(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年12月23日
【発行日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】工作機械の制御装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4063 20060101AFI20170331BHJP
G05B 19/409 20060101ALI20170331BHJP
【FI】
G05B19/4063 L
G05B19/409 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】特願2016-528759(P2016-528759)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2014年6月20日
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】河合 理恵
(72)【発明者】
【氏名】瓶子 英樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 堅一
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269AB31
3C269BB07
3C269CC02
3C269CC07
3C269CC15
3C269QC01
3C269QC05
3C269QD02
3C269QD10
3C269QE02
3C269QE10
3C269QE17
3C269QE22
3C269QE26
(57)【要約】
主軸側構造体(Ps)およびテーブル側構造体(Pt)の図形および送り軸の移動方向を示す矢印(Ax、Ay、Az、Aa、Ab、Ac)の図形を記憶部(18)に記憶させ、手動運転に切換えられたとき、表示演算部(16)によって主軸側構造体(Ps)とテーブル側構造体(Pt)のうち移動する構造体に対する矢印の向きを演算し、演算された構造体と矢印の図形を、どの構造体が移動するのか分かるように区別して表示するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NCプログラムまたは手動による移動指令によって工作機械を運転する工作機械の制御装置において、
NCプログラム運転モードと手動運転モードとを切換える切換え手段、送り軸の座標系または送り制御機能を選択する座標系モード選択手段、および手動による移動指令を発する移動指令発生手段を有する入力部と、
前記工作機械の主軸側およびテーブル側の構造体の図形ならびに送り軸の移動方向を示す矢印の図形を記憶する記憶部と、
前記入力部の切換え手段が手動運転モードに切換えられたとき、前記記憶部から前記構造体の図形を受け取ると共に、前記座標系モード選択手段で選択された座標系または送り制御機能に応じて、前記主軸側の構造体とテーブル側の構造体のうち移動する構造体に対する矢印の向きを演算する表示演算部と、
前記表示演算部で演算された構造体と矢印の図形を表示する表示部と、
を具備することを特徴とした工作機械の制御装置。
【請求項2】
前記表示演算部で演算された構造体の図形は、移動する構造体と移動しない構造体とが区別して表示されるよう、異なる色、模様、輝度、点滅頻度の何れかの特徴付けをして表示される請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項3】
前記表示部に表示される構造体および矢印の図形は、3次元形状をした請求項1または2に記載の工作機械の制御装置。
【請求項4】
前記座標系モード選択手段で選択されるモードは、機械座標系モード、テーブル基準座標系モード、主軸基準座標系モード、工具先端中心送りモードおよび加工面座標系モードである請求項1〜3の何れか1項に記載の工作機械の制御装置。
【請求項5】
前記手動運転モードは、ジョグ送りとハンドル送りとから選択される請求項1〜4の何れか1項に記載の工作機械の制御装置。
【請求項6】
前記表示演算部は、刻々の送り軸の現在座標を受け取り、該現在座標を反映した前記主軸側とテーブル側の構造体の位置および姿勢も演算する請求項1〜5の何れか1項に記載の工作機械の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械において手動で送り軸を動かす際に、実際に移動する移動体およびその移動方向を事前に表示できるようにした工作機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X軸、Y軸、Z軸の直交3軸に加えてA軸、B軸またはC軸の少なくとも1つの回転送り軸を有した多軸のNC工作機械が広く利用されている。こうした多軸のNC工作機械では、主軸側構造体とテーブル側構造体とがX軸、Y軸、Z軸の直線送り軸方向およびA軸、B軸、C軸の回転送り軸方向に相対的に移動する。テーブルにワークを取り付け、主軸に工具を取り付けてワークを加工したり、主軸に測定プローブを取り付けてワークの寸法を測定したりする。送り軸をNCプログラムではなく、ジョグ送りやハンドル送りといった手動にて移動させるための手動運転モードは従来から公知となっている。
【0003】
工作機械は、直交三軸の送り軸および回転送り軸の全てが主軸側構造体に設けられている形態や、全ての送り軸がテーブル側構造体に設けられている形態もあるが、多くの場合、送り軸の一部が主軸側構造体に設けられ、他の送り軸がテーブル側構造体に設けられている。つまり、工作機械には、送り軸の配置の観点から多くの形態が存在する。例えばX軸についても、オペレーターの通常位置から見てテーブル側構造体が左右へ移動する工作機械では、テーブル側構造体が左方へ移動する方向がX軸の正(+)の方向であり、主軸側構造体が左右へ移動する工作機械では、主軸側構造体が右方へ移動する方向がX軸の正(+)の方向となる。
【0004】
また、テーブル側構造体がX軸に沿って移動する工作機械は、通常、テーブル側構造体が左方へ移動する方向がX軸の正(+)の方向となる位置に、オペレーターが配置されるように設計されることが多い。こうした工作機械であっても、オペレーターは、例えば工具とワークとの位置関係を確認するために、通常位置とは反対側の位置に移動して観察することがある。こうした場合には、オペレーターから見てテーブル側構造体が右方へ移動する方向がX軸の正(+)の方向となる。このように、オペレーターの立ち位置によっても構造体の正(+)の方向が異なるため、オペレーターは手動送りする際に、移動する構造体およびその移動方向を誤って認識し、例えば、工具とワークとを干渉させてしまう可能性がる。
【0005】
これを防止するために、従来から様々な技術が開発されている。例えば、特許文献1には、旋盤の刃物台の移動方向を、刃物台と矢印とによって表示するようにした旋盤の手動送り制御装置が記載されている。また、特許文献2には、G68等のGコードにより設定される仮想座標系を機械座標系と共に表示するようにしたプログラム表示装置が記載されている。更に、特許文献3には、X軸、Y軸、Z軸の直交三軸に沿って工具とワークとを手動送りする通常の直線動作と、X軸、Y軸、Z軸に平行でない斜線に沿って手動送りする斜線動作と、X軸、Y軸、Z軸の何れか2軸又は3軸の移動によって円弧に沿って手動送りする円弧動作可能な工作機械において、斜線動作が選択された場合に、予め設定した斜線の角度値に応じて前記選択した斜線動作及びその動作方向を表わした動作図を表示するようにした工作機械が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−58226号公報
【特許文献2】特許第2773517号公報
【特許文献3】特許第2802867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の発明では、固定されている主軸に対して刃物台が移動するようになっているので、主軸側構造体と、ワークを取り付けるテーブル側構造体の双方が移動する多軸の工作機械には、特許文献1の発明を適用することができない。
【0008】
また、特許文献2の発明では、仮想座標系は矢印によって表示されるが、手動送りによって移動する工作機械の移動体およびその移動方向が表示されないので、工作機械を操作するオペレーターは、手動送り操作によって工作機械のどの部分が移動するのか直感的には理解できない。
【0009】
更に、特許文献3の発明では、送り方向のみが矢印で表示されるので、オペレーターは、手動送り操作によって工作機械のどの部分が移動するのか、直感的に理解することができない。
【0010】
本発明は、こうした、従来技術の問題を解決することを技術課題としており、送り軸を手動で送り操作する際に、どの構造体をどの方向へ移動させればよいかを、実際に送り操作する前にオペレーターに分かりやすく図形表示し、誤操作を防止した工作機械の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、NCプログラムまたは手動による移動指令によって工作機械を運転する工作機械の制御装置において、NCプログラム運転モードと手動運転モードとを切換える切換え手段、送り軸の座標系または送り制御機能を選択する座標系モード選択手段、および手動による移動指令を発する移動指令発生手段を有する入力部と、前記工作機械の主軸側およびテーブル側の構造体の図形ならびに送り軸の移動方向を示す矢印の図形を記憶する記憶部と、前記入力部の切換え手段が手動運転モードに切換えられたとき、前記記憶部から前記構造体の図形を受け取ると共に、前記座標系モード選択手段で選択された座標系または送り制御機能に応じて、前記主軸側の構造体とテーブル側の構造体のうち移動する構造体に対する矢印の向きを演算する表示演算部と、前記表示演算部で演算された構造体と矢印の図形を表示する表示部とを具備する工作機械の制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、手動送り操作に先立って、主軸側構造体とテーブル側構造体のうち移動する構造体に対する矢印と共に、どの構造体が移動するのか分かるように区別して表示するようにしたので、誤操作を未然に防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明を適用する工作機械の一例を示す側面図である。
【
図2】本発明を適用する工作機械の他の例を示す側面図である。
【
図5】本発明の好ましい実施形態による制御装置のブロック図である。
【
図6】表示部に表示される画面の好ましい実施形態を示す図である。
【
図7】
図1の工作機械の機械座標系モードにおいて、画面上で手動送り軸としてX軸を選択したときに表示部に表示される図形を示す図である。
【
図8】機械座標系モードで表示部に表示される画面上で手動送り軸としてX軸を選択した後、ハンドル送り装置の送り軸選択スイッチでX軸を重畳的に選択したときに表示部に表示される図形を示す図である。
【
図9】機械座標系モードにおいて、画面上で手動送り軸としてY軸を選択したときに表示部に表示される図形を示す図である。
【
図10】
図9に示した図形を視点を90°回転させて表示した図形を示す図である。
【
図11】
図2の工作機械の機械座標系モードにおいて、ジョグ送りでA軸およびB軸を移動させる場合に表示部に表示される図形を示す図である。
【
図12】
図1の工作機械のテーブル基準座標系モードにおいて、ジョグ送りでZ軸を移動させる場合に表示部に表示される図形を示す図である。
【
図13】
図2の工作機械の主軸基準座標系モードにおいて、ジョグ送りでY軸を移動させる場合に表示部に表示される図形を示す図である。
【
図14】
図1の工作機械の加工面座標系モードにおいて、ジョグ送りでZ軸を移動させる場合に表示部に表示される図形を示す図である。
【
図15】
図2の工作機械の加工面座標系モードにおいて、ジョグ送りでY軸を移動させる場合に表示部に表示される図形を示す図である。
【
図16】
図1の工作機械の工具先端中心送りモードにおいて、ジョグ送りでC軸方向に回転させる場合に表示部に表示される図形を示す図である。
【
図17】
図2の工作機械の工具先端中心送りモードにおいて、ジョグ送りでB軸方向に回転させる場合に表示部に表示される図形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1を参照すると、本発明を適用する工作機械の一例が示されている。
図1において、工作機械100は立形マシニングセンタを構成しており、基台となるベッド102、ベッド102の上面に立設されたコラム104、ベッド102の上面においてコラム104の前方に配置されたテーブル112、テーブル112の上方において主軸110を鉛直な軸線(Z軸)周りに回転可能に支持する主軸頭108、主軸頭108をコラム104の前面に支持するY軸スライダー106を具備している。本実施形態では、テーブル112の前後方向(
図1において左右方向)にX軸、該X軸および主軸110の回転軸線であるZ軸に垂直な方向(
図1の紙面に垂直な方向)にY軸を定義する。
【0015】
コラム104はY軸方向に離間した一対の脚部を有しており、該一対の脚部の間に空洞部104aが形成される。Y軸スライダー106は、Y軸送り機構(図示せず)を介してY軸方向に往復可能にコラム104に取り付けられている。また、本実施形態では、コラム104の一方の側面には、工作機械100を操作するための操作盤300が取り付けられている。
【0016】
主軸頭108は、Z軸送り機構(図示せず)を介してY軸スライダー106の前面にZ軸方向に往復可能に取り付けられている。主軸頭108は、主軸110の先端がテーブル112に対面するように該主軸110をZ軸周りに回転可能に支持し、主軸110の先端には工具Tが装着される。
【0017】
キャリッジ116は、X軸送り機構(図示せず)を介してベッド102の上面にX軸方向に往復動可能に取り付けられている。キャリッジ116は、また、
図1に示すように、その少なくとも一部がコラム104の空洞部104a内に進入可能となっている。
【0018】
キャリッジ116は、
図1に示すように、概ねU字形に形成された揺動支持部材118をA軸送り機構(図示せず)を介してX軸と平行な軸線周りに揺動自在に支持している。揺動支持部材118の上面には、鉛直方向の中心軸線周りに回転可能なC軸送り機構(図示せず)を内蔵したC軸回転台114が取り付けられており、該C軸回転台114にはワークWを取り付けるテーブル112が取り付けられる。
【0019】
図2を参照すると、本発明を適用可能な工作機械の第2の例が示されている。
図2において、工作機械200は横形マシニングセンタとして構成されており、工場の床面に固定される基台となるベッド202、該ベッド202の後方部分の上面にZ軸送り機構を介して前後方向(Z軸方向、
図2では左右方向)に移動可能に取り付けられたコラム204、該コラム204の前面にY軸送り機構(図示せず)を介して上下方向(Y軸方向)に移動可能に取り付けられたY軸スライダー206、ベッド202の前方部分の上面にX軸送り機構を介して左右方向(X軸方向、
図2では紙面に垂直な方向)に移動可能に取り付けられたX軸スライダー216を具備する。X軸スライダー216の上面には、鉛直方向の中心軸線周りに回転可能なB軸送り機構(図示せず)を内蔵したB軸回転台218が取り付けられており、該B軸回転台218にはワークWを取り付けるテーブル220が取り付けられる。なお、
図2には示されていないが、工作機械200は、
図1の工作機械100の操作盤300と同様の操作盤を備えている。
【0020】
Y軸スライダー206には、C軸送り機構(図示せず)を内蔵したC軸回転台208がZ軸周りのC軸方向に回転可能に取り付けられている。C軸回転台208は一対のブラケット部210を有している。一対のブラケット部210には、A軸送り機構(図示せず)を介して主軸頭212がA軸方向に回転送り可能に取り付けられている。主軸頭212には、主軸214が長手方向の回転軸線O
sを中心に回転可能に支持されており、該主軸214の先端部に工具Tが取り付けられる。
【0021】
図3を参照すると、操作盤300は、電子回路板、配線、コネクタ等の電気部品を収納した直方体状の筐体302、筐体302の正面パネルに取り付けられた液晶パネルやタッチパネルのような表示部304、工作機械100、200の機械制御装置(図示せず)およびNC装置(図示せず)に必要な情報を入力したり、NCプログラムを編集するためのキーボード306、手動運転モード釦310およびMDIモード釦312を含む複数の釦集成体308、ジョグ送り釦314、非常停止釦316、ジョグ送りオーバーライド調節用の回転つまみ318を含んでいる。また、操作盤300には、ケーブル320を介してハンドル送り装置400が接続されている。
【0022】
ハンドル送り装置400は、電子回路板、配線、コネクタ等の電気部品を収納した直方体状の筐体402、筐体402の正面パネルに取り付けられた送り軸選択スイッチ404、目盛倍率スイッチ406、手動パルス発生器408および非常停止釦410を含む。オペレーターがハンドル送り装置400を操作盤300から外して、工具とワークとが見やすい場所に移動して手動運転できるように、ケーブル320は伸縮可能になっている。
【0023】
次に、
図5を参照して、本発明の工作機械の制御装置の実施形態を説明する。
図5において、制御装置10は、工作機械100、200のためのNC装置20を含んで構成することができ、入力部12、操作盤300の表示部304より成る表示部14、表示演算部16および記憶部18を具備する。NC装置20は、NC工作機械の技術分野において一般的に用いられているNC装置と同様に構成されており、入力部12からのNCプログラムを読取り、解釈する読取り解釈部22、補間部24、サーボ制御部26を含んでいる。読取り解釈部22は、加工プログラムを読取り解釈して動作指令22aを補間部24へ出力する。この動作指令は、少なくともX軸、Y軸、Z軸の直線送り軸およびA軸、B軸、C軸の回転送り軸の送り量と送り速度とを含んでいる。
【0024】
補間部24は、受け取った動作指令22aを補間関数に基づいて補間演算し、送り速度に合ったX軸、Y軸、Z軸およびA軸、B軸、C軸の位置指令(パルス位置指令)24aをサーボ制御部26に出力する。サーボ制御部26は、受け取った直線送り軸(X軸、Y軸、Z軸)および回転送り軸(A軸、B軸、C軸)の各位置指令24aから工作機械100、200の直線送り軸および回転送り軸を駆動するための電流値26aが、工作機械100、200のX軸、Y軸、Z軸送り機構およびA軸、B軸、C軸送り機構のサーボモータ(図示せず)に出力される。
【0025】
入力部12は操作盤300のキーボード306、釦集成体308、ジョグ送り釦314、非常停止釦316、ハンドル送り装置400およびNC装置20へNCプログラムを提供するCAMシステムを含む。入力部12からは、通常の工作機械と同様に、工作機械100、200によってワークWを所望形状に加工するのに必要な工具データやワークデータのようなデータ、加工条件およびNCプログラム等が入力される。更に、後述するように、入力部12から手動運転モードとNCプログラム運転モードの動作モード情報および座標系モードに関連した情報が入力される。
【0026】
記憶部18は、ROM、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶手段から成り、後述するように、表示部14に表示されるテーブル側構造体、主軸側構造体、各種矢印等の3次元形状の図形、および、その色に関するデータが格納されている。
【0027】
表示演算部16は、読取り解釈部22から手動運転モード指令を受け取ると、工作機械100、200から各送り軸の現在の座標値、すなわち、X軸、Y軸、Z軸の直線送り軸のデジタルスケールの読みと、A軸、B軸、C軸の回転送り軸のロータリーエンコーダの読みを受け取る。更に、表示演算部16は、選択された座標系モードに従い、表示部14に表示すべき図形を選択すると共に、工作機械100、200から受け取った各送り軸の現在の座標値に基づいて、選択された図形の表示位置および姿勢と、主軸側構造体とテーブル側構造体のうち移動する構造体の移動方向と、矢印の向きを演算し、以下に説明するように、表示部14に図形を表示する。
【0028】
以下、本実施形態の作用を説明する。
オペレーターが手動で送り軸を送り操作する際、オペレーターは、操作盤300の手動運転モード釦310を押して、NC装置20をNCプログラム運転モードから手動運転モードに切換える。また、座標系モードには、詳細に後述するように、(1)機械座標系モード、(2)テーブル基準座標系モード、(3)主軸基準座標系モード、(4)工具先端中心送りモード、および(5)加工面座標系モードの座標系または送り制御機能がある。
【0029】
手動運転モード釦310が押されると、
図6に示すような画面30が表示部14(操作盤300の表示部304)に表示される。
図6の画面30は、図形表示領域32、選択釦表示領域34、座標値表示領域36および加工条件表示領域38を含んでいる。
【0030】
図形表示領域32には、後述するように、3次元形状の主軸側構造体Psの図形、テーブル側構造体Ptの図形および矢印が表示される。なお、添付図面では、主軸側構造体Psの図形およびテーブル側構造体Ptの図形は単なる線画にて図示されているが、実際の表示部304では両者は色分け表示される。更に、主軸側構造体Psの図形およびテーブル側構造体Ptの図形の夫々を手動送りしたときに移動するアクティブ状態と、移動しない非アクティブ状態とで色分け表示するようにしてもよい。例えば、主軸側構造体Psの図形およびテーブル側構造体Ptの図形のアクティブ状態をそれぞれ緑色と橙色とし、非アクティブ状態を青色と灰色とするようにできる。色分けは、ハッチング等の各種模様(網かけ)で代替してもよいし、図形の輝度や点滅頻度を変えたりすることによって代替してもよい。その場合、ハッチング、輝度、点滅頻度に関するデータが記憶部18に格納される。このように、どの構造体が移動するのか分かるように区別して表示される。
【0031】
また、選択釦表示領域34には、手動モード釦40、座標系を選択する手段としての座標系モード釦42、44、46および手動による送り軸を選択する手段としての送り軸選択釦48、50、52、54、56、58が表示される。座標系モード釦は、テーブル基準座標系モード釦42、主軸基準座標系モード釦44、工具先端中心送りモード釦46を含む。送り軸選択釦はX軸選択釦48、Y軸選択釦50、Z軸選択釦52、A軸選択釦54、B軸選択釦56およびC軸選択釦58を含む。
【0032】
座標値表示領域36には、X軸、Y軸、X軸の直線送り軸の各々の現在のデジタルスケールの読み、および、A軸、B軸、C軸の回転送り軸の各々のロータリーエンコーダの現在の読みが表示される。加工条件表示領域38には、主軸110、214の現在の回転速度、直線送り軸の現在の実送り速度、現在使用している工具の直径、長さ等が表示される。
【0033】
機械座標系モード
機械座標系モードは、工作機械100、200の座標系、つまり、機械原点を基準としてX軸、Y軸およびZ軸のデジタルスケールや、A軸、B軸およびC軸のロータリーエンコーダの読みによって直接定義される座標系に従って主軸側構造体とテーブル側構造体とを相対移動させるモードである。
【0034】
図1の工作機械100において、先ず、オペレーターが操作盤300の手動運転モード釦310を押すと、NC装置20はNCプログラム運転モードから手動運転モードに切り換わり、表示部14(操作盤300の表示部304)に画面30が表示される。このとき、主軸側構造体Psの図形およびテーブル側構造体Ptの図形は、それぞれ例えば青色と灰色で表示される。次いで、オペレーターが画面30(タッチパネル)の手動モード釦40をタップし、かつ、座標系モード釦42〜46をタップしないことによって機械座標系モードとなる。つまり、
図5のブロック図において、手動運転モード釦310を押した後、座標系モード釦42〜46がタップされないと、機械座標系モードが選択されたと判断して、機械座標系モード指令が入力部12から読取り解釈22へ送出される。
【0035】
次いで、オペレーターが、例えばX軸選択釦48をタップすると、手動送り軸としてX軸が選択される。これによって、テーブル側構造体Ptの図形の色が、例えば非アクティブを示す灰色からアクティブを示す橙色に変化すると共に、
図7に示すように、「+X」が付された矢印Axがテーブル付近に橙色にて表示される。これは、X軸を正(+)方向へ移動させようとする場合、テーブル側構造体Pt(つまり
図1のキャリッジ116)が矢印Axで示す方向(負(−)方向は矢印Axとは反対の方向)へ移動することを表している。このように、テーブル側構造体Ptの図形の色を変化させることによって、オペレーターは、手動送りに際してテーブル側構造体(キャリッジ116)が移動することを容易に理解することが可能となる。
【0036】
この状態で、操作盤300のジョグ送り釦314の+釦を押すことによって、送り制御機能としてジョグ送りが選択されると共に、ジョグ送りによる移動指令が入力部12から読取り解釈部22へ出力され、NC制御装置20は、この移動指令に基づいてX軸送り機構のサーボモータを駆動する。
【0037】
また、このとき、ハンドル送り装置400の送り軸選択スイッチ404でY軸を選択する(回転つまみをYに合わせる)と、手動による送り軸としてY軸が選択され、画面30の主軸側構造体Psの図形が青色から緑色に変化すると共に、主軸側構造体Psの図形近傍に「+Y」が付された3次元形状の緑色の矢印Ayが表示される。これは、Y軸を正(+)方向へ移動させようとする場合、主軸側構造体Psが矢印Ayの方向(負(−)方向は矢印Ayとは反対方向)へ移動することを表している。
【0038】
この状態で、ハンドル送り装置400の手動パルス発生器408を時計周りの方向に回転すると、送り制御機能としてジョグ送りではなくハンドル送りが選択されると共に、ハンドル送りによる移動指令が入力部12から読取り解釈部22へ出力され、NC制御装置20は、この移動指令に基づいてY軸送り機構のサーボモータを駆動する。
【0039】
図形表示領域32の左下部には、ジョグ釦アイコン60と、ハンドルアイコン62が表示され、それぞれジョグ釦314とハンドル送り装置400に対応している。ジョグ釦アイコン60の+釦に相当する部分は橙色をしており、ハンドルアイコン62の矢印X部分は緑色をしており、ジョグ送りの場合は、橙色の構造体が移動し、橙色の矢印の方向が正(+)方向であることを示し、ハンドル送りの場合は、緑色の構造体が移動し、緑色の矢印の方向が正(+)方向であることを示している。
【0040】
図8は、画面30上でX軸を選択した後、ハンドル送り装置400の送り軸選択スイッチ404でもX軸を選択した場合を示している。テーブル側構造体Ptの図形が灰色から緑色になり、「+X」が付された緑色の矢印Axgと橙色の矢印Axoがテーブル構造体Ptの図形の近傍に表示される。また、ハンドル送り装置400の送り軸選択スイッチ404でY軸を選択、つまりハンドル送りでY軸を選択した後に、画面30のY軸選択釦50をタップする、つまりジョグ送りでY軸を選択すると、テーブル側構造体Ptの図形は灰色から橙色になる。このように、同じ送り軸を選択した場合は、後から選択した送りモードの色が優先される(上記の場合は、移動する構造体であるテーブル側構造体Ptの図形が緑色(ハンドル送りの場合)又は橙色(ジョグ送りの場合)に変化する)。
【0041】
図9は、画面30でY軸選択釦50をタップしたときの画面30の図形表示領域32を示している。この場合は、ジョグ送りでY軸を移動させることとなる。主軸側構造体Psとテーブル側構造体Ptの図形は、工作機械100のX軸、Y軸、Z軸のデジタルスケールの読みである現在の機械座標データにより、現在の主軸側構造体とワーク側構造体の実際の位置関係を反映している。移動する構造体である主軸側構造体Psの図形が橙色に変化し、その近傍に「+Y」が付された3次元形状の矢印Ayが表示される。
図9は、操作盤300の前に立つオペレーターの視点から見た主軸側およびテーブル側構造体Ps、Ptの図形を示しているが、工具とワークとが干渉するか否かが明確ではない。そこで、
図10のように、視点を90°回転させて表示させることによって、工具とワークとの位置関係が明瞭になる。このとき、矢印Ayの向きも視点の回転と共に変化するので、オペレーターが誤ってジョグ送り釦314の+と−とを間違えて、工具とワークとを干渉させてしまうことを防止可能となる。
【0042】
図2の工作機械200において、オペレーターが操作盤300の手動運転モード釦310を押し、表示部14(操作盤300の表示部304)に画面30を表示させ、画面30の手動モード釦40をタップした後、A軸選択釦54をタップすることによって、機械座標系モードと、手動送り軸としてA軸が選択される。こうして、
図11に示すように、ジョグ送りでA軸を移動させるとき、主軸側構造体Psの図形が青色から橙色に変化し、主軸頭付近に橙色で「+A」が付された3次元形状の矢印Aaが表示される。
【0043】
図11は、操作盤300のジョグ送り釦314+釦を押すことによって、主軸側構造体Psが矢印Aaの方向へ移動することを表している。このとき、ハンドル送り装置400の送り軸選択スイッチ404でB軸を選択すると、画面のテーブル側構造体Ptの図形が灰色から緑色に変化すると共に、テーブル付近に「+B」が付された3次元形状の緑色の矢印Abが表示される。これは、ハンドル送り装置400の手動パルス発生器408を回転すると、テーブル側構造体Ptが矢印Abの方向に移動することを表している。
【0044】
テーブル基準座標系モード
テーブル基準座標系モードは、工作機械100のように、テーブル側構造体Ptに回転送り軸のA軸、C軸を有した工作機械において、テーブル112のワークWを取り付けるワーク取付面に沿ってX軸とY軸とを定義し、これに垂直な方向にZ軸を定義する座標系に従って主軸側構造体Psとテーブル側構造体Ptとを相対移動させるモードである。より詳細には、工作機械100のA軸が0°(テーブル112が水平状態)でかつC軸が0°のときに、工作機械100の機械座標系と同じ方向に、
図12に示すように、テーブル112のワーク取付面に沿ってX軸およびY軸が定義され、かつ、ワーク取付面に垂直にZ軸が定義される。
図12は、A軸が−45°、C軸が−45°のときのワーク取付面に対するX軸、Y軸、Z軸を矢印Ax、Ay、Azで示している。テーブル基準座標系モードでは、A軸とC軸の双方または一方が回転すると、それに追従して矢印Ax、Ay、Azが回転する。
【0045】
図12は、画面30において手動モード釦40、テーブル基準座標系モード釦42およびZ軸選択釦52をそれぞれタップした後、ジョグ送り釦314によってジョグ送り操作するときの表示例である。この場合の「+Z」の方向は、
図12に示すように、斜め上方であり、ジョグ送り釦314の+釦を押すと、橙色にて表示される主軸側構造体Psがテーブル側構造体Ptに対して斜め上方に相対的に移動することを示している。実際には、工作機械100のX軸、Y軸およびZ軸の3つの直動送り軸が合成運動する。直動送り軸および回転送り軸が移動すると、表示演算部16の働きによって、主軸側構造体Psおよびテーブル側構造体Ptの表示位置が連動して変わると共に、矢印表示も追従して移動する。
【0046】
主軸基準座標系モード
主軸基準座標系モードは、
図2の工作機械200のように、主軸214をZ軸に対して傾斜させる回転送り軸を有した工作機械でのみ用いられる。従って、
図1の工作機械100のように、そうした回転送り軸を有していない工作機械では、主軸基準座標系モード釦44は表示されない。より詳細には、
図2の工作機械200において、A軸が0°(水平状態)、C軸が0°のときに、機械座標系と同じ向きに、X軸、Y軸、Z軸が主軸214に対して定義される。
図13では、A軸が−45°、C軸が0°のときの主軸に対するX軸、Y軸、Z軸が矢印Ax、Ay、Azで示されている。主軸基準座標系モードでは、A軸、C軸が回転するのに追随して、主軸と共に矢印Ax、Ay、Azが回転する。
【0047】
画面30において、手動モード釦40、主軸基準座標系モード釦44およびY軸選択釦50をそれぞれタップした後、ジョグ送り釦314によってジョグ送り操作するときの表示例である。この場合の「+Y」の方向は、
図13に示すように、斜め上方であり、ジョグ送り釦314の+釦を押すと、橙色にて表示される主軸側構造体Psがテーブル側構造体Ptに対して矢印Ayで示す斜め上方に相対的に移動することを示している。実際には、工作機械200のY軸とZ軸の直動送り軸が合成運動する。なお、
図2の工作機械200ように、主軸側にもテーブル側にも回転送り軸を有する工作機械では、テーブル基準座標系モードも選択することができ、その場合、テーブルのワーク取付面に沿って
図12と同様の矢印Ax、Ay、Azが表示される。
【0048】
加工面座標系モード
加工面座標系モードでは、ワークの傾斜した加工面に沿ってX軸とY軸が、そして法線方向にZ軸が定義される。NCプログラム中ではG68のようにGコードにて定義される。加工面座標系モードは、
図1に示す工作機械100のようにテーブル側に回転送り軸(A軸)を有した工作機械でも、
図2に示す工作機械200のような主軸側に回転送り軸(A軸)を有した工作機械でも選択可能である。なお、G68の指定は予めNCプログラムに入力されていてもよいし、オペレーターが手動運転に際して、操作盤300のMDIモード釦312とキーボード306とを用いて入力することもできる。
【0049】
図14は、
図1の工作機械100の加工面座標系モードの表示例を示している。ワークWの傾斜した加工面が主軸110に対して垂直になるように、A軸およびC軸が割り出され、加工面座標系のX軸、Y軸、Z軸の方向が矢印Ax、Ay、Azによって示されている。
図14の例では、手動送り軸としてZ軸が選択されており、ジョグ送り釦314の+釦を押すと、主軸側構造体Psが、テーブル側構造体Ptに対してZ軸の矢印Azで示す方向へ移動することを示している。
【0050】
図15は、
図2の工作機械200の加工面座標系モードの表示例を示している。主軸214がワークWの傾斜した加工面の法線方向に配向されるように、A軸を回転送りする。本例では、A軸のみが回転送りされるが、加工面の向きによっては、更にC軸をも回転送りしなければならない場合もある。
図15の例では、手動送り軸としてY軸が選択されており、ジョグ送り釦314の+釦を押すと、主軸側構造体Psがテーブル側構造体Ptに対して矢印Ayで示す方向へ移動することを示している。実際には、コラム204がZ軸方向に前進すると共に、Yスライダー206がY軸方向に上昇する。
【0051】
工具先端中心送りモード
工具先端中心送りモードは、工具とテーブルとの距離を維持するように送り軸を移動させる送り制御機能である。画面30で手動モード釦40、工具先端中心送りモード釦46をタップした後に、工具を何れの回転送り軸(A軸、B軸、C軸)に沿って追従させるかを送り軸選択釦54〜58の1つをタップして選択することによって、その送り軸に相当する矢印が表示される。
【0052】
図16は、
図1の工作機械100でテーブル側構造体Ptをジョグ送りで矢印Acの方向へ回転すると、主軸側構造体Psが追従して移動することを示している。
図17は、
図2の工作機械200でテーブル側構造体Ptをジョグ送りで矢印Abの方向に回転すると、主軸側構造体Psが追随して移動することを示している。
【0053】
本実施形態では、直動送り軸3軸に加え、回転送り軸を2軸または3軸有した工作機械について説明したが、回転送り軸が1軸のみの4軸工作機械や回転送り軸を有さない3軸工作機械にも本発明は適用できる。主軸側構造体がX軸に移動する3軸工作機械と、テーブル側構造体がX軸に移動する3軸工作機械とを1人のオペレーターが掛け持ちで運転したり、立形の工作機械の操作に慣れたオペレーターがY軸、Z軸の方向が異なる横形の工作機械を不慣れで運転する場合に、本発明は誤操作を防止する効果が大きい。
【符号の説明】
【0054】
10 制御装置
12 入力部
14 表示部
16 表示演算部
18 記憶部
20 制御装置
30 画面
32 図形表示領域
34 選択釦表示領域
100 工作機械
110 主軸
112 テーブル
200 工作機械
214 主軸
220 テーブル
300 操作盤
304 表示部
310 手動運転モード釦
314 ジョグ送り釦
400 ハンドル送り装置
【国際調査報告】