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再表2016-10093非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有する複合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年1月21日
【発行日】2017年4月27日
(54)【発明の名称】非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有する複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/12 20060101AFI20170407BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170407BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20170407BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170407BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20170407BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20170407BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20170407BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20170407BHJP
【FI】
   A61K31/12
   A61P35/00
   A61P39/06
   A61P29/00
   A61P3/06
   A61P37/08
   A61P9/00
   A61K47/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2016-534477(P2016-534477)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年7月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-145545(P2014-145545)
(32)【優先日】2014年7月16日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】507186687
【氏名又は名称】株式会社セラバリューズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】今泉 厚
(72)【発明者】
【氏名】小澤 瞳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 壮
(72)【発明者】
【氏名】高橋 司
(72)【発明者】
【氏名】松井 崇人
(72)【発明者】
【氏名】牧野 悠治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千惠子
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB01
4C076CC04
4C076CC11
4C076CC21
4C076CC27
4C076EE32
4C076FF34
4C076GG09
4C206AA02
4C206AA10
4C206CB14
4C206KA01
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA11
4C206ZA36
4C206ZB11
4C206ZB13
4C206ZB26
4C206ZC33
(57)【要約】
クルクミン及び/又はその類縁体の含量が高く、かつ、簡便で安価に、経口摂取によりクルクミン及び/又はその類縁体の体内への吸収性を向上した非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有する複合体を高濃度で製造する方法の提供。
クルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとをpH12以上の水溶液に溶解させる工程と、該溶液のpHを7以下にする工程と、を有することを特徴とする、非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとをpH12以上の水溶液に溶解させる工程と、該溶液のpHを7以下にする工程と、を有することを特徴とする、非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体の製造方法。
【請求項2】
さらに、前記pH7以下とした溶液から水分を取り除く乾燥工程を有する、請求項1に記載の非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体の製造方法。
【請求項3】
前記類縁体が、ビスデメトキシクルクミン、デメトキシクルクミン及びテトラヒドロクルクミンからなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体の製造方法。
【請求項4】
前記クルクミン及び/又はその類縁体(A)と前記ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロース(B)との含有比率(A/B)が、0.1〜10である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥工程が、噴霧乾燥、減圧乾燥又は風乾である請求項1〜4のいずれか1項に記載の非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有する複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クルクミン及びその類縁体は、近年、腫瘍形成阻害作用、抗酸化作用、抗炎症作用、コレステロール低下作用、抗アレルギー作用、脳疾患予防作用、心疾患予防治療作用等の生理活性を有することが明らかとなり、食品(例えば、機能性食品など)、医薬品や化粧品等への利用が検討されている。しかし、クルクミン及びその類縁体は、経口摂取による体内への吸収性が著しく低いため、クルクミン及びその類縁体がもつ生理活性が経口摂取によって十分に得られないといった問題がある。
【0003】
そこで、クルクミン及びその類縁体の吸収性を改善する方法の一つとして、特許文献1には、クルクミノイドと、熱可塑性ポリマーと、ホスファチドを溶融加工することによってクルクミノイドを非晶質化させ、該クルクミノイド製剤を経口摂取することでクルクミノイドの体内への吸収性を向上させる方法が開示されている。
一方、クルクミンとポリサッカロイドとの複合体を製造する方法の一つとして、特許文献2には、クルクミンと水溶性で分枝鎖のある若しくは環状のポリサッカライド(変性した食用デンプン、ペクチン、植物ゴム、アルギン酸プロピレングリコール、シクロデキストリン、アミロペクチン由来のマルトデキストリン及びカルボキシメチルセルロース)とをpH約9以上の水溶液中で接触させ、pH約8以下になるように酸性化させるクルクミン複合体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2014−503470号公報
【特許文献2】特開平3−97761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の溶融加工は、加熱後溶融物をノズルを通して固体分散体を得る必要があり、特殊な技術や装置が必要であることや製造コストが高いことなどの問題がある。一方、特許文献2で得られたクルクミン複合体は、食品の着色剤として利用されるものであり、経口摂取によるクルクミン及び/又はその類縁体の体内への吸収性を向上させる目的で利用されるものではない。また、当該複合体が非晶質であることは示されていない。
【0006】
従って、本発明の課題は、クルクミン及び/又はその類縁体の含量が高く、かつ、簡便で安価に、経口摂取によりクルクミン及び/又はその類縁体の体内への吸収性を向上した非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有する複合体を高濃度で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、経口摂取による体内への吸収性を向上させるクルクミン及び/又はその類縁体について鋭意検討を重ねたところ、クルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの両者をpH12以上の水溶液に溶解させた後、該溶液のpHを7以下にすれば、経口摂取により体内への吸収性が顕著に改善された非晶質クルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔5〕を提供するものである。
【0009】
〔1〕クルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとをpH12以上の水溶液に溶解させる工程と、該溶液のpHを7以下にする工程と、を有することを特徴とする、非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体の製造方法。
〔2〕さらに、前記pH7以下とした溶液から水分を取り除く乾燥工程を有する、〔1〕に記載の非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体の製造方法。
〔3〕前記類縁体が、ビスデメトキシクルクミン、デメトキシクルクミン及びテトラヒドロクルクミンからなる群から選択された少なくとも1種である、〔1〕又は〔2〕に記載の非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体の製造方法。
〔4〕前記クルクミン及び/又はその類縁体(A)と前記ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロース(B)との含有比率(A/B)が、0.1〜10である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体の製造方法。
〔5〕前記乾燥工程が、噴霧乾燥、減圧乾燥又は風乾である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、クルクミン及び/又はその類縁体の含量が高く、かつ、非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体を特殊な技術や装置を必要とせず、簡便で安価に、高濃度で製造することができる。
また、本発明の製造方法によって調製した非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体は、該複合体を経口摂取することによって、体内へのクルクミン及び/又はその類縁体の吸収性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】クルクミンとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの複合体の粉末X線回折スペクトルを示す。
図2】クルクミンとヒドロキシプロピルセルロースとの複合体の粉末X線回折スペクトルを示す。
図3】クルクミンとメチルセルロースとの複合体の粉末X線回折スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の非晶質クルクミン及び/又はその類縁体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体の製造方法は、
(1)クルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとをpH12以上の水溶液に溶解させる工程と、
(2)該溶液のpHを7以下にする工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
クルクミンは、ウコン色素に含まれるクルクミノイドの主成分であり、下記構造式(1)で表される化合物である。
【0014】
【化1】
【0015】
本発明に用いられるクルクミンは、化学合成されたクルクミンを用いてもよいし、ウコン色素として流通しているものを用いてもよい。ウコン色素としては、ショウガ科ウコン属植物(例えば、Curcuma longa LINNE)の根茎の乾燥物を粉末にしたウコン末、該ウコン末を適当な溶媒(例えば、エタノール、油脂、プロピレングリコール、ヘキサン、アセトンなど)を用いて抽出して得られる粗製クルクミン或いはオレオレジン(ターメリックオレオレジン)、および精製したクルクミンを挙げることができる。
なお、クルクミンには、互変異性体であるケト型及びエノール型のいずれも含まれる。
【0016】
クルクミン類縁体としては、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、テトラヒドロクルクミン、ジヒドロキシテトラヒドロクルクミン等が挙げられる。なお、ウコン色素には、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン及びテトラヒドロクルクミンが含まれている。
【0017】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、セルロースのヒドロキシ基の一部がメトキシ基及びヒドロキシプロピルオキシ基に置換した水溶性セルロース誘導体である。メトキシ基及びヒドロキシプロピルオキシ基の置換度は種々のものが知られており、食品として使用可能なものがいずれも使用できる。ヒドロキシプロピルセルロースは、セルロースのヒドロキシ基の一部がヒドロキシプロピルオキシ基に置換した水溶性セルロース誘導体である。ヒドロキシプロピルオキシ基の置換度は種々のものが知られており、食品として使用可能なものがいずれも使用できる。
【0018】
クルクミン及び/又はその類縁体(A)とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロース(B)との使用質量比率(A/B)は、優れた経口吸収性を有する複合体を得る点から、0.02〜10が好ましく、0.03〜10がより好ましく、0.05〜10がさらに好ましく、0.1〜10がさらに好ましい。また、得られる複合体中の含有質量比率(A/B)は、使用質量比率(A/B)と同一である。
【0019】
pH12以上の水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水溶液が挙げられる。このうち、水酸化ナトリウム水溶液が特に好ましい。また、pHは12以上であればよいが、pH12〜15が好ましく、pH12〜14がさらに好ましい。
【0020】
pH12以上の水溶液へのクルクミン及び/又はその類縁体の添加量は、飽和濃度になる量が好ましく、0.1g/100mL以上が好ましく、0.1〜10g/100mLがより好ましい。
【0021】
本発明方法の工程(1)においては、クルクミン及び/又はその類縁体(A)と(B)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとをpH12以上の水溶液に溶解させればよく、例えば、水に(A)と(B)を添加後にpHを12以上に調整してもよく、pH12以上の水溶液に(A)と(B)とを添加して溶解させてもよく、(B)の水溶液をpH12以上に調整後(A)を添加してもよく、(A)の水分散液をpH12以上に調整後(B)を添加してもよい。
【0022】
次に、前記溶液のpHを7以下に調整する。pHを7以下にするには、例えば塩酸、硫酸、硝酸、有機酸等の酸を添加するのが好ましい。好ましいpHは、3〜7であり、5〜7がより好ましい。pH12以上とするアルカリとして水酸化ナトリウムを使用し、pH7以下とする酸として塩酸を使用した場合、副生する塩が塩化ナトリウムなので、得られる複合体の安全性が高い。
【0023】
pHを7以下にすることにより、非晶質クルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体が生成し、析出する。
【0024】
次に、pH7以下とした溶液から水分を取り除く乾燥工程を行えば、非晶質クルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体を含有するクルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体が採取できる。
【0025】
乾燥工程としては、蒸発乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、温風乾燥、冷風乾燥、風乾等が挙げられるが、減圧乾燥、噴霧乾燥及び風乾が好ましい。
【0026】
本発明方法により得られる複合体は、クルクミン及び/又はその類縁体が非晶質の形態であり、クルクミン及び/又はその類縁体の経口吸収性が良好であり、その経口吸収性は、クルクミン及び/又はその類縁体とヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースとの混合物の経口吸収性に比べて顕著に優れている。従って、当該複合体を含有する経口摂取用組成物は、クルクミン及び/又はその類縁体の生理活性を経口投与で発揮させるための医薬品、化粧品、栄養補助食品、機能性食品、特定保健用食品として有用である。
【実施例】
【0027】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0028】
1.参考例1(高pH水溶液におけるクルクミンの溶解性)
pHを11、12、13又は14に調整した水酸化ナトリウム水溶液100mLに、三栄源エフ・エフ・アイ社から供与されたクルクミン含有量が91.2%(w/w)のウコン抽出物粉末を徐々に添加し、該ウコン抽出物粉末が溶けきれなくなる時点での該水溶液中のクルクミン濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて調べた。なお、この時のHPLC分析条件は、試料量が10μL、カラムがAtlantis T3(2.1×150mm,3μm,Waters社製)、カラム温度が40℃、流速が0.2mL/min、移動相がA:0.1%ギ酸水溶液、B:0.1%ギ酸/アセトニトリルとし、A:B=40:60の溶液を用いて溶出を行った。
その結果、各水溶液中のクルクミン濃度は、pH11の水溶液に溶解させた場合では0.0055g/100mL、pH12の場合では0.111g/100mL、pH13の場合では1.42g/100mL、pH14の場合では13.6g/100mLであった。このことから、pH値が12以上の水溶液を用いることによって多量のクルクミンを水溶液中に溶解させることができることが分かった。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例1〜7(非晶質クルクミン含有複合体の調製)
(1)調製方法A−1(スプレードライ(SD)による乾燥)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC:メトローズSE−06、信越化学工業社製)又はヒドロキシプロピルセルロース(HPC:SSL、日本曹達社製)2.0〜8.0gを純水200〜800mLに溶解させた後、10mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて該水溶液のpHを13に調整した。この水溶液に、三栄源エフ・エフ・アイ社から供与されたクルクミン含有量が91.2又は89.5%(w/w)のウコン抽出物粉末2.0〜8.8gを添加し、よく撹拌することで溶解させた後、10mol/L塩酸水溶液を用いて該水溶液のpHを7又は6に調整することで非晶質クルクミンを含むクルクミンとヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体を調製した。
次いで、該水溶液をスプレードライヤADL311S(ヤマト科学株式会社製)を用いて、inlet temperature 160℃、outlet temperature 75℃、spray pressure 0.12MPa、feed rate 6〜7mL/minの条件で噴霧乾燥することで粉末の非晶質クルクミンを含むクルクミンとヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースとの複合体(実施例1〜4)を調製した。
【0031】
(2)調製方法A−2
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC:メトローズSE−06、信越化学工業社製)6又は12gを純水150又は167mLに溶解させてHPMC溶液を調製した。一方、三栄源エフ・エフ・アイ社から供与されたクルクミン含有量が79.5%(w/w)のウコン抽出物粉末7.55又は5.03gをpH14に調整した水酸化ナトリウム水溶液50又は33mLに溶解させてクルクミン溶液を調製した。その後、上記HPMC溶液とクルクミン溶液とを混合し、該混合溶液のpHを10mol/L塩酸水溶液を用いて6に調整することで非晶質クルクミンを含むクルクミンとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの複合体を調製した。
また、ここにデキストリン15又は18gを添加して十分撹拌することで該デキストリンを溶解させた後、該水溶液を上記と同様に噴霧乾燥することで粉末の非晶質クルクミンを含むクルクミンとヒドロキシプロピルメチルセルロースの複合体(実施例5〜6)を調製した。
【0032】
(3)調製方法B(風乾による乾燥)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC:メトローズSE−06、信越化学工業社製)2.0gを純水200mLに溶解させた後、10mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて該水溶液のpHを13に調整した。この水溶液に、三栄源エフ・エフ・アイ社から供与されたクルクミン含有量が91.2%(w/w)のウコン抽出物粉末2.2gを添加し、よく撹拌することで溶解させた後、10mol/L塩酸水溶液を用いて該水溶液のpHを6に調整することで非晶質クルクミンを含むクルクミンとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの複合体を調製した。
次いで、該水溶液を遠心分離(2,000×g、10min)することで該水溶液中の固形分を回収し、これをトレーにのせて暗室内で約3日間、室温で保持することで乾燥させ、該乾燥物を回収した。また、該乾燥物を乳鉢に入れて乳棒で適宜粉砕することで粉末の非晶質クルクミンを含むクルクミンとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの複合体を調製した(実施例7)。
なお、水溶性セルロース誘導体であるヒドロキシプロピルメチルセルロースの代わりにメチルセルロースを用いて複合体を調製した場合を比較例1とした。
【0033】
【表2】
【0034】
試験例1(複合体中のクルクミン結晶の測定)
調製した各種複合体中のクルクミンの結晶性を粉体X線回折装置(RINT−UltimaIII、Rigaku社製)を用いて調べた。なお、対照として、クルクミン原末、クルクミン原末とヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースとを重量比で1:1又は1:3となるように混合して調製した物理混合品A(Curcumin:HPMC=1:1)、B(Curcumin:HPMC=1:3)及びC(Curcumin:HPC=1:1)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)粉末、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)粉末、メチルセルロース(MC)粉末並び塩化ナトリウム(NaCl)を用いた。
【0035】
結果を図1〜3に示す。図1〜2に示したように、本発明方法により得られる複合体中のクルクミンは非晶質になっていることがわかる。また、図3で示したように、水溶性セルロース誘導体としてメチルセルロースを用いた場合(比較例1)では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた場合(実施例7)と比べて、クルクミンの結晶を示す数多くのピークが認められた(比較例1の丸枠内)。この結果から、水溶性セルロース誘導体としてヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースを用いることがクルクミンの非晶質化に有効であることが分かった。
【0036】
試験例2(各種非晶質クルクミン含有複合体の吸収性)
(1)供試動物
供試動物は、6週齢のSDラット(雄性、体重約200g、日本チャールス・リバー社)を用いた。
(2)投与方法
投与方法は、投与前12時間以上絶食させた供試動物(n=3又は5)に、上記2.で調製した非晶質クルクミンを含むクルクミン−ヒドロキシプロピルメチルセルロース複合体又はクルクミン−ヒドロキシプロピルセルロース複合体をそれぞれクルクミン濃度3.3mg/mLとなるように所定量を注射用水に添加して6mLにメスアップし、超音波発生装置を用いて混合した後、クルクミン投与用量が10mg/kgとなるように経口ゾンデを用いて強制的に経口投与した(試験例1〜6)。なお、クルクミン原末を投与した場合(比較試験例1)及びクルクミン原末とヒドロキシプロピルメチルセルロース粉末とを単に物理的に混合(クルクミン:ヒドロキシプロピルメチルセルロース=1:3)した物理混合物(比較試験例2)を対照とした。
【0037】
(3)血漿中クルクミン濃度の測定
血漿中クルクミン及び/又はその類縁体濃度の測定は、投与開始0.5時間、1時間及び/又は2時間後に供試動物の頸静脈から無麻酔下で約0.5mL採血を行うことで得たヘパリン血漿を用いて、以下の方法によって測定した。
a.前処理
採血した血漿20μLに0.1M酢酸緩衝液(pH5.0)100μLとβ−グルクロニダーゼ溶液(約68,000units/mL)10μLを加え、37℃で1時間保持した。その後、内部標準液であるメプロニル20ng/mLが含まれる50%(v/v)メタノール10μLとクロロホルム0.5mLとを添加し、ボルテックスミキサーを用いて1分間撹拌後、超音波発生装置を用いて15分間混合することで抽出処理した抽出処理液を遠心分離(13,000×g、5分間、室温)によってクロロホルム層と水層とに分離した。さらに、この分離した水層について、上記同様にクロロホルムを添加することによって抽出する抽出処理を行った。次いで、該クロロホルム層を採取し、これを減圧遠心濃縮機を用いて溶媒を留去することで乾固させ、ここに50%(v/v)メタノール100μLを添加した後、遠心分離(13,000×g、5分間、室温)して上清液を回収した。
b.測定方法
上記4.(3)a.で調製した上清液2μLをLC−MS/MS(島津社製)を用いて分析を行うことで血漿中クルクミン濃度を測定した。なお、LC−MS/MS分析条件は、LCカラムがAtlantis T3(2.1×150mm,3μm,Waters社製)、カラム温度が40℃、流速が0.2mL/min、移動相がA:0.1%ギ酸水溶液、B:0.1%ギ酸/アセトニトリルとし、表3の条件でグラジェント溶出を行った。また、MS分析条件は、イオン化モードがElectron Spray thermo ionization(ESI)、Positive、測定モードがMultiple Reaction Monitoring(MRM)とし、クルクミン369.1→177.2(m/z)、メプロニル270→119(m/z)で評価した。
一方、試料中に含まれるクルクミン量を定量するために使用する検量線の作成は、クルクミンが1.0、2.0、3.9、7.8、15.6、31.3、62.5、125又は250ng/mLを含む50%(v/v)メタノール溶液(クルクミン標準液)90μLにメプロニル20ng/mLを含む50%エタノール溶液10μLを添加することで調製した各種標準溶液(クルクミン濃度0.9〜225ng/mL)を用いて上記同様の条件で測定することで行った。
【0038】
【表3】
【0039】
表4に、血漿中のクルクミン濃度(ng/mL)、最高血中濃度(Cmax(ng/mL))及び血中濃度−時間曲線下面積(AUC(ng/mL・0−2hr))を示す。本発明により得られる複合体の経口吸収性は、クルクミン原末及び物理混合物に比べて顕著に向上していることがわかる。
【0040】
【表4】
図1
図2
図3
【国際調査報告】