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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2015年3月26日
【発行日】2017年3月2日
(54)【発明の名称】有益微生物を活用した水耕栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20170210BHJP
   A01G 31/00 20060101ALI20170210BHJP
【FI】
   A01G7/00 605A
   A01G31/00 601A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】21
【出願番号】特願2015-537984(P2015-537984)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2014年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-194309(P2013-194309)
(32)【優先日】2013年9月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-62680(P2014-62680)
(32)【優先日】2014年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500250644
【氏名又は名称】颯爽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 孝昭
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA12
2B314MA27
2B314MA55
2B314MA70
2B314PC18
(57)【要約】

化学肥料や化学合成農薬を使用しない、またはこれらの使用量を削減できる水耕栽培方法を提供する。本発明は、菌根菌とそのパートナー細菌のような有益微生物を活用した水耕栽培方法であって、菌根菌とそのパートナー細菌が生息しやすいパートナー植物を作物の間に育てることや、これら有益微生物が増殖しやすい環境を作り出すことができる水耕栽培装置を使用することによって、作物の収量や品質を高めることができ、化学肥料や化学合成農薬の使用量の削減、ないしは不要が可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌根菌とパートナー細菌である有益微生物とを活用した作物の水耕栽培方法であって、
前記菌根菌およびパートナー細菌が生息しやすいパートナー植物を前記作物間に育てる
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項2】
請求項1記載の水耕栽培方法において、
前記菌根菌は、アーバスキュラー菌根菌であって、前記作物の水耕栽培開始前にあらかじめ前記作物または前記パートナー植物に感染させる
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の水耕栽培方法において、
前記パートナー細菌は、前記菌根菌の胞子内やその胞子周辺に生息するものであり、前記菌根菌の菌糸生長を促進させ、リン溶解能、窒素固定能、および植物病原菌に対する拮抗作用を有する
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の水耕栽培方法において、
前記パートナー植物は、前記菌根菌の菌糸ネットワーク形成を促進させ、かつ前記パートナー細菌が根周辺で生息しやすく増殖を助け、前記作物の生育に悪影響を及ぼさないものである
ことを特徴とする耕栽培方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の水耕栽培方法において、
前記菌根菌およびパートナー細菌が増殖しやすく、前記作物の根から溶出する植物生長抑制物質を除去できる養液循環方式であって、水温が調整可能な水耕栽培装置を用いる
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の水耕栽培方法において、
前記パートナー細菌であらかじめ腐熟させた有機物による有機液体肥料を用いる
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の水耕栽培方法において、
前記パートナー細菌は、Bacillus属、Paenibacillus属又はPseudomonas属である
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の水耕栽培方法において、
前記パートナー植物は、菌根植物である
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項9】
請求項5記載の水耕栽培方法において、
前記水耕栽培装置は、ゼオライト又は炭を装備している
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項10】
請求項6記載の水耕栽培方法において、
前記有機物は、緑肥などの有機液体肥料である
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項11】
請求項10記載の水耕栽培方法において、
前記有機液体肥料は、マメ科植物の茎葉又はイネ科植物の茎葉などの有機物を加えて腐熟させたものである
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、菌根菌とそのパートナー細菌を活用した水耕栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
菌根菌は、植物の根に感染し、植物から光合成産物を得る見返りに、植物に養水分の供給、環境ストレス耐性や病害虫抵抗性の付与などに貢献する土壌共生微生物である。菌根菌の中でも、特にアーバスキュラー菌根菌(AMF)は、ほぼ全ての陸生植物と共生関係を築くことができるので、この菌の機能や役割を踏まえて効果的な活用法を考えることにより、化学肥料や化学合成農薬の使用量の削減、ないしは不要が可能となり、安心・安全で持続可能な食糧を増産できることが期待される。
【0003】
最近、AMFの胞子内やその周辺に生息するパートナー細菌は、AMFの菌糸生長を促進し、リン溶解能や窒素固定能、植物病原菌に対する拮抗作用を有していることが明らかになっている(例えば、非特許文献1および2参照)。
【0004】
また、サラダナの水耕栽培におけるパートナー植物の一つであるバヒアグラスおよびAMFの導入について調査したところ、バヒアグラスの導入はサラダナの生育に悪影響を及ぼさないか、わずかに生育を抑制する傾向がみられること、および、低温などのストレスによってサラダナとバヒアグラスとの間に養分競合が発生しやすい場合にはAMFの活用によって、その競合が緩和されることが明らかとされている(例えば、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】クルス アンドレ フレイリ、外4名、「アーバスキュラー菌根菌、Gigaspora margaritaの胞子から分離した細菌は菌根菌菌糸生長を促進し、リン溶解能および窒素固定能を有す」、園芸学研究、園芸学会、2010年、第9巻(別1)、p.265.
【非特許文献2】石井孝昭、「アーバスキュラー菌根菌およびその菌に関連する微生物とパートナー植物を活用した土壌管理に関する研究」、IFO Research Communications、発酵研究所、2012年、第26巻、p.87−100.
【非特許文献3】三輪由佳、外2名、「サラダナの水耕栽培におけるバヒアグラスの利用」、園芸学研究、園芸学会、2008年、第7巻(別1)、p.345.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、AMFとそのパートナー細菌、並びにこれら有益微生物の増殖を助けるパートナー植物を活用した体系的な水耕栽培技術はこれまで全く報告されていない。また、水耕栽培下におけるAMFとそのパートナー細菌、並びにパートナー植物の活用が作物生産量や、例えば、果実品質等の品質に及ぼす影響について調査した研究報告もみられない。
【0007】
そこで本発明は、AMFとそのパートナー細菌、並びにそれらのパートナー植物を用い、収量や品質に好影響を及ぼす水耕栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するため、請求項1にかかる本発明は、菌根菌とパートナー細菌である有益微生物とを活用した作物の水耕栽培方法であって、前記菌根菌およびパートナー細菌が生息しやすいパートナー植物を前記作物間に育てる、ことを特徴とする水耕栽培方法である。
【0009】
請求項2は、請求項1の水耕栽培方法において、前記菌根菌は、アーバスキュラー菌根菌であって、前記作物の水耕栽培開始前にあらかじめ前記作物または前記パートナー植物に感染させる、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3は、請求項1または2の水耕栽培方法において、前記パートナー細菌は、前記菌根菌の胞子内やその胞子周辺に生息するものであり、前記菌根菌の菌糸生長を促進させ、リン溶解能、窒素固定能、および植物病原菌に対する拮抗作用を有する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4は、請求項1ないし3のいずれかの水耕栽培方法において、前記パートナー植物は、前記菌根菌の菌糸ネットワーク形成を促進させ、かつ前記パートナー細菌が根周辺で生息しやすく増殖を助け、前記作物の生育に悪影響を及ぼさないものである、ことを特徴とする。
【0012】
請求項5は、請求項1ないし4のいずれかの水耕栽培方法において、前記菌根菌およびパートナー細菌が増殖しやすく、前記作物の根から溶出する植物生長抑制物質を除去できる養液循環方式であって、水温が調整可能な水耕栽培装置を用いる、ことを特徴とする。
【0013】
請求項6は、請求項1ないし5のいずれかの水耕栽培方法において、前記パートナー細菌であらかじめ腐熟させた有機物による有機液体肥料を用いる、ことを特徴とする。
【0014】
請求項7は、請求項1ないし6のいずれかの水耕栽培方法において、前記パートナー細菌は、Bacillus属、Paenibacillus属又はPseudomonas属である、ことを特徴とする。
【0015】
請求項8は、請求項1ないし7のいずれかの水耕栽培方法において、前記パートナー植物は、菌根植物である、ことを特徴とする。
【0016】
請求項9は、請求項5の水耕栽培方法において、前記水耕栽培装置は、ゼオライト又は炭を装備している、ことを特徴とする。
【0017】
請求項10は、請求項6の水耕栽培方法において、前記有機物は、緑肥などの有機液体肥料である、ことを特徴とする。
【0018】
請求項11は、請求項10の水耕栽培方法において、前記有機液体肥料は、マメ科植物の茎葉又はイネ科植物の茎葉などの有機物を加えて腐熟させたものである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、菌根菌とそのパートナー細菌を活用する作物の水耕栽培方法であって、菌根菌およびパートナー細菌が生息しやすいパートナー植物を作物間に育てて、作物の生育を助け、収量を増加させ、作物の品質を向上できるとともに、病害抵抗性や環境ストレス耐性を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例1に係る水耕栽培方法下におけるアーバスキュラー菌根菌とそのパートナー細菌、並びにパートナー植物が作物の生育に及ぼす影響を示す表であって、対照区は慣行水耕栽培方法、アーバスキュラー菌根菌(AMF)+パートナー細菌(PB)+パートナー植物(PP)区は本発明に係る水耕栽培方法である。
図2】上記実施例1の1例として、本発明に係る水耕栽培方法下におけるアーバスキュラー菌根菌(AMF)とそのパートナー細菌(PB)、並びにパートナー植物(PP)がピノグリーンの生育に及ぼす影響(移植1か月後)を示す写真であって、左側2本は慣行水耕栽培方法で、右側2本はAMF+PB+PP区を示す。
図3】上記実施例1の水耕栽培方法下におけるアーバスキュラー菌根菌感染バヒアグラス(パートナー植物の一つ)(矢印)の利用方法の1例を示す写真である。
図4】上記実施例1の水耕栽培方法下におけるバヒアグラス(パートナー植物の一つ)の根に絡み合って伸長しているアーバスキュラー菌根菌(AMF)菌糸を示す写真である。
図5】上記実施例1の1例として、本発明に係る水耕栽培方法下におけるアーバスキュラー菌根菌(AMF)+パートナー細菌(PB)+パートナー植物(PP)処理区におけるピノグリーンの菌根(x100)(水耕栽培開始1か月後)を示す顕微鏡写真である。
図6】上記実施例1の水耕栽培方法下におけるアーバスキュラー菌根菌(AMF)+パートナー細菌(PB)+パートナー植物(PP)処理区の培養液中のパートナー細菌を培養1日後、UV照射下で観察した写真である。
図7】上記実施例1の1例として、本発明に係る水耕栽培方法下におけるアーバスキュラー菌根菌(AMF)+パートナー細菌(PB)+パートナー植物(PP)処理区におけるピノグリーン根のパートナー細菌の生息状況を水耕栽培開始1か月後、UV照射下で観察した顕微鏡写真である。
図8】本発明の実施例2に係る水耕栽培方法下におけるアーバスキュラー菌根菌(AMF)とそのパートナー細菌(PB)、並びにパートナー植物(PP)がトマトの生育に及ぼす影響(移植約1か月後)を示す写真であって、左側が慣行水耕栽培方法(対照区)で、右側がAMF+PB+PP区である。
図9】上記実施例2の1例として、本発明に係る水耕栽培方法下におけるアーバスキュラー菌根菌(AMF)とそのパートナー細菌(PB)、並びにパートナー植物(PP)がトマトの果実品質に及ぼす影響(移植約2か月後)を示す表であって、対照区が慣行水耕栽培方法、AMF+PB+PP区が本発明に係る水耕栽培方法である。
図10】本発明の実施例3に係る水耕栽培方法下における緑肥および化学肥料がアーバスキュラー菌根菌(AMF)とそのパートナー細菌(PB)接種のサラダナの生長に及ぼす影響を示す表であって、化学肥料使用(慣行水耕栽培方法)の常法濃度(化学肥料1)区と、その半分の濃度(化学肥料1/2)区と比較し、常法濃度区と同様な電気伝導度(EC)値にした緑肥1区とその半分の濃度(緑肥1/2)区におけるサラダナの生育を対比したものである。
図11】本発明の実施例4に係る水耕栽培方法におけるアーバスキュラー菌根菌(AMF)とそのパートナー細菌(PB)並びにパートナー植物(PP)を用いた有機液肥の水耕栽培がネギの生長に及ぼす影響を示す写真である。
図12】上記実施例4に係る水耕栽培方法におけるアーバスキュラー菌根菌(AMF)とそのパートナー細菌(PB)並びにパートナー植物(PP)を用いた有機液肥の水耕栽培がシュンギクおよびネギの菌根感染率および生長に及ぼす影響を示す表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係る水耕栽培方法は、菌根菌とそのパートナー細菌のような有益微生物を活用する栽培法である。そして、菌根菌とそのパートナー細菌が生息しやすい間作植物(パートナー植物)を作物の間に育てる(間作)方法を活用する。このような活用法と有益微生物が増殖しやすい環境を作り出すことができる水耕栽培装置を用いることによって、作物の収量や品質を高めることができ、化学肥料や化学合成農薬を使用しない、またはこれらの使用量を削減できるものである。
【0022】
菌根菌は、特にほぼ全ての植物と共生関係を築き上げるアーバスキュラー菌根菌(AMF)であって、水耕栽培開始前の播種時や挿木時に菌根菌胞子を含む接種源を処理し、あらかじめ作物や間作植物に感染させる。そして、菌根形成がみられる接種1−2週間後に水耕栽培装置用の発泡スチロールの穴にスポンジで作物の苗をくるんではめ込み移植し、水耕栽培装置の液面にセットして栽培を開始する。
【0023】
パートナー細菌(PB)は、Bacillus属、Paenibacillus属、Pseudomonas属などの人畜に害を及ぼさない細菌で、菌根菌の胞子内やその胞子周辺に生息するものであって、菌根菌の菌糸生長を促進させ、リン溶解能や窒素固定能、植物病原菌に対する拮抗作用などを有しているものである。
【0024】
パートナー植物(PP)は、バヒアグラスのような菌根植物であって、菌根菌の菌糸ネットワーク形成を促進させるものであり、かつそのパートナー細菌が根周辺で生息しやすく、その増殖を助けるものであり、さらに作物の生育などに悪影響を及ぼさないものである。
【0025】
水耕栽培装置は、水温を20〜25℃前後に調整可能とされており、菌根菌とそのパートナー細菌が増殖しやすく、植物の生育などに悪影響を及ぼさない環境を作り出せるように、根から溶出する植物生長抑制物質を除去できるゼオライト、炭などを装備した養液循環方式のものが望ましい。
【0026】
水耕栽培に用いる肥料には、化学肥料の代わりに、あらかじめパートナー細菌、乳酸菌、酵母などで腐熟させた有機物、例えば緑肥からの有機液体肥料が望ましい。特に、有機物としては、有害な物質を含まない有機物であるとともに、カラスノエンドウ、レンゲ、クローバー、ダイズなどのマメ科植物の茎葉や、これらにイネ科植物の茎葉などを加えて腐熟させた緑肥からの発酵液が良い。
【0027】
以上により、本発明の一実施形態によれば、菌根菌とそのパートナー細菌が生息しやすいパートナー植物を作物の間に植えることによって、有益微生物が増殖しやすい環境を作り出すことができる。また同時に、有益微生物が増殖しやすい環境を作り出すことができる水耕栽培装置を用いることにより、化学肥料や化学合成農薬を使用しない、またはこれらの使用量を著しく削減させて不要としても作物の育成を旺盛にさせることができる。
【0028】
すなわち、水耕栽培下においても、菌根菌とそのパートナー細菌の活用は、作物の生育を助け、収量を増加させ、その品質を向上できるとともに、病害抵抗性や環境ストレス耐性を付与できる。
【0029】
特に、菌根菌が一般に感染しにくいといわれているアブラナ科作物にあっても、菌根菌はそれらの根にいくらか感染し、作物の生育を旺盛にさせるので、収量増加や品質向上ができるとともに、病害抵抗性や環境ストレス耐性をも付与できる。また、水耕栽培開始前にあらかじめ作物やパートナー植物に菌根菌を感染させておくことにより、作物の生育促進、収量の増加、品質の向上をより効率良くでき、病害抵抗性や環境ストレス耐性をより付与できる。
【0030】
また、菌根菌の菌糸生長を促進し、リン溶解能や窒素固定能、植物病原菌に対する拮抗作用を有しているパートナー細菌は、作物およびパートナー植物の根表面やその周辺に多数生息するので、作物の養分吸収を助けるとともに、根の健全性などを付与できる。
【0031】
さらに、根から溶出する植物生長抑制物質を除去できるゼオライト、炭などを装備した養液循環方式で水温が調整可能な水耕栽培装置を用いることにより、菌根菌とそのパートナー細菌を増殖しやすくでき、作物やパートナー植物の生育などに悪影響を及ぼさない環境を作り出すことができる。
【0032】
また、化学肥料の代わりに、あらかじめパートナー細菌などで腐熟させた有機物、例えば緑肥からの有機液体肥料を用いることにより、水耕栽培下でも完全有機栽培が可能となり、安心・安全な作物を増産することができる。
【実施例1】
【0033】
<本発明の水耕栽培方法における野菜の生育>
次に、上記水耕栽培方法の実施例1として、8種類の野菜を用いた実験例について説明する。
【0034】
アップルミント(Mi)をバーミキュライト入りの育苗箱に挿木するとともに、サラダナ(Sa)、ルッコラ(Ru)、レッドマスタード(Rm)、レッドカラシナ(Rk)、チンゲンサイ(Ti)‘武帝’、コマツナ(Ko)‘蔵王’およびピノグリーン(Pi)をバーミキュライトに播種した。その直後に、パートナー細菌(Pseudomonas sp.(KCIG001)NBRC109613)が共存するAMF(Glomus clarum (IK97)接種源(胞子約900個)を接種した。なお、対照区として無接種のものも用意した。
【0035】
これらを約2週間育成させた後、循環式水耕栽培装置(颯爽工業(株)製AQUA VITTON)2機を用い、これら2機のそれぞれに大塚一号700gおよび大塚二号465gを含む養液(水道水で2.8m)を作り、両区の苗を装置に移植した。特に、AMFを接種した区ではパートナー植物として予めAMFを接種しておいたバヒアグラスも作物ごとに、1パネル(89.5cm×54.8cm×4.3cm)に付き2苗を移植した(AMF+PB+PP区)。なお、両区の水温は25℃とした。
【0036】
移植した1か月後、供試作物を収穫し、全生体重および根生体重を測定した。同時に根の先端部を採取し、菌根感染率の測定およびUV照射下でのパートナー細菌の観察に用いた。
【0037】
また両区の養液を採取し、ニッスイ寒天培地上での細菌のコロニー観察を行った。培養条件は25℃の暗黒とし、培養1日後、シャーレ上のコロニーをUV照射下で観察した。
【0038】
その結果、いずれの供試野菜でも、対照区と比べて、AMF+PB+PP区で生育が良好となった。特に、図1に示すように、Mi、SaおよびRuでは全生体重および根生体重が、Ko、Pi、RmおよびRkでは全生体重が有意に高くなった。ここで、図1中の数値は、平均値±標準誤差(RuおよびSaはn=6、他はn=4)を示している。また、Piの生育状態を図2に示す。
【0039】
AMF+PB+PP区では、図3に示すように、パートナー植物の一つであるバヒアグラスをいずれの野菜の間にも植え付けた。そのバヒアグラスの根に感染したAMFは、図4に示すように、養液中で旺盛に菌糸を伸ばしていた。
【0040】
また、AMF+PB+PP区では、図1に示すように、いずれの野菜の根にも菌根が形成されていた。図5は、Piの菌根を示す。
【0041】
AMF+PB+PP区の養液中では、図6に示すように、パートナー細菌が大量に増殖し、図7に示すように、根に多数付着し生息していた。すなわち、図6および図7に示すように、左側の慣行水耕栽培方法(対照区)は、UV照射下で根が蛍光を示さないが、右側のAMF+PB+PP区は、UV照射菓子等で根に蛍光がみられ明るく観察されている。
【0042】
これらの結果、水耕栽培下でもAMFとそのパートナー細菌の活用は作物の生育を助け、収量増加に大いに貢献することが明らかとなった。特に、AMFが一般に感染しにくいといわれているアブラナ科作物においてもそれらの生育が旺盛になっていた。この原因は、AMFがそれらの作物の根にいくらか感染するとともに、パートナー細菌がそれらの根の周辺で多数生息し、リン溶解能、窒素固定能、根の健全性などに大きく関与していると考えられる。
【実施例2】
【0043】
<本発明の水耕栽培方法におけるトマトの生育と果実品質>
次に、上記水耕栽培方法の実施例2として、トマトを用いた実験例について説明する。
【0044】
トマトをバーミキュライトに播種した直後、上記実施例1と同様に、パートナー細菌(Pseudomonas sp.(KCIGC01)NBRC109613)が共存するAMF(Glomus clarum (IK97)接種源(胞子約900個)を接種した。なお、対照区として無接種のものも用意した。
【0045】
これらを約2週間育成した後、上記実施例1と同様の方法で水耕栽培を行った。
【0046】
移植した約2か月後、トマト果実を収穫し、果実品質、特に糖と酸を分析した。なお、糖含量は屈折糖度計で、酸含量は滴定酸度法で測定し、クエン酸に換算して求めた。
【0047】
その結果、図8に示すように、トマトの生育は、対照区と比べて、AMF+PB+PP区においてきわめて良好となった。ここで、図8中の左側が慣行水耕栽培方法(対照区)を示し、右側がAMF+PB+PP区を示している。
【0048】
また、図9に示すように、AMF+PB+PP区におけるトマト果汁中の糖含量は、対照区と比べて、著しく高く、酸含量は低くなったので、糖酸比が著しく高かった。ここで、図9中の各数値は、平均値±標準誤差(n=8)を示している。
【実施例3】
【0049】
<本発明の水耕栽培方法における緑肥を用いた有機液体肥料の効果>
次に、上記水耕栽培方法の実施例3として、化学肥料の代わりに緑肥からの有機液体肥料を用いた実験例について説明する。
【0050】
サラダナをバーミキュライトに播種した直後、上記実施例1と同様に、パートナー細菌Pseudomonas sp.(KCIG001)NBRC109613)が共存するAMF(Glomus clarum (IK97))接種源(胞子約900個)を接種した。
【0051】
これらを約2週間育成した後、上記実施例1と同様の化学肥料を用い、またその濃度も上記実施例1と同様にした常法濃度(化学肥料1)区とその半分の濃度(化学肥料1/2)区、並びに常法濃度区と同様な電気伝導度(EC)値にした緑肥1区とその半分の濃度(緑肥1/2)区を設けて、サラダナを移植した。
【0052】
移植した約3週間後、サラダナを解体調査し、全生体重および根生体重を測定した。
【0053】
その結果、図10に示すように、化学肥料1区、緑肥1区および緑肥1/2区におけるサラダナの生育は良好であった。化学肥料1区では生長量が高い傾向にあったが、不揃いでばらつきが大きかった。また、化学肥料1/2区ではきわめて生育が悪かった。しかしながら、緑肥1区および緑肥1/2区ではサラダナの大きさが揃っており、その両区の生育量の差異も小さかった。ここで、図10中の数値は、平均値±標準誤差(n=6)を示している。
【実施例4】
【0054】
<本発明の水耕栽培方法における数種類の園芸作物の生育に及ぼす影響>
次に、AMF、PBおよびPPを用いた化学液肥および有機液肥の水耕栽培が数種類の園芸作物の生育に及ぼす影響につき、AMF、PBおよびPPを利用しない慣行水耕栽培と比較した実験例について説明する。
【0055】
(実験1)
4月22日にミニトマト‘ステラ’、同年6月1日にサラダナをバーミキュライトに播種した直後、上記実施例1と同様に、PB(Pseudomonas sp.(KCIG001)NBRC109613)が共存するAMF(Glomus clarum (IK97))接種源(胞子約900個)を接種した。なお、対照(慣行)区として無接種のものも用意した。
【0056】
循環式水耕栽培装置(颯爽工業(株)製AQUA VITTON)2機を用い、これら2機のそれぞれに化学液肥(水槽容量2.8mに大塚一号700g、大塚二号465gを施与)を作り、これら装置へ、AMF+PB接種および無接種のミニトマト苗を同年5月16日、AMF+PB接種および無接種のサラダナ苗を同年6月25日に移植した。
【0057】
AMF+PB接種苗では、PPとして予めAMFを接種しておいたバヒアグラスも作物ごとに、1パネル(89.5cm×54.8cm×4.3cm)に付き2苗移植した(AMF+PB+PP区)。なお、両区の水温は25℃とした。
【0058】
その後、サラダナを同年7月22日に収穫し、収穫したサラダナの全生体重および根生体重を測定した。同年7月29日からミニトマトを順次収穫していき、収穫したミニトマトの全生体重、根生体重、糖度および酸度のそれぞれを測定した。また同時に、供試作物の根の先端部を採取し、菌根感染率の測定およびUV照射下でのPBの観察に用いた。
【0059】
この結果、サラダナおよびミニトマトのいずれにおいても、AMF+PB+PP区の生育は、対照区と比べ、非常に旺盛となり、収穫までの栽培期間が著しく短縮されることが分かった。また、ミニトマトの場合には、果汁の糖度や糖酸比が有意に高くなった。さらに、AMF+PB+PP区では、供試作物の根に菌根形成やPPが観察でき、個々の苗の生育差も極めて小さかった。これは、水耕栽培下においてもAMF菌糸ネットワークが機能しており、養分の分配が適切に行われていることを示している。
【0060】
(実験2)
100Lタンクにカラスノエンドウ(同年4月15日採集)約10kgを入れたものを3個用意し、これら各タンクに、筆者らが独自開発した枯草菌(Bacillus属)およびPseudomonas sp.(KCIG001)NBRC109613を主体としたPBを含む培養液約1Lを入れて発酵させ有機液肥(緑肥)を作成した。同年8月29日に、ネギ‘小春’、同年8月31日にシュンギク‘中葉しゅんぎく’を播種し、上記実験1と同様に、AMF+PB接種および無接種の苗を用意した。その後、同年9月13日、上記実験1と同様に、循環式水耕栽培装置2機を用いて、AMF+PB+PPに有機液肥を加え、ECを0.6mS/cmとした有機液肥区を設け、有益微生物を接種した苗を移植した(AMF+PB+PP+有機液肥区)。
【0061】
一方、対照区は、AMF+PB+PPを利用せず、化学液肥(EC:1.2mS/cm)のみの水耕栽培(慣行)区とした。なお、両区の水温は20℃とした。
【0062】
その後、ネギを同年10月31日に収穫し、シュンギクを同年10月24日に収穫し、それぞれの全生体重および根生体重を測定した。また、上記実験1と同様に、採取根の菌根形成やPBの調査を行った。なお、上記実験1および本実験2における病害虫防除は、カンキツオイル粉末を植物保護剤として利用した。
【0063】
この結果、ネギ(図11参照。)およびシュンギクのいずれにおいても、図12に示すように、AMF+PB+PP+有機液肥区では、ECの濃度が対照区の1/2であっても、対照区と比較し、生育が非常に旺盛となり、収穫期が早まった。また、上記試験1と同様に、AMF+PB+PP+有機液肥区においては、菌根形成やPBを確認でき、各苗の大きさも揃っていた。よって、AMF+PB+PPは、化学液肥および有機液肥のいずれにおいても作物の生育を旺盛にし、収穫を早め、収量増加に多大に貢献することが明らかとなった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12

【手続補正書】
【提出日】2015年3月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌根菌とパートナー細菌である有益微生物とを活用した作物の水耕栽培方法であって、
前記菌根菌、および前記菌根菌と相性が良くて共存するパートナー細菌を接種し、前記菌根菌および前記パートナー細菌が生息しやすいパートナー植物または前記作物に前記菌根菌を感染させ、前記パートナー植物を前記作物間に育てる
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項2】
請求項1記載の水耕栽培方法において、
前記菌根菌は、アーバスキュラー菌根菌であって、前記作物の水耕栽培開始前にあらかじめ前記作物または前記パートナー植物に感染させる
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の水耕栽培方法において、
前記パートナー細菌は、前記菌根菌の胞子内やその胞子周辺に生息するものであり、前記菌根菌の菌糸生長を促進させ、リン溶解能、窒素固定能、および植物病原菌に対する拮抗作用を有する
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の水耕栽培方法において、
前記パートナー植物は、前記菌根菌の菌糸ネットワーク形成を促進させ、かつ前記パートナー細菌が根周辺で生息しやすく増殖を助け、前記作物の生育に悪影響を及ぼさないものである
ことを特徴とする耕栽培方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の水耕栽培方法において、
前記菌根菌およびパートナー細菌が増殖しやすく、前記作物の根から溶出する植物生長抑制物質を除去できる養液循環方式であって、水温が調整可能な水耕栽培装置を用いる
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の水耕栽培方法において、
前記パートナー細菌であらかじめ腐熟させた有機物による有機液体肥料を用いる
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の水耕栽培方法において、
前記パートナー細菌は、Bacillus属、Paenibacillus属又はPseudomonas属である
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の水耕栽培方法において、
前記パートナー植物は、菌根植物である
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項9】
請求項5記載の水耕栽培方法において、
前記水耕栽培装置は、ゼオライト又は炭を装備している
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項10】
請求項6記載の水耕栽培方法において、
前記有機物は、緑肥などの有機液体肥料である
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【請求項11】
請求項10記載の水耕栽培方法において、
前記有機液体肥料は、マメ科植物の茎葉又はイネ科植物の茎葉などの有機物を加えて腐熟させたものである
ことを特徴とする水耕栽培方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
菌根菌菌糸生長を促進し、リン溶解能および窒素固定能を有す」、園芸学研究、園芸学会、2010年、第9巻(別1)、p.265.
非特許文献2:石井孝昭、「アーバスキュラー菌根菌およびその菌に関連する微生物とパートナー植物を活用した土壌管理に関する研究」、IFO Research Communications、発酵研究所、2012年、第26巻、p.87−100.
非特許文献3:三輪由佳、外2名、「サラダナの水耕栽培におけるバヒアグラスの利用」、園芸学研究、園芸学会、2008年、第7巻(別1)、p.345.
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0006]
しかしながら、AMFとそのパートナー細菌、並びにこれら有益微生物の増殖を助けるパートナー植物を活用した体系的な水耕栽培技術はこれまで全く報告されていない。また、水耕栽培下におけるAMFとそのパートナー細菌、並びにパートナー植物の活用が作物生産量や、例えば、果実品質等の品質に及ぼす影響について調査した研究報告もみられない。
[0007]
そこで本発明は、AMFとそのパートナー細菌、並びにそれらのパートナー植物を用い、収量や品質に好影響を及ぼす水耕栽培方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0008]
この課題を解決するため、請求項1にかかる本発明は、菌根菌とパートナー細菌である有益微生物とを活用した作物の水耕栽培方法であって、前記菌根菌、および前記菌根菌と相性が良くて共存するパートナー細菌を接種し、前記菌根菌および前記パートナー細菌が生息しやすいパートナー植物または前記作物に前記菌根菌を感染させ、前記パートナー植物を前記作物間に育てる、ことを特徴とする水耕栽培方法である。
[0009]
請求項2は、請求項1の水耕栽培方法において、前記菌根菌は、アーバスキュラー菌根菌であって、前記作物の水耕栽培開始前にあらかじめ前記作物または前記パートナー植物に感染させる、ことを特徴とする。
[0010]
請求項3は、請求項1または2の水耕栽培方法において、前記パートナー
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
とともに、カラスノエンドウ、レンゲ、クローバー、ダイズなどのマメ科植物の茎葉や、これらにイネ科植物の茎葉などを加えて腐熟させた緑肥からの発酵液が良い。
[0027]
以上により、本発明の一実施形態によれば、菌根菌とそのパートナー細菌が生息しやすいパートナー植物を作物の間に植えることによって、有益微生物が増殖しやすい環境を作り出すことができる。また同時に、有益微生物が増殖しやすい環境を作り出すことができる水耕栽培装置を用いることにより、化学肥料や化学合成農薬を使用しない、またはこれらの使用量を著しく削減させて不要としても作物の育成を旺盛にさせることができる。
[0028]
すなわち、水耕栽培下においても、菌根菌とそのパートナー細菌の活用は、作物の生育を助け、収量を増加させ、その品質を向上できるとともに、病害抵抗性や環境ストレス耐性を付与できる。
[0029]
特に、菌根菌が一般に感染しにくいといわれているアブラナ科作物にあっても、菌根菌はそれらの根にいくらか感染し、作物の生育を旺盛にさせるので、収量増加や品質向上ができるとともに、病害抵抗性や環境ストレス耐性をも付与できる。また、水耕栽培開始前にあらかじめ作物やパートナー植物に菌根菌を感染させておくことにより、作物の生育促進、収量の増加、品質の向上をより効率良くでき、病害抵抗性や環境ストレス耐性をより付与できる。
[0030]
また、菌根菌の菌糸生長を促進し、リン溶解能や窒素固定能、植物病原菌に対する拮抗作用を有している相性の良いパートナー細菌は、作物およびパートナー植物の根表面やその周辺に多数生息するので、作物の養分吸収を助けるとともに、根の健全性などを付与できる。
[0031]
さらに、根から溶出する植物生長抑制物質を除去できるゼオライト、炭などを装備した養液循環方式で水温が調整可能な水耕栽培装置を用いることにより、菌根菌とそのパートナー細菌を増殖しやすくでき、作物やパートナー植物の生育などに悪影響を及ぼさない環境を作り出すことができる。
[0032]
また、化学肥料の代わりに、あらかじめパートナー細菌などで腐熟させた
【国際調査報告】