特表-16143573IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2016-143573オレフィン基材用水系接着剤樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年9月15日
【発行日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】オレフィン基材用水系接着剤樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/06 20060101AFI20171124BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20171124BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20171124BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20171124BHJP
   C09J 123/10 20060101ALI20171124BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   C08L75/06
   C08G18/42 063
   C08L23/12
   C09J175/04
   C09J123/10
   C09J11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
【出願番号】特願2016-534750(P2016-534750)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年2月29日
(31)【優先権主張番号】特願2015-47212(P2015-47212)
(32)【優先日】2015年3月10日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木津本 博俊
(72)【発明者】
【氏名】柏原 健二
(72)【発明者】
【氏名】中島 将史
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J002BB122
4J002BB142
4J002BK003
4J002CE003
4J002CK031
4J002FD343
4J002GH01
4J002GJ01
4J002HA07
4J034BA03
4J034DA01
4J034DA05
4J034DB05
4J034DB08
4J034DC02
4J034DC42
4J034DF01
4J034DF14
4J034DF16
4J034DF21
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA02
4J034JA14
4J034KA01
4J034KB01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD12
4J034KE02
4J034QA05
4J034QC05
4J034RA08
4J040BA191
4J040DA111
4J040EF111
4J040EF191
4J040EF301
4J040GA07
4J040JA03
4J040KA26
4J040LA03
4J040MA10
(57)【要約】
貯蔵安定性が良好で、かつポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系基材に対して優れた接着性、密着性、耐水性を有する乳化剤を使用しない自己乳化型エマルションを提供することである。
アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)、親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)及び粘着付与剤(C成分)を含有し、下記(1)および(2)を満足する自己乳化型エマルション。
(1)アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)が乳化剤の存在無しに水中に分散している
(2)アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)からなる分散体粒子が親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)および粘着付与剤(C成分)を内包している
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)、親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)及び粘着付与剤(C成分)を含有し、下記(1)および(2)を満足する自己乳化型エマルション。
(1)アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)が乳化剤の存在無しに水中に分散している
(2)アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)からなる分散体粒子が親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)および粘着付与剤(C成分)を内包している
【請求項2】
前記親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)が、アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)100重量部に対して20重量部以上70重量部未満の範囲で含有する請求項1に記載の自己乳化型エマルション。
【請求項3】
前記粘着付与剤(C成分)が、親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)100重量部に対して5重量部以上30重量部未満の範囲で含有する請求項1または2に記載の自己乳化型エマルション。
【請求項4】
前記親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)及び粘着付与剤(C成分)を内包したアニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)からなる分散体粒子のZ平均粒子径が500nm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の自己乳化型エマルション。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の自己乳化型エマルションを含有する接着剤組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の接着剤組成物を含有するポリオレフィン系樹脂用接着剤。
【請求項7】
アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)、親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)および粘着付与剤(C成分)を溶剤および水に溶解させ、塩基性化合物を加えた後に、前記溶剤を留去する自己乳化型エマルションの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂基材に対して良好な接着性能を発揮する自己乳化型のエマルションに関する。
【背景技術】
【0002】
古くからポリエチレンやポリプロピレンの様な表面エネルギーの低い基材を接着させる手法について研究されており、これら材料に対して高い接着性能を有する接着剤の設計は容易でない事が知られている。これら低表面エネルギー基材に対して良好な接着性を発現させる手法として、被着体表面を予めコロナ放電やプラズマ処理等により前処理し、表面エネルギーを高めておいてから接着させるという技術が提案されている。これらの手法は有効な技術である反面、高価な装置を必要とし、電力消費量もアップする。
【0003】
一方でポリエチレンやポリプロピレンの様なオレフィン系素材を使った製品は近年身の回りにある家庭用品から種々工業用途まで多義に渡り益々増える傾向にある。特に車載用途に至っては自動車軽量化の動向からポリプロピレンを素材とする成形材料の搭載が積極的に進められている。この様な経緯から近年、従来にはなかったより効果的な接着剤も開発されて来ている。この事は非特許文献1のP139「2.1接着技術の現状」にも記載されている。具体的なものとしては特許文献1や特許文献2の例が挙げられる。加えて最近は作業環境上の問題から、接着剤も従来の有機溶剤型から、より環境にやさしい水系に変わりつつある。例えば特許文献3〜5にはその例を見る事が出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−197388号公報
【特許文献2】特開2013−95873号公報
【特許文献3】特開2005−220153号公報
【特許文献4】特開2001−152119号公報
【特許文献5】特開2002−146315号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Jpn.Soc.Colour MaJ.Jpn.Soc.ColourMater.,87〔4〕,139-144(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に高分子を水分散化させたエマルションには界面活性剤(乳化剤)を併用した強制乳化型エマルションと、高分子鎖に親水性極性基を導入し高分子自身に乳化機能を付与させた自己乳化型エマルションがある。乳化剤は自己乳化機能を有していない高分子を水中に安定に分散化させるためには極めて有用であるが、水性接着剤として使用した場合、被着体に塗布乾燥された接着層の中に残存してしまい、接着性に悪影響を及ぼす。この事は特許文献5の従来の技術にも記載されている。上記特許文献3では主成分であるポリオレフィン樹脂組成物が界面活性剤(乳化剤)により水系化される事が段落0116及び実施例に記載されている。また、特許文献4においても粘着剤主成分のアクリル系樹脂が乳化剤の存在下にエマルション重合される事が発明の実施の形態に記載されている。特許文献5では配合されるポリウレタン樹脂はアニオン性の自己乳化型ウレタン樹脂であり、一方一緒に配合される粘着付与剤は乳化剤により水に分散される事が各々発明の実施形態の中の段落0017と段落0019に記載されている。主成分であるアクリル系樹脂は界面活性剤の存在下に乳化重合される事が好ましいが、上記水中に自己乳化しているポリウレタン樹脂と乳化剤により水分散された粘着付与剤の存在下で乳化重合されてもよい事が同じ発明の実施形態の中の段落0024から段落0029に記載されている。
【0007】
接着剤樹脂の接着性能に影響する主要因子に被着体と接着剤樹脂の親和性が挙げられる。ポリエチレンやポリプロピレンの様な表面エネルギーの低い基材に対して親和性を示す素材としてはシリコーン樹脂やテフロンの様なシラン系やフッ素系化合物が代表例として挙げられる。その他としては長鎖の炭化水素基を有する化合物やオレフィン系骨格そのものを有する化合物なども挙げられる。実際、上記特許文献1では架橋性珪素基を分子内に有する硬化性樹脂や反応性希釈剤としてアルキルアルコキシやアリールアルコキシルシラン化合物を、特許文献2ではアルキル基が炭素数10以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体および塩素化ポリオレフィンを、特許文献3では変性ポリオレフィン樹脂が有効成分として含有される事が明記されている。しかしながらこれらオレフィン基材に親和性の高い素材は疎水性が強く、水に馴染みにくいため水系化に際しては乳化剤を配合し強制乳化させるか、もしくは変性反応により親水性極性基を導入し、自己乳化させる必要がある。乳化剤の配合については上述のとおり、接着剤の接着性能に悪影響を及ぼす。一方で親水性極性基導入による自己乳化処方についても局所的ではあるものの、分子中に水に親和性の高い親水性部位が導入される事で分子全体としての極性が高められ、オレフィン系被着体との親和性が低下し、結果として本来の良好な接着性が損なわれてしまう。
【0008】
この様な問題に鑑み、本発明は被着体のオレフィン系素材と親和性の高い接着剤成分を、乳化剤を一切使用する事無く、また変性反応により親水性極性基を導入する事も無く、水中に安定に分散させた、貯蔵安定性、接着性、密着性および耐水性に優れた自己乳化型エマルションを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、本発明者らは鋭意検討し、以下の発明を提案するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)、親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)及び粘着付与剤(C成分)を含有し、下記(1)および(2)を満足する自己乳化型エマルションである。
(1)アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)が乳化剤の存在無しに水中に分散している
(2)アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)からなる分散体粒子が親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)と粘着付与剤(C成分)を内包している
【0011】
前記親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)は、アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)100重量部に対して20重量部以上70重量部未満の範囲である事が好ましい。
【0012】
前記粘着付与剤(C成分)は、親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)100重量部に対して5重量部以上30重量部未満の範囲である事が好ましい。
【0013】
前記親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)及び粘着付与剤(C成分)を内包したアニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)からなる分散体粒子のZ平均粒子径は500nm以下であることが好ましい。
【0014】
前記いずれかに記載の自己乳化型エマルションを含有する接着剤組成物およびポリオレフィン系樹脂用接着剤。
【0015】
アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)、親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)および粘着付与剤(C成分)を溶剤および水に溶解させ、塩基性化合物を加えた後に、前記溶剤を留去する自己乳化型エマルションの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自己乳化型エマルションは、アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)が、親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)と粘着付与剤(C成分)を内包した状態で微細粒子の形で均一且つ安定的に水に分散しているため、貯蔵安定性が良好である。また、B成分は親水性極性基を有さないため、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系基材との親和性が高く、さらにC成分も同時に含有しているため接着性が良好である。また、A成分はB成分及びC成分を乳化させる働きのみならず、オレフィン系基材等の被着体表面への接着性を付与し、B成分およびC成分による接着力を安定化させる。さらに、乳化剤を実質的に使用しないため、当該エマルションを用いて作製した塗工皮膜はむら等の発生がなく、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂に対する密着性、耐水性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下この発明の実施形態を説明する。
【0018】
<アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)>
本発明で用いるアニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)(以下、単に「変性ポリウレタン樹脂」または「A成分」ともいう。)は、アニオン性官能基を有するポリウレタン樹脂であれば特に限定されない。アニオン性官能基とは、アニオン性を示す官能基であれば特に限定されず、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基等が挙げられる。中でも生産性や酸価のコントロールのしやすさからカルボン酸基が好ましい。また、変性ポリウレタン樹脂は、その構造中、ウレタン結合の他にエステル結合を有する、いわゆる変性ポリエステルウレタン樹脂であることが好ましい。変性ポリエステルウレタン樹脂であることで、分子量や酸価をコントロールしやすくなり、親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)や粘着付与剤(C成分)を内包することが容易になる。
【0019】
変性ポリウレタン樹脂は、特に限定されないが、ポリオール化合物とポリカルボン酸ポリ無水物とで、変性ポリエステル樹脂(水酸基末端のプレポリマー)を合成しておき、さらにポリイソシアネート化合物で分子延長(鎖延長)したものであることが好ましい。前記変性ポリエステル樹脂は、ポリオール化合物とポリカルボン酸ポリ無水物との反応物であるため、該変性ポリエステル樹脂の側鎖部位にカルボキシル基を有することができ、アニオン性官能基の濃度や酸価、分子量をコントロールするのに有利となる。
【0020】
ポリオール化合物としては、特に限定されないが、ゲル化反応の進行を避けるためジオール化合物が好ましい。中でもゴム骨格を有するジオール化合物であることが好ましく、ブタジエン系ゴム骨格を有するジオールやイソプレン系ゴム骨格を有するジオールが好ましい。ブタジエン系ゴム骨格としては、1,2−ブタジエンタイプ、1,3−ブタジエンタイプ、何れのタイプでも用いる事ができる。具体的には、例えば、ポリ−1,2−ブタジエンポリオール、ポリ−1,3−ブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、およびそれらの水素添加ポリオールなどが挙げられる。ポリオール化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、1000以上が好ましく、1200以上がより好ましく、1500以上がさらに好ましい。また、5000未満が好ましく、4500以下がより好ましく、4000以下がさらに好ましい。1000未満では生成する変性ポリエステル樹脂や、変性ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基濃度が必要以上に高くなり過ぎ、内包させるポリプロピレン系樹脂との相溶性が低下し内包出来なくなったり、被着体のオレフィン系基材との親和性が低下するため、接着性が低下することがある。また5000以上では生成樹脂中のカルボキシル基濃度が不足し、自己乳化機能が失われることがある。また、ポリオール化合物原料としての汎用性も無くなるため好ましくない。
【0021】
ポリカルボン酸ポリ無水物としては、特に限定されないが、入手性や反応性の観点からテトラカルボン酸二無水物であることが好ましい。具体的には、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、またはエチレングリコールビス無水トリメリット酸エステル等が挙げられる。被着体であるオレフィン系基材との親和性から、エチレングリコールビス無水トリメリット酸エステルが好ましい。
【0022】
これらポリオール化合物とテトラカルボン酸二無水物との反応はトルエン或いはキシレン溶液中、常圧下、100℃以上で、さらにアミン類を触媒として用いると比較的効率よく反応が進行するため好ましい。アミン類としては、特に限定されず、トリエチルアミンやトリメチルアミンを使用することができる。本発明では、このようにして得られた変性ポリエステル(水酸基末端のプレポリマー)を合成後、さらにポリイソシアネート化合物を添加して分子延長させ、さらに分子量を上げる事が有効である。
【0023】
本発明で用いる事が出来るポリイソシアネート化合物は特に限定されず、一般的なポリウレタン樹脂の重合に使用される種々化合物が使用出来る。中でも、ジイソシアネート化合物が好ましく、芳香族ジイソシアネート化合物または脂肪族ジイソシアネート化合物がより好ましい。具体的には、特に限定されないが、汎用性と反応性の面から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、または1,6−ヘキサンジイソシアネートが好ましい。
【0024】
変性ポリウレタン樹脂の合成は、通常、常圧下、40〜60℃で行う。触媒として、必要に応じてジブチル錫ジラウレート等の錫化合物を微量添加しても良い。また、反応系内に、変性ポリエステル樹脂合成時の触媒であるアミン類が存在している場合は、該アミン類がイソシアネート基と水酸基の反応触媒としても作用するため、必ずしも新たに触媒を添加する必要はない。
【0025】
変性ポリウレタン樹脂の酸価は、100eq/ton以上であることが好ましく、150eq/ton以上であることがより好ましく、200eq/ton以上であることがさらに好ましい。また、500eq/ton以下であることが好ましく、400eq/ton以下であることがより好ましい。小さすぎると乳化機能が不足しエマルションが形成されない場合があり、大きすぎると樹脂の極性が過度に高くなり、親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)との親和性が悪化し、内包出来なくなる場合がある。
【0026】
変性ポリウレタン樹脂のウレタン結合基濃度は500eq/ton以下であることが好ましく、より好ましくは400eq/ton以下であり、更に好ましくは300eq/ton以下である。ウレタン結合基は、変性ポリエステル樹脂の水酸基とイソシアネート基との反応により生成するため極性が高く、変性ポリウレタン樹脂中のウレタン基濃度が高くなりすぎると、オレフィン基材との親和性が低くなり、接着性能が低下することがある。
【0027】
変性ポリウレタン樹脂の数平均分子量は10,000以上が好ましく、15,000以上がより好ましく、20,000以上がさらに好ましい。また、50,000以下が好ましく、45,000以下がより好ましく、40,000以下がさらに好ましい。10,000未満では接着性能の不足やエマルション形成能力が低下することがある。一方50,000を越える場合にもエマルションの形成能力が低下する場合がある。
【0028】
<親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)>
本発明に用いられる親水性極性基を有さないポリプロレン系樹脂(B成分)(以下、単に「ポリプロピレン系樹脂」または「B成分」ともいう。)とは、ポリプロピレンおよびプロピレン−α−オレフィン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましく、該樹脂が自己乳化のための親水性極性基を変性反応により導入されていないものである。ここで、プロピレン−α−オレフィン共重合体とは、プロピレンを主体としてこれにα−オレフィンを共重合したものである。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどを1種または数種用いることができる。これらの中では、1−ブテンが好ましい。プロピレン−α−オレフィン共重合体のプロピレン成分とα−オレフィン成分との比率には特に制限はないが、プロピレン成分が50モル%以上であることが好ましい。
【0029】
プロピレン−α−オレフィン共重合体の製造方法については特に制限はないが、メタロセン系触媒を用いて重合したプロピレン−α−オレフィン共重合体は、均一な結晶性を有しており、溶剤に対する溶解性も優れており、好ましい。
【0030】
親水性極性基とは、ポリプロピレン系樹脂が自己乳化するために必要な官能基を指し、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、及びそれらとアミノ化合物や金属化合物とで形成されるアンモニウム塩や金属塩基等が挙げられる。また、親水性極性基を有さないとは、ポリプロピレン系樹脂の酸価として、20eq/ton以下であることが好ましく、10eq/ton以下であることがより好ましく、5eq/ton以下であることがさらに好ましく、1eq/ton以下であることが特に好ましく、0eq/tonであることが最も好ましい。
【0031】
本発明に用いられる親水性極性基を有さないポリプロレン系樹脂(B成分)の数平均分子量は、5,000〜60,000であるのが好ましく、7,000〜55,000であることがより好ましく、10,000〜50,000であることがさらに好ましい。5,000未満では、凝集力が弱くなり密着性が劣る場合がある。一方60,000を超えると、溶解状態が悪くなり、A成分によるエマルション形成時にエマルション粒子内に取り込まれない場合がある。
【0032】
ポリプロピレン系樹脂の配合量としては、変性ポリウレタン樹脂100重量部に対して、20重量部以上が好ましく、25重量部以上がより好ましく、30重量部以上がさらに好ましい。また、70重量部未満が好ましく、65重量部以下がより好ましく、60重量部以下がさらに好ましい。少なすぎると樹脂組成物全体の凝集力が低下し、接着強度が低下することがあり、多すぎると変性ポリウレタン樹脂からなる分散体粒子のZ平均粒子径が大きくなりすぎてしまい、安定なエマルションが形成されなかったり、樹脂組成物全体の被着体に対する密着力を低下させ過ぎ、接着性能を悪化させる場合がある。
【0033】
<粘着付与剤(C成分)>
本発明で使用される粘着付与剤(C成分)は、粘着性を付与することのできる化合物であれば特に限定されないが、親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)に対して相溶性の高い事が好ましい。相溶性が悪い場合、被着体のオレフィン系基材への接着性能が十分に発揮されないことがある。粘着付与剤のSP値はポリプロピレン系樹脂との相溶性を判断するおよその目安となる。親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂に対して良好な相溶性を示す粘着付与剤のSP値はHoyの計算式による値で、8.3〜9.0(J/cm1/2であることが好ましい。Hoyの計算式による粘着付与剤の様な高分子化合物のSP値(δ)は次の様にして求められる事が知られている。
δ(高分子化合物)=ρΣE/M
ここでρ:高分子化合物の密度、M:高分子化合物の繰り返し構造単位の分子量、E:高分子化合物を構成する個々の構造単位のモル凝集エネルギー定数である。Eの数値は種々文献に掲載されている数値を使用する事が出来る。数値が記載されている文献としては例えば、J.Paint Technology vol.42 76−118 (1970)が挙げられる。
また、実際に相溶性を確認する方法としては親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)と粘着付与剤(C成分)を混ぜ合わせて作製した乾燥塗膜の透明性が高いほど相溶性が高いと判断される。透明性は目視で確認することができるが、より正確にはHAZEメーター(1.0以下が好ましく、更に好ましくは0.5以下)等を使用する事で判断できる。或いは上記作製した乾燥フィルムの動的粘弾性特性を測定し、損失弾性率(E”)の主分散ピークが粘着付与剤配合前と比較しブロードになっていなければ相溶性が良好と判断される。
【0034】
粘着付与剤の軟化点は60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましく、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましい。また、数平均分子量は500以上が好ましく、700以上がより好ましく、800以上がさらに好ましく、1800以下が好ましく、1600以下がより好ましく、1500以下がさらに好ましい。500未満であると変性ポリウレタン樹脂塗膜の物性が低下したり、塗膜表面にブリードアウトしてしまう場合があり、1800を超えると変性ポリウレタン樹脂との相溶性が悪くなることがある。
【0035】
本発明で使用される粘着付与剤(C成分)は特に限定されないが、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、または石油系樹脂から選ばれることが好ましく、なかでもテルペン系樹脂がより好ましい。市販品の具体例としては、ヤスハラケミカル(株)製のクリアロン(登録商標)シリーズ(SP値:8.36〜8.55(J/cm1/2)、YSレジンシリーズ(SP値:8.73(J/cm1/2)、YSポリスターシリーズのポリスターU,T,S(SP値:8.69〜8.98(J/cm1/2))等が挙げられる。
【0036】
粘着付与剤(C成分)の配合量は、親水性極性基を有さないポリプロピレン系樹脂(B成分)100重量部に対して5重量部以上30重量部未満であることが好ましく、より好ましくは10重量部以上25重量部未満である。5重量部未満では粘着付与剤の配合効果が得られないことがあり、30重量部以上では、B成分およびC成分を内包したA成分の分散体粒子のZ平均粒子径が500nmを超えてしまい安定なエマルションが形成されなかったり、エマルション(樹脂組成物)全体の凝集力を低下させ過ぎ、接着性能を悪化させる場合がある。
【0037】
<自己乳化型エマルション>
本発明の自己乳化型エマルションは、(1)アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)が乳化剤の存在無しに水中に分散しており、(2)アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)からなる分散体粒子がポリプロピレン系樹脂(B成分)と粘着付与剤(C成分)を内包しているものである。すなわち、一切の乳化剤を含有せずに、変性ポリウレタン樹脂(A成分)、ポリプロピレン系樹脂(B成分)および粘着付与剤(C成分)が水中に均一安定分散している状態であれば、内包しているものと判断することができる。
【0038】
変性ポリウレタン樹脂(A成分)からなる分散体粒子がポリプロピレン系樹脂(B成分)と粘着付与剤(C成分)を内包し、微細粒子の状態で均一且つ安定的に水中に分散するため、貯蔵安定性が良好であり、さらにポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂基材に対する接着性、密着性、耐水性に優れる。
【0039】
本発明の自己乳化型エマルションにおける、変性ポリウレタン樹脂(A成分)と、ポリプロピレン系樹脂(B成分)および粘着付与剤(C成分)の内包状態としては、変性ポリウレタン樹脂(A成分)のブタジエンゴム又はイソプレンゴム鎖等のゴム骨格部位(疎水性部位)が内側、アニオン性官能基(カルボキシル基等)を有する部位(親水性部位)が外側の分散体粒子(ミセル状粒子)となって、この変性ポリウレタン樹脂(A成分)の内部にポリプロピレン系樹脂(B成分)および粘着付与剤(C成分)が内包されている。さらに変性ポリウレタン樹脂(A成分)の親水性部位が塩基性物質で中和されていると考えられる。このことは、エマルション粒子(分散体粒子)の平均粒子径がポリプロピレン系樹脂(B成分)および粘着付与剤(C成分)の配合量に応じて大きくなっていることからも推定することができる。
【0040】
本発明の自己乳化型エマルションは、ポリプロピレン系樹脂(B成分)および粘着付与剤(C成分)が、変性ポリウレタン樹脂(A成分)からなる分散体粒子に内包されているため、ポリプロピレン系樹脂(B成分)及び粘着付与剤(C成分)を乳化分散させるための押出し機や乳化機といった特別な設備が不要であり、しかも乳化剤の存在無しに乳化することができる。本発明で乳化剤の存在が無いとは、変性ポリウレタン樹脂(A成分)100重量部に対して、乳化剤が0.1重量部以下であることが好ましく、0.01重量部以下であることがより好ましく、0重量部であることがさらに好ましい。乳化剤の存在が無いことで、当該エマルションを用いて作製した塗工皮膜はむら等の発生がなく、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂基材に対する密着性、耐水性に優れる。
【0041】
自己乳化型エマルションのZ平均粒子径は、特に限定されないが、500nm以下であることが好ましい。より好ましくは450nm以下であり、さらに好ましくは400nm以下である。500nmを超えると、安定なエマルションが形成されないことがある。下限は特に限定されないが、通常50nm以上である。
【0042】
本発明の自己乳化型エマルションの調製方法の一例を以下に示すが、下記内容に限定されない。すなわち、初めに変性ポリウレタン樹脂(A成分)を芳香族系溶剤中で重合し、そこにポリプロピレン系樹脂(B成分)と粘着付与剤(C成分)を所定の比率でエーテル系溶剤、アルコール系溶剤と共に加熱溶解させ、これに塩基性物質を添加して中和し、脱イオン水を徐々に添加して乳化させ、冷却した後に、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤および芳香族系溶剤を除去することで得ることができる。
【0043】
これを、工程ごとに説明する。
【0044】
1)アニオン性官能基を有する変性ポリウレタン樹脂(A成分)の重合
ポリブタジエンジオール又はポリイソプレンジオール等のジオール化合物と、その1/2モル量のテトラカルボン酸二無水物および芳香族系溶剤を仕込み、加熱して均一に溶解させる。芳香族系溶剤としては、特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ソルベントナフサ等が挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でもトルエンが好ましい。溶剤量はジオール成分とテトラカルボン酸二無水物の混合物合計が、50〜70重量%となる量が好ましい。
反応温度を100〜110℃に保ち、反応触媒としてのアミン類を添加する。添加量は生成樹脂(変性ポリエステル樹脂)固形分重量に対して0.01〜0.05重量%程度が好ましい。アミン類としては、トリエチルアミンやトリメチルアミン等種々の3級アミン類を用いる事が出来るが、トリエチルアミンが好ましい。反応は触媒アミン類を添加後3時間程度で終了する。
【0045】
次いで反応温度を40〜50℃まで冷却し、エーテル系溶剤を添加して樹脂の固形分濃度を50重量%に希釈することが好ましい。同温度のまま、先に添加したテトラカルボン酸二無水物と等モル量のジイソシアネート化合物を添加し、同温度のまま2時間程度反応させる。エーテル系溶剤としては、特に限定されないが、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、テトラヒドロフランが好ましい。
【0046】
2)ポリプロピレン系樹脂(B成分)及び粘着付与剤(C成分)を内包したエマルションの調製
上記ウレタン反応終了後、更にエーテル系溶剤を追加して、固形樹脂分が30重量%になる様に希釈する。60〜70℃で攪拌しつつ、ポリプロピレン系樹脂(B成分)のペレットを所定量投入し、均一に溶解させた後、引き続き粘着付与剤(C成分)を所定量投入し、均一に溶解させる。
【0047】
同温で所定量のアルコール系溶剤を添加し、均一になるように攪拌する。アルコール系溶剤としては、特に限定されないが、炭素数1〜7の脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環式アルコール等が挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、炭素数3〜5の脂肪族アルコールが好ましく、イソプロピルアルコールが汎用性と有機溶剤との相溶性の観点からより好ましい。次いで同温度を維持した状態で塩基性物質を添加する。塩基性物質としては、特に限定されないが、モルホリン;アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン等が挙げられ、これらを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい塩基性物質は、ジメチルエタノールアミンである。塩基性物質の使用量は、変性ポリウレタン樹脂(A成分)のカルボキシル基(アニオン性官能基)に対して、1〜5化学当量であるのが好ましく、1.5〜3.5化学当量であるのがより好ましい。本発明の自己乳化型エマルションは、中性からアルカリ性に保持することで安定性をより維持できる。塩基性物質の添加方法としては、そのまま添加しても良いが、より均一に混合するために水で希釈して添加しても良い。また、塩基性物質を添加する温度および分散時間は、特に制限されないが、溶解温度と同様に60℃〜75℃で、分散に要する時間は15分〜30分が好ましい。
【0048】
次いで所定量の脱イオン水を同温度で攪拌しながら少量ずつ添加し、全量を約1時間掛けて一定速度を保ちつつ投入する。
【0049】
使用するエーテル系溶剤、アルコール系溶剤および芳香族系溶剤の割合は、特に限定されないが、重量比で、エーテル系溶剤:アルコール系溶剤:芳香族系溶剤=100:3〜50:3〜50であることが好ましく、より好ましくは100:5〜35:5〜35である。エーテル系溶剤100重量部に対するアルコール系溶剤の割合が50重量部を超えると、製造工程中の高温時での変性ポリウレタン樹脂(A成分)の溶解性が低下し、均一な分散ができないことがある。また、芳香族系溶剤の割合が50重量部を超えると、粒子と粒子が凝集して凝集物が多く生成し、均一な分散ができないことがある。また、アルコール系溶剤または芳香族系溶剤の割合が3重量部未満であると、その効果が発現せず、均一な分散ができないことがある。
【0050】
変性ポリウレタン樹脂(A成分)とポリプロピレン系樹脂(B成分)及び粘着付与剤(C成分)の合計量、水、ならびにエーテル系溶剤とアルコール系溶剤と芳香族系溶剤との総有機溶剤の割合は、任意に選択することができるが、重量比で、A成分とB成分とC成分の合計量:水:総有機溶剤=100:50〜800:11〜900であるのが好ましく、100:200〜400:43〜233であるのがより好ましい。水または総有機溶剤が多い場合は、A成分の水への分散がより容易に起こるが、濃縮に時間を要したり、容積効率が低下するので、経済的に不利となり、実用的ではない。水が少ない場合には、分散出来ない場合がある。総有機溶剤が少ない場合には、加熱溶解時に著しく粘度が上昇し、均一な溶解ができず、結局、均一な分散ができないことがある。
【0051】
加熱溶解する際の温度は特に制限されないが、50℃以上が好ましい。また、75℃以下であれば、使用する有機溶剤の沸点以下であり、加熱溶解するのに圧力容器が不要で、好ましい。
【0052】
次に、得られた分散体から有機溶剤を除去して、自己乳化型エマルションを得る。有機溶剤を除去するには、減圧で留去すればよい。留去する際の減圧度、温度は、特に制限されないが、90〜95KPa(絶対圧力)程度、20〜60℃程度が好ましい。この際、水の一部も留去されることがある。減圧蒸留により有機溶剤と一部の水を留去した後の自己乳化型エマルションの組成(重量比)は、A成分とB成分とC成分の合計量:塩基性物質:水=1:0.06〜0.33:1.5〜4であるのが好ましい。また減圧留去後の有機溶剤残留量はA成分とB成分とC成分の合計量100重量部に対して、1重量部以下であることが好ましく、0.1重量部以下であることがより好ましく、0重量部であることが特に好ましい。なお、必要に応じて追加量の水を添加することができる。
【0053】
本発明の自己乳化型エマルションには必要に応じて硬化剤を配合する事が出来る。特に限定されないが、例えば水溶性多官能エポキシ樹脂、水溶性多官能カルボジイミド樹脂、多官能イソシアネート化合物水分散体、多官能シリル基を有する水溶性シランカップリング剤等が挙げられる。これらのうち、水溶性多官能エポキシ樹脂が好ましい。市販品の具体例としてはナガセケムテック(株)製、「デナコール(登録商標)EX−512」、「デナコールEX−521」、「デナコールEX−614B」、「デナコールEX−821」、「デナコールEX−920」等が挙げられる。これら水溶性エポキシ樹脂は本発明の自己乳化型エマルションに対して任意の割合で添加できるが、エマルション中の変性ポリウレタン樹脂(A成分)が有する酸価に等量のエポキシ基当量となる様に配合されるのが好ましい。
【0054】
その他、本発明の自己乳化型エマルションには接着性能を低下させない範囲で種々充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤等の種々添加剤を配合しても良い。
【0055】
本発明で得られる自己乳化型エマルションは、ポリオレフィン系樹脂基材に対する密着性に優れているので、塗装、印刷、接着、コーティングの際のプライマーや、塗料、インキ、コーティング剤、接着剤の用途に有用である。
【0056】
ポリオレフィン系樹脂基材としては、従来から公知のポリオレフィン樹脂の中から適宜選択すればよい。例えば、特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などを用いることができる。ポリオレフィン系樹脂基材には必要に応じて顔料や種々の添加物を配合してもよい。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中および比較例中に単に「部」とあるのは重量部を示す。また、本発明で採用した測定・評価方法は以下のとおりである。
【0058】
(1)変性ポリエステル樹脂及び変性ポリウレタン樹脂の数平均分子量の測定
試料(変性ポリエステル樹脂または変性ポリウレタン樹脂)濃度が0.5重量%程度となるように試料をテトラヒドロフランに溶解し、孔径0.5μmのポリ四フッ化エチレン製メンブレンフィルターで濾過したものを測定用試料とした。ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)150Cを用い、テトラヒドロフランをキャリアー溶剤とし、RI検出器を用いて流速1ml/分で測定した。カラムとして昭和電工(株)製 Shodex KF−802、KF−804、KF−806を3本連結しカラム温度は30℃に設定した。分子量標準サンプルとしてはポリスチレン標準物質を用いた。
【0059】
(2)変性ポリウレタン樹脂の酸価
試料(変性ポリウレタン樹脂の80%トルエン溶液)0.2gを20mlのテトラヒドロフランに溶解後、0.1N−NaOHエタノール溶液でフェノールフタレインを指示薬として測定した。測定値を樹脂固形分10g中の当量数(eq/ton)で示した。
【0060】
(3)ポリマー組成
試料をクロロホルム−d/DMSO−d=1/1混合溶媒に溶解し、ヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)“ジェミニ−400−MR”を用い、H−NMR分析により樹脂組成比を求めた。
【0061】
(4)エマルション固形分濃度の測定
50mlガラス製秤量瓶にサンプルのエマルション約1gを採り、精秤する。次いでサンプルを採取した秤量瓶を120℃の熱風乾燥機で2時間乾燥させ、取り出した秤量瓶をデシケーターに入れ、室温で30分放置・冷却する。デシケーターから秤量瓶を取り出し、重量を精秤し、熱風乾燥前後の重量変化(下記式)からエマルション固形分濃度の重量%を算出する。
エマルション固形分濃度(重量%)=[(熱風乾燥前のサンプル重量)−(熱風乾燥後のサンプル重量)]/(熱風乾燥前のサンプル重量)×100
【0062】
(5)変性ポリウレタン樹脂、ポリプロピレン系樹脂、粘着付与剤含有量の定量
上記固形分濃度の測定で得られた乾燥サンプル(樹脂)を重クロロホルムに溶解し、ヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)“ジェミニ−400−MR”を用い、H−NMR分析により、変性ポリウレタン樹脂(A成分)、ポリプロピレン系樹脂(B成分)及び粘着付与剤(C成分)の比率を求めた。
【0063】
(6)エマルション粘度の測定
東機産業(株)製“Viscometer TV-22”(E型粘度計)を用い、0.6gのサンプルをローターNo.0.8°(=48’)×R24、レンジH、回転数5rpm、25℃の条件で測定した。
【0064】
(7)エマルションpHの測定
堀場製作所製“pH meter F−52”を用い、25℃での値を測定した。尚、測定器の校正は和光純薬工業(株)製、フタル酸塩pH標準液(pH:4.01)、中性燐酸塩pH標準液(pH:6.86)、ホウ酸塩pH標準液(pH9.18)を用い、3点測定で実施した。
【0065】
(8)エマルションのZ平均粒子径の測定
Malvern社製“ゼータサイザーナノ Nano−ZS Model ZEN3600”を用い、0.05g/Lの濃度に調製したサンプルを25℃で3回測定し、その平均値とした。
【0066】
(9)エマルションの保存安定性評価
実施例・比較例で調製されたエマルションを40℃のインキュベーター内で静置状態で保存し、エマルションの経時外観変化を観察した。長期間(3ヶ月以上)外観に変化がないものほど良好である。
【0067】
(10)オレフィン系基材への接着性、密着性の評価
<ポリエチレン板//ポリプロピレンフィルム剥離試験(接着性)>
実施例・比較例で得られたエマルションにレベリング剤としてダイノール(登録商標)604(エアープロダクツ(株)製)をエマルションに対して0.5重量%配合した。配合物を、(株)パルテック社製2mm厚、25mm×100mmサイズの高密度ポリエチレンテストピースに#16のワイヤーバーを用いて、引っ張り試験機のチャックつかみしろとしてテストピース片端約1cmを残して塗工し、100℃の熱風乾燥機で10分乾燥させた。乾燥機から取り出した直後の塗工面に25mm×200mmサイズの60μm厚OPPフィルムの未処理面をチャックつかみしろが同じ方向になる様に貼り合せ、120kg/mの荷重を掛けて100℃のオーブンで10分間エージングし、接着サンプルを得た。オーブンから取り出した接着サンプルを室温で一晩放置後、引っ張り試験機(Orientec社製“RTM−100”)を用い剥離試験を実施した。引っ張り条件はチャックの片方でポリエチレンテストピースの端を、他方でOPPフィルムの端をつかみ、5kgfロードセルを用い、50mm/分の引っ張り速度で上下方向に引いて180°剥離試験を実施した。同試験を4回実施し、測定強度の平均値を剥離強度とした。同時に剥離面を観察し、剥離状態を確認した。
(判定基準)
◎:3.0N/cm以上(完全凝集剥離状態にあり、剥離したポリエチレン、OPP両方の剥離面全面に接着剤樹脂が残っており、最も強い接着強度が得られる。)
○:2.0N/cm以上3.0N/cm未満(ポリエチレン界面で剥離した部分とOPP界面で剥離した部分が両方混在しており、比較的強い接着強度が得られる。)
△:1.0N/cm以上2.0N/cm未満(ポリエチレン界面剥離、弱い接着性が得られる。)
×:1.0N/cm未満(ポリエチレン界面剥離、殆ど接着性が得られない。)
【0068】
<ポリエチレン板 碁盤目剥離試験(密着性)>
実施例・比較例で得られたエマルションにレベリング剤としてダイノール(登録商標)604(エアープロダクツ(株)製)をエマルションに対して0.5重量%配合した。配合物を、(株)パルテック社製2mm厚、25mm×100mmサイズの高密度ポリエチレンテストピースに#8のワイヤーバーを用いて塗工し、100℃の熱風乾燥機で10分乾燥させた。得られた塗膜表面に2mm幅のクロスカットガイドを用いて鋭利なカッターナイフで10×10個の升目を切り込み、ニチバン(株)製セロハンテープを貼り合せた。貼り合せ面全体がしっかりと被着面に接触している事を確認し、一気にテープを引き剥がした。被着体(ポリエチレンテストピース)表面に残存している塗膜の升目数を数え、評価結果とした。従って「100」が最も良好な値を意味し、「0」が最も悪い結果を意味している。同一サンプルでの評価は3回実施し、その平均値を採用した。
【0069】
(11)塗膜耐水性の評価
実施例・比較例で得られたエマルションにレベリング剤としてダイノール(登録商標)604(エアープロダクツ(株)製)をエマルションに対して0.5重量%配合した。配合物の塗工液を#40Eワイヤーバーを用いて25μm厚のOPPフィルムに塗布し、熱風乾燥機で120℃、30分間乾燥させた。得られた塗工膜を2.5cm×30cmの短冊状にカットし、シリカゲルを入れたデシケーター内で24時間保存し、乾燥させ、短冊状塗膜(耐水性試験サンプル)を得た。次いで個々の短冊状塗膜を取り出し、密閉性の金属缶に入れて塗膜重量を精秤した。金属缶から短冊状塗膜を取り出し、40℃の温水に5分間浸漬した後、取り出して表面付着水をガーゼで丁寧にふき取り、再度密閉性の金属缶に入れて精秤した。温水浸漬前後の吸水による塗布膜の重量増加率を計算し、耐水性の指標とした。塗布膜の重量増加率により、評価基準を以下のようにした。
○:温水浸漬後の重量増加率 <2.5%
△:温水浸漬後の重量増加率 2.5〜3.5%
×:温水浸漬後の重量増加率 >3.5%
【0070】
[合成例1]
アニオン性官能基を含有する変性ポリエステルウレタン樹脂(A成分):A−1の合成例
攪拌棒、温度計、コンデンサーを具備した1L4つ口フラスコに日本曹達(株)製水素化ポリ−1,2−ブタンジエンジオール(GI−3000)を240部とトルエン80部を仕込み、100℃で均一に溶解させた。次いで新日本理化(株)製TMEG−200を12.5部仕込み、均一になるように攪拌し、反応触媒としてトリエチルアミン0.03部を添加した。同温度で3時間攪拌後、反応液を60℃に冷却し、テトラヒドロフラン173部で希釈した。更に同温度で攪拌しつつ、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート7.2部を添加し3時間後、反応を終了した。テトラヒドロフラン354部で希釈して変性ポリエステルウレタン樹脂(A−1)の30重量%溶液を得た。変性ポリエステルウレタン樹脂(A−1)の酸価及び数平均分子量は以下の様であった。
酸価:230eq/ton
数平均分子量:32,000
【0071】
[合成例2]
アニオン性極性基を有する変性ポリエステルウレタン樹脂(A成分):A−2の合成例
攪拌棒、温度計、コンデンサーを具備した1L4つ口フラスコに日本曹達(株)製ポリ−1,2−ブタンジエンジオール(G−3000)を100部と三菱化学製ポリ−1,3−ブタジエン−ポリアクリルブロック共重合体オリゴマージオール(ポリテール(登録商標)H)100部とトルエン100部を仕込み、均一に溶解し、温度を100℃に保った。次いで新日本理化(株)製TMEG−200を13.3部添加し、均一になるように攪拌し、反応触媒としてトリエチルアミン0.03部を添加した。同温度で3時間攪拌後、反応液を50℃に冷却し、テトラヒドロフラン120部で希釈した。さらに同温度で撹拌しつつ、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを6.6部添加し、同温度で3時間攪拌後、反応を終了した。テトラヒドロフラン293部で希釈し、変性ポリエステルウレタン樹脂(A−2)の30重量%溶液を得た。変性ポリエステルウレタン樹脂(A−2)の酸価及び数平均分子量は以下の様であった。
酸価:290eq/ton
数平均分子量:33,000
【0072】
[調製例1]
自己乳化型エマルション:E−1の調製例
攪拌棒、温度計、コンデンサーを具備した1L4つ口フラスコに上記変性ポリエステルウレタン樹脂(A−1)の30重量%溶液を100部仕込み、60℃に加温後、B成分として出光興産(株)製エルモーデュ(登録商標)S−400(ポリプロピレン)を15部とC成分としてヤスハラケミカル製テルペンフェノール樹脂(YSポリスターT130(SP値:8.81(J/cm1/2))を2.3部仕込み、溶解した。次いでイソプロピルアルコール10部を加えた後、ジメチルアミノエタノール1.5部を2mLの脱イオン水に混合し、滴下ロートを用いて同温度で滴下した。引き続き同温度で約10分間攪拌後、脱イオン水150部を約1時間かけて滴下し、分散体を得た。滴下終了後、ロータリーエバポレーターを用いて分散体から有機溶剤成分と水分の一部を減圧下で留去し、エマルション(E−1)を得た。得られたエマルション(E−1)の固形分濃度は29.0重量%、25℃での粘度は3.8mPa・s、pHは9.4、Z平均粒子径は245nmであった。また、エマルション(E−1)を40℃のインキュベーターに保存し、保存安定性を評価したところ、3ヶ月経過時点で外観に変化は認められなかった。これらの結果を表−1にまとめた。
【0073】
[調製例2]
自己乳化型エマルション:E−2の調製例
上記、エマルション(E−1)と同様の方法で、B成分としての出光興産(株)製エルモーデュ(登録商標)S−400と、C成分としてのヤスハラケミカル製テルペンフェノール樹脂(YSポリスターT130)の仕込み量を各々8部と1部に変更し、その他は全て同様の操作によりエマルション(E−2)を得た。得られたエマルション(E−2)の固形分濃は31.2重量%、25℃での粘度は5.6mPa・s、pHは9.5、Z平均粒子径は194nmであった。調製例2では、調整例1よりもポリプロピレン系樹脂および粘着付与剤を減量したので、実施例1よりも平均粒子径が小さくなっていることがわかる。また、エマルションE−2を40℃のインキュベーターに保存し、保存安定性を評価したところ、3ヶ月経過時点で外観に変化は認められなかった。これらの結果を表−1にまとめた。
【0074】
[調製例3]
自己乳化型エマルション:E−3の調製例
攪拌棒、温度計、コンデンサーを具備した1L4つ口フラスコに上記変性ポリエステルウレタン樹脂(A−2)の30重量%溶液を100部仕込み、60℃に加温後、B成分として出光興産(株)製エルモーデュS−400を13部とC成分としてヤスハラケミカル製テルペンフェノール樹脂YSポリスターT130を1.9部仕込み、溶解した。次いでイソプロピルアルコール10部を加えた後、ジメチルアミノエタノール1.5部を2mLの脱イオン水に混合し、滴下ロートを用いて同温度で滴下した。引き続き同温度で約10分間攪拌後、脱イオン水150部を約1時間かけて滴下し、分散体を得た。滴下終了後、ロータリーエバポレーターを用いて分散体から有機溶剤成分と水分の一部を減圧下で留去し、エマルション(E−3)を得た。得られたエマルション(E−3)の固形分濃度は30.9重量%、25℃での粘度は7.2mPa・s、pHは9.3、Z平均粒子径は220nmであった。また、エマルション(E−3)を40℃のインキュベーターに保存し、保存安定性を評価したところ、3ヶ月経過時点で外観に変化は認められなかった。これらの結果を表−1にまとめた。
【0075】
[調整例4]
自己乳化エマルション:E−4の調製例
上記、エマルション(E−3)と同様の方法で、B成分としての出光興産(株)製エルモーデュ(登録商標)S−400と、C成分としてのヤスハラケミカル製テルペンフェノール樹脂(YSポリスターT130)の仕込み量を各々13部と2.6部に変更し、その他は全て同様の操作によりエマルション(E−4)を得た。得られたエマルション(E−4)の固形分濃は29.9重量%、25℃での粘度は7.0mPa・s、pHは9.4、Z平均粒子径は252nmであった。また、エマルション(E−4)を40℃のインキュベーターに保存し、保存安定性を評価したところ、3ヶ月経過時点で外観に変化は認められなかった。これらの結果を表−1にまとめた。
【0076】
[調製例5]
自己乳化型エマルション:E−5調製例
攪拌棒、温度計、コンデンサーを具備した1L4つ口フラスコに上記変性ポリエステルウレタン樹脂(A−2)の30重量%溶液を100部仕込み、60℃に加温後、B成分としてクラリアント(株)製リコセンPP1602(ポリプロピレン)を13部とC成分としてヤスハラケミカル(株)製水添テルペン樹脂クリアロン(登録商標)P125(SP値:8.36(J/cm1/2)を1.9部溶解した。次いでイソプロピルアルコール10部を加えた後、ジメチルアミノエタノール1.5部を2mLの脱イオン水に混合し、滴下ロートを用いて同温度で滴下した。引き続き同温度で約10分間攪拌後、脱イオン水150部を約1時間かけて滴下し、分散体を得た。滴下終了後、ロータリーエバポレーターを用いて分散体から有機溶剤成分と水分の一部を減圧下に留去し、エマルション(E−5)を得た。得られたエマルション(E−5)の固形分濃度は30.2重量%、25℃での粘度は6.6mPa・s、pHは8.9、Z平均粒子径は229nmであった。また、エマルション(E−5)を40℃のインキュベーターに保存し、保存安定性を評価したところ、3ヶ月経過時点で外観に変化は認められなかった。これらの結果を表−1にまとめた。
【0077】
自己乳化エマルション:E−6の調製例
上記、エマルション(E−5)と同様の方法で、B成分としてのクラリアント(株)製リコセンPP1602と、C成分としてのヤスハラケミカル製の水添テルペン樹脂クリアロン(登録商標)P125の仕込み量を各々13部と0.7部に変更し、その他は全て同様の操作によりエマルション(E−6)を得た。得られたエマルション(E−6)の固形分濃は30.1重量%、25℃での粘度は6.8mPa・s、pHは9.6、Z平均粒子径は212nmであった。また、エマルション(E−6)を40℃のインキュベーターに保存し、保存安定性を評価したところ、3ヶ月経過時点で外観に変化は認められなかった。これらの結果を表−1にまとめた。
【0078】
[比較調製例1]
自己乳化型エマルション:E−7の比較調製例
上記エマルション(E−1)と同様の方法で、C成分は使用せず、その他は全て同様の操作によりエマルション(E−7)を得た。得られたエマルション(E−7)の固形分濃は30.8重量%、25℃での粘度は4.7mPa・s、pHは9.4、Z平均粒子径は216nmであった。また、エマルション(E−7)40℃のインキュベーターに保存し、保存安定性を評価したところ、3ヶ月経過時点で外観に変化は認められなかった。これらの結果を表−1にまとめた。
【0079】
[比較調製例2]
自己乳化型エマルション:E−8の比較調製例
上記エマルション(E−1)と同様の方法で、B成分を使用せず、その他は全て同様の操作によりエマルション(E−8)を得た。得られたエマルション(E−8)の固形分濃は28.8重量%、25℃での粘度は3.1mPa・s、pHは9.3、Z平均粒子径は173nmであった。また、エマルション(E−8)を40℃のインキュベーターに保存し、保存安定性を評価したところ、3ヶ月経過時点で外観に変化は認められなかった。これらの結果を表−1にまとめた。
【0080】
[比較調製例3]
自己乳化型エマルション:E−9の比較調製例
上記エマルション(E−1)と同様の方法で、B成分及びC成分を使用せず、その他は全て同様の操作によりエマルション(E−9)を得た。得られたエマルション(E−9)の固形分濃は29.8重量%、25℃での粘度は4.1mPa・s、pHは9.1、Z平均粒子径は169nmであった。また、エマルション(E−9)を40℃のインキュベーターに保存し、保存安定性を評価したところ、3ヶ月経過時点で外観に変化は認められなかった。これらの結果を表−1にまとめた。
【0081】
以下にB成分にカルボキシル基を変性反応により付加して、親水性極性基を有するポリプロピレン系樹脂を得た後、A成分を用いる事無く、B成分自身で自己乳化型エマルションを形成させた場合の比較例を示す。
【0082】
[比較合成例1]
酸付加変性ポリプロピレン系樹脂(B−1)の比較合成例
攪拌棒、温度計を具備した加圧可能な金属製1L反応釜に出光興産(株)製エルモーデュS−901(ポリプロピレン)を300部、無水マレイン酸を25部、及びトルエン450部を仕込み、窒素置換後、加圧系で2時間掛けて130℃まで昇温した。次いで反応触媒としてパーブチルDを12部注入し、140℃まで昇温し、同温度で3時間反応させた。3時間後、反応系内を常圧・常温に戻し、反応生成物を取り出し、1Lのメチルエチルケトン中で再沈殿させ、未反応のマレイン酸成分を除いた。更に1Lのメチルエチルケトンで洗浄した後、生成物を冷却し、スラリー状に砕いた。次いで得られたスラリー状物を遠心分離機を用いて脱液後、真空乾燥機を用いて50℃で一昼夜乾燥させ、フレーク状の酸付加変性ポリプロピレン系樹脂(B−1)を得た。得られたB−1の分子量及び酸価は以下の様であった。
数平均分子量:35,000
酸価:220eq/ton
【0083】
[比較合成例2]
酸付加変性ポリプロピレン系樹脂(B−2)の比較合成例
上記B−1と同様の方法で、出光興産(株)製エルモーデュS−901に代えて三井化学製タフマー(登録商標)XM−7080(ポリプロピレン)を用い、同様の工程により無水マレイン酸付加を行い、酸付加変性ポリプロピレン系樹脂(B−2)を得た。得られたB−2の分子量及び酸価は以下の様であった。
数平均分子量:33,000
酸価:240eq/ton
【0084】
[比較調製例4]
自己乳化型エマルション:E−10の比較調製例
脱イオン水140g、上記酸付加変性ポリプロピレン樹脂(B−1)を50部、テトラヒドロフラン38部、イソプロピルアルコール8部およびトルエン8部を攪拌棒、温度計、コンデンサーを具備した1L4つ口フラスコに仕込み、70℃に昇温した後、同温度で2時間加熱溶解した。次に、ジメチルエタノールアミン2.0部を添加し、同温度を保ちながら1時間攪拌した後、徐々に40℃まで冷却した。ついでロータリーエバポレーターを用いて得られた分散体から有機溶剤成分と水分の一部を減圧下に留去し、エマルション(E−10)を得た。得られたエマルション(E−10)の固形分濃度は25.5重量%、25℃での粘度は7.2mPa・s、pHは8.6、Z平均粒子径は262nmであった。また、エマルション(E−10)を40℃のインキュベーターに保存し、保存安定性を評価したところ、1週間経過時点で容器の内壁及び底面に凝集物の生成が確認された。これら結果を表−2にまとめた。
【0085】
[比較調製例5]
乳化剤併用型エマルション:E−11の比較調整例
上記エマルション(E−10)と同様の方法で、酸付加変性ポリプロピレン樹脂(B−1)と共に花王(株)製“ネオペレックス(登録商標)G−65”を5部配合し、その他全て同様の操作によりエマルション(E−11)を調製した。得られたエマルション(E−11)の固形分濃度は28.5重量%、25℃での粘度は6.3mPa・s、pHは8.5、Z平均粒子径は362nmであった。また、エマルション(E−11)を40℃のインキュベーターに保存し、保存安定性を評価したところ、2ヶ月経過時点で容器の底面に凝集物の沈殿が確認された。これら結果を表−2にまとめた。
【0086】
[比較調製例6]
自己乳化型エマルション:E−12の比較調製例
上記エマルション(E−10)と同様の方法で酸付加変性ポリプロピレン樹脂(B−1)に代えて酸付加変性ポリプロピレン樹脂(B−2)を用い、他は同様の方法で微濁黄色の均一なエマルション(E−12)を得た。得られたこのエマルション(E−12)の固形分濃度は30.2重量%、25℃での粘度は10.2mPa・s、pHは9.1、Z平均粒子径は168nmであった。また、エマルション(E−12)を40℃のインキュベーターに保存し、保存安定性を評価したところ、3ヶ月経過時点で外観に変化は認められなかった。これら結果を表−2にまとめた。
【0087】
実施例1〜6
上記合成例・調製例で得られたエマルションE−1〜E−6を用いて上記接着性試験と耐水性試験を実施し、結果を表−3にまとめた。
【0088】
比較例1〜6
上記比較合成例・比較調製例で得られたエマルションE−7〜E−12を用いて上記接着性試験と耐水性試験を実施し、結果を表−3にまとめた。
【0089】
表−3から明らかな様にポリプロピレン系樹脂に酸付加変性を施し、自己乳化型エマルションを形成させた場合、ポリエチレン基材に対して良好な接着性が得られない。一方、ポリプロピレン系樹脂に酸付加変性を施さずにオレフィン基材に対して親和性の高いポリエステルウレタン(A成分)のエマルション中に、粘着付与剤(C成分)と共に取り込むことでポリエチレン基材に対して良好な接着性が発現する。また乳化剤の配合により、被着体との接着性や塗膜の耐水性は顕著に低下する。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の自己乳化型エマルションは、ポリオレフィン系樹脂基材に対する密着性に優れているので、塗装、印刷、接着、コーティングの際のプライマーや、塗料、インキ、コーティング剤、接着剤の用途に有用である。
【国際調査報告】