再表2016-39377IP Force 特許公報全文掲載

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年3月17日
【発行日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼの利用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170526BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20170526BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20170526BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N9/16 Z
   C12Q1/68 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
【出願番号】特願2016-547473(P2016-547473)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年9月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-184934(P2014-184934)
(32)【優先日】2014年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】302019245
【氏名又は名称】タカラバイオ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(71)【出願人】
【識別番号】503303466
【氏名又は名称】学校法人関西文理総合学園
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】上森 隆司
(72)【発明者】
【氏名】石野 良純
(72)【発明者】
【氏名】相良 武宏
(72)【発明者】
【氏名】石野 園子
(72)【発明者】
【氏名】山上 健
(72)【発明者】
【氏名】白井 剛
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD02
4B050FF09E
4B050FF11E
4B050FF14E
4B050LL01
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4B050LL03
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QR14
4B063QR23
4B063QR32
4B063QS28
4B063QX02
(57)【要約】
ミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、当該ポリペプチドを用いたミスマッチ特異的切断反応、当該ポリペプチドを利用した核酸増幅反応におけるエラーの除去方法、核酸増幅反応中に特定の塩基配列を有する核酸の増幅を抑制する方法、およびその抑制方法を利用した一塩基多型変異を有する核酸を検出する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖核酸の切断方法であって、下記(i)〜(iii)からなる群より選択された少なくとも一種のポリペプチドをミスマッチ塩基対を有する二本鎖核酸に作用させ、当該二本鎖核酸の両鎖をG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチ塩基対部位で認識して切断することを特徴とする、方法:
(i)配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(ii)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1ないしは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有し、かつG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド;及び
(iii)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項2】
下記(a)〜(c)を含む組成物:
(a)DNAポリメラーゼ;
(b)少なくとも一対のオリゴヌクレオチドプライマー;及び
(c)下記(i)〜(iii)からなる群より選択された少なくとも一種のポリペプチド:
(i)配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(ii)配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列において1ないしは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有し、かつG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド;及び
(iii)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項3】
核酸の増幅方法であって、下記(a)〜(b)の工程を含む方法:
(a)請求項2に記載の組成物と鋳型になる核酸分子を含む組成物を調製する工程;及び(b)工程(a)により得られた組成物を適切な条件下で反応させ、核酸増幅を行う工程。
【請求項4】
下記(A)〜(C)からなる群より選択されるポリペプチド:
(A)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(B)前記(A)のポリペプチドのアミノ酸配列において、47番目と76番目のアミノ酸残基を除く1ないしは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有し、かつA−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド;及び
(C)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列において、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列における47番目のセリンと76番目のアスパラギンに対応するアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されてなるアミノ酸配列を有し、かつA−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項5】
下記(a)〜(c)を含む組成物:
(a)DNAポリメラーゼ;
(b)少なくとも一対のオリゴヌクレオチドプライマー;及び
(c)下記(i)〜(iii)からなる群より選択された少なくとも一種のポリペプチド:
(i)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(ii)前記(i)のポリペプチドのアミノ酸配列において、47番目と76番目のアミノ酸残基を除く1ないしは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有し、かつA−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド;及び
(iii)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列において、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列における47番目のセリンと76番目のアスパラギンに対応するアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されてなるアミノ酸配列を有し、かつA−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項6】
核酸の増幅方法であって、下記(a)〜(b)の工程を含む方法:
(a)請求項5に記載の組成物と鋳型になる核酸分子を含む組成物を調製する工程;及び(b)工程(a)により得られた組成物を適切な条件下で反応させ、核酸増幅を行う工程。
【請求項7】
核酸増幅反応において特定の塩基配列を有する核酸の増幅を抑制する方法であって、下記の(a)〜(d)の存在下で核酸増幅反応を行う工程を含む方法:
(a)前記特定の塩基配列を有する核酸またはその相補鎖とハイブリダイズさせた際に1個もしくは数個のミスマッチを生じるように設計されたオリゴデオキシリボヌクレオチド;
(b)DNAポリメラーゼ;
(c)少なくとも一対のオリゴヌクレオチドプライマー;及び
(d)請求項1記載の方法で使用するポリペプチド及び/又は請求項4記載のポリペプチド。
【請求項8】
標的核酸を優先的に増幅する方法であって、当該標的核酸と1個もしくは数個の塩基が異なる塩基配列の核酸の増幅を請求項7記載の方法で抑制することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法であって、さらに耐熱性菌由来のProliferating cell nuclear antigen (PCNA)あるいはそのホモログの存在下で標的核酸の増幅を実施することを特徴する方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法で使用するポリペプチド及び/又は請求項4記載のポリペプチドを用いた標的核酸の変異検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本鎖核酸中のミスマッチ塩基対を認識して切断する耐熱性の新規ミスマッチエンドヌクレアーゼ、当該ミスマッチエンドヌクレアーゼを含む組成物、及びミスマッチエンドヌクレアーゼを用いた方法
【背景技術】
【0002】
近年の変異解析方法の発展は目覚ましく、農作物の改良や有用微生物の分離、作製ばかりではなく、人の遺伝子診断等に利用されるようになってきており、一般生活上にも大きな恩恵を与えている。
【0003】
これらの変異の解析法はゲノム配列を直接解析する方法が主流であるが、他にミスマッチ塩基対を認識する酵素群を利用する方法が行われてきた。変異型と野生型のDNAを対合させて形成されたミスマッチ塩基対に対して、ミスマッチ塩基対に特異的結合能力のある因子を結合させて検出する解析方法がその一つであり、代表的な例としては大腸菌のMutS、MutT、MutL複合体を利用した変異部位の検索が挙げられる(特許文献1)。
【0004】
また、ミスマッチ部位を特異的に切断するミスマッチエンドヌクレアーゼを利用する方法も行われている。この場合は、ミスマッチエンドヌクレアーゼを利用し、ミスマッチ塩基対付近で切断されたDNA断片を解析することで、変異の有無やその位置を検出する。
代表的な例としては、セロリ由来のCelI遺伝子産物を利用する方法が知られており(特許文献2)、実際に変異塩基の解析に利用されている。しかし、この酵素は耐熱性を持たず、PCR法など高温の反応過程を含む手法には直接使用できない。このため、変異塩基の検出を行う際にも、増幅、ミスマッチ形成、ミスマッチ切断、検出の4ステップが必要となる。
【0005】
最近、耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼが開発され、その利用が期待されている。当該ミスマッチエンドヌクレアーゼは、G−G、G−T、T−G、T−Tのミスマッチ部位を認識しその周辺でDNAの両鎖を切断することを特徴とする。(特許文献3)
【0006】
また、変異解析にも大きな影響を与えている生物工学的技術としては、核酸増幅技術が挙げられる。
この核酸増幅技術の中で代表的な技術であるポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction;PCR)法は、試験管内において簡便に所望の核酸断片を増幅する技術であり、遺伝子に関する研究のみならず、生物学、医学、農業等の幅広い分野において不可欠の実験手法となっている。PCR法は、変異型遺伝子の検出や、DNAのメチル化の解析にも応用されている。
また、等温核酸増幅方法のLAMP法やICAN法などは、特別な機器を必要としないことから、より安価な核酸検出法として使用されている。
さらに近年になり行われるようになったゲノム全体の構造解析においては、特に希少な試料からの解析を行う上で、全ゲノム増幅法は重要な技術である。
【0007】
これらの核酸増幅法の問題点として、一定確率で間違った塩基の取り込みを起こすことがあげられる。ポリメラーゼの改良などを通して、この確率は低減されてきたものの、依然精密な解析の際には障害となっている。
【0008】
また、ゲノムライブラリーやcDNAライブラリーの構築などにおいて、核酸増幅法では含有率の高いDNA分子が優先的に増幅され、多様な種類のDNAの解析やスクリーニングの障害となることがある。
【0009】
その問題を解決するため、自己ハイブリダイゼーションを利用した正規化(normalization)により含有率の高いDNAの比率の低減が行われている(非特許文献1)。またPCR法と自己ハイブリダイザーションを組み合わせたSSH−PCR法も使用されている(非特許文献2)が、含有率の高いDNAと相同性を持つDNAも取り除かれる危険性も存在している。
【0010】
さらに、核酸増幅法によるDNAの検出においては、検出対象のDNAの増幅と、検出対象でないDNAの増幅とが競合する場合がある。すなわち、検出対象以外のDNAも同時に増幅され、対象のDNAの検出が困難な場合である。サイクリングプローブやTaqManプローブ等のプローブを用いたリアルタイムPCRによって検出対象のDNAの増幅のみを検出しての問題を解消できることもあるが、検出対象でないDNAが検出対象のDNAに対して大過剰に存在する場合には、多数の類似DNAの存在による偽陽性反応のため、検出対象のDNAの正確な検出は困難となる。
【0011】
このような問題は、例えば正常対立遺伝子の存在下における少数の変異対立遺伝子の検出(血中循環腫瘍DNAの検出等)、エピジェネティックアッセイでの少数のメチル化あるいは非メチル化対立遺伝子の検出、母親の血液中に循環する少量の胎児DNA配列の検出等の実施において起こり得る。
【0012】
の問題を解決するために、Restriction endonuclease−mediated selective polymerase chain reaction(REMS PCR)と呼ばれる方法が開発された(非特許文献3)。この方法は、耐熱性の制限酵素を利用し、例えば鋳型が正常型の塩基配列を持つ場合のみにこの制限酵素による切断が起こるように設計したプライマーを用いて、変異型の塩基配列を持つDNAのみを選択的に検出する方法である。しかしながら、検出しようとするDNAによっては、REMS PCRによる選択的検出に適した認識配列を持つ耐熱性の制限酵素が存在しない場合もあり、汎用性に欠ける。
【0013】
以上のように、核酸増幅方法を伴う変異検出方法においては、検出対象でないDNAが検出対象のDNAに対して大過剰に存在する場合でも、多数の類似DNAの存在による偽陽性反応を回避する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5922539号明細書
【特許文献2】国際公開第01/062974号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2014/142261号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】”Nucleic Acids Research”、2004年2月、第32巻、3号、e37
【非特許文献2】”Methods in Molecular Biology”、2009年、第496巻、2号、p.223−243
【非特許文献3】”American Society for Investigative Pathology”、1998年8月、第153巻、2号、p.373−379
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、新規ミスマッチエンドヌクレアーゼ、当該ミスマッチエンドヌクレアーゼを含む組成物、及びミスマッチエンドヌクレアーゼの用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、の事情を鑑みて鋭意努力した結果、複製機構の1因子と考えられていたThermococci kodakarensis由来のポリペプチドが耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼの酵素活性を持つことを見出した。以降、当該酵素活性を有するポリペプチドをTKO NucSと称す。
【0018】
また、この耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼを基にして、天然型と異なる塩基特異性を向上させた変異型ミスマッチエンドヌクレアーゼの創製に成功し、当該変異型ミスマッチエンドヌクレアーゼ及び/又は天然型ミスマッチエンドヌクレアーゼを単独あるいは組み合わせて使用することで、特定のミスマッチ塩基対以外の切断が抑えられ、より特異的な増幅抑制が可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0019】
すなわち、本発明の第1の発明は、二本鎖核酸の切断方法であって、下記(i)〜(iii)からなる群より選択された少なくとも一種のポリペプチドをミスマッチ塩基対を有する二本鎖核酸に作用させ、当該二本鎖核酸の両鎖をG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチ塩基対部位で認識して切断することを特徴とする、方法:
(i)配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(ii)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1ないしは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有し、かつG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド;及び
(iii)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、に関する。
【0020】
本発明の第2の発明は、下記(a)〜(c)を含む組成物:
(a)DNAポリメラーゼ;
(b)少なくとも一対のオリゴヌクレオチドプライマー;及び
(c)下記(i)〜(iii)からなる群より選択された少なくとも一種のポリペプチド:
(i)配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(ii)配列表の配列番号1記載のアミノ酸配列において1ないしは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有し、かつG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド;及び
(iii)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、に関する。
【0021】
本発明の第3の発明は、核酸の増幅方法であって、下記(a)〜(b)の工程を含む方法:
(a)本発明の第2の発明の組成物と鋳型になる核酸分子を含む組成物を調製する工程;及び
(b)工程(a)により得られた組成物を適切な条件下で反応させ、核酸増幅を行う工程、に関する。
【0022】
本発明の第4の発明は、下記(A)〜(C)からなる群より選択されるポリペプチド:(A)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(B)前記(A)のポリペプチドのアミノ酸配列において、47番目及び76番目のアミノ酸残基を除く1ないしは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有し、かつA−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド;及び
(C)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列において、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列における47番目のセリン及び76番目のアスパラギンに対応するアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されてなるアミノ酸配列を有し、かつA−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、に関する。
【0023】
本発明の第5の発明は、下記(a)〜(c)を含む組成物:
(a)DNAポリメラーゼ;
(b)少なくとも一対のオリゴヌクレオチドプライマー;及び
(c)下記(i)〜(iii)からなる群より選択された少なくとも一種のポリペプチド:
(i)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド;
(ii)前記(i)のポリペプチドのアミノ酸配列において、47番目及び76番目のアミノ酸残基を除く1ないしは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有し、かつA−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド;及び
(iii)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列において、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列における47番目のセリン及び76番目のアスパラギンに対応するアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されてなるアミノ酸配列を有し、かつA−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、に関する。
【0024】
本発明の第6の発明は、核酸の増幅方法であって、下記(a)〜(b)の工程を含む方法:
(a)本発明の第5の発明の組成物と鋳型になる核酸分子を含む組成物を調製する工程;及び
(b)工程(a)により得られた組成物を適切な条件下で反応させ、核酸増幅を行う工程、に関する。
【0025】
本発明の第7の発明は、核酸増幅反応において特定の塩基配列を有する核酸の増幅を抑制する方法であって、下記の(a)〜(d)の存在下で核酸増幅反応を行う工程を含む方法:
(a)前記特定の塩基配列を有する核酸またはその相補鎖とハイブリダイズさせた際に1個もしくは数個のミスマッチを生じるように設計されたオリゴデオキシリボヌクレオチド;
(b)DNAポリメラーゼ;
(c)少なくとも一対のオリゴヌクレオチドプライマー;及び
(d)本発明の第1の発明で使用するポリペプチド及び/又は第4の発明のポリペプチド、に関する。
本発明の第7の発明の方法において、使用するミスマッチエンドヌクレアーゼは、本発明の第1の発明で使用するポリペプチド又は第4の発明のポリペプチドと同等のミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有する別の耐熱性菌由来のものと置き換えてもよい。
【0026】
本発明の第8の発明は、標的核酸を優先的に増幅する方法であって、当該標的核酸と1個もしくは数個の塩基が異なる塩基配列の核酸の増幅を本発明の第7の発明の方法で抑制することを特徴とする方法、に関する。
本発明の第8の発明の方法において、さらに耐熱性菌由来のProliferating cell nuclear antigen (PCNA)あるいはそのホモログの存在下で増幅してもよい。
【0027】
本発明の第9の発明は、本発明の第1の発明で使用するポリペプチド及び/又は第4の発明のポリペプチドを用いた標的核酸の変異検出方法、に関する。当該方法において、使用するミスマッチエンドヌクレアーゼは、本発明の第1の発明で使用するポリペプチド又は第4の発明のポリペプチドと同等のミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有する別の耐熱性菌由来のものと置き換えてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、生物工学上利用価値の高いミスマッチ認識配列が異なるミスマッチエンドヌクレアーゼ、当該ミスマッチエンドヌクレアーゼを含む組成物、及びミスマッチエンドヌクレアーゼを用いた方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼの精製結果を示すSDS−PAGE結果である。
【図2】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼ活性測定で用いた基質DNA一覧である。
【図3】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼのミスマッチDNA切断活性を示すNative−PAGE結果とグラフである。
【図4】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼのミスマッチDNA切断反応に対するpHの影響を示すグラフである。
【図5】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼのミスマッチDNA切断反応に対する塩化ナトリウム、塩化カリウム、及びグルタミン酸カリウムの影響を示すグラフである。
【図6】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼのミスマッチDNA切断反応に対する塩化マグネシウムの影響を示すグラフである。
【図7】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼのミスマッチDNA切断反応に対する塩化マンガンの影響を示すグラフである。
【図8】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼのミスマッチDNA切断反応温度の影響を示すグラフである。
【図9】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼの様々なミスマッチDNAに対する切断活性を示すグラフである。
【図10】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼのDNA結合活性測定で用いたプローブDNAの一覧である。
【図11】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼのDNA結合活性測定を示すNative−PAGEの結果である。
【図12】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼの耐熱性を示すグラフである。
【図13】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼのTKO由来PCNA1存在下ミスマッチDNA切断活性を示すNative−PAGE結果とグラフである。
【図14】本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼのA−AミスマッチDNAに対する切断活性を示すNative−PAGEの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0031】
本発明において「ミスマッチ」とは、二本鎖核酸中に存在するワトソン−クリック塩基対とは異なる塩基の対合、すなわちG(グアニン塩基)−C(シトシン塩基)、A(アデニン塩基)−T(チミン塩基)またはU(ウラシル塩基)の塩基対結合以外の組み合わせの塩基結合を示す。
【0032】
(1)本発明の耐熱性ミスマッチエンドヌクレアーゼ及びその変異体
本明細書において、「ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド(ミスマッチエンドヌクレアーゼと記載することがある)」とは、二本鎖核酸中のミスマッチ部位を切断する活性を有するヌクレアーゼのことをいう。前記のミスマッチエンドヌクレアーゼ活性は、ミスマッチ塩基対を形成するヌクレオチドに隣接するリン酸ジエステル結合を切断する活性の他、ミスマッチ塩基対から1〜5塩基対、好ましくは1〜3塩基対離れたヌクレオチドに隣接するリン酸ジエステル結合を切断する活性を包含する。本発明においてミスマッチエンドヌクレアーゼは、特定のミスマッチ塩基対を特異的に認識して二本鎖核酸を切断する活性を有するものが好ましく、例えば、少なくともG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼが挙げられる。前記エンドヌクレアーゼは、G−Gミスマッチのみ、G−Tミスマッチのみ、あるいはT−Tミスマッチのみを認識・切断するものであってもよい。またG−Gミスマッチ、G−Tミスマッチ及びT−Tミスマッチのうちいずれか2つのミスマッチを認識・切断するものであってもよい。さらにG−Gミスマッチ、G−Tミスマッチ及びT−Tミスマッチのすべてを認識・切断するものであってもよい。
【0033】
また本発明においてさらに別のミスマッチエンドヌクレアーゼが例示される。例えば、少なくともA−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼが挙げられる。前記エンドヌクレアーゼは、A−Aミスマッチのみ、A−Cミスマッチのみ、あるいはC−Cミスマッチのみを認識・切断するものであってもよい。またA−Aミスマッチ、A−Cミスマッチ及びC−Cミスマッチのうちいずれか2つのミスマッチを認識・切断するもので合ってもよい。さらにA−Aミスマッチ、A−Cミスマッチ及びC−Cミスマッチのすべてを認識・切断するものであってもよい。
【0034】
これらの耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼは、二本鎖核酸中のミスマッチ部位を切断する活性の他に、一本鎖DNA、一本鎖核酸と二本鎖核酸のジャンクション部分、ダブルフラップ構造、レプリケーションフォーク構造、D−ループ構造、及び/又はニックが入ったホリデイジャンクション構造を認識して核酸を切断する活性を有していても良い。また、本明細書において耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼは、40℃以上、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上の温度において二本鎖核酸中のミスマッチ部位を切断する活性を示すヌクレアーゼが好ましい。
【0035】
本発明を特に限定するものではないが、本発明に使用される耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼとしては、Thermococcus kodakarensis(あるいはThermococcus kodakaraensis)由来の耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドが例示される。本発明者らは、Thermococcus kodakarensis由来のポリペプチド(配列表の配列番号1)が耐熱性のG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼであることを見出した。さらには、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドのホモログ、例えば、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1ないしは数個、例えば、1ないし15個、好ましくは1ないし9個、さらに好ましくは1ないし5個、さらに好ましくは1ないし3個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドも、本発明における耐熱性のG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼとして好適である。さらに例えば、配列表の配列番号2記載の塩基配列を有する前記エンドヌクレアーゼが好適に使用できる。
【0036】
さらに本発明者らは、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、47番目のセリン残基及び76番目のアスパラギン残基が他のアミノ酸残基、好ましくは47番目がアラニンに、76番目がアラニンに置換されてなるアミノ酸配列を有する変異型ポリペプチドが、A−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを特異的に認識する耐熱性のミスマッチエンドヌクレアーゼであることを見出した。従って、こうして作成された配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、ならびにそのホモログは、本発明の一態様である。配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドのホモログとしては、配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列において、47番目及び76番目のアミノ酸残基を除く1ないしは数個、例えば、1ないし15個、好ましくは1ないし9個、さらに好ましくは1ないし5個、さらに好ましくは1ないし3個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、A−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列における47番目のアラニン残基及び76番目のアラニン残基が他のアミノ酸残基に置換されてなるポリペプチドであって、A−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、当該ポリペプチドのアミノ酸配列において、47番目及び76番目のアミノ酸残基を除く1ないしは数個、例えば、1ないし15個、好ましくは1ないし9個、さらに好ましくは1ないし5個、さらに好ましくは1ないし3個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、A−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、及び配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して90%以上、好ましくは95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、かつ配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列における47番目のアラニン残基に対応するアミノ酸残基がセリン以外のアミノ酸残基で、かつ76番目のアラニン残基に対応するアミノ酸残基がアスパラギン以外のアミノ酸残基であり、かつA−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドが例示される。さらに例えば、配列表の配列番号4記載の塩基配列を有する前記エンドヌクレアーゼが好適に使用できる。これらのミスマッチエンドヌクレアーゼは、後述する種々の用途、例えば特異的DNA配列を含有するDNAを排除しその他のDNAを増幅、検出する方法に好適である。
【0037】
本発明において、当該ミスマッチエンドヌクレアーゼの活性は、ミスマッチ塩基対を含有する二本鎖核酸を基質として測定することができる。具体的には、ミスマッチ塩基対を含有する二本鎖核酸を調製した後、ミスマッチエンドヌクレアーゼに対して過剰量の当該二本鎖核酸をミスマッチエンドヌクレアーゼと反応させ、単位時間当たりの切断核酸量を測定することで活性測定が実施される。切断された二本鎖核酸は、電気泳動などにより切断を受けなかった核酸と分離して定量することが可能である。切断を受けた場合にのみ蛍光強度の増加が検出できるように蛍光物質と消光物質とで二重に標識した二本鎖核酸を使用すれば、反応溶液中の蛍光強度を適当な時間ごとに測定することにより活性を簡便に測定することができる。また、基質となる二本鎖核酸の中のミスマッチ塩基対の塩基を変えることで、特定のミスマッチ塩基対に対する切断活性を調べることも可能である。
【0038】
(2)本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼを用いた二本鎖核酸の切断方法
本発明の二本鎖核酸の切断方法は、ミスマッチ塩基対を有する二本鎖核酸に配列表の配列番号1又は配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はそのホモログを作用させることで行われる。配列表の配列番号1又は配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドのホモログとしては、本発明を特に限定するものではないが、配列表の配列番号1又は配列番号3に記載のアミノ酸配列において1ないしは数個、例えば、1ないし15個、好ましくは1ないし9個、さらに好ましくは1ないし5個、さらに好ましくは1ないし3個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有し、かつミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、及び配列表の配列番号1又は配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して90%以上、好ましくは95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドが例示される。例えば、「(1)本発明の耐熱性ミスマッチエンドヌクレアーゼ及びその変異体」のセクションで例示された配列番号1又は配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドのホモログが挙げられる。
【0039】
また、本発明の二本鎖核酸の切断方法は、耐熱性菌由来のProliferating cell nuclear antigen (PCNA)の存在下に行ってもよい。特に限定はされないが、Pyrococcus属、Thermococcus属、Methanopyrus属、並びにMethanococcus属由来のPCNAやそれらのホモログを使用することができる。PCNAの共存下でミスマッチを有する二本鎖核酸の切断を行うことにより、切断の効率が向上する。
【0040】
本発明の二本鎖核酸の切断方法におけるミスマッチ塩基対は、二本鎖核酸の内部(通常の塩基対合を行う2個の塩基対の間)に存在するものであれば二本鎖核酸中に1つのミスマッチ塩基対が存在するものに限定されることはなく、ミスマッチ塩基対が間隔をおいて複数個存在するものであってもよいし、2以上の連続するミスマッチ塩基対が存在していてもよい。本発明の二本鎖核酸の切断方法におけるミスマッチ塩基対としては、好ましくは二本鎖核酸の内部に存在する1又は8以下の連続するミスマッチ塩基対、より好ましくは1又は4以下の連続するミスマッチ塩基対、さらにより好ましくは2つの連続するミスマッチ塩基対又は1つのミスマッチ塩基対が例示される。本発明の二本鎖核酸の切断方法において、二本鎖核酸中に複数のミスマッチ塩基対が存在する場合は、該複数のミスマッチ塩基対は、同種のミスマッチ塩基対であってもよいし、または異なる種類のミスマッチ塩基対であってもよい。
【0041】
当該ミスマッチエンドヌクレアーゼのターゲットとなるミスマッチ塩基対を有する二本鎖核酸としては、PCR産物、ゲノムDNAやその断片などの生物試料由来の核酸、及び合成核酸等が例示される。また、ミスマッチ塩基対を有する二本鎖核酸は、複数の生物試料由来の混合物又は生物試料由来の核酸と合成核酸との混合物を融解、再アニーリングさせて生成された核酸混合物であってもよい。例えば、変異を有する核酸と野生型の核酸を混合し、融解、再アニーリングした場合、ミスマッチ塩基対が形成され、この部位でミスマッチエンドヌクレアーゼの切断を受ける。こうして生じたミスマッチエンドヌクレアーゼによる切断後の核酸断片の大きさを観察することで、変異の有無、位置を検証できる。
【0042】
(3)本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼを用いた核酸の増幅方法
本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼを利用することにより、PCR法などの核酸増幅法の反応液にこのミスマッチエンドヌクレアーゼを添加するだけの一段階の反応で変異解析を行うことが可能である。PCR法においては、そのサイクル数がある閾値を超えると、反応産物が増加しなくなることが知られている。添加されているdNTPの枯渇や、プライマーと反応産物のアニーリングの競合がその主な原因であるが、この時には反応産物同士のアニーリングが起こっており、変異を有する鋳型と野生型の鋳型が混在していれば、これらから増幅した反応産物同士のアニーリングにより変異部位にミスマッチ塩基対が生じることになる。したがって、本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼの共存下でのPCRを通常よりも増加させたサイクル数で実施することだけで、変異解析が可能になる。すなわち、本発明は、配列表の配列番号1及び/又は配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド又はそのホモログを二本鎖核酸に作用させることを含む、変異解析方法を提供する。
【0043】
また、核酸増幅反応の過程でも本発明の二本鎖核酸の切断方法を実施することができる。核酸増幅の反応液に本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼを添加することで、増幅過程の誤ったヌクレオチドの取り込みで生じたミスマッチ塩基対を有する二本鎖核酸が切断される。この結果、反応開始前の鋳型核酸とは異なる配列の核酸の増幅が抑制される。こうして、エラー率の低減した核酸増幅が可能になる。すなわち、本発明は、配列表の配列番号1及び/又は配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド又はそのホモログを用いてミスマッチ塩基対を有する二本鎖核酸を切断する工程を含む、核酸増幅方法を提供する。さらに、DNAポリメラーゼ、少なくとも一対のオリゴヌクレオチドプライマー、及び配列表の配列番号1及び/又は配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド又はそのホモログを含む組成物と、鋳型となる核酸分子とを含む組成物を調製する工程、及び得られたこの組成物を適切な条件下で反応させ、核酸増幅を行う工程を含む核酸の増幅方法も、本発明の一態様である。
【0044】
の核酸の増幅法としては、本発明を特に限定するものではないが、DNAを増幅する方法が例示される。DNAを増幅する方法としては、たとえばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、MDA(Multiple displacement amplification)法、及びICAN法やLAMP法等の等温核酸増幅法が挙げられる。
【0045】
本発明の核酸の増幅方法においては、耐熱性菌由来のProliferating cell nuclear antigen (PCNA)を組み合わせることができる。特に限定はされないが、Pyrococcus属、Thermococcus属、Methanopyrus属、並びにMethanococcus属由来のPCNAやそれらのホモログを使用することができる。PCNAの共存下でミスマッチを有する二本鎖核酸の切断を行うことにより、切断の効率が向上する。
【0046】
(4)本発明の組成物
本発明の組成物は、DNAポリメラーゼ、少なくとも一対のオリゴヌクレオチドプライマー、及び配列表の配列番号1及び/又は配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド又はそのホモログを含み、核酸の増幅方法に用いられる。本発明の核酸の増幅方法で用いる組成物は、DNAポリメラーゼ、少なくとも一対のオリゴヌクレオチドプライマー、及び配列表の配列番号1及び/又は配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド又はそのホモログ以外に、さらに反応緩衝剤、2価の金属イオン、デオキシリボヌクレオチド、オリゴヌクレオチドプローブ、及びインターカレーティング色素から選択される少なくとも1種を含んでもよい。また、の組成物を核酸増幅反応に使用する場合、の組成物は、さらに核酸増幅反応の鋳型となる核酸を含んでいても良い。本発明に使用される反応緩衝剤としては、例えばTris−HCl、HEPES−KOH等のグッドバッファーやリン酸ナトリウムバッファー等のリン酸バッファーが挙げられる。特に限定はないが、pH6〜11のリン酸ナトリウムバッファーあるいはTris−HCl緩衝液が好ましい。また、2価の金属イオンとしては、例えばマグネシウムイオン、マンガンイオン、亜鉛イオン、及びコバルトイオンが挙げられる。2価の金属イオンは、塩化物、硫酸塩、又は酢酸塩等の塩の形態で供給され得る。特に限定はされないが例えばマグネシウムイオンは終濃度で0.5〜50mMの範囲、マンガンイオンは終濃度で0.5〜15mMの範囲である。ここで、終濃度とは、核酸増幅反応に供する反応液中の濃度を意味する(以下、同じ)。また、本発明の組成物においては、Bovine serum albumin (BSA)、界面活性剤、無機塩を含んでいてもよい。特に限定はされないが例えばBSAは終濃度で0〜0.2mg/mlの範囲である。界面活性剤としては、Tween20、TritonX−100、及びNP−40が挙げられる。特に限定はされないが例えば界面活性剤は終濃度で0〜0.2%の範囲である。無機塩としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、グルタミン酸カリウム、及び硫酸アンモニウムが挙げられる。特に限定はされないが例えば塩化ナトリウムは終濃度で0〜0.3Mの範囲、塩化カリウムは終濃度で0〜0.2Mの範囲、グルタミン酸カリウムは終濃度で0〜0.6Mの範囲、硫酸アンモニウムは終濃度で0〜0.05Mの範囲である。さらに、耐熱性菌由来のPCNAを含んでいてもよい。特に限定はされないが、Pyrococcus属、Thermococcus属、Methanopyrus属、並びにMethanococcus属由来のPCNAが好適である。
【0047】
の核酸増幅反応用の組成物中のミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドの濃度は、適宜各々の反応系でDNAの増幅反応を阻害しない濃度やミスマッチ塩基対の切断に有効な濃度を検定して決定すればよい。
【0048】
の核酸増幅反応用の組成物に使用される少なくとも1対のプライマーとしては、各種の核酸増幅法に適した2個以上のプライマーが選択される。これらは、所望の増幅が生じるものであればDNA、RNAのほか、DNAの一部がRNAに置換されている所謂キメラプライマーであっても良い。また、公知の核酸アナログを含むプライマーや検出などを目的とした蛍光色素などにより標識されたプライマーであってもよい。
【0049】
(5)本発明の特定配列核酸の増幅抑制方法及び変異検出方法
さらに、本発明者らは、本発明の基質特異性の異なるミスマッチエンドヌクレアーゼと適切に設計されたオリゴデオキシリボヌクレオチドとを利用して、核酸増幅反応において特定の塩基配列を有する核酸の増幅を抑制可能であることを見出した。従って、(a)前記特定の塩基配列を有する核酸とハイブリダイズさせた際に1個もしくは数個のミスマッチを生じるように設計されたオリゴデオキシリボヌクレオチド、(b)DNAポリメラーゼ、(c)少なくとも一対のプライマー、及び(d)少なくとも一種類のミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドの存在下で核酸増幅反応を行う工程を含む、核酸増幅反応において特定の塩基配列を有する核酸の増幅を抑制する方法も、本発明の一態様である。また、この方法を使用して標的核酸の塩基配列と1個もしくは数個の塩基が異なる特定の塩基配列を有する核酸の増幅を抑制することによって、標的核酸を優先的に増幅する方法も本発明の一態様である。
【0050】
の(a)のオリゴデオキシリボヌクレオチドは、特定の塩基配列を有する核酸とハイブリダイズさせた際に1個もしくは数個のミスマッチを生じるように設計されたオリゴデオキシリボヌクレオチドであれば特に限定はなく、DNAの一部がRNAに置換されている所謂キメラオリゴデオキシリボヌクレオチドであっても良い。また、本発明を特に限定するものではないが、このオリゴデオキシリボヌクレオチドの3’端は、このオリゴデオキシリボヌクレオチドからのDNAポリメラーゼによる伸長反応を抑制するための修飾を施されていてもよい。たとえば、アミノ化などの修飾が例示される。また、オリゴデオキシリボヌクレオチドは、このオリゴデオキシリボヌクレオチドが結合する核酸がミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドの切断を受ける限りにおいて、ホスホロチオエート化やその他の修飾によりデオキシリボヌクレアーゼからの切断から保護されていてもよい。さらに、検出などを目的とした蛍光色素や消光物質などにより標識されていてもよい。
【0051】
オリゴデオキシリボヌクレオチドの鎖長は、実施される反応の条件の下で前記特定の塩基配列を有する核酸とこのオリゴデオキシリボヌクレオチドとがハイブリダイズできるように、適宜決定できる。また、特定の塩基配列を有する核酸とハイブリダイズさせた際にミスマッチを生じる位置は、このオリゴデオキシリボヌクレオチドの5’末端、3’末端の両方から少なくとも3ヌクレオチド以上離れていることが望ましい。
【0052】
本発明の、核酸増幅反応において特定の塩基配列を有する核酸の増幅を抑制する方法には、ミスマッチ部位を特異的に切断する活性を有する本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼを使用することができる。例えば、核酸増幅法として高温での反応を包含するPCR法のような方法で、耐熱性DNAポリメラーゼを使用する場合には、ミスマッチエンドヌクレアーゼも耐熱性を有するものを使用することが好ましい。本発明を特に限定するものではないが、このような場合には、前記の耐熱性のG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼ、すなわち、(i)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(ii)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1ないしは数個、例えば、1ないし15個、好ましくは1ないし9個、さらに好ましくは1ないし5個、さらに好ましくは1ないし3個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有し、かつG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、(iii)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列に対して95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつG−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、及び/又はA−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼ、すなわち、(iv)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(v)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列において1ないしは数個、例えば、1ないし15個、好ましくは1ないし9個、さらに好ましくは1ないし5個、さらに好ましくは1ないし3個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、及び/又は付加されてなるアミノ酸配列を有し、かつA−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチド、(vi)配列表の配列番号3に記載のアミノ酸配列に対して90%以上、好ましくは95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつA−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを認識して切断するエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドを使用することが好適である。
【0053】
本発明の、核酸増幅反応において特定の塩基配列を有する核酸の増幅を抑制する方法には、特定のミスマッチ塩基対を含む二本鎖核酸のみを特異的に切断する活性を有するミスマッチエンヌクレアーゼを使用することがさらに好ましい。この場合、増幅抑制する塩基配列を1種類に限定することが可能である。例えば、配列表の配列番号1又は配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドあるいはそのホモログを用いた場合、G−G、G−TあるいはT−Tミスマッチあるいは、A−A、A−CあるいはC−Cミスマッチを含む二本鎖核酸を認識して切断するため、これら特定のミスマッチ以外のミスマッチ塩基対を含む二本鎖核酸は切断されず、増幅抑制を受けることがない。従って、特定の塩基配列を有する核酸の増幅を抑制する方法に好適である。これらのミスマッチエンドヌクレアーゼは、増幅を抑制したい塩基配列に応じて、単独あるいは組み合わせて使用してもよい。
【0054】
本発明の、核酸増幅反応において特定の塩基配列を有する核酸の増幅を抑制する方法において、ミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドの濃度は、適宜各々の反応系でDNAの増幅反応を阻害しない濃度やミスマッチ塩基対の切断に有効な濃度を検定して決定すればよい。(a)のオリゴデオキシリボヌクレオチドの濃度は、鋳型量や目的DNAの増幅効率を勘案して、使用濃度を最適化し、決定すればよい。例えば増幅反応に使用されるプライマーの濃度の0.1倍〜10倍の濃度で実施可能である。
【0055】
本発明の、核酸増幅反応において特定の塩基配列を有する核酸の増幅を抑制する方法は、任意の核酸増幅法において実施することができる。本発明を特に限定するものではないが、DNAを増幅する方法に特に好適である。たとえばPCR法、MDA法、及びICAN法やLAMP法等の等温核酸増幅法等で本発明を実施することができる。
【0056】
本発明の、核酸増幅反応において特定の塩基配列を有する核酸の増幅を抑制する方法は、任意の核酸を対象として実施することができる。DNAを増幅対象とする場合には、人工的に作製されたDNA混合物、環境由来試料や生物由来の試料、又はその試料より調製されたDNA混合物中に存在するDNAが例示される。本発明を特に限定するものではないが、生物由来の試料としては、ヒト等の哺乳類由来の試料が例示される。また、本発明を特に限定するものではないが、DNA混合物としては、断片化されたゲノムDNA混合物、mRNAより逆転写反応により生じたcDNA混合物、複数のPCR産物の混合物などが例示される。増幅が抑制される特定の塩基配列を有するDNAとしては、分離されずにのこるrRNA由来の逆転写産物や、プライマー同士の対合により生じる低分子DNAなどが例示される。後に機能的スクリーニングを行う遺伝子ライブラリーを増幅する場合には、陽性を示す既知の遺伝子の配列を持つDNAの増幅を抑制することで、より効率的に未知遺伝子を探索できるライブラリーの作製も可能になる。
【0057】
本発明の、標的核酸を優先的に増幅する方法においては、更に増幅された標的核酸を検出する工程を含んでいても良い。本明細書においては、本発明のこの態様のことを「本発明の検出方法」と記載することがある。例えば、DNAを検出対象とする本発明の検出方法によれば、検出対象でないDNA(特定の塩基配列を有するDNA)が検出対象のDNA(標的DNA)に対して大過剰に存在する場合においても、本発明の核酸増幅反応において特定の塩基配列を有する核酸の増幅を抑制する方法における(a)のオリゴデオキシリボヌクレオチドと(d)のミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドとにより検出対象でないDNAを鋳型としたDNAの増幅が抑制されるため、検出対象のDNAの検出を行うことが可能となる。
【0058】
さらに、本発明の検出方法は、例えば変異の存在が知られている遺伝子に対応する核酸について、野生型と変異型とを区別して検出することを可能にする。特定の塩基配列を有する核酸として、野生型の塩基配列を含有するDNAを設定して本発明の検出方法を実施することにより、大過剰の正常対立遺伝子(すなわち野生型の塩基配列を有するDNA)の存在下における少数の変異対立遺伝子の検出が可能となる。例えば血中循環腫瘍DNAの検出や母親の血液中に含有されている少量の胎児DNA配列の検出に本発明の方法は有用である。したがって、本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼを用いた変異検出方法もまた、本発明の一態様である。当該変異としては、微小欠失及び点突然変異が例示される。なお、点突然変異によって生じた多型は一塩基多型(SNPs)と呼ばれる。本明細書においては、SNPsのうち変異型の塩基配列を有するDNAのことを、一塩基多型変異を有するDNAと記載することがある。
【0059】
本発明を特に限定するものではないが、本発明の検出方法が利用できる核酸としては、腫瘍マーカーとして利用される一塩基多型変異、癌治療用薬剤による治療効果と相関する一塩基多型変異、及び細胞の癌化との相関が知られている一塩基多型変異からなる群より選択された少なくとも1つの一塩基多型変異を含む核酸が好ましい。SNPsには、腫瘍細胞に高頻度で認められるものや、癌治療用薬剤による治療効果や発癌との相関が知られているものがある。このようなSNPsとしては、K−ras遺伝子、B−raf遺伝子、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子のSNPsが例示される。K−ras遺伝子の体細胞変異は、結腸直腸癌、肺腺癌、甲状腺癌等において高頻度で認められる。B−raf遺伝子の体細胞変異は、結腸直腸癌、悪性黒色腫、甲状腺乳頭癌、非小細胞肺癌、肺腺癌等において高頻度で認められる。また、EGFR遺伝子の体細胞変異は、様々な固形腫瘍において高頻度で認められる。ゲフィチニブやエルロチニブ等のEGFR阻害剤による癌の治療は、癌組織のEGFR遺伝子が特定の一塩基多型変異を有する場合に有効である可能性が高いことが知られている。一方、癌組織のK−ras遺伝子が一塩基多型変異を有する場合には、EGFR阻害剤への抵抗性を示す可能性が高いことが知られている。
【0060】
本発明のミスマッチエンドヌクレアーゼは、変異検出方法に利用することができる。本発明の検出方法は、例えば、生物由来試料から抽出したメチル化DNAを含む組成物を亜硫酸水素塩処理した後に得られたDNAを材料として実施してもよい。本発明の検出方法によれば、大過剰の非メチル化対立遺伝子の存在下における少数のメチル化対立遺伝子の検出、あるいは大過剰のメチル化対立遺伝子の存在下における少数の非メチル化対立遺伝子の検出を行うことができる。
【0061】
前記の亜硫酸水素塩による処理として、メチル化DNAの検出に用いられる公知の亜硫酸水素塩法(バイサルファイト法)が利用できる。当該処理により非メチル化シトシンはウラシルに変換されるが、メチル化シトシンは変化しない。さらに、このバイサルファイト処理済みの反応液をPCR法で増幅すると、ウラシルはチミンに変換され、メチル化シトシンはシトシンとなる。つまり特定の部位での大過剰の非メチル化対立遺伝子の存在下における少数のメチル化対立遺伝子の検出、あるいは大過剰のメチル化対立遺伝子の存在下における少数の非メチル化対立遺伝子の検出は、それぞれ大過剰のチミンの中のシトシンの存在、または大過剰のシトシンの中のチミンの存在を検証することに他ならない。ここで大過剰に存在するチミンあるいはシトシンを含有するDNAからの増幅を抑制できれば、少数のメチル化対立遺伝子あるいは非メチル化対立遺伝子の存在はたやすく検証することができる。
【0062】
本発明の検出方法における標的核酸を検出する工程には、電気泳動、塩基配列解析、サイクリングプローブやTaqManプローブ等のプローブを用いたリアルタイムPCRを利用することができる。これらの検定方法は一般的な手法をそのまま用いることが可能である。特にHRM(High Resolution Melting)解析法を用いた場合、目的DNAの増幅と検出を1段階で行うことができ、迅速かつ簡便な目的DNAの検証が可能になる。
【0063】
本発明の特定配列核酸の増幅抑制方法及び変異検出方法においては、耐熱性菌由来のPCNAを組み合わせることができる。特に限定はされないが、Pyrococcus属、Thermococcus属、Methanopyrus属、並びにMethanococcus属由来のPCNAやそのホモログを使用することができる。
【0064】
さらに、(a)特定の塩基配列を有する核酸とハイブリダイズさせた際に1個もしくは数個のミスマッチを生じるように設計されたオリゴデオキシリボヌクレオチド、(b)DNAポリメラーゼ、(c)少なくとも一対のプライマー、及び(d)少なくとも一種類のミスマッチエンドヌクレアーゼ活性を有するポリペプチドを含む核酸増幅反応用組成物もまた、本発明の一態様である。組成物は、さらに、反応緩衝剤、2価の金属イオン、デオキシリボヌクレオチド、オリゴヌクレオチドプローブ、及びインターカレーティング色素から選択される少なくとも1種を含んでもよい。の組成物を核酸増幅反応に使用する場合、の組成物は、さらに核酸増幅反応の鋳型となる核酸を含んでいても良い。組成物は、Bovine serum albumin (BSA)、界面活性剤、無機塩を含んでいてもよい。さらに、耐熱性菌由来のPCNAを含んでいてもよい。
【実施例】
【0065】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0066】
調製例1 ゲノムDNAの調製
Thermococcus kodakarensis KOD1株(JCM 12380T、以下TKOと称す)は、京都大学工学研究科の跡見晴幸教授より分与された。本株を以下の方法で培養した。即ち、ピルビン酸ナトリウム(ナカライテスク社製)5gを加えたartificial seawater(以下、ASWと称す)−YT培地(0.8×ASW、5g/L濃度のBacto Yeast Extract(DIFCO社製)、5g/L濃度のBacto Trypton(ベクトンディッキンソン社製)、0.1% resazurin(ナカライテスク社製))1Lに培地が無色になるまで硫化ナトリウムを添加した。その後、前記KOD1株を植菌し、85℃で16時間嫌気培養した後、集菌し以降の実験に用いた。なお、ASW−YT培地中に含まれる0.8×ASWの組成は、16g/L濃度のNaCl、2.4g/L濃度のMgCl2・6H2O、4.8g/L濃度のMgSO4・7H2O、0.8g/L濃度の(NH4)2SO4、0.16g/L濃度のNaHCO3、0.24g/L濃度のCaCl2・2H2O、0.4g/L濃度のKCl、0.336g/L濃度のKH2PO4、0.04g/L濃度のNaBr、0.016g/L濃度のSrCl2・6H2O、0.008g/L濃度のFe(NH4)citrateである。前記の培養で得た約2gの菌体を緩衝液L(10mM トリス−塩酸(pH8.0)、1mM EDTA、100mM NaCl)100mlに懸濁し、10%SDSを1ml加えた。この菌体懸濁液を撹拌した後、20mg/mL濃度のプロテイナーゼK(タカラバイオ社製)を1ml加えて、55℃で60分静置した。プロテイナーゼK処理後の菌体懸濁液に順次フェノール抽出、フェノール/クロロホルム抽出、クロロホルム抽出を施した後、得られた水層にエタノールを加えてDNAを沈殿させた。
回収したDNAを100mlのTE液(10mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM EDTA)に溶解し、0.75mgのRNaseA(ナカライテスク社製)を加えて37℃で60分反応させた。その後反応液にフェノール抽出、フェノール/クロロホルム抽出、クロロホルム抽出を順次施して得られた水層より、エタノール沈殿によりDNAを回収した。最終的に7.5mgのDNAが得られた。
【0067】
実施例1 TKO NucSの調製
(1)TKO NucSの発現用プラスミドの作製
配列番号1記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする遺伝子、すなわちTKO nucS遺伝子のクローニングは以下の方法で行なった。まず、調製例1で調製したTKOゲノムDNA 100ngを鋳型にして、配列表の配列番号5記載の塩基配列を有するTK1898−Fおよび配列表の配列番号6記載の塩基配列を有するTK1898−Rをプライマーに用いてPCRを行った。なお、TK1898−Fは制限酵素NdeIの認識配列を有し、TK1898−Rは制限酵素NotIの認識配列を有する。反応液組成は、各プライマー濃度は0.5μM、2.5mM dNTP、1.5mM MgCl2、1UのKOD−Plus−Neo DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)を用いて50μLの反応容量である。PCR条件は、98℃ 10秒、55℃ 30秒、68℃ 1分を1サイクルとする30サイクル反応で行った。
【0068】
反応液をアガロース電気泳動し、TKO nucS遺伝子に相当する約800bpのバンドを切り出し、ここから常法でDNAを精製した。このDNAを制限酵素NdeIおよびNotI(いずれもタカラバイオ社製)で消化し、再度アガロース電気泳動とゲルからのDNA断片精製を行った。このDNA断片をあらかじめNdeIおよびNotIで消化したpET21a(ノバジェン社製)と混合し、ライゲーション反応の後、JM109大腸菌に導入して作製した形質転換体をアンピシリン含有LB寒天培地上で培養した。その後生じたコロニーをアンピシリン含有LB培地で培養して得られた菌体より、PureLinkR HiPure Plasmid Midiprep Kit (ライフテクノロジーズ社製)を用いてプラスミドを精製した。このプラスミドの挿入断片の塩基配列を常法により解読し、正しくTKO nucS遺伝子がクローニングされていることを確認した。このTKO nucS遺伝子含有プラスミドをpET21a−TkoNucSと命名した。
【0069】
(2)TKO NucSの発現
TKO NucSの発現プラスミドであるpET21a−TkoNucSは、前記実施例1(1)で作製されたものを用いた。組換えタンパク質の産生には、ノバジェン社の大腸菌組換えタンパク質発現システム(pET system)を利用した。まず、pET21a−TkoNucSを用いて大腸菌BL21−CodonPlus(DE3)−RIL株(アジレント・テクノロジー社製)を説明書記載の方法で形質転換した。形質転換された菌体は、50μg/mL濃度のアンピシリン及び34μg/mL濃度のクロラムフェニコールを含むLB培地100mlで飽和するまで培養した。こうして得られた培養液を、50μg/mL濃度のアンピシリン及び34μg/mL濃度のクロラムフェニコールを含むLB培地1LにOD600が0.01になるように植菌し、OD600が0.4になるまで37℃で振とう培養した後、IPTGを添加する(終濃度1mM)ことで目的タンパク質の産生誘導を行った。IPTG添加後、25℃で16時間振とう培養して得た培養液を遠心分離(5,000×g 10分間、4℃)して菌体を回収した。
【0070】
回収した菌体を0.5M 塩化ナトリウム、1mM PMSFを含む溶液A(50mM Tris−HCl(pH 8.0)、0.5mM DTT、0.1mM EDTA、10% glycerol)25mlに懸濁し、氷上で超音波破砕(10秒間 on/10秒間 offで計10分間)を行った。この超音波破砕液を遠心分離(24,000×g、10分間、4℃)して得た上清に熱処理(80℃、30分間)を行い、ついで遠心(24,000×g、10分間、4℃)を行うことにより、熱変性した大腸菌由来のタンパク質を除去した。
【0071】
(3)TKO NucSの精製
前記(2)で取得した熱処理、遠心分離後の上清に含まれるTKO NucSタンパク質を精製するために、まず終濃度0.15%のポリエチレンイミンをこの上清に添加して混入している核酸を不溶化した。遠心(24,000×g、10分間、4℃)により核酸を除去し、上清を得た。この上清に対して、80%飽和になるように(NH4)2SO4を加え、4℃で一晩撹拌し、目的タンパク質を塩析した。この溶液を遠心分離し(24,000×g、10分間、4℃)、得られた沈殿を1.5M (NH4)2SO4を含む溶液A20mlに溶解させ、AKTA purifierシステム(GEヘルスケア社製)を用い、疎水性相互作用カラムクロマトグラフィーカラム HiTrap Phenyl HP 5ml(GEヘルスケア社製)に供した。1.5Mから0Mの(NH4)2SO4の濃度勾配によりタンパク質を溶出し、1.4〜0.73M (NH4)2SO4に相当する溶出画分を集めた。この画分を、0.3M塩化ナトリウムを含む溶液Aで一晩透析した。透析後の溶液を遠心分離(23,708×g、10分間、4℃)して得られた上清をアフィニティークロマトグラフィーカラムHisTrap Heparin HP 1ml(GEヘルスケア社製)に供した。0.3Mから1Mの塩化ナトリウムの濃度勾配によりタンパク質を溶出し、0.58〜0.8M 塩化ナトリウムに相当する溶出画分を集めた。この画分を0.35M 塩化ナトリウムを含む溶液Aで一晩透析した。透析後の溶液を遠心分離(24,000×g、10分間、4℃)して得られた上清を陽イオン交換クロマトグラフィーカラムHiTrap SP HP 1ml(GEヘルスケア社製)に供した。0.35Mから1Mの塩化ナトリウムの濃度勾配によりタンパク質を溶出し、溶出画分を最終精製画分とした。この最終精製産物について12%SDS−PAGEにより純度を確認した。その結果を図1に示す。精製タンパク質の濃度はProtParam tool(http://web.expasy.org/protparam/)で得られたモル吸光係数ε280=12950M−1cm−1を用い、精製タンパク質の280nmにおける吸光度から算出した。
【0072】
実施例2 TKO NucSの酵素学的性質
(1)ミスマッチDNA切断反応用基質の調製
TKO NucSのミスマッチ切断活性について実験を行った。本実施例で用いたオリゴヌクレオチドとそれらの塩基配列は配列表の配列番号7〜16に示す。なお、配列表の配列番号7〜9は、5’末端にCy5蛍光標識を有するオリゴヌクレオチドである。
【0073】
図2に示したように、配列表の配列番号7〜16に記載のオリゴヌクレオチドを組み合わせることで45bpのミスマッチを含まない二本鎖DNA(all match dsDNA)と、それぞれが1か所のミスマッチを含む8種類の二本鎖DNA基質(アデニンとアデニンのミスマッチを含む二本鎖DNA(A−A dsDNA)、アデニンとシトシンのミスマッチを含む二本鎖DNA(A−C dsDNA)、アデニンとグアニンのミスマッチを含む二本鎖DNA(A−G dsDNA)、グアニンとチミンのミスマッチを含む二本鎖DNA(G−T dsDNA)、グアニンとグアニンのミスマッチを含む二本鎖DNA(G−G dsDNA)、チミンとシトシンのミスマッチを含む二本鎖DNA(T−C dsDNA)、チミンとチミンのミスマッチを含む二本鎖DNA(T−T dsDNA)、シトシンとシトシンのミスマッチを含む二本鎖DNA(C−C dsDNA))を調製した。Cy5で蛍光標識されたオリゴヌクレオチドと非標識のオリゴヌクレオチドを1対1.6の比で含むアニール溶液A(20mM Tris−HCl(pH8.0)、6mM (NH4)2SO4、2mM MgCl2)50μl中で前述のミスマッチオリゴヌクレオチドをアニールさせて、50nMの濃度で蛍光標識されたDNAを含む基質溶液を調製した。アニール条件は98℃ 5分間、80℃ 30秒間、80℃から60℃になるまで30分間、60℃で30秒間、60℃から40℃になるまで30分間、25℃で30秒間の条件で行った。また、二価金属イオンを含まない基質DNA溶液は、の標識及び非標識オリゴヌクレオチドの組み合せ、アニール条件でアニール溶液B(20mM Tris−HCl(pH 8.0)、100mM NaCl、6mM (NH4)2SO4)50μl中でオリゴヌクレオチドのアニーリングを行い、50nMの濃度の蛍光標識されたDNA基質溶液を調製した。
【0074】
(2)ミスマッチDNA切断活性測定
反応溶液(20mM Tris−HCl(pH8.0)、100mM NaCl、6mM (NH4)2SO4、2mM MgCl2、0.1%Triton X−100、0.1mg/mL濃度のBSA)20μl中で各濃度のTKO NucS(単量体として0、1、2、5、10、20、50及び100nM)と5nMの基質(G−T dsDNA)を55℃、5分間反応させた後、0.5M EDTA 1μlを加え反応を停止させた。反応停止後、反応液に5mg/mL濃度のプロテイナーゼKを0.5μl加え、30分間処理することでタンパク質の分解を行った。プロテイナーゼK処理後の反応液に、ゲルローディングバッファー(15%Ficoll、10mM Tris−HCl(pH 8.0)、0.1%OrangeG) 4μlを加え、この溶液を10%ポリアクリルアミドゲルに供し、1×TBE中、25mAで30分間の電気泳動を行った。その結果を図3−Aに示す。図3−Aにおいてレーン1〜8は、それぞれTKO NucSの0〜100nMに相当する。さらに、電気泳動後のゲルについて、Typhoon Trio+ imager(GEヘルスケア社製)を用いて反応生成物の検出を行い、Image Quant TLで切断されたオリゴヌクレオチドに相当するバンドの定量を行った。その結果を図3−Bに示す。図3−Bにおいて縦軸は、切断効率(%)であり、横軸はTKO NucSの濃度である。
【0075】
(3)TKO NucSのミスマッチDNA切断反応における至適pHの検討
TKO NucSのミスマッチDNA切断反応における至適pHの検討は、以下のようにして行った。即ち、20mM Glycine−HCl緩衝液(pH3.0)、20mM CH3COOH−CH3COONa緩衝液(pH4.0及び、pH5.0)、20mM MES−HCl緩衝液(pH6.0)、20mM Bis−Tris−HCl緩衝液(pH7.0)、20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、20mM Glycine−NaOH緩衝液(pH9.0及びpH10.0)、20mM CAPS−NaOH緩衝液(pH11.0)、20mM Phosphate−NaOH緩衝液(pH12.0)の各緩衝液及び0.1M NaOHの溶液(pH13.0)に、40mM NaCl、10mM KCl、6mM (NH4)2SO4、2mM MgCl2、0.1%Triton X−100、0.1mg/mL濃度のBSAになるように添加したものに、さらにTKO NucS 2nMと、図2に示したG−T dsDNA (配列表の配列番号8記載の塩基配列を有するCy5−45−mismatch オリゴヌクレオチドと配列表の配列番号10記載の塩基配列を有するtemp45−normal オリゴヌクレオチドからなる2本鎖DNA)5nMを添加して55℃で5分間インキュベートした。インキュベート後、反応液をプロテイナーゼK処理し、その後電気泳動に供し切断活性を測定した。その結果を図4に示す。即ち、図4は、反応至適pHを示す図であり、縦軸は相対活性を示し、横軸はpHを示す。
【0076】
(4)塩の種類と濃度がTKO NucSのミスマッチDNA切断反応に与える影響
塩の種類と濃度がTKO NucSのミスマッチDNA切断反応に与える影響を検討した。まず、20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、6mM (NH4)2SO4、2mM MgCl2、0.1%Triton X−100、0.1mg/mL濃度のBSAに対して、0、50、100、150、200、300、400、600、800及び1000mMのNaCl、KClあるいはK−Glu(グルタミン酸カリウム)を含む反応液を調製し、そこにTKO NucS 2nMとG−T dsDNA 5nMを添加して55℃で5分間インキュベートさせた。インキュベート後、反応液をプロテイナーゼK処理し、その後電気泳動に供し切断活性を測定した。その結果を図5に示す。即ち、図5(A)は、塩化ナトリウム濃度の影響を示す図であり、縦軸は相対活性を示し、横軸は塩濃度を示し、図5(B)は、塩化カリウム濃度の影響を示す図であり、縦軸は相対活性を示し、横軸は塩濃度を示し、図5(C)は、グルタミン酸カリウム濃度の影響を示す図であり、縦軸は相対活性を示し、横軸は塩濃度を示す。
【0077】
(5)二価金属イオンがTKO NucSのミスマッチDNA切断反応に与える影響
二価金属イオンがTKO NucSのミスマッチDNA切断反応に与える影響を検討した。反応液は、20mM Tris−HCl緩衝液(pH 8.0)、6mM (NH4)2SO4、200mM NaCl、0.1%Triton X−100、0.1mg/mL濃度のBSAに対して、0、0.5、1、2、5、10、20、50、100及び200mMのMgCl2、あるいは0、0.5、1、2、5、10及び20mMのMnCl2を含む反応液を調製し、そこにTKO NucS 2nMとG−T dsDNA 5nMを添加して55℃で5分間インキュベートさせた。インキュベート後、反応液をプロテイナーゼK処理し、その後電気泳動に供し切断活性を測定した。その結果を図6、および図7に示す。即ち、図6は、塩化マグネシウム濃度の影響を示す図であり、縦軸は相対活性を示し、(A)の横軸は0〜200mMの濃度を示し、(B)の横軸は0〜20mM濃度を示す。同様に図7は、塩化マンガンの影響を示す図であり、縦軸は相対活性を示し、横軸は塩化マンガン濃度を示す。
【0078】
(6)TKO NucSのミスマッチDNA切断反応における至適温度の検討
TKO NucSのミスマッチDNA切断反応における至適温度の検討は以下のようにして行った。即ち、20mM Tris−HCl緩衝液(pH 8.0)、6mM (NH4)2SO4、100mM NaCl、2mM MgCl2、0.1%Triton X−100、0.1mg/mL濃度のBSAを含む反応液を調製し、そこにTKO NucS 2nMとG−T dsDNA 5nMを添加して30℃から95℃の反応温度で5分間インキュベートさせた。インキュベート後、反応液をプロテイナーゼK処理し、その後電気泳動に供し切断活性を測定した。その結果を図8に示す。即ち、図8は、至適温度を示す図であり、縦軸は相対活性を示し、横軸は反応温度を示す。
【0079】
実施例3 TKO NucSのミスマッチ切断活性の確認
(1)様々なミスマッチDNAに対する切断活性
実施例2(1)でアニールして作製した45bpのミスマッチを含まない二本鎖DNA(all match dsDNA)と、それぞれが1か所のミスマッチを含む8種類の二本鎖DNA基質を用いて、TKO NucSの様々なミスマッチDNAに対する切断活性を検討した。即ち、反応溶液(20mM Tris−HCl(pH8.0)、100mM NaCl、6mM (NH4)2SO4、2mM MgCl2、0.1%Triton X−100、0.1mg/mL濃度のBSA)20μl中で各濃度のTKO NucS(単量体として0、1、2、5、10、20、50及び100nM)と5nMの基質(all match dsDNA、A−A dsDNA、A−C dsDNA、A−G dsDNA、G−T dsDNA、G−G dsDNA、T−C dsDNA、T−T dsDNA、及びC−C dsDNA)を55℃、5分間反応させた後、0.5M EDTA 1μlを加え反応を停止させた。反応停止後、反応液に5mg/mL濃度のプロテイナーゼKを0.5μl加え、30分間処理することでタンパク質の分解を行った。プロテイナーゼK処理後の反応液にゲルローディングバッファー 4μlを加え、この溶液を10%ポリアクリルアミドゲルに供し、1×TBE中、25mAで30分間の電気泳動を行った。電気泳動後のゲルについて、Typhoon Trio+ imager(GEヘルスケア社製)を用いて反応生成物の検出を行い、Image Quant TLで切断されたオリゴヌクレオチドに相当するバンドの定量を行った。その結果を図9に示す。図9において縦軸は、切断効率(%)であり、横軸はTKO NucSの濃度である。それぞれのミスマッチ基質の切断効率を凡例に示すような異なるマーカーで表しグラフで示した。図9から、TKO NucSは、G−T dsDNA、G−G dsDNA、T−T dsDNA、T−C dsDNA及びA−G dsDNAを切断することが確認できた。
【0080】
(2)TKO NucSのDNA結合活性の測定
TKO NucSのDNA結合活性について検討した。まず基質特異性を調べるため、結合溶液(20mM Tris−HCl(pH 8.0)、100mM NaCl、6mM (NH4)2SO4、2mM MgCl2、0.1%Triton X−100、0.1mg/mL濃度のBSA、1mM DTT)20μl中で各濃度のTKO NucS(単量体として0、1、2、5、10及び20nM)と配列表の配列番号17記載の塩基配列を有し、その5’末端にCy5蛍光標識を有するCy5−15bindingオリゴヌクレオチドと配列表の配列番号18〜26に記載の塩基配列を有する各15bindingオリゴヌクレオチドを図10に示した組み合わせで調製したプローブDNA(ssDNA(Cy5−15binding)、all match(15bp) dsDNA、A−A(15bp)dsDNA、A−C(15bp)dsDNA、A−G(15bp)dsDNA、G−T(15bp)dsDNA、G−G(15bp)dsDNA、T−C(15bp)dsDNA、T−T(15bp)dsDNA及びC−C(15bp)dsDNA)の5nMを37℃で5分間保温した。保温終了後の反応液にゲルローディングバッファー4μlを加え、この溶液を8%ポリアクリルアミドゲルに供し、0.5×TBE中、25mAで30分間の電気泳動を行った。電気泳動後、Typhoon Trio+ imagerを用いて結合活性の検出を行った。その結果を図11に示す。図11においてレーン1〜6及びレーン7〜12は、それぞれTKO NucSの0〜20nMに相当する。図11から、TKO NucSは、G−T(15bp)dsDNA、G−G(15bp)dsDNA及びT−T(15bp)dsDNAに結合することが確認できた。
【0081】
(3)TKO NucSの耐熱性検討
耐熱性の検討は、以下のようにして行った。即ち、実施例3(2)の記載に従って、単量体として2nM TKO NucSを含み、かつ基質を含まない反応液 18μlを調製した。この反応液を各温度(50、60、70、80、85、90及び95℃)で30分間処理した後に5nMの基質(G−TミスマッチdsDNA)を加え、55℃、5分間反応させた後、0.5M EDTA 1μlを加え反応を停止させた。反応停止後、反応液に5mg/mL濃度のプロテイナーゼK 0.5μlを加え、30分間処理することでタンパク質の分解を行った。プロテイナーゼK処理後の反応液にゲルローディングバッファー4μlを加え、この溶液を10%ポリアクリルアミドゲルに供し、1×TBE中、25mAで30分間の電気泳動を行った。電気泳動後のゲルについてTyphoon Trio+ imagerを用いて反応生成物の検出を行い、Image Quant TLで切断されたオリゴヌクレオチドに相当するバンドの定量を行った。その結果を図12に示す。即ち、図12は、耐熱性を示す図であり、縦軸は残存活性を示し、横軸は処理温度を示す。図12から、TKO NucSは、80℃で30分間処理しても約80%のミスマッチ切断活性が残っていることが確認できた。
【0082】
実施例4 Thermococci kodakarensis由来PCNA1によるTKO NucSの切断活性の促進
T.kodakarensis由来のPCNA1(Genes to Cells、2012年、第11巻、2号、p.923−937、以下TKO PCNAと称す)によるTKO NucSのミスマッチDNA切断反応への影響を検討した。即ち、塩化ナトリウム400mMを含む切断反応溶液Cの20μl中で、二量体として2.5nMの野生型TKO NucS、5nMの基質DNA(G−T dsDNA)、及び各濃度のTKO PCNA(三量体として0、5、10、25、50、125、250、500、及び1250nM)を55℃で5分間反応させた後、0.5M EDTA 1μlを加えて反応を停止させた。反応停止後、反応液に5mg/mL濃度のプロテイナーゼK 1μl及び10%SDS 1μlを加え、50℃で1時間反応させることでタンパク質の分解を行った。
プロテイナーゼK/SDS処理後の反応液にゲルローディングバッファーを4.5μl加え、この溶液を10%ポリアクリルアミドゲルに供し、1×TBE中、25mAで20分間の電気泳動を行った。
【0083】
電気泳動後のゲルについてTyphoon Trio+ imagerを用いて反応生成物の検出を行い、Image Quant TLで切断されたオリゴヌクレオチドに相当するバンドの定量を行った。その結果を図13に示す。図13中、(A)は、native−PAGE写真を示す。また、(B)は、Image Quant TLで基質と切断産物のバンド強度を定量化したものであり、縦軸は相対活性を示し、PCNAを含まないときの活性を1とした時の様々な濃度のPCNA添加後の相対活性である。図13に示すように、反応阻害が起こる400mM NaCl存在下でも、TKO PCNAが存在すると、ミスマッチ切断活性が促進されることが確認できた。
【0084】
実施例5 変異型TKO NucSの調製
(1)変異型TKO NucSの発現用プラスミドの作製
TKO NucSの各種部位特異的変異体発現用のプラスミドを構築するため、配列表の配列番号27〜30記載の塩基配列を有するプライマーを作製した。次に、変異型TKO NucS産生用プラスミドを構築するため、PCRを利用した変異導入法を用いた。
【0085】
47番目の残基への変異導入及び76番目の残基への変異導入のため、以下の方法を2回繰り返した。2つの1×PCR Buffer for KOD−Plus−Neo(東洋紡社製)、0.2mM each dNTP、1.5mM マグネシウムイオン、0.02U/μLのKOD−Plus−Neoを含む25μlの反応溶液中に、鋳型として1回目はTKO NucS発現プラスミド(pET21a−TkoNucS)25ngを、続いて2回目は1回目に作製したプラスミド25ngを用い、1回目にはそれぞれ7.5pmolの配列番号27及び28のプライマーを、2回目にはそれぞれ7.5pmolの配列番号29及び30のプライマーを加えた。反応条件は、98℃ 1分の後、98℃ 10秒、55℃ 30秒、68℃ 5分を1サイクルとする14サイクル反応、68℃ 5分、25℃ 5秒で行った。
【0086】
PCR後、溶液に20U/μlのDpnI(タカラバイオ社製)を0.5μl添加し、37℃で1時間反応させた。DpnI処理後の反応溶液を用いて大腸菌JM109株を形質転換した。この菌体を50μg/mlアンピシリンを含むLB培地25mlで振とう培養した後、プラスミド抽出をPureLink(登録商標) HiPure Plasmid Midiprep Kitを用いて行った。抽出したプラスミドのTKO NucSがコードされている塩基配列を常法で解読し、変異型TKO NucSタンパク質産生用プラスミドが調製できたことを確認した。作製したプラスミドはpET21a−TkoNucS_S47A/N76A と名付けた。また、変異型TKO NucS S47A/N76Aの発現・精製は、実施例1(2)及び(3)記載の方法で行った。
【0087】
実施例6 変異型TKO NucS S47A/N76AのミスマッチDNA切断活性
変異型TKO NucS S47A/N76AのミスマッチDNA切断活性を解析した。即ち、反応溶液(20mM Tris−HCl(pH8.0)、100mM NaCl、6mM (NH4)2SO4、2mM MgCl2、0.1%Triton X−100、0.1mg/mL濃度のBSA)20μl中で5nMの基質(A−A dsDNA)とそれぞれ野生型TKO NucS及び変異型TKO NucS S47A/N76Aを二量体として50nM添加し、55℃、5分間反応させた。その後、0.5M EDTA 1μlを加え反応を停止させた。反応停止後、反応液に5mg/mL濃度のプロテイナーゼKを0.5μl加え、30分間処理することでタンパク質の分解を行った。プロテイナーゼK処理後の反応液にゲルローディングバッファー 4μlを加え、この溶液を10%ポリアクリルアミドゲルに供し、1×TBE中、25mAで30分間の電気泳動を行った。
【0088】
その結果を図14に示す。図14においてレーン1〜3は、それぞれTKO NucSタンパク質を含まない反応液、野生型TKO NucS、及び変異型TKO NucS S47A/N76Aに相当する。その結果、変異型TKO NucS S47A/N76Aが、A−Aミスマッチを認識し切断することが確認できた。このことから、G−G、G−TあるいはT−Tミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼと少なくともA−Aミスマッチを認識して切断するミスマッチエンドヌクレアーゼの両方を作製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、遺伝子工学、生物学、医学、農学等の幅広い分野において有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0090】
SEQ ID NO: 1: amino acid sequence of wild type endonuclease NucS from Thermococcus kodakarensis
SEQ ID NO: 2: nucleotide sequence of wild type endonuclease NucS from Thermococcus kodakarensis
SEQ ID NO: 3: amino acid sequence of mutant endonuclease NucS from Thermococcus kodakarensis
SEQ ID NO: 4: nucleotide sequence of mutant endonuclease NucS from Thermococcus kodakarensis
SEQ ID NO: 5: TK1898-F primer
SEQ ID NO: 6: TK1898-R primer
SEQ ID NO: 7: Substrate for TKO NucS, named as Cy5-45-nondamaged. "5'-end is labeled with Cy5"
SEQ ID NO: 8: Substrate for TKO NucS, named as Cy5-45-mismatch. "5'-end is labeled with Cy5"
SEQ ID NO: 9: Substrate for TKO NucS, named as Cy5-temp45. "5'-end is labeled with Cy5"
SEQ ID NO: 10: Substrate for TKO NucS, named as temp45-normal.
SEQ ID NO: 11: Substrate for TKO NucS, named as temp45-21A.
SEQ ID NO: 12: Substrate for TKO NucS, named as temp45-21C.
SEQ ID NO: 13: Substrate for TKO NucS, named as temp45-21G.
SEQ ID NO: 14: Substrate for TKO NucS, named as 45-mismatch25C.
SEQ ID NO: 15: Substrate for TKO NucS, named as 45-mismatch25T.
SEQ ID NO: 16: Substrate for TKO NucS, named as nondamaged-22C.
SEQ ID NO: 17: Substrate for TKO NucS, named as Cy5-15binding. "5'-end is labeled with Cy5"
SEQ ID NO: 18: Substrate for TKO NucS, named as 15binding_AT.
SEQ ID NO: 19: Substrate for TKO NucS, named as 15binding_AA.
SEQ ID NO: 20: Substrate for TKO NucS, named as 15binding_CA.
SEQ ID NO: 21: Substrate for TKO NucS, named as 15binding_GA.
SEQ ID NO: 22: Substrate for TKO NucS, named as 15binding_GT.
SEQ ID NO: 23: Substrate for TKO NucS, named as 15binding_GG.
SEQ ID NO: 24: Substrate for TKO NucS, named as 15binding_CT.
SEQ ID NO: 25: Substrate for TKO NucS, named as 15binding_TT.
SEQ ID NO: 26: Substrate for TKO NucS, named as 15binding_CC.
SEQ ID NO: 27: A47-F primer
SEQ ID NO: 28: A47-R primer
SEQ ID NO: 29: A76-F primer
SEQ ID NO: 30: A76-R primer
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【国際調査報告】

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