(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年12月23日
【発行日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】ブラスト加工装置及びブラスト加工装置列
(51)【国際特許分類】
B24C 9/00 20060101AFI20170331BHJP
【FI】
B24C9/00 L
B24C9/00 H
B24C9/00 E
B24C9/00 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】特願2016-529310(P2016-529310)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2014-125043(P2014-125043)
(32)【優先日】2014年6月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-263839(P2014-263839)
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】日比野 一路
(72)【発明者】
【氏名】水野 武夫
(57)【要約】
ブラスト加工装置は、内部にブラスト加工室を画成する筐体と、ブラスト加工室に配置され、圧縮空気と共に噴射材を噴射するブラスト加工用ノズルと、を備え、ブラスト加工装置の正面のみからメンテナンスを行えるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にブラスト加工室を画成する筐体と、
前記ブラスト加工室に配置され、圧縮空気と共に噴射材を噴射するブラスト加工用ノズルと、
を備えるブラスト加工装置であって、
前記ブラスト加工装置の正面のみからメンテナンスを行えるように構成されている、ブラスト加工装置。
【請求項2】
前記筐体は、
立設された外枠と、
底面が開口された箱状の上部ケーシングと、
前記外枠に支持された下部ケーシングであって、上端が開口された下部ケーシングと、
を備え、
前記下部ケーシングの上端に前記上部ケーシングの下端が嵌装されることで前記ブラスト加工室が画成され、
前記上部ケーシングは、その背面の下端を中心として前後方向に回動可能に設けられている、
請求項1に記載のブラスト加工装置。
【請求項3】
前記噴射材を排出する排出機構をさらに備え、
前記ブラスト加工装置の正面から前記排出機構へのアクセスが可能に構成されている、請求項1に記載のブラスト加工装置。
【請求項4】
前記ブラスト加工室内を吸引して粉塵を捕集する吸引機構をさらに備え、
前記ブラスト加工装置の正面から前記吸引機構へのアクセスが可能に構成されている、請求項2に記載のブラスト加工装置。
【請求項5】
前記ブラスト加工室と前記吸引機構との経路に、前記噴射材の分級機構をさらに備え、
前記分級機構は、円筒形状を呈し、軸線が水平方向に延びるように設けられ、一端面が閉止板により閉止された整流部材と、
前記整流部材の軸線に対して直角となるように該整流部材の他端に連結され、内部に噴射材を含む粉粒体を分級する空間を有する分級部材と、
前記吸引機構に一端が連結された円筒形状の吸引部材であって、前記閉止板を貫通して前記整流部材の内部に配置され、前記整流部材と同心状に配置された吸引部材と、
噴射材を含む粉粒体を前記整流部材の内壁に沿って前記分級部材に向かって移送されるように前記分級機構の内部に投入するための部材であって、前記整流部材の前記閉止板側に設けられた投入部材と、
を備える、請求項4に記載のブラスト加工装置。
【請求項6】
前記噴射材の貯留ホッパと、
前記貯留ホッパから前記ブラスト加工用ノズルに連結される噴射ホースと、
前記噴射ホースの交換機構と、
をさらに備え、
前記ブラスト加工装置の正面から前記交換機構へのアクセスが可能に構成されている、請求項1に記載のブラスト加工装置。
【請求項7】
前記噴射材を前記ブラスト加工用ノズルへ移送する噴射材移送機構をさらに備え、
前記ブラスト加工装置の正面から前記噴射材移送機構へのアクセスが可能に構成されている、請求項1に記載のブラスト加工装置。
【請求項8】
前記上部ケーシングには、前記ブラスト加工装置の正面から前記ブラスト加工室内を観察できる観察窓が設けられている、請求項2に記載のブラスト加工装置。
【請求項9】
前記外枠には、前記ブラスト加工装置の正面から前記圧縮空気の噴射圧力を調整できる操作デバイスが設けられている、請求項2に記載のブラスト加工装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載のブラスト加工装置を複数備え、複数のブラスト加工装置が並列配置されている、ブラスト加工装置列。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気源を用いてワークを研掃するブラスト加工装置に関する。より詳しくは、メンテナンス性に優れたブラスト加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気源を用いてワークを研掃するブラスト加工装置は公知である。特許文献1には、筐体内部にブラスト加工室が画成されたブラスト加工装置が記載されている。この装置では、筐体の前面に作業孔が設けられ、筐体の側面に開閉扉が設けられ、筐体の背面に流体サイクロトン、フィルタ及び排風機が配置されている。特許文献2には、筐体内部にブラスト加工室が画成され、集塵機を備えていないブラスト加工装置が記載されている。この装置では、筐体の側方に作業孔及び排出パイプが設けられており、筐体の後方に空気孔及びフィルタが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−173553号公報
【特許文献2】特許3513510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のブラスト加工装置では、メンテナンス性が不十分である。例えば、特許文献1,2に記載されたブラスト加工装置は、メンテナンスを行う場合、機器の前面だけでなく、機器の側面及び背面にアクセスしてメンテナンスを行う必要がある。このため、メンテナンスに必要なスペースを機器の周囲に確保する必要がある。さらに、作業員が機器の周囲を移動する必要がある。
【0005】
本技術分野では、メンテナンス性に優れたブラスト加工装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係るブラスト加工装置は、内部にブラスト加工室を画成する筐体と、ブラスト加工室に配置され、圧縮空気と共に噴射材を噴射するブラスト加工用ノズルと、を備えるブラスト加工装置であって、ブラスト加工装置の正面のみからメンテナンスを行えるように構成されている。
【0007】
このブラスト加工装置によれば、ブラスト加工装置の前面のみがブラスト加工装置のメンテナンス面、即ちメンテナンスにおいて必ずアクセスされる面、として構成されている。従って、作業者は装置の正面のみからメンテナンスを行うことができるので、作業者のメンテナンスが容易になる。さらに、装置の側方又は後方にメンテナンスのための作業スペースを設ける必要は無く、装置の正面に作業スペースがあればよい。よって、この装置はメンテナンス性に優れている。ここで、「装置の正面」とは、ブラスト加工装置の操作(例えば、ブラスト加工装置の作動・停止、ブラスト加工室内にワークのセット及び取り出し、ワーク又はブラスト加工用ノズルを手動で走査する場合におけるこれらの走査、等)を行う側をいう。
【0008】
一実施形態に係るブラスト加工装置における筐体は、立設された外枠と、底面が開口された箱状の上部ケーシングと、上端が開口された下部ケーシングと、を備えてもよい。この下部ケーシングは、外枠に支持されてもよい。そして、上部ケーシングは、その背面の下端を中心として前後方向に回動可能に設けられてもよい。ブラスト加工室を画成する上部ケーシングが前後方向に回動するため、作業者はブラスト加工室の開閉のために装置側方や後方に移動する必要がない。
【0009】
一実施形態に係るブラスト加工装置は、噴射材を排出する排出機構をさらに備えてもよい。そして、ブラスト加工装置は、ブラスト加工装置の正面から排出機構へのアクセスが可能に構成されてもよい。この場合、作業者は装置の正面から排出機構のメンテナンスを行うことができる。
【0010】
一実施形態に係るブラスト加工装置は、ブラスト加工室内を吸引して粉塵を捕集する吸引機構をさらに備えてもよい。そして、ブラスト加工装置は、ブラスト加工装置の正面から吸引機構へのアクセスが可能に構成されてもよい。この場合、作業者は装置の正面から粉塵を捕集したフィルタの交換や粉塵の回収等のメンテナンスを行うことができる。
【0011】
一実施形態に係るブラスト加工装置は、ブラスト加工室と吸引機構との経路に、噴射材の分級機構を更に備えてもよい。この分級機構は、整流部材と、分級部材と、吸引部材と、投入部材と、を備え、それぞれの構成は以下の構成としてもよい。
(1)整流部材は、円筒形状を呈し、軸線が水平方向に延びるように設けられ、一端面が閉止板により閉止される。
(2)分級部材は、整流部材の軸線に対して直角となるように整流部材の他端に連結され、内部に噴射材を含む粉粒体を分級する空間を有する。
(3)吸引部材は、円筒形状であって、吸引機構に一端が連結される。そして、閉止板を貫通して整流部材の内部に配置され、整流部材と同心状に配置される。
(4)投入部材は、粉粒体を分級機構の内部に投入するための部材であり、整流部材の閉止板側に設けられている。この投入部材は、噴射材が整流部材の内壁に沿って分級部材に向かって移送されるように配置されている。
【0012】
このように構成された分級機構は、ブラスト加工装置で広く用いられているサイクロン式分級機より高さが低いので、ブラスト加工装置の側方に分級機構のメンテナンスを行うための脚立を置くスペースを設ける必要がない。この場合、作業者は装置の正面から分級機構のメンテナンスを行うことができる。
【0013】
一実施形態に係るブラスト加工装置は、噴射材の貯留ホッパと、貯留ホッパからブラスト加工用ノズルに連結される噴射ホースと、噴射ホースの交換機構と、をさらに備えてもよい。そして、ブラスト加工装置は、ブラスト加工装置の正面から交換機構へのアクセスが可能に構成されてもよい。この場合、作業者は装置の正面から噴射ホース交換のメンテナンスを行うことができる。
【0014】
一実施形態に係るブラスト加工装置は、噴射材をブラスト加工用ノズルへ移送する噴射材移送機構をさらに備えてもよい。そして、ブラスト加工装置は、ブラスト加工装置の正面から噴射材移送機構へのアクセスが可能に構成されてもよい。この場合、作業者は装置の正面から噴射材移送機構のメンテナンスを行うことができる。
【0015】
一実施形態においては、上部ケーシングには、ブラスト加工装置の正面からブラスト加工室内を観察できる観察窓が設けられていてもよい。この場合、作業者は装置の正面からブラスト加工室内の様子を観察することができる。
【0016】
一実施形態においては、外枠には、ブラスト加工装置の正面から圧縮空気の噴射圧力を調整できる操作デバイスが設けられていてもよい。この場合、作業者は装置の正面から噴射圧力調整を行うことができる。
【0017】
本発明の他の側面に係るブラスト加工装置列は、上述したブラスト加工装置を複数備える。そして、複数のブラスト加工装置が並列配置される。上述したブラスト加工装置は、その側方にメンテナンスを行うためのスペースを設ける必要がないため、装置間の距離を従来に比べて短くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の一側面及び実施形態によれば、メンテナンス性に優れたブラスト加工装置が提供される。また、本発明の他の側面によれば、隣接するブラスト加工装置同士の距離が従来のブラスト加工装置列より短いブラスト加工装置列が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係るブラスト加工装置の外観を示す模式図である。
図1の(A)は正面図、
図1の(B)は右側面図、
図1の(C)は背面図、である。
【
図2】
図1の(A)におけるA−A断面を示す模式図である。
【
図3】
図2に示すブラスト加工用ノズルを説明するための模式図(部分断面図)である。
【
図4】
図2に示す分級機構を説明するための模式図である。
図4の(A)は側面図、
図4の(B)は
図4の(A)におけるA−A断面を示す模式図、である。
【
図5】
図2に示す貯留ホッパ及び噴射材移送機構を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態に係るブラスト加工装置の一例を、図を用いて説明する。本発明は本実施形態に限定されず、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加えることができる。なお、以下の説明における「上下左右の方向」は、特に断りのない限り図中の方向を指す。「上下」が図中のZ方向であり、「左右」が図中のX方向、奥行き方向が図中のY軸の正の方向、手前方向が図中のY軸の負の方向である。
【0021】
図1及び
図2に、本実施形態に係るブラスト加工装置1を示す。
図1は、本実施形態に係るブラスト加工装置1の外観を示す模式図である。
図1の(A)は正面図、
図1の(B)は右側面図、
図1の(C)は背面図、である。
図2は、
図1の(A)におけるA−A断面を示す模式図である。ブラスト加工装置1は、例えば、ブラスト加工用ノズル10、筐体20、分級機構30、吸引機構40、貯留ホッパ50、噴射材移送機構60、及び、底面を形成する基台70を備えている。
【0022】
ブラスト加工用ノズル10は、いわゆる吸引式である。ブラスト加工用ノズル10は、後述するブラスト加工室Rに配置され、圧縮空気と共に噴射材を噴射する。
図3は、
図2に示すブラスト加工用ノズルを説明するための模式図(部分断面図)である。
図3に示すように、ブラスト加工用ノズル10は、例えば、ノズルホルダ11、円筒形状の空気ノズル12、及び、円筒形状の噴射ノズル13を備えている。ノズルホルダ11は、その内部に圧縮空気と噴射材とを混合する混合室11cが形成されている。ノズルホルダ11は、混合室11cに連通する3つの開口を備えている。例えば、ノズルホルダ11は、噴射材吸引口11a、空気ノズル挿入口11d及び噴射ノズル挿入口11eを有する。空気ノズル挿入口11d及び噴射ノズル挿入口11eは、その中心が同軸である。噴射材吸引口11aは、空気ノズル挿入口11d及び噴射ノズル挿入口11eが並ぶ方向と交差する向きに形成されている。噴射材吸引口11aは、噴射材をノズルホルダ11内部に投入(吸引)するための開口である。噴射材吸引口11aは、ノズルホルダ11の内部に形成された経路11bに連通されている。経路11bは、混合室11cに連通している。空気ノズル12は、空気ノズル挿入口11d(ノズルホルダ11の一端側(
図3では上端面側))に挿嵌して固定されている。噴射ノズル13は、噴射ノズル挿入口11e(ノズルホルダ11の他端側)に挿嵌して固定されている。空気ノズル12及び噴射ノズル13は、それぞれの横断面の中心線が略同一線上に位置するように配置されている。ノズルホルダ11及び噴射ノズル13の内面によって、ノズルホルダ11の内部には、混合室11cが画成される。
【0023】
空気ノズル12は、ノズルホルダ11内部に圧縮空気を噴射する為のノズルである。圧縮空気の経路12aには、圧縮空気の流速を加速させるための加速部12bを有している。空気ノズル12は図示しないコンプレッサに接続されている。
【0024】
噴射ノズル13は、混合室11cで混合された圧縮空気と噴射材とを固気二相流として噴射口13aより噴射する為のノズルである。固気二相流の経路は、ノズルホルダ11側端面より、先端に向かって連続して縮径している加速部13cと、加速部13cを通過した固気二相流の流れを整流する整流部13dと、で形成されている。
【0025】
空気ノズル12によりノズル内部に圧縮空気が噴射されると、ノズルホルダ11の内部、即ち混合室11cで吸引力が発生する。この吸引力は空気ノズル12の先端と噴射ノズル13の内壁面との距離によって大きさが変わるので、最適な吸引力となるように空気ノズル12を上下方向に調整し、図示しないボルト等でノズルホルダ11に固定する。噴射材吸引口11aより投入(吸引)された噴射材は、経路11bを通過し、混合室11cに移送される。混合室11cに到達した噴射材は、圧縮空気と混合される。混合された圧縮空気と噴射材は、経路13bを通り、噴射口13aより噴射される。
【0026】
噴射ノズル13からの噴射圧力の調整は、後述の外枠23の前面(ブラスト加工装置1の正面側)に配置された圧力調整弁V(操作デバイス)によって行う。圧力調整弁Vは、外部のエアコンプレッサ(図示せず)から空気ノズル12への経路に設けられている。噴射ノズル13から噴射している際に、圧力調整弁Vに連結された圧力計の数値が所定の圧力を指すように圧力調整弁Vによって圧縮空気の圧力が調整される。この構成により、固気二相流の噴射圧力の確認及び設定を少なくともブラスト加工装置1の正面のみで行うことができる。
【0027】
エアコンプレッサから空気ノズル12への経路の途中には、例えば、さらに電磁弁E及び電磁弁Eに連結されたフットスイッチ(図示せず)が設けられている。当該フットスイッチによって電磁弁EのON・OFF、即ち空気ノズル12への圧縮空気の供給の有無を切り替えることができる。作業者がブラスト加工を行っている際にフットスイッチを操作できるように、フットスイッチはブラスト加工装置1の前方に配置することができる。この構成により、噴射材の噴射のON・OFFの切り替えを少なくともブラスト加工装置1の正面のみで行うことができる。
【0028】
筐体20は、
図1及び
図2に示すように、例えば、上部ケーシング21、下部ケーシング22、及び、下部ケーシング22に固定された外枠23を備える。筐体20は、その内部にブラスト加工室Rを画成する。具体的には、上部ケーシング21及び下部ケーシング22の内部にブラスト加工室Rが画成されている。
【0029】
上部ケーシング21は、例えば、底面が開口された箱状を呈する。開口の形状は、例えば、四角形である。上部ケーシング21は、ブラスト加工室Rを画成する部材の一つである。具体的には、上部ケーシング21は、基台70に対してそれぞれ平行に対向する天面及び底面、底面に対して垂直に立設された4つの側面(それぞれ平行に対向する左右側面、前面及び背面)、並びに、天面と前面及び背面とを連結するように設けられた斜面を有する。上部ケーシング21の前面側の斜面には、ブラスト加工室Rの内部を観察可能な観察窓(のぞき窓)21aが設けられている。また、上部ケーシング21の天面には外光をブラスト加工室Rの内部に取り入れるための採光窓21bが設けられている。観察窓21a及び採光窓21bは、例えば、石英ガラスなどで形成された可視性を有する板部材を窓枠部材に嵌め込んで形成される。また、上部ケーシング21の前面には、作業部21cが設けられている。作業部21cは、ブラスト加工室Rに連通する開口である。作業部21cは、ブラスト加工室R内を吸引した際に外気を取り込むための吸気口と、ブラスト加工時に作業者がブラスト加工室R内に手を入れるための開口部と、を兼ねている。本実施形態では、作業部21cには、中心部より放射状の複数本の切り込みを設けたゴム板が固定されている。
【0030】
下部ケーシング22は、例えば、上端面が開口された逆円錐台形状を呈する。下部ケーシング22は、ブラスト加工室Rを画成する部材の一つである。下部ケーシング22は、上部ケーシング21の底面より僅かに大きい上端面を有し、底面に向かって横断面の面積が連続して縮小する形状である。下部ケーシング22の上端には、上部ケーシング21の下端が嵌装される枠体22aが立設されている。また、下部ケーシング22の下端には、後述の投入部材34が接続されており、ブラスト加工室Rと分級機構30とが投入部材34を介して連結されている。
【0031】
外枠23は、例えば、上下端面が開口された箱状を呈する。開口の形状は、例えば、四角形である。外枠23は、基台70に立設されている。外枠23の上端は、下部ケーシング22の枠体22aに固定されている。つまり、外枠23は、下部ケーシング22を支持している。外枠23は、下部ケーシング22を基台70に対して所定の高さとなるように固定することができる。外枠23の前面及び背面の下部には、その内部にアクセス可能な開口部(切り欠き)23a,23bがそれぞれ設けられている。外枠23の前面側の開口部23aは、後述のように、分級機構30、吸引機構40、貯留ホッパ50、又は、噴射材移送機構60のメンテナンスを行う際に、作業員がこれらの構成要素にアクセスするために用いられることができる。外枠23の背面側の開口部23bは、吸引機構40により吸引した空気の排気及び吸引機構40にて発生した熱の放熱を行うことができる。
【0032】
また、外枠23の背面には、上部ケーシング21の背面の下端と外枠23(即ち下部ケーシング22)の背面の上端とが連結するように蝶番24が設けられている。これにより、上部ケーシング21は、その背面の下端を中心として前後方向に回動可能に設けられている。より具体的には、上部ケーシング21は蝶番24を中心に回動可能となっている。上部ケーシング21が回動することで、ブラスト加工室Rをブラスト加工装置1の前面で開閉することができる。また、外枠23の前面にはラッチ錠25が設けられている。ラッチ錠25によって、上部ケーシング21と外枠23(即ち下部ケーシング22)とが固定される。
【0033】
外枠23の側面には、上部ケーシング21が閉じていることを検知するセンサSが設けられている。このセンサSによって上部ケーシング21が閉じていることを検知しない場合、ブラスト加工装置1は作動しない。つまり、ブラスト加工室Rが開いている状態では噴射材をブラスト加工用ノズル10から噴射することができない。このため、作業者の安全性が向上する。
【0034】
ブラスト加工室Rには、ブラスト加工を行う際にワークを載置できる加工板26が固定されている。加工板26には、噴射材を含む粉粒体が底部に向かって通過できる、複数の開口が設けられている。
【0035】
図4は、
図2に示す分級機構30を説明するための模式図である。
図4の(A)は側面図、
図4の(B)は
図4の(A)におけるA−A断面を示す模式図、である。
図4に示すように、本実施形態の分級機構30には、下部ケーシング22から噴射材を含む粉粒体が供給される。分級機構30は、例えば、両端が開口された円筒状の整流部材31、略箱状の分級部材32、円筒状の吸引部材33及び矩形筒状の投入部材34を備える。
【0036】
円筒状の整流部材31は、その軸線(中心軸)が水平方向(X方向)に延びている。整流部材31の一端面(
図4の(B)では右側の端面)は、リング状の閉止板31a及び後述する吸引部材33により閉止されている。整流部材31の下端には、投入部材34が接続されている。これにより、投入部材34を介して粉粒体が整流部材31の内部に供給される。整流部材31の他端(
図4の(B)では左側の端面)は、分級部材32の上部に接続されている。これにより、整流部材31の内部と分級部材32の内部とは連通している。
【0037】
箱状の分級部材32は、正面方向(Y軸の正の方向)からみて縦長の四角形を呈し、側面方向(X方向)からみて、円形となる上部及び上部よりも幅の短い下部を有する。より詳細には、分級部材32の上部は、装置側面方向(
図4の(A)の視点(X方向))からみた縦断面が整流部材31の径以上の円形である。分級部材32は、整流部材31の軸線に対して直角となるように該整流部材31の他端に連結されている。分級部材32の下部は、上端から下端に向かって間隔が狭まるように伸延されている。即ち、分級部材32の下部は、下端に向かって横断面の面積が連続して縮小されている。分級部材32の側面下端部は、開口されている。分級部材32の底部には貯留ホッパ50が固定されている。
【0038】
円筒形状の吸引部材33は、その軸線(中心軸)が水平方向(X方向)に延びている。吸引部材33の外径は、整流部材31の内径よりも小さい。吸引部材33は、整流部材31の内部に配置される。吸引部材33は、整流部材31と同心状に配置される。このように、整流部材31及び吸引部材33によって、二重円筒構造になっている。吸引部材33の一端部(
図4の(B)では右側の端部)は、リング状の閉止板31aの開口部に接続されている。吸引部材33の一端部は、吸引機構40に接続されている。
【0039】
吸引機構40を作動させると、吸引部材33より整流部材31及び分級部材32の空間が吸引されるので、投入部材34より外気及び噴射材を含む粉粒体が分級機構30内に吸引される。投入された外気は吸引部材33からの吸引力によって分級部材32に向かう。ここで、
図4の(A)に示すように、投入部材34は、その下端面34aが整流部材31の円周内壁面に対して接線となるように設けられている。これにより、吸引された外気は、整流部材31の内壁面及び吸引部材33の外壁面にて形成される流路(整流部31b)を、整流部材31の内壁に沿って分級部材32に向かうように螺旋状に流れる。噴射材を含む粉粒体は、この気流に乗って分級部材32に向かって移送される。なお、投入部材34は、その上端面34bの延長仮想線が吸引部材33の円周外壁面に対して接線となるように設けてもよい。この場合であっても、吸引された外気は整流部31bにおいて吸引部材33の外壁に沿って分級部材32に向かうように螺旋状に流れ、噴射材を含む粉粒体はこの気流に乗って移送される。
【0040】
整流部31bを通過した噴射材を含む粉粒体は、更に旋回しながら前進を続け分級部材32に到達する。そして、旋回を続けながら減速しつつ更に前進を続ける(
図4(B)における矢印「a」)。減速する際に、重い粒子である再使用可能な噴射材は重力により分級部材32の底部に落下し、貯留ホッパ50に堆積する(同図における矢印「b」)。一方、軽い粒子である再使用できない噴射材やブラスト加工で生じた切削粉(これらを総じて、以降「粉塵」と記す)は、吸引部材33より吸引機構40に吸引される(同図における矢印「c」)。
【0041】
ここで、整流部31bの長さ又は整流部31bの先端面(即ち、吸引部材33の先端面であって、
図4(B)における左側断面)から該先端面に対向する位置にある分級部材32の壁面までの長さが短すぎると分級効率が低下する。整流部31bの長さが必要以上に短すぎると、噴射材を含む粉粒体は旋回する力を十分に得ることができないので、整流部31bを通過した直後に整流部材31の先端面から吸引されることになる。その時、再利用可能な噴射材も吸引されるので、分級効率が低下する。また、整流部31bの先端面から該先端面に対向する位置にある分級部材32の壁面までの長さが必要以上に短すぎると、噴射材が十分に減速されずに壁面に衝突して跳ね返り、吸引部材33近傍まで到達した再利用可能な噴射材は、吸引部材33の先端面から吸引されるので、分級効率が低下する。一方、整流部31bの長さ又は整流部31bの先端面から該先端面に対向する位置にある分級部材32の壁面までの長さが必要以上に長すぎると分級機構30自体が大型化する。従って、良好な分級効率が得られ、且つ分級機構30が必要以上に大型化しないようにするために、整流部31bの長さL1に対する整流部31bの先端面から該先端面に対向する位置にある分級部材32の壁面までの長さL2の比(L2/L1)を1.25〜1.75の範囲で設定してもよい。
【0042】
整流部31bにおいて、吸引部材33の径に対する整流部材31の径が小さすぎると整流部31bの空間が狭すぎて噴射材を含む粉粒体の通過が阻害される。その結果、整流部31bにおいて、噴射材を含む粉粒体は分級部材32に向かって前進する速度が遅くなり、整流部31bを通過した直後に吸引部材33の先端面から吸引されることになる。その時、再利用可能な噴射材も吸引されるので、分級効率が低下する。その為、噴射材を含む粉粒体が良好に通過できる大きさとなるように整流部材31の径を大きくする必要があるが、大きすぎると分級機構30が大型化する。また、吸引部材33の径が小さすぎると吸引速度が速くなりすぎて、再使用可能な噴射材も吸引されるので、分級効率が低下する。吸引部材33の径が大きすぎる場合は、先述のように整流部材31の径を大きくする必要があるので、分級機構30が大型化する。従って、良好な分級効率が得られ、且つ分級機構30が必要以上に大型化しないようにするために、吸引部材33の径D1に対する整流部材31の径D2の比(D2/D1)を1.5〜2.0の範囲で設定してもよい。
【0043】
整流部31bにおける風量が遅すぎると噴射材を含む粉粒体の速度が遅くなりすぎて、整流部31bを通過した直後に吸引部材33の先端面から吸引されることになる。風量が速すぎると噴射材を含む粉粒体の速度が速くなりすぎて、分級部材32の壁面に衝突して跳ね返った噴射材を含む粉粒体が吸引部材33の先端近傍まで移動する。いずれの場合も、再利用可能な噴射材も吸引されるので、分級効率が低下する。従って、良好な分級効率を得るために、整流部31bの先端における風量を2.1〜3.6 m
3/minとなるように調整してもよい。
【0044】
本実施形態の分級機構30では、ブラスト加工で一般的に用いられる噴射材を良好に分級することができる。噴射材は、鉄系及び非鉄金属系のショット及びカットワイヤ及びグリッド、セラミックスの粒子(例えば、アルミナや炭化珪素やジルコン等)、ガラスの粒子、樹脂の粒子(例えば、ナイロン樹脂やメラミン樹脂やユリア樹脂等)、植物種子の粒子(例えば、くるみやピーチ等)、等が挙げられる。これらの噴射材の比重に合わせて、その粒子径を適宜選択する。例えば、比重が1.1〜4.0の噴射材(アルミナ質の粒子、ガラスビーズ、ナイロン、くるみ等)の場合は粒子径を45〜850 μm、比重が7.2〜7.9の噴射材(鉄系のショット等)の場合は45〜500 μmの範囲から選択することができる。
【0045】
分級部材32は、本実施形態の形状に限定されず、円筒形状や多角形の筒形状としてもよい。また、本実施形態のように下端に向かって横断面の面積を連続して縮小した部分を有してもよい。
【0046】
本実施形態の分級機構30は、縦型のサイクロン型分級機のような従来のブラスト加工装置で使用されていた分級機よりも小型である。このため、分級機構30を基台70と下部ケーシング22との間の空間に配置することができる。その結果、従来のブラスト加工装置に比べて高さを低くすることができる。よって、ブラスト加工装置1の横に分級機構30をメンテナンスするための脚立を置くスペースを設ける必要がなく、分級機構30のメンテナンスはブラスト加工装置1の正面のみで行うことができる。
【0047】
吸引機構40は、密閉された箱体である吸引機構本体41と、吸引機構本体41に連結される吸引力発生源42と、を備える。吸引機構本体41は分級機構30に連結されており、吸引部材33と吸引力発生源42との経路にある吸引機構本体41内には、粉塵を捕集するためのフィルタ(図示せず)が配置されている。吸引力発生源42を作動させると、分級機構30内の粉塵が空気と共に吸引機構本体41に吸引される。吸引された粉塵は吸引力発生源42に向かってさらに移送される際にフィルタによって捕集され、空気のみが吸引力発生源42に移送される。捕集された粉塵は、作業員が開口部23aを介して吸引機構本体41の前面に設けられた開閉扉41aにアクセスし、開閉扉41aを開けて、フィルタを取り外すことで回収することができる。なお、吸引力発生源42の作動の切り替えは、外枠23の前面に配置された操作パネルPの操作にて行う。
【0048】
図5は、
図2に示す貯留ホッパ及び噴射材移送機構を説明する模式図である。貯留ホッパ50は、
図5に示すように、上端が分級機構30の分級部材32の底部に固定される。貯留ホッパ50は、その内部の空間が分級機構30と連通されている箱状である。貯留ホッパ50には、噴射材の排出機構が設けられている。この排出機構は貯留ホッパ50の底部に設けられた噴射材排出部材51及び閉止栓52により構成されている。噴射材排出部材51の下端には貯留ホッパ50内の噴射材を排出するための開口が設けられている。閉止栓52は、この開口を閉止することができる。本実施形態では、両端が開口された円筒形状の噴射材排出部材51の一端を貯留ホッパ50の底部に設けた開口を覆うように固定している。そして、噴射材排出部材51の他端にゴムで構成される円錐台形状の閉止栓52が嵌着されている。
【0049】
貯留ホッパ50に貯留された噴射材をブラスト加工用ノズル10に移送するために、貯留ホッパ50には、噴射材の噴射材移送機構60が配置されている。噴射材移送機構60は、
図5に示すように、円管状の噴射材取出管61、円管状の外気導入管取付部材62及び外気導入管63を備えている。噴射材取出管61は、貯留ホッパ50の側壁(
図5では左側壁、Y軸の負の方向)を貫通するように固定されている。外気導入管取付部材62は、貯留ホッパ50における噴射材取出管61と対向する側壁(
図5では右側壁、Y軸の正の方向)を貫通するように固定されている。外気導入管63は、外気導入管取付部材62に挿貫して固定されている。
【0050】
外気導入管63は、その先端が噴射材取出管61の中に位置するように固定される。噴射材取出管61は、ブラスト加工用ノズル10の噴射材吸引口11aに連結されている。ブラスト加工用ノズル10の内部で発生した吸引力により、噴射材取出管61内には当該ブラスト加工用ノズル10に向かう気流が発生する。その際、外気導入管63より外気が吸引される。即ち、外気導入管63の先端では外気流が噴射された状態となる。この気流によって噴射材取出管61の右端近傍では噴射材吸引口11aに向かう気流が発生する。この気流に乗って、貯留ホッパ50内の噴射材は噴射材取出管61に吸引され、ブラスト加工用ノズル10に移送される。
【0051】
外気導入管63は、少なくとも先端が噴射材取出管61の中に位置すればよい。このため、外気導入管63は、その外径が噴射材取出管61の内径より小さい円管としてもよい。あるいは、外気導入管63は、その外径が噴射材取出管61の内径より大きく、且つその先端が噴射材取出管61の内径より小さくなるように連続して縮径する部位を設けた形状としてもよい。後者の構成では、外気導入管63の左右位置を調整することで、外気導入管63の外壁と噴射材取出管61の内壁との隙間を調整することができる。この隙間の大きさを変更することで噴射材取出管61に吸引される噴射材の量を変更することができる。この隙間が広すぎると安定して噴射材を噴射材取出管61に吸引することができないので、ブラスト加工用ノズル10からの噴射量が安定しない。即ち安定したブラスト加工を行うことができない。また、この隙間が狭すぎると、噴射材がこの隙間を通過するのが阻害される。この隙間の調整によって、ブラスト加工用ノズル10に移送される噴射材の量(圧縮空気に対する噴射材の混合比)を調整することができるので、外気導入管63を操作することでブラスト加工の能力を調整することができる。
【0052】
噴射材取出管61は噴射ホースを介してブラスト加工用ノズル10の噴射材吸引口11aと連結されている。噴射ホースは噴射材の通過により摩耗するので、本実施形態のブラスト加工装置1は、噴射ホースの交換機構を備えている。具体的には、噴射材取出管61から噴射材吸引口11aへの経路は、噴射ホースH
1,H
2及び噴射ホースH
1,H
2に着脱自在に接続される連結管Cで構成されている。連結管Cは噴射ホースH
1,H
2との接続部がブラスト加工室R内外にそれぞれ位置するように下部ケーシング22に固定されている。噴射材取出管61とブラスト加工室R外に位置する連結管Cの連結部とは、噴射ホースH
1で連結される。噴射材吸引口11aとブラスト加工室R内に位置する連結管Cの連結部とは、噴射ホースH
2で連結される。この構成により、噴射ホースH
1、H
2の交換は、作業員が上部ケーシング21を開けて、あるいは、作業員が外枠23の開口部23aを介してアクセスすることで、ブラスト加工装置1の正面のみで行うことができる。
【0053】
また、噴射材吸引口11aにはブラスト加工用ノズル10を着脱自在に連結するための交換機構(図示せず)が固定されている。本実施形態の交換機構は噴射材吸引口11aにホースニップルを固定させている。あるいは、噴射材吸引口11a及び噴射ホースH
2の先端にそれぞれホース継手(例えばカプラ)を固定してもよい。ブラスト加工用ノズル10の交換機構を設けることで、ブラスト加工用ノズル10の交換が容易となる。ブラスト加工室Rは前方が開放するので、ブラスト加工用ノズル10の交換は、ブラスト加工装置1の正面のみでおこなうことができる。この構成により、ブラスト加工用ノズル10の摩耗の確認もブラスト加工装置1の正面のみでおこなうことができる。
【0054】
また、基台70には、
図1(A)に示すように、縦断面がコ字状の嵩上ベース71を固定することができる。ブラスト加工装置を設置する際、嵩上ベース71によってフォークリフト等で容易に移動することができる。
【0055】
(ブラスト加工方法)
次に、本実施形態のブラスト加工装置1によるブラスト加工方法について説明する。
【0056】
操作パネルPを操作し、吸引機構40を作動して、ブラスト加工室R内を吸引する。次いで、ラッチ錠25を開錠し、上部ケーシング21を開ける。次いで、所定量の噴射材をブラスト加工室Rに投入し、噴射材を分級機構30を介して貯留ホッパ50に移送する。その後、上部ケーシング21を閉め、ラッチ錠25にて施錠して上部ケーシング21と下部ケーシング22とを固定する。これにより、閉じられた空間であるブラスト加工室Rを形成する。ブラスト加工室Rは吸引機構40により吸引されているので負圧となり、外気が作業部21cよりブラスト加工室R内に流入する。
【0057】
作業者が手袋を装着し、作業部21cより手を差し入れて、ブラスト加工用ノズル10を把持する。次いで、前記フットスイッチを「ON」にして噴射材を含む固気二相流を噴射口13aより噴射する。その際、ブラスト加工装置1の前面に配置されている圧力調整弁Vを操作して、所定の噴射圧力となるようにブラスト加工装置1の前面に配置されている圧力計で確認しながら調整した後、前記フットスイッチを「OFF」にして噴射材の噴射を停止し、手を抜出する。
【0058】
次に、ラッチ錠25を開錠し、上部ケーシング21を開け、加工板26上にワークを載置する。その後、上部ケーシング21を閉め、ラッチ錠25にて施錠して上部ケーシング21と下部ケーシング22とを固定する。
【0059】
操作パネルPを操作し作業者が作業部21cより手を差し入れてブラスト加工用ノズル10及びワークを把持した後、フットスイッチを「ON」にして固気二相流を噴射口13aより噴射する。そして、手袋を介して作業者自身でワークを噴射口13aに対して走査することで、ワークの研掃が行われる。この時、ブラスト加工室R内は負圧になっているので、噴射材を含む粉粒体(噴射材及び粉塵)がブラスト加工室Rから外部に漏れ出すことがない。
【0060】
ブラスト加工の様子は、前面側斜面に設けられた観察窓21aより行うことが出来る。また、天面に採光窓21bが設けてあるので、ブラスト加工室R内に投光機を設けなくてもブラスト加工室Rを観察することが出来る。
【0061】
噴射口13aより噴射された噴射材を含む粉粒体は吸引機構40の吸引力によって分級機構30に移送される。分級機構30にて、再使用可能な噴射材と粉塵とに分離される。詳しくは、吸引機構40の吸引力により分級機構30内は負圧になっており、また整流部31bでは旋回しながら分級部材32に向かう気流が発生している。まず、この負圧により噴射材を含む粉粒体は投入部材34より分級機構30内へ投入される。整流部31bに到達した噴射材を含む粉粒体は、整流部31bにて発生している気流により旋回しながら分級部材32に向かって前進する。そして、分級部材32に到達した噴射材のうち、重量が重い再使用可能な噴射材は、重力により落下し、下方に位置する貯留ホッパ50に貯留される。貯留ホッパ50に移送された再使用可能な噴射材は、噴射材移送機構60によりブラスト加工用ノズル10に移送され、再び噴射口13aより噴射される。一方、重量の軽い粉塵は、吸引機構40に吸引され、吸引機構本体41内のフィルタに捕集される。
【0062】
固気二相流をワークに向けて所定の時間噴射したら、前記フットスイッチを「OFF」にして固気二相流の噴射を停止し、手を抜出する。その後、ラッチ錠25を開錠し、上部ケーシング21を開け、ワークを回収する。このワークに付着した噴射材や粉塵を除去して一連のブラスト加工が完了する。
【0063】
吸引機構本体41内のフィルタに捕集された粉塵が所定量堆積して吸引能力が低下したら、固気二相流の噴射及び吸引機構40の作動を停止した後、作業員が外枠23の開口部23aを介してブラスト加工装置1の前面に位置する開閉扉41aにアクセスし、開閉扉41aを開けてフィルタを取り外してフィルタの清掃を行う。粉塵の堆積具合は、吸引機構本体41に差圧計を取り付けて、この値により管理してもよいが、1日の作業が終了したらフィルタの清掃を行う程度の管理としてもよい。
【0064】
噴射材を変更したり、ブラスト加工装置1を清掃したりするために噴射材をブラスト加工装置1から排出する必要がある場合は、上部ケーシング21及び下部ケーシング22が固定された状態で、作業員が外枠23の開口部23aを介して閉止栓52にアクセスし、閉止栓52を外して、貯留ホッパ50内の噴射材を排出した後、再び閉止栓52を噴射材排出部材51の開口に嵌着する。そして、圧縮空気を噴射するノズル(図示せず)を作業部21cより挿入し、エアブローによるブラスト加工室R内に付着した噴射材や粉塵の除去、及び前記フットスイッチによるブラスト加工用ノズル10からの噴射による噴射材の経路からの噴射材の除去を行う。この作業を繰り返すことで、ブラスト加工装置1内の噴射材を完全に排出することができる。
【0065】
固気二相流に含まれる噴射材の量(混合比)を変更する場合は、ブラスト加工装置1の前面(外枠23の開口部23a)から噴射材移送機構60の外気導入管63を操作すればよい。
【0066】
噴射ホースH
1、H
2は使用に伴い摩耗する。噴射ホースH
1、H
2が摩耗した場合、ブラスト加工装置1の前面より噴射ホースH
1、H
2を取り外し、新たな噴射ホースH
1、H
2を取り付けることで交換することができる。つまり、作業員が上部ケーシング21を開けて、あるいは、作業員が外枠23の開口部23aを介して噴射ホースH
1、H
2にアクセスすることで実現できる。
【0067】
ブラスト加工によって、上部ケーシング21の観察窓21a及び採光窓21bには噴射材や粉塵が付着する。本実施形態のブラスト加工室Rは前面側が開放することができるので、観察窓21a及び採光窓21bをブラスト加工装置1の正面のみから清掃することができる。
【0068】
以上の様に、ブラスト加工装置1のメンテナンスは、ブラスト加工装置1の正面のみから行われる。メンテナンスとは、例えばブラスト加工用ノズル10の点検及び交換、ブラスト加工室Rの清掃、分級機構の整備、吸引機構40のフィルタの清掃や交換、貯留ホッパ50からの噴射材の排出、噴射ホースH
1、H
2の交換、等がある。ブラスト加工装置1では、正面以外の周囲にメンテナンスのためのスペースを設ける必要がない。すなわち、ブラスト加工装置1では、その左側面や右側面や背面にメンテナンスのためのスペースを設ける必要がない。このため、ブラスト加工装置1は、狭いスペースでも設置が可能である。
【0069】
また、ブラスト加工における操作及び設定を行うための領域である操作スペースは、ブラスト加工装置1の正面に位置している。ブラスト加工における操作及び設定とは、例えば固気二相流の噴射圧力の調整、ブラスト加工の様子の観察、吸引機構の作動、固気二相流の噴射、ワークの走査、噴射材の混合比の設定、等がある。ブラスト加工装置1では、正面以外の周囲に操作のためのスペースを設ける必要がない。すなわち、ブラスト加工装置1では、その左側面や右側面や背面に操作のためのスペースを設ける必要がない。このため、ブラスト加工装置1は、狭いスペースでも設置が可能である。
【0070】
次に、本形態のブラスト加工装置1を検証した結果について説明する。
【0071】
噴射材として、アルミナ系の粒子(新東工業株式会社製:AF24)、擬似粉塵としてアルミナ系の微粒子(新東工業株式会社製:WA#800)を使用した。初期の粉粒体として、噴射材が98%、擬似粉塵が2%となるように秤量して混合した粉粒体を貯留ホッパ50に収容した後、ブラスト加工装置1を10 min作動させてこの粉粒体を噴射した。
【0072】
ブラスト加工装置1の作動を停止した後、貯留ホッパ50内の粉粒体を回収した。回収した粉粒体を目開き0.500 mmの篩にて分級した後、大径粒子及び微粒子のそれぞれの重量を測定して、以下を算出して評価した。
(1)初期の粉粒体の重量に対する試験後の大径粒子の重量の割合
(2)試験後の粉粒体の全重量に対する試験後の微粒子の重量の割合
評価基準は下記の通りである。
○・・・(1)が95%以上であり、且つ(2)が1%未満である。
△・・・(1)が95%以上であり、(2)が1%より多く5%未満である。
×・・・(1)が95%未満、又は(2)が5%以上である。
【0073】
試験は、整流部31bの長さL1に対する整流部31bの先端面から該先端面に対向する位置にある分級部材32の壁面までの長さL2の比(L2/L1)、及び吸引部材33の径D1に対する整流部材31の径D2の比(D2/D1)、及び整流部31bにおける風量、をそれぞれ変化させた。その結果を表1に示す。
【0075】
整流部31bの長さL1に対する整流部31bの先端面から該先端面に対向する位置にある分級部材32の壁面までの長さL2の比(L2/L1)が1.25〜1.75、及び吸引部材33の径D1に対する整流部材31の径D2の比(D2/D1)が1.50〜2.00、及び整流部31bにおける風量が2.1〜3.6 m
3/minの場合、いずれも「△」又は「○」評価となった(実施例1〜8)。L2/L1又はD2/D1が比較的低い実施例1及び4は「△」評価であったが、この評価は若干分級性能が劣るが条件を最適化すれば「○」評価となる程度である事を示している。従って、ブラスト加工装置に十分適用することができることが示唆された。一方、風量が2.1〜3.6 m
3/minを逸脱していた場合は、いずれも「×」評価となり、分級性能が劣ることが判った(比較例1、2)。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本実施形態に係るブラスト加工装置は非常にコンパクトであるので、分級機構30、吸引機構40、貯留ホッパ50、噴射材移送機構60、を基台70と下部ケーシング22との間の空間に配置することができる。また、
図1の(A)に示すように、基台70の下面に嵩上ベース71を固定すると、ブラスト加工装置1の設置が容易となる。その結果、従来のブラスト加工装置に比べ前述のメンテナンス性及び操作性のみならず設置性でも有利となる。
【0077】
本実施形態に係るブラスト加工装置1は、メンテナンス及び操作のための構成が装置前面に設けられているので、複数台のブラスト加工装置1を複数台隙間なく並列配置したブラスト加工装置列とすることができる。
【符号の説明】
【0078】
1…ブラスト加工装置、10…ブラスト加工用ノズル、11…ノズルホルダ、11a…噴射材吸引口、11b…経路(噴射材)、11c…混合室、11d…空気ノズル挿入口、11e…噴射ノズル挿入口、12…空気ノズル、12a…経路(圧縮空気)、12b…加速部(圧縮空気)、13…噴射ノズル、13a…噴射口、13b…経路(固気二相流)、13c…加速部、13d…整流部(固気二相流)、20…筐体、21…上部ケーシング、21a…観察窓、21b…採光窓、21c…作業部、22…下部ケーシング、22a…枠体、23…外枠、23a…開口部、24…蝶番、25…ラッチ錠、26…加工板、30…分級機構、31…整流部材、31a…閉止板、31b…整流部、32…分級部材、33…吸引部材、34…投入部材、40…吸引機構、41…吸引機構本体、41a…開閉扉、42…吸引力発生源、50…貯留ホッパ、51…噴射材排出部材、52…閉止栓、60…噴射材移送機構、61…噴射材取出管、62…外気導入管取付部材、63…外気導入管、70…基台、71…嵩上ベース、a、b、c…分級機構内における気流及び噴射材及び粉塵の流れ、C…連結管、E…電磁弁、H
1、H
2…噴射ホース、P…操作パネル、S…センサ、V…圧力調整弁。
【国際調査報告】