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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年9月29日
【発行日】2017年12月28日
(54)【発明の名称】成形型及び成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20171201BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20171201BHJP
【FI】
   B29C59/02 B
   B29C33/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
【出願番号】特願2017-508160(P2017-508160)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年3月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-57323(P2015-57323)
(32)【優先日】2015年3月20日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 直紀
【テーマコード(参考)】
4F202
4F209
【Fターム(参考)】
4F202AA44
4F202AF01
4F202AG05
4F202AH73
4F202AJ03
4F202AJ09
4F202AR12
4F202AR20
4F202CA19
4F202CB01
4F202CB29
4F202CD16
4F202CD30
4F202CK12
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH73
4F209AJ03
4F209AJ09
4F209AR12
4F209AR20
4F209PA02
4F209PB01
4F209PC01
4F209PC05
4F209PN03
4F209PN06
4F209PQ11
(57)【要約】
型に予め反りを持たせることなく、高精度な表面微細構造を持つ成形品を、損傷を回避しつつ成形できる成形型及び成形方法を提供する。最大段差50μm以下の表面微細構造を転写成形された光硬化性樹脂を基材に付着させてなる成形品を成形する為の成形型は、少なくとも第1層と第2層の2層構造を有しており、第1層が前記表面微細構造の転写面を形成しており、第1層のヤング率をE1とし、第1層の厚みをt1とし、第2層のヤング率をE2とし、第2層の厚みをt2としたときに、(1)〜(5)式を満たすものである。
1×t13≦15[MPa・mm3] (1)
300≦E1≦5,000[MPa] (2)
2/t2≦15[MPa/mm] (3)
5≦E2≦100 (4)
0.03≦√(E1×t13×E2/t2)[MPa・mm]≦10 (5)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に付着させた光硬化性樹脂に、最大段差50μm以下の表面微細構造を転写成形するための成形型であって、
前記成形型が少なくとも第1層と第2層の2層構造を有しており、
前記第1層が前記表面微細構造の転写面を形成しており、前記第1層のヤング率をE1とし、前記第1層の厚みをt1としたときに、(1)、(2)式を満たし、
1×t13≦15[MPa・mm3] (1)
300≦E1≦5,000[MPa] (2)
前記第2層のヤング率をE2とし、前記第2層の厚みをt2としたときに、(3)、(4)式を満たし、
2/t2≦15[MPa/mm] (3)
5≦E2≦100 (4)
更に、(5)式を満たす成形型。
0.03≦√(E1×t13×E2/t2)[MPa・mm]≦10 (5)
【請求項2】
前記第1層と前記第2層との間に第1接着層が設けられているときは、前記第1層と前記第1接着層とを総合した総合ヤング率をE1とみなし、前記第1層と前記第1接着層とを総合した総合厚みをt1とみなして、(1)、(2)式を計算する請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
前記第2層を挟んで前記第1層とは反対側に第3層を積層してなり、前記第3層のヤング率をE3とし、前記第3層の厚みをt3としたときに、(6)、(7)式を満たす請求項1又は2に記載の成形型。
3×t33≧50,000[MPa・mm3] (6)
50,000≦E3[MPa] (7)
【請求項4】
前記第2層と前記第3層との間に第2接着層が設けられているときは、前記第3層と前記第2接着層とを総合した総合ヤング率をE3とみなし、前記第3層と前記第2接着層とを総合した総合厚みをt3とみなして、(6)、(7)式を計算する請求項3に記載の成形型。
【請求項5】
前記成形型により表面微細構造を転写成形された光硬化性樹脂と前記基材からなる成形品の、前記転写された光硬化性樹脂と前記基材とを総合したヤング率をE4とみなし、前記成形品の、前記転写された光硬化性樹脂と前記基材とを総合した厚みをt4とみなしたときに、(8)、(9)式を満たす請求項1〜4のいずれかに記載の成形型。
4×t43≧500[MPa・mm3] (8)
500≦E4 [MPa] (9)
【請求項6】
前記第1層の材料がオレフィン系樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の成形型。
【請求項7】
前記表面微細構造の最大段差が1μm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の成形型。
【請求項8】
以下の式を満たす請求項1〜7のいずれかに記載の成形型。
1×t13≦5[MPa・mm3] (10)
【請求項9】
以下の式を満たす請求項1〜8のいずれかに記載の成形型。
2/t2≦10[MPa/mm] (11)
【請求項10】
以下の式を満たす請求項1〜9のいずれかに記載の成形型。
0.7≦√(E1×t13×E2/t2)[MPa・mm]≦8 (12)
【請求項11】
以下の式を満たす請求項1〜9のいずれかに記載の成形型。
2≦√(E1×t13×E2/t2)[MPa・mm]≦6 (13)
【請求項12】
以下の式を満たす請求項5〜9のいずれかに記載の成形型。
4×t43≧10,000[MPa・mm3] (14)
【請求項13】
最大段差50μm以下の表面微細構造の転写面が形成された第1層と、前記第1層と異なる第2層を少なくとも有する成形型と、
前記第1層に対向するように基材を設け、
前記第1層に光硬化性樹脂を塗布し、前記基材と前記光硬化性樹脂を接近させ、
前記基材に前記光硬化性樹脂が張り付いた状態で、前記成形型から離型することで成形品を製造する成形方法。
ただし、前記第1層のヤング率をE1、前記第1層の厚みをt1、前記第2層のヤング率をE2、前記第2層の厚みをt2としたとき、前記成形型は下記式を満たす。
1×t13≦15[MPa・mm3] (1)
300≦E1≦5,000[MPa] (2)
2/t2≦15[MPa/mm] (3)
5≦E2≦100 (4)
0.03≦√(E1×t13×E2/t2)[MPa・mm]≦10 (5)
【請求項14】
前記第1層と前記第2層との間に第1接着層が設けられているときは、前記第1層と前記第1接着層とを総合した総合ヤング率をE1とみなし、前記第1層と前記第1接着層とを総合した総合厚みをt1とみなして、(1)、(2)式を計算する請求項13に記載の成形方法。
【請求項15】
前記第2層を挟んで前記第1層とは反対側に第3層を積層してなり、前記第3層のヤング率をE3とし、前記第3層の厚みをt3としたときに、(6)、(7)式を満たす請求項13又は14に記載の成形方法。
3×t33≧50,000[MPa・mm3] (6)
50,000≦E3[MPa] (7)
【請求項16】
前記第2層と前記第3層との間に第2接着層が設けられているときは、前記第3層と前記第2接着層とを総合した総合ヤング率をE3とみなし、前記第3層と前記第2接着層とを総合した総合厚みをt3とみなして、(6)、(7)式を計算する請求項15に記載の成形方法。
【請求項17】
前記成形型により表面微細構造を転写成形された光硬化性樹脂と前記基材からなる成形品の、前記転写された光硬化性樹脂と前記基材とを総合したヤング率をE4とみなし、前記成形品の、前記転写された光硬化性樹脂と前記基材とを総合した厚みをt4とみなしたときに、(8)、(9)式を満たす請求項13〜16のいずれかに記載の成形方法。
4×t43≧500[MPa・mm3] (8)
500≦E4 [MPa] (9)
【請求項18】
前記第1層の材料がオレフィン系樹脂である請求項13〜17のいずれかに記載の成形方法。
【請求項19】
前記表面微細構造の最大段差が1μm以下である請求項13〜18のいずれかに記載の成形方法。
【請求項20】
以下の式を満たす請求項13〜19のいずれかに記載の成形方法。
1×t13≦5[MPa・mm3] (10)
【請求項21】
以下の式を満たす請求項13〜20のいずれかに記載の成形方法。
2/t2≦10[MPa/mm] (11)
【請求項22】
以下の式を満たす請求項13〜21のいずれかに記載の成形方法。
0.7≦√(E1×t13×E2/t2)[MPa・mm]≦8 (12)
【請求項23】
以下の式を満たす請求項13〜21のいずれかに記載の成形方法。
2≦√(E1×t13×E2/t2)[MPa・mm]≦6 (13)
【請求項24】
以下の式を満たす請求項17〜21のいずれかに記載の成形方法。
4×t43≧10,000[MPa・mm3] (14)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子やマイクロチップなどの成形品を成形するのに適した成形型及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学素子やマイクロチップなどの成形品を成形するために、光硬化性樹脂を用いる試みがある。光硬化性樹脂は、UV光等を付与することにより短時間で硬化する特性を有するため、これを用いることで高精度な成形品を安価に量産できると期待されている。例えば光学素子やマイクロチップの一タイプには、例えば板状の基材上に、成形した光硬化性樹脂を付着させて製品としたものがある。かかる製品は、別々に成形した樹脂と基材を貼り合わせることでも得ることができるが、例えば基材上に光硬化性樹脂を滴下した上で型をかぶせ、外部からUV光等を供給することで、型により成形された樹脂を基材に付着させた製品を容易に得ることができる。
【0003】
ところで、光学素子やマイクロチップにおいて所望の性能を発揮するためには、型により例えば50μm以下の段差を持つ表面微細構造を形成する必要がある。ところが、硬化した光硬化性樹脂を型から離型する際に表面微細構造が損傷する場合があり、これが問題となっている。
【0004】
これに対し、特許文献1には、型が1層又は2層構造になっており、1層目又は2層目が無荷重状態で反りを有し、また1層目は金属や硬質樹脂からなり、自己復元力を有する材料で構成されたスタンパが開示されている。かかるスタンパを用いた成形工程において、樹脂硬化後の離型時には、スタンパの自己復元力により両端部から剥離が開始されることにより、離型抵抗を下げ、スタンパの損傷を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−230272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のスタンパは反りを有しているため、面内に圧力分布が発生することにより、樹脂硬化時の膜厚均一性や平面性が悪くなるから、高い精度が要求される成形品には適用できないという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、型に予め反りを持たせることなく、高精度な表面微細構造を持つ成形品を、損傷を回避しつつ成形できる成形型及び成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した成形型は、基材に付着させた光硬化性樹脂に、最大段差50μm以下の表面微細構造を転写成形するための成形型であって、
前記成形型が少なくとも第1層と第2層の2層構造を有しており、
前記第1層が前記表面微細構造の転写面を形成しており、前記第1層のヤング率をE1とし、前記第1層の厚みをt1としたときに、(1)、(2)式を満たし、
1×t13≦15[MPa・mm3] (1)
300≦E1≦5,000[MPa] (2)
前記第2層のヤング率をE2とし、前記第2層の厚みをt2としたときに、(3)、(4)式を満たし、
2/t2≦15[MPa/mm] (3)
5≦E2≦100 (4)
更に、(5)式を満たすものである。
0.03≦√(E1×t13×E2/t2)[MPa・mm]≦10 (5)
【0009】
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した成形方法は、
最大段差50μm以下の表面微細構造の転写面が形成された第1層と、前記第1層と異なる第2層を少なくとも有する成形型と、
前記第1層に対向するように基材を設け、
前記第1層に光硬化性樹脂を塗布し、前記基材と前記光硬化性樹脂を接近させ、
前記基材に前記光硬化性樹脂が張り付いた状態で、前記成形型から離型することで成形品を製造する。
ただし、前記第1層のヤング率をE1、前記第1層の厚みをt1、前記第2層のヤング率をE2、前記第2層の厚みをt2としたとき、前記成形型は下記式を満たす。
1×t13≦15[MPa・mm3] (1)
300≦E1≦5,000[MPa] (2)
2/t2≦15[MPa/mm] (3)
5≦E2≦100 (4)
0.03≦√(E1×t13×E2/t2)[MPa・mm]≦10 (5)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、型に予め反りを持たせることなく、高精度な表面微細構造を持つ成形品を、損傷を回避しつつ成形できる成形型及び成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態による成形型を模式的に示す拡大断面図である。
図2】片持ち梁の撓み状態を示すモデル図である。
図3】第1層、第2層、第3層を接着した成形型の断面図である。
図4】実施例1で用いたマスター型MMを示す図である。
図5図4のマスター型MMを用いて、成形型の第1層L1を転写形成する工程を示す模式図である。
図6図5の工程で得られた第1層を用いた成形型の製造工程を示す模式図である。
図7】実施例1の成形型を用いて成形品を成形する工程を示す図である。
図8】実施例2で用いたマスター型MMを示す図である。
図9図8のマスター型MMを用いて、成形型の第1層L1を転写形成する工程を示す模式図である。
図10図9の工程で得られた第1層を用いた成形型の製造工程を示す模式図である。
図11】実施例2の成形型を用いて成形品を成形する工程を示す図である。
図12】実施例3で用いたマスター型MMを示す図である。
図13図12のマスター型MMを用いて、成形型の第1層L1を転写形成する工程を示す模式図である。
図14】実施例3の成形型を用いて成形品を成形する工程を示す図である。
図15】実施例4の成形型を用いて成形品を成形する工程を示す図である。
図16】比較例の成形型の製造工程を示す模式図である。
図17】比較例の成形型を用いて成形品を成形する工程を示す図である。
図18】実施例1と比較例のサンプル品の最大密着力を示す図である。
図19】横軸に時間、縦軸に密着力をとって、実施例1と比較例の離型時の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において成形される成形品には、光学素子やマイクロチップなどがある。基材は、成形後に成形品の一部となると好ましい。「光学素子」としては、例えば回折格子や,可視光の波長以下の凹凸構造を持つモスアイ素子などがある。「最大段差50μm以下」とは、成形品の表面に対して垂直方向における段差の高さ又は深さが50μm以下であることをいう。
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明にかかる実施形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲は以下の実施形態及び図示例に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本実施形態による成形型を模式的に示す拡大断面図である。成形型MDは、表面微細構造の転写面MSを形成した第1層L1と、第2層L2と、第3層L3とを積層して形成されている。尚、図3に示すように、第1層L1と第2層L2との間に第1接着層B1が形成され、第2層L2と第3層L3との間に第2接着層B2が形成されていてもよい。ここで本発明者は、第1層L1と第2層L2の物性値を調整することで、離型時における成形品の損傷が少ない成形型を得られるのではないかと考えた。
【0015】
第1層L1の表面微細構造の転写面MSは、最大段差H=50μm以下の凹凸形状を有している。第1層L1のヤング率をE1とし、第1層L2の厚みをt1としたときに、(1)、(2)式を満たす。
1×t13≦15[MPa・mm3] (1)
300≦E1≦5,000[MPa] (2)
【0016】
更に、第2層L2のヤング率をE2とし、第2層L2の厚みをt2としたときに、(3)〜(5)式を満たす。
2/t2≦15[MPa/mm] (3)
5≦E2≦100 (4)
0.03≦√(E1×t13×E2/t2)[MPa・mm]≦10 (5)
【0017】
ここで、式の意義について説明する。第1層L1と第2層L2を積層した場合において、離型時における第1層L1の負荷状態は、片持ち梁の撓みとみなすことができる。より具体的には、図2に示すように、第1層L1離型時には、第1層L1の中心Oを固定端とする片持ち梁と同様な撓みが発生すると考えられる。ここで、自由端の荷重をWとし、第1層L1の中心から外縁までの距離をLとし、第1層L1の幅をbとすると、自由端の撓み量Δは以下の式で表せる。
Δ=WL3/(3E1I)
=WL3/(3E1(bt13/12))
=4WL3/(bE113) (15)
つまり、第1層L1の外縁の撓み量は、E1×t13に反比例する関数となる。本発明者の研究結果によれば、E1×t13を15[MPa・mm3]以下とし、且つE1が(2)式に該当する素材で第1層L1を形成することで、適切に撓む構造とできることがわかった。
【0018】
(1)式のE1×t13の下限値は小さいほどよいので、特に規定していないが、第1層L1の最大段差Hの値が、実績のある値のH=20nmの凹凸形状を有していると仮定し、tを20nm、第1層L1のヤング率を300MPaとした場合の、20nm×300=0.006が(1)式の下限値となる。(3)式のE2/t2≦15の下限値は小さいほどよいので、特に規定していないが、(5)式下限値0.03とE1×t13を最小値の0.006としたときに、E2/t2≧0.15となるので(3)式の下限値は0.15となる。
【0019】
一方、離型時における第2層L2の負荷状態は、フックの法則が適用される。より具体的には、弾性係数kである第2層L2全体に、荷重Fを付与したときの厚さ方向の変形量をxとすると、以下の式が成立する。
F=kx (16)
【0020】
ここで、第2層L2に作用する応力をσ、歪みをεとすると、ε=x/t2となるので、フックの法則は縦弾性係数すなわちヤング率を用いて、以下の式で表せる。
σ=E2ε
=E2x/t2 (17)
これを変形して、
x=σt2/E2 (18)
つまり、第2層L2の変形量xは、t2/E2に正比例する関数である。本発明者の研究結果によれば、E2/t2を15[MPa/mm]以下とし、且つE2が(3)式に該当する素材で第2層L2を形成することで、適度に縮みやすい構造とできることがわかった。
【0021】
一方、上述の条件を満たすのみでは、適切な成形を行えない。本発明者の研究結果によれば、第1層L1と第2層L2が共に柔らかすぎる場合には、成形品の形状が不安定になり、第1層L1と第2層L2が共に固すぎる場合には、殆ど変形が生じないことから離型時に表面微細構造の損傷が生じやすいことを見出した。かかる知見から、更に(5)式を満たす材料から第1層L1,第2層L2を形成することで、適切な成形を行える成形型を実現したのである。
0.03≦√(E1×t13×E2/t2)[MPa・mm]≦10 (5)
【0022】
以上を整理すると、成形型MDが、表面微細構造の転写面MSを有する第1層L1をたわみ易い材料から形成し、第2層L2を縮み易い材料から形成しているので、成形品の離型時には、離型抵抗の応力が集中する部分(特に成形品の端)において成形型MDが集中的に変形することにより、その部分を起点に成形品と成形型MDとが剥離を開始するようにできる。その結果、離型抵抗の応力を分散し成形品と成形型MDの表面微細構造の損傷を防ぐことができるのである。特に、(5)式の値が下限値以上であれば、離型時の成形型MDの変形が大きくなりすぎず、表面微細構造の形状が変わりにくく高精度な転写形状を得ることができる。一方、(5)式の値が上限値以下であれば、離型時の成形型MDの変形が小さくなりすぎず、離型時に容易な剥離を実現できる。つまり、(5)式を満たすことで、表面微細構造の維持と離型性とを両立できる。特に、表面微細構造の段差が1μm以下であると、構造が小さくなり損傷しやすくなるため、本発明の効果が期待される。
【0023】
更に、第3層L3に求められる,より好ましい条件について説明する。第3層L3のヤング率をE3とし、第3層L3の厚みをt3としたときに、(6)、(7)式を満たすようにすると、離型時に、第2層L2の第3層L3側では変形が抑制され、第2層L2の第1層L1側では変形しやすくなるので、第1層L1の撓みを促進することとなり、離型抵抗が軽減され、成形型を故意に撓ませた場合と同等の効果が得られる。
3×t33≧50,000[MPa・mm3] (6)
50,000≦E3[MPa] (7)
【0024】
尚、図3に示すように、第1層L1と第2層L2との間には第1接着層B1が設けてもよい。かかる場合、第1層L1と第1接着層B1とを総合した総合ヤング率をE1とみなし、第1層L1と第1接着層B1とを総合した総合厚みをt1とみなして(1)、(2)式を計算する。更に、第2層L2と第3層L3との間に第2接着層B2を設けてもよい。かかる場合、第3層L3と第2接着層B2とを総合した総合ヤング率をE3とみなし、第3層L3と第2接着層B2とを総合した総合厚みをt3とみなして(6)、(7)式を計算する。但し、第1接着層B1と第2接着層B2の厚みは、50μm以下であると好ましい。
【0025】
ここで、成形品と基材に求められる,より好ましい条件について説明する。例えば基材が撓みやすい材料から形成されていた場合、成形型MDの変形に追従してしまい離型が困難となる恐れがある。これに対し、基材が撓みにくければ、成形型MDに追従せず離型が容易になる。このため、成形型MDにより表面微細構造を転写成形された光硬化性樹脂と基材からなる成形品の、転写された光硬化性樹脂と基材とを総合したヤング率をE4とみなし、転写された光硬化性樹脂と基材とを総合した成形品の厚みをt4とみなしたときに、(8)、(9)式を満たすようにすることが望ましい。
4×t43≧500[MPa・mm3] (8)
500≦E4 [MPa] (9)
【0026】
尚、第1層L1の材料はオレフィン系樹脂であると、樹脂充填性や離型性に優れるので好ましい。又、以下の式を満たすと更に好ましい。
1×t13≦5[MPa・mm3] (10)
2/t2≦10[MPa/mm] (11)
0.7≦√(E1×t13×E2/t2)[MPa・mm]≦8 (12)
2≦√(E1×t13×E2/t2)[MPa・mm]≦6 (13)
4×t43≧10,000[MPa・mm3] (14)
【0027】
第1層L1の材料は例えば、表1に示すものが好ましい。但し、表1のヤング率E1は任意値であり、メーカー・品番により異なる。成形型側の外部からUV光を照射する構成の場合、第1層L1の材料は十分なUV光の透過性を有する必要があるが、基材側からUV光を照射する場合には透過性は有しなくても良い。
【0028】
【表1】
【0029】
第2層L2の材料は例えば、表2に示すものが好ましい。但し、表2のヤング率E2は任意値であり、メーカー・品番により異なる。成形型側の外部からUV光を照射する構成の場合、第2層L2の材料も十分なUV光の透過性を有する必要があるが、基材側からUV光を照射する場合には透過性は有しなくて良い。
【0030】
【表2】
【0031】
第3層L3の材料は例えば、表3に示すものが好ましい。但し、表3のヤング率E3は任意値であり、メーカー・品番により異なる。成形型側の外部からUV光を照射する構成の場合、第3層L3の材料も十分なUV光の透過性を有する必要があるが、基材側からUV光を照射する場合には透過性は有しなくて良い。
【0032】
【表3】
【0033】
成形品の基材は例えば、表4に示すものが好ましい。但し、表4のヤング率E4は任意値であり、メーカー・品番により異なる。成形型側の外部からUV光を照射する構成の場合、基材は、UV光の透過性を有する必要はないが、基材側からUV光を照射する場合には、十分なUV透過性を有する必要がある。
【0034】
【表4】
【0035】
成形品の表面微細構造は、例えば深さ50nm幅50nmの溝、φ100nmのピラーアレイ、φ100nmの孔、深さ20μm幅200μmの溝、φ20μmのピラーアレイ、φ20μmの孔などが例としてあげられる。
【0036】
以下、実施例について説明する。図4(a)は、実施例1で用いたマスター型MMの正面図であり、図4(b)は、マスター型MMの中央部の拡大断面図である。図4に示すマスター型MMは、シリコン製であり、厚さ1mmで縦横30mmの矩形板状であって、中央の4mm四方の領域にラインアンドスペース構造LSを形成している。図4(b)に示すように、ラインアンドスペース構造LSは、高さ20nmで幅200nmの矩形断面の隆起部を、200nmの間隔で複数本、紙面垂直方向に延在させたものであり、成形品の形状に相当する。このようなマスター型MMの微細なラインアンドスペース構造LSは、例えば特開2009−206519号公報に記載されたナノインプリント法で形成できる。
【0037】
図5は、図4のマスター型MMを用いて、成形型の第1層L1を転写形成する工程を示す模式図であるが、ラインアンドスペース構造LSは誇張して示している。まず図5(a)に示すように、マスター型MMを、熱インプリント装置の上型HIUに取り付けると共に、これに対向する熱インプリント装置の下型HIDに、第1層の材料MT1を載置する。材料MT1は、ここではφ20mm、厚さ0.1mmのPMP(三井化学株式会社製の製品名RT18)を用いた。
【0038】
かかる状態で、上型HIUを220℃に加熱し、下型HIDを30℃で一定とし、図5(b)に示すように、上型HIUと下型HIDを接近させ、10MPaで3分間加圧した後、上型HIUを30℃まで冷却した。その後、図5(c)に示すように上型HIUと下型HIDとを離間させ、ラインアンドスペース構造LSに対応した表面微細構造の転写面MSが転写成形された平面形状の第1層L1を取り出した。
【0039】
図6は、図5の工程で得られた第1層を用いた成形型の製造工程を示す模式図であるが、表面微細構造の転写面MSは誇張して示している。図6(a)に示すように、第3層L3としての縦横40mmで厚さ10mmの矩形板状の石英ガラス(株式会社ミスミ製)の上に、第2層L2としてφ20mm、厚さ3mmのシリコーンゴム(信越化学株式会社製の製品名X−32−3212)を載置し、その間に第2接着層B2を形成するために株式会社ダイセル製のエポキシ系UV硬化性樹脂PLを0.02ml塗布した。
【0040】
加えて、第2層L2の上に、図5の工程で得られた第1層L1を載置し、その間に第1接着層B1を形成するために株式会社ダイセル製のエポキシ系UV硬化性樹脂PLを0.02ml塗布した。
【0041】
かかる状態で、図6(b)に示すように、第3層L3の下方より、波長365nmのUV光を300mW/cm2の強度で60秒照射して、接着層B1,B2を形成した。これにより、図6(c)に示すように、厚さ50μmの接着層B1,B2により第1層L1,第2層L2,第3層L3を積層した成形型MDが得られた。
【0042】
図7は、成形型を用いて成形品を成形する工程を示す図である。まず、図7(a)に示すように、成形型MDの第3層L3をフレームFRに固定して、更に成形型MDの第1層L1に対向するようにして、支持枠SPに下面周辺を支持された、縦横25mm、厚さ2mmのPC板(タキロン株式会社製の製品名PC1600)の基材STを配置した。
【0043】
かかる状態で、第1層L1上に、成形品の素材PLとして、株式会社ダイセル製のエポキシ系UV硬化性樹脂を0.01ml塗布し、支持枠SPに支持された平面形状の基材STを第1層L1に接近させた。このとき、基材STは、支持枠SPに下面周辺のみを自重に抗して支持されているので、基材STと第1層L1との間に均一な力が発生し、両者を平行に維持することができる。
【0044】
この状態を維持しつつ、図7(b)に示すように、第3層L3の下方より、波長365nmのUV光を300mW/cm2の強度で60秒照射して、素材PLを硬化させた。その後、図7(c)に示すように、支持枠SPに支持された基材STを第1層L1から離間すると、素材PLは基材STに貼り付いた状態となって第1層L1から剥がれ、更に支持枠SPから基材STを取り外すことで、表面微細構造MS’を有する成形品を得ることができた。
【0045】
実施例1における各部材の物性値は以下の通りである。
第1層L1のヤング率:E1=1,900[MPa]、厚さt1=0.1[mm]、第1接着層B1のヤング率:E=2,600[MPa]、厚さt=0.05[mm]、第1接着層B1を含む第1層の総合ヤング率と総合厚さにより得られる(1)式の値:2.2[MPa・mm3
【0046】
第2層L2のヤング率:E2≒30[MPa],厚さt2=4[mm]
(3)式の値:8[MPa/mm]
以上より、(5)式の値:4.1[MPa・mm]
【0047】
第3層L3のヤング率:E3=74,000[MPa]、厚さt3=10[mm]、第2接着層B2のヤング率:E=2,600[MPa]、厚さt=0.05[mm]、第2接着層B2を含む第3層の総合ヤング率と総合厚さにより得られる(6)式の値:74,000,000[MPa・mm3
【0048】
基材STのヤング率:E=2,250[MPa],厚さt=2[mm]、素材PLのヤング率:E=2,600[MPa],厚さt=0.05[mm]、基材STと素材PLからなる成形品のヤング率と厚さより求まる(8)式の値:18,000[MPa・mm3
【0049】
実施例1は、第1層と第2層のそれぞれが積極的に変形し、かつ成形品が変形しないことで、第1層と成形品界面において隙間ができ、密着力を低減することができる。第1層と第2層の変形により、密着力低減の効果が大きい。
【0050】
(実施例2)
図8(a)は、実施例2で用いたマスター型MMの正面図であり、図8(b)は、マスター型MMの中央部の拡大断面図である。図8に示すマスター型MMは、シリコン製であり、厚さ1mmで縦横30mmの矩形板状であって、中央の4mm四方の領域にマトリクス状に配置した複数の円形孔HLを形成している。図8(b)に示すように、深さ200nmでφ200nmの円形孔HLを、ピッチ400nmで縦横に配置したものであり、成形品の形状に相当する。このようなマスター型MMの微細な円形孔HLも、例えば特開2009−206519号公報に記載されたナノインプリント法で形成できる。
【0051】
図9は、図8のマスター型MMを用いて、成形型の第1層L1を転写形成する工程を示す模式図であるが、円形孔HLは誇張して示している。まず図9(a)に示すように、マスター型MMを、熱インプリント装置の上型HIUに取り付けると共に、これに対向する熱インプリント装置の下型HIDに、第1層の材料MT1を載置する。材料MT1は、ここではφ20mm、厚さ0.2mmのPP(積水成型株式会社製の製品名P−B134)を用いた。
【0052】
かかる状態で、上型HIUを160℃に加熱し、下型HIDを30℃で一定にして、図9(b)に示すように、上型HIUと下型HIDを接近させ、10MPaで3分間加圧した後、上型HIUを30℃まで冷却した。その後、図9(c)に示すように上型HIUと下型HIDとを離間させ、複数の円形孔HLに対応した凸部からなる表面微細構造の転写面MSが転写成形された第1層L1を取り出した。
【0053】
図10は、図9の工程で得られた第1層を用いた成形型の製造工程を示す模式図であるが、表面微細構造の転写面MSは誇張して示している。図10(a)に示すように、第3層L3としての縦横40mmで厚さ10mmの矩形板状の石英ガラス(株式会社ミスミ製)の上に、第2層L2としてφ20mm、厚さ1.5mmのシリコーンゴムを載置した。加えて、第2層L2の上に、図9の工程で得られた第1層L1を載置することで、第1層L1,第2層L2,第3層L3を積層した成形型MDが得られた(図10(b))。本実施例では、第1層L1と第2層L2の間、及び第2層L2と第3層L3の間に接着層を設けてはいない。これは、使用したシリコーンゴムが,本来的に接着層に代わる接着保持性を有するからである。
【0054】
図11は、成形型を用いて成形品を成形する工程を示す図である。まず、図11(a)に示すように、成形型MDの第3層L3をフレームFRに固定して、更に成形型MDの第1層L1に対向するようにして、支持枠SPに下面周辺を支持された、縦横25mm、厚さ2mmのPC板(旭化成テクノプラス株式会社製の製品名デミグラスK)の基材STを配置した。
【0055】
かかる状態で、第1層L1上に、成形品の素材PLとして、株式会社ダイセル製のエポキシ系UV硬化性樹脂PLを0.01ml塗布し、支持枠SPに支持された基材STを第1層L1に接近させた。このとき、基材STは、支持枠SPに下面周辺のみを自重に抗して支持されているので、基材STと第1層L1との間に均一な力が発生し、両者を平行に維持することができる。
【0056】
この状態を維持しつつ、図11(b)に示すように、第3層L3の下方より、波長365nmのUV光を300mW/cm2の強度で60秒照射して、素材PLを硬化させた。その後、図11(c)に示すように、支持枠SPに支持された基材STを第1層L1から離間すると、素材PLは基材STに貼り付いた状態となって第1層L1から剥がれ、更に支持枠SPから基材STを取り外すことで、表面微細構造MS’を有する成形品を得ることができた。
【0057】
実施例2における各部材の物性値は以下の通りである。
第1層L1のヤング率:E1=1,000[MPa]、厚さt1=0.2[mm]
第1層の(1)式の値:8[MPa・mm3
【0058】
第2層L2のヤング率:E2≒50[MPa]、厚さt2=4[mm]
(3)式の値:13[MPa/mm]
以上より、(5)式の値:10[MPa・mm]
【0059】
第3層L3のヤング率:E3=74,000[MPa]、厚さt3=10[mm]
第3層の(6)式の値:74,000,000[MPa・mm3
【0060】
基材STのヤング率:E=1,800[MPa],厚さt=1[mm]
素材PLのヤング率:E=2,600[MPa],厚さt=0.05[mm]
基材STと素材PLからなる成形品のヤング率と厚さより求まる(8)式の値:1,800[MPa・mm3
【0061】
(実施例3)
図12(a)は、実施例3で用いたマスター型MMの正面図であり、図12(b)は、マスター型MMの中央部の拡大断面図である。図12に示すマスター型MMは、シリコン製であり、厚さ1mmで縦横30mmの矩形板状であって、中央の4mm四方の領域にマトリクス状に配置した複数の円筒部CYを形成している。図12(b)に示すように、高さ4μmでφ2μmの突出した円筒部CYを、ピッチ4μmで縦横に配置したものであり、成形品の形状に相当する。このようなマスター型MMの微細な円筒部CYも、例えば特開2009−206519号公報に記載されたナノインプリント法で形成できる。
【0062】
図13は、図12のマスター型MMを用いて、成形型の第1層L1を転写形成する工程を示す模式図であるが、円筒部CYは誇張して示している。まず図13(a)に示すように、マスター型MMを、熱インプリント装置の上型HIUに取り付けると共に、これに対向する熱インプリント装置の下型HIDに、第1層の材料MT1を載置する。材料MT1は、ここではφ20mm、厚さ0.15mmのPETを用いた。
【0063】
かかる状態で、上型HIUを150℃に加熱し、下型HIDを30℃で一定として、図13(b)に示すように、上型HIUと下型HIDを接近させ、10MPaで3分間加圧した後、上型HIUを30℃まで冷却した。その後、図13(c)に示すように上型HIUと下型HIDとを離間させ、円筒部CYに対応した表面微細構造の転写面MSが転写成形された第1層L1を取り出した。
【0064】
更に、図6に示す工程と同様にして、第3層L3としての縦横40mmで厚さ10mmの矩形板状の石英ガラス(株式会社ミスミ製)の上に、第2層L2としてφ20mm、厚さ3mmのシリコーンゴムを載置し、その間に第2接着層B2を形成するために株式会社ダイセル製のエポキシ系UV硬化性樹脂PLを0.02ml塗布した。
【0065】
加えて、第2層L2の上に、図13の工程で得られた第1層L1を載置し、その間に第1接着層B1を形成するために株式会社ダイセル製のエポキシ系UV硬化性樹脂PLを0.02ml塗布した。
【0066】
かかる状態で、第3層L3の下方より、波長365nmのUV光を300mW/cm2の強度で60秒照射して、接着層B1,B2を形成した。これにより、厚さ50nmの接着層B1,B2により第1層L1,第2層L2,第3層L3を積層した成形型MDが得られた。但し、成形型MDには、プラズマCVDでSiO2を7nm製膜し、離型剤オプツール(ダイキン株式会社製)を浸漬により製膜した。これにより離型性が高まる。
【0067】
図14は、成形型を用いて成形品を成形する工程を示す図である。まず、図14(a)に示すように、成形型MDの第3層L3をフレームFRに固定して、更に成形型MDの第1層L1に対向するようにして、支持枠SPに下面周辺を支持された、縦横25mm、厚さ2mmのPC板(タキロン株式会社製の製品名PC1600)の基材STを配置した。
【0068】
かかる状態で、第1層L1上に、成形品の素材PLとして、株式会社ダイセル製のUV硬化性樹脂PLを0.01ml塗布し、支持枠SPに支持された基材STを第1層L1に接近させた。このとき、基材STは、支持枠SPに下面周辺のみを自重に抗して支持されているので、基材STと第1層L1との間に均一な力が発生し、両者を平行に維持することができる。
【0069】
この状態を維持しつつ、図14(b)に示すように、第3層L3の下方より、波長365nmのUV光を300mW/cm2の強度で60秒照射して、素材PLを硬化させた。その後、図14(c)に示すように、支持枠SPに支持された基材STを第1層L1から離間すると、素材PLは基材STに貼り付いた状態となって第1層L1から剥がれ、更に支持枠SPから基材STを取り外すことで、表面微細構造MS’を有する成形品を得ることができた。
【0070】
実施例3における各部材の物性値は以下の通りである。
第1層L1のヤング率:E1=4,000[MPa]、厚さt1=0.15[mm]
第1接着層B1のヤング率:E=2,600[MPa]、厚さt=0.05[mm]
第1接着層B1を含む第1層の総合ヤング率と総合厚さにより得られる(1)式の値:13.8[MPa・mm3
【0071】
第2層L2のヤング率:E2≒10[MPa]、厚さt2=3[mm]
(3)式の値:3[MPa/mm]
以上より、(5)式の値:6.8[MPa・mm]
【0072】
第3層L3のヤング率:E3=74,000[MPa]、厚さt3=10[mm]
第2接着層B2のヤング率:E=2,600[MPa]、厚さt=0.05[mm]
第2接着層B2を含む第3層の総合ヤング率と総合厚さにより得られる(6)式の値:74,000,000[MPa・mm3
【0073】
基材STのヤング率:E=2,250[MPa],厚さt=2[mm]
素材PLのヤング率:E=2,600[MPa],厚さt=0.05[mm]
基材STと素材PLからなる成形品のヤング率と厚さより求まる(8)式の値:18,000[MPa・mm3
【0074】
(実施例4)
以下のように実施例4を作成した。具体的には、図4に示すマスター型MMから、図5に示す工程で第1層L1を成形した。次いで、図5に示す工程を経て、表面微細構造の転写面を持つ第1層L1を成形した。但し、材料MT1は、ここではφ20mm、厚さ0.05mmのPMP(三井化学株式会社製の製品名MX002)を用いた。更に、図6に示す工程を経て、成形型MDを形成した。厚さ10μmの接着層B1,B2により第1層L1,第2層L2,第3層L3を相互に接着した。
【0075】
図15は、成形型を用いて成形品を成形する工程を示す図である。まず、図15(a)に示すように、成形型MDの第3層L3をフレームFRに固定して、更に成形型MDの第1層L1に対向するようにして、筒状の支持枠SPの上端により保持した光透過性の素材としてのガラス板GLと、支持枠SPの下端により下面周辺を支持された、縦横25mm、厚さ2mmのガラス板(スライドガラス)の基材STとを積層して配置した。
【0076】
かかる状態で、第1層L1上に、成形品の素材PLとして、株式会社ダイセル製のエポキシ系UV硬化性樹脂PLを0.01ml塗布し、支持枠SPに支持されたガラス板GLと基材STとを第1層L1に接近させた。このとき、基材STは、支持枠SPに下面周辺のみを自重に抗して支持されているので、基材STと第1層L1との間に均一な力が発生し、両者を平行に維持することができる。
【0077】
この状態を維持しつつ、図15(b)に示すように、ガラス板GLと基材STの上方より、波長365nmのUV光を300mW/cm2の強度で60秒照射して、素材PLを硬化させた。その後、図15(c)に示すように、支持枠SPに支持された基材STを第1層L1から離間すると、素材PLは基材STに貼り付いた状態となって第1層L1から剥がれ、更に支持枠SPから基材STを取り外すことで、表面微細構造MS’を有する成形品を得ることができた。
【0078】
実施例4における各部材の物性値は以下の通りである。
第1層L1のヤング率:E1=900[MPa]、厚さt1=0.05[mm]
第1接着層B1のヤング率:E=2,600[MPa]、厚さt=0.01[mm]
第1接着層B1を含む第1層の総合ヤング率と総合厚さにより得られる(1)式の値:0.12[MPa・mm3
【0079】
第2層L2のヤング率:E2≒50[MPa]、厚さt4=4[mm]
(3)式の値:13[MPa/mm]
以上より、(5)式の値1.2[MPa・mm]
【0080】
第3層L3のヤング率:E3=74,000[MPa]、厚さt3=10[mm]
第2接着層B2のヤング率:E=2,600[MPa]、厚さt=0.01[mm]
第2接着層B2を含む第3層の総合ヤング率と総合厚さにより得られる(6)式の値:74,000,000[MPa・mm3
【0081】
基材STのヤング率:E=73,000[MPa],厚さt=2[mm]
素材PLのヤング率:E=2,600[MPa],厚さt=0.05[mm]
基材STと素材PLからなる成形品のヤング率と厚さより求まる(8)式の値:584,000[MPa・mm3
【0082】
(比較例)
以下、比較例を作成した。具体的には、図4に示すマスター型MMから、図5に示す工程で第1層L1を成形した。本比較例では、第2層を用いず、第1層と第3層を直接積層するものとする。
【0083】
図16は、得られた第1層を用いた比較例の製造工程を示す模式図であるが、表面微細構造の転写面MSは誇張して示している。図16(a)に示すように、第3層L3としての縦横40mmで厚さ10mmの矩形板状の石英ガラス(株式会社ミスミ製)の上に、第1層L1を載置し、その間に接着層B1を形成するために株式会社ダイセル製のエポキシ系UV硬化性樹脂PLを0.01ml塗布した。
【0084】
かかる状態で、図16(b)に示すように、第3層L3の下方より、波長365nmのUV光を300mW/cm2の強度で60秒照射して、接着層B1を形成した。これにより、図16(c)に示すように、厚さ50μmの接着層B1により第1層L1と第3層L3を積層した成形型MD’が得られた。比較例の各部材の物性値は、以下の通りである。
【0085】
第1層L1のヤング率:E1=1,900[MPa]、厚さt1=0.1[mm]
第1接着層B1のヤング率:E=2,600[MPa]、厚さt=0.05[mm]
第1接着層B1を含む第1層の総合ヤング率と総合厚さにより得られる(1)式の値:2.2[MPa・mm3
【0086】
第2層(第3層L3)のヤング率:E3=74,000[MPa]、厚さt3=10[mm]
(3)式の値:7400[MPa/mm]
以上より、(5)式の値:128[MPa・mm]
【0087】
図17は、比較例の成形型を用いて成形品を成形する工程を示す図である。まず、図17(a)に示すように、成形型MD’の第3層L3をフレームFRに固定して、更に第1層L1に対向するようにして、支持枠SPに下面周辺を支持された、縦横25mm、厚さ2mmのPC板(タキロン株式会社製の製品名PC1600)の基材STを配置した。
【0088】
かかる状態で、第1層L1上に、成形品の素材PLとして、株式会社ダイセル製のエポキシ系UV硬化性樹脂PLを0.02ml塗布し、支持枠SPに支持された基材STを第1層L1に接近させた。このとき、基材STは、支持枠SPに下面周辺のみを自重に抗して支持されているので、基材STと第1層L1との間に均一な力が発生し、両者を平行に維持することができる。
【0089】
この状態を維持しつつ、図17(b)に示すように、第3層L3の下方より、波長365nmのUV光を300mW/cm2の強度で60秒照射して、素材PLを硬化させた。その後、図17(c)に示すように、支持枠SPに支持された基材STを第1層L1から離間すると、素材PLの多くは基材STに貼り付いた状態となって第1層L1から剥がれたが、素材PLの一部は第1層L1側に残ってしまった。以下、実施例1と比較例との差について考察する。
【0090】
本発明者は、実施例1と比較例のそれぞれ30サンプルについて、成形時の最大密着力(光硬化性樹脂を離型するときの力の最大値)を測定した。その結果を図18に示す。図18を参照して、実施例1ではいずれのサンプルも安定して低い密着力であるのに対し、比較例では、特に離型初期の時点で密着力が高く剥がれにくかった。
【0091】
更に、離型工程の密着力の時間変化を測定した図19によれば、実施例1の方が、比較例よりも密着力の立ち上がりが緩やかであった。また、離型の様子をハイスピードカメラで撮影した結果、型が変形することで、離型時間が長くなっている様子が確認された。以上より、実施例の構成により、型と成形品の表面微細構造を損傷させること無く、安定して成形できることがわかった。表5に、比較結果をまとめて示す。
【0092】
【表5】
【0093】
本発明は、明細書に記載の実施形態・実施例に限定されるものではなく、他の実施形態・実施例・変形例を含むことは、本明細書に記載された実施形態や実施例や技術思想から本分野の当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0094】
B1 第1接着層
B2 第2接着層
CY 円筒部
FR フレーム
GL ガラス板
HID 下型
HIU 上型
HL 円形孔
L1 第1層
L2 第2層
L3 第3層
LS ラインアンドスペース構造
MD 成形型
MM マスター型
MS 表面微細構造の転写面
MS’ 表面微細構造
MT1 材料
PL 光硬化性樹脂
SP 支持枠
ST 基材
図1
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【国際調査報告】