特表-16148144IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横浜ゴム株式会社の特許一覧
<>
  • 再表WO2016148144-ゴム組成物およびタイヤ 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年9月22日
【発行日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20171201BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20171201BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20171201BHJP
   C08C 19/22 20060101ALI20171201BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   C08L15/00
   C08L9/00
   C08K3/36
   C08C19/22
   B60C1/00 Z
   B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
【出願番号】特願2016-549810(P2016-549810)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-54381(P2015-54381)
(32)【優先日】2015年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮太
(72)【発明者】
【氏名】岡松 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】桐野 美昭
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC01X
4J002AC03X
4J002AC06X
4J002AC08X
4J002AC09X
4J002AC11W
4J002DJ016
4J002ER006
4J002ES006
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD140
4J002GN01
4J100AB02Q
4J100AS02P
4J100CA04
4J100CA31
4J100HA61
4J100HC59
4J100HE17
4J100HG31
4J100JA29
(57)【要約】
本発明は、加硫後の剛性、靭性および低発熱性に優れたゴム組成物、ならびに、そのゴム組成物を使用したタイヤを提供することを目的とする。本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムと、シリカとを含有し、上記ジエン系ゴムが共役ジエン重合体の二重結合に対してニトロン化合物を反応させることで得られる変性ポリマーを含み、上記ニトロン化合物がアセタール構造を有するニトロン化合物であり、上記ジエン系ゴム中の上記変性ポリマーの含有量が8〜100質量%であり、上記シリカの含有量が上記ジエン系ゴム100質量部に対して、25〜130質量部である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムと、シリカとを含有し、
前記ジエン系ゴムが、共役ジエン重合体の二重結合に対してニトロン化合物を反応させることで得られる変性ポリマーを含み、
前記ニトロン化合物が、アセタール構造を有するニトロン化合物であり、
前記ジエン系ゴム中の前記変性ポリマーの含有量が、8〜100質量%であり、
前記シリカの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、25〜130質量部である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記ニトロン化合物が、N−フェニル−α−(3,4−メチレンビスオキシフェニル)ニトロンである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記変性ポリマーの変性率が、0.02〜4.0mol%である、請求項1または2に記載のゴム組成物。ここで、変性率は、前記共役ジエン重合体が有する共役ジエンに由来する全ての二重結合のうち、前記ニトロン化合物によって変性された割合(mol%)を表す。
【請求項4】
前記共役ジエン重合体の二重結合に対して反応させる前記ニトロン化合物の量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて製造したタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ等に用いられるゴム組成物として、ニトロン基を有する化合物(ニトロン化合物)を変性剤として用いた変性ポリマーを含有するゴム組成物が知られている。
例えば、特許文献1の請求項1には、「変性ブタジエンゴムを5〜100重量%含むジエン系ゴム100重量部にシリカを10〜120重量部配合したゴム組成物であって、前記変性ブタジエンゴムが、シス含量が90%以上のブタジエンゴムを、窒素含有複素環を分子中に有するニトロン化合物で変性したものであることを特徴とするゴム組成物。」が開示されている。特許文献1には、特許文献1に記載のゴム組成物を用いることで発熱性が低減することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−32471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、環境問題などの観点から、燃費の向上が求められ、それに伴い、さらなる発熱性の低減が求められている。また、タイヤに対する耐久性の要求水準が高まるなか、ゴム組成物に対して、加硫後の剛性や靭性のさらなる向上が求められている。
このようななか、本発明者らが特許文献1に記載のゴム組成物について検討したところ、その低発熱性は昨今要求されるレベルを必ずしも満たすものではないこと明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、加硫後の剛性、靭性および低発熱性に優れたゴム組成物、ならびに、そのゴム組成物を使用したタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、アセタール構造を有するニトロン化合物を変性剤として使用することで上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) ジエン系ゴムと、シリカとを含有し、
上記ジエン系ゴムが、共役ジエン重合体の二重結合に対してニトロン化合物を反応させることで得られる変性ポリマーを含み、
上記ニトロン化合物が、アセタール構造を有するニトロン化合物であり、
上記ジエン系ゴム中の上記変性ポリマーの含有量が、8〜100質量%であり、
上記シリカの含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、25〜130質量部である、ゴム組成物。
(2) 上記ニトロン化合物が、N−フェニル−α−(3,4−メチレンビスオキシフェニル)ニトロンである、上記(1)に記載のゴム組成物。
(3) 上記変性ポリマーの変性率が、0.02〜4.0mol%である、上記(1)または(2)に記載のゴム組成物。ここで、変性率は、上記共役ジエン重合体が有する共役ジエンに由来する全ての二重結合のうち、上記ニトロン化合物によって変性された割合(mol%)を表す。
(4) 上記共役ジエン重合体の二重結合に対して反応させる上記ニトロン化合物の量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のゴム組成物。
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載のゴム組成物を用いて製造したタイヤ。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、加硫後の剛性、靭性および低発熱性に優れたゴム組成物、ならびに、そのゴム組成物を使用したタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明のゴム組成物、および、本発明のゴム組成物を使用したタイヤについて説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物(以下、本発明の組成物とも言う)は、ジエン系ゴムと、シリカとを含有する。ここで、上記ジエン系ゴムは共役ジエン重合体の二重結合に対してニトロン化合物を反応させることで得られる変性ポリマーを含み、上記ニトロン化合物はアセタール構造を有するニトロン化合物であり、上記ジエン系ゴム中の上記変性ポリマーの含有量は8〜100質量%であり、上記シリカの含有量は上記ジエン系ゴム100質量部に対して25〜130質量部である。
本発明の組成物はこのような構成をとるため、加硫後の剛性、靭性および低発熱性に優れるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
【0012】
本発明の組成物は、上述のとおり、共役ジエン重合体の二重結合に対してニトロン化合物を反応させることで得られる変性ポリマーを含有する。そのため、変性ポリマー中のニトロン残基(変性後のニトロン基)が組成物中のシリカと相互作用し、シリカとポリマーとの緻密かつ均質なネットワークが形成され、結果として、剛性および靭性が向上するものと考えられる。また、上述のとおり、均質な構造が形成されるため、エネルギーロスが低下し、低発熱性が向上するものと考えられる。
ここで、ニトロン化合物とシリカとの相互作用が強すぎると、剛性と靭性のバランスが低下してしまうところ、本発明では上記ニトロン化合物としてアセタール構造を有するニトロン化合物を使用するため、ニトロン化合物中の上記アセタール構造によって相互作用が適度な大きさに調整され、結果として、剛性と靭性のバランスが担保されているものと考えられる。
【0013】
〔ジエン系ゴム〕
本発明の組成物に含有されるジエン系ゴムは、共役ジエン重合体の二重結合に対してニトロン化合物を反応させることで得られる変性ポリマーを含む。ここで、上記ニトロン化合物はアセタール構造を有する。また、上記ジエン系ゴム中の上記変性ポリマーの含有量は8〜100質量%である。
なお、上記ジエン系ゴムは上記変性ポリマー以外のゴム成分を含んでいてもよい。そのようなゴム成分としては特に制限されないが、天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴム(例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR))、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。なかでも、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)が好ましい。
【0014】
<変性ポリマー>
変性ポリマーは、共役ジエン重合体の二重結合に対して、アセタール構造を有するニトロン化合物(以下、「アセタールニトロン」とも言う)を反応させることで得られる変性ポリマーである。
【0015】
(共役ジエン重合体)
変性ポリマーの製造に使用される共役ジエン重合体としては特に制限されず、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴム(例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR))、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。なかでも、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)が好ましい。すなわち、変性ポリマーは、スチレンブタジエンゴム(SBR)またはブタジエンゴム(BR)の二重結合に対してニトロン化合物を反応させることで得られる変性ポリマーであるのが好ましい。
【0016】
(ニトロン化合物)
変性ポリマーの製造に使用されるニトロン化合物は、アセタール構造を有するニトロン化合物(アセタールニトロン)であれば特に制限されない。ここで、ニトロン化合物とは、下記式(1)で表されるニトロン基を有する化合物を指す。
【0017】
【化1】
【0018】
上記式(1)中、*は結合位置を表す。
【0019】
アセタールニトロンは、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0020】
【化2】
【0021】
上記式(2)中、XおよびYは、それぞれ独立に、アセタール構造を有していてもよい、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または、芳香族複素環基を表す。ただし、XおよびYのうち少なくとも一方は、アセタール構造を有する(好ましくは、置換基としてアセタール構造を有する)。
上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基などが挙げられ、なかでも、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、なかでも、炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3〜6のシクロアルキル基がより好ましい。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基などが挙げられ、なかでも、炭素数2〜18のアルケニル基が好ましく、炭素数2〜6のアルケニル基がより好ましい。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基などが挙げられ、なかでも、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基がより好ましく、フェニル基、ナフチル基がさらに好ましい。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基などが挙げられ、なかでも、炭素数7〜13のアラルキル基が好ましく、炭素数7〜11のアラルキル基がより好ましく、ベンジル基がさらに好ましい。
上記芳香族複素環基としては、例えば、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基(イミダゾール基)、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピリジル基(ピリジン基)、フラン基、チオフェン基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基等が挙げられる。
【0022】
上記アセタール構造は、下記式(A)で表される構造を表す。
【0023】
【化3】
【0024】
上記式(A)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基を表す。
炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、またはこれらを組み合わせた基などが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては、直鎖状または分岐状のアルキル基(特に、炭素数1〜30)、直鎖状または分岐状のアルケニル基(特に、炭素数2〜30)、直鎖状または分岐状のアルキニル基(特に、炭素数2〜30)などが挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などの炭素数6〜18の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0025】
なお、「アセタール構造を有する」とは、上記式(A)で表される構造からn個(nは1以上の整数)の水素原子を取り除くことで得られるn価の基を有することを意図する。
【0026】
アセタールニトロンの好適な態様としては、下記式(A1)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
【化4】
【0028】
上記式(A1)中、R〜RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基を表す。R〜RおよびRの具体例および好適な態様は、上述した式(A)中のR〜Rと同じである。Rは、Lが結合するベンゼン環と結合して、環を形成してもよい。Lは、単結合または2価の炭化水素基を表す。2価の炭化水素基としては、例えば、上述した炭化水素基から水素原子を1つ取り除くことで得られる2価の炭化水素基が挙げられる。
【0029】
上記式(A1)で表される化合物は、下記式(A2)で表される化合物であることが好ましい。なお、下記式(A2)で表される化合物は、上記式(A1)中のRが、Lが結合するベンゼン環と結合して環を形成した態様に相当する。
【0030】
【化5】
【0031】
上記式(A2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基を表す。R〜Rの具体例および好適な態様は、上述した式(A)中のR〜Rと同じである。Lは、単結合または2価の炭化水素基を表す。Lの具体例および好適な態様は、上述した式(A1)中のLと同じである。複数あるLは同一であっても、異なってもよい。
【0032】
上記式(A2)で表される化合物は、下記式(A3)で表される化合物であることが好ましい。なお、下記式(A3)で表される化合物は、上記式(A2)中のLが、いずれも単結合であり、かつ、ベンゼン環の3位と4位に結合した態様に相当する。
【0033】
【化6】
【0034】
上記式(A3)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基を表す。R〜Rの具体例および好適な態様は、上述した式(A)中のR〜Rと同じである。
【0035】
上記式(A3)で表される化合物としては、例えば、N−フェニル−α−(3,4−メチレンビスオキシフェニル)ニトロン(式(A3)中のRおよびRが水素原子の態様)が挙げられる。
【0036】
アセタールニトロンの合成方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ヒドロキシアミノ基(−NHOH)を有する化合物と、アルデヒド基(−CHO)およびアセタール構造を有する化合物(例えば、後述する式(b)で表されるピペロナール)とを、ヒドロキシアミノ基とアルデヒド基とのモル比(−NHOH/−CHO)が1.0〜1.5となる量で、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン等)下で、室温で1〜24時間撹拌することにより、両基が反応し、アセタール構造とニトロン基とを有する化合物(アセタールニトロン)を与える。
【0037】
(変性ポリマーの製造方法)
共役ジエン重合体の二重結合に対してアセタールニトロンを反応させることで変性ポリマーを製造する方法は特に制限されないが、例えば、上述した共役ジエン重合体と上述したニトロン化合物とを、100〜200℃で1〜30分間混合する方法が挙げられる。
このとき、下記式(4−1)または下記式(4−2)に示すように、上記共役ジエン重合体が有する共役ジエンに由来する二重結合とアセタールニトロンが有するニトロン基との間で、環化付加反応が起こり、五員環を与える。なお、下記式(4−1)は1,4−結合とニトロン基との反応を表し、下記式(4−2)は1,2−ビニル結合とニトロン基との反応を表す。また、式(4−1)および(4−2)はブタジエンが1,3−ブタジエンの場合の反応を表すものであるが、ブタジエンが1,3−ブタジエン以外の場合も同様の反応により五員環を与える。
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
上記共役ジエン重合体の二重結合に対して反応させるアセタールニトロンの量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.3〜5質量部であるのがより好ましく、1〜3質量部であるのがさらに好ましい。
【0041】
(変性率)
変性ポリマーの変性率は特に制限されないが、0.02〜4.0mol%であることが好ましく、0.10〜2.0mol%であることがより好ましい。
ここで、変性率とは、上記共役ジエン重合体が有する共役ジエン(共役ジエンジエン単位)に由来する全ての二重結合のうち、ニトロン化合物によって変性された割合(mol%)を表し、例えば共役ジエンがブタジエン(1,3−ブタジエン)であれば、ニトロン化合物による変性によって上記式(4−1)または上記式(4−2)の構造が形成された割合(mol%)を表す。変性率は、例えば、上記共役ジエン重合体および変性ポリマー(すなわち、変性前後のポリマー)のNMR測定を行うことで求めることができる。
なお、本明細書において、変性率が100mol%の変性ポリマーもジエン系ゴムに該当するものとする。
【0042】
ジエン系ゴム中の変性ポリマーの含有量は、8〜100質量%である。なかでも、20〜80質量%であることがより好ましく、そのなかでも、30〜50質量であることがより好ましい。
〔シリカ〕
本発明の組成物はシリカを含有する。
上記シリカは特に制限されないが、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
シリカの具体例としては、湿式シリカ、乾式シリカ、ヒュームドシリカ、珪藻土などが挙げられる。なかでも、湿式シリカが好ましい。上記シリカは、1種のシリカを単独で用いても、2種以上のシリカを併用してもよい。
【0043】
本発明の組成物において、シリカの含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、25〜130質量部である。なかでも、40〜100質量部であることがより好ましい。
【0044】
〔任意成分〕
本発明の組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに添加剤を含有することができる。
上記添加剤としては、例えば、シリカ以外の充填剤(例えば、カーボンブラック)、シランカップリング剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、接着用樹脂、素練り促進剤、老化防止剤、ワックス、加工助剤、アロマオイル、液状ポリマー、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂、加硫剤(例えば、硫黄)、加硫促進剤などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤が挙げられる。
【0045】
〔ゴム組成物の製造方法〕
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。本発明の組成物が硫黄または加硫促進剤を含有する場合は、硫黄および加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは80〜140℃)で混合し、冷却してから、硫黄または加硫促進剤を混合するのが好ましい。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0046】
〔用途〕
本発明の組成物はタイヤ(好ましくは、キャップトレッド部)に好適に用いられる。
【0047】
[タイヤ]
本発明のタイヤは、上述した本発明の組成物を使用したタイヤである。なかでも、本発明の組成物をタイヤトレッド部(キャップトレッド部)に使用した空気入りタイヤであることが好ましい。
図1に、本発明のタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示すが、本発明のタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
【0048】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド部3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
なお、タイヤトレッド部3は上述した本発明の組成物により形成されている。
【0049】
本発明のタイヤは、例えば、従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
<アセタールニトロンの合成>
300mLナスフラスコに、下記式(b)で表されるピペロナール(30.0g)およびエタノール(20mL)を入れ、ここに、下記式(a)で表されるフェニルヒドロキシアミン(21.8g)をエタノール(70mL)に溶かしたものを加え、室温で22時間撹拌した。撹拌終了後、エタノールからの再結晶により、下記式(c)で表されるニトロン化合物(アセタールニトロン)を白色の結晶として得た(42.9g)。収率は89%であった。
【0052】
【化9】
【0053】
<ジフェニルニトロンの合成>
300mLナスフラスコに、下記式(6)で表されるベンズアルデヒド(42.45g)およびエタノール(10mL)を入れ、ここに、下記式(5)で表されるフェニルヒドロキシアミン(43.65g)をエタノール(70mL)に溶かしたものを加え、室温で22時間撹拌した。撹拌終了後、エタノールからの再結晶により、下記式(7)で表されるアセタール構造を有さないニトロン化合物(ジフェニルニトロン)を白色の結晶として得た(65.40g)。収率は83%であった。
【0054】
【化10】
【0055】
<ピリジルニトロンの合成>
2Lナスフラスコに、40℃に温めたメタノール(900mL)を入れ、ここに、下記式(b−2)で表される2−ピリジンカルボキシアルデヒド(21.4g)を加えて溶かした。この溶液に、下記式(a−2)で表されるフェニルヒドロキシアミン(21.8g)をメタノール(100mL)に溶かしたものを加え、室温で19時間撹拌した。撹拌終了後、メタノールからの再結晶により、下記式(c−2)で表されるニトロン化合物(ピリジルニトロン)を得た(39.0g)。収率は90%であった。
【0056】
【化11】
【0057】
<変性ポリマー(変性ポリマー1)の合成>
120℃のバンバリーミキサーにSBR(日本ゼオン社製Nipol1502)を投入して2分間素練りを行った。その後、上述のとおり合成したアセタールニトロンをSBR100質量部に対して1.22質量部投入し、160℃で5分間混合することで、SBRをアセタールニトロンによって変性した。得られた変性ポリマーを変性ポリマー1とする。
得られた変性ポリマー1についてNMR測定を行い、変性率を求めたところ、変性ポリマー1の変性率は0.32mol%であった。
【0058】
<変性ポリマー(変性ポリマー2)の合成>
アセタールニトロンを1.22質量部投入する代わりに、3.65質量部投入する以外は変性ポリマー1と同様の手順に従って、SBRをアセタールニトロンによって変性した。得られた変性ポリマーを変性ポリマー2とする。
得られた変性ポリマー2についてNMR測定を行い、変性率を求めたところ、変性ポリマー2の変性率は0.96mol%であった。
【0059】
<比較変性ポリマー1の合成>
アセタールニトロンの代わりに上述のとおり合成したジフェニルニトロンを3.65質量部投入する以外は変性ポリマー1と同様の手順に従って、SBRをジフェニルニトロンによって変性した。得られた、ジフェニルニトロンによって変性されたSBRを比較変性ポリマー1とする。
得られた比較変性ポリマー1についてNMR測定を行い、変性率を求めたところ、比較変性ポリマー1の変性率は1.18mol%であった。
【0060】
<比較変性ポリマー2の合成>
アセタールニトロンの代わりに上述のとおり合成したピリジルニトロンを3.65質量部投入する以外は変性ポリマー1と同様の手順に従って、SBRをピリジルニトロンによって変性した。得られた、ピリジルニトロンによって変性されたSBRを比較変性ポリマー2とする。
得られた比較変性ポリマー2についてNMR測定を行い、変性率を求めたところ、比較変性ポリマー2の変性率は0.81mol%であった。
【0061】
<ゴム組成物の調製>
下記表1に示される成分を、下記表1に示される割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記表1に示される成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、80℃のバンバリーミキサーで5分間混合した。次に、ロールを用いて、硫黄および加硫促進剤を混合し、ゴム組成物を得た。
【0062】
<加硫ゴムシートの作製>
得られた各ゴム組成物(未加硫)を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、160℃で15分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
【0063】
<評価>
(モジュラス)
作製した加硫ゴムシートを厚さ2mmのダンベル状(ダンベル状3号形)に切り出して試験片とした。
得られた試験片について、JIS K6251:2010に準じ、100%モジュラス(100%伸長時の応力)[MPa]を測定した。結果を表1に示す(M100)。結果は、比較例1を100とする指数で表した。M100が大きい方が剛性に優れる。
【0064】
(破断伸び)
作製した加硫ゴムシートを厚さ2mmのダンベル状(ダンベル状3号形)に切り出して試験片とした。
得られた試験片について、JIS K6251:2010に準じ、温度20℃、引張り速度500mm/分の条件で破断伸び(=破断時の伸び率)を測定した。結果を表1に示す(破断伸び)。結果は、比較例1を100とする指数で表した。破断伸びが大きい方が靭性に優れる。
【0065】
(低発熱性)
作製した加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)を用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、温度60℃の損失正接tanδ(60℃)を測定した。tanδ(60℃)の逆数を表1に示す(低発熱性)。なお、比較例1のtanδ(60℃)の逆数を100とする指数で表した。値が大きいほど、低発熱性に優れる。
【0066】
表1中、ニトロン量換算値は、ジエン系ゴム100質量部に対する、変性ポリマーまたは比較変性ポリマーの合成に使用したニトロン化合物の質量部を表す。
また、表1中、変性率は、上述した変性ポリマーの変性率を表す。
【0067】
【表1】
【0068】
上記表1に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR:Nipol 1502(日本ゼオン社製)
・BR:Nipol BR1220(日本ゼオン社製)
・変性ポリマー1:上述のとおり合成した変性ポリマー1
・変性ポリマー2:上述のとおり合成した変性ポリマー2
・比較変性ポリマー1:上述のとおり合成した比較変性ポリマー1
・比較変性ポリマー2:上述のとおり合成した比較変性ポリマー2
・カーボンブラック:ショウブラックN339(キャボットジャパン社製)
・シリカ:ZEOSIL 165GR(ロディアシリカコリア社製)
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(日油社製)
・加工助剤:アクチプラストST(Rhein Chemie社製)
・老化防止剤:SANTOFLEX 6PPD(Soltia Europe社製)
・ワックス:サンノック(大内新興化学工業社製)
・カップリング剤:Si69(エボニック・デグサ社製)
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・亜鉛華:亜鉛華3号(正同化学社製)
・硫黄:油処理硫黄(軽井沢精錬所社製)
・加硫促進剤CZ:ノクセラー CZ−G(大内振興化学工業社製)
・加硫促進剤DPG:ソクシノール D−G:(住友化学社製)
【0069】
表1から分かるように、共役ジエン重合体の二重結合に対してアセタールニトロンを反応させることで得られる変性ポリマーを含有する実施例1〜2は、優れた剛性、靭性および低発熱性を示した。なかでも、変性ポリマーの変性率が0.50mol%以上である実施例2は、より優れた剛性、靭性および低発熱性を示した。
【0070】
一方、共役ジエン重合体の二重結合に対してアセタールニトロンを反応させることで得られる変性ポリマーを含有しない比較例1〜3は、剛性、靭性および低発熱性のうち少なくともいずれかが不十分であった。
【符号の説明】
【0071】
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション
図1
【国際調査報告】