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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年3月5日
【発行日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】回転霧化頭型塗装機
(51)【国際特許分類】
   B05B 3/10 20060101AFI20170210BHJP
   B05B 5/04 20060101ALI20170210BHJP
【FI】
   B05B3/10 B
   B05B5/04 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
【出願番号】特願2015-534128(P2015-534128)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2014年8月11日
(11)【特許番号】特許第5973078号(P5973078)
(45)【特許公報発行日】2016年8月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-174423(P2013-174423)
(32)【優先日】2013年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】399055432
【氏名又は名称】ABB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079441
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山内 邦治
【テーマコード(参考)】
4F033
4F034
【Fターム(参考)】
4F033PA11
4F033PB16
4F033PC02
4F033PD01
4F034AA04
4F034BA23
4F034BA26
4F034BB07
(57)【要約】
シェーピングエアリング(10)を、ボディ(11)とカバー(13)とノズル(15)とにより構成する。ノズル(15)の先端には、カバー(13)と隙間なく接触した状態で当接する先細りの円錐状突起(17)を設ける。この円錐状突起(17)の先細りテーパ面(17C)には、多数の傾斜凹溝(20)を全周に亘って設ける。さらに、各傾斜凹溝(20)とカバー(13)の内周面(13B2)との間には、回転霧化頭(9)の放出端縁(9E)に向けてシェーピングエアを噴出する第1のシェーピングエア噴出孔(23)を形成する。ノズル(15)の内周面(16A)には、回転霧化頭(9)の外周面(9C)に沿ってシェーピングエアを噴出する第2のシェーピングエア噴出孔(24)を設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮エアを動力源とするエアモータ(3)と、
該エアモータ(3)に回転自在に支持され先端が該エアモータ(3)から前側に突出した中空な回転軸(7)と、
塗料を供給するために該回転軸(7)内を通って該回転軸(7)の先端まで延びたフィードチューブ(8)と、
前記回転軸(7)の先端に取付けられ、前側に向けカップ状に拡開する外周面(9C)と前記フィードチューブ(8)から供給された塗料を拡散する内周面(9D)と先端に位置して塗料を放出する放出端縁(9E)とを有する回転霧化頭(9)と、
先端が該回転霧化頭(9)の放出端縁(9E)よりも後方に位置するように該回転霧化頭(9)の外周に配置され、前記放出端縁(9E)に向けてシェーピングエアを噴出する第1のシェーピングエア噴出孔(23)と前記回転霧化頭(9)の外周面(9C)に沿ってシェーピングエアを噴出する第2のシェーピングエア噴出孔(24)とを有するシェーピングエアリング(10)とを備えてなる回転霧化頭型塗装機において、
前記シェーピングエアリング(10)は、
筒状体をなして前記エアモータ(3)の前側位置に取付けられたボディ(11)と、
該ボディ(11)の外周側に設けられ先端に向け縮径する円錐状のカバー(13)と、
前記ボディ(11)の内周側に設けられ先端が該カバー(13)の先端と同一位置まで延びたノズル(15)とを備え、
前記ノズル(15)の先端には、前記カバー(13)の内周面(13B2)と隙間なく接触した状態で当接する先細りの円錐状突起(17)を設け、
前記円錐状突起(17)の先細りテーパ面(17C)には、前記回転霧化頭(9)の回転方向(R)と逆方向に傾斜した多数の傾斜凹溝(20)を全周に亘って設け、
前記各傾斜凹溝(20)と前記カバー(13)の内周面(13B2)との間には、前記第1のシェーピングエア噴出孔(23)を形成し、
前記ノズル(15)の内周面(16A)には、前記第2のシェーピングエア噴出孔(24)を設ける構成としたことを特徴とする回転霧化頭型塗装機。
【請求項2】
前記各傾斜凹溝(20)は、前記回転霧化頭(9)の回転方向(R)と逆方向に傾斜して前記円錐状突起(17)の全周に間隔をもって突設された多数の突壁(18)と、該各突壁(18)の対向する一対の側壁面(18B,18C)間に形成された多数の溝底面(19)とにより形成し、
前記各突壁(18)を形成している前記各側壁面(18B,18C)には、前記円錐状突起(17)の先端(17B)に位置して前記各側壁面(18B,18C)の傾斜角度(α)をさらに大きくするための面取り部(18D)を設ける構成としてなる請求項1に記載の回転霧化頭型塗装機。
【請求項3】
前記シェーピングエアリング(10)の前記第2のシェーピングエア噴出孔(24)は、前記円錐状突起(17)の先端(17B)に向けて径方向の内側に傾斜して形成し、
前記第2のシェーピングエア噴出孔(24)は、前記ノズル(15)の内周面(16A)に対して、前記回転軸(7)の軸線(O−O)方向に大きな長さ寸法(D)をもった長孔(24A)として開口させる構成としてなる請求項1に記載の回転霧化頭型塗装機。
【請求項4】
前記シェーピングエアリング(10)の先端に対して、前記第1のシェーピングエア噴出孔(23)と第2のシェーピングエア噴出孔(24)とを、径方向に接近させて配置する構成とし、
前記カバー(13)の先端(13B1)と前記円錐状突起(17)の先端(17B)とからなる前記シェーピングエアリング(10)の先端面(10A)は、可及的に小さな面積となるエッヂ状先端面として形成してなる請求項1に記載の回転霧化頭型塗装機。
【請求項5】
前記各傾斜凹溝(20)は、前記回転霧化頭(9)の回転方向(R)と逆方向に傾斜して前記円錐状突起(17)の全周に間隔をもって突設された多数の突壁(18)と、該各突壁(18)の対向する一対の側壁面(18B,18C)間に形成された多数の溝底面(19)とにより形成し、
前記各傾斜凹溝(20)は、前記各溝底面(19)と前記各突壁(18)の側壁面(18B,18C)との間の角隅部(20A)を、円弧状に形成してなる請求項1に記載の回転霧化頭型塗装機。
【請求項6】
前記各傾斜凹溝(20)の傾斜角度(α)は、前記回転軸(7)の軸線(O−O)に対して50〜80度に設定してなる請求項1に記載の回転霧化頭型塗装機。
【請求項7】
前記第2のシェーピングエア噴出孔(24)の傾斜角度(β)は、前記回転軸(7)の軸線(O−O)に対して1〜12度に設定してなる請求項1に記載の回転霧化頭型塗装機。
【請求項8】
前記各突壁(18)の面取り部(18D)の長さ寸法(L)は、0.3〜0.8mmに設定してなる請求項2に記載の回転霧化頭型塗装機。
【請求項9】
前記シェーピングエアリング(10)の前記エッヂ状先端面(10A)の径方向寸法(A)は、1〜6mmに設定してなる請求項4に記載の回転霧化頭型塗装機。
【請求項10】
前記各突壁(18)の先端での各側壁面(18B,18C)の高さ寸法(H)は、0.4〜0.6mmに設定し、前記各溝底面(19)の幅寸法(W)は、0.6〜1.2mmに設定してなる請求項5に記載の回転霧化頭型塗装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば回転霧化頭から噴霧された塗料粒子の噴霧パターンを整えるためのシェーピングエアを噴出するシェーピングエアリングを備えた回転霧化頭型塗装機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の車体、家具、電化製品等を塗装する場合には、塗料の塗着効率、塗装仕上りが良好な回転霧化頭型塗装機が用いられている。回転霧化頭型塗装機には、回転霧化頭に供給される塗料に高電圧を印加する静電塗装機がある。この場合、高電圧に帯電した塗料粒子は、被塗物との間に形成される電気力線に沿って飛行することができ、被塗物に効率よく塗着することができる。
【0003】
回転霧化頭型塗装機は、圧縮エアを動力源とするエアモータと、該エアモータに回転自在に支持され先端が該エアモータから前側に突出した中空な回転軸と、塗料を供給するために該回転軸内を通って該回転軸の先端まで延びたフィードチューブと、回転軸の先端に取付けられ前側に向けカップ状に拡開する外周面と前記フィードチューブから供給された塗料を拡散する内周面と先端に位置して塗料を放出する放出端縁とを有する回転霧化頭と、先端が該回転霧化頭の放出端縁よりも後方に位置するように該回転霧化頭の外周に配置されたシェーピングエアリングとを含んで構成されている。
【0004】
このシェーピングエアリングは、回転霧化頭の放出端縁に向けてシェーピングエアを噴出する第1のシェーピングエア噴出孔と、前記回転霧化頭の外周面に沿ってシェーピングエアを噴出する第2のシェーピングエア噴出孔とを有している。
【0005】
シェーピングエアリングは、第1、第2のシェーピングエア噴出孔からそれぞれシェーピングエアを噴出することにより、回転霧化頭の放出端縁から噴霧される塗料を微粒化しつつ、この塗料粒子の噴霧パターンを所望の大きさ、形状に整えるものである。この上で、シェーピングエア噴出孔は、回転霧化頭の回転方向と逆方向に傾斜させている。これにより、シェーピングエア噴出孔から噴出したシェーピングエアは、回転霧化頭から接線方向に飛行してくる塗料の液糸に正面から衝突し、塗料を効率よく微粒化させることができる。これ以外にも、シェーピングエアの流速を速めることにより、塗料の微粒化を促進している(特許文献1)。
【0006】
ここで、シェーピングエアの流速を速める方法としては、シェーピングエア噴出孔を小径化し、噴出孔の数量を増大させる方法がある。これにより、塗料の微粒化を促進でき、噴霧パターンを微細に制御することができる。しかし、微細な穴加工は、高度な加工技術が必要になるから、シェーピングエア噴出孔を小径化し、噴出孔の数量を増大した場合には、シェーピングエアリングの製造コストが嵩んでしまう。さらに、シェーピングエア噴出孔の数量を増大した場合には、圧縮エアの消費量が増えるから、圧縮エアの供給源となるエアコンプレッサを大型化しなくてはならず、設備コストが嵩んでしまうという問題がある。
【0007】
しかも、シェーピングエアリングのシェーピングエア噴出孔の周辺には、流速の速いシェーピングエアを噴出したことの影響により、負圧領域が発生してしまう。これにより、シェーピングエアリングの先端には、噴霧した塗料粒子の一部が負圧領域に引っ張られて徐々に付着することになるから、塗装品質を保持するために定期的な清掃作業が必要になる。この清掃作業では、シェーピングエアリングの先端部に加え、微細孔として形成されたシェーピングエア噴出孔を1つ1つ清掃しなくてはならず、清掃作業に手間を要し、ランニングコストが上昇することになる。
【0008】
なお、一般的にシェーピングエアリングは、重量が軽く、加工性の良い材料、例えばアルミニウム合金を用いて形成され、その表面に耐腐食メッキ処理を施している。従って、メッキの剥離を避けるためには、精密部品の洗浄に有効な超音波洗浄機を用いることができないのが現状である。
【0009】
一方、他の従来技術として、回転霧化頭型塗装機には、シェーピングエアリングを、環状のエアノズルと該エアノズルの外周側に設けた環状のキャップとにより構成したものがある。このシェーピングエアリングによると、エアノズルの外周面には、先端よりも奥まった位置に多数の螺旋溝を設け、これらの螺旋溝の外周側をキャップの内周面で覆う構成としている。これにより、各螺旋溝とキャップの内周面との間にシェーピングエアを噴出する多数のシェーピングエア噴出孔を形成する構成としている。この場合、各シェーピングエア噴出孔を形成するのに、加工が困難な穴加工ではなく、加工が容易な溝加工を用いることができる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−84941号公報
【特許文献2】特開昭58−92475号公報
【発明の概要】
【0011】
ところで、特許文献2による回転霧化頭型塗装機では、各シェーピングエア噴出孔よりも前側に位置してエアノズルとキャップとの間に環状の噴射室を設ける構成としている。このために、シェーピングエア噴出孔から噴出されたシェーピングエアは、一旦、噴射室に流入してから回転霧化頭の周囲に向けて噴出されることになる。
【0012】
従って、シェーピングエア噴出孔からシェーピングエアを旋回流として噴出しても、このシェーピングエアは、噴射室を通る間に、旋回流が緩和されて指向性が弱まる。このため、特許文献2の構成では、塗料を微粒化できず、噴霧パターンの制御性も低下するという問題がある。
【0013】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、各シェーピングエア噴出孔を洗浄が容易な微細孔として形成した場合でも、このシェーピングエア噴出孔から噴出されるシェーピングエアによって塗料を微粒化でき、かつ塗料粒子の噴霧パターンの制御性を向上できるようにした回転霧化頭型塗装機を提供することにある。
【0014】
(1).本発明による回転霧化頭型塗装機は、圧縮エアを動力源とするエアモータと、該エアモータに回転自在に支持され先端が該エアモータから前側に突出した中空な回転軸と、塗料を供給するために該回転軸内を通って該回転軸の先端まで延びたフィードチューブと、前記回転軸の先端に取付けられ、前側に向けカップ状に拡開する外周面と前記フィードチューブから供給された塗料を拡散する内周面と先端に位置して塗料を放出する放出端縁とを有する回転霧化頭と、先端が該回転霧化頭の放出端縁よりも後方に位置するように該回転霧化頭の外周に配置され、前記放出端縁に向けてシェーピングエアを噴出する第1のシェーピングエア噴出孔と前記回転霧化頭の外周面に沿ってシェーピングエアを噴出する第2のシェーピングエア噴出孔とを有するシェーピングエアリングとを備えている。
【0015】
上述した課題を解決するために、本発明が採用する構成の特徴は、前記シェーピングエアリングは、筒状体をなして前記エアモータの前側位置に取付けられたボディと、該ボディの外周側に設けられ先端に向け縮径する円錐状のカバーと、前記ボディの内周側に設けられ先端が該カバーの先端と同一位置まで延びたノズルとを備え、前記ノズルの先端には、前記カバーの内周面と隙間なく接触した状態で当接する先細りの円錐状突起を設け、前記円錐状突起の先細りテーパ面には、前記回転霧化頭の回転方向と逆方向に傾斜した多数の傾斜凹溝を全周に亘って設け、前記各傾斜凹溝と前記カバーの内周面との間には、前記第1のシェーピングエア噴出孔を形成し、前記ノズルの内周面には、前記第2のシェーピングエア噴出孔を設ける構成としたことにある。
【0016】
この構成によれば、第1のシェーピングエア噴出孔は、円錐状突起に設けた各傾斜凹溝とカバーの内周面との間に形成することができる。この場合、第1のシェーピングエア噴出孔は、加工が困難な微細な穴加工ではなく、加工が容易な溝加工を用いて形成することができる。これにより、流路面積が小さな第1のシェーピングエア噴出孔を簡単な作業で形成することができる。従って、流路面積を小さくしたことによる圧縮エアの使用量の削減、溝形状としたことによる清掃作業の簡略化を図ることができる。
【0017】
しかも、ノズルは、その先端の円錐状突起をカバーの先端と同一位置に配置しているから、多数設けられた第1のシェーピングエア噴出孔は、シェーピングエアリングの先端面にそれぞれ独立して開口させることができる。これにより、各第1のシェーピングエア噴出孔から旋回流として噴出されたシェーピングエアは、回転霧化頭の放出端縁から噴霧された塗料粒子に対し、旋回流(旋回方向の指向性)を十分に保持した状態で噴き付けることができる。
【0018】
この結果、第1のシェーピングエア噴出孔は、傾斜凹溝を利用することにより、洗浄が容易な微細孔として形成することができる。これに加えて、シェーピングエアは、旋回方向に指向性をもっているので、塗料粒子の微粒化の促進、噴霧パターンの制御性の向上を図ることができる。一方、ノズルの内周面には、第2のシェーピングエア噴出孔を設けているから、第1のシェーピングエア噴出孔と協働し、複合シェーピングエアを形成することができる。これにより、より一層塗料を微粒化でき、噴霧パターンの制御性を向上することができる。
【0019】
(2).本発明によると、前記各傾斜凹溝は、前記回転霧化頭の回転方向と逆方向に傾斜して前記円錐状突起の全周に間隔をもって突設された多数の突壁と、該各突壁の対向する一対の側壁面間に形成された多数の溝底面とにより形成し、前記各突壁を形成している前記各側壁面には、前記円錐状突起の先端に位置して前記各側壁面の傾斜角度をさらに大きくするための面取り部を設ける構成としたことにある。
【0020】
この構成によれば、各側壁面には、円錐状突起の先端に位置して面取り部を設けているから、各側壁面の傾斜角度をさらに大きくすることができる。これにより、回転霧化頭の放出端縁から接線方向に放出された塗料粒子に対し、第1のシェーピングエアを的確に当てることができ、塗料の噴霧パターンを大きく広げることができる。
【0021】
(3).本発明によると、前記シェーピングエアリングの前記第2のシェーピングエア噴出孔は、前記円錐状突起の先端に向けて径方向の内側に傾斜して形成し、前記第2のシェーピングエア噴出孔は、前記ノズルの内周面に対して、前記回転軸の軸線方向に大きな長さ寸法をもった長孔として開口させる構成としたことにある。
【0022】
この構成によれば、円錐状突起の先端に向けて径方向の内側に傾斜した第2のシェーピングエア噴出孔は、回転霧化頭の放出端縁近くの外周面に向けて第2のシェーピングエアを噴き付けることができる。さらに、第2のシェーピングエア噴出孔は、ノズルの内周面に回転軸の軸線方向に大きな長さ寸法をもった長孔として開口しているから、シェーピングエアリングの先端面を、径方向の幅寸法が小さくなるように形成することができる。しかも、長孔として開口した第2のシェーピングエア噴出孔は、洗浄流体を注入し易く、簡単に洗浄することができる。
【0023】
(4).本発明によると、前記シェーピングエアリングの先端に対して、前記第1のシェーピングエア噴出孔と第2のシェーピングエア噴出孔とを、径方向に接近させて配置する構成とし、前記カバーの先端と前記円錐状突起の先端とからなる前記シェーピングエアリングの先端面は、可及的に小さな面積となるエッヂ状先端面として形成したことにある。
【0024】
この構成によれば、噴霧塗料に最も接近しているシェーピングエアリングの先端では、塗料が付着しうる平坦面を極力小さくすることができる。この結果、シェーピングエアリング先端での塗料の付着を防止して洗浄頻度、洗浄時間を削減することができる。
【0025】
(5).本発明によると、前記各傾斜凹溝は、前記回転霧化頭の回転方向と逆方向に傾斜して前記円錐状突起の全周に間隔をもって突設された多数の突壁と、該各突壁の対向する一対の側壁面間に形成された多数の溝底面とにより形成し、前記各傾斜凹溝は、前記各溝底面と前記各突壁の側壁面との間の角隅部を、円弧状に形成したことにある。
【0026】
この構成によれば、傾斜凹溝の溝底面での応力集中を避けて機械的な強度を高めることができ、製造コストを低減することもできる。しかも、ノズルの傾斜凹溝に塗料が浸入し、円弧状角隅部に塗料に含まれる顔料、金属粉等が付着しても、これらを簡単に洗浄することができ、洗浄作業を短時間で行うことができる。
【0027】
(6).本発明によると、前記各傾斜凹溝の傾斜角度は、前記回転軸の軸線に対して50〜80度に設定したことにある。これにより、第1のシェーピングエア噴出孔は、50〜80度の傾斜角度でシェーピングエアを噴出することができる。この場合、第1のシェーピングエア噴出孔は、回転霧化頭の回転方向と逆方向に傾斜して開口することにより、回転霧化頭から接線方向に飛行してくる塗料の液糸に正面からシェーピングエアを衝突させることができ、この塗料を微粒化することができる。
【0028】
(7).本発明によると、前記第2のシェーピングエア噴出孔の傾斜角度は、前記回転軸の軸線に対して1〜12度に設定したことにある。これにより、第2のシェーピングエア噴出孔からは、1〜12度の傾斜角度でシェーピングエアを噴出することができる。従って、この傾斜角度で噴出されたシェーピングエアは、回転霧化頭の外周面に沿って放出端縁に向け供給することができ、放出端縁から放出された塗料を拡散させることができる。
【0029】
(8).本発明によると、前記各突壁の面取り部の長さ寸法は、0.3〜0.8mmに設定したことにある。これにより、第1のシェーピングエア噴出孔の傾斜角度をさらに大きくすることができる。
【0030】
(9).本発明によると、前記シェーピングエアリングに設けたエッヂ状先端面の径方向寸法は、1〜6mmに設定したことにある。これにより、シェーピングエアリングの先端面に形成される環状面積を可及的に小さくできる。従って、負圧領域に位置する先端面が極端に小さくなるので、先端面に塗料が付着し難く、塗料が付着したとしても容易に洗浄することができる。
【0031】
(10).本発明によると、前記各突壁の先端での各側壁面の高さ寸法は、0.4〜0.6mmに設定し、前記各溝底面の幅寸法は、0.6〜1.2mmに設定したことにある。これにより、第1のシェーピングエア噴出孔は、加工、洗浄が容易で、エアの消費量が少ない微細孔として形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施の形態による回転霧化頭型塗装機を示す縦断面図である。
図2図1中の(II)部を示す要部拡大の断面図である。
図3】シェーピングエアリングをボディとカバーとノズルに分解した状態で示す分解斜視図である。
図4】シェーピングエアリングをボディとカバーとノズルに分解した状態で示す分解断面図である。
図5】ノズルを単体で拡大して示す斜視図である。
図6図5中の(VI)部を示す要部拡大の斜視図である。
図7】ノズルを単体で拡大して示す側面図である。
図8図7中の(VIII)部を示す要部拡大の側面図である。
図9図8中の矢示IX−IX方向から見たノズルとカバーの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態による回転霧化頭型塗装機を、図1ないし図9に従って詳細に説明する。ここで、回転霧化頭型塗装機には、噴霧する塗料に高電圧を印加して塗装を行う静電塗装機と、塗料に高電圧を印加することなく塗装を行う非静電塗装機とが存在している。これから述べる実施の形態では、塗料に高電圧を直接的に印加する直接帯電式の静電塗装機として構成された回転霧化頭型塗装機を例に挙げて説明する。
【0034】
図1において、1は本実施の形態による回転霧化頭型塗装機を示している。この回転霧化頭型塗装機1は、高電圧発生器(図示せず)により塗料に高電圧を直接的に印加する直接帯電式の静電塗装機として構成されている。回転霧化頭型塗装機1は、例えば塗装用ロボット、レシプロケータのアーム(図示せず)等の先端に取付けられている。回転霧化頭型塗装機1は、後述のハウジング2、エアモータ3、回転軸7、フィードチューブ8、回転霧化頭9、シェーピングエアリング10を含んで構成されている。
【0035】
2は回転霧化頭型塗装機1のハウジングを示している。このハウジング2は、後側に位置して円板状に形成されたハウジング本体2Aと、該ハウジング本体2Aの外周側から前側に向けて延びたカバー筒2Bとを含んで構成されている。ハウジング本体2Aは、その後面側が前述したアームの先端に取付けられている。一方、ハウジング本体2Aの前面側には、後述のエアモータ3が取付けられている。さらに、ハウジング本体2Aの軸中心位置(後述する回転軸7の軸線O−O)には、後述するフィードチューブ8の基端が挿嵌される挿嵌孔2Cが設けられている。
【0036】
エアモータ3は、ハウジング2内に該ハウジング2と同軸(軸線O−O)に設けられている。このエアモータ3は、圧縮エアを動力源として後述の回転軸7および回転霧化頭9を、例えば3000〜150000rpmの高速で回転させるものである。エアモータ3は、ハウジング本体2Aの前側に取付けられた段付円筒状のモータケース4と、該モータケース4の後側寄りに位置して後述のタービン収容室4D内に前,後のスラストエア軸受5B,5Cを介して回転可能に収容されたタービン5と、前記モータケース4に設けられ回転軸7を回転可能に支持するラジアルエア軸受6とを含んで構成されている。
【0037】
エアモータ3のモータケース4は、回転軸7の軸線O−Oを中心線とする円筒体として形成されている。モータケース4は、ハウジング2のハウジング本体2Aの前側に取付けられる大径な大径筒4Aと、該大径筒4Aの先端(前端)から前側に突出した小径な小径筒4Bとにより段付筒状に形成されている。大径筒4Aと小径筒4Bの軸中心位置には、回転軸7を挿通するための軸挿通孔4Cが設けられ、この軸挿通孔4Cの奥部(後側)には、タービン5を収容するためのタービン収容室4Dが形成されている。一方、小径筒4Bの外周側には、先端に位置しておねじ4Eが形成され、このおねじ4Eには、後述するシェーピングエアリング10のボディ11のめねじ11Dが螺着される。さらに、大径筒4Aには、後述のモータケース内流路30が設けられている。
【0038】
タービン5は、回転軸7の基端からフランジ状に拡開した円板体として形成され、該回転軸7に対して溶接、圧接によって接合され、または一体形成されている。タービン5の外周側には、複数枚の翼を周方向に連ねてなる羽根車5Aが設けられている。タービン5は、この羽根車5Aに向けてタービンエア(圧縮エア)を噴き付けることにより、回転軸7を高速で回転駆動させるものである。このときに、タービン5は、スラストエア軸受5B,5Cによってスラスト方向に支持されている。
【0039】
ラジアルエア軸受6は、モータケース4の大径筒4Aの内周側に軸挿通孔4Cと同一内周面をなすように取付けられている。ラジアルエア軸受6は、供給された軸受エア(圧縮エア)を回転軸7の外周面に向けて噴き付けることにより、この回転軸7の外周面との間に空気層を形成し、該回転軸7を回転可能に支持するものである。
【0040】
回転軸7は、エアモータ3にラジアルエア軸受6を介して回転自在に支持された中空な筒体として形成されている。この回転軸7は、モータケース4の軸挿通孔4C内に軸線O−Oを中心とし軸方向に延びて配置されている。回転軸7は、基端(後端)がタービン5の中央に一体的に取付けられ、先端がモータケース4から前側に突出している。回転軸7の縮径された先端には、後述する回転霧化頭9を取付けるためのおねじ7Aが形成されている。
【0041】
フィードチューブ8は、回転軸7内を通って該回転軸7の先端まで延びて設けられ、該フィードチューブ8の先端は、回転軸7の先端から突出して回転霧化頭9内に延在している。フィードチューブ8の基端は、ハウジング2の挿嵌孔2Cに挿入して嵌合されている。フィードチューブ8は、例えば二重構造の管体として形成され、中央の流路が塗料流路となり、外側の環状流路が洗浄流体流路(いずれも図示せず)となっている。前記塗料流路は、色替弁装置等の塗料供給源に接続され、洗浄流体流路は、洗浄流体供給源(いずれも図示せず)に接続されている。
【0042】
フィードチューブ8は、塗装作業を行うときに、塗料流路から回転霧化頭9に向けて塗料を供給するものである。一方、洗浄作業を行うときには、洗浄流体流路から回転霧化頭9に向け、例えばシンナ、エア等の洗浄流体を供給することができる。
【0043】
回転霧化頭9は、回転軸7の先端に取付けられている。この回転霧化頭9は、後側から前側に向けて拡径するカップ状に形成され、エアモータ3によって回転軸7と一緒に矢示R方向(図1図5ないし図8参照)に高速回転されることにより、フィードチューブ8から供給される塗料を噴霧するものである。回転霧化頭9の基端は、円筒状の取付部位9Aとなり、この取付部位9Aの奥部には、回転軸7のおねじ7Aに螺合するめねじ9Bが形成されている。ここで、回転霧化頭9は、一例として、その放出端縁9Eでの直径寸法が30mmのものが用いられている。
【0044】
回転霧化頭9の取付部位9Aの前側には、前側に向けカップ状に拡開する外周面9Cと、前側に向けラッパ状に大きく拡開することによりフィードチューブ8から供給された塗料を薄膜化しつつ拡散する塗料薄膜化面をなす内周面9Dとが設けられている。この内周面9Dの先端位置は、回転時に塗料を接線方向に放出する放出端縁9Eとなっている。
【0045】
一方、回転霧化頭9の内側には、内周面9Dの奥部に位置して円板状のハブ部材9Fが設けられ、該ハブ部材9Fは、フィードチューブ8から供給された塗料を内周面9Dに円滑に導くものである。さらに、回転霧化頭9には、ハブ部材9Fの後方でめねじ9Bの前側位置に環状隔壁9Gが設けられている。この環状隔壁9Gは、フィードチューブ8の先端部を僅かな隙間をもって取囲むことにより、塗料溜り9Hを形成している。
【0046】
このように形成された回転霧化頭9は、エアモータ3によって高速回転された状態でフィードチューブ8から塗料が供給されることにより、その塗料を、塗料溜り9H、ハブ部材9F、内周面9D(塗料薄膜化面)を介して放出端縁9Eから遠心力によって微粒化した無数の塗料粒子として噴霧するものである。
【0047】
次に、本発明の特徴部分であるシェーピングエアリング10の構成について述べる。
【0048】
即ち、シェーピングエアリング10は、回転霧化頭型塗装機1の前側に設けられ、このシェーピングエアリング10は、先端が回転霧化頭9の放出端縁9Eよりも後方に位置するようにして、該回転霧化頭9の外周に配置されている。シェーピングエアリング10は、後述の各シェーピングエア噴出孔23,24からシェーピングエアを噴出することにより、回転霧化頭9の放出端縁9Eから噴霧される塗料を微粒化しつつ、塗料の噴霧パターンを所望の大きさ、形状に整えるものである。図3図4に示すように、シェーピングエアリング10は、後述するボディ11、カバー13、ノズル15、第1のシェーピングエア噴出孔23、第2のシェーピングエア噴出孔24を含んで構成されている。
【0049】
ボディ11は、シェーピングエアリング10の本体を形成し、このボディ11は、エアモータ3の前側に取付けられる筒状体として形成されている。ここで、ボディ11は、モータケース4の小径筒4Bに外嵌する内筒11Aと、該内筒11Aの周囲に間隔をもって同軸に配置された外筒11Bと、前記内筒11Aと外筒11Bの前側に設けられた円錐状環状体11Cとにより構成されている。内筒11Aの内周面にはめねじ11Dが形成され、該めねじ11Dには、モータケース4のおねじ4Eとノズル15を構成する筒体16のおねじ16Cとが螺合する。
【0050】
外筒11Bには、軸方向の中間部から径方向の外向きに突出するフランジ11Eが設けられている。図3に示すように、フランジ11Eには、周方向に間隔をもって複数のエア流路11E1と複数のボルト挿通孔11E2とが設けられている。一方、円錐状環状体11Cには、内筒11Aと外筒11Bとの隙間の奥に位置する奥面部11C1から内周面11C2に亘って斜め内向きに延びる複数の連通路11C3が設けられている。これらの連通路11C3は、後述するボディ側環状空間12とノズル側環状空間21とを連通するものである。
【0051】
ボディ11は、内筒11Aのめねじ11Dをモータケース4のおねじ4Eに螺着することにより、該内筒11Aの外周側に取付けることができる。このときに、ボディ11は、外筒11Bをモータケース4の大径筒4Aの前面に気密に接触させることにより、内筒11A、外筒11B、円錐状環状体11Cとモータケース4の大径筒4A、小径筒4Bとの間に円環状をしたボディ側環状空間12を画成することができる。このボディ側環状空間12は、後述する第2のエア流路28の一部を形成している。
【0052】
カバー13は、ボディ11の外周側に設けられ、このカバー13は、先端に向け縮径する円錐状の筒体として形成されている。カバー13は、ボディ11の外筒11Bの外周側に位置してフランジ11Eに対面する環状板13Aと、該環状板13Aから先端に向け円錐状に縮径した円錐状筒13Bとにより構成されている。環状板13Aには、ボディ11のフランジ11Eに設けたエア流路11E1に対応する複数のエア流路13A1と、ボルト挿通孔11E2に対応する複数のめねじ孔13A2とが設けられている。
【0053】
ここで、図2に示すように、カバー13を構成する円錐状筒13Bは、その先端13B1の内周面13B2が後述する第1のシェーピングエア噴出孔23の一部を構成している。即ち、円錐状筒13Bの内周面13B2は、ノズル15の円錐状突起17の先細りテーパ面17Cに隙間なく接触した状態で当接する。これにより、内周面13B2は、傾斜凹溝20と協働して第1のシェーピングエア噴出孔23を形成するものである。
【0054】
このように形成されたカバー13は、その環状板13Aをボディ11のフランジ11Eに前側から当接させる。この状態でフランジ11Eのボルト挿通孔11E2に挿通したボルト14を、環状板13Aのめねじ孔13A2に螺着する。これにより、カバー13は、ボディ11に一体的に取付けられる。この状態では、フランジ11Eのエア流路11E1と環状板13Aのエア流路13A1とが連通し、後述するハウジング側環状空間27からカバー側環状空間22に圧縮エアを流通させる。
【0055】
ノズル15は、ボディ11の内周側に設けられ、このノズル15は、その先端がカバー13の円錐状筒13Bの先端13B1と同一位置まで延びている。ここで、ノズル15は、後述の筒体16、円錐状突起17、突壁18、溝底面19、傾斜凹溝20を含んで構成されている。
【0056】
筒体16は、ノズル15のベースとなるもので、該筒体16は、軸方向に延びる円筒体として形成されている。筒体16は、回転霧化頭9の外径寸法よりも大きな内径寸法をもった内周面16Aと、ボディ11の円錐状環状体11Cの内周面11C2と対面する外周面16Bとを有している。この上で、筒体16には、その外周面16Bの基端に位置してボディ11のめねじ11Dに螺合するおねじ16Cが設けられている。筒体16の軸方向の中間部には、径方向外向きに開口する円環溝16Dが設けられている。
【0057】
一方、筒体16の内周側には、円環溝16Dの溝底から内周面16Aに開口して複数の負圧防止流路16Eが設けられている。各負圧防止流路16Eは、回転霧化頭9の回転により、該回転霧化頭9とシェーピングエアリング10との間の空間が負圧にならないようにエアを供給するものである。この場合、各負圧防止流路16Eの流路面積、個数は、後述する第2のシェーピングエア噴出孔24から噴出するシェーピングエアに影響しない程度のエア供給量となるように設定されている。さらに、筒体16の先端には、テーパ状に縮径することにより縮径部16Fが形成され、この縮径部16Fから前側が後述の円錐状突起17となっている。
【0058】
即ち、円錐状突起17は、筒体16の先端部の外周(縮径部16Fの前側)に設けられ、該円錐状突起17は、径方向の外向きに突出し、かつ先細りに形成されている。具体的には、円錐状突起17は、基端17Aから先端17Bに向けて直径寸法が小さくなる先細りの先細りテーパ面17Cを有している。この先細りテーパ面17Cは、カバー13の内周面13B2と隙間なく接触した状態で当接するもので、その一部は、後述する各突壁18の外壁面18Aとなっている。
【0059】
突壁18は、円錐状突起17の全周に間隔をもって多数突設されている。この多数の突壁18は、回転霧化頭9の回転方向Rと逆方向に傾斜し、この傾斜角度は、後述する傾斜凹溝20の傾斜角度αと同一となっている。図9に示すように、各突壁18は、径方向の外側に位置してカバー13の円錐状筒13Bの内周面13B2と当接する外壁面18Aと、該外壁面18Aの幅方向の両端から立ち下がった一対の側壁面18B,18Cとにより断面四角形状の突条として形成されている。各突壁18は、各側壁面18B,18Cの先端と溝底面19との間での高さ寸法Hが、下記数1のように設定されている。各側壁面18B,18C間の先端部での幅寸法(間隔寸法)Wは、下記数2のように設定されている。
【0060】
【数1】
【0061】
【数2】
【0062】
一方、各突壁18を構成する一対の側壁面18B,18Cのうち、回転霧化頭9の外周面9Cと対向するように前側を向いた側壁面18Bには、先端に位置して面取り部18Dが形成されている。この面取り部18Dは、側壁面18Bの先端の角部を切除することにより、後述する側壁面18Bの傾斜角度αを開口側(先端側)でさらに傾斜角度Δαだけ大きくすることができる(図8参照)。面取り部18Dは、その長さ寸法L(図6図8参照)が、下記数3のように設定されている。
【0063】
【数3】
【0064】
これにより、エア流路25から供給される第1のシェーピングエアは、傾斜角度αよりもさらに大きな傾斜角度(α+Δα)をもって傾けた方向に噴出させることができる。従って、このシェーピングエアを回転霧化頭9から放出された塗料粒子に対し、的確に当てることができ、噴霧パターンを大きく広げることができる。
【0065】
ここで、前述した面取り部18Dの長さ寸法Lは、回転霧化頭9として直径寸法が30mm程度のものを使用した場合に適する寸法である。即ち、回転霧化頭9の大きさに応じて適宜に設定されるものであり、上述した数値に限定されるものではない。以下に示す数値も同様であり、記載した数値に限定されるものではない。
【0066】
溝底面19は、各突壁18の対向する一対の側壁面18B,18C間に多数形成されている。この溝底面19は、カバー13の円錐状筒13Bの内周面13B2と高さ寸法Hだけ離間して対面している。各溝底面19の先端での幅寸法Wは、前述した各側壁面18B,18C間の先端での幅寸法(間隔寸法)Wと同じ寸法となっている。
【0067】
傾斜凹溝20は、円錐状突起17の先細りテーパ面17Cに全周に亘って多数設けられている。図6ないし図9に示すように、この多数の傾斜凹溝20は、回転霧化頭9の回転方向と逆方向に傾斜して形成されている。図9に示すように、この傾斜凹溝20は、隣合う突壁18で互いに対面する一対の側壁面18B,18Cと溝底面19とからなり、高さ寸法(径方向寸法)H、幅寸法(周方向寸法)Wをもった角溝として形成されている。傾斜凹溝20は、カバー13の円錐状筒13Bの内周面13B2との間で後述する第1のシェーピングエア噴出孔23を形成するものである。この場合、第1のシェーピングエア噴出孔23から噴出される第1のシェーピングエアの噴出量を少なくするためには、流路面積を小さくして第1のシェーピングエアの噴出速度を速める必要がある。
【0068】
そこで、傾斜凹溝20は、円錐状突起17の先細りテーパ面17Cに、先端部で高さ寸法H、幅寸法Wをもった微細な凹溝として形成されている。この場合、傾斜凹溝20を形成するために用いられる加工方法は、溝加工であるから、微細な穴加工のような高度な加工作業とはならず、簡単に、かつ正確に加工を施すことができる。さらに、傾斜凹溝20は、全長に亘って外部に露出しているから、例えばブラシ等の洗浄具を用いて擦るだけで、付着した塗料を容易に、かつ完全に洗浄することができる。
【0069】
しかも、傾斜凹溝20は、各側壁面18B,18Cと溝底面19との間の角隅部を、円弧状をした円弧状角隅部20Aとして形成している。この円弧状角隅部20Aの半径寸法Cは、各側壁面18B,18Cの高さ寸法H、溝底面19の幅寸法Wに応じ、下記数4のように設定されている。
【0070】
【数4】
【0071】
これにより、円弧状角隅部20Aは、応力集中を避けてノズル15の機械的な強度を高めることができ、製造コストを低減することができる。しかも、傾斜凹溝20に塗料が付着したとしても、円弧状角隅部20Aは、塗料に含まれる顔料、メタル粉等が堆積し難い上に、付着した塗料を簡単に洗浄することができる。
【0072】
一方、図8に示すように、傾斜凹溝20は、回転軸7の軸線O−Oに対し、回転霧化頭9の回転方向Rと逆方向に角度αをもって傾斜している。この傾斜角度αは、下記数5のように設定されている。
【0073】
【数5】
【0074】
これにより、傾斜凹溝20、即ち、後述の第1のシェーピングエア噴出孔23から噴出したシェーピングエアは、回転霧化頭9から接線方向に飛行してくる塗料の液糸に正面から衝突することができ、塗料を積極的に微粒化させることができる。
【0075】
このように構成されたノズル15は、ボディ11の内筒11A内に挿入し、筒体16のおねじ16Cを内筒11A内のめねじ11Dに螺着する。これにより、ボディ11内にノズル15を取付けることができる。ボディ11内にノズル15を取付けた状態では、筒体16の円環溝16Dとボディ11の円錐状環状部11Cの内周面11C2との間にノズル側環状空間21を画成することができる。このノズル側環状空間21は、筒体16の負圧防止流路16Eと第2のシェーピングエア噴出孔24に圧縮エアを満遍なく供給するための共通流路を構成している。一方、ボディ11とカバー13とノズル15との間には、先細り形状のカバー側環状空間22が画成されている。このカバー側環状空間22は、第1のシェーピングエア噴出孔23に圧縮エアを供給するための共通流路を構成している。
【0076】
さらに、ノズル15は、ボディ11内に後側から取付けることにより、各傾斜凹溝20とカバー13の円錐状筒13Bとの間に後述する第1のシェーピングエア噴出孔23を多数形成することができる。
【0077】
ここで、図2に示すように、シェーピングエアリング10の先端に対して、第1のシェーピングエア噴出孔23と第2のシェーピングエア噴出孔24とを、径方向に接近させて配置する構成としている。これにより、カバー13を形成する円錐状筒13Bの先端13B1とノズル15を形成する円錐状突起17の先端17Bとからなるシェーピングエアリング10の先端面は、可及的に小さな面積となるエッヂ状先端面10Aとして形成することができる。このエッヂ状先端面10Aの径方向寸法Aは、下記数6のように設定されている。
【0078】
【数6】
【0079】
さらに、シェーピングエアリング10のエッヂ状先端面10Aは、回転霧化頭9の放出端縁9Eに対して長さ寸法Bだけ後退した位置に配置されている。この放出端縁9Eに対してエッヂ状先端面10Aが軸方向に後退した長さ寸法Bは、下記数7のように設定されている。
【0080】
【数7】
【0081】
このように、エッヂ状先端面10Aは、塗料が付着し得る平坦面の表面積を極力小さくすることができる。ここで、各シェーピングエア噴出孔23,24からシェーピングエアを噴出することによって、エッヂ状先端面10Aに負圧領域が形成され、噴霧した塗料がこのエッヂ状先端面10Aに引き付けられる。しかし、塗料が付着し得るエッヂ状先端面10Aの周囲には、各シェーピングエア噴出孔23,24があるので、噴出されるエアによって塗料を飛散させることができる。これにより、エッヂ状先端面10Aに塗料が付着するのを抑制し、洗浄頻度、洗浄時間を削減することができる。
【0082】
次に、第1のシェーピングエア噴出孔23と第2のシェーピングエア噴出孔24について具体的に述べる。
【0083】
第1のシェーピングエア噴出孔23は、シェーピングエアリング10に多数設けられている。この第1のシェーピングエア噴出孔23は、カバー側環状空間22とシェーピングエアリング10のエッヂ状先端面10Aとの間でエアを流通させる流路として形成されている。第1のシェーピングエア噴出孔23は、回転霧化頭9の放出端縁9Eに向けて第1のシェーピングエアを噴出するものである。
【0084】
図9に示すように、第1のシェーピングエア噴出孔23は、円錐状突起17の先細りテーパ面17Cに角溝として形成された傾斜凹溝20を、カバー13の円錐状筒13Bの内周面13B2で閉塞することにより形成されている。即ち、第1のシェーピングエア噴出孔23は、四角形状の孔(流路)として形成されている。具体的に述べると、第1のシェーピングエア噴出孔23は、傾斜凹溝20の先端の寸法によって定められた高さ寸法H、幅寸法Wをもった微細な流路として形成されている。しかも、図8に示すように、第1のシェーピングエア噴出孔23は、回転軸7の軸線O−Oに対し、回転霧化頭9の回転方向Rと逆方向に傾斜角度αをもって傾斜し、さらに面取り部18Dで傾斜角度Δα分大きく傾斜している。これにより、微細孔からなる第1のシェーピングエア噴出孔23は、供給される圧縮エアの流量が少ない状態でも、回転霧化頭9から接線方向に飛行してくる塗料の液糸に対し、高速のシェーピングエアを正面から衝突させることができ、少ない流量の圧縮エアで塗料を微粒化することができる。
【0085】
ここで、第1のシェーピングエア噴出孔23は、シェーピングエアリング10のエッヂ状先端面10Aに開口している。従って、第1のシェーピングエア噴出孔23の開口から傾斜角度(α+Δα)をもった旋回流として噴出されたシェーピングエアは、回転霧化頭9の放出端縁9Eから噴霧された塗料粒子に対し、旋回流を十分に保持した状態で噴き付けることができる。即ち、1つ1つの第1のシェーピングエア噴出孔23から指向性をもって噴出されるシェーピングエアは、塗料粒子を効率よく微粒化でき、かつ噴霧パターンの制御性を向上することができる。
【0086】
第2のシェーピングエア噴出孔24は、第1のシェーピングエア噴出孔23の内周側に位置してシェーピングエアリング10に多数設けられている。この第2のシェーピングエア噴出孔24は、ノズル側環状空間21とシェーピングエアリング10のエッヂ状先端面10Aとの間でエアを流通させる流路として形成されている。第2のシェーピングエア噴出孔24は、回転霧化頭9の外周面9Cに沿って第2のシェーピングエアを噴出するものである。
【0087】
図2に示すように、第2のシェーピングエア噴出孔24は、シェーピングエアリング10の先端に向け、回転軸7の軸線O−Oと平行な直線O′−O′に対して径方向の内側に傾斜角度βをもって配置されている。この傾斜角度βは、下記数8のように設定されている。
【0088】
【数8】
【0089】
これにより、図2図4に示すように、第2のシェーピングエア噴出孔24の先端は、ノズル15の筒体16の内周面16Aに軸線方向に長さ寸法Dをもった長楕円形状の長孔24Aとして開口している。このように、第2のシェーピングエア噴出孔24の先端を長孔24Aとして形成したことにより、第2のシェーピングエア噴出孔24は、開口位置に平坦面が必要なくなる。このために、シェーピングエアリング10の先端面は、径方向の幅寸法が小さなエッヂ状先端面10Aとして形成することができる。さらに、長孔24Aは、第2のシェーピングエア噴出孔24内に効率よく洗浄流体を流入させることができ、第2のシェーピングエア噴出孔24に付着した塗料を容易に洗浄することができる。
【0090】
第2のシェーピングエア噴出孔24は、第1のシェーピングエア噴出孔23と協働することにより、複合シェーピングエアを形成することができる。この複合シェーピングエアによって、より一層の塗料粒子の微粒化、噴霧パターンの制御性の向上を図ることができる。
【0091】
なお、図1に示すように、第1のエア流路25は、第1のシェーピングエア噴出孔23に圧縮エアを供給するために設けられたものである。この第1のエア流路25は、ハウジング2のハウジング本体2Aの外周側に設けられた入口流路26と、ハウジング2とエアモータ3とシェーピングエアリング10との間に画成されたハウジング側環状空間27と、ボディ11のフランジ11Eに設けたエア流路11E1と、カバー13の環状板13Aに設けたエア流路13A1と、カバー側環状空間22とにより構成されている。入口流路26は、各種管路を介して圧気源となるエアコンプレッサ等(いずれも図示せず)に接続されている。
【0092】
第2のエア流路28は、第2のシェーピングエア噴出孔24に圧縮エアを供給するために設けられたものである。この第2のエア流路28は、ハウジング2のハウジング本体2Aの径方向の中間位置に設けられた入口流路29と、エアモータ3のモータケース4に軸方向に延びて設けられたモータケース内流路30と、ボディ側環状空間12と、ボディ11の円錐状環状体11Cの連通路11C3と、ノズル側環状空間21とにより構成されている。入口流路29は、前述した入口流路26と同様に、各種管路を介してエアコンプレッサ等に接続されている。
【0093】
本実施の形態による回転霧化頭型塗装機1は上述の如き構成を有するもので、次に、この回転霧化頭型塗装機1を用いて塗装作業を行うときの動作について説明する。
【0094】
エアモータ3のスラストエア軸受5B,5C、ラジアルエア軸受6に軸受エアを供給してタービン5、回転軸7を回転可能に支持する。一方で、エアモータ3のタービン5にタービンエアを供給して回転軸7を回転駆動する。これにより、回転軸7と一緒に回転霧化頭9が高速で回転する。この状態で、色替弁装置で選択された塗料をフィードチューブ8の塗料流路から回転霧化頭9に供給することにより、この塗料を回転霧化頭9から塗料粒子として噴霧することができる。
【0095】
この場合、回転霧化頭9は、例えば、アルミニウム合金等の導電性を有する金属材料または表面に導電加工が施された樹脂材料を用いて形成されている。一方、塗装工場には、商用電源を例えば−60〜−150kVの高電圧に昇圧する高電圧発生器(図示せず)を備えている。そこで、塗装作業に際し、高電圧発生器から出力される高電圧を、フィードチューブ8、回転霧化頭9等に印加する。これにより、回転霧化頭9から噴霧された塗料粒子を、高電圧に帯電させることができる。
【0096】
このように、回転霧化頭9から噴霧される塗料粒子には、高電圧発生器によって高電圧を印加しているから、この高電圧に帯電した塗料粒子は、アースに接続された被塗物に向けて飛行し、効率よく塗着することができる。
【0097】
一方、回転霧化頭9から塗料を噴霧したときには、この噴霧塗料の微粒化と噴霧パターンの整形のためにシェーピングエアリング10の第1のシェーピングエア噴出孔23と第2のシェーピングエア噴出孔24からそれぞれ別々にシェーピングエアを噴出している。
【0098】
まず、第1のシェーピングエアを噴出する場合には、第1のエア流路25を通じて圧縮エアを供給し、各第1のシェーピングエア噴出孔23からシェーピングエアを噴出する。このときに、第1のシェーピングエア噴出孔23は、回転霧化頭9の回転方向Rと逆方向に傾斜して開口させているから、回転霧化頭9から接線方向に飛行してくる塗料の液糸に正面からシェーピングエアを衝突させることができ、この塗料を微粒化することができる。
【0099】
一方、第2のシェーピングエアを噴出する場合には、第2のエア流路28を通じて圧縮エアを供給し、各第2のシェーピングエア噴出孔24からシェーピングエアを噴出する。このときに、第2のシェーピングエア噴出孔24は、先端に向けて径方向の内側に傾斜して開口させているから、回転霧化頭9の放出端縁9E近くの外周面9Cに向けてシェーピングエアを供給することができる。これにより、第2のシェーピングエア噴出孔24は、第1のシェーピングエア噴出孔23と協働して、塗料の微粒化の促進、噴霧パターンの効率のよい制御を行うことができる。
【0100】
かくして、本実施の形態によれば、シェーピングエアリング10は、筒状体をなしてエアモータ3の前側位置に取付けられたボディ11と、該ボディ11の外周側に設けられ先端に向け縮径する円錐状のカバー13と、前記ボディ11の内周側に設けられ先端が該カバー13の先端と同一位置まで延びたノズル15との3部材により構成している。
【0101】
この上で、ノズル15の先端には、カバー13の円錐状筒13Bの内周面13B2と隙間なく接触した状態で当接する先細りの円錐状突起17を設ける。この円錐状突起17の先細りテーパ面17Cには、回転霧化頭9の回転方向Rと逆方向に傾斜した多数の傾斜凹溝20を全周に亘って設ける。一方、各傾斜凹溝20とカバー13の円錐状筒13Bの内周面13B2との間には、回転霧化頭9の放出端縁9Eに向けてシェーピングエアを噴出する第1のシェーピングエア噴出孔23を形成する。さらに、ノズル15の筒体16には、回転霧化頭9の外周面9Cに沿ってシェーピングエアを噴出する第2のシェーピングエア噴出孔24を設ける構成としている。
【0102】
従って、第1のシェーピングエア噴出孔23は、回転霧化頭9の回転方向Rと逆方向に傾斜して開口させているから、回転霧化頭9から接線方向に飛行してくる塗料の液糸に正面からシェーピングエアを衝突させることができ、この塗料を微粒化することができる。さらに、第1のシェーピングエア噴出孔23は、加工が困難な微細な穴加工ではなく、加工が容易な溝加工を用いて形成することができる。これにより、流路面積が小さな第1のシェーピングエア噴出孔23を簡単な作業で形成することができる上に、圧縮エアの使用量の削減、溝形状としたことによる清掃作業の簡略化を図ることができる。
【0103】
しかも、ノズル15は、その先端の円錐状突起17をカバー13の先端と同一位置に配置しているから、多数設けられた第1のシェーピングエア噴出孔23は、シェーピングエアリング10のエッヂ状先端面10Aにそれぞれ独立して開口させることができる。これにより、各第1のシェーピングエア噴出孔23から旋回流として噴出されたシェーピングエアは、回転霧化頭9の放出端縁9Eから噴霧された塗料粒子に対し、旋回流(旋回方向の指向性)を十分に保持した状態で噴き付けることができる。
【0104】
この結果、第1のシェーピングエア噴出孔23は、傾斜凹溝20を利用することにより、洗浄が容易な微細孔として形成できる上に、旋回方向に指向性をもったシェーピングエアによって塗料粒子の微粒化の促進、噴霧パターンの制御性の向上を図ることができる。一方、ノズル15の筒体16の内周面16Aには、第2のシェーピングエア噴出孔24を設けているから、第1のシェーピングエア噴出孔23と協働することにより、複合シェーピングエアを形成することができる。これにより、この複合シェーピングエアを用いることによって、より一層塗料を微粒化でき、噴霧パターンの制御性を向上することができる。
【0105】
各第1のシェーピングエア噴出孔23は、回転霧化頭9の回転方向Rと逆方向に傾斜させているから、回転霧化頭9の放出端縁9Eから接線方向に放出された塗料粒子に対し、第1のシェーピングエアを正面から効果的に当てることができ、塗料の微粒化、噴霧パターンの拡大を図ることができる。
【0106】
突壁18の側壁面18B,18Cのうち、回転霧化頭9の外周面9Cと対向する側壁面18Bの先端には、面取り部18Dを設けている。従って、傾斜凹溝20の傾斜角度αに面取り部18Dによる傾斜角度Δαを加え、面取り部18Dによって側壁面18Bの傾斜角度を(α+Δα)として、大きくすることができる。これにより、回転霧化頭9の放出端縁9Eから接線方向に放出された塗料粒子に対し、第1のシェーピングエアを的確に当てることができ、噴霧パターンを大きく広げることができる。
【0107】
一方、第2のシェーピングエア噴出孔24は、筒体16の内周面16Aに軸線方向に大きな長さ寸法をもった長孔24Aとして開口している。従って、シェーピングエアリング10のエッヂ状先端面10Aを、径方向の幅寸法が小さくなるように形成することができる。しかも、長楕円形状の長孔24Aとして開口した第2のシェーピングエア噴出孔24は、洗浄流体を注入し易く、簡単に洗浄することができる。
【0108】
シェーピングエアリング10は、第1のシェーピングエア噴出孔23と第2のシェーピングエア噴出孔24とを径方向に接近させて配置しているから、その先端面を、可及的に小さな面積となるエッヂ状先端面10Aとして形成することができる。これにより、噴霧塗料に最も接近したシェーピングエアリング10の先端で、塗料が付着しうる平坦面の面積を極力小さくすることができ、塗料の付着を防止して洗浄頻度、洗浄時間を削減することができる。
【0109】
さらに、各傾斜凹溝20は、各溝底面19と各突壁18の側壁面18B,18Cとの間の角隅部20Aを、円弧状に形成している。これにより、第1のシェーピングエア噴出孔23に塗料が浸入した場合でも、円弧状角隅部20Aでは、付着した塗料を簡単に洗浄することができ、洗浄作業を短時間で行うことができる。
【0110】
なお、実施の形態では、回転霧化頭型塗装機1として、回転霧化頭9に供給される塗料に高電圧を直接的に印加する直接帯電式の静電塗装機を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば回転霧化頭9の外周位置に高電圧を放電する外部電極を有し、この外部電極からの放電によって回転霧化頭9から噴霧された塗料粒子に高電圧を印加する間接帯電式の静電塗装機に適用する構成としてもよい。さらに、本発明は、塗料に高電圧を印加することなく塗装を行う非静電塗装機にも適用することができる。
【0111】
実施の形態では、回転霧化頭9は、放出端縁9Eでの直径寸法が30mmである場合を例示している。しかし、本発明に用いられる回転霧化頭9は、直径寸法が例えば20〜60mmの範囲内で任意の大きさのものを用いることができる。
【符号の説明】
【0112】
1 回転霧化頭型塗装機
2 ハウジング
3 エアモータ
4 モータケース
5 タービン
7 回転軸
8 フィードチューブ
9 回転霧化頭
9C 外周面
9D,13B2,16A 内周面
9E 放出端縁
10 シェーピングエアリング
10A エッヂ状先端面
11 ボディ
13 カバー
13B 円錐状筒
13B1,17B 先端
15 ノズル
16 筒体
17 円錐状突起
17C 先細りテーパ面
18 突壁
18A 外壁面
18B,18C 側壁面
18D 面取り部
19 溝底面
20 傾斜凹溝
20A 円弧状角隅部
23 第1のシェーピングエア噴出孔
24 第2のシェーピングエア噴出孔
24A 長孔
O−O 回転軸の軸線
R 回転霧化頭の回転方向
α 傾斜凹溝の傾斜角度
H 側壁面の高さ寸法
W 溝底面の幅寸法
L 面取り部の長さ寸法
Δα 面取り部の傾斜角度
C 円弧状角隅部の半径寸法
β 第2のシェーピングエア噴出孔の傾斜角度
A エッヂ状先端面の径方向寸法
D 第2のシェーピングエア噴出孔の長孔の長さ寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9

【手続補正書】
【提出日】2015年8月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
このように構成されたノズル15は、ボディ11の内筒11A内に挿入し、筒体16のおねじ16Cを内筒11A内のめねじ11Dに螺着する。これにより、ボディ11内にノズル15を取付けることができる。ボディ11内にノズル15を取付けた状態では、筒体16の円環溝16Dとボディ11の円錐状環状11Cの内周面11C2との間にノズル側環状空間21を画成することができる。このノズル側環状空間21は、筒体16の負圧防止流路16Eと第2のシェーピングエア噴出孔24に圧縮エアを満遍なく供給するための共通流路を構成している。一方、ボディ11とカバー13とノズル15との間には、先細り形状のカバー側環状空間22が画成されている。このカバー側環状空間22は、第1のシェーピングエア噴出孔23に圧縮エアを供給するための共通流路を構成している。
【国際調査報告】