再表2016-143859IP Force 特許公報全文掲載

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年9月15日
【発行日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】磁気光学材料及びその製造方法、並びに磁気光学デバイス
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/28 20060101AFI20171027BHJP
   C04B 35/50 20060101ALI20171027BHJP
   C04B 35/645 20060101ALI20171027BHJP
   C30B 29/30 20060101ALI20171027BHJP
   C30B 29/22 20060101ALI20171027BHJP
   C30B 29/32 20060101ALI20171027BHJP
   G02B 1/02 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
   G02B27/28 A
   C04B35/50
   C04B35/645 500
   C30B29/30 B
   C30B29/22 Z
   C30B29/32 A
   G02B1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
【出願番号】特願2017-505398(P2017-505398)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2016/054856
(32)【優先日】2016年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-48149(P2015-48149)
(32)【優先日】2015年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓士
(72)【発明者】
【氏名】碇 真憲
【テーマコード(参考)】
2H199
4G077
【Fターム(参考)】
2H199AA13
2H199AA23
2H199AA41
2H199AA72
2H199AA93
4G077AA02
4G077BC36
4G077BC41
4G077BC60
4G077CA03
4G077EC10
4G077HA03
4G077JA01
(57)【要約】
波長帯0.9〜1.1μmのファイバーレーザー光を吸収することなく、そのため熱レンズの発生を抑制した光アイソレータなどの磁気光学デバイスを構成するのに好適な透明な磁気光学材料として、下記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含む透明セラミックス又は下記式(1)で表される複合酸化物の単結晶からなる磁気光学材料を提供する。
Tb2xR2(2-x)O8-x (1)
(式中、0.800<x<1.00であり、Rはシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素である(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素単独であることを除く)。)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含む透明セラミックス又は下記式(1)で表される複合酸化物の単結晶からなることを特徴とする磁気光学材料。
Tb2xR2(2-x)O8-x (1)
(式中、0.800<x<1.00であり、Rはシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素である(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素単独であることを除く)。)
【請求項2】
光路長10mmとして波長1064nmのレーザー光をビーム径1.6mmで入射させた場合、熱レンズが発生しないレーザー光の入射パワーの最大値が30W以上である請求項1記載の磁気光学材料。
【請求項3】
光路長10mm当たりの波長1064nmの光の直線透過率が90%以上である請求項1又は2記載の磁気光学材料。
【請求項4】
パイロクロア格子を有する立方晶が主相となった請求項1〜3のいずれか1項記載の磁気光学材料。
【請求項5】
酸化テルビウム粉末と、シリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの酸化物粉末(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素酸化物単独であることを除く)とをるつぼ内で焼成して立方晶パイロクロア型酸化物を主成分とする焼成原料を作製し、該焼成原料を粉砕して原料粉末とし、この原料粉末を用いて所定形状に成形した後に焼結し、更に熱間等方圧プレス処理して下記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含む透明セラミックスの焼結体を得る磁気光学材料の製造方法。
Tb2xR2(2-x)O8-x (1)
(式中、0.800<x<1.00であり、Rはシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素である(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素単独であることを除く)。)
【請求項6】
酸化テルビウム粉末とシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの酸化物粉末とを、そのテルビウム原子とシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの原子とのモル比率がx:(2−x)(ただし、xは0.800より大、1.00より小である)となるように秤量し、混合した後にるつぼ内で焼成する請求項5記載の磁気光学材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項記載の磁気光学材料を用いて構成されることを特徴とする磁気光学デバイス。
【請求項8】
磁気光学材料をファラデー回転子として備え、該ファラデー回転子の光学軸上の前後に偏光材料を備えた波長帯0.9μm以上1.1μm以下で利用可能な光アイソレータである請求項7記載の磁気光学デバイス。
【請求項9】
ファラデー回転子は、その光学面に反射防止膜を有することを特徴とする請求項8記載の磁気光学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気光学材料及び磁気光学デバイスに関し、より詳細には、光アイソレータなどの磁気光学デバイスを構成するのに好適な複合酸化物を含む透明セラミックス又は単結晶からなる磁気光学材料及びその製造方法、並びに該磁気光学材料を用いた磁気光学デバイス
【背景技術】
【0002】
近年、高出力化が可能となってきたこともあり、ファイバーレーザーを用いたレーザー加工機の普及が目覚しい。ところで、レーザー加工機に組み込まれるレーザー光源は、外部からの光が入射すると共振状態が不安定化し、発振状態が乱れる現象が起こる。特に発振された光が途中の光学系で反射されて光源に戻ってくると、発振状態は大きく撹乱される。これを防止するために、通常光アイソレータが光源の手前等に設けられる。
【0003】
光アイソレータは、ファラデー回転子と、ファラデー回転子の光入射側に配置された偏光子と、ファラデー回転子の光出射側に配置された検光子とからなる。また、ファラデー回転子は、光の進行方向に平行に磁界を加えて利用する。この時、光の偏波線分はファラデー回転子中を前進しても後進しても一定方向にしか回転しなくなる。更に、ファラデー回転子は光の偏波線分が丁度45度回転される長さに調整される。ここで偏光子と検光子の偏波面を、前進する光の回転方向に45度ずらしておくと、前進する光の偏波は、偏光子位置と検光子位置で一致するため透過する。他方、後進する光の偏波は、検光子位置から、45度ずれている偏光子の偏波面のずれ角方向とは逆回転に45度回転することになる。すると偏光子位置における戻り光の偏波面は、偏光子の偏波面に対して45度−(−45度)=90度のずれとなり、偏光子を透過できない。こうして前進する光は透過、出射させ、後進する戻り光は遮断する光アイソレータとして機能する。
【0004】
、光アイソレータを構成するファラデー回転子として用いられる材料では、従来からTGG結晶(Tb3Ga5O12)やTSAG結晶(Tb(3-x)Sc2Al3O12)が知られている(特開2011−213552号公報(特許文献1)、特開2002−293693号公報(特許文献2))。TGG結晶のベルデ定数は比較的大きく、40rad/(T・m)(即ち、0.14min/(Oe・cm))であり、現在標準的なファイバーレーザー装置用として広く搭載されている。TSAG結晶のベルデ定数はTGG結晶の1.3倍程度(即ち、0.18min/(Oe・cm)程度)あるとされており、こちらもファイバーレーザー装置に搭載される材料である。
【0005】
以外では、特開2010−285299号公報(特許文献3)に、(TbxR1-x)2O3(xは、0.4≦x≦1.0)であり、Rは、スカンジウム、イットリウム、ランタン、ユウロピウム、ガドリニウム、イッテルビウム、ホルミウム、及び、ルテチウムよりなる群から選択される酸化物を主成分とする単結晶あるいはセラミックスが開示されている。成分からなる酸化物は、ベルデ定数が0.18min/(Oe・cm)以上あり、実施例では最大0.33min/(Oe・cm)のものまで記載がある。また、同一文献の本文中にはTGGのベルデ定数が0.13min/(Oe・cm)とも記載されている。両者のベルデ定数の差は実に2.5倍に達している。
【0006】
特開2011−121837号公報(特許文献4)にもほぼ同様成分からなる酸化物が開示されており、TGG単結晶よりも大きなベルデ定数を有すると記載されている。
【0007】
特許文献3、4のように、ベルデ定数の大きな光アイソレータが得られると、45度回転するために必要な全長を短くすることができ、光アイソレータの小型化につながり好ましい。
【0008】
しかしながら、特許文献3、4に開示されている(TbxR1-x)2O3酸化物は、確かに特許文献1に開示されているTGG結晶、あるいは特許文献3の本文中で言及されているTGG結晶に比べ、ベルデ定数が1.4〜2.5倍と非常に大きいが、該酸化物は、その利用が想定される波長帯0.9〜1.1μmのファイバーレーザー光をわずかながら吸収してしまう。近年のファイバーレーザー装置はその出力がどんどんとハイパワー化しており、わずかに吸収のある光アイソレータであっても、そこに搭載してしまうと、熱レンズ効果によるビーム品質の劣化をまねき問題となる。
【0009】
同様に、単位長さあたりのベルデ定数が非常に大きな材料として、鉄(Fe)を含むイットリウム鉄ガーネット(通称:YIG)単結晶がある(特開2000−266947号公報(特許文献5))。ただし、鉄(Fe)は波長0.9μmに大きな光吸収があり、波長0.9〜1.1μm帯の光アイソレータにはこの光吸収の影響が出る。そのため、このイットリウム鉄ガーネット単結晶を用いた光アイソレータは、高出力化傾向の著しいファイバーレーザー装置での利用は極めて困難となっている。
【0010】
また、TGG結晶(Tb3Ga5O12)やTSAG結晶((Tb(3-x)Scx)Sc2Al3O12)が属するガーネット型酸化物は、元素の配合比率が化学量論比から外れると、ガーネット構造以外の結晶相が生成しやすいことが当業者の間で知られており、原料配合時の組成ずれによる透光性の急激な低下や歩留りの低下が問題となっている。
【0011】
これらの既存材料の代替として、パイロクロア型の結晶構造をもつ酸化物が挙げられる。パイロクロア型結晶はA2B2O7の結晶構造をもち、AイオンとBイオンとの半径比が一定の範囲内にあると立方晶構造をもつことが知られている。結晶構造が立方晶をとる材料を選択できると、単結晶はもちろんのこと、セラミックス体であっても高い透明性をもった材料の作製が可能となり、様々な光学材料としての応用が見込まれる。
【0012】
こうしたパイロクロア型材料の例として、特開2005−330133号公報(特許文献6)では、Aサイトに希土類元素REを有する立方晶系チタン酸化物パイロクロアのうち、当該Aサイトの元素REがLu、Yb、Tm、Er、Ho、Y、Sc、Dy、Tb、Gd、Eu、Sm、Ceの各元素のうちの一つまたは二つ以上から成る複合酸化物RE2-xTi2O7-δであって、前記Aサイト元素REの不定比量xが当該Aサイト元素REに応じて
0<x<0.5
の範囲内とされる電子導電性セラミックス粉体が焼結され、その後還元処理されることによって形成されていることを特徴とする立方晶系チタン酸化物パイロクロア焼結体が開示されている。用途が電子導電性セラミックスのため、当該焼結体の透明度は言及されておらず、普通に焼結しただけでは、通常不透明焼結体ができあがることが当業者の間では知られており、特許文献6記載の材料も光学材料用途としては利用不可であると推定されるが、Tbを含むチタン酸化物パイロクロアが立方晶になり得るという情報は該特許文献6により開示されている。
【0013】
ただし、それ以前にも単純なTbのシリコン酸化物では、立方晶を取ることができないことは別途知られている("Rare earth disilicates R2Si2O7 (R=Gd, Tb, Dy, Ho): type B", Z., Kristallogr., Vol.218 No.12 795-801 (2003)(非特許文献1))。
また同じ頃、Tbは全く含まれないものの、ある種の希土類ハフニウム酸化物が立方晶パイロクロア構造を取り、透光性を有する事実が開示されている("Fabrication of transparent La2Hf2O7 ceramics from combustion synthesized powders", Mat. Res. Bull. 40 (3) 553-559 (2005)(非特許文献2))。
【0014】
更に、特開2010−241677号公報(特許文献7)では、個々の結晶の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%が立方晶黄緑石または蛍石構造を有し、化学量論の化合物
A2+xByDzE7
ここで、−1.15≦x≦0および0≦y≦3および0≦z≦1.6ならびに3x+4y+5z=8、かつAは希土類金属酸化物の群から選ばれる少なくとも1つの3価カチオンであり、Bは少なくとも1つの4価カチオンであり、Dは少なくとも1つの5価カチオンであり、およびEは少なくとも1つの2価アニオンである、
を含む多結晶、透明光学セラミックスであって、AはY、Gd、Yb、Lu、ScおよびLaから選択され、BはTi、Zr、Hf、SnおよびGeから選択される光学セラミックスが開示されており、Tbは全く含まれないものの、数種類の希土類を含んだチタン酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、スズ酸化物、ゲルマニウム酸化物が、98重量%以上の立方晶黄緑石(パイロクロア)構造を取り得ることが確認されている。
【0015】
また、パイロクロア型酸化物はAイオンとBイオンの配合比率が理想的なパイロクロア構造を形成する1対1の化学量論比から外れていても、ある範囲の中で立方晶パイロクロア相を許容することが示されており、ガーネット型酸化物にみられる原料配合時の組成ずれによる透光性の急激な低下や歩留りの低下を抑制できると推察される("Phase equilibria in the refractory oxide systems of zirconia, hafnia and yttria with rare-earth oxides", J. Eur. Ceram. Soc. 28 2363-2388 (2008)(非特許文献3)、"Stuffed rare earth pyrochlore solid solutions", J. solid state chem. 179 3126-3135 (2006) (非特許文献4))。
【0016】
ただし、これまでパイロクロア型酸化物であって、かつTbイオンが含まれた立方晶構造を維持しながら、更にAイオンとBイオンとの配合比率を積極的に化学量論比からずらすことで、より透明性が高く、従って高出力レーザーに利用可能な磁気光学材料を検討した公知例は見当たらなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2011−213552号公報
【特許文献2】特開2002−293693号公報
【特許文献3】特開2010−285299号公報
【特許文献4】特開2011−121837号公報
【特許文献5】特開2000−266947号公報
【特許文献6】特開2005−330133号公報
【特許文献7】特開2010−241677号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】"Rare earth disilicates R2Si2O7 (R=Gd, Tb, Dy, Ho): type B", Z., Kristallogr., Vol.218 No.12 795-801 (2003)
【非特許文献2】"Fabrication of transparent La2Hf2O7 ceramics from combustion synthesized powders", Mat. Res. Bull. 40 (3) 553-559 (2005)
【非特許文献3】"Phase equilibria in the refractory oxide systems of zirconia, hafnia and yttria with rare-earth oxides", J. Eur. Ceram. Soc. 28 2363-2388 (2008)
【非特許文献4】"Stuffed rare earth pyrochlore solid solutions", J. solid state chem. 179 3126-3135 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、事情に鑑みなされたもので、波長帯0.9〜1.1μmのファイバーレーザー光を吸収することなく、そのため熱レンズの発生を抑制した光アイソレータなどの磁気光学デバイスを構成するのに好適な透明な磁気光学材料及びその製造方法、並びに磁気光学デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、以上の先行技術の知見をベースとして、(TbxR1-x)2O3酸化物セラミックスよりも波長帯0.9〜1.1μmのファイバーレーザー光を吸収することのない、ハイパワーレーザー用途に対応可能な、全く新しい材料候補として、Tbを含む様々なパイロクロア型材料の検討を行い、光アイソレータなどの磁気光学デバイスを構成するのに好適な磁気光学材料及び磁気光学デバイスを完成した。
【0021】
即ち、本発明は、下記の磁気光学材料及びその製造方法、並びに磁気光学デバイスを提供する。
〔1〕 下記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含む透明セラミックス又は下記式(1)で表される複合酸化物の単結晶からなることを特徴とする磁気光学材料。
Tb2xR2(2-x)O8-x (1)
(式中、0.800<x<1.00であり、Rはシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素である(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素単独であることを除く)。)
〔2〕 光路長10mmとして波長1064nmのレーザー光をビーム径1.6mmで入射させた場合、熱レンズが発生しないレーザー光の入射パワーの最大値が30W以上である〔1〕記載の磁気光学材料。
〔3〕 光路長10mm当たりの波長1064nmの光の直線透過率が90%以上である〔1〕又は〔2〕記載の磁気光学材料。
〔4〕 パイロクロア格子を有する立方晶が主相となった〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の磁気光学材料。
〔5〕 酸化テルビウム粉末と、シリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの酸化物粉末(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素酸化物単独であることを除く)とをるつぼ内で焼成して立方晶パイロクロア型酸化物を主成分とする焼成原料を作製し、該焼成原料を粉砕して原料粉末とし、この原料粉末を用いて所定形状に成形した後に焼結し、更に熱間等方圧プレス処理して下記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含む透明セラミックスの焼結体を得る磁気光学材料の製造方法。
Tb2xR2(2-x)O8-x (1)
(式中、0.800<x<1.00であり、Rはシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素である(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素単独であることを除く)。)
〔6〕 酸化テルビウム粉末とシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの酸化物粉末とを、そのテルビウム原子とシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの原子とのモル比率がx:(2−x)(ただし、xは0.800より大、1.00より小である)となるように秤量し、混合した後にるつぼ内で焼成する〔5〕記載の磁気光学材料の製造方法。
〔7〕 〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の磁気光学材料を用いて構成されることを特徴とする磁気光学デバイス。
〔8〕 磁気光学材料をファラデー回転子として備え、該ファラデー回転子の光学軸上の前後に偏光材料を備えた波長帯0.9μm以上1.1μm以下で利用可能な光アイソレータである〔7〕記載の磁気光学デバイス。
〔9〕 ファラデー回転子は、その光学面に反射防止膜を有することを特徴とする〔8〕記載の磁気光学デバイス。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、(TbxR1-x)2O3酸化物よりも熱レンズが発生しない最大レーザー光入射パワーが大きく、波長帯0.9〜1.1μmのファイバーレーザー装置に搭載してもビーム品質を劣化させることのない光アイソレータなどの磁気光学デバイスを構成するのに好適な透明な磁気光学材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る磁気光学材料をファラデー回転子として用いた光アイソレータの構成例を示す断面模式図である。
【図2】参考例1−1、実施例1−3,1−4、比較例1−1,1−2のセラミックス焼結体(Tb2xHf2(2-x)O8-x)のX線回折パターンである。
【図3】図2の2θ=15°付近のX線回折パターン拡大図である。
【図4】図2の2θ=50°付近のX線回折パターン拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[磁気光学材料]
以下、本発明に係る磁気光学材料について説明する。
本発明に係る磁気光学材料は、下記式(1)で表される複合酸化物を主成分として含む透明セラミックス又は下記式(1)で表される複合酸化物の単結晶からなる。
Tb2xR2(2-x)O8-x (1)
(式中、0.800<x<1.00であり、Rはシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素である(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素単独であることを除く)。)
【0025】
テルビウム(Tb)は鉄(Fe)を除く常磁性元素のなかで最大のベルデ定数をもつ材料であり、かつ波長1.06μmにおいて透明(光路長1mmにおける光の直線透過率が80%以上)であるため、この波長域の光アイソレータに使用するには最も適した元素である。ただし、この透明性を活かすためにはテルビウムが金属結合状態であってはならず、安定な化合物状態に仕上げる必要がある。
【0026】
ここで、安定な化合物を形成する最も典型的な形態として酸化物が挙げられる。その中でも、パイロクロア型構造を有するある種の材料(複合酸化物)は立方晶構造を取るため(これを、パイロクロア格子を有する立方晶(パイロクロア型立方晶)という)、異方性散乱のない高度に透明な化合物が得られる。よって、Aサイトにテルビウムが入る系からなり、パイロクロア型酸化物であって、立方晶構造をとる化合物(テルビウム含有立方晶系パイロクロア型酸化物)が、波長域0.9μm以上1.1μm以下、より詳細には1,064±40nmの光アイソレータに使用する材料として好ましい。
【0027】
また、立方晶構造を取るためのBサイト元素としては、シリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムが好適に利用できる。
ただし、シリコンやゲルマニウムはイオン半径が小さすぎるため、これらの元素だけでBサイトを充填してしまうと、斜方晶になって透明性が阻害されてしまうため好ましくない。そこで、シリコンやゲルマニウムを選択する場合には、よりイオン半径の大きな他の元素であるジルコニウムと組み合わせて利用する。
【0028】
この結果、本発明の磁気光学材料は、パイロクロア格子を有する立方晶(パイロクロア型立方晶)が主相となったものが好ましく、パイロクロア型立方晶からなるものがより好ましい。なお、主相となったとは、結晶構造としてパイロクロア型立方晶が全体の90体積%以上、好ましくは95体積%以上を占めることをいう。あるいは、この磁気光学材料の粉末X線回折結果から算出されるパイロクロア化率が、式(1)におけるRがジルコニウム単独の場合には51.5%以上であることをいい、Rがそれ以外の場合(即ち、Rがシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素単独であることを除く)である場合)には97.3%以上、好ましくは99%以上であることをいう。
【0029】
なお、パイロクロア化率とは、対象材料の粉末X線回折における立方晶の(622)面に相当するピーク位置(2θの値P(622))から、ベガード則に基づき酸化テルビウムの(622)面の2θの値(PTb)及び対象材料を理想的なパイロクロア型立方晶とした場合の(622)面の2θの値(PTbR)を用いて求めた対象材料に占める理想的なパイロクロア型立方晶のモル分率である。なお、(622)面は、パイロクロア型立方晶のX線回折パターンにおける4つの主回折面のうち、最も高角側の回折面である。
【0030】
式(1)は、テルビウムと、Rはシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素単独であることを除く)とを含むもので構成されているが、更にその他の元素を含有していてもよい。その他の元素としては、希土類元素であれば、ランタン、ガドリニウム、ツリウム、セリウム、プラセオジム、イッテルビウム、ディスプロシウムが例示でき、様々な不純物群として、カルシウム、アルミニウム、燐、タングステン、モリブデン等が典型的に例示できる。
【0031】
その他の元素の含有量は、テルビウムの全量を100としたとき、10以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましく、0.1以下であることが更に好ましく、0.001以下(実質的にゼロ)であることが特に好ましい。
【0032】
式(1)におけるテルビウムのモル数とRのモル数の比率(テルビウム対Rのモル比率(Tb:R))は、1.60:2.40より大2.00:2.00より小であり、1.80:2.20以上2.00:2.00より小が好ましく、1.90:2.10以上2.00:2.00より小がより好ましく、1.90:2.10以上1.998:2.002以下が特に好ましい。
【0033】
これに対応して、式(1)中、xは0.800より大きく1.00未満であり、0.900以上1.00未満が好ましく、0.950以上1.00未満がより好ましく、0.950以上0.999以下が特に好ましい。xがこの範囲にある場合、RイオンがBサイトを優先的に占有し、結果としてTbイオンがAサイトを効率よく占有するため、Tbの価数(3価)安定性が向上し透光性が高くなる。しかし、xが0.800以下の場合、パイロクロア型立方晶が主相とならず、さらに混晶になることで複屈折が生じ、その結果、透光性が著しく低下するため好ましくない。
【0034】
本発明の磁気光学材料は、式(1)で表される複合酸化物を主成分として含有する。即ち、本発明の磁気光学材料は、式(1)で表される複合酸化物を主成分として含有していればよく、その他の成分を副成分として意図的に含有していてもよい。
【0035】
ここで、主成分として含有するとは、式(1)で表される複合酸化物を50質量%以上含有することを意味する。式(1)で表される複合酸化物の含有量は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましく、99.9質量%以上であることが特に好ましい。
一般的に例示される、その他の副成分(主成分以外の成分)としては、単結晶育成の際にドープされるドーパントやフラックス、セラミックス製造の際に添加される焼結助剤等がある。
【0036】
本発明の磁気光学材料の製法としては、フローティングゾーン法、マイクロ引下げ法などの単結晶製造方法、並びにセラミックス製造法があり、いずれの製法を用いても構わない。ただし、一般に単結晶製造方法では固溶体の濃度比の設計に一定程度の制約があり、セラミックス製造法の方が本発明ではより好ましい。
【0037】
以下、本発明の磁気光学材料の製造方法の例としてセラミックス製造法について更に詳述するが、本発明の技術的思想を踏襲した単結晶製造方法を排除するものではない。
【0038】
《セラミックス製造法》
[原料]
本発明で用いる原料としては、テルビウム及び元素R(Rはシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素である(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素単独であることを除く)。)からなる本発明の磁気光学材料の構成元素からなる金属粉末、ないしは硝酸、硫酸、尿酸等の水溶液、あるいは元素の酸化物粉末等が好適に利用できる。
【0039】
それらを、テルビウム対Rのモル比率がx:(2−x)(ただし、xは0.800より大、1.00より小である)となるように所定量秤量し、混合してから焼成して所望の構成の立方晶パイロクロア型酸化物を主成分とする焼成原料を得る。例えば、酸化テルビウム粉末とシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの酸化物粉末(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素酸化物単独であることを除く)とを、そのテルビウム原子とシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つのRの原子とのモル比率がx:(2−x)(ただし、xは0.800より大、1.00より小である)となるように秤量し、混合した後にるつぼ内で焼成するとよい。このとき、シリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から複数の元素Rの酸化物粉末を選択した場合、それらのR原子のモル比率が等分されたモル比率となるように秤量するとことが好ましい。例えば、元素R1、R2の2種類の酸化物粉末を選択した場合、R1:R2のモル比率が1:1となるようにそれらを秤量するとよい。
【0040】
このときの焼成温度は、好ましくは1200℃以上、かつこの後に行われる焼結温度よりも低い温度であり、より好ましくは1400℃以上、かつこの後に行われる焼結温度よりも低い温度である。
【0041】
なお、ここでいう「主成分とする」とは、焼成原料の大部分(例えば、体積比率として50%以上)がパイロクロア型の結晶構造の酸化物で占められることをいう。また、焼成原料の粉末X線回折結果から算出されるパイロクロア化率が、式(1)におけるRがジルコニウム単独の場合には41.5%以上であることをいい、Rがそれ以外の場合(即ち、Rがシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズ、ハフニウム、ジルコニウムよりなる群から選択された少なくとも1つの元素(ただし、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルについては当該元素単独であることを除く)である場合)には50%以上であり、好ましくは55%以上であることをいう。
また、原料の純度は99.9質量%以上が好ましい。次いで、得られた焼成原料を粉砕して原料粉末とする。
【0042】
また、最終的には所望の構成のパイロクロア型酸化物粉末を用いてセラミックス製造をすることになるが、その際の粉末形状については特に限定されず、例えば角状、球状、板状の粉末が好適に利用できる。また、二次凝集している粉末であっても好適に利用できるし、スプレードライ処理等の造粒処理によって造粒された顆粒状粉末であっても好適に利用できる。更に、これらの原料粉末の調製工程については特に限定されない。共沈法、粉砕法、噴霧熱分解法、ゾルゲル法、アルコキシド加水分解法、錯体重合法、その他あらゆる合成方法で作製された原料粉末が好適に利用できる。また、得られた原料粉末を適宜湿式ボールミル、ビーズミル、ジェットミルや乾式ジェットミル、ハンマーミル等によって処理してもよい。
【0043】
本発明で用いるパイロクロア型酸化物粉末原料中には、適宜焼結抑制助剤(焼結助剤)を添加してもよい。特に高い透明性を得るためには、テルビウム含有パイロクロア型酸化物に見合った焼結抑制助剤を添加することが好ましい。ただし、その純度は99.9質量%以上が好ましい。なお、焼結抑制助剤を添加しない場合には、使用する原料粉末についてその一次粒子の粒径がナノサイズであって焼結活性が極めて高いものを選定するとよい。こうした選択は適宜なされてよい。
【0044】
更に製造工程での品質安定性や歩留り向上の目的で、各種の有機添加剤が添加される場合がある。本発明においては、これらについても特に限定されない。即ち、各種の分散剤、結合剤、潤滑剤、可塑剤等が好適に利用できる。
【0045】
[製造工程]
本発明では、原料粉末を用いて、所定形状にプレス成形した後に脱脂を行い、次いで焼結して、相対密度が最低でも95%以上に緻密化した焼結体を作製する。その後工程として熱間等方圧プレス(HIP)処理を行うことが好ましい。
【0046】
(成形)
本発明の製造方法においては、通常のプレス成形工程を好適に利用できる。即ち、ごく一般的な、原料粉末を型に充填して一定方向から加圧するプレス工程や変形可能な防水容器に密閉収納して静水圧で加圧するCIP(Cold Isostatic Pressing)工程が利用できる。なお、印加圧力は得られる成形体の相対密度を確認しながら適宜調整すればよく、特に制限されないが、例えば市販のCIP装置で対応可能な300MPa以下程度の圧力範囲で管理すると製造コストが抑えられてよい。あるいはまた、成形時に成形工程のみでなく一気に焼結まで実施してしまうホットプレス工程や放電プラズマ焼結工程、マイクロ波加熱工程なども好適に利用できる。更にプレス成形法ではなく、原料粉末を水及び有機溶剤に分散させ、型に流し込むことにより成形する鋳込み成形法も好適に利用できる。鋳込み成形の方法は特に限定されなく、加圧鋳込み法、減圧鋳込み法、固形鋳込み法、遠心鋳込み法等が好適に利用できる。このとき、スラリーの流動性や成形体の保形性向上を目的とした分散剤並びに結合剤等は適宜添加してもよい。
【0047】
(脱脂)
本発明の製造方法においては、通常の脱脂工程を好適に利用できる。即ち、加熱炉による昇温脱脂工程を経ることが可能である。また、この時の雰囲気ガスの種類も特に制限はなく、空気、酸素、水素等が好適に利用できる。脱脂温度も特に制限はないが、もしも有機添加剤が混合されている原料を用いる場合には、その有機成分が分解消去できる温度まで昇温することが好ましい。
【0048】
(焼結)
本発明の製造方法においては、一般的な焼結工程を好適に利用できる。即ち、抵抗加熱方式、誘導加熱方式等の加熱焼結工程を好適に利用できる。この時の雰囲気は特に制限されないが、不活性ガス、酸素ガス、水素ガス等が好適に利用できる。また、減圧下(真空中)で焼結してもよい。
【0049】
本発明の焼結工程における焼結温度は、選択される出発原料により適宜調整される。一般的には選択された出発原料を用いて、製造しようとするテルビウム含有パイロクロア型酸化物焼結体の融点よりも数10℃から100℃乃至は200℃程度低温側の温度が好適に選定される。また、選定される温度の近傍に立方晶以外の相に相変化する温度帯が存在するテルビウム含有パイロクロア型酸化物焼結体を製造しようとする際には、厳密にその温度帯を外した条件となるよう管理して焼結すると、立方晶以外の相の混入を抑制でき、複屈折性の散乱を低減できるメリットがある。
【0050】
本発明の焼結工程における焼結保持時間は、選択される出発原料により適宜調整される。一般的には数時間程度で十分な場合が多い。ただし、テルビウム含有パイロクロア型酸化物焼結体の相対密度は最低でも95%以上に緻密化されていなければならない。
【0051】
(熱間等方圧プレス(HIP))
本発明の製造方法においては、焼結工程を経た後に更に追加で熱間等方圧プレス(HIP(Hot Isostatic Pressing))処理を行う工程を設けることができる。
【0052】
なお、このときの加圧ガス媒体種類は、アルゴン、窒素等の不活性ガス、又はAr−O2が好適に利用できる。加圧ガス媒体により加圧する圧力は、50〜300MPaが好ましく、100〜300MPaがより好ましい。圧力50MPa未満では透明性改善効果が得られない場合があり、300MPa超では圧力を増加させてもそれ以上の透明性改善が得られず、装置への負荷が過多となり装置を損傷するおそれがある。印加圧力は市販のHIP装置で処理できる196MPa以下であると簡便で好ましい。
【0053】
また、その際の処理温度(所定保持温度)は材料の種類及び/又は焼結状態により適宜設定すればよく、例えば1000〜2000℃、好ましくは1300〜1800℃の範囲で設定される。このとき、焼結工程の場合と同様に焼結体を構成するテルビウム含有パイロクロア型酸化物の融点以下及び/又は相転移点以下とすることが必須であり、熱処理温度が2000℃超では本発明で想定しているテルビウム含有パイロクロア型酸化物焼結体が融点を超えるか相転移点を超えてしまい、適正なHIP処理を行うことが困難となる。また、熱処理温度が1000℃未満では焼結体の透明性改善効果が得られない。なお、熱処理温度の保持時間については特に制限されないが、焼結体を構成するテルビウム含有パイロクロア型酸化物の特性を見極めながら適宜調整するとよい。
【0054】
なお、HIP処理するヒーター材、断熱材、処理容器は特に制限されないが、グラファイト、ないしはモリブデン(Mo)、タングステン(W)が好適に利用できる。
【0055】
(アニール)
本発明の製造方法においては、HIP処理を終えた後に、得られたテルビウム含有パイロクロア型酸化物焼結体中に酸素欠損が生じてしまい、薄灰色の外観を呈する場合がある。その場合には、前記HIP処理温度以下(例えば、1100〜1500℃)、かつ前記HIP処理圧力と同等の条件にて微酸化アニール処理を施すことが好ましい。この場合、前記HIP処理設備と同じ設備を利用して微酸化アニール処理を行うと、製造プロセスが簡便となって良い。このアニール処理により、薄灰色の外観を呈してしまったテルビウム含有パイロクロア型酸化物焼結体も、すべて無色透明なセラミックス体に整えることができる。
【0056】
(光学研磨)
本発明の製造方法においては、一連の製造工程を経たテルビウム含有パイロクロア型酸化物焼結体(即ち、透明セラミックス)について、その光学的に利用する軸上にある両端面を光学研磨することが好ましい。このときの光学面精度は測定波長λ=633nmの場合、λ/8以下が好ましく、λ/10以下が特に好ましい。なお、光学研磨された面に適宜反射防止膜を成膜することで光学損失を更に低減させることも可能である。
【0057】
以上のようにして、熱レンズの発生が抑制された磁気光学材料が得られる。また、本発明の磁気光学材料は、光路長10mmとして波長1064nmのレーザー光をビーム径1.6mmで入射させた場合、熱レンズが発生しないレーザー光の入射パワーの最大値が30W以上であることが好ましく、80W以上であることがより好ましい。熱レンズが発生しないレーザー光の入射パワーの最大値が30W未満では高出力のファイバーレーザー装置での利用が困難となる場合がある。また、本発明の磁気光学材料は、光路長10mm当たりの波長1064nmでの光透過における直線透過率が90%以上であることが好ましい。なお本発明において、「直線透過率」とは、測定光路中にサンプルを置かずにブランク(空間)状態で測定した透過スペクトルを100%とした場合における直線透過率を意味する。
【0058】
[磁気光学デバイス]
本発明の磁気光学材料は、磁気光学デバイス用途に好適であり、特に波長0.9〜1.1μmの光アイソレータのファラデー回転子として好適に使用される。
図1は、本発明の磁気光学材料からなるファラデー回転子を光学素子として有する光学デバイスである光アイソレータの一例を示す断面模式図である。図1において、光アイソレータ100は、本発明の磁気光学材料からなるファラデー回転子110を備え、該ファラデー回転子110の前後には、偏光材料である偏光子120及び検光子130が備えられている。また、光アイソレータ100は、偏光子120、ファラデー回転子110、検光子130の順序で配置され、それらの側面のうちの少なくとも1面に磁石140が載置されていることが好ましい。
また、光アイソレータ100は産業用ファイバーレーザー装置に好適に利用できる。即ち、レーザー光源から発したレーザー光の反射光が光源に戻り、発振が不安定になるのを防止するのに好適である。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例、比較例及び参考例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0060】
[実施例1、比較例1、参考例1]
式(1)において、Bサイト位置(式(1)におけるR)に単一元素を充填した例としてハフニウム、スズ、チタンを選定し、xを変化させた例について説明する。
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末及びAlfa Aesar製の酸化ハフニウム粉末、並びに(株)高純度化学研究所製の酸化第2スズ粉末及び酸化チタン粉末を入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
原料を用いて、表1のような最終組成となる混合比率の計13種(1種×7水準+2種×3水準)の混合酸化物原料を作製した。即ち、テルビウムのモル数とハフニウムのモル数とがx=0.700、0.800、0.900、0.950、0.990、0.999、1.00となるように秤量した混合粉末、およびテルビウムのモル数とスズ又はチタンのモル数とがx=0.700、0.900、1.00となるように秤量した混合粉末(つまり、Tb1.40Hf2.60O7.30、Tb1.60Hf2.40O7.20、Tb1.80Hf2.20O7.10、Tb1.90Hf2.10O7.05、Tb1.98Hf2.02O7.01、Tb1.998Hf2.002O7.001、Tb2.00Hf2.00O7.00、Tb1.40Sn2.60O7.30、Tb1.80Sn2.20O7.10、Tb2.00Sn2.00O7.00、Tb1.40Ti2.60O7.30、Tb1.80Ti2.20O7.10、Tb2.00Ti2.00O7.00となるような混合粉末)をそれぞれ用意した。具体的には、酸化テルビウムと酸化ハフニウムをテルビウムとハフニウムがそれぞれ該当するモル比率となるよう秤量した混合粉末、酸化テルビウムと酸化第2スズをテルビウムとスズがそれぞれ該当するモル比率となるよう秤量した混合粉末、酸化テルビウムと酸化チタンをテルビウムとチタンがそれぞれ該当するモル比率となるよう秤量した混合粉末の13種を用意した。続いて、それぞれ互いの混入を防止するよう注意しながらエタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は24時間であった。その後スプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。
【0061】
続いて、これらの粉末をイリジウムるつぼに入れ高温マッフル炉にて1400℃にて保持時間3時間で焼成処理し、それぞれの組成での焼成原料を得た。得られた各焼成原料をパナリティカル社製粉末X線回折装置で回折パターン解析した。これらのピークから試料の結晶系を特定した。ピークがCu−Kα1線及びCu−Kα2線以外の影響でスプリットし、単一の晶系を決定できない場合は混晶と判断した。なお、磁気光学材料の品質を議論する場合には、単一の晶系でない場合は混晶と判断することで足りるが、ここではX線回折パターンのリファレンスデータとの比較やリートベルト解析により、パイロクロア型酸化物の結晶相以外の相を特定することを試みた。
【0062】
その結果、BサイトにHf(即ちR=Hf)を用いた7種の焼成原料(Tb1.40Hf2.60O7.30、Tb1.60Hf2.40O7.20、Tb1.80Hf2.20O7.10、Tb1.90Hf2.10O7.05、Tb1.98Hf2.02O7.01、Tb1.998Hf2.002O7.001、Tb2.00Hf2.00O7.00)はパイロクロア型酸化物のまたはフローライト型酸化物の結晶相と考えられる立方晶が確認された。ただし、Tb1.60Hf2.40O7.20およびTb1.40Hf2.60O7.30については格子定数の異なる複数の立方晶フローライト型酸化物が混在していた。
【0063】
同様に、BサイトにSn(即ちR=Sn)を用いた3種の焼成原料(Tb1.40Sn2.60O7.30、Tb1.80Sn2.20O7.10、Tb2.00Sn2.00O7.00)はすべてパイロクロア型酸化物の結晶相と考えられる立方晶が確認された。ただし、Tb1.40Sn2.60O7.30については立方晶パイロクロア型酸化物の他に別の結晶相のXRD回折ピークが混在していることを確認したが、リファレンスデータが乏しく特定はできなかった。
【0064】
最後に、BサイトにTi(即ちR=Ti)を用いた3種の焼成原料(Tb1.40Ti2.60O7.30、Tb1.80Ti2.20O7.10、Tb2.00Ti2.00O7.00)はすべてパイロクロア型酸化物の結晶相と考えられる立方晶が確認された。ただし、Tb1.40Ti2.60O7.30については立方晶パイロクロア型酸化物の他に格子定数の異なる立方晶であるフローライト型酸化物相又は六方晶のXRD回折ピークが混在していた。
【0065】
こうして得られた原料につき、それぞれ一軸プレス成形、198MPaの圧力での静水圧プレス処理を施してCIP成形体を得た。得られた成形体をマッフル炉中で1000℃、2時間の条件にて脱脂処理した。続いて当該乾燥成形体を真空加熱炉に仕込み、2.0×10-3Pa以下の減圧下、1700℃±20℃で3時間処理して計13種(1種×7水準+2種×3水準)の焼結体を得た。このとき、すべてのサンプルの焼結相対密度が95%になるように焼結温度を微調整した。
得られた各焼結体をカーボンヒーター製HIP炉に仕込み、Ar中、200MPa、1650℃、3時間の条件でHIP処理した。
【0066】
また、比較例としてTb1.2Y0.8O3透光性セラミックスを、特開2010−285299号公報(特許文献3)を参考に作製した(比較例1−5)。
【0067】
更に、こうして得られた各セラミックス焼結体を、直径5mm、長さ10mmになるように研削及び研磨処理し、次いでそれぞれのサンプルの光学両端面を光学面精度λ/8(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨した。
【0068】
R=Hfかつx=0.700、0.800、0.900、0.950、1.00の5種類のセラミックス焼結体(即ち、Tb1.40Hf2.60O7.30、Tb1.60Hf2.40O7.20、Tb1.80Hf2.20O7.10、Tb1.90Hf2.10O7.05、Tb2.00Hf2.00O7.00)に対し、リガク製粉末X線回折装置(Smart Lab)を用いてOut−of−plane XRD法により回折パターンを測定した(図2)。このときのXRD条件として、アノードに銅を用い、45kV、200mAでX線を発生させ、走査範囲10〜110°とした。各セラミックス焼結体の反射強度は2θ=30°付近の反射(即ち、パイロクロアでは(222)面の反射、フローライトでは(111)面の反射)強度で規格化した。x=1.00では2θ=14.6°付近に立方晶パイロクロア構造に帰属される(111)面の反射が観測された(図3)。xの減少に伴い、2θ=14.6°付近に観測される(111)面の反射強度は減少した。x=0.800及び0.700では2θ=14.6°付近の反射は消滅したため、立方晶フローライト構造に帰属する回折パターンと判断した。また、x=0.800及び0.700では高角側の反射(ピークパターン)がCu−Kα1線及びCu−Kα2線以外の影響でスプリットしたため、混晶に帰属するものと判断した(図4)。
【0069】
光学研磨した14種類すべてのサンプルについてそれぞれ中心波長が1064nmとなるように設計された反射防止膜をコートした。ここで得られたサンプルの光学外観もチェックした。
【0070】
得られたセラミックスサンプルについて下記のように直線透過率を測定した。また、図1に示すように、得られた各セラミックスサンプルの前後に偏光素子をセットし、このサンプルを外径32mm、内径6mm、長さ40mmのネオジム−鉄−ボロン磁石の中心に挿入した後、IPGフォトニクスジャパン(株)製ハイパワーレーザー(ビーム径1.6mm)を用いて、両端面から、波長1064nmのハイパワーレーザー光線を入射して、ベルデ定数、並びに熱レンズの発生しない入射パワーの最大値を測定した。
【0071】
(直線透過率の測定方法)
直線透過率は、NKT Photonics社製の光源とGentec社製のパワーメータ並びにGeフォトディテクタを用いて内製した光学系を用い、波長1064nmの光をビーム径を1〜3mmφでの大きさで試料(セラミックスサンプル)を透過させたときの光の強度により測定され、以下の式に基づき、JIS K7361及びJIS K7136に準拠して求めた。
直線透過率(%/cm)=I/Io×100
(式中、Iは透過光強度(長さ10mm(1cm)の試料を直線透過した光の強度)、Ioは入射光強度を示す。)
【0072】
直線透過率が80%以上のサンプルについて、下記ベルデ定数及び熱レンズの発生しない入射パワーの最大値の測定を行い、直線透過率が80%未満のサンプルについてはベルデ定数及び熱レンズの発生しない入射パワーの最大値の測定を実施しなかった(以下、他の実施例でも同じ)。
【0073】
(ベルデ定数の測定方法)
ベルデ定数Vは、以下の式に基づいて求めた。なお、サンプルに印加される磁界の大きさ(H)は、測定系の寸法、残留磁束密度(Br)及び保持力(Hc)からシミュレーションにより算出した値を用いた。
θ=V×H×L
(式中、θはファラデー回転角(min)、Vはベルデ定数、Hは磁界の大きさ(Oe)、Lはファラデー回転子の長さ(この場合、1cm)である。)
なお、比較例1−5のTb1.2Y0.8O3のベルデ定数は文献値(特開2010−285299号公報(特許文献3))を参照した。
【0074】
(熱レンズの発生しない入射パワーの最大値の測定方法)
まず、セラミックスサンプルを配置していない状態で、波長1,064nmのハイパワーレーザー光を、ビーム径1.6mmの空間光にして出射させ、ビームプロファイラにより、ビームウエスト位置F0(m)を計測する。その後、空間光学系に測定試料(セラミックスサンプル)を配置し、同じく出射光のビームウエスト位置F1(m)を計測する。このときのビームウエスト位置の変化量(ΔF)は次式により表される。
ΔF(m)=F0−F1
このとき、ΔFの変化は入力レーザーパワーの増大に伴い大きくなるが、ΔF=0.1m以下となるときの最大入射レーザーパワー[W]を熱レンズを無視できる値(熱レンズの発生しない入射パワーの最大値)として求めた。
なお、使用したハイパワーレーザーは最大出力が100Wまでのため、これ以上の熱レンズ評価はできなかった。
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0075】
【表1】
【0076】
結果から、比較例1−5のTb1.2Y0.8O3は熱レンズの発生しない入射パワーの最大値が20Wであったのに対し、式(1)においてx=0.900である実施例1−4、1−5、1−6では透明性に優れ、熱レンズの発生しない入射パワーの最大値が100W以上の磁気光学材料を作製できることが確認された。更に、x=0.999、0.990、0.950である実施例1−1、1−2、1−3でも同様に透明性に優れ、熱レンズの発生しない入射パワーの最大値が100W以上の磁気光学材料を作製できることが確認された。また、x=1.00の参考例1−1、1−2、1−3では熱レンズの発生しない入射パワーの最大値が80又は90Wであるところ、本実施例では熱レンズの発生しない入射パワーの最大値が100W以上と更に改善されていた。なお、x=0.800である比較例1−1及びx=0.700である比較例1−2、1−3、1−4では全て混晶となり失透した。
即ち、本実施例によれば熱レンズの発生しない入射パワーの最大値が100W以上の磁気光学材料を作製できることが確認された。
【0077】
[実施例2、比較例2、参考例2]
式(1)において、Bサイト位置(式(1)におけるR)にジルコニウム単一元素を選定し、xを変化させた例について説明する。
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、及び日産化学工業(株)製のジルコニア粉末を入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。原料を用いて、x=0.700、0.900、1.00の計3種の酸化物原料(即ちTb1.40Zr2.60O7.30、Tb1.80Zr2.20O7.10、Tb2.00Zr2.00O7.00)を作製した。具体的には、酸化テルビウムと酸化ジルコニウムをテルビウムとジルコニウムがそれぞれ該当するモル比率となるよう秤量した混合粉末の3種を用意した。続いて、それぞれ互いの混入を防止するよう注意しながらエタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は24時間であった。その後スプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状原料を作製した。
【0078】
続いて、これらの粉末をイリジウムるつぼに入れ高温マッフル炉にて1300℃にて保持時間3時間で焼成処理し、それぞれの組成での焼成原料を得た。得られた各焼成原料をパナリティカル社製粉末X線回折装置で回折パターン解析した。これらのピークから試料の結晶系を特定した。ピークがCu−Kα1線及びCu−Kα2線以外の影響でスプリットし、単一の晶系を決定できない場合は混晶と判断した。なお、磁気光学材料の品質を議論する場合には、単一の晶系でない場合は混晶と判断することで足りるが、ここではX線回折パターンのリファレンスデータとの比較やリートベルト解析により、パイロクロア型酸化物の結晶相以外の相を特定することを試みた。
【0079】
その結果、BサイトにZr(即ちR=Zr)を用いた3種の焼成原料(Tb1.40Zr2.60O7.30、Tb1.80Zr2.20O7.10、Tb2.00Zr2.00O7.00)は立方晶パイロクロア型酸化物の相の他に格子定数の異なる立方晶であるフローライト型酸化物相が混在していた。
【0080】
こうして得られた原料につき、それぞれ一軸プレス成形、198MPaの圧力での静水圧プレス処理を施してCIP成形体を得た。得られた成形体をマッフル炉中で1000℃、2時間の条件にて脱脂処理した。続いて当該乾燥成形体を真空加熱炉に仕込み、2.0×10-3Pa以下の減圧下、1700℃±20℃で3時間処理して計3種の焼結体を得た。このとき、すべてのサンプルの焼結相対密度が95%になるように焼結温度を微調整した。
得られた各焼結体をカーボンヒーター製HIP炉に仕込み、Ar中、200MPa、1650℃、3時間の条件でHIP処理した。
【0081】
更に、こうして得られた各セラミックス焼結体を、実施例1と同様にして長さ10mmになるように研削及び研磨処理し、次いで反射防止膜をコートした。
【0082】
実施例1と同様にして得られたセラミックスサンプルの直線透過率を測定すると共に、図1に示すように、得られた各セラミックスサンプルの前後に偏光素子をセットしてから磁石を被せ、IPGフォトニクスジャパン(株)製ハイパワーレーザー(ビーム径1.6mm)を用いて、両端面から、波長1064nmのハイパワーレーザー光線を入射し、実施例1と同様にしてベルデ定数、並びに熱レンズの発生しない入射パワーの最大値を測定した。
以上の結果を表2にまとめて示す。
【0083】
【表2】
【0084】
結果から、式(1)においてx=1.00の参考例2−1では熱レンズの発生しない入射パワーの最大値が20Wであるところ、x=0.900の実施例2−1では透明性に優れ、熱レンズの発生しない入射パワーの最大値が30Wと更に改善された磁気光学材料を作製できることが確認された。なお、実施例2−1、参考例2−1共に光学外観として、無色透明であったが複屈折が若干発生していた。また、x=0.700の比較例2−1では混晶となり失透した。
即ち、本実施例によれば熱レンズの発生しない入射パワーの最大値が30Wの磁気光学材料を作製できることが確認された。
【0085】
[実施例3、比較例3]
式(1)において、x=0.900とし、Bサイト位置にシリコン、ゲルマニウム、チタン、タンタル、スズよりなる群から実施例1の組成以外の組成となるように少なくとも1つを選択した例について説明する。
信越化学工業(株)製の酸化テルビウム粉末、及び(株)高純度化学研究所製のシリカ粉末、二酸化ゲルマニウム粉末、酸化チタン粉末、酸化第2スズ粉末、並びに昭和化学(株)製の五酸化タンタルを入手した。純度はいずれも99.9質量%以上であった。
原料を用いて、種々の複合酸化物原料を作製した。即ち、酸化テルビウムとシリカとジルコニアをテルビウムとシリコンとジルコニウムのモル比が1.80:1.10:1.10となるよう秤量した混合粉末、酸化テルビウムと二酸化ゲルマニウムとジルコニアをテルビウムとゲルマニウムとジルコニウムのモル比が1.80:1.10:1.10となるよう秤量した混合粉末、酸化テルビウムと酸化チタンと五酸化タンタルをテルビウムとチタンとタンタルのモル比が1.80:1.10:1.10となるよう秤量した混合粉末、酸化テルビウムと酸化第2スズと五酸化タンタルをテルビウムとスズとタンタルのモル比が1.80:1.10:1.10となるよう秤量した混合粉末、酸化テルビウムとシリカをテルビウムとシリコンのモル比が1.80:2.20となるよう秤量した混合粉末、酸化テルビウムと二酸化ゲルマニウムをテルビウムとゲルマニウムのモル比が1.80:2.20となるよう秤量した混合粉末、酸化テルビウムと五酸化タンタルをテルビウムとタンタルのモル比が1.80:2.20となるよう秤量した混合粉末を用意した。続いて、それぞれ互いの混入を防止するよう注意しながらエタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は24時間であった。続いて、これらの粉末をイリジウムるつぼに入れ高温マッフル炉にて1400℃、3時間で焼成処理した。
次に、得られた各種原料を再度エタノール中でジルコニア製ボールミル装置にて分散・混合処理した。処理時間は40時間であった。その後再びスプレードライ処理を行って、いずれも平均粒径が20μmの顆粒状複合酸化物原料を作製した。
こうして得られた原料につき、それぞれ一軸プレス成形、198MPaの圧力での静水圧プレス処理を施してCIP成形体を得た。得られた成形体をマッフル炉中で1000℃、2時間の条件にて脱脂処理した。続いて当該乾燥成形体を真空加熱炉に仕込み、1700℃±20℃で3時間処理して種々の焼結体を得た。このとき、すべてのサンプルの焼結相対密度が95%になるように焼結温度を微調整した。
得られた各焼結体をカーボンヒーター製HIP炉に仕込み、Ar中、200MPa、1650℃、3時間の条件でHIP処理した。得られた各焼結体のうちの一部につき、ジルコニア製乳鉢で粉砕処理して粉末形状にした。続いて、実施例1と同様にして得られた各粉末サンプルをパナリティカル社製粉末X線回折装置で回折パターン解析した。その結果、立方晶パイロクロア型酸化物と確認できた組成が、Tb1.80Si1.10Zr1.10O7.10、Tb1.80Ge1.10Zr1.10O7.10、Tb1.80Ti1.10Ta1.10O7.10、Tb1.80Sn1.10Ta1.10O7.10の群であった。またパイロクロア型ではあったものの、結晶系が斜方晶になっていた組成が、Tb1.80Si2.20O7.10、Tb1.80Ge2.20O7.10の群であった。最後にTb1.80Ta2.20O7.10については明確なパイロクロア型の回折パターンは得られず、3つほどの異なる相の混合パターンらしき結果が得られた。ただし、正確に同定することはできなかった。そのため、Tb1.80Ta2.20O7.10+αと表記している。
【0086】
こうして得られた各セラミックス焼結体を、長さ10mmになるように研削及び研磨処理し、次いでそれぞれのサンプルの光学両端面を光学面精度λ/8(測定波長λ=633nmの場合)で最終光学研磨した。更に中心波長が1064nmとなるように設計された反射防止膜をコートした。ここで得られたサンプルの光学外観もチェックした。
【0087】
実施例1と同様にして得られたセラミックスサンプルの直線透過率を測定すると共に、図1に示すように、得られた各セラミックスサンプルの前後に偏光素子をセットしてから磁石を被せ、IPGフォトニクスジャパン(株)製ハイパワーレーザー(ビーム径1.6mm)を用いて、両端面から、波長1064nmのハイパワーレーザー光線を入射して、実施例1と同様にしてベルデ定数、並びに熱レンズの発生しない入射パワーの最大値を測定した。
これらの結果を表3にまとめて示す。
【0088】
【表3】
【0089】
結果から、Bサイト単体充填では失透又は失透ぎみとなり、熱レンズの発生しない入射パワーの最大値が測定できない元素(具体的には、比較例3−1〜3−3におけるシリコン、ゲルマニウム、タンタル)であっても、適当な第3の元素と一緒にBサイトに固溶させた組成にした場合(実施例3−1〜3−4)には、パイロクロア型立方晶を主相とする材料となり、熱レンズの発生しない入射パワーの最大値が40W以上となることが確認された。
【0090】
なお、これまで本発明を実施形態をもって説明してきたが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
100 光アイソレータ
110 ファラデー回転子
120 偏光子
130 検光子
140 磁石
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【国際調査報告】

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