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再表2016-147747電気的特性測定用試料及び電気的特性測定方法並びに電気的特性測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年9月22日
【発行日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】電気的特性測定用試料及び電気的特性測定方法並びに電気的特性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20171201BHJP
   G01N 33/556 20060101ALI20171201BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20171201BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   G01N27/22 B
   G01N33/556
   G01N33/483 E
   G01N33/49 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
【出願番号】特願2017-506140(P2017-506140)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年2月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-50884(P2015-50884)
(32)【優先日】2015年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】町田 賢三
(72)【発明者】
【氏名】ブルン マルクオレル
(72)【発明者】
【氏名】林 義人
(72)【発明者】
【氏名】川口 香織
(72)【発明者】
【氏名】イ スンミン
【テーマコード(参考)】
2G045
2G060
【Fターム(参考)】
2G045AA01
2G045AA20
2G045CA02
2G045FA34
2G045GC30
2G045JA01
2G045JA02
2G045JA05
2G060AA07
2G060AA19
2G060AD06
2G060AE21
2G060AF03
2G060AF06
2G060AF08
2G060AF10
2G060AF11
2G060HC13
2G060KA09
(57)【要約】
血液試料の電気的特性の測定において、その測定前にその測定精度の検証に役立つ技術を提供すること。
固定剤により不完全に固定された固定赤血球を含有し、該固定赤血球は、該固定赤血球及び血漿成分を含む液体の電気的特性が経時的に変化し得るように固定されている電気的特性測定用試料を提供する。血液試料の電気的特性を経時的に測定する前に、前記電気的特性測定用試料の電気的特性を経時的に測定する、電気的特性測定方法を提供する。前記電気的特性測定用試料を用いて測定された電気的特性に基づく測定値と、予め定められた基準値と、に基づき、測定精度を判定する判定部を備える、電気的特性測定装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定剤により不完全に固定された固定赤血球を含有し、
該固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、その電気的特性が経時的に変化し得るように固定されている、電気的特性測定用試料。
【請求項2】
前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に連銭形成が進行するように固定されている、請求項1に記載の電気的特性測定用試料。
【請求項3】
前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、所定の周波数における電気的特性の所定の特徴点の値が、一定期間は所定の範囲内に維持されるように固定されている、請求項1記載の電気的特性測定用試料。
【請求項4】
前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、所定の周波数における電気的特性の所定の特徴点の値が、固定処理後25日間において、±20%以内に維持されるように固定されている、請求項3に記載の電気的特性測定用試料。
【請求項5】
前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、周波数10MHzで経時的に測定した誘電率の最大値と最小値の差分が、固定処理後25日間において、±20%以内に維持されるように固定されている、請求項4に記載の電気的特性測定用試料。
【請求項6】
前記固定剤は、グルタルアルデヒドを含有する請求項1に記載の電気的特性測定用試料。
【請求項7】
MAP液を含有する請求項1に記載の電気的特性測定用試料。
【請求項8】
血液試料の電気的特性を経時的に測定する前に、電気的特性測定用試料の電気的特性を経時的に測定する方法であって、
前記電気的特性測定用試料は、固定剤により不完全に固定された固定赤血球を含有し、該固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、その電気的特性が経時的に変化し得るように固定されている、電気的特性測定方法。
【請求項9】
電気的特性測定用試料を用いて経時的に測定された電気的特性に基づく測定値と、予め定められた基準値と、に基づき、測定精度を判定する判定部を備え、
前記電気的特性測定用試料は、固定剤により不完全に固定された固定赤血球を含有し、該固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、その電気的特性が経時的に変化し得るように固定されている、電気的特性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電気的特性測定用試料及び電気的特性測定方法並びに電気的特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血栓症のリスクに対して、抗血小板凝集薬又は抗凝固薬を予防的に投薬することが行われており、この予防的投薬では、投薬量が過剰である場合に出血リスクが増大するという副作用がある。この副作用を防ぎつつ、十分な予防効果を得るためには、被投薬者の血液凝固能を適時に評価することが行われている。
【0003】
近年、血液の凝固の程度を簡便且つ正確に評価する技術の開発が進められている。例えば、特許文献1には、血液の誘電率から血液凝固に関する情報を取得する技術が開示されており、「一対の電極と、上記一対の電極に対して交番電圧を所定の時間間隔で印加する印加手段と、上記一対の電極間に配される血液の誘電率を測定する測定手段と、血液に働いている抗凝固剤作用が解かれた以後から上記時間間隔で測定される血液の誘電率を用いて、血液凝固系の働きの程度を解析する解析手段と、を有する血液凝固系解析装置」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−181400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたような血液試料の電気的特性を測定する装置においては、被検者からの血液試料を測定する前に、その測定精度を確かめようとする試みはなされていないという実情がある。仮に、血液試料の電気的特性を測定する装置やその測定手順において、何らかの異常があり、正確な測定ができていなかった事態となった場合、測定自体が無駄になるだけでなく、被検者から採取された血液試料も無駄になってしまう。
【0006】
そこで、本技術は、血液試料の電気的特性の測定において、その測定前にその測定精度の検証に役立つ技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術では、固定剤により不完全に固定された固定赤血球を含有し、
該固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、その電気的特性が経時的に変化し得るように固定されている、電気的特性測定用試料を提供する。
前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に連銭形成が進行するように固定することが可能である。
また、前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、所定の周波数における電気的特性の所定の特徴点の値が、一定期間は所定の範囲内に維持されるように固定することも可能である。
更に、前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、所定の周波数における電気的特性の所定の特徴点の値が、固定処理後25日間において、±20%以内に維持されるように固定することもできる。
加えて、前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、液体について周波数10MHzで経時的に測定した誘電率の最大値と最小値の差分が、固定処理後25日間において、±20%以内に維持されるように固定されていてもよい。
前記固定剤は、グルタルアルデヒドを含有することができる。
前記電気的特性測定用試料は、MAP液を含有していてもよい。
【0008】
また、本技術では、血液試料の電気的特性を経時的に測定する前に、電気的特性測定用試料の電気的特性を経時的に測定する方法であって、前記電気的特性測定用試料は、固定剤により不完全に固定された固定赤血球を含有し、該固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、その電気的特性が経時的に変化し得るものである、電気的特性測定方法を提供する。
【0009】
さらに、本技術では、電気的特性測定用試料を用いて経時的に測定された電気的特性に基づく測定値と、予め定められた基準値と、に基づき、測定精度を判定する判定部を備え、前記電気的特性測定用試料は、固定剤により不完全に固定された固定赤血球を含有し、該固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、その電気的特性が経時的に変化し得るように固定されている、電気的特性測定装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本技術によれば、血液試料の電気的特性の測定において、その測定前にその測定精度を検証することが可能となる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本技術中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本技術に係る電気的特性測定方法の好適な実施形態の一例を表すフローチャート図である。
図2】本技術の電気的特性測定装置の実施形態の一例の概略構成を表すブロック図である。
図3】試験例1の実験1において作製した試料の誘電率の経時変化の測定結果を示す図面代用グラフである。
図4】試験例1の実験2において作製した試料の誘電率の経時変化の測定結果を示す図面代用グラフである。
図5】試験例1の実験3において作製した試料の誘電率の経時変化の測定結果を示す図面代用グラフである。
図6】試験例1の実験4において作製した試料の誘電率の経時変化の測定結果を示す図面代用グラフである。
図7】試験例2において作製した試料の誘電率の経時変化の測定結果を示す図面代用グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本技術を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。説明は以下の順序で行う。
【0013】
1.電気的特性測定用試料
(1)用途
(2)不完全に固定された赤血球
(3)固定剤
(4)固定処理
(5)任意成分
2.電気的特性測定方法
3.電気的特性測定装置
【0014】
1.電気的特性測定用試料
(1)用途
本技術に係る電気的特性測定用試料は、電気的特性の測定に用いられる。この電気的特性測定用試料は、好適には、測定対象である血液試料の電気的特性の測定に用いられ、その測定精度の検証に役立てられるものである。このことから、以下では、本技術に係る電気的特性測定用試料を「対照試料」と称することがある。その対照試料は、より好適には、測定対象である血液試料の電気的特性を測定する装置(電気的特性測定装置)に用いられる。対照試料を血液試料の電気的特性測定装置に用いることで、その装置における測定精度を検証することが可能となる。これにより、対照試料を電気的特性測定装置の品質を管理するための試料、いわゆる、QC(Quality Control)試料として用いることができる。
【0015】
前記電気的特性測定装置として、測定対象である血液試料について、任意の周波数の電気的特性を経時的に測定する電気的特性測定装置であることが好ましい。この電気的特性測定装置は、測定される電気的特性に基づいて、測定対象である血液試料における血液の状態を評価する機能を備えていてもよく、その血液の状態を解析する機能を備えていてもよい。
【0016】
対照試料を好適に用いることができる電気的特性測定装置については、後記の「2.電気的特性測定装置」において詳述することとし、次に対照試料の構成について説明する。
【0017】
(2)不完全に固定された固定赤血球
本技術に係る電気的特性測定用試料は、固定剤により不完全に固定された固定赤血球を含有し、該固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、その電気的特性が経時的に変化し得るものである。
【0018】
対照試料に含まれる赤血球が「固定剤により不完全に固定された」とは、赤血球が固定剤により完全には固定されていないことを意味する。赤血球が固定剤により完全に固定されると、赤血球本来の柔らかさが完全に失われたような状態となるが、固定剤により不完全に固定された赤血球は、赤血球本来の柔らかさがある程度維持されている状態にある。固定剤による赤血球の固定の程度は、例えば、固定剤の種類、固定剤の濃度、並びに赤血球への固定剤による処理時間及び処理温度などに影響される。したがって、一例を挙げれば、固定剤により不完全に固定された赤血球として、赤血球を完全に固定する濃度に満たない濃度の固定剤により固定された赤血球を用いることができる。
【0019】
対照試料に含まれる赤血球は、固定剤により不完全に固定されていることにより、その柔らかさが維持された状態で、劣化のみが抑制される。赤血球は、その劣化により、形状が変化してしまい、赤血球本来の機能が失われることが知られているが、本技術では、その劣化を抑制することができる。そして、その一方で、血漿成分と混合した際に、その電気的特性が経時的に変化し得る。これは、本技術に用いる固定赤血球は、劣化による形状変化は抑制できる程度に固定しているが、その固定は不完全であるため、赤血球本来の機能を発揮する際に必要な柔らかさは維持されているためである。これに対して、例えば、赤血球が固定剤により完全に固定されている場合、その強く固定された赤血球は、その劣化による形状変化は抑制されてはいるが、赤血球本来の機能を発揮する際に必要な柔らかさまでもが失われ、血漿成分と混合した際に、その電気的特性が経時的に変化し難いものとなる。
【0020】
赤血球を不完全に固定する具体的な程度は、赤血球の柔らかさが維持された状態で、劣化による形状変化が抑制される程度であれば、特に限定されないが、例えば、血漿成分と混合した際に連銭形成が進行するように固定することができる。不完全に固定された赤血球の連銭形成により、対照試料において、電気的特性の経時的な変化(例えば誘電率の増加)が確認されやすい。
【0021】
また、前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、所定の周波数における電気的特性の所定の特徴点の値が、一定期間は所定の範囲内に維持されるように固定することもできる。より具体的には、例えば、前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、所定の周波数における電気的特性の所定の特徴点の値が、固定処理後25日間、好ましくは30日間において、±20%以内に維持されるように固定することも可能である。
【0022】
「電気的特性の所定の特徴点の値」とは、例えば、誘電率の最大値や最小値など、所定の値のみを指すこともできるし、誘電率の最大値と最小値との差分など、所定の変化率を指すこともできる。より具体的には、例えば、固定処理後0日目の誘電率の最大値がAであり、固定処理後30日後の誘電率の最大値がBである場合、AからBへの変化率が±20%以内となるように、赤血球を固定することができる。また、例えば、固定処理後0日目の誘電率の最大値と最小値の差分がCであり、固定処理後30日後の誘電率の最大値と最小値の差分がDである場合、CからDへの変化率が±20%以内となるように、赤血球を固定することができる。
【0023】
ここで、対照試料について、任意の周波数の電気的特性として誘電率を経時的に測定する場合を例に挙げて、固定された赤血球の好ましい態様について述べる。
固定された赤血球は、血漿成分と混合した際に、周波数10MHz又は1MHzで経時的に測定した誘電率の最大値と最小値の差分が、固定処理後25日間、好ましくは30日間において、±20%以内、好ましくは±10%以内に維持されるように、固定剤で固定されていることが好ましい。このように固定することで、一定の保存性を保ちながら、電気的特性の変化を確認しやすくなるため、本技術に係る対照試料を、QC試料としてより好適に用いることができる。
【0024】
加えて、例えば、前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、所定の周波数における電気的特性の経時的な変化率が、所定の範囲となるように固定することも可能である。より具体的には、前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、所定の周波数における電気的特性を経時的に測定した場合に、最小値と最大値の変化率が、所定の値以上となるように固定することができる。
【0025】
ここで、対照試料について、任意の周波数の電気的特性として誘電率を経時的に測定する場合を例に挙げて、固定された赤血球の好ましい態様について述べる。
固定された赤血球は、血漿成分と混合した際に、周波数10MHzで経時的に測定した誘電率の最大値と最小値の変化率が、6%以上となるように、固定されていることが好ましい。このように固定することで、電気的特性の変化を確認しやすくなるため、本技術に係る対照試料を、QC試料としてより好適に用いることができる。
【0026】
(3)固定剤
固定剤として、赤血球を不完全に固定できるものであれば、特に限定されず、例えば、アルデヒド、オキサゾリジン、アルコール、及び環状尿素などを用いることができる。そのような固定剤の好ましい具体例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、2−プロペナール、ジアゾリジニル尿素、イミダゾリジニル尿素、ジメチロール尿素、及び2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールなどが挙げられる。これらの固定剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの固定剤のうち、赤血球に対する固定処理を行い易いことから、グルタルアルデヒドがより好ましい。
【0027】
これらの固定剤は、赤血球を不完全に固定しやすいように若しくは赤血球を完全に固定しないように、好ましくは、リン酸緩衝生理食塩水(以下、「PBS」と略すことがある。)などの緩衝液や生理食塩水などで希釈されて使用される。したがって、固定剤としては、固定成分として前述の固定剤が溶解した溶液の形態である固定剤含有組成物として使用することが扱い易い点から好ましい。固定剤を希釈して用いれば、固定剤の濃度を容易に調節でき、固定剤の濃度によって、赤血球の固定の程度を容易に調節することができる。なお、希釈に用いるものは、塩濃度とpHを血液に近づけることができ、固定剤との反応性がないものであれば、特に限定されない。
【0028】
赤血球を固定する際に用いる固定剤の濃度は、特に限定されないが、赤血球を固定しつつ保存性を向上させる観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.006質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上がさらに好ましい。一方、赤血球を完全に固定せず、不完全な固定を実現すると共に、血漿成分と混合した際に、その電気的特性が経時的に変化し得る観点から、固定剤の濃度は、0.05質量%以下が好ましく、0.025質量%以下がより好ましい。例えば固定剤として好適なグルタルアルデヒドを上記濃度範囲にて使用することができる。なお、固定剤の濃度は、上記範囲に関わらず、固定剤の種類や、赤血球の固定の程度の状況によって、適宜調節することができる。また、赤血球を固定剤によって固定する際の反応時間や温度を調節することによっても、固定の程度を調整することが可能である。
【0029】
(4)固定処理
固定剤により赤血球を固定する方法は、特に限定されないが、例えば、血液から血漿及び白血球(バフィーコート)を除去する工程と、赤血球を洗浄する工程と、洗浄した赤血球に固定剤を添加する工程とを含むことが好ましい。
【0030】
血液から血漿及び白血球(バフィーコート)を除去する工程の具体例としては、血液を遠心分離することで、上澄みの血漿と白血球(バフィーコート)を除去する工程をとることができる。赤血球を洗浄する工程では、具体的には、赤血球にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの緩衝液を添加して、転倒混和した後、上澄みを除去する工程をとることができる。この洗浄工程は数回繰り返し行うことが好ましい。
【0031】
洗浄した赤血球に固定剤を添加する工程では、具体的には、洗浄した赤血球に数%程度の任意のヘマトクリット値になるようにPBSを添加し、次いでPBSで任意の濃度に希釈した固定剤を添加し、赤血球が不完全に固定される程度の濃度にて固定剤を添加する。より具体的には、固定剤として、例えば、PBSで2.5%程度に希釈したグルタルアルデヒドを用いることができる。
【0032】
赤血球に固定剤を添加した後、室温(例えば15〜30℃)で好ましくは1〜30分、より好ましくは1〜10分間程度置き、固定反応を進行させる。その後、遠心分離して上澄みを除去し、固定された赤血球を洗浄する工程を行うことが好ましい。このときの洗浄の工程も、上述と同様、PBSなどの緩衝液を添加して転倒混和し、さらに遠心分離して上澄みを除去する工程をとることができる。この洗浄工程も数回繰り返し行うことが好ましい。最後に洗浄した固定赤血球にMAP(mannitol adenine phosphate)液を加えて保存(例えば冷蔵保存)することができる。この際、MAP液の量は例えば洗浄した固定赤血球の半分程度の体積とすることができる。
【0033】
(5)任意成分
対照試料には、固定剤により固定された赤血球のほか、前述したように、固定剤を希釈するのに用いることができるPBSなどの緩衝液や生理食塩水などの希釈液を含んでいてもよい。また、対照試料には、前述の固定処理の過程において固定された赤血球の保存に好適に用いることができる保存液を含んでいてもよい。この保存液としては、本技術の効果を損なわない限り、公知の保存液を1種又は2種以上、自由に選択して用いることができる。例えば、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸水和物及びブドウ糖をそれぞれ所定量含むACD液、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸水和物、ブドウ糖及びリン酸二水素ナトリウムをそれぞれ所定量含むCPD液、並びにMAP液、アデニン・イノシン・スクロースを含むAIS液などが挙げられる。これらの保存液はいずれも市販のものを用いることができ、これらのうち、赤血球の保存に適していることからMAP液が好ましい。なお、MAP液は、D−マンニトール、アデニン、リン酸二水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸水和物、ブドウ糖及び塩化ナトリウムをそれぞれ所定量含む保存液である。保存液としてMAP液を用いる場合、固定された赤血球がMAP液に分散した電気的特性測定用試料が得られる。
【0034】
なお、本技術に係る電気的特性測定用試料は、固定剤により固定された赤血球と、固定剤を希釈するための緩衝液などの希釈剤と、前述の任意成分と、血漿成分と、を別々としたキット型(電気的特性測定用試料キット)としてもよい。より好ましくは、固定赤血球は保存液とを一緒にしたものと、希釈剤と、血漿成分と、その他必要に応じて前述の任意成分と、を別々とした電気的特性測定用試料キットとしてもよい。この電気的特性測定用試料キットは、それに含まれる各成分を別々にしているため、電気的特性の測定に用いる際に、例えばその測定に用いる装置に応じて、電気的特性の経時変化が得られるように調整しやすいという利点がある。
【0035】
2.電気的特性測定方法
本技術に係る電気的特性測定方法は、血液試料の電気的特性を経時的に測定する前に、対照試料の電気的特性を経時的に測定する方法である。この方法では、対照試料により、血液試料についての測定に先だって、電気的特性の測定精度を検証することができる。したがって、検証後に測定する血液試料について信頼性の高い測定データを取得することが可能となる。対照試料及び血液試料についての測定には、誘電コアグロメーターなどの電気的特性測定装置を用いることが好ましい。
【0036】
図1は、本技術に係る電気的特性測定方法の好適な実施形態の一例を表すフローチャート図である。本技術に係る電気的特性測定方法は、前述の通り、対照試料の電気的特性を経時的に測定する第1の測定工程S2を備える。この測定方法では、図1に示すように、第1の測定工程の前に対照試料の調整を行う調整工程S1と、第1の測定工程S2の後にその工程で得られた対照試料の電気的特性の経時変化データに基づき、測定の精度を判定する判定工程S3とを含むことが好ましい。また、その判定工程S3において、測定の精度に問題がないことが確認された後、血液試料の電気的特性を経時的に測定する第2の測定工程S4を行うことが好ましい。
【0037】
第1の測定工程S2及び第2の測定工程S4において測定される電気的特性並びに判定工程S3で用いられる電気的特性は、任意の周波数の電気的特性を用いることができる。それら電気的特性としては、例えばインピーダンス、コンダクタンス、アドミッタンス、キャパシタンス、誘電率、導電率、位相角及びこれらを電気量変換することにより得られる量などが挙げられ、これらは1種でもよく、2種以上であってもよい。
【0038】
調整工程S1では、対照試料について電気的特性を経時的に測定する際にその電気的特性が経時的に明瞭に変化し得るように対照試料を調整することができる。具体的には、対照試料(固定された赤血球)と血漿成分とを混合することや、その混合液に電気的特性の経時変化が強く現れるような、抗凝固薬や血液凝固因子などの添加剤を加えることなどを行うことができる。血漿成分としては、凍結血漿や凍結乾燥血漿を用いることができる。また、添加剤としては、ヘパリン、低分子ヘパリンなどヘパリン類、ワルファリンなどのクマリン系化合物、フィブリノゲン、フィブリン、プロトロンビン、トロンビン、トロンボプラスチン、及びこれらの阻害剤などを用いることができる。
【0039】
このような調整工程S1を含むことで、対照試料についての電気的特性の経時変化の程度をコントロールすることが可能となり、血液試料により近い、電気的特性の経時変化データを得ることが可能となる。この観点から、固定された赤血球、MAP液、及び血漿成分を含む混合液に対して、ヘパリン及び/又はフィブリノゲンを添加することがより好ましい。当該混合液に対するヘパリンの添加量は、特に限定されないが、例えば0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。また、当該混合液に対するフィブリノゲンの添加量は、特に限定されないが、0.1〜20mg/mLが好ましく、0.5〜5mg/mLがより好ましい。
【0040】
判定工程S3では、具体的には、第1の測定工程S2で得られた対照試料の電気的特性の経時変化データに基づいて、その経時変化が充分に現れているか否かにより、測定の精度における問題の有無を判定することができる。また、判定工程S3では、予め用意された基準値と、第1の測定工程S2で得られた対照試料の電気的特性の経時変化データとを比較して、それらの差異に基づいて、測定の精度における問題の有無を判定することもできる。
【0041】
なお、本技術に係る電気的特性測定方法を、パーソナルコンピュータや、CPU等を含む制御部及び記録媒体(不揮発性メモリ(USBメモリ等)、HDD、CD等)等を備えるハードウェア資源にプログラムとして格納し、パーソナルコンピュータや制御部によって実現させることも可能である。
【0042】
3.電気的特性測定装置
本技術に係る電気的特性測定装置は、対照試料を用いて経時的に測定された電気的特性に基づく測定値と、予め定められた基準値と、に基づき、測定精度を判定する判定部を備える。図2は、本技術に係る電気的特性測定装置の実施形態の一例である電気的特性測定装置1の概略構成を表すブロック図である。電気的特性測定装置1は、判定部2のほか、測定部3、評価部4、記憶部5、及び表示部(図示せず)などを備えることが好ましい。
【0043】
(1)判定部
判定部2は、対照試料について経時的に測定された電気的特性の測定値と、予め定められた基準値とに基づき、測定精度を判定する。例えば、対照試料の電気的特性の経時的な測定値を予め定められた基準値に照らし合わせ、測定値と基準値との差異に基づいて、測定値が正常か異常かにより測定精度の判定を行うことが可能である。判定部2による測定精度の判定結果において、測定値が異常であるなどの測定精度が低いことを表す内容であった場合、装置の使用者は、装置に異常があるか、対照試料に異常があるかを確認することができる。
【0044】
判定部2を備えた電気的特性測定装置1を用いて、血液試料について測定を行う前に、対照試料について電気的特性を経時的に測定することで、血液試料についての測定に先だって、当該装置1の測定精度を確かめることができる。したがって、血液試料について信頼性の高い測定データを取得することが可能となる。なお、基準値は、幅のある数値範囲であってもよい。また、基準値は、電気的特性測定装置1内の記憶部5又は外部の記憶装置などに格納しておくことができる。
【0045】
判定部2で用いられる電気的特性は、電気的特性測定装置1の内部に設けられる測定部3又は外部の測定装置から測定されるデータである。その電気的特性としては、例えばインピーダンス、コンダクタンス、アドミッタンス、キャパシタンス、誘電率、導電率、位相角及びこれらを電気量変換することにより得られる量などが挙げられる。判定部2で用いられる電気的特性は、1種でもよく、2種以上であってもよい。
【0046】
(2)測定部
測定部3では、特定の周波数又は周波数帯域で、対照試料及び血液試料の電気的特性を経時的に測定する。電気的特性測定装置1は、測定部3を備えていなくてもよく、その場合、外部の電気的特性測定装置を用いて測定したデータを用いることができる。測定部3で測定する電気的特性の具体例は、前述の判定部2の説明で述べたものと同様である。測定部3などで測定される電気的特性は、1種でもよく、2種以上であってもよい。なお、電気的特性測定装置1の内部に設けられたデータ処理部又は外部のデータ処理装置により、測定部3などで測定された電気的特性の経時変化データからノイズを除去するように構成してもよい。
【0047】
測定部3には、測定に際して、対照試料や血液試料を注入する試料保持部(図示せず)を一又は複数備えることができる。電気的特性測定装置1は、試料保持部を備えていなくてもよく、例えば、公知のカートリッジタイプの測定用容器などを設置可能な形態に、測定部3を設計することもできる。測定部3として、試料保持部に設けられた電極対間に交流電圧を印加し、対照試料や血液試料のインピーダンスや誘電率を測定する場合は、測定部として、インピーダンスアナライザーやネットワークアナライザーを使用することもできる。
【0048】
(3)評価部
評価部4は、血液試料の電気的特性の経時変化データに基づいて、血液の状態を評価する。評価対象とする血液の状態としては、血液の凝固状態、血液中の成分の凝集状態、赤血球の沈降や連銭の状態、血餅縮退状態などが挙げられる。評価部4における評価に用いる電気的特性は、予測又は検知したい血液状態に応じた任意の周波数(例えば周波数1kHz〜50MHz)における前述の電気的特性を用いることができる。
【0049】
(4)記憶部
電気的特性測定装置1は、測定部3などで測定された対照試料や血液試料の測定結果や、対照試料の測定値と照らし合わせるための前述の基準値、評価部4での評価結果などを記憶する記憶部5を備えることができる。本技術に係る電気的特性測定装置において、記憶部5は必須ではなく、外部の記憶装置を接続することでもよい。記憶部5としては、例えばハードディスクなどを用いることができる。
【0050】
なお、表示部は、測定部などで測定された対照試料及び血液試料の電気的特性の経時変化データ、並びに評価部での評価結果などを表示するものである。
また、本技術に係る電気的特性測定装置は、ネットワークを介してサーバ及びユーザーインターフェースなどに接続されたシステムの一部として利用されてもよい。
【実施例】
【0051】
以下、試験例に基づいて本技術を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する試験例により本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0052】
<試験例1>
[実験1]
予め入手した健常者の血液を遠心分離して、上澄みの血漿を除去した。血漿及びバフィーコートを除去した血液(赤血球)にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加えて転倒混和し、その後、遠心分離して上澄みを除去することにより、赤血球を洗浄した。この赤血球の洗浄工程を2回繰り返し行った。洗浄した赤血球に、約5%のヘマトクリット値になるようにPBSを添加した。そこに、PBSで2.5質量%に希釈したグルタルアルデヒドをそれぞれ以下の濃度となるように加えた。
(1a)グルタルアルデヒド:0質量%(固定なしのコントロール)
(1b)グルタルアルデヒド:0.013質量%
(1c)グルタルアルデヒド:0.025質量%
グルタルアルデヒドを添加してから室温で5分間置いた後、遠心分離して上澄みを除去した。次いで、前記(1b)及び(1c)のグルタルアルデヒドで固定された赤血球(以下、「固定赤血球」と称する。)及び前記(1a)のグルタルアルデヒドで固定していない赤血球(以下、「非固定赤血球」と称する。)のそれぞれにPBSを添加して転倒混和し、遠心分離して上澄みを除去する洗浄工程を行った。この洗浄工程を数回繰り返し行った。洗浄した固定赤血球又は非固定赤血球の半分の体積のMAP液を加え、冷蔵保存し、対照試料1a〜cを作製した。
【0053】
[実験2]
再現性を確認するために、前述の実験1で用いた血液とは別の血液を用いて、前述の実験1と同じ手順で作製した対照試料2a〜cを用意した。実験2で作製した対照試料2a〜2cでは、グルタルアルデヒドの濃度を以下の通りとした。
(2a)グルタルアルデヒド:0質量%(固定なしのコントロール)
(2b)グルタルアルデヒド:0.013質量%
(2c)グルタルアルデヒド:0.025質量%
【0054】
[実験3]
再現性を確認するために、前述の実験1及び2で用いた血液とは別の血液を用いて、前述の実験1と同じ手順で作製した対照試料3a〜cを用意した。実験3で作製した対照試料3a〜3cでは、グルタルアルデヒドの濃度を以下の通りとした。
(3a)グルタルアルデヒド:0質量%(固定なしのコントロール)
(3b)グルタルアルデヒド:0.006質量%
(3c)グルタルアルデヒド:0.013質量%
【0055】
[実験4]
再現性を確認するために、前述の実験1〜3で用いた血液とは別の血液を用いて、前述の実験1と同じ手順で作製した対照試料4a〜cを用意した。実験4で作製した対照試料4a〜4cでは、グルタルアルデヒドの濃度を以下の通りとした。
(4a)グルタルアルデヒド:0質量%(固定なしのコントロール)
(4b)グルタルアルデヒド:0.006質量%
(4c)グルタルアルデヒド:0.013質量%
【0056】
前記実験1〜4で作製した各対照試料について、電気的特性を測定する前に、次のように調整した。
各対照試料においてMAP液に保存した各赤血球(各固定赤血球及び各非固定赤血球)と、凍結乾燥血漿を規定量の水で再融解したものとを1:1(体積比)の割合で混合し、混合液を調製した。誘電コアグロメーターの試料保持部に試薬としてカルシウム水溶液を分注すると共に、前記混合液を試料保持部に注入し、周波数100Hz〜40MHz程度の範囲における誘電率の経時変化を測定した。
実験1で作製した対照試料1a〜cについての測定結果を図3に、実験2で作製した対照試料2a〜cについての測定結果を図4に、実験3で作製した対照試料3a〜cについての測定結果を図5に、実験4で作製した対照試料4a〜cについての測定結果を図6に、それぞれ示す。なお、図3〜6では、いずれも周波数1MHz及び10MHzにおける測定結果を示し、また、グラフの横軸は時間(s)、縦軸は誘電率をその初期値で規格化した値を示す。
【0057】
各対照試料についての誘電率の経時変化の測定結果から、対照試料1b及び1c、対照試料2b及び2c、対照試料3b及び3c、並びに対照試料4b及び4cについては、保存0日目と保存22日後又は44日後に測定された誘電率に基づく値の周波数10MHzにおける最大値と最小値に明確な差があり、保存後も、測定された誘電率に基づく値の経時変化を容易に確認できることが分かった。
【0058】
また、使用したグルタルアルデヒドの使用量に注目すると、0.013質量%の濃度のグルタルアルデヒドを用いた1b、2b、3c、4cでは、保存0日目に周波数10MHzで測定された誘電率の最大値と最小値の差分と、保存1〜25日後に周波数10MHzで測定された誘電率の最大値と最小値の差分と、の変化率が±20%以内に維持されていた。
【0059】
0.006質量%の濃度のグルタルアルデヒドを用いた3b及び4bでは、保存0日目に周波数10MHzで測定された誘電率の最大値と最小値の差分と、保存25日後に周波数10MHzで測定された誘電率の最大値と最小値の差分と、の変化率は±20%を超えていたが、保存0日目に周波数10MHzで測定された誘電率の最大値と最小値の差分と、保存1〜11日後に周波数10MHzで測定された誘電率の最大値と最小値の差分と、の変化率は±20%以内に維持されていた。
【0060】
0.025質量%の濃度のグルタルアルデヒドを用いた1c及び2cでは、保存0日目に周波数10MHzで測定された誘電率の最大値と最小値の差分と、保存1〜25日後に周波数10MHzで測定された誘電率の最大値と最小値の差分と、の変化率が±20%以内に維持されていたが、そもそも誘電率の最大値と最小値の差分が小さかった。
【0061】
以上の結果から、0.006質量%より少ない濃度のグルタルアルデヒドで赤血球を固定した場合、その固定が弱すぎて、保存による劣化が進んでしまう可能性が示唆された。
一方、0.025質量%を超える濃度のグルタルアルデヒドで赤血球を固定した場合、その固定が強すぎて、赤血球本来の機能を発揮させることができず、血漿成分と混合した際の経時的な電気的特性の変化が小さくなってしまう可能性が示唆された。
従って、固定剤としてグルタルアルデヒドを用いる場合、その濃度は、0.006質量%以上が好ましく、0.025質量%以下が好ましいことが分かった。
【0062】
一方、グルタルアルデヒドなどの固定剤で固定されていない赤血球を含む対照試料1a、2a、3a及び4aは、いずれも初期(保存期間0日目)の経時変化の度合い(シグナル)は大きく出現するものの、数日〜10日経過以降においてシグナルが減少した。そのため、対照試料1a、2a、3a及び4aは、血液試料の電気的特性の測定において、その測定前にその測定精度の検証に利用することは困難であることが分かった。
【0063】
<試験例2>
前記試験例1の実験1で作製した対照試料1bに、前述と同様、対照試料1bにおいてMAP液に保存した固定赤血球と、凍結乾燥血漿を規定量の水で再融解したものとを1:1(体積比)の割合で混合し、混合液を調製した。この混合液自体とする対照試料5aと、この混合液に、ヘパリン及び/又はフィブリノゲンを以下の量で添加した対照試料5b〜dを作製した。
(5a)添加なし
(5b)ヘパリンを混合液に対して0.5体積%分添加した。
(5c)ヘパリンを混合液に対して0.5体積%分添加し、フィブリノゲンを2mg/mL添加した。
(5d)混合液に対して、フィブリノゲンを2mg/mL添加した。
【0064】
対照試料5a〜dを用いて、前述の試験例1と同様の方法で、誘電コアグロメーターにより、周波数100Hz〜40MHz程度の範囲における誘電率の経時変化を測定した。
その結果を図7に示す。図7では、周波数10MHzにおける測定結果を示し、また、グラフの横軸は時間(s)、縦軸は誘電率をその初期値で規格化した値を示す。
【0065】
対照試料5bでは、対照試料5aに比べて、凝固時間が延長し、シグナルの強度も上昇したことが確認された。また、対照試料5cでは、さらにシグナルの強度が上昇したことが確認された。これらの結果より、ヘパリンやフィブリノゲンの添加により、電気的特性(誘電率)の経時変化(シグナル)を調節可能であることが確認された。
【0066】
なお、本技術は、以下のような構成も取ることができる。
(1)
固定剤により不完全に固定された固定赤血球を含有し、
該固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、その電気的特性が経時的に変化し得るように固定されている、電気的特性測定用試料。
(2)
前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に連銭形成が進行するように固定されている、(1)に記載の電気的特性測定用試料。
(3)
前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、所定の周波数における電気的特性の所定の特徴点の値が、一定期間は所定の範囲内に維持されるように固定されている、(1)又は(2)記載の電気的特性測定用試料。
(4)
前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、所定の周波数における電気的特性の所定の特徴点の値が、固定処理後25日間において、±20%以内に維持されるように固定されている、(3)に記載の電気的特性測定用試料。
(5)
前記固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、周波数10MHzで経時的に測定した誘電率の最大値と最小値の差分が、固定処理後25日間において、±20%以内に維持されるように固定されている、(4)に記載の電気的特性測定用試料。
(6)
前記固定剤は、グルタルアルデヒドを含有する(1)から(5)のいずれか一項に記載の電気的特性測定用試料。
(7)
MAP液を含有する(1)から(6)のいずれか一項に記載の電気的特性測定用試料。
(8)
血液試料の電気的特性を経時的に測定する前に、電気的特性測定用試料の電気的特性を経時的に測定する方法であって、
前記電気的特性測定用試料は、固定剤により不完全に固定された固定赤血球を含有し、該固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、その電気的特性が経時的に変化し得るように固定されている、電気的特性測定方法。
(9)
電気的特性測定用試料を用いて経時的に測定された電気的特性に基づく測定値と、予め定められた基準値と、に基づき、測定精度を判定する判定部を備え、
前記電気的特性測定用試料は、固定剤により不完全に固定された固定赤血球を含有し、該固定赤血球は、血漿成分と混合した際に、その電気的特性が経時的に変化し得るように固定されている、電気的特性測定装置。
【符号の説明】
【0067】
S1 調整工程
S2 第1の測定工程
S3 判定工程
S4 第2の測定工程
1 電気的特性測定装置
2 判定部
3 測定部
4 評価部
5 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】