(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
本発明は、触媒活性に優れ、各種反応に適用することができる、多孔性配位高分子を担体として含む金属担持触媒(金属担持多孔性配位高分子触媒)を提供する。本発明の金属担持多孔性配位高分子触媒は、担体と、担体に担持された金属とを有し、担体が、金属イオンと金属イオンに配位可能な有機化合物とが繰り返し単位を構成する多孔性配位高分子であり、多孔性配位高分子が、CuKα線を線源とするX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ)が11.1±0.5°、19.8±0.5°、および、26.0±0.5°にピークを示し、有機化合物が、窒素原子を含む官能基を少なくとも1つ有する。
前記金属イオンが、周期律表の第4族金属〜第13族金属からなる群から選択される少なくとも1種のイオンを含む、請求項1または2に記載の金属担持多孔性配位高分子触媒。
前記有機化合物が、カルボン酸基、スルホン酸基、チオール基、シアノ基、ヒドロキシル基、リン酸基、イミダゾール基、ピリジン基、および、アミノ基からなる群から選択される基を少なくとも2つ有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属担持多孔性配位高分子触媒。
前記窒素原子を含む官能基が、アミノ基、イミノ基、および、ニトリル基からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属担持多孔性配位高分子触媒。
請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属担持多孔性配位高分子触媒の存在下、ニトロアリール化合物を還元してアミノアリール化合物を製造する、アミノアリール化合物の製造方法。
請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属担持多孔性配位高分子触媒の存在下、炭素−炭素不飽和結合を有する不飽和化合物に対して水素化反応を行い、水素化反応物を製造する、水素化反応物の製造方法。
請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属担持多孔性配位高分子触媒の存在下、アルコール化合物またはアルデヒド化合物に対して酸化反応を行い、酸化反応物を製造する、酸化反応物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の金属担持多孔性配位高分子触媒(以後、単に「金属担持触媒」とも称する)、および、該金属担持触媒を用いた各種化合物の製造方法の好適態様について説明する。
本発明の特徴点は、CuKα線を線源とするX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ)が所定の値のピークを示す多孔性配位高分子を金属担持触媒の担体として用いる点が挙げられる。上記多孔性配位高分子を使用することにより触媒活性が向上する理由は不明であるが、上記多孔性配位高分子に金属を担持させる際に、所定の規則構造を有する多孔性配位高分子中の有機化合物に含まれる窒素原子を含む官能基と担持された金属とが相互作用して、金属が触媒活性に優位なサイトに固定化されることにより、触媒活性の向上が達成されているものと推測される。
なお、非特許文献1では触媒調製に長期日数を要するのに対して、本発明の金属担持触媒はより短時間で調製が可能である。
以下では、まず、金属担持触媒について詳述し、その後、この金属担持触媒を用いた反応について詳述する。
【0011】
<金属担持触媒>
本発明の金属担持触媒は、担体として機能する特定の多孔性配位高分子と、担体に担持された金属とを有する。
以下、それぞれの成分について詳述する。
【0012】
(多孔性配位高分子)
多孔性配位高分子は、金属イオンと、金属イオンに配位可能な有機化合物(有機配位子)とが繰り返し単位を構成している。通常、多孔性配位高分子は、無機物である金属イオンと、有機物である有機化合物とが自己集合的に集まり、組みあがった材料である。
【0013】
多孔性配位高分子中に含まれる金属イオン(金属原子)としては特に制限はなく、適宜選択することができるが、例えば、周期律表(長周期型周期律表)における第4族金属〜第13族金属からなる群から選択される元素のイオン(原子)が挙げられる。なかでも、多孔性配位高分子の合成がより容易であり、金属担持触媒の触媒活性がより優れる点で、Zn
2+、Co
2+、Ni
2+、Cu
2+、Cr
2+、Mn
2+、Al
3+、および、Fe
3+からなる群から選択される金属イオンが好ましく、Zn
2+、Co
2+、Ni
2+、または、Cr
2+がより好ましく、Zn
2+がさらに好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、多孔性配位高分子の製造の際の上記金属イオンの原料としては、金属イオンを含む塩等の化合物を使用してもよい。金属イオンの塩(金属塩)としては、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩などが挙げられる。
【0014】
多孔性配位高分子中に含まれる有機化合物は、上記金属イオンに配位可能である。つまり、有機化合物には、金属イオンと配位可能な官能基(以後、配位性官能基とも称する)が含まれる。配位性官能基の種類は特に制限されないが、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、チオール基、シアノ基、ヒドロキシル基、リン酸基、イミダゾール基、ピリジン基、アミノ基などが挙げられる。なかでも、多孔性配位高分子が合成しやすく、金属担持触媒の触媒活性がより優れる点で、カルボン酸基が好ましい。
有機化合物中に含まれる配位性官能基の数は特に制限されないが、通常、有機化合物1分子中に2個以上の場合が多く、2〜6個が好ましく、2〜3個がより好ましく、2個がさらに好ましい。
有機化合物は、窒素原子を含む官能基(以後、窒素含有基とも称する)を少なくとも1つ有する。窒素含有基は、担体に担持される金属と相互作用(配位)すると考えられる。窒素含有基の種類は特に制限されないが、例えば、アミノ基(−NH
2)、イミノ基、ニトリル基などが挙げられる。
有機化合物中に含まれる窒素含有基の数は特に制限されないが、有機化合物1分子中に1個以上であればよく、1〜4個が好ましく、1〜2個がより好ましく、1個がさらに好ましい。
【0015】
有機化合物の好適態様の一つとして、上記窒素含有基を少なくとも1つ有し、かつ、環状構造を有する化合物が好適に挙げられる。環状構造を有する化合物としては、例えば、脂環式化合物、または、芳香族化合物が挙げられ、多孔性配位高分子の合成がしやすい点で、芳香族化合物が好ましい。
脂環式化合物とは、脂環基を有する有機化合物である。脂環基としては、例えば、アダマンタン基が挙げられる。
芳香族化合物とは、芳香環を有する有機化合物である。芳香環としては、芳香族炭化水素環または芳香族複素環が挙げられる。また、該芳香環は単環でもよく、縮合環でもよい。芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、テルフェニル環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環等が挙げられる。芳香族複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、インダゾール環等が挙げられる。
【0016】
なかでも、得られる金属担持触媒の触媒活性がより優れる点(以後、単に「本発明の効果がより優れる点」とも称する)で、以下の式(X)で表される有機化合物が好ましい。
【0018】
式(X)中、Arは芳香環を表す。芳香環の定義は上述の通りであり、本発明の効果がより優れる点で、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
R
1は、アミノ基、イミノ基、および、ニトリル基からなる群から選択される基を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、アミノ基が好ましい。
R
2は、カルボン酸基、スルホン酸基、チオール基、シアノ基、ヒドロキシル基、リン酸基、イミダゾール基、ピリジン基、および、アミノ基からなる群から選択される基を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、カルボン酸基が好ましい。
nは、1〜2の整数を表し、本発明の効果がより優れる点で、1が好ましい。
mは、2〜4の整数を表し、本発明の効果がより優れる点で、2が好ましい。
式(X)で表される化合物としては、例えば、以下の例が挙げられる。なお、以下例中のR
1およびR
2の定義は上述の通りである。
【0020】
(多孔性配位高分子の特性)
多孔性配位高分子は、CuKα線を線源とするX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ)が11.1±0.5°、19.8±0.5°、および、26.0±0.5°にピークを示す。なお、上記11.1±0.5°とは、10.6〜11.6°の範囲においてピークがあることを意図する。
また、多孔性配位高分子は、上記位置以外の位置にピークを有していてもよい。
X線回折の測定は、全自動水平型多目的X線回折装置SmartLabo(株式会社リガク製)等にて行うことができる。
【0021】
(多孔性配位高分子の製造方法)
上述した多孔性配位高分子の製造方法は、上記所定の特性を示す多孔性配位高分子が得られれば特に制限されず、金属塩および有機化合物(必要に応じて、溶媒を使用)を混合して拡散させるだけで得られることもあるが、オートクレーブなどの耐圧容器に入れ、高温・加圧下で反応させてもよい。なかでも、製造が容易であり、得られる金属担持触媒の触媒活性がより優れる点で、金属塩および有機化合物を含む混合物に、130℃超にて加熱処理を施す方法が挙げられる。
使用される金属塩および有機化合物の種類は、上述の通りである。
加熱条件は、通常、100℃以上の場合が多く、本発明の効果がより優れる点で、130℃超が好ましく、135℃以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、通常、200℃以下の場合が多い。
加熱時間は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点および生産性の点から、1〜120時間が好ましく、12〜48時間がより好ましい。
【0022】
金属塩と有機化合物との混合比は、使用される金属塩および有機化合物の種類によって適宜最適な混合比が選択される。例えば、2価の金属イオンを含む金属塩と、2つの配位性官能基を有する有機化合物とを使用する場合は、金属塩と有機化合物とのモル比(金属塩のモル量/有機化合物のモル量)は0.9〜1.1が好ましい。
なお、上記混合物には、必要に応じて、溶媒が含まれていてもよい。使用される溶媒の種類は特に制限されず、水または有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のエステル系溶媒;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
また、上記混合物に加熱処理を施した後、必要に応じて、未反応物を除去する精製処理や、乾燥処理を実施してもよい。精製処理としては、溶媒での洗浄処理が挙げられる。洗浄処理としては、溶媒と多孔性配位高分子とを接触させればよく、例えば、溶媒中に多孔性配位高分子を添加して、必要に応じて、混合液に加熱処理を施す方法が挙げられる。
【0023】
(金属(以後、「担持金属」とも称する))
上記多孔性配位高分子には、金属が担持される。
金属の種類は特に制限されず、金属担持触媒を使用する反応によって適宜最適な金属が選択されるが、例えば、周期律表の第8族金属〜第11族金属からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。金属は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよく、合金であってもよい。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、パラジウム、ルテニウム、白金、および、金からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、パラジウムがより好ましい。
担持された金属の状態は特に制限されず、金属イオンであっても、金属単体であってもよい。
なお、後述するように、上記金属を多孔性配位高分子に担持させる際の原料としては、上記金属を含む塩(金属塩)を使用してもよい。金属塩としては、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、リン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩などが挙げられる。
【0024】
金属担持触媒中における金属の担持量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点およびコストの点から、多孔性配位高分子100質量部に対して、0.001〜20質量部が好ましく、0.01〜10質量部がより好ましい。
【0025】
(金属担持触媒の製造方法)
多孔性配位高分子に金属を担持する方法は特に制限されず、公知の方法を採用することができる。例えば、多孔性配位高分子と、上記金属を含む金属塩とを接触させ、その後必要に応じて、加熱処理を施す方法が挙げられる。
なお、多孔性配位高分子と金属塩との接触方法は特に制限されず、例えば、溶媒に多孔性配位高分子と金属塩とを加える方法が挙げられる。
使用される溶媒の種類は特に制限されず、多孔性配位高分子および金属塩を分散・溶解させることができる溶媒であればよく、水または有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の種類は、上述した多孔性配位高分子の製造の際に使用される有機溶媒が挙げられる。
多孔性配位高分子と金属塩とを接触させる際の温度条件は特に制限されず、例えば、20〜60℃の範囲で選択することができ、通常、室温(25℃)で行われる。
接触時間は温度によっても異なるが、生産性の点から、0.5〜24時間が好ましく、1〜12時間がより好ましい。
多孔性配位高分子と金属塩とを接触させた後、必要に応じて、得られた金属担持触媒を水や有機溶媒で洗浄し、真空処理などにより乾燥してもよい。
また、多孔性配位高分子と金属塩とを接触させた後には、必要に応じて、加熱処理が施されるが、その温度条件は特に制限されず、例えば、70〜150℃の範囲で選択することができる。
【0026】
上述した金属担持触媒は、種々の反応に適用でき、例えば、炭素−炭素結合生成反応、炭素−酸素結合生成反応、還元反応、または、酸化反応に用いることができる。炭素−炭素結合生成反応(クロスカップリング反応)としては、例えば、鈴木−宮浦クロスカップリング反応、園頭カップリング反応、スティルカップリング反応、溝呂木−ヘック反応などが挙げられる。還元反応としては、例えば、水素化反応、ニトロ基の還元反応などが挙げられる。酸化反応としては、例えば、アルコール化合物の酸化反応(例えば、アルコール化合物からアルデヒド化合物への選択酸化反応)、アルデヒド化合物の酸化反応などが挙げられる。
以下では、鈴木−宮浦クロスカップリング反応、溝呂木−ヘック反応、ニトロ基の還元反応、水素化反応(水素添加反応)、アルコールの酸化反応、炭素−酸素結合生成反応の一態様について詳述する。
【0027】
<ビアリール化合物の製造方法(鈴木−宮浦クロスカップリング反応)>
上述した金属担持触媒は、ビアリール化合物の製造方法に好適に使用できる。より具体的には、ビアリール化合物の製造方法は、上述した金属担持触媒および塩基性化合物の存在下、式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物とをクロスカップリング反応させ、式(3)で表されるビアリール化合物を製造する方法である。
【0029】
まず、本製造方法で使用される材料について詳述し、その後、方法の手順について詳述する。
上記式(1)で表される化合物は、いわゆるアリールホウ素化合物である。また、上記式(2)で表される化合物は、いわゆるハロゲン化アリールである。
式(1)〜(3)中、Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基を表す。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基などが挙げられる。
Xは、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)を表す。
なお、アリール基には、置換基が含まれていてもよい。置換基の種類は特に制限されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、複素環基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
置換基の数は特に制限されず、例えば、1〜4個が挙げられる。
なお、Ar
1およびAr
2が置換基を有するアリール基である場合、式(1)および式(2)で表される化合物は、以下式として表される。なお、以下式中、Rは置換基を表し、mはそれぞれ独立に1以上の整数を表し、好ましくは1〜4の整数を表す。
【0031】
塩基性化合物の種類は特に制限されず、公知の塩基性化合物が使用できる。なかでも、生成物の収率がより優れる点で、塩基性無機化合物が好ましく挙げられる。
塩基性化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリム等の炭酸塩が挙げられる。
【0032】
本製造方法の手順は特に制限されず、金属担持触媒および塩基性化合物の存在下、式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物を混合する方法が好ましく挙げられる。より具体的には、金属担持触媒および塩基性化合物を溶媒中に溶解させて反応溶液を調製し、該反応溶液に式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物を添加して、反応させる方法が挙げられる。
反応温度は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、50〜150℃が好ましく、80〜110℃がより好ましい。
反応時間は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる、および、生産性の点から、0.5〜72時間が好ましく、1〜50時間がより好ましい。
反応雰囲気は特に制限されず、空気下であっても、不活性ガス雰囲気下であっても、還元性ガス(例えば、水素ガス)雰囲気下であってもよい。特に、本発明の金属担持触媒を用いれば、空気下においても優れた触媒活性を示す。
【0033】
式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物との混合モル比(式(1)で表される化合物のモル量/式(2)で表される化合物のモル量)は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、0.5〜3.0が好ましく、1.2〜2.0がより好ましい。
式(2)で表される化合物と、金属担持触媒中の担持金属との混合モル比(式(2)で表される化合物のモル量/金属担持触媒中の担持金属のモル量)は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、1.0×10〜1.0×10
7が好ましく、0.5×10
2〜0.5×10
7がより好ましい。
塩基性化合物と、式(2)で表される化合物との混合モル比(塩基性化合物のモル量/式(2)で表される化合物のモル量)は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、0.5〜5.0が好ましく、1.5〜3.0がより好ましい。
【0034】
上述したように、上記反応においては、さらに溶媒の存在下にて実施してもよい。
溶媒の種類は特に制限されず、公知の溶媒(例えば、水、有機溶媒)を使用することができる。例えば、メタノール等のアルコール系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒、ホルムアミド等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、トルエン等の炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒などが挙げられる。
なかでも、生成物の収率がより優れる点で、アルコール系溶媒が好ましく、エタノール、プロパノールなどの1級アルコール系溶媒がより好ましく、エタノールが特に好ましい。
【0035】
本製造方法においては、金属担持触媒および反応基質の混合方法は特に制限されず、公知の方法が採用できる。また、各成分を加える順番も特に限定されず、反応容器に上記成分を同時に添加しても、それぞれ順番に添加してもよい。
上記反応系は、反応終了後、濾過または遠心分離のような分離方法により生成物と金属担持触媒とを容易に分離することができ、工業的な観点から優れた系であるといえる。
なお、上記工程で生成されたビアリール化合物は、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0036】
<アミノアリール化合物の製造方法(ニトロ基の還元反応)>
上述した金属担持触媒は、アミノアリール化合物の製造方法に好適に使用できる。より具体的には、以下に示すように、金属担持触媒の存在下、ニトロアリール化合物を還元してアミノアリール化合物を得ることができる。
【0038】
なお、ニトロアリール化合物とは、アリール基とニトロ基とが結合した構造を有する化合物であり、該構造を有していれば他の置換基が含まれていてもよい。
より具体的には、上記スキーム中のAr
1は、アリール基を表す。Ar
1で表されるアリール基の定義は、上述した式(1)中のAr
1の定義と同義である。アリール基には、置換基が含まれていてもよい。置換基の種類は特に制限されず、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、複素環オキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
置換基の数は特に制限されず、例えば、1〜4個が挙げられる。
なかでも、生成物の収率がより優れる点で、ニトロアリール化合物としては、ニトロベンゼン化合物が好ましい。なお、ニトロベンゼン化合物とは、ベンゼン環にニトロ基が結合した構造を有する化合物であり、該ニトロベンゼン化合物を出発物質とした場合は、アミノベンゼン化合物が得られる。
【0039】
また、アミノアリール化合物とは、アリール基とアミノ基が結合した構造を有する化合物であり、該構造を有していれば他の置換基が含まれていてもよい。
【0040】
反応系におけるニトロアリール化合物と金属担持触媒中の担持金属との混合モル比(ニトロアリール化合物のモル量/金属担持触媒中の担持金属のモル量)は特に制限されず、生成物の収率がより優れる点で、0.1×10
2〜1.0×10
5が好ましく、0.5×10
2〜1.0×10
4がより好ましい。
本製造方法では、金属担持触媒およびニトロアリール化合物以外の他の成分(例えば、溶媒)が合わせて使用されてもよい。例えば、溶媒の存在下で反応を実施してもよい。
溶媒の種類は特に制限されないが、例えば、アルコール系溶媒が好ましく使用され、メタノール、エタノール、プロパノールなどの1級アルコール系溶媒がより好ましい。
【0041】
本製造方法においては、金属担持触媒およびニトロアリール化合物の混合方法は特に制限されず、公知の方法が採用できる。また、各成分を加える順番も特に限定されず、反応容器に上記成分を同時に添加しても、それぞれ順番に添加してもよい。
なお、反応容器としては、反応系が加圧条件になることが考えられるため、耐圧ガラス反応管やオートクレーブを使用することが好ましい。
本製造方法においては、反応雰囲気としては、通常、還元性ガス雰囲気(例えば、水素ガス雰囲気)にて実施されることが好ましい。
【0042】
本製造方法においては、必要に応じて、加熱処理を施してもよい。より具体的には、上記金属担持触媒の存在下、ニトロアリール化合物に加熱処理を施してもよい。言い換えると、金属担持触媒とニトロアリール化合物とを含有する反応組成物に、加熱処理を施してもよい。
加熱処理の温度条件は特に制限されないが、生産性がより優れる点で、反応温度としては、30℃超が好ましく、50℃以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、経済性の点から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
本製造方法の反応時間は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、1〜40時間が好ましく、2〜24時間がより好ましい。
【0043】
上記反応系は、反応終了後、濾過または遠心分離のような分離方法により生成物と金属担持触媒とに容易に分離することができ、工業的な観点から優れた系であるといえる。
なお、上記工程で生成されたアミノアリール化合物は、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0044】
<水素化反応物の製造方法(水素化反応)>
上述した金属担持触媒は、水素化反応物の製造方法に好適に使用できる。より具体的には、以下に示すように、金属担持触媒の存在下、炭素−炭素不飽和結合を有する不飽和化合物に対して水素化反応を行い、水素化反応物を得ることができる。
不飽和化合物とは、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物である。炭素−炭素不飽和結合としては、いわゆる炭素−炭素二重結合や炭素−炭素三重結合が挙げられる。不飽和化合物の構造は、上記炭素−炭素不飽和結合が含まれていれば特に制限されず、直鎖状であっても、環状であってもよい。不飽和化合物としては、例えば、式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
式(4)中、R
3〜R
6は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。有機基の種類は特に制限されず、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)
2)、ホスファト基(−OPO(OH)
2)、スルファト基(−OSO
3H)、または、これらを組み合わせた基が挙げられる。
なお、R
3〜R
6はそれぞれ結合して環を形成してもよい。例えば、R
3とR
4、R
3とR
5、R
5とR
6、または、R
4とR
6が、それぞれ結合して環を形成してもよい。形成される環の種類は特に制限されず、脂肪族炭化水素環、脂肪族複素環、芳香族炭化水素環、芳香族複素環などが挙げられる。
【0047】
本製造方法によって得られる水素化反応物(水素添加物)は、炭素−炭素不飽和結合が水素添加された化合物である。例えば、不飽和化合物として、上述した式(4)で表される化合物が使用された場合、水素化反応物としては式(5)で表される化合物が挙げられる。なお、式(5)中の各基の定義は上述の通りである。
【0049】
反応系における不飽和化合物と金属担持触媒中の担持金属との混合モル比(不飽和化合物のモル量/金属担持触媒中の担持金属のモル量)は特に制限されず、生成物の収率がより優れる点で、0.1×10
2〜1.0×10
5が好ましく、0.5×10
2〜1.0×10
4がより好ましい。
本製造方法では、金属担持触媒および不飽和化合物以外の他の成分(例えば、溶媒)が合わせて使用されてもよい。例えば、溶媒の存在下で反応を実施してもよい。
溶媒の種類は特に制限されないが、例えば、アルコール系溶媒が好ましく使用され、メタノール、エタノール、プロパノールなどの1級アルコール系溶媒がより好ましい。
【0050】
本製造方法においては、金属担持触媒および不飽和化合物の混合方法は特に制限されず、公知の方法が採用できる。また、各成分を加える順番も特に限定されず、反応容器に上記成分を同時に添加しても、それぞれ順番に添加してもよい。
なお、反応容器としては、反応系が加圧条件になることが考えられるため、耐圧ガラス反応管やオートクレーブを使用することが好ましい。
本製造方法においては、反応雰囲気としては、通常、還元性ガス雰囲気(例えば、水素ガス雰囲気)にて実施されることが好ましい。
【0051】
本製造方法においては、必要に応じて、加熱処理を施してもよい。より具体的には、上記金属担持触媒の存在下、不飽和化合物に加熱処理を施してもよい。言い換えると、金属担持触媒と不飽和化合物とを含有する反応組成物に、加熱処理を施してもよい。
加熱処理の温度条件は特に制限されないが、生産性がより優れる点で、反応温度としては、30℃超が好ましく、50℃以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、経済性の点から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。
本製造方法の反応時間は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、1〜40時間が好ましく、2〜24時間がより好ましい。
【0052】
上記反応系は、反応終了後、濾過または遠心分離のような分離方法により生成物と金属担持触媒とに容易に分離することができ、工業的な観点から優れた系であるといえる。
なお、上記工程で生成された水素化反応物は、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0053】
<置換オレフィン化合物の製造方法(溝呂木−ヘック反応)>
上述した金属担持触媒は、置換オレフィン化合物の製造方法に好適に使用できる。より具体的には、置換オレフィン化合物の製造方法は、上述した金属担持触媒および塩基性化合物の存在下、式(6)で表される化合物と、式(7)で表される化合物とをクロスカップリング反応させ、式(8)で表される置換オレフィン化合物を製造する方法である。
【0055】
まず、本製造方法で使用される材料について詳述し、その後、方法の手順について詳述する。
式(6)中、R
10は、アリール基、ベンジル基、または、アルキル基を表す。Xは、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)を表す。
式(7)中、R
11は、アリール基、または、アルキル基を表す。
なお、上記R
10およびR
11には、置換基が含まれていてもよい。置換基の種類は特に制限されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、複素環基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
置換基の数は特に制限されず、例えば、1〜4個が挙げられる。
【0056】
塩基性化合物の種類は特に制限されず、公知の塩基性化合物が使用できる。
塩基性化合物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリム等の炭酸塩、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン化合物が挙げられる。
【0057】
上記反応には必要に応じて、さらに配位子を合わせて存在させてもよい。
配位子の種類は特に制限されず、公知の配位子が使用でき、例えば、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン系配位子が使用できる。
【0058】
本製造方法の手順は特に制限されず、金属担持触媒および塩基性化合物の存在下、式(6)で表される化合物および式(7)で表される化合物を混合する方法が好ましく挙げられる。より具体的には、金属担持触媒および塩基性化合物を溶媒中に溶解させて反応溶液を調製し、該反応溶液に式(6)で表される化合物および式(7)で表される化合物を添加して、反応させる方法が挙げられる。
反応温度は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、50〜150℃が好ましく、80〜140℃がより好ましい。
反応時間は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる、および、生産性の点から、0.5〜48時間が好ましく、12〜36時間がより好ましい。
反応雰囲気は特に制限されず、空気下であっても、不活性ガス雰囲気下であってもよい。
【0059】
式(7)で表される化合物と、式(6)で表される化合物との混合モル比(式(7)で表される化合物のモル量/式(6)で表される化合物のモル量)は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、0.5〜2.0が好ましく、1.0〜1.5がより好ましい。
式(6)で表される化合物と、金属担持触媒中の担持金属との混合モル比(式(6)で表される化合物のモル量/金属担持触媒中の担持金属のモル量)は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、1.0×10
2〜1.0×10
6が好ましく、1.0×10
3〜1.0×10
5がより好ましい。
塩基性化合物と、式(6)で表される化合物との混合モル比(塩基性化合物のモル量/式(6)で表される化合物のモル量)は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、0.5〜5.0が好ましく、1.0〜2.0がより好ましい。
【0060】
上述したように、上記反応においては、さらに溶媒の存在下にて実施してもよい。
溶媒の種類は特に制限されず、公知の溶媒(例えば、水、有機溶媒)を使用することができる。例えば、メタノール等のアルコール系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒、ホルムアミド等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、トルエン等の炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0061】
本製造方法においては、金属担持触媒および反応基質の混合方法は特に制限されず、公知の方法が採用できる。また、各成分を加える順番も特に限定されず、反応容器に上記成分を同時に添加しても、それぞれ順番に添加してもよい。
上記反応系は、反応終了後、濾過または遠心分離のような分離方法により生成物と金属担持触媒とを容易に分離することができ、工業的な観点から優れた系であるといえる。
なお、上記工程で生成されたビアリール化合物は、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0062】
<アルデヒド化合物の製造方法(アルコール化合物の酸化反応)>
上述した金属担持触媒は、アルデヒド化合物の製造方法に好適に使用できる。より具体的には、アルデヒド化合物の製造方法は、上述した金属担持触媒の存在下、アルコール化合物を酸化することにより、アルデヒド化合物を製造する方法である。
アルコール化合物とは、ヒドロキシル基(OH基)を有する化合物を意図する。
アルデヒド化合物とは、アルデヒド基(CHO基)を有する化合物を意図する。
本発明の金属担持触媒を使用する場合は、アルコール化合物中にアルデヒド基が含まれる場合であっても、アルデヒド基に影響を与えることなく、ヒドロキシル基だけを選択的に酸化することができる。つまり、アルコール化合物の選択酸化反応を実施することができる。
【0063】
反応系におけるアルコール化合物と金属担持触媒中の担持金属との混合モル比(アルコール化合物のモル量/金属担持触媒中の担持金属のモル量)は特に制限されず、生成物の収率がより優れる点で、0.1×10
1〜1.0×10
4が好ましく、0.1×10
2〜1.0×10
3がより好ましい。
本製造方法では、金属担持触媒およびアルコール化合物以外の他の成分(例えば、溶媒)が合わせて使用されてもよい。例えば、溶媒の存在下で反応を実施してもよい。
【0064】
本製造方法においては、金属担持触媒およびアルコール化合物の混合方法は特に制限されず、公知の方法が採用できる。また、各成分を加える順番も特に限定されず、反応容器に上記成分を同時に添加しても、それぞれ順番に添加してもよい。
本製造方法においては、反応雰囲気としては、通常、酸化性ガス雰囲気(例えば、酸素ガス雰囲気)にて実施されることが好ましい。
【0065】
本製造方法においては、必要に応じて、加熱処理を施してもよい。より具体的には、上記金属担持触媒の存在下、アルコール化合物に加熱処理を施してもよい。言い換えると、金属担持触媒とアルコール化合物とを含有する反応組成物に、加熱処理を施してもよい。
加熱処理の温度条件は特に制限されないが、生産性がより優れる点で、反応温度としては、30℃超が好ましく、50℃以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、経済性の点から、150℃以下が好ましい。
本製造方法の反応時間は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、1〜40時間が好ましく、2〜24時間がより好ましい。
【0066】
上記反応系は、反応終了後、濾過または遠心分離のような分離方法により生成物と金属担持触媒とに容易に分離することができ、工業的な観点から優れた系であるといえる。
なお、上記工程で生成された水素化反応物は、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0067】
<アリル基含有化合物の製造方法(炭素−酸素結合生成反応)>
上述した金属担持触媒は、アリル基含有化合物の製造方法に好適に使用できる。より具体的には、アリル基含有化合物の製造方法は、上述した金属担持触媒の存在下、アリルアルコールまたはアリルエステルと式(9)で表される化合物とを反応させ、式(10)で表されるアリル基含有化合物を製造する方法である。
なお、アリルエステルとは、一分子中に1個のアルケニル基と少なくとも1個のエステル基を有する化合物であり、炭酸アリルエステル、酢酸アリルエステル、プロピオン酸アリルエステル、酪酸アリルエステル、吉草酸アリルエステル、ラウリン酸アリルエステル等が挙げられる。
【0069】
式(9)および式(10)中、Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。
芳香族炭化水素基の炭素数は特に制限されないが、反応溶媒への溶解性などがより優れ、取扱い性がより優れる点より、炭素数6〜36が好ましく、炭素数6〜18がより好ましく、炭素数6〜12がさらに好ましい。
芳香族炭化水素基は単環式であっても、多環式であってもよい。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などが挙げられる。なかでも、汎用性がより優れる点で、ベンゼン環が好ましい。
芳香族炭化水素基は置換基を有していてもよく、例えば、脂肪族炭化水素基(好ましくは、炭素数1〜20)、芳香族炭化水素基(好ましくは、炭素数6〜60)、複素環基、アルコキシ基、アルカノイル基、アリールオキシ基、またはこれらを組み合わせた基を有する。
【0070】
本製造方法は溶媒を使用しなくとも反応を進行させることができるが(無溶剤系)、必要に応じて、溶媒の存在下で反応を行ってもよい。出発原料が溶媒に溶解することにより、生成物の収率がより優れる。
使用される溶媒の種類は特に制限されず、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、または脂肪族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
なお、これらの溶媒は、単独で使用しても二種類以上を混合使用してもよい。
【0071】
本製造方法の手順は特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、溶媒中に金属担持触媒および所定の成分を添加して、必要に応じて加熱処理を実施する方法が挙げられる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
(合成例1:多孔性配位高分子の製造(その1))
硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO
3)
2・6H
2O)(5mmol)と、2−アミノテレフタル酸(5mmol)と、N,N−ジメチルホルムアミド(以後、DMFとも称する)(35ml)とをオートクレーブ内に添加して、得られた混合溶液を140℃で24時間反応させた。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却した後、ろ過およびDMFによる洗浄を実施した後、得られた固体を室温下にて真空乾燥した。次に、得られた黄色の粉末を、エタノールに加えて、80℃で24時間撹拌の処理を行い、反応終了後、粉末をろ過により回収し、真空乾燥して、多孔性配位高分子1を得た。
得られた多孔性配位高分子1の元素分析値は以下の通りであった。
C:37.2%,H:2.0%,N:6.2%,Zn:27.3%
また、得られた多孔性配位高分子1の比表面は450.5m
2g
−1であった。
さらに、全自動水平型多目的X線回折装置SmartLabo(株式会社リガク製)を用いて、得られた多孔性配位高分子1のX線回折測定を実施した。得られたX線回折スペクトルを
図1(A)に示す。
図1(A)に示すように、ブラッグ角(2θ)11.1°、20.2°、25.9°にピークがあることが確認された。なお、X線回折の測定の条件は、下記の通りとした。
X線管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:30mA
スタート角度:9.0°
ストップ角度:39.0°
走査速度:2°/分
【0074】
(合成例2:多孔性配位高分子の製造(その2)
硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO
3)
2・6H
2O)の代わりに、硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO
3)
2・6H
2O)を用いた以外は、合成例1と同様の手順に従って、多孔性配位高分子2を製造した。
得られた多孔性配位高分子2を用いて、合成例1で実施したX線回折測定を実施した。得られたX線回折スペクトルを
図1(B)に示す。
図1(B)に示すように、ブラッグ角(2θ)11.0°、19.8°、26.2°にピークがあることが確認された。
【0075】
(合成例3:多孔性配位高分子の製造(その3)
硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO
3)
2・6H
2O)の代わりに、硝酸コバルト六水和物(Co(NO
3)
2・6H
2O)を用いた以外は、合成例1と同様の手順に従って、多孔性配位高分子3を製造した。
得られた多孔性配位高分子3を用いて、合成例1で実施したX線回折測定を実施した。得られたX線回折スペクトルを
図1(C)に示す。
図1(C)に示すように、ブラッグ角(2θ)11.1°、19.7°、26.1°にピークがあることが確認された。
【0076】
なお、公知のIRMOF−3(上記非特許文献1などで使用)のX線回折スペクトルにおいては、所定の位置にピークがないことが確認された(例えば、Gascon et al., Journal of Catalysis, 2009, 261, 75.でもIRMOF−3のX線回折スペクトルが開示されており、所定の位置にピークがないことが示されている)。つまり、得られた多孔性配位高分子1〜3は、IRMOF−3とは長周期的な規則構造が異なる材料であることが確認された。
【0077】
(合成例4:金属担持触媒の製造(その1))
得られた多孔性配位高分子1(250mg)と、塩化パラジウム(2.08mg)と、塩化カリウム(20mg)とを水(25ml)に添加して、得られた反応溶液を室温下にて6時間撹拌した。さらに、その後、反応溶液を80℃にて14時間撹拌した。その後、ろ過および水での洗浄を実施した後、回収した固体を室温下にて真空乾燥し、パラジウムが多孔性配位高分子1に担持された金属担持触媒を得た。なお、得られた金属担持触媒中における金属(パラジウム)の担持量は、多孔性配位高分子100質量部に対して、0.5質量部であった。以後、この金属担持触媒を、0.5Pd/AZCと称する。得られた0.5Pd/AZCに対して、合成例1で実施したX線回折測定を実施したところ、ブラッグ角(2θ)11.2°、20.3°、26.0°にピークがあることが確認され、これは多孔性配位高分子1で測定されたピークと同様のピークであった。従って、金属の担持操作(例えば、金属塩と接触させること、水溶液に浸すこと、加熱撹拌すること等)によって多孔性配位高分子1の基本骨格構造が大きく変化していないことが確認された。
なお、上記塩化パラジウムの使用量を変更して、金属の担持量が多孔性配位高分子100質量部に対して0.05質量部である金属担持触媒(以後、0.05Pd/AZCと称する)、金属の担持量が多孔性配位高分子100質量部に対して1.0質量部である金属担持触媒(以後、1.0Pd/AZCと称する)、金属の担持量が多孔性配位高分子100質量部に対して3.0質量部である金属担持触媒(以後、3.0Pd/AZCと称する)、金属の担持量が多孔性配位高分子100質量部に対して5.0質量部である金属担持触媒(以後、5.0Pd/AZCと称する)を製造した。
【0078】
(合成例5:金属担持触媒の製造(その2))
得られた多孔性配位高分子1(250mg)と、塩化ルテニウム・3水和物(25mg)を水(20ml)に添加して、得られた反応溶液を室温下にて1時間撹拌した。その後、ろ過および水での洗浄を実施した後、回収した固体を室温下にて真空乾燥し、ルテニウムが多孔性配位高分子1に担持された金属担持触媒を得た。なお、得られた金属担持触媒中における金属(ルテニウム)の担持量は、多孔性配位高分子100質量部に対して、4.0質量部であった。以後、この金属担持触媒を、4Ru/AZCと称する。
【0079】
<実施例A:炭素−炭素結合生成反応>
(実施例A1)
エタノール(5ml)に、上記0.5Pd/AZC(1mg)、炭酸カリウム(K
2CO
3)(4mmol)を加えた後、さらに、フェニルホウ酸(3mmol)およびブロモベンゼン(2mmol)を添加して、空気下にて、80℃で1時間撹拌して、反応を実施した。
反応終了後、生成物をガスクロマトグラフィーにより分析してビフェニルを同定し、ブロモベンゼンに対する収率{(生成したビフェニルのモル量/使用したブロモベンゼンのモル量)×100}を求めた。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例A2〜A5)
金属担持触媒の種類および使用量、並びに、反応時間を表1に示すように変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、ビフェニルを製造した。結果を表1に示す。
なお、「>99」は、収率が99%超であることを意図する。
【0081】
【表1】
【0082】
上記表1に示すように、本発明の金属担持触媒を使用すると、クロスカップリング反応にてビフェニルを高収率で得ることができた。特に、空気下においても優れた触媒活性を示すことが確認された。
【0083】
また、上記実施例A1〜実施例A5で使用された金属担持触媒を反応終了後それぞれ回収して、エタノールでの洗浄を実施した後、回収した固体を室温下にて真空乾燥し、再度同様の条件にてビフェニルの製造を行ったところ、1回目と同程度の収率を示すことが確認された。さらに、2回目の反応終了後で使用された金属担持触媒を再度回収して、エタノールでの洗浄を実施した後、回収した固体を室温下にて真空乾燥し、再度同様の条件にてビフェニルの製造を行ったところ、1回目と同程度の収率を示すことが確認された。
上記結果より、本発明の金属担持触媒は再利用が可能である点が確認された。
【0084】
<実施例B:炭素−炭素結合生成反応>
(実施例B1〜B6)
金属担持触媒の種類および使用量、ブロモベンゼン、フェニルホウ酸および炭酸カリウムの使用量、並びに、反応時間(1時間)を表2に示すように変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、ビフェニルを製造した。結果を表2に示す。
なお、実施例B1〜B6において、ブロモベンゼンとフェニルホウ酸と炭酸カリウムの使用量は、モル比でブロモベンゼン:フェニルホウ酸:炭酸カリウム=2:3:4の関係になるように調整された。例えば、実施例B1においては、ブロモベンゼンが2mmol使用されており、それに合わせてフェニルホウ酸は3mmol、炭酸カリウムは4mmol使用された。
【0085】
表2中、「Pd(nmol)」欄は、使用した金属担持触媒中に含まれるパラジウムのモル量を意図する。なお、nmolはナノモルを意図する。
表2中、「TON」は、ターンオーバー数(触媒回転数)を意図する。なお、TONは、生成したビフェニル量(mmol)/使用したPd量(mmol)として算出した。なお、mmolはミリモルを意図する。
【0086】
【表2】
【0087】
上記表2に示すように、本発明の金属担持触媒を使用すると、優れた収率およびTONを示すことが確認された。
【0088】
なお、実施例AおよびBにおいては溶媒としてエタノールを使用したが、他の溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、水、DMFと水との混合液(DMF:水=4:1(質量比))、エタノールと水との混合液(エタノール:水=4:1(質量比)))を使用した場合も、ビフェニルを製造することができた。なかでも、エタノール、エタノールと水との混合液を使用した場合、収率がより優れていた。
【0089】
<実施例C:炭素−炭素結合生成反応>
(実施例C1)
エタノール(5ml)に、3Pd/AZC(5mg)、炭酸カリウム(K
2CO
3)(1mmol)を加えた後、さらに、フェニルホウ酸(0.75mmol)およびp−ニトロクロロベンゼン(0.5mmol)を添加して、空気下にて、80℃で3時間撹拌して、反応を実施した。
反応終了後、生成物をガスクロマトグラフィーにより分析してビフェニルを同定し、p−ニトロクロロベンゼンに対する収率{(生成したビフェニルのモル量/使用したp−ニトロクロロベンゼンのモル量)×100}を求めた。結果を表3に示す。
【0090】
(実施例C2)
金属担持触媒の使用量、反応時間、反応基質(p−ニトロクロロベンゼン)の種類、溶媒の種類、反応温度を表3に示すように変更した以外は、実施例C1と同様の手順に従って、ビフェニルを製造した。結果を表3に示す。
なお、実施例C2およびC3においては、エタノールにさらにテトラブチルアンモニウムブロマイド(1mmol)を添加した。
また、実施例C3においては、反応に際してオートクレーブを使用した。
【0091】
【0092】
上記表3に示すように、本発明の金属担持触媒を使用すると、ブロモベンゼン類よりも反応性が低いクロロベンゼン類でも優れた触媒活性を示すことが確認された。
【0093】
<実施例D:還元反応>
(実施例D1)
エタノール(5ml)に、3Pd/AZC(25mg)およびニトロベンゼン(1mmol)を加えて、水素ガス雰囲気下(1atm)にて、80℃で2.5時間反応を行った。
反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、遠心分離を行い、生成物を含む上澄み溶液から金属担持触媒を分離した。次に、FIDガスクロマトグラフィー(Shimadzu GC-17、Agilent DB-1 カラム。内部標準物質として、ナフタレンを使用。)を用いて、上澄み溶液中に生成物であるアニリンがあることを同定した。
生成物の収率は、出発物質であるニトロベンゼンの仕込み量から計算した。
収率(%)=[生成したアニリン量(mmol)/使用したニトロベンゼン量(mmol)]×100
収率は99%超であり、本発明の金属担持触媒が還元反応に有用であることが確認された。
【0094】
(実施例D2)
エタノール(30ml)に、0.5Pd/AZC(5mg)およびニトロベンゼン(20mmol)を加えて、水素ガス雰囲気下(1atm)にて、80℃で40時間反応を行った。
上記実施例D1と同様の手順で分析したところ、TONは2733を示した。
なお、「TON(ターンオーバー数(触媒回転数)」は、生成したアニリン量(mmol)/使用したPd量(mmol)として算出した。なお、mmolはミリモルを意図する。
【0095】
<実施例E:還元反応>
(実施例E1)
エタノール(5ml)に、3Pd/AZC(25mg)および以下式(Y)で表される化合物(1mmol)を加えて、水素ガス雰囲気下(1atm)にて、80℃で6時間反応を行った。
反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、遠心分離を行い、生成物を含む上澄み溶液から金属担持触媒を分離した。次に、FIDガスクロマトグラフィー(Shimadzu GC-17、Agilent DB-1 カラム。内部標準物質として、ナフタレンを使用。)を用いて、上澄み溶液中に生成物である式(Z)で表される化合物があることを同定した。
生成物の収率は、出発物質である式(Y)で表される化合物の仕込み量から計算した。
収率(%)=[生成した式(Z)で表される化合物量(mmol)/使用した式(Y)で表される化合物量(mmol)]×100
収率は99%超であり、本発明の金属担持触媒が還元反応に有用であることが確認された。
【0096】
(実施例E2)
エタノール(30ml)に、0.5Pd/AZC(5mg)および以下式(Y)で表される化合物(10mmol)を加えて、水素ガス雰囲気下(1atm)にて、80℃で40時間反応を行った。
上記実施例E1と同様の手順で分析したところ、TONは7228を示した。
なお、「TON(ターンオーバー数(触媒回転数)」は、生成した式(Z)で表される化合物量(mmol)/使用したPd量(mmol)として算出した。なお、mmolはミリモルを意図する。
【0097】
【化10】
【0098】
<実施例F:還元反応>
水(5ml)に、3Pd/AZC(25mg)および無水マレイン酸(1mmol)を加えて、水素ガス雰囲気下(1atm)にて、80℃で6時間反応を行った。
反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、遠心分離を行い、生成物を含む上澄み溶液から金属担持触媒を分離した。次に、FIDガスクロマトグラフィー(Shimadzu GC-17、Agilent DB-1 カラム。内部標準物質として、ナフタレンを使用。)を用いて、上澄み溶液中に生成物であるコハク酸があることを同定した。
生成物の収率は、出発物質である無水マレイン酸の仕込み量から計算した。
収率(%)=[生成したコハク酸量(mmol)/使用した無水マレイン酸量(mmol)]×100
収率は98%であり、本発明の金属担持触媒が無水物の水和反応を経由した生成物を逐次的に還元する反応にも有用であることが確認された。
【0099】
<実施例G:溝呂木−ヘック反応>
(実施例G1)
1−メチル−2−ピロリドン(5ml)に、0.5Pd/AZC(25mg)、ブロモベンゼン(3.75mmol)、スチレン(4.5mmol)および炭酸カリウム(4.5mmol)を加えて、窒素ガス流通下(20ml/min)にて、130℃で24時間反応を行った。
反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、遠心分離を行い、生成物を含む上澄み溶液から金属担持触媒を分離した。次に、FIDガスクロマトグラフィー(Shimadzu GC-17、Agilent DB-1 カラム。内部標準物質として、ナフタレンを使用。)を用いて、上澄み溶液中に生成物である式(S)で表される化合物量があることを同定した。
生成物の収率は、出発物質であるブロモベンゼンの仕込み量から計算した。
収率(%)=[生成した式(S)で表される化合物(mmol)/使用したブロモベンセン量(mmol)]×100
収率は84%であり、本発明の金属担持触媒が溝呂木―ヘック反応に有用であることが確認された。
【0100】
(実施例G2)
1−メチル−2−ピロリドン(10ml)に、0.5Pd/AZC(2mg)、ブロモベンゼン(12mmol)、スチレン(14.4mmol)および炭酸カリウム(14.4mmol)を加えて、窒素ガス流通下(20ml/min)にて、130℃で72時間反応を行った。
上記実施例G1と同様の手順で分析したところ、TONは38064を示した。
なお、「TON(ターンオーバー数(触媒回転数)」は、生成した式(S)で表される化合物(mmol)/使用したPd量(mmol)として算出した。なお、mmolはミリモルを意図する。
【0101】
(実施例G3)
反応溶媒をメチルイソブチルケトン(15ml)、反応温度を120℃に変更した以外は、上記実施例G2と同じ条件で反応を実施したところ、TONは79549を示した。
【0102】
【化11】
【0103】
<実施例H:アルコール酸化反応>
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF,3ml)に、4Ru/AZC(50mg)および5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF,0.5mmol)を加えて、酸素流通下(36ml/min)にて、120℃で11時間反応を行った。
反応終了後、反応溶液を室温まで冷却し、遠心分離を行い、生成物を含む上澄み溶液から金属担持触媒を分離した。次に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC, Waters 600、Bio-Rad Aminex HPX-87Hカラム。)を用いて、上澄み溶液中に生成物で2,5−ジホルミルフラン(DFF)があることを同定した。
生成物の収率は、検量線法により出発物質であるHMFの仕込み量から計算した。
収率(%)=[生成したDFF(mmol)/使用したHMF(mmol)]×100
収率は52%であり、本発明の金属担持触媒が酸化反応に有用であることが確認された。