特表-16047637IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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再表2016-47637新規な寿命延長剤、該寿命延長剤を用いた寿命延長方法、新規なデュアルオキシダーゼ活性化剤、デュアルオキシダーゼの活性化方法、寿命延長剤の製造、及びデュアルオキシダーゼ活性化剤の製造
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  • 再表WO2016047637-新規な寿命延長剤、該寿命延長剤を用いた寿命延長方法、新規なデュアルオキシダーゼ活性化剤、デュアルオキシダーゼの活性化方法、寿命延長剤の製造、及びデュアルオキシダーゼ活性化剤の製造 図000014
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  • 再表WO2016047637-新規な寿命延長剤、該寿命延長剤を用いた寿命延長方法、新規なデュアルオキシダーゼ活性化剤、デュアルオキシダーゼの活性化方法、寿命延長剤の製造、及びデュアルオキシダーゼ活性化剤の製造 図000016
  • 再表WO2016047637-新規な寿命延長剤、該寿命延長剤を用いた寿命延長方法、新規なデュアルオキシダーゼ活性化剤、デュアルオキシダーゼの活性化方法、寿命延長剤の製造、及びデュアルオキシダーゼ活性化剤の製造 図000017
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2016年3月31日
【発行日】2017年6月29日
(54)【発明の名称】新規な寿命延長剤、該寿命延長剤を用いた寿命延長方法、新規なデュアルオキシダーゼ活性化剤、デュアルオキシダーゼの活性化方法、寿命延長剤の製造、及びデュアルオキシダーゼ活性化剤の製造
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4745 20060101AFI20170602BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170602BHJP
【FI】
   A61K31/4745
   A61P43/00 111
   A61P43/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
【出願番号】特願2016-550325(P2016-550325)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2015年9月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-193034(P2014-193034)
(32)【優先日】2014年9月22日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内2丁目5番2号
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】森 郁恵
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番 国立大学法人名古屋大学内
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 寛之
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番 国立大学法人名古屋大学内
(72)【発明者】
【氏名】池本 一人
【住所又は居所】新潟県新潟市北区太夫浜新割182番地 三菱瓦斯化学株式会社 新潟研究所内
(72)【発明者】
【氏名】中野 昌彦
【住所又は居所】新潟県新潟市北区太夫浜新割182番地 三菱瓦斯化学株式会社 新潟研究所内
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086GA13
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC19
4C086ZC80
(57)【要約】
ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体を含む、寿命延長剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体を含む、寿命延長剤。
【請求項2】
前記ピロロキノリンキノン及び前記ピロロキノリンキノンの誘導体が、下記一般式(1)、(2)、若しくは(3)で表される化合物又はその塩である、請求項1に記載の寿命延長剤。
【化1】

(上記一般式(1)、(2)、及び(3)中、Rは、各々独立して、水素原子又は炭素原子数1〜10の置換基を示し、R’は、炭素原子数1〜10の置換基を示す。)
【請求項3】
前記ピロロキノリンキノンの誘導体が、ピロロキノリンキノンナトリウム塩を含む、請求項1又は2に記載の寿命延長剤。
【請求項4】
前記ピロロキノリンキノンナトリウム塩が、粉末X線回折におけるCu Kα放射線測定で、2θ 9.1±0.2°、10.3±0.2°、13.8±0.2°、24.0±0.2°を示す結晶を含む、請求項3に記載の寿命延長剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の寿命延長剤を使用する、寿命延長方法。
【請求項6】
被検対象者又は動物に対し、前記寿命延長剤を投与することにより、前記被検対象者又は前記動物の寿命を延長する、請求項5に記載の寿命延長方法。
【請求項7】
被検対象者又は動物に対し、前記寿命延長剤を投与することにより、デュアルオキシダーゼを活性化し、前記被検対象者又は前記動物の寿命を延長する、請求項5又は6に記載の寿命延長方法。
【請求項8】
ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体を含む、デュアルオキシダーゼ活性化剤。
【請求項9】
前記ピロロキノリンキノン及び前記ピロロキノリンキノンの誘導体が、下記一般式(1)、(2)、若しくは(3)で表される化合物又はその塩である、請求項8に記載のデュアルオキシダーゼ活性化剤。
【化2】

(上記一般式(1)、(2)、及び(3)中、Rは、各々独立して、水素原子又は炭素原子数1〜10の置換基を示し、R’は、炭素原子数1〜10の置換基を示す。)
【請求項10】
前記ピロロキノリンキノンの誘導体が、ピロロキノリンキノンナトリウム塩を含む、請求項8又は9に記載のデュアルオキシダーゼ活性化剤。
【請求項11】
前記ピロロキノリンキノンナトリウム塩が、粉末X線回折におけるCu Kα放射線測定で、2θ 9.1±0.2°、10.3±0.2°、13.8±0.2°、24.0±0.2°を示す結晶を含む、請求項9に記載のデュアルオキシダーゼ活性化剤。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項に記載のデュアルオキシダーゼ活性化剤を使用する、デュアルオキシダーゼの活性化方法。
【請求項13】
寿命延長剤の製造のための、ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体の使用。
【請求項14】
デュアルオキシダーゼの活性化により被対象者又は動物の寿命を延長する寿命延長剤の製造のための、ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体の使用。
【請求項15】
デュアルオキシダーゼ活性化剤の製造のための、ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な寿命延長剤、該寿命延長剤を用いた寿命延長方法、新規なデュアルオキシダーゼ活性化剤、デュアルオキシダーゼの活性化方法、寿命延長剤の製造、及びデュアルオキシダーゼ活性化剤の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
寿命を延長する試みは多く行われてきたが、科学的に寿命を延ばすことが可能であるとされるようになったのは最近である。
【0003】
これまでに生物種を問わず、寿命の延長を引き起こす方法として、カロリー制限が知られている。カロリー制限により、酵母、輪形動物、グッピー、クモ、ショウジョウバエ、ハムスター、ラット、マウスを含む広範囲の異なる生物において、平均寿命及び/又は最大寿命が拡大する。ここで「カロリー制限」とは、糖質、脂質、又はタンパク質に由来する総カロリーを、自由に食餌を与えた対照動物のカロリーの25%〜60%低いレベルまで制限することをいう。
【0004】
また、カロリー制限により、寿命の拡大の他に、加齢関連疾患の発症も同様に遅れ、それによってより長期間より健康な生活が得られる。例えば、哺乳動物において、カロリー制限は腎疾患、自己免疫疾患、及び糖尿病を遅らせることが知られている。
【0005】
さらに、カロリー制限は、パーキンソン病及びアルツハイマー病のマウスモデルにおける加齢関連ニューロン喪失をも低減させる。また、哺乳動物における癌のリスクを低下、紫外線に対する暴露後、皮膚及び他の組織におけるDNAの修復を増強することが示されている。
【0006】
カロリー制限が、単細胞生物から非常に複雑な生物(霊長類を含む)までの広範囲の生物に対して作用するということは、寿命を拡大させるプロセスが種を超えて保存されているという観点から重要である。齧歯類において、寿命の拡大は50%に達しうるが、生物がとる必要があるカロリーは通常消費するより少なくとも25%少ないことから、この寿命は空腹や活動制限のようなかなりの犠牲を払って得られる。(特許文献1)
【0007】
そのほかの方法として遺伝子操作によって寿命を延ばすことも可能である。しかし、遺伝子操作は十分に安全なものとは考えられない上、簡単に適用するわけにはいかない。
【0008】
このような欠点を克服する方法として、寿命を延長させる物質が見出されてきた。例えば、レスベラトロールはぶどうの果皮に含まれるポリフェノールで高脂肪食を食べさせたマウスには効果的であることが知られている。このときにはサーチュイン遺伝子を活性化するといわれている。
【0009】
また、糖尿病治療薬であるメトホルミンも寿命を延ばす効果がある。これはAMP−活性化蛋白質キナーゼを増加させていると考えられている。また、免疫抑制作用のあるラパマイシンは寿命を延ばす効果がある。しかし、これらの薬剤は価格が高く投与による副作用も懸念される。したがって安価で副作用がない物質が求められている。(非特許文献1,2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013−100323号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】nature,2009, 460, p392−395
【非特許文献2】nature communication, 2003, DOI10.1038/ncomms3192
【非特許文献3】J.Am.Chem.Soc.,1995 ,117, p3278−3279.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ピロロキノリンキノン(以下、「PQQ」ともいう。)は、下記構造式で表される化合物であり、健康補助食品、化粧品などに有用な物質として注目を集めている。なお、ピロロキノリンキノンはアミノ酸と反応してイミダゾリルキノンを作ることが知られており(非特許文献3)、安定性にややかける面がある。
【化1】
【0013】
現在までに明らかにされているPQQの持つ多様な生理活性作用は細胞、組織レベルの効果が中心であり、動物個体の寿命延長に効果があることは知られていない。また、NADPHオキシダーゼであるデュアルオキシダーゼを活性化することも知られていない。さらに、NADPHオキシダーゼであるデュアルオキシダーゼの活性化が、一般的には活性酸素量を向上させると考えられるにもかかわらず、寿命延長に効果があることも知られていない。
【0014】
本発明は、上記PQQを用いて、新規な寿命延長剤、該寿命延長剤を用いた寿命延長方法、新規なデュアルオキシダーゼ活性化剤、デュアルオキシダーゼの活性化方法、寿命延長剤の製造、及びデュアルオキシダーゼ活性化剤の製造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、PQQが生体に与える影響、特に、生体の寿命に与える影響について鋭意検討した。一般的に、活性酸素が生じると、生体は酸化ストレスを受け、老化・短寿命化につながると考えられている。活性酸素(ROS)を生産し得るタンパク質としては、NADPHオキシダーゼであるデュアルオキシダーゼ等が知られている。活性酸素が老化を促進するという従来の知見によると、デュアルオキシダーゼの活性化は、老化・短寿命化を引き起こすものと考えられる。しかしながら、本発明者らがモデル生物である線虫C.elegansを用いて検討した結果、PQQが、寿命延長をもたらし、その寿命延長はデュアルオキシダーゼ(Bli−3)の活性化に起因することが見出された。すなわち、PQQが、線虫個体内でデュアルオキシダーゼ(Bli−3)を活性化し長寿誘導性ROSを産生することが刺激となり、生体防御系が強化され寿命延長に結実するという知見が得られた。本発明は、当該知見によりなされたものである。
【0016】
すなわち、本発明は以下に示すとおりである。
〔1〕
ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体を含む、寿命延長剤。
〔2〕
前記ピロロキノリンキノン及び前記ピロロキノリンキノンの誘導体が、下記一般式(1)、(2)、若しくは(3)で表される化合物又はその塩である、〔1〕に記載の寿命延長剤。
【化2】
(上記一般式(1)、(2)、及び(3)中、Rは、各々独立して、水素原子又は炭素原子数1〜10の置換基を示し、R’は、炭素原子数1〜10の置換基を示す。)
〔3〕
前記ピロロキノリンキノンの誘導体が、ピロロキノリンキノンナトリウム塩を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の寿命延長剤。
〔4〕
前記ピロロキノリンキノンナトリウム塩が、粉末X線回折におけるCu Kα放射線測定で、2θ 9.1±0.2°、10.3±0.2°、13.8±0.2°、24.0±0.2°を示す結晶を含む、〔3〕に記載の寿命延長剤。
〔5〕
〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の寿命延長剤を使用する、寿命延長方法。
〔6〕
被検対象者又は動物に対し、前記寿命延長剤を投与することにより、前記被検対象者又は前記動物の寿命を延長する、〔5〕に記載の寿命延長方法。
〔7〕
被検対象者又は動物に対し、前記寿命延長剤を投与することにより、デュアルオキシダーゼを活性化し、前記被検対象者又は前記動物の寿命を延長する、〔5〕又は〔6〕に記載の寿命延長方法。
〔8〕
ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体を含む、デュアルオキシダーゼ活性化剤。
〔9〕
前記ピロロキノリンキノン及び前記ピロロキノリンキノンの誘導体が、下記一般式(1)、(2)、若しくは(3)で表される化合物又はその塩である、〔8〕に記載のデュアルオキシダーゼ活性化剤。
【化3】
(上記一般式(1)、(2)、及び(3)中、Rは、各々独立して、水素原子又は炭素原子数1〜10の置換基を示し、R’は、炭素原子数1〜10の置換基を示す。)
〔10〕
前記ピロロキノリンキノンの誘導体が、ピロロキノリンキノンナトリウム塩を含む、〔8〕又は〔9〕に記載のデュアルオキシダーゼ活性化剤。
〔11〕
前記ピロロキノリンキノンナトリウム塩が、粉末X線回折におけるCu Kα放射線測定で、2θ 9.1±0.2°、10.3±0.2°、13.8±0.2°、24.0±0.2°を示す結晶を含む、〔9〕に記載のデュアルオキシダーゼ活性化剤。
〔12〕
〔8〕〜〔11〕のいずれか1項に記載のデュアルオキシダーゼ活性化剤を使用する、デュアルオキシダーゼの活性化方法。
〔13〕
寿命延長剤の製造のための、ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体の使用。
〔14〕
デュアルオキシダーゼの活性化により被対象者又は動物の寿命を延長する寿命延長剤の製造のための、ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体の使用。
〔15〕
デュアルオキシダーゼ活性化剤の製造のための、ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体の使用。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、新規な寿命延長剤、該寿命延長剤を用いた寿命延長方法、新規なデュアルオキシダーゼ活性化剤、デュアルオキシダーゼの活性化方法、寿命延長剤の製造、及びデュアルオキシダーゼ活性化剤の製造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1〜4、比較例1における寿命試験の結果を示すグラフである。
図2】実施例1〜4、比較例1における寿命試験の結果を示すグラフである。
図3】実施例5、比較例2における寿命試験の結果を示すグラフである。
図4】比較例3〜4における寿命試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0020】
〔寿命延長剤〕
本実施形態の寿命延長剤は、ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体を含む。本実施形態の寿命延長剤によれば、寿命延長が可能になり、老化に伴う疾患を防止することが可能となり、強力な薬理作用を有して副作用の危険性が高いものを使用しなくとも、有効な寿命延長効果を得ることができる。
【0021】
本明細書において、「寿命延長」とは、本発明の物質の摂取により誘引される寿命延長をいう。
【0022】
〔デュアルオキシダーゼ活性化剤〕
また、本実施形態のデュアルオキシダーゼ活性化剤は、ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体を含む。
【0023】
本発明者らの知見によると、デュアルオキシダーゼが活性化された後、p38 mitogen-activated protein kinase(p38MAPK)カスケードを経由して、線虫のNrf2に相当するSKN−1が活性化されることが分かった。
【0024】
Nrf2は、哺乳類に存在する塩基性ロイシンジッパー(basic leucine zipper)モチーフを有する転写因子の1つであり、幅広い臓器に発現し、通常、Keap1タンパク質と結合して細胞質に存在するが、親電子物質や酸化ストレスの刺激によって核内へ移行し、小Mafタンパク質とヘテロ二量体を形成して解毒や抗酸化に関連する遺伝子群の発現を誘導する。この転写活性化で、Nrf2の複合体は標的遺伝子群のプロモーター領域に共通して存在する抗酸化剤応答配列(ARE)に結合する。これまでに、Nrf2欠損マウスの解析などから、Nrf2の活性化は、発がん、肝障害、肺障害、炎症などの抑制に寄与していることが示唆されている。Nrf2は、種を越えて、その構造・機能が保存されており、モデル生物である線虫C.elegansにおいてはSKN−1がNrf2に相当する。
【0025】
ストレス応答性転写因子Nrf2の転写のターゲットとなる遺伝子群としては、例えば、GCLM、GCLC、GSR、GSTA1、GPX1、GPX4、HMOX1、NQO1、SRXN1、SQSTM1、SOD1、UGT1A6、NOS2、NOS3及びPTGS2が挙げられる。
【0026】
GCLM及びGCLC:グルタミン酸システインリガーゼはγ−グルタミルシステインシンテターゼとしても公知であり、グルタチオン(GSH)合成の第1の律速酵素である。この酵素は2つのサブユニット(重い触媒サブユニット(GCLC)及び軽い調節サブユニット(GCLM))からなる。ショウジョウバエでのGCLC又はGCLMの過剰発現は、酸素消費の速度に影響を及ぼすことなく、寿命を延長させる。
【0027】
GSR:クラスIピリジンヌクレオチド−ジスルフィドオキシドレダクターゼファミリーのメンバーであるグルタチオンレダクターゼ(GSR)をコードする。これは細胞性抗酸化物質防御で中心的な酵素であり、酸化したグルタチオンジスルフィド(GSSG)をスルフヒドリル形のGSHに還元する。
【0028】
GSTA1:αクラスグルタチオンSトランスフェラーゼ(alpha class glutathione S-tranferase)をコードし、それは発がん物質、治療薬、環境毒素及び酸化的ストレスの生成物を含めた求電子化合物の、GSHとのコンジュゲーションによる解毒において機能する。肝臓でビリルビン及び特定の抗がん薬を代謝することに加えて、αクラスグルタチオンSトランスフェラーゼはグルタチオンペルオキシダーゼ活性を示し、それによって反応性酸素種及び過酸化生成物から細胞を保護する。
【0029】
GPX1:電子供与体としてGSHを利用して、傷害性反応性酸素種である過酸化水素(H)及び合成有機過酸化物の除去を担う内在性の抗酸化物質酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼをコードする。
【0030】
GPX4:GPX1と同じ活性を有するが、代謝性毒物である脂肪酸ヒドロペルオキシド及びコレステロールヒドロペルオキシドを除去するさらなる能力を有する、内在性の抗酸化物質酵素であるリン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼをコードする。
【0031】
SOD1:反応性スーパーオキシドラジカル(O)の触媒除去に関与する内在性の抗酸化物質酵素である銅亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ(CuZnSOD1)の可溶性形をコードする。
【0032】
HMOX1:ヘム分解の第1の及び律速性の酵素の誘導可能なアイソフォームであるヘムオキシゲナーゼ(HO−1)をコードする。HO−1は、強力な抗酸化物質機能及び抗炎症機能も有する。HO−1の誘導は、酸化的ストレスの細胞傷害性及びアポトーシス細胞死から保護する。
【0033】
NQO1:NAD(P)Hデヒドロゲナーゼ(キノン)ファミリーのメンバーであり、細胞質の2電子レダクターゼをコードする。このタンパク質の発現変化は多くの腫瘍で観察されており、アルツハイマー病(AD)とも関連している。
【0034】
SRXN1:肺での酸化的損傷に対する保護にNrf2によって転写制御を受ける重要な分子である。Nrf2活性化に関与するシグナル伝達を、マウス個体で遺伝子ノックアウトあるいは培養細胞系でRNAiにより低下させた場合、SRNX1の発現を減少させる。SRXN1の5’−プロモーター隣接領域に対するコンピューター分析は、高度に保存される複数の抗酸化物質応答エレメント(ARE)を同定した。レポーター及びクロマチン免疫沈降アッセイは、−228位のARE1がNrf2による転写応答のために重要なことを実証した。RNAiによるSRXN1発現の減弱はHに対する毒感受性を高くし、一方、SRXN1の過剰発現はin vitroでH媒介細胞死から保護した。
【0035】
UGT1A6:小さな親油性分子、例えばステロイド、ビリルビン、ホルモン及び薬物を水溶性の排泄可能な代謝産物に転換するグルクロン酸化経路の酵素であるUDP−グルクロノシルトランスフェラーゼをコードする。この遺伝子によってコードされる酵素は、フェノール性及び平面性の化合物に活性がある。
【0036】
NOS2:一酸化窒素は、神経伝達ならびに抗微生物活性及び抗腫瘍活性を含むいくつかの過程で生物学的媒介物質として作用する反応性フリーラジカルである。この遺伝子は、肝臓で高度に発現される誘導可能な一酸化窒素合成酵素(iNOS)をコードする。
【0037】
NOS3:血管拡張のために必要な一酸化窒素の生産を担う内皮由来のNOS(eNOS)をコードする;炎症状態及び加齢で異常調節される。
【0038】
PTGS2:プロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼ(PTGS)はシクロオキシゲナーゼ2(COX2)としても公知であり、プロスタグランジン生合成での鍵となる酵素であり、ジオキシゲナーゼ及びペルオキシダーゼの両方として作用する。PTGSには2つのアイソザイム(構成的PTGS1及び誘導可能なPTGS2)があり、それらは発現の調節及び組織分布が異なる。PTGS2は炎症及びマイトジェネシスに関与するプロスタノイド生合成を担うことが、示唆されている。
【0039】
Nrf2によって転写制御を受ける分子群の中でも、GCLM、GCLC、NOS3による生理応答が顕著で態様として望ましい。
【0040】
本明細書において、「活性化」とは、特定の因子を上方調節することをさす。また、「上方調節」とは、例えば、あるシグナル又は作用因子に応答して、1つ又は複数の遺伝子、及びその結果としてのそれらの遺伝子によってコードされるタンパク質(複数可)の発現または活性が、増加することを指す。
【0041】
〔ピロロキノリンキノン及びその誘導体〕
以下、寿命延長剤、及び、デュアルオキシダーゼ活性化剤において用いられ得るピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体について詳細に説明する。ピロロキノリンキノン及びその誘導体としては、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)、(2)、若しくは(3)で表される化合物又はその塩が挙げられる。
【化4】
(上記一般式(1)、(2)、及び(3)中、Rは、各々独立して、水素原子又は炭素原子数1〜10の置換基を示し、R’は、炭素原子数1〜10の置換基を示す。)
【0042】
Rで示される炭素原子数1〜10の置換基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル、アリルが挙げられる。この中でも、合成の観点から、アルキルが好ましい。なお、Rで示される炭素原子数1〜10の置換基は、炭素原子のほか、酸素原子、窒素原子、水素原子、硫黄原子、リン原子を含んでもよい。
【0043】
〔一般式(1)で表される化合物又はその塩〕
上記一般式(1)中、Rが全て水素原子である化合物は、酸化型ピロロキノリンキノンという。該酸化型ピロロキノリンキノンの塩としては、特に限定されないが、例えば、トリカルボン酸、トリカルボン酸ジ塩、トリカルボン酸モノ塩、トリカルボン酸トリ塩が挙げられる。塩としては、特に限定されないが、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩のようなカチオン性化合物との塩が挙げられる。
【0044】
上記一般式(1)中、1つ以上のRが水素原子であることが好ましい。1以上のRが水素原子である化合物は、溶液中において塩をつくり、イオン性になるためにトリカルボン酸の形態よりも水溶性が向上する傾向にある。
【0045】
上記一般式(1)で表される化合物又はその塩としては、特に限定されないが、例えば、酸化型ピロロキノリンキノン;酸化型ピロロキノリンキノンモノナトリウム、酸化型ピロロキノリンキノンジナトリウム、酸化型ピロロキノリンキノントリナトリウム、酸化型ピロロキノリンキノンジカリウム、酸化型ピロロキノリンキノントリカリウムのような酸化型ピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0046】
このなかでも、入手しやすさの観点から、酸化型ピロロキノリンキノンモノナトリウム、酸化型ピロロキノリンキノンジナトリウム、酸化型ピロロキノリンキノントリナトリウムのような酸化型ピロロキノリンキノンナトリウム塩が好ましい。
【0047】
〔一般式(2)で表される化合物又はその塩〕
上記一般式(2)で表される化合物又はその塩は、ピロロキノリンキノンの誘導体である。R’で示される炭素原子数1〜10の置換基としては、特に限定されないが、例えば、アセチル基、エトキシ基、ケトアルキル基、ヒドロキシアルキル基が挙げられる。この中でも、安定性の観点から、アセチル基、ケトアルキル基が好ましい。なお、R’で示される炭素原子数1〜10の置換基は、炭素原子以外に酸素原子、窒素原子、水素原子、硫黄原子、リン原子を含んでもよい。
【0048】
一般式(2)で表される化合物の塩としては、特に限定されないが、例えば、トリカルボン酸、トリカルボン酸ジ塩、トリカルボン酸モノ塩、トリカルボン酸トリ塩が挙げられる。塩としては、特に限定されないが、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩のようなカチオン性化合物との塩が挙げられる。
【0049】
上記一般式(2)で表される化合物又はその塩としては、特に限定されないが、例えば、R’がアセチル基又はエトキシ基である、トリカルボン酸、トリカルボン酸ジナトリウム塩、トリカルボン酸トリナトリウム塩、トリカルボン酸ジカリウム塩、トリカルボン酸トリカリウム塩が挙げられる。
【0050】
このなかでも、下記一般式(4)で表されるピロロキノリンキノンの誘導体又はその塩(以下、「アセトン付加体」ともいう。)が好ましい。このような化合物であれば、アミノ酸等が存在する環境下においても変質しにくい傾向にある。
【化5】
【0051】
〔一般式(3)で表される化合物又はその塩〕
上記一般式(3)中、Rが全て水素原子である化合物は、酸価型ピロロキノリンキノンが還元されてできた還元型ピロロキノリンキノンという。還元型ピロロキノリンキノンの塩としては、特に限定されないが、例えば、トリカルボン酸、トリカルボン酸ジ塩、トリカルボン酸モノ塩、トリカルボン酸トリ塩が挙げられる。塩としては、特に限定されないが、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩のようなアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩のようなカチオン性化合物との塩が挙げられる。
【0052】
上記一般式(3)中、1つ以上のRが水素原子であることが好ましい。一般式(3)中1以上のRが水素原子である化合物は、溶液中において塩をつくり、イオン性になるためにトリカルボン酸の形態よりも水溶性が向上する傾向にある。
【0053】
上記一般式(3)で表される化合物又はその塩としては、特に限定されないが、例えば、還元型ピロロキノリンキノン;還元型ピロロキノリンキノンモノナトリウム、還元型ピロロキノリンキノンジナトリウム、還元型ピロロキノリンキノントリナトリウム、還元型ピロロキノリンキノンジカリウム、還元型ピロロキノリンキノントリカリウムのような還元型ピロロキノリンキノンのアルカリ金属塩が挙げられる。
【0054】
このなかでも、製造しやすさの観点から、還元型ピロロキノリンキノンモノナトリウム、還元型ピロロキノリンキノンジナトリウム、還元型ピロロキノリンキノントリナトリウムのような還元型ピロロキノリンキノンジナトリウムが好ましい。
【0055】
上記一般式(1)で表される化合物は、キノンを2つ有しているためにアミノ酸と反応しやすく、アミノ酸との反応によって複素環形成が生じイミダゾロキノンになることが知られている。一方で、上記一般式(2)又は(3)で表される化合物は、キノンが1つ又は0であるため、アミノ酸と反応しにくい傾向にある。そのため、温度が高い状態でアミノ酸と混合した場合においても、ピロロキノリンキノン及び該その誘導体が減少しにくく、安定性がより高い傾向にある。アミノ酸は、培地、食品、医薬品などに多く含まれるため、ピロロキノリンキノン及び該その誘導体はアミノ酸と反応しにくいほうが好ましい。また、アミノ酸と反応しにくい上記一般式(2)又は(3)で表される化合物を用いることにより、寿命延長効果がより向上する傾向にある。
【0056】
また、一般式(2)で表される化合物の有するフェノール性水酸基は、空気中の酸素によって酸化され、キノンになりやすい。そのため、一般式(1)、(2)、及び(3)で表される化合物のなかでも、寿命延長効果の観点から一般式(2)で表される化合物がより好ましく、一般式(4)で表される化合物がさらに好ましい。
【0057】
〔粉末X線回折〕
上記一般式(1)で表されるピロロキノリンキノンナトリウム塩は、粉末X線回折におけるCu−Kα放射線測定で2θ 9.1±0.2°、10.3±0.2°、13.8±0.2°、24.0±0.2°を示す結晶であることが好ましい。このようなピロロキノリンキノンナトリウム塩を用いることにより、安定性がより向上する傾向にある。このような結晶は、例えば再表2011/007633に記載の方法により得ることができる。なお、「ピロロキノリンキノンナトリウム塩」とは、ピロロキノリンキノンモノナトリウム塩、ピロロキノリンキノンジナトリウム塩、及びピロロキノリンキノントリナトリウム塩を意味する。
【0058】
〔ピロロキノリンキノン及びその誘導体の製造方法〕
ピロロキノリンキノンの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、有機化学的に合成する方法又は発酵法が挙げられる。このなかで発酵法とは、例えば、メタノール資化性を有し、かつロロキノリンキノンを生産する能力を有する細菌を、炭素源としてメタノールを使用して培養することによりPQQを製造する方法である。
【0059】
ピロロキノリンキノンの誘導体、具体的にはピロロキノリンキノンのエステル体等又はピロロキノリンキノンの塩は、このようにして得られたピロロキノリンキノンを出発物質として、常法に従って合成することができる。ピロロキノリンキノン及びその誘導体は、カラムクロマトグラフィー、再結晶法、又は溶媒抽出法等の通常の方法により、反応液中から分離、精製することができる。また、それらの同定には、元素分析、NMRスペクトル、IRスペクトル、質量分析等の各種手段が用いられる。
【0060】
〔用途:PQQの使用〕
本実施形態は、寿命延長剤の製造のための、ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体の使用、デュアルオキシダーゼの活性化により被対象者又は動物の寿命を延長する寿命延長剤の製造のための、ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体の使用、デュアルオキシダーゼ活性化剤の製造のための、ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体の使用を含む。
【0061】
寿命延長剤又はデュアルオキシダーゼ活性化剤は、ヒト用又は動物用の、食品、機能性食品、医薬品又は医薬部外品として使用することができる。ここでいう機能性食品とは、健康食品、栄養補助食品、栄養機能食品、栄養保険食品等、健康の維持あるいは食事にかわり栄養補給の目的で摂取する食品を意味する。具体的な形態としてはカプセル剤、タブレット、チュアブル、錠剤、ドリンク剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
医薬品用途としては、寿命延長剤又はデュアルオキシダーゼ活性化剤は、経口投与、注射、皮膚吸収等の方法で使用することができる。経口投与の場合、寿命延長剤又はデュアルオキシダーゼ活性化剤はハードカプセル、ソフトカプセル、錠剤の形で他の物質と混合して用いることができる。また、寿命延長剤又はデュアルオキシダーゼ活性化剤は、その高い水溶性を利用して、飲料、点滴液、注射液として使用することもできる。さらに、寿命延長剤又はデュアルオキシダーゼ活性化剤は乳化物と混合し、化粧用クリーム、ケーキに配合すること、または、米、麦の粉と混合も容易でそれを利用した食品に使用することができる。
【0063】
寿命延長剤又はデュアルオキシダーゼ活性化剤を線虫に対して使用する場合は、培地中に混合する方法が挙げられる。具体的にはアミノ酸を多く含むペプトン、コレステロール、無機イオンを含む培地に、寿命延長剤又はデュアルオキシダーゼ活性化剤を溶かし、その状態で生育するえさの大腸菌を介して、線虫に、寿命延長剤又はデュアルオキシダーゼ活性化剤を、経口吸収、もしくは培地からの経皮吸収させることができる。培地中に混合する量としては、好ましくは1〜100mMであり、より好ましくは1〜20mMであり、更に好ましくは1〜15mMであり、より好ましくは1〜5mMである。
【0064】
寿命延長剤又はデュアルオキシダーゼ活性化剤を動物に対して使用する場合、その投与量は、対象動物により変化する。対象動物が人である場合には、その投与量は、適用疾患、患者の年齢、性別又は体重、症状の重篤度、投与経路など、様々な要因により変化する。対象動物が人である場合においては、典型的には、体重約60kgの成人に対し、1日当たり0.25〜1000mg、好ましくは1〜250mg、より好ましくは10〜100mgの寿命延長剤又はNrf2活性化剤が投与される。寿命延長剤又はNrf2活性化剤は1日1回又は複数回投与することができる。
【0065】
〔寿命延長方法〕
本実施形態の寿命延長方法は、上記寿命延長剤を使用し、好ましくは上記一般式(1)、(2)、及び(3)で表される化合物又はその塩を使用する。本発明で寿命延長効果は、真核生物に有効であり、好ましくは動物である。
【0066】
本実施形態の寿命延長方法によれば、寿命を延長させることができ、さらに、生物を加齢関連疾患から保護することができる。また、生物における寿命を延長させて、加齢関連疾患に関連した合併症の発症及び多くを遅らせることが可能となる。
【0067】
具体的な方法としては、特に限定されないが、例えば、上記寿命延長剤を動物又は患者に対して上記〔用途〕で記載したような方法により、治療又は処置を目的として投与する方法が挙げられる。すなわち、被検対象者又は動物に対し、前記寿命延長剤を投与することにより、前記被検対象者又は前記動物の寿命を延長する方法、より具体的には、被検対象者又は動物に対し、前記寿命延長剤を投与することにより、デュアルオキシダーゼを活性化し、前記被検対象者又は前記動物の寿命を延長する方法が挙げられる。
【0068】
なお、本明細書で「動物」又は「患者」とは、鳥類、魚類、哺乳類などの脊椎動物、昆虫、線虫などの無脊椎動物に使用可能である。なお、本実施形態の寿命延長方法が治療方法に当たる場合には、対象動物からヒトを除く。
【0069】
本明細書で「治療」又は「処置」とは、以下のものが挙げられるが特に制限されない。
(a)哺乳動物において病態が生じることを予防するステップ、具体的にはそのような哺乳動物が病態を罹患しやすいが、罹患しているとまだ診断されていない場合;
(b)病態を抑制するステップ、例えばその進行を止めるステップ;及び/又は
(c)病態を軽減するステップ、例えば病態の退行を所望の終点に至るまで生じさせるステップ、を含む哺乳動物における病態の処置を含む。治療は、疾患の症状の回復(例えば疼痛又は不快感の緩和)も含み、そのような回復は、疾患に直接効果を与える又は与えない場合がある(例えば原因、伝染、発現など)。
【0070】
〔デュアルオキシダーゼ活性化方法〕
本実施形態のデュアルオキシダーゼ活性化方法は、ピロロキノリンキノン及び/又は該ピロロキノリンキノンの誘導体(デュアルオキシダーゼ活性化剤)を使用し、好ましくは、上記一般式(1)、(2)、及び(3)で表される化合物又はその塩を使用する。
【0071】
具体的な方法としては、特に限定されないが、例えば、上記デュアルオキシダーゼ活性化剤を動物に対して上記〔用途〕で記載したような方法により使用(投与)する方法が挙げられる。
【0072】
加齢の過程が生物体のレベルで現れ得る1つの様式としては、細胞性損傷の増加をもたらす、酸化的ストレス及び求電子性傷害へ応答する能力の変化である。加齢によるこの変化は、組織を構成し、器官系でそれらの機能に寄与する様々な細胞のレベルで生じる。細胞の活性、構造及び独自性(identity)は、遺伝子発現によって調節される、特異的なタンパク質に由来する。そのため、細胞の構造及び機能における年齢に関連した変化は、遺伝子発現の変化に根本が見出されるともいえる。
【0073】
このようにデュアルオキシダーゼ活性化方法は、寿命延長効果と共に加齢による疾患の抑制に有効である。より具体的には、加齢が危険因子として考えられる疾患全般に有効である。このような疾患としては、特に限定されないが、例えば、アルツハイマー、パーキンソン病、心筋梗塞、糖尿病等である。
【0074】
また、デュアルオキシダーゼ活性化方法は、デュアルオキシダーゼの発現及び/又は機能、Nrf2の発現及び/又は機能に関連する、疾患又は障害を、予防又は治療するために使用される。ここで疾患又は障害とは、デュアルオキシダーゼの変異体又は正常なデュアルオキシダーゼの、又は、Nrf2の変異体又は正常なNrf2の、異常な発現及び/又は機能に関連するものを含む。特に、Nrf2は、成体または細胞の酸化還元状態に応答する転写因子で、酸化ストレスに対する防御を構成する一連の抗酸化性遺伝子及び細胞保護的酵素を上方制御する。Nrf2を調節することは、酸化ストレスに関連する疾患又は障害の治療において重要である。
【0075】
本実施形態の対象とする疾患及び障害としては、特に限定されないが、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、多発性硬化症、肝臓の疾患又は障害、胃腸の疾患又は障害、糖尿病、自己免疫、免疫に関連する疾患又は障害、免疫不全(例えば、AIDS)、神経性の疾患又は障害、神経変性の疾患又は障害、酸化ストレスに関連する疾患又は障害又は状態、眼疾患(例えば、加齢黄斑変性症、白内障、光網膜症、未熟児網膜症など)、皮膚疾患、喘息、動脈硬化症、慢性の炎症性の疾患又は状態(例えば、血管炎、肺気管支炎、関節リウマチ、変形性関節症、肝炎、膵炎、皮膚炎、食道炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、結膜炎など)、神経の修復及び麻痺、神経内分泌分化、炎症性疾患、筋肉の疾患又は障害、感染性生物に関連する疾患又は障害、老人斑、脳アミロイド血管症、アテローム性動脈硬化症、神経膠芽腫、アミロイド沈着、神経原線維変化、認知症、絨毛癌、星状細胞腫、アミロイドーシス、高脂血症、悪性形質転換、動脈硬化巣、アテローム硬化性閉塞、転移、心筋梗塞、肺線維症、壊死、ショック、メラノーマ、結腸直腸癌、遺伝子感受性、乾癬、異常な細胞増殖に関連する疾患又は障害(例えば、癌、乾癬など)、癌(例えば、前立腺癌、肺癌、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、白血病など)、炎症、神経膠腫、癌腫、神経病理、腫瘍、血管疾患、細胞傷害、脳腫瘍、高コレステロール血症、脂肪肉腫、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、糸球体腎炎、静脈血栓症、甲状腺機能不全、及び病的過程を含む。
【0076】
本明細書において使用される用語「癌」は、任意の悪性腫瘍、詳細には肺、腎臓又は甲状腺において生じる悪性腫瘍を意味する。癌は、「腫瘍」又は癌の悪性細胞を含む組織として現れる。腫瘍の例は、これだけに限らないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏枝神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫及び網膜芽細胞腫などの肉腫及び癌腫を含む。本明細書において使用される「癌」、「新生物」及び「腫瘍」は、互換的に使用され、単数形又は複数形のいずれかで、宿主生物体に対して病的になる悪性変換を受けている細胞を意味する。原発癌細胞(すなわち、悪性変換部位の近くから得られた細胞)は、よく確立された技法、具体的には組織学的検査によって、非癌細胞と容易に区別されうる。本明細書において使用される癌細胞の定義は、原発癌細胞だけでなく、癌細胞祖先由来の任意の細胞も含む。これは転移した癌細胞、ならびに癌細胞由来のin vitro培養物及び細胞株を含む。通常固形腫瘍として現れる種類の癌に言及する場合、「臨床的に検出可能な」腫瘍は、CATスキャン、核磁気共鳴画像法、X線、超音波又は触診などの手順によって腫瘍量に基づいて検出することができる腫瘍、及び/又は患者から得られた試料中に1種又は複数種の癌特異的抗原が発現することにより検出可能な腫瘍である。
【0077】
「神経性の疾患又は障害」は、任意の神経系及び/又は視覚系の疾患又は障害を意味する。「神経性の疾患又は障害」は、中枢神経系(脳、脳幹及び小脳)、末梢神経系(脳神経を含む)及び自律神経系(その一部は中枢神経系及び末梢神経系の両方に位置する)に関わる疾患又は障害を含む。神経性の疾患又は障害は、これだけに限らないが、後天性てんかん性失語症;急性播種性脳脊髄炎;副腎白質ジストロフィー;加齢黄斑変性症;脳梁欠損症;失認症;アイカルディ症候群;アレキサンダー病;アルパース病;交代性片麻痺;アルツハイマー病;血管性認知症;筋萎縮性側索硬化症;無脳症;アンジェルマン症候群;血管腫症;無酸素症;失語症;失行症;くも膜嚢胞;くも膜炎;アーノルド・キアリ奇形;動静脈奇形;アスペルガー症候群;毛細血管拡張性運動失調症;注意欠陥多動性障害;自閉症;自律神経障害;背痛;バッテン病;ベーチェット病;ベル麻痺;良性本態性眼瞼痙攣;良性病巣;筋萎縮症;良性頭蓋内圧亢進;ビンスワンガー病;眼瞼痙攣;ブロッホ・ズルツベルガー症候群;腕神経叢損傷;脳膿瘍;脳損傷;脳腫瘍(多形神経膠芽腫を含む);脊椎腫瘍;ブラウン・セカール症候群;カナバン病;手根管症候群;灼熱痛;中枢性疼痛症候群;橋中心髄鞘崩壊症;頭部の障害;脳動脈瘤;脳動脈硬化症;大脳萎縮症;脳性巨人症;脳性麻痺;シャルコー・マリー・トゥース病;化学療法誘発性のニューロパチー及び神経因性疼痛;キアリ奇形;舞踏病;慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー;慢性疼痛;慢性局所疼痛症候群;コフィン・ローリー症候群;遷延性植物状態を含めた昏睡;先天性顔面両側麻痺;大脳皮質基底核変性症;頭蓋動脈炎;頭蓋骨早期癒合症;クロイツフェルト・ヤコブ病;累積外傷性障害;クッシング症候群;巨細胞封入体病;サイトメガロウイルス感染症;ダンシングアイズ・ダンシングフィート症候群(dancing eyes-dancing feet syndrome);ダンディ・ウォーカー症候群;ドーソン病(Dawson disease);ド・モルシア症候群(De Morsier's syndrome);デジェリン・クルンプケ麻痺(Dejerine-Klumke palsy);認知症;皮膚筋炎;糖尿病性神経障害;びまん性硬化症;自律神経障害;書字障害;失読症;ジストニア;早期乳児てんかん性脳症;エンプティセラ症候群;脳炎;脳ヘルニア;脳三叉神経領域血管腫症;てんかん;エルブ麻痺;本態性振戦症;ファブリー病;ファール症候群;失神;家族性痙性麻痺;熱性痙攣;フィッシャー症候群;フリードライヒ失調症;前頭側頭型認知症及び他の「タウオパチー」;ゴーシェ病;ゲルストマン症候群;巨細胞性動脈炎;巨細胞封入体病;グロボイド細胞白質ジストロフィー;ギラン・バレー症候群;HTLV-1関連脊髄症;ハラーホルデン・スパッツ症候群;頭部損傷;頭痛;片側顔面痙攣;遺伝性痙性対麻痺;多発神経炎型遺伝性運動失調症;耳帯状疱疹;帯状疱疹;平山症候群(Hirayama syndrome);HIV関連認知症及びHIV関連ニューロパチー(AIDSの神経症状も);全前脳症;ハンチントン病及び他のポリグルタミン反復疾患;水無脳症;水頭症;副腎皮質ホルモン過剰症;低酸素症;免疫介在性脳脊髄炎;封入体筋炎;色素失調症;乳児フィタン酸蓄積症;乳児レフスム病;点頭てんかん;炎症性ミオパチー;頭蓋内嚢胞;頭蓋内圧亢進;ジュベール症候群;カーンズ・セイヤー症候群;ケネディ病;キンズボーン症候群(Kinsboume syndrome);クリッペル・ファイル症候群;クラッベ病;クーゲルベルク・ヴェランダー病;クールー病;ラフォラ病;ランバート・イートン症候群;ランドウ・クレフナー症候群;延髄外側(ワレンベルグ)症候群;学習障害;リー病;レンノックス・ガストー症候群;レッシュ・ナイハン症候群;白質ジストロフィー;レビー小体型認知症;脳回欠損;閉じ込め症候群;ルー・ゲーリック病(すなわち、運動ニューロン疾患又は筋萎縮性側索硬化症);腰部椎間板症;ライム病-神経性後遺症;マシャド・ジョセフ病;巨大脳髄症;巨脳症;メルカーソン・ローゼンタール症候群;メニエール病;髄膜炎;メンケス病;異染性白質ジストロフィー;小頭症;片頭痛;ミラー・フィッシャー症候群;小発作;ミトコンドリア筋症;メビウス症候群;単肢筋萎縮症;運動ニューロン疾患;もやもや病;ムコ多糖症;多発脳梗塞性認知症;多巣性運動ニューロパチー;多発性硬化症及び他の脱髄性疾患;体位性低血圧を伴う多系統萎縮症;筋ジストロフィー;重症筋無力症;ミエリン分解性びまん性硬化症(myelinoclastic diffuse sclerosis);乳児ミオクローヌス性脳症;ミオクローヌス;ミオパチー;先天性筋緊張症;ナルコレプシー;神経線維腫症;神経遮断薬悪性症候群;AIDSの神経症状;ループスの神経性後遺症;神経性筋強直症;ニューロンセロイド脂褐素症;ニューロン遊走障害;ニーマン・ピック病;オサリバン・マクラウド症候群(O'Sullivan-McLeod syndrome);後頭神経痛;潜在性脊椎癒合不全の続発;大田原症候群;オリーブ橋小脳萎縮症;眼球クローヌス・ミオクローヌス;視神経炎;起立性低血圧症;オーバーユース症候群;感覚異常症;神経変性の疾患又は障害(パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、認知症、多発性硬化症及び神経細胞死に関連する他の疾患又は障害);先天性パラミオトニア;腫瘍随伴疾患;発作;パリー・ロンベルク症候群;ペリツェウス・メルツバッヘル病;周期性四肢麻痺;末梢性ニューロパチー;有痛性ニューロパチー及び神経因性疼痛;遷延性植物状態;広汎性発達障害;光くしゃみ反射;フィタン酸蓄積症;ピック病;はさまれた神経(pinched nerve);下垂体腫瘍;多発性筋炎;孔脳症;ポリオ後症候群;ヘルペス後神経痛;麻疹後脳脊髄炎;体位性低血圧症;プラダー・ウィリー症候群;原発性側索硬化症;プリオン病;進行性顔面片側萎縮症;進行性多巣性白質脳症;進行性硬化性ポリオジストロフィー(progressive sclerosing poliodystrophy);進行性核上性麻痺;偽脳腫瘍;ラムゼイ・ハント症候群(I型及びII型);ラスムッセン脳炎;反射性交感神経性ジストロフィー症候群;レフサム病;反復運動障害(repetitive motion disorder);反復ストレス傷害;レストレスレッグス症候群;レトロウイルス関連脊髄症(retrovirus-associated myelopathy);レット症候群;ライ症候群;舞踏病;サンドホフ病;シルダー病;裂脳症;中隔視神経異形成症;揺さぶられっ子症候群;帯状ヘルペス;シャイ・ドレーガー症候群;シェーグレン症候群;睡眠時無呼吸;ソトス症候群;痙縮;二分脊椎症;脊髄損傷;脊髄腫瘍;脊髄性筋萎縮症;全身硬直症候群;脳卒中;スタージ・ウェーバー症候群;亜急性硬化性全脳炎;皮質下動脈硬化性脳症;シドナム舞踏病;失神;脊髄空洞症;遅発性ジスキネジア;テイ・サックス病;側頭動脈炎;脊髄係留症候群;トムゼン病;胸郭出口症候群;有痛性チック;トッド麻痺;トゥレット症候群;一過性脳虚血発作;伝達性海綿状脳症;横断性脊髄炎;外傷性脳損傷;振戦;三叉神経痛;熱帯性痙性不全対麻痺症;結節性硬化症;血管性認知症(多発脳梗塞性認知症);側頭動脈炎を含めた脈管炎;フォンヒッペル・リンダウ病;ワレンベルグ症候群;ウェルドニッヒ・ホフマン病;ウエスト症候群;むち打ち症;ウィリアムズ症候群;ウィルソン病;ならびにツェルウェガー症候群を含む。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0079】
本実施例で用いるPQQジナトリウム塩としては、三菱瓦斯化学製BioPQQを使用した。なお、その他の化合物については、特に断りがない限り、和光純薬製の試薬を用いた。
【0080】
〔粉末X線回折におけるCu Kα放射線測定〕
PQQジナトリウム塩の粉末X線回折におけるCu Kα放射線測定を以下に示す条件で測定した。その結果、2θ 9.1°、10.3°、13.8°、24.0°を示す結晶であった。
(測定条件)
装置 :株式会社リガク製RINT2000
X線 :Cu/管電圧40kV/管電流100mA
入射スリット :2/3°
散乱スリット :2/3°
受光スリット :0.3mm
スキャンスピード:4.000°/min
サンプリング幅 :0.02
【0081】
〔紫外可視(UV)スペクトル分析〕
紫外可視スペクトルは、UVスペクトルメーター島津製UV1800を用いて測定した。
【0082】
〔PQQ分析〕
PQQナトリウム塩の分析は以下の分析条件で行った。PQQ濃度、及び純度を、高速液体クロマトグラフィーにより以下に示す条件で測定した。
(測定条件)
装置 : 島津製作所、高速液体クロマトグラフィー、LC−2010
カラム :YMC−Pack ODS−A、150x4.6mm I.D.
測定温度:40℃
検出 :259nmにおける吸光度
溶離液 :30mM 酢酸/70mM 酢酸アンモニウム (pH5.1)
溶出速度:1.5mL/min
【0083】
次に、同じ溶液に含まれるNa濃度はホリバ製ナトリウム電極で測定した。
【0084】
また、上記の溶液中に含まれるPQQとNaの濃度から、PQQナトリウム塩に含まれるPQQとNaの物質量比を求めた。この物質量比が2.0±0.2であればPQQジナトリウム塩であり、3.0±0.2であればPQQトリナトリウム塩であると判断した。
【0085】
〔製造例1:還元型ピロロキノリンキノン〕
PQQジナトリウム塩(三菱瓦斯化学製BioPQQ)5gと水1Lとを混合し、得られた水溶液を70℃に加温した。この水溶液に対し、アスコルビン酸50gと水0.2Lとを含む混合液を混合した。得られた水溶液を70℃で3日反応させた後、2N塩酸を10mL加え2時間反応させた。その後、室温に戻し、水溶液中に析出した固体をろ過し、2N塩酸、エタノールで洗った。得られた固体を減圧乾燥して、下記一般式(4)で表される還元型ピロロキノリンキノン固体3.6gを得た。
【化6】
【0086】
〔製造例2:ピロロキノリンキノンのアセトン付加体〕
PQQジナトリウム塩(三菱瓦斯化学製BioPQQ)11.2gと水1Lとを混合し、水酸化ナトリウムを加え、pH9の水溶液を得た。得られた水溶液に、アセトン200g加えると、水溶液は20分には赤から薄い黄色に変色した。変色後の水溶液に塩酸を加え、pHを2.5とした。この水溶液から溶媒を留去して全体の重量が400gになるまで濃縮した。濃縮した水溶液中に析出した黄色い固体を減圧乾燥して、下記一般式(5)で表されるピロロキノリンキノンのアセトン付加体の個体8.01gを得た。
【化7】
【0087】
〔製造例3:イミダゾロキノン〕
PQQジナトリウム塩(三菱瓦斯化学製BioPQQ)100gとグリシン200gと水0.5Lとを混合し、pH4.8の水溶液を得た。得られた水溶液を30分攪拌したところ、泡が出て水溶液は固まった。得られた混合物を70℃に加熱して、3日反応させた。その後、混合物に10質量%NaCl水を1000g加え、固体を濾過した。濾過で得られた固体に25質量%NaOH水120gと水30gとを混合し、pH10.8の水溶液を得た。得られた水溶液を70℃に加温して一晩放置後、析出した固体を濾過し、2−プロパノールで洗い、さらにエタノール400mLで洗った。得られた固体と水500mLとNaOH41.5gとを混合し、pH10.3の水溶液を得た。得られた水溶液を、70℃で一晩静置した。その後、水溶液を氷で冷やし、析出した固体を濾過し、2−プロパノールで洗浄した。得られた固体を70℃で減圧乾燥して、65.8gの固体を得た。得られた固体をLC,Naイオン分析により分析し、下記一般式(6)で表されるイミダゾロキノン(以下、IPQと記すことがある)のトリナトリウム塩であることが確認された。
【化8】
【0088】
〔実施例1〜4、比較例1:ピロロキノリンキノンジナトリウム塩〕
〔寿命試験〕
〔線虫用培地の作製〕
ピロロキノリンキノンジナトリウムを水と水酸化ナトリウムとを混合し、pH6の試験サンプル濃縮液1を得た。
【0089】
試験サンプル濃縮液1は、ピロロキノリンキノンジナトリウム塩の含有量が30mMになるように調整した。また、試験サンプル濃縮液1は、オートクレーブ滅菌により使用した。
【0090】
フラスコ中に、NaCl7.2g、Agar48g、Bactopeptone(BD社製)6gを2.4Lからサンプル濃縮液添加分を除いた水を加え、120℃で20分以上オートクレーブにかけ、その後、フラスコの表面温度が45℃程度になるまで冷やした。このフラスコに、1Mのリン酸カリウム溶液60mL、1MのCaCl溶液2.4mL、1MのMgSO溶液2.4mL、750mg/150mLのコレステロール溶液2.4mL、30mMの試験サンプル濃縮液1を所定量加えて、培地溶液を得た。なお、試験サンプル濃縮液1の添加量は、培地溶液中のピロロキノリンキノンジナトリウム塩の濃度が0mM(比較例1)、0.1mM(実施例1)、1.0mM(実施例2)、3.0mM(実施例3)、及び5.0mM(実施例4)となるように調整した。フラスコの表面温度が40−41℃に達するまでさらに冷却し、培地溶液を14mLずつ、直径6cmポリスチレン製シャーレに加え、室温に冷やし、異なる濃度のピロロキノリンキノンジナトリウム塩を含む培地を有するシャーレを作製した。
【0091】
一方で、LB培地(Luria-Bertani broth)で培養した大腸菌液に、上記作製したシャーレの培地とピロロキノリンキノンジナトリウム塩の濃度が同濃度になるよう試験サンプル濃縮液1を添加した。得られた大腸菌液100μLをシャーレの中心に約2cm直径の円を描くようにまいた。このシャーレを常温で保存し、作製2〜4日後に下記線虫試験に使用した。
【0092】
〔線虫試験〕
(シンクロナイズ(年齢の調整))
実験開始時の線虫個体の年齢を同期させるため、産卵させたあと親虫を取り除き、孵化させて一定時間の期間一様に育てた個体を使用した。具体的には、シャーレに5匹ずつ、adult(抱卵している個体)を選んで移し、20℃で2時間放置(産卵期間)し、親虫を取り除いた。その後、20℃で72時間放置し、1シャーレあたり10〜20匹となったところで寿命試験を開始した。1シャーレあたり10〜20匹という低密度で飼育することで、エサの不足や排泄物の蓄積に由来する影響を減少させた。
【0093】
また、各種突然変異体を用いた実験に関しては、発生速度が野生株に比べ遅いものが多いため、生殖器官の発達の度合いでステージを判断し、成虫に達した個体を寿命アッセイに用いた。
【0094】
(寿命アッセイ(寿命測定))
シャーレ内の個体を毎日新しいシャーレに移し替えた。スコアシートに日付、生存数、死亡数、行方不明数などの情報を記録した。保管時はシャーレにパラフィルムをまいた。自発的な行動がみられず、振動刺激や接触刺激を与えても全く反応がみられなかった場合を死亡と判断した。また、線虫がシャーレ外へ逃走したり、壁面で乾燥したり、培地の隙間から潜り込んだりするなどの理由で行方不明になることがしばしば起こるため、行方不明数を記録し、データからは除外した。また、ある種の変異体において頻出する自分の子供が体内で羽化して死亡する個体をBAG、脱腸などにより個体が死亡する個体を破裂と記録し、テータからは除外した。培地中のピロロキノリンキノンジナトリウム塩の濃度を変えて測定した結果を図1及び2に示す。
【0095】
図1及び2に示されるように、ピロロキノリンキノンジナトリウム塩の濃度が高いほど平均寿命は延びる傾向が見られる。なお、図1及び2の縦軸は、線虫の生存率を示し、横軸は成体に達したあとの育成日数(寿命)を示し、グラフの足は標準偏差を示す。また、図1及び2中のNは、試験時の線虫の個数を示す。以下図3及び4においても同様とする。
【0096】
〔実施例5、比較例2:アセトン付加体〕
製造例2で作製したアセトン付加体と、同重量の炭酸水素ナトリウムと、滅菌水とを混合し、試験サンプル濃縮液2を得た。試験サンプル濃縮液2は、アセトン付加体の含有量が30mMになるように調整した。
【0097】
試験サンプル濃縮液2の添加量を、培地溶液中のアセトン付加体の濃度が0mM(比較例2)、及び5.0mM(実施例5)となるように調整したこと以外は、実施例1と同様の操作により、異なる濃度のアセトン付加体を含む培地を有するシャーレを作製した。その後、実施例1と同様に寿命試験を行った。その結果を図3に示す。
【0098】
図3に示されるように、アセトン付加体を含むことにより平均寿命は延びる傾向が見られる。
【0099】
〔比較例3〜4:IPQトリナトリウム塩〕
製造例3で作製したIPQトリナトリウム塩と水とを混合し、試験サンプル濃縮液3を得た。試験サンプル濃縮液3は、IPQトリナトリウム塩の含有量が30mMになるように調整した。また、試験サンプル濃縮液3は、オートクレーブ滅菌により使用した。
【0100】
試験サンプル濃縮液3の添加量を、培地溶液中のIPQトリナトリウム塩の濃度が0mM(比較例3)、及び5.0mM(比較例4)となるように調整したこと以外は、実施例1と同様の操作により、異なる濃度のIPQトリナトリウム塩を含む培地を有するシャーレを作製した。その後、実施例1と同様に寿命試験を行った。その結果を図4に示す。なお、図4には、実施例4のデータも併記している。
【0101】
〔実施例6〜7、比較例5:試験物質の安定性〕
寿命試験に使用したシャーレ中の還元型ピロロキノリンキノン、ピロロキノリンキノンのアセトン付加体、及びIPQトリナトリウム塩の安定性を液体クロマトグラフィー分析(LC分析)によって評価した。その結果を表1に示す。なお、液体クロマトグラフィー分析は、上記したものに従って行うことができる。
【0102】
〔実施例8:還元型PQQの安定性〕
還元型PQQを滅菌水に加え、30mMの分散液を作製した。これを前記の評価用組成において5mMになるように添加してシャーレを作製した。30度で3日保存試験を行い、LC分析、およびUVスペクトル分析を行った。還元型は中性条件ではPQQに変化する。そのため、LC分析によりPQQを検出し、それをジメチルスルホキシドで溶解しUVスペクトルを測定することで還元状態を確認できる。このようにして寒天培地中の還元型PQQの状態を確認した結果、全PQQのうち86%が還元状態を維持していた。
【0103】
【表1】
【0104】
また、実施例1−5で使用したシャーレにある大腸菌コロニーを取り出し、培地分析同様の操作で抽出、分析を行った。試験に使用した大腸菌からも試験物質は主要成分として検出された。
【0105】
実施例1で製造したPQQはペプトン中のアミノ酸と反応してIPQになってしまう。しかし、比較例1で示すようにIPQには寿命延長効果は小さく、PQQが活性成分であることがわかる。また、アセトン付加体にすることで生成しやすいIPQは見られなくなり、安定性が向上していることがわかった。
【0106】
〔実施例9〜18、比較例6〜15:変異体使用した寿命試験〕
線虫の変異体を使用することでPQQがどのように働いているかを知ることができる。実施例4で調製したPQQ5mMを含む培地を用いて、シャーレを複数作製した。作製したシャーレを用いて、表2に示す各変異体で上記実施例1と同様に寿命延長試験を行った。その結果を以下の表2にまとめる。相対的な効果としてPQQを添加しない場合を100として示す。なお、表2は成体に成長したのちの、5mMPQQにおける寿命延長を示す。
【表2】
【0107】
実施例14および実施例17ではbli−3遺伝子の機能低下株ではPQQによる寿命延長効果は見られなかった。これに対し、実施例15のbli−3遺伝子欠損株にbli−3遺伝子を導入した株に関しては、PQQを添加することによって寿命が延長され、PQQにより寿命延長が生じない表現型がレスキューされた。この結果はbli−3遺伝子が長寿実現に利く遺伝子であることを示している。つまり、PQQはデュアルオキシデースを活性化しているといえる。なお、線虫のbli−3遺伝子は、哺乳類のDUOX1遺伝子とDUOX2遺伝子に相当する。
【0108】
このように線虫の変異体を使用することでPQQがどのように働いているかを知ることができる。bli−3変異体、nsy−1変異体、pmk−3変異体、及びNrf2のホモログをコードする skn−1遺伝子変異体では寿命延長効果が強く抑制され、これらの遺伝子群が寿命延長に必須である事がわかる。bli−3(e767)およびbli−3(im10)は、Dual oxidaseの活性が低下した変異体であり、OB265 bli−3(e767);imEx144[bli−3genomic clone]はbli−3変異体(e767)にDual oxidase遺伝子を導入して活性を取り戻した株である。なお、これらの株は、森部らがPLOS GENETIC DOI: 10.1371/journal.pgen.1002957において報告している株を使用した。また、nsy−1(ky400)、pmk−3(ok169)変異体は、それぞれASK−1/MAPKKK、p38/MAPKの活性を低下させた株である。
【0109】
これらの結果より、PQQは、上流のbli−3にコードされるデュアルオキシダーゼを活性化させる。その後、活性化されたデュアルオキシダーゼから産出されたROSは、p38 MAPKカスケードの活性化を経て、SKN−1/NRF−2を活性化させる。PQQにより活性化されたデュアルオキシダーゼは、結果として、生体防御応答を強化し、寿命延長に寄与していることがわかる。一般に活性酸素(ROS)は、寿命を短縮させる働きがあると認識されている。そのため、生体の老化防止には、抗酸化剤が有効であると考えられている。しかしながら、PQQは、抗酸化剤としてではなく、驚くべきことに、活性酸素生産酵素の働きを高めることにより寿命を延長させる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の寿命延長剤及びデュアルオキシダーゼ活性化剤は、食品、飼料、医薬品などの用途において産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】