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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年10月6日
【発行日】2018年2月15日
(54)【発明の名称】動物種鑑別方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/37 20060101AFI20180119BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20180119BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20180119BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20180119BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20180119BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20180119BHJP
【FI】
   C12Q1/37ZNA
   C12M1/34 E
   G01N33/68
   G01N30/72 C
   G01N30/88 J
   G01N27/62 V
   G01N27/62 X
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】27
【出願番号】特願2017-508795(P2017-508795)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年3月30日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
【住所又は居所】兵庫県神戸市灘区六甲台町1−1
(71)【出願人】
【識別番号】593012745
【氏名又は名称】一般財団法人カケンテストセンター
【住所又は居所】東京都中央区日本橋室町4−1−22
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】波多野 直哉
【住所又は居所】兵庫県神戸市灘区六甲台町1−1 国立大学法人神戸大学内
(72)【発明者】
【氏名】的崎 尚
【住所又は居所】兵庫県神戸市灘区六甲台町1−1 国立大学法人神戸大学内
(72)【発明者】
【氏名】井土 友香里
【住所又は居所】東京都中央区日本橋本石町4−4−20 一般財団法人カケンテストセンター内
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 恒男
【住所又は居所】東京都中央区日本橋本石町4−4−20 一般財団法人カケンテストセンター内
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041FA12
2G041GA09
2G041HA01
2G041JA02
2G041KA01
2G041LA07
2G045AA24
2G045AA29
2G045AA34
2G045AA40
2G045BA13
2G045BB03
2G045CB01
2G045CB13
2G045CB16
2G045CB17
2G045CB19
2G045DA36
2G045FA34
2G045FB01
2G045FB03
2G045FB06
2G045GC30
4B029AA07
4B029BB15
4B029BB16
4B029CC01
4B029FA15
4B063QA11
4B063QA13
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ36
4B063QQ79
4B063QR16
4B063QR48
4B063QR72
4B063QS02
4B063QS12
4B063QS17
4B063QS31
4B063QX10
(57)【要約】
【課題】ペプチド分析による動物種同定により、動物種についての客観的な鑑別方法および鑑別装置を提供する。
【解決手段】鑑別対象試料から抽出した動物の線維状タンパク質群(コラーゲンなど)を、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で切断してペプチド断片にした後、ペプチド断片のアミノ酸配列を解析するステップと、解析した全てのペプチド断片から、鑑別する動物種全てに共通して検出されるペプチド断片を取り除き、少なくとも1種の動物種で特異的に検出されるペプチド断片を選出するステップと、選出したペプチド断片を用いて試料の動物種を鑑別するステップを備える。選出されたペプチド断片の中で、先ず、特定の1種の動物種に特異的に検出されるペプチド断片を用いて試料の動物種を鑑別し、次に、鑑別できなかった試料に対して、少なくとも2種以上の動物種で特異的に検出されるペプチド断片を用いて動物種を鑑別する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鑑別対象試料から抽出した動物の線維状タンパク質群を、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で切断してペプチド断片にした後、ペプチド断片のアミノ酸配列を解析するステップと、
解析した全てのペプチド断片から、鑑別する動物種全てに共通して検出されるペプチド断片を取り除き、少なくとも1種の動物種で特異的に検出されるペプチド断片を選出するステップと、
選出したペプチド断片を用いて試料の動物種を鑑別するステップ、
を備える動物種鑑別方法。
【請求項2】
選出された前記ペプチド断片について、特定の1種の動物種にのみ特異的に検出されるペプチド断片に基づき試料の動物種を鑑別することを特徴とする請求項1に記載の動物鑑別方法。
【請求項3】
選出された前記ペプチド断片について、特定の1種の動物種にのみ特異的に検出されるペプチド断片に基づき試料の動物種を鑑別した後、未だ鑑別できない試料に対して、少なくとも2種以上の動物種で特異的に検出されるペプチド断片を用いて動物種を鑑別することを特徴とする請求項1に記載の動物種鑑別方法。
【請求項4】
前記線維状タンパク質群がコラーゲンであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の動物種鑑別方法。
【請求項5】
タンパク質分解酵素がトリプシンであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の動物種鑑別方法。
【請求項6】
上記のペプチド断片のアミノ酸配列を解析するステップにおいて、質量分析法により解析することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の動物種鑑別方法。
【請求項7】
前記質量分析は、液体クロマトグラフ−質量分析計(LC−MS)を用いたタンデムマス(MS/MS)解析により、ペプチド断片のプレカーサーイオンとプロダクトイオンの質量電荷比(m/z)を測定し、アミノ酸配列を解析してペプチド断片を同定することを特徴とする請求項6に記載の動物種鑑別方法。
【請求項8】
前記鑑別対象試料が、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の動物種鑑別方法。
【請求項9】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、
鑑別対象試料から抽出したコラーゲンをトリプシンで分解したものに対して、
配列番号1〜38のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別し、動物種を鑑別することを特徴とする動物種鑑別方法。
【請求項10】
配列番号5〜14、配列番号19〜22、及び配列番号25〜33のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別し、動物種を鑑別することを特徴とする請求項9に記載の動物種鑑別方法。
【請求項11】
鑑別対象がウシである場合、GLTGPIGPPGPAGAPGDKGEAGPSGPAGPTGAR(配列番号5)、及び、IGQPGAVGPAGIR(配列番号31)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別し動物種を鑑別することを特徴とする請求項8又は9に記載の動物種鑑別方法。
【請求項12】
鑑別対象がウマである場合において、GEPGPAGLPGPPGER(配列番号2)、SGDRGEAGPAGPAGPIGPVGAR(配列番号11)、GDGGPPGVTGFPGAAGR(配列番号24)、GLPGVAGSLGEPGPLGIAGPPGAR(配列番号26)、GEPGPVGSVGPVGAVGPR(配列番号28)、SGQPGTVGPAGVR(配列番号32)、及び、GSPGPQGPPGVPGPSGILGLTGAR(配列番号37)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別しウマであることを鑑別することを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項13】
鑑別対象がブタである場合において、GETGPAGRPGEVGPPGPPGPAGEK(配列番号8)、SGDRGETGPAGPAGPVGPVGAR(配列番号12)、GIPGEFGLPGPAGPR(配列番号20)、GEPGPAGSVGPAGAVGPR(配列番号29)、GEMGPAGIPGAPGLMGAR(配列番号35)、及び、GSPGPQGPPGAPGPGGISGLTGAR(配列番号38)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別しブタであることを鑑別することを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項14】
鑑別対象がヒツジである場合において、AGEVGPPGPPGPAGEK(配列番号9)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別しヒツジであることを鑑別することを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項15】
鑑別対象の動物種を絞り込む際に、GEPGPAGAVGPAGAVGPR(配列番号27)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウシかシカに絞込み、動物種を鑑別することを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項16】
鑑別対象の動物種を絞り込む際に、GEPGPVGAVGPAGAVGPR(配列番号30)、及び、GFPGSDGVAGPK(配列番号4)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をヒツジかヤギに絞込み、動物種を鑑別することを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項17】
鑑別対象の動物種を絞り込む際に、GIPGPAGAAGATGAR(配列番号14)、及び、GEQGPAGPPGFQGLPGPAGTAGEVGKPGER(配列番号18)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウマかブタに絞込み、動物種を鑑別することを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項18】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、
鑑別対象試料から抽出したコラーゲンをトリプシンで分解したものに対して、
1)配列番号5、配列番号27及び配列番号31のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してウシを同定するステップと、
2)配列番号27及び配列番号33のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してシカを同定するステップと、
3)配列番号11又は配列番号28のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してウマを同定するステップと、
4)配列番号12又は配列番号29のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してブタを同定するステップと、
5)未だ同定されていない残りの試料に対して、配列番号9のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してヒツジを同定し、配列番号7のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してヤギを同定するステップ、
を行うことを特徴とする動物種鑑別方法。
【請求項19】
上記のペプチド断片の有無の判別において、液体クロマトグラフ−質量分析計(LC−MS)を用いたタンデムマス(MS/MS)解析により、ペプチド断片のプレカーサーイオンとプロダクトイオンの質量電荷比(m/z)を測定してペプチド断片の有無を判別することを特徴とする請求項9〜18の何れかに記載の動物種鑑別方法。
【請求項20】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別装置であって、
鑑別対象試料から抽出したコラーゲンをトリプシンで分解したものに対して、
配列番号1〜38のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別する手段を備え、動物種を鑑別することを特徴とする動物種鑑別装置。
【請求項21】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別装置であって、
鑑別対象試料から抽出したコラーゲンをトリプシンで分解したものに対して、
配列番号5〜14、配列番号19〜22、及び配列番号25〜33のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別する手段を備え、動物種を鑑別することを特徴とする動物種鑑別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物種についての客観的な鑑別方法の技術に関するものであり、特に、皮革の種類を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
革製の鞄,衣料,手袋,家具については、家庭用品品質表示法により雑貨工業品品質表示規定が定められている。そのうち、革または合成皮革を製品の全部または一部に使用して製造した衣料については、表示対象となる動物6種(ウシ,ブタ,ヒツジ,ヤギ,ウマ,シカ)の鑑別が必須となっている。
昨今は、品質表示を適正に行うために、製品の流通段階で確実な畜種の判定を求められることが増えている。しかし、現状のところ鑑別の公定法は無い。これら雑貨工業品に係る表示に関して、試験や検査で一般的に用いられる鑑別方法としては、外観観察(厚さ,大きさ,色や柄,毛並み,艶,感触など)、顕微鏡観察(毛穴配列,断面構造,毛小皮紋理,毛髄質など)、機器分析(元素,成分,染料,薬剤分析など)、DNA鑑別が挙げられる(例えば特許文献1)。
【0003】
ここで、外観観察は、長年の経験を必要とし、また客観的,科学的根拠に乏しく説得力に欠けるという問題がある。また、顕微鏡観察は、現在の主流であるが、繊維構造や銀面模様の差がわかりにくい場合などは判別を迷うケースも多く問題がある。また、機器分析は、あくまでも補助的な方法であり、単独での判別は困難である。そして、DNA鑑別については、食肉や穀物等では精度が高く再現性もあるため広く利用されているものの、皮革でのDNA鑑別は実用化に至っていない。その理由としては、皮革の製造工程にある石灰脱毛や再石灰漬けで皮繊維をほぐす作業中にDNAが損傷し、抽出が困難となり、DNAが検出されないことがあるからである。また、例えばクロムなめし革については、酵素分解促進のために脱クロム処理をすることが、却ってDNAを損傷してしまうこともある。このようにDNAの検出は容易ではなく、DNA鑑別による方法は、通常業務で使用するまでには至っていないのが現状である。
【0004】
機器分析による方法として、コラーゲン由来のジペプチド相当の熱分解生成物を検出する熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析法による天然皮革片の同定方法が知られている(非特許文献1を参照)。この同定方法では、天然皮革の同定可能な指標物質として、汚染による分解の阻害は受けにくいHyp由来のジペプチド相当の熱分解生成物が検出できるが、それらの熱分解生成物は動物種の違いにより顕著な差はなく、動物種の鑑別は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−125781号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】倉田正治,“熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析法による天然皮革微小片の同定方法”,BUNSEKI KAGAKU Vol.57, No.7, pp.563-569 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記状況に鑑みて、本発明は、動物の皮革試料などについて、簡便に精度よく動物種を鑑別できる鑑別方法および鑑別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明の動物種鑑別方法は、鑑別対象試料から抽出した動物の線維状タンパク質群を、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で切断してペプチド断片にした後、ペプチド断片のアミノ酸配列を解析するステップと、解析した全てのペプチド断片から、鑑別する動物種全てに共通して検出されるペプチド断片を取り除き、少なくとも1種の動物種で特異的に検出されるペプチド断片を選出するステップと、選出したペプチド断片を用いて試料の動物種を鑑別するステップを備えることを特徴とする。
【0009】
鑑別対象試料は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シカの6種の動物種の皮革や、オーストリッチ、サーモン、鯉、ワニ等の皮革、フォックス、ラクーン、ミンク等の毛皮などである。線維状タンパク質は、球状タンパク質に比べて変性し難く、結合組織、腱、骨、骨格筋などを作ることが知られている。線維状タンパク質の例としては、コラーゲン、ケラチン、エラスチンなどがある。線維状タンパク質群を、タンパク質分解酵素で切断してペプチド断片にした後、ペプチド断片のアミノ酸配列を解析する。タンパク質分解酵素としては、トリプシンを好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。ペプチド断片のアミノ酸配列を解析する方法として、質量分析法(mass spectrometry)、ペプチドシーケンサー、配列特異的なペプチド抗体による検出などが好適に用いることができる。
【0010】
本発明の動物種鑑別方法において、選出されたペプチド断片の中で、先ず、特定の1種の動物種に特異的に検出されるペプチド断片を用いて試料の動物種を鑑別し、次に、鑑別できなかった試料に対して、少なくとも2種以上の動物種で特異的に検出されるペプチド断片を用いて動物種を鑑別することでもよい。
最初に、特定の1種の動物種に特異的に検出されるペプチド断片を用いて試料の動物種を鑑別することにより、効率よく、鑑別対象試料の動物種を鑑別することが可能になる。すなわち、特定の1種の動物種にのみ、特異的に検出されるペプチド断片があるならば、そのペプチド断片の有無を判別し、そのペプチド断片が見つかれば特定の1種の動物種に同定できるのである。
【0011】
上記のアミノ酸配列を解析するステップにおいて、質量分析法により解析する場合、具体的には、液体クロマトグラフ(liquid chromatograph;LC)−質量分析計(mass spectrometer;MS)(LC−MS)を用いたタンデムマス(MS/MS)解析により、ペプチド断片のプレカーサーイオンとプロダクトイオンの質量電荷比(m/z)を測定し、アミノ酸配列を解析してペプチド断片を同定する。
【0012】
本発明の動物種鑑別方法では、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法である場合、鑑別対象試料から抽出したコラーゲンをトリプシンで分解したものに対して、配列番号1〜38のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別し、動物種を鑑別する。
すなわち、Collagen I α1,Collagen I α2,Collagen III α1(以下、それぞれ、COL1A1,COL1A2,COL3A1と略する)の部分配列である、GEPGPAGLPGPPGER(配列番号1)、GEPGPTGLPGPPGER(配列番号2)、GFPGADGVAGPK(配列番号3)、GFPGSDGVAGPK(配列番号4)、GLTGPIGPPGPAGAPGDKGEAGPSGPAGPTGAR(配列番号5)、GLTGPIGPPGPAGAPGDKGETGPSGPAGPTGAR(配列番号6)、GETGPAGRPGEVGPPGPPGPAGEK(配列番号7)、GETGPAGRPGEAGPPGPPGPAGEK(配列番号8)、AGEVGPPGPPGPAGEK(配列番号9)、SGDRGETGPAGPAGPIGPVGAR(配列番号10)、SGDRGEAGPAGPAGPIGPVGAR(配列番号11)、SGDRGETGPAGPAGPVGPVGAR(配列番号12)、GIPGPVGAAGATGAR(配列番号13)、GIPGPAGAAGATGAR(配列番号14)、EGPVGLPGIDGRPGPIGPAGAR(配列番号15)、EGPAGLPGIDGRPGPIGPAGAR(配列番号16)、GEQGPAGPPGFQGLPGPAGTAGEAGKPGER(配列番号17)、GEQGPAGPPGFQGLPGPAGTAGEVGKPGER(配列番号18)、GIPGEFGLPGPAGAR(配列番号19)、GIPGEFGLPGPAGPR(配列番号20)、GPPGESGAAGPTGPIGSR(配列番号21)、GPPGESGAAGPAGPIGSR(配列番号22)、GDGGPPGATGFPGAAGR(配列番号23)、GDGGPPGVTGFPGAAGR(配列番号24)、GLPGVAGSVGEPGPLGIAGPPGAR(配列番号25)、GLPGVAGSLGEPGPLGIAGPPGAR(配列番号26)、GEPGPAGAVGPAGAVGPR(配列番号27)、GEPGPVGSVGPVGAVGPR(配列番号28)、GEPGPAGSVGPAGAVGPR(配列番号29)、GEPGPVGAVGPAGAVGPR(配列番号30)、IGQPGAVGPAGIR(配列番号31)、SGQPGTVGPAGVR(配列番号32)、TGQPGAVGPAGIR(配列番号33)、GEMGPAGIPGAPGLIGAR(配列番号34)、GEMGPAGIPGAPGLMGAR(配列番号35)、GAPGPQGPPGAPGPLGIAGLTGAR(配列番号36)、GSPGPQGPPGVPGPSGLIGITGAR(配列番号37)、及び、GSPGPQGPPGAPGPGGISGITGAR(配列番号38)のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別し、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物種を鑑別する。
配列番号1〜38のペプチド断片は、COL1A1,COL1A2及びCOL3A1について、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物種全てに共通する部分配列ではなく、少なくとも1種の動物種に特異的に存在する部分配列である。配列番号1〜38のペプチド断片のアミノ酸配列は、コラーゲン分子の安定性から、6種の動物種間において保存性が高いものである。
【0013】
本発明の動物種鑑別方法では、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、鑑別対象試料から抽出したコラーゲンをトリプシンで分解したものに対して、配列番号5〜14、配列番号19〜22、及び配列番号25〜33のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別し、動物種を鑑別することがより好ましい。
配列番号5〜14、配列番号19〜22、及び配列番号25〜33のアミノ酸配列のペプチド断片によれば、質量分析機器によらず、安定的に検出できる。
【0014】
本発明の動物種鑑別方法において、鑑別対象がウシである場合は、GLTGPIGPPGPAGAPGDKGEAGPSGPAGPTGAR(配列番号5)、及び、IGQPGAVGPAGIR(配列番号31)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別し動物種を鑑別することでもよい。
配列番号5及び31のペプチド断片は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物の中で、ウシのみに特異的に有るペプチド断片であり、これらのペプチド断片のみで、ウシを同定できる。
【0015】
本発明の動物種鑑別方法において、鑑別対象がウマである場合は、GEPGPAGLPGPPGER(配列番号2)、SGDRGEAGPAGPAGPIGPVGAR(配列番号11)、GDGGPPGVTGFPGAAGR(配列番号24)、GLPGVAGSLGEPGPLGIAGPPGAR(配列番号26)、GEPGPVGSVGPVGAVGPR(配列番号28)、SGQPGTVGPAGVR(配列番号32)、及び、GSPGPQGPPGVPGPSGILGLTGAR(配列番号37)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別しウマであることを鑑別することでもよい。
配列番号2,11,24,26,28,32及び37のペプチド断片は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物の中で、ウマのみに特異的に有るペプチド断片であり、これらのペプチド断片のみで、ウマを同定できる。
【0016】
本発明の動物種鑑別方法において、鑑別対象がブタである場合は、GETGPAGRPGEVGPPGPPGPAGEK(配列番号8)、SGDRGETGPAGPAGPVGPVGAR(配列番号12)、GIPGEFGLPGPAGPR(配列番号20)、GEPGPAGSVGPAGAVGPR(配列番号29)、GEMGPAGIPGAPGLMGAR(配列番号35)、及び、GSPGPQGPPGAPGPGGISGITGAR(配列番号38)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別しブタであることを鑑別することでもよい。
配列番号8,12,20,29,35及び38のペプチド断片は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの動物6種の中で、ブタのみに特異的に有るペプチド断片であり、これらのペプチド断片のみで、ブタを同定できる。
【0017】
本発明の動物種鑑別方法において、鑑別対象がヒツジである場合は、AGEVGPPGPPGPAGEK(配列番号9)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別しヒツジであることを鑑別することでもよい。
配列番号9のペプチド断片は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物の中で、ヒツジのみに特異的に有るペプチド断片であり、これらのペプチド断片のみで、ヒツジを同定できる。
【0018】
本発明の動物種鑑別方法において、鑑別対象の動物種を絞り込む際に、GEPGPAGAVGPAGAVGPR(配列番号27)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウシかシカに絞込み、動物種を鑑別することでもよい。
配列番号27のペプチド断片は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物の中で、ウシとシカだけに特異的に有るペプチド断片であり、これらのペプチド断片のみで、ウシかシカに絞り込むか、或は、ウシかシカに同定できる。
【0019】
本発明の動物種鑑別方法において、鑑別対象の動物種を絞り込む際に、GEPGPVGAVGPAGAVGPR(配列番号30)、及び、GFPGSDGVAGPK(配列番号4)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をヒツジかヤギに絞込み、動物種を鑑別することでもよい。
配列番号4及び30のペプチド断片は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物の中で、ヒツジとヤギだけに特異的に有るペプチド断片であり、これらのペプチド断片のみで、ヒツジかヤギに絞り込むか、或は、ヒツジかヤギに同定できる。
【0020】
本発明の動物種鑑別方法において、鑑別対象の動物種を絞り込む際に、GIPGPAGAAGATGAR(配列番号14)、及び、GEQGPAGPPGFQGLPGPAGTAGEVGKPGER(配列番号18)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウマかブタに絞込み、動物種を鑑別することでもよい。
配列番号14及び18のペプチド断片は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物の中で、ウマとブタだけに特異的に有るペプチド断片であり、これらのペプチド断片のみで、ウマかブタに絞り込むか、或は、ウマかブタに同定できる。
【0021】
本発明の動物種鑑別方法において、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、鑑別対象試料から抽出したコラーゲンをトリプシンで分解したものに対して、下記1)〜5)のステップを行うことが好ましい。
1)配列番号5、配列番号27及び配列番号31のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してウシを同定するステップ
2)配列番号27及び配列番号33のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してシカを同定するステップ
3)配列番号11又は配列番号28のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してウマを同定するステップ
4)配列番号12又は配列番号29のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してブタを同定するステップ
5)上記1〜4のステップを行っても、未だ同定されていない残りの試料に対して、配列番号9のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してヒツジを同定し、配列番号7のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してヤギを同定するステップ
【0022】
ここで、ペプチド断片の有無を判別する方法として、例えば、液体クロマトグラフ−質量分析計(LC−MS)を用いたタンデムマス(MS/MS)解析により、ペプチド断片のプレカーサーイオンとプロダクトイオンの質量電荷比(m/z)を測定し、ペプチド断片の有無を判別できる。
上記1)〜5)のステップでは、質量電荷比(m/z)の測定結果で、COL1A1の3つのピークとCOL1A2の2つのピークの計5ピークのみに着目することにより簡便に動物種の同定が可能になる。
【0023】
次に、本発明の動物種鑑別装置について説明する。
本発明の動物種鑑別装置は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別装置であって、鑑別対象試料から抽出したコラーゲンをトリプシンで分解したものに対して、配列番号1〜38のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別する手段を備え、動物種を鑑別することを特徴とする動物種鑑別装置である。
【0024】
また、本発明の動物種鑑別装置は、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別装置であって、鑑別対象試料から抽出したコラーゲンをトリプシンで分解したものに対して、配列番号5〜14、配列番号19〜22、及び配列番号25〜33のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別する手段を備え、動物種を鑑別することを特徴とする動物種鑑別装置である。
ここで、ペプチド断片の有無を判別する手段は、液体クロマトグラフ−質量分析計(LC−MS)を用いたタンデムマス(MS/MS)解析により、ペプチド断片のプレカーサーイオンとプロダクトイオンの質量電荷比(m/z)を測定し、ペプチド断片の有無を判別するのが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の鑑別方法もしくは鑑別装置によれば、動物の皮革試料などから抽出した線維状タンパク質群を分析して、簡便に精度よく動物種を鑑別することが可能になり、皮革製品の品質表示を的確に行えるといった効果を有する。本発明の鑑別方法は、従来から主流となっている顕微鏡法を補完するに留まらず、衣料を含む雑貨工業品等がグローバルに取引される状況下で、国際標準として利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の動物種鑑別方法のフロー図
図2】実施例1の動物種鑑別方法のフロー図(1)
図3】実施例1の動物種鑑別方法のフロー図(2)
図4】6種の動物種の鑑別処理フロー図
図5】ウシの同定処理フロー図
図6】ウマの同定処理フロー図
図7】ブタの同定処理フロー図
図8】ヒツジの同定処理フロー図
図9】ウマ又はシカの同定処理フロー図
図10】ヒツジ又はヤギの同定処理フロー図
図11】ウマ又はブタの同定処理フロー図
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【0028】
本発明の動物種鑑別方法のフローを図1に示す。
上述したように、本発明の動物種鑑別方法では、鑑別対象試料から動物の線維状タンパク質群を抽出し(ステップS101)、線維状タンパク質群をタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で切断してペプチド断片に分解し(ステップS102)、ペプチド断片のアミノ酸配列を解析する(ステップS103)。次に、解析した全てのペプチド断片から、鑑別する動物種全てに共通して検出されるペプチド断片を除外する(ステップS104)。
そこで、少なくとも1種の動物種で特異的に検出されるペプチド断片を選出し(ステップS105)、その選出したペプチド断片を用いて試料の動物種を鑑別する(ステップS106)。
【実施例1】
【0029】
本実施例では、ウシ,ウマ,ブタ,ヒツジ,ヤギ,シカの6種の動物の天然皮革に関して、動物種を鑑別する例について説明する。
先ず、天然皮革の動物種に関して、皮の組織および主要な繊維であるコラーゲンについて説明する。動物皮は、表皮層,真皮層並びにその下の皮下結合組織からなっている。表皮層は角質層、顆粒層など4層からなっており、革としては不用な層であり除去される。また、乳頭層中および皮下組織中のエラスチン繊維も、製造工程中の機械的操作や薬品処理でほとんど除去される。さらに、毛を構成するケラチンは、毛皮の場合を除き革の製造には不用で、石灰付け処理で分解除去される。よって、革を構成する繊維は、コラーゲン線維が大部分を占める。真皮層は乳頭層(銀面層)と網状層に分かれる。真皮層の最上層は革でいう銀面層に当たり、この層は網状層より遥かに細かい繊維が緻密に交絡し、繊維の多くは水平方向に走行している。そのため、革の銀面層は網状層に比べ組織が緻密であり、伸びや水分透過性は悪くなる。
【0030】
コラーゲンのアミノ酸配列は、他のタンパク質に比べて特異的である。アミノ酸配列について、1次構造の特徴がGly−X−Yの繰り返しで、3残基ごとにグリシンが存在する。X,Yは任意のアミノ酸であるが、その種類によりX,Yを占める頻度は異なっている。このような3つの組の繰り返しからなるアミノ酸約1000残基(分子量約10万)のポリペプチド鎖(α鎖)が3本より合わさってできているのが、コラーゲン分子である。3本鎖構造は非常に強固であり酵素においても分解されない。
【0031】
コラーゲン構造を作っている分子種は、少なくとも6種類(I〜V型とI型トリマー)ある。コラーゲン分子を構成しているポリペプチド鎖は8種類知られており、この中で量的に最も多いものはI型コラーゲンであり、全コラーゲンの80〜90%の量に達する。
【0032】
次に、実験で使用した鑑別対象試料について説明する。鑑別対象試料は、家庭用品品質表示法雑貨工業品規定により、衣料品の表示対象となる動物6種(ウシ,ウマ,ブタ,ヒツジ,ヤギ,シカ)について、流通量の多いクロムなめし革を主とし、色は濃色と淡色でおこなった。なお、タンニンなめし革も加え、加工ではDNA法で抽出困難とされる濃色染色品や仕上げ剤の施された試料も用いることとし、履歴が曖昧でなく明確な革を選定した。
以下では、図2及び図3を参照して、上記の鑑別対象試料に対する6種の動物種鑑別方法のフローについて詳細に説明する。
【0033】
<ステップS01:皮革の脱脂工程>
ジエチルエーテル(和光純薬製)中に試料を浸漬し、1時間に6回以上循環するようにして2時間洗浄した。ジエチルエーテルが蒸発するよう試料を静置した後、純水に1時間浸漬した。この場合に使用する浴比は100:1とし、時々かき混ぜる。試料から余分な水を除去した後、試料を静置し自然乾燥した。
【0034】
<ステップS02:皮革の粉砕工程>
冷凍粉砕機(日本分析工業製;JFC−300)を使用して、洗浄した繊維を液体窒素で凍結させ15分間粉砕した。
【0035】
<ステップS03:皮革の酵素消化工程>
試料を約0.5mgに秤量しチューブに移し、25mM炭酸水素アンモニウム(和光純薬製)を各チューブに対して500μLずつ加え、60℃でインキュベーターを用い1250rpmにて1時間処理を行い、10分間室温にて静置した。20μgトリプシン(Promega製タンパク質配列決定用)を50μLの25mM炭酸水素アンモニウム(和光純薬製)で溶かし、各チューブに加えた。インキュベーターを用い37℃,250rpmにて18時間酵素反応を行った。
【0036】
<ステップS04:消化ペプチドの精製・濃縮工程>
試料(約550μL)を0.22μmフィルター(タカラバイオ製;SUPRECTM−01)を用いて4℃下4900xgで10分間フィルトレーションした。その後、試料を−80℃で10分間凍結し、凍結乾燥機(東京理科器械製;EYELAFDU−1200)を用いて、−50℃で真空凍結乾燥をオーバーナイトで行った。
次に、試料を0.1%ギ酸で溶解し、ボルテックスした後、少々遠心して5分間ソニケーションをおこなった。ソニケーションした試料は、再び0.22μmフィルターを用いて4℃下4900xgで10分間フィルトレーションし、採取した試料のうち2μLをLC−MS/MS解析に用いた。ギ酸はLCMS用を用いた。
【0037】
<ステップS05:質量分析工程>
質量分析には、高速液体クロマトグラフイオントラップ型−飛行時間型質量分析計(島津製作所製;LCMS−IT−TOF)ならびにトリプル四重極LCMS/MSシステム(アジレント・テクノロジー製;G6460 QQQ LC−MS)を使用した。
【0038】
<ステップS06:ペプチド断片の探索工程>
LCMS−IT−TOFタンパク質同定ソフト(Mascot)にあるError Tolerant Search(プレカーサーイオンの質量の違いを許容する検索)を用い、動物種に特徴的なペプチド断片を探索した。なお、ヒドロキシプロリン,ヒドロキシリジンを含むペプチドを検索可能にするため、タンパク質翻訳後修飾のパラメーターで、システイン修飾(アルキル化)を外し、一般的に用いるOxidation(M)のみならず、Oxidation(P)およびOxidation(K)を加えた。
【0039】
6種(ウシ,ウマ,ブタ,ヒツジ,ヤギ,シカ)について、特異的なペプチド断片が有るかについての結果は以下の通りである。
(A)LCMS−IT−TOF
LCMS−IT−TOFで分析後おこなったMascotサーチで、主にコラーゲン3種(COL1A1,COL1A2,COL3A1)が検出された。そこで各コラーゲンについて、6種の動物種でアミノ酸配列が異なる部分を選出した。COL1A1,COL1A2,COL3A1それぞれの結果を、表1,2,3に示す。なお、下記表中の項目AAの表記はウシのアミノ酸配列に相当するアミノ配列の番号を示し、項目Oxは酸化修飾されるアミノ酸の数の総和を示し、項目m/zは主に検出されるイオンの質量電荷比を示し、項目Mr(calc)は 理論分子量(モノアイソトピック質量)を示している。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
検出されたペプチド断片のアミノ酸配列は動物種間において保存性が高く、コラーゲン分子の安定性を示していた。しかし、部分アミノ酸シークエンス分析により、一残基(A)と(V)など僅かな違いが認められた。
なお、配列番号19と同じ質量電荷比、同じ理論分子量のアミノ酸配列が、既存のデータベースに存在する。すなわち、GIPGEFGLPGPAGAR(配列番号19)とは異なるアミノ酸配列のGLPGEFGLPGPAGAR(配列番号39)が存在する。これは、ロイシン(L)とイソロイシン(I)は同じ分子量で、質量としては差異がないからである。同様に、配列番号34と同じ質量電荷比、同じ理論分子量のアミノ酸配列が、既存のデータベースに存在する。GEMGPAGIPGAPGLIGAR(配列番号34)とは異なるアミノ酸配列のGEMGPAGIPGAPGLLGAR(配列番号40)が存在する。
【0044】
(B)QQQ LC−MS
LCMS−IT−TOF分析結果より明らかとなった動物種同定が可能なペプチド断片のうち、QQQ LC−MS分析で安定して検出されたペプチド断片を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
QQQ LC−MSにて皮革動物種鑑別試験をルーチンでおこなう場合、表4に示した特異的なペプチド断片をさらに絞り込むことで動物種の同定が簡便化できる。ウシ,ウマ,ブタ,ヒツジ,ヤギ,シカの6種の動物の皮革であれば、COL1A1の3ピークならびにCOL1A2の2ピークの計5ピークのみに着目することで簡便に動物種の同定が可能となる。
【0047】
ウシ,ウマ,ブタ,ヒツジ,ヤギ,シカの6種の動物の皮革の同定の手順の一例を説明する。
(1)先ず、最も流通量の多いウシに特異的に検出されるm/z951.8,604.8,767に着目し、ウシを同定する。
(2)この時、m/z767はシカにも共通に検出されるが、シカはm/z590.8も特異的であるから、これらの検出有無によりシカを同定する。
(3)ウマは、特異的m/z649.3あるいはm/z802.9に着目し同定する。なお、確認のために、m/z591.8の有無を確認しても良い。
(4)ブタは、特異的m/z654.7あるいはm/z774.8に着目し、同定する。
(5)ヒツジとヤギは、ヒツジが特異的m/z724.9を示し、ヤギが特異的m/z739.3を示すという違いに着目して、これらを同定する。
【0048】
動物6種(ウシ,ブタ,ヒツジ,ヤギ,ウマ,シカ)の天然皮革について、上記(1)〜(5)の同定の手順を用いて動物種を鑑別した結果と、LCMS−IT−TOFを用いて鑑別した結果を比較した。試料は各動物種につき3〜5タイプ準備し、解析精度を評価したところ、ほぼ100%と高い割合で解析できることがわかった。
DNA鑑別法やMALDI-TOF MSを用いた分析では、皮革の加工段階での薬剤による損傷や染料、なめし剤等の來雑物が原因で鑑別が困難であるが、本発明の動物種鑑別方法では、いずれの課題も解決されており実用の可能性がある。
【実施例2】
【0049】
本実施例では、フォックス,ラクーン,ミンク等の毛皮に関して、動物種を鑑別する例について説明する。フォックス,ラクーン,ミンク等の毛皮に対する動物種鑑別方法のフローについても、実施例1と同様に図1のフローに従う。
先ず、フォックス,ラクーン,ミンク等の毛皮からケラチンを抽出する(ステップS101)。抽出したケラチンをケラチン分解酵素で分解する(ステップS102)。ケラチン分解酵素としては、トリプシンを用いることができる。
そして、実施例1と同様に、ペプチド断片のアミノ酸配列を解析し(ステップS103)、鑑別する動物種全てに共通して検出されるペプチド断片を除外し(ステップS104)、動物種で特異的に検出されるペプチド断片を選出する(ステップS105)。そして、選出したペプチド断片を用いて試料の動物種を鑑別する(ステップS106)。
【0050】
(その他の実施例)
(1)鑑別対象がウシである場合、図5に示すように、配列番号5又は配列番号31のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別しウシであることを鑑別できる。
(2)鑑別対象がウマである場合、図6に示すように、配列番号2、配列番号11、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号32又は配列番号37のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別しウマであることを鑑別できる。
(3)鑑別対象がブタである場合、図7に示すように、配列番号8、配列番号12、配列番号20、配列番号29、配列番号35又は配列番号38のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別しブタであることを鑑別できる。
(4)鑑別対象がヒツジである場合、図8に示すように、配列番号9のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別しヒツジであることを鑑別できる。
(5)鑑別対象の動物種を絞り込む際、図9に示すように、配列番号27のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウシかシカに絞込むことができる。
(6)鑑別対象の動物種を絞り込む際に、図10に示すように、配列番号4又は配列番号30のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をヒツジかヤギに絞込むことができる。
(7)鑑別対象の動物種を絞り込む際、図11に示すように、配列番号14又は配列番号18のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウマかブタに絞込むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、天然皮革の動物種の鑑別に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2017年6月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、
鑑別対象試料から抽出した動物皮の皮由来コラーゲンを、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で切断してペプチド断片にした後、液体クロマトグラフ−質量分析計(LC−MS)を用いたタンデムマス(MS/MS)解析により、ペプチド断片のプレカーサーイオンとプロダクトイオンの質量電荷比(m/z)を測定し、アミノ酸配列を解析してペプチド断片を同定してペプチド断片のアミノ酸配列を解析するステップと、
解析した全てのペプチド断片から、鑑別する動物種全てに共通して検出されるペプチド断片を取り除き、少なくとも1種の動物種で特異的に検出されるペプチド断片を選出して配列データ群を予め作成するステップと、
作成した配列データ群に含まれるペプチド断片を用いて試料の動物種を鑑別するステップ、
を備える動物種鑑別方法。
【請求項2】
選出された前記ペプチド断片について、特定の1種の動物種にのみ特異的に検出されるペプチド断片に基づき試料の動物種を鑑別することを特徴とする請求項1に記載の動物鑑別方法。
【請求項3】
選出された前記ペプチド断片について、特定の1種の動物種にのみ特異的に検出されるペプチド断片に基づき試料の動物種を鑑別した後、未だ鑑別できない試料に対して、少なくとも2種以上の動物種で特異的に検出されるペプチド断片を用いて動物種を鑑別することを特徴とする請求項1に記載の動物種鑑別方法。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
タンパク質分解酵素がトリプシンであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の動物種鑑別方法。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
配列番号1〜38のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別し、動物種を鑑別することを特徴とする請求項1〜3,5の何れかに記載の動物種鑑別方法。
【請求項10】
配列番号5〜14、配列番号19〜22、及び配列番号25〜33のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別し、動物種を鑑別することを特徴とする請求項9に記載の動物種鑑別方法。
【請求項11】
鑑別対象がウシである場合、
GLTGPIGPPGPAGAPGDKGEAGPSGPAGPTGAR(配列番号5)、及び、IGQPGAVGPAGIR(配列番号31)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別し動物種を鑑別することを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項12】
鑑別対象がウマである場合において、GEPGPAGLPGPPGER(配列番号2)、SGDRGEAGPAGPAGPIGPVGAR(配列番号11)、GDGGPPGVTGFPGAAGR(配列番号24)、GLPGVAGSLGEPGPLGIAGPPGAR(配列番号26)、GEPGPVGSVGPVGAVGPR(配列番号28)、SGQPGTVGPAGVR(配列番号32)、及び、GSPGPQGPPGVPGPSGILGLTGAR(配列番号37)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別しウマであることを鑑別することを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項13】
鑑別対象がブタである場合において、GETGPAGRPGEVGPPGPPGPAGEK(配列番号8)、SGDRGETGPAGPAGPVGPVGAR(配列番号12)、GTPGEFGLPGPAGPR(配列番号20)、GEPGPAGSVGPAGAVGPR(配列番号29)、GEMGPAGIPGAPGLMGAR(配列番号35)、及び、GSPGPQGPPGAPGPGGISGLTGAR(配列番号38)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別しブタであることを鑑別することを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項14】
鑑別対象がヒツジである場合において、AGEVGPPGPPGPAGEK(配列番号9)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別しヒツジであることを鑑別することを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項15】
鑑別対象の動物種を絞り込む際に、GEPGPAGAVGPAGAVGPR(配列番号27)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウシかシカに絞込み、動物種を鑑別することを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項16】
鑑別対象の動物種を絞り込む際に、GEPGPVGAVGPAGAVGPR(配列番号30)、及び、GFPGSDGVAGPK(配列番号4)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をヒツジかヤギに絞込み、動物種を鑑別することを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項17】
鑑別対象の動物種を絞り込む際に、GIPGPAGAAGATGAR(配列番号14)、及び、GEQGPAGPPGFQGLPGPAGTAGEVGKPGER(配列番号18)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウマかブタに絞込み、動物種を鑑別することを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項18】
1)配列番号5、配列番号27及び配列番号31のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してウシを同定するステップと、
2)配列番号27及び配列番号33のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してシカを同定するステップと、
3)配列番号11又は配列番号28のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してウマを同定するステップと、
4)配列番号12又は配列番号29のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してブタを同定するステップと、
5)未だ同定されていない残りの試料に対して、配列番号9のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してヒツジを同定し、配列番号7のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してヤギを同定するステップ、
を行うことを特徴とする請求項9又は10に記載の動物種鑑別方法。
【請求項19】
(削除)
【請求項20】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別装置であって、
鑑別対象試料から抽出した動物皮の皮由来コラーゲンを、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で分解したものに対して、液体クロマトグラフ−質量分析計(LC−MS)を用いたタンデムマス(MS/MS)解析により、ペプチド断片のプレカーサーイオンとプロダクトイオンの質量電荷比(m/z)を測定し、アミノ酸配列を解析してペプチド断片を同定してペプチド断片のアミノ酸配列を解析する手段と、
配列番号1〜38のアミノ酸配列データ群に含まれるペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別する手段を備え、動物種を鑑別することを特徴とする動物種鑑別装置。
【請求項21】
配列番号5〜14、配列番号19〜22、及び配列番号25〜33のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別する手段を備え、動物種を鑑別することを特徴とする請求項20に記載の動物種鑑別装置。
【請求項22】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、
鑑別対象試料から抽出した動物皮の皮由来コラーゲンをトリプシンで分解したものに対し、配列番号1〜38のアミノ酸配列データ群を参照し、
1)鑑別対象がウマである場合において、GEPGPAGLPGPPGER(配列番号2)、SGDRGEAGPAGPAGPIGPVGAR(配列番号11)、GDGGPPGVTGFPGAAGR(配列番号24)、GLPGVAGSLGEPGPLGIAGPPGAR(配列番号26)、GEPGPVGSVGPVGAVGPR(配列番号28)、SGQPGTVGPAGVR(配列番号32)、及び、GSPGPQGPPGVPGPSGILGLTGAR(配列番号37)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別しウマであることを鑑別し、
2)鑑別対象がブタである場合において、GETGPAGRPGEVGPPGPPGPAGEK(配列番号8)、SGDRGETGPAGPAGPVGPVGAR(配列番号12)、GIPGEFGLPGPAGPR(配列番号20)、GEPGPAGSVGPAGAVGPR(配列番号29)、GEMGPAGIPGAPGLMGAR(配列番号35)、及び、GSPGPQGPPGAPGPGGISGLTGAR(配列番号38)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別しブタであることを鑑別し、
3)鑑別対象がヒツジである場合において、AGEVGPPGPPGPAGEK(配列番号9)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別しヒツジであることを鑑別、することを特徴とする動物種鑑別方法。
【請求項23】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、
鑑別対象試料から抽出した動物皮の皮由来コラーゲンをトリプシンで分解したものに対し、配列番号1〜38のアミノ酸配列データ群を参照し、鑑別対象の動物種を絞り込む際に、
1)GEPGPAGAVGPAGAVGPR(配列番号27)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウシかシカに絞込み、動物種を鑑別し、
或は、
2)GIPGPAGAAGATGAR(配列番号14)、及び、GEQGPAGPPGFQGLPGPAGTAGEVGKPGER(配列番号18)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウマかブタに絞込み、動物種を鑑別、することを特徴とする動物種鑑別方法。

【手続補正書】
【提出日】2017年10月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、配列番号1〜38のアミノ酸配列データ群を参照し、GEPGPAGAVGPAGAVGPR(配列番号27)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウシかシカに絞込み、動物種を鑑別する動物種鑑別方法。
【請求項2】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、配列番号1〜38のアミノ酸配列データ群を参照し、GIPGPAGAAGATGAR(配列番号14)又はGEQGPAGPPGFQGLPGPAGTAGEVGKPGER(配列番号18)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウマかブタに絞込み、動物種を鑑別する動物種鑑別方法。
【請求項3】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、配列番号1〜38のアミノ酸配列データ群を参照し、1)配列番号5、配列番号27及び配列番号31のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してウシを同定するステップと、2)配列番号27及び配列番号33のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してシカを同定するステップと、3)配列番号11又は配列番号28のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してウマを同定するステップと、4)配列番号12又は配列番号29のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してブタを同定するステップと、5)未だ同定されていない残りの試料に対して、配列番号9のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してヒツジを同定し、配列番号7のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別してヤギを同定するステップ、を行うことを特徴とする動物種鑑別方法。
【請求項4】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、配列番号1〜38のアミノ酸配列データ群を参照し、GFPGSDGVAGPK(配列番号4)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をヒツジかヤギに絞込み、動物種を鑑別することを特徴とする動物種鑑別方法。
【請求項5】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、
鑑別対象試料から抽出した動物皮の皮由来コラーゲンをタンパク質分解酵素で分解してペプチド断片にしたものに対し、鑑別する動物種全てに共通して検出されるペプチド断片を取り除いた後、少なくとも1種の動物種で特異的に検出される配列番号1〜38のアミノ酸配列データ群を参照し、
1)GEPGPAGAVGPAGAVGPR(配列番号27)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウシかシカに絞込み、動物種を鑑別し、
或は、
2)GIPGPAGAAGATGAR(配列番号14)、及び、GEQGPAGPPGFQGLPGPAGTAGEVGKPGER(配列番号18)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別して、鑑別対象をウマかブタに絞込み、動物種を鑑別、することを特徴とする動物種鑑別方法。
【請求項6】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、
鑑別対象試料から抽出した動物皮の皮由来コラーゲンをタンパク質分解酵素で分解してペプチド断片にしたものに対し、鑑別する動物種全てに共通して検出されるペプチド断片を取り除いた後、少なくとも1種の動物種で特異的に検出される配列番号1〜38のアミノ酸配列データ群を参照し、
IGQPGAVGPAGIR(配列番号31)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別し動物種をウシと鑑別することを特徴とする動物種鑑別方法。
【請求項7】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、
鑑別対象試料から抽出した動物皮の皮由来コラーゲンをタンパク質分解酵素で分解してペプチド断片にしたものに対し、鑑別する動物種全てに共通して検出されるペプチド断片を取り除いた後、少なくとも1種の動物種で特異的に検出される配列番号1〜38のアミノ酸配列データ群を参照し、
GEPGPAGLPGPPGER(配列番号2)、SGDRGEAGPAGPAGPIGPVGAR(配列番号11)、GDGGPPGVTGFPGAAGR(配列番号24)、GLPGVAGSLGEPGPLGIAGPPGAR(配列番号26)、GEPGPVGSVGPVGAVGPR(配列番号28)、SGQPGTVGPAGVR(配列番号32)、及び、GSPGPQGPPGVPGPSGILGLTGAR(配列番号37)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別し動物種をウマと鑑別することを特徴とする動物種鑑別方法。
【請求項8】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、
鑑別対象試料から抽出した動物皮の皮由来コラーゲンをタンパク質分解酵素で分解してペプチド断片にしたものに対し、鑑別する動物種全てに共通して検出されるペプチド断片を取り除いた後、少なくとも1種の動物種で特異的に検出される配列番号1〜38のアミノ酸配列データ群を参照し、
GETGPAGRPGEVGPPGPPGPAGEK(配列番号8)、SGDRGETGPAGPAGPVGPVGAR(配列番号12)、GIPGEFGLPGPAGPR(配列番号20)、GEPGPAGSVGPAGAVGPR(配列番号29)、GEMGPAGIPGAPGLMGAR(配列番号35)、及び、GSPGPQGPPGAPGPGGISGLTGAR(配列番号38)のアミノ酸配列のペプチド断片の中で、少なくとも何れかのペプチド断片の有無を判別し動物種をブタと鑑別することを特徴とする動物種鑑別方法。
【請求項9】
ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びシカの6種の動物から選択される少なくとも1種の動物由来の動物皮の鑑別方法であって、
鑑別対象試料から抽出した動物皮の皮由来コラーゲンをタンパク質分解酵素で分解してペプチド断片にしたものに対し、鑑別する動物種全てに共通して検出されるペプチド断片を取り除いた後、少なくとも1種の動物種で特異的に検出される配列番号1〜38のアミノ酸配列データ群を参照し、
AGEVGPPGPPGPAGEK(配列番号9)のアミノ酸配列のペプチド断片の有無を判別し動物種をヒツジと鑑別することを特徴とする動物種鑑別方法。
【国際調査報告】