特表-16147856IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2016-147856非水電解液二次電池用正極活物質およびその製造方法、前記正極活物質を含む電池、ならびに電池の充放電方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年9月22日
【発行日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用正極活物質およびその製造方法、前記正極活物質を含む電池、ならびに電池の充放電方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20171110BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20171110BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171110BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20171110BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20171110BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20171110BHJP
   C01D 15/04 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
   H01M4/58
   H01M4/48
   H01M4/36 E
   H01M10/0566
   H01M10/44
   H01M10/052
   C01D15/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
【出願番号】特願2017-506187(P2017-506187)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2015-51398(P2015-51398)
(32)【優先日】2015年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)平成27年3月9日に公益社団法人電気化学会第82回大会の予稿集にて公開、(2)平成27年3月15日に公益社団法人電気化学会第82回大会にて発表、(3)平成27年3月9日に公益社団法人電気化学会第82回大会の予稿集にて公開、(4)平成27年3月15日に公益社団法人電気化学会第82回大会にて発表、(5)平成27年11月11日に第56回電池討論会の予稿集にて公開、(6)平成27年11月13日に第56回電池討論会にて発表、(7)平成27年11月11日に第56回電池討論会の予稿集にて公開、(8)平成27年11月13日に第56回電池討論会にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
【住所又は居所】静岡県磐田市新貝2500番地
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
【住所又は居所】静岡県静岡市駿河区大谷836
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 寿一
【住所又は居所】静岡県磐田市新貝2500番地 ヤマハ発動機株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】冨田 靖正
【住所又は居所】静岡県浜松市中区城北3丁目5−1 国立大学法人静岡大学大学院工学研究科内
【テーマコード(参考)】
5H029
5H030
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ14
5H029AK02
5H029AK04
5H029AK18
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ08
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ05
5H030BB01
5H030BB21
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA02
5H050CA10
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050EA10
5H050EA23
5H050EA28
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】
非水電解液二次電池用正極活物質は、LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)を含む、非水電解液二次電池用正極活物質。
【請求項2】
請求項1において、
前記LiXと、
(式中、Mは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種を表し、0<x≦1、0<y≦2である。)と、の混合物を含む、非水電解液二次電池用正極活物質。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記混合物において、LiX/M(モル比)が0.1以上100以下である、非水電解液二次電池用正極活物質。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記混合物の平均粒子径が100μm以下である、非水電解液二次電池用正極活物質。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
は、Ni(式中、Bは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、B以外の遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種であり、Bは、遷移金属であり、0<a≦1、0≦b≦1、0<c≦2である。)である、非水電解液二次電池用正極活物質。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項において、
は、B(式中、Aは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、B以外の遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種であり、Bは、遷移金属であり、Dは、Bは、AおよびB以外の遷移金属であり、0<a≦1、0≦b≦1、0<c≦2、0≦d≦1である。)である、非水電解液二次電池用正極活物質。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、
前記混合物を50%以上100%以下含む、非水電解液二次電池用正極活物質。
【請求項8】
LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)を配合する工程を含む、非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記配合する工程は、
LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)からなる第1の粒子と、
(式中、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属、第12族金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種を表し、0<x≦1、0<y≦2である。)からなる第2の粒子と、を混合する工程を含む、非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記混合する工程は、100rpm以上の回転数で行われる、非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項11】
請求項9または10において、
前記混合する工程により、平均粒子径が100μm以下である混合物が得られる、非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
請求項9ないし11のいずれか1項において、
前記第1の粒子/前記第2の粒子(質量比)が0.1以上100以下である、非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれか1項において、
は、B(式中、Aは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、B以外の遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種であり、Bは、遷移金属であり、0<a≦1、0≦b≦1、0<c≦2である。)である、非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項14】
請求項9ないし13のいずれか1項において、
は、B(式中、Aは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、B以外の遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種であり、Bは、遷移金属であり、Dは、AおよびB以外の遷移金属であり、0<a≦1、0≦b≦1、0<c≦2、0≦d≦1である。)である、非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項15】
正極および負極を備え、
前記正極は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極活物質を含む、電池。
【請求項16】
正極および負極を備えた電池の充放電方法であって、
前記正極において、LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)が電離して、Li、X、および電子が生成し、該電子が前記負極に移動する充電工程と、
前記正極において、前記Liと前記Xとが結合してLiXが生成し、前記負極から電子が該正極に移動する放電工程と、を含む、電池の充放電方法。
【請求項17】
請求項16において、
前記充電工程において、生成した前記Xが前記Mと結合し、
前記放電工程において、前記Xと前記Mとの結合物から前記Xが分離する、電池の充放電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用正極活物質およびその製造方法、前記正極活物質を含む電池、ならびに電池の充放電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、小型携帯機器用途で幅広く使用されている(特許文献1)。近年、より低コストでかつ高エネルギー密度、高容量の二次電池の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−134758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、ハロゲン化リチウム(LiX)を正極活物質に用いることにより、低コストでかつ、高容量、高電圧および高エネルギー密度である電池が得られることを見出した。
【0005】
本発明は、低コストでかつ、高容量、高電圧および高エネルギー密度である電池の製造に使用することができる非水電解液二次電池用正極活物質およびその製造方法、前記正極活物質を含む電池、ならびに電池の充放電方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.本発明の一態様に係る非水電解液二次電池用正極活物質は、LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)を含む。
【0007】
2.上記1に記載の非水電解液二次電池用正極活物質は、前記LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)と、M(式中、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種を表し、0<x≦1、0<y≦2である。)と、の混合物を含む。
【0008】
3.上記1または2に記載の非水電解液二次電池用正極活物質では、前記混合物において、LiX/M(モル比)が0.1以上100以下であることができる。
【0009】
4.上記1ないし3のいずれかに記載の非水電解液二次電池用正極活物質では、前記混合物の平均粒子径が100μm以下であることができる。
【0010】
5.上記1ないし4のいずれかに記載の非水電解液二次電池用正極活物質において、Mは、B(式中、Aは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、B以外の遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種であり、Bは、遷移金属であり、0<a≦1、0≦b≦1、0<c≦2である。)であることができる。
【0011】
6.上記1ないし4のいずれかに記載の非水電解液二次電池用正極活物質において、Mは、B(式中、Aは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、B以外の遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種であり、Bは、遷移金属であり、Dは、AおよびB以外の遷移金属であり、0<a≦1、0≦b≦1、0<c≦2、0≦d≦1である。)であることができる。
【0012】
7.上記1ないし6のいずれかに記載の非水電解液二次電池用正極活物質において、前記混合物を50%以上100%以下含むことができる。
【0013】
8.本発明の一態様に係る非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法は、LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)を配合する工程を含む。
【0014】
9.上記8に記載の非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法において、前記配合する工程は、LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)からなる第1の粒子と、M(式中、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種を表し、0<x≦1、0<y≦2である。)からなる第2の粒子と、を混合する工程を含む。
【0015】
10.上記9に記載の非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法において、前記混合する工程は、100rpm以上の回転数で行われることができる。
【0016】
11.上記9または10に記載の非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法において、前記混合する工程により、平均粒子径が100μm以下である混合物を得ることができる。
【0017】
12.上記9ないし11のいずれかに記載の非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法において、前記第1の粒子/前記第2の粒子(質量比)が0.1以上100以下であることができる。
【0018】
13.上記9ないし12のいずれかに記載の非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法において、Mは、B(式中、Aは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、B以外の遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種であり、Bは、遷移金属であり、0<a≦1、0≦b≦1、0<c≦2である。)であることができる。
【0019】
14.上記9ないし13のいずれかに記載の非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法において、Mは、B(式中、Aは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、B以外の遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種であり、Bは、遷移金属であり、Dは、AおよびB以外の遷移金属であり、0<a≦1、0≦b≦1、0<c≦2、0≦d≦1である。)であることができる。
【0020】
15.本発明の一態様に係る電池は、正極および負極を備え、前記正極は、上記1ないし7のいずれかに記載の非水電解液二次電池用正極活物質を含む。
【0021】
16.本発明の一態様に係る電池の充放電方法は、正極および負極を備えた電池の充放電方法であって、前記正極において、LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)が電離して、Li、X、および電子が生成し、該電子が前記負極に移動する充電工程と、前記正極において、前記Liと前記Xとが結合してLiXが生成し、前記負極から電子が該正極に移動する放電工程と、を含む。
【0022】
17.上記16に記載の電池の充放電方法では、前記充電工程において、生成した前記Xが前記Mと結合し、前記放電工程において、前記Xと前記Mとの結合物から前記Xが分離する。
【発明の効果】
【0023】
上記1ないし7のいずれかに記載の非水電解液二次電池用正極活物質は、LiXを含むことにより、LiXが正極活物質として機能する。X(ハロゲン原子の陰イオン)は電気陰性度が高い。このため、上記15に記載の電池によれば、上記1ないし7のいずれかに記載の非水電解液二次電池用正極活物質を含むことにより、LiXを正極活物質として機能するため、低コスト化が達成され、かつ、高電圧、高容量および高エネルギー密度である電極を形成することができる。
【0024】
上記8ないし14のいずれかに記載の非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法によれば、LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)を配合する工程を含むことにより、非水電解液二次電池用正極活物質を簡便な方法で得ることができる。
【0025】
上記16または17に記載の電池の充放電方法は、正極および負極を含む電池の充放電方法であって、前記正極において、LiXが電離して、Li、X、および電子が生成し、該電子が前記負極に移動する充電工程と、前記正極において、前記Liと前記Xとが結合してLiXが生成し、前記負極から電子が該正極に移動する放電工程と、を含むことにより、低コストで、かつ、高電圧、高容量および高エネルギー密度の電池を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電池において、正極における反応を示す式である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る電池において、正極における反応機構を説明する概略模式図である。
図3図3は、本発明の実施例1に係る非水電解液二次電池用正極活物質のXRD(X線回折法)パターンを示す。
図4図4は、本発明の実施例1に係る非水電解液二次電池用正極活物質(LiFとNiOとの混合物、粉砕時間:72時間)を正極に用いた電池の放電曲線(0.1C)を示す。
図5図5は、本発明の実施例1に係る非水電解液二次電池用正極活物質(LiFとNiOとの混合物、粉砕時間:12時間、72時間)を正極に用いた電池の充放電曲線(0.1C)を示す。
図6図6は、本発明の実施例1に係る非水電解液二次電池用正極活物質(LiFとNiOとの混合物、粉砕時間:72時間)を正極に用いた電池の充放電前後において該正極活物質に含まれるNi(2p)のXPS測定結果を示す図である。
図7図7は、本発明の実施例1に係る非水電解液二次電池用正極活物質(LiFとNiOとの混合物、粉砕時間:72時間)を正極に用いた電池の充放電前後において該正極活物質に含まれるO(1s)のXPS測定結果を示す図である。
図8図8は、本発明の実施例1に係る非水電解液二次電池用正極活物質(LiFとNiOとの混合物、粉砕時間:72時間)を正極に用いた電池の充放電前後において該正極活物質に含まれるF(1s)のXPS測定結果を示す図である。
図9図9は、本発明の実施例1に係る非水電解液二次電池用正極活物質(LiFとNiOとの混合物、粉砕時間:72時間)を正極に用いた電池の充放電前後において該正極活物質に含まれるLi(1s)のXPS測定結果を示す図である。
図10図10は、本発明の実施例2に係る非水電解液二次電池用正極活物質(LiFとNiMnとの混合物、粉砕時間72時間)を正極に用いた電池のサイクリックボルタンメトリーを示す。
図11図11は、本発明の実施例2に係る非水電解液二次電池用正極活物質(LiFと、NiO、NiMn、MnO、CoO、またはMnとの混合物、粉砕時間72時間)を正極に用いた電池の放電曲線(0.1C)を示す。
図12図12は、本発明の一実施形態に係る電池を模式的に示す図である。
図13図13(a)および図13(b)はそれぞれ、本発明の実施例1に係る混合物(LiF:NiO=1:1(モル比)、粉砕時間72時間)を正極に用いた電池のサイクル試験の結果を示す。
図14図14は、本発明の実施例4に係る混合物(LiFとNiOとの混合物(LiF:NiO=70:30,60:40,50:50,40:60,30:70(モル比)、粉砕時間72時間)を正極に用いた電池の充放電曲線を示す。
図15図15は、本発明の実施例4に係る混合物(LiF:NiO=70:30、粉砕時間72時間)を正極に用いた電池の充放電曲線(図15(a))、XPSスペクトル(図15(b))およびXRDパターン(図15(c))を示す。
図16図16は、本発明の実施例5に係る混合物(LiFとLiNiOとの混合物(LiF:LiNiO=1:1(モル比)、m:n=0.13:0.87,0.10:0.90,0.07:0.93(モル比))を正極に用いた電池のXRD測定結果を示す。
図17図16に示す混合物を正極に用いた電池の充放電曲線(図17(a))およびレート比較(図17(b))を示す。
図18図18は、本発明の実施例6に係る混合物(LiFとNiOとMnOとの混合物(LiF:(MnO+NiO)=1:1(モル比))、NiO:MnO=5:5,6:4,7:3,8:2(モル比)、粉砕時間:72時間)のXRD測定結果を示す。
図19図19は、本発明の実施例6に係る混合物(LiFとNiOとMnOとの混合物(NiO:MnO=5:5(モル比))、粉砕時間:72時間)のSTEM測定結果を示す。
図20図20は、本発明の実施例6に係る混合物(LiFとNiOとMnOとの混合物(LiF:(NiO+MnO)=1:1(モル比))、Ni:Mn=5:5,6:4,7:3,8:2、粉砕時間:72時間)、粉砕時間:72時間)を正極に用いた電池の充放電曲線を示す。
図21図21は、本発明の実施例6に係る混合物(LiFとNiOとMnOとの混合物(LiF:(NiO+MnO)=1:1(モル比))、Ni:Mn=5:5(モル比)、粉砕時間:72時間)を正極に用いた電池のXPSスペクトル(Ni)(図21(a))、XPSスペクトル(Mn)(図21(b))および充放電曲線(図21(c))を示す。
図22図22は、本発明の実施例7に係る混合物(LiF−NiMn)の充放電測定結果を示す。
図23図23は、本願実施例8に係る電池(本発明の実施例1に係る混合物を用いた正極と、黒鉛炭素を用いた負極とを有するリチウムイオン電池)の充放電測定結果を示す。
図24図24は、本発明の正極活物質を用いた電池の反応機構を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、格別に断らない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
【0028】
1.正極活物質
本発明の一実施形態に係る正極活物質は、非水電解液二次電池用正極活物質(以下、単に「正極活物質」とも記載する。)であって、LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)を含む。本実施形態に係る正極活物質がLiXを含むことにより、該正極活物質を正極に使用した電池において、放電の際にLiXが電離してリチウムイオンおよびXが生じ、また、充電の際にリチウムイオンがXと結合してLiXとなることができる。
【0029】
本実施形態に係る正極活物質は、LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)と、M(式中、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種を表し、0<x≦1、0<y≦2である。)と、の混合物を含む。Mを構成するMは、1種類であってもよいし、または複数種類であってもよい。
【0030】
本実施形態に係る正極活物質は、電離により、電気陰性度が高い、ハロゲン原子の陰イオン(X)を生成するLiXを含有することから、本実施形態に係る正極活物質を正極活物質として使用することにより、高容量、高電圧および高エネルギー密度の電池を製造することができる。
【0031】
より具体的には、本実施形態に係る正極活物質は、前記LiXからなる第1の粒子(粉末状の粒子状固体)と、前記Mからなる第2の粒子(粉末状の粒子状固体)とを混合して得られる混合物を含む。第1の粒子と第2の粒子とを混合する方法については後述する。
【0032】
本実施形態に係る正極活物質は、二次電池用正極活物質として好適に使用することができ、特に、非水電解質二次電池用正極活物質として好適に使用することができる。
【0033】
1.1.電池の充放電方法
本実施形態に係る正極活物質として正極で用いる電池(二次電池、例えば非水電解液二次電池)は、図1および図2に示される反応機構によって充放電を行うことができる。
【0034】
例えば、本発明の一実施形態に係る電池の充放電方法は、正極および負極を備えた電池の充放電方法であって、図1に示されるように、前記正極において、LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)が電離して、Li(リチウムイオン)、X、および電子が生成し、該電子が前記負極に移動する充電工程と、前記正極において、前記Liと前記Xとが結合してLiXが生成し、前記負極から電子が該正極に移動する放電工程と、を含む。本実施形態に係る電池の充放電方法において、前記充電工程と前記放電工程とが繰り返される。
【0035】
より具体的には、本実施形態に係る電池の充放電方法では、図2に示されるように、前記充電工程において、生成した前記Xが前記Mと結合することができ、前記放電工程において、前記Xと前記Mとの結合物から前記Xが分離することができる。
【0036】
このように、前記充電工程では、生成した前記Xが前記Mと結合することによって、生成した前記Xを前記Mに捕捉させることができるため、続く放電工程において、LiとXとを再び結合させることができるのに加えて、生成した前記Xが外部に放出されたり、他の物質と結合したりすることを防止することができる。また、生成した前記Xを前記Mと結合させることにより、導電性を向上させることができる。
【0037】
図24は、本発明の正極活物質を用いた電池の反応機構を説明する図である。図24では、LiXがLiFである場合を例にとり説明する。
【0038】
図24に示されるように、Mは放電時にFを安定に捕捉し、LiFの再形成を促進させる役割を有すると推測される。例えば、本実施形態に係る混合物の平均粒子径を小さくすることで、LiXとMとの距離を短くすることにより、Xを安定に補足し、放電時にLiXを再形成しやすくことができる。X(特にF)はイオン化傾向が高いため、Xとして安定に存在することができる。このため、Xを安定に補足することができれば、放電時にLiXを再形成しやすい。
【0039】
本実施形態に係る正極活物質では、より高容量、より高密度、かつより高エネルギー密度の電池を製造できる点で、前記混合物におけるLiX/M(モル比)は、0.1以上100以下であることができ、10以下であることが好ましい。
【0040】
また、本実施形態に係る正極活物質を用いて製造された電池において、LiXからLiおよびXへの変換を均一かつスムーズに進めることができる点で、本実施形態に係る正極活物質(前記混合物)の平均粒子径(一次粒子径)が100μm以下であることが好ましく、例えば、100nm以上100μm以下であることができ、または、100nm未満であってもよい。また、LiXとMxOyとの距離を短くすることで、Xを安定に補足し、放電時にLiXを再形成しやすい点で、該混合物の平均粒子径(一次粒子径)は100nm未満であることが好ましく、50nm未満であることがより好ましく、30nm未満であることがさらに好ましい。
【0041】
例えば、ボールミルに使用するボールの粒径を調整することによって、粒子径100nm未満の前記混合物を得ることができる。
【0042】
1.2.LiX
LiXを構成するハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子の陰イオンは電気陰性度が高いため、高エネルギー密度の電池を得ることができ、かつ、金属酸化物(M)との間に結合を形成しやすい。よって、本実施形態に係る正極活物質を電極(正極)に用いた電池の作動時において、正極において、ハロゲン原子の陰イオンが金属酸化物と結合することにより、高温条件下においても、ハロゲン原子の陰イオンを正極にて安定して保持させることができる。特に、電気陰性度がより高いため、高温条件下での動作安定性により優れ、かつ、より高いエネルギー密度の電池を得ることができる点で、Xはフッ素原子であることが好ましい。
【0043】
1.3.金属酸化物(M
金属酸化物であるMを構成するMは、アルカリ金属原子(例えば、Li、Na、K)、アルカリ土類金属原子(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba)、遷移金属(Ni、Co、Ru、Ir、V、Fe、Ti、Cr、Mo、W,Zr、Mn、Pd、Pt、Fe、Cu、Ag、Au)、第12族元素の金属(例えば、Zn、Cd、Hf)、および第13族元素の金属(例えば、Al、Ga、In、Tl)から選ばれる少なくとも1種であり、なかでも、金属酸化物であるMを構成するMは、高容量の電池を得ることができる点で、Niを含むことが好ましく、例えば、Mは、Niと、Coおよび/またはMnと、を含むことがより好ましい。また、Mを構成するxは0<xであることが好ましく、また、yは0<yであることが好ましい。)
【0044】
より具体的には、Mは、B(式中、Aは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、B以外の遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種であり、Bは、遷移金属であり、0<a≦1、0≦b≦1、0<c≦2である。)であることが好ましい。例えば、Mは、Ni(式中、Aは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、Ni以外の遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種であり、0<a≦1、0≦b≦1、0<c≦2である。)であることが好ましい。
【0045】
また、例えば、Mは、B(式中、Aは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、B以外の遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種であり、Bは、遷移金属であり、Dは、AおよびB以外の遷移金属であり、0<a≦1、0≦b≦1、0<c≦2、0≦d≦1である。)であることが好ましい。ここで、A,B,Dとして表される各種金属の具体例は上述した通りである。
【0046】
本実施形態に係る正極活物質は、LiXとMとの混合物を50%以上100%以下含むことが好ましい。
【0047】
1.4.作用効果
本実施形態に係る正極活物質は、LiXとMとの混合物を含むことにより、上記正極活物質を例えば正極に用いた場合、LiXが正極活物質として機能する。X(ハロゲン原子の陰イオン)は電気陰性度が高い。このため、LiXを正極活物質として用いることにより、低コスト化が達成され、かつ、高電圧、高容量および高エネルギー密度である電極を形成することができる。
【0048】
2.正極活物質の製造方法
上記実施形態に係る正極活物質は、以下の製造方法により得ることができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る正極活物質の製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう。)は、LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)を配合する(使用する)工程を含む。この場合、前記配合する工程は、LiXを固体として配合する工程であることができる。また、この場合、LiXは粒子状であることができる。
【0049】
より具体的には、前記配合する工程は、LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)からなる第1の粒子と、M(式中、Mはアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属、第12族元素の金属、および第13族元素の金属から選ばれる少なくとも1種を表し、0<x≦1、0<y≦2である。)からなる第2の粒子と、を混合する工程を含む。該混合する工程により、該第1の粒子と該第2の粒子との混合物(平均粒子径100μm以下、好ましくは100nm以上100μm以下)を得ることができる。
【0050】
本実施形態に係る製造方法では、前記第1の粒子と前記第2の粒子とを均一に分散できる点で、前記混合する工程は、100rpm以上、好ましくは100rpm以上1,500rpm以下(より好ましくは1,000rpm以下)の回転数で行われるのが好ましい。上記回転数で前記第1の粒子と前記第2の粒子とを混合することにより、前記第1の粒子および前記第2の粒子を粉砕させることができる。
【0051】
本実施形態に係る製造方法において、前記第1の粒子と前記第2の粒子とを均一に分散できる点で、前記第1の粒子/前記第2の粒子(質量比)が0.001以上1,000以下であることが好ましい。
【0052】
本実施形態に係る製造方法において、前記第1の粒子を前記混合物中で均一に分散できる点で、該第1の粒子の平均粒子径は、100nm以上100μm以下であることが好ましい。
【0053】
本実施形態に係る製造方法において、前記第2の粒子を前記混合物中で均一に分散できる点で、該第2の粒子の平均粒子径は、100nm以上100μm以下であることが好ましい。
【0054】
また、本実施形態に係る製造方法において、前記混合する工程における混合時間は通常1時間以上500時間以下であり、また、前記混合する工程における混合温度は通常10℃以上60℃以下(但し、環境温度)である。
【0055】
本実施形態に係る正極活物質の製造方法によれば、LiX(式中、Xはハロゲン原子を表す。)を正極材料中に配合する工程を含むことにより、低コスト化が達成され、かつ、高電圧、高容量および高エネルギー密度である電極を形成するための正極活物質を簡便な方法で得ることができる。より具体的には、前記配合する工程は、LiXからなる第1の粒子と、Mからなる第2の粒子と、を混合する工程を含むため、LiXとMとの混合物を含む正極活物質をより簡便な方法で得ることができる。
【0056】
2.電池
図12は、上記実施形態に係る正極活物質を用いた、本発明の一実施形態に係る電池の一例を模式的に示す図である。本実施形態に係る電池は図12に示すように、正極2および負極3を備え、正極3は、上記実施形態に係る正極活物質を含む。
【0057】
本実施形態に係る電池は、充放電可能である点で二次電池であることが好ましく、該正極活物質がLiXを含む点で、非水電解液二次電池であることがより好ましい。本実施形態に係る電池は、上記実施形態に係る正極活物質を正極活物質として正極に含むことができる。
【0058】
本実施形態に係る電池の一例として、リチウムイオン二次電池を図12に模式的に示す。図12に示されるように、リチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」と称する)1は、正極層(正極)2、負極層(負極)3、セパレータ4、正極側集電体5、および負極側集電体6を備える。
【0059】
2.1.正極
正極層2は、上記実施形態に係る正極活物質を含有する電極材料(正極材料)21と、正極材料21間を満たす電解液7と、を備える。
【0060】
正極層2は、正極材料21に加えて、導電材を含有していてもよい。導電材としては、公知の物質が用いられ、例えば炭素系導電材として、カーボンブラック及びアセチレンブラック等が用いられる。正極層2は、1種又は複数種の導電材を含有することができる。
【0061】
正極層2はさらに、バインダを含有してもよい。バインダとしては、従来バインダとして用いられてきた種々のポリマーが適用される。前記ポリマーとしては、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレングリコール、スチレンブタジエンゴム等が挙げられる。正極層2は、1種又は複数種のバインダを含有することができる。
【0062】
2.2.負極
負極層3は、負極活物質を含有する電極材料(負極材料)31と、その負極材料31の間を満たす電解液7と、を備える。
【0063】
負極活物質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる物質として公知である物質が適用可能である。具体的には、炭素(黒鉛等)、金属リチウム、Sn、SiO等が挙げられる。
【0064】
負極層3はさらに、正極層2に使用可能な材料として上述したバインダを含有してもよい。
【0065】
電解液7は、溶媒と、溶媒中に溶解した電解質と、を含有する。
【0066】
溶媒は、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の溶媒が適用可能である。溶媒としては、非水溶媒、すなわち有機溶媒が用いられる。非水溶媒として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類が挙げられ、これらの溶媒のうち、1種または複数種類が混合されてもよい。
【0067】
電解質としては、従来のリチウムイオン二次電池において電解質として用いられる物質が適用可能である。より具体的には、電解質として、例えば、LiPF、LiClO、LiBF等が挙げられる。電解液7は、1種又は複数種の電解質を含有することができる。
【0068】
なお、電池の性能の安定性及び電気特性の向上のために、電解液7には過充電防止剤等の種々の添加剤が添加されてもよい。
【0069】
2.3.セパレータ
セパレータ4は、正極層2および負極層3の間に配置される。セパレータ4を、電極層2と負極層3との間に配置することにより、正極と負極との間の短絡を防止することができる。また、セパレータ4が多孔性であることで、電解液7及びリチウムイオンを透過させることができる。セパレータ4の材料としては、例えば、樹脂(具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系ポリマー)が挙げられる。
【0070】
正電極側集電体5としては、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等の金属箔を用いることができる。また、負極側集電体6としては、例えば、銅又は銅合金等の金属箔を用いることができる。
【0071】
電池1は、上述の構成の他に、電池ケース、正極側端子及び負極側端子(いずれも図示しない)等の構成を備え得る。例えば、図12に示される積層体構造が何重にも巻かれることで形成された巻回体が、電池ケース中に収容されていてもよい。また、正極側端子は正極側集電体5と接続され、負極側端子は負極側集電体6と接続される。
【0072】
2.4.用途
本実施形態に係る電池は、低コストでかつ高容量、高電圧、および高エネルギー密度であるため、例えば、小型携帯機器用の電池のみならず、電動自転車、二輪車、車両、船舶等の大型機器用電池として好適に使用することができる。
【0073】
3.実施例
以下、図面を参照して、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0074】
3.1.実施例1
原料としてLiF(平均粒子径:1μm)およびNiO(平均粒子径:10μm)を使用し、該原料(LiF:1g、NiO:2.3g)(モル比約1:1)を遊星ボールミルによって混合および粉砕することにより、混合物を調製した。ここで、粉砕条件は、650rpm、1〜144時間(h)とし、熱処理試料に関しては,200〜800℃にて,大気下で焼成した。
【0075】
得られた混合物は、XRD、XPS(X線光電子分光)、SEM(走査型電子顕微鏡)、CV(サイクリックボルタンメトリー)、充放電測定により評価した。CVおよび充放電測定では、得られた混合物(90g)を、ケッチェンブラック(KB)(5g)と複合化した後,PVdF(ポリビニリデンジフルオライド)を混合して正極活物質とし(混合物:KB:PVdF=70:20:10(質量比))、この正極活物質をアルミニウム箔上に塗布して作用極(正極)とした。対極(負極)に金属リチウム、電解液に1M LiPFEC:DEC(1:1)を使用し、ステンレス製の2極セルを用いてセルを作製した。
【0076】
図3に、異なる粉砕時間で作製された、本実施例に係る正極活物質のXRDパターンを示す。図3に示されるように、観測された回折ピークはいずれも、原料であるNiOの回折ピークと一致しており、LiFのピークは消失していた。また、NiO以外の回折ピークが観測されなかったことから、新たな結晶性化合物が生成していないことが理解できる。
【0077】
また、図3に示されるように、NiOの回折ピークは、粉砕時間の増加とともにブロードになっており、NiOの粒子径が小さくなったことを示しているが、ピークのシフトは僅かであることから、NiO中へのLiFの明確な固溶は生じていないと推測される。
【0078】
図4に、本実施例に係る正極活物質を正極として用いた電池の充放電曲線(0.1C)を示す。図4に示されるように、粉砕時間が12時間の場合、116mAh/g程度の放電容量であったが、粉砕時間を長くすることで充放電特性が向上し、粉砕時間が144時間の場合、平均電圧が3.53V、放電容量は、理論容量の81%に相当する217mAh/gの値を得ることができた。
【0079】
本実施例によれば、粉砕時間を長くすることにより、充放電特性を向上させることができることが理解できる。なお、表1の結果から、粉砕時間を長くすることにより、得られる試料の粒子径(一次粒子径)を小さくできることが理解できる。
【0080】
【表1】
【0081】
また、図5に、本実施例に係る正極活物質(LiFとNiOとの混合物、粉砕時間:72時間)を正極に用いた電池の充放電曲線(0.1C)を示す。図5において、「a」はおよび「b」はそれぞれ、粉砕時間が12時間、72時間にて得られた混合物を正極活物質として使用した場合を示す。また、図5において、左下から右上に向かうのは充電曲線であり、左上から右下に向かうのは放電曲線である。
【0082】
本実施例に係る電池によれば、LiXおよびMの混合物を正極活物質として使用することにより、一般的なリチウム二次電池と同様、充電からスタートする動作が可能となった。
【0083】
また、図6ないし9はそれぞれ、本発明の実施例1に係る非水電解液二次電池用正極活物質(LiFとNiOとの混合物、粉砕時間:72時間)を正極に用いた電池の充放電およびその前後において該正極活物質に含まれるNi(2p)、O(1s)、F(1s)、およびLi(1s)のXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)を測定した結果を示す図である。図6ないし図10において、「半充」は「半充電後」を意味し、「充」は「充電後」を意味し、「半放」は「半放電後」を意味し、「放」は「放電後」を意味し、「充放充」は「充電、次いで放電、次いで充電後」を意味する。
【0084】
図6ないし図9によれば、図6、7および9に示すNi(2p)、O(1s)、およびLi(1s)のXPSでは、充放電およびその前後においてスペクトルに大きなシフトは確認されなかったのに対して、図8に示すF(1s)のXPSでは、充放電およびその前後でスペクトルにシフトが確認された。この結果から、本実施例に係る電池の正極において充放電およびその前後で、図1および図2に示す反応が生じており、これにより、フッ素イオン(ハロゲン原子の陰イオン)の状態が変化していることが示唆される。
【0085】
図13(a)は、本発明の実施例1に係る混合物(LiF:NiO=1:1、粉砕時間:72時間、平均粒子径(一次粒径):100〜300nm)を正極に用いた電池のサイクル試験の結果を示す(カットオフ:5.0−2V、レート:0.1C)。図13(a)中、横軸は容量保持率(%)を表し、縦軸はセル電圧(V)を表し、「30」、「50」、「100」、「200」はそれぞれ、サイクル数を示す。図13(a)によれば、充放電のサイクル数が200回の時点でも、前記電池は、当初の70%以上の容量を保持していたことがわかる。
【0086】
図13(b)は、図13(a)に示す電池の充放電サイクル数が0〜60回における容量の変化を示す(カットオフ:4.4−2V、レート:0.1C、横軸はサイクル数を表し、縦軸は容量を表す。)図13(b)に示すように、前記電池の充放電サイクル数が60回の時点において、前記電池は、当初の95%を超える容量を維持していることがわかる。
【0087】
3.2.実施例2
NiO10g(平均粒子径:100μm)とMn21g(平均粒子径:300μm)とを1:1のモル比で乳鉢混合し、800℃で焼成した後、同条件で混合および焼成を再度行い、NiMnを合成した.得られたNiMnにLiFを加え(NiMn:LiF=1:4(モル比))、遊星ボールミルを用いて、650rpmにて72時間混合および粉砕することにより、本実施例に係る混合物(平均粒子径(一次粒子径):200μm)を得た。
【0088】
得られた混合物をケッチェンブラック(KB)と300rpmにて30分間複合化し、PVdFと混合して、本実施例に係る正極活物質とし、該正極活物質をアルミニウム箔上に塗布したものを作用極(正極)として電池を作製した。対極(負極)に金属リチウム、電解液に1M LiPFEC(エチレンカーボネート):DEC(ジエチルカーボネート)(1:1)を使用し、ステンレス製の2極セルを用いてセルを作製した。
【0089】
得られた混合物を、CVおよび充放電測定にて評価した。また、NiMnの他に、実施例1と同様の手法で、CoO、MnO、またはMnとLiFとの混合物(モル比1:1)を作製して、評価を行った。
【0090】
図10に、NiMn:LiF=1:4(モル比)の電極シートを作用極(正極)としたCV測定の結果を示す。図10を参照すると、電位を正方向に掃引すると、3V付近から正の電流の増加が確認される。当該増加は、電池の充電反応に対応する酸化電流ピークであると考えられる。また、電位を4.3Vから負方向に掃引した場合、負の電流が流れており、この電流サイクルは繰り返しても変化せず可逆的であることから、電池の放電反応に対応した負電流と考えられる。
【0091】
図11に、本実施例に係る各正極活物質を用いた電池の放電曲線を示す。粉砕時間が72時間の条件で比較すると、NiOを用いた場合、187mAh/gの放電容量が得られているのに対して、NiOと同じ二価の酸化物であるCoOおよびMnOを用いた場合では、それぞれ75mAh/g、118mAh/gとなり、放電電圧もNiOより低かった。また、Mnを用いた場合は、53mAh/gの放電容量であった。これに対して、スピネル型のNiMnを用いた場合は、放電容量211mAh/gであり、高い放電容量が得られた。
【0092】
図11に示される結果から、ニッケルを含む酸化物が高い放電容量を示していることが確認された。また、NiMnでの放電容量は、Ni3+→Ni2+による放電だけでは説明できず、Ni4+→Ni2+の寄与が考えられる。
【0093】
3.3.実施例3
下記の表2に示す化合物をLiFと混合して混合物を調製し、上記実施例2と同様の方法にて、該混合物を用いて電極を作製した。各例における最大放電容量を表2に合わせて示す。
【0094】
【表2】
【0095】
3.4.実施例4
原料であるLiFとNiOの比率(モル比)を変更した以外は、実施例1と同様の方法(粉砕時間72時間)で本実施例に係る混合物(平均粒子径(一次粒子径):100〜500nm)を調製した。その結果を図14および図15に示す。
【0096】
図14は、本発明の実施例1に係る混合物(LiF:NiO=70:30、60:40,50:50,40:60,30:70、粉砕時間72時間、平均粒子径(一次粒径):100nm)を正極に用いた電池のレート特性の結果を示す(カットオフ:2−5V、横軸は容量、縦軸はセル電圧を示す)。図14において、1Cが87%であり、5Cが62%であった。
【0097】
図14によれば、M(NiO)に対するLiXの割合が1/1を下回る場合および6/4以上の場合、容量が低下する傾向があることがわかる。
【0098】
また、図15は、本実施例に係る混合物(LiF:NiO=70:30、粉砕時間72時間)を正極に用いた電池の充放電曲線(図15(a))、XPSスペクトル(図15(b))およびXRDパターン(図15(c))を示す。図15(a)〜(c)において、(1)は充放電前、(2)は1/10充電後、(3)は第1回目の充電完了時、(4)は第1回目の充電完了後で第1回目の1/3放電後、(5)第1回目の放電完了時、(6)は第1回目の放電完了後で第2回目の充電完了時を表す。
【0099】
図15(b)(横軸は結合エネルギーを表し、縦軸は強度を表す。)によれば、(3)の第1回目の充電完了時および(6)の第2回目の充電完了時にピークが出現した(図15(b)の矢印で示す箇所)。この矢印で示されるピークは、NiOであると推測される。
【0100】
3.5.実施例5
炭酸リチウムと酸化ニッケル(NiO)とを所定のモル比で秤量、混合し、大気焼成することで、LiNiO(ここでn=1−mである。)を得た。このLiNiOとLiFとを所定のモル比で混合し、遊星ボールミルにて混合および粉砕することで、本実施例に係る混合物(平均粒子径(一次粒子径):100nm)を調製した。その結果を図16図17(a)および図17(b)に示す。
【0101】
また、本実施例の混合物と導電材のケッチェンブラックとの比が85:10となるように秤量し、乳鉢で20分間混合した後、結着材である溶媒に溶解したPVDFを5質量%加えてスラリー状にし、アルミニウム箔上に塗布し、室温にて真空乾燥することで正極を作製した。
【0102】
図16は、本実施例に係る混合物(LiFとLiNiOとの混合物(LiF:LiNiO=1:1(モル比)、m:n=0.13:0.87,0.10:0.90,0.07:0.93(モル比))を正極に用いた電池のXRD測定結果を示す。図17(a)および図17(b)はそれぞれ、本実施例に係る混合物の放電曲線(横軸は容量を示し、縦軸はセル電圧を示す。)ならびに容量に対する各レート容量比率(横軸はLiドープ比率を示し、縦軸は、容量を示す。)を示す。
【0103】
図16には、原料であるNiOとLiF、NiOとLiFとを所定のモル比で大気焼成して得られたLiNiO、LiFとLiNiOとを混合粉砕して得られた試料、および大気焼成して得られたLiNiOをLiFを加えずに単独粉砕した試料の回折パターンを示す。
【0104】
図16によれば、大気焼成後、LiFのピークは消失し、NiOピークのみとなっていることから、新たな化合物の生成はなかったと推測される。また、LiNiO中のLiの量が多いほど(mが大きいほど)高角側へのピークシフトが大きくなっていることがわかる。
【0105】
一方、LiFを加えて混合粉砕した試料の回折ピークでは、NiOピークのみが生じていることから、新たな化合物の生成はなかったと推測される。また、LiNiOのみを単独粉砕した場合、ピークシフトが生じなかったのに対して、LiNiOにLiFを加えて混合粉砕したものはピークシフトが生じた。このピークシフトは、LiFの固溶に起因すると推測される。
【0106】
図17(a)によれば、金属化合物としてLiでドープしたもの(LiNiO)を使用した場合、ドープしていない試料と比較して電位が上昇することがわかる。
【0107】
また、図17(b)は、Liのドープ量に対する0.05Cの放電容量を100%としたときの容量を示す。図17(b)によれば、0.5Cおよび1Cにおいて、Liをドープしていない試料の容量の低下が顕著である。このことから、LiをドープされたNiOを原料として用いることにより、電池の特性を高めることができることがわかる。
【0108】
3.6.実施例6
原料としてLiF(平均粒子径:1μm)、NiO(平均粒子径:10μm)およびMnO(平均粒子径:10μm)を使用し、該原料(LiFとNiOのモル比:1:1、NiとMnとのモル比:5:5、6:4、7:3、8:2)を遊星ボールミルにて、混合および粉砕(粉砕条件:650rpm、3時間(h))することにより、混合物を調製した。次いで、該混合物を800℃にて6時間、真空アニールした。その後、該混合物を遊星ボールミルで混合および粉砕(粉砕条件:650rpm、72時間(h))して、最終生成物である混合物(平均粒子径(一次粒子径):100〜300nm)を調製した。
【0109】
得られた混合物は、XRD、充放電測定、およびSTEMにより評価した。得られた混合物(90g)を、ケッチェンブラック(KB)(5g)と複合化した後,PVdF(ポリビニリデンジフルオライド)を混合して正極材料とし(混合物:KB:PVdF=70:20:10(質量比))、この正極材料をアルミニウム箔上に塗布した後、室温にて真空乾燥させて、作用極(正極)とした。対極(負極)に金属リチウム、電解液に1M LiPFEC:DEC(1:1)を使用し、ステンレス製の2極セルを用いてセルを作製した。
【0110】
図18は、本実施例に係る混合物(LiF:(NiO+MnO)=1:1(モル比)、Ni:Mn=5:5,6:4,7:3,8:2(モル比))のXRD測定結果を示す。
【0111】
なお、図示しないが、NiOとMnOとを単に3時間混合した試料は、原料であるNiOとMnOのピークとほぼ同じピークが検出された。また、真空アニール後の混合物において、固溶体の形成が確認された。また、図18において、72時間の混合粉砕後の混合物では、LiFのピークが消失し、高角度側へのシフトが確認された。このことから、LiFとNi1−xO(ここで、0<x<1)との固溶体が形成されていると推測される。
【0112】
図19は、本実施例に係る混合物のSTEM測定結果を示す。図19に示すように、Ni,O,Fのいずれについても偏りがみられなかった。このことからも、LiFとNi1−xO(ここで、0<x<1)との固溶体が形成されていることが推測される。
【0113】
図20は、本実施例に係る混合物(LiFとNiOとMnOとの混合物、粉砕時間:72時間、NiO:MnO=5:5,6:4,7:3,8:2)を正極に用いた電池の充放電曲線を示す。なお、図20において、LiF−NiOとして示される点線は、LiFとNiOとを72時間遊星ボールミルで混合して得られた試料であり、LiF−NiOとして示される点線は、LiFとMnOとを72時間遊星ボールミルで混合して得られた試料である。
【0114】
図20によれば、該混合物におけるMnの割合が高いと容量が高い傾向があり、該混合物におけるNiの割合が高いと電位が高い傾向があることが理解できる。
【0115】
図21は、本実施例に係る混合物(原料として、LiF:(NiO+MnO)=1:1、NiO:MnO=70:30を使用)を正極に用いた電池のXPSスペクトル(Ni)(図21(a))、XPSスペクトル(Mn)(図21(b))および充放電曲線(図21(c))を示す。
【0116】
図21(a)および図21(b)によれば、充放電前(1)ではNi2+、Mn3+のピークのみが発現し、充電後(2)においてNi3+、Mn3+のピークが発現し、放電後(3)においてNi3+、Mn3+のピークが消失し、次いで、再充電後(4)においてNi3+、Mn3+のピークが再び発現する。このことから、充放電において、Ni2+、Mn2+(2価)とNi3+、Mn3+(3価)との間の反応が生じていると推測される。
【0117】
3.7.実施例7
原料であるNiO(平均粒子径:10μm)およびMnO(平均粒子径:10μm)の比率(モル比)を1/2として、上述の実施例6と同様の処理を行い、本実施例に係る混合物を調製した。また、上述の実施例6と同様の処理にてセルを作製した。得られた混合物を充放電測定により評価した。
【0118】
図22は、本実施例に係る混合物(LiF−NiMn)の充放電測定結果を示す。図22に示す充放電測定は、負極にLiTi12を用いた電池に対して行われた結果を示している。図22において、「1」は第1回目の放電(充電)を示し、「2」は第2回目の放電(充電)を示す。
【0119】
3.8.実施例8
上記実施例1に係る混合物を用いた正極と、黒鉛炭素を用いた負極とを用いたセルを作製した。正極は、上記実施例1で作製された方法と同様の方法にて作製された。
【0120】
図23は、本発明の実施例1に係る混合物を用いた正極と、黒鉛炭素を用いた負極とを有するリチウムイオン電池の充放電測定結果を示す。図23によれば、負極に黒鉛炭素を用いた場合であっても、良好な充放電特性を発揮できることが理解できる。
【0121】
3.9.実施例9
原料としてLiF(平均粒子径:100nm〜100μm)、NiO(平均粒子径:100nm〜100μm)およびMnO(平均粒子径:10nm〜100μm)を使用し、該原料(LiFとNiOのモル比0.5:1〜5:1)をアルゴン雰囲気下でボールミル、湿式ボールミルにて、混合および粉砕(粉砕条件:300〜1,500rpm、0.5〜96時間(h))することにより、混合物(平均粒子径(一次粒子径):10nm〜1000nm)を調製する。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の正極活物質によれば、低コストでかつ高容量、高電圧、および高エネルギー密度の電池を製造することができるため、例えば、小型携帯機器のみならず、電動自転車、二輪車、車両、船舶等の大型機器用の電池に含まれる電極(正極)内の正極活物質として好適に使用することができる。
図1
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【国際調査報告】