(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
ポンプユニット(1)は、圧電素子(4)と圧電素子(4)の作動に応じて流体を吐出する吐出機構(5)とを有するポンプ(2)と、ポンプ(2)に取り付けられた弁機構(3)と、を備えている。吐出機構(5)及び弁機構(3)は、それぞれ複数の金属板(22)〜(37)が予め設定された積層方向に積層された状態で当該複数の金属板(22)〜(37)が拡散接合されることによってそれぞれ形成され、さらに、互いに拡散接合によって固定されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0021】
<第1実施形態(
図1〜
図12)>
図1〜
図3を参照して、本発明の第1実施形態に係るポンプユニット1について説明する。なお、
図2は、
図1のポンプユニット1の圧電素子4を省略した状態における平面図である。
【0022】
ポンプユニット1は、流体を吐出するポンプ2と、ポンプ2の上流側の流体の圧力が増加したときにポンプ2を通じた流体の導出を規制する弁機構3と、を備えている。
【0023】
ポンプ2は、圧電素子4と、圧電素子4の作動に応じて流体を吐出する吐出機構5と、を有する。
【0024】
吐出機構5は、ポンプ本体8と、ポンプ本体8との間でポンプ室S1を区画するポンプ側ダイヤフラム9と、ポンプ室S1に接続されるようにポンプ本体8に形成された4つの導入通路(
図3において1つのみ示す)13に設けられた導入弁14と、ポンプ室S1に接続されるようにポンプ本体8に形成された導出通路16に設けられた導出弁17と、を備えている。
【0025】
ポンプ室S1は、平面視で略円形の空間(
図2参照)である。導出通路16は、平面視でポンプ室S1の中心に接続された通路である。4つの導入通路13は、ポンプ室S1の中心軸J(
図3参照)を中心として90°ごとに設けられている。導入通路13は、中心軸J(後述する金属板22〜37の積層方向と平行な軸)に沿ってポンプユニット1を見る平面視においてポンプ室S1の内側に配置された部分と、平面視でポンプ室S1の外側に配置された部分と、を有する。導出通路16は、平面視でポンプ室S1の内側に配置されている。
【0026】
ポンプ本体8は、導入弁14との間で導入通路13を閉じるための導入弁座15と、導出弁17との間で導出通路16を閉じるための導出弁座18と、を有する。
【0027】
導入弁14は、当該導入弁14の上流側の圧力がポンプ室S1内の圧力以下であるときに導入弁座15に密着して導入通路13を閉じる。一方、導入弁14は、当該導入弁14の上流側の圧力がポンプ室S1内の圧力よりも高いときに弾性変形することにより導入弁座15から離れて導入通路13を開く。
【0028】
導出弁17は、ポンプ室S1内の圧力が導出弁17の下流側の圧力以下であるときに導出弁座18に密着して導出通路16を閉じる。一方、導出弁17は、ポンプ室S1内の圧力が導出弁17の下流側の圧力よりも高いときに弾性変形することにより導出弁座18から離れて導出通路16を開く。
【0029】
弁機構3は、ポンプ2の導入通路13に接続された導入側接続通路10とポンプ2の導出通路16に接続された導出側接続通路11とを有する弁機構本体6と、導入側接続通路10と導出側接続通路11とを仕切るように弁機構本体6に設けられた弁側ダイヤフラム7と、を備えている。
【0030】
弁側ダイヤフラム7は、ポンプ側ダイヤフラム9と同心に配置され、さらに平面視においてポンプ室S1の内側に配置されている(
図2参照)。また、弁側ダイヤフラム7は、ポンプ側ダイヤフラム9と平行に配置されている。そして、ポンプ2の導入通路13及び導出通路16は、それぞれ両ダイヤフラム7、9の間に設けられている。
【0031】
導入側接続通路10は、ポンプ2の導入通路13から弁側ダイヤフラム7を避けて当該弁側ダイヤフラム7のポンプ2と反対側の位置まで延び、弁機構本体6のポンプ2と反対側の端面で開口している。
【0032】
具体的に、導入側接続通路10は、ポンプ本体8の4つの導入通路13にそれぞれ接続された4つの被接続部(
図3では1つのみ示す)10dと、各被接続部10dの中心軸Jから最も遠い側の端部から中心軸Jと平行に延びる第1延出部10cと、各外側配置部10cから中心軸Jに近づく方向に延びる第2延出部10bと、4つの第2延出部10bに接続された導入部10aと、を備えている。つまり、導入部10aから導入された流体は、4つの第2延出部10bに分かれて流れ、当該第2延出部10b、第1延出部10c、及び被接続部10dを通ってポンプ2の導入通路13に導かれる。
【0033】
ここで、導入側接続通路10のうち被接続部10dの一部、第1延出部10cの全体、及び第2延出部10bの一部は、平面視においてポンプ室S1の外側に配置され、それ以外の部分は、平面視においてポンプ室S1の内側に配置されている。
【0034】
一方、導出側接続通路11は、ポンプ2の導出通路16から弁側ダイヤフラム7に向かって延びるとともに当該弁側ダイヤフラム7の表面に沿って中心軸Jから離れる方向に延び、弁側ダイヤフラム7の側方を通って弁機構本体6のポンプ2と反対側の端面で開口している。
【0035】
具体的に、導出側接続通路11は、ポンプ本体8の導出通路16に接続された被接続部11aと、被接続部11aの弁側ダイヤフラム7側の端部から中心軸Jから離れる方向に延びる第1延出部11bと、第1延出部11bの中心軸Jから遠い側の端部にそれぞれ接続されているとともに中心軸Jと平行する方向に延びる2つの第2延出部(
図3では1つのみ示す)11cと、両延出部11cを合流させる導出部11dと、を備えている。ポンプ室S1から被接続部11aに導出された流体は、第1延出部11bを通じて2つの第2延出部11cに分かれて流れ、再び導出部11dにおいて合流して導出される。なお、被接続部11a内には、導出弁17の開放時に当該導出弁17を予め設定された開放位置に保持するストッパー12が設けられている。
【0036】
ここで、導出側接続通路11のうち第1延出部11bの一部、第2延出部11cの全体、導出部11dの一部は、平面視においてポンプ室S1の外側に配置され、それ以外の部分は、平面視においてポンプ室S1の内側に配置されている。
【0037】
弁側ダイヤフラム7は、導入側接続通路10の一部(導入部10a及び第2延出部10bの一部)を区画する壁面として機能するとともに、導出側接続通路11の一部(被接続部11a及び延出部11bの一部)を区画する壁面として機能する。
【0038】
また、弁機構本体6は、弁側ダイヤフラム7が接触することにより導出側接続通路11を通じた流体の流れを規制する弁座38を備えている。
【0039】
弁側ダイヤフラム7は、弁座38と間隔を空けて設けられている。また、弁側ダイヤフラム7は、導入側接続通路10内の圧力が導出側接続通路11内の圧力よりも高い、予め設定された基準圧以上のときに弾性変形して弁座38に接触することができる弾性を有する。
【0040】
したがって、導入側接続通路10内の圧力が前記基準圧より低いときに導出側接続通路11を通じた流体の流れが許容される一方、導入側接続通路10内の圧力が前記基準圧以上のときに導出側接続通路11を通じた流体の流れが規制される。
【0041】
以下、
図3〜
図6を参照して、ポンプユニット1の動作を説明する。
【0042】
図3に示すポンプユニット1の停止状態において、圧電素子に交流電力が供給されると、圧電素子の作動に伴いポンプ側ダイヤフラム9が振動する。
【0043】
具体的に、
図4に示すように、ポンプ室S1が拡張する方向にポンプ側ダイヤフラム9が変位すると、導入弁14の上流側の圧力がポンプ室S1内の圧力よりも高くなるため導入弁14が開放する一方、ポンプ室S1内の圧力が導出弁17の下流側の圧力よりも低くなるため導出弁17が閉鎖する。これにより、ポンプ室S1内に流体が導入(吸入)される。
【0044】
一方、
図5に示すように、ポンプ室S1が縮小する方向にポンプ側ダイヤフラム9が変位すると、導入弁14の上流側の圧力がポンプ室S1内の圧力よりも低くなるため導入弁14が閉鎖する一方、ポンプ室S1内の圧力が導出弁17の下流側の圧力よりも高くなるため導出弁17が開放する。これにより、ポンプ室S1から流体が導出される。
【0045】
ここで、弁側ダイヤフラム7と弁座38との間には隙間が形成されているため、導出側接続通路11内の圧力が高くなったときに開放するように弁側ダイヤフラム7が弁座38に予め密着されている場合と異なり、流体導出時の圧損の発生を防止することができる。
【0046】
また、
図6に示すように、導入側接続通路10内の圧力が前記基準圧以上になると、弁側ダイヤフラム7が弾性変形して弁座38に密着することにより、導出側接続通路11を通じた流体の流れが規制される。
【0047】
なお、弁側ダイヤフラム7の両面の受圧面積は等しく設定されているが、弁側ダイヤフラム7は、導入側接続通路10内の圧力が前記基準圧以上になると確実に弾性変形する。その理由は、導入側接続通路10自体の圧損、及び、導入弁14及び導出弁17の開放時の圧損が生じることにより導入側接続通路10と導出側接続通路11との間に前記基準圧に相当する圧力差が生じることある。そして、弁座38の開口面積は弁側ダイヤフラム7の導入側接続通路10側の受圧面積よりも小さく設定されているため、弁側ダイヤフラム7が弁座38に密着した状態においては、弁側ダイヤフラム7の導入側と導出側との間の受圧面積の差に応じて当該弁側ダイヤフラム7を弁座38に押し付ける方向の力が生じる。
【0048】
図3に示すように、ポンプユニット1の吐出機構5及び弁機構3は、複数の金属板22〜37が中心軸Jと平行な積層方向に積層された状態で当該複数の金属板22〜37が拡散接合されることによってそれぞれ形成され、さらに、互いに拡散接合によって固定されている。
【0049】
具体的に、吐出機構5は、金属板22〜28によって形成され、弁機構3は、金属板29〜37によって形成されている。
【0050】
図3及び
図8を参照して、第1金属板22は、当該第1金属板22を積層方向に貫通する円形の貫通孔22aと、貫通孔22aから当該貫通孔22aの径方向の外側に拡張された4つの拡張部22bと、を有する。
【0051】
貫通孔22aは、第2金属板23におけるポンプ側ダイヤフラム9の可動域を規定する。また、貫通孔22a内には、圧電素子4が配置されている(
図3参照)。
【0052】
拡張部22bは、圧電素子4と電源とを接続するための部分である。具体的に、
図11に示すように、第2金属板23の表面(ポンプ室S1と反対側の面)には、絶縁層23aを介して被接続層23bが形成されている。圧電素子4に設けられた第1接続部4aは、被接続層23bに電気的に接続され、圧電素子4の第1接続部4aと反対側の面には第2接続部4bが設けられている。拡張部22bは、圧電素子4の側方位置で被接続層23bを開放する。したがって、電源(符号省略)の一方の極を被接続層23bに接続するとともに、電源の他方の極を第2接続部4bに接続することができる。
【0053】
再び
図3及び
図8を参照して、第2金属板(ポンプ側ダイヤフラム用金属板)23は、ポンプ側ダイヤフラム9を含む。
【0054】
第3金属板(ポンプ室用金属板)24は、ポンプ室S1を画定する貫通孔(ポンプ室用孔)24aを有する。
【0055】
図3及び
図9を参照して、第4金属板25は、導入通路13の一部を形成する4つの貫通孔25aと、導出通路16の一部を形成する貫通孔25bと、を有する。各貫通孔25aは、導入弁14がポンプ室側へ弾性変形するためスペースを形成する。
【0056】
第5金属板26は、上述した4つの導入弁14を含むとともに、導出通路16の一部を形成する貫通孔26aを有する。
【0057】
第6金属板27は、導出通路16の一部を形成する貫通孔27aを有する。また、第6金属板27の一方の面には、上述した4つの導入弁座15が形成されているとともに、第6金属板27の他方の面には、上述した導出弁座18(
図9では省略)が形成されている。また、第6金属板27の導入弁座15内には、導入通路13の一部を形成する貫通孔(符号省略)が設けられている。
【0058】
第7金属板28は、導入通路13の一部を形成する4つの貫通孔28aと、導出通路16の一部を形成する貫通孔28bと、を有する。第7金属板28の貫通孔28b内には、上述した導出弁17が設けられている。導出弁17は、導出通路16を閉じるための閉鎖部(符号省略)と、閉鎖部と第7金属板28のうちの閉鎖部以外の部分とを接続するアーム(符号省略)と、を有している(
図28に示す導入弁50Aと略同一の形状を有する)。
【0059】
第8金属板29は、導入側接続通路10の被接続部10dの一部を形成する4つの貫通孔29aと、導出側接続通路11の被接続部11aの一部を形成する貫通孔29bと、導出側接続通路11の第1延出部11bの一部を形成する貫通孔29cと、を有する。
【0060】
第9金属板30は、導入側接続通路10の第1延出部10cの一部を形成する4つの貫通孔30aと、導出側接続通路11の被接続部11aの一部を形成する貫通孔30bと、導出側接続通路11の第1延出部11bの一部を形成する貫通孔30cと、を有する。また、第9金属板30の貫通孔30b内には、ストッパー12が設けられている。
【0061】
第10金属板31は、導入側接続通路10の第1延出部10cの一部を形成する4つの貫通孔31aと、導出側接続通路11の被接続部11aの一部を形成する貫通孔31bと、導出側接続通路11の第1延出部11bの一部を形成する貫通孔31cと、を有する。また、第10金属板31は、貫通孔31bの周縁部に設けられた弁座38(
図9では省略)を有する弁座用金属板に相当する。
【0062】
図3及び
図10を参照して、第11金属板32は、導入側接続通路10の第1延出部10cの一部を形成する4つの貫通孔32aと、導出側接続通路11の第1延出部11bの一部を形成する貫通孔32bと、導出側接続通路11の第2延出部11cの一部を形成する2つの貫通孔32cと、を有する。また、第11金属板32は、第12金属板33における弁側ダイヤフラム7の導出側接続通路11側への可動域を規定する貫通孔32bを有する導出側規定用金属板に相当する。さらに、第11金属板32は、当該第11金属板32を積層方向に貫通する貫通孔(間隙用孔)32bを有し、弁側ダイヤフラム7と弁座38との間に間隙を形成するための間隙用金属板に相当する。なお、4つの貫通孔32aは、平面視でポンプ室S1の外側に配置されている(
図2参照)。
【0063】
第12金属板(弁側ダイヤフラム用金属板)33は、弁側ダイヤフラム7を含む。また、第12金属板33は、導入側接続通路10の第1延出部10cの一部を形成する4つの貫通孔33aと、導出側接続通路11の第2延出部11cの一部を形成する2つの貫通孔33bと、を有する。
【0064】
第13金属板(導入側規定用金属板)34は、導入側接続通路10の第1延出部10cの一部を形成する4つの貫通孔34aと、導入側接続通路10の導入部10a及び第2延出部10bの一部を形成する貫通孔34bと、導出側接続通路11の第2延出部11cの一部を形成する2つの貫通孔34cと、を有する。貫通孔34bは、第12金属板33における弁側ダイヤフラム7の導入側接続通路10側への可動域を規定する導入側規定孔に相当する。
【0065】
第14金属板35は、導入側接続通路10の第1延出部10cの一部を形成する4つの貫通孔35aと、導入側接続通路10の導入部10a及び第2延出部10bの一部を形成する貫通孔35bと、導出側接続通路11の導出部11dの一部を形成する貫通孔35cと、を有する。
【0066】
第15金属板36は、導入側接続通路10の導入部10aの一部を形成する貫通孔36aと、導出側接続通路11の導出部11dの一部を形成する貫通孔36bと、有する。
【0067】
第16金属板37は、導入側接続通路10の導入部10aの一部を形成する貫通孔37aと、導出側接続通路11の導出部11dの一部を形成する貫通孔37bと、有する。
【0068】
なお、
図8〜
図10では、第1〜第16金属板22〜37をそれぞれ1枚ずつ示しているが、表面の形状と裏面の形状とが同一である金属板については、当該金属板を複数枚重ねて用いることもできる。例えば、
図3では、第8金属板28及び第9金属板29等が複数枚用いられた例を示している。他の金属板を複数枚用いることもできる。一方、予め大きな厚みを有する金属板を用いることも可能であるが、この場合金属板の表面粗さが大きくなり、これは拡散接合の際に不利となる。したがって、上述のように、薄い金属板を複数枚用いることにより金属板の厚みを増やすことが好ましい。
【0069】
図2及び
図3を参照して、上述のように、積層方向(中心軸J)に沿ってポンプユニット1を見る平面視において、弁側ダイヤフラム7は、ポンプ側ダイヤフラム9の内側に設けられている。つまり、第11金属板32の貫通孔(導出側規定孔:
図10参照)32b及び第13金属板34の貫通孔(導入側規定孔:
図10参照)34bは、平面視において第3金属板24の貫通孔(ポンプ室用孔:
図8参照)24aの内側に配置されている。そのため、導入側接続通路10及び導出側接続通路11は、両ダイヤフラム7、9の間で、平面視においてポンプ側ダイヤフラム9の内側に配置される部分(導入側接続通路10の被接続部10d及び導出側接続通路11の被接続部11a及び第1延出部11bの一部:以下、内側配置部ともいう)を有する。
【0070】
ここで、拡散接合は、積層された複数の金属板に対して積層方向に圧力を加える必要があるが、金属板のポンプ側ダイヤフラム9(ポンプ室S1:空間)と重なる部分には有効に圧力を伝えることができず、両接続通路10、11の内側配置部を拡散接合によって形成することが難しい。
【0071】
そこで、
図3及び
図7に示すように、ポンプユニット1は、第1〜第3金属板22〜24を含むチャンバ部分19と、第11〜第16金属板32〜37までを含む弁体部分21と、チャンバ部分19と弁体部分21との間の中間部分20と、に分けて製造される。
【0072】
以下、ポンプユニット1の製造方法について説明する。
【0073】
まず、
図3及び
図8〜
図10に示される金属板25〜37を準備する(準備工程)。
【0074】
具体的に、準備工程では、弁側ダイヤフラム7の可動域を規定する第11金属板32及び第13金属板34のうちポンプ室S1(第3金属板24)の近くに配置される近接金属板として、
図10に示すように、導入側接続通路10及び導出側接続通路11を形成するために貫通孔32b以外に複数の貫通孔(通路形成用孔)32a、32cのみを有する第11金属板32を準備する。
【0075】
また、準備工程では、
図9に示すように、複数の貫通孔32a、32cのうちの貫通孔(第1通路形成用孔)32aの周縁部に密着可能な周縁部を有する貫通孔(連通孔)31aを備えた第10金属板(隣接金属板)31を準備する。
【0076】
次に、金属板25〜37を拡散接合する(接合工程)。
【0077】
具体的に、接合工程は、
図7に示すように、金属板25〜37のうち中間部分20に含まれるものを拡散接合する中間接合工程(第1接合工程)と、チャンバ部分19に含まれるものを拡散接合するチャンバ接合工程と、弁体部分21に含まれるものを拡散接合する弁体接合工程と、チャンバ部分19、弁体部分21、及び中間部分20を接合する全体接合工程(第2接合工程)と、を含む。
【0078】
中間接合工程では、
図3及び
図9に示すように、チャンバ部分19及び弁体部分21とは別に中間部分20を拡散接合する。そのため、中間部分20に形成される両接続通路10、11のうち、平面視においてポンプ室S1及び貫通孔32b、34bと重なる部分を拡散接合によって確実に形成することができる。
【0079】
チャンバ接合工程では、
図3及び
図8に示すように、第1〜第3金属板22〜24を接合する。なお、チャンバ接合工程を省略し、後述する全体接合工程において第1〜第3金属板22〜24をチャンバ部分19に接合することもできる。
【0080】
弁体接合工程では、
図3及び
図10に示すように、第11〜第16金属板32〜37を拡散接合する。
【0081】
なお、中間接合工程、チャンバ接合工程、及び弁体接合工程の順番は上記の順番に限定されない。
【0082】
次いで、全体接合工程において、チャンバ部分19、中間部分20、及び弁体部分21を拡散接合する。
【0083】
具体的に、全体接合工程では、
図2、
図3及び
図7に示すように、弁座38と第11金属板(間隙用金属板)32の貫通孔(間隙用孔)32bとが積層方向に重なり、かつ、第12金属板33と第10金属板(弁座用金属板)31との間に第11金属板32が挟まれた状態で拡散接合を行う。これにより、弁座38と弁側ダイヤフラム7との間に間隙が形成される。
【0084】
また、全体接合工程では、平面視において第11金属板32の貫通孔(導出側規定孔)32b及び第13金属板34の貫通孔(導入側規定孔)34bが第3金属板24の貫通孔(ポンプ室用孔)24aの内側に配置された状態で拡散接合を行う。これにより、平面視において弁側ダイヤフラム7がポンプ側ダイヤフラム9の内側に配置されて、ポンプユニット1を積層方向と直交する方向にコンパクトに形成することができる。
【0085】
さらに、全体接合工程では、平面視で第11金属板32の貫通孔(通路形成用孔)32a、32cが第3金属板24の貫通孔24aの外側に配置された状態(
図2の状態)で、中間部分20と弁体部分21とが拡散接合される。これにより、全体接合工程時に金属板22〜37に加えられる圧力を、第3金属板24の貫通孔24aの外側の部分を介して他の金属板へ伝えることができる。したがって、貫通孔32cの周囲の部分について、第11金属板32と第10金属板31とを拡散接合することができる。
【0086】
一方、本実施形態では、
図2に示すように、第1金属板32に形成された拡張部22bが平面視で貫通孔32aと重なる位置に設けられているため、この拡張部22b内の空間の存在によって全体接合工程時に金属板22〜37に加えられる圧力を貫通孔32aの周囲に有効に伝えることが難しい(
図2のクロスハッチングの部分に圧力が伝わる)。
【0087】
そこで、
図3、
図7及び
図9に示すように、全体接合工程では、第11金属板32の貫通孔32aの周縁部と、第10金属板31の貫通孔31aの周縁部とを密着させた状態で第10金属板31と第11金属板32とを拡散接合している。これにより、上述のように圧力を十分に伝えることが難しい形態においても、両周縁部の密着により貫通孔32aと貫通孔31aとの間からの流体の漏えいを抑制することができる。
【0088】
全体拡散接合を行った後、
図11に示すように、第2金属板23のポンプ室S1と反対側の面に絶縁層23aを介して被接続層23bを形成する層形成工程を行う。層形成工程では、第1金属板22の貫通孔22a内の範囲から拡張部22b内の範囲に亘って絶縁層23a及び被接続層23bを形成する。
【0089】
次いで、圧電素子4の第1接続部4aが被接続層23bに電気的に接続された状態で、圧電素子4を第2金属板23に取り付ける取付工程を行う。
【0090】
なお、
図7〜
図10では、1つのポンプユニット1を製造する方法について説明したが、次の方法を採用することにより、複数のポンプユニット1を効率よく製造することができる。
【0091】
具体的に、準備工程において、
図12に示すように金属板22〜37の各々が複数個連結された連結金属板39(
図12では第1金属板22が複数個連結された連結金属板39のみを示す)を準備する。
【0092】
次いで、接合工程では、連結金属板39同士を拡散接合する。これにより、吐出機構5と弁機構3との結合体が複数形成される。なお、接合工程は、上述した中間接合工程、チャンバ接合工程、及び弁体接合工程を含むことができる。
【0093】
そして、接合工程の後に、連結金属板39から前記結合体を切り分ける切り分け工程を行う。
【0094】
その後、取付工程において、圧電素子4が第2金属板23に取り付けられる。なお、取付工程は、切り分け工程の前に行ってもよい。
【0095】
これにより、接合工程を複数回行うことなく、複数のポンプユニット1を製造することができるため、ポンプユニット1の製造効率をより向上することができる。
【0096】
以上説明したように、吐出機構5及び弁機構3がそれぞれ複数の金属板22〜37を拡散接合することによって形成されているとともに、両機構3、5が拡散接合によって互いに固定されている。そのため、吐出機構5及び弁機構3のそれぞれを形成するための接着等の工程を省略することができるとともに、従来のように吐出機構と弁機構との間にガスケットを形成することが不要となる。
【0097】
また、第1実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0098】
導入側接続通路10内の圧力が弁側ダイヤフラム7の変形時の圧力よりも低いとき(つまり、導入側接続通路10内に異常な圧力が生じていないとき)に導出側接続通路11が開いているため、流体の吐出時における圧損を防止することにより安定した流体の吐出を実現することができる。
【0099】
平面視において弁側ダイヤフラム7がポンプ側ダイヤフラム9の内側に設けられているため、積層方向と直交する方向においてポンプユニット1をコンパクトに構成することができ、当該ポンプユニット1のレイアウトの自由度を向上することができる。
【0100】
図7に示すように、複数の金属板22〜37のうち第11金属板(近接金属板)32と第2金属板(ポンプ室用金属板)23との間で積層される中間部分20を、それ以外のものから分離して拡散接合することにより、中間部分20において内側配置部を確実に形成することができる。
【0101】
さらに、
図2に示すように、第11金属板32の貫通孔(通路形成用孔)32a、32cが平面視で第2金属板24の貫通孔(ポンプ室用孔)24aの外側に配置されているため、複数の金属板22〜37の全てを拡散接合することにより、貫通孔24aを有する第2金属板24が介在していても貫通孔32cの周囲の部分に圧力を加えることができる。
【0102】
したがって、導入側接続通路10及び導出側接続通路11が適切に形成されたポンプユニット1を提供することができる。
【0103】
図9及び
図10に示すように、第11金属板32の貫通孔(第1通路形成用孔)32aの周縁部と第10金属板(隣接金属板)31の貫通孔(連通孔)31aの周縁部とを密着させた状態で両金属板31、32が拡散接合されている。これにより、
図2に示すように、貫通孔32aと重なる位置に孔を有する他の金属板を用いた場合であっても、前記密着によって貫通孔31a、32aの接続部分からの流体の漏えいを抑制することができる。
【0104】
第2金属板23の絶縁層23aによってポンプ室S1内の流体に電流が流れるのを防止することができるため、流体に電流が流れることが規制されている用途(例えば、医療用の薬液注入ポンプ)にポンプユニット1を適用することができる。
【0105】
前記実施形態では、
図2に示すように、平面視において第11金属板32の貫通孔32aと重なる位置に第1金属板22の拡張部22bが形成されているが、拡張部22bの位置はこれに限定されない。
【0106】
拡張部22bは、
図13に示すように、貫通孔32aから外れた位置に形成することもできる。
【0107】
このようにすれば、
図13のクロスハッチングで示すように、全体接合工程時において、貫通孔32aの周囲の部分についても第10金属板31と第11金属板32とを確実に接合することができる。
【0108】
また、ポンプ室S1内の流体に電源からの電流が流れることが許容される場合、
図14に示すように、拡張部22bを省略することもできる。
【0109】
この場合、圧電素子4の第1接続部4a(
図11参照)を第2金属板23に直接電気的に接続することができる。この状態で、電源の一方の極を吐出機構5又は弁機構3の一部に電気的に接続するとともに電源の他方の極を圧電素子4の第2接続部4bに電気的に接続することによりポンプユニット1を駆動することができる。
【0110】
<第2実施形態>
まず、上述した第1実施形態に係るポンプユニット1の流量精度について説明する。
【0111】
図15は、第1実施形態のポンプユニット1の流量と圧力(背圧)との関係を示すグラフである。なお、圧力(背圧)は、導出弁17の下流側の圧力である。
図15中、丸印で示されたものは100Hzの矩形波(最高電圧+240V及び最低電圧−60V)を用いたときの特性であり、
図15中、上の破線は同条件におけるポンプユニットの構造上理想的な特性を示すものである。また、
図15中、三角印で示されたものは50Hzの矩形波(最高電圧+240V及び最低電圧−60V)を用いたときの特性であり、
図15中、下の破線は同条件におけるポンプユニット1の構造上理想的な特性を示すものである。
【0112】
図15に示されるように、第1実施形態のポンプユニット1の流量特性は、中間的な圧力領域(約5〜約100Kpa)において理想の特性を下回り、リニアな特性となっていない。
【0114】
第1実施形態では、平面視においてポンプ室S1の中心(中心軸J上)に導出弁17が配置され(
図3参照)、平面視においてポンプ室S1の中心を通る直線について線対称の位置に4つの導入弁14が配置されている(
図9参照)。これにより、導出弁17の周囲の複数個所から当該導出弁17に対して均等に流体を流すことができるためポンプ室S1内の流体の澱みを低減することができる。
【0115】
その一方で、導入弁14(
図3参照)は、第5金属板26の剛性を利用して導入通路13を閉じるものであるため、導入弁14が閉状態にあっても導入通路を通じた微小のリークが生じるおそれがある。第1実施形態では、導入弁14を4つ設けているため、当該導入弁14を通じた流体の積算リーク量が増加し、流量精度が低下しているものと考えられる。
図15に示すように、圧力(背圧)が高い状況(導入弁14が閉じ方向に付勢される状況)において流量特性が理想の特性に近づいているのは、高圧時に導入弁14の閉状態が安定することが理由であると考えられる。
【0116】
詳しくは後述するが、第2実施形態に係るポンプユニットでは、導入弁50(
図18参照)を2個に減らすことにより、ポンプ室S1内の流体の澱みを抑制しながら圧力(背圧)に対する流量特性の改善も図られている。
【0117】
また、
図16は、第1実施形態のポンプユニットの流量と周波数との関係を示すグラフである。
図15中、実線は、第1実施形態のポンプユニット1について矩形波(最高電圧+240V及び最低電圧−60V)を用いたときの流量を示す。
図15中、破線は同条件におけるポンプユニットの構造上理想的な特性を示すものである。
【0118】
図16に示されるように、第1実施形態のポンプユニット1の流量特性は、約90〜150Hzの領域で理想の特性を下回り、リニアな特性となっていない。
【0119】
その理由は、
図22に示すように第1実施形態における導入弁14の全長L1が長いこと、つまり、ばね定数が小さいことにあると考えられる。具体的に、導入弁14は、導入通路13を閉じるための閉鎖部14aと、導入通路13を閉じた状態と導入通路13を開いた状態との間で閉鎖部14aが変位可能となるように当該閉鎖部14aを支持するアーム14bと、を有する。そして、導入部14は、閉鎖部14aと比較してアーム14bが長く形成されているため、当該アーム14bのばね定数が比較的に小さい。したがって、ポンプ側ダイヤフラム9の周波数が比較的に高くなったときに当該ポンプ側ダイヤフラム9に対して閉鎖部14aを追従させることが困難になっている。
【0120】
詳しくは後述するが、第2実施形態に係るポンプユニットでは、ばね定数を大きくすること、
図23に示す例では導入弁50の全長L2を導入弁14の全長L1よりも短くすることにより、上述した周波数に対する流量特性の改善が図られている。
【0121】
図17は、第1実施形態に係るポンプユニット1を用いて液体を吐出している期間中に故意にエアをポンプユニット1内に吸引させたときの流量の変動を示すものである。
図17において、期間t1の始期、及び、期間t2の始期にエアが吸引されている。エアが吸引されると、ポンプ側ダイヤフラム9の振動に伴いエアが膨張及び収縮するためポンプ室S1の容積の変動に見合った液体の流量を吐出することができない。この現象が期間t1及び期間t2の流量低下として現れている。期間t1、t3の終期においては、流量が復帰していることからエアがポンプユニット1から導出されたものと考えられる。ここで、期間t1は、約1時間であり、期間t3は、約3時間である。
【0122】
このようにエアが抜けるのに長時間が必要となる理由は、
図24に示すように、貫通孔37a(導入部10a:
図3参照)から貫通孔35a(第1延出部10c:
図3参照)に至る流体の通路の断面積が急激に変化することによる、当該通路内における流速分布の不均一化にあると考えられる。
【0123】
具体的に、第1実施形態では、貫通孔37aの上部には、弁側ダイヤフラム7の可動域を規定する、貫通孔37aよりも大きな貫通孔35bが存在する。そのため、貫通孔35b内においては、貫通孔37aと貫通孔35aとを結ぶ直線に沿った流体の流速が最も高くなり、これらの直線間におけるハッチングで示された領域R1における流速が低くなる。したがって、この領域R1においてエアが滞留するものと考えられる。
【0124】
詳しくは後述するが、第2実施形態に係るポンプユニットでは、
図25に示すように、弁側ダイヤフラム47の可動域を規定する貫通孔73bに流体を導入するための貫通孔76bと貫通孔73bから流体を導出するための貫通孔73a、74aとの間における流体の断面積の変化を低減することにより、流量特性の改善が図られている。
【0125】
以下、
図18〜
図20を参照して、第2実施形態に係るポンプユニットについて説明する。なお、第2実施形態に係るポンプユニットにおける圧電素子4及びチャンバ部19は、第1実施形態と同様の構成を有するため、これらを
図21のみに示し、その説明を省略する。
【0126】
図18は、第2実施形態に係るポンプユニットの中間部分60を分解して示す斜視図である。
図19は、第2実施形態に係るポンプユニットの弁体部分61を分解して示す斜視図である。
図20は、
図18のXX線断面図及び
図19のXX線断面図を組み合わせて示すものである。
図21は、
図18のXXI線断面図である。
【0127】
まず、
図20及び
図21を参照して、ポンプユニットは、流体を吐出するポンプ42と、ポンプ42の上流側の流体の圧力が増加したときにポンプ42を通じた流体の導出を規制する弁機構43と、を備えている。
【0128】
ポンプ42は、圧電素子4と、圧電素子4の作動に応じて流体を吐出する吐出機構45と、を有する。
【0129】
吐出機構45は、ポンプ本体48と、ポンプ本体48との間でポンプ室S1を区画するポンプ側ダイヤフラム49と、ポンプ室S1に接続されるようにポンプ本体48に形成された2つの導入通路56に設けられた2つの導入弁50と、ポンプ室S1に接続されるようにポンプ本体48に形成された導出通路58に設けられた導出弁51と、を備えている。
【0130】
ポンプ室S1は、平面視で略円形の空間(図示省略)である。導出通路58は、平面視でポンプ室S1の中心(中心軸J上)に接続された通路である。2つの導入通路56は、ポンプ室S1の中心軸Jを通る直線について線対称となる位置(中心軸Jを中心として180°異なる位置)に設けられている。
【0131】
これに伴い、導出弁51は、平面視でポンプ室S1の中心に配置されているとともに、導入弁50は、平面視でポンプ室S1の中心軸Jを通る直線について線対称となる位置に2つのみ設けられている。
【0132】
これにより、導出弁51の周囲の複数個所から当該導出弁51に対して均等に流体を流すことができるためポンプ室S1内の流体の澱みを低減しつつ、導入弁50の数を2つに抑えることにより閉状態にある導入弁50を通じた積算リーク量を最小限に抑えることができる。
【0133】
また、導入通路56及び導出通路58は、中心軸J(後述する金属板65〜76の積層方向)に沿ってポンプユニットを見る平面視においてポンプ室S1の内側に配置されている。
【0134】
ポンプ本体48は、導入弁50との間で導入通路56を閉じるための導入弁座57と、導出弁51との間で導出通路58を閉じるための導出弁座59と、を有する。
【0135】
導入弁50は、当該導入弁50の上流側の圧力がポンプ室S1内の圧力以下であるときに導入弁座57に密着して導入通路56を閉じる。一方、導入弁50は、当該導入弁50の上流側の圧力がポンプ室S1内の圧力よりも高いときに弾性変形することにより導入弁座57から離れて導入通路56を開く。
【0136】
導出弁51は、ポンプ室S1内の圧力が導出弁51の下流側の圧力以下であるときに導出弁座59に密着して導出通路58を閉じる。一方、導出弁51は、ポンプ室S1内の圧力が導出弁51の下流側の圧力よりも高いときに弾性変形することにより導出弁座59から離れて導出通路58を開く。
【0137】
また、導出弁51は、
図23に示すように、導入通路56を閉じるための(導入弁座57に密着するための)閉鎖部50aと、導入通路56を閉じた状態と導入通路56を開いた状態との間で閉鎖部50aが変位可能となるように当該閉鎖部50aを支持するアーム50bと、を有する。導出弁51におけるアーム50bの基端部から閉鎖部50aの先端部までの長さL2は、
図22に示すように第1実施形態の導出弁14におけるアーム14bの基端部から閉鎖部14aの先端部までの長さL1よりも短い。ここで、第1実施形態の閉鎖部14aと第2実施形態の閉鎖部50aとは略同じ大きさを有するため、長さL1と長さL2との差は、アーム14bの長さとアーム50bの長さとの差にほぼ一致する。
【0138】
これにより、第1実施形態の導出弁14と比較して導出弁51(特に、アーム50b)のばね定数を高めることができるため、ポンプ側ダイヤフラム49の周波数が増加したときにおける閉鎖部50aの追従性を向上することができる。
【0139】
弁機構43は、ポンプ42の導入通路56に接続された導入側接続通路52とポンプ42の導出通路58に接続された導出側接続通路53とを有する弁機構本体46と、導入側接続通路52と導出側接続通路53とを仕切るように弁機構本体46に設けられた弁側ダイヤフラム47と、を備えている。
【0140】
弁側ダイヤフラム47は、ポンプ側ダイヤフラム49と同心に配置され、さらに平面視においてポンプ室S1の内側に配置されている(図示省略)。また、弁側ダイヤフラム47は、ポンプ側ダイヤフラム49と平行に配置されている。そして、ポンプ42の導入通路56及び導出通路58は、それぞれ両ダイヤフラム47、49の間に設けられている。
【0141】
導入側接続通路52は、ポンプ42の導入通路56から弁側ダイヤフラム47を避けて当該弁側ダイヤフラム47のポンプ42と反対側の位置まで延び、弁機構本体46のポンプ42と反対側の端面で開口している。
【0142】
具体的に、導入側接続通路52は、ポンプ本体48の2つの導入通路56の双方に接続されているとともに両通路56を合流させる被接続部52d(
図18の第8及び第9金属板69、70を参照)と、被接続部52dの中心軸Jから最も遠い端部(
図18の金属板70の角部)から中心軸Jと平行に延びる第1延出部52cと、第1延出部52cから中心軸Jと直交する方向に延びる第2延出部52bと、第2延出部52の端部から中心軸Jと平行に延びる導入部52aと、を備えている。第1延出部52c及び導入部52aは、
図19に示す金属板73〜76の対角線上で反対側の位置にそれぞれ配置されている。そして、
図20に示すように導入部52aから導入された流体は、第2延出部52bを通じて中心軸Jと直交する方向に流れ、第1延出部52cを通じて中心軸Jと平行する方向に流れ、被接続部52d(
図18参照)によって2つの流れに分岐されてポンプ42の2つの導入通路56に導かれる。
【0143】
ここで、導入側接続通路52のうち被接続部52dの一部、第1延出部52cの全体、第2延出部52bの一部、及び導入部52aの全体は、平面視においてポンプ室S1の外側に配置され、それ以外の部分は、平面視においてポンプ室S1の内側に配置されている。
【0144】
一方、導出側接続通路53は、
図20に示すようにポンプ42の導出通路56から弁側ダイヤフラム47に向かって延び、弁側ダイヤフラム7の表面に沿って中心軸Jから離れる方向に延び、中心軸Jと平行にポンプ側ダイヤフラム49側に戻り、中心軸Jと直交する方向に延び、弁側ダイヤフラム47の側方を通って弁機構本体46のポンプ42と反対側の端面で開口している。
【0145】
具体的に、導出側接続通路53は、ポンプ本体48の導出通路58に接続された被接続部53aと、被接続部53aの弁側ダイヤフラム47側の端部から中心軸Jから離れる方向に延びる第1延出部53bと、第1延出部53bの中心軸Jから遠い側の端部から中心軸Jと平行する方向においてポンプ側ダイヤフラム49に向けて延びる第2延出部53cと、第2延出部53cのポンプ側ダイヤフラム49側の端部から中心軸Jから直交する方向に延びる第3延出部53d(
図18の金属板70を参照)と、第3延出部53dの中心軸Jから遠い側の端部から中心軸Jと平行して延びる導出部53e(
図18の金属板71及び72参照)と、を備えている。ポンプ室S1から被接続部53aに導出された流体は、延出部53b〜53dを通じて弁側ダイヤフラム47の側方に導かれて導出部53eを通じて導出される。なお、被接続部53a内には、導出弁51の開放時に当該導出弁51を予め設定された開放位置に保持するストッパー54が設けられている。
【0146】
ここで、導出側接続通路53のうち第3延出部53dの一部及び導出部53eの全体は、平面視においてポンプ室S1の外側に配置され、それ以外の部分は、平面視においてポンプ室S1の内側に配置されている。
【0147】
弁側ダイヤフラム47は、導入側接続通路52の一部(導入部52a及び第2延出部52bの一部)を区画する壁面として機能するとともに、導出側接続通路53の一部(被接続部53a及び第1延出部53bの一部)を区画する壁面として機能する。
【0148】
また、弁機構本体46は、弁側ダイヤフラム47が接触することにより導出側接続通路53を通じた流体の流れを規制する弁座55を備えている。
【0149】
弁側ダイヤフラム47は、弁座55と間隔を空けて設けられている。また、弁側ダイヤフラム47は、導入側接続通路52内の圧力が導出側接続通路53内の圧力よりも高い、予め設定された基準圧以上のときに弾性変形して弁座55に接触することができる弾性を有する。
【0150】
したがって、導入側接続通路52内の圧力が前記基準圧よりも低いときに導出側接続通路52を通じた流体の流れが許容される一方、導入側接続通路52内の圧力が前記基準圧以上のときに導出側接続通路52を通じた流体の流れが規制される。
【0151】
以下、
図20及び
図21を参照して、ポンプユニットの動作を説明する。
【0152】
圧電素子に交流電力が供給されると、圧電素子の作動に伴いポンプ側ダイヤフラム49が振動する。
【0153】
ポンプ室S1が拡張する方向にポンプ側ダイヤフラム49が変位すると、導入弁50が開放する一方、導出弁51が閉鎖する。これにより、ポンプ室S1内に流体が導入(吸入)される。
【0154】
一方、ポンプ室S1が縮小する方向にポンプ側ダイヤフラム49が変位すると、導入弁50が閉鎖する一方、導出弁51が開放する。これにより、ポンプ室S1から流体が導出される。
【0155】
導入側接続通路52内の圧力が前記基準圧以上になると、弁側ダイヤフラム47が弾性変形して弁座55に密着することにより、導出側接続通路53を通じた流体の流れが規制される。
【0156】
図18及び
図19に示すように、ポンプユニットの吐出機構45及び弁機構43は、複数の金属板65〜76(
図8の金属板22〜24を含む)が中心軸Jと平行な積層方向に積層された状態で積層された状態で当該複数の金属板65〜76が拡散接合されることによってそれぞれ形成され、さらに、互いに拡散接合によって固定されている。
【0157】
具体的に、吐出機構45は、金属板22〜24(
図8参照)及び金属板65〜68によって形成され、弁機構43は、金属板69〜76によって形成されている。なお、金属板22〜24は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0158】
図18及び
図21を参照して、第4金属板65は、導入通路56の一部を形成する2つの貫通孔65aと、導出通路58の一部を形成する貫通孔65bと、を有する。貫通孔65aは、導入弁51がポンプ室側へ弾性変形するためのスペースを形成する。
【0159】
第5金属板66は、上述した2つの導入弁50を含むとともに、導出通路58の一部を形成する貫通孔66aを有する。
【0160】
第6金属板67は、導出通路58の一部を形成する貫通孔67aを有する。また、第6金属板67の一方の面には、上述した2つの導入弁座57が形成されているとともに、第6金属板67の他方の面には、導出弁座59(
図18では省略)が形成されている。また、第6金属板67の導入弁座57内には導入通路56の一部を形成する貫通孔(符号省略)が設けられている。
【0161】
第7金属板68は、導入通路56の一部を形成する2つの貫通孔68aと、導出通路58の一部を形成する貫通孔68bと、を有する。第7金属板68の貫通孔68b内には、上述した導出弁51が設けられている。導出弁51は、導出通路58を閉じるための閉鎖部(符号省略)と、閉鎖部と第7金属板68のうちの閉鎖部以外の部分とを接続するアーム(符号省略)と、を有している(
図28に示す導入弁50Aと略同一の形状を有する)。
【0162】
図18及び
図20を参照して、第8金属板69は、導入側接続通路52の被接続部52dの一部を形成する2つの貫通孔69aと、導出側接続通路53の被接続部53aの一部を形成する貫通孔69bと、を有する。
【0163】
第9金属板70は、導入側接続通路52の被接続部52dの一部を形成する貫通孔70aと、導出側接続通路53の被接続部53aの一部を形成する貫通孔70bと、導出側接続通路53の第3延出部53dを形成する貫通孔70cと、を有する。また、第9金属板70の貫通孔70b内には、ストッパー54の一部が設けられている。
【0164】
第10金属板71は、導入側接続通路52の第1延出部52cの一部を形成する貫通孔71aと、導出側接続通路53の被接続部53aの一部を形成する貫通孔71bと、導出側接続通路53の第2延出部53cの一部を構成する貫通孔71cと、導出側接続通路53の導出部53eの一部を形成する貫通孔71dと、を有する。また、第10金属板71の貫通孔71b内には、ストッパー54の一部が設けられている。
【0165】
第11金属板72は、導入側接続通路52の第2延出部52cの一部を形成する貫通孔72aと、導出側接続通路53の被接続部53aの一部を形成する貫通孔72bと、導出側接続通路53の第2延出部53cの一部を形成する貫通孔72cと、導出側接続通路53の導出部53eの一部を形成する貫通孔72dと、を有する。また、第1金属板72の弁側ダイヤフラム47側の面には上述した弁座55(
図18では省略)が設けられている。
【0166】
図19及び
図20を参照して、第12金属板73は、導入側接続通路52の第1延出部52cの一部を形成する貫通孔73aと、導出側接続通路53の第1延出部53bを形成する貫通孔73bと、導出側接続通路53の導出部53eの一部を形成する貫通孔73cと、を有する。また、第12金属板73は、第13金属板74における弁側ダイヤフラム47の導出側接続通路53側への可動域を規定する貫通孔73bを有する導出側規定用金属板に相当する。さらに、第12金属板73は、当該第12金属板73を積層方向に貫通する貫通孔(間隙用孔)32bを有し、弁側ダイヤフラム47と弁座55との間に間隙を形成するための間隙用金属板に相当する。なお、貫通孔73a、73cは、平面視でポンプ室S1の外側に配置されている(図示省略)。
【0167】
第13金属板(弁側ダイヤフラム用金属板)74は、弁側ダイヤフラム47を含む。また、第13金属板74は、導入側接続通路52の第1延出部52cの一部を形成する貫通孔74aと、導出側接続通路53の導出部53eの一部を形成する貫通孔74bと、を有する。
【0168】
第14金属板75は、導入側接続通路52の第2延出部52bの一部を形成する貫通孔75aと、導出側接続通路53の導出部53eの一部を形成する貫通孔75bと、を有する。貫通孔75aは、第13金属板74における弁側ダイヤフラム47の導入側接続通路52側への可動域を規定する導入側規定孔に相当する。
【0169】
第15金属板76は、導入側接続通路52の第2延出部52bの一部を形成する凹部76aと、凹部76a内に設けられて導入側接続通路52の導入部52aを形成する貫通孔76bと、凹部76aの外側に設けられて導出側接続通路53の導出部53eの一部を形成する貫通孔76cと、を有する。また、第15金属板76の凹部76aの底面には、弁側ダイヤフラム47側に突出する上述の突起部52eが設けられている。
【0170】
図19、
図20及び
図25を参照して、第12〜第15金属板73〜76により形成される導入側接続通路52の導入部52a、第2延出部52b、及び第1延出部52cについて説明する。
【0171】
第14金属板75及び第15金属板76は、第13金属板74(弁側ダイヤフラム用金属板)に接合されて弁側ダイヤフラム47の可動域を規定するための規定部77a(
図25参照)を含む規定凹部77(貫通孔75a及び凹部76aにより形成される凹部)が形成された凹金属板に相当する。なお、本実施形態では、凹金属板が2枚の金属板75、76により構成される例について説明しているが、1枚の金属板によって規定凹部77が形成された凹金属板を構成することもできる。
【0172】
ここで、規定部77aは、規定凹部77のうち平面視において第12金属板73の貫通孔73bに重なる部分である。
【0173】
また、規定凹部77に接続される第15金属板76の貫通孔76b(第1接続孔に相当)及び第13金属板74の貫通孔74a(第2接続孔に相当)は、平面視で規定部77aの外側で規定凹部77に接続されているとともに平面視において規定部77aよりも小さい。
【0174】
また、規定凹部77は、平面視において規定部77aから貫通孔76b、74aまでそれぞれ延びるとともに貫通孔76b、74aに向けて先細りとなる形状を有する一対の延出部77bを有する。
【0175】
このように、一対の延出部77bと規定部77aとを含む凹金属板の規定凹部77は平面視において貫通孔76bから貫通孔74aまでの間で断面積が変化する。具体的に、平面視において貫通孔76bから規定部77aに向けて規定凹部77の断面積が大きくなり、規定部77aから貫通孔74aに向けて規定凹部77の断面積が小さくなる。
【0176】
ここで、平面視において貫通孔76bと貫通孔74aとを結ぶ線上でかつ規定部77aに重なる位置で規定凹部77の底面から弁側ダイヤフラム47側に突出する突起部52eが凹金属板に設けられている。これにより、上記のように凹金属板に形成された規定凹部77内で流路断面積が最も大きくなる部分に突出部が設けられていることにより当該部分の断面積を低減して、当該規定凹部77内の流速分布のばらつきを抑制することができる。
【0177】
具体的に、突起部52eが設けられていない場合、貫通孔76bと貫通孔74aとを結ぶ直線上の流体の流速が最も高くなり、その一方で、規定部77aにおいて前記直線から離れた
図25の領域R2に示す領域において流体の流速が低くなる。この状況においては、領域R2にエアが滞留するおそれがあるが、突起部52eが設けられていることにより、前記直線上の流体の流速が低下することに伴い、前記領域R2における流体の流速が増加するため、領域R2におけるエアの滞留を防止することができる。
【0178】
なお、
図18及び
図19では、第4〜第15金属板65〜76をそれぞれ1枚ずつ示しているが、表面の形状と裏面の形状とが同一である金属板については、当該金属板を複数枚重ねて用いることもできる。一方、予め大きな厚みを有する金属板を用いることも可能であるが、この場合金属板の表面粗さが大きくなり、これは拡散接合の際に不利となる。したがって、上述のように、薄い金属板を複数枚用いることにより金属板の厚みを増やすことが好ましい。
【0179】
上述のように、平面視において、弁側ダイヤフラム47は、ポンプ側ダイヤフラム49の内側に設けられている。つまり、第12金属板73の貫通孔(導出側規定孔:
図19参照)73bの全体及び第14金属板75の貫通孔(導入側規定孔:
図19参照)75bの一部は、平面視において第3金属板24の貫通孔(ポンプ室用孔:
図8参照)24aの内側に配置されている。そのため、導入側接続通路52及び導出側接続通路53は、両ダイヤフラム47、49の間で、平面視においてポンプ側ダイヤフラム49の内側に配置される部分を有する。
【0180】
そこで、第2実施形態に係るポンプユニットは、第1実施形態と同様、第1〜第3金属板22〜24を含むチャンバ部分19と、第12〜第15金属板73〜76までを含む弁体部分61と、チャンバ部分19と弁体部分21との間の中間部分60と、に分けて製造される。
【0181】
具体的に、準備工程では、弁側ダイヤフラム47の可動域を規定する第12金属板73及び第14金属板75のうちポンプ室S1(第3金属板24)の近くに配置される近接金属板として、
図19に示すように、導入側接続通路52及び導出側接続通路53を形成するために貫通孔73b以外に複数の貫通孔(通路形成用孔)52c、53eのみを有する第12金属板73を準備する。
【0182】
また、準備工程では、
図18に示すように、複数の貫通孔52c、53eのうちの貫通孔(第1通路形成用孔)52c、53eの周縁部に密着可能な周縁部を有する貫通孔(連通孔)72a、72dを備えた第11金属板(隣接金属板)72を準備する。
【0183】
次に、金属板65〜76を拡散接合する(接合工程)。
【0184】
具体的に、接合工程は、金属板65〜76のうち中間部分60に含まれるもの(
図18参照)を拡散接合する中間接合工程(第1接合工程)と、チャンバ部分19に含まれるもの(
図8参照)を拡散接合するチャンバ接合工程と、弁体部分61に含まれるもの(
図19参照)を拡散接合する弁体接合工程と、チャンバ部分19、弁体部分61、及び中間部分60を接合する全体接合工程(第2接合工程)と、を含む。
【0185】
中間接合工程では、
図18に示すように、チャンバ部分19及び弁体部分61とは別に中間部分60を拡散接合する。そのため、中間部分60に形成される両接続通路52、53のうち、平面視においてポンプ室S1及び貫通孔73b、75a、76bと重なる部分を拡散接合によって確実に形成することができる。
【0186】
チャンバ接合工程では、
図8及び
図21に示すように、第1〜第3金属板22〜24を接合する。なお、チャンバ接合工程を省略し、後述する全体接合工程において第1〜第3金属板22〜24をチャンバ部分19に接合することもできる。
【0187】
弁体接合工程では、
図19及び
図20に示すように、第12〜第15金属板73〜76を拡散接合する。
【0188】
なお、中間接合工程、チャンバ接合工程、及び弁体接合工程の順番は上記の順番に限定されない。
【0189】
次いで、全体接合工程において、チャンバ部分19、中間部分60、及び弁体部分61を拡散接合する。
【0190】
具体的に、全体接合工程では、
図18〜
図20に示すように、弁座55と第12金属板(間隙用金属板)73の貫通孔(間隙用孔)73bとが積層方向に重なり、かつ、第13金属板74と第11金属板(弁座用金属板)72との間に第12金属板73が挟まれた状態で拡散接合を行う。これにより、弁座55と弁側ダイヤフラム47との間に間隙が形成される。
【0191】
また、全体接合工程では、平面視において第12金属板73の貫通孔(導出側規定孔)73b及び第14金属板75の貫通孔(導入側規定孔)75aの規定部77a(
図25参照)が第3金属板24の貫通孔(ポンプ室用孔)24aの内側に配置された状態で拡散接合を行う。これにより、平面視において弁側ダイヤフラム47がポンプ側ダイヤフラム49の内側に配置されて、ポンプユニット1を積層方向と直交する方向にコンパクトに形成することができる。
【0192】
さらに、全体接合工程では、平面視で第12金属板73の貫通孔(通路形成用孔)73a、73cが第3金属板24の貫通孔24aの外側に配置された状態で、中間部分20と弁体部分21とが拡散接合される。これにより、全体接合工程時に金属板22〜24及び65〜76に加えられる圧力を、第3金属板24の貫通孔24aの外側の部分を介して他の金属板へ伝えることができる。したがって、貫通孔73a、73cの周囲の部分について、第12金属板73と第111金属板72とを拡散接合することができる。
【0193】
一方、第1実施形態と同様に、第2実施形態では、第1金属板32に形成された拡張部22bが平面視で貫通孔73a、73cと重なる位置に設けられているため、この拡張部22b内の空間の存在によって全体接合工程時に金属板22〜24及び65〜76に加えられる圧力を貫通孔73a、73cの周囲に有効に伝えることが難しい。
【0194】
そこで、第1実施形態と同様に、全体接合工程では、第12金属板73の貫通孔73a、73cの周縁部と、第11金属板72の貫通孔72a、72dの周縁部とを密着させた状態で第11金属板72と第12金属板73とを拡散接合している。これにより、上述のように圧力を十分に伝えることが難しい形態においても、両周縁部の密着により貫通孔72a、72dと貫通孔73a、73cとの間からの流体の漏えいを抑制することができる。
【0195】
全体拡散接合を行った後、第1実施形態と同様に、
図11に示すように、第2金属板23のポンプ室S1と反対側の面に絶縁層23aを介して被接続層23bを形成する層形成工程を行う。層形成工程では、第1金属板22の貫通孔22a内の範囲から拡張部22b内の範囲に亘って絶縁層23a及び被接続層23bを形成する。
【0196】
次いで、圧電素子4の第1接続部4aが被接続層23bに電気的に接続された状態で、圧電素子4を第2金属板23に取り付ける取付工程を行う。
【0197】
なお、第1実施形態の
図12に示される連結金属板39に相当する金属板を用いた方法を採用することにより、第2実施形態のポンプユニットを複数個同時に製造することもできる。
【0198】
以上説明したように、第2実施形態によれば、第1実施形態の効果に加えて次の効果を奏することできる。
【0199】
図25に示すように、第14金属板75及び第15金属板76(凹金属板)の規定凹部77は、平面視において貫通孔76bから74aまでの間で断面積が変化する。
【0200】
ここで、第2実施形態においては、平面視において貫通孔76bと貫通孔74aとを結ぶ直線上でかつ規定部77aに重なる位置で規定凹部77の底面から弁側ダイヤフラム47側に突出する突起部52eが設けられている。これにより、規定凹部77内で流路断面積が最も大きくなる部分に突起部52eが設けられていることにより当該部分の断面積を低減して、規定凹部77内の流速分布のばらつきを抑制することができる。
【0201】
したがって、
図17に示すように、第1実施形態においてはエアを導出するのに1〜3時間(期間t1又はt2)要するのに対し、第2実施形態においては数秒〜数十秒の期間でエアを導出することができる。その結果、例えば流体として液体を流している状況においてエアの滞留を抑制して図流量精度の低下を抑制することができる。
【0202】
また、第2実施形態では、
図18及び
図21に示すように、平面視においてポンプ室S1の中心に導出弁51が設けられているとともに、2つの導入弁50のみが平面視において中心を通る直線について点対称となる位置に設けられている。
【0203】
これにより、導出弁51の周囲の2カ所から当該導出弁51に対して均等に流体を流すことができるためポンプ室S1内の流体の澱みを低減することができる。
【0204】
さらに、導入弁50の数を2個に制限することにより、第1実施形態のように4個の導入弁14を設けることにより当該導入弁14のリーク量が積算されることによる圧力(背圧)に対する流量精度の悪化(
図15参照)を改善することができる。
【0205】
具体的に、第2実施形態によれば、
図26に示すように、圧力(背圧)に対して流量がリニアに変化する特性を得ることができる。なお、
図26の実線は、100Hzの周波数を用いる場合であり、
図26の破線は、150Hzの周波数を用いる場合であり、
図26の一点鎖線は、200Hzの周波数を用いる場合である。
【0206】
また、第2実施形態では、
図22に示す第1実施形態の導入弁14の長さL1よりも短い長さL2を有する導入弁50が採用されている。具体的に、導入弁50のアーム長が導入弁14のアーム長よりも短く設定されている。
【0207】
第1実施形態の導入弁14ではばね定数が小さいため、ポンプ側ダイヤフラム9が比較的高い周波数で作動したときにポンプ室S1の容積変化に応じて導入弁14を追従させることができず、これにより周波数に対する流量性能が悪化すると考えられる(
図16参照)。
【0208】
これに対し、第2実施形態では第1実施形態と比較して導入弁50のばね定数が高いため、ポンプ側ダイヤフラム49が比較的高い周波数で作動したときであってもポンプ室S1の容積変化に応じて導入弁を追従させることができる。
【0209】
その結果、
図27に示すように、第2実施形態のポンプユニットでは、周波数の増減に対してリニアに変化する流量特性を得ることができる。なお、
図27は、
図16における流量特性と同条件(矩形波[最高電圧+240V及び最低電圧−60V]を用いた条件)で得られたデータを示す。
【0210】
なお、第2実施形態において導入弁50の形状は
図23に示すものに限定されない。例えば、
図28〜
図30に示す導入弁50A〜50Cを用いた場合においても周波数の増減に対してリニアに変化する流量特性を得ることができる。
【0211】
具体的に、
図28に示す導入弁50Aは、導入通路56を閉じるための閉鎖部50cと、導入通路56を閉じた状態と導入通路56を開いた状態との間で閉鎖部50cが変位可能となるように当該閉鎖部50cを支持する3つのアーム50dと、を有する。
【0212】
閉鎖部50cは、アーム50dにより3カ所で支持されている。これにより、1本のアーム14bにより支持された閉鎖部14aを有する
図22に示す導入弁14と比較して、導入弁50Aにおいては、3本のアーム50dを統合したばね定数を高く設定することができる。
【0213】
また、アーム50dは、アーム50bと異なり複数個所で屈曲された形状を有している。さらに、アーム50dは、閉鎖部50cの周囲の3カ所に等間隔に配置されている。これらの屈曲形状及びアーム50dの配置により、ばね定数をより高めることができる。
【0214】
図29に示す導入弁50Bは、導入通路56を閉じるための閉鎖部50eと、導入通路56を閉じた状態と導入通路56を開いた状態との間で閉鎖部50cが変位可能となるように当該閉鎖部50cを支持するアーム50fと、を有する。なお、閉鎖部50eは、導入弁50、50Aの閉鎖部50a、50cと同等の面積を有する略円形の部分(図において二点鎖線で示す部分)を意味する。
【0215】
導入弁50Bの長さL4は、導入弁50の長さL2(
図23参照)よりも若干短く設定されている。
【0216】
図30に示す導入弁50Cは、
図29に示す導入弁50Bのアーム50fに対して貫通穴50gが追加されたものである。これにより、導入弁50Cのばね定数が僅かに低く調整されている。
【0217】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の態様を採用することもできる。
【0218】
前記実施形態では、近接金属板として、弁側ダイヤフラム7の導出側接続通路11側の可動域を規定する貫通孔32bを有する第11金属板32を例示しているが、弁側ダイヤフラム7の導入側接続通路10側の可動域を規定する貫通孔34bを有する第13金属板34を近接金属板として用いることもできる。この場合、弁側ダイヤフラム7に対する導入側接続通路10及び導出側接続通路11の位置関係が逆になる。
【0219】
前記実施形態では、
図11に示されるように、第2金属板23のポンプ室S1と反対側の面に絶縁層23aを介して被接続層23bを形成しているが、被接続層23bがポンプユニットに設けられることに限定されない。例えば、圧電素子4の第1接続部4aに電気的に接続されているとともに当該第1接続部4aから圧電素子4の第2接続部4b側の端面まで延びる被接続層が圧電素子4に予め設けられていてもよい。この場合、ポンプユニットに被接続層23bを設ける工程を省略することができる。
【0220】
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
【0221】
上記課題を解決するために、本発明は、ポンプユニットであって、圧電素子と前記圧電素子の作動に応じて流体を吐出する吐出機構とを有するポンプと、前記ポンプに取り付けられた弁機構と、を備え、前記吐出機構は、ポンプ本体と、前記ポンプ本体との間でポンプ室を区画するポンプ側ダイヤフラムと、前記ポンプ室に接続されるように前記ポンプ本体に形成された導入通路に設けられた少なくとも1つの導入弁と、前記ポンプ室に接続されるように前記ポンプ本体に形成された導出通路に設けられた導出弁と、を有し、前記弁機構は、前記導入通路に接続された導入側接続通路と前記導出通路に接続された導出側接続通路とを有する弁機構本体と、前記導入側接続通路と前記導出側接続通路とを仕切るように前記弁機構本体に設けられた弁側ダイヤフラムと、を有し、前記導入弁は、当該導入弁の上流側の圧力が前記ポンプ室内の圧力よりも高いときに開き、前記導出弁は、前記ポンプ室内の圧力が前記導出弁の下流側の圧力よりも高いときに開き、前記弁側ダイヤフラムは、前記導入側接続通路内の圧力が前記導出側接続通路内の圧力よりも高いときに前記導出側接続通路を通じた流体の流れを規制し、前記吐出機構及び前記弁機構は、予め設定された積層方向に積層された状態で互いに拡散接合された複数の金属板をそれぞれ有し、さらに、互いに拡散接合によって固定されている、ポンプユニットを提供する。
【0222】
本発明のポンプユニットによれば、吐出機構及び弁機構がそれぞれ複数の金属板を拡散接合することによって形成されているとともに、両機構が拡散接合によって互いに固定されている。そのため、吐出機構及び弁機構のそれぞれを形成するための接着等の工程を省略することができるとともに、従来のように吐出機構と弁機構との間にガスケットを形成することが不要となる。
【0223】
本発明のポンプユニットの製造方法は、前記吐出機構及び前記弁機構を形成するための複数の金属板を準備する準備工程と、前記複数の金属板を拡散接合する接合工程と、前記吐出機構に前記圧電素子と取り付ける取付工程と、を含む。
【0224】
このように、本発明によれば、ポンプユニットの部品点数を低減するとともに製造手順を簡素化することができる。
【0225】
ここで、導入側接続通路と導出側接続通路との間の圧力差が生じていない状態において弁側ダイヤフラムにより導出側接続通路が閉じられていてもよいが、この場合、弁側ダイヤフラムも金属により構成されているため、流体を吐出するための弁側ダイヤフラムの開放時に圧損が生じて安定した流体の吐出が困難となる。
【0226】
そこで、前記ポンプユニットにおいて、前記弁機構本体は、前記弁側ダイヤフラムが接触することにより前記導出側接続通路を通じた流体の流れを規制する弁座をさらに備え、前記弁側ダイヤフラムは、前記弁座と間隔を空けて設けられ、前記導入側接続通路内の圧力が前記導出側接続通路内の圧力よりも高いときに変形して前記弁座に接触することができる弾性を有することが好ましい。
【0227】
この態様によれば、導入側接続通路内の圧力が弁側ダイヤフラムの変形時の圧力よりも低いとき(つまり、導入側接続通路内に異常な圧力が生じていないとき)に導出側接続通路が開いているため、上述した圧損の発生を防止することにより安定した流体の吐出を実現することができる。
【0228】
上述したポンプユニットの製造方法として、前記弁機構本体は、前記弁側ダイヤフラムが接触することにより前記導出側接続通路を通じた流体の流れを規制する弁座をさらに備え、前記準備工程では、前記弁側ダイヤフラムを含む弁側ダイヤフラム用金属板と、前記弁座を有する弁座用金属板と、間隙用金属板であって当該間隙用金属板を前記積層方向に貫通する間隙用孔を有する間隙用金属板と、を準備し、前記接合工程では、前記弁座と前記間隙用孔とが前記積層方向に重なり、かつ、前記弁側ダイヤフラム用金属板と前記弁座用金属板との間に前記間隙用金属板が挟まれた状態で拡散接合を行い、前記弁側ダイヤフラムは、前記導入側接続通路内の圧力が前記導出側接続通路内の圧力よりも高いときに変形して前記弁座に接触することができる弾性を有する方法を採用することができる。
【0229】
この態様によれば、間隙用金属板が弁座用金属板と弁側ダイヤフラム用金属板との間に挟まれた状態で、これらの金属板を拡散接合することにより、上述のように圧損の発生を防止することができるポンプユニットを製造することができる。
【0230】
ここで、積層方向に沿ってポンプユニットを見る平面視において、弁側ダイヤフラムがポンプ側ダイヤフラムの外側に設けられていてもよいが、この場合には、ポンプユニットが積層方向と直交する方向に大きくなるため、当該ポンプユニットのレイアウトの自由度が低下する。
【0231】
そこで、前記ポンプユニットにおいて、前記複数の金属板は、前記ポンプ室を画定するポンプ室用孔が形成されたポンプ室用金属板と、前記弁側ダイヤフラムを含む弁側ダイヤフラム用金属板と、前記弁側ダイヤフラム用金属板に接合されて前記弁側ダイヤフラムの前記導入側接続通路側への可動域を規定する導入側規定孔が形成された導入側規定用金属板と、前記弁側ダイヤフラム用金属板に接合されて前記弁側ダイヤフラムの前記導出側接続通路側への可動域を規定する導出側規定孔が形成された導出側規定用金属板と、を含み、前記導入側規定孔及び前記導出側規定孔は、前記積層方向に沿って前記ポンプユニットを見る平面視において前記ポンプ室用孔の内側に配置されていることが好ましい。
【0232】
この態様によれば、平面視において弁側ダイヤフラムがポンプ側ダイヤフラムの内側に設けられているため、積層方向と直交する方向においてポンプユニットをコンパクトに構成することができ、当該ポンプユニットのレイアウトの自由度を向上することができる。
【0233】
上述したポンプユニットの製造方法として、前記準備工程では、前記ポンプ室を画定するポンプ室用孔が形成されたポンプ室用金属板と、前記弁側ダイヤフラムを含む弁側ダイヤフラム金属板と、前記弁側ダイヤフラムの前記導入側接続通路側への可動域を規定する導入側規定孔が形成された導入側規定用金属板と、前記弁側ダイヤフラムの前記導出側接続通路側への可動域を規定する導出側規定孔が形成された導出側規定用金属板と、を準備し、前記接合工程では、前記積層方向に沿って前記ポンプユニットを見る平面視において前記導入側規定孔及び前記導出側規定孔が前記ポンプ室用孔の内側に配置された状態で拡散接合を行う方法を採用することができる。
【0234】
この態様によれば、ポンプ室用孔に対して導入側規定孔及び導出側規定孔を位置決めした状態で拡散接合することにより上述のようにレイアウトの自由度を向上することができるポンプユニットを製造することができる。
【0235】
上述のように、平面視において弁側ダイヤフラムがポンプ側ダイヤフラムの内側に設けられている場合、弁側ダイヤフラムとポンプ側ダイヤフラムとの間には導入側接続通路(導入側規定孔)又は導出側接続通路(導出側規定孔)が配置される。つまり、導入側接続通路又は導出側接続通路は、弁側ダイヤフラムとポンプ側ダイヤフラムとの間で、平面視においてポンプ室の内側に配置される部分(以下、内側配置部という)を有する。
【0236】
ここで、拡散接合は、積層された複数の金属板に対して積層方向に圧力を加える必要があるが、金属板のポンプ室(空間)と重なる部分には有効に圧力を伝えることができず、ポンプ導入側接続通路又は導出側接続通路の内側配置部を拡散接合によって形成することが難しい。
【0237】
そこで、前記ポンプユニットにおいて、前記導入側規定用金属板及び前記導出側規定用金属板のうち前記ポンプ室用金属板に近い近接金属板は、前記導入側接続通路及び前記導出側接続通路を形成するために前記導入側規定孔又は前記導出側規定孔以外に複数の通路形成用孔のみを有し、前記複数の通路形成用孔は、前記平面視で前記ポンプ室用孔の外側に配置されていることが好ましい。
【0238】
この態様によれば、複数の金属板のうち近接金属板とポンプ室用金属板との間で積層されるもの(以下、中間部分という)を、それ以外のものから分離して拡散接合することにより、中間部分において内側配置部を確実に形成することができる。
【0239】
さらに、前記態様によれば、通路形成用孔が平面視でポンプ室用孔の外側に配置されているため、複数の金属板の全てを拡散接合することにより、ポンプ室用孔を有するポンプ室用金属板が介在していても近接金属板の通路形成用孔の周囲の部分に圧力を加えることができる。
【0240】
したがって、前記態様によれば、導入側接続通路及び導出側接続通路が適切に形成されたポンプユニットを提供することができる。
【0241】
具体的に、上述したポンプユニットの製造方法として、前記準備工程では、前記導入側規定用金属板及び前記導出側規定用金属板のうち前記ポンプ室用金属板の近くに配置される近接金属板として、前記導入側接続通路及び前記導出側接続通路を形成するために前記導入側規定孔又は前記導出側規定孔以外に複数の通路形成用孔のみを有する前記近接金属板を準備し、前記接合工程では、前記複数の金属板のうち前記近接金属板と前記ポンプ室用金属板との間で積層されるものを拡散接合する第1接合工程と、前記平面視で前記複数の通路形成用孔が前記ポンプ室用孔の外側に配置された状態で前記複数の金属板のうち前記第1接合工程で接合されたものと前記第1接合工程で接合されたもの以外のものとを拡散接合する第2接合工程と、を含む方法を採用することができる。
【0242】
この態様によれば、接合工程を第1及び第2接合工程に分けることにより、第1接合工程において内側配置部を形成することができるとともに、ポンプ室用孔を有するポンプ室用金属板が介在していても第2接合工程において通路形成用孔の周囲に圧力を加えることができる。
【0243】
ここで、上述のように平面視においてポンプ室用孔の外側に配置された通路形成用孔を有する近接金属板を用いた場合であっても、平面視において通路形成用孔と重なる位置に孔を有する他の金属板を用いざるを得ない場合もある。この場合には、上述した製造方法を採用しても、近接金属板の通路形成用孔の周囲の部分を拡散接合することが困難となる。
【0244】
そこで、前記ポンプユニットにおいて、前記複数の金属板は、前記近接金属板の前記ポンプ室用金属板に近い側の面に接合された隣接金属板を有し、前記隣接金属板は、前記複数の通路形成用孔のうちの第1通路形成用孔の周縁部に密着した周縁部を有する連通孔を備えていることが好ましい。
【0245】
この態様によれば、近接金属板の第1通路形成用孔の周縁部と隣接金属板の連通孔の周縁部とを密着させた状態で両金属板が拡散接合されていることにより、第1通路形成用孔と重なる位置に孔を有する他の金属板を用いた場合であっても、前記密着によって第1通路形成用孔と連通孔との接続部分からの流体の漏えいを抑制することができる。
【0246】
具体的に、上述したポンプユニットの製造方法として、前記準備工程では、前記複数の通路形成用孔のうちの第1通路形成用孔の周縁部に密着可能な周縁部を有する連通孔を備えた隣接金属板を準備し、前記第2接合工程では、前記第1通路形成用孔の周縁部と前記連通孔の周縁部とを密着させた状態で前記近接金属板の前記ポンプ室用金属板に近い側の面に対して前記隣接金属板を接合する方法を採用することができる。
【0247】
この態様によれば、第1通路形成用孔と重なる位置に孔を有する他の金属板を用いた場合であっても、第2接合工程において第1通路形成用孔の周縁部と連通孔の周縁部とを密着させた状態で近接金属板と隣接金属板とを拡散接合することにより、第1通路形成用孔と連通孔との接続部分からの漏えいを抑制することができる。
【0248】
ここで、弁側ダイヤフラムの可動域をこれに隣接する金属板に形成された凹部によって規定することができる。この場合、弁側ダイヤフラムの圧力に対する応答性を高めるために凹部(弁側ダイヤフラムの可動域の面積)をできるだけ大きく設定することが望まれる。その一方で、凹部に接続される接続通路は凹部よりも小さくしてポンプユニットの大きさを小さくする必要がある。このような要求に応じるためには、接続通路と凹部との間で通路の断面積が変化するため、凹部から接続通路に亘る通路内における流速の分布が一定とならない。これにより例えば流体として液体を流している状況において通路内にエアが滞留して、流量精度が低下するおそれがある。
【0249】
そこで、前記ポンプユニットであって、前記複数の金属板は、前記弁側ダイヤフラムを含む弁側ダイヤフラム用金属板と、前記弁側ダイヤフラム用金属板に接合されて前記弁側ダイヤフラムの可動域を規定するための規定部を含む規定凹部が形成された凹金属板と、を含み、前記弁側ダイヤフラム用金属板は、前記積層方向に沿って前記ポンプユニットを見る平面視において前記規定部の外側で前記規定凹部に接続されているとともに平面視において前記規定部よりも小さい第1接続孔を有し、前記凹金属板は、平面視において前記規定部の外側で前記規定凹部に接続されているとともに平面視において前記規定部よりも小さい第2接続孔を有し、前記規定凹部は、平面視において前記規定部から前記第1接続孔及び前記第2接続孔までそれぞれ延びるとともに前記第1接続孔及び前記第2接続孔に向けて先細りとなる形状を有する一対の延出部を有し、前記凹金属板は、平面視において前記第1接続孔と前記第2接続孔とを結ぶ線上でかつ前記規定部に重なる位置で前記規定凹部の底面から前記弁側ダイヤフラムに向けて突出する突起部を有することが好ましい。
【0250】
一対の延出部と規定部とを含む凹金属板の規定凹部は、平面視において第1接続孔から第2接続孔までの間で断面積が変化する。具体的に、平面視において第1接続孔から規定部に向けて規定凹部の断面積が大きくなり、規定部から第2接続孔に向けて規定凹部の断面積が小さくなる。
【0251】
ここで、前記態様においては、平面視において第1接続孔と第2接続孔とを結ぶ線上でかつ規定部に重なる位置で規定凹部の底面から弁側ダイヤフラム側に突出する突起部が凹金属板に設けられている。これにより、上記のように凹金属板に形成された規定凹部内で流路断面積が最も大きくなる部分に突起部が設けられることにより当該部分の断面積を低減して、当該規定凹部内の流速分布のばらつきを抑制することができる。
【0252】
したがって、規定凹部内における流速の分布をばらつきを抑えることができるため、例えば流体として液体を流している状況においてエアの滞留を抑制して流量精度の低下を抑制することができる。
【0253】
ここで、前記圧電素子は、電源を接続するための接続部を有する場合がある。
【0254】
この場合において、例えば、圧電素子の接続部をポンプ側ダイヤフラムに直接接触させるとともに、電源を複数の金属板に電気的に接続することができる。
【0255】
しかし、吐出機構及び弁機構は金属により形成されているため、上記のように電源をポンプユニットに接続すると、ポンプ室内の流体が導電性を有する場合に当該流体に電流が流れるため、当該流体の用途によっては問題が生じるおそれがある。
【0256】
そこで、前記ポンプユニットにおいて、前記複数の金属板は、前記ポンプ側ダイヤフラムを含むポンプ側ダイヤフラム用金属板を有し、前記圧電素子は、電源を接続するための接続部を有し、前記ポンプ側ダイヤフラム用金属板の前記ポンプ室と反対側の面には、絶縁層を介して前記接続部に電気的に接続された被接続層が形成されていることが好ましい。
【0257】
この態様によれば、絶縁層によってポンプ室内の流体に電流が流れるのを防止することができるため、流体に電流が流れることが規制されている用途(例えば、医療用の薬液注入ポンプ)にポンプユニットを適用することができる。
【0258】
具体的に、上述したポンプユニットの製造方法として、前記準備工程では、前記ポンプ側ダイヤフラムを含むポンプ側ダイヤフラム用金属板を準備し、前記ポンプユニットの製造方法は、前記ポンプ側ダイヤフラム用金属板の前記ポンプ室と反対側の面に絶縁層を介して被接続層を形成する層形成工程をさらに含み、前記取付工程では、前記圧電素子に設けられた接続部が前記被接続層に電気的に接続された状態で、前記圧電素子を前記ポンプ側ダイヤフラム用金属板に取り付ける、方法を採用することができる。
【0259】
この態様によれば、層形成工程において絶縁層及び被接続層を形成した後に、被接続層に接続部が電気的に接続された状態で圧電素子をポンプ側ダイヤフラム用金属板に取り付けることによりポンプ室内の流体に電流が流れるのを防止することができるポンプユニットを製造することができる。
【0260】
ここで、ポンプ室が平面視において円形状を有する場合、導出弁を平面視においてポンプ室の中心に配置するとともに複数の導入弁を平面視においてポンプ室の中心を通る直線について線対称となるように配置することができる。これにより、導出弁の周囲の複数個所から当該導出弁に対して均等に流体を流すことができるためポンプ室内の流体の澱みを低減することができる。したがって、例えば、流体として液体を流している状況においてポンプ室内にエアが滞留して流量精度が低下する等の不具合を緩和することができる。
【0261】
その一方で、導入弁は金属板の剛性を利用して導入通路を閉じるものであるため導入弁が閉状態にあっても導入通路を通じた微小のリークが生じるおそれがある。そのため、導入弁の数が多いと当該導入弁を通じた流体の積算リーク量が増加して、流量精度が低下するおそれがある。
【0262】
そこで、前記ポンプユニットにおいて、前記ポンプ室は、前記積層方向に沿って前記ポンプユニットを見る平面視において円形状を有し、前記導出弁は、平面視において前記ポンプ室の中心に配置され、前記少なくとも1つの導入弁は、平面視において前記ポンプ室の中心を通る直線について線対称となる位置に配置された2つの導入弁のみを含むことが好ましい。
【0263】
この態様によれば、平面視において中心を通る直線について線対称となる位置に2つの導出弁のみが設けられている。これにより、上述したポンプ室内の流体のよどみを低減しつつ導入弁を通じたリーク量の増加を最大限に抑えることができる。
【0264】
前記ポンプユニットの製造方法において、前記準備工程では、前記複数の金属板の各々が複数個連結された連結金属板を準備し、前記接合工程では、前記連結金属板同士を拡散接合することにより前記吐出機構と前記弁機構との結合体を複数形成し、前記ポンプユニットの製造方法は、接合工程の後に前記連結金属板から前記結合体を切り分ける切り分け工程をさらに含むことが好ましい。
【0265】
この態様によれば、接合工程を複数回行うことなく、複数のポンプユニットを製造することができるため、ポンプユニットの製造効率をより向上することができる。