(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
非侵襲性であって、より精度が高い非アルコール性脂肪肝疾患等の肝疾患の病態を判別する方法を提供すること。非アルコール性脂肪肝(NAFL)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とを判別する方法であって、
前記(B)の場合であり、ロジスティック回帰式を用いる方法として、前記指標値が2つの群の規格化スコアから下記式2により算出される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
I=a1×Ma1+a2×Ma2 (式2)
(式2において、Iは指標値を示し、Ma1及びMa2はそれぞれ、前記2つの群のうちの一方の規格化スコア及び他方の規格化スコアを示し、a1及びa2は、ロジスティック回帰分析によって定められる定数を示す。)
前記(B)の場合であり、非線形判別式を用いる方法として、前記指標値が2つの群の規格化スコアから下記決定木1〜6のいずれかにより算出される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記マーカー分子が、前記群1及び群2より選ばれる場合は、
M1a≧0.476ならばI=2、M1a<0.476かつM2a≧0.466ならばI=1 、M1a<0.476かつM2a<0.466ならばI=0 (決定木1)
前記マーカー分子が、前記群1及び群3より選ばれる場合は、
M3a≧0.409かつ M1a≧0.45ならばI=2、M3a≧0.409かつM1a<0.45ならばI=1、M3a<0.409ならばI=0 (決定木2)
前記マーカー分子が、前記群1及び群4より選ばれる場合は、
M4a≧0.547ならばI=2、M4a<0.547かつM1a≧0.468ならばI=1、M4a<0.547かつ M1a<0.468ならばI=0 (決定木3)
前記マーカー分子が、前記群2及び群3より選ばれる場合は、
M3a≧0.409かつM2a≧0.412ならばI=2、M3a≧0.409かつM2a<0.412ならばI=1、M3a<0.409ならばI=0 (決定木4)
前記マーカー分子が、前記群2及び群4より選ばれる場合は、
M4a≧0.547ならばI=2、M4a<0.547かつM2a≧0.413ならばI=1、M4a<0.547かつ M2a<0.413ならばI=0 (決定木5)
前記マーカー分子が、前記群3及び群4より選ばれる場合は、
M3a≧0.409ならばI=2、M3a<0.409かつM4a≧0.588ならばI=1、M3a<0.409かつM4a<0.588ならばI=0 (決定木6)
(決定木1〜6において、Iは指標値を示し、M1a、M2a、M3a及びM4aはそれぞれ、前記群1、群2、群3、及び群4の規格化スコアを示す。)。
前記(A)の場合であって、前記マーカー分子が前記群2のVCAM1及びHAである、VCAM1及びCTSDである、VCAM1及びCOL4である、VCAM1及びCOL4−7Sである、HA及びCOL4−7Sである、HA及びCTSDである、HA及びCOL4である、CTSD及びCOL4である、又は、CTSD及びCOL4−7Sである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記(A)の場合であって、前記マーカー分子が前記群3のAST及びPSATである、AST及びLEPである、AST及びICAM1である、AST、PSAT及びLEPである、AST、PSAT及びICAM1である、AST、LEP及びCK−18である、AST、ICAM1及びGSTA1である、又は、AST、PSAT及び6Ckineである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記(B)の群1と群3の組合せの場合であって、群1より選択されるマーカー分子がPROS1及びCLUであり、群3より選択されるマーカー分子がAST及びPSATである、AST及びLEPである、AST及びICAM1である、AST、PSAT及びLEPである、AST、PSAT及びICAM1である、AST、LEP及びCK−18である、AST、ICAM1及びGSTA1である、又は、AST、PSAT及び6Ckineである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
肝線維化の判別が、マテオーニ分類におけるType−1〜Type−3の病態とType−4の病態との判別、又は、線維化Stageにおける、Stage0、Stage1又はStage2の病態と、Stage3又はStage4の病態との判別である、請求項10又は11に記載の方法。
コンピュータに、被験者から採取された血液に含まれる前記マーカー分子の量又は前記VCAM1の量の測定データを取得する、取得ステップを更に実行させる、請求項21又は22に記載のプログラム。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を罹患している、肝臓の線維化の病態である、肝臓の線維化の進展度が高い、肝細胞の風船様変性の病態の進展度が高い、肝臓の炎症の進展度が高い、肝肥大の病態である、肝細胞の壊死の病態である、肝細胞のアポトーシスの病態である、肝細胞の変性の病態である、肝臓の脂肪化の病態である、又はそれらの可能性があるかを判定するための診断薬であって、VCAM1を検出するための試薬を含有する診断薬。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝臓の線維化、肝細胞の風船様変性、肝臓の炎症、肝肥大、肝細胞の壊死、肝細胞のアポトーシス、肝細胞の変性、又は、肝臓の脂肪化のインビトロ検出のための、VCAM1を検出するための試薬の使用。
コンピュータに、前記測定データから規格化スコアを算出し、算出された規格化スコアから指標値を求める、規格化ステップをさらに実行させる、請求項32又は33に記載のプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、NASHを確定診断するための方法として、診療ガイドライン(NAFLD/NASH診療ガイドライン2014、日本消化器病学会編、南江堂、2014)で認められているのは肝生検による病理組織診断のみである。肝生検は穿刺で肝臓の組織を採取するという侵襲性の高い手法である。また肝生検は、通常入院が必要であること、費用が高額であること等から、NASHを罹患していると疑われる場合であっても適用されないことが多い。したがって、肝生検は、数多くの患者に対しての診断を行うには十分な方法とはいえない。このような事情から、肝生検を必要としない、非侵襲性のNASH診断マーカー(NASHを診断するためのマーカー)による、診断方法(判別方法)の開発が待たれている。
また、NASHの病徴の一つである肝線維化は、NASHの予後に大きな影響を及ぼす(J Hepatol. 2005 Jan;42(1):132-8)ことから、NASHの診断及び治療において肝線維化を判別することが重要である。現在、肝線維化の有無の判別又はその進展度の評価においても、確定診断には肝生検が必要とされている。このような事情から、肝生検に拠らずに、肝線維化が生じているNASHを判別する方法及びその進展度を評価する手法もまた開発が待たれている。
【0005】
これまでに、数多くの非侵襲性のNASH診断マーカーが報告されている。現在の診療ガイドラインでは、NASHの特徴として「脂肪変性、炎症、肝細胞障害(風船様変性)」が示されている。またNASHには肝線維化を伴う症例も含まれる。NAFL−NASHの診断には、こうした肝生検の病理所見に基づくマテオーニ分類(Matteoni, C., Younossi, Z. & Gramlich, T. Nonalcoholic fatty liver disease: a spectrum of clinical and pathological severity. Gastroenterology 1413-1419 (1999).)が広く用いられている。そして、既存のNASH診断法の大半は、こうしたNASHの特徴的な病態に基づき、炎症のマーカー、肝細胞障害のマーカー、線維化のマーカー等を組み合わせたものである。既存のマーカーのうち、独立した患者群に基づく検証によって真の診断精度が確認されているのは、NASH Test(非特許文献1)、NASH Diagnostics(非特許文献2)、NAFIC score(非特許文献3)の3つに留まる。一般的にNASHの診断精度は、NAFLD患者を対象にNASH患者をどの程度正しく診断できるかについての、感度及び特異度の受信者操作特性(Receiver Operating Characteristic;ROC)曲線下の面積(Aria Under of Receiver Operating Characteristic curve;AUROC)によって示される。上述した3種類の既知診断法の学習/検証データに対するNAFL−NASH診断(病理所見に基づく診断)のAUROC値は、それぞれ0.69/0.80、0.91/0.70、0.85/0.78である。これらの診断法はいずれも現在の診療ガイドラインにおいては、NASHの確定診断に適用できるものとは認められておらず、肝生検による確定診断の代替には一層の精度向上が必要とされる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、非侵襲性であって、より精度が高い非アルコール性脂肪肝疾患等の肝疾患の病型又は病態を判別する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、相互に生物学的な制御関係にある一群のマーカー分子を用いることで、非侵襲性の方法によって非アルコール性脂肪肝疾患等の肝疾患の病態を、従来の方法より精度よく判別できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、
(1)被験者から採取された血液に含まれる、マーカー分子の量を測定する工程であって、測定する上記マーカー分子が、
(A)下記群1、下記群2、下記群3又は下記群4のいずれか1つの群中の少なくとも1種のマーカー分子であるか、
PROS1、CLU、ANG、APOC3、APOD、CFHR1、コルチゾール、EGFR、HPN、IGFBP3、IL1B、IL23A、MET、MMP10、テトラネクチン、TTR、VDBP及びVEGFR−2からなる群1、
VCAM1、HA、CTSD、COL4、COL4−7S、ALB、AFP、AXL、CCL19、CGB、CSF1、FAS、Mac−2bp、CA19−9、NRCAM、OPG、VWF及びYKL−40からなる群2、
AST、PSAT、LEP、ICAM1、CK−18、GSTA1、ALT、INS
IVD、INS
MAP、6Ckine、AGT、CRP、CXCL10、FABP4、G6PI、HSP−60、P3NP及びテストステロンからなる群3、
AREG、BDNF、CD40−L、EREG、FGF2、HBEGF、IGFBP2、MMP9、PAI−1、PDGFB、PLGF、SAP、TGFA、TGFB1、THBS1及びVTNからなる群4、
又は、
(B)上記群1、上記群2、上記群3及び上記群4から選ばれる2つの群のうちの、一方から選択される少なくとも1つのマーカー分子及び他方から選択される少なくとも1つのマーカー分子、
である、工程と、
(2)同一の群の上記マーカー分子の量に基づいて算出される規格化スコアから指標値を求める工程、及び
(3)上記指標値を、基準値と比較することにより、被験者が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を罹患している可能性がある、又は、被験者が肝線維化の病態である可能性がある、と判定する工程を含む方法を提供するものである。
具体的には、本発明は以下に関する。
[1]非アルコール性脂肪肝(NAFL)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とを判別する方法であって、
(1)被験者から採取された血液に含まれる、マーカー分子の量を測定する工程であって、測定する上記マーカー分子が、
(A)PROS1、CLU、ANG、APOC3、APOD、CFHR1、コルチゾール、EGFR、HPN、IGFBP3、IL1B、IL23A、MET、MMP10、テトラネクチン、TTR、VDBP及びVEGFR−2からなる群1から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、
VCAM1、HA、CTSD、COL4、COL4−7S、ALB、AFP、AXL、CCL19、CGB、CSF1、FAS、Mac−2bp、CA19−9、NRCAM、OPG、VWF及びYKL−40からなる群2から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、
AST、PSAT、LEP、ICAM1、CK−18、GSTA1、ALT、INS
IVD、INS
MAP、6Ckine、AGT、CRP、CXCL10、FABP4、G6PI、HSP−60、P3NP及びテストステロンからなる群3から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、若しくは、
AREG、BDNF、CD40−L、EREG、FGF2、HBEGF、IGFBP2、MMP9、PAI−1、PDGFB、PLGF、SAP、TGFA、TGFB1、THBS1及びVTNからなる群4から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、
又は、
(B)上記群1、上記群2、上記群3及び上記群4から選ばれる2つの群のうちの、一方から選択される少なくとも2つのマーカー分子及び他方から選択される少なくとも2つのマーカー分子、
である、工程と、
(2)上記マーカー分子の量に基づいて算出される規格化スコアから指標値を求める工程であって、同一の群の上記マーカー分子の量に基づく上記規格化スコアが下記式1から算出され、
【数1】
(式1において、Mは規格化スコアを示し、Nはマーカー分子の数を示し、m
iは、測定された各マーカー分子の量を示し、mean(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、sd(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の標準偏差を示し、mean(m
iNASH)は、NASHを罹患している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、mean(m
iNAFL)は、NAFLを罹患している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示す。)、
上記マーカー分子が(A)である場合、上記指標値が上記規格化スコアであり、
上記マーカー分子が(B)である場合、上記指標値が2つの群の規格化スコアから算出される、工程と、
(3)上記指標値が、基準値よりも大きい場合に、上記被験者がNASHを罹患している、又はその可能性があると判定する工程と、
を含む方法。
[2]上記(B)の場合であって、上記指標値が2つの群の規格化スコアから線形式又は非線形式を用いて算出される、上記[1]に記載の方法。
[3]非アルコール性脂肪肝(NAFL)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とを判別する方法であって、
(1)被験者から採取された血液に含まれる、マーカー分子の量を測定する工程であって、測定する上記マーカー分子が、
(A)PROS1、CLU、ANG、APOC3、APOD、CFHR1、コルチゾール、EGFR、HPN、IGFBP3、IL1B、IL23A、MET、MMP10、テトラネクチン、TTR、VDBP及びVEGFR−2からなる群1から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、
VCAM1、HA、CTSD、COL4、COL4−7S、ALB、AFP、AXL、CCL19、CGB、CSF1、FAS、Mac−2bp、CA19−9、NRCAM、OPG、VWF及びYKL−40からなる群2から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、
AST、PSAT、LEP、ICAM1、CK−18、GSTA1、ALT、INS
IVD、INS
MAP、6Ckine、AGT、CRP、CXCL10、FABP4、G6PI、HSP−60、P3NP及びテストステロンからなる群3から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、若しくは、
AREG、BDNF、CD40−L、EREG、FGF2、HBEGF、IGFBP2、MMP9、PAI−1、PDGFB、PLGF、SAP、TGFA、TGFB1、THBS1及びVTNからなる群4から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、
又は、
(B)上記群1、上記群2、上記群3及び上記群4から選ばれる2つの群のうちの、一方から選択される少なくとも2つのマーカー分子及び他方から選択される少なくとも2つのマーカー分子、
である、工程と、
(2)上記マーカー分子の量に基づいて算出される規格化スコアから指標値を求める工程であって、同一の群の上記マーカー分子の量に基づく上記規格化スコアが下記式1から算出され、
【数2】
(式1において、Mは規格化スコアを示し、Nはマーカー分子の数を示し、m
iは、測定された各マーカー分子の量を示し、mean(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、sd(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の標準偏差を示し、mean(m
iNASH)は、NASHを罹患している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、mean(m
iNAFL)は、NAFLを罹患している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示す。)、
上記マーカー分子が(A)である場合、上記指標値が上記規格化スコアであり、
上記マーカー分子が(B)である場合、上記指標値が2つの群の規格化スコアから平均算出式を用いる方法、線形回帰式を用いる方法、線形判別式を用いる方法、ロジスティック回帰式を用いる方法、非線形平均算出式を用いる方法、非線形回帰式を用いる方法、非線形判別式を用いる方法、又は、非線形ロジスティック回帰式を用いる方法により算出される、工程と、
(3)上記指標値が、基準値よりも大きい場合に、上記被験者がNASHを罹患している、又はその可能性があると判定する工程と、
を含む方法。
[4]上記(B)の場合であり、ロジスティック回帰式を用いる方法として、上記指標値が2つの群の規格化スコアから下記式2により算出される、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
I=a
1×M
a1+a
2×M
a2 (式2)
(式2において、Iは指標値を示し、M
a1及びM
a2はそれぞれ、上記2つの群のうちの一方の規格化スコア及び他方の規格化スコアを示し、a
1及びa
2は、ロジスティック回帰分析によって定められる定数を示す。)
[5]上記(B)の場合であり、非線形判別式を用いる方法として、上記指標値が2つの群の規格化スコアから下記決定木1〜6のいずれかにより算出される、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
上記マーカー分子が、上記群1及び群2より選ばれる場合は、
M1
a≧0.476ならばI=2、M1
a<0.476かつM2
a≧0.466ならばI=1 、M1
a<0.476かつM2
a<0.466ならばI=0 (決定木1)
上記マーカー分子が、上記群1及び群3より選ばれる場合は、
M3
a≧0.409かつ M1
a≧0.45ならばI=2、M3
a≧0.409かつM1
a<0.45ならばI=1、M3
a<0.409ならばI=0 (決定木2)
上記マーカー分子が、上記群1及び群4より選ばれる場合は、
M4
a≧0.547ならばI=2、M4
a<0.547かつM1
a≧0.468ならばI=1、M4
a<0.547かつ M1
a<0.468ならばI=0 (決定木3)
上記マーカー分子が、上記群2及び群3より選ばれる場合は、
M3
a≧0.409かつM2
a≧0.412ならばI=2、M3
a≧0.409かつM2
a<0.412ならばI=1、M3
a<0.409ならばI=0 (決定木4)
上記マーカー分子が、上記群2及び群4より選ばれる場合は、
M4
a≧0.547ならばI=2、M4
a<0.547かつM2
a≧0.413ならばI=1、M4
a<0.547かつ M2
a<0.413ならばI=0 (決定木5)
上記マーカー分子が、上記群3及び群4より選ばれる場合は、
M3
a≧0.409ならばI=2、M3
a<0.409かつM4
a≧0.588ならばI=1、M3
a<0.409かつM4
a<0.588ならばI=0 (決定木6)
(決定木1〜6において、Iは指標値を示し、M1
a、M2
a、M3
a及びM4
aはそれぞれ、上記群1、群2、群3、及び群4の規格化スコアを示す。)。
[6]上記(A)の場合であって、上記マーカー分子が上記群1のPROS1及びCLUである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[7]上記(A)の場合であって、上記マーカー分子が上記群2のVCAM1及びHAである、VCAM1及びCTSDである、VCAM1及びCOL4である、VCAM1及びCOL4−7Sである、HA及びCOL4−7Sである、HA及びCTSDである、HA及びCOL4である、CTSD及びCOL4である、又は、CTSD及びCOL4−7Sである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[8]上記(A)の場合であって、上記マーカー分子が上記群3のAST及びPSATである、AST及びLEPである、AST及びICAM1である、AST、PSAT及びLEPである、AST、PSAT及びICAM1である、AST、LEP及びCK−18である、AST、ICAM1及びGSTA1である、又は、AST、PSAT及び6Ckineである、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[9]上記(B)の群1と群3の組合せの場合であって、群1より選択されるマーカー分子が上記群1のPROS1及びCLUであり、群3より選択されるマーカー分子がAST及びPSATである、AST及びLEPである、AST及びICAM1である、AST、PSAT及びLEPである、AST、PSAT及びICAM1である、AST、LEP及びCK−18である、AST、ICAM1及びGSTA1である、又は、AST、PSAT及び6Ckineである、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[10]肝線維化を判別する方法であって、
被験者から採取された血液に含まれる、マーカー分子の量を測定する工程であって、測定する上記マーカー分子が、VCAM1、HA、CTSD、COL4、COL4−7S、ALB、AFP、AXL、CCL19、CGB、CSF1、FAS、Mac−2bp、CA19−9、NRCAM、OPG、VWF及びYKL−40からなる群2から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子である、又は、VCAM1である、工程と、
上記マーカー分子の量に基づいて算出される規格化スコアが、基準値よりも大きい場合に、上記被験者が肝線維化の病態である、又はその可能性があると判定する工程であって、上記規格化スコアが下記式1から算出される工程、を含む方法。
【数3】
(式1において、Mは規格化スコアを示し、Nはマーカー分子の数を示し、m
iは、測定された各マーカー分子の量を示し、mean(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、sd(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の標準偏差を示し、mean(m
iNASH)は、NASHを罹患している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、mean(m
iNAFL)は、NAFLを罹患している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示す。)
[11]肝線維化を判別する方法であって、
上記マーカー分子が、VCAM1、HA、CTSD、COL4、COL4−7S、ALB、AFP、AXL、CCL19、CGB、CSF1、FAS、Mac−2bp、CA19−9、NRCAM、OPG、VWF及びYKL−40である、VCAM1である、VCAM1及びHAである、VCAM1及びCTSDである、VCAM1及びCOL4である、VCAM1及びCOL4−7Sである、HA及びCTSDである、CTSD及びCOL4である、HA及びCOL4である、HA及びCOL4−7Sである、又は、CTSD及びCOL4−7Sである、上記[10]に記載の方法。
[12]肝線維化の判別が、マテオーニ分類におけるType−1〜Type−3の病態とType−4の病態との判別、又は、線維化Stageにおける、Stage0、Stage1又はStage2の病態と、Stage3又はStage4の病態との判別である、上記[10]又は[11]に記載の方法。
[13]肝疾患の病態の進展度を判定する方法であって、
被験者から採取された血液に含まれる、マーカー分子の量を測定する工程であって、測定する上記マーカー分子が、VCAM1である、VCAM1及びHAである、HA及びCOL4である、VCAM1及びCOL4である、HA及びCOL4−7Sである、又は、VCAM1及びCOL4−7Sである、工程と、
上記マーカー分子の量に基づいて算出される規格化スコアが大きい程、上記被験者における、肝臓の線維化の進展度、肝細胞の風船様変性の進展度、もしくは、肝臓の炎症の進展度が高い、又はそれらの可能性があると判定する工程であって、上記規格化スコアが下記式1から算出される工程、を含む方法。
【数4】
(式1において、Mは規格化スコアを示し、Nはマーカー分子の数を示し、m
iは、測定された各マーカー分子の量を示し、mean(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、sd(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の標準偏差を示し、mean(m
iNASH)は、NASHを発症している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、mean(m
iNAFL)は、NAFLを発症している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示す。)
[14]測定する上記マーカー分子が、VCAM1である、VCAM1及びHAである、VCAM1及びCOL4である、HA及びCOL4−7Sである、又は、VCAM1及びCOL4−7Sである[13]に記載の方法。
[15]非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の病態の進展度を判定する方法であって、
被験者から採取された血液に含まれる、マーカー分子の量を測定する工程であって、測定する上記マーカー分子が、VCAM1である、VCAM1及びHAである、HA及びCOL4である、VCAM1及びCOL4である、HA及びCOL4−7Sである、又は、VCAM1及びCOL4−7Sである、工程と、
上記マーカー分子の量に基づいて算出される規格化スコアが大きい程、上記被験者における、肝臓の線維化の進展度、非アルコール性脂肪肝疾患の活動性の進展度、肝細胞の風船様変性の進展度、もしくは、肝臓の炎症の進展度が高い、又はそれらの可能性があると判定する工程であって、上記規格化スコアが下記式1から算出される工程、を含む方法。
【数5】
(式1において、Mは規格化スコアを示し、Nはマーカー分子の数を示し、m
iは、測定された各マーカー分子の量を示し、mean(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、sd(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の標準偏差を示し、mean(m
iNASH)は、NASHを発症している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、mean(m
iNAFL)は、NAFLを発症している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示す。)
[16]測定する上記マーカー分子が、VCAM1である、VCAM1及びHAである、VCAM1及びCOL4である、HA及びCOL4−7Sである、又は、VCAM1及びCOL4−7Sである[15]に記載の方法。
[17]上記[1]〜[16]のいずれかに記載の方法に使用するためのキットであって、
上記マーカー分子を検出するための試薬と、
上記方法を実施するための説明書と、を含むキット。
[18]非アルコール性脂肪肝(NAFL)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とを判別する方法であって、
被験者から採取された血液に含まれる、VCAM1の量を測定する工程と、
上記VCAM1の量が、基準値よりも大きい場合に、上記被験者がNASHを罹患している、又はその可能性があると判定する工程、を含む方法。
[19]肝線維化を判別する方法であって、
被験者から採取された血液に含まれる、VCAM1の量を測定する工程と、
上記VCAM1の量が、基準値よりも大きい場合に、上記被験者が肝線維化の病態である、又はその可能性があると判定する工程、を含む方法。
[20]肝疾患の病態の進展度を判定する方法であって、
被験者から採取された血液に含まれる、VCAM1の量を測定する工程と、
上記VCAM1の量が大きい程、上記被験者における、肝臓の線維化の進展度、肝細胞の風船様変性の進展度、もしくは、肝臓の炎症の進展度が高い、又はそれらの可能性があると判定する方法。
[21]非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の病態の進展度を判定する方法であって、
被験者から採取された血液に含まれる、VCAM1の量を測定する工程と、
上記VCAM1の量が大きい程、上記被験者における、肝臓の線維化の進展度、非アルコール性脂肪肝疾患の活動性の進展度、肝細胞の風船様変性の進展度、もしくは、肝臓の炎症の進展度が高い、又はそれらの可能性があると判定する方法。
[22]上記[18]〜[21]のいずれかに記載の方法に使用するためのキットであって、
VCAM1を検出するための試薬を含む、キット。
[23]上記[1]〜[16]のいずれかに記載の方法に使用するためのプログラムであって、
コンピュータに、
被験者から採取された血液に含まれる上記マーカー分子の量の測定データから上記式1に基づいて規格化スコアを算出し、算出された規格化スコアから指標値を求める、規格化ステップと、
求められた指標値を、基準値と比較する、比較ステップと、
比較した結果に基づき、肝疾患の病態を有するか否かを判定する、判定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
[24]上記[18]〜[21]のいずれかに記載の方法に使用するためのプログラムであって、
コンピュータに、
被験者から採取された血液に含まれるVCAM1の量を、基準値と比較する、比較ステップと、
比較した結果に基づき、肝疾患の病態を有するか否かを判定する、判定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
[25]コンピュータに、被験者から採取された血液に含まれる上記マーカー分子の量又は上記VCAM1の量の測定データを取得する、取得ステップを更に実行させる、上記[23]又は[24]に記載のプログラム。
[26]上記[1]〜[16]、及び[18]〜[21]のいずれかに記載の方法に使用するための測定装置であって、
試料を設置するための試料設置部と、上記試料に光を照射するための光源部と、上記試料を透過した光を検出する検出部と、を備える測定装置。
[27]上記[1]〜[16]のいずれかに記載の方法に使用するための肝疾患判定システムであって、
被験者から採取された血液に含まれる上記マーカー分子の量を測定する測定装置と、測定した上記マーカー分子の量に基づいて肝疾患の病態を判定する肝疾患判定装置とを備え、
上記測定装置が試料を設置するための試料設置部と、上記試料に光を照射するための光源部と、上記試料を透過した光を検出する検出部と、を備え、
上記肝疾患判定装置が、上記測定装置からの測定データを取得する取得手段と、上記測定データから上記式1に基づいて規格化スコアを算出し、算出された規格化スコアから指標値を求める規格化手段と、求められた指標値を基準値と比較する比較手段と、比較した結果に基づき、肝疾患の病態を有するか否かを判定する判定手段と、を備える、肝疾患判定システム。
[28]上記[18]〜[21]のいずれかに記載の方法に使用するための肝疾患判定システムであって、
被験者から採取された血液に含まれるVCAM1の量を測定する測定装置と、測定した上記VCAM1の量に基づいて肝疾患の病態を判定する肝疾患判定装置とを備え、
上記測定装置が試料を設置するための試料設置部と、上記試料に光を照射するための光源部と、上記試料を透過した光を検出する検出部と、を備え、
上記肝疾患判定装置が、上記測定装置からの測定データを取得する取得手段と、上記VCAM1の量を基準値と比較する比較手段と、比較した結果に基づき、肝疾患の病態を有するか否かを判定する判定手段と、を備える、肝疾患判定システム。
[29]非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を罹患している、肝臓の線維化の病態である、肝臓の線維化の進展度が高い、肝細胞の風船様変性の病態の進展度が高い、肝臓の炎症の進展度が高い、肝肥大の病態である、肝細胞の壊死の病態である、肝細胞のアポトーシスの病態である、肝細胞の変性の病態である、肝臓の脂肪化の病態である、又はそれらの可能性があるかを判定するための診断薬であって、VCAM1を検出するための試薬を含有する診断薬。
[30]上記VCAM1を検出するための試薬が、抗体である、上記[29]に記載の診断薬。
[31]非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、肝臓の線維化、肝細胞の風船様変性、肝臓の炎症、肝肥大、肝細胞の壊死、肝細胞のアポトーシス、肝細胞の変性、又は、肝臓の脂肪化のインビトロ検出のための、VCAM1を検出するための試薬の使用。
[32]他の診断薬と併用する、上記[31]に記載の使用。
[33]他の診断薬がHA、COL4、又は、COL4−7Sを検出するため診断薬である、上記[32]に記載の使用。
[34]コンピュータに、
被験者から採取された血液に含まれるマーカー分子の量の測定データから求められた指標値を、基準値と比較する、比較ステップであって、上記マーカー分子がVCAM1を含む、ステップと、
比較した結果に基づき、肝疾患の病態を有するか否かを判定する、判定ステップと、
を実行させるためのプログラム又はその記録媒体。
[35]コンピュータに、被験者から採取された血液に含まれるマーカー分子の量の測定データを取得する、取得ステップを更に実行させる、上記[34]に記載のプログラム又はその記録媒体。
[36]コンピュータに、上記測定データから規格化スコアを算出し、算出された規格化スコアから指標値を求める、規格化ステップをさらに実行させる、上記[34]又は[35]に記載のプログラム又はその記録媒体。
[37]上記マーカー分子がHA、COL4、又は、COL4−7Sを更に含む、上記[34]〜[36]のいずれかに記載のプログラム又はその記録媒体。
【0009】
さらに本発明は以下に関する。
[38]非アルコール性脂肪肝(NAFL)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とを判別する方法、又は、NAFL及びNASHの診断のためのデータを収集する方法であって、
(1)被験者から採取された血液に含まれる、マーカー分子の量を測定する工程であって、上記マーカー分子が、
(A)PROS1、CLU、ANG、APOC3、APOD、CFHR1、コルチゾール、EGFR、HPN、IGFBP3、IL1B、IL23A、MET、MMP10、テトラネクチン、TTR、VDBP及びVEGFR−2からなる群1の全てのマーカー分子、
VCAM1、HA、CTSD、COL4、COL4−7S、ALB、AFP、AXL、CCL19、CGB、CSF1、FAS、Mac−2bp、CA19−9、NRCAM、OPG、VWF及びYKL−40からなる群2の全てのマーカー分子、AST、PSAT、LEP、ICAM1、CK−18、GSTA1、ALT、INS
IVD、INS
MAP、6Ckine、AGT、CRP、CXCL10、FABP4、G6PI、HSP−60、P3NP及びテストステロンからなる群3の全てのマーカー分子、若しくは、
AREG、BDNF、CD40−L、EREG、FGF2、HBEGF、IGFBP2、MMP9、PAI−1、PDGFB、PLGF、SAP、TGFA、TGFB1、THBS1及びVTNからなる群4の全てのマーカー分子、
又は、
(B)上記群1、上記群2、上記群3及び上記群4から選ばれる2つの群の全てのマーカー分子、
である、工程と、
(2)同一の群の上記マーカー分子の量に基づいて算出される規格化スコアから指標値を求める工程であって、上記規格化スコアが下記式1から算出され、
【数6】
(式1において、Mは規格化スコアを示し、Nはマーカー分子の数を示し、m
iは、測定された各マーカー分子の量を示し、mean(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、sd(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の標準偏差を示し、mean(m
iNASH)は、NASHを罹患している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、mean(m
iNAFL)は、NAFLを罹患している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示す。)、
上記マーカー分子が(A)である場合、上記指標値が上記規格化スコアであり、
上記マーカー分子が(B)である場合、上記指標値が下記式2から算出される、工程と、
I=a
1×M
a1+a
2×M
a2 (式2)
(式2において、Iは指標値を示し、M
a1及びM
a2はそれぞれ、上記2つの群のうちの一方の規格化スコア及び他方の規格化スコアを示し、a
1及びa
2は、ロジスティック回帰分析によって定められる定数を示す。)、
(3)上記指標値が、基準値よりも大きい場合に、上記被験者がNASHを罹患している、又はその可能性があると判定する工程、又は、上記指標値が、基準値よりも大きい場合に、上記被験者がNASHを罹患している可能性があるという基準に基づいて、上記被験者がNASHを罹患しているか否かを判定するためのデータを収集する工程と、
を含む方法。
[39]上記(A)の場合であって、上記マーカー分子が上記群1の全ての分子である、上記[38]に記載の方法。
[40]上記(A)の場合であって、上記マーカー分子が上記群2の全ての分子である、上記[38]に記載の方法。
[41]上記(A)の場合であって、上記マーカー分子が上記群3の全ての分子である、上記[38]に記載の方法。
[42]上記(A)の場合であって、上記マーカー分子が上記群4の全ての分子である、上記[38]に記載の方法。
[43]上記(B)の場合であって、上記群1、上記群2、上記群3及び上記群4から選ばれる2つの群から選択される全てのマーカー分子である、上記[38]に記載の方法。
[44]上記(B)の場合であって、線形式が平均算出式、線形回帰式、線形判別式、又は、ロジスティック回帰式である、上記[2]に記載の方法。
[45]上記(B)の場合であって、平均算出式が相加平均である、上記[44]に記載の方法。
[46]上記(B)の場合であって、線形判別式が線形判別分析である、上記[44]に記載の方法。
[47]上記(B)の場合であって、非線形式が非線形平均算出式、非線形回帰式、非線形判別式、又は非線形ロジスティック回帰式である、上記[2]に記載の方法。
[48]上記(B)の場合であって、非線形平均算出式が相乗平均である、上記[47]に記載の方法。
[49]上記(B)の場合であって、非線形回帰式が線形式の掛算、又は、ニューラルネットワークである、上記[47]に記載の方法。
[50]上記(B)の場合であって、非線形判別式が決定木、又は、サポートベクターマシンである、上記[47]に記載の方法。
[51]非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療薬の効果を判定する方法であって、
NASH患者に対して上記治療薬の適用前と適用後とにおいてそれぞれ、上記患者から採取された血液に含まれる、マーカー分子の量を測定する工程であって、測定する上記マーカー分子が、VCAM1である、VCAM1及びHAである、HA及びCOL4である、VCAM1及びCOL4である、HA及びCOL4−7Sである、又は、VCAM1及びCOL4−7Sである、工程と、
上記マーカー分子の量に基づいて上記治療薬の適用前と適用後のそれぞれ規格化スコアを算出し、適用後の規格化スコアが、適用前の規格化スコアよりも減少している場合、上記治療薬を適用した効果があった可能性があると判定する工程であって、上記規格化スコアが下記式1から算出される工程、を含む方法。
【数7】
(式1において、Mは規格化スコアを示し、Nはマーカー分子の数を示し、m
iは、測定された各マーカー分子の量を示し、mean(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、sd(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の標準偏差を示し、mean(m
iNASH)は、NASHを発症している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、mean(m
iNAFL)は、NAFLを発症している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示す。)
[52]測定する上記マーカー分子が、VCAM1である、VCAM1及びHAである、VCAM1及びCOL4である、HA及びCOL4−7Sである、又は、VCAM1及びCOL4−7Sである[51]に記載の方法。
[53]非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療薬の効果を判定する方法であって、
NASH患者に対して上記治療薬の適用前と適用後とにおいてそれぞれ、上記患者から採取された血液に含まれる、VCAM1の量を測定する工程と、
適用後のVCAM1の量が適用前のVCAM1の量よりも減少している場合、上記治療薬を適用した効果があった可能性があると判定する方法。
[54]非アルコール性脂肪肝(NAFL)又は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療薬の効果を判定する方法であって、
NAFL又はNASH患者に対して上記治療薬の適用前と適用後とにおいてそれぞれ、
(1)被験者から採取された血液に含まれる、マーカー分子の量を測定する工程であって、測定する上記マーカー分子が、
(A)PROS1、CLU、ANG、APOC3、APOD、CFHR1、コルチゾール、EGFR、HPN、IGFBP3、IL1B、IL23A、MET、MMP10、テトラネクチン、TTR、VDBP及びVEGFR−2からなる群1から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、
VCAM1、HA、CTSD、COL4、COL4−7S、ALB、AFP、AXL、CCL19、CGB、CSF1、FAS、Mac−2bp、CA19−9、NRCAM、OPG、VWF及びYKL−40からなる群2から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、
AST、PSAT、LEP、ICAM1、CK−18、GSTA1、ALT、INS
IVD、INS
MAP、6Ckine、AGT、CRP、CXCL10、FABP4、G6PI、HSP−60、P3NP及びテストステロンからなる群3から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、若しくは、
AREG、BDNF、CD40−L、EREG、FGF2、HBEGF、IGFBP2、MMP9、PAI−1、PDGFB、PLGF、SAP、TGFA、TGFB1、THBS1及びVTNからなる群4から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、
又は、
(B)上記群1、上記群2、上記群3及び上記群4から選ばれる2つの群のうちの、一方から選択される少なくとも2つのマーカー分子及び他方から選択される少なくとも2つのマーカー分子、
である、工程と、
(2)上記マーカー分子の量に基づいて算出される規格化スコアから指標値を求める工程であって、同一の群の上記マーカー分子の量に基づく上記規格化スコアが下記式1から算出され、
【数8】
(式1において、Mは規格化スコアを示し、Nはマーカー分子の数を示し、m
iは、測定された各マーカー分子の量を示し、mean(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、sd(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の標準偏差を示し、mean(m
iNASH)は、NASHを罹患している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、mean(m
iNAFL)は、NAFLを罹患している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示す。)、
上記マーカー分子が(A)である場合、上記指標値が上記規格化スコアであり、
上記マーカー分子が(B)である場合、上記指標値が2つの群の規格化スコアから算出される、工程と、
(3)適用後の規格化スコアが、適用前の規格化スコアよりも減少している場合、上記治療薬を適用した効果があった可能性があると判定する工程と、
を含む方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非侵襲性であって、より精度が高い非アルコール性脂肪肝疾患等の肝疾患の病態を判別する方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本実施形態に係る非アルコール性脂肪肝(NAFL)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とを判別する方法(以下、「判別方法」という場合がある。)は、
(1)被験者から採取された血液に含まれる、マーカー分子の量を測定する工程と、
(2)同一の群の上記マーカー分子の量に基づいて算出される規格化スコアに基づいて指標値を求める工程と、
(3)上記指標値が、基準値よりも大きい場合に、上記被験者がNASHを発症している、又はその可能性があると判定する工程と、を含む。
【0014】
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、非アルコール性脂肪肝(NAFL)とともに、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に分類される疾患である。NAFLDは、ウイルス性の肝疾患及び自己免疫性の肝疾患を除外した肝疾患のうち、アルコールの過剰摂取を伴わない脂肪肝疾患として定義される。NASHは病理学的診断によって「肝細胞の大滴性脂肪化に加えて、炎症を伴う肝細胞の風船様変性を認めるもの」として定義される。NASHはマテオーニ分類において、Type−3又はType−4に分類される症例と一致する。NASHはその病態が進行すると、肝硬変又は肝癌を発症し得ることが知られている。NASHの特徴としては、肝臓の線維化、肝細胞の風船様変性、肝臓の炎症、肝肥大、肝細胞の壊死、肝細胞のアポトーシス、肝細胞の変性、肝臓の脂肪化等が認められる。一方、NAFLは、NAFLDのうち、NASHに該当しない、肝細胞の大滴性脂肪化を基盤とする疾患である。NAFLは、マテオーニ分類において、Type−1又はType−2に分類される症例と一致する。NAFLは、NASHと比較して予後が良好であることが知られている。以下、各工程について説明する。
【0015】
(1)被験者から採取された血液に含まれる、マーカー分子の量を測定する工程
被験者から採取された血液としては、全血、血清、血漿等が挙げられ、血清又は血漿が好ましく用いられる。
【0016】
次にマーカー分子について説明する。本発明者らは、NAFLの患者及びNASHの患者から得られた血清試料において、約260種類の生体分子の量と、NAFL及びNASHの病態の相違との関連性を鋭意検討したところ、血中の存在量に連動性があり、相互の生物学的関係性が強い複数の生体分子の集団(「群」、「因子モジュール」又は「モジュール」という場合がある。)を4つ見出した。以下、各群について説明する。
【0017】
群1(「モジュール1」という場合がある。)のマーカー分子は、脂肪肝に対する防御反応と関連があるマーカー分子であり、PROS1(ビタミンK依存性プロテインS)、CLU(クラステリン)、ANG(アンギオゲニン)、APOC3(アポリポプロテインC−III)、APOD(アポリポプロテインD)、CFHR1(Complement factor H-related protein 1)、コルチゾール、EGFR(上皮成長因子受容体)、HPN(Hepsin)、IGFBP3(インスリン様成長因子結合蛋白3型)、IL1B(インターロイキン1β)、IL23A(インターロイキン23)、MET(肝細胞増殖因子レセプター)、MMP10(マトリックスメタロプロテアーゼ10)、テトラネクチン、TTR(トランスチレチン)、VDBP(ビタミンD結合タンパク質)及びVEGFR−2(血管内皮細胞増殖因子受容体2)の18種類である。
【0018】
群2(「モジュール2」という場合がある。)のマーカー分子は、肝細胞障害に対する免疫系の防御反応と関連があるマーカー分子であり、VCAM1(血管細胞接着分子1)、HA(ヒアルロン酸)、CTSD(カテプシンD)、COL4(コラーゲン4)、COL4−7S(タイプ4コラーゲン 7S)、ALB(アルブミン)、AFP(αフェトプロテイン)、AXL(AXL受容体チロシンキナーゼ)、CCL19(Chemokine (C-C motif) ligand 19)、CGB(ヒト絨毛性ゴナドトロピンβ)、CSF1(マクロファージ コロニー刺激因子1)、FAS(FASLG Receptor)、Mac−2bp(Mac−2結合タンパク質)、CA19−9(腫瘍抗原19−9)、NRCAM(神経細胞接着分子)、OPG(オステオプロテゲリン)、VWF(ヴォン・ヴィレブランド因子)及びYKL−40の18種類である。
【0019】
群3(「モジュール3」という場合がある。)のマーカー分子は、肝炎に起因する自然免疫反応と関連があるマーカー分子であり、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、PSAT(Phosphoserine Aminotransferase)、LEP(レプチン)、ICAM1(細胞間接着分子1)、CK−18(CK18 M30 フラグメント)、GSTA1(Glutathione S-Transferase alpha)、ALT(アラニン)、INS
IVD(インスリン、CLIA法によって測定されるもの)、INS
MAP(インスリン、HumanMAP法(Myriad RBM社の提供する多重免疫測定サービスHuman MAPによる測定、以下同じ)によって測定されるもの)、6Ckine、AGT(アンジオテンシノーゲン)、CRP(C反応性タンパク質)、CXCL10(C-X-C モチーフケモカイン10、Interferon gamma Induced Protein 10)、FABP4(Fatty Acid-Binding Protein4, adipocyte)、G6PI(Glucose-6-phosphate Isomerase)、HSP−60(熱ショックタンパク質60)、P3NP(Procollagen 3 N-terminal peptide)及びテストステロンの18種類である。
【0020】
群4(「モジュール4」という場合がある。)のマーカー分子は、肝細胞障害及び肝線維化に関わる細胞増殖と関連があるマーカー分子であり、AREG(アンフィレグリン)、BDNF(脳由来神経栄養因子)、CD40−L(CD40 リガンド)、EREG(エピレグリン)、FGF2(塩基性線維芽細胞増殖因子)、HBEGF(ヘパリン結合EGF様増殖因子)、IGFBP2(インスリン様増殖因子 結合タンパク質2)、MMP9(マトリックスメタロプロテアーゼ9)、PAI−1(プラスミノーゲン活性化抑制因子1)、PDGFB(血小板由来成長因子BB)、PLGF(胎盤増殖因子)、SAP(血清アミロイドP成分)、TGFA(トランスフォーミング増殖因子α)、TGFB1(Latency-Associated Peptide of Transforming Growth Factor beta 1)、THBS1(トロンボスポンジン1)及びVTN(ビトロネクチン)の16種類である。
【0021】
測定されるマーカー分子としては、
(A1)群1から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、群2から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、群3から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、若しくは、群4から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、又は、
(B1)上記群1、上記群2、上記群3及び上記群4から選ばれる2つの群のうちの、一方から選択される少なくとも2つのマーカー分子及び他方から選択れる少なくとも2つのマーカー分子、が挙げられる。
【0022】
上記(B1)である場合、測定されるマーカー分子は、例えば、群1から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子及び群2から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、群1から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子及び群3から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、群1から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子及び群4から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、群2から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子及び群3から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、群2から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子及び群4から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、群3から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子及び群4から選ばれる少なくとも2つのマーカー分子、が挙げられる。
【0023】
本実施形態の他の側面において、測定されるマーカー分子としては、
(A2)群1の全てのマーカー分子、群2の全てのマーカー分子、群3の全てのマーカー分子、若しくは、群4の全てのマーカー分子、又は、
(B2)上記群1、上記群2、上記群3及び上記群4から選ばれる2つの群の全てのマーカー分子、が挙げられる。
【0024】
上記(B2)である場合、測定されるマーカー分子は、例えば、群1及び群2の全てのマーカー分子、群1及び群3の全てのマーカー分子、群1及び群4の全てのマーカー分子、群2及び群3の全てのマーカー分子、群2及び群4の全てのマーカー分子、群3及び群4の全てのマーカー分子が挙げられ、好ましくは、群1及び群3の全てのマーカー分子である。
【0025】
上述のマーカー分子の量を測定する方法としては、血液中の量を測定できれば特に制限はなく公知の方法を用いることが可能である。マーカー分子の量を測定する方法としては、例えば、ELISA法、免疫化学発光法(CLIA法)、ラテックス凝集法、ラジオイムノアッセイ法、免疫比濁法、酵素活性測定法、色素結合法、ルミネックス法、ウエスタンブロッティング、HumanMAP法、質量分析法等が挙げられ、好ましくは、ELISA法、CLIA法、ラテックス凝集法、ラジオイムノアッセイ法、免疫比濁法、酵素活性測定法、色素結合法、ルミネックス法、HumanMAP法が挙げられる。
【0026】
(2)同一の群のマーカー分子の量に基づいて算出される規格化スコアから指標値を求める工程
同一の群のマーカー分子の量に基づいて規格化スコアを算出する工程には、測定したマーカー分子の量に由来するデータを規格化する工程、規格化されたデータの分布を変換する工程、変換した分布から求められる代表値を規格化スコアとして選択する工程が含まれる。
【0027】
測定したマーカー分子の量に由来するデータを規格化する工程では、特に制限なく公知の方法を用いることが可能である。上記データを規格化する方法としては、例えば、二乗平均平方根が1になるように比例変換する方法、平均と分散が同等になるように線形変換する方法、最大値を1として最小値を0とする方法等が挙げられ、好ましくは平均と分散が同等になるように線形変換する方法が挙げられる。
【0028】
規格化されたデータの分布を変換する工程では、特に制限なく公知の方法を用いることが可能である。規格化されたデータの分布を変換する方法としては、例えば対数関数による変換、シグモイド関数による変換等が挙げられ、好ましくは標準シグモイド関数による変換が挙げられる。また、この工程は省略することも可能である。
【0029】
変換した分布から求められる代表値を規格化スコアとして選択する工程では、特に制限なく公知の方法を用いることが可能である。上記代表値としては、例えば一般的な統計値すなわち、平均値、中央値、最頻値、最大値、最小値、任意のパーセンタイル値等が挙げられ、好ましくは、平均値、中央値が挙げられる。
【0030】
これらの工程を組み合わせる規格化スコアの算出方法として、好ましくは、平均と分散が同等になるように線形変換する方法によって上記データを規格化する工程と、標準シグモイド関数によってデータの分布を変換する工程と、変換した分布から求められる平均値を代表値として選択する工程とを含む方法が挙げられる。この方法において、規格化スコアは、同一の群のマーカー分子の量に基づいて、下記式1から算出される。
【0032】
式1において、Mは規格化スコアを示し、Nはマーカー分子の数を示し、m
iは、測定された各マーカー分子の量を示し、mean(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、sd(m
i)は、予め決められた各マーカー分子の標準偏差を示し、mean(m
iNASH)は、NASHを罹患している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示し、mean(m
iNAFL)は、NAFLを罹患している患者における予め決められた各マーカー分子の量の平均値を示す。
【0033】
ここで、mean(m
i)には、各マーカー分子の量の平均値であって、NAFLD罹患者の検体を測定して得られる平均値、公知の測定データに基づくNAFLD罹患者の平均値、公知の測定データに基づく判別又は評価しようとする人が含まれる地域住民の平均値、公知の測定データに基づく判別又は評価しようとする人種の平均値等を用いることができる。NAFLD罹患者の平均値を用いる場合には、罹患者集団全体の単純平均値、罹患者集団のうちのNAFL罹患者の平均値とNASH患者の平均値との単純平均値、NAFL罹患者の平均値とNASH患者の平均値とのそれぞれに任意の加重をかけたうえで平均することで得られる加重平均値等を用いることができる。公知の測定データに基づくNAFLD罹患者の平均値を用いる場合には、公知の測定データに基づくNAFLD罹患者の単純平均値、公知の測定データに基づくNAFL罹患者の平均値とNASH患者の平均値との単純平均値、公知の測定データに基づくNAFL罹患者の平均値とNASH罹患患者の平均値とのそれぞれに任意の加重をかけたうえで平均することで得られる加重平均値等を用いることができる。公知の測定データとしては、論文で公表されている生体分子の測定値、体外診断薬の添付文書に記載されている値、診療ガイドラインに記載されている値等を用いることができる。複数のデータを合算して用いることもできる。好ましくは、NAFLD罹患者の検体を測定して得られる、罹患者集団全体の単純平均値、又は罹患者集団のうちのNAFL罹患者の平均値とNASH患者の平均値との単純平均値が挙げられる。より好ましくはNAFLD罹患者の検体を測定して得られる、罹患者集団のうちのNAFL罹患者の平均値とNASH患者の平均値との単純平均値が挙げられる。
sd(m
i)には、各マーカー分子の量の標準偏差であって、NAFLD罹患者の検体を測定して得られる標準偏差、公知の測定データに基づくNAFLD罹患者の標準偏差、公知の測定データに基づく判別又は評価しようとする人が含まれる地域住民の標準偏差、公知の測定データに基づく判別又は評価しようとする人種の標準偏差等を用いることができる。NAFLD罹患者の標準偏差を用いる場合には、罹患者集団全体の標準偏差、罹患者集団のうちのNAFL罹患者の標準偏差とNASH患者の標準偏差との単純平均値、NAFL罹患者の標準偏差とNASH患者の標準偏差とのそれぞれに任意の加重をかけたうえで平均することで得られる加重平均値等を用いることができる。公知の測定データに基づくNAFLD罹患者の標準偏差を用いる場合には、公知の測定データに基づくNAFLD罹患者の標準偏差、公知の測定データに基づくNAFL罹患者の標準偏差とNASH患者の標準偏差との単純平均値、公知の測定データに基づくNAFL罹患者の標準偏差とNASH罹患患者の標準偏差とのそれぞれに任意の加重をかけたうえで平均することで得られる加重平均値等を用いることができる。公知の測定データとしては、論文で公表されている生体分子の測定値、体外診断薬の添付文書に記載されている値、診療ガイドラインに記載されている値等を用いることができる。複数のデータを合算して用いることもできる。好ましくは、NAFLD罹患者の検体を測定して得られる、罹患者集団全体の標準偏差、又は罹患者集団のうちのNAFL罹患者の標準偏差とNASH患者の標準偏差との単純平均値が挙げられる。より好ましくはNAFLD罹患者の検体を測定して得られる、罹患者集団のうちのNAFL罹患者の標準偏差とNASH患者の標準偏差との単純平均値が挙げられる。
【0034】
mean(m
i)、sd(m
i)、mean(m
iNASH)及びmean(m
iNAFL)は、同一のマーカー分子であっても、マーカー分子の量の測定方法が異なる場合には、それぞれの測定方法に対応する異なる値をそれぞれ設定してもよい。異なる測定法の測定値の間に関係性が認められる場合には、一方の測定方法で設定したmean(m
i)、sd(m
i)、mean(m
iNASH)及びmean(m
iNAFL)の値を、それぞれ所定の関係式に代入し、他方の測定方法のそれぞれの値に変換してもよい。
【0035】
mean(m
i)、sd(m
i)、mean(m
iNASH)及びmean(m
iNAFL)は、測定対象とする人種又は地域に応じて適宜設定してもよい。mean(m
i)、sd(m
i)、mean(m
iNASH)及びmean(m
iNAFL)の具体例としては、後述する表5〜表8及び表41に記載の値が挙げられる。
【0036】
算出される規格化スコアが1つである場合(マーカー分子が上記(A)である場合)、規格化スコアの値がそのまま指標値として用いられる。
【0037】
算出される規格化スコアが2つ以上である場合(マーカー分子が上記(B)である場合)、複数の規格化スコアを用いて、指標値を求めることが可能である。複数の規格化スコアから指標値を求める工程には、特に制限なく公知の方法を用いることが可能である。複数の規格化スコアから指標値を求める方法としては、例えば、線形式を用いる方法、及び非線形式を用いる方法が挙げられる。線形式を用いる方法としては、例えば、平均算出式を用いる方法、線形回帰式を用いる方法、線形判別式を用いる方法、及びロジスティック回帰式を用いる方法が挙げられる。平均算出式を用いる方法としては、例えば、相加平均を用いる方法が挙げられる。線形判別式を用いる方法としては、例えば、線形判別分析を用いる方法が挙げられる。非線形式を用いる方法としては、例えば、非線形平均算出式を用いる方法、非線形回帰式を用いる方法、非線形判別式を用いる方法、及び非線形ロジスティック回帰式を用いる方法が挙げられる。非線形平均算出式を用いる方法としては、相乗平均を用いる方法が挙げられる。非線形回帰式を用いる方法としては、線形式の掛算を用いる方法、及びニューラルネットワークを用いる方法が挙げられる。非線形判別式を用いる方法としては、決定木を用いる方法、及びサポートベクターマシンを用いる方法が挙げられる。好ましい方法としては、決定木を用いる方法、又はロジスティック回帰式を用いる方法が挙げられる。
【0038】
より好ましい方法としては、ロジスティック回帰式を用いる方法が挙げられ、好ましい指標値は下記式2から算出される値が用いられる。式2において、Iは指標値を示し、M
a1及びM
a2はそれぞれ、上記2つの群のうちの一方の規格化スコア及び他方の規格化スコア(「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」)を示し、a
1及びa
2は、NAFLとNASHとの判別誤差が最小となるように定められる定数を示す。
I=a
1×M
a1+a
2×M
a2 (式2)
【0039】
a
1及びa
2は、NAFLとNASHとの判別誤差が最小となるように定められれば、どの様な方法によって求めてもよいが、例えば、線形判別分析、又はロジスティック回帰分析等の方法によって求められる。a
1及びa
2の具体例として、後述する表9に記載の値が挙げられる。
【0040】
複数の規格化スコアから決定木により指標値を求める場合、例えば、以下の決定木1〜6が用いられる。決定木により指標値を求めた場合、基準値は例えば、後述する実施例の表11に記載の値が用いられる。
上記マーカー分子が、上記群1及び群2より選ばれる場合は、
M1
a≧0.476ならばI=2、M1
a<0.476かつM2
a≧0.466ならばI=1 、M1
a<0.476かつM2
a<0.466ならばI=0 (決定木1)
上記マーカー分子が、上記群1及び群3より選ばれる場合は、
M3
a≧0.409かつ M1
a≧0.45ならばI=2、M3
a≧0.409かつM1
a<0.45ならばI=1、M3
a<0.409ならばI=0 (決定木2)
上記マーカー分子が、上記群1及び群4より選ばれる場合は、
M4
a≧0.547ならばI=2、M4
a<0.547かつM1
a≧0.468ならばI=1、M4
a<0.547かつ M1
a<0.468ならばI=0 (決定木3)
上記マーカー分子が、上記群2及び群3より選ばれる場合は、
M3
a≧0.409かつM2
a≧0.412ならばI=2、M3
a≧0.409かつM2
a<0.412ならばI=1、M3
a<0.409ならばI=0 (決定木4)
上記マーカー分子が、上記群2及び群4より選ばれる場合は、
M4
a≧0.547ならばI=2、M4
a<0.547かつM2
a≧0.413ならばI=1、M4
a<0.547かつ M2
a<0.413ならばI=0 (決定木5)
上記マーカー分子が、上記群3及び群4より選ばれる場合は、
M3
a≧0.409ならばI=2、M3
a<0.409かつM4
a≧0.588ならばI=1、M3
a<0.409かつM4
a<0.588ならばI=0 (決定木6)
(決定木1〜6において、Iは指標値を示し、M1
a、M2
a、M3
a及びM4
aはそれぞれ、上記群1、群2、群3、及び群4の規格化スコアを示す。)。
【0041】
(3)指標値が、基準値よりも大きい場合に、被験者がNASHを罹患している可能性があると判定する工程
本明細書における「基準値」とは、2つの状態を判別するための基準となる値(カットオフ値)であり、任意に設定することができる。基準値は、NAFL罹患者における指標値であってもよいし、あらかじめ設定された値であってもよい。あらかじめ設定された値としては、保有するNAFL罹患者及びNASH罹患者の指標値によって導かれるROC曲線から推定される、基準値と感度(NASH罹患者の正診率)及び特異度(NAFL罹患者の正診率)の関係に基づき、使用者が必要とする感度と特異度となるような指標値を、上記基準値として設定できる。
【0042】
被験者がNASHを罹患している可能性があるかどうかを判定するために用いられる基準値としては、例えば以下の値が挙げられる。なお、以下に示す基準値は、規格化スコアの値がそのまま指標値として用いられた場合、及び複数の規格化スコアから上記(式2)を用いて求められた指標値を用いた場合に対応する基準値が例示されている。
マーカー分子が群1の少なくとも2つのマーカー分子である場合、基準値は例えば、0.149〜0.907の間で設定される値である。
マーカー分子が群2の少なくとも2つのマーカー分子である場合、基準値は例えば、0.087〜0.848の間で設定される値である。
マーカー分子が群3の少なくとも2つのマーカー分子である場合、基準値は例えば、0.164〜0.909の間で設定される値である。
マーカー分子が群4の少なくとも2つのマーカー分子である場合、基準値は例えば、0.073〜0.854の間で設定される値である。
マーカー分子が群1の全てのマーカー分子である場合、基準値は例えば、0.359〜0.586の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.359〜0.486の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.486〜0.586の間で設定される値である。
マーカー分子が群2の全てのマーカー分子である場合、基準値は例えば、0.357〜0.509の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.357〜0.419の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.419〜0.509の間で設定される値である。
マーカー分子が群3の全てのマーカー分子である場合、基準値は例えば、0.378〜0.545の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.378〜0.45の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.45〜0.545の間で設定される値である。
マーカー分子が群4の全てのマーカー分子である場合、基準値は例えば、0.272〜0.583の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.272〜0.489の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.489〜0.583の間で設定される値である。
【0043】
マーカー分子が群1の少なくとも2つのマーカー分子及び群2の少なくとも2つのマーカー分子である場合、基準値は例えば、3.438〜25.735の間で設定される値である。
マーカー分子が群1の少なくとも2つのマーカー分子及び群3の少なくとも2つのマーカー分子である場合、基準値は例えば、5.987〜34.702の間で設定される値である。
マーカー分子が群1の少なくとも2つのマーカー分子及び群4の少なくとも2つのマーカー分子である場合、基準値は例えば、1.932〜14.239の間で設定される値である。
マーカー分子が群2の少なくとも2つのマーカー分子及び群3の少なくとも2つのマーカー分子である場合、基準値は例えば、2.836〜19.664の間で設定される値である。
マーカー分子が群2の少なくとも2つのマーカー分子及び群4の少なくとも2つのマーカー分子である場合、基準値は例えば、1.387〜14.334の間で設定される値である。
マーカー分子が群3の少なくとも2つのマーカー分子及び群4の少なくとも2つのマーカー分子である場合、基準値は例えば、3.044〜20.554の間で設定される値である。
マーカー分子が群1及び群2の全てのマーカー分子である場合、基準値は例えば、12.025〜15.396の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは12.025〜13.795の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは13.795〜15.396の間で設定される値である。
マーカー分子が群1及び群3の全てのマーカー分子である場合、基準値は例えば、15.915〜20.712の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは15.915〜18.297の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは18.297〜20.712の間で設定される値である。
マーカー分子が群1及び群4の全てのマーカー分子である場合、基準値は例えば、6.219〜8.967の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは6.219〜7.533の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは7.533〜8.967の間で設定される値である。
マーカー分子が群2及び群3の全てのマーカー分子である場合、基準値は例えば、8.497〜11.466の間で設定される値であり、好ましくは8.497〜10.129の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは10.129〜11.466の間で設定される値である。
マーカー分子が群2及び群4の全てのマーカー分子である場合、基準値は例えば、5.889〜8.934の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは5.889〜7.445の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは7.445〜8.934の間で設定される値である。
マーカー分子が群3及び群4の全てのマーカー分子である場合、基準値は例えば、9.023〜12.548の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは9.023〜10.665の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは10.665〜12.548の間で設定される値である。
【0044】
このように本実施形態に係る判別方法の一側面は、血中の存在量に連動性があり、相互の生物学的関係性が強い複数の生体分子(16〜18種類)から構成される群(モジュール)を用いること、及び個々のマーカー分子の量ではなく、所定の群(モジュール)の全てのマーカー分子の測定に基づく規格化スコアを用いることが大きな特長である。これまでにも複数のマーカー分子の測定に基づいたNAFLとNASHとの判別法が報告されている。しかしながら、いずれの方法も少数のマーカー分子の測定に基づく方法であった。少数のマーカー分子の測定に基づく方法は、各マーカー分子の量の測定毎のばらつき又は偏りの影響を受けやすい傾向がある。本実施形態に係る判別方法は、より多くのマーカー分子の測定に基づき、マーカー分子の相互の生物学的関係性が強く、かつ血中の存在量に連動性があるマーカー分子から構成されるモジュールの代表値(規格化スコア)を使用するという点で、個々のマーカー分子の測定上の誤差、及びばらつきの影響を受けにくく、より精度が高い判別を行うことが可能である。
【0045】
また、従来の複数のマーカー分子を用いるNAFLとNASHとの判別法では、複数のマーカー分子の測定値のそれぞれに重みを付けたうえで足し合わせる方法、又は複数のマーカー分子の測定値を乗除する方法が用いられている。しかしながら、これらの方法は、判別法の構築すなわち学習に使用した検体群に対して、過剰に適合する傾向が比較的大きい。本実施形態に係る判別方法は、指標値として、規格化されたマーカー分子の測定値の平均値又は中央値といった統計値を用いることで、この工程での学習が行われないため、学習に使用した検体群への過剰な適合を回避できるという利点を有する。これら2点から、このように本実施形態に係る判別方法は、従来技術に比して優れた特長を有するNAFLとNASHの判別法である。
【0046】
本実施形態の他の側面において、測定されるマーカー分子は、所定の群(モジュール)の1又は複数のマーカー分子であってもよい。各モジュールを代表するマーカー分子を選択することで、高い精度を維持しつつ簡便に判別を行うことができる。各モジュールを代表するマーカー分子は、特に制限なく、適宜選択できる。選択される上記マーカー分子の種類は、例えば、2〜3種類であってもよいし、4〜全種類であってもよい。
【0047】
例えば、群1の場合、マーカー分子は、PROS1及びCLUを含んでいてもよいし、PROS1及びCLUであってもよい。
群2の場合、マーカー分子は、VCAM1を含んでいてもよいし、VCAM1であってもよいし、VCAM1及びHAであってもよいし、VCAM1及びHAを含んでいてもよいし、VCAM1及びCTSDであってもよいし、VCAM1及びCTSDを含んでいてもよいし、VCAM1及びCOL4であってもよいし、VCAM1及びCOL4を含んでいてもよいし、VCAM1及びCOL4−7Sであってもよいし、VCAM1及びCOL4−7Sを含んでいてもよいし、HA及びCOL4−7Sであってもよいし、HA及びCOL4−7Sを含んでいてもよいし、HA及びCTSDであってもよいし、HA及びCTSDを含んでいてもよいし、HA及びCOL4であってもよいし、HA及びCOL4を含んでいてもよいし、CTSD及びCOL4であってもよいし、CTSD及びCOL4を含んでいてもよいし、CTSD及びCOL4−7Sであってもよいし、CTSD及びCOL4−7Sを含んでいてもよい。
群3の場合、マーカー分子は、AST及びPSATであってもよいし、AST及びPSATを含んでいてもよいし、AST及びLEPであってもよいし、AST及びLEPを含んでいてもよいし、AST及びICAM1であってもよいし、AST及びICAM1を含んでいてもよいし、AST、PSAT及びLEPであってもよいし、AST、PSAT及びLEPを含んでいてもよいし、AST、PSAT及びICAM1であってもよいし、AST、PSAT及びICAM1を含んでいてもよいし、AST、LEP及びCK−18であってもよいし、AST、LEP及びCK−18を含んでいてもよいし、AST、ICAM1及びGSTA1であってもよいし、AST、ICAM1及びGSTA1を含んでいてもよいし、AST、PSAT及び6Ckineであってもよいし、AST、PSAT及び6Ckineを含んでいてもよい。
【0048】
規格化スコアは、上記マーカー分子の量に基づいて、上記式1から算出される。被験者がNASHに罹患している可能性があるかどうかを判定するために用いられる基準値としては、例えば以下の値が挙げられる。
【0049】
PROS1及びCLUの測定にHumanMAP法が用いられる場合においては、基準値は次の通り設定することができる。
マーカー分子がPROS1及びCLUである場合、基準値は例えば、0.256〜0.634の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.256〜0.42の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.42〜0.634の間で設定される値である。
【0050】
各マーカー分子の量の測定は、いずれの方法でも構わないが、例えば市販のものを利用することができる。HAの測定にELISA法「Hyaluronan Quantikine ELISA Kit」が用いられ、VCAM1、CTSD及びCOL4の測定にHumanMAP法が用いられ、かつCOL4−7Sの測定にラジオイムノアッセイ法「IV型コラーゲン7Sキット」が用いられる場合においては、基準値は次の通り設定することができる。
マーカー分子が、VCAM1である、VCAM1及びHAである、VCAM1及びCTSDである、VCAM1及びCOL4である、VCAM1及びCOL4−7Sである、HA及びCOL4−7Sである、HA及びCTSDである、HA及びCOL4である、CTSD及びCOL4である、又は、CTSD及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.256〜0.644の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.256〜0.42の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.389〜0.644の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1である場合、基準値は例えば、0.28〜0.644の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.28〜0.389の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.389〜0.644の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びHAである場合、基準値は例えば、0.326〜0.617の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.326〜0.398の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.398〜0.617の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びCTSDである場合、基準値は例えば、0.277〜0.604の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.277〜0.408の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.408〜0.604の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びCOL4である場合、基準値は例えば、0.319〜0.617の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.319〜0.407の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.407〜0.617の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.303〜0.543の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.303〜0.416の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.416〜0.543の間で設定される値である。
マーカー分子がHA及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.326〜0.509の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.326〜0.398の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.398〜0.509の間で設定される値である。
マーカー分子がHA及びCOL4である場合、基準値は例えば、0.343〜0.487の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.343〜0.395の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.395〜0.487の間で設定される値である。
マーカー分子がHA及びCTSDである場合、基準値は例えば、0.305〜0.545の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.305〜0.411の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.411〜0.545の間で設定される値である。
マーカー分子がCTSD及びCOL4である場合、基準値は例えば、0.307〜0.536の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.307〜0.415の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.415〜0.536の間で設定される値である。
マーカー分子がCTSD及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.271〜0.575の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.271〜0.419の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.419〜0.575の間で設定される値である。
【0051】
HAの測定にラテックス凝集法又はCLIA法に拠る体外診断薬「ケミルミヒアルロン酸」が用いられ、VCAM1の測定にELISA法「Human sVCAM-1/CD106 Quantikine ELISA Kit」が用いられ、かつCOL4−7Sの測定にラジオイムノアッセイ法「IV型コラーゲン7Sキット」が用いられる場合においては、基準値は次の通り設定することができる。
マーカー分子がVCAM1及びHAである場合、基準値は例えば、0.326〜0.684の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.326〜0.39の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.39〜0.684の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.293〜0.548の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.293〜0.394の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.394〜0.548の間で設定される値である。
マーカー分子がHA及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.308〜0.662の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.308〜0.394の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.394〜0.662の間で設定される値である。
【0052】
マーカー分子がVCAM1である場合、上記式1から算出される規格化スコアに代えて、VCAM1の測定値(VCAM1の量)をそのまま指標値としてもよい。VCAM1の量の測定にELISA法「Human sVCAM-1/CD106 Quantikine ELISA Kit」が用いられる場合においては、基準値(血清中の濃度(ng/ml))は例えば、551.1〜1280.1の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは551.1〜806.2の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは806.2〜1280.1の間で設定される値である。
【0053】
ASTの測定に酵素活性測定法が用いられ、PSAT、LEP、ICAM1、GSTA1、及び6Ckineの測定にHumanMAP法が用いられ、かつCK−18の測定にELISA法「M30 Apoptosense ELISA」が用いられる場合においては、基準値は次の通り設定することができる。
マーカー分子が、AST及びPSATである、AST及びLEPである、AST及びICAM1である、AST、PSAT及びLEPである、AST、PSAT及びICAM1である、AST、LEP及びCK−18である、AST、ICAM1及びGSTA1である、又は、AST、PSAT及び6Ckineである場合、基準値は例えば、0.284〜0.629の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.284〜0.439の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.393〜0.629の間で設定される値である。
マーカー分子がAST及びPSATである場合、基準値は例えば、0.284〜0.544の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.284〜0.397の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.397〜0.544の間で設定される値である。
マーカー分子がAST及びLEPである場合、基準値は例えば、0.309〜0.629の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.309〜0.412の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.412〜0.629の間で設定される値である。
マーカー分子がAST及びICAM1である場合、基準値は例えば、0.302〜0.546の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.302〜0.406の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.406〜0.546の間で設定される値である。
マーカー分子がAST、PSAT及びLEPである場合、基準値は例えば、0.303〜0.619の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.303〜0.418の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.418〜0.619の間で設定される値である。
マーカー分子がAST、PSAT及びICAM1である場合、基準値は例えば、0.301〜0.551の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.301〜0.406の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.406〜0.551の間で設定される値である。
マーカー分子がAST、LEP及びCK−18である場合、基準値は例えば、0.297〜0.625の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.297〜0.439の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.439〜0.625の間で設定される値である。
マーカー分子がAST、ICAM1及びGSTA1である場合、基準値は例えば、0.302〜0.573の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.302〜0.393の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.393〜0.573の間で設定される値である。
マーカー分子がAST、PSAT及び6Ckineである場合、基準値は例えば、0.291〜0.535の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.291〜0.416の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは0.416〜0.535の間で設定される値である。
【0054】
本実施形態の他の側面において、1種類のマーカー分子を所定の群(モジュール)を代表するマーカー分子として選択してもよい。この場合、上記式1から算出される規格化スコアに代えて、上記マーカー分子の測定値(測定された上記マーカー分子の量)をそのまま指標値としてもよい。
例えば、群2を代表するマーカー分子がVCAM1であり、VCAM1の測定値(例えば、血清中の濃度)を指標値としてもよい。VCAM1の量の測定にELISA法「Human sVCAM-1/CD106 Quantikine ELISA Kit」が用いられる場合においては、基準値(血清中の濃度(ng/ml))は例えば、551.1〜1280.1の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは693.5〜925.3の間で設定される値である。
【0055】
また、第1の規格化スコアとして、PROS1及びCLUの量に基づいて算出される規格化スコアを、第2の規格化スコアとして、群3から選ばれる少なくとも1つのマーカー分子の量、AST及びPSATの量、AST及びLEPの量、AST及びICAM1の量、AST、PSAT及びLEPの量、AST、PSAT及びICAM1の量、AST、LEP及びCK−18の量、AST、ICAM1及びGSTA1の量、又は、AST、PSAT及び6Ckineの量に基づいて算出される規格化スコアを用いて、上記式2から指標値を算出してもよい。このとき式2におけるa
1及びa
2の値としては、例えば下記表9における「M1+M3」に対応する値が上げられる。被験者がNASHを罹患している可能性があるかどうかを判定するために用いられる基準値としては、例えば以下の値が挙げられる。
【0056】
PROS1、CLU、PSAT、LEP、ICAM1、GSTA1及び6Ckineの測定にHumanMAP法が用いられ、ASTの測定に酵素活性測定法が用いられ、かつCK−18の測定にELISA法「M30 Apoptosense ELISA」が用いられる場合においては、基準値は次の通り設定することができる。
マーカー分子が、PROS1及びCLUである、並びに、AST及びPSATである、AST及びLEPである、AST及びICAM1である、AST、PSAT及びLEPである、AST、PSAT及びICAM1である、AST、LEP及びCK−18である、AST、ICAM1及びGSTA1である、又は、AST、PSAT及び6Ckineである場合、基準値は例えば、13.493〜21.205の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは13.493〜18.331の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは16.789〜21.205の間で設定される値である。
マーカー分子が、PROS1及びCLUである、並びに、AST及びPSATである場合、基準値は例えば、13.493〜21.02の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは13.493〜17.141の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは17.141〜21.02の間で設定される値である。
マーカー分子が、PROS1及びCLUである、並びに、AST及びLEPである場合、基準値は例えば、14.228〜20.755の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは14.228〜18.145の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは18.145〜20.755の間で設定される値である。
マーカー分子が、PROS1及びCLUである、並びに、AST及びICAM1である場合、基準値は例えば、13.663〜20.831の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは13.663〜17.406の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは17.406〜20.831の間で設定される値である。
マーカー分子が、PROS1及びCLUである、並びに、AST、PSAT及びLEPである場合、基準値は例えば、14.229〜20.843の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは14.229〜18.331の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは18.331〜20.843の間で設定される値である。
マーカー分子が、PROS1及びCLUである、並びに、AST、PSAT及びICAM1である場合、基準値は例えば、13.929〜21.053の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは13.929〜17.749の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは17.749〜21.053の間で設定される値である。
マーカー分子が、PROS1及びCLUである、並びに、AST、LEP及びCK−18である場合、基準値は例えば、13.544〜21.168の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは13.544〜18.319の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは18.319〜21.168の間で設定される値である。
マーカー分子が、PROS1及びCLUである、並びに、AST、ICAM1及びGSTA1である場合、基準値は例えば、13.788〜20.882の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは13.788〜17.643の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは17.643〜20.882の間で設定される値である。
マーカー分子が、PROS1及びCLUである、並びに、AST、PSAT及び6Ckineである場合、基準値は例えば、13.844〜21.205の間で設定される値であり、NASH罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは13.844〜16.789の間で設定される値であり、NAFL罹患者の正診率の向上という観点では好ましくは16.789〜21.205の間で設定される値である。
【0057】
本実施形態に係る判別方法は、NAFLD、NAFL又はNASHの病態の進展度を判定する方法として用いることもできる。指標値が大きい程、被験者における、NAFLD、NAFL又はNASHの病態の進展度が高い可能性があると判定する。又は、治療薬の適用後の指標値が、適応前の指標値よりも減少している場合、上記治療薬を適用した効果があった可能性があると判定してもよい。
【0058】
本実施形態に係る判別方法は、マテオーニ分類におけるType−1〜Type−3の病態とType−4の病態とを判別する方法、及び線維化StageにおけるStage0、Stage1又はStage2の病態と、Stage3又はStage4の病態とを判別する方法等の、肝線維化を判別する方法として用いることもできる。上記肝線維化を判別する方法では、規格化スコアが、基準値よりも大きい場合に、被験者が肝線維化の病態である可能性があると判定する。これまで肝生検による病理所見に基づいてこれらの病態を判定していたが、上記判別方法によれば非侵襲性の方法で精度よく判定することができる。
【0059】
マテオーニ分類は、肝生検の病理所見に基づくNAFL、NASHの診断方法であり、一般的に用いられている方法である(Matteoni, C., Younossi, Z. & Gramlich, T. Nonalcoholic fatty liver disease: a spectrum of clinical and pathological severity. Gastroenterology 1413-1419 (1999).)。マテオーニ分類と病理所見(組織所見)との関係を表1に示す。近年、NASHの病態の中において、肝線維化が予後の悪化因子であることが明らかとなっている。したがって、NASHの病態において、肝線維化を有するNASH罹患者が含まれる、マテオーニ分類のType−4に分類される病態を判別することの重要性が増している。
【0061】
線維化の進展度は、下記表2に示す「Stage」(Kleiner et. al., Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease, Hepatology 41:1313-21 (2005))を指標として一般的に評価されている。
【0063】
測定されるマーカー分子は、上記群2の全てのマーカー分子であってもよいし、VCAM1を含んでいてもよいし、VCAM1であってもよいし、VCAM1及びHAであってもよいし、VCAM1及びHAを含んでいてもよいし、VCAM1及びCTSDであってもよいし、VCAM1及びCTSDを含んでいてもよいし、VCAM1及びCOL4であってもよいし、VCAM1及びCOL4を含んでいてもよいし、VCAM1及びCOL4−7Sであってもよいし、VCAM1及びCOL4−7Sを含んでいてもよいし、HA及びCOL4−7Sであってもよいし、HA及びCOL4−7Sを含んでいてもよいし、HA及びCTSDであってもよいし、HA及びCTSDを含んでいてもよいし、HA及びCOL4であってもよいし、HA及びCOL4を含んでいてもよいし、CTSD及びCOL4であってもよいし、CTSD及びCOL4を含んでいてもよいし、CTSD及びCOL4−7Sであってもよいし、CTSD及びCOL4−7Sを含んでいてもよい。規格化スコアは、上記マーカー分子の量に基づいて、上記式1から算出される。
【0064】
マテオーニ分類におけるType−1〜Type−3の病態とType−4の病態とを判別する方法の場合、規格化スコアが、基準値よりも大きい場合に、被験者がマテオーニ分類におけるType−4の病態である可能性があると判定する。例えば、HAの測定にELISA法「Hyaluronan Quantikine ELISA Kit」が用いられ、VCAM1、CTSD及びCOL4の測定にHumanMAP法が用いられ、かつCOL4−7Sの測定にラジオイムノアッセイ法「IV型コラーゲン7Sキット」が用いられる場合においては、次の通り設定することができる。
マーカー分子が群2の少なくとも2つのマーカー分子である場合、基準値は例えば、0.087〜0.848の間で設定される値である。
マーカー分子が、上記群2の全てのマーカー分子である、VCAM1である、VCAM1及びHAである、VCAM1及びCTSDである、VCAM1及びCOL4である、VCAM1及びCOL4−7Sである、HA及びCOL4−7Sである、HA及びCTSDである、HA及びCOL4である、CTSD及びCOL4である、又は、CTSD及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.303〜0.617の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.303〜0.475の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.408〜0.536の間で設定される値である。
マーカー分子が上記群2の全てのマーカー分子である場合、基準値は例えば、0.401〜0.536の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.401〜0.45の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.45〜0.536の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1である場合、基準値は例えば、0.303〜0.538の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.303〜0.421の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.421〜0.538の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びHAである場合、基準値は例えば、0.328〜0.617の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.328〜0.418の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.418〜0.617の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びCTSDである場合、基準値は例えば、0.313〜0.581の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.313〜0.432の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.432〜0.581の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びCOL4である場合、基準値は例えば、0.343〜0.558の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.343〜0.457の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.457〜0.558の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.358〜0.602の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.358〜0.438の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.438〜0.602の間で設定される値である。
マーカー分子がHA及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.354〜0.562の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.354〜0.451の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.451〜0.562の間で設定される値である。
マーカー分子がHA及びCOL4である場合、基準値は例えば、0.36〜0.522の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では0.36〜0.408の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.408〜0.522の間で設定される値である。
マーカー分子がHA及びCTSDである場合、基準値は例えば、0.311〜0.545の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.311〜0.432の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.432〜0.545の間で設定される値である。
マーカー分子がCTSD及びCOL4である場合、基準値は例えば、0.317〜0.544の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.317〜0.436の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.436〜0.544の間で設定される値である。
マーカー分子がCTSD及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.364〜0.604の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.364〜0.475の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.475〜0.604の間で設定される値である。
【0065】
HAの測定にラテックス凝集法又はCLIA法に拠る体外診断薬「ケミルミヒアルロン酸」が用いられ、VCAM1の測定にELISA法「Human sVCAM-1/CD106 Quantikine ELISA Kit」が用いられ、かつCOL4−7Sの測定にラジオイムノアッセイ法「IV型コラーゲン7Sキット」が用いられる場合においては、基準値は次の通り設定することができる。
マーカー分子がVCAM1及びHAである場合、基準値は例えば、0.357〜0.572の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.357〜0.403の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.403〜0.572の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.356〜0.603の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.356〜0.426の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.426〜0.603の間で設定される値である。
マーカー分子がHA及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.331〜0.563の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.331〜0.42の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.42〜0.563の間で設定される値である。
【0066】
マーカー分子がVCAM1である場合、上記式1から算出される規格化スコアに代えて、VCAM1の測定値(VCAM1の量)をそのまま指標値としてもよい。
VCAM1の量の測定にELISA法「Human sVCAM-1/CD106 Quantikine ELISA Kit」が用いられる場合においては、基準値(血清中の濃度(ng/ml))は例えば、618.1〜1239.5の間で設定される値であり、Type−4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは618.1〜840.0の間で設定される値であり、Type−1〜Type−3の病態の正診率の向上という観点では好ましくは840.0〜1239.5の間で設定される値である。
【0067】
線維化Stageにおける、Stage0、Stage1又はStage2の病態と、Stage3又はStage4の病態とを判別する方法の場合、規格化スコアが、基準値よりも大きい場合に、被験者が線維化のStageにおけるStage3又はStage4の病態である可能性があると判定する。このときに用いられる基準値としては、HAの測定にELISA法「Hyaluronan Quantikine ELISA Kit」が用いられ、かつVCAM1の測定にHumanMAP法が用いられる場合においては、次の通り設定することができる。
例えば以下の値が挙げられる。
マーカー分子が群2の少なくとも2つのマーカー分子である場合、基準値は例えば、0.087〜0.848の間で設定される値である。
マーカー分子が、上記群2の全てのマーカー分子である、VCAM1である、VCAM1及びHAである、VCAM1及びCTSDである、VCAM1及びCOL4である、VCAM1及びCOL4−7Sである、HA及びCOL4−7Sである、HA及びCTSDである、HA及びCOL4である、CTSD及びCOL4である、又は、CTSD及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.353〜0.766の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.353〜0.574の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.453〜0.766の間で設定される値である。
マーカー分子が上記群2の全てのマーカー分子である場合、基準値は例えば、0.421〜0.632の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.421〜0.544の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.544〜0.632の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1である場合、基準値は例えば、0.371〜0.587の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.371〜0.453の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.453〜0.587の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びHAである場合、基準値は例えば、0.389〜0.766の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.389〜0.519の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.519〜0.766の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びCTSDである場合、基準値は例えば、0.406〜0.718の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.406〜0.524の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.524〜0.718の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びCOL4である場合、基準値は例えば、0.407〜0.678の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.407〜0.534の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.534〜0.678の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.413〜0.685の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.413〜0.574の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.574〜0.685の間で設定される値である。
マーカー分子がHA及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.398〜0.7の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.398〜0.539の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.539〜0.7の間で設定される値である。
マーカー分子がHA及びCOL4である場合、基準値は例えば、0.392〜0.683の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.392〜0.463の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.463〜0.683の間で設定される値である。
マーカー分子がHA及びCTSDである場合、基準値は例えば、0.373〜0.69の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.373〜0.465の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.465〜0.69の間で設定される値である。
マーカー分子がCTSD及びCOL4である場合、基準値は例えば、0.353〜0.635の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.353〜0.469の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.469〜0.635の間で設定される値である。
マーカー分子がCTSD及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.403〜0.676の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.403〜0.559の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.559〜0.676の間で設定される値である。
【0068】
HAの測定にラテックス凝集法又はCLIA法に拠る体外診断薬「ケミルミヒアルロン酸」が用いられ、VCAM1の測定にELISA法「Human sVCAM-1/CD106 Quantikine ELISA Kit」が用いられ、かつCOL4−7Sの測定にラジオイムノアッセイ法「IV型コラーゲン7Sキット」が用いられる場合においては、基準値は次の通り設定することができる。
マーカー分子がVCAM1及びHAである場合、基準値は例えば、0.381〜0.759の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.381〜0.526の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.526〜0.759の間で設定される値である。
マーカー分子がVCAM1及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.394〜0.71の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.394〜0.565の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.565〜0.71の間で設定される値である。
マーカー分子がHA及びCOL4−7Sである場合、基準値は例えば、0.373〜0.698の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.373〜0.563の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは0.563〜0.698の間で設定される値である。
【0069】
マーカー分子がVCAM1である場合、上記式1から算出される規格化スコアに代えて、VCAM1の測定値(VCAM1の量)をそのまま指標値としてもよい。
VCAM1の量の測定にELISA法「Human sVCAM-1/CD106 Quantikine ELISA Kit」が用いられる場合においては、基準値(血清中の濃度(ng/ml))は例えば、789.8〜1344.2の間で設定される値であり、Stage3又はStage4の病態の正診率の向上という観点では好ましくは789.8〜1029.3の間で設定される値であり、Stage0、Stage1又はStage2の病態の正診率の向上という観点では好ましくは1029.3〜1344.2の間で設定される値である。
【0070】
本実施形態に係る判別方法は、NAFLD、NAFL又はNASHの病態の進展度を判定する方法として用いることもできる。指標値が大きい程、被験者における、NAFLD、NAFL又はNASHの病態の進展度が高い可能性があると判定する。または、治療薬の適用後の指標値が、適応前の指標値よりも減少している場合、上記治療薬を適用した効果があった可能性があると判定してもよい。
【0071】
本実施形態に係る判別方法は、肝疾患の病態の進展度を判定する方法として用いることもできる。これまで肝生検による病理所見に基づいて判定していた肝疾患の病態の進展度を、非侵襲性の方法で判定することができる。肝疾患としては、NAFLD、アルコール性肝障害、慢性肝炎、薬物性肝障害等が挙げられる。肝疾患の病態の進展度としては、肝臓の線維化の進展度、肝臓の炎症の進展度、肝細胞の風船様変性の進展度、NAFLDの活動性の進展度、肝細胞の壊死が挙げられる。肝臓の線維化は、例えば、NAFLD、アルコール性肝障害、慢性肝炎、薬物性肝障害で見られる病態である。肝臓の炎症、特に肝臓の小葉内炎症は、例えば、NAFLD、アルコール性肝障害、慢性肝炎、薬物性肝障害で見られる病態である。肝細胞の風船様変性は例えば、NAFLD、アルコール性肝障害、慢性肝炎で見られる病態である。肝細胞の壊死は、例えば、NAFLD、アルコール性肝障害、慢性肝炎、薬物性肝障害で見られる病態である。
【0072】
ここで、NAFLDの活動性を評価するスコアであるNAFLD Activity Score(NAS)について説明する。NAFLD Activity Scoreは、肝細胞の脂肪化率、肝細胞の風船様変性及び小葉内炎症の病理所見から下記表3に基づいてそれぞれ点数がつけられ、その合計値として求められる。このスコアが高い程、NAFLDの病態の重症度が高いと判断される。
【0074】
工程(1)において測定されるマーカー分子は、VCAM1を含んでいてもよいし、VCAM1であってもよいし、VCAM1及びHAであってもよいし、VCAM1及びHAを含んでいてもよいし、VCAM1及びCOL4であってもよいし、VCAM1及びCOL4を含んでいてもよいし、VCAM1及びCOL4−7Sであってもよいし、VCAM1及びCOL4−7Sを含んでいてもよいし、HA及びCOL4−7Sであってもよいし、HA及びCOL4−7Sを含んでいてもよい、HA及びCOL4であってもよいし、HA及びCOL4を含んでいてもよい。規格化スコアは、上記マーカー分子の量に基づいて、上記式1から算出される。規格化スコアは肝疾患の病態の進展度の指標値として用いることができる。
【0075】
マーカー分子がVCAM1である場合、上記式1から算出される規格化スコアに代えて、VCAM1の測定値(VCAM1の量)をそのまま指標値としてもよい。
【0076】
指標値が大きい程、被験者における、肝臓の線維化の進展度、肝臓の炎症の進展度、肝細胞の風船様変性の進展度、NAFLDの活動性の進展度、又は肝細胞の壊死の進展度が高い可能性があると判定する。または、指標値が、前回求めた指標値よりも増大している場合、被験者における、肝臓の線維化の進展度、肝臓の炎症の進展度、肝細胞の風船様変性の進展度、NAFLDの活動性の進展度、又は肝細胞の壊死の進展度が進んでいる可能性があると判定してもよい。または、治療薬の適用後の指標値が、適用前の指標値よりも減少している場合、上記治療薬を適用した効果があった可能性があると判定してもよい。
【0077】
治療薬としては、NAFLDの治療薬、特にNASHの治療薬が挙げられる。NASHの治療薬として、当業者にとって自明なものであり、たとえば、チアゾリジン誘導体(ロシグリタゾン、ピオグリタゾン)、HMG−CoA還元酵素阻害薬(アトルバスタチン)、コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ロサルタン、テルミサルタン、バルサルタン)、ビタミンEが挙げられるが、それらに限定されない。また、治療薬の適用期間は、必要に応じて適宜に設定できるが、たとえば、適用12、24、36、48、60、72、84、96週後の効果を確認してもよい。
【0078】
本実施形態の別の他の側面では、本実施形態に係る上記方法に使用するためのキットであって、上記マーカー分子を検出するための試薬と、上記方法を実施するための説明書と、を含むキットを提供する。
また、本実施形態の別の他の側面では、本実施形態に係る上記方法に使用するためのキットであって、VCAM1を検出するための試薬を含むキットを提供する。上記キットは、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を罹患している、肝臓の線維化の病態である、肝臓の線維化の進展度が高い、肝細胞の風船様変性の病態の進展度が高い、肝臓の炎症の進展度が高い、肝肥大の病態である、肝細胞の壊死の病態である、肝細胞のアポトーシスの病態である、肝細胞の変性の病態である、肝臓の脂肪化の病態である、又はそれらの可能性があるかを判定するための診断薬として把握することもできる。
【0079】
上記マーカー分子を検出するための試薬としては、例えば、上記マーカー分子を特異的に認識する抗体、上記マーカー分子に特異的に結合する蛋白質又は核酸、質量分析の標準とするための合成VCAM1等が挙げられる。上記マーカー分子を検出するための試薬は、市販されているものを入手してもよいし、公知の方法によって製造してもよい。
【0080】
上記方法を実施するための説明書は、本実施形態に係る方法が実施できるように記載されていれば特に制限はないが、例えば、上記規格化スコア又は上記指標値の算出方法、上記方法に用いられる基準値等が記載された説明書が挙げられる。
【0081】
上記キットは、上記試薬及び上記説明書の他に、例えば、滅菌水、生理食塩水、界面活性剤、緩衝剤、タンパク質安定剤、保存剤、ブロッキング溶液、反応溶液、反応停止液、コントロール用試薬(例えば、組織サンプル、ポジティブコントロール及びネガティブコントロール用生体分子)、標識用試薬、固相支持体を、必要に応じて含んでいてもよい。
【0082】
本実施形態の別の他の側面では、本実施形態に係る方法に使用するための肝疾患判定システムを提供する。
図11は、肝疾患判定システムの一実施形態を示す模式図である。上記肝疾患判定システム100は、例えば、被験者から採取された血液に含まれる上記マーカー分子の量を測定する測定装置1と、測定した上記マーカー分子の量に基づいて肝疾患の病態を判定する肝疾患判定装置11とを備える。以下、詳細に説明する。
【0083】
上記測定装置は、試料を設置するための試料設置部3と、上記試料に光を照射するための光源部2と、上記試料を透過した光を検出する検出部4と、検出部4によって得られた測定データ(上記マーカー分子の量の測定データ)を上記肝疾患判定装置11に電気的に送信する通信部5とを、備える。上記試料は、例えば被験者から採取された血液等から調製される。
【0084】
光源部2は、例えば、複数の波長が照射可能な単一又は複数の光源から構成されている。すなわち、ハロゲンランプのように多波長の光源やそれに波長選択フィルターを組み合わせたもの、また異なるピーク波長のLEDの集合体などである。
【0085】
光源部2は、試料設置部3に設置された試料に所定の波長の光を照射するものであって、その波長は、検出する試薬(蛍光色素等)に応じて適宜設定できるが、例えば、400nm〜1000nmである。ここで、光源部2は、単色光源であっても、複数の光源を組み合せた光源であってもよい。また、検出する対象が、発光色素の光量、放射性同位体から発する放射線等の場合、光源部2は備えていなくてもよい。
【0086】
検出部4は、上記試料を透過した光を検出するものである。検出部4は、蛍光色素、発光色素等の光量を検出するものであってもよいし、放射性同位体から発する放射線を検出するものであってもよい。
【0087】
通信部5は、検出部4によって得られた測定データを上記肝疾患判定装置11に電気的に送信するものである。
【0088】
また、光源部2、検出部4、通信部5は、上記肝疾患判定装置11と電気的に接続されており、上記肝疾患判定装置11内にある制御部12によってその機能が制御されていてもよい。
【0089】
図11の一部は、上記肝疾患判定装置11のハードウェア的構成を示す概要図としても把握できる。上記肝疾患判定装置11は、制御部12と、上記通信部5から伝達されてきた測定データや解析に必要な情報を記録するための記録部13と、計測結果の演算解析を行う演算部14と、解析結果の表示を行う表示部15と、制御に必要な情報を入力するため入力部16と、を備えている。後述する肝疾患判定装置11の各機能は、記録部13、演算部14等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、演算部14の制御の下で入力部16、表示部15を動作させるとともに、記録部13、演算部14におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0090】
制御部12は、肝疾患判定システム100の作動状況を所定の手順に従って制御可能な制御装置である。
【0091】
肝疾患判定装置11と制御部12は双方の機能を備えた1つのコンピュータを使用してもよいし、制御部12、記録部13、演算部14、表示部15、入力部16に相当する機能を備えたコンピュータ等を用いてもよい。
【0092】
図12は、肝疾患判定装置11の機能的構成を示す概要図である。肝疾患判定装置11は、機能的構成要素として、取得手段D1、規格化手段D2、比較手段D3、判定手段D4及び表示手段D5を備える。
【0093】
取得手段D1は、測定装置1からの測定データ(上記マーカー分子の量の測定データ)を取得するものである。規格化手段D2は、取得した測定データを上記式1に基づいて規格化スコアを算出し、算出された規格化スコアから指標値を求めるものである。比較手段D3は、規格化手段D2によって求められた指標値を、基準値と比較するものである。判定手段D4は、比較した結果に基づき、肝疾患の病態を有するか否かを判定するものである。表示手段D5は、判定した結果を表示するものである。
【0094】
(肝疾患の判定プログラム)
本実施形態に係る方法に使用するためのプログラムは、コンピュータを、上述した取得手段D1、規格化手段D2、比較手段D3、判定手段D4、及び表示手段D5として機能させるものである。別の側面では、上記プログラムは、コンピュータに後述する取得ステップS1、規格化ステップS2、比較ステップS3、判定ステップS4及び表示ステップS5を実行させる。コンピュータに上記プログラムを読み込ませることにより、コンピュータは肝疾患判定装置11として動作する。上記プログラムは、例えば、記録媒体に格納されて提供される。なお、記録媒体としては、フレキシブルディスク、CD、DVD等の記録媒体、ROM等の記録媒体、又は半導体メモリ等が例示される。
【0095】
(肝疾患の判定方法)
次に、肝疾患判定装置11により行われる肝疾患の判定方法について説明する。
図13は、肝疾患の判定方法のフローチャートである。肝疾患判定装置11により行われる上記判定方法により、肝疾患の病態を有するか否かの判定を定量的且つ自動的に精度高く行うことができる。
【0096】
[取得ステップS1]
最初に、取得手段D1が測定装置1からの測定データ(被験者から採取された血液に含まれる上記マーカー分子の量の測定データ)を取得する。
【0097】
[規格化ステップS2]
次に、規格化手段D2が、取得手段D1によって取得した上記測定データから上記式1に基づいて規格化スコアを算出し、算出された規格化スコアから指標値を求める。上記測定データは、取得手段D1によって取得する代わりに、予め得られた測定データを肝疾患判定装置11に入力してもよい。また、上記規格化スコアをそのまま指標値としてもよい。
【0098】
[比較ステップS3]
次に、比較手段D3が、規格化手段D2によって求められた指標値を、基準値と比較する。測定するマーカー分子が1種類である場合、規格化ステップS2を行うことなく、取得手段D1によって取得した上記測定データを指標値として用いて比較ステップS3を行ってもよい。
【0099】
[判定ステップS4]
次に、判定手段D4が、比較した結果に基づき、肝疾患の病態を有するか否かを判定する。例えば、指標値が、基準値よりも大きい場合に、被験者が、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を罹患している、肝臓の線維化の病態である、肝臓の線維化の進展度、肝細胞の風船様変性の病態の進展度、もしくは、肝臓の炎症の進展度が高い、肝肥大の病態である、肝細胞の壊死の病態である、肝細胞のアポトーシスの病態である、肝細胞の変性の病態である、肝臓の脂肪化の病態である、又はそれらの可能性があると判定する。
【0100】
[表示ステップS5]
次に、表示手段D5が、判定ステップS4にて判定した結果を表示する。例えば、対象が肝疾患の病態を有するか否か等が表示手段D5によって表示される。
【0101】
以上説明したように本実施形態に係る判別方法は、非侵襲性であって、従来法よりも高い精度で非アルコール性脂肪肝疾患等の肝疾患の病態を判別することが可能になる。また、上記判別方法は、非アルコール性脂肪肝疾患等の肝疾患の診断のためのデータを収集する方法としても使用できる。
【0102】
上記判別方法では、式1から算出される規格化スコアを用いて指標値を求めたが、規格化スコア以外の統計値を用いて指標値を求めてもよい。上記統計値としては、例えば、最大値、最小値、最頻値、平均値、中央値、パーセンタイル値等が挙げられる。指標値を求めるときに用いる統計値は、1種類を単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。複数を組み合わせて用いた場合、各マーカー分子における測定値の単位、尺度、濃度、量等の違いを補正するために、測定値を標準化してもよい。また、シグモイド関数を用いて測定値の分布を判別に適した分布に変換してもよい。
【実施例】
【0103】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0104】
試験例1:NAFLとNASHとを判別する方法(1)
予めマテオーニ分類によってNASHの患者及びNAFLの患者に分類された132名の患者について、下記表4に示した生体分子(マーカー分子)の血液中の量を測定した。上記生体分子のうち、ALB、ALT、AST、COL4−7S及びINS
IVDは、日本において薬事承認されている体外診断用医薬品を用いて測定した。具体的には、ALBは色素結合法の1種であるBCP改良法によって測定した。ALT及びASTは酵素活性測定法によって測定した。COL4−7SはRIA法によって測定した。INS
IVDはCLIA法によって測定した。CK−18は市販の評価キット(M30 Apoptosense(登録商標) ELISA)によって測定した。HAは市販の評価キット(Hyaluronan Quantikine ELISA Kit)によって測定した。Mac−2bpは市販の評価キット(Human Mac-2 binding protein (Mac-2bp) Assay Kit − IBL)によって測定した。市販の評価キットを用いた際に、マルチモードマイクロプレートリーダー「Spectramax M5」(Molecular Devices社製)を用いた。P3NPは市販の評価キット(ELISA Kit for Procollagen III N-Terminal Propeptide (PIIINP))によって測定した。その他の生体分子は、Myriad RBM社の提供する多重免疫測定サービスHuman DiscoveryMAP(登録商標) 250+(v. 2.0)を利用して測定した。
【0105】
【表4】
【0106】
次に同一のモジュールの生体分子の量から、上記式1に基づいて、M1〜M4に対応するそれぞれの規格化スコアを求めた。ここで、式1におけるmean(m
i)、sd(m
i)、mean(m
iNASH)、及びmean(m
iNAFL)は以下の表5〜表8に示す値を用いた。
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【0109】
【表7】
【0110】
【表8】
【0111】
また、上記モジュールに対応する規格化スコアを2つ用いた場合、上記式2に基づいて指標値を求めた。ここで、式2におけるM
a1(第1の規格化スコア)、M
a2(第2の規格化スコア)、a
1及びa
2は、以下の値を用いた。
【0112】
【表9】
【0113】
求められた規格化スコア又は指標値をNAFLの患者群、NASHの患者群に分類してプロットしたグラフを
図1に示す。
図1中、実線は表10における「基準値の範囲A」の両端を示し、破線は表10における「基準値の範囲B」の両端を示す。いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表10に示される範囲に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【0114】
【表10】
【0115】
また、上記モジュールに対応する規格化スコアを2つ用いた場合、上述した決定木(決定木1〜決定木6)に基づく指標値も求めたところ以下のようになった。
上記マーカー分子が、上記群1及び群2より選ばれる場合は、
M1
a≧0.476ならばI=2、M1
a<0.476かつM2
a≧0.466ならばI=1 、M1
a<0.476かつM2
a<0.466ならばI=0 (決定木1)
上記マーカー分子が、上記群1及び群3より選ばれる場合は、
M3
a≧0.409かつ M1
a≧0.45ならばI=2、M3
a≧0.409かつM1
a<0.45ならばI=1、M3
a<0.409ならばI=0 (決定木2)
上記マーカー分子が、上記群1及び群4より選ばれる場合は、
M4
a≧0.547ならばI=2、M4
a<0.547かつM1
a≧0.468ならばI=1、M4
a<0.547かつ M1
a<0.468ならばI=0 (決定木3)
上記マーカー分子が、上記群2及び群3より選ばれる場合は、
M3
a≧0.409かつM2
a≧0.412ならばI=2、M3
a≧0.409かつM2
a<0.412ならばI=1、M3
a<0.409ならばI=0 (決定木4)
上記マーカー分子が、上記群2及び群4より選ばれる場合は、
M4
a≧0.547ならばI=2、M4
a<0.547かつM2
a≧0.413ならばI=1、M4
a<0.547かつ M2
a<0.413ならばI=0 (決定木5)
上記マーカー分子が、上記群3及び群4より選ばれる場合は、
M3
a≧0.409ならばI=2、M3
a<0.409かつM4
a≧0.588ならばI=1、M3
a<0.409かつM4
a<0.588ならばI=0 (決定木6)
(決定木1〜6において、Iは指標値を示し、M1
a、M2
a、M3
a及びM4
aはそれぞれ、上記群1、群2、群3、及び群4の規格化スコアを示す。)。
いずれの指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また基準値として、下記表11に示される値が有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【0116】
【表11】
【0117】
また、上記モジュールに対応する規格化スコアを2つ用いた場合、上述した相加平均に基づく指標値も求めたところ以下のようになった。
好ましい指標値は下記式3から算出される値が用いられる。式3において、Iは指標値を示し、M
a1及びM
a2はそれぞれ、上記2つの群のうちの一方の規格化スコア及び他方の規格化スコア(「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」)を示す。
I=(M
a1+M
a2)/2 (式3)
ここで、式3におけるM
a1(第1の規格化スコア)、M
a2(第2の規格化スコア)は、下記表12に示される値を用いた。
【表12】
いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表13に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表13】
【0118】
また、上記モジュールに対応する規格化スコアを2つ用いた場合、上述した線形回帰式に基づく指標値も求めたところ以下のようになった。
好ましい指標値は下記式4から算出される値が用いられる。式4において、Iは指標値を示し、M
a1及びM
a2はそれぞれ、上記2つの群のうちの一方の規格化スコア及び他方の規格化スコア(「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」)を示し、b
1及びb
2は、線形回帰分析によって定められる定数を示す。
I=b
1×M
a1+b
2×M
a2 (式4)
ここで、式4におけるM
a1(第1の規格化スコア)、M
a2(第2の規格化スコア)、b
1及びb
2は、下記表14に示される値を用いた。
【表14】
いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表15に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表15】
【0119】
また、上記モジュールに対応する規格化スコアを2つ用いた場合、上述した線形判別分析に基づく指標値も求めたところ以下のようになった。
好ましい指標値は下記式5から算出される値が用いられる。式5において、Iは指標値を示し、M
a1及びM
a2はそれぞれ、上記2つの群のうちの一方の規格化スコア及び他方の規格化スコア(「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」)を示し、C
1及びC
2は、線形判別分析によって定められる定数を示す。
I=c
1×M
a1+c
2×M
a2 (式5)
ここで、式5におけるM
a1(第1の規格化スコア)、M
a2(第2の規格化スコア)、c
1及びc
2は、下記表16に示される値を用いた。
【表16】
いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表17に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表17】
【0120】
また、上記モジュールに対応する規格化スコアを2つ用いた場合、上述した相乗平均に基づく指標値も求めたところ以下のようになった。
好ましい指標値は下記式6から算出される値が用いられる。式6において、Iは指標値を示し、M
a1及びM
a2はそれぞれ、上記2つの群のうちの一方の規格化スコア及び他方の規格化スコア(「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」)を示す。
【数10】
ここで、式6におけるM
a1(第1の規格化スコア)、M
a2(第2の規格化スコア)は、下記表18に示される値を用いた。
【表18】
いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表19に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表19】
【0121】
また、上記モジュールに対応する規格化スコアを2つ用いた場合、上述した線形式の掛算に基づく指標値も求めたところ以下のようになった。
好ましい指標値は下記式7から算出される値が用いられる。式7において、Iは指標値を示し、M
a1及びM
a2はそれぞれ、上記2つの群のうちの一方の規格化スコア及び他方の規格化スコア(「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」)を示し、d
1、d
2及びd
3は、非線形回帰分析によって定められる定数を示す。
I=d
1×M
a1+d
2×M
a2+d
3×M
a1×M
a2 (式7)
ここで、式7におけるM
a1(第1の規格化スコア)、M
a2(第2の規格化スコア)、d
1、d
2及びd
3は、下記表20に示される値を用いた。
【表20】
いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表21に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表21】
【0122】
また、上記モジュールに対応する規格化スコアを2つ用いた場合、上述したニューラルネットワークに基づく指標値も求めたところ以下のようになった。
好ましい指標値は下記式8及び式9から算出される値が用いられる。式8において、A
1、B
1、X
1及びX
2はそれぞれ、ニューラルネットワークによって定められる定数を示す。式9において、Iは指標値を示し、A
2、B
2及びX
2は、ニューラルネットワークによって定められる定数を示す。
X
2=f(A
1・X
1+B
1) (式8)
I=f(A
2・X
2+B
2) (式9)
ここで、
【数11】
「・」は行列の内積を表し、X
1は2×1の行列であり、A
1は2×2の行列であり、B
1は2×1の行列であり、X
2は2×1の行列であり、A
2は1×2の行列であり、B
2は実数である。
A
1、B
1、X
1、A
2及びB
2には、下記表22に示される値を用いた。
【表22】
上記表22におけるM
a1及びM
a2はそれぞれ、上記2つの群のうちの一方の規格化スコア及び他方の規格化スコア(「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」)を示す。M
a1及びM
a2には、下記表23に示される値を用いた。
【表23】
いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表24に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表24】
【0123】
また、上記モジュールに対応する規格化スコアを2つ用いた場合、上述したサポートベクターマシンに基づく指標値も求めたところ以下のようになった。
好ましい指標値は下記式10から算出される値が用いられる。式10において、Iは指標値を示し、N、α、χ
及びν は、サポートベクターマシンによって定められる定数を示す。
【数12】
ここで、
【数13】
「・」は行列の内積を表し、χは2×1の行列であり、χ
Tはχの転置行列であり、αは1×Nの行列であり、α
iはαのi列番目の実数であり、νは2×Nの行列であり、ν
iはνのi列番目の2×1の行列であり、N、α、χ
及びνには、下記表25に示される値を用いた。
【表25】
【表25-2】
【表25-3】
上記表25におけるM
a1及びM
a2はそれぞれ、上記2つの群のうちの一方の規格化スコア及び他方の規格化スコア(「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」)を示す。M
a1及びM
a2には、下記表26に示される値を用いた。
【表26】
いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表27に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表27】
【0124】
また、上記モジュールに対応する規格化スコアを2つ用いた場合、上述した非線形ロジスティック回帰式に基づく指標値も求めたところ以下のようになった。
好ましい指標値は下記式11から算出される値が用いられる。式11において、Iは指標値を示し、M
a1及びM
a2はそれぞれ、上記2つの群のうちの一方の規格化スコア及び他方の規格化スコア(「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」)を示し、e
1、e
2及びe
3は、非線形回帰分析によって定められる定数を示す。
I=e
1×M
a1+e
2×M
a2+e
3×M
a1×M
a2 (式11)
ここで、式11におけるM
a1(第1の規格化スコア)、M
a2(第2の規格化スコア)、e
1、e
2及びe
3は、下記表28に示される値を用いた。
【表28】
いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表29に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表29】
【0125】
試験例2:NAFLとNASHとを判別する方法(2)
測定法1
規格化スコアを求める際に用いた生体分子を、下記表30に示す1〜3種類の生体分子を用いたこと以外は、上記試験例1と同様の方法で規格化スコアを求めた。
【0126】
【表30】
【0127】
上記モジュール1(M1)の規格化スコア及びモジュール3(M3)の規格化スコアをそれぞれ「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」とし、上記表30に示したM1とM3の全ての組み合わせについて、上記式2に基づいて指標値を求めたところ、いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表31に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表31】
【0128】
上記モジュール1(M1)の規格化スコア及びモジュール3(M3)の規格化スコアをそれぞれ「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」とし、上記表12に示したM1とM3の全ての組み合わせについて、上記決定木2に基づく指標値も求めたところ、いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表32に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表32】
【0129】
上記モジュール1(M1)の規格化スコア及びモジュール3(M3)の規格化スコアをそれぞれ「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」とし、上記表12に示したM1とM3の全ての組み合わせについて、上記式3に基づく指標値も求めたところ、いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表33に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表33】
【0130】
上記モジュール1(M1)の規格化スコア及びモジュール3(M3)の規格化スコアをそれぞれ「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」とし、上記表12に示したM1とM3の全ての組み合わせについて、上記式4に基づく指標値も求めたところ、いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表34に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表34】
【0131】
上記モジュール1(M1)の規格化スコア及びモジュール3(M3)の規格化スコアをそれぞれ「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」とし、上記表12に示したM1とM3の全ての組み合わせについて、上記式5に基づく指標値も求めたところ、いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表35に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表35】
【0132】
上記モジュール1(M1)の規格化スコア及びモジュール3(M3)の規格化スコアをそれぞれ「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」とし、上記表12に示したM1とM3の全ての組み合わせについて、上記式6に基づく指標値も求めたところ、いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表36に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表36】
【0133】
上記モジュール1(M1)の規格化スコア及びモジュール3(M3)の規格化スコアをそれぞれ「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」とし、上記表12に示したM1とM3の全ての組み合わせについて、上記式7に基づく指標値も求めたところ、いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表37に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表37】
【0134】
上記モジュール1(M1)の規格化スコア及びモジュール3(M3)の規格化スコアをそれぞれ「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」とし、上記表12に示したM1とM3の全ての組み合わせについて、上記式8及び式9に基づく指標値も求めたところ、いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表38に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表38】
【0135】
上記モジュール1(M1)の規格化スコア及びモジュール3(M3)の規格化スコアをそれぞれ「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」とし、上記表12に示したM1とM3の全ての組み合わせについて、上記式10に基づく指標値も求めたところ、いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表39に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表39】
【0136】
上記モジュール1(M1)の規格化スコア及びモジュール3(M3)の規格化スコアをそれぞれ「第1の規格化スコア」及び「第2の規格化スコア」とし、上記表12に示したM1とM3の全ての組み合わせについて、上記式11に基づく指標値も求めたところ、いずれの規格化スコア、指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表40に示される値に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【表40】
【0137】
測定法2
HA、VCAM1及びCOL4−7Sそれぞれの量を以下に示す方法で測定し、規格化スコアを求めた。HAの量は、体外診断薬「エルピアエースHA」(LSIメディエンス社製)を用いたラテックス凝集法によって測定した。VCAM1の量は、「Human sVCAM-1/CD106 Quantikine ELISA Kit」(R&D Systems社製)を用いたELISA法によって測定した。さらに、COL4−7Sの量は、体外診断薬「IV型コラーゲン・7Sキット」(LSIメディエンス社製)を用いたラジオイムノアッセイ法によって測定した。測定された各生体分子の量から、上記式1に基づいて、それぞれの規格化スコアを求めた。ここで、式1におけるmean(m
i)、sd(m
i)、mean(m
iNASH)、及びmean(m
iNAFL)は、以下示す表41の値を用いた。なお、表41に記載の値は、上記診断薬又は試薬を用いた方法と同等の性能を有する測定法が用いられる場合においても用いられる値である。HAにおいてはNAFL罹患者44人及びNASH罹患者95人から得られた血清試料を測定した。VCAM1においてはNAFL罹患者68人及びNASH罹患者127人から得られた血清試料を測定した。COL4−7Sについては、NAFL罹患者62人及びNASH罹患者130人から得られた血清試料を測定した。それぞれの分子について、NAFL罹患者の平均値及びNASH罹患者の平均値の単純平均をmean(m
i)とし、NAFL罹患者の標準偏差及びNASH罹患者の標準偏差の単純平均をsd(m
i)とした。また、HAの測定に体外診断薬「ケミルミヒアルロン酸」(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス社製)を用いたCLIA法によって測定する場合のmean(m
i)、sd(m
i)には、ラテックス凝集法において用いるmean(m
i)、sd(m
i)の値を、添付文書に記載される相関式(y=1.36x−10.3)に代入して得られた値を用いて設定した。ここで、yは「ケミルミヒアルロン酸」を用いる場合のmean(m
i)又はsd(m
i)の値を示し、xは「エルピアエースHA」を用いる場合のmean(m
i)又はsd(m
i)の値を示す。
【0138】
【表41】
【0139】
求められた規格化スコアをNAFLの患者群、NASHの患者群に分類してプロットしたグラフを
図2−1、
図2−2及び
図3に示す。図中、実線は表42及び43における「基準値の範囲A」の両端を示し、破線は表42及び43における「基準値の範囲B」の両端を示す。いずれの規格化スコアにおいても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表42及び43に示される範囲に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【0140】
【表42】
【0141】
【表43】
【0142】
試験例3:NAFLとNASHとを判別する方法(3)
第1の規格化スコアとして、試験例2のM1(PROS1、CLU)に対応する規格化スコアを、第2の規格化スコアとして、試験例2のM3(AST、PSAT)、M3(AST、LEP)、M3(AST、ICAM1)、M3(AST、PSAT、LEP)、M3(AST、PSAT、ICAM1)、M3(AST、LEP、CK−18)、M3(AST、ICAM1、GSTA1)又はM3(AST、PSAT、6Ckine)に対応する規格化スコアを用いたこと以外は、試験例1の「M1+M3」同様の計算方法で指標値を求めた。
【0143】
求められた指標値をNAFLの患者群、NASHの患者群に分類してプロットしたグラフを
図4に示す。
図4中、実線は表43における「基準値の範囲A」の両端を示し、破線は表44における「基準値の範囲B」の両端を示す。いずれの指標値においても、NAFLの患者群とNASHの患者群との間に有意な差がみられ、NAFLとNASHとの判別に有効であることがわかった。また、NASHであるかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表に示される範囲に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるNAFICスコアのAUROC(0.834)と比較したところ、従来技術よりも優れた診断精度であることが示唆された。なお、NAFICスコアのAUROCは、本実施例の検体群を用いて算出した値である。
【0144】
【表44】
【0145】
試験例4:マテオーニ分類におけるType−1〜Type−3の病態とType−4の病態とを判別する方法
規格化スコアを求める際に用いた生体分子を、下記表45に示す生体分子を用いたこと以外は、上記試験例2の測定法1又は測定法2と同様の方法で規格化スコアを求めた。
【0146】
【表45】
【0147】
求められた規格化スコアを、マテオーニ分類におけるType−1〜Type−3の病態に該当する患者群(Type1−3)とType−4の病態に該当する患者群に分類してプロットしたグラフを
図5−1及び
図5−2に示す。図中、実線は表46における「基準値の範囲A」の両端を示し、破線は表46における「基準値の範囲B」の両端を示す。いずれの規格化スコアにおいても、Type1−3の患者群とType−4の患者群との間に有意な差がみられ、Type−1〜Type−3の病態とType−4の病態との判別に有効であることがわかった。また、Type−4の病態に該当するかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表46に示される範囲に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるFIB4 indexのAUROC(0.790)と比較したところ、従来技術と同等又はそれ以上の診断精度であることが示唆された。
【0148】
【表46】
【0149】
試験例5:線維化のStageにおける、Stage0〜Stage2の病態と、Stage3又はStage4の病態とを判別する方法
試験例4と同様の生体分子及び方法で規格化スコアを求めた。求められた規格化スコアを、線維化のStageにおけるStage0〜Stage2の病態に該当する患者群(F0−2)とStage3又はStage4の病態に該当する患者群(F3−4)に分類してプロットしたグラフを
図6−1及び
図6−2に示す。図中、実線は表47における「基準値の範囲A」の両端を示し、破線は表47における「基準値の範囲B」の両端を示す。ここで、Stage0の病態とは、マテオーニ分類におけるType−1又はType−2の病態を意味する。いずれの規格化スコアにおいても、F0−2の患者群とF3−4の患者群との間に有意な差がみられ、Stage0〜Stage2の病態と、Stage3又はStage4の病態との判別に有効であることがわかった。また、F3−4の病態に該当するかどうかを判別するための基準値(カットオフ値)は、下記表47に示される範囲に設定することが有効であることが分かった。また、これらの結果から求められたAUROCを、従来技術であるFIB4 indexのAUROC(0.858)と比較したところ、従来技術よりも優れた診断精度であることが示唆された。
【0150】
【表47】
【0151】
試験例6:肝線維化の進展度を判定する方法
群2の生体分子である「VCAM1」、「VCAM1、HA」、「VCAM1、COL4」、「VCAM1、COL4−7S」及び「HA、COL4−7S」のそれぞれの規格化スコア、並びに、VCAM1の測定値(血中濃度)に基づいて、肝線維化の進展度を判定することが可能かどうかを検討した。肝臓の病理の指標として、肝生検に基づく肝線維化の病理診断スコア、Fibrosis stage(0〜4点)を用いた(Kleiner et. al., Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease, Hepatology 41:1313-21 (2005))。規格化スコアは試験例1と同様の方法を用いて求めた。VCAM1の測定値は、ELISA法に拠る試薬「Human sVCAM-1/CD106 Quantikine ELISA Kit」によって定量した。また、肝線維化を評価する指標として知られるFIB4 index(Hepatology. 2006 Jun;43(6):1317-25.)を、被験者の年齢、AST、ALT及び血小板数から求めた。病理診断スコアが記録された人から採取された血清132検体について、Fibrosis stageと、上記規格化スコア、VCAM1の測定値、及びFIB4 indexとの関連を調べた。VCAM1の測定値については、別途測定した健常者の値も併せて検討した。結果を
図7に示す。
図7中、横軸はFibrosis Stageを示し、縦軸は規格化スコア、VCAM1の測定値又はFIB4 indexを示し、横線は各群の中央値を示す。上記規格化スコア及びVCAM1の測定値は、Fibrosis stageのスコアが大きくなるに従い、大きくなることが認められた。またVCAM1は、健常者ではNAFLD患者よりも小さい値を示す傾向が認められた。
【0152】
Fibrosis stageが0点の検体と1点以上の検体との判別を行ったときのAUROC(Stage 0 vs Stage 1-4)、Fibrosis stageが1点以下の検体と2点以上の検体との判別を行ったときのAUROC(Stage 0-1 vs Stage 2-4)、及び、Fibrosis stageが2点以下の検体と3点以上の検体との判別を行ったときのAUROC(Stage 0-2 vs Stage 3-4)を調べ、それぞれの指標値の精度を比較した。結果を表48に示す。「VCAM1」、「VCAM1、HA」、「VCAM1、COL4」、「VCAM1、COL4−7S」、及び「HA、COL4−7S」のそれぞれの規格化スコア、並びに、VCAM1の測定値について、上記すべての判別でのAUROCが、同じ条件でのFIB4 indexのAUROCを上回っていた。以上のことから、上記規格化スコア及びVCAM1の測定値は、肝線維化の進展度を判定するのに有用であることが示唆された。
【0153】
【表48】
【0154】
試験例7:肝臓の炎症の進展度を判定する方法
群2の生体分子である「VCAM1」、「VCAM1、HA」、「VCAM1、COL4」、「VCAM1、COL4−7S」、及び「HA、COL4−7S」のそれぞれの規格化スコア、並びに、VCAM1の測定値(血中濃度)に基づいて、肝臓の炎症の進展度を評価することが可能かどうかを調べた。肝臓の炎症の指標として、肝生検に基づく小葉内炎症の病理診断スコア(0〜3点)を用いた(Kleiner et. al., Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease, Hepatology 41:1313-21 (2005))。規格化スコアは試験例1と同様の方法を用いて求めた。VCAM1の測定値は、ELISA法に拠る試薬「Human sVCAM-1/CD106 Quantikine ELISA Kit」によって定量した。また、肝臓の炎症を評価する指標として知られる高感度CRP(Hepatogastroenterology. 2014 Mar-Apr;61(130):422-5)は、ラテックス凝集法によって求めた。病理診断スコアが記録された人から採取された血清132検体について、肝臓の小葉内炎症のスコアと、上記規格化スコア、VCAM1の測定値、及び高感度CRPとの関連を調べた。VCAM1の測定値については、別途測定した健常者の値も併せて検討した。結果を
図8に示す。
図8中、横軸は肝臓の小葉内炎症のスコアを示し、縦軸は規格化スコア、VCAM1の測定値又は高感度CRPの測定値を示し、横線は各群の中央値を示す。上記規格化スコア及びVCAM1の測定値は、肝臓の小葉内炎症のスコアが大きくなるに従い、大きくなることが認められた。またVCAM1は、健常者ではNAFLD患者よりも小さい値を示す傾向が認められた。
【0155】
小葉内炎症のスコアが0点の検体と1点以上の検体との判別を行ったときのAUROC(炎症 0 vs 炎症 1-3)及び、小葉内炎症のスコアが1点以下の検体と2点以上の検体との判別を行ったときのAUROC(炎症 0-1 vs 炎症 2-3)を調べ、それぞれの指標値の精度を比較した。結果を表49に示す。「VCAM1、HA」、「VCAM1、COL4−7S」及び「HA、COL4−7S」のそれぞれの規格化スコアについては、スコアが0点の検体と1点以上の検体との判別、及び、スコアが1点以下の検体と2点以上の検体との判別の両方において、AUROCが高感度CRPを上回っていた。「VCAM1」及び「VCAM1、COL4」のそれぞれの規格化スコア、並びに、VCAM1の測定値については、スコアが1点以下の検体と2点以上の検体との判別においてAUROCが高感度CRPを上回った。以上のことから、上記規格化スコア及びVCAM1の測定値は、肝臓の炎症の進展度を判定するのに有用であることが示唆された。
【0156】
【表49】
【0157】
試験例8:肝細胞の風船様変性の進展度を判定する方法
群2の生体分子である「VCAM1」、「VCAM1、HA」、「VCAM1、COL4」、「VCAM1、COL4−7S」、及び「HA、COL4−7S」のそれぞれの規格化スコア、並びに、VCAM1の測定値(血中濃度)に基づいて、肝細胞の風船様変性の進展度を判定することが可能かどうかを調べた。肝細胞の風船様変性の指標として、肝生検に基づく風船様変性の病理診断スコア(0〜2点)を用いた(Kleiner et. al., Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease, Hepatology 41:1313-21 (2005))。規格化スコアは試験例1と同様の方法を用いて求めた。VCAM1の測定値は、ELISA法に拠る試薬「Human sVCAM-1/CD106 Quantikine ELISA Kit」によって定量した。また、肝細胞の風船様変性を評価する指標として知られるCK18 M30 fragment(J Clin Gastroenterol. 2010 Jul;44(6):440-7)は、ELISA法「M30 Apoptosense ELISA」によって求めた。病理診断スコアが記録された人から採取された血清132検体について、肝細胞の風船様変性のスコアと、上記規格化スコア、VCAM1の測定値、及びCK18 M30 fragmentとの関連を調べた。VCAM1の測定値およびCK18 M30 fragmentについては、別途測定した健常者の値も併せて検討した。結果を
図9に示す。
図9中、横軸は肝細胞の風船様変性のスコアを示し、縦軸は規格化スコア、VCAM1の測定値又はCK18 M30 fragmentの測定値を示し、横線は各群の中央値を示す。上記規格化スコア及びVCAM1の測定値は、肝細胞の風船様変性のスコアが大きくなるに従い、大きくなることが認められた。またVCAM1は、健常者ではNAFLD患者よりも小さい値を示す傾向が認められた。
【0158】
肝細胞の風船様変性のスコアが0点の検体と1点以上の検体との判別を行ったときのAUROC(風船様変性 0 vs 風船様変性1-2)及び、風船様変性のスコアが1点以下の検体と2点の検体との判別を行ったときのAUROC(風船様変性 0-1 vs 風船様変性2)を調べ、それぞれの指標値の精度を比較した。結果を表50に示す。「VCAM1」、「VCAM1、HA」、「VCAM1、COL4」、「VCAM1、COL4−7S」、及び「HA、COL4−7S」のそれぞれの規格化スコア、並びに、VCAM1の測定値について、上記の両方の判別で、AUROCがCK18 M30 fragmentを上回った。以上のことから、上記規格化スコア及びVCAM1の測定値は、肝細胞の風船様変性の進展度を判定するのに有用であることが示唆された。
【0159】
【表50】
【0160】
試験例9:非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)活動性を判定する方法
群2の生体分子である「VCAM1」、「VCAM1、HA」、「VCAM1、COL4」、「VCAM1、COL4−7S」、及び「HA、COL4−7S」のそれぞれの規格化スコア、並びに、VCAM1の測定値(血中濃度)に基づいて、NAFLDの活動性を評価することが可能かどうかを調べた。NAFLDの活動性の指標として、肝生検に基づくNAFLDの活動性の病理診断スコア(0〜8点)を用いた(Kleiner et. al., Design and validation of a histological scoring system for nonalcoholic fatty liver disease, Hepatology 41:1313-21 (2005))。規格化スコアは試験例1と同様の方法を用いて求めた。VCAM1の測定値は、ELISA法に拠る試薬「Human sVCAM-1/CD106 Quantikine ELISA Kit」によって定量した。また、NAFLDの活動性を評価する指標として知られるCK18 M30 fragment(J Clin Gastroenterol. 2010 Jul;44(6):440-7)は、ELISA法「M30 Apoptosense ELISA」によって求めた。病理診断スコアが記録された人から採取された血清132検体について、NAFLDの活動性のスコアと、上記規格化スコア、VCAM1の測定値、及びCK18 M30 fragmentとの関連を調べた。VCAM1の測定値及びCK18 M30 fragmentについては、別途測定した健常者の値も併せて検討した。結果を
図10に示す。
図10中、横軸はNAFLDの活動性のスコアを示し、縦軸は規格化スコア、VCAM1の測定値又はCK18 M30 fragmentの測定値を示し、横線は各群の中央値を示す。VCAM1を含む群2の規格化スコア及びVCAM1の測定値は、NAFLDの活動性のスコアが大きくなるに従い、大きくなることが認められた。またVCAM1は、健常者ではNAFLD患者よりも小さい値を示す傾向が認められた。
【0161】
NAFLDの活動性のスコアが1点の検体と2点以上の検体との判別を行ったときのAUROC(NAS1 vs NAS 2-8)、NAFLDの活動性のスコアが2点以下の検体と3点以上の検体との判別を行ったときのAUROC(NAS1-2 vs NAS 3-8)、NAFLDの活動性のスコアが3点以下の検体と4点以上の検体との判別を行ったときのAUROC(NAS1-3 vs NAS 4-8)、NAFLDの活動性のスコアが4点以下の検体と5点以上の検体との判別を行ったときのAUROC(NAS1-4 vs NAS 5-8)、及びNAFLDの活動性のスコアが5点以下の検体と6点以上の検体との判別を行ったときのAUROC(NAS1-5 vs NAS 6-8)を調べ、それぞれの指標値の精度を比較した。結果を表51に示す。「VCAM1、HA」の規格化スコアについては、NAFLDの活動性のスコアが5点以下の検体と6点以上の検体の判別を行ったときにおいて、AUROCがCK18 M30 fragmentを上回った。「VCAM1」、「VCAM1、COL4」及び「VCAM1、COL4−7S」のそれぞれの規格化スコア、並びにVCAM1の測定値については、NAFLDの活動性のスコアが4点以下の検体と5点以上の検体との判別を行ったとき、及びNAFLDの活動性のスコアが5点以下の検体と6点以上の検体との判別を行ったときにおいて、AUROCがCK18 M30 fragmentを上回った。
【0162】
一方、「HA、COL4−7S」の規格化スコアについては、NAFLDの活動性のスコアが2点以下の検体と3点以上の検体の判別を行ったときのAUROC、NAFLDの活動性のスコアが3点以下の検体と4点以上の検体の判別を行ったときのAUROC、NAFLDの活動性のスコアが4点以下の検体と5点以上の検体の判別を行ったときのAUROC、およびNAFLDの活動性のスコアが5点以下の検体と6点以上の検体の判別を行ったときにおいて、AUROCがCK18 M30 fragmentを上回った。以上のことから、上記規格化スコア及びVCAM1の測定値は、NAFLDの活動性を判定するのに有用であることが示唆された。
【0163】
【表51】
【0164】
試験例10:「HA、COL4」の規格化スコアに基づいて、肝線維化の進展度、肝臓の炎症の進展度、肝細胞の風船様変性の進展度およびNAFLD活動性を判定する方法
群2の生体分子である「HA、COL4」の規格化スコアに基づいて、肝線維化の進展度、肝臓の炎症の進展度、肝細胞の風船様変性の進展度およびNAFLD活動性を判定することが可能かどうかを調べた。方法は、それぞれ上記試験例6、試験例7、試験例8および試験例9と同じ方法を用いた。
【0165】
「HA、COL4」の規格化スコアと肝線維化の進展度との関係を
図14に示す。
図14中、横軸はFibrosis Stageを示し、縦軸は規格化スコアを示し、横線は各群の中央値を示す。上記規格化スコアは、Fibrosis stageのスコアが大きくなるに従い、大きくなることが認められた。
肝線維化の進展度の判定についての結果を、表52に示す。すべての判別においてAUROCが、同じ条件でのFIB4 indexのAUROCを上回っていた。以上のことから、「HA、COL4−7S」の規格化スコアは、肝線維化の進展度を判定するのに有用であることが示唆された。
【0166】
【表52】
【0167】
「HA、COL4」の規格化スコアと肝臓の炎症の進展度との関係を
図15に示す。
図15中、横軸は肝臓の小葉内炎症のスコアを示し、縦軸は規格化スコアを示し、横線は各群の中央値を示す。上記規格化スコアは、肝臓の小葉内炎症のスコアが大きくなるに従い、大きくなることが認められた。
肝臓の炎症の進展度の判定についての結果を表53に示す。肝臓の小葉内炎症のスコアが1点以下の検体と2点以上の検体との判別において、上記規格化スコアのAUROCが同じ条件での高感度CRPのAUROCを上回った。以上のことから、「HA、COL4」の規格化スコアは、肝臓の炎症の進展度を判定するのに有用であることが示唆された。
【0168】
【表53】
【0169】
「HA、COL4」の規格化スコアと肝細胞の風船様変性との関係を
図16に示す。
図16中、横軸は肝細胞の風船様変性のスコアを示し、縦軸は規格化スコアを示し、横線は各群の中央値を示す。上記規格化スコアは、肝細胞の風船様変性のスコアが大きくなるに従い、大きくなることが認められた。
肝細胞の風船様変性の進展度の判定についての結果を表54に示す。全ての判別において、上記規格化スコアのAUROCが同じ条件でのCK18 M30 fragmentのAUROCを上回った。以上のことから、「HA、COL4」の規格化スコアは、肝細胞の風船様変性の進展度を判定するのに有用であることが示唆された。
【0170】
【表54】
【0171】
「HA、COL4」の規格化スコアとNAFLDの活動性の関係を
図17に示す。
図17中、横軸はNAFLDの活動性のスコアを示し、縦軸は規格化スコアを示し、横線は各群の中央値を示す。上記規格化スコア及びは、NAFLDの活動性のスコアが大きくなるに従い、大きくなることが認められた。
NAFLD活動性の判定についての結果を表55に示す。NAFLDの活動性のスコアが4点以下の検体と5点以上の検体との判別を行ったとき、及びNAFLDの活動性のスコアが5点以下の検体と6点以上の検体との判別を行ったときにおいて、上記規格化スコアのAUROCが同じ条件でのCK18 M30 fragmentのAUROCを上回った。以上のことから、「HA、COL4」の規格化スコアは、NAFLDの活動性を判定するのに有用であることが示唆された。
【0172】
【表55】