特表-16181567IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本澱粉工業株式会社の特許一覧

再表2016-1815671,5−アンヒドロ−D−グルシトールを含有する調製粉乳
<>
  • 再表WO2016181567-1,5−アンヒドロ−D−グルシトールを含有する調製粉乳 図000005
  • 再表WO2016181567-1,5−アンヒドロ−D−グルシトールを含有する調製粉乳 図000006
  • 再表WO2016181567-1,5−アンヒドロ−D−グルシトールを含有する調製粉乳 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年11月17日
【発行日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】1,5−アンヒドロ−D−グルシトールを含有する調製粉乳
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/152 20060101AFI20170421BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170421BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALN20170421BHJP
【FI】
   A23C9/152
   C12N15/00 AZNA
   C12Q1/68 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2015-540767(P2015-540767)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年5月8日
(11)【特許番号】特許第5820093号(P5820093)
(45)【特許公報発行日】2015年11月24日
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】390015004
【氏名又は名称】日本澱粉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080609
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 正孝
(72)【発明者】
【氏名】吉永 一浩
【テーマコード(参考)】
4B001
4B024
4B063
【Fターム(参考)】
4B001AC20
4B001AC30
4B001BC99
4B001EC05
4B001EC99
4B024AA11
4B024CA01
4B024CA09
4B024CA11
4B024CA20
4B024HA12
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA13
4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS32
4B063QX01
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、 生体内有効成分1,5−アンヒドロ−D−グルシトールを含有する調製粉乳を提供する。
本発明は、1,5−AGを7.7μg/g〜3850μg/gで含有する調製粉乳である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
7.7μg/g〜3850μg/gの量で1,5−アンヒドロ−D−グルシトールを含むことを特徴とする調製粉乳。
【請求項2】
1,5−アンヒドロ−D−グルシトールが1,5−アンヒドロ−D−フルクトースを微生物的に還元し得られたものである請求項1に記載の調製粉乳。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳児用および妊婦・授乳者用の調製粉乳に添加しうる栄養成分でかつ神経突起形成促進作用、Pregnancy specific glycoprotein−1(PSG−1)遺伝子発現の活性化作用およびChorionic somatomammotropin hormones 1(CSH−1)遺伝子発現の活性化作用を有する調製粉乳を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
1,5−アンヒドロ−D−グルシトール(1,5−AG)は哺乳類ではグリコーゲンから1,5−アンヒドロ−D−フルクトース(1,5−AF)を中間体として合成されていると考えられており、正常なヒトの血液中には常に10〜20μg/mL程度の1,5−AGが含まれている。その血中1,5−AG量は、健康なヒトでは一定に保たれていることが分かっている。また、糖尿病などで血中グルコース値が高くなると、相関的に血中の1,5−AG量が下がること、また、この血中1,5−AG量は直近の血糖値の推移を反映することから、臨床の場で血中1,5−AG量は血糖コントロールの指標に用いられている。
また1,5−AFの微生物変換(特開2009−215231号公報参照)や1,5−AFへの化学的な水素添加(1,5−Anhydro−D−fructose;a versatile chiral building block:biochemistry and chemistry,Carbohydrate Research 337(2002)873−890参照)により1,5−AGが合成できることが報告されている。また、高純度の1,5−AGを調製する方法として結晶化方法も提案されている(特開2008−54531号公報参照)。また、生理機能としては1,5−AGが膵臓細胞を用いた試験系でインスリン分泌を促進すること(1,5−anhydoroglucitol stimulates insulin release in insulinoma cell lines.Biochimica Biophysica Acta 1623(2003)p82−87参照)、2型糖尿病モデルマウスを用いた試験系では1,5−AGが抗炎症作用を示し糖尿病患者に有効な糖である可能性が見出されている(1,5−anhydroglucitolattenuates cytokine releases and protect mice with type 2 diabetes from inflammatory reactions. Int J Immunopathol Pharmacol.23(2010)105−119参照)。さらに、2型糖尿病モデルを用いた試験では抗糖尿病作用などが報告されている( Protective effects of dietary 1,5−anhydro−D−glucitol as a blood glucose regulator in diabetes and metabolic syndrome. J Argric Food Chem. 23(2013)611−7参照)。このように1,5−AGはヒトに対して健康的な機能が期待される物質である。
1,5−AGは哺乳類やさまざまな食品中に存在する成分である。牛乳では1mLあたり0.6μg、大豆では1gあたり22μgが含まれると報告されている(リアーゼによるグリコーゲン分解と1,5−アンヒドログルシトール.生化学 69(1997)1361−1372参照)。
発明者は自然界の1,5−AGを定量している中でヒト母乳と牛乳では1,5−AG含有量が大きく異なることを発見した。すなわち、母乳中に含まれる1,5−AGの量は2.6〜12.3μg/mL程であるのに対し、牛乳中の1,5−AG量は0.6μg/mLと報告(リアーゼによるグリコーゲン分解と1,5−アンヒドログルシトール.生化学 69(1997)1361−1372参照)されていることから、母乳中には牛乳中の10倍程度の1,5−AGが含まれることが判明した。また、市販の乳児用の調製粉乳(4製品)から処方に従って調整したミルクについても母乳と同様の操作で1,5−AGを定量した。その結果、いずれの粉ミルクも1,5−AG含有量は1μg/mL以下であった。
新生児は母乳で育てられるのが良いが、母乳の分泌が悪い場合や育児環境の問題などで次善の策として調製粉乳を利用する母親も少なくない。日本では完全な調製粉乳による育児が10%、母乳と調製粉乳の混合育児が60%で完全な母乳育児は30%程度に留まるといわれている。
乳の成分は、その動物種に応じた組成があり、当然、ヒトと牛では異なる。調製粉乳は主に牛乳を原料として製造されるが、その成分はヒト乳とは異なるため、ヒト乳の組成になるべく近づけるような努力がこれまで調製粉乳メーカーではなされてきており、今もなおその組成の改善の努力が続いている。
乳の成分としては蛋白質、脂質、糖などが主要な成分であるが、特に蛋白質と脂肪はヒト乳と牛乳でその成分が大きく異なる。蛋白質の含量は牛乳では3.3%であるのに対して、ヒト乳では1.0〜1.26%と少ない。また、その成分も異なる。カゼインでは、ヒト乳カゼインの約50〜60%はβ−カゼインである。κ−カゼインとα−カゼインも含まれる。一方で牛乳カゼインではαs1−カゼイン、αs2−カゼイン、β−カゼイン及びκ−カゼインから構成されている。牛乳では全蛋白質の約79%がカゼインであるのに対して、人乳では12%程度である。
人乳脂肪も牛乳脂肪もその97〜98%はトリアシルグルセロールであるが、構成する脂肪酸組成には大きな違いがあり、主要な脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸、リノレン酸の含量が異なる。このような脂肪酸の差をより少なくするために食用油脂を添加する場合がある。ドコサヘキサエン酸(DHA)は調製乳の原料として添加される成分であるが、神経細胞の細胞膜を柔らかくし、樹状突起を増やしたり、軸索の成長を促して脳・神経系の健全を保つことから、調製乳の機能性付与を期待して添加されている。ラクトフェリンはヒト乳に含まれ、特に初乳に多いことが明らかになっている。
妊娠時や授乳期は栄養が不足しがちになる。その不足を補う手段として大人用の粉ミルクも販売されている。
1,5−AGの生体内での存在意義については全く明らかにされていないが栄養源をすべて乳に頼る新生児にとっては牛乳と母乳では1,5−AGの摂取量が、人工乳育児の新生児よりも母乳育児の新生児の方が約10倍量多いことになる。糖尿病における新しい“metabolic parameter 1−Deoxyglucose(1,5−Anhydroglucitol)”について、“小児科24(1983)405−410”には出生後2−3週の乳児は生後2−3か月の乳幼児と比較すると血中1,5−AG量が低いことが示されている。母乳で育つと1,5−AGを十分に摂取できるが、人工乳で育つ新生時は明らかに母乳成分の1,5−AGが不足することになる。また、母体内の胎児は胎盤を通して栄養成分を母体から供給を受けて育つ。母体の体内、特に血中1,5−AG量が減少した場合、胎児が得られる1,5−AGも減少することとなる。
1,5−AGは正常なヒトでは血中濃度が20〜40μg/mLに一定に保持されている。食品として通常よりも過剰な1,5−AGを摂取しても一時的に血中濃度が100倍程度に上昇するものの24時間程度でほぼ元の値に戻る。このことから1,5−AG濃度は20〜40μg/mL程度で存在することに意味があると考えられる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、1,5−AGを含有する調製粉乳を提供することにある。
本発明の他の目的は、乳児の1,5−AG摂取量の低下により危惧される、神経形成、血管形成あるいは知能の発達の遅れやアレルギーの亢進などの抑制に作用する1,5−AGを含有する調製粉乳を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、神経突起形成促進作用、PSG−1遺伝子発現の活性化作用、CSH−1遺伝子発現の活性化作用が強い1,5−AGを含有する調製粉乳を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかとなろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、
1,5−アンヒドロ−D−グルシトール(1,5−AG)を7.7μg/g〜3850μg/gの量で含有することを特徴とする調製粉乳により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1は、1,5−AGの胎盤細胞でのPSG−1遺伝子の発現作用を示すものである。
図2は、1,5−AGの胎盤細胞でのCSH−1遺伝子の発現作用を示すものである。
図3は、1,5−AGの腸管細胞でのPSG−1遺伝子の発現作用を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明者の研究によれば、後の実施例1〜4の実験で明らかとなるとおり、1,5−AGが不足することでPSG−1遺伝子、CSH−1遺伝子の発現低下が認められた。糖尿病などが原因で妊婦の血中1,5−AGが低下した場合は、母体のPSG−1やCSH−1の遺伝子発現が抑制され、母体の免疫バランスの悪化や胎児へのエネルギー供給の低下、また、母体から胎盤を通じて胎児に供給される1,5−AG量が低下することで胎児のPSG−1やCSH−1が低下し神経形成や血管形成が遅れ、胎児の正常な発育の後退が危惧される。
また乳幼児においては栄養摂取を母乳あるいは調製粉乳のみに頼ることから調製粉乳のみで育てられると1,5−AG摂取量の低下により、神経発達の遅れやPSG−1遺伝子の発現減少により免疫バランスの異常が起こり、アレルギーの亢進や知能の発達の遅れが危惧される。
本発明の調製粉乳は、それ故、上記の如き弊害や危惧の除去に有効であり、1,5−AGを7.7μg/g〜3850μg/gの範囲、好ましくは20μg/g〜400μg/gの範囲、さらに好ましくは100μg/g〜200μg/gの範囲で含有する。
上記範囲の上限値(3850)は下限値(7.7)の500倍に相当する。殆ど母乳のみの育児ではたまに必要となる粉乳として下限値7.7μg/gで1,5−AGを含む調製粉乳を用いることができ、また殆ど育児を粉乳のみに頼る場合でも上限値3850μg/gで1,5−AGを含む調製粉乳で十分である。1,5−AGは摂取量が一時的に多くなっても体外に排出され易いので問題はない。
調製粉乳は原料乳に各種添加物が混合され、均質化、殺菌、濃縮、乾燥、篩別の工程を経て製造されている、1,5−AGの添加方法としては原料乳に溶液状の1,5−AGや粉末1,5−AGを添加することが可能である。また、乾燥後の粉体に1,5−AGの粉末を混合することでも可能である。1,5−AGの添加方法はこれに限られるものではない。調製乳に混合するのに用いる1,5−AGとしては結晶1,5−AGや溶液状1,5−AGでもよく、1,5−AG製剤の固形分中の1,5−AG純度は90%(W/W)以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上が良い。1,5−AG純度が低いと含まれる不純物自体の変色や栄養成分の変化などのリスクが高まる。特に不純物として1,5−AGの原料である1,5−アンヒドロ−D−フルクトース(以下1,5−AF)が多く含まれる場合は調製粉乳中のたんぱく質との反応が認められる。
添加する1,5−AGはグルコースからの化学合成法や1,5−AFの化学的な水素添加法などその製造方法があり、その製法は限定されるものではないが、好ましくは化学的な製造工程がない次の方法が良い。1,5−AFを微生物的に発酵し、精製、濃縮、結晶化し製造したもので、食品製造に適しており、高純度のものが良い。
【実施例】
【0006】
以下実施例により本発明をさらに詳細に且つ具体的に説明する。
実施例1(母乳中の1,5−AG含有量の測定)
鹿児島市内の産科で出産した方10名から出産後、約1週間(初乳)および約1か月経過後に採取直後の母乳の提供を受け、高速液体クラマトグラフィーおよび高性能陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて母乳中の1,5−AGを測定した。測定は以下の方法で行った。
採取母乳は1.5mL容の遠心チューブに入れ、測定まで−25℃の冷凍庫で保管した。測定前にその母乳を解凍した。300μLの母乳にアセトニトリル300μLを加えて混合した後に10,000gで10分間、遠心分離し上澄を回収した。それを高速液体クロマトグラフ(分離カラム;LiChroCART Lichrospher 100NH,カラム温度;30℃,溶離液;アセトニトリル:水=70:30、流速 1.0mL/min)に100μLを供し、分離カラムから溶出した液のうち1,5−AGが溶出する画分をすべて回収した。その回収画分を遠心エバポレーターに供し、80℃で乾固したのち、水100μLに溶解した。この試料を高性能陰イオン交換クロマトグラム(ダイオネックスICS5000+DC、分離カラム;Carbopac MA1,溶離液;400mM NaOH、流速0.4mL/min)に供し、1,5−AGを定量した。
その結果、表1に示すようにヒト母乳中に1,5−AGが含まれることが解った。また、その量は2.6から12.3μg/mLであり、平均で6.0μg/mLであった。
【表-1】
実施例2(間葉系幹細胞を用いたGeneChip解析)
1,5−AGのヒトにおける機能を明らかにするために間葉系幹細胞を用いたGeneChip解析を行った。培地に1,5−AGの最終濃度が1μg/mL以下あるいは40μg/mLになるように1,5−AGを添加し、間葉系幹細胞を10日間培養したのち、トータルRNAを回収してGeneChip解析を行い、1,5−AG量の違いにより発現変動する遺伝子を網羅的に解析した。同様の試験を3回実施し、得られた結果を総合して解析した。試験は具体的に以下の方法で実施した。
・被検物質
結晶1,5−AGを40mg/mLとなるように純水に溶解し、分画分子量3,000の遠心限外濾過膜でろ過し微量の高分子を除去した。
1,5−AG溶解に用いた水と同じ純水を、分画分子量3,000の遠心限外ろ過膜でろ過し試料とした。
・細胞
骨髄由来間葉系細胞(理研細胞バンク、リソースNo.MSC−R46)
・試薬
Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DEMEM)、0.25% Trypsin/EDTA solution、RNeasy Plus Micro Kit (QIAGEN,Cat.No.74034)、QIAshredder (QIAGEN,Cat.No.79654
・培地
間葉系幹細胞の前培養には10%ウシ胎児血清(FBS)、3ng/mL線維芽細胞増殖因子(FGF−2)添加DMEM(以下増殖培地と称する)を用いた。本試験には10% FBS添加DMEM(以下試験培地と称する)を用いた。FGF−2は間葉系幹細胞の未分化状態を維持する機能があり、前培養中はFGF−2添加培地を用いて細胞の未分化状態を維持した。本試験の際は、サンプルによる分化誘導効果を解析するために、FGF−2を添加しない培地を用いた。
・ヒト間葉系幹細胞の前培養
ヒト間葉系幹細胞は、増殖培地を用いてT−75フラスコに起眠し、COインキュベーター(5% CO、37℃、湿潤)内で培養した。培地交換は2日おきに行い、80% コンフルエントに達した時点で0.25%Trypsin/EDTAを用いて細胞を剥離し、細胞を回収して本試験に用いた。
・サンプル調整
サンプルは、終濃度40μg/mL 1,5−AGとなるよう試験培地に添加した。具体的には、40mg/mLの1,5−AG水溶液を、試験培地に1/1000量添加して終濃度40μg/mLとし、フィルター滅菌して調整した。比較対象には、1,5−AG水溶液の調整と同条件で処理した水を、試験培地に1/1000量添加し、フィルター滅菌したものを用いた。
・本試験細胞培養およびサンプル処理
間葉系幹細胞を、試験培地を用いて18,000cells/1mL/wellとなるよう調整し、12ウェルプレートに播種してCOインキュベーター(5% CO、37℃)内で24時間培養した。培養後、1,5−AG添加試験培地および比較対象試験培地に交換し、COインキュベーターで培養した。サンプル添加後4日目、以降3日おきに、新しい1,5−AG添加あるいは比較対象培地(1mL)に交換して培養を続け、最長で22日間培養した。サンプル添加後1日目、以降3日おきに位相差顕微鏡で細胞形態を観察した。サンプル添加後7、10、13日目にトータルRNAを抽出した。それぞれn=3で行った。
・トータルRNA抽出
細胞からのトータルRNAの回収はRNeasy plus miniキットを用いて行った。
・GeneChip解析
GeneChip解析は、Affymetrix社製GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 Arrayを用いて行った。トータルRNAは、サンプル添加後10日目の細胞から抽出したRNAのうち、最も純度が高く、収量の多いものを用い、1,5−AG添加区と比較対象区を各n=1で行った。
(結果)
間葉系の胚細胞の培地に1,5−AGを40μg/mLとなるように添加した培地と水を添加した培地の1,5−AG量を測定した結果、1,5−AG添加培地は39μg/mLであり、未添加区は1μg/mL以下であった。39μg/mLはヒトの血中濃度の正常高値と同程度であり、1,5−AG値が正常値のヒトの細胞培養モデル系が確立できた。
Genechip解析の結果、1,5−AGが40μg/mLから1μg/mL以下へ減少することにより、発現減少する遺伝子として最も上位にInterleukin 6 signal transducer(IL6ST)遺伝子が認められた。次いで機能が未知の遺伝子で6遺伝子続き、その次にPregnancy specific beta−1−glycoprotein 1をコードする遺伝子(PSG−1遺伝子)が認められた。IL6STはサイトカインの受容体や神経成長に関係するCiliary neurotrophic factorの受容体である。PSG−1遺伝子がコードする蛋白質は妊娠特異的な蛋白質で妊娠すると母体の胎盤から大量に分泌される。妊娠時にこの蛋白質の分泌が少ないと胎児の奇形リスクが高くなると言われている。また、この蛋白質の構造は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する。このファミリーは神経系や免疫系に細胞接着の役割を果たしたり、神経突起の形成を促進したりする機能が報告されている。PSG−1は妊娠関連の遺伝子であるが、そのほかにCSH−1も発現低下していた。
実施例3(胎盤栄養細胞でのPSG−1、CSH−1発現)
次に胎盤栄養膜細胞を用いて、1,5−AGがこれら2種の遺伝子(PSG−1、CSH−1)発現に与える影響を、リアルタイムRT−PCR法により解析した。まず、予備検討として、3濃度(1μg/mL 以下、40μg/mLおよび160μg/mL 1,5−AG)、サンプル処理時間3条件(3、24、および72時間)における、PSG−1の発現量を解析した。試験は具体的に以下の方法で実施した。
・細胞
ヒト胎盤絨毛栄養膜細胞(ScienCell Research Laboratories)
・培地
Trophoblast Medium (ScienCell Research Laboratories)
基本培地500mLに、培地付属のウシ胎児血清 (FBS) 25mL、trophoblast growth supplement 5mL、penicillin/streptomycin solution 5mLを加えて調整した。
・試薬
0.25% Trypsin/EDTA solution (Nacalai tesque,Cat.No.32777−44)、Dulbecco’sPBS (日水製薬株式会社Cat.No.05913)、FastLane Cell cDNA for use in real−time RT−PCR (QIAGEN,Cat.No.215011)、SYBER Premix Ex Taq(Takara,Cat.No.RR041L)、Oligonucleotides(primers)(FASMAC)
・方法
ヒト胎盤絨毛栄養膜細胞の継代培養
ヒト胎盤絨毛栄養膜細胞は、Trophoblast Medium(以下、培地と略す)を用いて、T−75フラスコに起眠し、COインキュベーター(5% CO、37℃、湿潤)で培養した。培地交換は2日おきに行い、80%コンフルエントに達した時点で細胞を回収し、継代数2の細胞を本試験に用いた。具体的には、細胞をD−PBS(−)で洗浄した後、0.25% Trypsin−EDTAを用いて細胞を剥離し、培地を加えてトリプシンを中和した。次に、遠心(180g,5分)して上清を除き、新たな培地を加えて細胞を撹拌し、血球計算盤を用いて細胞数をカウントし、培地を用いて目的濃度(4.0x10個/100μL)に調整した。
・サンプル調整
サンプルは、終濃度40μg/mLおよび160μg/mL 1,5−AGとなるよう培地に添加した。1μg/mL以下は1,5−AGを未添加とした。具体的には、40mg/mLの1,5−AG水溶液を、試験培地に1/1000量あるいは1/250量添加して、終濃度40μg/mLあるいは160μg/mLとし、フィルター滅菌して試験に用いた。試験群には、1,5−AG水溶液の調整と同条件で処理した水を、試験培地に1/1000量添加し、フィルター滅菌して試験に用いた。
・本試験細胞培養およびサンプル処理
培地を用いて細胞を4×10cells/100μL/ウェルとなるよう調整し、96ウェルプレートに播種してCOインキュベーター(5% CO、37℃、湿潤)内で24時間培養した。培養後、1,5−AG含有培地および比較対象培地に交換し、COインキュベーターで培養した。サンプル添加後、3時間、24時間、72時間培養し、位相差顕微鏡で細胞形態を観察した後、トータルRNAを抽出した。それぞれn=4で行った。なお、参考として、3日ごとに1,5−AG含有培地および比較対象培地に交換し、最長10日間培養した細胞の形態観察も行った。
・トータルRNA抽出およびcDNA化
細胞からのトータルRNAの回収およびcDNA化はFastLane Cell RT−PCRキットの手順に従って行った。
・リアルタイムPCR
リアルタイムPCRはSYBR Green I を用いたインターカレーター法で行った。具体的にはReal−time PCR専用プレートに下記表−2に記載の組成の反応液を調製し、PCR反応を行った。
【表-2】
PCR反応は95℃・30sec−(95℃・10sec−60℃・30sec)x45cycles−95℃・15sec−55℃・15sec−95℃・15secの条件で行い、PCR反応終了後にPCR産物の解離曲線を求めた。相対発現量はΔΔCt法により、コントロールの発現量を1.0となるよう算出した。内部標準遺伝子としてGlyceraldehyde 3−phosphate dehydrogenase(GAPDH)遺伝子を用いた。
・PSG−1遺伝子発現解析
PSG−1遺伝子発現解析の結果を図1に示す。1,5−AG添加区で、サンプル処理時間に比例してPSG−1遺伝子発現レベルが上昇し、サンプル処理72時間目では、40μg/mL 1,5−AG添加区で対無添加1.54倍、160μg/mL 1,5−AG添加区で対無添加1.62倍となり、無添加区との間で有意差が検出された(P<0.05)。したがって、1,5−AGは、胎盤栄養膜細胞で、PSG−1遺伝子の発現を促進する効果を持つことが示された。
また、40μg/mLの 1,5−AG添加区と160μg/mL の1,5−AG添加区の間では、PSG−1発現レベルに大きな差が見られなかった。したがって、本試験系では、40μg/mLの1,5−AGの存在は、PSG−1遺伝子発現を促進するのに十分であると考えられた。ヒトでは通常一日あたり5−10mg程度の1,5−AGを食品から摂取していると推測されている(非特許文献 血中1,5−アンヒドログルシトール値の変化に対する臨床研究 臨床検査 38:485−488、1994)。また、体内で生合成される1,5−AGもある。血中1,5−AGは20から40μg/mL程度に維持されているが、一時的に1,5−AGを例えば、食品から摂取する量の1000倍程度、20gを摂取した場合には一時的に血中1,5−AG量は高くなるものの、すぐに1,5−AGは尿中に排泄され24時間程度で血中1,5−AGレベルはもとに戻る。この結果から、血中に必要な1,5−AG量は20から40μg/mL程度であり、それ以上の1,5−AGは必要ないために排泄していると考えられる。胎盤細胞のデータでも40μg/mL以上ではPSG−1の発現量の変化がないため40μg/mL程度で充分であり、不足するとPSG−1の発現に影響する。
同時にサンプル処理72時間目の細胞から抽出したRNAを用いて、CSH−1遺伝子発現解析を行った。
・CSH−1遺伝子発現解析
CSH−1遺伝子発現解析の結果を図2に示す。1,5−AG無添加区は40μg/mL 1,5−AG添加区の1/1.80倍、160μg/mL 1,5−AG添加区で対無添加0.92倍となり、40μg/mL 1,5−AG添加区と比較して、無添加区は有意に発現抑制した(P<0.05)。したがって、1,5−AGは、胎盤栄養膜細胞で、CSH−1遺伝子の発現を促進する効果を持つことが示された。CSH−1遺伝子は胎盤栄養膜細胞で発現し、成長ホルモン様ペプチドをコードし、母体の代謝を調節して胎児への栄養供給を促進するとともに胎児の血管新生の制御にも関与している。
実施例4(腸管細胞でのPSG−1発現)
PSG−1は妊娠時に胎盤細胞で大量に発現される遺伝子である。妊娠に関係ない腸管細胞でのPSG−1発現に対する1,5−AGの影響を調べた。
・サンプル調整
1,5−AGを5濃度(1.6、8、40、200、1000μg/mL)で試験を行った。具体的には、まず、100mg/mLの1,5−AG水溶液を、水を用いて希釈し、0.16、0.8、4、20、100mg/mLとなるよう100倍濃度溶液を調整した。これら100倍濃度溶液を、培地に1/100量添加し、終濃度1.6、8、40μg/mLとし、フィルター滅菌して試験に用いた。陰性対照として、水を培地に1/100量添加し、フィルター滅菌して試験に用いた。
・細胞培養およびサンプル処理
Caco−2細胞を、培地を用いて1x10cells/0.3mL/wellとなるよう調整し、48ウェルプレートに播種してCOインキュベーター(5% CO、37℃)内で14日間培養した(一日おきに培地交換)。培養後、腸上皮様細胞に分化したのを確認した後、サンプル含有試験培地およびコントロール含有試験培地に交換し、COインキュベーターで3日間培養し、細胞からトータルRNAを抽出してPSG−1遺伝子発現量を解析した。各n=5で行った。
・トータルRNA抽出
total RNAはFastLane Cell cDNAキットを用いて抽出した。具体的には、培養後、培地を除去して、各ウェルにFastLane Cell cDNAキットに付属のbuffer FCW(150μL)を添加し、直ちに除去して細胞を洗浄した。次に、各ウェルにFastLane Cell cDNAキットに付属のbuffer FCP(60μL)を添加し、室温で5分間インキュベートしてtotal RNAを溶出させた後、96ウェルプレートに回収した。total RNAは−80℃で保存した。
・cDNA化
cDNA化はQuantiTect Reverse Transcription Kit を用いて行った。具体的には、抽出したtotal RNA(2μL)を、gDNA Wipeout Buffer 2μL、RNasefree water 10μLと混合して42℃で5分間インキュベートした後に氷上へ移し、次にこの反応液に、逆転写反応マスターミックス(Quantiscript Reverse Transcriptase 1μL Quantiscript RT Buffer 4μL、RT Primer Mix 1μL)を6μL添加し、42℃、30分間インキュベートして逆転写した。次に95℃、3分間処理して逆転写酵素を失活させた。この反応液を合成cDNAとしてリアルタイムPCRに用いた。解析に用いるまで−20℃で保存した。
・リアルタイムRT−PCR
リアルタイムPCRはSYBR Green I を用いたインターカレーター法で行った。具体的には合成cDNA 1μL、dsH2O 2.6μL、SYBR Premix ExTaq 4μL、Forward primer(5μM)0.2μL、Reverse primer(5μM)0.2μL、計8μLの系で行った。PCR反応は95℃・30sec−(95℃・10sec−60℃・30sec)x40cycles−95℃・15sec−55℃・15sec−95℃・15secの条件で行った。相対発現量はΔΔCt法により算出した。内部標準遺伝子としてGAPDH遺伝子を用いた。プライマーは下記の配列を用いた。
PSG1−for: 5’−AGCTGCCCATCCCCTACAT−3’
PSG1−rev: 5’−GGCTCTGACCGTTTAGCCA−3’
GAPDH−for: 5’−CATCCCTGCCTCTACTGGCGCTGCC−3’
GAPDH−rev: 5’−CCAGGATGCCCTTGAGGGGGCCCTC−3’
・PSG−1産生促進試験
細胞からトータルRNAを抽出し、リアルタイムRT−PCR法によってPSG−1遺伝子の発現解析を行った。遺伝子発現解析の結果を図3に示す。PSG−1遺伝子発現量平均値は、1,5−AG添加区で、無添加区と比較して増加する傾向が見られ、8μg/mL試験区で1.31倍、40μg/mL試験区で1.34倍となった。
実施例5(神経突起形成促進効果)
間葉系の胚細胞の試験で神経形成に関係する受容体の発現促進が認められた。また、PSG−1は免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、そのファミリーの中には神経形成促進作用を有するものが存在する。そこで1,5−AGの神経突起形成への影響について調べた。神経突起形成の評価に一般的に用いられているPC12細胞を用いた試験系で評価した。
・細胞
PC12細胞(Lot No.48、Lot No.51)(理研細胞バンク、資料1)
・培地
増殖培地
10% FBS、10% HS、1% Penicillin−streptomycin添加DMEM培地
試験培地
0.1% FBS、0.1% HS、1ng/mL NGF、1% Penicillin−streptomycin添加DMEM培地
・試薬
DMEM培地(nacalai tesque,Cat.No.08456−65)、ウシ胎児血清(FBS)(Cell Culture Bioscience,Cat.No.171012)、ウマ血清(HS)(Gibco,Cat.No.16050)、Penicillin−streptomycin solution (Nacalai tesque,Cat.No.26253−84)、0.05% Trypsin−EDTA(GIBCO,Cat.No.25300−062)、Dulbecco’s PBS(日水製薬株式会社,Cat.No.05913)、DPBS Calcium Magnesium(Gibco,Ca.No.14040−133)、生細胞数測定試薬SF(nacalai tesque,Cat.No.25300)、Neurite Outgrowth Staining Kit (Lifetechnologies,Cat.No.A15001)
・方法
PC12の継代培養
PC12細胞は、増殖培地を用いて、T−75フラスコに起眠し、COインキュベーター(5% CO、37℃、湿潤)で培養した。培地交換は2日おきに行い、80%コンフルエントに達した時点で細胞を回収し、継代数2の細胞を本試験に用いた。具体的には、細胞をD−PBS(−)で洗浄した後、0.05% Trypsinを用いて細胞を剥離し、増殖培地を加えてトリプシンを中和した。次に、遠心(180g,5分)して上清を除き、増殖培地を加えて細胞を撹拌し、血球計算盤を用いて細胞数をカウントし、増殖培地を用いて目的濃度(2.0x10個/100μL)に調整した。
・サンプル調整
1,5−AG 5濃度(1.6、8、40、200、1000μg/mL)で試験を行った。具体的には、まず、100mg/mL 1,5−AG水溶液を、水で希釈し、0.16、0.8、4、20、100mg/mLとなるよう100倍濃度溶液を調整した。これら100倍濃度溶液を、試験培地に1/100量添加し、終濃度1.6、8、40、200、1000μg/mLとし、フィルター滅菌して試験に用いた。陰性対照として、水を、培地に1/100量添加し、フィルター滅菌して試験に用いた。陽性対照として、100ng/mL Nerve growth Factor(NGF)含有試験培地を用いた。
・本試験細胞培養およびサンプル処理
増殖培地を用いて、細胞を2.0x10個/100μL/ウェルとなるよう調整し、コラーゲンコートした96ウェルプレートに播種してCOインキュベーター(5% CO、37℃、湿潤)内で24時間培養した。培養後、サンプル含有試験培地(100μL)に交換し、COインキュベーターで96時間培養した。培養終了時に位相差顕微鏡で、各ウェル1枚ずつ細胞像を撮影し、神経突起伸長率測定に用いるとともに、Neurite Outgrowth Staining Kitを用いて核および細胞質を蛍光染色し、生細胞数および神経突起伸長量を測定した。各n=5で実施した。
・Neurite Outgrowth Staining Kitを用いた生細胞数および神経突起伸長量の定量
培養終了後、Neurite Outgrowth Staining Kitを用いて、生細胞数および神経突起伸長量の定量を行った。具体的には、培地を除去した後、染色液(Kit付属のCell Viability IndicatorおよびCell Membrane Stainをcalcium magnesium含有PBSで1000希釈して調製)を、各ウェルに100μL添加し、37℃で20分間インキュベートした。インキュベート後、染色液を除去し、background suppression溶液(Kit付属のbackground suppression dye をcalcium magnesium含有PBSで100希釈して調製)を、各ウェルに100μL添加し、マイクロプレートリーダーで蛍光強度を測定した(生細胞数測定:励起波長495nm、蛍光波長515nm、神経突起伸長量測定:励起波長555nm、蛍光波長565nm)。
・神経突起伸長率の定量
上記で撮影した画像に基づき、細胞画像から総細胞数、細胞長と同程度以上の神経突起伸長を示す細胞数、細胞長の2倍以上の長さの神経突起を示す細胞数を測定した。測定値より神経突起伸長を示す細胞の割合(%)を算出した。
・神経突起伸長率定量
まず、NGF添加区では、1倍以上の突起伸長を示した細胞の割合が68.8%、2倍以上の突起伸長を示した細胞の割合が54.5%となり、明瞭な神経突起伸長促進効果が認められた。次に1,5−AG添加区では、1倍以上の突起伸長を示した細胞は、無添加区が全細胞中の12.6%であったのに対し、1,5−AG 40μg/mLおよび200μg/mL試験区では、それぞれ15.8%および18.7%であった。2倍以上の突起伸長を示した細胞は、無添加区は5.7%であったのに対して、それぞれ10.3%および10.4%と約2倍となり、1,5−AGが神経突起形成促進に関与することが分かった。
・蛍光定量
生細胞数は、全試験区で、陰性対照(無添加)区と同程度であり、1,5−AGは、PC12細胞の増殖性に影響しないと考えられた。次に、細胞あたりの神経突起伸長量については、まず、NGF添加区では対無添加区183.1%と有意な増加が認められた。次に、1,5−AG添加区においては、8μg/mLおよび40μg/mLでは無添加区113.4%および113.3%と高くなった。
本試験の結果、40μg/mL濃度を中心とする1,5−AG添加区において、神経突起伸長率および伸長量が増加した。
実施例6
市販の調製粉乳に結晶1,5−AGを乳鉢ですりつぶした後に混合し、1,5−AG含有調製粉乳を得た。得られた粉乳の1,5−AGを測定したところそれぞれ7.7、38.5、77、154、770、3850μg/gであった。
発明の効果
本発明によれば、粉ミルクまたは母乳と共に粉ミルクを併用する乳幼児に、粉ミルクからも母乳と同様に1,5−AGの摂取を可能とした調製粉乳が提供される。また、妊婦や授乳者用の粉ミルクにも1,5−AGを添加することで胎児や乳児へ必要な1,5−AGを供給できる。本発明の調製粉乳の摂取により、生体内で種々の有用な作用例えば神経形成や血管形成等に有用な1,5−AGを含む母乳を摂取したときと同様に摂取することができる。
[配列表]
図1
図2
図3
【国際調査報告】