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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年9月22日
【発行日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20171201BHJP
   G01N 21/41 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   G01N21/64 F
   G01N21/64 G
   G01N21/41 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
【出願番号】特願2017-506463(P2017-506463)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年3月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-53467(P2015-53467)
(32)【優先日】2015年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【弁理士】
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】野田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】長井 史生
(72)【発明者】
【氏名】山内 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】京極 悠一
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043CA03
2G043EA01
2G043EA14
2G043GA01
2G043HA01
2G043HA02
2G043HA09
2G043JA02
2G043LA01
2G059AA01
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE02
2G059EE07
2G059JJ02
2G059JJ13
2G059JJ22
(57)【要約】
検出装置は、ホルダー、光照射部、角度調整部、受光センサー、受光光学系、光学フィルターおよび制御部を有する。受光光学系は検出チップから放出された光を受光センサーに導く。光学フィルターは受光光学系内に配置され、励起光と同じ波長の光であるプラズモン散乱光の一部を遮断し、検出チップから放出された光のうち、前記プラズモン散乱光の一部と、前記蛍光物質から放出された蛍光とを透過させる。受光センサーは検出チップから放出され、光学フィルターを透過したプラズモン散乱光の一部と、蛍光とを検出する。制御部はプラズモン散乱光の検出結果に基づいて、角度調整部を制御して、励起光の入射角を所定の入射角に調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体からなるプリズムと、前記プリズムの一面上に配置された金属膜とを有する検出チップが装着され、前記プリズムを介して前記金属膜に励起光を照射することで、前記金属膜上に存在する被検出物質を標識する蛍光物質を表面プラズモン共鳴に基づく局在場光により励起させ、前記蛍光物質から放出された蛍光を検出することで、前記被検出物質の存在または量を検出する検出装置であって、
前記検出チップを保持するホルダーと、
励起光を出射する光照射部と、
前記プリズムを介して前記金属膜に所定の入射角で励起光を照射するために、前記金属膜に対する励起光の入射角を調整する角度調整部と、
前記光照射部が前記金属膜に対して励起光を照射したときに、前記検出チップから放出された光を検出する受光センサーと、
前記検出チップから放出された光を前記受光センサーに導く受光光学系と、
前記受光光学系内に配置され、前記励起光と同じ波長の光であるプラズモン散乱光の一部を遮断する光学フィルターと、
前記角度調整部を制御する制御部と、
を有し、
前記光学フィルターは、前記検出チップから放出された光のうち、前記プラズモン散乱光の一部と、前記蛍光物質から放出された蛍光とを透過させ、
前記受光センサーは、前記金属膜上に前記蛍光物質が存在しない状態で、前記光照射部が前記金属膜に対して励起光を照射したときに、前記検出チップから放出され、前記光学フィルターを透過した前記プラズモン散乱光の一部を検出し、
前記制御部は、前記受光センサーの前記プラズモン散乱光の検出結果に基づいて、前記所定の入射角を決定し、前記角度調整部を制御して、前記金属膜に対する励起光の入射角を前記所定の入射角に調整し、
前記受光センサーは、前記金属膜上に前記蛍光物質で標識された前記被検出物質が存在する状態で、前記金属膜で表面プラズモン共鳴が発生するように、前記光照射部が前記金属膜に対して前記所定の入射角で励起光を照射したときに、前記蛍光物質から放出された蛍光を検出する、
検出装置。
【請求項2】
前記検出チップから放出された光には、前記検出チップの自家蛍光がさらに含まれ、
前記光学フィルターは、前記自家蛍光の光量に対する前記プラズモン散乱光の光量が0.5倍超かつ100倍未満となるように、前記プラズモン散乱光を透過させる、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記光学フィルターにおける前記プラズモン散乱光の透過率は、0.005%超かつ1%未満である、請求項1または請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記受光光学系は、前記検出チップから放出された光を、一端に位置する入射面で入射させ、他端に位置する出射面で出射させる導光ロッドを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記受光センサーは、フォトダイオードである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記光照射部は、前記金属膜上の被照射面におけるパワーが1mW/mm以上となるように励起光を照射する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記光照射部が出射する励起光の波長は、650〜670nmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体に含まれる被検出物質の検出を行う検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査などにおいて、タンパク質やDNAなどの微量の被検出物質を高感度かつ定量的に検出することができれば、患者の状態を迅速に把握して治療を行うことが可能となる。このため、微量の被検出物質を高感度かつ定量的に検出できる検出装置が求められている。
【0003】
被検出物質を高感度に検出できる方法として、表面プラズモン共鳴蛍光分析法(表面プラズモン励起増強蛍光分光法(Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy):以下「SPFS」と略記する)が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1、2には、SPFSを利用する検出装置が開示されている。これらの検出装置では、誘電体からなるプリズムと、プリズムの一面上に形成された金属膜と、金属膜上に固定された捕捉体(例えば抗体)とを有する検出チップを使用する。金属膜上に被検出物質を含む検体を提供すると、被検出物質が捕捉体により捕捉される(1次反応)。捕捉された被検出物質は、さらに蛍光物質で標識される(2次反応)。この状態で、表面プラズモン共鳴が生じる角度で、プリズムを介して金属膜に励起光を照射すると、金属膜表面上に局在場光を発生させることができる。この局在場光により、金属膜上に捕捉された被検出物質を標識する蛍光物質が選択的に励起され、蛍光物質から蛍光が放出される。これらの検出装置では、この蛍光を検出して、被検出物質の存在または量を検出する。
【0005】
このようなSPFSを利用する検出装置では、微弱な蛍光を定量的に検出するために、光電子増倍管(Photomultiplier Tube:PMT)やアバランシェフォトダイオード(Avalanche photodiode:APD)などの高感度な光センサーを用いることが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−307141号公報
【特許文献2】国際公開第2012/042807号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SPFSを利用する検出装置では、検出感度および検出精度を十分に向上させるために、蛍光強度が最大となるように金属膜に対する励起光の入射角を設定する必要がある。
【0008】
特許文献1に記載の検出装置では、金属膜からの反射光の強度が最小となるときの入射角(以下、「共鳴角」という)で励起光を照射している。しかしながら、蛍光の強度が最大となるときの入射角と共鳴角とはわずかに異なるため、特許文献1に記載の検出装置には、検出感度および検出精度に改善の余地がある。
【0009】
一方、特許文献2に記載の検出装置では、表面プラズモン共鳴により発生する散乱光(以下「プラズモン散乱光」という)の強度が最大となるときの入射角(以下、「増強角」という)で励起光を照射している。増強角は、共鳴角よりも蛍光の強度が最大となるときの入射角に近いため、特許文献2に記載の検出装置は、特許文献1に記載の検出装置に比べて検出感度および検出精度の点で優れている。しかしながら、特許文献2に記載の検出装置では、蛍光を検出するための受光センサーを用いてプラズモン散乱光も検出するため、増強角を決定する際に受光光学系の光路から励起光カットフィルター(光学フィルター)を退避させなければならないという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、光学フィルターを受光光学系の光路から退避させることなく、プラズモン散乱光が最大となる増強角を決定することができる検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の一実施の形態に係る検出装置は、誘電体からなるプリズムと、前記プリズムの一面上に配置された金属膜とを有する検出チップが装着され、前記プリズムを介して前記金属膜に励起光を照射することで、前記金属膜上に存在する被検出物質を標識する蛍光物質を表面プラズモン共鳴に基づく局在場光により励起させ、前記蛍光物質から放出された蛍光を検出することで、前記被検出物質の存在または量を検出する検出装置であって、前記検出チップを保持するホルダーと、励起光を出射する光照射部と、前記プリズムを介して前記金属膜に所定の入射角で励起光を照射するために、前記金属膜に対する励起光の入射角を調整する角度調整部と、前記光照射部が前記金属膜に対して励起光を照射したときに、前記検出チップから放出された光を検出する受光センサーと、前記検出チップから放出された光を前記受光センサーに導く受光光学系と、前記受光光学系内に配置され、前記励起光と同じ波長の光であるプラズモン散乱光の一部を遮断する光学フィルターと、前記角度調整部を制御する制御部と、を有し、前記光学フィルターは、前記検出チップから放出された光のうち、前記プラズモン散乱光の一部と、前記蛍光物質から放出された蛍光とを透過させ、前記受光センサーは、前記金属膜上に前記蛍光物質が存在しない状態で、前記光照射部が前記金属膜に対して励起光を照射したときに、前記検出チップから放出され、前記光学フィルターを透過した前記プラズモン散乱光の一部を検出し、前記制御部は、前記受光センサーの前記プラズモン散乱光の検出結果に基づいて、前記所定の入射角を決定し、前記角度調整部を制御して、前記金属膜に対する励起光の入射角を前記所定の入射角に調整し、前記受光センサーは、前記金属膜上に前記蛍光物質で標識された前記被検出物質が存在する状態で、前記金属膜で表面プラズモン共鳴が発生するように、前記光照射部が前記金属膜に対して前記所定の入射角で励起光を照射したときに、前記蛍光物質から放出された蛍光を検出する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、SPFSを利用する被検出物質の検出において、光学フィルターを受光光学系の光路から退避させることなく、プラズモン散乱光が最大となる増強角を決定することができる。したがって、本発明によれば、高感度、高精度かつ高速に被検出物質の存在またはその量を検出することができる。また、本発明によれば、検出装置の小型化および低コスト化を実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施の形態1に係るSPFS装置の構成を示す模式図である。
図2図2A、Bは、PMTおよびPDの検出精度を示す概念グラフである。
図3図3は、実施の形態1に係るSPFS装置の動作手順の一例を示すフローチャートである。
図4図4A〜Cは、実施の形態1に係るSPFS装置における励起光カットフィルターの機能を説明するための概念グラフである。
図5図5は、実施の形態2に係るSPFS装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
[実施の形態1]
(検出装置の構成)
まず、本発明の実施の形態1に係る検出装置の代表例として、表面プラズモン共鳴蛍光分析装置(以下「SPFS装置」ともいう)について説明する。
【0016】
図1は、実施の形態1に係るSPFS装置100の構成を示す模式図である。図1に示されるように、SPFS装置100は、検出チップ10に励起光αを照射するための励起光照射ユニット(光照射部)110と、検出チップ10から放出された光(プラズモン散乱光βおよび蛍光γ)を検出するための受光ユニット120と、これらを制御する制御部130と、検出チップ10を着脱可能に保持するためのチップホルダー140と、検出チップ10に送液するための送液ユニット(不図示)とを有する。SPFS装置100は、チップホルダー140に検出チップ10を装着した状態で使用される。そこで、検出チップ10について先に説明し、その後にSPFS装置100の各構成要素について説明する。
【0017】
図1に示されるように、検出チップ10は、入射面21、成膜面22および出射面23を有するプリズム20と、成膜面22上に形成された金属膜30と、成膜面22または金属膜30上に配置された流路蓋40とを有する。通常、検出チップ10は、検出のたびに交換される。検出チップ10は、好ましくは、各片の長さが数mm〜数cmである構造物であるが、「チップ」の範疇に含まれないより小型の構造物またはより大型の構造物であってもよい。
【0018】
プリズム20は、励起光αに対して透明な誘電体からなる。プリズム20は、入射面21、成膜面22および出射面23を有する。入射面21は、励起光照射ユニット110からの励起光αをプリズム20の内部に入射させる。成膜面22の上には、金属膜30が形成される。プリズム20の内部に入射した励起光αは、金属膜30で反射する。より具体的には、プリズム20と金属膜30との界面(成膜面22)で反射する。出射面23は、金属膜30で反射した励起光αをプリズム20の外部に出射させる。
【0019】
プリズム20の形状は、特に限定されない。本実施の形態では、プリズム20の形状は、台形を底面とする柱体である。台形の一方の底辺に対応する面が成膜面22であり、一方の脚に対応する面が入射面21であり、他方の脚に対応する面が出射面23である。底面となる台形は、等脚台形であることが好ましい。これにより、入射面21と出射面23とが対称になり、励起光αのS波成分がプリズム20内に滞留しにくくなる。入射面21は、励起光αが励起光照射ユニット110に戻らないように形成される。励起光αが励起光源であるレーザーダイオードに戻ると、レーザーダイオードの励起状態が乱れてしまい、励起光αの波長や出力が変動してしまうからである。そこで、理想的な増強角を中心とする走査範囲において、励起光αが入射面21に垂直に入射しないように、入射面21の角度が設定される。たとえば、入射面21と成膜面22との角度および成膜面22と出射面23との角度は、いずれも約80°である。
【0020】
プリズム20の材料の例には、樹脂およびガラスが含まれる。プリズム20の材料は、好ましくは、屈折率が1.4〜1.6であり、かつ複屈折および自家蛍光が小さい樹脂である。
【0021】
金属膜30は、プリズム20の成膜面22上に形成されている。金属膜30を設けることで、成膜面22に全反射条件で入射した励起光αの光子と、金属膜30中の自由電子との間で相互作用(表面プラズモン共鳴)が生じ、金属膜30の表面上に局在場光を生じさせることができる。金属膜30の素材は、表面プラズモン共鳴を生じさせる金属であれば特に限定されない。金属膜30の素材の例には、金、銀、銅、アルミニウム、これらの合金が含まれる。本実施の形態では、金属膜30は、金薄膜である。金属膜30の形成方法は、特に限定されない。金属膜30の形成方法の例には、スパッタリング、蒸着、メッキが含まれる。金属膜30の厚みは、特に限定されないが、30〜70nmの範囲内が好ましい。
【0022】
また、図1では図示しないが、金属膜30のプリズム20と対向しない面には、被検出物質を捕捉するための捕捉体が固定化されている。これにより、被検出物質を選択的に検出するための検出領域を形成することができる。捕捉体の種類は、被検出物質を捕捉することができれば特に限定されない。たとえば、捕捉体は、被検出物質に特異的に結合可能な抗体またはその断片である。
【0023】
流路蓋40は、金属膜30のプリズム20と対向しない面上に、流路41を挟んで配置されている。金属膜30がプリズム20の成膜面22の一部にのみ形成されている場合は、流路蓋40は、流路41を挟んで成膜面22上に配置されていてもよい。流路蓋40は、金属膜30(およびプリズム20)と共に、検体や蛍光標識液、洗浄液などの液体が流れる流路41を形成する。捕捉体は、流路41内に露出している。流路41の両端は、流路蓋40の上面に形成された注入口および排出口(いずれも図示省略)とそれぞれ接続されている。流路41内へ液体が注入されると、流路41内において、これらの液体は捕捉体に接触する。流路蓋40は、金属膜30のプリズム20と対向しない面およびその近傍から放出された光(プラズモン散乱光βおよび蛍光γ)に対して透明な材料からなる。流路蓋40の材料の例には、樹脂が含まれる。これらの光を受光ユニット120に導くことができれば、流路蓋40の一部は、不透明な材料で形成されていてもよい。流路蓋40は、例えば、両面テープまたは接着剤による接着や、レーザー溶着、超音波溶着、クランプ部材を用いた圧着などにより金属膜30またはプリズム20に接合されている。
【0024】
図1に示されるように、プリズム20へ導かれた励起光αは、入射面21からプリズム20内に入射する。プリズム20内に入射した励起光αは、プリズム20と金属膜30との界面(成膜面22)に全反射角度(表面プラズモン共鳴が生じる角度)となるように入射する。界面からの反射光は、出射面23からプリズム20外に出射される(図示省略)。一方、表面プラズモン共鳴が生じる角度で励起光αが界面に入射することで、金属膜30およびその近傍から、プラズモン散乱光βおよび蛍光γが、受光ユニット120の方向へ出射される。また、検出チップ10を構成する樹脂部材(プリズム20)から、自家蛍光が放出される(図示省略)。
【0025】
次に、SPFS装置100の各構成要素について説明する。前述のとおり、SPFS装置100は、励起光照射ユニット(光照射部)110、受光ユニット120、制御部130およびチップホルダー(ホルダー)140を有する。
【0026】
励起光照射ユニット110は、励起光αを出射する光源ユニット111と、プリズム20および金属膜30の界面(成膜面22)に対する励起光αの入射角を調整する角度調整部112とを有する。
【0027】
光源ユニット111は、励起光αの光源を有し、チップホルダー140に保持された検出チップ10の入射面21に向けて励起光α(シングルモードレーザー光)を出射する。より具体的には、光源ユニット111は、検出チップ10のプリズム20と金属膜30との界面(成膜面22)に対して励起光αが全反射角度となるように、界面に対するP波のみを入射面21に向けて出射する。
【0028】
光源の種類は、特に限定されないが、受光センサー125としてフォトダイオード(PD)などの高感度でない光検出器を使用する場合、受光センサー125の受光光量を増やす観点から、光源はハイパワーであることが好ましい。光源は、例えば、金属膜30上の被照射面におけるパワーが1mW/mm以上となるように励起光αを照射できるレーザーダイオード(LD)である。これにより、被検出物質を標識する蛍光物質からより強い強度の蛍光γを放出させることができる。また、LDが出射する励起光αの波長は特に限定されないが、例えば、650〜670nmであることが好ましい。高出力のLDを安価に入手できるためである。光源の種類の他の例には、発光ダイオード、水銀灯、その他のレーザー光源が含まれる。
【0029】
また、光源から出射される励起光αがビームでない場合には、光源から出射される励起光αは、レンズや鏡、スリットなどによりビームに変換される。また、光源から出射される励起光αが単色光でない場合には、光源から出射される励起光αは、回折格子などにより単色光に変換される。さらに、光源から出射される励起光αが直線偏光でない場合には、光源から出射される励起光αは、偏光子などにより直線偏光の光に変換される。
【0030】
また、光源ユニット111は、整形光学系、APC機構および温度調整機構(いずれも図示省略)をさらに有する。
【0031】
整形光学系は、プリズム20と金属膜30との界面(成膜面22)における照射スポットの形状が所定サイズの円形状となるように、励起光αのビーム径や輪郭形状などを調整する。整形光学系から出射された励起光αは、検出チップ10のプリズム20に照射される。整形光学系は、例えば、コリメーターやバンドパスフィルター(BPF)、直線偏光フィルター(LP)、半波長板、スリット、ズーム手段などを含む。
【0032】
コリメーターは、光源から出射された励起光αをコリメートする。
【0033】
バンドパスフィルターは、光源から出射された励起光αを中心波長のみの狭帯域光にする。光源からの励起光αは、若干の波長分布幅を有しているためである。
【0034】
直線偏光フィルターは、光源から出射された励起光αを完全な直線偏光の光にする。半波長板は、金属膜30にP波成分の光が入射するように励起光αの偏光方向を調整する。スリットおよびズーム手段は、金属膜30の裏面における照射スポットの形状が所定サイズの円形となるように、励起光αのビーム径や輪郭形状などを調整する。
【0035】
APC機構は、光源の出力が一定となるように光源を制御する。より具体的には、APC機構は、励起光αから分岐させた光の光量を不図示のフォトダイオードなどで検出する。そして、APC機構は、回帰回路で投入エネルギーを制御することで、光源の出力を一定に制御する。
【0036】
温度調整機構は、例えば、ヒーターやペルチェ素子などである。光源の出射光の波長およびエネルギーは、温度によって変動することがある。このため、温度調整機構で光源の温度を一定に保つことにより、光源の出射光の波長およびエネルギーを一定に制御する。
【0037】
角度調整部112は、金属膜30(成膜面22)への励起光αの入射角を調整する。角度調整部112は、プリズム20を介して金属膜30(成膜面22)の所定の位置に所定の入射角で励起光αを照射するために、励起光αの光軸とチップホルダーとを相対的に回転させる。本実施の形態では、角度調整部112は、光源ユニット111を励起光αの光軸と直交する軸を中心として回転させる。このとき、入射角を走査しても金属膜30(成膜面22)上での照射位置がほとんど移動しないように、回転軸の位置を設定する。たとえば、回転中心の位置を、入射角の走査範囲の両端における2つの励起光αの光軸の交点近傍(成膜面22上の照射位置と入射面21との間)に設定することで、照射位置のズレを極小化することができる。
【0038】
受光ユニット120は、チップホルダー140に保持された検出チップ10の金属膜30のプリズム20と対向しない面に対向するように配置されている。より具体的には、後述の第1レンズ122、第2レンズ124および受光センサー125が、金属膜30(成膜面22)における励起光αの照射スポットを通る、金属膜30表面に垂直な直線上に位置するように、受光ユニット120は配置されている。受光ユニット120は、検出チップ10から放出される光(プラズモン散乱光β、蛍光γおよび自家蛍光)を検出する。受光ユニット120は、第1レンズ122、励起光カットフィルター123および第2レンズ124を含む受光光学系121と、受光センサー125とを有する。受光光学系121は、検出チップ10から放出された光を受光センサー125に導く。
【0039】
第1レンズ122および第2レンズ124は、迷光の影響を受けにくい共役光学系を構成する。第1レンズ122と第2レンズ124との間を進行する光は、略平行光となる。第1レンズ122および第2レンズ124は、検出チップ10から放出される光を受光センサー125の受光面上に結像させる。また、この後説明するように、第1レンズ122および第2レンズ124は、励起光カットフィルター123と共に、検出チップ10から出射される光(プラズモン散乱光β、蛍光γおよび自家蛍光)を受光センサー125の受光面に集光させる。
【0040】
励起光カットフィルター(光学フィルター)123は、第1レンズ122および第2レンズ124の間に配置されている。励起光カットフィルター123は、励起光αと同一の波長の光(プラズモン散乱光β)の一部(大部分)を遮断する。一方で、励起光カットフィルター123は、検出チップ10から放出された光のうち、プラズモン散乱光βの一部と、蛍光物質から放出された蛍光γとを透過させる。本実施の形態では、励起光カットフィルター123は、検出チップ10から放出された自家蛍光の少なくとも一部もさらに透過させる。詳細については後述するが、これにより、SPFS装置100は、蛍光γ検出時におけるノイズ成分となるプラズモン散乱光βの大部分を除去して、被検出物質を高精度に検出でき、かつ励起光カットフィルター123を退避させることなく、透過されたプラズモン散乱光βを受光センサー125で検出して増強角を決定することができる。このような効果を発揮することができれば、励起光カットフィルター123のプラズモン散乱光βの透過率は、特に限定されないが、0.005%超かつ1%未満であることが好ましい。また、励起光カットフィルター123は、検出チップ10から放出される自家蛍光の光量に対するプラズモン散乱光βの光量が0.5倍超かつ100倍未満となるように、プラズモン散乱光βを透過させることが好ましい。
【0041】
励起光カットフィルター123の種類の例には、片面または両面に誘電体多層膜が配置された反射型フィルターが含まれる。誘電体多層膜は、高屈折率材料からなる層と低屈折率材料からなる層とを交互に繰り返し積層することで形成されうる。このとき、各層の厚みや数などを適切に設定することで、所望の透過特性のフィルターを得ることができる。高屈折率材料の例には、TiやNb、Ta、Laなどの酸化物(例えば、TiO、Nb、Taなど)が含まれる。低屈折率材料の例には、SiやAlなどの酸化物(例えば、SiOなど)が含まれる。たとえば、ガラス基板(BK7)の表面に、Nb層(厚み約100nm)とSiO層(厚み約100nm)とを交互に40〜50層積層して誘電体多層膜(厚み4000〜5000nm)を形成することで、励起光カットフィルター123を作製することができる。このようにして得られる励起光カットフィルター123では、フィルターへの主光線の入射角が0°の場合、励起光αの波長と同じ波長の光(例えば、660nm)の反射率は99%以上であり、励起光αの波長より30nm波長が大きい光(例えば、690nm)の反射率は数%以下である。
【0042】
励起光カットフィルター123の種類の他の例には、色ガラスからなる吸収型フィルターが含まれる。一般的に、吸収型フィルターの透過スペクトルにおいて、カットオフ波長(励起光カットフィルター123が励起光αを吸収する波長帯域と、励起光αを透過させる波長帯域との境界を示す波長)近傍の透過率をシャープに立ち上げることは難しい。このため、反射型フィルターと比較して、透過型フィルターの励起光αの遮光性は劣る。しかしながら、本実施の形態に係るSPFS装置100では、励起光カットフィルター123は、プラズモン散乱光βの一部を透過させる。このため、本実施の形態に係るSPFS装置100では、遮光性は劣るものの、安価な色ガラスフィルターを使用することができる。
【0043】
受光センサー125は、検出チップ10から放出された光を検出する。たとえば、受光センサー125の種類の例には、感度およびSN比が高い光電子増倍管(PMT)およびアバランシェ・フォトダイオード(APD)が含まれる。ハイパワーの光源を使用する場合には、受光センサー125として、高感度でないフォトダイオード(PD)などを使用してもよい。SPFS装置100の小型化および低コスト化の観点からは、PDを使用することが好ましい。
【0044】
一般的に、受光センサー125からの出力値は、受光光量、受光感度および増幅倍率に比例する。図2A、Bは、PMTおよびPDの検出精度を示す概念グラフである。図2Aは、受光センサー125からの出力値と、検出値の標準偏差(ばらつき)σとの関係を示す概念グラフである。図2Bは、出力値からブランク値Bを減算したシグナル値S(S=出力値−B:蛍光光量に相当)と光学ブランク値Bとの比(S/B比)と、変動係数CV(標準偏差σとシグナル値Sとの比(σ/S比))との関係を示す概念グラフである。図2Bにおけるシグナル値Sの範囲は、図2AにおいてPDの標準偏差σがPMTの標準偏差σより小さくなるときの範囲について示している。また、図2A、Bにおいて、破線はPMTについて示し、実線はPDについて示す。
【0045】
図2Aに示されるように、PMTのような高感度な受光センサーについては、出力値が小さいときには標準偏差σは小さいものの、出力値が大きくなるに伴い標準偏差σも大きくなる。このため、変動係数CV(σ/S)は、シグナル値Sが大きくなっても、それほど小さくならない。これに対し、PDのような低感度な受光センサーについては、シグナル値Sが極めて小さい領域での標準偏差σは大きいが、標準偏差σの増加率が小さいため、変動係数CVは、シグナル値Sが大きくなるほど飛躍的に小さくなる。このため、受光センサー125からのシグナル値Sを増やせば、PMTを使用した場合と比較して、PDを使用した場合の方がより正確な測定をすることができる。
【0046】
また、図2AのPDの標準偏差σがPMTの標準偏差σより小さい出力値を示す領域においては、図2Bに示されるように、シグナル値Sに対して光学ブランク値Bが大きくなった(S/Bが小さくなった)としても、PMTの変動係数CVと比較してPDの変動係数CVの増加率は小さい。このため、シグナル値Sに対して光学ブランク値Bが大きくなった(S/Bが小さくなった)としても、PMTを使用した場合と比較して、PDを使用した場合の方がより正確な測定をすることができる。
【0047】
PDの受光感度は、PMTと比較して、数万分の1(例えば、5万分の1)倍であるため、本実施の形態では、増幅倍率を、PMTを使用する場合の1000倍とし、かつ励起光αの光量を、PMTを使用する場合の20〜50倍としている。これにより、同一の検出チップ10を使用して検出を行っても、PMTを使用した場合と、PDを使用した場合とで同程度のシグナル値Sを得ることができる。このように、PDの標準偏差σがPMTの標準偏差σより小さくなるようにシグナル値S(出力値)を増やすことで、PDを使用した場合に、PMTを使用するよりも高精度に検出を行うことができる。
【0048】
なお、金属膜30の一方の面(プリズム20と対向する面)における励起光αの照射スポットの大きさは、金属膜30の他方の面(第1レンズ122と対向する面)における受光センサー125による検出領域の大きさよりも小さくなるように調整される。このようにすることで、プリズム20の各パラメータの誤差により照射スポットがわずかに位置ずれした場合であっても、照射スポットが検出領域から外れることを防止できる。
【0049】
制御部130は、各駆動部の制御や、受光センサー125における受光量の定量化などを一元的に行う。本実施の形態では、制御部130は、光源ユニット111を制御する光源制御部131と、受光センサー125を制御する受光センサー制御部132と、制御処理部133とを有する。制御処理部133は、角度調整部112、光源制御部131および受光センサー制御部132を包括的に制御して、SPFS装置100全体の動作を制御する。制御部130は、例えば、ソフトウェアを実行するコンピュータである。後述するように、制御部130(制御処理部133)は、受光センサー125によるプラズモン散乱光βの検出結果に基づいて、所定の入射角(本実施の形態では、増強角)を決定し、角度調整部112を制御して、蛍光検出時の金属膜30(成膜面22)に対する励起光αの入射角を調整する。
【0050】
チップホルダー140は、所定の位置で検出チップ10を保持する。検出チップ10は、チップホルダー140に保持された状態で、励起光照射ユニット110からの励起光αを照射される。このとき、金属膜30のプリズム20と対向しない面およびその近傍からは、励起光αと同一波長のプラズモン散乱光β、蛍光物質から放出された蛍光γおよび検出チップ10の自家蛍光が上方に放出される。また、励起光αは、プリズム20と金属膜30との界面で反射して、プリズム20の外部に出射される(図示省略)。
【0051】
(SPFS装置の検出動作)
次に、SPFS装置100の検出動作について説明する。図3は、SPFS装置100の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【0052】
まず、検出の準備をする(工程S10)。具体的には、SPFS装置100のチップホルダー140に検出チップ10を設置する。また、検出チップ10の流路41内に保湿剤が存在する場合は、捕捉体が適切に被検出物質を捕捉できるように、流路41内を洗浄して保湿剤を除去する。
【0053】
次いで、励起光αを金属膜30(成膜面22)の所定の位置に照射しながら、金属膜30(成膜面22)に対する励起光αの入射角を走査して、最適な入射角を決定する(工程S20)。具体的には、制御処理部133は、光源ユニット111および角度調整部112を制御して、金属膜30上に蛍光物質が存在しない状態で、励起光αを金属膜30(成膜面22)の所定の位置に照射しながら、金属膜30(成膜面22)に対する励起光αの入射角を走査する。同時に、制御処理部133は、受光センサー125が検出チップ10から放出された光(プラズモン散乱光βおよび検出チップ10の自家蛍光)を検出するように、受光センサー制御部132を制御する。このとき、検出チップ10から放出されたプラズモン散乱光βは、第1レンズ122によりコリメートされ、励起光カットフィルター123に到達する。励起光カットフィルター123は、プラズモン散乱光βの一部と、検出チップ10の自家蛍光とを透過させる。励起光カットフィルター123を透過した光は、第2レンズ124で集光され、受光センサー125で検出される。これにより、制御処理部133は、励起光αの入射角と、検出チップ10から放出された光の強度との関係を含むデータを得る。そして、制御処理部133は、データを2次近似などのフィッティングにより解析して、検出した光の強度(検出値)が最大となる入射角(増強角)を決定する。
【0054】
なお、増強角は、基本的には、プリズム20の素材および形状、金属膜30の厚み、流路41内の液体の屈折率などにより決まるが、流路41内の捕捉体の種類および量、プリズム20の形状誤差などの各種要因によりわずかに変動する。このため、検出を行うたびに増強角を決定することが好ましい。増強角は、0.1°程度のオーダーで決定される。
【0055】
次いで、金属膜30(成膜面22)に対する励起光αの入射角を、工程S20で決定した増強角に設定する(工程S30)。具体的には、制御処理部133は、角度調整部112を制御して、金属膜30(成膜面22)に対する励起光αの入射角を増強角に調整する。以後の工程では、金属膜30(成膜面22)に対する励起光αの入射角は、増強角のままである。
【0056】
次いで、励起光αを金属膜30(成膜面22)に照射して、励起光カットフィルター123を透過した光(検出チップ10の自家蛍光およびプラズモン散乱光β)の強度(光学ブランク値)を測定する(工程S40)。具体的には、制御処理部133は、光源制御部131を制御して、光源ユニット111に励起光αを出射させる。同時に、制御処理部133は、受光センサー125が励起光カットフィルター123を透過した光を検出するように、受光センサー制御部132を制御する。測定値は、制御処理部133に送信され、光学ブランク値として記録される。
【0057】
次いで、検体中の被検出物質と捕捉体とを反応させる(1次反応;工程S50)。具体的には、送液ユニット側において検出チップ10の流路41内に検体を注入して、検体と捕捉体とを接触させる。検体中に被検出物質が存在する場合は、被検出物質の少なくとも一部は捕捉体により捕捉される。この後、流路41内を緩衝液などで洗浄して、捕捉体に捕捉されなかった物質を除去する。検体の種類は、特に限定されない。検体の例には、血液や血清、血漿、尿、鼻孔液、唾液、精液などの体液およびその希釈液が含まれる。
【0058】
次いで、捕捉体に捕捉された被検出物質を蛍光物質で標識する(2次反応;工程S60)。具体的には、流路41内に蛍光標識液を注入する。蛍光標識液は、例えば、蛍光物質で標識された抗体(2次抗体)を含む緩衝液である。蛍光標識液が流路41に注入されると、蛍光標識液が被検出物質に接触し、被検出物質が蛍光物質で標識される。この後、流路41内を緩衝液などで洗浄し、遊離の蛍光物質などを除去する。
【0059】
最後に、金属膜30上に蛍光物質で標識された被検出物質が存在する状態で、励起光αを金属膜30(成膜面22)に照射して、検出チップ10から放出される蛍光γを検出して、蛍光値を測定する(工程S70)。具体的には、制御処理部133は、光源制御部131を制御して、光源ユニット111に励起光αを出射させる。同時に、制御処理部133は、受光センサー125が金属膜(金属膜30およびその近傍)上から放出される蛍光γを検出するように、受光センサー制御部132を制御する。制御処理部133は、検出値から光学ブランク値を引き、被検出物質の量に相関する蛍光強度を算出する。蛍光強度は、必要に応じて、被検出物質の量や濃度などに換算される。
【0060】
以上の手順により、励起光カットフィルター123を受光光学系121の光路から退避させることなく、検体中の被検出物質の存在またはその量を高精度に検出することができる。
【0061】
ここで、本実施の形態に係るSPFS装置100において使用される、プラズモン散乱光βを一部透過させる励起光カットフィルター123の機能について説明する。ここでは、励起光カットフィルター123としてプラズモン散乱光βを一部透過させる色ガラス(プラズモン散乱光βの透過率が約0.08%)を使用してプラズモン散乱光βを測定することで、増強角を決定する場合について説明する。比較のために、励起光カットフィルターとしてプラズモン散乱光βをほぼ完全に遮断する高性能バンドパスフィルター(BPF;プラズモン散乱光βの透過率が0.01%以下)を使用した場合と、励起光カットフィルターを使用しない場合とについても説明する。
【0062】
図4A〜Cは、本実施の形態に係るSPFS装置100における励起光カットフィルター123の機能を説明するための概念グラフである。図4Aは、励起光カットフィルターとしてプラズモン散乱光βをほぼ完全に遮断する高性能バンドパスフィルター(BPF)を使用した場合における、励起光αの入射角と受光センサー125の受光光量との関係を示す。図4Bは、励起光カットフィルターを使用しない場合における、励起光αの入射角と受光センサー125の受光光量との関係を示す。図4Cは、プラズモン散乱光βを一部透過させる励起光カットフィルター123を使用した場合における、励起光αの入射角と受光センサー125の受光光量との関係を示す。いずれのグラフにおいても、金属膜30上に蛍光物質が存在しない状態で、金属膜30に対する励起光αの入射角を走査している。図4A〜Cにおいて、一点鎖線は、検出チップ10から放出される自家蛍光を示し、破線はプラズモン散乱光βを示し、実線は自家蛍光およびプラズモン散乱光βの和を示す。
【0063】
図4Aに示されるように、プラズモン散乱光βをほぼ完全に遮断する励起光カットフィルターを使用する場合、ほぼすべてのプラズモン散乱光βは遮断されるため、受光センサー125に到達する光は、主として、検出チップ10から放出される自家蛍光からなる。プラズモン散乱光βの光量は、金属膜30上で生じる表面プラズモン共鳴の影響により、励起光αの入射角に応じて大きく変化するのに対し(図4Bの破線参照)、自家蛍光の光量は、表面プラズモン共鳴による影響を受けない(図4Aの一点鎖線参照)。このため、プラズモン散乱光βをほぼ完全に遮断する励起光カットフィルターを使用する場合、励起光αの入射角を変えても表面プラズモン共鳴に起因する受光センサー125の受光光量の変化を検出することができない(図4Aの実線参照)。その結果、適切に増強角を決定することができない。
【0064】
一方、図4Bに示されるように、励起光カットフィルターを使用しない場合、受光センサー125に到達する光には、プラズモン散乱光βおよび自家蛍光が含まれる。このとき、プラズモン散乱光βは励起光カットフィルターで全く遮断されないため、プラズモン散乱光βの光量は、自家蛍光よりも圧倒的に多い。このため、プラズモン散乱光βが最大となるときの励起光αの入射角を検出することで、増強角を決定することができる。しかしながら、この態様では、プラズモン散乱光βをほぼ完全に遮断する励起光カットフィルターを使用する態様(図4A参照)と比較して、約1000倍以上のプラズモン散乱光βが検出される。これにより、被検出物質を標識する蛍光物質から放出される微弱な蛍光γを検出する工程(工程S70)では、このプラズモン散乱光βがノイズとなってしまい、SN比が低下する原因となる。
【0065】
したがって、プラズモン散乱光βをほぼ完全に遮断する励起光カットフィルターを有する従来のSPFS装置では、高精度な検出を実現するために、増強角を決定する工程(工程S20)では、光路上から励起光カットフィルターを退避させた状態でプラズモン散乱光βを検出し、蛍光γを検出する工程(工程S70)では、光路上に励起光カットフィルターを挿入してプラズモン散乱光βを遮断した状態で蛍光γを検出していた。
【0066】
これに対して、本実施の形態に係るSPFS装置100では、励起光カットフィルター123は、検出チップ10から放出された光のうち、プラズモン散乱光βの一部と、自家蛍光と、蛍光物質から放出された蛍光γとを透過させることができる。このため、図4Cに示されるように、本実施の形態に係るSPFS装置100は、増強角を測定するために必要な光量であって、かつ蛍光γの検出に妨げとならない適切な光量のプラズモン散乱光βを受光センサー125に到達させることができる。このため、本実施の形態に係るSPFS装置100では、増強角を決定する工程(工程S20)において、光路上から励起光カットフィルター123を退避させる必要がない。
【0067】
このとき、適切な光量のプラズモン散乱光βを透過させる観点から、励起光カットフィルター123のプラズモン散乱光βの透過率は、0.005%超かつ1%未満であることが好ましい。また、励起光カットフィルター123は、検出チップ10から放出される自家蛍光の光量に対するプラズモン散乱光βの光量が0.5倍超かつ100倍未満となるように、プラズモン散乱光βを透過させることが好ましい。これにより、自家蛍光に対して十分に強いプラズモン散乱光βを受光することで、増強角(プラズモン散乱光βの光量の極大値)を決定することができるとともに、蛍光γの検出の妨げにならない程度にプラズモン散乱光βの透過光量を抑えることで、蛍光γを高精度に検出することができる。
【0068】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係るSPFS装置100では、検出チップ10から放出され、励起光カットフィルター123を透過したプラズモン散乱光βの一部の光を利用して、増強角を決定することができる。このため、本実施の形態に係るSPFS装置100では、励起光カットフィルター123を受光光学系121の光路上から退避させることなく、増強角を決定することができる。したがって、本実施の形態に係るSPFS装置100では、従来のSPFS装置(特許文献2参照)のように励起光カットフィルター123の位置を切替える機構が不要であり、検出装置の小型化および低コスト化を実現することができる。また、本実施の形態に係る検出装置では、励起光カットフィルター123の位置を切替える工程が不要であるため、検出時間を短縮化することができる。
【0069】
また、本実施の形態では、1次反応(工程S50)および2次反応(工程S60)を連続して行い、両工程の間で検出チップ10を、送液ユニット側から励起光照射ユニット110および受光ユニット120側に移動させていない。このため、検出チップ10の移動時間分、検出にかかる合計時間を短縮することができる。また、1次反応時間と、2次反応時間と、1次反応および2次反応の間隔時間とを一定に保つことにより、測定精度を向上させることもできる。一方で、1次反応(工程S50)を行った後に、増強角の決定(工程S20)、入射角の増強角への設定(工程S30)および光学ブランク値の測定(工程S40)を行ってもよい。この場合、1次反応(工程S50)と2次反応(工程S60)との間に検出チップ10を移動させる必要があるものの、捕捉体に被検出物質が捕捉された状態で増強角の決定、および光学ブランク値の測定をすることができる。その結果、蛍光値を測定する工程(工程S70)に、より近い状態で増強角を決定し、かつ光学ブランク値を測定できるため、増強角をより正確に決定し、かつ光学ブランク値をより正確に測定することができ、測定精度をより向上させることができる。
【0070】
従来は、微少量の検体の濃度を正確に検出する観点から、シグナル値/ブランク値(S/B)比を高くするために、高性能BPFを用い、かつ励起光αをできるだけ除去するという方法や、微弱なシグナルを低ノイズで検出可能な高感度な受光センサー(例えばPMT)を用いるという手法などが用いられてきた。しかし、前述のとおり、この場合、励起光カットフィルター123を光路上から退避させなければならない。
【0071】
これに対し、本実施の形態では、プラズモン散乱光βの一部を透過させる励起光カットフィルター123(例えば、色ガラスフィルター)と、PMTより検出感度の低いPDを使用する。このため、プラズモン散乱光βの一部を透過させることで、S/B比は低下する。しかしながら、PMTを使用した場合と比較して、PDを使用した場合には、受光光量が増加したとしても検出値の標準偏差σの増加率がより小さい。また、受光光量が大きいときは変動係数CV(σ/S)が小さくなり、S/B比が低下したとしても変動係数CVの増大を抑えることができる。これらの結果として、PMTを使用した場合と比較して、PDを使用した場合には、より高精度な検出を行うことができる(図2A、B参照)。
【0072】
[実施の形態2]
実施の形態2に係るSPFS装置200は、実施の形態1に係るSPFS装置100と同様に、励起光照射ユニット110、受光ユニット220、制御部130およびチップホルダー140を有する。実施の形態2に係るSPFS装置200は、受光ユニット220の構成のみが実施の形態1に係るSPFS装置100と異なる。そこで、本実施の形態では、受光ユニット220についてのみ説明する。
【0073】
図5は、実施の形態2に係るSPFS装置200の構成を示す模式図である。図5に示されるように、受光ユニット220は、導光部材(導光ロッド226)および励起光カットフィルター123を含む受光光学系221と、受光センサー125とを有する。受光光学系221は、検出チップ10から放出された光を受光センサー125に導く。
【0074】
導光ロッド226は、透光性を有し、検出チップ10から放出された光(プラズモン散乱光β、蛍光γおよび自家蛍光)を一端に位置する入射面227で入射させ、他端に位置する出射面228で出射させて受光センサー125に導く。
【0075】
導光ロッド226の形状および材料は、検出チップ10から放出された光を受光センサー125に導くことができれば特に限定されない。導光ロッド226の形状は、導光ロッド226の軸方向に直交する断面において、入射面227から出射面228に向かってその断面積が一定である円柱形状であってもよいし、断面積が一定でないテーパー形状であってもよい。また、入射面227および出射面228の形状は、平面形状であってもよいし、曲面形状であってもよい。本実施の形態では、導光ロッド226は円柱形状であり、入射面227および出射面228の形状は、平面形状である。導光ロッド226の材料の例には、透明な樹脂および透明なガラスが含まれる。また、導光ロッド226の屈折率は、特に限定されないが、1.4〜2.0程度であることが好ましい。
【0076】
導光ロッド226の開口数(NA)は、高いことが好ましい。これにより、検出チップ10から放出された光を多く入射させることができる。
【0077】
また、導光ロッド226の側面には、導光ロッド226の入射面227で入射した蛍光γの漏洩を防止するための反射膜が形成されていてもよい。反射膜は、例えばアルミニウムや金などの蒸着膜である。
【0078】
導光ロッド226の入射面227は、円柱における一方の端面(底面)であり、金属膜30の表面に対向して配置されている。導光ロッド226の入射面227と検出チップ10の検出領域との間隔は、0.5〜5.0mm程度である。導光ロッド226の入射面227の直径は、検出領域の最大長さより長い。これにより、検出領域から放出された蛍光γを効率的に導光ロッド226に入射させることができる。ここで「検出領域の最大長さ」とは、検出領域の外縁部上の2点を両端とする線分のうち最も長い線分の長さをいう。たとえば、検出領域が円形であった場合、検出領域の最大長さは直径である。また、検出領域が矩形であった場合、検出領域の最大長さは対角線の長さである。
【0079】
出射面228は、円柱における他方の端面(底面)であり、受光センサー125の受光面(またはその手前に配置された励起光カットフィルター123)に対向して配置されている。出射面228と受光センサー125の受光面との間隔は、0.5〜5.0mm程度である。導光ロッド226の出射面228の直径は、受光センサー125の受光面の最大長さより短いことが好ましい。なお、「受光面の最大長さ」とは、受光センサー125の受光面の外縁部上の2点を両端とする線分のうち最も長い線分の長さを意味する。
【0080】
励起光カットフィルター123は、チップホルダー140と導光ロッド226の入射面227との間に配置されていてもよいし、導光ロッド226の出射面228と受光センサー125との間に配置されていてもよい。本実施の形態では、励起光カットフィルター123は、導光ロッド226の出射面228と受光センサー125との間に配置されている。
【0081】
励起光カットフィルター123の種類によっては、透過特性に入射角依存性を有するものがある。たとえば、誘電体多層膜からなる励起光カットフィルター123では、光線が入射角0°で入射する場合と比較して、光線が0°より大きい入射角で入射する場合に励起光カットフィルター123のカットオフ波長が短波長側に変化する。このため、様々な入射角で光線が励起光カットフィルター123に入射する場合、励起光カットフィルター123は、入射した一部の光を透過させることができる。本実施の形態では、導光ロッド226の出射面228から出射された光は、様々な入射角で励起光カットフィルター123に入射する。結果として、励起光カットフィルター123における光透過特性の入射角依存性を利用して、適切な量のプラズモン散乱光βを透過させることができる。このとき、プラズモン散乱光βの透過光量は、励起光カットフィルター123のカットオフ波長と導光ロッドのNAとを任意に設定し、励起光カットフィルター123への入射角度範囲を制御することで、容易に適切な量に設定することができる。このため、本実施の形態に係るSPFS装置200では、励起光カットフィルター123として、高性能BPFを使用してもよい。この場合、高性能BPFは入射角0°で入射する、励起光αの波長と同じ波長のプラズモン散乱光βをほぼ完全に遮断するが、導光ロッド226を使用することで0°より大きい入射角で入射する光線を透過させることができる。一方、高性能BPFだけでなく、入射角0°で入射する励起光αに対して遮光率が悪い低性能BPFや、色ガラスフィルターなどの吸収側フィルターなどのように、より安価な光学フィルターを使用してもよい。吸収型フィルターでは、吸収色素の含有量やフィルターの厚さを制御することで、容易にプラズモン散乱光βの透過率を制御することができる。
【0082】
(効果)
本実施の形態に係るSPFS装置200は、実施の形態1に係るSPFS装置100と同様に、プラズモン散乱光βの一部を透過させることで励起光カットフィルター123を受光光学系221の光路上から退避させることなく、増強角を測定することができる。また、SPFS装置200では、導光ロッド226を使用することにより、実施の形態1に係るSPFS装置100のように共役光学系を構成する必要がないため、さらなる検出装置の小型化および低コスト化を実現することができる。また、受光センサー125としてPDを使用し、励起光カットフィルター123として色ガラスフィルターを使用することで、さらなる小型化および低コスト化を実現することができる。
【0083】
なお、上記実施の形態2では、導光ロッド226および励起光カットフィルター123が別体化されている場合について説明したが、励起光カットフィルター123は、導光ロッド226と一体化されていてもよい。たとえば、導光ロッド226の入射面227または出射面228に誘電体多層膜を形成することで、導光ロッド226および励起光カットフィルター123を一体化してもよいし、導光ロッド226を色ガラスフィルターと同じ材料で形成してもよい。これにより、SPFS装置200をさらに小型化し、かつ簡素化することができる。
【0084】
本出願は、2015年3月17日出願の特願2015−053467に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係る検出装置は、被検出物質を高い信頼性で検出することができるため、例えば臨床検査などに有用である。
【符号の説明】
【0086】
10 検出チップ
20 プリズム
21 (プリズムの)入射面
22 成膜面
23 (プリズムの)出射面
30 金属膜
40 流路蓋
41 流路
100、200 SPFS装置
110 励起光照射ユニット
111 光源ユニット
112 角度調整部
120、220 受光ユニット
121、221 受光光学系
122 第1レンズ
123 励起光カットフィルター
124 第2レンズ
125 受光センサー
226 導光ロッド
227 (導光ロッドの)入射面
228 (導光ロッドの)出射面
130 制御部
131 光源制御部
132 受光センサー制御部
133 制御処理部
140 チップホルダー
α 励起光
β プラズモン散乱光
γ 蛍光
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】