特表-16104336IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年6月30日
【発行日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】電動スクロール圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20170908BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   F04C18/02 311Z
   F04C18/02 311B
   F04C18/02 311E
   F04C29/00 B
   F04C29/00 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】特願2016-566179(P2016-566179)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年12月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-260226(P2014-260226)
(32)【優先日】2014年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(72)【発明者】
【氏名】出口 裕展
【テーマコード(参考)】
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA05
3H039BB03
3H039BB08
3H039BB28
3H039CC15
3H039CC33
3H129AA02
3H129AA14
3H129AA33
3H129AB03
3H129BB32
3H129BB42
3H129BB44
3H129CC09
(57)【要約】
【課題】エンドプレートの変形を抑え、揺動スクロールの支持面精度を向上させる。
【解決手段】電動スクロール圧縮機1は、固定スクロール11と揺動スクロール21とを組み合わせてなる圧縮機構3が収容される圧縮機構収容ハウジング部材5と、圧縮機構3を駆動する電動モータ4が収容されるモータ収容ハウジング部材6と、を有している。モータ収容ハウジング部材6は、電動モータ4のステータ16がしまりばめで固定されるモータ固定部12と、揺動スクロール21の支持面となる揺動スクロール側端面22を有するエンドプレート13と、モータ固定部12とエンドプレート13とを接続する低剛性部14と、を有している。低剛性部14は、モータ固定部12及びエンドプレート13よりも低剛性に形成され、モータ固定部12にステータ16がしまりばめで固定されて、モータ固定部12が拡径変形すると、弾性変形してモータ固定部12の変形を吸収する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スクロールと揺動スクロールとを組み合わせてなる圧縮機構が収容される圧縮機構収容ハウジング部材と、前記圧縮機構を駆動する電動モータが収容されるモータ収容ハウジング部材と、前記電動モータを駆動制御するインバータ装置が収容されるインバータ収容ハウジング部材と、を備えた電動スクロール圧縮機において、
前記モータ収容ハウジング部材は、前記電動モータのステータがしまりばめで固定される筒状のモータ固定部と、前記揺動スクロールの支持面となる揺動スクロール側端面を有するエンドプレートと、前記モータ固定部と前記エンドプレートとを接続する低剛性部と、を有し、
前記低剛性部は、前記モータ固定部及び前記エンドプレートよりも低剛性に形成されている、
ことを特徴とする電動スクロール圧縮機。
【請求項2】
前記低剛性部は、前記モータ収容ハウジング部材の周方向の全周にわたって形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電動スクロール圧縮機。
【請求項3】
前記低剛性部は、前記モータ収容ハウジング部材の前記モータ固定部と前記エンドプレートとの間を径方向内方へ凹ませて形作られたくびれ部分を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動スクロール圧縮機。
【請求項4】
前記モータ収容ハウジング部材は、前記インバータ収容ハウジング部材に複数のボルトで固定されており、
前記ボルトの軸部は、前記くびれ部分の一部に形成されたボルト収容部に隙間をもって係合され、
前記ボルト収容部は、前記くびれ部分の径方向外方に膨出して前記ボルトの軸部を覆っている、
ことを特徴とする請求項3に記載の電動スクロール圧縮機。
【請求項5】
前記揺動スクロールの前記エンドプレートに対向する面と前記エンドプレートの前記揺動スクロール側端面のいずれか一方には、前記揺動スクロールの自転を防止する自転防止機構としてのピン&リングカップリングのピンが取り付けられ、
前記揺動スクロールの前記エンドプレートに対向する面と前記エンドプレートの前記揺動スクロール側端面のいずれか他方には、前記ピンと係合し、前記ピンと共に前記自転防止機構を構成する円筒状凹部が形成された、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電動スクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用空調装置の冷凍サイクル等に用いられる電動スクロール圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動スクロール圧縮機は、下記の特許文献1に示される構成が公知になっている。この従来の電動スクロール圧縮機は、吐出ポートを備えると共に、固定スクロールと可動スクロールを対向配置させて構成した圧縮部(圧縮機構)を収容する吐出ハウジングと、吸入ポートを備えた吸入ハウジングと、吐出ハウジングと吸入ハウジングとの間に介在され、吸入ハウジングと共に電動モータを収容する中間ハウジングとを備えたものである。そして、中間ハウジングは、電動モータの一部を収容固定するモータ固定部と、このモータ固定部の吐出ハウジング側に一体に形成され、軸受を介して駆動軸を支持する軸受支持部(エンドプレート)とを有している。
【0003】
この従来の電動スクロール圧縮機に用いられる圧縮機構は、それ自体公知のもので、基板及びこの基板から立設された渦巻壁を有する固定スクロールと、この固定スクロールに対向配置されて基板及びこの基板から立設された渦巻壁を有する揺動スクロールとを備え、これら一対のスクロールをそれぞれ渦巻壁を互いに組み合わせ、揺動スクロールをハウジングに収容された電動モータで回転駆動する駆動軸に設けられた偏心軸に係合させて旋回(公転運動)させることで、両スクロールの渦巻壁間に形成された圧縮室を容積を減少させながら中心へ移動させて被圧縮流体を圧縮するようにしている。
【0004】
このような電動スクロール圧縮機においては、駆動軸の回転に伴って揺動スクロールに自転力が発生するため、揺動スクロールの自転を防止する自転防止機構が設けられている。この自転防止機構としては、揺動スクロール(可動スクロール)の基板(底板)と、中間ハウジングのエンドプレートとの間に、オルダムカップリング、ピン&リングカップリング、ボールカップリング等が用いられる。そして、揺動スクロールは、自転防止機構を介して中間ハウジングのエンドプレートに支持された状態で旋回させられるか、又は中間ハウジングのエンドプレートに直接的に支持された状態で旋回させられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−291557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来から一般的に知られた電動スクロール圧縮機のうちで、電動モータが中間ハウジング内にしまりばめで固定される電動スクロール圧縮機においては、電動モータが中間ハウジング内にしまりばめで固定される際に、中間ハウジングが電動モータによって拡径変形させられ、その中間ハウジングの拡径変形によって揺動スクロールを支持する中間ハウジングのエンドプレートが変形し、揺動スクロールの支持面精度が悪化して、揺動スクロールの旋回精度が低下するか又は揺動スクロールの円滑な旋回運動が困難になり、圧縮機の性能や信頼性に悪影響を及ぼす虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、エンドプレートの変形を抑え、揺動スクロールの支持面精度を向上させ、揺動スクロールの高精度の旋回を可能にして、圧縮機の性能や信頼性を向上させることができる電動スクロール圧縮機を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、固定スクロール11と揺動スクロール21とを組み合わせてなる圧縮機構3が収容される圧縮機構収容ハウジング部材5と、前記圧縮機構3を駆動する電動モータ4が収容されるモータ収容ハウジング部材6と、前記電動モータ4を駆動制御するインバータ装置が収容されるインバータ収容ハウジング部材7と、を備えた電動スクロール圧縮機1に関するものである。この発明において、前記モータ収容ハウジング部材6は、前記電動モータ4のステータ16がしまりばめで固定される筒状のモータ固定部12と、前記揺動スクロール21の支持面となる揺動スクロール側端面22を有するエンドプレート13と、前記モータ固定部12と前記エンドプレート13とを接続する低剛性部14と、を有している。また、前記低剛性部14は、前記モータ固定部12及び前記エンドプレート13よりも低剛性に形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電動スクロール圧縮機は、電動モータのステータがモータ収容ハウジング部材のモータ固定部にしまりばめで固定され、モータ固定部がステータによって拡径変形させられると、モータ固定部及びエンドプレートよりも低剛性の低剛性部がモータ固定部の拡径変形にともなって弾性変形させられ、モータ固定部の拡径変形が低剛性部で吸収され、低剛性部とエンドプレートとの接続部分に生じる応力が低剛性部を設けない場合と比較して小さくなる。その結果、本発明に係る電動スクロール圧縮機は、モータ固定部の拡径変形に起因するエンドプレートの変形を抑えることができ、揺動スクロールの旋回運動を支持する支持面精度を向上させることができるため、揺動スクロールの高精度の旋回を可能にして、圧縮機の性能や信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る電動スクロール圧縮機を示す断面図である。
図2】揺動スクロールを示す図であり、図2(a)は揺動スクロールの背面図、図2(b)は図2(a)のA1−A1線に沿って切断して示す揺動スクロールの断面図である。
図3】エンドプレートが一体化されたモータ収容ハウジング部材を示す図であり、図3(a)はエンドプレートをモータ固定部側から軸方向に見た図、図3(b)はエンドプレートを圧縮機側から軸方向に見た図である。
図4】モータ収容ハウジング部材を図1のA2−A2線に沿って切断して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電動スクロール圧縮機を図面に基づき詳述する。
【0012】
図1に示す電動スクロール圧縮機1は、冷媒を作動流体とする冷凍サイクルに適した電動型圧縮機である。この図1において、アルミ合金で構成されたハウジング2内の図中右側には圧縮機構3が配設され、ハウジング2内の中央部には圧縮機構3を駆動する電動モータ4が配設され、ハウジング2内の図中左側には図示しないインバータ装置が配設されている。なお、図1において、図中左側を圧縮機の前方とし、図中右側を圧縮機の後方としている。
【0013】
ハウジング2は、圧縮機構3が収容される圧縮機構収容ハウジング部材5と、圧縮機構3を駆動する電動モータ4が収容されるモータ収容ハウジング部材6と、電動モータ4を駆動制御する図示しないインバータ装置が収容されるインバータ収容ハウジング部材7と、を有している。そして、隣り合う圧縮機構収容ハウジング部材5とモータ収容ハウジング部材6は、図示しない位置決めピンによって位置決めされると共に締結ボルト8で軸方向(図1のX軸方向)に固定されている。また、隣り合うモータ収容ハウジング部材6とインバータ収容ハウジング部材7は、図示しない位置決めピンによって位置決めされる共に締結ボルト10で軸方向に固定されている。
【0014】
圧縮機構ハウジング部材5は、後述する圧縮機構3の固定スクロール11を収容し、モータ収容ハウジング部材6と対峙する側が開放された有底の筒形形状に形成されている。
【0015】
モータ収容ハウジング部材6は、電動モータ4が固定される筒状のモータ固定部12と、圧縮機構収容ハウジング部材5と対峙する側に位置するエンドプレート13と、モータ固定部12とエンドプレート13との間に位置してモータ固定部12の軸方向一端側とエンドプレート13の径方向外方端側とを接続する低剛性部14と、を有している。そして、モータ固定部12、低剛性部14、及びエンドプレート13は、一体に形成されており、低剛性部14がモータ固定部12及びエンドプレート13よりも低剛性となるように形成されている。
低剛性部14は、モータ収容ハウジング部材6の周方向の全周にわたって形成されており、モータ固定部12とエンドプレート13との間を径方向内方へ凹ませて形作られたくびれ部分15を有している。そして、この低剛性部14は、後述するように、電動モータ4のステータ16がモータ固定部12にしまりばめ(圧入、焼きばめ等)で固定され、モータ固定部12が拡径変形すると、そのモータ固定部12の拡径変形に伴って弾性変形し、モータ固定部12の変形を吸収し、モータ固定部12の拡径変形に起因するエンドプレート13の変形を抑えるようになっている。また、低剛性部14には、後述するように、ボルト収容部17が径方向外方へ膨出するように形成されている。なお、本実施形態において、くびれ部分15は、モータ固定部12の直径をDとした場合、凹み量dがモータ固定部12の外表面よりも0.05D程度となるように径方向内方へ凹ませるか、又は、低剛性部14の肉厚をtとした場合、モータ固定部12の外表面に対する凹み量dがt/2以上となるように径方向内方へ凹ませるようになっている。しかし、くびれ部分15は、このような凹み量の例示に限られず、モータ固定部12の拡径変形量等を考慮して最適の凹み量が決定される。
エンドプレート13は、駆動軸18の一端側を支持する軸支部20が一体に形成されており、後述する圧縮機構3の揺動スクロール21の軸方向荷重を揺動スクロール側端面22で支持することができるようになっている。
【0016】
インバータ収容ハウジング部材7は、筒状に形成されたインバータ収容筒状部分23と、モータ収容ハウジング部材6と対峙する側に位置するエンドプレート24とが一体に形成されている。そして、エンドプレート24には、駆動軸18の他端側を支持する軸支部25が一体に形成されている。
【0017】
モータ収容ハウジング部材6のエンドプレート13の軸支部20には、ベアリング26を介して駆動軸18の一端側が回動できるように支持されている。また、インバータ収容ハウジング部材7のエンドプレート24の軸支部25には、ベアリング27を介して駆動軸18の他端側が回転できるように支持されている。そして、ハウジング2の内部は、モータ収容ハウジング部材6のエンドプレート13とインバータ収容ハウジング部材7のエンドプレート24により、圧縮機構3を収納する圧縮機構収容部28、電動モータ4を収納するモータ収容部30、及び、インバータ装置を収容するインバータ収容部31に後方側から順に仕切られている。なお、この例において、インバータ収容部31は、蓋32がインバータ収容ハウジング部材7の開口部に図示しないボルト等で固定されることによって閉じられる。
【0018】
圧縮機構3は、固定スクロール11とこれに対向配置された揺動スクロール21とを有するスクロールタイプのものである。固定スクロール11は、ハウジング2(圧縮機構収容ハウジング部材5)に対して、軸方向の動きが許容されつつ、後述する位置決めピン33により径方向への動きが阻止されるようになっている。そして、この固定スクロール11は、円板状の基板11aと、この基板11aの外縁に沿って全周に亘って設けられると共に前方に向かって立設された円筒状の外周壁11bと、その外周壁11bの内側において前記基板11aから前方に向かって延設された渦巻状の渦巻壁11cと、から構成されている。
【0019】
また、揺動スクロール21は、図1及び図2に示されるように、円板状の基板21aと、この基板21aから後方に向かって立設された渦巻状の渦巻壁21cと、から構成されている。そして、揺動スクロール21は、基板21aの背面中央に設けられた嵌合凹部34にラジアル軸受35が収容され、このラジアル軸受35を介して駆動軸18の後端部に形成された偏心軸36に支持されている。その結果、揺動スクロール21は、駆動軸18の軸心と偏心軸36の軸心との偏心量に応じ、駆動軸18の軸心を中心とした公転運動が可能になっている。
【0020】
固定スクロール11と揺動スクロール21は、それぞれの渦巻壁11c、21cを互いに噛み合わせ、固定スクロール11の基板11a及び渦巻壁11cと揺動スクロール21の基板21a及び渦巻壁21cとで囲まれた空間によって圧縮室37が形成されるようになっている。また、固定スクロール11とモータ収容ハウジング部材6のエンドプレート13は、位置決めピン33によって径方向に位置決めされている。
【0021】
なお、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、固定スクロール11がモータ収容ハウジング部材6のエンドプレート13に直接組み付けられ、揺動スクロール21の軸方向荷重がエンドプレート13の揺動スクロール側端面22で直接支持されるようになっているが、これに限定されず、固定スクロール11の外周壁11bとエンドプレート13との間に薄板状の環状のスラストレース(図示せず)を介在させ、固定スクロール11とエンドプレート13とがスラストレースを介して突き合わされると共に、揺動スクロール21の軸方向荷重がスラストレースを介してエンドプレート13で支持されるようにしてもよい。
【0022】
モータ収容ハウジング部材6のエンドプレート13に一体に形成された軸支部20は、圧縮機収容部28側に開口する環状凹所であるウエイト収容部38と、モータ収容部30側に開口する環状凹所であるベアリング収容部40と、これらウエイト収容部38とベアリング収容部40とを駆動軸18に沿って貫通する貫通孔41とが形成されている。そして、ウエイト収容部38には、駆動軸18と一体をなして回転するバランスウエイト42が収容されている。また、ベアリング収容部40には、駆動軸18の一端側を回動可能に支持するベアリング26が収容されている。また、貫通穴41には、駆動軸18が十分な隙間をもって収容されている。
【0023】
固定スクロール11の外周壁11bと揺動スクロール21の渦巻壁21cの最外周部との間には、後述する吸入口43から導入された冷媒を吸入経路44を介して吸入する吸入室45が形成されている。また、ハウジング2内の固定スクロール11の後方側で且つ固定スクロール11と圧縮機構収容ハウジング部材5の後端壁46との間には、吐出室47が形成されている。この吐出室47は、圧縮室37で圧縮された冷媒ガスが固定スクロール11の略中央に形成された吐出孔48を介して吐出されるようになっている。そして、この吐出室47に吐出された冷媒ガスは、吐出口50を介して外部冷媒回路へ圧送されるようになっている。
【0024】
モータ収容ハウジング部材6のエンドプレート13よりも前方の部分に形成されたモータ固定部12には、電動モータ4を構成するステータ16とロータ51とが収容されている。ステータ16は、円筒状をなす鉄心とこれに巻回されたコイルとで構成され、ハウジング2(モータ収容ハウジング部材6)の内面に固定されている。また、マグネットからなるロータ51は、駆動軸18の外周側に固定され、ステータ16の内側に回転可能に収容されている。そして、ロータ51は、ステータ16によって形成される回転磁力により駆動軸18と一体に回転させられるようになっている。
【0025】
尚、インバータ収容ハウジング部材7に収容されるインバータ装置は、エンドプレート24に形成された図示しない貫通孔に取付けられるターミナル(気密端子)を介してステータ16と電気的に接続され、電動モータ4に対して給電するようになっている。
【0026】
ハウジング2(モータ収容ハウジング部材6)の側面には、モータ収容部30に冷媒ガスを吸入する吸入口43が形成されている。そして、吸入口43からモータ収容部30内に流入した冷媒は、吸入経路44を介して吸入室45に導かれるようになっている。なお、吸入経路44は、ステータ16とハウジング2(モータ収容ハウジング部材6)との間の隙間や、エンドプレート13に形成された孔52、及び固定スクロール11とハウジング2との間に形成される隙間等で構成されている。
【0027】
モータ収容ハウジング部材6の内周面には、図1及び図3に示されるように、ステータ16と接触するステータ接触部53とステータ16と接触しないステータ非接触部54とが周方向に交互に形成されている。そして、ステータ接触部53には、ステータ16の外周部がしまりばめ(圧入、焼き嵌め等)により固定されている。これにより、ステータ16は、ハウジング2(モータ収容ハウジング部材6)に固定される。そして、吸入経路44の一部を構成するステータ16とハウジング2(モータ収容ハウジング部材6)との間の隙間は、ステータ非接触部54の内壁とステータ16の外周部との間の間隙により形成されている。
【0028】
この実施形態において、対をなすステータ接触部53とステータ非接触部54は、中心角にして約60度の間隔で周方向に6箇所形成されている。そして、ステータ接触部53は、その周方向の巾がステータ非接触部54の周方向の幅より相対的に小さく形成されている(ステータ接触部53の幅は中心角にして約20度、ステータ非接触部54の幅は中心角にして約40度に形成されている)。
【0029】
また、モータ収容ハウジング部材6のエンドプレート13には、モータ収容部30と圧縮機構収容部28とを連通する孔52が形成されている。そして、この孔52は、吸入口43からモータ収容部30に流入した冷媒を吸入室45へ導くようになっている。
【0030】
また、孔52は、後述する自転防止機構のピン55よりも径方向外側に位置するようにエンドプレート13に形成されており、5箇所のステータ接触部53の径方向内方側で且つ5箇所のステータ接触部53と周方向でほぼ重なる位置に(ほぼ同位相となる位置に)、5箇所のステータ接触部53と対応するように複数形成されている。なお、この例において、孔52は、6箇所のステータ接触部53のうちの5箇所のステータ接触部53にのみ対応するように形成されており、エンドプレート13の周方向に延びる長孔として形成されている。
【0031】
エンドプレート13の隣合うステータ接触部53,53の間には、締結ボルト10の軸部10aを挿通するボルト孔56がそれぞれ形成されている。このボルト孔56に軸部10aが挿通される締結ボルト10は、モータ収容ハウジング部材6とインバータ収容ハウジング部材7とを固定するために使用される。この締結ボルト10の軸部10aは、低剛性部14に部分的に形成されたボルト収容部17に隙間をもって係合されている。このボルト収容部17は、低剛性部14の締結ボルト10の軸部10aが挿通される箇所に形成されており、低剛性部14のくびれ部分15の径方向外方へ膨出して締結ボルト10の軸部10aを覆い、締結ボルト10の軸部10aが外気に晒されないようにして、締結ボルト10の軸部10aを保護している。なお、ボルト収容部17は、締結ボルト10と同数形成され且つ断面形状が略円弧形状であり、低剛性部14の捩り方向の剛性を高めている。
【0032】
エンドプレート13のモータ収容部30側の面には、エンドプレート13を補強する補強用リブ57が軸支部20から低剛性部14の内周面にかけて径方向に一体に延設されている。この補強用リブ57は、ステータ非接触部54の軸方向に対応する位置、すなわち、ステータ非接触部54と周方向でほぼ重なる位置に(ほぼ同位相となる位置に)、周方向に略等間隔に複数形成されている(後述するピン55の数に合わせて周方向に6箇所設けられている)。したがって、補強用リブ57は、ステータ接触部53と周方向の位置が重ならないように(同位相とならないように)形成され、ステータ接触部53の変形による応力が直接伝達されないようになっている。
【0033】
尚、図3(b)に示されるように、固定スクロール11をエンドプレート13に対して位置決めする位置決めピン33は、それぞれの孔52を含む仮想円58上に設けられ、エンドプレート13に形成されたピン取り付け孔60に圧入することで固定されている。
【0034】
以上の構成において、圧縮機構3は、ロータ51と駆動軸18が一体として回転すると、揺動スクロール21が駆動軸18と一体に回動する偏心軸36を介して駆動され、揺動スクロール21が駆動軸18の軸心を中心として公転運動する。これにより、吸入口43からモータ収容部30に吸引された冷媒は、ロータ周囲のステータ非接触部54とステータ16との間の隙間やステータ16のコイルの隙間を通り、エンドプレート13の孔52を介して吸入室45に導かれる。圧縮機構3の圧縮室37は、揺動スクロール21の公転運動により、固定スクロール11の渦巻壁11cと揺動スクロール21の渦巻壁21cの外周側から中心側へ容積を徐々に小さくしつつ移動する。その結果、吸入室45から圧縮室37に吸入された冷媒ガスは、揺動スクロール21の公転運動に伴って圧縮される。そして、この圧縮された冷媒ガスは、固定スクロール11の基板11aに形成された吐出孔48を介して吐出室47に吐出され、吐出室47から吐出口50を介して外部冷媒回路へ送出される。
【0035】
ところで、上述した電動スクロール圧縮機1においては、駆動軸18の回転に伴って揺動スクロール21に自転力が発生するため、揺動スクロール21の自転を規制した状態で、揺動スクロール21を駆動軸18の軸心の周りに公転運動させる必要がある。このため、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、揺動スクロール21の基板21aとモータ収容ハウジング部材6のエンドプレート13との間に、ピン55を係合させる自転防止機構が設けられている。
【0036】
この実施形態において、自転防止機構としては、ピン&リングカップリングが採用されており、周方向に配設された複数のピン55と、これらピン55に係合する複数のリング部材61と、それぞれのリング部材61を収容する複数の円筒状凹部62とで構成されている。
【0037】
円筒状凹部62は、図1及び図2に示されるように、揺動スクロール21の基板21aの背面(エンドプレート13に対向する面)に断面円状の窪みを形成して構成されているもので、揺動スクロール21の嵌合凹部34の周囲に等間隔(この例では、60度間隔)に形成されている。リング部材61は、鉄製の円環状のもので、円筒状凹部62の内径よりも小さい外径を有しており、円筒状凹部62に遊嵌されるようになっている。また、このリング部材61は、軸方向の幅が円筒状凹部62の軸方向幅にほぼ等しいか又は円筒状凹部62の軸方向幅よりも小さく形成されている。
【0038】
ピン55は、鉄製の円柱状に形成され、リング部材61の内径よりも小さい外径に形成され、モータ収容ハウジング部材6のエンドプレート13のウエイト収容部38の周囲で且つ揺動スクロール21に対向する揺動スクロール側端面22に、円筒状凹部62の位置に合わせて等間隔に固定されている。この実施形態において、ピン55は、エンドプレート13に形成されたピン取付孔63に圧入することで固定され、また、エンドプレート13の補強用リブ57が形成された部分の背面に固定されている。
【0039】
したがって、揺動スクロール21は、駆動軸18の回転により自転力が発生するが、エンドプレート13に固定されたピン55が円筒状凹部62内のリング部材61の内周面に当接し、ピン55がリング部材61を介して円筒状凹部62に係合されるため、動きが制限される。その結果、揺動スクロール21は、自転が規制された状態で、駆動軸18の軸心に対して公転運動のみが許容されるようになっている。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、電動モータ4のステータ16がモータ収容ハウジング部材6のモータ固定部12にしまりばめで固定され、モータ固定部12がステータ16によって拡径変形させられると、モータ固定部12及びエンドプレート13よりも低剛性の低剛性部14がモータ固定部12の拡径変形にともなって弾性変形させられ、モータ固定部12の拡径変形が低剛性部14で吸収され、低剛性部14とエンドプレート13との接続部分に生じる応力(モータ固定部12の拡径変形に起因して生じる応力)が低剛性部14を設けない場合と比較して小さくなる。その結果、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、モータ固定部12の拡径変形に起因するエンドプレート13の変形(揺動スクロール側端面22の倒れ等)を抑えることができ、揺動スクロール21の旋回運動を支持する支持面精度を向上させることができるため、揺動スクロール21の高精度の旋回を可能にして、圧縮機の性能や信頼性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、低剛性部14がモータ収容ハウジング部材6の周方向の全周にわたって形成されているため、モータ固定部12の拡径変形をモータ収容ハウジング部材6の周方向の全周にわたって均等に吸収することができ、エンドプレート13の周方向に不均衡な歪みを生じさせるようなことがない。
【0042】
また、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、低剛性部14がモータ固定部12とエンドプレート13との間を径方向内方へ凹ませて形作られたくびれ部分15を有するため、図1の断面図上における低剛性部14の長さがくびれ部分15を設けなかった場合と比較して長くなると共に、低剛性部14がモータ固定部12の拡径変形に追従して変形し易くなっている。そのため、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、低剛性部14にくびれ部分15を設けない場合と比較し、低剛性部14とエンドプレート13との接続部分に生じる応力を低減でき、モータ固定部12の拡径変形に起因するエンドプレート13の変形をより一層小さくすることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、低剛性部14のくびれ部分15の一部に径方向外方に膨出するボルト収容部17が形成され、モータ収容ハウジング部材6とインバータ収容ハウジング部材7を固定する締結ボルト10の軸部10aをボルト収容部17で覆い、締結ボルト10の軸部10aが外気に晒されないようにして、締結ボルト10の軸部10aをボルト収容部17で保護しているため、締結ボルト10の腐食等に起因する耐久性の低下を防止できると共に、モータ収容ハウジング部材6の低剛性部14におけるねじれ剛性を高めることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、自転防止機構としてピン&リングカップリングが用いられ、円筒状凹部62が揺動スクロール21の基板21aに形成されているので、可動部材としての揺動スクロール21の重量を低減することが可能となり、揺動スクロール21の駆動性の向上を図ることができる。しかも、ピン55は、揺動スクロール21の基板21aよりも剛性の高い固定部材としてのモータ収容ハウジング部材6のエンドプレート13に圧入固定されている。その結果、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、ピン55の圧入時のエンドプレート13の変形が殆どなく、また、ピン55がリング部材61を介して円筒状凹部62に係合し、ピン55が径方向荷重を受ける場合でも、その径方向荷重によりピン55を圧入している箇所が変形することもなくなり、ピン55の組み付け精度を高めることが可能となる(ピン55の傾倒を回避することが可能となる)。したがって、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、上記エンドプレート13の支持面精度の向上の効果と相俟って、揺動スクロール21の高精度の旋回を可能にし、圧縮機の性能や信頼性をより一層向上させることができる
【0045】
また、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、エンドプレート13に設けられた補強用リブ57が形成された部分にピン55が固定されているので、エンドプレート13の中でもより剛性の高い箇所にピン55が固定されることになり、ピン55の圧入固定時や径方向荷重を受ける際のピン55が圧入されている箇所の変形をより確実に回避することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、エンドプレート13と固定スクロール11とを位置決めする位置決めピン33が軸中心から径方向外方へ離れた位置(複数の孔52を含む仮想円58上)に設けられ、しかも、その位置決めピン33が低剛性部14の機能によって変形を抑えられたエンドプレート13に固定されているため、固定スクロール11が高い精度でエンドプレート13に位置決めされる。その結果、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、固定スクロール11と揺動スクロール21とを高精度で組み合わせることができ、上記本実施形態の各効果と相俟って、圧縮機の性能や信頼性をより一層向上させることができる。
【0047】
なお、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、ピン55にリング部材61を介して円筒状凹部62を係合する例を示したが、自転防止機能を確保するためには、リング部材61を省略することも可能である。このような場合には、ピン55に円筒状凹部62を直接係合するようにしてもよい。このような構成に変更した電動スクロール圧縮機は、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、自転防止機構のうちのピン55をエンドプレート13に固定し、円筒状凹部62を揺動スクロール21に形成する構成を例示したが、これに限られず、ピン55を揺動スクロール21に固定し、円筒状凹部62をエンドプレート13に形成するようにしてもよい。
【0049】
また、本実施形態に係る電動スクロール圧縮機1は、自転防止機構としてピン&リングカップリングが用いられているが、ピン&リングカップリング以外の自転防止機構を使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 電動スクロール圧縮機
3 圧縮機構
4 電動モータ
5 圧縮機構収容ハウジング部材
6 モータ収容ハウジング部材
7 インバータ収容ハウジング部材
11 固定スクロール
12 モータ固定部
13 エンドプレート
14 低剛性部
16 ステータ
21 揺動スクロール
22 揺動スクロール側端面
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】