特表-15174351IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公益財団法人北九州産業学術推進機構の特許一覧

再表2015-174351バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒
<>
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000003
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000004
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000005
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000006
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000007
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000008
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000009
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000010
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000011
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000012
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000013
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000014
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000015
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000016
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000017
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000018
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000019
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000020
  • 再表WO2015174351-バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年11月19日
【発行日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/755 20060101AFI20170331BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20170331BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20170331BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20170331BHJP
【FI】
   B01J23/755 M
   B01J37/08
   B01J23/89 M
   B01J37/04 102
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
【出願番号】特願2016-519236(P2016-519236)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年5月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-100599(P2014-100599)
(32)【優先日】2014年5月14日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】802000031
【氏名又は名称】公益財団法人北九州産業学術推進機構
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】黎 暁紅
(72)【発明者】
【氏名】吉塚 和治
(72)【発明者】
【氏名】西浜 章平
(72)【発明者】
【氏名】今井 裕之
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA38
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB12C
4G169BC66A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BE06C
4G169BE32A
4G169BE32B
4G169CC04
4G169CC25
4G169CC26
4G169DA05
4G169FA02
4G169FB05
4G169FB14
4G169FB30
4G169FC07
(57)【要約】
【課題】バイオマスから得られる乾留液等から水素ガスや合成ガスを生成するために用いる触媒であって、低温下で製造した場合であっても触媒としての機能が低下しにくい触媒の製造方法を提供する。また、かかる製造方法によって製造した触媒を提供する。
【解決手段】本発明は、有機合成法(ゾルゲル法)を用いて低温下(400℃以上450℃以下)で製造することが可能な触媒であって、ニッケルの周囲に酸化シリコンを結合させることでニッケルどうしが互いにくっつかないようにすることで、触媒としての機能が低下しにくい触媒の製造方法を提供する。また、かかる製造方法によって製造した触媒を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸である酢酸、アルコール、グリセリン又はバイオマスから得られる乾留液のうちいずれか一以上から、水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法であって、
硝酸ニッケル六水塩(Ni(NO・6HO)を溶媒に溶解させる第一溶解ステップと、
前記第一溶解ステップにて得られた溶液にテトラエトキシシラン(Si(OC)を加える第一テトラエトキシシラン添加ステップと、
前記第一テトラエトキシシラン添加ステップ後の溶液を撹拌する第一撹拌ステップと、
前記第一撹拌ステップ後の溶液に酸化アルミニウム(Al)を添加する第一酸化アルミニウム添加ステップと、
前記第一酸化アルミニウム添加ステップ後の溶液を撹拌する第一酸化アルミニウム添加後撹拌ステップと、
前記第一酸化アルミニウム添加後撹拌ステップ後の溶液を加水分解しゲル状物質を得る第一加水分解ステップと、
前記第一加水分解ステップによって得られたゲル状物質を所定時間保持する第一保持ステップと、
前記第一保持ステップ後のゲル状物質を焼成する第一焼成ステップと、
を有する触媒の製造方法。
【請求項2】
前記第一溶解ステップは、硝酸ニッケル六水塩に代えて、硝酸鉄九水塩(Fe(NO・9HO)と硝酸ニッケル六水塩とを溶媒に溶解させるステップである、請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項3】
前記第一溶解ステップは、硝酸ニッケル六水塩に代えて、硝酸ニッケル六水塩と硝酸パラジウム(Pd(NO)とを溶媒に溶解させるステップである、請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項4】
前記第一溶解ステップは、硝酸ニッケル六水塩に代えて、硝酸鉄九水塩と硝酸ニッケル六水塩と硝酸パラジウム(Pd(NO)とを溶媒に溶解させるステップである、請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項5】
前記第一溶解ステップは、硝酸ニッケル六水塩に代えて、硝酸鉄九水塩と硝酸ニッケル六水塩と硝酸ルテニウム(Ru(NO)とを溶媒に溶解させるステップである、請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項6】
前記第一溶解ステップは、硝酸ニッケル六水塩に代えて、硝酸鉄九水塩と硝酸ニッケル六水塩と硝酸ロジウム(Rh(NO)とを溶媒に溶解させるステップである、請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項7】
硝酸鉄九水塩と硝酸ニッケル六水塩とを溶媒に溶解させる第二溶解ステップと、
前記第二溶解ステップにて得られた溶液にテトラエトキシシランを加える第二テトラエトキシシラン添加ステップと、
前記第二添加ステップ後の溶液を撹拌する第二撹拌ステップと、
前記第二撹拌ステップ後の溶液に酸化アルミニウムを添加する第二酸化アルミニウム添加ステップと、
前記第二酸化アルミニウム添加ステップ後の溶液を撹拌する第二酸化アルミニウム添加後撹拌ステップと、
前記第二酸化アルミニウム添加後撹拌ステップ後の溶液を加水分解しゲル状物質を得る第二加水分解ステップと、
前記第二加水分解ステップによって得られたゲル状物質を所定時間保持する第二保持ステップと、
前記第二保持ステップ後のゲル状物質を焼成する第二焼成ステップと、
前記第一焼成ステップにて得られた触媒と前記第二焼成ステップにて得られた触媒とを混合する混合ステップと、
をさらに有する請求項1、3、4、5又は6に記載の触媒の製造方法。
【請求項8】
前記第一焼成ステップの次に、硝酸パラジウムを添加する第一硝酸パラジウム添加ステップをさらに有する請求項1から6のいずれか一に記載の触媒の製造方法。
【請求項9】
前記第一焼成ステップ及び/又は前記第二焼成ステップの次に、硝酸パラジウムを添加する第一硝酸パラジウム添加ステップ及び/又は第二硝酸パラジウム添加ステップをさらに有する請求項7に記載の触媒の製造方法。
【請求項10】
前記混合ステップの次に、前記混合ステップにて得られた触媒に硝酸パラジウムを添加する第二硝酸パラジウム添加ステップをさらに有する請求項7又は9に記載の触媒の製造方法。
【請求項11】
前記第一焼成ステップは、400℃以上450℃以下で実施される請求項1から10のいずれか一に記載の触媒の製造方法。
【請求項12】
前記第二焼成ステップは、400℃以上450℃以下で実施される請求項7、9、10又は請求項7、9もしくは10に従属する請求項11に記載の触媒の製造方法。
【請求項13】
酸化アルミニウムを担体とし、担持される触媒成分として酸化シリコンが周囲に結合されたニッケルを含む触媒。
【請求項14】
前記触媒成分として鉄をさらに含む請求項13に記載の触媒。
【請求項15】
前記触媒成分としてパラジウムをさらに含む請求項13又は14に記載の触媒。
【請求項16】
前記触媒成分としてパラジウムに代えてルテニウムをさらに含む請求項15に記載の触媒。
【請求項17】
前記触媒成分としてパラジウムに代えてロジウムをさらに含む請求項15に記載の触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機酸である酢酸、アルコール、グリセリン又はバイオマスから得られる乾留液のうちいずれか一以上から、主に水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法並びに同触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス等を生成するために用いる触媒の製造方法として、金属酸化物(例えば酸化アルミニウム)と金属(例えばニッケル)を高温下(600℃程度)で焼成することによりスピネル型結晶構造を有する触媒を製造する方法である物理混合焼成法が知られている。特許文献1には、物理混合焼成法を用いた触媒の製造方法が開示されている。
【0003】
しかし、物理混合焼成法を用いた触媒の製造方法は、触媒を焼成する際の温度が高温であるため、熱効率が低く、多大の熱エネルギーを要し省エネルギー性に欠けるといった問題があった。
【0004】
一方、物理混合製造法とは異なる触媒の製造方法として、有機合成法(ゾルゲル法)を用いることも考えられる。有機合成法は、一般に、溶液に対して加水分解などの化学反応を生じさせてゲル状の物質を生成し、これに熱処理を行って内部に残された溶媒を取り除き、さらに緻密化を促進させることによりガラスやセラミックスを得る方法として用いられているものであり、低温下での処理が可能になるという特徴を有するものである。しかし、触媒成分としてニッケルを含む触媒を有機合成法によって製造する場合、物理混合焼成法を用いる場合と異なり、ニッケルどうしが互いにくっついて大きくならないようにする必要があるという問題が生じる。これはニッケルには互いにくっつきやすいという性質があり、ニッケルどうしが互いにくっついて大きなかたまりになってしまうと、ニッケルの触媒としての機能が低下してしまうためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−017701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような問題に鑑みたものである。すなわち、本発明の解決すべき課題は、バイオマスから得られる乾留液等から水素ガスや合成ガスを生成するために用いる触媒であって、低温下で製造した場合であっても触媒としての機能が低下しにくい触媒の製造方法を提供することにある。また、かかる製造方法によって製造した触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、本発明は、有機合成法を用いて低温下で製造することが可能な触媒であって、ニッケルの周囲に酸化シリコンを結合させることでニッケルどうしが互いにくっつかないようにすることで、触媒としての機能が低下しにくい触媒の製造方法を提供する。また、かかる製造方法によって製造した触媒を提供する。
【0008】
本発明のうち第一の発明は、有機酸である酢酸、アルコール、グリセリン又はバイオマスから得られる乾留液のうちいずれか一以上から、水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法であって、硝酸ニッケル六水塩(Ni(NO・6HO)を溶媒に溶解させる第一溶解ステップと、前記第一溶解ステップにて得られた溶液にテトラエトキシシラン(Si(OC)を加える第一テトラエトキシシラン添加ステップと、前記第一テトラエトキシシラン添加ステップ後の溶液を撹拌する第一撹拌ステップと、前記第一撹拌ステップ後の溶液に酸化アルミニウム(Al)を添加する第一酸化アルミニウム添加ステップと、前記第一酸化アルミニウム添加ステップ後の溶液を撹拌する第一酸化アルミニウム添加後撹拌ステップと、前記第一酸化アルミニウム添加後撹拌ステップ後の溶液を加水分解しゲル状物質を得る第一加水分解ステップと、前記第一加水分解ステップによって得られたゲル状物質を所定時間保持する第一保持ステップと前記第一保持ステップ後のゲル状物質を焼成する第一焼成ステップとを有する触媒の製造方法を提供する。
【0009】
また、第二の発明は、第一の発明を基礎として、前記第一溶解ステップは、硝酸ニッケル六水塩に代えて、硝酸鉄九水塩(Fe(NO・9HO)と硝酸ニッケル六水塩とを溶媒に溶解させるステップである触媒の製造方法を提供する。
【0010】
また、第三の発明は、第一の発明を基礎として、前記第一溶解ステップは、硝酸ニッケル六水塩に代えて、硝酸ニッケル六水塩と硝酸パラジウム(Pd(NO)とを溶媒に溶解させるステップである触媒の製造方法を提供する。
【0011】
また、第四の発明は、第一の発明を基礎として、前記第一溶解ステップは、硝酸ニッケル六水塩に代えて、硝酸鉄九水塩と硝酸ニッケル六水塩と硝酸パラジウム(Pd(NO)とを溶媒に溶解させるステップである触媒の製造方法を提供する。
【0012】
また、第五の発明は、第一の発明を基礎として、前記第一溶解ステップは、硝酸ニッケル六水塩に代えて、硝酸鉄九水塩と硝酸ニッケル六水塩と硝酸ルテニウム(Ru(NO)とを溶媒に溶解させるステップである触媒の製造方法を提供する。
【0013】
また、第六の発明は、第一の発明を基礎として、前記第一溶解ステップは、硝酸ニッケル六水塩に代えて、硝酸鉄九水塩と硝酸ニッケル六水塩と硝酸ロジウム(Rh(NO)とを溶媒に溶解させるステップである触媒の製造方法を提供する。
【0014】
また、第七の発明は、第一、第三、第四、第五又は第六の発明を基礎として、硝酸鉄九水塩と硝酸ニッケル六水塩とを溶媒に溶解させる第二溶解ステップと、前記第二溶解ステップにて得られた溶液にテトラエトキシシランを加える第二テトラエトキシシラン添加ステップと、前記第二添加ステップ後の溶液を撹拌する第二撹拌ステップと、前記第二撹拌ステップ後の溶液に酸化アルミニウムを添加する第二酸化アルミニウム添加ステップと、前記第二酸化アルミニウム添加ステップ後の溶液を撹拌する第二酸化アルミニウム添加後撹拌ステップと、前記第二酸化アルミニウム添加後撹拌ステップ後の溶液を加水分解しゲル状物質を得る第二加水分解ステップと、前記第二加水分解ステップによって得られたゲル状物質を所定時間保持する第二保持ステップと、前記第二保持ステップ後のゲル状物質を焼成する第二焼成ステップと、前記第一焼成ステップにて得られた触媒と前記第二焼成ステップにて得られた触媒とを混合する混合ステップとをさらに有する触媒の製造方法を提供する。
【0015】
また、第八の発明は、第一から第六のいずれか一の発明を基礎として、前記第一焼成ステップの次に、硝酸パラジウムを添加する第一硝酸パラジウム添加ステップをさらに有する触媒の製造方法を提供する。
【0016】
また、第九の発明は、第七の発明を基礎として、前記第一焼成ステップ及び/又は前記第二焼成ステップの次に、硝酸パラジウムを添加する第一硝酸パラジウム添加ステップ及び/又は第二硝酸パラジウム添加ステップをさらに有する触媒の製造方法を提供する。
【0017】
また、第十の発明は、第七又は第九の発明を基礎として、前記混合ステップの次に、前記混合ステップにて得られた触媒に硝酸パラジウムを添加する第二硝酸パラジウム添加ステップをさらに有する触媒の製造方法を提供する。
【0018】
また、第十一の発明は、第一から第十のいずれか一の発明を基礎として、前記第一焼成ステップは、400℃以上450℃以下で実施される触媒の製造方法を提供する。
【0019】
また、第十二の発明は、第七、第九、第十又は第七、第九もしくは第十の発明に従属する第十一の発明を基礎として、前記第二焼成ステップは、400℃以上450℃以下で実施される触媒の製造方法を提供する。
【0020】
また、第十三の発明は、酸化アルミニウムを担体とし、担持される触媒成分として酸化シリコンが周囲に結合されたニッケルを含む触媒を提供する。
【0021】
また、第十四の発明は、第十三の発明を基礎として、前記触媒成分として鉄をさらに含む触媒を提供する。
【0022】
また、第十五の発明は、第十三又は十四の発明を基礎として、前記触媒成分としてパラジウムをさらに含む触媒を提供する。
【0023】
また、第十六の発明は、第十五の発明を基礎として、前記触媒成分としてパラジウムに代えてルテニウムをさらに含む触媒を提供する。
【0024】
また、第十七の発明は、第十五の発明を基礎として、前記触媒成分としてパラジウムに代えてロジウムをさらに含む触媒を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、バイオマスから得られる乾留液等から水素ガスや合成ガスを生成するために用いる触媒であって、従来の物理混合焼成法による製造の場合よりも低温下で製造した場合であっても触媒としての機能が低下しにくい触媒の製造方法を提供することが可能になる。また、かかる製造方法によって製造した触媒を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1の触媒の構成を示す概念図
図2】実施例1の触媒における酸化シリコンが周囲に結合されているニッケルの構成を示す概念図
図3】実施例2の触媒の構成を示す概念図
図4】実施例3の触媒の構成を示す概念図
図5】実施例1の触媒の製造方法における処理の流れの一例を示す図
図6】実施例1の製造方法によって製造した触媒を用いて行った水素ガス等の生成速度の経時変化の実験結果の一例を示す図
図7】実施例5の触媒の製造方法における処理の流れの一例を示す図
図8】実施例2の触媒の製造方法における処理の流れの一例を示す図
図9】実施例3の触媒の製造方法における処理の流れの一例を示す図
図10】実施例4の触媒の製造方法における処理の流れの一例を示す図
図11】実施例4の製造方法によって製造した触媒を用いて行った水素ガス等の生成速度の経時変化の実験結果の一例を示す図
図12】実施例1の製造方法によって製造した触媒を用いて行った水素ガス等の生成速度の経時変化の実験結果の一例を示す図
図13】実施例1の製造方法によって製造した触媒を用いて行った水素ガス等の生成速度の経時変化の実験結果の一例を示す図
図14】実施例1の製造方法によって製造した触媒を用いて行った水素ガス等の生成速度の経時変化の実験結果の一例を示す図
図15】実施例2の製造方法によって製造した触媒を用いて行った水素ガス等の生成速度の経時変化の実験結果の一例を示す図
図16】実施例3の製造方法によって製造した触媒を用いて行った水素ガス等の生成速度の経時変化の実験結果の一例を示す図
図17】実施例3の製造方法によって製造した触媒を用いて行った水素ガス等の生成速度の経時変化の実験結果の一例を示す図
図18】実施例3の製造方法によって製造した触媒を用いて行った水素ガス等の生成速度の経時変化の実験結果の一例を示す図
図19】実施例5の触媒の製造方法における処理の流れの一例を示す図
【符号の説明】
【0027】
0100、0300、0400a、0400b 触媒
0101、0301、0401 担持体
0102、0302、0402 酸化シリコン
0103、0303、0403 ニッケル
0202 酸化シリコンの酸素原子
0203 ニッケル原子
0304、0404 鉄
0405 パラジウム
S0501、S0701、S0801、S0901、S1001、S1901 第一溶解ステップ
S0502、S0702、S0802、S0902、S1002、S1902 第一テトラエトキシシラン添加ステップ
S0503、S0703、S0803、S0903、S1003、S1903 第一撹拌ステップ
S0504、S0704、S0804、S0904、S1004、S1904 第一酸化アルミニウム添加ステップ
S0505、S0705、S0805、S0905、S1005、S1905 第一酸化アルミニウム添加後撹拌ステップ
S0506、S0706、S0806、S0906、S1006、S1906 第一加水分解ステップ
S0507、S0707、S0807、S0907、S1007、S1907 第一保持ステップ
S0508、S0708、S0808、S0908、S1008、S1908 第一焼成ステップ
S0709、S1918 第一硝酸パラジウム添加ステップ
S1009、S1909 第二溶解ステップ
S1010、S1910 第二テトラエトキシシラン添加ステップ
S1011、S1911 第二撹拌ステップ
S1012、S1912 第二酸化アルミニウム添加ステップ
S1013、S1913 第二酸化アルミニウム添加後撹拌ステップ
S1014、S1914 第二加水分解ステップ
S1015、S1915 第二保持ステップ
S1016、S1916 第二焼成ステップ
S1017、S1917 混合ステップ
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施例を説明する。なお、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【実施例1】
【0029】
<概要>
本実施例は、バイオマスから得られる乾留液等から水素ガス又は合成ガスを生成するために用いる触媒の製造方法であって、低温下で製造することができ、しかも触媒としての機能が低下しにくい触媒の製造方法に関するものである。また、かかる製造方法によって製造される触媒も本実施例に含まれる。従来の水素ガス等の生成用のニッケル触媒は、高温下(600℃程度)で製造されたスピネル型結晶構造のものとすることでニッケルどうしがくっつかないようにしていたが、本実施例の製造方法では、触媒を構成するニッケルの周囲に酸化シリコンを結合させるようにしているため、これより低温下で製造したものであっても、ニッケルどうしが互いにくっつくことがなく、触媒の機能を低下させないようにすることが可能になっている。
【0030】
<処理の流れ>
(全般)
図5は、本実施例の触媒の製造方法における処理の流れの一例を示す図である。本図に示すように、当該処理の流れは、第一溶解ステップS0501と、第一テトラエトキシシラン添加ステップS0502と、第一撹拌ステップS0503と、第一酸化アルミニウム添加ステップS0504と、第一酸化アルミニウム添加後撹拌ステップS0505と、第一加水分解ステップS0506と、第一保持ステップS0507と、第一焼成ステップS0508とを有する。
【0031】
(第一溶解ステップ)
第一溶解ステップS0501は、硝酸ニッケル六水塩(Ni(NO・6HO)を溶媒に溶解させるステップである。好適な溶媒としてエチレングリコール(C)が挙げられる。本ステップにおいて用いられる溶質(硝酸ニッケル六水塩)及び溶媒の具体的な質量の一例については、本実施例における各ステップについて一通り説明した後、本実施例の触媒を用いたガス生成の実験結果の中で他のステップにおける数値とともに説明する。
【0032】
(第一テトラエトキシシラン添加ステップ)
第一テトラエトキシシラン添加ステップS0502は、前記第一溶解ステップで得られた溶液にテトラエトキシシラン(Si(OC)を加えるステップである。
【0033】
(第一撹拌ステップ)
第一撹拌ステップS0503は、前記第一テトラエトキシシラン添加ステップS0502後の溶液を撹拌するステップである。撹拌は、触媒材料の量に従った適切な撹拌装置を用いて行えばよい。
【0034】
(第一酸化アルミニウム添加ステップ)
第一酸化アルミニウム添加ステップS0504は、前記第一撹拌ステップS0503後の溶液に酸化アルミニウム(アルミナともいう。化学式Al)を添加するステップである。
【0035】
(第一酸化アルミニウム添加後撹拌ステップ)
第一酸化アルミニウム添加後撹拌ステップS0505は、前記第一酸化アルミニウム添加ステップS0504後の溶液を撹拌するステップである。
【0036】
(第一加水分解ステップ)
第一加水分解ステップS0506は、前記第一酸化アルミニウム添加後撹拌ステップS0505後の溶液を加水分解しゲル状物質を得るステップである。この処理により、ゲル状物質の中に硝酸ニッケルがイオン状態で存在する状態が得られる。
【0037】
(第一保持ステップ)
第一保持ステップS0507は、前記第一加水分解ステップS0506によって得られたゲル状物質を所定時間保持するステップである。保持の目的は、エージング(熟成)にあり、これによりゲル状物質の構造を安定させて高活性の触媒を得ることに資することができる。これにより硝酸ニッケルが分解され、酸化ニッケルが生成される。
【0038】
(第一焼成ステップ)
第一焼成ステップS0508は、前記第一保持ステップS0507後のゲル状物質を焼成するステップである。当該ステップは、400℃以上450℃以下で実施されることが望ましい。焼成温度が400℃未満であると、前駆体であるゲル状物質の分解が不充分となったり、ニッケルの周囲への酸化シリコンの結合や担持体を構成する酸化アルミニウムと酸化シリコンの結合が不充分になったりするおそれがあり、この結果、触媒の安定性に支障をきたすおそれが生じる。一方、焼成温度が450℃を超えると、触媒の比表面積が小さくなるおそれがあり、この結果、触媒の活性に支障をきたすおそれが生じる。
【0039】
以上の処理の結果、硝酸ニッケル六水塩が酸化ニッケルを経て加水分解によって発生した水素によって還元されてニッケルが生成されるとともに、テトラエトキシシランを用いて生成された酸化シリコンの酸素原子がニッケルの周縁部に位置しているニッケル原子と結合することで、酸化アルミニウムを坦持体とし、酸化シリコンが周囲に結合されたニッケルを含む触媒を得ることができる。
【0040】
<構成>
(全般)
次に、本実施例の製造方法を用いて製造された触媒の構成について説明する。図1は、本実施例の触媒の構成を示す概念図である。本図に示すように、本実施例の触媒0100は、酸化アルミニウム0101を坦持体とし、酸化シリコン0102(煩雑を避けるため1箇所にのみ符号を付す)が周囲に結合されたニッケル0103(同じく1箇所にのみ符号を付す)を含むものである。本図及び図2の例では、触媒を構成するニッケルは微結晶である。ここで「微結晶」とは、原子が空間的に繰り返し一定のパターンで配列されている構造を有し、その寸法が約0.001〜0.1ミクロンのものをいう。ただし、本発明において触媒を構成するニッケルは、非晶質のものであってもよい(他の実施例においても同様である)。なお、本発明におけるニッケルには、触媒の機能を妨げない程度の不純物が含まれていてもよい。
【0041】
本実施例の触媒の特徴は、ニッケルの周囲に酸化シリコンが結合されている点にあり、これにより、有機合成法を用いて低温下で触媒を製造しても、ニッケルどうしが互いにくっつくことがなく、触媒の機能を低下させないようにすることを可能にしたものである。
【0042】
(担持体)
触媒成分、すなわち触媒として機能する金属を固定するための土台となる担持体としては、酸化アルミニウムが用いられる。酸化アルミニウムは、化学的に安定しており還元されにくく、また比較的安価であることから、担持体として広く用いられているものである。
【0043】
(触媒)
本実施例における触媒に用いられるニッケルは炭化水素の接触分解触媒として従来から広く用いられているものである。接触分解触媒は、反応物に接触してこれを分解することで新たな生成物を得るための触媒であり、本実施例における接触分解触媒は、有機酸である酢酸、アルコール、グリセリン、バイオマスから得られる乾留液等の炭化水素に接触して、これを分解して水素(H)と一酸化炭素(CO)の合成ガスを生成するためのものである。これら反応物のなかでも、バイオマスから得られる乾留液は、生物資源に由来し、環境にやさしいといった利点がある。
【0044】
バイオマスから得られる乾留液の具体例としては、竹酢液、木酢液などが挙げられる。乾留とは、空気を断った状態で不揮発性の固体有機物を熱分解して、揮発性有機化合物と不揮発性物質を得ることをいう。竹酢液は、竹を乾留することにより炭(不揮発性物質)と粗竹酢液(揮発性有機化合物)が生成されるところ、このうちの粗竹酢液からタール等を除去した液体をろ過する方法などによって得られるものである。また、木酢液も木材を原料として同様の方法によって得られるものである。
【0045】
(ニッケルの周囲への酸化シリコンの結合)
本発明の触媒は、触媒成分であるニッケルの周囲に、酸化シリコン(二酸化ケイ素もしくはシリカともいう。化学式SiO)が結合している点に特徴がある。
【0046】
図2は、本実施例の触媒における酸化シリコンが周囲に結合されているニッケルの構成を示す概念図である。本図には、結晶体構造を有するニッケルの周縁部に位置しているニッケル(Ni)原子0203(煩雑を避けるため1箇所にのみ符号を付す)に対して酸化シリコンの酸素(O)原子0202(同じく1箇所にのみ符号を付す)が結合する形で、ニッケル微結晶の周囲に酸化シリコンが結合している状態が示されている。
【0047】
ニッケルの周囲に酸化シリコンを結合させる目的は、酸化シリコンが妨げとなってニッケルどうしがくっつくことができないようにすることで、ニッケルが坦持体上で分散した状態が保たれ、もって触媒としての機能が低下しないようにすることにある。
【0048】
なお、本実施例の触媒は、上述の製造方法によって製造されたものに限定されるものではなく、酸化アルミニウムを坦持体とし、酸化シリコンが周囲に結合されたニッケルを含むものであれば、すべて本実施例の発明の技術的範囲に含まれる。
【0049】
(その他:組成比など)
担持体及び触媒成分の構成比(重量%)は、例えば、酸化アルミニウムが約70%、ニッケルが約20%、酸化シリコンが約10%(合計100%)である。なお、触媒の特性を損なわない程度であれば不純物が含まれていてもよい。
【0050】
<実験結果(1)>
本実施例の製造方法によって製造された触媒を用いて合成ガス及び水素ガスの生成速度の経時変化について実験を行ってデータを得た。この実験結果について、上述の処理の流れで説明した各ステップに即して以下に説明する。
【0051】
まず、第一溶解ステップS0501において、硝酸ニッケル六水塩(関東化学株式会社製)12.38gをエチレングリコール(関東化学株式会社製)2.639gの溶媒に溶解させた。
【0052】
次に、第一テトラエトキシシラン添加ステップS0502において、前記第一溶解ステップS0501で得られた溶液にテトラエトキシシラン(関東化学株式会社製)4.430gを加えた。
【0053】
次に、第一撹拌ステップS0503において、前記第一テトラエトキシシラン添加ステップS0502後の溶液をAS ONE社のHOT PLATE STIRRER HPS−100PD攪拌機で60℃の状態で1時間撹拌した。
【0054】
次に、第一酸化アルミニウム添加ステップS0504において、前記第一撹拌ステップS0503後の溶液に酸化アルミニウム(添川理化学株式会社製)8.7g及び水2mlを添加した。
【0055】
次に、第一酸化アルミニウム添加後撹拌ステップS0505において、前記第一酸化アルミニウム添加ステップS0504後の溶液をAS ONE社のHOT PLATE STIRRER HPS−100PD攪拌機で2時間撹拌した。
【0056】
次に、第一加水分解ステップS0506において、前記第一酸化アルミニウム添加後撹拌ステップS0505後の溶液を80℃に保ちつつ、加水分解しゲル状物質を得た。
【0057】
次に、第一保持ステップS0507において、前記第一加水分解ステップS0506によって得られたゲル状物質を120℃で15時間静置した状態で保持した。
【0058】
さらに、第一焼成ステップS0508において、前記第一保持ステップS0507後のゲル状物質から、排気によって過剰のエチレングリコールを除去した後、空気気流中において450℃で3時間焼成した。
【0059】
以上のステップにより製造された触媒の組成は、酸化アルミニウムが70重量%、ニッケルが20重量%、酸化シリコンが10重量%という構成比となった。
【0060】
以上のような製造方法によって製造した触媒を用いて行った水素ガス等の生成速度の経時変化の実験結果の一例は、図6に示すとおりである。
【0061】
(実験結果(1)−1:竹乾留液を用いた場合)
図6は、竹乾留液を用いて生成を行った場合の水素ガス等の生成速度の経時変化の一例を示す。なお、乾留液の流量は0.06ml/min、反応温度は360℃、反応圧力は0.1MPaとした。本図から明らかなように、水素ガスの生成速度は、反応開始から約1時間までの間に急激に上昇し、ピーク時(反応開始後約0.9時間の時点)では約37mol/h・kg−cat.の値を示した。その後反応時間の経過につれて水素ガスの生成速度は漸減していくものの、反応開始後約3時間の時点以降は、25〜30mol/h・kg−cat.の値を推移し、反応開始後約6時間の時点でもなおこの水準を維持した。また、一酸化炭素の生成速度は、反応開始から約1時間までの間に増加して約10mol/h・kg−cat.のレベルに達した。その後は概ね横ばいで推移し、反応開始後約6時間の時点でも同水準を維持した。
【0062】
以上の実験の結果、この触媒を用いた場合の水素ガス等の生成速度の経時変化について好適な結果が得られた。従って、当該実験で用いた触媒の製造方法は、本実施例の製造方法についての好適な一例であるといえる。
【0063】
(実験結果(1)−2:モミガラ乾留液を用いた場合)
また、上記の竹乾留液に代えてモミガラ乾留液を用いて生成を行った場合についても同様の条件で実験を行った。以下でその結果を説明する。
【0064】
図12は、モミガラ乾留液を用いて生成を行った場合の水素ガス等の生成速度の経時変化を示す。乾留液の流量は0.0016ml/min、反応温度は360℃、反応圧力は0.1MPaとした。本図が示すように、水素ガスの生成速度は、反応開始から2時間後から3時間後までの間にピークを迎え、ピーク時(反応開始後約2.7時間の時点)では約21mol/h・kg−cat.の値を示した。その後反応時間の経過につれて水素ガスの生成速度は漸減していくものの、反応開始後約6時間の時点でもなお約16mol/h・kg−cat.の値を維持した。また、一酸化炭素の生成速度は、反応開始から約2.5時間後から漸増し、約7時間後に約4mol/h・kg−cat.のレベルに達した。
【0065】
(実験結果(1)−3:メタノールを用いた場合)
さらに、上記の竹乾留液等に代えてメタノール(CHOH)を用いて生成を行った場合についても同様の条件で実験を行った。以下でその結果を説明する。
【0066】
図13は、メタノールを用いて生成を行った場合の水素ガス等の生成速度の経時変化を示す。メタノールの流量は0.0313ml/min、反応温度は258℃、反応圧力は0.1MPaとした。なお、この実験結果に使用した触媒は、上述の製造方法に従い酸化アルミニウムが60重量%、ニッケルが20重量%、酸化シリコンが20重量%という構成比となるよう製造したものである。本図が示すように、反応速度において特段のピークは認められないが、反応開始から5時間を経過するまでの間、約40mol/h・kg−cat.の水準を維持した。
【0067】
図14は、図13で結果を示したのと同じ条件においてメタノール40重量%、水蒸気60重量%の生成を行った場合の水素ガス等の生成速度の経時変化を示す。本図が示すように、反応開始時に約34mol/h・kg−cat.の値を示してから漸減するものの反応開始から5時間後においても約30mol/h・kg−cat.の水準を維持した。
【実施例2】
【0068】
<概要>
本実施例の製造方法は、実施例1で説明した製造方法における第一溶解ステップにおいて硝酸ニッケル六水塩に代えて、硝酸鉄九水塩(Fe(NO・9HO)と硝酸ニッケル六水塩とを溶媒に溶解させるものである。また、本実施例の触媒はかかる製造方法によって得られる、酸化アルミニウムを坦持体とし、酸化シリコンが周囲に結合されたニッケルに加えて鉄を含むものである。
【0069】
<処理の流れ>
(全般)
図8は、本実施例の触媒の製造方法における処理の流れの一例を示す図である。本図に示すように、当該処理の流れは、基本的に図5で示した実施例1における処理の流れと同様である(なお、本図に示す各ステップは図5に示した同一名称の各ステップと同一である。後出の図9図10及び図7においても同様である)が、第一溶解ステップS0801は、実施例1と異なり、硝酸ニッケル六水塩に代えて、硝酸鉄九水塩(Fe(NO・9HO)と硝酸ニッケル六水塩とを溶媒に溶解させるステップである。第一テトラエトキシシラン添加ステップから第一焼成ステップまでの処理の流れは、実施例1で説明したところと同様である。従って、第一溶解ステップにおいて実施例1で説明した硝酸ニッケル六水塩に加えて硝酸鉄九水塩を溶媒に溶解させた後、実施例1と同様の手順で撹拌、加水分解を行って得られるゲル状物質を焼成する。以上の処理の結果、実施例1で説明したのと同様の手順によって生成される酸化シリコンが周囲に結合されたニッケルと、鉄を含む触媒を得ることができる。
【0070】
(具体的製造方法の一例)
次に、本実施例にかかる触媒の具体的製造方法の一例について、図8に示した各ステップに即して説明する。
【0071】
まず、第一溶解ステップS0801において、硝酸鉄九水塩(関東化学株式会社製)13.48gと硝酸ニッケル六水塩(関東化学株式会社製)2.60gをエチレングリコール(関東化学株式会社製)2.62gの溶液に溶解させる。なお、第一テトラエトキシシラン添加ステップS0802以下のステップについては、実施例1にかかる触媒の製造方法に関する実験結果について説明したものと同一であるので、説明を省略する。
【0072】
<構成>
(全般)
図3は、本実施例の触媒の構成を示す概念図である。本実施例の触媒0300は、実施例1の触媒と基本的に同じ構成を有するが、さらに鉄0304をも含むものである。本実施例の酸化アルミニウム0301及び酸化シリコン0302が周囲に結合されたニッケル0303の構成については実施例1と同じ構成であるので説明を省略する。
【0073】
(触媒成分)
本実施例における触媒はニッケルに加えて鉄を含む点に特徴がある。
【0074】
本実施例の触媒は、鉄を含むことで、合成ガスの生成過程における水性ガスシフト(Water Gas Shift)反応(一酸化炭素(CO)と水蒸気(HO)から二酸化炭素(CO)と水素(H)を生成する反応をいう。以下「WGS反応」という。)の反応速度が低温下においても低下しないようにし、鉄を加えない場合に比べて、生成される二酸化炭素と水素の量を、水素の量が増加する方向にシフトさせるものである。なお、鉄は微結晶であっても、非晶質のものであってもよい(他の実施例においても同様である)。
【0075】
(その他:組成比、利用可能性など)
担持体及び触媒成分の構成比(重量%)は、例えば、酸化アルミニウムが約66%、ニッケルが約5%、鉄が約20%、酸化シリコンが約9%(合計100%)である。
【0076】
<実験結果(2)>
図15は、モミガラ乾留液を用いて生成を行った場合の水素ガス等の生成速度の経時変化を示す。メタノールの流量は0.016ml/min、反応温度は360℃、反応圧力は0.1MPaとした。なお、この実験結果に使用した触媒は、上述の製造方法に従い酸化アルミニウムが65重量%、鉄が5重量%、ニッケルが20重量%、酸化シリコンが10重量%という構成比となるよう製造したものである。本図が示すように、水素ガスの生成速度は、反応開始から2.7時間後にピークを迎え約26mol/h・kg−cat.の値を示した。図12に示した実施例1の触媒による実験結果と比較するとピークに向かってより急峻な生成速度の上昇がみられ、かつピークにおける生成速度も大きい。このことから触媒中の鉄が水素ガス生成に寄与することが分かる。
【0077】
<効果>
本実施例の発明により、WGS反応の反応速度が低温下においても低下しないようにし、生成される二酸化炭素と水素の量を水素の量が増加する方向にシフトさせることが可能な触媒の製造方法、及びかかる製造方法によって製造される触媒を得ることが可能になる。
【実施例3】
【0078】
<概要>
本実施例の触媒は、実施例1または実施例2の触媒と比較して、パラジウムをさらに含む点に特徴がある。
【0079】
<処理の流れ>
図9は、本実施例の触媒の製造方法における処理の流れの一例を示す図である。本図に示すように、当該処理の流れは、基本的に図5で示した実施例1における処理の流れと同様である。第一溶解ステップS0901は、実施例1と異なり、硝酸ニッケル六水塩に代えて、硝酸ニッケル六水塩と硝酸パラジウム(Pd(NO)とを溶媒に溶解させるステップである。または、第一溶解ステップS0901は、実施例2と異なり、硝酸鉄九水塩と硝酸ニッケル六水塩と硝酸パラジウムとを溶媒に溶解させるステップである。換言すれば、本実施例における第一溶解ステップS0901は、実施例1の第一溶解ステップS0501又は実施例2の第一溶解ステップS0801の溶質に、更に硝酸パラジウムを加えたものである。
【0080】
<構成>
(全般)
図4は、本実施例の触媒の構成の概要を示す概念図である。図4(a)に示すように、本実施例の触媒0400aは、酸化アルミニウム0401を坦持体とし、酸化シリコン0402が周囲に結合されたニッケル0403に加えてパラジウム(Pd)0405を含むものである。あるいは、図4(b)に示すように、本実施例の触媒0400bは、酸化アルミニウム0401を坦持体とし、酸化シリコン0402が周囲に結合されたニッケル0403に加えて鉄0404及びパラジウム0405を含むものである。本実施例の担持体については実施例1で説明したところと同様である。
【0081】
(触媒成分)
本実施例における触媒は酸化アルミニウムを坦体とし、担持される触媒成分として酸化シリコンが周囲に結合されたニッケルに加えてパラジウムを含む触媒、または、酸化アルミニウムを坦体とし、担持される触媒成分として酸化シリコンが周囲に結合されたニッケルに加えて鉄及びパラジウムを含む触媒である。なお、パラジウムは、微結晶であっても非晶質ものであってもよい(他の実施例においても同様である)。
【0082】
ニッケルに加えてパラジウムを触媒に含める目的は、触媒の活性及び安定性を向上させるためである。パラジウムは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)等とともに強い触媒活性を有することが知られており、この性質を利用して触媒にパラジウムを少量付加することで、触媒を活性化し、合成ガスや水素ガスの生成の促進を図ることができる。また、パラジウムを触媒に含めることで、安定性、すなわち合成ガスや水素ガスの生成速度の経時変化を抑制して、長時間にわたって安定した速度でこれらのガスを生成することが可能になる。
【0083】
<実験結果(3)>
図16は、本実施例の触媒により廃グリセリン(C(OH))から生成を行った場合の水素ガス等の生成速度の経時変化を示す。反応温度は290℃とした。なお、この実験結果に使用した触媒は、酸化アルミニウムが59重量%、パラジウムが1重量%、ニッケルが20重量%、酸化シリコンが20重量%という構成比となるよう製造したものである。本図が示すように、水素ガスの生成速度は、反応開始から10時間経過するまでの間、約40mol/h・kg−cat.を前後する範囲で維持した。実施例1や実施例2における実験結果では、反応開始から時間の経過に伴い反応速度の漸減が認められたが、本実施例においてはそのような傾向が認められなかった。実施例1や実施例2における実験結果は廃グリセリンからの生成に関するものではないものの、パラジウム添加が反応の安定性向上に資することが推測できる。
【0084】
図17は、パラジウムに代えてルテニウムを含めた触媒によりモミガラ乾留液からの生成を行った場合の水素ガス等の生成速度の経時変化を示す。この触媒は、図9を用いて説明したステップのうち、第一溶解ステップにおいて硝酸パラジウムに代えて硝酸ルテニウムを溶媒に溶解させて製造したもの(その余のステップは図9を用いて説明したものと同様)である。モミガラ乾留液の流量は0.016ml/min、反応温度は360℃、反応圧力は0.1MPaとした。なお、この実験結果に使用した触媒は、上述の製造方法に倣い、酸化アルミニウムが69重量%、ルテニウムが1重量%、ニッケルが20重量%、酸化シリコンが10重量%という構成比となるよう製造したものである。本図が示すように、水素ガスの生成速度は、反応開始後7時間経過するまでの間、約15mol/h・kg−cat.前後で推移した。この実験結果でも、反応開始から時間の経過に伴う反応速度の漸減の程度が実施例1や実施例2における実験結果に比べて小さいことが認められた。従って、ルテニウム添加が反応の安定性向上に資することが推測できる。
【0085】
図18は、パラジウムに代えてロジウムを含めた触媒によりモミガラ乾留液からの生成を行った場合の水素ガス等の生成速度の経時変化を示す。この触媒は、図9を用いて説明したステップのうち、第一溶解ステップにおいて硝酸パラジウムに代えて硝酸ロジウムを溶媒に溶解させて製造したもの(その余のステップは図9を用いて説明したものと同様)である。モミガラ乾留液の流量は0.016ml/min、反応温度は360℃、反応圧力は0.1MPaとした。なお、この実験結果に使用した触媒は、上述の製造方法に倣い、酸化アルミニウムが69重量%、ロジウムが1重量%、ニッケルが20重量%、酸化シリコンが10重量%という構成比となるよう製造したものである。本図が示すように、この実験結果でも、時間の経過に伴う水素ガスの生成速度の漸減の程度は実施例1や実施例2における実験結果に比べて小さいといえる。従って、ロジウム添加が反応の安定性向上に資することが推測できる。
【0086】
<効果>
本実施例の発明により、パラジウムを含むことで、活性及び安定性を向上させた触媒の製造方法、及びかかる製造方法によって製造される触媒を得ることが可能になる。また、パラジウムに代えてルテニウム又はロジウムを含むことでも概ね同様の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0087】
<概要>
本実施例は、実施例1で述べた製造方法によって製造される触媒と、実施例2で述べた製造方法によって製造される触媒とを混合した触媒を製造する方法に関するものである。
【0088】
<処理の流れ>
図10は、本実施例の触媒の製造方法における処理の流れの一例を示す図である。本図に示すように、本実施例の方法は、実施例1の製造方法と同じステップ(ステップS1001〜S1008)によって製造される触媒と、実施例2の製造方法と同じステップ(ステップS1009〜S1016)によって製造される触媒とを、混合ステップS1017において混合するものである。
なお、本図において、実施例1の製造方法と実施例2の製造方法とを区別するため、実施例2の製造方法における各ステップを「第二」ステップと表記する。
【0089】
また、本実施例の方法は、実施例1の製造方法によって製造される触媒と、実施例3の製造方法によって製造される触媒とを混合するものであってもよい。この場合、実施例1の製造方法と同じステップ(図5に示したステップS0501〜S0508)によって製造される触媒と、実施例3の製造方法と同じステップ(図9に示したステップS0901〜S0908)によって製造される触媒とを、図10に示した混合ステップS1017で混合する。
【0090】
(混合ステップ)
本実施例における処理の流れの特徴は、混合ステップを有する点にある。ここでの混合は、第一焼成ステップにて得られた触媒と前記第二焼成ステップにて得られた触媒とを単に物理的に混合(物理混合)するものであって、何らの化学反応も伴わないものである。従って、このステップも低温下で実施することが可能である。
【0091】
<実験結果(4)>
次に、本実施例の製造方法を用いて製造された触媒を用いて行った水素ガス等の生成速度の経時変化についての実験結果について説明する。
【0092】
このような製造方法によって製造した触媒を用いて行った水素ガス等の生成速度の経時変化の実験結果の一例は、図11に示すとおりである。本図は、雑木から得られる乾留液(雑木乾留液)を用いて生成を行った場合の水素ガス等の生成速度の経時変化の一例を示す。本実験に用いた触媒は、実施例1で説明した方法を用いて焼成温度450℃で製造した触媒と、実施例2で説明した方法を用いて焼成温度450℃で製造した触媒を物理混合したものである。なお、乾留液の流量は0.015ml/min、反応温度は350℃、反応圧力は0.1MPaとした。本図から明らかなように、水素ガスの生成速度は、反応開始から約2時間までの間に急激に上昇し、ピーク時(反応開始後約2時間の時点)では約16mol/h・kg−catの値を示した。その後反応時間の経過につれて水素ガスの生成速度は漸減していくものの、反応開始後約18時間の時点でも依然として約12mol/h・kg−catの値を示した。一方、この実験においては、一酸化炭素はほとんど生成されなかった。以上のことから、本実施例の製造方法によって製造した触媒は、主に水素ガスの生成用に適したものであることが実証された。
【実施例5】
【0093】
<概要>
本実施例は、実施例1から4で説明した触媒の製造方法と基本的に共通するが、第一焼成ステップによって製造された触媒に硝酸パラジウムを添加するステップを付加したものである。硝酸パラジウムを加える目的は、実施例3で述べた硝酸パラジウムを加える目的と同様に、これにより得られるパラジウムの作用により触媒の活性及び安定性を向上させることにある。
【0094】
<処理の流れ>
図7は、本実施例の触媒の製造方法における処理の流れの一例を示す図である。本図に示すように、当該処理の流れは、第一溶解ステップS0701と、第一テトラエトキシシラン添加ステップS0702と、第一撹拌ステップS0703と、第一酸化アルミニウム添加ステップS0704と、第一酸化アルミニウム添加後撹拌ステップS0705と、第一加水分解ステップS0706と、第一保持ステップS0707と、第一焼成ステップS0708と、第一硝酸パラジウム添加ステップS0709とを有する。このうち、ステップS0701からS0708までの処理は、実施例1で説明したステップS0501からS0508までの処理、実施例2で説明したステップS0801からS0808までの処理又は実施例3で説明したステップS0901からS0908までの処理と同じである。第一硝酸パラジウム添加ステップは、第一焼成ステップにて焼成された触媒に硝酸パラジウムを添加するステップである。硝酸パラジウムを加えるには、製造された焼成後の触媒に対して、含浸法によって硝酸パラジウムを添加すればよい。添加された硝酸パラジウムは、その後の化学変化により酸化パラジウム(及び窒素酸化物)を経て、還元されてパラジウムとなる。
【0095】
実施例4で説明したような混合ステップを有する製造方法にあっては、例えば、混合ステップによって得られた触媒に対して、硝酸パラジウムが添加される。図19は、本実施例の触媒の製造方法における別の処理の流れの一例を示す図である。本図に示すように、当該処理の流れは、実施例4と同様の第一溶解ステップS1901から第一焼成ステップS1908までの各ステップ又は第二溶解ステップS1909から第二焼成ステップS1916までの各ステップ、混合ステップS1917、及び混合ステップによって得られた触媒に硝酸パラジウムを添加するステップである硝酸パラジウム添加ステップS1918を有する。あるいは、混合ステップの後に硝酸パラジウムを添加する方法に代えて、第一焼成ステップ及び/又は第二焼成ステップの次に硝酸パラジウムを添加するステップを設け、これにより得られた各触媒を混合ステップで混合してもよい。
【0096】
<効果>
本実施例の発明により、バイオマスから得られる乾留液等から水素ガスや合成ガスを生成するために用いる触媒であって、従来の物理混合焼成法による製造の場合よりも低温下で製造することが可能な触媒の製造方法を提供することが可能になる。特に、本実施例によれば、硝酸パラジウムを加えることで、パラジウムを含み、触媒の活性及び安定性を向上させることが可能になる触媒の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態のまとめ】
【0097】
本発明の触媒は、その構成を若干変えることで、合成ガスの生成用、水素ガスの生成用という使用目的に応じて多用途に用いることができるという点でも優れたものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】