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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年10月6日
【発行日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】細穴放電加工機
(51)【国際特許分類】
   B23H 1/00 20060101AFI20170901BHJP
   B23H 9/14 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
   B23H1/00 B
   B23H9/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
【出願番号】特願2017-508940(P2017-508940)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年3月31日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 智洋
【テーマコード(参考)】
3C059
【Fターム(参考)】
3C059AA01
3C059AB01
3C059DA06
3C059DD10
3C059EA02
3C059EA03
3C059HA13
3C059HA14
(57)【要約】
細穴加工用の電極(116)と、ワーク(130)との間に電圧を印加して放電させ、放電のエネルギーでワークに細穴を加工する細穴放電加工機(100)が、電極(116)を挿通させる中空部を有し、湾曲可能なガイドチューブ(18)と、ガイドチューブ(18)の先端部を支持し、ガイドチューブ(18)の先端部を所望の角度に傾斜させるチューブホルダ(20)とを具備することで、ワークがブリスクのように周方向に多数のタービンブレードを配設したような複雑な形状を有している場合でも、ワーク表面の目標加工点へワークと干渉することなく、電極を正確に位置決めし、細穴加工を可能とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細穴加工用の電極とワークとの間に電圧を印加して放電させ、放電のエネルギーでワークに細穴を加工する細穴放電加工機において、
前記電極を挿通させる中空部を有し、湾曲可能なガイドチューブと、
前記ガイドチューブの先端部を支持し、前記ガイドチューブの先端部を所望の角度に傾斜させるチューブホルダと、
を具備することを特徴とした細穴放電加工機。
【請求項2】
前記ガイドチューブは、基端側が前記電極の回転軸線に略平行に保持され、先端側が前記電極の回転軸線に対して傾斜するように保持されており、先端部に前記電極を前記電極の回転軸線に対して所定の角度で案内する位置決めガイドが取り付けられている請求項1に記載の細穴放電加工機。
【請求項3】
前記ガイドチューブの基端部に前記電極を該ガイドチューブ内に導入する導入部が取り付けられており、前記ガイドチューブの先端部に、前記電極を前記ガイドチューブから前記位置決めガイドへ導入する導入部が配設されている請求項2に記載の細穴放電加工機。
【請求項4】
前記チューブホルダが、前記電極の回転軸線に対して垂直な軸線を中心として旋回可能となっており、これによって前記電極先端部の角度を変更可能にした請求項1に記載の細穴放電加工機。
【請求項5】
前記チューブホルダが、前記電極の回転軸線と平行な軸線を中心として回転可能となっており、これによって電極先端部の傾斜方向を変更可能にした請求項1に記載の細穴放電加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空のパイプ電極を用いてワークに小径の穴(細穴)を加工する細穴放電加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
細穴加工の典型例として、タービンブレードの表面を冷却する冷却空気を流すための冷却孔をタービンブレードの表面に形成する場合がある。例えば、特許文献1には、タービンブレードの表面に細穴を加工する放電加工機の電極ホルダが記載されている。この電極ホルダは、交換可能な管状のガイドが電極ホルダを貫通させて設けられており、このガイド内にパイプ電極が挿通される。この電極ホルダは、ワークの形状に適合するように、先端部分が直線状のガイドや、先端部分が湾曲したガイドを選択して取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2012/074897
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明では、ガイドを電極ホルダに取り付ける際に、その先端部を電極ホルダに対して正確に位置決めすることができない。そのため、タービンブレードのような精密な加工が要求されるワークに細穴加工する際に、放電加工機の送り装置を用いて電極をワーク表面の加工点へ向けて正確に配置することができない。また、ガイド内に電極を挿通するために加工液とは別に高圧の潤滑液をガイド内に流通させる必要がある。更に、特許文献1の電極ホルダでは、1つのワークに異なる直径の細穴を加工するような場合に、電極ホルダを手動で交換しなければならない。
【0005】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、電極を回転させる主軸の回転軸線上にない加工点へ電極を高精度に案内してワークに細穴を加工する細穴放電加工機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、細穴加工用の電極とワークとの間に電圧を印加して放電させ、放電のエネルギーでワークに細穴を加工する細穴放電加工機において、前記電極を挿通させる中空部を有し、湾曲可能なガイドチューブと、前記ガイドチューブの先端部を支持し、前記ガイドチューブの先端部を所望の角度に傾斜させるチューブホルダとを具備する細穴放電加工機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来技術と比較して、ワークがブリスクのように周方向に多数のタービンブレードを配設したような複雑な形状を有している場合でも、ワーク表面の目標加工点へワークと干渉することなく、電極を正確に位置決めし、細穴加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の好ましい実施形態による放電加工機の要部構成を概略的に示す正面図である。
図2】本発明の好ましい実施形態による傾斜電極ガイドの略示断面図である。
図3図2の矢視線III-IIIに沿う断面図である。
図4】傾斜電極ガイドをW軸チャックに装着する様子を示す斜視図である。
図5】W軸チャックに装着され、電極ホルダが分離された状態を示す傾斜電極ガイドの斜視図である。
図6】傾斜電極ガイドの変形例を示す略示断面図である。
図7】他の実施形態による放電加工機のW軸チャックを示す略示平面図である。
図8】本発明の傾斜電極ガイドの作用を説明するための略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図8を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明を適用する放電加工機100の要部構成を概略的に示す正面図である。なお、以下では、便宜上、図示のように直交3軸方向(X軸方向,Y軸方向,Z軸方向)を、それぞれ左右方向、前後方向、上下方向と定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。
【0010】
図1において、基台となるベッド102の後部にはコラム104が立設されている。コラム104の上面には、Xスライダ106がX軸方向(左右方向)に移動可能に支持されている。Xスライダ106の上面には、ラム108がY軸方向(前後方向、紙面に垂直な方向)に移動可能に支持されている。ラム108の前面には、主軸頭110がZ軸方向(上下方向)に移動可能に支持されている。主軸頭110には、回転主軸112が軸線CL0を中心として回転可能に支持される。主軸頭110の底面から突出する回転主軸112の先端部に電極ホルダ114が装着される。
【0011】
ラム108の側面にはW軸ガイド組立体140が取り付けられている。W軸ガイド組立体140は、ラム108の右側面に設けられたブラケット136に上下方向に移動可能に支持されたガイドアーム142を有している。このガイドアーム142の上下移動軸をW軸と定義する。W軸はZ軸と平行である。ガイドアーム142の下端部分142aは、W軸またはZ軸に対して斜め内側に傾斜しており、該下端部分142aの先端部にW軸チャック144が設けられている。W軸チャック144は傾斜電極ガイド10を保持する。より詳細には、傾斜電極ガイド10は、その上端の中心が軸線CL0に一致するように、W軸チャック144によってガイドアーム142の先端に保持される。
【0012】
電極ホルダ114と傾斜電極ガイド10との間には、電極116が、軸線CL0に沿って延在される。電極116は円筒形状のパイプ電極であり、その上端部は電極ホルダ114に保持されている。回転主軸112が、図5において矢印ASで示すように、軸線CL0を中心として回転することによって、電極116は、電極ホルダ114と共に軸線CL0を中心として回転する。電極116の下端部は、傾斜電極ガイド10によって、軸線CL0に対して傾斜するように湾曲させられる。電極116の内部には、例えば水などの加工液が供給され、電極116の先端部(下端部)から加工液が噴射される。なお、加工液として油を用いてもよい。
【0013】
ベッド102の上面には、コラム104よりも前方にテーブル118が配置されている。テーブル118の上面には、傾斜回転テーブル装置120が搭載されている。傾斜回転テーブル装置120は、テーブル118の上面から上方に突設された前後一対の支持部材122と、前後の支持部材122の間に、Y軸方向に延在する旋回軸CLbを中心としてB軸方向に旋回可能に支持された傾斜部材124と、傾斜部材124の左端面に、旋回軸CLbに垂直な回転軸CLaを中心としてA軸方向に回転可能に支持された回転テーブル126とを有する。回転テーブル126にはチャック128が設けられ、チャック128にワーク130が取り付けられる。ワーク130は、例えばガスタービンに用いられるタービンブレードやベーンである。タービンブレードは、1000℃〜1500℃程度の高温ガスに曝されるため、耐熱性の高いニッケル合金が構成材として用いられる。このタービンブレードの表面には、タービンブレードの表面を冷却する冷却空気を流す冷却孔が加工される。
【0014】
テーブル118の周囲には、テーブル118および傾斜回転テーブル装置120の全体を囲うように昇降可能に加工槽132が設けられている。なお、図1の1点鎖線は、加工槽132が上昇した加工状態であり、段取り作業時等の非加工状態には、加工槽132が実線に示すように下降する。
【0015】
図示は省略するが、図1の放電加工機100は、Xスライダ106を左右方向に移動させるX軸駆動部と、ラム108を前後方向に移動させるY軸駆動部と、主軸頭110を上下方向に移動させるZ軸駆動部と、軸線CL0を中心に回転主軸112を回転させる主軸駆動部と、ガイドアーム142を上下方向に移動させるW軸駆動部と、旋回軸CLbを介して傾斜部材124を傾斜させるB軸駆動部と、回転軸CLaを介して回転テーブル126を回転させるA軸駆動部とをそれぞれ有する。X軸駆動部、Y軸駆動部、Z軸駆動部およびW軸駆動部は、例えばボールねじとボールねじを回転駆動するサーボモータにより構成され、主軸駆動部は、例えばスピンドルモータにより構成され、B軸駆動部およびA軸駆動部は、例えばDD(ダイレクトドライブ)サーボモータにより構成されている。これらX軸駆動部、Y軸駆動部、Z軸駆動部、W軸駆動部、主軸駆動部、B軸駆動部およびA軸駆動部は、放電加工機100のNC装置(図示せず)により制御される。
【0016】
以上の構成により、電極ホルダ114と傾斜電極ガイド10がワーク130に対してX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に相対移動可能となり、かつB軸方向およびA軸方向に相対移動可能となる。従って、ワーク130を所望の3次元形状に加工することができる。また、W軸駆動部によるガイドアーム142の昇降により、電極ホルダ114と傾斜電極ガイド10との間隔が調整可能となり、電極116の消耗による電極116の長さ変化に拘わらず、加工中、常に電極ホルダ114と傾斜電極ガイド10とで電極116の上下端部を支持することができる。
【0017】
ラム108の前面には、主軸頭110の上下方向のZ軸位置を検出するリニアスケールなどの位置検出器134が設けられている。位置検出器134からの信号により、電極ホルダ114の位置、すなわち電極116の上端部の位置を検出することができる。ガイドアーム142のブラケット136には、ラム108に対するガイドアーム142の上下方向のW軸位置を検出するリニアスケールのような位置検出器138が設けられている。ガイドアーム142の形状は予め既知であるので、W軸チャック144の位置は、X軸およびY軸の夫々の位置検出器およびW軸の位置検出器138の値から測定することができる。
【0018】
なお、図示は省略するが、W軸ガイド組立体140の側方には電極マガジンが設けられている。電極マガジンには、初期長さL0(既知)を有する交換用の複数の電極116が保持され、回転主軸112と工具マガジンとの間で、不図示の交換手段により電極116を交換可能となっている。更に、放電加工機100は、複数の傾斜電極ガイド10を格納するためのガイドマガジン(図示せず)を備えることができる。
【0019】
図2を参照すると、傾斜電極ガイド10は、直線状に延びる棒状の部材より成る本体12、本体12の一側面に取り付けられた柔軟性のある樹脂製のガイドチューブ18、ガイドチューブ18の基端部分または上端部分に取り付けられた連結部30、連結部30を本体12に固定する基端側チューブホルダ32、ガイドチューブ18の先端部分を本体12に固定する傾斜チューブホルダ20、傾斜チューブホルダ20に取り付けられた位置決めガイド16、W軸チャック144と着脱可能に係合するシャトル14を具備している。ガイドチューブ18は、電極116の外径よりも太い内径を有した柔軟な樹脂製の管部材である。W軸チャック144は、開口部146を有した略環状の部材であり、その内周面に複数の係合凹所148が形成されている。
【0020】
連結部30は中空部材より成り、その中空部がガイドチューブ18の中空部と略同軸となるように、基端側チューブホルダ32によってガイドチューブ18の基端部分または上端部分に固定される。連結部30の中空部は、電極116の挿通方向に入口側がガイドチューブ18の内径よりも大きく、出口側がガイドチューブ18の内径と略等しくなるようにテーパー状になっている。
【0021】
基端側チューブホルダ32は、連結部30およびガイドチューブ18を受容する中空状の部材より成る。基端側チューブホルダ32は、本体12に一体的に成形したり、或いは、本体12とは別部材としてねじ等の固定手段によって本体12に固定することができる。
【0022】
連結部30は、図2に示すように、基端側チューブホルダ32から上方に突出するように、基端側チューブホルダ32内に固定される。連結部30において、基端側チューブホルダ32から突出した部分がシャトル14に結合される。シャトル14は、その上面において電極ホルダ114に着脱可能に係合する。シャトル14は、また、その側面においてW軸チャック144に着脱可能に係合する。図5の例では、シャトル14は、W軸チャック144の内面に形成された係合凹所148に係合する複数の係止ピン15を有している。係止ピン15を係合凹所148と係合させることによって、傾斜電極ガイド10をW軸チャック144に正確に位置決め固定することが可能となる。特に、係止ピン15を係合凹所148と係合させることによって、傾斜電極ガイド10の方位が一義的に決定され、位置決めガイド16および電極116の先端を正確に方向づけることが可能となる。
【0023】
傾斜チューブホルダ20は、図3に示すように、軸線CL0に対して垂直に延びる位置決めピン24および位置決めピン24に平行な固定ねじ26によって、本体12の先端部分に正確に位置決め固定される。傾斜チューブホルダ20は、また、その基端面20aから先端面20bへ貫通する通路20cを有している。通路20cは、軸線CL0に対して所定の角度θで傾斜して延設されている。この傾斜角θの異なる傾斜チューブホルダ20を複数準備し、ワーク130の形状に適合するように適切な傾斜チューブホルダ20を選択することによって、多様なワーク形状に適合させて、電極116の先端をワーク表面の加工点へ位置決め可能となる。
【0024】
ガイドチューブ18の先端部分が基端面20aから通路20c内に挿入され、位置決めガイド16が先端面20bから通路20c内に挿入される。通路20c内において、ガイドチューブ18と位置決めガイド16との間に、中空部材より成る導入部材22が配設されている。導入部材22は、ガイドチューブ18から位置決めガイド16へ電極116を案内するように、入口から出口へ内径が次第に細くなっている。
【0025】
傾斜チューブホルダ20の先端面に取り付けられる位置決めガイド16は、電極116よりも僅かに大きな内径を有した中空状の部材であり、その内周面において電極116の外周面を摺動可能に支持し、電極116の径方向の移動(振れ)を拘束しながら、電極116をワーク130の表面の加工点へ向けて正確に案内する。
【0026】
本実施形態によれば、図8において二点鎖線で示すように、電極ホルダ114と傾斜電極ガイド10の中心を通る上下方向の軸線CL0に沿って電極116をワーク130まで延在させている従来技術と比較して、ワーク130がブリスクのような周方向に多数のタービンブレードを配設した複雑な形状を有している場合に、ワーク130の表面の目標とする加工点Pmへ電極116をワーク130と干渉することなく、正確に位置決め可能となる。そして、電極116とワーク130とを相対的に移動させて細穴を加工することができる。傾斜電極ガイド10のない従来の真直ぐなパイプ電極200では、1つ手前のブレードに干渉して加工点Pmへ到達できない。
【0027】
また、本実施形態では、ガイドチューブ18の入口に、内径がガイドチューブ18へ向けて次第に小さくなる連結部30を設け、ガイドチューブ18と位置決めガイド16との間に、位置決めガイド16へ向けて内径が小さくなる導入部材22を設けたので、特許文献1のように、加工液とは別に高圧の潤滑液を流通させる必要がなくなる。
【0028】
また、傾斜角θの異なる複数の傾斜電極ガイド10を上述のガイドマガジン(図示せず)内に格納しておけば、放電加工機100のX軸駆動部、Y軸駆動部、Z軸駆動部およびW軸駆動部を適切制御することによって、自動的に傾斜電極ガイド10を交換することが可能となる。図4は、X軸駆動部、Y軸駆動部、Z軸駆動部およびW軸駆動部を用いて、回転主軸112の先端に装着されている電極ホルダ114に連結された傾斜電極ガイド10をW軸チャック144に装着する様子を示した図である。傾斜電極ガイド10のW軸チャック144への装着に際して、先ず、傾斜電極ガイド10を水平方向、例えばX軸方向に移動し、本体12をW軸チャック144の開口部146を通して、W軸チャック144内に導入し、次いで、傾斜電極ガイド10を上下方向に移動して、シャトル14をW軸チャック144に係合させるようにする。
【0029】
既述の実施形態では、通路20cに関して異なる傾斜角θを有した複数の傾斜チューブホルダ20を準備し、その中から望ましい傾斜角θの傾斜チューブホルダ20を選択することによって、種々の電極116の先端部分の角度を変更するような例を説明した。図6に示す例では、傾斜チューブホルダ20は、軸線CL0に対して垂直な方向に延びる回転軸40を中心として矢印AGで示すように旋回可能に本体12の先端部に取り付けられている。これによって、電極116の先端部の角度を任意に変更可能となっている。
【0030】
更に、シャトル14をW軸チャックに対して軸線CL0を中心として回転可能としてもよい。図7を参照すると、W軸チャック144′は、略円形の外枠160と、該外枠160に軸線CL0を中心として回転可能に取り付けられ外周面に歯を形成したチャック162とを具備している。チャック162は、駆動モータ172によって駆動される歯車、例えばウォーム174によって回転駆動される。図7の例では、矢印ACで示すように、チャック162を軸線CL0を中心として回転させることによって、傾斜電極ガイド10は軸線CL0を中心として回転し、これによって、位置決めガイド16が軸線CL0を中心として回転し、電極116の方向を任意に変更することが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
10 傾斜電極ガイド
12 本体
14 シャトル
15 係止ピン
16 位置決めガイド
18 ガイドチューブ
20 傾斜チューブホルダ
22 導入部材
24 ピン
30 連結部
32 基端側チューブホルダ
112 回転主軸
114 電極ホルダ
116 電極
120 傾斜回転テーブル装置
130 ワーク
142 ガイドアーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】