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再表2016-152327無段変速機の制御装置、及びその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年9月29日
【発行日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】無段変速機の制御装置、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20171201BHJP
   F16H 61/66 20060101ALI20171201BHJP
   F16H 61/68 20060101ALI20171201BHJP
   F16H 59/18 20060101ALI20171201BHJP
   F16H 59/44 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   F16H61/02
   F16H61/66
   F16H61/68
   F16H59/18
   F16H59/44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
【出願番号】特願2017-507600(P2017-507600)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-64804(P2015-64804)
(32)【優先日】2015年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古口 幸司
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 翔
(72)【発明者】
【氏名】菱田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】小松 真琴
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓市郎
(72)【発明者】
【氏名】イム ジョングン
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛康
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA02
3J552MA07
3J552MA25
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA54
3J552PA59
3J552RA26
3J552RA28
3J552SA03
3J552SA07
3J552SA36
3J552SB22
3J552SB33
3J552TA11
3J552VB01W
3J552VD08W
(57)【要約】
副変速機構を1速から2速へ切り替える際のモード切替変速線として、Lowブレーキが滑り始める油圧の学習、及びHighクラッチがトルク伝達を開始する油圧の学習を優先する第1モード切替変速線、または第1モード切替変速線よりもLow側の変速線であり、エンジンの燃費性能を優先する第2モード変速線を選択し、選択したモード切替変速線に基づいて、副変速機構を第1速から第2速へ切り替える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速比を無段階に変化可能な無段変速機構と、
複数の摩擦締結要素を締結、または解放することで、第1変速段と、前記第1変速段よりも変速比が小さい第2変速段とを選択可能な副変速機構とを有する無段変速機を制御する無段変速機の制御装置であって、
前記第1変速段から前記第2変速段へ切り替える際の変速線として、前記第1変速段で締結される摩擦締結要素が滑り始める油圧の学習、及び前記第2変速段で締結される摩擦締結要素がトルク伝達を開始する油圧の学習を優先する第1の変速線、または前記第1の変速線よりもLow側の変速線であり、駆動源の燃費性能を優先する第2の変速線を選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された前記変速線に基づいて、前記副変速機構を前記第1変速段から前記第2変速段へ切り替える切替手段と、
を備える無段変速機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無段変速機の制御装置であって、
前記選択手段は、車速とアクセルペダルの戻し速度とに基づいて前記第1の変速線、または前記第2の変速線を選択する、
無段変速機の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の無段変速機の制御装置であって、
前記選択手段は、前記車速が前記第2の変速線における最小車速よりも小さい所定車速よりも小さく、かつ前記アクセルペダルの戻し速度が所定速度よりも大きい場合に、前記第2の変速線を選択する、
無段変速機の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の無段変速機の制御装置であって、
前記第1変速段において締結される摩擦締結要素が滑り始める油圧を学習する第1の学習と、前記第2変速段において締結される摩擦締結要素がトルク伝達を開始する油圧を学習する第2の学習とを行う学習手段を備え、
前記学習手段は、前記第1の学習を行った後に前記第2の学習を行う、
無段変速機の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の無段変速機の制御装置であって、
前記学習手段は、前記第2の変速線が選択されている場合には、前記第1の学習、及び前記第2の学習を行わない、
無段変速機の制御装置。
【請求項6】
変速比を無段階に変化可能な無段変速機構と、
複数の摩擦締結要素を締結、または解放することで、第1変速段と、前記第1変速段よりも変速比が小さい第2変速段とを選択可能な副変速機構とを有する無段変速機を制御する無段変速機の制御方法であって、
前記第1変速段から前記第2変速段へ切り替える際の変速線として、前記第1変速段で締結される摩擦締結要素が滑り始める油圧の学習、及び前記第2変速段で締結される摩擦締結要素がトルク伝達を開始する油圧の学習を優先する第1の変速線、または前記第1の変速線よりもLow側の変速線であり、駆動源の燃費性能を優先する第2の変速線を選択し、
選択した前記変速線に基づいて、前記副変速機構を前記第1変速段から前記第2変速段へ切り替える、
無段変速機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無段変速機の制御装置、及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無段変速機構と副変速機構とを有する車両において、副変速機構の変速段を1速から1速よりも変速比が小さい2速へ切り替えるモード切替変速線を、副変速機構が1速であり、かつ無段変速機構の変速比が最Highである変速線と一致するように設けている(JP2010−230116A参照)。無段変速機構と副変速機構との全体の変速比であるスルー変速比がモード切替変速線を跨いで変化することで、副変速機構の変速段は1速から2速に変更される。
【発明の概要】
【0003】
このような車両に対して、モード切替変速線をLow側に設定し、車両の発進後、副変速機構の変速段を早いタイミングで2速とすることで、燃費を向上させることができる。例えば走行中にエンジンを停止させるコーストストップ制御は、副変速機構が2速となっていることが制御開始条件となっている。そのため、モード切替変速線をLow側にすることで、コーストストップ制御が実行されるシーンを多くし、燃費を向上させることができる。
【0004】
ところで、無段変速機構と副変速機構とを有する車両では、副変速機構の変速段を1速から2速に切り替える際に、1速において締結されている摩擦締結要素で滑りを開始する油圧と、2速において締結される摩擦締結要素でトルク伝達を開始する油圧とを学習することが知られている。このような学習は、スルー変速比がモード切替変速線を跨いで変化するよりも前に開始される。
【0005】
モード切替変速線をLow側に変更すると上記学習も早いタイミング、例えばアクセルペダル開度が小さく、かつ車速が低い状態で開始される。しかし、アクセペダル開度が小さく、車速が低い場合には、エンジントルクが安定しておらず、副変速機構に入力するトルクが安定しない。このような状態で、上記学習を行うと1速において締結されている摩擦締結要素で滑りを開始する油圧や、2速において締結される摩擦締結要素でトルク伝達を開始する油圧を正確に学習することができない。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みて発明されたもので、燃費を向上させるとともに、上記する油圧の学習を正確に行うことを目的とする。
【0007】
本発明のある態様に係る無段変速機の制御装置は、変速比を無段階に変化可能な無段変速機構と、複数の摩擦締結要素を締結、または解放することで、第1変速段と、第1変速段よりも変速比が小さい第2変速段とを選択可能な副変速機構とを有する無段変速機を制御する無段変速機の制御装置であって、第1変速段から第2変速段へ切り替える際の変速線として、第1変速段で締結される摩擦締結要素が滑り始める油圧の学習、及び第2変速段で締結される摩擦締結要素がトルク伝達を開始する油圧の学習を優先する第1の変速線、または第1の変速線よりもLow側の変速線であり、駆動源の燃費性能を優先する第2の変速線を選択する選択部と、選択部によって選択された変速線に基づいて、副変速機構を第1変速段から第2変速段へ切り替える切替部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様に係る無段変速機の制御方法は、変速比を無段階に変化可能な無段変速機構と、複数の摩擦締結要素を締結、または解放することで、第1変速段と、第1変速段よりも変速比が小さい第2変速段とを選択可能な副変速機構とを有する無段変速機を制御する無段変速機の制御方法であって、第1変速段から第2変速段へ切り替える際の変速線として、第1変速段で締結される摩擦締結要素が滑り始める油圧の学習、及び第2変速段で締結される摩擦締結要素がトルク伝達を開始する油圧の学習を優先する第1の変速線、または第1の変速線よりもLow側の変速線であり、駆動源の燃費性能を優先する第2の変速線を選択し、選択された変速線に基づいて、副変速機構を第1変速段から第2変速段へ切り替える。
【0009】
これら態様によると、第1変速段から第2変速段へ切り替える変速線として、学習を優先する第1の変速線、または燃費性能を優先する第2の変速線を選択することで、燃費を向上させるとともに、学習を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、車両の概略構成図である。
図2図2は、コントローラの概略構成図である。
図3図3は、記憶装置に格納された変速マップである。
図4図4は、副変速機構の変速段が1速から2速に変更される場合の油圧変化などを示すタイムチャートである。
図5図5は、図3の一部を拡大したマップである。
図6図6は、副変速機構における1−2変速制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、ある変速機構の「変速比」は、当該変速機構の入力回転速度を当該変速機構の出力回転速度で割って得られる値である。また、「最Low変速比」は当該変速機構の変速比が車両の発進時などに使用される最大変速比である。「最High変速比」は当該変速機構の最小変速比である。
【0012】
図1は本実施形態に係る車両の概略構成図である。この車両は駆動源としてエンジン1を備え、エンジン1の出力回転は、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ2、第1ギヤ列3、無段変速機(以下、単に「変速機4」という。)、第2ギヤ列5、差動装置6を介して駆動輪7へと伝達される。
【0013】
変速機4には、エンジン1の回転が入力されエンジン1の動力の一部を利用して駆動されるメカオイルポンプ10mと、バッテリ13から電力供給を受けて駆動される電動オイルポンプ10eとが設けられている。また、変速機4には、メカオイルポンプ10mあるいは電動オイルポンプ10eから吐出される油によって発生する油圧を調圧して変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11が設けられている。
【0014】
変速機4は、ベルト式無段変速機構(以下、「バリエータ20」という。)と、バリエータ20に直列に設けられる副変速機構30とを備える。「直列に設けられる」とはエンジン1から駆動輪7に至るまでの動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機構30が直列に設けられるという意味である。副変速機構30は、この例のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギヤ列)を介して接続されていてもよい。あるいは、副変速機構30はバリエータ20の前段(入力軸側)に接続されていてもよい。
【0015】
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21、22の間に掛け回されるVベルト23とを備える。バリエータ20は、プライマリプーリ21、セカンダリプーリ22に油圧を給排することで、変速比を無段階に変化させる。
【0016】
副変速機構30は前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機構30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦締結要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)とを備える。各摩擦締結要素32〜34への供給油圧を調整し、各摩擦締結要素32〜34の締結・解放状態を変更すると、副変速機構30の変速段が変更される。以下の説明では、副変速機構30の変速段が1速である場合に「変速機4が低速モードである」と表現し、2速である場合に「変速機4が高速モードである」と表現する。運転者によりアクセルペダルが踏み込まれた状態における副変速機構30の1速から2速への変速段の切り替えは、準備フェーズ、トルクフェーズ、イナーシャフェーズ、終了フェーズの順に進行する。
【0017】
準備フェーズでは、Highクラッチ33への油圧のプリチャージを行い、Highクラッチ33を締結直前の状態で待機させる。トルクフェーズでは、Lowブレーキ32への供給油圧を低下させるとともにHighクラッチ33への供給油圧を上昇させ、トルクの伝達を受け持つ摩擦締結要素をLowブレーキ32からHighクラッチ33へと移行させる。イナーシャフェーズでは、変速比が変速前変速段の変速比から変速後変速段の変速比まで変化する。終了フェーズでは、Lowブレーキ32への供給油圧をゼロとしてLowブレーキ32を完全解放させるとともにHighクラッチ33への供給油圧を上昇させてHighクラッチ33を完全締結させる。
【0018】
コントローラ12は、エンジン1および変速機4を統合的に制御するコントローラであり、図2に示すように、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125とから構成される。
【0019】
入力インターフェース123には、アクセルペダルの操作量であるアクセルペダル開度APOを検出するアクセルペダル開度センサ41の出力信号、変速機4の入力回転速度(=プライマリプーリ21の回転速度、以下、「プライマリ回転速度Npri」という。)を検出する回転速度センサ42の出力信号、変速機4の出力回転速度(=セカンダリプーリ22の回転速度、以下、「セカンダリ回転速度Nsec」という。)を検出する回転速度センサ43の出力信号、車速VSPを検出する車速センサ44の出力信号等が入力される。
【0020】
記憶装置122には、エンジン1の制御プログラム、変速機4の変速制御プログラム、これらプログラムで用いられる各種マップ・テーブルが格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されているプログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して、燃料噴射量信号、点火時期信号、スロットル開度信号、変速制御信号、電動オイルポンプ10eの駆動信号などを生成し、生成した信号を出力インターフェース124を介してエンジン1、油圧制御回路11、電動オイルポンプ10eのモータドライバに出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値、その演算結果は記憶装置122に適宜格納される。
【0021】
油圧制御回路11は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路11は、コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り替えるとともにメカオイルポンプ10mまたは電動オイルポンプ10eから吐出された油で発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを変速機4の各部位に供給する。これにより、バリエータ20の変速比、副変速機構30の変速段が変更され、変速機4の変速が行われる。
【0022】
図3は記憶装置122に格納される変速マップの一例を示している。コントローラ12は、この変速マップに基づき、車両の運転状態(この実施形態では車速VSP、プライマリ回転速度Npri、アクセルペダル開度APO)に応じて、バリエータ20、副変速機構30を制御する。
【0023】
この変速マップでは、変速機4の動作点が車速VSPとプライマリ回転速度Npriとにより定義される。変速機4の動作点と変速マップ左下隅の零点を結ぶ線の傾き(車速VSPを示す横軸からの角度)が変速機4の変速比(バリエータ20の変速比に副変速機構30の変速比を掛けて得られる全体の変速比、以下、「スルー変速比」という。)に対応する。この変速マップには、従来のベルト式無段変速機の変速マップと同様に、アクセルペダル開度APO毎に変速線が設定されており、変速機4の変速はアクセルペダル開度APOに応じて選択される変速線に従って行われる。なお、図3には簡単のため、全負荷線(アクセルペダル開度APO=8/8の場合の変速線)、パーシャル線(アクセルペダル開度APO=4/8の場合の変速線)、コースト線(アクセルペダル開度APO=0/8の場合の変速線)のみが示されている。
【0024】
変速機4が低速モードの場合は、変速機4はバリエータ20の変速比を最Low変速比にして得られる低速モード最Low線とバリエータ20の変速比を最High変速比にして得られる低速モード最High線の間で変速することができる。この場合、変速機4の動作点はA領域とB領域内を移動する。一方、変速機4が高速モードの場合は、変速機4はバリエータ20の変速比を最Low変速比にして得られる高速モード最Low線とバリエータ20の変速比を最High変速比にして得られる高速モード最High線の間で変速することができる。この場合、変速機4の動作点はB領域とC領域内を移動する。
【0025】
副変速機構30の各変速段の変速比は、低速モード最High線に対応する変速比(低速モード最High変速比)が高速モード最Low線に対応する変速比(高速モード最Low変速比)よりも小さくなるように設定される。これにより、低速モードでとりうる変速機4のスルー変速比の範囲(図中、「低速モードレシオ範囲」)と高速モードでとりうる変速機4のスルー変速比の範囲(図中、「高速モードレシオ範囲」)とが部分的に重複し、変速機4の動作点が高速モード最Low線と低速モード最High線で挟まれるB領域にある場合は、変速機4は低速モード、高速モードのいずれのモードも選択可能になっている。
【0026】
本実施形態は、車両の運転状態に応じて変速機4の変速を行うモード切替変速線として第1モード切替変速線(第1の変速線)、または第2モード切替変速線(第2の変速線)を選択可能となっている。
【0027】
第1モード切替変速線は車速VSPが第1所定車速VSP1以上となる領域において、低速モード最High線上に重なるように設定されている。第1モード切替変速線をこのように設定するのは、バリエータ20の変速比が小さいほど副変速機構30への入力トルクが小さくなり、副変速機構30で変速段を切り替える際の変速ショックを抑えられるからである。
【0028】
第2モード切替変速線は、第1モード切替変速線よりもLow側に設定されている。第2モード切替変速線をこのように設定するのは、例えば副変速機構30の変速段が2速になっていることを条件に開始されるコーストストップ制御を実行し易くするためである。コーストストップ制御は、車両走行中にエンジン1を自動停止させる制御である。コーストストップ制御を実行することで、エンジン1への燃料噴射を少なくし、燃費を向上させることができる。また、走行中にアクセルペダルの踏み込みがなくなり、変速機4が低速モードから高速モードへ変更された場合には、エンジン回転速度の低下を防ぐためにフューエルカットが禁止されている。これに対して、副変速機構30の変速段を早い段階で2速にすることで、走行中にアクセルペダルの踏み込みがなくなった場合に、フェールカットが禁止されることを抑制し、燃費を向上させることができる。
【0029】
変速機4の動作点がモード切替変速線を跨いで変化した場合は、コントローラ12は以下に説明する協調変速を行い、高速モード−低速モード間の切り替えを行う。
【0030】
協調変速では、コントローラ12は、副変速機構30の変速を行うとともに、バリエータ20の変速比を副変速機構30の変速比が変化する方向と逆の方向に変更する。この時、副変速機構30の変速比が実際に変化するイナーシャフェーズとバリエータ20の変速比が変化する期間を同期させる。バリエータ20の変速比を副変速機構30の変速比変化と逆の方向に変化させるのは、実スルー変速比に段差が生じることによる入力回転の変化が運転者に違和感を与えないようにするためである。
【0031】
具体的には、変速機4の動作点がモード切替変速線をLow側からHigh側に跨いで変化した場合は、コントローラ12は、副変速機構30の変速段を1速から2速に変更(1−2変速)するとともに、バリエータ20の変速比をLow側に変更する。
【0032】
逆に、変速機4の動作点がモード切替変速線をHigh側からLow側に跨いで変化した場合は、コントローラ12は、副変速機構30の変速段を2速から1速に変更(2−1変速)するとともに、バリエータ20の変速比をHigh側に変更する。
【0033】
本実施形態では、第1モード切替変速線に基づいて副変速機構30の変速段を1速から2速に変更する際に、Lowブレーキ32で滑りを開始する油圧、及びHighクラッチ33でトルク伝達を開始する油圧を学習している。これは、Lowブレーキ32で滑りを開始する油圧、Highクラッチ33でトルク伝達を開始する油圧が経年劣化などによって変化するからである。学習を行わない場合には、変速段を切り替える際に発生するショックが大きくなったり、バリエータ20のトルク容量よりも大きいトルクがバリエータ20に入力されることによりバリエータ20でベルト滑りが発生したりするおそれがある。これらを防ぐために、Lowブレーキ32で滑りを開始する油圧、及びHighクラッチ33でトルク伝達を開始する油圧の学習を行っている。
【0034】
この学習は、変速機4の動作点が第1モード切替変速線をLow側からHigh側に跨ぐ前に開始される。学習について図4を用いて説明する。図4は、副変速機構30の変速段が1速から2速に変更される場合の油圧変化などを示すタイムチャートであり、アクセルペダル開度APO、及び車速VSPは一定である。ここでは、時間t1において変速機4の動作点が第1モード切替変速線をLow側からHigh側に跨いで変化している。
【0035】
Lowブレーキ32で滑りを開始する油圧の学習は、時間t1よりも前の時間t01に開始され、Lowブレーキ32の指示圧Pbiを徐々に低下させる。これにより、Lowブレーキ32の実圧Pbaが徐々に低下する。締結時のLowブレーキ32の油圧は、副変速機構30に入力するトルクに対して滑りが発生しないように安全率を考慮して設定されている。そのため、Lowブレーキ32の指示圧Pbiの低下を開始しても、Lowブレーキ32で直ぐに滑りが発生するわけではない。図4においては、Lowブレーキ32の指示圧Pbiを実線で示し、Lowブレーキ32の実圧Pbaを破線で示す。
【0036】
時間t02において、セカンダリ回転速度Nsecが増加すると、Lowブレーキ32の実圧Pbaの低下により、Lowブレーキ32で滑りが発生していると判定される。この時のLowブレーキ32の指示圧Pbiが、Lowブレーキ32で滑りを開始する油圧として学習される。
【0037】
時間t1において、変速機4の動作点が第1モード切替変速線をLow側からHigh側に跨いで変化し、準備フェーズが開始される。準備フェーズでは、Highクラッチ33の指示圧Pciを一端高くした後に所定圧まで低くして所定圧に保持するプリチャージが行われ、Highクラッチ33の実圧Pcaが増加する。図4においては、Highクラッチ33の指示圧Pciを実線で示し、Highクラッチ33の実圧Pcaを破線で示す。
【0038】
時間t2において、セカンダリ回転速度Nsecが低下すると、Highクラッチ33の実圧Pcaの増加により、Highクラッチ33でトルク伝達が開始されたと判定される。準備フェーズを開始した後のトルク伝達開始タイミングとセカンダリ回転速度Nsecの変化速度とから、Highクラッチ33でトルク伝達を開始する油圧を学習し、Highクラッチ33のプリチャージ圧が補正される。例えば、Highクラッチ33におけるトルク伝達開始タイミングが遅い場合には、プリチャージ圧が高くなるように補正される。
【0039】
その後は、時間t3においてトルクフェーズが開始され、時間t4においてイナーシャフェーズが開始され、時間t5において終了フェーズが開始されて、時間t6において変速機4の変速が終了する。
【0040】
このように学習には、ある程度の時間が必要なので、学習は変速機4の動作点が第1モード切替変速線をLow側からHigh側に跨ぐよりも前に開始される。本実施形態では、学習開始変速線が図5において破線で示すように設定されており、変速機4の動作点が学習開始変速線を跨ぐと学習が開始される。図5は、図3の変速マップの低車速側の一部を拡大した図である。学習開始変速線は、第1モード切替変速線よりも低車速側にオフセットし、さらに第1モード切替変速線よりもLow側となるように設定される。学習開始変速線の横軸からの角度θr1は、第1モード切替変速線の横軸からの角度θc1よりも所定角度θ1大きく設定されている。学習開始変速線は、学習を実行するとともに、Lowブレーキ32が滑り状態で長く保持されることを防止し、Lowブレーキ32の発熱量を抑制してLowブレーキ32が劣化しないように設定されている。第1モード切替変速線は、上記する学習を優先させる変速線である。
【0041】
第2モード切替変速線は、図3に示すようにアクセルペダル開度APOが小さい領域では、第1モード切替変速線よりもLow側で変速機4が低速モードから高速モードへ変更され、アクセルペダル開度APOが大きい領域では、第1モード切替変速線と一致するように設定されている。第2モード切替変速線は、第2モード切替変速線を延長しても、変速マップ左下隅の零点とは交わらない。第2モード切替変速線に基づいて変速機4が低速モードから高速モードへ変更された場合でも、アクセルペダル開度APOが大きくなると、バリエータ20の変速比が小さい状態(High側)で、変速が行われる。これは、アクセルペダル開度APOが大きい場合に、バリエータ20の変速比が大きい状態(Low側)で副変速機構30を変速させると変速ショックが大きくなるからである。
【0042】
第1モード切替変速線と同様に第2モード切替変速線に対して学習開始変速線を図5において二点鎖線で示すように設けると、学習開始変速線の横軸からの角度θr2は、第2モード切替変速線の横軸からの角度θc2よりも所定角度θ1大きく設定される。第2モード切替変速線に対して学習開始変速線を設定すると、アクセルペダル開度APOが小さい場合には、エンジントルクが安定していない状態で学習が開始される。そのため、副変速機構30に入力するトルクも安定しておらず、Lowブレーキ32の学習時のセカンダリ回転速度Nsecの変化が、Lowブレーキ32の油圧を低下させることで生じたのか、トルク変動によって生じたのか区別することができない。従って、Lowブレーキ32の学習を正確に行うことができない。
【0043】
また、第2モード切替変速線に対して、第1モード切替変速線と同様に学習開始変速線を設けると、アクセルペダル開度APOが大きくなるにつれて、第1モード切替変速線の場合よりも、第2モード切替変速線と第2モード切替変速線の学習開始変速線との距離が長くなる。そのため、第2モード切替変速線に対して学習開始変速線を設定し、学習を開始すると、学習を開始してから変速機4の動作点が第2モード切替変速線を跨ぐまでの時間が長くなる。これにより、学習のためにLowブレーキ32で滑りを開始してから副変速機構30の変速段を2速に変更するまでの時間が長くなる。つまり、Lowブレーキ32が滑り状態となる時間が長くなり、Lowブレーキ32の発熱量が大きくなり、Lowブレーキ32が劣化するおそれがある。また、極低開度のアクセルペダル開度APOでは、加速度などの影響により、学習を開始してから変速機4の動作点が第2モード切替変速線を跨ぐまでの時間が短くなり、学習が完了する前に副変速機構30の変速が開始され、学習を行うことができなくなるおそれがある。
【0044】
そのため、本実施形態では、第2モード切替変速線に対して学習開始変速線を設定せずに、第2モード切替変速線が選択されている場合には、学習を実行しないこととした。第2モード切替変速線は、第1モード切替変速線に対して燃費向上を優先させる変速線である。
【0045】
次に、本実施形態の副変速機構30における1−2変速制御について図6のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
ステップS100では、コントローラ12は、車速センサ44からの信号に基づいて車速VSPを検出する。
【0047】
ステップS101では、コントローラ12は、車速VSPが第2所定車速VSP2よりも低いかどうか判定する。第2所定車速VSP2は、第2モード切替変速線の最小車速よりも低い車速であり、予め設定されている。第2所定車速VSP2を第2モード切替変速線の最小車速よりも低くしたのは、車速VSPが第2モード切替変速線の最小車速となる前に、モード変速切替線の選択を完了させるためである。車速VSPが第2所定車速VSP2よりも低い場合には、処理はステップS102に進み、車速VSPが第2所定車速VSP2以上である場合には、処理はステップS105に進む。
【0048】
ステップS102では、アクセルペダル開度センサ41からの信号に基づいて、アクセルペダル開度APOの変化速度VAPOを算出する。以下において、アクセルペダルの踏み込み量が減少する場合の変化速度VAPOをアクセルペダルの戻し速度VAPOといい、戻し速度VAPOが正の場合に、アクセルペダルの踏み込み量が減少しているものとする。つまり、アクセルペダルの踏み込みの減少量が大きくなるほど、戻し速度VAPOが大きくなる。
【0049】
ステップS103では、コントローラ12は、アクセルペダルの戻し速度VAPOが所定速度VAPO1よりも小さいかどうか判定する。所定速度VAPO1は、運転者がアクセルペダルの踏み込み量を減少させる意図があると判定できる値である。アクセルペダルの戻し速度VAPOが所定速度VAPO1よりも大きく、運転者がいわゆる足戻しを行ったと判定された場合には、処理はステップS104に進み、アクセルペダル開度APOの戻し速度VAPOが所定速度VAPO1よりも小さく、運転者が足戻しを行っていないと判定された場合には、処理はステップS105に進む。
【0050】
ステップS104では、コントローラ12は、モード切替変速線として第2モード切替変速線を選択する。
【0051】
ステップS105では、コントローラ12は、モード切替変速線として第1モード切替変速線を選択する。
【0052】
ステップS106では、コントローラ12は、変速機4の動作点が選択されたモード切替変速線を跨いで変化したかどうか判定する。変速機4の動作点が選択されたモード切替変速線を跨いで変化した場合には、処理はステップS107に進む。
【0053】
ステップS107では、コントローラ12は、副変速機構30の変速段を1速から2速に変更し、それに伴い協調変速を行ってバリエータ20の変速比をLow側に変更する。モード切替変速線として第1モード切替変速線が選択されている場合には、上記する学習が行われる。
【0054】
なお、副変速機構30の変速段が1速から2速への変更が終了した場合、または車両が停車した場合には、選択されたモード切替変速線はリセットされる。
【0055】
本発明の実施形態の効果について説明する。
【0056】
副変速機構30の変速段を切り替えるモード切替変速線として、Lowブレーキ32で滑りを開始する油圧の学習、及びHighクラッチ33でトルク伝達を開始する油圧の学習を優先する第1モード切替変速線と、第1モード切替変速線よりもLow側であり、燃費性能を優先する第2モード切替変速線とを選択可能とし、選択されたモード切替変速線に基づいて副変速機構30の変速段を切り替える。これにより、Lowブレーキ32で滑りを開始する油圧、及びHighクラッチ33でトルク伝達を開始する油圧の学習を行うとともに、エンジン1の燃費を向上させることができる。
【0057】
車速VSPと、アクセルペダルの戻し速度VAPOとに基づいてモード切替変速線を選択することで、車両の運転状態に応じたモード切替変速線を選択することができ、学習を正確に行うことができる。
【0058】
車速VSPが第2所定車速VSP2よりも小さく、かつアクセルペダルの戻し速度VAPOが所定速度VAPO1よりも大きい場合に第2モード切替変速線をモード切替変速線として選択する。これにより、変速機4の動作点が第2モード切替変速線を跨ぐ前にモード切替変速線の選択を終了し、適切なモード切替変速線を選択することができる(請求項3に対応する効果)。アクセルペダルの戻し速度VAPOが大きく変速機4に入力されるトルク変動が大きい場合には、学習を正確に行うことができない。そのため、このような場合には、燃費を優先する第2モード切替変速線をモード切替変速線として選択することで、燃費を向上させることができる。
【0059】
学習を行う場合には、Lowブレーキ32で滑りを開始する油圧を学習した後に、Highクラッチ33でトルク伝達を開始する油圧の学習を行う。これにより、副変速機構30の変速段が1速から2速に変更される工程中に学習を終了することができ、運転者に違和感を与えることなく学習を実行することができる。
【0060】
第2モード切替変速線がモード切替変速線として選択されている場合には、学習を行わない。これにより、学習を正確に行うことができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0062】
本願は2015年3月26日に日本国特許庁に出願された特願2015−64804に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】