(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年6月30日
【発行日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】エンジンの排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20170908BHJP
【FI】
F01N3/08 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
【出願番号】特願2016-565772(P2016-565772)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2014年12月25日
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】冨田 恭功
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA02
3G091AA10
3G091AA18
3G091AB02
3G091AB05
3G091AB13
3G091AB15
3G091BA07
3G091BA14
3G091CA05
3G091CA17
3G091EA01
3G091EA03
3G091EA14
3G091EA17
3G091FA02
3G091HA09
3G091HA10
3G091HA12
3G091HA15
3G091HA16
3G091HA36
3G091HA42
(57)【要約】
排気浄化装置の還元剤タンク230において凍結した尿素水溶液をより早く解凍できるようにする。
エンジン始動時に還元剤タンク230の尿素水溶液が凍結している場合には、噴射ノズル200へ供給する尿素水溶液の少なくとも一部を、一部が熱源に隣接する還元剤循環流路256に流入させ、加熱された尿素水溶液を還元剤タンク230に戻す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に設けられ、還元剤を使用して排気中の窒素酸化物を選択還元浄化する選択還元触媒コンバータと、
前記選択還元触媒コンバータの排気上流に液体還元剤又はその前駆体を噴射供給する噴射装置と、
前記噴射装置から噴射供給する液体還元剤又はその前駆体を貯蔵するタンクと、
前記タンクから前記噴射ノズルへ液体還元剤又はその前駆体を供給する還元剤供給流路と、
前記還元剤供給流路の途中から分岐して、液体還元剤又はその前駆体の一部を前記タンクへ戻すことができ、かつ、その一部が熱源と熱交換可能に配置される還元剤循環流路と、
前記還元剤循環流路への液体還元剤又はその前駆体の流れを制御する還元剤循環弁と、
前記タンク又は前記還元剤供給流路における液体還元剤又はその前駆体の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出される液体還元剤又はその前駆体の温度が所定温度以下の場合に、前記還元剤循環流路に液体還元剤又はその前駆体が流入するように前記還元剤循環弁を制御する還元剤循環制御部と、を含んで構成されるエンジン排気浄化装置。
【請求項2】
前記還元剤循環流路は、前記タンク内において、前記還元剤供給流路に接続され、この接続部に前記タンク内との連通部を設けたことを特徴とする、請求項1に記載のエンジン排気浄化装置。
【請求項3】
エンジンから排出される排気を前記熱源として用いることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエンジン排気浄化装置。
【請求項4】
前記還元剤循環流路に流路内の液体還元剤又はその前駆体を前記タンクにパージするように外気を導入する外気導入流路と、
外気の導入を制御する外気導入弁と、
前記還元剤循環流路への液体還元剤又はその前駆体の流入の停止後に、前記還元剤循環流路に外気を導入するように前記外気導入弁を制御する外気導入制御部と、
を更に含んで構成される、請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジン排気浄化装置。
【請求項5】
前記外気導入流路は、前記還元剤供給流路からの前記還元剤循環流路の分岐部に接続され、前記外気導入弁と前記還元剤循環弁とが前記分岐部にて一体化されて設けられることを特徴とする、請求項4に記載のエンジン排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気中の窒素酸化物(NOx)を還元剤により選択還元浄化するエンジンの排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気系において、還元剤としてアンモニアを使用してNOxを選択還元浄化する選択還元触媒コンバータと、その排気上流に尿素水溶液(還元剤の前駆体)を噴射する噴射ノズルとを備える排気浄化装置が知られている。
尿素水溶液は約−11℃で凍結するため、特許文献1に記載されるように、エンジン停止後において、噴射ノズルや還元剤供給流路の残留尿素水溶液の凍結変化を監視するとともに、その凍結変化に伴い噴射ノズルを一時的に開くことで、残留尿素水溶液を排気管内に放出する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国公開特許公報:特開2008−138583号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特に極寒冷地域においては、還元剤供給流路内の尿素水溶液だけでなく、還元剤タンク内の尿素水溶液が完全に凍結することがある。その対策として、不凍液の一種であるエンジン冷却水を流すためのエンジン冷却水管路を還元剤タンクに這わせ、エンジン始動後に暖められたエンジン冷却水によって還元剤タンクを暖めて、還元剤タンクの尿素水溶液を解凍することが行われている。しかしながら、それだけでは解凍に時間がかかり、さらなる改善の必要性があった。
【0005】
そこで、本発明は、噴射ノズルへ供給する還元剤又はその前駆体の少なくとも一部を加熱して、還元剤タンクへ戻す構成を備えるようにして、解凍時間をより短縮化できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のエンジン排気浄化装置は、エンジンの排気通路に設けられ、還元剤を使用して排気中の窒素酸化物を選択還元浄化する選択還元触媒コンバータと、前記選択還元触媒コンバータの排気上流に液体還元剤又はその前駆体を噴射供給する噴射装置と、前記噴射装置から噴射供給する液体還元剤又はその前駆体を貯蔵するタンクと、前記タンクから前記噴射ノズルへ液体還元剤又はその前駆体を供給する還元剤供給流路と、前記還元剤供給流路の途中から分岐して、液体還元剤又はその前駆体の一部を前記タンクへ戻すことができ、かつ、その一部が熱源と熱交換可能に配置される還元剤循環流路と、前記還元剤循環流路への液体還元剤又はその前駆体の流れを制御する還元剤循環弁と、前記タンク又は前記還元剤供給流路における液体還元剤又はその前駆体の温度を検出する温度検出部と、前記温度検出部により検出される液体還元剤又はその前駆体の温度が所定温度以下の場合に、前記還元剤循環流路に液体還元剤又はその前駆体が流入するように前記還元剤循環弁を制御する還元剤循環制御部と、を含んで構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、噴射ノズルへ供給する還元剤又はその前駆体の少なくとも一部を加熱して、還元剤タンクへ戻す構成を備えるため、解凍時間をより短縮化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】還元剤循環流路のレイアウトの第1実施例を示す斜視図
【
図3】還元剤循環流路のレイアウトの第2実施例を示す上面図
【
図4】還元剤循環流路のレイアウトの第3実施例を示す側面図
【
図5】還元剤添加モードにおける流路切換弁の一例を示す図
【
図6】還元剤循環モードにおける流路切換弁の一例を示す図
【
図7】パージモードにおける流路切換弁の一例を示す図
【
図8】尿素水溶液の解凍処理の制御プログラムの一例を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、排気中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)及びNOxを浄化する排気浄化装置の一例を示す。
【0010】
ディーゼルエンジン100の吸気マニフォールド110に接続された吸気管120には、吸気流通方向に沿って、吸気中の埃などを濾過するエアクリーナ130、吸気を過給するターボチャージャ140のコンプレッサ142、コンプレッサ142を通過した吸気を冷却するインタークーラ150、吸気脈動を平滑化する吸気コレクタ160がこの順番で配設される。
【0011】
一方、ディーゼルエンジン100の排気マニフォールド170に接続された排気管180には、排気流通方向に沿って、ターボチャージャ140のタービン144、連続再生式ディーゼルパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下「DPF」という)装置190、還元剤前駆体としての尿素水溶液を噴射供給する噴射ノズル200、尿素選択還元触媒コンバータシステム225がこの順番で配設される。
【0012】
連続再生式DPF装置190は、少なくともNO(一酸化窒素)をNO
2(二酸化窒素)へと酸化させるDOC(Diesel Oxidation Catalyst)コンバータ192と、PMを捕集・除去するDPF194と、を有する。なお、DPF194としては一般的なDPFの代わりに、その表面に触媒(活性成分及び添加成分)を担持させたCSF(Catalyzed Soot Filter)を使用することもできる。
尿素選択還元触媒コンバータシステム225は、尿素水溶液から生成されるアンモニアを還元剤として使用してNOxを選択還元浄化する選択還元触媒コンバータ210、選択還元触媒コンバータ210を通過したアンモニアを酸化させる酸化触媒コンバータ220と、を有する。
【0013】
還元剤タンク230に貯蔵された尿素水溶液は、還元剤供給流路250、251の途中に設置される還元剤添加ユニット240によって吸引され、還元剤供給流路250、251を通って噴射ノズル200に供給される。還元剤供給流路250、251は、その途中の還元剤添加ユニット240において、尿素水溶液を還元剤タンク230に戻すための還元剤循環流路256と、還元剤循環流路256に外気(空気)を導入するための外気導入流路254と、に分岐する。還元剤循環流路256の終端は、還元剤タンク230内において還元剤供給流路250の吸入端とループ状に接続される。還元剤循環流路256は、詳細は後述するが、その一部が熱源近くに配設される。
【0014】
また、還元剤タンク230内の、還元剤供給流路250と還元剤循環流路256との接続箇所には、還元剤タンク230と流路との間で尿素水溶液が行き来できる(還元剤タンク230から還元剤供給流路250へ尿素水溶液を吸入する、又は、還元剤循環流路256から還元剤タンク230へ尿素水溶液を戻す)、1又は複数の連通孔235が設けられる。従って、尿素水溶液は、流路に設けられた連通孔235を通って還元剤供給流路250に吸い上げられ、噴射ノズル200に供給される。
【0015】
また、還元剤供給流路250、251の周りには、電熱ヒータが配置される(図示せず)。これにより、エンジン停止後に還元剤供給流路250、251に残留する尿素水溶液が凍結しても、エンジン始動時には、凍結した尿素水溶液は、還元剤供給流路250、251周りの電熱ヒータにより加熱され、解凍される。
【0016】
還元剤添加ユニット240は、その内部構成は後述するが、還元剤タンク230から噴射ノズル200へ尿素水溶液を供給するだけでなく、尿素水溶液の流れ(流量、経路)や、還元剤循環流路256への外気の導入を制御する。
【0017】
連続再生式DPF装置190と噴射ノズル200との間に位置する排気管180には、選択還元触媒コンバータ210の活性状態を把握するため、排気の温度(排気温度)を測定する排気温度センサ260が取り付けられる。また、還元剤タンク230には、尿素水溶液の温度(尿素水溶液温度)を測定する尿素水溶液温度センサ265が取り付けられる。排気温度センサ260及び尿素水溶液温度センサ265と、外気温度センサ290の各出力信号は、コンピュータを内蔵した還元剤添加コントロールユニット(DCU:Dosing Control Unit)270に入力される。また、DCU270は、エンジン運転状態の一例としての回転速度及び負荷を任意の時点で読み込み可能とすべく、CAN(Controller Area Network)などの車載ネットワークを介して、ディーゼルエンジン100を電子制御するエンジンコントロールユニット(ECU:Engine Control Unit)280と通信可能に接続される。
【0018】
そして、DCU270は、フラッシュROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリに格納された制御プログラムを実行することで、排気温度、回転速度及び負荷に基づいて、還元剤添加ユニット240を電子制御する。また、DCU270は、外気温度及び尿素水溶液温度に基づいて、後述する尿素水溶液の解凍処理を実行する。
【0019】
ここで、ディーゼルエンジン100の負荷としては、例えば、燃料噴射量、吸気流量、吸気圧力、過給圧力、アクセル開度など、エンジントルクと密接に関連する状態量を使用することができる。また、ディーゼルエンジン100の回転速度及び負荷は、ECU280から読み込む代わりに、公知のセンサを使用して直接検出するようにしてもよい。
【0020】
かかる排気浄化装置において、ディーゼルエンジン100の排気は、排気マニフォールド170、ターボチャージャ140のタービン144を経て、連続再生式DPF装置190のDOCコンバータ192へと導入される。DOCコンバータ192へと導入された排気は、NOがNO
2へと酸化されつつDPF194へと流れる。DPF194では、排気中のPMが捕集されると共に、DOCコンバータ192により生成されたNO
2を使用してPMが連続的に酸化(焼却)される。
【0021】
また、エンジン運転状態に応じて噴射ノズル200から噴射供給(添加)された尿素水溶液は、排気熱及び排気中の水蒸気を使用して加水分解され、還元剤として機能するアンモニアへと転化される。このアンモニアは、選択還元触媒コンバータ210において排気中のNOxと選択還元反応し、無害なH
2O(水)及びN
2(窒素)へと浄化される。このとき、DOCコンバータ192によりNOがNO
2へと酸化され、排気中のNOとNO
2との比率が選択還元反応に適したものに改善されるため、選択還元触媒コンバータ210におけるNOx浄化率を向上させることができる。一方、選択還元触媒コンバータ210を通過したアンモニアは、その排気下流に配設された酸化触媒コンバータ220により酸化されるので、アンモニアがそのまま大気中に放出されることを抑制できる。
【0022】
図2、
図3及び
図4は、還元剤循環流路256のレイアウトの実施例を示す。還元剤循環流路256は、流路を流れる尿素水溶液が加熱されるように、流路の一部が熱源近くに配置される。
【0023】
図2の還元剤循環流路256は、その一部が、連続再生式DPF装置190、尿素選択還元触媒コンバータシステム225及びこれらを接続する排気管180を収容する筐体300の上面及び側面を構成する熱交換板を這うように配置されている。これにより、還元剤循環流路256を流れる尿素水溶液は、排気管180の排熱によって加熱された熱交換板と熱交換が行われ、加熱されて還元剤タンク230に戻される。なお、還元剤循環流路256は、熱源と熱交換可能となるように配置されればよく、例えば、この筐体300の下面、側面を構成する熱交換板を這うように配置されてもよい。
図3は、
図2の筐体300の上方からみた、別の還元剤循環流路256のレイアウトを示す。
図3の還元剤循環流路256も、筐体300の下面、側面を構成する熱交換板を這うように配置されてもよい。
また、
図4に示すように、還元剤循環流路256は、排気管180周りにらせん状に配置されてもよい。
【0024】
還元剤添加ユニット240は、尿素水溶液を還元剤供給流路250に吸引するポンプ242と、尿素水溶液の流量を制御するための流量制御弁244と、尿素水溶液の経路を切り替えるための流路切換弁246と、を備える。
【0025】
流量制御弁244としては、バタフライ弁、グローブ弁など、既存のものを使用することができ、アクチュエータなどの既存の方法によりDCU270によって制御される。
流路切換弁246については、
図5(及び
図6、
図7)により説明する。流路切換弁246は、第1のロータリーバルブ247と、第1のロータリーバルブ247の内側に配置される第2のロータリーバルブ248と、で構成される。第1のロータリーバルブ247及び第2のロータリーバルブ248は、アクチュエータなどの既存の方法により、DCU270により回動制御される。
【0026】
第1のロータリーバルブ247は、ロータに「T」字状の流路が形成されていて、時計回りに0°又は90°の2つの回動位置(第1及び第2の回動位置)を有する。
第1の回動位置(
図5及び
図6)では、外気導入流路254を閉止し、上流側還元剤供給流路250と下流側還元剤供給流路251と還元剤循環流路256との3者を連通可能とする。
また、第2の回動位置(
図7)では、下流側還元剤供給流路251を閉止し、外気導入流路254と還元剤循環流路256と上流側還元剤供給通路256との3者を連通可能とする。
【0027】
第2のロータリーバルブ248は、第1のロータリーバルブ247のロータの中心に配置されるロータの偏心位置に直線状の流路が形成されていて、時計回りに0°、45°、90°の3つの回動位置(A、B、Cの回動位置)を有する。
【0028】
第2のロータリーバルブ248の回動位置A(
図5)は、第1のロータリーバルブ247の第1の回動位置と組み合わせて用いられ、還元剤循環流路256を閉止し、上流側還元剤供給通路250と下流側還元剤供給通路251のみを連通させる(還元剤添加モード)。
第2のロータリーバルブ248の回動位置B(
図6)は、第1のロータリーバルブ247の第1の回動位置と組み合わせて用いられ、下流側還元剤供給通路251を閉止し、上流側還元剤供給通路250と還元剤循環通路256のみを連通させる(還元剤循環モード)。
第2のロータリーバルブ248の回動位置C(
図7)は、第1のロータリーバルブ247の第2の回動位置と組み合わせて用いられ、上流側還元剤供給通路250を閉止し、外気導入通路254と還元剤循環流路256のみを連通させる(パージモード)。
【0029】
上記のように、流路切換弁246は、第1のロータリーバルブ247、及び、第2のロータリーバルブ248のそれぞれの回動位置によって流路を切り替えることができ、還元剤添加モード、還元剤循環モード、パージモードの、3つのモードを有する。
【0030】
図8は、エンジンが起動したことを契機として、ECU280が所定時間ごとに繰り返し実行する制御プログラムの一例を示す。本制御プラグラムにより、還元剤循環制御部、外気導入制御部の機能が実現される。
【0031】
ステップ1(
図8では「S1」と略記する。以下同様。)では、ECU280は、還元剤タンク230に貯蔵されている尿素水溶液が凍結しているか否かを判定する。具体的には、ECU280は、尿素水溶液温度センサ265から尿素水溶液温度を読み込み、尿素水溶液温度が尿素水溶液の凍結温度以下か否か(尿素水溶液が凍結しているか否か)を判定する。この凍結温度として、一例では、尿素水溶液が凍結する約−11℃に設定する。
【0032】
なお、還元剤供給流路250、251に、尿素水溶液の温度を測定するための温度センサを設け、この温度センサから尿素水溶液温度を読み込み、尿素水溶液が凍結しているか否かを判定してもよい。
【0033】
そして、ECU280は、尿素水溶液が凍結している(Yes)と判定すれば、処理をステップ2へと進める一方、尿素水溶液が凍結していない(No)と判定すれば処理をステップ10へと進める。
【0034】
ステップ2では、ECU280は、流路切換弁246を所定時間、尿素水循環モード(
図6参照)に設定する。具体的には、DCU270が、流路切換弁246を制御するアクチュエータに対して制御信号を出力することで、流路切換弁246を還元剤循環モードに設定し、還元剤供給流路250と尿素水循環流路256とを連通させる。これにより、還元剤タンク230から還元剤供給流路250に吸引された尿素水溶液は、尿素水循環流路256へと導かれる。そして、尿素水循環流路256へ導かれた尿素水は、尿素水循環流路256に隣接する熱交換板などの熱源と熱交換し、加熱される。この加熱された尿素水溶液が還元剤タンク230に戻され、還元剤タンク230の尿素水溶液と熱交換することで、還元剤タンク230の尿素水溶液を解凍する。ステップ2で尿素水循環モードを所定時間実行した後は、ステップ3へ進む。
【0035】
ステップ3では、ECU280は、流路切換弁246を所定時間、尿素水添加モードに設定する。具体的には、DCU270が、流路切換弁246を制御するアクチュエータに対して制御信号を出力することで、流路切換弁246を還元剤添加モードに設定する。これにより、還元剤タンク230から還元剤供給流路250に吸引された尿素水溶液は、噴射ノズル200に供給される。ステップ3で還元剤添加モードを所定時間実行した後は、ステップ4へ進む。
【0036】
ステップ4では、ECU280は、還元剤タンク230に貯蔵されている尿素水溶液が解凍したか否かを判定する。具体的には、ECU280は、尿素水溶液温度センサ265から尿素水溶液温度を読み込み、尿素水溶液温度が尿素水溶液の凍結温度を超えたか否か(尿素水溶液が解凍したか否か)を判定する。
【0037】
そして、ECU280は、尿素水溶液が解凍されている(Yes)と判定すれば、処理をステップ5へと進める一方、尿素水溶液が凍結していない(No)と判定すれば処理をステップ2に戻す。
【0038】
本実施形態における尿素水溶液解凍方法は、尿素水循環モードと、尿素水添加モードとを切り替えながら、尿素水溶液を解凍するものである。従って、エンジン始動時に尿素水溶液が凍結している場合には、尿素水溶液を解凍することと並行して、排気中のNOxを浄化する。
ここで、ステップ2の尿素水循環モードと、ステップ3の尿素水添加モードを実行する所定時間について説明すると、本実施形態においては、尿素水溶液が完全に凍結しているときには、長時間尿素水循環モードを持続させることで、尿素水溶液の解凍を行い、尿素水溶液が解凍されるに従い、尿素水循環モードの時間を減少させ、一方、尿素水添加モードの時間を増加させる。尿素水溶液の解凍状況は、尿素水溶液温度センサ265から判定してもよいし、又は、尿素水循環モードの適用時間から推定して判定してもよい。
【0039】
ステップ5では、ECU280は、流路切換弁246をパージモード(
図7参照)に設定する。具体的には、DCU270が、流路切換弁246を制御するアクチュエータに対して制御信号を出力することで、流路切換弁246をパージモードに設定し、外気供給流路254と尿素水循環流路256とを連通させる。このようにすれば、外気供給流路254から供給される外気が、尿素水循環流路256へと導かれ、尿素水循環流路256に残留する尿素水溶液が還元剤タンク230へと押し出される。所定時間、外気を尿素水循環流路256に導入することで、尿素水循環流路256は空となる。以後、流路切換弁246を尿素水添加モードに戻しても、尿素水循環流路256は空の状態が維持される。ステップ5でパージモードを所定時間実行した後は、ステップ10へ進む。
【0040】
ステップ10では、ECU280は、流路切換弁246を尿素水添加モード(
図5参照)に設定する。これ以後は、ECU280は、エンジン運転状態に応じて噴射ノズル200から尿素水溶液を噴射供給(添加)し、排気中のNOxを浄化させる。
【0041】
本実施形態によれば、エンジン始動時に還元剤タンク230の尿素水溶液が凍結している場合には、尿素水溶液を、一部が熱源に隣接する還元剤循環流路256に流入させ、加熱された尿素水溶液を還元剤タンク230に戻す。これにより、還元剤タンク230の尿素水溶液をより早く解凍することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、還元剤供給流路250は、還元剤タンク230において、還元剤循環流路256と接続され、この接続部に前記タンク内との連通孔235が設けられる。この連通孔235により、還元剤循環流路256で加熱された尿素水溶液と、還元剤タンク230の尿素水溶液とが、還元剤タンク230において混ざり合い、還元剤タンク230の広い範囲において、効率的に熱交換をすることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、還元剤供給流路250と還元剤循環流路256とをループ状に接続される。これにより、小容量の実質的閉回路が形成され、これが加熱されるため、解凍時間を大幅に短縮することが出来る。
【0044】
また、本実施形態によれば、還元剤供給流路250、251に電熱ヒータを設けている。これにより、還元剤供給流路250、251で尿素水溶液が凍結した場合においても、電熱ヒータにより還元剤供給流路250、251の尿素水溶液が解凍され、この解凍した尿素水溶液を循環させることで、還元剤タンク230の尿素水溶液を解凍することができる。従って、凍結した尿素水溶液を解凍するために、還元剤タンク230、循環流路250、251の周りに、不凍液の一種であるエンジンの冷却水を流すためのエンジン冷却水配管を配置する必要がなくなり、エンジン冷却水の配管構造を簡素化できる。
【0045】
また、本実施形態によれば、還元剤循環流路256への尿素水溶液の導入停止後に、還元剤循環流路256に外気を導入し、還元剤循環流路256を空の状態とする。これにより、還元剤循環流路256内で尿素水溶液が凍結することを抑止できる。
【0046】
なお、本実施形態における流路切換弁246は、還元剤循環流路256への尿素水溶液の導入の機能と、還元剤循環流路256への外気の導入の機能と、が一体化されているが、これらの機能を、複数の弁、例えば、還元剤循環流路への尿素水溶液を制御するための還元剤循環弁及び還元剤循環流路への外気の流入を制御する外気導入弁、を用いて実現することもできる。
【0047】
また、液体還元剤又はその前駆体としては、尿素水溶液に限らず、排気の有害物質を浄化する排気浄化エレメントの機能などに応じて、アンモニア水溶液、炭化水素を主成分とする軽油などを使用することもできる。この場合には、液体還元剤又はその前駆体が凍結しているか否かを判定するための凍結温度は、その特性に応じて適宜選定すればよい。
【符号の説明】
【0048】
100 ディーゼルエンジン
110 吸気マニフォールド
120 吸気管
130 エアクリーナ
140 ターボチャージャ
142 コンプレッサ
144 タービン
150 インタークーラ
160 吸気コレクタ
170 排気マニフォールド
180 排気管
190 連続再生式DPF装置
192 DOCコンバータ
194 DPF
200 噴射ノズル
210 選択還元触媒コンバータ
220 酸化触媒コンバータ
225 尿素選択還元触媒コンバータシステム
230 還元剤タンク
235 連通孔
240 還元剤添加ユニット
242 ポンプ
244 流量制御弁
246 流路切換弁
247 第1のロータリーバルブ
248 第2のロータリーバルブ
250、251 還元剤供給流路
254 外気導入流路
256 還元剤循環流路
260 排気温度センサ
265 尿素水溶液温度センサ
270 DCU
280 ECU
290 外気温度センサ
300 筐体
【国際調査報告】