特表-16148029IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2016-148029成膜装置及びガスバリアーフィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年9月22日
【発行日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】成膜装置及びガスバリアーフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/509 20060101AFI20171201BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20171201BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C23C16/509
   C23C16/44 F
   H05H1/46 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】31
【出願番号】特願2017-506505(P2017-506505)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-50153(P2015-50153)
(32)【優先日】2015年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 清
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一生
(72)【発明者】
【氏名】田邊 格
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
【Fターム(参考)】
2G084AA05
2G084BB02
2G084BB07
2G084BB11
2G084CC03
2G084CC04
2G084CC17
2G084CC33
2G084DD01
2G084DD17
2G084DD22
2G084DD24
2G084DD63
2G084DD67
2G084DD68
2G084FF04
2G084FF26
2G084FF28
4K030AA06
4K030AA09
4K030AA14
4K030CA07
4K030CA17
4K030FA01
4K030GA14
4K030HA04
4K030JA18
4K030KA16
4K030KA30
4K030KA34
4K030KA41
4K030KA47
(57)【要約】
本発明の課題は、ガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルムを製造することができる成膜装置を提供することである。また、当該ガスバリアーフィルムを製造するガスバリアーフィルムの製造方法を提供することである。
本発明の成膜装置は、プラズマCVD法により、基材上に成膜をする成膜装置であって、第1電極ローラーと、前記第1電極ローラーに対向して配置された第2電極ローラーとを備え、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラー(両電極ローラー)が、前記基材に接する幅よりも広い範囲で全周が誘電体に被覆されており、両電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量と両電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率と、両電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、特定の範囲内であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマCVD法により、基材上に成膜をする成膜装置であって、
第1電極ローラーと、前記第1電極ローラーに対向して配置された第2電極ローラーとを備え、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが、前記基材に接する幅よりも広い範囲で全周が誘電体に被覆されており、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、20nF/m〜20μF/mの範囲内であり、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、5〜100の範囲内であり、
前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、100kHz〜30MHzの範囲内であることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、70nF/m〜3μF/mの範囲内であり、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、8〜50の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、0.2〜1μF/mの範囲内であり、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、10〜20の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、200kHz〜3MHzの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、400kHz〜1MHzの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記誘電体の表面粗さRaが、3μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記誘電体の表面粗さRaが、1μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが、磁場形成手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項9】
第1電極ローラーと、前記第1電極ローラーに対向して配置された第2電極ローラーとを備えた成膜装置により、プラズマCVD法で基材上に成膜をするガスバリアーフィルムの製造方法であって、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが、前記基材に接する幅よりも広い範囲で全周が誘電体に被覆されており、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、20nF/m〜20μF/mの範囲内であり、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、5〜100の範囲内であり、かつ、
前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、100kHz〜30MHzの範囲内の条件下で、
ガスバリアー層を形成することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及びガスバリアーフィルムの製造方法に関する。より詳しくは、ガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルムの製造に好適なプラズマCVD法による成膜装置、当該成膜装置を用いたガスバリアーフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽い、割れにくいといったことから、プラスチックフィルムやシートのようなフレキシブル樹脂基材上に薄膜層を成膜した機能性フィルムが種々提案されている。例えば、金属や金属酸化物を成膜したガスバリアーフィルムは、水蒸気や酸素等の遮断を必要とする物品の包装用途、特に、食品、工業用品、医薬品等の変質防止のための包装用途に広く用いられ、また、液晶表示素子、光電変換素子(太陽電池)及び有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)等の電子デバイスにおいても使用されている。
【0003】
このような機能性フィルムは、生産性の向上を図るため、長尺の樹脂基材を搬送しながら、連続的に樹脂基材上に機能性層を薄膜として形成することにより製造されている。例えば、真空プロセスを用いてガスバリアー層を作製する方法(例えば、特許文献1参照。)、密着性を向上させるため任意の層における密度分布が傾斜構造を有するガスバリアーフィルムを作製する方法(例えば、特許文献2参照。)、真空チャンバー内への皮膜堆積を抑制するため、閉じた磁気回路を形成する磁場発生装置を有する電極ローラーを用いて皮膜を形成する方法(例えば、特許文献3参照。)等が知られている。
【0004】
最近では、より軽量化や屈曲性を実現するために基材の薄膜化の必要性や、高速搬送によるガスバリアーフィルムの生産性向上の必要性が高まっている。そのため、プラズマ密度を高め、原料分解/成膜効率を上げることや、高速の搬送速度で成膜することが行われている。しかし、搬送速度を速くすると、摩擦係数にもよるが、搬送ローラー上での滑りが起きやすくなる。ガスバリアー層が形成される前であれば多少滑りが発生してもガスバリアー性への影響はほとんどないが、ガスバリアー層が形成された後にガスバリアー層と搬送ローラー間で滑りが発生すると、ガスバリアー性が著しく低下する。
【0005】
このため、プラズマCVD成膜装置においては、薄膜基材を搬送ローラーに密着させることで滑りを低減させている。より電極ローラーに密着させるために、ニップローラーの使用が考えられるが、ガスバリアー膜面へのニップは、ガスバリアー膜のダメージの増大につながる。また、搬送張力を大きくすることが考えられるが、薄膜基材において搬送張力を大きくすると、フリースパンで基材が波状に変形して、シワが発生する等の問題が発生し、高い生産性でガスバリアーフィルムを生産することに対して障害となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−196155号公報
【特許文献2】特許第4821610号公報
【特許文献3】特許第4268195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルムを製造することができる成膜装置を提供することである。また、当該ガスバリアーフィルムを製造するガスバリアーフィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく、前記問題の原因等について検討する過程において、電極ローラーに誘電体被膜を形成し、その静電容量、比誘電率及びプラズマ放電の周波数をそれぞれ特定の範囲内で規定することにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0010】
1.プラズマCVD法により、基材上に成膜をする成膜装置であって、
第1電極ローラーと、前記第1電極ローラーに対向して配置された第2電極ローラーとを備え、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが、前記基材に接する幅よりも広い範囲で全周が誘電体に被覆されており、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、20nF/m〜20μF/mの範囲内であり、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、5〜100の範囲内であり、
前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、100kHz〜30MHzの範囲内であることを特徴とする成膜装置。
【0011】
2.前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、70nF/m〜3μF/mの範囲内であり、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、8〜50の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の成膜装置。
【0012】
3.前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、0.2〜1μF/mの範囲内であり、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、10〜20の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の成膜装置。
【0013】
4.前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、200kHz〜3MHzの範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の成膜装置。
【0014】
5.前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、400kHz〜1MHzの範囲内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の成膜装置。
【0015】
6.前記誘電体の表面粗さRaが、3μm以下であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の成膜装置。
【0016】
7.前記誘電体の表面粗さRaが、1μm以下であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の成膜装置。
【0017】
8.前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが、磁場形成手段を備えていることを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の成膜装置。
【0018】
9.第1電極ローラーと、前記第1電極ローラーに対向して配置された第2電極ローラーとを備えた成膜装置により、プラズマCVD法で基材上に成膜をするガスバリアーフィルムの製造方法であって、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが、前記基材に接する幅よりも広い範囲で全周が誘電体に被覆されており、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、20nF/m〜20μF/mの範囲内であり、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、5〜100の範囲内であり、かつ、
前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、100kHz〜30MHzの範囲内の条件下で、
ガスバリアー層を形成することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記手段により、ガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルムを製造することができる成膜装置を提供することができる。また、当該ガスバリアーフィルムを製造するガスバリアーフィルムの製造方法を提供することができる。
【0020】
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0021】
プラズマ放電により基材に電荷を蓄積させ、かつ電極ローラーに電荷が移動しにくくし、基材を帯電したままの状態にすることで静電気によるクーロン力が働き、それ以降の搬送ローラーとの密着性を向上できるため、搬送ローラーとガスバリアーフィルム間の滑りのない安定な搬送が実現でき、緻密なガスバリアー層を形成することができるためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の成膜装置の一例
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の成膜装置は、プラズマCVD法により、基材上に成膜をする成膜装置であって、
第1電極ローラーと、前記第1電極ローラーに対向して配置された第2電極ローラーとを備え、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが、前記基材に接する幅よりも広い範囲で全周が誘電体に被覆されており、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、20nF/m〜20μF/mの範囲内であり、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、5〜100の範囲内であり、
前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、100kHz〜30MHzの範囲内であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項9までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0024】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、70nF/m〜3μF/mの範囲内であり、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する誘電体の比誘電率が、8〜50の範囲内であることが好ましくい。
【0025】
さらに、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、0.2〜1μF/mの範囲内であり、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、10〜20の範囲内であることが、長期間にわたる優れたガスバリアー性能の経時安定の観点から好ましい。
【0026】
また、前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、200kHz〜3MHzの範囲内であることが、ガスバリアー性能と生産性との両立の観点から好ましく、400kHz〜1MHzの範囲内であることが、生産効率最大化の観点からより好ましい。
【0027】
また、前記誘電体の表面粗さRaが、3μm以下であることが、搬送性向上の観点から好ましい。特に誘電体の表面粗さRaが、1μm以下であることが好ましい。
【0028】
また、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが、磁場形成手段を備えていることが基材へのクーロン力蓄積効率を高める観点から好ましい。
【0029】
さらに、本発明の成膜装置を用いてガスバリアーフィルムを製造する製造方法としては、第1電極ローラーと、前記第1電極ローラーに対向して配置された第2電極ローラーとを備えた成膜装置により、プラズマCVD法で基材上に成膜をするガスバリアーフィルムの製造方法であって、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが、前記基材に接する幅よりも広い範囲で全周が誘電体に被覆されており、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、20nF/m〜20μF/mの範囲内であり、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、5〜100の範囲内であり、かつ、
前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、100kHz〜30MHzの範囲内の条件下で、ガスバリアーフィルムを製造することが好ましい。
【0030】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0031】
[成膜装置の構成]
本発明の成膜装置は、プラズマCVD法により、基材上に成膜をする(膜又は層を形成する)成膜装置であって、
第1電極ローラーと、前記第1電極ローラーに対向して配置された第2電極ローラーとを備え、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが、前記基材に接する幅よりも広い範囲で全周が誘電体に被覆されており、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、20nF/m〜20μF/mの範囲内であり、
前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、5〜100の範囲内であり、
前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、100kHz〜30MHzの範囲内であることを特徴とする。
【0032】
図1は、本発明の成膜装置の一例である。成膜装置31(以下、プラズマCVD成膜装置ともいう。)は、送り出しローラー32と、搬送ローラー33、34、35及び36と、電極ローラー39及び40(以下、第1電極ローラー39及び第2電極ローラー40と同義である。第1電極ローラーと第2電極ローラーを合わせて説明する際は、「両電極ローラー」と記載する。)と、ガス供給管41と、制御部42と、巻取りローラー45と、プラズマ発生用電源51とを備えている。両電極ローラー39及び40の内部に磁場形成手段として磁場発生装置43及び44とを備えていることが好ましい。
【0033】
第1電極ローラー39は、当該電極ローラーの表面に誘電体37Aを備えており、制御部42により所定範囲内の比誘電率に調整される。第2電極ローラー40についても同様に誘電体37Bを備えており、制御部により所定範囲内の比誘電率に調整される。
【0034】
また、第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーは、基材に接する幅よりも広い範囲で全周が誘電体に被覆されている。
【0035】
このような装置においては、少なくとも両電極ローラー39及び40と、ガス供給管41と、制御部42とが図示を省略した真空チャンバー内に配置されている。さらに、このようなプラズマCVD法により成膜する成膜装置31において、前記真空チャンバーは図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
【0036】
また、真空チャンバー内に防着部材を適宜設けることも好ましい。設置個所は特に限定はないが、成膜種が相対的に多い場所(例えば、プラズマ空間近傍、ガス供給部近傍、真空排気機構近傍等)や成膜種等の付着が望まれない箇所の近傍に設置することが好ましい。また、防着部材は取り外し可能なものが好ましく、適宜取り外して新品又は清掃済みの防着部材と交換することが望ましい。防着部材交換のタイミングは特に限定されない。
【0037】
防着部材の材質としては、特に限定されないが、金属(例えば、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム、チタン等)やセラミック(例えば、アルミナ)、ガラス、樹脂(例えば、ポリイミド、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド等)等を使用することができる。また、交換する新品又は清掃済みの防着部材は、チャンバー内に取り付ける前又は後に、エタノール等の揮発性の高い溶剤で拭いたり、加熱してもよい。加熱温度は特には限定されないが、成膜中に上昇する最大温度以上が好ましい。
【0038】
成膜装置31においては、一対の電極ローラー(第1電極ローラー39と第2電極ローラー40)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各電極ローラーがそれぞれ制御部42に接続されている。そのため、成膜装置31においては、制御部42によりプラズマ発生用電源51に電力を供給することにより、第1電極ローラー39と第2電極ローラー40との間の空間に放電することが可能であり、これにより第1電極ローラー39と第2電極ローラー40との間の空間にプラズマを発生させることができる。
【0039】
また、成膜装置31においては、一対の電極ローラー(電極ローラー39及び40)は、その中心軸が同一平面上においてほぼ平行となるようにして配置する、すなわち平行に延在して対向配置されている。このようにして、一対の電極ローラー(電極ローラー39及び40)を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できる。両ローラーは導電性材料で形成され、それぞれ回転しながら基材2を搬送する。また、第1電極ローラー39と第2電極ローラー40とは、相互に絶縁されているとともに、共通する制御部42に接続されている。
【0040】
さらに、両電極ローラー39及び40は、内部に磁場発生装置43及び44が格納されていることが好ましい。磁場発生装置43及び44は、空間に磁場を形成する部材であり、両電極ローラー39及び40のそれぞれについて、一体として回転しないようにして格納されている。磁場発生装置43及び44は、電極ローラー39及び40のそれぞれの延在方向と同方向に延在する中心磁石と、中心磁石の周囲を囲みながら電極ローラー39及び40のそれぞれの延在方向と同方向に延在して配置される円環状の外部磁石と、を有している。磁場発生装置43では、中心磁石と外部磁石とを結ぶ磁力線(磁界)が、無終端のトンネルを形成している。磁場発生装置44においても同様に、中心磁石と外部磁石とを結ぶ磁力線が、無終端のトンネルを形成している。
【0041】
この磁力線と、第1電極ローラー39と第2電極ローラー40との間に形成される電界と、が交差するマグネトロン放電によって、成膜ガスの放電プラズマを生じさせることが好ましい。すなわち、この空間は、プラズマCVD法による成膜を行う成膜空間として用いられ、基材2において第1電極ローラー39及び第2電極ローラー40に接しない面(成膜面)には、成膜ガスを形成材料とする膜が形成される。
【0042】
このような成膜装置31により、プラズマCVD法により基材2の表面上にガスバリアー層3を形成することが可能であり、第1電極ローラー39上において基材2の表面上に成膜成分を堆積させつつ、さらに第2電極ローラー40上においても基材2の表面上に成膜成分を堆積させることもできる。
【0043】
以上のような成膜装置31においては、以下のようにして基材2に対し成膜が行われる。まず、真空チャンバー内を減圧環境とし、両電極ローラー39及び40に電圧を印加して空間に電界を生じさせる。両電極ローラー39及び40からは真空チャンバー内に電子が放出される。この際、磁場発生装置43及び44では上述した無終端のトンネル状の磁場を形成していると、成膜ガスを導入することにより、該磁場と空間に放出される電子とによって、該トンネルに沿ったドーナツ状の成膜ガスの放電プラズマが形成される。この放電プラズマは、数Pa近傍の低圧力で発生可能であるため、真空チャンバー内の温度を室温近傍とすることが可能になる。
【0044】
一方、磁場発生装置43及び44が形成する磁場に高密度で捉えられている電子の温度は高いので、当該電子と成膜ガスとの衝突により生じる放電プラズマが生じる。すなわち、空間に形成される磁場と電場により電子が空間に閉じ込められることにより、空間に高密度の放電プラズマが形成される。より詳しくは、無終端のトンネル状の磁場と重なる空間においては、高密度の(高強度の)放電プラズマが形成され、無終端のトンネル状の磁場とは重ならない空間においては低密度の(低強度の)放電プラズマが形成される。これら放電プラズマの強度は、連続的に変化するものである。
【0045】
本発明によれば、基材に電荷を蓄積させ、これにより薄膜基材を帯電したままの状態にすることとで、静電気によるクーロン力によりそれ以降の搬送ローラーとの密着性を向上できるため、搬送ローラーとガスバリアーフィルム間の滑りがなくなると考えられ、安定な搬送が実現でき、緻密なガスバリアー層を形成することが可能な成膜装置が提供される。
【0046】
[搬送ローラーとの基材との密着性]
本発明の成膜装置は、基材に接する幅よりも広い範囲で全周が誘電体で被覆された前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量(以下電極ローラーの静電容量ともいう。)が、20nF/m〜20μF/mの範囲内であり、前記誘電体の比誘電率が、5〜100の範囲内であり、前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数(以下単にプラズマ放電の周波数ともいう。)が、100kHz〜30MHzの範囲内であることを特徴としている。
【0047】
静電容量Cは下記の式(1)で表される。
【0048】
式(1) C=ε・ε・S/d
ここでεは比誘電率を表す。εは真空の誘電率を表す。Sは面積を表す。dは厚さを表す。なお、本発明において、静電容量と比誘電率は温度20℃のときの値をいう。
【0049】
電極ローラーと基材との密着性が向上するのは、誘電体の分極が大きくなることにより、その上に存在する基材の分極が大きくなり、基材の帯電量が大きくなることによりクーロン力が働くためであると考えられる。帯電した基材は、その後の搬送においても、搬送ローラーと基材との間にクーロン力が働くため、高い密着性が維持されるものと考えられる。
【0050】
しかし、静電容量が大きすぎると密着性は良化するものの帯電した電荷によるバリア膜へのダメージが発生するため、電極ローラーの静電容量は、20nF/m〜20μF/mの範囲内である。好ましくは静電容量が、70nF/m〜3μF/mの範囲内であり、より好ましくは、0.2〜1μF/mの範囲内である。
【0051】
また、前記誘電体の比誘電率が5より小さいと、式(1)から分かるように、所望の静電容量を得るのに膜厚を薄くする必要が生じ、耐電圧が下がる。そのため放電が不安定となり、また絶縁破壊も起きやすくなり、ガスバリアー性が劣化してしまう。逆に比誘電率が大きすぎると所望の静電容量を得るのに膜厚を厚くしなければならず、成膜時に発生した高熱により誘電体が割れてしまうといった問題が発生する。このため、前記誘電体の比誘電率は、5〜100の範囲内であることが必要である。好ましくは、誘電体の比誘電率は、8〜50の範囲内であり、より好ましくは、10〜20の範囲内である。
【0052】
さらに、プラズマ放電の周波数が、100kHzを下回ると電流が流れにくくなり、電流不足により電荷不足が生じてしまう。また、周波数が、30MHzを超えると、プラズマ中で電離した電子やイオンが電極に届く前に、移動すべき方向が逆転するため、蓄積される電荷が小さくなってしまい、結果的に、いずれの場合も十分な密着性が得られない。好ましくは、プラズマ放電の周波数は、200kHz〜3MHzの範囲内であり、より好ましくは、400kHz〜1MHzの範囲内である。
【0053】
本発明においては、誘電体の静電容量、比誘電率及びプラズマ放電の周波数を上記のように、特定の範囲とする必要がある。これらの組み合わせのうち、好ましくは、第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、70nF/m〜3μF/mの範囲内であり、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、8〜50の範囲内である。より好ましくは、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、0.2〜1μF/mの範囲内であり、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、10〜20の範囲内である。
【0054】
さらに、電極ローラーの静電容量と比誘電率の上記二つの組み合わせにおいて、プラズマ放電の周波数が、200kHz〜3MHzの範囲内であることが好ましく、400kHz〜1MHzの範囲内であることがより好ましい。
【0055】
[電極ローラー]
本発明の成膜装置は、プラズマCVD法により、基材上に成膜をする成膜装置であって、 第1電極ローラーと、前記第1電極ローラーに対向して配置された第2電極ローラーとを備え、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが、前記基材に接する幅よりも広い範囲で全周が誘電体に被覆されており、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、20nF/m〜20μF/mの範囲内であり、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、5〜100の範囲内であり、前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、100kHz〜30MHzの範囲内であることを特徴とする。
【0056】
このような、表面物性を示す第1電極ローラー及び第2電極ローラーを使用することによって、ガスバリアーフィルムの搬送が安定することにより、ガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルムが得られる成膜装置として使用することができる。
【0057】
前記誘電体の比誘電率を制御する要因としては、当該誘電体を構成する材料、プラズマ放電の周波数及び成膜装置内の温度等が挙げられる。第1電極ローラーと第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数を、100kHz〜30MHzの範囲内とした場合に、前記のような誘電体の比誘電率が得られれば、電極ローラー39及び40はどのような素材で構成されていてもよい。例えば、電極ローラーの表面をコーティングする誘電体としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、イットリア、クロミア、ガラス等、又はこれらのセラミック高誘電率フィラーが分散された樹脂などを用いることができる。比誘電率を5〜100の範囲に制御しやすい点から、アルミナを用いることが好ましいが、特に限定するものではない。
【0058】
誘電体をコーティングする手法としては、加工精度の点から溶射が好ましく、加工温度は200℃以下であることが好ましい。また、耐久性の点から溶射面を封孔処理してもよく、封孔材としてはアルコキシシランやオルガノシロキサン、ケイ酸ナトリウム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂などから選ばれることが好ましく、アルコキシシラン、オルガノシロキサン、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0059】
なお、誘電体を表面被覆する前の電極ローラーについては、一般的に電極ローラーに用いられる素材であればよく、例えばチタン製の電極を用いることができる。さらに、従来のチタン製の電極ローラー上の少なくとも一部を、ダイヤモンドライクカーボン(以下、DLCとも表記する。)でコーティングした電極ローラーとすることも好ましい。
【0060】
ダイヤモンドライクカーボンとは、主に炭化水素からなるアモルファスの硬化膜の総称である。本発明においては、ラマン分光法により電極ローラー表面の結晶性を評価した場合に、ダイヤモンドやグラファイトのような結晶構造とは区別しうる、アモルファス特性を示す炭化水素を含む硬化膜であれば、ダイヤモンドライクカーボンとする。炭化水素以外に、第三の成分元素が含まれていてもよい。
【0061】
本発明で好ましく用いることのできるDLCコーティングは、例えば、イオン化蒸着法により成膜することができる。すなわち、真空チャンバー内にベンゼンなどの炭化水素ガスを導入し、直流アーク放電でこのガスをプラズマ化して炭化水素イオンを発生させ、このイオンを従来の電極ローラー表面に衝突させることでDLCによるアモルファス膜を成膜することが可能である。DLCコーティングの成膜温度は、約200℃以下であることが好ましい。
【0062】
例えばDLC成膜装置としてNANOCOAT−1000、NANOCOAT−4000(ナノテック株式会社製)等があり、基板回転機構を備えた装置により、均一なコーティングをすることができる。なお、イオン化蒸着法の代わりに、高周波プラズマCVD法、アークイオンプレーティング法又はスパッタリング法などの物理的気相蒸着法(PVD法)を用いることもできる。PVD法を用いるときはグラファイトをターゲットとして用いる。
【0063】
本発明では、比誘電率が5〜100の範囲内になるように、第1及び第2電極ローラーに誘電体37A及び37Bをコーティングとすることで、異常プラズマ放電を抑制し、投入電力が効率よくプラズマエネルギーに使用されるため、基板の変形を引き起こすこともなく、成膜する際の微小なガスバリアー膜の欠陥を低減することができるものと考えられる。
【0064】
コーティングする誘電体としては、静電容量にもよるが、例えば、アルミナを用いる場合は、100〜3000μmの範囲内の厚さでコーティングすることが好ましい。この範囲であると、プラズマ放電の安定性がより高いため、均質な成膜ができるためである。
【0065】
なお、膜厚の測定は、分光干渉法を用いた非接触の膜厚測定装置を用いることができる。薄膜サンプルに白色光を照射して表面と基板との界面からの反射スペクトルをカーブフィッティング法、又はFFT(高速フーリエ変換)により解析して膜厚を測定する。
【0066】
また、両電極ローラー39及び40は、より効率よく薄膜を形成するという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、両電極ローラー39及び40の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、直径が50〜800mmφの範囲内、特に100〜500mmφの範囲内が好ましい。電極ローラーの直径が50mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量が基材2にかかることを回避できることから、基材2へのダメージを軽減でき好ましい。一方、電極ローラーの直径が800mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。
【0067】
また、誘電体の表面粗さRaは、3μm以下であることが好ましく誘電体の表面粗さRaが、1μm以下であることがより好ましい。このように表面を平滑にすることにより、基材と電極ローラー上の誘電体との接触面積が増え、基材の搬送性をより向上させることができる。なお、本発明における表面粗さRaとは、JIS B0601−2001における算術平均粗さを表している。
【0068】
誘電体表面の研磨方法は特に限定されないが、例えば、紙やすりや、布やすり、研磨ペーストなどを用いて研磨する方法が挙げられる。紙やすりや布やすりで研磨する方法としては、これらのやすりを人力又は機械によって支持体に押し付けながら支持体ないしは押さえつけている箇所を移動させることで行う。紙やすりや布やすりの砥粒の材質は特に限定されないが炭化ケイ素(SiC)が好ましい。紙やすりや布やすりの目の粗さは、通常は#200以上#20000以下、好ましくは#500以上#10000以下である。一種類の目の粗さのやすりを用いてもかまわないし、研磨の進行に伴い徐々に目の粗さを細かくしていっても差し支えない。
【0069】
また、第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーは、基材に接する幅よりも広い範囲で全周が誘電体に被覆されている。このように誘電体を被覆することにより、基材をむらなく効率的に帯電させることができる。基材に接する幅よりも片側で10mm以上幅が広ければよい。好ましくは30mm以上で、電極ローラー全幅が誘電体に被覆されていることが好ましい。
【0070】
さらには、後述するように、(i)、(ii)及び(iii)の組成条件を満たすガスバリアー層とすることにより、膜の組成上、両電極ローラーに付着した成膜材料等の影響を受けやすいために、得られるガスバリアー層の欠陥を大幅に低減することができる点で好ましい。ガスバリアー層の詳細な組成については、ガスバリアーフィルムの製造方法で詳細に説明する。
【0071】
[制御部]
両電極ローラーが備える誘電体37A及び37Bの比誘電率については、成膜装置31が備える制御部42により制御することができる。
【0072】
具体的には、制御部42は、第1電極ローラーと第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数を、100kHz〜30MHzの範囲内に調整し、第1電極ローラー39及び第2電極ローラー40が有する誘電体37A及び37Bの比誘電率を、5〜100の範囲内に調整する。
【0073】
さらに、制御部42は、成膜装置31のオンオフや温度による比誘電率の調整、各構成の動作等について、後述するプラズマ発生用電源51をはじめとする、成膜装置31全体及び各構成を制御することができ、適宜公知の制御部42を用いることができる。
【0074】
具体的には、制御部42は、成膜装置31の動作を統括制御するCPU(Central Processing Unit)と、CPUが読み出して実行するプログラムや固定データが記憶されたプログラムメモリーなどを備えている。プログラムメモリーは、ROMなどにより構成され、比誘電率を制御するためのプログラム(温度制御を含む)及び成膜装置の動作を制御するプログラム等を備えている。
【0075】
制御部42により制御される成膜装置全体、誘電体の温度は、特に限定されるものではないが、本発明の効果発現の観点から−30〜60℃であることが好ましい。CPUは、プログラムメモリーに記憶されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って比誘電率の制御をはじめとする各種処理を実行する。これらのプログラムは適宜公知のプログラムを使用することができる。
【0076】
[プラズマ発生用電源]
プラズマ発生用電源51としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源は、これに接続された第1電極ローラー39と第2電極ローラー40とに電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、前記一対の電極ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。
【0077】
また、このようなプラズマ発生用電源としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を100W〜10kWとすることができ、電源周波数は、各周波数帯の電源を適宜選択することができる。
【0078】
[磁場形成手段]
両電極ローラー39及び40の内部には、電極ローラーが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置(磁場形成手段)43及び44がそれぞれ設けられていることが好ましい。電極ローラー39及び40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43及び44は、一方の第1電極ローラー39に設けられた磁場発生装置43と他方の第2電極ローラー40に設けられた磁場発生装置44との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場発生装置43及び44がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43及び44を設けることにより、各電極ローラー39及び40の対向側表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束されやすくなるため、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
【0079】
また、両電極ローラー39及び40にそれぞれ設けられた磁場発生装置43及び44は、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。磁場発生装置43及び44は、それぞれローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置43と他方の磁場発生装置44とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置43及び44を設けることにより、それぞれの磁場発生装置43及び44について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができる。よって、その磁場にプラズマを収束させることができるため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の基材2を用いて効率的にガスバリアー層3を形成することができる点で優れている。
【0080】
[送り出しローラー及び搬送ローラー]
成膜装置に用いる送り出しローラー32並びに搬送ローラー33、34、35及び36としては適宜公知のローラーを用いることができるが、電極ローラーと同様な素材を用いることで、搬送時においてもクーロン力による密着性の向上を図ることができるため、搬送ローラーもアルミナ、チタニア、ジルコニア、イットリア、クロミア、ガラス等、又はこれらのセラミック高誘電率フィラーが分散された樹脂などでコーティングされていることが好ましい。また、巻取りローラー45としては、基材2上にガスバリアー層3を形成したガスバリアーフィルム1を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
【0081】
[ガス供給管及び真空ポンプ]
また、ガス供給管41及び真空ポンプとしては、原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。また、ガス供給手段であるガス供給管41は、第1電極ローラー39と第2電極ローラー40との間の対向空間(放電領域;成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず)は、前記対向空間の他方に設けることが好ましい。
【0082】
このようにガス供給手段であるガス供給管41と、真空排気手段である真空ポンプを配置することにより、第1電極ローラー39と第2電極ローラー40との間の対向空間に効率よく成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
【0083】
[ガスバリアーフィルムの製造方法]
本発明のガスバリアー性フィルムの製造方法は、第1電極ローラーと、前記第1電極ローラーに対向して配置された第2電極ローラーとを備えた成膜装置により、プラズマCVD法で基材上に成膜をするガスバリアー性フィルムの製造方法であって、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが、前記基材に接する幅よりも広い範囲で全周が誘電体に被覆されており、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する単位面積当たりの静電容量が、20nF/m〜20μF/mの範囲内であり、前記第1電極ローラー及び前記第2電極ローラーが有する前記誘電体の比誘電率が、5〜100の範囲内であり、かつ、前記第1電極ローラーと前記第2電極ローラーの間に発生させるプラズマ放電の周波数が、100kHz〜30MHzの範囲内の条件下で、ガスバリアー層を形成することを特徴とする。
【0084】
図1に好ましい実施形態として示した本発明の成膜装置は、プラズマCVD法により成膜することのできるどのようなフィルムの製造にも用いることができる。しかしながら、本発明のプラズマCVD法による成膜装置は、特にガスバリアーフィルムの製造に好適である。
【0085】
以下、ガスバリアーフィルムの製造方法について、好ましい一態様を説明する。
【0086】
ガスバリアーフィルム1は、基材2上に成膜装置によりガスバリアー層3が形成された構成のものが好ましい。なお、本発明において、「ガスバリアー性を示す」とは、ガスバリアーフィルムについて、JIS K 7129−2008に準拠した方法で測定された水蒸気透過度(略称:WVTR、温度:38℃、相対湿度(RH):90%)が全体として、0.1g/m・24h以下であり、好ましくは酸素透過度が、0.01ml/m・24h・atm以下を示すことをいう。
【0087】
水蒸気透過度は、特開2004−333127号公報等に記載された方法によっても測定することができる。また、酸素透過度についても同じく、JIS K 7126−2006等に記載された方法で測定することができる。
【0088】
(基材)
基材2としては、樹脂又は樹脂を含む複合材料からなるフィルム又はシートが好適に用いられる。このような樹脂フィルム又はシートは、透光性を有していても良く、また、不透明であっても良い。
【0089】
基材2を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)又は環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、ポリアクリロニトリル樹脂、アセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルファイド(PES)等の樹脂が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0090】
透明性、耐熱性、線膨張性等の必要な特性に合わせて、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂から選ばれることが好ましく、PET、PEN及び環状ポリオレフィンがより好ましい。
【0091】
また、樹脂を含む複合材料としては、ポリジメチルシロキサン、ポリシルセスキオキサンなどのシリコーン樹脂、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、耐熱性及び線膨張率が高いという観点から、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ガラスコンポジット基板、ガラスエポキシ基板が好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0092】
基材2の厚さは、基材2を製造する際の安定性等を考慮して適宜設定されるが、真空中においても基材2の搬送が容易であることから、5〜250μmの範囲内であることが好ましい。さらに、本実施形態で採用するガスバリアー膜の形成では、基材2を通して放電を行うことから、基材2の厚さは50〜200μmの範囲内であることがより好ましく、50〜150μmの範囲内であることが特に好ましい。
【0093】
なお、基材2は、形成するガスバリアー膜との密着性の観点から、その表面を清浄するための表面活性処理を施してもよい。このような表面活性処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理又はフレーム処理が挙げられる。
【0094】
(ガスバリアー層)
ガスバリアー層は、ガスバリアーフィルムにおいてガスバリアー性を発揮する層であり、以下の関係を満たすことが好ましい。
(i)ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比率)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比率)との関係を示す酸素分布曲線、並びに前記Lとケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比率)との関係を示す炭素分布曲線において、前記ガスバリアー層の層厚の90%以上(上限:100%)の領域で、(酸素の原子比率)、(ケイ素の原子比率)、(炭素の原子比率)の順で多い(原子比率がO>Si>C)。
(ii)前記炭素分布曲線が少なくとも二つの極値を有する。
(iii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値(以下、単に「Cmax−Cmin差」とも称する。)が3at%以上である。
【0095】
前記の条件(i)を満たす場合、得られるガスバリアーフィルムのガスバリアー性や屈曲性により優れる。
【0096】
ここで、前記炭素分布曲線において、(酸素の原子比率)、(ケイ素の原子比率)及び(炭素の原子比率)の関係は、ガスバリアー層の層厚の、少なくとも90%以上(上限:100%)の領域で満たされることがより好ましく、少なくとも93%以上(上限:100%)の領域で満たされることがより好ましい。
【0097】
ガスバリアー層の層厚の少なくとも90%以上とは、ガスバリアー層中で連続していなくてもよく、単に90%以上の部分で前記した関係を満たしていればよい。
【0098】
また、ガスバリアー層は、さらに前記(ii)、すなわち前記炭素分布曲線が少なくとも二つの極値を有することが好ましい。
【0099】
該ガスバリアー層は、前記炭素分布曲線が少なくとも三つの極値を有することが好ましく、少なくとも四つの極値を有することがより好ましいが、五つ以上有してもよい。前記炭素分布曲線の極値が少なくとも二つである場合、得られるガスバリアーフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリアー性により優れる。
【0100】
なお、炭素分布曲線の極値の上限は、特に制限されないが、例えば、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。極値の数は、ガスバリアー層の層厚にも起因するため、一概に規定することはできない。
【0101】
ここで、少なくとも三つの極値を有する場合においては、前記炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離(L)の差の絶対値(以下、単に「極値間の距離」ともいう。)が、いずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、75nm以下であることが特に好ましい。このような極値間の距離であれば、ガスバリアー層中に炭素原子比率が多い部位(極大値)が適度な周期で存在するため、ガスバリアー層に適度な屈曲性を付与し、ガスバリアーフィルムの屈曲時のクラックの発生をより有効に抑制・防止できる。
【0102】
なお、本明細書において「極値」とは、前記ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離(L)に対する元素の原子比率の極大値又は極小値のことをいう。
【0103】
また、本明細書において「極大値」とは、ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素又は炭素)の原子比率の値が増加から減少に変わる点であって、かつその点の元素の原子比率の値よりも、該点からガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離をさらに4〜20nmの範囲で変化させた位置の元素の原子比率の値が3at%以上減少する点のことをいう。すなわち、4〜20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比率の値が3at%以上減少していればよい。
【0104】
同様にして、本明細書において「極小値」とは、ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素又は炭素)の原子比率の値が減少から増加に変わる点であり、かつその点の元素の原子比率の値よりも、該点からガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離をさらに4〜20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が3at%以上増加する点のことをいう。
【0105】
すなわち、4〜20nmの範囲内で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比率の値が3at%以上増加していればよい。ここで、少なくとも三つの極値を有する場合の、極値間の距離の下限は、極値間の距離が小さいほどガスバリアーフィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果が高いため、特に制限されないが、ガスバリアー層の屈曲性、クラックの抑制/防止効果、熱膨張性などを考慮すると、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。
【0106】
さらに、ガスバリアー層は、前記条件(iii)、すなわち前記炭素分布曲線における炭素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が3at%以上であることが好ましい。前記絶対値が3at%以上であれば、得られるガスバリアーフィルムを屈曲させた場合に、ガスバリアー性により優れる。Cmax−Cmin差は5at%以上であることが好ましく、7at%以上であることがより好ましく、10at%以上であることが特に好ましい。
【0107】
前記Cmax−Cmin差とすることによって、ガスバリアー性をより向上することができる。なお、本明細書において、「最大値」とは、各元素の分布曲線において最大となる各元素の原子比率であり、極大値の中で最も高い値である。同様にして、本明細書において、「最小値」とは、各元素の分布曲線において最小となる各元素の原子比率であり、極小値の中で最も低い値である。ここで、Cmax−Cmin差の上限は、特に制限されないが、ガスバリアーフィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果などを考慮すると、50at%以下であることが好ましく、40at%以下であることがより好ましい。
【0108】
本発明において、前記ガスバリアー層の前記酸素分布曲線が少なくとも一つの極値を有することが好ましく、少なくとも二つの極値を有することがより好ましく、少なくとも三つの極値を有することがさらに好ましい。前記酸素分布曲線が極値を少なくとも一つ有する場合、得られるガスバリアーフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリアー性がより向上する。
【0109】
なお、酸素分布曲線の極値の上限は、特に制限されないが、例えば、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。酸素分布曲線の極値の数においても、ガスバリアー層の層厚に起因する部分があり一概に規定できない。
【0110】
また、少なくとも三つの極値を有する場合においては、前記酸素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値における前記ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離の差の絶対値がいずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましい。このような極値間の距離の距離であれば、ガスバリアーフィルムの屈曲時のクラックの発生をより有効に抑制・防止できる。ここで、少なくとも三つの極値を有する場合の、極値間の距離の下限は、特に制限されないが、ガスバリアーフィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果、熱膨張性などを考慮すると、10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましい。
【0111】
加えて、本発明において、前記ガスバリアー層の前記酸素分布曲線における酸素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値(以下、単に「Omax−Omin差」ともいう。)が3at%以上であることが好ましく、6at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることがさらに好ましい。前記絶対値が3at%以上であれば、得られるガスバリアーフィルムのフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリアー性がより向上する。ここで、Omax−Omin差の上限は、特に制限されないが、ガスバリアーフィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果などを考慮すると、50at%以下であることが好ましく、40at%以下であることがより好ましい。
【0112】
本発明において、前記ガスバリアー層の前記ケイ素分布曲線におけるケイ素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値(以下、単に「Simax−Simin差」ともいう。)が10at%以下であることが好ましく、7at%以下であることがより好ましく、3at%以下であることがさらに好ましい。前記絶対値が10at%以下である場合、得られるガスバリアーフィルムのガスバリアー性がより向上する。
【0113】
ここで、Simax−Simin差の下限は、Simax−Simin差が小さいほどガスバリアーフィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果が高いため、特に制限されないが、ガスバリアー性などを考慮すると、1at%以上であることが好ましく、2at%以上であることがより好ましい。
【0114】
また、本発明において、ガスバリアー層の層厚方向に対する炭素及び酸素原子の合計量はほぼ一定であることが好ましい。これにより、ガスバリアー層は適度な屈曲性を発揮し、ガスバリアーフィルムの屈曲時のクラック発生をより有効に抑制・防止されうる。
【0115】
より具体的には、ガスバリアー層の層厚方向における該ガスバリアー層の表面からの距離(L)とケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する、酸素原子及び炭素原子の合計量の比率(酸素及び炭素の原子比率)との関係を示す酸素炭素分布曲線において、前記酸素炭素分布曲線における酸素及び炭素の原子比率の合計の最大値及び最小値の差の絶対値(以下、単に「OCmax−OCmin差」ともいう。)が5at%未満であることが好ましく、4at%未満であることがより好ましく、3at%未満であることがさらに好ましい。前記絶対値が5at%未満であれば、得られるガスバリアーフィルムのガスバリアー性がより向上する。なお、OCmax−OCmin差の下限は、OCmax−OCmin差が小さいほど好ましいため、0at%であるが、0.1at%以上であれば十分である。
【0116】
前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線及び前記酸素炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比率(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。
【0117】
なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は膜厚方向における前記ガスバリアー層の層厚方向における前記ガスバリアー層の表面からの距離(L)におおむね相関することから、「ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるガスバリアー層の表面からの距離を採用することができる。また、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線及び酸素炭素分布曲線は、下記測定条件にて作成することができる。
【0118】
(測定条件)
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチング速度(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名“VG Theta Probe”
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形
ガスバリアー層の厚さ(乾燥層厚)は、前記(i)〜(iii)を満たす限り、特に制限されない。ガスバリアー層の厚さは、20〜3000nmであることが好ましく、50〜2500nmであることがより好ましく、100〜1000nmであることが特に好ましい。このような厚さであれば、ガスバリアーフィルムは、優れたガスバリアー性及び屈曲時のクラック発生抑制/防止効果を発揮できる。
【0119】
なお、ガスバリアー層が2層以上から構成される場合には、各ガスバリアー層が前記したような厚さを有することが好ましい。また、ガスバリアー層が2層以上から構成される場合のガスバリアー層全体の厚さは特に制限されないが、ガスバリアー層全体の厚さ(乾燥層厚)が1000〜2000nm程度であることが好ましい。このような厚さであれば、ガスバリアーフィルムは、優れたガスバリアー性及び屈曲時のクラック発生抑制/防止効果を発揮できる。
【0120】
本発明において、膜面全体において均一でかつ優れたガスバリアー性を有するガスバリアー層を形成するという観点から、前記ガスバリアー層が膜面方向(ガスバリアー層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。ここで、ガスバリアー層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりガスバリアー層の膜面の任意の2か所の測定箇所について前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線及び前記酸素炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2か所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるか又は5at%以内の差であることをいう。
【0121】
さらに、本発明においては、前記炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。ここで、炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比率が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される前記ガスバリアー層のうちの少なくとも1層の層厚方向における該ガスバリアー層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比率(C、単位:at%)との関係において、下記の式(2)で表される条件を満たすことをいう。
【0122】
式(2) (dC/dx)≦0.5
本発明に係るガスバリアーフィルムにおいて、前記条件(i)〜(iii)を全て満たすガスバリアー層は、1層のみを備えていてもよいし2層以上を備えていてもよい。さらに、このようなガスバリアー層を2層以上備える場合には、複数のガスバリアー層の材質は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0123】
前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線及び前記炭素分布曲線において、ケイ素の原子比率、酸素の原子比率及び炭素の原子比率が、該ガスバリアー層の層厚の90%以上の領域において前記(i)で表される条件を満たす場合には、前記ガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対するケイ素原子の含有量の原子比率は、20〜45at%であることが好ましく、25〜40at%であることがより好ましい。
【0124】
また、前記ガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子の含有量の原子比率は、45〜75at%であることが好ましく、50〜70at%であることがより好ましい。さらに、前記ガスバリアー層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子の含有量の原子比率は、0〜25at%であることが好ましく、1〜20at%であることがより好ましい。
【0125】
(ガスバリアー層の形成方法)
前記したガスバリアー層は、図1に示す成膜装置31を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、真空チャンバー内の圧力、電極ローラーの直径、並びにフィルム(基材)の搬送速度を適宜調整することにより、本発明に係るガスバリアー層を形成することができる。
【0126】
すなわち、図1に示す成膜装置31を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給しつつ、一対の電極ローラー(両電極ローラー39及び40)間に放電を発生させることにより、前記成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、第1電極ローラー39上の基材2の表面上及び第2電極ローラー40上の基材2の表面上に、ガスバリアー層3がプラズマCVD法により形成される。
【0127】
この際、両電極ローラー39及び40の内部に磁場形成手段として磁場発生装置43及び44とを備えていることが好ましい。両電極ローラー39及び40のローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場が形成して、磁場にプラズマを収束させることができる。
【0128】
このため、基材2が、図1中の第1電極ローラー39のA地点及び第2電極ローラー40のB地点を通過する際に、ガスバリアー層で炭素分布曲線の極大値が形成される。これに対して、基材2が、図1中の第1電極ローラー39のC1及びC2地点並びに第2電極ローラー40のC3及びC4地点を通過する際に、ガスバリアー層で炭素分布曲線の極小値が形成される。
【0129】
このため、二つの電極ローラーに対して、通常、五つの極値が生成する。また、ガスバリアー層の極値間の距離(炭素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値におけるガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離(L)の差の絶対値)は、両電極ローラー39及び40の回転速度(基材の搬送速度)によって調節できる。
【0130】
なお、このような成膜に際しては、基材2が送り出しローラー32や第1電極ローラー39等により、それぞれ搬送されることにより、ロール・to・ロール方式の連続的な成膜プロセスにより基材2の表面上にガスバリアー層が形成される。
【0131】
また、プラズマCVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の電極ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の電極ローラーを用い、その一対の電極ローラーのそれぞれに前記基材を配置して、一対の電極ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。
【0132】
このようにして、一対の電極ローラーを用い、その一対の電極ローラー上に基材を配置して、かかる一対の電極ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の電極ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の電極ローラー上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できる。
【0133】
さらに、通常のローラーを使用しないプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にでき、ほぼ同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となり、効率よく前記条件(i)〜(iii)を全て満たす層を形成することが可能となる。
【0134】
また、このようにして一対の電極ローラー間に放電する際には、前記一対の電極ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。さらに、このようなプラズマCVD法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量未満であることが好ましい。
【0135】
また、本発明のガスバリアーフィルムにおいては、前記ガスバリアー層が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。
【0136】
また、本発明に係るガスバリアーフィルムは、生産性の観点から、ロール・to・ロール方式で前記基材の表面上に前記ガスバリアー層を形成させることが好ましい。
【0137】
また、このようなプラズマCVD法によりガスバリアー層を形成する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の電極ローラーと、制御部とを備え、かつ前記一対の電極ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることを特徴として、例えば、図1に示すプラズマCVD法による成膜装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながらロール・to・ロール方式で製造することも可能となる。
【0138】
(成膜ガス)
前記ガス供給管41から対向空間に供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス及び放電ガスを単独又は2種以上を混合して用いることができる。ガスバリアー層の形成に用いる前記成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するガスバリアー層の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物や炭素を含有する有機化合物ガスを用いることができる。
【0139】
このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラン(HMDS)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。
【0140】
これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取扱い性及び得られるガスバリアー層のガスバリアー性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。また、炭素を含有する有機化合物ガスとしては、例えば、メタン、エタン、エチレン及びアセチレンを例示することができる。
【0141】
これら有機ケイ素化合物ガスや有機化合物ガスは、ガスバリアー層の種類に応じて適切な原料ガスが選択される。さらに、原料ガスとして、上述の有機ケイ素化合物の他にモノシランを含有させ、形成するガスバリアー膜のケイ素源として使用することとしてもよい。
【0142】
また、前記成膜ガスとしては、前記原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、前記原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。酸化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また、窒化物を形成するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。例えば、酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
【0143】
真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、空間の圧力が0.1〜50Paであることが好ましい。気相反応を抑制する目的により、プラズマCVDを低圧プラズマCVD法とする場合、通常0.1〜10Paである。また、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.1〜10kWであることが好ましい。
【0144】
基材2の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.1〜100m/minであることが好ましく、0.5〜20m/minであることがより好ましい。ライン速度が0.1m/min以上では、基材100に熱に起因する皺が発生することがなく、他方、ライン速度が100m/min以内であれば、形成されるガスバリアー膜の厚さが薄くなることがない。搬送する際には、搬送ローラーから送り出され、第1電極ローラー39上で成膜された基材2は、成膜面をターンバーに巻き掛けながら第2電極ローラー40に搬送される。
【実施例】
【0145】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0146】
[ガスバリアーフィルム1の作製]
(樹脂基材の準備)
二軸延伸のポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、厚さ:100μm、幅:350mm、帝人デュポンフィルム(株)製、商品名「テオネックスQ65FA」)を、樹脂基材として用いた。
【0147】
(アンカー層の形成)
前記樹脂基材の易接着面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR Z7501を乾燥後の層厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件として、80℃で3分間の乾燥を行った後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cmで硬化を行い、アンカー層を形成した。
【0148】
(ガスバリアー層の形成)
第1及び第2電極ローラー上にアルミナを200μmコーティングし、その後封孔材としてエポキシ樹脂溶液を塗工し、200℃で乾燥、表面研磨して仕上げ、20℃における比誘電率が6となるよう調整した。また、両電極ローラーは、両電極ローラー上の誘電体の幅を樹脂基材の幅350mmに対して、両端がそれぞれ30mm長い幅で誘電体を被覆したものを用いた。この両電極ローラーを有するプラズマCVD成膜装置を用いてガスバリアー膜を成膜した。樹脂基材のアンカー層を形成した面とは反対側の面が電極ローラーと接触するようにして、樹脂基材を装置に装着し、下記の成膜条件(プラズマCVD条件)により、アンカー層上にガスバリアー膜を、厚さが300nmとなる条件で成膜した。
【0149】
〈プラズマCVD条件〉
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン、HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O)の供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:120kHz
樹脂基材の搬送速度:2m/min
[ガスバリアーフィルム2〜26の作製]
ガスバリアーフィルム1の作製において、両電極ローラー上の誘電体の静電容量、誘電体の比誘電率、プラズマ放電の周波数、誘電体の表面粗さ及び磁場形成手段の有無を表1のように変更してガスバリアーフィルム2〜26を作製した。具体的には以下のように変更してそれぞれ作製した。
【0150】
〈誘電体の比誘電率〉
誘電体が低比誘電率(6〜12)の場合、アルミナと樹脂材料との混合比を変化させて、表1の比誘電率になるようにして作製した。樹脂は、エポキシ樹脂を用いた。
【0151】
誘電体が高比誘電率(20〜110)の場合は、アルミナとチタニア又はチタン酸バリウムの混合比を変化させて、表1の比誘電率になるようにして作製した。
【0152】
〈誘電体の静電容量〉
静電容量の調整は、上記アルミナとの混合材料をコーティング又は溶射し、その膜厚を調整して表1の静電容量になるようにして行った。
【0153】
誘電体が低比誘電率(6〜12)でコーティング方式採用の場合は、アルミナパウダーを、エポキシ樹脂を溶解させたトルエン中に分散させたものをスプレーコーティングし、その後硬化することで混合薄膜を得た。溶射方式採用の場合は、アルゴン、窒素、水素ガスをプラズマ状態にし、得られる高温フレームにより高融点セラミックスを溶融させる大気プラズマ溶射方式を採用し、溶射後にエポキシ樹脂を含浸させることで混合膜を得た。
【0154】
誘電体が高比誘電率(20〜110)の場合は、上記同様の大気プラズマ方式、又は溶棒式フレーム溶射を採用し、アルミナとチタニアの混合膜又はアルミナとチタン酸バリウムの混合膜を得た。
【0155】
〈プラズマ放電の周波数〉
各周波数帯の電源を準備し、適宜調整した。
【0156】
〈磁場形成手段〉
ガスバリアーフィルム17〜20の作製においては、磁場形成手段として、両電極ローラーの内部に磁場発生装置43及び44とを備えているCVD装置を用いた。これを表1中ではBとし、磁場形成手段を有しないCVD装置はAとして表1に記した。磁場形成の条件は以下の通りである。
【0157】
ローラー表面付近にレーストラック状に最大で磁束密度200Tの磁場が形成されるような永久磁石を用いた。
【0158】
〈表面粗さ〉
誘電体の表面粗さは、紙やすりで#500から#20000のものを用い、研磨の進行に伴い徐々に目の粗さを細かくしていき、表1の表面粗さRaとなるように研磨した。
【0159】
[ガスバリアーフィルム27の作製]
ガスバリアーフィルム1の作製において、両電極ローラー上の誘電体の幅を、樹脂基材の幅350mmに対して両端が、それぞれ、30mm短い幅で誘電体を両電極ローラーに被覆したものを用いた。その他は、ガスバリアーフィルム1と同様にしてガスバリアーフィルム27を作成した。
【0160】
《静電容量、比誘電率、周波数及び表面粗さの評価・確認》
静電容量、比誘電率、周波数及び表面粗さは以下のようにして評価・確認した。
【0161】
〈静電容量〉
第1及び第2電極ローラーと同じ材質、同じ厚さの板上に別途それぞれの試料と同様にして誘電体を形成して、両面に電極を設けてHEWLETTPACKERD社製のlCRメーターHP4284Aにて温度20℃のときの静電容量を測定した。
【0162】
〈比誘電率〉
前記式(1)より、誘電体の厚さと静電容量とから算出した。
【0163】
〈周波数〉
オシロスコープ(MDO4000:テクトロにクス社製)を用いて測定した。
【0164】
〈表面粗さ〉
誘電体の表面粗さRaを測定することにより行った。表面粗さRaの測定は、JIS B0601−2001に基づき、表面粗さ測定装置(東京精密株式会社製、型式:サーフテストSJ−310)を用い、3点の算術平均粗さの平均値を求め、これを表面粗さRaとした。
【0165】
《ガスバリアーフィルムの評価》
〈水蒸気透過度〉
ガスバリアー性の評価は、水蒸気透過率(WVTR)を下記の装置及び方法で測定し、下記の方法に従っての3段階にランク付けをして評価した。
【0166】
[装置]
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
[原材料]
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(3〜5mmφ、粒状)
[水蒸気バリアー性評価用セルの作製]
真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、各ガスバリアーフィルム試料の、幅手の端を含む蒸着させたい部分(12mm×12mmを9か所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
【0167】
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で1000時間保存し、特開2005−283561号公報記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐食量からセル内に透過した水分量を計算して、得られたWVTRを下記基準で評価した。
【0168】
なお、バリアーフィルム面以外からの水蒸気の透過が無いことを確認するために、比較試料としてバリアーフィルム試料の代わりに、厚さ0.2mmの石英ガラス板に金属カルシウムを蒸着した試料を用いたセルで、同様に60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、1000時間経過後でも金属カルシウムの腐食が発生しないことを確認した。
◎:1×10−2g/(m・day)未満
○:1×10−2g/(m・day)以上1×10−1g/(m・day)未満
×:1×10−1g/(m・day)以上
〈密着性〉
密着性評価は以下の4段階で評価した。
【0169】
密着性を、基材搬送速度と搬送ローラー回転速度から計算される速度の差で代替評価した。
◎:基材の搬送速度と搬送ローラー回転速度から計算される速度差が、0.1%未満
○〜◎:基材の搬送速度と搬送ローラー回転速度から計算される速度差が、0.1%以上1.0%未満
○:基材の搬送速度と搬送ローラー回転速度から計算される速度差が、1.0%以上3.0%未満
×:基材の搬送速度と搬送ローラー回転速度から計算される速度差が、3.0%以上
なお、搬送速度はロータリーエンコーダーを用いて測定した。ローラー回転速度は、34、35の場所のローラー2本を測定してその平均値を用いた。
【0170】
【表1】
【0171】
表1に示されるように、両電極ローラーの静電容量、誘電体の比誘電率及びプラズマ放電の周波数が本発明の規定範囲を満たしているガスバリアーフィルム1〜21は、搬送ローラーとの密着性が良好で、優れたガスバリアー性を示すことが分かった。
【0172】
これに対して、両電極ローラーの静電容量、誘電体の比誘電率及びプラズマ放電の周波数が本発明の規定範囲を満たしていない、ガスバリアーフィルム21〜26は、ガスバリアー性が劣っていることが分かった。さらに、両電極ローラー上の誘電体の幅を基材の幅より、両端をそれぞれ、30mm短くしたガスバリアーフィルム27は、ガスバリアー性に劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明の成膜装置は、プラズマCVD法により、基材上に成膜をする成膜装置であって、緻密なガスバリアー層を形成することができるため、ガスバリアー性に優れたガスバリアーフィルムを製造することができる。
【符号の説明】
【0174】
1 ガスバリアーフィルム
2 基材
3 ガスバリアー層
31 成膜装置
32 送り出しローラー
33、34、35、36 搬送ローラー
37A、37B 誘電体
38A、38B 熱媒体
39 第1電極ローラー
40 第2電極ローラー
41 ガス供給管
42 制御部
43、44 磁場発生装置
45 巻取りローラー
51 プラズマ発生用電源
図1
【国際調査報告】