特表-16136873IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年9月1日
【発行日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】最終減速機用潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 141/12 20060101AFI20171110BHJP
   C10M 171/00 20060101ALI20171110BHJP
   C10M 137/10 20060101ALI20171110BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20171110BHJP
   C10M 135/18 20060101ALI20171110BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20171110BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20171110BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20171110BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20171110BHJP
【FI】
   C10M141/12
   C10M171/00
   C10M137/10 B
   C10M169/04
   C10M135/18
   C10N10:12
   C10N30:00 Z
   C10N30:06
   C10N40:04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
【出願番号】特願2017-502463(P2017-502463)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年2月25日
(31)【優先権主張番号】特願2015-38759(P2015-38759)
(32)【優先日】2015年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-38760(P2015-38760)
(32)【優先日】2015年2月27日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小松原 仁
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BG10C
4H104BH08C
4H104DA02A
4H104FA06
4H104LA03
4H104LA20
4H104PA03
(57)【要約】
潤滑油基油と、有機モリブデン化合物と、硫黄を含む性能添加剤と、を含有する、最終減速機用潤滑油組成物であって、有機モリブデン化合物の含有量及び性能添加剤の含有量が、下記式(1):
20≦(C/CMo)≦100 (1)
[式中、CMoは有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量を示し、Cは性能添加剤に含まれる硫黄の含有量を示し、CMo及びCはそれぞれ潤滑油組成物全量を基準とするモリブデン又は硫黄の元素換算値(質量%)である。]
で表される条件を満たす、最終減速機用潤滑油組成物が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油と、
有機モリブデン化合物と、
硫黄を含む性能添加剤と、
を含有する、最終減速機用潤滑油組成物であって、
前記有機モリブデン化合物の含有量及び前記性能添加剤の含有量が、下記式(1):
20≦(C/CMo)≦100 (1)
[式中、CMoは前記有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量を示し、Cは前記性能添加剤に含まれる硫黄の含有量を示し、CMo及びCはそれぞれ組成物全量を基準とするモリブデン又は硫黄の元素換算値(質量%)である。]
で表される条件を満たす、最終減速機用潤滑油組成物。
【請求項2】
前記有機モリブデン化合物の含有量及び前記性能添加剤の含有量が、下記式(2)及び(3):
0.01≦CMo≦0.10 (2)
0.8≦C≦2.5 (3)
で表される条件をさらに満たす、請求項1に記載の最終減速機用潤滑油組成物。
【請求項3】
前記性能添加剤がジチオリン酸アンモニウム塩を含む、請求項1又は2に記載の最終減速機用潤滑油組成物。
【請求項4】
前記ジチオリン酸アンモニウム塩の含有量が、組成物全量を基準として、硫黄元素換算で0.02質量%以上である、請求項3に記載の最終減速機用潤滑油組成物。
【請求項5】
組成物の最終減速機用潤滑油としての使用であって、
前記組成物が、潤滑油基油と、有機モリブデン化合物と、硫黄を含む性能添加剤と、を含有し、前記有機モリブデン化合物の含有量及び前記性能添加剤の含有量が、下記式(1):
20≦(C/CMo)≦100 (1)
[式中、CMoは前記有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量を示し、Cは前記性能添加剤に含まれる硫黄の含有量を示し、CMo及びCはそれぞれ組成物全量を基準とするモリブデン又は硫黄の元素換算値(質量%)である。]
で表される条件を満たす、使用。
【請求項6】
組成物の最終減速機用潤滑油の製造のための使用であって、
前記組成物が、潤滑油基油と、有機モリブデン化合物と、硫黄を含む性能添加剤と、を含有し、前記有機モリブデン化合物の含有量及び前記性能添加剤の含有量が、下記式(1):
20≦(C/CMo)≦100 (1)
[式中、CMoは前記有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量を示し、Cは前記性能添加剤に含まれる硫黄の含有量を示し、CMo及びCはそれぞれ組成物全量を基準とするモリブデン又は硫黄の元素換算値(質量%)である。]
で表される条件を満たす、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最終減速機用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸ガス排出量の削減等、環境問題への対応から自動車、建設機械、農業機械等の省エネルギー化、すなわち、省燃費化が急務となっており、最終減速機等の装置には省エネルギーへの寄与が強く求められている。そのため、これらに使用される潤滑油には、従来に比べ、撹拌抵抗及び回転抵抗をより減少することが求められている。
【0003】
最終減速機の省燃費化手段のひとつとして、潤滑油の低粘度化が挙げられる。例えば、最終減速機は歯車軸受機構を有しており、これらに使用される潤滑油をより低粘度化することによって、歯車軸受機構等の撹拌抵抗及び回転抵抗が低減され、動力の伝達効率が向上することで自動車の燃費の向上が可能となる。
【0004】
しかしながら、潤滑油の低粘度化及び高粘度指数化のために基油粘度を下げて粘度指数向上剤を多量に配合すると、背反性能である油膜厚さの低下を起因として、極圧性及び耐摩耗性が低下し、焼付き等が生じて変速機等に不具合が生じることがある。さらに、極圧性を向上させるために硫黄系極圧剤及びリン−硫黄系極圧剤を増量した場合には、酸化安定性が著しく悪化することがある。
【0005】
従来の潤滑油組成物としては、省燃費性と歯車、軸受け等の充分な耐久性と兼ね備えたものとして、潤滑油基油に各種添加剤を配合したものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかしながら、このような潤滑油組成物においても、省燃費性については改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−003875号公報
【特許文献2】特開2012−193255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、省燃費化が可能な耐摩耗性及び耐焼付き性を有し、さらに金属間摩擦係数を低減することが可能な最終減速機用潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、下記[1]〜[4]に示す潤滑油組成物(以下、便宜的に「第1の潤滑油組成物」という。)、下記[5]に示す組成物の使用(応用)、並びに下記[6]に示す組成物の製造のための使用(応用)を提供する。
【0009】
[1]潤滑油基油と、有機モリブデン化合物と、硫黄を含む性能添加剤と、を含有する、最終減速機用潤滑油組成物であって、前記有機モリブデン化合物の含有量及び前記性能添加剤の含有量が、下記式(1):
20≦(C/CMo)≦100 (1)
[式中、CMoは前記有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量を示し、Cは前記性能添加剤に含まれる硫黄の含有量を示し、CMo及びCはそれぞれ潤滑油組成物全量を基準とするモリブデン又は硫黄の元素換算値(質量%)である。]で表される条件を満たす、最終減速機用潤滑油組成物。
[2]前記有機モリブデン化合物の含有量及び前記性能添加剤の含有量が、下記式(2)及び(3):
0.01≦CMo≦0.10 (2)
0.8≦C≦2.5 (3)
で表される条件をさらに満たす、[1]に記載の最終減速機用潤滑油組成物。
[3]前記性能添加剤がジチオリン酸アンモニウム塩を含む、[1]又は[2]に記載の最終減速機用潤滑油組成物。
[4]前記ジチオリン酸アンモニウム塩の含有量が、組成物全量を基準として、硫黄元素換算で0.02質量%以上である、[3]に記載の最終減速機用潤滑油組成物。
【0010】
[5]組成物の最終減速機用潤滑油としての使用であって、前記組成物が、潤滑油基油と、有機モリブデン化合物と、硫黄を含む性能添加剤と、を含有し、前記有機モリブデン化合物の含有量及び前記性能添加剤の含有量が、下記式(1):
20≦(C/CMo)≦100 (1)
[式中、CMoは前記有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量を示し、Cは前記性能添加剤に含まれる硫黄の含有量を示し、CMo及びCはそれぞれ組成物全量を基準とするモリブデン又は硫黄の元素換算値(質量%)である。]で表される条件を満たす、使用。
[6]組成物の最終減速機用潤滑油の製造のための使用であって、前記組成物が、潤滑油基油と、有機モリブデン化合物と、硫黄を含む性能添加剤と、を含有し、前記有機モリブデン化合物の含有量及び前記性能添加剤の含有量が、下記式(1):
20≦(C/CMo)≦100 (1)
[式中、CMoは前記有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量を示し、Cは前記性能添加剤に含まれる硫黄の含有量を示し、CMo及びCはそれぞれ組成物全量を基準とするモリブデン又は硫黄の元素換算値(質量%)である。]で表される条件を満たす、使用。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明は、下記[7]〜[9]に示す潤滑油組成物(以下、便宜的に「第2の潤滑油組成物」という。)、下記[10]に示す組成物の使用(応用)、並びに下記[11]に示す組成物の製造のための使用(応用)を提供する。
[7]潤滑油基油と、有機モリブデン化合物と、ジチオリン酸アンモニウム塩と、を含有する、最終減速機用潤滑油組成物。
[8]有機モリブデン化合物の含有量が、組成物全量を基準として、モリブデン元素換算で0.01〜0.10質量%である、[1]に記載の最終減速機用潤滑油組成物。
[9]ジチオリン酸アンモニウム塩の含有量が、組成物全量を基準として、リン元素換算で0.02質量%以上である、[1]又は[2]に記載の最終減速機用潤滑油組成物。
[10]潤滑油基油と、有機モリブデン化合物と、ジチオリン酸アンモニウム塩と、を含有する組成物の、最終減速機用潤滑油としての使用。
[11]潤滑油基油と、有機モリブデン化合物と、ジチオリン酸アンモニウム塩と、を含有する組成物の、最終減速機用潤滑油の製造のための使用。
【0012】
本発明でいう動粘度とは、ASTM D−445に規定される動粘度を意味する。また、本発明でいう粘度指数とは、JIS K 2283−1993に準拠して測定された粘度指数を意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、充分な耐摩耗性及び耐焼付き性を有し、さらに金属間摩擦係数を低減する最終減速機用潤滑油組成物が提供される。本発明の最終減速機用潤滑油組成物は、特に最終減速歯車として使用されるハイポイドギヤに対して特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0015】
[第1の実施形態:第1の潤滑油組成物]
第1の実施形態の最終減速機用潤滑油組成物は、潤滑油基油と、有機モリブデン化合物と、硫黄を含む性能添加剤と、を含有する。
【0016】
[(A)成分:潤滑油基油]
第1の実施形態の最終減速機用潤滑油組成物は、(A)潤滑油基油を含有する。潤滑油基油は、特に制限されず、通常の潤滑油に使用される基油を使用できる。具体的には、鉱油系基油、合成系基油、又は両者の混合物が挙げられる。
【0017】
鉱油系基油としては、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を単独又は2つ以上適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の鉱油系基油、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。なお、これらの鉱油系基油は単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0018】
好ましい鉱油系基油としては、以下の基油を挙げることができる。
(1)パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留による留出油
(2)パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留留出油(WVGO)
(3)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス及び/又はGTLプロセス等により製造されるフィッシャートロプシュワックス
(4)(1)〜(3)の中から選ばれる1種又は2種以上の混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(5)(1)〜(4)の中から選ばれる2種以上の油の混合油
(6)(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)の脱れき油(DAO)
(7)(6)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(8)(1)〜(7)の中から選ばれる2種以上の油の混合油等を原料油とし、この原料油及び/又はこの原料油から回収された潤滑油留分を、通常の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる潤滑油
【0019】
ここで、通常の精製方法とは特に制限されるものではなく、基油製造の際に用いられる精製方法を任意に採用することができる。通常の精製方法としては、例えば、(ア)水素化分解、水素化仕上げ等の水素化精製、(イ)フルフラール溶剤抽出等の溶剤精製、(ウ)溶剤脱ろう、接触脱ろう等の脱ろう、(エ)酸性白土、活性白土等による白土精製、(オ)硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄等の薬品(酸又はアルカリ)精製等が挙げられる。第1の実施形態ではこれらの1つ又は2つ以上を任意の組み合わせ及び任意の順序で採用することができる。
【0020】
鉱油系基油の硫黄含有量は、特に制限されないが、潤滑油基油全量を基準として、100質量ppm以下、50質量ppm以下又は10質量ppm以下であってよい。鉱油系基油の硫黄含有量は、例えば、ICP元素分析法等によって求めることができる。
【0021】
合成系基油としては、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられ、中でも、ポリα−オレフィンが好ましい。ポリα−オレフィンとしては、例えば、炭素数2以上32以下、好ましくは6以上16以下のα−オレフィンのオリゴマー又はコオリゴマー(1−オクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びそれらの水素化物が挙げられる。なお、これらの合成系基油は単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0022】
潤滑油基油の40℃における動粘度は、特に制限されないが、好ましくは15mm/s以上、より好ましくは20mm/s以上、さらに好ましくは25mm/s以上、特に好ましくは30mm/s以上である。潤滑油基油の40℃における動粘度が15mm/s以上であると、油膜形成が充分となり、潤滑性により優れ、高温条件下での蒸発損失がより小さい潤滑油組成物が得られやすくなる。また、潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは50mm/s以下、より好ましくは45mm/s以下、さらに好ましく40mm/s以下、特に好ましくは35mm/s以下である。潤滑油基油の40℃における動粘度が50mm/s以下であると、流体抵抗が小さくなるため、回転抵抗がより小さい潤滑油組成物が得られやすくなる。
【0023】
潤滑油基油の100℃における動粘度は、特に制限されないが、好ましくは1mm/s以上、より好ましくは3mm/s以上、さらに好ましくは5mm/s以上である。潤滑油基油の100℃における動粘度が1mm/s以上であると、油膜形成が充分となり、潤滑性により優れ、高温条件下での蒸発損失がより小さい潤滑油組成物が得られやすくなる。また、潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは15mm/s以下、より好ましくは12mm/s以下、さらに好ましくは10mm/s以下、特に好ましくは8mm/s以下である。潤滑油基油の100℃における動粘度が15mm/s以下であると、流体抵抗が小さくなるため、回転抵抗がより小さい潤滑油組成物が得られやすくなる。
【0024】
潤滑油基油の粘度指数は、特に制限されないが、好ましくは120以上、より好ましくは125以上、さらに好ましくは130以上である。粘度指数が120以上であると、低温から高温にわたりより良好な粘度特性を示す潤滑油組成物が得られやすくなる。
【0025】
[(B)成分:有機モリブデン化合物]
第1の実施形態の潤滑油組成物は、(B)有機モリブデン化合物を含有する。(A)成分に(B)成分を適用することにより、金属間摩擦係数を低減することが可能となる。
【0026】
有機モリブデン化合物としては、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)等の硫黄含有有機モリブデン化合物、モリブデン化合物(例えば、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン等の酸化モリブデン、オルトモリブデン酸、パラモリブデン酸、(ポリ)硫化モリブデン酸等のモリブデン酸、これらモリブデン酸の金属塩、アンモニウム塩等のモリブデン酸塩、二硫化モリブデン、三硫化モリブデン、五硫化モリブデン、ポリ硫化モリブデン等の硫化モリブデン、硫化モリブデン酸、硫化モリブデン酸の金属塩又はアミン塩、塩化モリブデン等のハロゲン化モリブデン等)と、硫黄含有有機化合物(例えば、アルキル(チオ)キサンテート、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、チオカーボネート、テトラハイドロカルビルチウラムジスルフィド、ビス(ジ(チオ)ハイドロカルビルジチオホスホネート)ジスルフィド、有機(ポリ)サルファイド、硫化エステル等)又はその他の有機化合物との錯体、上記硫化モリブデン、硫化モリブデン酸等の硫黄含有モリブデン化合物とアルケニルコハク酸イミドとの錯体などが挙げられる。これらのうち、有機モリブデン化合物は、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)を用いることが好ましい。
【0027】
有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量(後述のCMoに対応)は、特に制限されないが、組成物全量を基準として、モリブデン元素換算で0.01〜0.10質量%であることが好ましい。モリブデンの含有量は、より好ましくは0.015質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上である。モリブデンの含有量が0.01質量%以上であると、潤滑油組成物の金属間摩擦係数をより低減することが可能となる。また、モリブデンの含有量は、より好ましくは0.095質量%以下、さらに好ましくは0.09質量%以下である。モリブデンの含有量が0.10質量%以下であると、耐摩耗性及び耐焼付き性により優れる潤滑油組成物が得られやすくなる。なお、組成物全量基準の有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量は、例えば、有機モリブデン化合物全量基準のモリブデンの含有量を予めICP元素分析法等によって分析し、その分析値及び有機モリブデン化合物の仕込み量から算出することができる。
【0028】
有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量は、特に制限されないが、有機モリブデン化合物全量を基準として、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。また、モリブデンの含有量は、特に制限されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。なお、有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量は、例えば、ICP元素分析法等によって求めることができる。
【0029】
有機モリブデン化合物が硫黄含有有機モリブデン化合物である場合、有機モリブデン化合物に含まれる硫黄の含有量は、特に制限されないが、有機モリブデン化合物全量を基準として、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。また、硫黄の含有量は、特に制限されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。なお、有機モリブデン化合物に含まれる硫黄の含有量は、例えば、ICP元素分析法等によって求めることができる。
【0030】
また、有機モリブデン化合物としては、構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物を用いることができる。構成元素として硫黄を含まない有機モリブデン化合物としては、具体的には、モリブデン−アミン錯体、モリブデン−コハク酸イミド錯体、有機酸のモリブデン塩、アルコールのモリブデン塩等が挙げられる。
【0031】
[(C)成分:硫黄を含む性能添加剤]
第1の実施形態の潤滑油組成物は、(C)硫黄を含む性能添加剤を含有する。硫黄を含む性能添加剤は、構成元素として硫黄を含みリンを含まない添加剤並びに構成元素としてリン及び硫黄の両方を含む添加剤のいずれかであってよい。ただし、硫黄を含む性能添加剤には、上記(B)成分(有機モリブデン化合物)は包含されない。
【0032】
構成元素として硫黄を含みリンを含まない添加剤としては、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、チアジアゾール等の摩耗防止剤(又は極圧剤)、スルホネート系清浄剤(アルカリ金属又はアルカリ土類金属との正塩、塩基正塩、過塩基性塩)等の金属系清浄剤、チアジアゾール系化合物等の腐食防止剤、メルカプトベンゾチアゾール、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、β−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等の金属不活性化剤、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート等の防錆剤などが挙げられる。硫黄を含みリンを含まない添加剤は、チアジアゾールを含むことが好ましい。
【0033】
チアジアゾールとしては、特に構造は限定されないが、例えば、下記一般式(3)で示される1,3,4−チアジアゾール化合物、一般式(4)で示される1,2,4−チアジアゾール化合物、一般式(5)で示される1,2,3−チアジアゾール化合物等が挙げられる。
【0034】
【化1】
【0035】
一般式(3)〜(5)において、R22、R23、R24、R25、R26及びR27は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜30の炭化水素基を表し、g、h、i、j、k及びlは、それぞれ独立に、0〜8の整数を表す。炭素数1〜30の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0036】
硫黄を含む性能添加剤に含まれるチアジアゾールの含有量は、特に制限されないが、組成物全量を基準として、硫黄元素換算で、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.012質量%以上である。また、チアジアゾールの含有量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.095質量%以下、さらに好ましくは0.09質量%以下である。なお、組成物全量基準の性能添加剤に含まれるチアジアゾールの含有量(硫黄元素換算値)は、例えば、性能添加剤全量基準のチアジアゾールの含有量(硫黄元素換算値)を予めICP元素分析法等によって分析し、その分析値及び性能添加剤の仕込み量から算出することができる。
【0037】
構成元素としてリン及び硫黄の両方を含む添加剤としては、ジチオリン酸、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらのアンモニウム塩、これらの金属塩、これらの誘導体等の硫黄−リン系の極圧剤などが挙げられる。ただし、第1の実施形態の潤滑油組成物は、金属含有量(亜鉛含有量)を低減させる観点から、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を含まないことが好ましい。
【0038】
硫黄を含む性能添加剤は、ジチオリン酸アンモニウム塩を含むことが好ましい。
【0039】
ジチオリン酸アンモニウム塩としては、例えば、一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0040】
【化2】
【0041】
一般式(1)中、R11は、水素原子又は炭素数1以上の炭化水素基を表す。複数のR11は互いに同一であっても、異なっていてもよい。炭素数1以上の炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜24のアルキルアリール基、炭素数7〜12のアリールアルキル基等が挙げられる。なお、アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。金属間摩擦係数の低減の観点から、R11は水素原子であることが好ましい。
【0042】
一般式(1)中、R12及びR13は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上の炭化水素基を表す。炭素数1以上の炭化水素基としては、R11の説明において例示された炭化水素基が挙げられる。金属間摩擦係数の低減の観点から、R12及びR13は、好ましくは炭素数1〜24のアルキル基であり、より好ましくは炭素数3〜12のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数3〜8のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数4〜6のアルキル基である。
【0043】
ジチオリン酸アンモニウム塩がジアルキルジチオリン酸アンモニウム塩(ジチオリン酸ジアルキルエステルアンモニウム塩ともいう。)である場合、当該塩を構成するジアルキルジチオリン酸(ジチオリン酸ジアルキルエステルともいう。)としては、例えば、ジメチルジチオリン酸、ジエチルジチオリン酸、ジプロピルジチオリン酸、ジブチルジチオリン酸、ジペンチルジチオリン酸、ジヘキシルジチオリン酸、ジヘプチルジチオリン酸、ジオクチルジチオリン酸、ジノニルジチオリン酸、ジデシルジチオリン酸、ジウンデシルジチオリン酸、ジドデシルジチオリン酸、ジトリデシルジチオリン酸、ジテトラデシルジチオリン酸、ジペンタデシルジチオリン酸、ジヘキサデシルジチオリン酸、ジヘプタデシルジチオリン酸、ジオクタデシルジチオリン酸等のアルキル基を有するジアルキルジチオリン酸;ジオレイルジチオリン酸等のアルケニル基を有するジアルケニルジチオリン酸;ジフェニルジチオリン酸等のアリール基を有するジアリールジチオリン酸;ジトリルジチオリン酸、ジキシリルジチオリン酸、ジエチルフェニルジチオリン酸、ジプロピルフェニルジチオリン酸、ジブチルフェニルジチオリン酸、ジペンチルフェニルジチオリン酸、ジヘキシルフェニルジチオリン酸、ジヘプチルフェニルジチオリン酸、ジオクチルフェニルジチオリン酸、ジノニルフェニルジチオリン酸、ジデシルフェニルジチオリン酸、ジウンデシルフェニルジチオリン酸、ジドデシルフェニルジチオリン酸等のアルキルフェニル基を有するジアルキルフェニルジチオリン酸が挙げられる。上記のジアルキルジチオリン酸は、単独で、又は2種以上混合物で用いることができる。
【0044】
ジチオリン酸アンモニウム塩の含有量は、耐摩耗性及び耐焼付き性の観点から、組成物全量を基準として、硫黄元素換算で、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.04質量%以上である。また、ジチオリン酸アンモニウム塩の含有量は、耐焼付き性の観点から、組成物全量を基準として、硫黄元素換算で、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。なお、潤滑油組成物中のジチオリン酸アンモニウム塩の含有量(硫黄元素換算値)は、例えば、ジチオリン酸アンモニウム塩中の硫黄元素含有量を予めICP元素分析法等によって分析し、その分析値及びジチオリン酸アンモニウム塩の仕込み量から算出することができる。
【0045】
硫黄を含む性能添加剤に含まれる硫黄の含有量(後述のCに対応)は、特に制限されないが、組成物全量を基準として、硫黄元素換算で0.8〜2.5質量%であることが好ましい。硫黄の含有量は、より好ましくは0.85質量%以上、さらに好ましくは0.90質量%以上である。硫黄の含有量は、より好ましくは2.4質量%以下、さらに好ましくは2.3質量%以下である。硫黄の含有量が0.8質量%以上又は2.5質量%以下であると、耐摩耗性及び耐焼付き性により優れる潤滑油組成物が得られやすくなる。なお、組成物全量基準の硫黄を含む性能添加剤に含まれる硫黄の含有量は、例えば、性能添加剤全量基準の硫黄の含有量を予めICP元素分析法等によって分析し、その分析値及び性能添加剤の仕込み量から算出することができる。
【0046】
上述の(B)成分の有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量及び(C)成分の硫黄を含む性能添加剤に含まれる硫黄の含有量は、下記式(1):
20≦(C/CMo)≦100 (1)
[式中、CMoは上記有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量を示し、Cは上記性能添加剤に含まれる硫黄の含有量を示し、CMo及びCはそれぞれ組成物全量を基準とするモリブデン又は硫黄の元素換算値(質量%)である。]
で表される条件を満たす。
【0047】
(C/CMo)は、20以上であり、好ましくは22以上、より好ましくは25以上である。また、(C/CMo)は、100以下であり、好ましくは95以下、より好ましくは85以下、さらに好ましくは75以下、特に好ましくは65以下、最も好ましくは50以下である。(C/CMo)が20以上又は100以下であると、耐摩擦性に優れ、金属間摩擦係数を低減する潤滑油組成物が得られやすくなる。
【0048】
(B)成分の有機モリブデン化合物の含有量及び(C)成分の硫黄を含む性能添加剤の含有量は、下記式(2)及び(3):
0.01≦CMo≦0.10 (2)
0.8≦C≦2.5 (3)
をさらに満たすことが好ましい。
【0049】
Moは、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、さらに好ましくは0.02以上である。CMoが0.01以上であると、潤滑油組成物の金属間摩擦係数をより低減することが可能となる。また、CMoは、好ましくは0.10以下、より好ましくは0.095以下、さらに好ましくは0.09以下である。CMoが0.10以下であると、耐摩耗性及び耐焼付き性に優れる潤滑油組成物が得られやすくなる。
【0050】
は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.85以上、さらに好ましくは0.9以上である。また、Cは、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.4以下、さらに好ましくは2.3以下である。Cが0.8以上又は2.5以下であると、耐摩耗性及び耐焼付き性により優れる潤滑油組成物が得られやすくなる。
【0051】
[第2の実施形態:第2の潤滑油組成物]
第2の実施形態の最終減速機用潤滑油組成物は、潤滑油基油と、有機モリブデン化合物と、ジチオリン酸アンモニウム塩と、を含有する。
【0052】
[潤滑油基油]
潤滑油基油としては、上記第1の実施形態で例示した潤滑油基油と同様のものを用いることができる。
【0053】
第2実施形態において、潤滑油基油の40℃における動粘度は、特に制限されないが、好ましくは15mm/s以上、より好ましくは20mm/s以上、さらに好ましくは25mm/s以上、特に好ましくは30mm/sである。潤滑油基油の40℃における動粘度が15mm/s以上であると、油膜形成が充分となり、潤滑性により優れ、高温条件下での蒸発損失がより小さい潤滑油組成物が得られやすくなる。また、潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは50mm/s以下、より好ましくは45mm/s以下、さらに好ましくは40mm/s以下、特に好ましくは35mm/s以下である。潤滑油基油の40℃における動粘度が50mm/s以下であると、流体抵抗が小さくなるため、回転抵抗がより小さい潤滑油組成物が得られやすくなる。
【0054】
潤滑油基油の100℃における動粘度は、特に制限されないが、好ましくは1mm/s以上、より好ましくは3mm/s以上、さらに好ましくは5mm/s以上である。潤滑油基油の100℃における動粘度が1mm/s以上であると、油膜形成が充分となり、潤滑性により優れ、高温条件下での蒸発損失がより小さい潤滑油組成物が得られやすくなる。また、潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは15mm/s以下、より好ましくは12mm/s以下、さらに好ましくは10mm/s以下、特に好ましくは8mm/s以下である。潤滑油基油の100℃における動粘度が15mm/s以下であると、流体抵抗が小さくなるため、回転抵抗がより小さい潤滑油組成物が得られやすくなる。
【0055】
潤滑油基油の粘度指数は、特に制限されないが、好ましくは120以上、より好ましくは125以上、さらに好ましくは130以上である。粘度指数が120以上であると、低温から高温にわたってより良好な粘度特性を示す潤滑油組成物が得られやすくなる。
【0056】
[有機モリブデン化合物]
有機モリブデン化合物としては、上記第1の実施形態における有機モリブデン化合物と同様のものを用いることができる。
【0057】
第2実施形態において、有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量は、特に制限されないが、有機モリブデン化合物全量を基準として、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。また、モリブデンの含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。なお、有機モリブデン化合物に含まれるモリブデンの含有量は、例えば、ICP元素分析法等によって求めることができる。
【0058】
有機モリブデン化合物が硫黄含有有機モリブデン化合物である場合、有機モリブデン化合物に含まれる硫黄の含有量は、特に制限されないが、有機モリブデン化合物全量を基準として、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。また、硫黄の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。なお、有機モリブデン化合物に含まれる硫黄の含有量は、例えば、ICP元素分析法等によって求めることができる。
【0059】
有機モリブデン化合物の含有量は、潤滑油組成物の金属間摩擦係数の低減の観点から、組成物全量を基準として、モリブデン元素換算で、好ましくは0.01質量以上、より好ましくは0.015質量%以上、さらに好ましくは0.02質量%以上である。また、有機モリブデン化合物の含有量は、潤滑油組成物の耐摩耗性及び耐焼付き性の観点から、組成物全量を基準として、モリブデン元素換算で、好ましくは0.10質量%以下、より好ましくは0.095質量%以下、さらに好ましくは0.09質量%以下である。なお、潤滑油組成物中の有機モリブデン化合物の含有量(モリブデン元素換算値)は、例えば、有機モリブデン化合物中のモリブデン元素含有量を予めICP元素分析法等によって分析し、その分析値及び有機モリブデン化合物の仕込み量から算出することができる。
【0060】
[ジチオリン酸アンモニウム塩]
ジチオリン酸アンモニウム塩としては、上記第1の実施形態におけるジチオリン酸アンモニウム塩と同様のものを用いることができる。
【0061】
第2実施形態において、ジチオリン酸アンモニウム塩の含有量は、耐摩耗性及び耐焼付き性の観点から、組成物全量を基準として、リン元素換算で、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.025質量%以上、さらに好ましくは0.03質量%以上である。また、ジチオリン酸アンモニウム塩の含有量は、耐焼付き性の観点から、組成物全量を基準として、リン元素換算で、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。なお、潤滑油組成物中のジチオリン酸アンモニウム塩の含有量(リン元素換算値)は、例えば、ジチオリン酸アンモニウム塩中のリン元素含有量を予めICP元素分析法等によって分析し、その分析値及びジチオリン酸アンモニウム塩の仕込み量から算出することができる。
【0062】
第2の実施形態の潤滑油組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、ジチオリン酸アンモニウム塩以外のリン系添加剤(摩耗防止剤又は極圧剤)をさらに含有してもよい。ジチオリン酸アンモニウム塩以外のリン系の摩耗防止剤としては、亜リン酸エステル類(ホスファイト)、リン酸エステル類、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体;ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、ジチオリン酸エステル類、トリチオリン酸エステル類、これらのアミン塩、これらのアンモニウム塩、これらの金属塩、これらの誘導体等が挙げられる。
【0063】
潤滑油組成物の硫黄含有量は、特に制限されないが、耐焼付き性の観点から、組成物全量を基準として、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、特に好ましくは1.5質量%以上である。また、潤滑油組成物の硫黄含有量は、酸化安定性の観点から、組成物全量を基準として、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2.5質量%以下である。なお、潤滑油組成物の硫黄含有量は、例えば、潤滑油組成物をICP元素分析法等によって分析して求めることができる。また、例えば、潤滑油基油に配合される各成分の硫黄含有量を予めICP元素分析法等によって分析し、その分析値及び各成分の仕込み量から算出することができる。
【0064】
第1及び第2の実施形態の潤滑油組成物には、その目的に応じて潤滑油に一般的に使用されている任意の添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、例えば、摩擦調整剤、粘度調整剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、摩耗防止剤(又は極圧剤)、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤等の添加剤などを挙げることができる。
【0065】
摩擦調整剤としては、有機モリブデン化合物以外の摩擦調整剤を用いることができる。具体的には、無灰摩擦調整剤等が挙げられ、例えば、分子中に酸素原子、窒素原子、硫黄原子から選ばれる1種もしくは2種以上のヘテロ元素を含有する、炭素数6〜50の化合物が挙げられる。さらに具体的には、炭素数6〜30のアルキル基またはアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基、直鎖アルケニル基、分岐アルキル基、分岐アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル、ウレア系化合物、ヒドラジド系化合物等の無灰摩擦調整剤等が挙げられる。
【0066】
粘度調整剤は、具体的には非分散型又は分散型エステル基含有粘度調整剤であり、例えば、非分散型又は分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度調整剤、非分散型又は分散型オレフィン−(メタ)アクリレート共重合体系粘度調整剤、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体系粘度調整剤及びこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でも非分散型又は分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度調整剤であることが好ましい。特に非分散型又は分散型ポリメタクリレート系粘度調整剤であることが好ましい。
【0067】
粘度調整剤としては、その他に、非分散型若しくは分散型エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体、ポリアルキルスチレン等を挙げることができる。
【0068】
粘度調整剤の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、さらに好ましくは15000以上である。また、粘度調整剤の重量平均分子量は、特に制限されないが、好ましくは50000以下、より好ましくは40000以下、さらに好ましくは30000以下である。
【0069】
粘度調整剤の含有量は、特に制限されないが、組成物全量を基準として、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。粘度調整剤の含有量が1質量%以上であると、低温流動性により優れる潤滑油組成物が得られやすくなる。また、粘度調整剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0070】
金属系清浄剤としては、スルホネート系清浄剤、サリチレート系清浄剤、フェネート系清浄剤等が挙げられ、アルカリ金属又はアルカリ土類金属との正塩、塩基正塩、過塩基性塩のいずれをも配合することができる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類又は2種類以上を配合することができる。
【0071】
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤が使用でき、例えば、炭素数40以上400以下の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノ又はビスコハク酸イミド、炭素数40以上400以下のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、炭素数40以上400以下のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、これらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品などが挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種類又は2種類以上を配合することができる。
【0072】
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。具体的には、例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0073】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0074】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0075】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0076】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、β−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0077】
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000mm/s以上100000mm/s以下のシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸とのエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコールとのエステル等が挙げられる。
【0078】
これらの添加剤を本実施形態の潤滑油組成物に含有させる場合には、それぞれの含有量は組成物全量を基準として、0.01〜20質量%であることが好ましい。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0080】
(実施例1−1〜1−8及び比較例1−1〜1−6)
表1及び表2に示すように、実施例1−1〜1−8及び比較例1−1〜1−6の潤滑油組成物をそれぞれ調製した。得られた潤滑油組成物について、耐摩耗性、耐焼付き性及び金属間摩擦係数を測定し、その結果を表1及び表2に併記した。
【0081】
表1及び表2に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
[(A)成分]
潤滑油基油A−1:水素化精製鉱油[グループIII、40℃動粘度:33.97mm/s、100℃動粘度:6.208mm/s、粘度指数:133、硫黄含有量:10質量ppm未満、%C(パラフィン分の割合):80.6、%C(ナフテン分の割合):19.4、%C(芳香族分の割合):0]
[(B)成分]
有機モリブデン化合物B−1:モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)[モリブデン元素換算量:10質量%、硫黄元素換算量:10.8質量%]
[(C)成分]
性能添加剤C−1:添加剤パッケージ(ホウ素含有コハク酸イミド、リン酸エステル、ポリサルファイド、チアジアゾール(添加剤パッケージ全量を基準として、硫黄換算量:0.4質量%)、アミン系摩擦調整剤、アミン系酸化防止剤、消泡剤)[添加剤パッケージ全量を基準として、硫黄元素換算量:22.9質量%]
性能添加剤C−2:添加剤パッケージ(ホウ素系分散剤、亜リン酸エステル、リン酸エステル、ポリサルファイド、チアジアゾール(添加剤パッケージ全量を基準として、硫黄換算量:0.9質量%)、アミン系摩擦調整剤、アミン系酸化防止剤、消泡剤)[添加剤パッケージ全量を基準として、硫黄元素換算量:18.1質量%]
[添加剤]
粘度調整剤D−1:ポリメタクリレート系粘度調整剤[重量平均分子量:20000]
【0082】
潤滑油基油の硫黄元素換算量、有機モリブデン化合物におけるモリブデン元素換算量及び硫黄元素換算量、並びに性能添加剤の硫黄元素換算量は、ICP元素分析法によって求めた。
【0083】
(1)耐摩耗性試験
ASTM D 2596に準拠し、高速四球試験機を用い、各潤滑油組成物の1800rpmにおける融着荷重(WL)を測定した。本試験においては、融着荷重が大きい(例えば、2452N以上)ほど、耐摩耗性に優れていることを意味する。
また、以下の条件により、シェル四球試験(ASTM D4172)を行い、摩耗痕径(mm)を測定して耐摩耗性を評価した。本試験においては、摩耗痕径が小さい(例えば、0.5mm以下)ほど、耐摩耗性に優れていることを意味する。
荷重:392N
回転数:1200rpm
温度:80℃
試験時間:30分間
(2)耐焼付き性試験
ASTM D3233に記載のファレックス試験機を用いて、焼付荷重を測定し、耐焼付き性の評価を行った。この耐焼付き性は、鋼同士の極圧性を示す。試験条件を以下に示す。本試験においては、焼付荷重が大きい(例えば、4226N以上)ほど、耐焼付き性に優れていることを意味する。
温度:110℃
回転数:290rpm
(3)金属摩擦係数試験
LFW−1試験機を用いて、金属間摩擦係数を評価した。試験条件を以下に示す。本試験においては、金属摩擦係数が小さい(例えば、0.11以下)ほど、摩擦特性に優れていることを意味する。
試験片:ブロックH60、リングS10
荷重:890N
すべり速度:0.5m/s
油温:90℃
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
表1及び表2に示すとおり、実施例1−1〜1−8の潤滑油組成物は、比較例1−1〜1−6の潤滑油組成物と比較して、耐摩耗性及び耐焼付き性に優れ、さらに金属間摩擦係数を低減できることが判明した。
【0087】
(実施例2−1〜2−5及び比較例2−1〜2−5)
表3に示すように、実施例2−1〜2−5及び比較例2−1〜2−5の潤滑油組成物をそれぞれ調製した。得られた潤滑油組成物について、耐摩耗性、耐焼付き性及び金属間摩擦係数を測定し、その結果を表3に併記した。
【0088】
表3に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
[潤滑油基油]
A−1:水素化精製鉱油[グループIII、40℃動粘度:33.97mm/s、100℃動粘度:6.208mm/s、粘度指数:133、硫黄含有量:10質量ppm未満、%C(パラフィン分の割合):80.6、%C(ナフテン分の割合):19.4、%C(芳香族分の割合):0]
[有機モリブデン化合物]
B−1:モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)[モリブデン元素換算:10.1質量%、硫黄元素換算量:10.8質量%]
[性能添加剤]
C−1(硫黄を含むリン系添加剤):ジチオリン酸アンモニウム塩(上記一般式(1)のR11が水素原子、R12及びR13が炭素数6のアルキル基)[リン元素換算量:4質量%、硫黄元素換算量:7.0質量%]
E−1(硫黄系添加剤):ポリサルファイド[硫黄元素換算量:45.8質量%]
F−1(粘度調整剤):ポリメタクリレート系粘度調整剤[重量平均分子量:20000]
G−1(酸化防止剤):ジフェニルアミン
H−1(腐食防止剤):チアジアゾール[硫黄元素換算量:36質量%]
I−1(摩擦調整剤):アミド混合物(オレイルアミド91質量%、ステアリルアミド6質量%、リノレンアミド3質量%)
J−1(分散剤):ホウ素含有コハク酸イミド[ホウ素元素含有量:2.0質量%、窒素元素含有量:2.2質量%]
【0089】
潤滑油基油における硫黄元素換算量、有機モリブデン化合物のモリブデン元素換算量、リン系添加剤のリン元素換算量、硫黄元素換算量及び亜鉛元素換算量、硫黄系添加剤の硫黄元素換算量、腐食防止剤の硫黄元素換算量並びに分散剤のホウ素元素換算量及び窒素元素換算量は、ICP元素分析法によって求めた。
【0090】
(1)耐摩耗性試験
ASTM D 2596に準拠し、高速四球試験機を用い、各潤滑油組成物の1800rpmにおける最大非焼付き荷重(LNSL)を測定した。本試験においては、最大非焼付き荷重が大きい(例えば、981N以上)ほど、耐摩耗性に優れていることを意味する。
また、以下の条件により、シェル四球試験(ASTM D4172)を行い、摩耗痕径(mm)を測定して耐摩耗性を評価した。本試験においては、摩耗痕径が小さい(例えば、0.5mm以下)ほど、耐摩耗性に優れていることを意味する。
荷重:392N
回転数:1800rpm
温度:80℃
試験時間:30分間
【0091】
(2)耐焼付き性試験
ASTM D3233に記載のファレックス試験機を用いて、焼付荷重を測定し、耐焼付き性の評価を行った。この耐焼付き性は、鋼同士の極圧性を示す。試験条件を以下に示す。本試験においては、焼付荷重が大きい(例えば、4226N以上)ほど、耐焼付き性に優れていることを意味する。
温度:110℃
回転数:290rpm
【0092】
(3)金属摩擦係数試験
LFW−1試験機を用いて、金属間摩擦係数を評価した。試験条件を以下に示す。本試験においては、金属摩擦係数が小さい(例えば、0.100以下)ほど、摩擦特性に優れていることを意味する。
試験片:ブロックH60、リングS10
荷重:890N
すべり速度:0.5m/s
油温:90℃
【0093】
【表3】
【0094】
表3に示すとおり、実施例2−1〜2−5の潤滑油組成物は、充分な耐摩耗性及び耐焼付き性を示し、充分に金属間摩擦係数を低減できることが判明した。
【国際調査報告】