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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年11月19日
【発行日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】経口摂取用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/12 20060101AFI20170331BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20170331BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20170331BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170331BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20170331BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170331BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20170331BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20170331BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20170331BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20170331BHJP
   A61K 36/9066 20060101ALI20170331BHJP
【FI】
   A61K31/12
   A61P3/06
   A61P1/16 101
   A61P35/00
   A61P39/06
   A61P29/00
   A61P37/08
   A61P25/00
   A61P9/00
   A61K47/38
   A61K36/9066
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】特願2016-519297(P2016-519297)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年5月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-101044(P2014-101044)
(32)【優先日】2014年5月15日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】507186687
【氏名又は名称】株式会社セラバリューズ
(71)【出願人】
【識別番号】504124370
【氏名又は名称】竹内 洋文
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 洋文
(72)【発明者】
【氏名】田原 耕平
(72)【発明者】
【氏名】今泉 厚
(72)【発明者】
【氏名】高橋 司
(72)【発明者】
【氏名】松井 崇人
(72)【発明者】
【氏名】小澤 瞳
【テーマコード(参考)】
4C076
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC11
4C076CC16
4C076CC27
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF06
4C076FF34
4C076GG02
4C088AB81
4C088AC13
4C088BA32
4C088MA52
4C088NA11
4C088ZA02
4C088ZA36
4C088ZA76
4C088ZB11
4C088ZB13
4C088ZB26
4C088ZC33
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA10
4C206CB14
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA72
4C206NA11
4C206ZA02
4C206ZA36
4C206ZA76
4C206ZB11
4C206ZB13
4C206ZB26
4C206ZC33
(57)【要約】
クルクミン及び/又はその類縁体の経口吸収性が改善され、かつ簡便で安価に製造できる経口摂取用組成物の提供。
クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体との複合体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体との複合体。
【請求項2】
クルクミン及び/又はその類縁体が、クルクミン又はウコン色素である請求項1記載の複合体。
【請求項3】
水溶性セルロース誘導体が、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース塩から選ばれる成分である請求項1又は2記載の複合体。
【請求項4】
(A)クルクミン及び/又はその類縁体と(B)水溶性セルロース誘導体の含有比率(A/B)が、0.02〜10である請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項5】
クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体とを含有する水−有機溶剤混合溶液から、溶媒を除去することにより得られるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項6】
クルクミン及び/又はその類縁体が、非晶質である請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合体を含有する経口摂取用組成物。
【請求項8】
クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体とを水−有機溶剤混合溶媒に溶解させる工程と、該溶液から水及び有機溶剤を除去する工程と、を有することを特徴とする、クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体との複合体の製造方法。
【請求項9】
クルクミン及び/又はその類縁体を有機溶剤に溶解する工程と、水溶性セルロース誘導体を水に溶解する工程と、クルクミン及び/又はその類縁体を含有する有機溶剤溶液と水溶性セルロース誘導体を含有する水溶液とを混合する工程と、当該混合溶液から水及び有機溶剤を除去する工程と、を有することを特徴とする、クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体との複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クルクミン及び/又はその類縁体を含有する経口摂取用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クルクミンは、ウコンの根茎から得られるウコン色素の主成分であるクルクミノイドの一つである。クルクミノイドは、利胆剤として古くから知られている他、腫瘍形成阻害作用、抗酸化作用、抗炎症作用、コレステロール低下作用、抗アレルギー作用、脳疾患予防作用、心疾患予防治療作用等を有することが知られている(特許文献1、2、非特許文献1〜9)。クルクミンはこのような生理活性を有することから、医薬品、化粧品、栄養補助食品等への応用が検討されている。
【0003】
ところが、クルクミンは水に対する溶解性が低く、経口摂取した際の吸収率が低いという問題がある。これを解決すべく微粒子化したクルクミノイドとガティガムを組み合わせることにより、経口吸収性が向上することが報告されている(特許文献3)。
また、クルクミンの光安定性及び着色力を改良する目的で、クルクミンと水溶性で分枝鎖のある、又は環状のポリサッカライド、タンパク等との複合体を形成させることも報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−41817号公報
【特許文献2】特願2010−260816号公報
【特許文献3】特開2009−263638号公報
【特許文献4】特開平3−97761号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Samaha HS, Kelloff GJ, Steele V, Rao CV, Reddy BS., Cancer Res., 57, 1301-5 (1997)
【非特許文献2】Huang MT, Lou YR, Ma W, Newmark HL, Reuhl KR, Conney AH., Cancer Res., 54, 5841-7 (1994)
【非特許文献3】Sreejayan, Rao MN., J Pharm Pharmacol., 46, 1013-6 (1994)
【非特許文献4】Srimal RC, Dhawan BN., J Pharm Pharmacol., 25, 447-52 (1973)
【非特許文献5】Rao DS, Sekhara NC, Satyanarayana MN, Srinivasan M., J Nutr., 100, 1307-16 (1970)
【非特許文献6】Babu PS, Srinivasan K,., Mol Cell Biochem., 166, 169-75 (1997)
【非特許文献7】Yano S, Terai M, Shimizu KL, Futagami Y, Horie S., Natural Medicines, 54, 325-9 (2000)
【非特許文献8】Maher P, Akaishi T, Schubert D, Abe K., NeurobiolAging., Jul 16. [Equb ahead of print] (2008)
【非特許文献9】Morimoto T, Sunagawa Y, KawamuraT, Takaya T, Wada H, NagasawaA, Komeda M, Fujita M, ShimatsuA, Kita T, Hasegawa K. J Clin Invest., 118, 868-878 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまで、経口摂取による体内へのクルクミンの吸収性を向上させたクルクミン組成物がいくつか開発されたが、経口摂取による体内への吸収性は未だ十分とは言えず、また、それらを製造するためには、特殊な技術や複雑な操作を必要とすることなどから、より経口吸収性の高いクルクミン及びその類縁体含有組成物を簡便で安価に製造する方法の開発が望まれている。
一方、特許文献4に記載のクルクミン複合体については、食品の着色剤として利用されるものであって、クルクミン及び/又はその類縁体の体内への吸収性が向上することについては示されていない。
従って、本発明の課題は、クルクミン及び/又はその類縁体の経口吸収性が改善され、かつ簡便で安価に製造できる経口摂取用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、クルクミン及び/又はその類縁体と種々の成分との混合物及びそれらの処理物の経口吸収性を検討してきたところ、クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体とから容易な操作で形成された複合体が、それらの混合物に比べて顕著に経口吸収性が向上しており、これを含有する組成物がクルクミン及び/又はその類縁体の種々の生理作用を確実に発揮させるための経口摂取用組成物として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔9〕を提供するものである。
【0009】
〔1〕クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体との複合体。
〔2〕クルクミン及び/又はその類縁体が、クルクミン又はウコン色素である〔1〕記載の複合体。
〔3〕水溶性セルロース誘導体が、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロース塩から選ばれる成分である〔1〕又は〔2〕記載の複合体。
〔4〕(A)クルクミン及び/又はその類縁体と(B)水溶性セルロース誘導体の含有比率(A/B)が、0.02〜10である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の複合体。
〔5〕クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体とを含有する水−有機溶剤混合溶液から、溶媒を除去することにより得られるものである〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の複合体。
〔6〕クルクミン及び/又はその類縁体が、非晶質である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の複合体。
〔7〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の複合体を含有する経口摂取用組成物。
〔8〕クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体とを水−有機溶剤混合溶媒に溶解させる工程と、該溶液から水及び有機溶剤を除去する工程と、を有することを特徴とする、クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体との複合体の製造方法。
〔9〕クルクミン及び/又はその類縁体を有機溶剤に溶解する工程と、水溶性セルロース誘導体を水に溶解する工程と、クルクミン及び/又はその類縁体を含有する有機溶剤溶液と水溶性セルロース誘導体を含有する水溶液とを混合する工程と、当該混合溶液から水及び有機溶剤を除去する工程と、を有することを特徴とする、クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体との複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体との複合体は、両者を含有する水−有機溶剤混合溶液から容易に形成され、かつこれを含有する組成物を経口摂取した際のクルクミン及び/又はその類縁体の経口吸収性は、それらの混合物を経口摂取した場合に比べて顕著に優れている。従って、本発明の複合体を含有する経口摂取用組成物は、クルクミン及び/又はその類縁体の生理作用を発揮できる医薬、化粧品、栄養補助食品、機能性食品等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】クルクミン投与量10mg/kgの場合のCmax(ng/mL)及びAUC(ng/mL・0〜2h)を示す。
図2】クルクミン投与量10mg/kgの場合のCmax(ng/mL)及びAUC(ng/mL・0〜2h)を示す。
図3】クルクミン投与量10mg/kgの場合のCmax(ng/mL)及びAUC(ng/mL・0〜2h)を示す。
図4】クルクミン投与量10mg/kgの場合のCmax(ng/mL)及びAUC(ng/mL・0〜2h)を示す。
図5】クルクミン投与量50mg/kgの場合のCmax(ng/mL)及びAUC(ng/mL・0〜2h)を示す。
図6】クルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース(9:1)複合体粉末のX線回折の結果を示す。
図7】クルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース(3:1)複合体粉末のX線回折の結果を示す。
図8】クルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース(1:1)複合体粉末のX線回折の結果を示す。
図9】クルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース(1:3)複合体粉末のX線回折の結果を示す。
図10】クルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース(1:9)複合体粉末のX線回折の結果を示す。
図11】クルクミン−ヒドロキシプロピルセルロース(1:3)複合体粉末のX線回折の結果を示す。
図12】クルクミン−ヒドロキシプロピルセルロース(1:9)複合体粉末のX線回折の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の複合体は、(A)クルクミン及び/又はその類縁体と(B)水溶性セルロース誘導体との複合体である。
【0013】
(A)クルクミンは、ウコン色素に含まれるクルクミノイドの主成分であり、下記構造式(1)で表される化合物である。
【0014】
【化1】
【0015】
本発明においてクルクミンは、化学合成されたクルクミンを用いてもよいし、ウコン色素として流通しているものを用いてもよい。ウコン色素としては、ショウガ科ウコン(Curcuma longa LINNE)の根茎の乾燥物を粉末にしたウコン末、該ウコン末を適当な溶媒(例えば、エタノール、油脂、プロピレングリコール、ヘキサン、アセトンなど)を用いて抽出して得られる粗製クルクミン或いはオレオレジン(ターメリックオレオレジン)、および精製したクルクミンを挙げることができる。
なお、クルクミンには、互変異性体であるケト型及びエノール型のいずれも含まれる。
【0016】
クルクミン類縁体としては、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、テトラヒドロクルクミン、ジヒドロキシテトラヒドロクルクミン等が挙げられる。なお、ウコン色素には、クルクミン、デメトキシクルクミン及びビスデメトキシクルクミンが含まれている。
【0017】
(B)水溶性セルロース誘導体としては、セルロースを構成するグルコースのヒドロキシ基の一部がエーテル化されたエーテル化セルロースが挙げられ、具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロース塩が挙げられる。ここで、カルボキシメチルセルロース塩としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のカルボキシメチルセルロースアルカリ金属塩、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のカルボキシメチルセルロースアルカリ土類金属塩が挙げられる。
これらの水溶性セルロース誘導体のうち、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがより好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがさらに好ましい。
【0018】
本発明の複合体中の(A)クルクミン及び/又はその類縁体と(B)水溶性セルロース誘導体の含有比率(A/B)は、優れた経口吸収性を得る点、及び製剤の小型化の点から0.02〜10が好ましく、0.03〜10がより好ましく、0.05〜10がさらに好ましく、0.1〜10がさらに好ましく、0.1〜5がさらに好ましく、0.1〜3がさらに好ましい。
【0019】
本発明の複合体とは、クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体との相互作用(例えば、水素結合、疎水結合やファンデルワールス力などの分子間力など)によって形成されたものをいう。なお、本発明の複合体の構造は明らかではないが、後記実施例に示すように、成分(A)及び成分(B)の混合物に比べて経口吸収性が格段に向上していることから、成分(A)と成分(B)とが何らかの複合体を形成していることは明らかである。クルクミン及びその類縁体は水にほとんど溶解せず、有機溶剤に溶解する。一方、水溶性セルロース誘導体は、水に良く溶解する。本発明の複合体は、クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体とを含有する水−有機溶剤混合溶液から、溶媒を除去することにより得られるものが好ましい。クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体の両者が水−有機溶剤混合溶媒中に一度溶解することにより、例えば両者の会合体のような複合体が形成されるものと推定される。
【0020】
本発明の複合体は、例えば、(A)クルクミン及び/又はその類縁体と(B)水溶性セルロース誘導体とを水−有機溶剤混合溶媒に溶解させる工程と、該溶液から水及び有機溶剤を除去する工程と、を含む方法により製造される。
より具体的には、(A)クルクミン及び/又はその類縁体を有機溶剤に溶解する工程と、(B)水溶性セルロース誘導体を水に溶解する工程と、クルクミン及び/又はその類縁体を含有する有機溶剤溶液と水溶性セルロース誘導体を含有する水溶液とを混合する工程と、当該混合溶液から水及び有機溶剤を除去する工程と、を含む方法により製造される。
【0021】
(A)クルクミン及び/又はその類縁体を溶解するための有機溶剤としては、親水性有機溶剤、例えばエタノール、イソプロパノール等のC2−C6アルコール、プロピレングリコール等のC2−C6グリコールが挙げられる。このうち、C2−C6アルコールが好ましく、エタノールがさらに好ましい。当該有機溶剤の使用量は、クルクミン及び/又はその類縁体を溶解できる量であればよい。また、水溶性セルロース誘導体を溶解するための水の使用量も、水溶性セルロース誘導体を溶解できる量であればよい。
【0022】
(A)クルクミン及び/又はその類縁体を含有する有機溶剤溶液と(B)水溶性セルロース誘導体を含有する水溶液の混合は、前記のようにA/Bが0.02〜10になるようにするのが好ましい。
【0023】
得られた混合溶液から水及び有機溶剤を除去する手段としては、蒸発乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、温風乾燥、冷風乾燥、風乾等が挙げられるが、減圧乾燥及び噴霧乾燥が好ましい。
【0024】
本発明の複合体は、クルクミン及び/又はその類縁体の経口吸収性が良好であり、その経口吸収性は、クルクミン及び/又はその類縁体と水溶性セルロース誘導体の混合物の経口吸収性に比べて顕著に優れている。従って、当該複合体を含有する経口摂取用組成物は、クルクミン及び/又はその類縁体の生理活性を経口投与で発揮させるための医薬品、化粧品、栄養補助食品、機能性食品、特定保健用食品として有用である。
【0025】
また、本発明に係る経口摂取用組成物中の前記複合体の含有量は、1回投与量の低減、味、経口吸収性の点から、10質量%以上が好ましく、15質量%以上、さらに30質量%以上が好ましい。また、前記複合体の含有量は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。具体的には、10〜80質量%が好ましく、15〜80質量%がより好ましく、30〜70質量%がさらに好ましく、30〜60質量%がさらに好ましい。
【0026】
本発明における医薬品、化粧品、栄養補助食品、機能性食品、特定保健用食品は、具体的には、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;加工乳、発酵乳等の乳製品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、ふりかけ、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられ、これらを製造するに当り通常用いられる添加物を使用することができる。
【0027】
上記の添加物としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、マンニット、デキストリン、クエン酸、クエン酸ソーダ、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンC、ビタミンB類、ビタミンE、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、ステビア、酵素処理ステビア、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
【0028】
また、本発明の経口摂取用組成物の形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、シロップ剤などが挙げられる。これらの製剤とするには、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤等を用いることができる。
【0029】
本発明の経口摂取用組成物の1日投与量は、通常成人あたりクルクミン量として一般に安全が確認されている0.03gから12gが好ましい。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0031】
実施例1〜13
(各種複合体の調製)
【0032】
実施例1〜5、9〜13
(調製方法A:スプレードライヤーを用いて乾燥)
70又は80%(v/v)エタノール溶液400mLに三栄源エフ・エフ・アイ社から供与されたクルクミン含有量が91.2%(w/w)のウコン抽出物粉末(Lot.NCTH0012012)1.10〜8.77g(クルクミン量として1.0〜8.0g)とヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC:メトローズSE−06又はSE−03、信越化学工業社製)又はヒドロキシプロピルセルロース(HPC:SSL、日本曹達社製)0.2〜64.8gとを添加し、約80℃に加温しながら撹拌することでクルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース複合体又はクルクミン−ヒドロキシプロピルセルロース複合体含有溶液を調製した。
また、前記クルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース複合体含有溶液に添加剤としてデキストリンを加えて溶解させることでデキストリンを含むクルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース複合体を調製した。
次いで、これら溶液をNガス密閉循環型噴霧方式二流体ノズル式スプレードライヤー(Pulvis Mini-SprayGS−31、ヤマト科学社製)を用いて、inlet temperature 140℃、outlet temperature 80〜90℃、spray pressure 0.10〜0.13MPa、feed rate 10mL/min、orifice pressure 75mmHgの条件で噴霧乾燥することでクルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース複合体又はクルクミン−ヒドロキシプロピルセルロース複合体を調製した。
【0033】
実施例6〜8
(調製方法B:エバポレーターを用いて乾燥)
70(v/v)エタノール溶液200又は400mLに三栄源エフ・エフ・アイ社から供与されたクルクミン含有量が91.2%(w/w)のウコン抽出物粉末(Lot.NCTH0012012)1.10又は2.19g(クルクミン量として1.0又は〜2.0g)とヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC:メトローズSE−06、信越化学工業社製)0.2、4、6又は10gとを添加し、約80℃に加温しながら撹拌することでクルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース複合体含有溶液を調製した。
次いで、該溶液をエバポレーター(rotary evaporator N-1000、EYELA社製)内に入れ、これを減圧しながら80℃に保持して溶媒を留去することで乾固させ、乾燥物を回収した。また、該乾燥物を乳鉢に入れて乳棒で粉砕することでクルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース複合体を調製した。
【0034】
実施例1〜13で得られた複合体の組成を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
試験例1
(各種複合体の経口吸収性)
(1)供試動物
供試動物は、6週齢のSDラット(雄性、体重170g〜260g、日本チャールス・リバー社)を用いた。
【0037】
(2)投与方法
投与方法は、投与前12時間以上絶食させた供試動物(n=3又は5)に、上記で調製した各種複合体(実施例1〜13)をそれぞれクルクミン濃度1mg/mLとなるように所定量を注射用水に添加して20mLにメスアップし、超音波発生装置を用いて混合した後、クルクミン投与用量が10mg/kg(投与試験例1〜13)又は50mg/kg(投与試験例14)となるように経口ゾンデを用いて強制的に経口投与した。
なお、クルクミン原末(比較試験例1)、クルクミン原末とヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末又はヒドロキシプロピルセルロース粉末とを単に物理的に混合(クルクミン:HPMC=1:3又はクルクミン:HPC=1:3)した物理混合物(比較試験例2、3)又は微粒子化したクルクミノイドとガディガムとを組み合わせたウコン色素組成物であるCR-031P粉末(セラバリューズ社製)(比較試験例4、5)を投与した場合を対照とした。
【0038】
(3)血漿中クルクミン濃度の測定
血漿中クルクミン及び/又はその類縁体濃度の測定は、投与開始30分、1時間及び2時間に供試動物の頸静脈から無麻酔下で約0.5mL採血を行うことで得たヘパリン血漿を用いて、以下の方法によって測定した。
【0039】
a.前処理
採血した血漿20μLに0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)100μLとβ−グルクロニダーゼ溶液(約68,000units/mL)10μLを加え、37℃で1時間保持した。その後、内部標準液であるメプロニル20ng/mLが含まれる50%(v/v)メタノール10μLとクロロホルム0.5mLとを添加し、ボルテックスミキサーを用いて1分間撹拌後、超音波発生装置を用いて15分間混合することで調製した抽出処理液を遠心分離(13,000×g、5分間、室温)によってクロロホルム層と水層とに分離した。なお、この抽出処理を2回繰り返した。次いで、該クロロホルム層を採取し、これを減圧遠心濃縮機を用いて溶媒を留去することで乾固させ、ここに50%(v/v)メタノール100μLを添加した後、遠心分離(13,000×g、5分間、室温)して上清液を回収した。
【0040】
b.測定方法
上記で調製した上清液2μLをLC−MS/MS(島津社製)を用いて分析を行うことで血漿中クルクミン濃度を測定した。なお、LC−MS/MS分析条件は、LCカラムがAtlantis T3(2.1×150mm,3μm,Waters社製)、カラム温度が40℃、流速が0.2mL/min、移動相がA:0.1%ギ酸水溶液、B:0.1%ギ酸/アセトニトリルとし、以下の条件でグラジェント溶出を行った。また、MS分析条件は、イオン化モードがElectron Spray thermo ionization(ESI)、Positive、測定モードがMultiple Reaction Monitoring(MRM)とし、クルクミン369.1→177.2(m/z)、メプロニル270→119(m/z)で評価した。
一方、試料中に含まれるクルクミン量を定量するために使用する検量線の作成は、クルクミンが1.0、2.0、3.9、7.8、15.6、31.3、62.5、125又は250ng/mLを含む50%(v/v)メタノール溶液(クルクミン標準液)90μLにメプロニル20ng/mLを含む50%エタノール溶液10μLを添加することで調製した各種標準溶液(クルクミン濃度9〜225ng/mL)を用いて上記同様の条件で測定することで行った。
【0041】
【表2】
【0042】
(4)結果
血漿中のクルクミン濃度(ng/mL)、最高血中濃度(Cmax(ng/mL))及び血中濃度−時間曲線下面積(AUC(ng/mL・0−2hr))を表3〜4及び図1〜5に示す。
表3〜4及び図1〜5から明らかなように、本発明の複合体は、クルクミン単独投与、及びクルクミンとHPMCとの混合物の投与に比べて顕著に経口吸収性が向上している。また、クルクミンとガティガム混合微粉砕物(CR−031P)と比べても経口吸収性が向上していた。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
試験例2(複合体中の非晶質クルクミンの安定性)
各種複合体中の非晶質クルクミンの安定性を調べることを目的に、上記で調製した各複合体(実施例1〜5及び10〜11)をそれぞれアルミパウチに入れて40℃で保持し、これら複合体中のクルクミンの結晶性を粉体X線回折装置(RINT−UltimaIII、Rigaku社製)を用いて経時的(試験開始時(0M)、試験開始1ヶ月後(1M)、試験開始2ヶ月後(2M)及び試験開始4ヶ月後(4M))に調べた(図6〜12)。
なお、対照として、ウコン抽出物粉末(対照A:原末)、ウコン抽出物粉末をエタノールに溶解させた後、上記調製方法Aに記載した方法と同様の条件でスプレードライしたウコン抽出物粉末SD品(対照B:原末SD品)及びウコン抽出物粉末とヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースとをウコン抽出物中のクルクミンと該水溶性セルロース誘導体との重量比で9:1〜1:9となるように単に混合して調製した物理混合品(対照C1〜5及び10〜11)とした。
【0046】
これらの結果を図6〜12に示す。
【0047】
a.クルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース複合体
クルクミンとヒドロキシプロピルメチルセルロースの比率が9:1の複合体(実施例1)及び3:1の複合体(実施例2)の場合、試験開始時(0M)にはクルクミン由来の結晶性を示すピークが認められず、複合体中のクルクミンは非晶質であった。40℃で1ヶ月以上保持した場合(1M、2M及び4M)には結晶性を示すピークが認められた(図6及び7)が、そのピークは若干であった。
【0048】
一方、クルクミンとヒドロキシプロピルメチルセルロースの比率が1:1の複合体(実施例3)、1:3の複合体(実施例4)及び1:9の複合体(実施例5)の場合、試験した期間内ではクルクミン由来の結晶性を示すピークは認められず、複合体中のクルクミンは非晶質であった(図8〜10)。
【0049】
以上の結果から、クルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース複合体におけるクルクミンとヒドロキシプロピルメチルセルロースの比率(クルクミン/ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を9/1〜1/9、特に3未満とすることによって該複合体中のクルクミンが長期間非晶質の状態に維持されることが分かった。
【0050】
b.クルクミン−ヒドロキシプロピルセルロース複合体
クルクミンとヒドロキシプロピルメチルセルロースの比率が1:3の複合体(実施例10)の場合、試験開始時(0M)にはクルクミン由来の結晶性を示すピークが認められず、複合体中のクルクミンは非晶質であった。40℃で1ヶ月以上保持した場合(1M及び2M)には結晶性を示すピークが認められた(図11)が、そのピークは若干であった。
【0051】
クルクミンとヒドロキシプロピルメチルセルロースの比率が1:9の複合体(実施例11)の場合、試験した期間内ではクルクミン由来の結晶性を示すピークは認められず、複合体中のクルクミンは非晶質であった(図12)。
【0052】
以上の結果から、クルクミン−ヒドロキシプロピルセルロース複合体におけるクルクミンとヒドロキシプロピルセルロースの比率(クルクミン/ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を9/1〜1/9、特に1/3未満とすることによって該複合体中のクルクミンが長期間非晶質の状態に維持されることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】