三価の炭化水素基である。Zは、COOHまたはOHを表し、xは1または2の整数である。
【0052】
一般式Dで表されるチオール化合物は、連鎖移動を起こすのであれば特に限定されない。R
8が二価のとき、R
8は好ましくはアルカンジイル基であり、このときxは1である。R
8が三価のとき、R
8は好ましくはアルカントリイル基であり、このときxは2である。
【0053】
好ましいR
8として、具体的に以下の構造の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
−(CH
2)
n11− (n11=2〜6)。
【0054】
一般式Dで表される化合物として具体的には、例えばチオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト−2−メチルプロピオン酸、4−メルカプトブタン酸、3−メルカプトブタン酸、5−メルカプトペンタン酸、4−メルカプトペンタン酸、3−メルカプトペンタン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、4−メルカプト−1−ブタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、6−メルカプト−1−ヘキサノール、3−メルカプト−1−ヘキサノール、メルカプトメチルブタノール、3−メルカプト−2−メチルペンタノール、3−メルカプト−3−メチルブタノールを挙げられる。
【0055】
一般式Dで表される化合物は、公知の方法により製造することもできるし、または市販品として入手することもできる。特に好ましい化合物としては、メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、特にメルカプトプロピオン酸が挙げられる。
Dの化合物を用いることにより、本発明の共重合体の主鎖末端にCOOH又は、OH基を導入することができる。Dの化合物の量は、前記(メタ)アクリレート化合物の合計量を100質量部とした場合、0.5〜4.5質量部であり、好ましくは0.5〜4.0質量部である。
【0056】
本発明において、含フッ素共重合体中の水酸基に対して、一般式Eで表される末端にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート化合物を反応させて反応性含フッ素共重合体とすることができる。
【化14】
【0057】
式中、R
9は、炭素原子数が2〜10の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基(該飽和脂肪族炭化水素基は所望によりエーテル結合を有していてもよい。)である。R
10はHまたはメチル基、好ましくはHを示す。yは、1または2の整数である。
R
9で表される炭素原子数が2〜10、好ましくは2〜4の二価または三価の飽和脂肪族炭化水素基としては、以下の基が挙げられ、それに対応する一般式Eの(メタ)アクリレート化合物を合わせて示す。
R
9:
−(CH
2)
n12− (n12=2〜10)
−C
6H
12−(OCH
2CH
2)
n13−(n13=1〜2)
−C(CH
3)[(CH
2)
n14]
2(n14=1〜4)
【0058】
含フッ素共重合体を構成するモノマー単位のうち水酸基を有するアクリレート化合物のモル数をp、一般式Eで表される(メタ)アクリレート化合物のモル数をqとしたとき、そのモル比は0.01≦q/p≦0.8の割合である。特に好ましくは、0.05≦q/p≦0.5の割合である。
【0059】
含フッ素共重合体の製造
含フッ素共重合体を得るための(メタ)アクリレートの重合方法としては公知の重合方法を用いることができるが、原料モノマー、重合開始剤及び連鎖移動剤を重合溶媒に溶解した状態でラジカル共重合させることが好ましい。詳しくは、(メタ)アクリレートA、B、C及びFを所望の比率で混合し、適量の重合開始剤および連鎖移動剤としてDを加え、有機溶媒の存在下に室温から100℃程度の温度で1〜24時間程度反応させる。これにより反応は定量的に進む。(メタ)アクリレートA、B、C及びFの混合順序は特に限定されるものではない。
【0060】
重合開始剤としては、下記の光重合開始剤が挙げられ、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等が好ましく使用できる。
有機溶媒は、上記反応が進行すれば特に限定されないが、例えば、非プロトン性溶媒が挙げられる。非プロトン性溶媒としては、ジメトキシエタン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましく例示される。該有機溶媒は、一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0061】
含フッ素共重合体において、繰り返し単位は、化学式で示すとおりに位置しなくてもよく、水酸基含有共重合体は(メタ)アクリレートA、B、C、及びFのランダム重合体またはブロック共重合体であってよい。
【0062】
含フッ素共重合体とイソシアネート基含有(メタ)アクリレートEとの反応は、得られた水酸基含有共重合体溶液に対して、(メタ)アクリレートEを所定の比率で混合し、−20℃〜100℃、好ましくは20℃〜90℃で、1〜48時間撹拌することにより達成できる。これにより、水酸基含有共重合体における(メタ)アクリレートBまたはC成分に由来の水酸基と、(メタ)アクリレートEのイソシアネート基とが反応し、ウレタン結合が形成され、本発明の反応性含フッ素オリゴマーが得られる。このとき、混合された(メタ)アクリレートEは定量的に反応する。
【0063】
当該反応に際しては、アルカリ性触媒を用いてもよい。アルカリ性触媒は、上記反応が進行すれば特に限定されないが、好ましいアルカリ性触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の有機系のアルカリ性触媒が挙げられる。該アルカリ性触媒は、特に、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが好ましい。該アルカリ性触媒は、一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0064】
本発明の含フッ素共重合体又は含フッ素反応性共重合体の重量平均分子量は通常2000〜50000であり、好ましくは3000〜20000である。
【0065】
重量平均分子量はゲル濾過クロマトグラフィー、粘度法、光散乱法など、従来公知の方法で測定すればよい。
【0066】
本発明の含フッ素共重合体及び反応性含フッ素共重合体は、溶液として使用することができるが、通常は、樹脂成分、溶媒成分、重合開始剤成分、フィラー成分等の添加剤と混合されて樹脂組成物として使用する。
【0067】
溶液として使用する場合、溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、アセトニトリル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等の有機溶媒が挙げられるが、好ましくはメチルイソブチルケトンである。溶媒は一種単独で使用しても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。溶液として使用する場合、濃度は0.01質量%〜5質量%が好ましい。
【0068】
本発明の含フッ素共重合体及び/又は反応性含フッ素共重合体を含む溶液を、たとえば、樹脂、フィルム、繊維、ガラス、金属等の機材表面に塗布、コーティング、スプレー等により付着させることにより、基材表面の特性を改質することができる。
【0069】
本発明の含フッ素共重合体及び/又は光重合開始剤を添加した活性エネルギー線硬化型コート液を硬化して得られた硬化膜表面は、添加しない場合と比較して水の接触角が低くなる。水の接触角が60°を超えるハードコート表面にオーバーコート層を形成するとハジキ、ムラの原因となることがある。本発明の含フッ素共重合体は、例えばハードコート表面の水の接触角を60°以下にし、オーバーコート層のハジキ、ムラを抑制することを目的として使用する。実施例に示したとおり、活性エネルギー線硬化型コート液の樹脂モノマーやオリゴマーにジペンタエリスリトールヘキサアクリレートやウレタンアクリレートオリゴマーを使用した場合は、塗膜表面の水の接触角は45°〜60°の範囲となり、適度な親水表面となる。水の接触角がこの範囲内にあると、水溶性塗料等を上塗りした際にハジキが発生しにくいため、好適である。
【0070】
含フッ素共重合体を含有する樹脂組成物
本発明に含まれる硬化性樹脂組成物は、基材に塗布するための塗液として調製される。硬化性樹脂組成物(塗液)には、防汚性とレベリング性を発揮する成分として含フッ素共重合体及び/又は反応性含フッ素共重合体、主に樹脂膜として機能するエネルギー線硬化性樹脂モノマー又は樹脂オリゴマー、その他、重合開始剤、溶剤等が配合される。ただし、無溶剤系塗液とする場合には溶剤は配合せず、放射線硬化の場合は重合開始剤を必要としない。また、塗液には必要に応じてその他の成分を加えてもよい。
【0071】
本発明の硬化性樹脂組成物全体量中(溶剤成分を使用する場合は、溶剤成分の量を除く)の前記含フッ素共重合体及び/又は反応性含フッ素共重合体の含有量は、通常0.001〜10質量%程度、好ましくは0.01〜5質量%程度、より好ましくは0.1質量%〜2質量%である。
【0072】
エネルギー線硬化性樹脂モノマー又は樹脂オリゴマー成分
本発明の硬化性樹脂組成物は、含フッ素共重合体及び/又は反応性含フッ素共重合体に加えて、これと反応して樹脂硬化膜となるエネルギー線硬化性樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマー(以下、樹脂モノマー、樹脂オリゴマーということがある)を含む。
【0073】
このような樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーは、含フッ素共重合体及び/又は反応性含フッ素共重合体と反応して硬化膜を形成するものであれば、特に限定されず、通常ハードコート膜や反射防止コート膜に用いられるエネルギー線硬化性の樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーを任意に使用することができる。
当該樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーとしては、例えば、各種アクリレートやアクリルウレタン等のアクリル系、ウレタン系、エポキシ系等の反応性化合物が挙げられ、好ましくはアクリル系樹脂が用いられる。特に、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化して膜形態で用いられるため、2官能以上の反応性官能基を有する樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーを用いることが好ましい。
【0074】
2官能以上の反応性官能基を有する樹脂モノマー、樹脂オリゴマーとしては、例えば、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、ビスフェノールF EO変性ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチールプロパンPO変性トリアクリレート、グリセリンPO付加トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリメタクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、各種ウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業株式会社製 紫光シリーズ、根上工業株式会社製 アートレジンシリーズ等)等が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。該樹脂モノマー、樹脂オリゴマーは1種類でも使用できるが、2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。
【0075】
樹脂モノマー、樹脂オリゴマーを硬化させるエネルギー線としては、放射線、電子線、紫外線、可視光線等が挙げられる。放射線、電子線による硬化では電磁波のエネルギーが高いため、重合性二重結合のみで重合が可能である。紫外線、可視光線をエネルギー源とする場合には、後述の重合開始剤成分を配合することが好ましい。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物全体量中(溶剤成分を使用する場合は、溶剤成分の量を除く)の当該樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーの含有量は、通常55〜99.9質量%程度、好ましくは60〜99.5質量%程度、より好ましくは、70〜99質量%程度である。
【0077】
また、当該樹脂モノマー及び樹脂オリゴマーと含フッ素共重合体及び/又は反応性含フッ素共重合体の使用割合は、樹脂モノマー及び樹脂オリゴマー100質量部に対して、前記含フッ素共重合体及び/又は反応性含フッ素共重合体を通常0.001〜10質量部程度、好ましくは0.01〜5質量部程度、より好ましくは0.1〜2質量部程度使用すればよい。
【0078】
重合開始剤成分
本発明の硬化性樹脂組成物には、前記含フッ素共重合体及び/又は反応性含フッ素共重合体、樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーに加えて、必要に応じて、重合開始剤成分を含んでいても良い。
【0079】
重合開始剤成分は、従来公知のものが使用でき、例えば、光重合開始剤を使用することができる。
【0080】
光重合開始剤としては、多種多様なものが知られており、適宜選択して使用すればよい。例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モリフォリノフェニル)−ブタノン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ベンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,4,5,5−テトラフェニル−1,2−ビイミダゾール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、O−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、チオキサントン、ベンジルジメチルケタノール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、アントラキノン、アントロン、ジベンゾスベロン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、P−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、2−(P−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、3,3−カルボニルービス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−フェニル−5−ベンゾイルチオ−テトラゾール等が挙げられる。
【0081】
重合開始剤成分を使用する場合、1種類単独での使用も可能であるが、2種以上を任意に配合して使用してもよい。重合開始剤成分の添加量は、重合性樹脂成分(前記含フッ素共重合体及び/又は反応性含フッ素共重合体、前記樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーの合計量)100質量部に対して、通常0.1〜50質量部程度、好ましくは0.5〜30質量部程度、より好ましくは1〜10質量部程度とすればよい。
【0082】
溶剤成分
本発明の硬化性樹脂組成物は、溶剤成分を含む必要はないが、必要に応じて溶剤成分を含んでいても良い。溶剤成分としては、従来公知の溶剤成分を使用すればよく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル等、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノエーテル類、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのアルキレングリコールジエーテル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンが挙げられる。これらの溶剤成分は1種類でも使用できるが、2種以上を任意の割合で配合して使用してもよい。
【0083】
溶剤成分を使用する場合、本発明の硬化性樹脂組成物中の溶剤成分の使用量は、重合性樹脂成分(前記含フッ素共重合体及び/又は反応性含フッ素共重合体、前記樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマーの合計量)100質量部に対して、通常25〜5000質量部程度、好ましくは40〜2000質量部程度、より好ましくは60〜1000質量部程度とすればよい。
【0084】
その他の成分
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化膜表面に形状を設けたり、その他の望む機能を付与するために、必要に応じて微粒子、フィラー等を配合してもよい。
【0085】
硬化膜の作製方法
本発明においては、本発明の硬化性樹脂組成物を塗液とし、該塗液を基材に塗布した後、光照射等を行うことにより硬化膜とすることができる。
【0086】
本発明の硬化膜を得るための手順としては、含フッ素共重合体及び/又は反応性含フッ素共重合体、樹脂モノマー及び/又は樹脂オリゴマー、さらに、必要に応じて、重合開始剤成分、溶剤成分、微粒子、フィラー等を適当な配合比で混合溶解させて、本発明の硬化性樹脂組成物を塗液として調製する。ついで、基材上に塗液を一定の膜厚となるよう塗布し、温風乾燥、真空乾燥等により溶媒成分を除去した後、放射線、電子線、紫外線、可視光線等のエネルギー線を照射することにより硬化膜を得ることができる。
【0087】
塗液の塗工方法は特に限定されないが、例えば、ウェットコーティングにより塗布され、その方式として例えばグラビア方式、バーコート方式、ワイヤーバー方式、スピンコート方式、ドクターブレード方式、ディップコート方式、スリットコート方式等が挙げられる。
【0088】
硬化膜を作製する基材としては、硬化膜の支持が可能であれば特に限定されないが、例えば、光学用途向けハードコートとして利用する場合には透明性を有するシートが望ましい。透明性シートの材質としては、ガラス、プラスチック等が挙げられ、特にプラスチックシートが好ましい。プラスチックとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が使用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース、ブチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。これらのシートは必要に応じて、バインダー処理、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の易着処理を行ってもよい。
【0089】
本発明の硬化膜の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。通常は、100nm〜30μm程度とすることができる。
【実施例】
【0090】
本発明の内容を以下の実施例により説明するが、本発明の内容は実施例により限定して解釈されるものではない。
【0091】
合成例で使用している含フッ素(メタ)アクリレート(A−1)は、公知の合成方法(例えば特開2010−47680に記載の合成方法)により、合成を実施した。
【0092】
合成例1
冷却管を備えた三つ口フラスコ(50mL)内に、含フッ素アクリレート(A−1)1.00g、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(C−1:日油株式会社製AME−400)4.00g、4−ヒドロキシブチルアクリレート(B−1)4.00g、メチルイソブチルケトン18.00g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.065g、メルカプトプロピオン酸0.2gを入れた。反応溶液中に窒素ガスを導入し、反応容器内を窒素置換した。窒素置換後、反応溶液を撹拌しながら反応溶液を80℃まで加熱し反応を開始した。その後80℃で撹拌を14時間続行した。反応の終了を
1H−NMRの、それぞれのアクリレート特有のピークの消失で確認した。目的の含フッ素オリゴマーが定量的(33質量%メチルイソブチルケトン溶液)に得られた。得られた含フッ素共重合体を固形分濃度30質量%になるようにメチルイソブチルケトンを加え調製した。
【0093】
得られた減フッ素重合体の重量平均分子量(Mw)を、以下の装置を用いて以下の条件により測定した。合成例1で得られた含フッ素重合体の重量平均分子量は、6700であった。
【0094】
装置:ACQUITY UPLC H−Class(Waters)
検出器:ACQUITY UPLC ELS検出(Waters)
カラム:TSKgel α−5000 (φ7.8mm×30cm)(東ソー)
ガードカラム:TSK guard α (φ6.0mm×4cm)(東ソー)
溶媒:テトラヒドロフラン(関東化学)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.05〜0.1wt%
注入量:0.01ml
分子量校正:単分散ポリエチレングリコール(東ソー)
【0095】
合成例2〜6、及び10〜12、14、17〜18
合成例1と同様の手順で、モノマーA、B、C、Fおよび化合物Dの割合を変更して含フッ素共重合体を合成した。モノマー割合、モノマー種は表1に示したとおりである。表1においてカッコ内の数字は質量比を表す(モノマーEの欄を除く)。モノマーEのカッコ内の数字は含フッ素共重合体中の水酸基に対してのモノマーEの等量比を表す。
【0096】
合成例7
合成例1で得られた含フッ素共重合体に、水酸基含有アクリレート化合物(B−1)に対して0.2当量分の2−(イソシアネートエチル)アクリレート(E−1)及び0.01当量分の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを入れ、50℃で反応溶液の攪拌を20時間続行した。反応の終了をFT−IRを用いて−N=C=O吸収(2275〜2250cm
−1)の消失により確認した。目的の反応性含フッ素オリゴマーが定量的(30質量%メチルイソブチルケトン溶液)に得られた。
【0097】
合成例8
モノマーB、Cの割合を変更した以外は合成例7と同様の手順で反応性含フッ素共重合体を合成した。
【0098】
合成例9
モノマーEの割合を変更した以外は合成例7と同様の手順で反応性含フッ素共重合体を合成した。
【0099】
合成例13
モノマーB、Cの割合を変更した以外は、合成例7と同様の手順で反応性含フッ素共重合体を合成した。
【0100】
合成例15
モノマーB、Cの割合を変更した以外は合成例1と同様の手順で反応性含フッ素共重合体を合成した。合成例15で得られた含フッ素重合体の重量平均分子量は、12000であった。
合成例16
合成例15で得られた共重合体を用いた以外は合成例7と同様の手順で反応性含フッ素共重合体を合成した。合成例16で得られた含フッ素重合体の重量平均分子量は、12000であった。
【0101】
合成例19
モノマーB、Cの割合を変更し、化合物Dを変更した以外は合成例7と同様の手順で反応性含フッ素共重合体を合成した。合成例19で得られた含フッ素重合体の重量平均分子量は、19000であった。
【0102】
【表1】
【0103】
(A−1):C
9F
17OC
6H
4CO
2CH
2CH
2OC(=O)C(CH
3)=CH
2
(A−2):C
6F
13CH
2CH
2OC(=O)CH=CH
2
(B−1):4−ヒドロキシブチルアクリレート
(C−1):メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート
(日油株式会社製 ブレンマーAME−400、n≒9)
(C−2):ポリ(エチレンオキサイド)アクリレート
(日油株式会社製 ブレンマーAE−400、n≒10)
(C−3):ポリ(エチレンオキサイド)アクリレート
(日油株式会社製 ブレンマーAE−200、n≒4.5)
(C−4):メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート
(日油株式会社製 ブレンマーPME−400、n≒9)
(F−1):メタクリル酸
(F−2):テトラヒドロフルフリルアクリレート
(D−1):メルカプトプロピオン酸
(D−2) :3−メルカプト-1,2-プロパンジオール
(D−3):1−ドデカンチオール
(E−1):2−(イソシアネートエチル)アクリレート(昭和電工株式会社製、カレンズAOI)
【0104】
硬化性樹脂モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成株式会社製、商品名:M−402)50質量部またはウレタンアクリレート樹脂(日本合成化学株式会社製 商品名:UV7640B)50質量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184)を2.0質量部、合成例1〜19の化合物を1.5質量部(30質量%溶液品)、溶剤としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を46.5質量部、混合し、硬化性塗工液を作成した。これをNo.8のバーコーターでポリエステルフィルム(東洋紡績製、商品名:コスモシャインA4100)に塗り広げ、100℃に設定した乾燥機に3分間投入し、溶剤を揮発させた後、UV照射することで硬化膜を得た。その評価結果を表2に示す。
【0105】
評価方法
(1)相溶性
硬化性塗工液の相溶性を目視で観察した。
評価基準 : 透明 = ○
白濁・沈殿物有 = ×
【0106】
(2)接触角
作製直後の硬化膜表面に対する水の接触角を接触角測定装置(協和界面化学製 DropMaster600)で測定した。
評価基準:
接触角の値が55°以下 = ◎
接触角の値が55°より大きく60°以下 = ○
接触角の値が60°よりも大きく65°以下 = △
接触角の値が65°以上 = ×
【0107】
(3)鉛筆硬度
JIS K 5600−5−4に準じて、試験塗板面に対し約45°の角度に鉛筆の芯を当て、750g荷重で試験塗板面に押し付けながら前方に均一な速さで約10mm以上動かした。塗膜にキズや凹み、破れのない最も硬い鉛筆の硬度記号を塗膜硬度とした。
【0108】
(4)表面平滑性
UV照射後の硬化膜表面を目視で観察した。
評価基準 : スジ、ハジキ等がない ○
スジ、ハジキ等がある ×
【0109】
【表2】
【0110】
表2から分かるように、実施例1〜16の硬化膜は、いずれも良好な表面平滑性を示し、膜強度の低下を示すことがなかった、また、水の接触角が60°以下となり適度な親水傾向を示すことが分った。比較例2から、含フッ素(メタ)アクリレートA成分が直鎖トリデカフルオロオクチル基である場合は、表面平滑性には優れるものの接触角値は高く、撥水性の表面となった。比較例3から、含フッ素(メタ)アクリレートA成分を含有しない場合は、表面平滑性を示さず、親水化することもなかった。また、連鎖移動剤に1−ドデカンチオールを使用した比較例4では水の接触角の低下が小さく、十分な親水傾向を示すことがなかった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明による、含フッ素共重合体は、例えば、ガラス、繊維、金属、樹脂、フィルム、光学材料、塗料等の分野で用いられる表面を親水傾向にする表面改質剤として有用であり、基材表面に適度な親水性、平滑性を付与させることができる化合物として有用である。本発明の含フッ素共重合体を含有する硬化性組成物は、透明性にも優れるため、光学用途等の透明性を必要とする分野での使用も可能となる。
【国際調査報告】