特表-17126664IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧
再表2017-126664微小スイッチおよびそれを用いる電子デバイス
<>
  • 再表WO2017126664-微小スイッチおよびそれを用いる電子デバイス 図000012
  • 再表WO2017126664-微小スイッチおよびそれを用いる電子デバイス 図000013
  • 再表WO2017126664-微小スイッチおよびそれを用いる電子デバイス 図000014
  • 再表WO2017126664-微小スイッチおよびそれを用いる電子デバイス 図000015
  • 再表WO2017126664-微小スイッチおよびそれを用いる電子デバイス 図000016
  • 再表WO2017126664-微小スイッチおよびそれを用いる電子デバイス 図000017
  • 再表WO2017126664-微小スイッチおよびそれを用いる電子デバイス 図000018
  • 再表WO2017126664-微小スイッチおよびそれを用いる電子デバイス 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年7月27日
【発行日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】微小スイッチおよびそれを用いる電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/8239 20060101AFI20181130BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20181130BHJP
   H01L 45/00 20060101ALI20181130BHJP
   H01L 49/00 20060101ALI20181130BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20181130BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   H01L27/105 448
   H01L27/105 449
   H01L45/00 Z
   H01L49/00 Z
   H01L29/28 100B
   H01L29/28 250F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】47
【出願番号】特願2017-562925(P2017-562925)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年1月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-10864(P2016-10864)
(32)【優先日】2016年1月22日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-10865(P2016-10865)
(32)【優先日】2016年1月22日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】上代 洋
(72)【発明者】
【氏名】永井 徹
(72)【発明者】
【氏名】木下 健太郎
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083FZ10
5F083JA36
5F083JA37
5F083JA38
5F083JA39
5F083JA42
5F083JA60
(57)【要約】
第1電極、第2電極及び多孔性高分子金属錯体導電体から構成される微小スイッチであって、
前記多孔性高分子金属錯体導電体が、下記式(1)で表され、
前記第1電極を構成する金属と前記第2電極を構成する金属とは、酸化還元電位が異なることを特徴とする微小スイッチ。
[ML(D) (1)
ここで、Mは元素の周期表の2〜13族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、前記Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個の前記Mと架橋し得る配位子を示し、Dは、金属元素を含まない導電性助剤を示す。xは0.5〜4で、yはx1つに対して0.0001〜20である。nは、[ML]から成る構成単位の繰り返し数を表し、nは5以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、第2電極、及び多孔性高分子金属錯体導電体から構成される微小スイッチであって、
前記多孔性高分子金属錯体導電体が、下記式(1)で表され、
前記第1電極を構成する金属と前記第2電極を構成する金属とは、酸化還元電位が異なることを特徴とする微小スイッチ。
[ML(D) (1)
ここで、Mは元素の周期表の2〜13族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、前記Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個の前記Mと架橋し得る配位子を示し、Dは、金属元素を含まない導電性助剤を示す。xは0.5〜4で、yはx1つに対して0.0001〜20である。nは、[ML]から成る構成単位の繰り返し数を表し、nは5以上である。
【請求項2】
前記Dが、炭素−炭素多重結合を分子内に有し、且つ硫黄又は窒素原子を含有する化合物である、請求項1に記載の微小スイッチ。
【請求項3】
前記Dが、炭素−炭素多重結合を分子内に有し、且つ前記炭素−炭素多重結合に、電子吸引性基または電子供与性基が結合している化合物、あるいは、共役系が発達した芳香族化合物である、請求項1に記載の微小スイッチ。
【請求項4】
前記Dが、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、ベンゾキノン、又はそれらの誘導体から成る群より選ばれるアクセプター型の化合物である、請求項2または3に記載の微小スイッチ。
【請求項5】
前記Dが、テトラチアフルバレン又はそれらの誘導体から選ばれるドナー型の化合物である、請求項2または3に記載の微小スイッチ。
【請求項6】
前記多孔性高分子金属錯体導電体中に、前記Dを二種以上含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の微小スイッチ。
【請求項7】
前記二種以上のDのうち少なくとも一種が、分子内に電荷を有する有機物から成る有機性導電性助剤である、請求項6に記載の微小スイッチ。
【請求項8】
前記有機性導電性助剤が、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩類、アミン‐アルカリ金属イオンコンプレックス、イミダゾリウム塩類、ピリジニウム塩類、およびスルホニウム塩類から成る群より選ばれる、請求項7に記載の微小スイッチ。
【請求項9】
前記Dの含有量が、前記多孔性高分子金属錯体導電体に対して0.001〜30質量%である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の微小スイッチ。
【請求項10】
前記Mが、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、希土類、ジルコニウムから選ばれる2価、3価、または4価の金属イオンである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の微小スイッチ。
【請求項11】
前記Lが、分子内にカルボキシル基を2個以上含有する芳香族化合物である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の微小スイッチ。
【請求項12】
前記Lが、分子内にカルボキシル基を2個以上含有する非芳香族化合物である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の微小スイッチ。
【請求項13】
前記Lが、分子内に配位性の窒素原子を2個以上含有する芳香族化合物である、請求項11に記載の微小スイッチ。
【請求項14】
前記Lが、分子内に配位性の窒素原子を2個以上含有する非芳香族化合物である、請求項12に記載の微小スイッチ。
【請求項15】
前記Mが、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、マンガン、鉄(II)、鉄(III)、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウムルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、およびレニウムから成る群より選ばれ、
前記Lが置換、非置換のテレフタル酸、イソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸、2.7−ナフタレンジカルボン酸、4.4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメシン酸、置換、非置換の4,4’−ビピリジン、1,4−(4−ピリジル)ベンゼン、および置換、非置換のイミダゾールから成る群より選ばれる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の微小スイッチ。
【請求項16】
前記第1電極を構成する前記金属と前記第2電極を構成する前記金属との酸化還元電位の差が0eV〜5.0eVである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の微小スイッチ。
【請求項17】
前記第1電極を構成する前記金属が、Au、Pt、W、Ru、In、Rh、およびシリコンから成る群より選ばれる金属であり、
前記第2電極を構成する前記金属が、Cu、Ag、Zn、Co、Mn、およびAlから成る群より選ばれる金属である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の微小スイッチ。
【請求項18】
前記第1電極を構成する前記金属が、酸化インジウムスズ(ITO:Tin−doped In)、Nbをドープした酸化チタン、GaまたはAlをドープした酸化亜鉛、およびNbをドープしたSrTiO、SrRuO、RuO、またはIrOから成る群より選ばれる、請求項17に記載の微小スイッチ。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の微小スイッチを用いて構成された電子デバイス。
【請求項20】
金属イオンと、配位子とを混合して、多孔性高分子金属錯体を形成する工程と、
前記多孔性高分子金属錯体を第1及び第2電極に接触させる工程と、
前記第1及び第2電極に接触させた前記多孔性高分子金属錯体と、導電性助剤とを混合して、多孔性高分子金属錯体導電体を形成する工程と、
を含む、CB−RAM用微小スイッチの製造方法であって、
前記金属イオンは、周期表の2〜13族から選ばれ、
前記配位子は、前記金属イオンに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個の前記金属イオンと架橋し得るものであり、
前記導電性助剤は、金属元素を含まない物質であり、
前記第1電極を構成する金属と前記第2電極を構成する金属との間で酸化還元電位が異なることを特徴とするCB−RAM用微小スイッチの製造方法。
【請求項21】
金属イオンと、配位子と、導電性助剤とを混合して、多孔性高分子金属錯体導電体を形成する工程と、
前記多孔性高分子金属錯体導電体を第1及び第2電極に接触させる工程と、
を含む、微小スイッチの製造方法であって、
前記金属イオンは、周期表の2〜13族から選ばれ、
前記配位子は、前記金属イオンに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個の前記金属イオンと架橋し得るものであり、
前記導電性助剤は、金属元素を含まない物質であり、
前記第1電極を構成する金属と前記第2電極を構成する金属との間で酸化還元電位が異なることを特徴とする微小スイッチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性助剤を含有した、多孔性高分子金属錯体(PCP:Porous Coordination Polymer)から成る多孔性高分子金属錯体導電体及びそれを利用した微小スイッチ並びにそれを利用した電子デバイスに関する。
本願は、2016年1月22日に、日本に出願された特願2016−010864号及び特願2016−010865号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
本願明細書で用いる「スイッチ」とは、何らかの方法で移り変わることが可能な複数の安定状態を有し、それぞれの安定状態を、例えば“0”、“1”に対応させることによってデータを保持する機構を意味する。微小なスイッチの一種としてメモリがあるが、メモリの一種であるDRAM(Dynamic Random Access Memory)であれば、コンデンサーが充電された状態と空の状態を、フラッシュ(Flash)メモリであればフローティングゲートに電荷が注入された状態とされていない状態を、それぞれ“1”、“0”に対応させることによってデータ記憶を実現する。これらの微小スイッチ類はパーソナルコンピューターやモバイル機器等の記録材料として広く利用されており、微小スイッチ類の特性は、それらを利用する機器の性能を決めるほど重要な働きを担っている。
【0003】
微小スイッチの最大の問題点は、既存材料では特性改善が限界に近づいている事である。微小スイッチの特性改善には、微細化の手法が広く採られている。これは微細化するほど、消費電力の低減、応答速度の向上、高度な集積化による高機能化、小型軽量化が可能になるためである。微細化手法としては一般的にはフォトリソグラフィー技術が利用されているが、本技術も、光の波長という固有の限界値があり、現在使用されている微小スイッチのさらなる小型化は困難であると言われている。また、電荷がフローティングゲートに入っているかどうかで判断する方式を採る以上、電子数個で判断する従来方式では、リークパスの存在によりデータが失われる等の問題が不可避であり、この意味でも高性能化に限界が来ている。高性能化の方法として、素子を積層する方法が検討されているが、当然積層化には高度な技術が必要とされ、歩留まりの低下、製造コストの問題等が生じている。
【0004】
形状を微細化しても電流が逃げないようにするために、窒化膜を利用してチャージのリークを防止する方法もあるが、前述の光波長の限界に起因するフォトリソグラフィーの技術を使う以上、微細化には限界がある。
【0005】
既存材料の微細化ではなく、新規なメカニズムを用いて、より高性能なスイッチを開発する動きもある。たとえば次世代のフラッシュメモリとしては、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、PRAM(Phase Change Random Access Memory)、ReRAM(Resistance Random Access Memory)が挙げられる。MRAMは、構造が複雑で有り、歩留まりが低い、製造コストが高い等の問題がある。PRAMは、徐冷、急冷を利用してスイッチングをおこなっており、原理的に速度限界が高いとは言えない。ReRAMは、現時点では実用化されていないが、メタルナノワイヤを形成するメカニズムに基づくもので、大電流が流せる、すなわち、スイッチとして使用すると安定的な動作が期待でき、構造的に簡易であるため、製造コストの低減、容易な積層化等も期待されている。
【0006】
多孔性高分子金属錯体(PCP:Porous Coordination Polymer)は、金属イオンと有機配位子から得られる、ナノレベルの細孔を有している結晶性固体で、種々の金属イオン、有機配位子の組み合わせおよび骨格構造の多様性から、ガス吸着、分離材料、触媒、センサ、医薬品等、様々な応用が考えられている。
【0007】
多孔性高分子金属錯体の特徴の一つが、そのネットワーク構造である。一次元の鎖状物集合体、二次元の四角格子の積層体、ジャングルジム状の三次元構造など様々な構造の多孔性高分子金属錯体が知られている(非特許文献1)。これら多孔性高分子金属錯体は、ネットワーク構造の多様性に加え、これを構成している金属イオン、配位子に非常に多くのバリエーションがあり、そのため、多様な化学的性質を発現し得るため、ネットワーク構造、構成している金属イオン、配位子だけから、発現される物性を推定することは基本的に非常に困難であり、種々の応用が考えられる多孔性高分子金属錯体の材料化の探索は、手探りに近い状態で行われている。(非特許文献2、非特許文献3)。
【0008】
多孔性高分子金属錯体の別の特徴として、細孔構造の均一性が挙げられる。多孔性高分子金属錯体は、金属イオンと配位子により形成される規則的な繰り返し構造を有する結晶である。活性炭も多孔性材料であるが、一つの単位粒子の中に、大小様々な大きさの細孔が存在し(細孔径分布)、また、細孔の形状も様々な物が混在している。一方で、多孔性高分子金属錯体の細孔は、前述の通り、金属イオンと配位子で構成されるため、それらのネットワーク構造と配位子、金属イオンの大きさで細孔径が規定されるため、基本的には全く同一の大きさの細孔から形成されている。このため細孔径分布は限りなく小さいという特徴を有している。
【0009】
また、多孔性を有している既存材料としてはゼオライトが挙げられる。ゼオライトも多孔性高分子金属錯体同様、結晶性材料であり、細孔径分布は非常に小さいが、その細孔径は多孔性高分子金属錯体と比較して一般に大きい。さらに、多孔性高分子金属錯体の細孔を形成している壁は、分子であり、極端に厚みが薄いのに対し、活性炭やゼオライトの壁の厚みは多孔性高分子金属錯体より遙かに厚い為、多孔性高分子金属錯体は活性炭やゼオライトに比して、極めて多孔性が高い(空隙率が高い)という特徴を有している。これらの細孔径分布の小ささ、細孔径の小ささ、空隙率の高さにより発現される高度なガス分離能を利用した、ガス貯蔵分離材料開発の研究が進められている。
【0010】
またPCPは、合成が非常に容易な材料でもある。ゼオライトや活性炭等の多孔性材料が、材料焼成プロセスが必要で、時間やエネルギーが必要であるのに対し、多孔性高分子金属錯体は、室温に近い温度で、原料となる金属イオンと配位子を混合するだけで、容易に粉末あるいは薄膜が得られることが知られており、この意味でも工業材料として優れたポテンシャルを有している。
【0011】
多孔性高分子金属錯体は、金属イオンと配位子から合成され、ネットワーク構造は有機分子から形成されているため、材料そのものの導電性は非常に低い。多孔性高分子金属錯体は半導体に分類されるが、その導電性は非常に低い(非特許文献4)。
【0012】
多孔性高分子金属錯体への導電性を賦与する事で、センサ等への応用が可能となるため、導電性付与の方法は種々報告されている(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7)。
【0013】
導電性付与の方法は多数存在するが、そのうちの一つに、多孔性高分子金属錯体の細孔内に、導電性を向上させる材料(以下、「導電性助剤」という)を導入させることで、導電性を付与する検討が行われている。たとえば非特許文献8では、銅イオンを含有する多孔性高分子金属錯体膜に、有機導電体として知られるTCNQ(テトラシアノキノジメタン)を導入することで導電性を向上させる技術が開示されている。この技術によれば、多孔性高分子金属錯体に導電性を賦与することが可能となる。この文献で使用されている、Cu3(BTC)2(BTCは、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸塩)、略称HKUST−1と呼ばれる多孔性高分子金属錯体は、銅イオンが4配位状態であり、空の配位座を有しているため、この銅イオンの空の配位座とTCNQが錯形成をすることで導電性パスが形成され、これにより導電性が向上すると、この文献では記載されている。すなわち、空の配位座を有する銅イオンと静電的に相互作用し得て、かつ、サイズ的に細孔内に収納されてかつ銅イオンと相互作用し得る大きさを有した特殊なドーパントでのみ成立する特殊現象と考えられる。また、この文献には、メモリ等のスイッチとしての利用の記載は無い。
【0014】
タリウムを含有する多孔性高分子金属錯体の細孔内にTCNQを添加し、導電性を向上させる検討も行われている(非特許文献9)。この検討でも多孔性高分子金属錯体に導電性を賦与することは可能であるが、スイッチとしての利用は記載されていない。
【0015】
多孔性高分子金属錯体の細孔内にイオン性液体を導入することで、導電性を向上させる検討も行われている(特許文献1)。この検討でも多孔性高分子金属錯体に導電性を賦与することは可能であるが、メモリ効果が得られるかどうかは明らかにされていない。
【0016】
TCNQ自体を骨格として含有する多孔性高分子金属錯体も開発されている(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12)。種々のイオンに関して検討が行われ、種々の多孔性高分子金属錯体がTCNQと相互作用し、電気化学特性に変化が出ることは確認されているが、スイッチ効果が得られるかどうかは記載されていない。
【0017】
スイッチ特性を有する多孔性高分子金属錯体としては、特許文献2および非特許文献13が知られている。この材料は、ガスの添加により、状態Aが別の状態Bに転移し、その状態が保持されるという意味でスイッチ特性が実現されている。しかし、ガス圧の導入に伴う構造の変化であり、電気的なスイッチ特性が実現可能かどうかは記載されていない。
【0018】
イオン性液体と見なされるアンモニウム塩を導入した多孔性高分子金属錯体に関しては非特許文献18が知られている。この文献ではアンモニウム塩は、結晶化剤として利用されているのみで、導電性等への物性への影響は明らかにされていない。
【0019】
細孔性材料へのアンモニウム塩等の導入に関しては、非特許文献14が知られている。この検討により、ガス吸着特性の改善が明らかにされたが、導電性向上やメモリ効果に関しては明らかにされていない。
【0020】
細孔性材料への塩類の導入に関しては、非特許文献15が知られている。この検討により、導電性の改善が明らかにされ、電池への応用が示されたが、メモリ効果に関しては明らかにされていない。
【0021】
多孔性高分子金属錯体の薄膜を電極の間に挟み、電圧を印加することによって抵抗値の切り替えが実現される、「抵抗スイッチング効果」と呼ばれる電気化学的現象が報告されている(非特許文献16)。この報告によれば、多孔性高分子金属錯体を構成している銅イオンが銅へと変化し、さらに多孔性高分子金属錯体を構成している配位子であるトリメシン酸のカルボキシル基が分解されて、ガスとして気化している。この結果、sp2混成軌道が生じ、これにより導電性が発生し、具体的な効果としてはReRAMとして利用可能であることが明らかにされている。すなわち、この手法により、ドーパントの添加無しに、多孔性高分子金属錯体の導電性を向上させ、結果としてメモリ機能の発現が可能となった。
【0022】
しかしながら、この手法は、多孔性高分子金属錯体を構成している銅イオンの骨格からの消失と電極上への析出、およびに多孔性高分子金属錯体を構成している配位子のカルボキシル基の分解という、多孔性高分子金属錯体の骨格そのものの不可逆的な破壊を伴っている。多孔性高分子金属錯体の骨格は、多孔性高分子金属錯体のナノ細孔を形成している材料であり、これの破壊は、材料としての強度、細孔径の変化、細孔径の分布変化、破壊の程度に応じた導電性の変化等、様々な導電性材料としての好ましくない変化を伴うことになる。さらにこのような材料破壊現象を完全コントロールすることは難しく、結果として材料特性のばらつきが生じ、スイッチの微細化、動作電流の微小化、安定化、経時的な材料劣化に問題が生じる。このように、この文献に開示されている技術は、構成材料(多孔性高分子錯体)自体の変化、即ち多孔性高分子錯体を構成する元素の解離・移動を利用するReRAMであり、本質的に材料の破壊等を伴うことから、上記の欠点は本質的で不可避である。また、この文献で示されている電極構造は、同種金属によるサンドイッチ構造であり、二種金属を利用した場合の特性等は開示されていない。
【0023】
細孔を利用したメモリという概念は、非特許文献17で初めて提案されており、歴史が極めて浅い。この非特許文献17にしても、多結晶薄膜の粒界を細孔とみなしたに過ぎない。ナノ多孔体を利用したCB−RAM(Conductive-Bridge Random Access Memory)に関する報告はあり、アルミナ多孔体とシリカ多孔体を利用した技術がある。しかし、これら多孔体は細孔径分布が非常に大きいため、動作電流のばらつき等がある。また陽極酸化プロセスで、製造自体も難易度が高い手法である。また、この手法を用いたCB−RAMの報告例はない。
【0024】
細孔を利用したメモリでは、高密度化の観点から、一つの細孔を一つのメモリセルとして用いるのが好ましいが、細孔サイズと細孔間隔の制御が実用化の鍵を握ることになる。この様な観点から、細孔が精密制御された多孔体の利用が考えられるが、ゼオライトの薄膜化等の問題があり、現時点では、ゼオライト利用のCB−RAMの報告は無い。
【0025】
多孔性高分子金属錯体は、(1)極めて細孔径分布が小さい(動作ばらつきが小さい)(2)細孔径が小さい(セルサイズが小さく、高密度化が可能)、(3)薄膜化が容易である等優れた点がある。CB−RAMは電極A/メモリ層/電極Bの構造をとり、電極Aは電気化学的に活性でイオン化しやすい金属、電極Bには電気化学的に安定な金属が用いられる。電極間に電圧を印加することで、電極Aを構成する原子がメモリ層内を拡散し、フィラメント状ブリッジの形成/断裂により抵抗が低抵抗/高抵抗に切り替わる。メモリ層に多孔性高分子金属錯体を用いることによって、上記(1)〜(3)の優れた特性を利用したCB−RAMの高性能化が期待される。
【0026】
CB−RAMはメモリ層内における電極構成金属の拡散により同金属で構成されるフィラメントの形成/断裂を生じさせることで低抵抗/高抵抗の切り替えが行われるため、スイッチングを発生させる上でジュール熱による金属拡散(或いは金属イオン拡散)の促進が必須となるケースが多々ある。しかし、多孔性高分子金属錯体やCB−RAMは導電性が低く、ジュール熱による温度上昇が極めて小さいことから金属ナノワイヤ、即ちフィラメントの形成が困難であり、上述のような、多孔性高分子金属錯体の不可逆的な破壊を伴うReRAMは、ごくわずかに報告例はあるが、多孔性高分子金属錯体を利用したCB−RAMに関する報告は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】国際公開第2013/161452号
【特許文献2】日本国特許第4834048号公報
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】北川進、集積型金属錯体、講談社サイエンティフィク、2001年214-218頁
【非特許文献2】Yaghiら、Science (2008)939
【非特許文献3】Rosseinskyら、Microporous and mesoporous Mater.73,(2004),15
【非特許文献4】AFM3885_14Volkmer
【非特許文献5】Veciana/maspocら、Chem. Soc. Rev. (2007)36, 770
【非特許文献6】JaniakらDalton trans. (2003) 2781
【非特許文献7】Kepert,C,JらChem. Commun. (2006) 695
【非特許文献8】3 JANUARY 2014 VOL 343 SCIENCE Allendorf
【非特許文献9】Dunbar、AG6543_11
【非特許文献10】北川ら、IC172_11Kitagawa
【非特許文献11】SusumuKitagawa170_JACS16416_06
【非特許文献12】SusumuKitagawa195_JACS10990_07
【非特許文献13】酒田ら、Science 2013, 339, 193-196.
【非特許文献14】金子ら、jacs2112_10kaneko
【非特許文献15】Long/Yaghi、JACS14522_11Long
【非特許文献16】AFM2677_15 Li
【非特許文献17】S. Hasegawa, K. Kinoshita, S. Tsuruta, S. Kishida, ECS Trans. 2013, 50, 61.
【非特許文献18】Chem. Commun. (2006) 4767
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、多孔性高分子金属錯体に、導電性助剤を添加して得られる新規な多孔性高分子金属錯体導電体と、二種類の電極金属から構成される微小スイッチを提供する事である。またそのスイッチを利用したメモリを提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、以下のとおりである。
(1) 第1電極、第2電極、及び多孔性高分子金属錯体導電体から構成される微小スイッチであって、
前記多孔性高分子金属錯体導電体が、下記式(1)で表され、
前記第1電極を構成する金属と前記第2電極を構成する金属との間で酸化還元電位が異なることを特徴とする微小スイッチ。
[ML(D) (1)
ここで、Mは元素の周期表の2〜13族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、前記Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個の前記Mと架橋し得る配位子を示し、Dは、金属元素を含まない導電性助剤を示す。xは0.5〜4で、yはx1つに対して0.0001〜20である。nは、[MLx]から成る構成単位の繰り返し数を表し、nは5以上である。
【0031】
(2) 前記Dが、炭素−炭素多重結合を分子内に有し、且つ硫黄又は窒素原子を含有する化合物である、(1)に記載の微小スイッチ。
(3)前記Dが、炭素−炭素多重結合を分子内に有し、且つ前記炭素−炭素多重結合に、電子吸引性基または電子供与性基が結合している化合物、あるいは、共役系が発達した芳香族化合物である、(1)に記載の微小スイッチ。
(4) 前記Dが、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、ベンゾキノン、又はそれらの誘導体から成る群より選ばれるアクセプター型の化合物である、(2)または(3)に記載の微小スイッチ。
(5) 前記Dが、テトラチアフルバレン又はそれらの誘導体から選ばれるドナー型の化合物である、(2)または(3)に記載の微小スイッチ。
(6) 前記多孔性高分子金属錯体導電体中に、前記Dを二種以上含有する、(1)〜(5)のいずれかに記載の微小スイッチ。
【0032】
(7) 前記二種以上のDのうち少なくとも一種が、分子内に電荷を有する有機物から成る有機性導電性助剤である、(6)に記載の微小スイッチ。
(8) 前記有機導電性助剤が、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩類、アミン‐アルカリ金属イオンコンプレックス、イミダゾリウム塩類、ピリジニウム塩類、およびスルホニウム塩類から成る群より選ばれる、(7)に記載の微小スイッチ。
(9) 前記Dの含有量が、前記多孔性高分子金属錯体導電体に対して0.001〜30質量%である、(1)〜(8)のいずれかに記載の微小スイッチ。
(10) 前記Mが、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、希土類、ジルコニウムから選ばれる2価、3価、または4価の金属イオンである、(1)〜(9)のいずれかに記載の微小スイッチ。
(11) 前記Lが、分子内にカルボキシル基を2個以上含有する芳香族化合物である、(1)〜(9)のいずれかに記載の微小スイッチ。
【0033】
(12) 前記Lが、分子内にカルボキシル基を2個以上含有する非芳香族化合物である、(1)〜(9)のいずれかに記載の微小スイッチ。
(13) 前記Lが、分子内に配位性の窒素原子を2個以上含有する芳香族化合物である、(11)記載の微小スイッチ。
(14) 前記Lが、分子内に配位性の窒素原子を2個以上含有する非芳香族化合物である、(12)記載の微小スイッチ。
(15) 前記Mが、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、スカンジウム、マンガン、鉄(II)、鉄(III)、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウムルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、およびレニウムから成る群より選ばれ、
前記Lが置換、非置換のテレフタル酸、イソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸、2.7−ナフタレンジカルボン酸、4.4’−ビフェニルジカルボン酸、トリメシン酸、置換、非置換の4,4’−ビピリジン、1,4−(4−ピリジル)ベンゼン、および置換、非置換のイミダゾールから成る群より選ばれる、(1)〜(9)のいずれかに記載の微小スイッチ。
【0034】
(16) 前記第1電極を構成する前記金属と前記第2電極を構成する前記金属との酸化還元電位の差が0eV〜5.0eVである、(1)〜(15)のいずれかに記載の微小スイッチ。
(17) 前記第1電極を構成する前記金属が、Au、Pt、W、Ru、In、Rh、およびシリコンから成る群より選ばれる金属であり、
前記第2電極を構成する前記金属が、Cu、Ag、Zn、Co、Mn、およびAlから成る群より選ばれる金属である、(1)〜(16)のいずれかに記載の微小スイッチ。
(18) 前記第1電極を構成する前記金属が、酸化インジウムスズ(ITO:Tin−doped In)、Nbをドープした酸化チタン、GaまたはAlをドープした酸化亜鉛、およびNbをドープしたSrTiO、SrRuO、RuO、またはIrOから成る群より選ばれる、(17)記載の微小スイッチ。
(19) (1)〜(18)のいずれかに記載の微小スイッチを用いて構成された電子デバイス。
【0035】
(20) 金属イオンと、配位子とを混合して、多孔性高分子金属錯体を形成する工程と、
前記多孔性高分子金属錯体を第1及び第2電極に接触させる工程と、
前記第1及び第2電極に接触させた前記多孔性高分子金属錯体と、導電性助剤とを混合して、多孔性高分子金属錯体導電体を形成する工程と、
を含む、CB−RAM用微小スイッチの製造方法であって、
前記金属イオンは、周期表の2〜13族から選ばれ、
前記配位子は、前記金属イオンに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個の前記金属イオンと架橋し得るものであり、
前記導電性助剤は、金属元素を含まない物質であり、
前記第1電極を構成する金属と前記第2電極を構成する金属との間で酸化還元電位が異なることを特徴とするCB−RAM用微小スイッチの製造方法。
【0036】
(21) 金属イオンと、配位子と、導電性助剤とを混合して、多孔性高分子金属錯体導電体を形成する工程と、
前記多孔性高分子金属錯体導電体を第1及び第2電極に接触させる工程と、
を含む、微小スイッチの製造方法であって、
前記金属イオンは、周期表の2〜13族から選ばれ、
前記配位子は、前記金属イオンに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個の前記金属イオンと架橋し得るものであり、
前記導電性助剤は、金属元素を含まない物質であり、
前記第1電極を構成する金属と前記第2電極を構成する金属との間で酸化還元電位が異なることを特徴とする微小スイッチの製造方法。
【発明の効果】
【0037】
本発明の多孔高分子金属錯体導電体と二種の金属とから形成される微小スイッチは、メモリとして利用する事が可能である。また本発明はランダムアクセスメモリ、ストレージクラスメモリ及びそれを活用した集積回路(メモリチップ、LSI)、記憶装置(SSD、SDカード、USBメモリ等のこと)、学習機能を備えたメモリ回路、FPGA(Field Programmable Gate Array)用の回路切り替えスイッチ、その他装置(センサ)として利用する事が可能である。
【0038】
本発明の多孔性高分子金属錯体導電体からなる微小スイッチは、本微小スイッチから形成される各種デバイス類の微小化、高度集積化、省電力化、応答速度の向上による高機能化、有機材料の特性を利用したフレキシブル化、薄膜化による軽量化、材料合成の容易さによる簡易プロセス化、安価化、汎用化等を実現する。
【0039】
本発明の微小スイッチをプログラマブル回路に用いることができる。プログラマブル回路とはユーザーが各自の目的に合わせて回路を組むことができる物で有り、具体例として、利用者が独自の論理回路を書き込むことのできるゲートアレイの一種であるFPGA(Field Programmable Gate Array)回路の事である。デジタル信号処理、ソフトウエア無線、アビオニクス等に利用できる。本発明の微小スイッチを利用する事で、より微細化、高性能化が可能となる。
【0040】
本発明の微小スイッチをメモリチップに用いることができる。メモリチップとは、メモリ素子を集積したデバイスである。パーソナルコンピューターやモバイル機器等の記憶素子として利用されている。本発明の微小スイッチ機構を利用する事で、微細化等による高度集積化、高機能化が可能となる。
【0041】
本発明の微小スイッチを利用したメモリチップを用いて制御装置を構成することができる。制御装置とは、マイクロコンピューター等であり、家電製品等の制御に利用されている。本発明を利用する事で、微細化等による高度集積化、高機能化が可能となる。
【0042】
本発明の微小スイッチを用いてLSIを構成することができる。LSIとは、大規模集積回路であり、制御装置等に広く利用されている。現在は、酸化膜が良質に作成でき、P、N型の作り分けが容易である事から、実質的にシリコンベースのLSIが利用されており、代替技術は実質的に存在しない。しかしながら、本発明の微小スイッチを利用する事で、Si/シリコン酸化膜と同様に、PCP単体でのLSIを実現可能である。これは、PCPは、元々が半導体的性質を有しており、ドーピングによるキャリア型及びキャリア濃度の制御が可能であることから、ダイオードやトランジスタ等の基本的な回路素子の実現が期待されることに加え、本微小スイッチにより、LSIの実現に不可欠なPCPベースの記憶装置の提供が可能となるからである。さらにPCPは、超薄膜形成や微細回路形成等が容易である事、ドーピングがプロセス的に容易かつ微細ドーピングが可能である事などから、本発明の微小スイッチを用いて、Si代替LSIを実現する事が可能となる。
【0043】
本発明の微小スイッチを用いてセンサを構成することができる。PCPは細孔内に各種の溶媒、水等を吸着することが知られており、さらにそれによりPCPの特性が変化する事が知られている。この原理を利用し、溶媒やガス分子、光等に応じて導電性、スイッチング電圧が変化する事を利用する事でセンサ開発が可能である。
【0044】
本発明の微小スイッチを用いて学習機能を持ったニューロコンピューターを構成することができる。ニューロコンピューターとは、生体の記憶方法であるニューロン形成を模倣して、電気回路がユーザーの好みに合わせて、新規回路の形成、不要な回路の消失等含め、動的に回路が形成されていく学習機能を有するコンピュータである。ユーザーが能動的にプログラムを行わずして、自発的にユーザーの好みに合わせた機能が実現できる装置である。本発明の微小スイッチでは、形成されたフィラメントが使用されない場合は構成金属が徐々に拡散して細くなり、使用される場合は太くなる特性を有するため、ニューロンの記憶形成と類似したニューロコンピューター機能を実現する事が可能となる。
【0045】
本発明の微小スイッチを用いたニューロコンピューターを利用した人工知能を構成することができる。人工知能とは、人工的に人間に類似した知能を実現させた物一般を指す。上記のニューロコンピューターを利用することで、自発的にユーザーの好みに合わせて、人工知能の高度化が進むものであり、パターン認識能を有するロボット等に応用が可能である。
【0046】
本発明の微小スイッチを用いてフレキシブル化、軽量化された各種機能、デバイスを構成することができる。フレキシブル化の利点は、ウエアラブル等、形状を限定されずに機能発現が可能となる点である。本発明の微小スイッチが、有機材料の柔軟性、薄膜性、軽量性を有することでフレキシブル化、軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の微小スイッチから作製したメモリ素子のデータ書込/消去及びデータ保持特性の評価を表したグラフである。
図2】多孔性高分子金属錯体中に存在する細孔の形態を表す模式図である。
図3】細孔の異方性の模式図である。
図4】本発明の微小スイッチを用いて構成した素子構造及び回路の例を表した図である。
図5A】微小スイッチの構造例を表した図である。
図5B】微小スイッチの構造例を表した図である。
図5C】微小スイッチの構造例を表した図である。
図5D】微小スイッチの構造例を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明が提案する微小スイッチは、多孔性高分子金属錯体に導電性助剤を添加する事で得られる多孔性高分子金属錯体導電体を、電気化学的に酸化還元電位が異なる二種の金属で構成される電極(電気化学的に活性な金属と不活性な金属で構成される電極)で挟み込むことによって構成される。これにより、電気的に高抵抗、低抵抗を意図的にスイッチングすることができる。
【0049】
本発明は、多孔性高分子金属錯体導電体と、酸化還元電位が異なる二種の金属で構成される回路とする事で、多孔性高分子金属錯体導電体のナノ細孔内における電極金属の拡散を利用し、拡散した電極金属によって電極間が繋がれた状態と断裂された状態とを“1”、“0”に対応させることで微小スイッチとして機能させる。本構成とする事で、多孔性高分子金属錯体導電体の不可逆的な破壊を伴わずに、微小スイッチ機能を実現できるため、スイッチ機能の微細化、動作電流の微小化、安定化、経時的な材料劣化などの特性面で優れている。
【0050】
本発明の微小スイッチは、ReRAMの様な不揮発性メモリとしての利用が可能である。ReRAMとCB−RAMとは共に導電パスの形成と断裂によって抵抗のスイッチングが実現されることから、その原理は似ているように見える。しかし、ReRAMの導電パスが酸素欠損で構成されると報告されているのに対して、CB−RAMのそれは金属原子で構成されることから、電流輸送特性に優れ、FPGA(Field Programmable Gate Array)用の回路切り替えスイッチ等への応用も可能となる。
【0051】
さらに本発明は、p型、n型のドーパントを局所的にドーピングする技術を確立し、メモリのみならずトランジスタやダイオードなどの回路素子をPCP基板に作り込むLSI技術としても応用可能である。この実現のためにはインクジェット技術等が利用可能である。
【0052】
本発明者らは、前述のような問題点を解決すべく、鋭意研究を積み重ねた結果、多孔性高分子金属錯体に、電荷を有する有機物から成る有機性導電性助剤を添加し、高分子金属錯体導電体を調製し、さらにこれを酸化還元電位が異なる二種の電極金属と接触させることで回路を構成することで微小スイッチとして機能する事を見いだし、本発明を完成するに至った。また、本微小スイッチがメモリとして機能する事を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0053】
本発明の多孔性高分子金属錯体導電体を含む微小スイッチは、下記構造(2)で表され、配位子Lが金属イオンMを架橋することで形成され、導電性助剤Dが添加される大きさの細孔を有している多孔性高分子金属錯体導電体と第1電極と第2電極とで構成される微小スイッチである。
第1電極|[ML(D)|第2電極 (2)
(式中、Mは元素の周期表の2〜13族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Dは多孔性高分子金属錯体の導電性を向上し得る導電性助剤を示す。xは0.5〜4であり、yはx1つに対して0.0001〜2である。nは、[ML]から成る構成単位の繰り返し数を表し、nは5以上である。)
【0054】
第1電極と第2電極との間の電気抵抗値が、駆動電圧又は電流を印加することにより変化して、異なる2以上の状態が存在することが、本発明に用いる多孔性高分子金属錯体導電体独特の特性である。例えば、図1の電圧掃引−電流測定図を参照すると、Set時電圧の際の抵抗値と、Reset時電圧の際の抵抗値とは異なり、この電圧掃引−電流測定曲線において2以上の抵抗状態が存在している。
【0055】
本発明のスイッチ素子の動作機構は、電圧印加に伴い、第1電極の金属がイオン化し、これがPCPの細孔内を拡散し、このイオンが第2電極から電子を受け取り、還元される事で対極との間に金属フィラメントが形成されること、および、その逆反応として、一旦形成された金属フィラメントが、電圧印加により酸化されてイオンに戻り消失する事で、スイッチング機能を実現している。よって、金属フィラメントの形成と断裂は、第1電極金属の金属イオンが細孔内を拡散する必要があり、この為には、金属イオンが拡散しうる細孔径を有したPCPを利用し、さらにこれに導電性助剤を添加する事でキャリア濃度を増加させ、ジュール熱の発生による温度上昇によって金属イオンの拡散を促す事が重要である。
【0056】
また、細孔内の溶媒は不活性電極のイオン化に必要な電圧(即ちスイッチング電圧)及び金属イオンの拡散に多大なる影響を及ぼすため、適切な溶媒を選択する必要がある。スイッチング機能には、フィラメントの形状が影響するため、フィラメントの形状に影響を及ぼし得るPCPの金属種、配位子種、細孔形状、導電性助剤の種類、量を適切に選ぶことは重要である。
【0057】
また、多孔性高分子金属錯体導電体の細孔の内部で比較的アスペクト比が大きい導電性助剤が、電圧印加に伴い、回転、もしくは細孔内の位置の変化が生じ、細孔内の実効的な容積が変化し、この実効的な細孔容積の変化と、電圧印加に伴う電極の金属イオンの細孔内拡散及びこれの還元に基づく金属ナノワイヤの生成並びにこの逆反応に基づく金属ナノワイヤの消失とにより、スイッチ効果を発現していると考えられる。
【0058】
本発明の微小スイッチに用いられる多孔性高分子金属錯体導電体はネットワーク構造を有している。このネットワーク構造は、金属イオンMと配位子Lとで構成され、ネットワーク構造の次元性としては、線状の高分子錯体が規則的に集合した1次元構造や、面状の2次元ネットワーク構造や、ジャングルジム様の3次元ネットワーク構造のいずれも取り得ることができる。実際の材料は、これらの次元に関わらず、単位構造が集合した材料であり、結晶性または非結晶性の固体である。1次元構造や2次元構造の場合は材料柔軟性を示し、3次元構造の場合は材料の堅牢性を示すが、用途に応じて基本のネットワークを選択することができる。
【0059】
本発明の微小スイッチに用いられる高分子金属錯体導電体は多孔体であるため、水やアルコールやエーテルなどの有機分子に触れると孔内に水や有機溶媒を含有し、たとえば式(3)のような複合材料に変化する場合がある。
第1電極|[ML(D)(G)|第2電極 (3)
(式中、Mは元素の周期表の2〜13族から選ばれる金属イオンを示し、Lは、Mに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して2個のMと架橋し得る配位子を示し、Dは多孔性高分子金属錯体の導電性を向上し得る導電性助剤を示す。xは0.5〜4で、yはx1つに対して0.0001〜2である。Gは後述のような合成に使用した溶媒分子や空気中の水分子であり、通常ゲスト分子と呼ばれ、zは金属イオン1に対して0.0001〜4である。nは、[ML]から成る構成単位の繰り返し数を表し、nは5以上である。)
【0060】
しかし、これらの複合材料中の上記Gで表されるゲスト分子は、高分子金属錯体導電体に弱く結合しているだけであり、スイッチに利用する際の減圧乾燥などで容易に除かれ、元の式(2)で表される材料に戻る。そのため、式(3)で表されるような形態であっても、本質的には本発明の微小スイッチと同一の微小スイッチと見なすことができる。また、Gが微小スイッチの物性に影響を及ぼさない量、物質である場合は、Gを含有したまま使用することができる。一方、特にGがイオン性物質の細孔内移動を補助する、たとえば水の様な分子である場合は、積極的にGを含有する形態で本スイッチを利用する事が可能である。
【0061】
<多孔性高分子金属錯体導電体の合成方法>
本発明の多孔性高分子金属錯体導電体は以下のように製造することができる。式(1)の、[ML(D)で示される多孔性高分子金属錯体導電体は、導電性助剤Dを式(4)で表される多孔性高分子金属錯体に添加することによって、得ることができる。
[ML(4)
(式中、M、L、xは前述のとおりであり、nは、[ML]から成る構成単位の繰り返し数を表し、nは5以上である。)
【0062】
上記の式(4)で示される多孔性高分子金属錯体は、既知の方法で合成される既知の多孔性高分子金属錯体が利用できる。具体的には金属イオンと配位子の溶液中あるいは固相での反応により得ることが可能である。
【0063】
多孔性高分子金属錯体の調製方法は種々の条件があり、一義的に決定できるものではないが、一般には、金属イオン源として、金属塩(例えば硝酸銅)、金属(銅等)、金属酸化物(酸化銅等)、配位子として、配位座を2個以上有する有機化合物、例えばテレフタル酸、トリメシン酸等の芳香族カルボン酸類、フマル酸、クエン酸等の脂肪族カルボン酸類、イミダゾール、4,4’−ビピリジン等の芳香族性窒素官能基を有する化合物及びそれらの置換化合物を例示できる。反応条件としては、水、アルコール、DMF等の溶媒を用いた溶液法、溶液を用いない固相法等が挙げられる。例えば、Cheethamら、 Angew. Chem. Int. Ed. (2010) 9640、Yaghiら、Science (2009)855、シグマ-アルドリッチ社パンフレット、「材料科学の基礎7」等の文献に基づき合成することができる。
【0064】
<多孔性高分子金属錯体への導電性助剤の添加方法>
上記(4)式で示される多孔性高分子金属錯体に、導電性助剤Dを添加することで高分子金属錯体導電体を得ることができる。添加方法は、多孔性高分子金属錯体と導電性助剤とから成る物質を溶液に溶解して添加する方法、導電性助剤を溶解した溶媒に多孔性高分子金属錯体を浸漬し、細孔内に前記導電性助剤を溶解した溶媒を取り込む方法、多孔性高分子金属錯体と導電性助剤とを固相で混合して添加する方法、導電性助剤が液体の場合、溶媒を使わずに多孔性高分子金属錯体と混合して添加する方法、導電性助剤を加熱して気化させて多孔性高分子金属錯体に暴露させて添加する方法、多孔性高分子金属錯体の原料である金属イオンと、配位子とから成る物質と、導電性助剤とを、液体中あるいは固相で反応させて添加する方法等が挙げられる。
【0065】
導電性助剤を溶液に溶解して添加する方法は、穏和な条件で行える利点がある。固相で添加する方法は溶媒が不用であり、また、導電性助剤を気化させて添加する方法は、気化の際に導電性助剤が高純度化される利点がある。多孔性高分子金属錯体の原料である金属イオン、配位子物質、導電性助剤を、液体中あるいは固相で反応させて添加する方法は、細孔のウインドウが導電性助剤よりも小さい多孔性高分子金属錯体に導電性助剤を添加できる等の利点がある。これら利点を考慮して、使用する多孔性高分子金属錯体や導電性助剤の種類、得られた材料の用途に応じて添加方法を選択することができる。
【0066】
<導電性助剤D>
導電性が低い多孔性高分子金属錯体に導電性を付与するため、導電性助剤Dの添加が必須である。多孔性高分子金属錯体に導電性を付与できる材料としては、自身が酸化還元を行う物質、たとえばフェロセン等も例示できるが、酸化還元性の材料は、多孔性高分子金属錯体の細孔内に生成する金属ナノワイヤと相互作用し、スイッチ機能が低下する可能性があるために好ましくない。このため、炭素−炭素多重結合を分子内に有し、硫黄、窒素等のヘテロ原子を含有するドナー型およびまたはアクセプター型の物質やテトラフルオロほう酸テトラメチルアンモニウムのような電荷を有する有機物が好ましい。
また、導電性助剤Dは金属元素を含まない。フェロセン等のように金属元素を含む物質を導電性助剤Dとして使用すると、前記金属元素が金属ワイヤ生成および生成したワイヤの断裂を阻害することとなり、好ましくない。
【0067】
導電性助剤Dとして使用する物質としては、炭素−炭素多重結合を分子内に有し、硫黄、窒素等のヘテロ原子を含有する物質が挙げられる。
【0068】
あるいは、導電性助剤Dとして使用する物質としては、炭素−炭素多重結合を分子内に有し、且つ前記炭素−炭素多重結合に対し、電子吸引性基または電子供与性基が結合している導電性助剤、あるいは、共役系が発達した芳香族化合物が挙げられる。前記電子吸引性基または電子供与性基としては、例えば、シアノ基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、硫黄原子等が挙げられる。前記共役系が発達した芳香族化合物とは、二重結合、三重結合が少なくとも7個以上共役し、ヒュッケル則を満たしていることで芳香族化合物と見なされる物質を指す。この物質は、多数の共役した二重結合、三重結合の存在により電子の非局在化が可能となる。前記共役系が発達した芳香族化合物としては、例えば、フラーレン類が挙げられる。
【0069】
炭素−炭素多重結合は、多孔性高分子金属錯体に含有される金属イオンMや、配位子Lに含まれる極性を有している酸素や窒素等のヘテロ原子との相互作用を通じて多孔性高分子金属錯体に導電性を賦与していると考えられる。また、導電性助剤内の硫黄、窒素等のヘテロ原子は、導電性助剤内の炭素−炭素多重結合に電子の偏りを起こさせ、多孔性高分子金属錯体と導電性助剤との相互作用を強めていると考えられる。
【0070】
導電性助剤Dの具体例としては、ドナー型分子を提供する物質としてビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン、ビス(メチレンジチオ)テトラチアフルバレン、ビス(トリメチレンジチオ)テトラチアフルバレン、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン−d8、ジメチルテトラチアフルバレン、ホルミルテトラチアフルバレン、フタロシアニン類、テトラチアフルバレン、テトラキス(メチルチオ)テトラチアフルバレン、テトラキス(ペンチルチオ)テトラチアフルバレン、テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン、トリス(テトラチアフルバレン)ビス(テトラフルオロボラート)コンプレックス、テトラキス(エチルチオ)テトラチアフルバレン、テトラチアフルバレン−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンコンプレックス、2,3,6,7−テトラキス(2−シアノエチルチオ)テトラチアフルバレン等が挙げられる。
【0071】
上記の物質のうち、分子が小さく、種々の大きさの細孔を有する多孔性高分子金属錯体に添加できる点で、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン、ビス(メチレンジチオ)テトラチアフルバレン、テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン、テトラチアフルバレン−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンコンプレックス、等が好適に使用できる。但し、多孔性高分子金属錯体が銅イオンを含有している場合は、テトラシアノキノジメタンは、銅イオンとの相互作用が強くなり、細孔内での導電性助剤の運動性が低下し、結果としてスイッチの応答速度が低下するので、多孔性高分子金属錯体が銅イオンを含有している場合はテトラシアノキノジメタン以外の導電性助剤を使用することが好ましい。
【0072】
アクセプター型の分子を提供する物質としては、置換、非置換の1,4−ベンゾキノン類、ビス(テトラブチルアンモニウム)ビス(マレオニトリルジチオラト)ニッケル(II)コンプレックス、1,3−ビス(ジシアノメチリデン)インダン、ビス(テトラブチルアンモニウム)ビス(1,3−ジチオール−2−チオン−4,5−ジチオラト)パラジウム(II)、ビス(テトラブチルアンモニウム)テトラシアノジフェノキノジメタニド、置換、非置換のフラーレン類、2,5−ジメチル−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタン等のテトラシアノキノジメタン類、テトラシアノエチレン、3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチル−4,4’−ジフェノキノンが挙げられる。
【0073】
上記の物質のうち、分子が小さく、種々の大きさの細孔を有する多孔性高分子金属錯体に添加できる点で、置換、非置換の1,4−ベンゾキノン類、ビス(テトラブチルアンモニウム)ビス(マレオニトリルジチオラト)ニッケル(II)コンプレックス、1,3−ビス(ジシアノメチリデン)インダン、ビス(テトラブチルアンモニウム)テトラシアノジフェノキノジメタニド、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンが好適に使用できる。
【0074】
特にテトラチアフルバレン骨格を有する導電性助剤は、材料の耐久性が向上する点で優れている。特にテトラシアノエチレンおよび、官能基が置換したテトラシアノキノジメタン型の導電性助剤は応答速度が速い点で優れている。
【0075】
また、導電性助剤Dには、イオン性液体等の電荷を有する有機物の添加も好ましい。テトラフルオロほう酸テトラエチルアンモニウムのような4級アンモニウム塩類、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミドのようなホスホニウム塩類、ナトリウムジシアナミドの様なアミン‐アルカリ金属イオンコンプレックス、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム p−トルエンスルホナートのようなイミダゾリウム塩類、1−アミノピリジニウムヨージド、1,1’−ジ−n−オクチル−4,4’−ビピリジニウムジブロミドのようなピリジニウム塩類、1−ブチル−1−メチルピペリジニウムブロミドのようなピペリジニウム塩類、トリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのようなスルホニウム塩類等の塩類が挙げられる。また、導電性助剤Dとのイオン的な相互作用が強く、導伝性能を高めることができる点で、ピリジニウム塩類、アンモニウム塩類、スルホニウム塩、ホスホニウム塩類が好適に使用できる。特にアンモニウム塩、ピリジニウム塩類型の導電性助剤はメモリ機能の耐久性の点で優れている。
【0076】
前記の導電性助剤Dは、用途に応じて二種類以上を混合して使用することができる。
【0077】
前記導電性助剤Dの含有量は、前記多孔性高分子金属錯体導電体に対して0.001〜30質量%であることが好ましく、0.005〜15質量%であることがより好ましい。
【0078】
<金属イオンM>
本発明の微小スイッチに用いられる多孔性高分子金属錯体[ML]は、金属イオンMと配位子Lとから形成されている。金属イオンM種の選択は、スイッチング特性に影響を及ぼす。
【0079】
本発明の微小スイッチに用いられる多孔性高分子金属錯体を構成している金属イオンMは、元素の周期表の2〜13族から選ばれる2価、3価、4価の金属イオンである。安定性の高い多孔性高分子金属錯体が形成される点では、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、セリウム、スカンジウム、ジルコニウム、ルテニウム、ロジウム、カドミウム、レニウム等が好ましい。導電性助剤との親和性が高く、導電性が上がりやすい点では、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウムが好ましい。メモリ効果の応答速度が高い点では、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、セリウム、スカンジウム、ジルコニウム、ルテニウム、ロジウム、カドミウム、レニウムが好適に使用できる。微小スイッチ(スイッチング素子)の耐久性が高い点で、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ジルコニウムが好ましい。これらの金属イオンMは、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0080】
金属イオンMが銅イオンであって、電極の活性金属として銅を用いる場合は、電極金属から溶出した銅イオンがナノワイヤになるのを、PCP中の銅イオンが阻害し、導電性が低下する傾向があるため、銅以外の金属イオンが好ましい。
【0081】
本発明の微小スイッチに用いられる多孔性高分子金属錯体は、金属イオンMと配位子Lとから形成されている。配位子L種は、スイッチング特性に影響を及ぼす。以下その説明を行う。
【0082】
<配位子L>
配位子Lは、金属イオンMに配位し得る官能基を2個以上その構造内に含有して、2個の金属イオンMと架橋し得る配位子である。
【0083】
このような配位子物質としては、置換、非置換のテレフタル酸、イソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸、4.4’−ビフェニルジカルボン酸等のジカルボン酸、置換、非置換のトリメシン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸等のトリカルボン酸、置換、非置換の1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸等のテトラカルボン酸類、置換、非置換の4,4’−ビピリジン、1,4−(4−ピリジル)ベンゼンの様なビピリジル類、置換、非置換のイミダゾール類、ベンゾイミダゾール類が挙げられる。
【0084】
安定性の高い多孔性高分子金属錯体が形成される点で、置換、非置換のテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4.4’−ビフェニルジカルボン酸等のジカルボン酸、置換、非置換の4,4’−ビピリジン、1,4−(4−ピリジル)ベンゼンの様なビピリジル類が好適に使用できる。これらの配位子は、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0085】
テレフタル酸や、イソフタル酸のような、カルボキシル基がベンゼン環に対して2個結合している配位子物質は、ベンゼン環の電子密度が低くなり、金属イオンとの相互作用が小さくなり、金属イオンの拡散速度、ナノワイヤの成長、消失速度が向上し、応答速度が向上する点で好ましい。
【0086】
ビフェニルジカルボン酸とDABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)の様な、大きさが違う酸性配位子物質と塩基性配位子物質との組み合わせは、異方性細孔を有する多孔性高分子金属錯体が得られやすい点で好ましい。
【0087】
形成される多孔性高分子金属錯体の細孔には、1次元、2次元、3次元の三種の次元が存在する。図2にそれらの概念図を示す。結晶格子を立方体と仮定した場合、対面にのみ貫通孔が存在するのが1次元細孔、4面に貫通孔が存在するのが2次元細孔、6面すべてに貫通孔が存在するのが3次元細孔である。ネットワーク構造の次元性と細孔の次元性とには直接の関係性は無く、ネットワーク構造や配位子の大きさで、3次元ネットワーク構造であって、3次元細孔を有する物、2次元細孔を有するもの、1次元細孔を有するものなどが存在する。ネットワーク構造の次元性は前述の通り、多孔性高分子金属錯体の柔軟性等に影響するが、細孔の次元性は、細孔内の金属イオンの拡散、ナノワイヤの成長に影響し、結果として電気特性に大きな影響を及ぼす。
【0088】
3次元細孔は、活性金属イオンは拡散性が高く、かつ、ナノワイヤが多方面に成長できることから、導電性が高い材料が得られ、応答速度に優れる。また、ナノワイヤが多方面に伸びる特徴を利用して、クロスポイントのCB−RAMを形成可能であり、すなわちメモリ素子への配線の問題が解決できる点で優れている。
【0089】
2次元細孔は、3次元細孔に比べて、ナノワイヤの成長方向が限定されるため、より小さな微細スイッチの設計が可能となる。1次元細孔は、2次元細孔よりもさらにナノワイヤの成長方向が限定されるため、より微細なスイッチの設計が可能になると共に、ナノワイヤが線状となり、剛性が下がるため、ナノワイヤの成長、消失に伴う多孔性高分子金属錯体への応力発生が低減され、繰り返し特性に優れる。
【0090】
<細孔の異方性>
図3に示すように、結晶格子を立方体と仮定した場合、各面に開いている細孔径が同一ではない場合が異方性細孔である。各面に開いている細孔径が同一である場合が等方性細孔である。異方性細孔を利用する事で、細孔の次元性が3次元であったとしても、ある方位にのみ金属ナノワイヤを成長させることが可能となり、2次元細孔あるいは1次元細孔を有する多孔性高分子金属錯体を利用した場合と同様の効果が得られる場合がある。
【0091】
また、図3に示す様な異方性細孔を有するPCPを利用した場合、導電性助剤の局所的なドーピングが可能となる。たとえば、ある導電性助剤(以下、導電性助剤aと呼称する)を多孔性高分子金属錯体全体に浸漬した後、溶媒等に導電性助剤aを含有した多孔性高分子金属錯体を浸漬すると、図の上下方向の細孔径が大きいため、上下方向にのみ導電性助剤aが抜け出していく。結果、結晶の中心に層状に導電性助剤の添加が可能となる。この材料を、今度は別の導電性助剤(以下、導電性助剤bと呼称する)に浸漬する事で、導電性助剤bは細孔径が大きい上下方向からのみ進入するため、導電性助剤a層の上下に導電性助剤b層を形成する事が可能となる。
【0092】
また、金属基板上に形成された異方性を有する多孔性高分子金属錯体でこの導電性助剤aのドーピング、異方性を利用した脱ドープ、導電性助剤bのドープ操作を行った場合、導電性助剤は基板が存在しない方向にのみ脱ドープするため、ドーパントa、bの積層体が得られる。ドーパントa、bをそれぞれP型n型とすることでpnp接続、pn接続素子の形成が可能となる。
【0093】
<細孔径の影響>
細孔径が大きい多孔性高分子金属錯体は、電極金属の拡散性が高く、また太い金属ナノワイヤが形成されるため、応答速度に優れた材料が得られる。細孔径が小さい多孔性高分子金属錯体は、電極金属の拡散性が低く、また細い金属ナノワイヤが形成されるため、材料の応答速度には劣るが、セルサイズを小さくすることが可能となり、より小さなスイッチを形成する事ができる。また、金属ナノワイヤが細いため、ナノワイヤの形成、消失にともなう多孔性高分子金属錯体への応力発生が小さく、材料の耐久性に優れる。
【0094】
<細孔の方位>
異方性がない三次元構造の細孔以外は、活性金属電極と対極との間に金属ナノワイヤが成長する方位に細孔が存在している必要がある。たとえば、1次元細孔が、活性金属電極と並行に存在していても、導電性は得られず、メモリ効果も発現しない。活性金属電極と対極の間に金属ナノワイヤが成長する方位に細孔を成長させるためには、カルボン酸類の添加やアンカー層の利用等の、既存の結晶方位を制御する手法が利用できる。また薄膜X線により、結晶の中の細孔の方位を確認する事が可能である。
【0095】
<PCPネットワーク構造とスイッチング特性の説明>
PCPのネットワーク構造は、導電性、スイッチング特性に影響を及ぼす。3次元型PCPとは、配位子と金属イオンとで構成される、ネットワーク構造が3次元のジャングルジム様状態であるPCPである。3次元PCPは、その構造のため、堅牢性に優れている。すなわち、メモリの耐久性の特性の点で優れている。
【0096】
2次元型PCPとは、たとえば網の様に、金属イオンと配位子とで形成されるネットワーク構造が2次元であるPCPである。ネットワーク構造自体は2次元であるが、これが多数積層する事で結晶構造を形成する。各2次元のネットワーク間は、弱い分子間相互作用が働いているだけであるため、各ネットワークが相互に、わずかにずれ得るため、比較的柔軟性に優れている。このため、薄膜化した際にも、外部応力によりクラックが入りにくい等の点で優れている。
【0097】
1次元型PCPは金属イオンと配位子とで形成されるネットワークが線状構造を有しているPCPである。ネットワーク構造自体は1次元であるが、これが多数積層する事で結晶構造を形成する。各1次元のネットワーク間は、弱い分子間相互作用が働いているだけであり、各ネットワークが相互に、ずれ得るため、柔軟性に優れている。このため、ナノワイヤの形成、消失を繰り返しても材料にストレスがたまりにくく、応力割れ等の欠陥が生じにくいため、繰り返し特性の点で優れている。
【0098】
<多孔性高分子金属錯体導電体層の形成方法>
本発明では、基板上に多孔性高分子金属錯体導電体層を形成する。
【0099】
<膜厚>
多孔性高分子金属錯体導電体の層の厚みは、用途に応じて決める事ができる。メモリとして利用する場合には、0.1〜1000nm、応答速度の速さの観点から0.3〜600nmが好ましく、1〜500nmがより好ましい。
【0100】
<形成方法>
多孔性高分子金属錯体導電体層の形成は、既知の種々の方法を利用することができる。
(1)浸漬法
浸漬法は、基板(例えば、Au、Pt、W、Ru、In、Rh等の貴金属、シリコン、あるいはCu、Ag、Zn、Co、Mn等の遷移金属、あるいはAlから選ばれる金属板やその酸化物の板であり、あるいは、これら金属や金属酸化物を担持したアルミナ等の多孔質材料)に、多孔性高分子金属錯体の形成の足場となる物質(以下、「アンカー材」という)で層(以下、「アンカー層」という)を形成した後に、これを、多孔性高分子金属錯体の原料となる配位子物質、金属イオンを含有する溶液に浸漬する方法である。
【0101】
これの変法として、アンカー層を形成した基板を、配位子溶液、金属イオン溶液に交互に浸漬することで、ステップワイズに多孔性高分子金属錯体層を形成させる方法がある。本方法は、厚みを精密に制御できる点で好適である。
【0102】
アンカー材として利用できる物質は、分子の一端に基板に対して親和性を有する官能基を有し、逆の一端に多孔性高分子金属錯体に対して親和性を有する官能基を有する物質等が挙げられる。
【0103】
基板に対して親和性を有する官能基としては、チオール、カルボン酸、リン酸、スルホン酸、アミノ基、ピリジル基等が挙げられる。多孔性高分子金属錯体に対して親和性を有する官能基としては、カルボン酸、リン酸、スルホン酸、アミノ基、ピリジル基等が挙げられる。
【0104】
具体的なアンカー材物質としては、1位にSH基、6位にカルボキシル基を有するノルマルヘキサン、1位にSH基、6位にピリジル基を有するノルマルヘキサン、1位にSH基、6位にスルホン酸基を有するノルマルヘキサン等が挙げられる。アンカー材物質は、必ずしもヘキシル基を有する必要はなく、種々の長さの直鎖、分岐鎖のアルキル鎖や芳香族化合物が利用できる。
【0105】
アンカー層として利用される物質は、分子の両末端に官能基を有する有機物等が挙げられる。すなわち、一端に金属類との相互作用を有するチオール等の官能基、他方に、金属イオンと相互作用しうるカルボキシル基やピリジル基を有する化合物が好ましい。
【0106】
具体的には、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパノール、4−メルカプトブタノール、5−メルカプトペンタノール、6−メルカプトヘキサノール、12−メルカプトウンデカノール等のアルコールなどのアルコール類、2−メルカプトエタン酸、3−メルカプトプロパン酸、4−メルカプトブタン酸、5−メルカプトペンタン酸、6−メルカプトヘキサン酸、12−メルカプトウンデカン酸、12−メルカプトドデカン酸、4−(2−メルカプトエチル)安息香酸、4−(4−メルカプトブチル)安息香酸、4−(12−メルカプトウンデカン)安息香酸等が挙げられる。
【0107】
多孔性高分子金属錯体が緻密に形成される点で、アルキル基の炭素数が4〜12の前記アルコール類、カルボン酸類や、末端にチオール基を有し、炭素数が4-18のノルマルアルキル末端カルボン酸が好適に利用できる。
【0108】
アンカー層の厚みは、多孔性高分子金属錯体が緻密に形成される点で0.5〜400nmが好ましく、1〜40nmがより好ましい。また、導電性を低下させない観点から0.3〜120nmが好ましく、2〜20nmがより好ましい。
【0109】
またアンカー層を形成せずに、基板上に直接多孔性高分子金属錯体を形成する手法も知られている。この場合も、上記同様、金属イオンと配位子物質の両方を含有した溶液に基板を浸漬する方法と、金属イオン、配位子物質のどちらかを含有した溶液に交互に基板を浸漬する方法とが知られている。
【0110】
上記の溶液を使用して多孔性高分子金属錯体層を形成させる方法の変法として、基板を、金属イオンを含有しない配位子物質溶液に浸漬し、基板と配位子物質との反応、もしくは基板から溶液に溶出する金属イオンとの反応により、金属塩の添加なしで多孔性高分子金属錯体層を形成させる方法も挙げられる。本方法は、非常に緻密な多孔性高分子金属錯体層が形成できる点で好ましい。
【0111】
上記類似の方法として、金属酸化物と配位子物質との反応により、多孔性高分子金属錯体層を形成させる方法も挙げられる。本方法を利用する場合は、基板表面に金属酸化物層を有する材料が利用できる。金属酸化物層の厚みは、用途に応じて選択できるが、緻密な多孔性高分子金属錯体層を形成できる点で0.1〜1000nmが好ましく、1〜500nmがより好ましい。
【0112】
(2)吹きつけ法
基板を、多孔性高分子金属錯体層を形成させ得る溶液に浸漬する代わりに、加熱または非加熱状態の基板に、多孔性高分子金属錯体層を形成させ得る溶液を吹き付ける方法も利用可能である。吹きつけ方法に関しては、一般的なスプレー噴霧や、インクジェット方式による噴霧等、既知の方法が利用できる。本方法に於いても、アンカー層を形成しておく方法も利用可能である。
【0113】
(3)塗布方法
上記以外の方法として、配位子物質、金属イオン等を含有し、多孔性高分子金属錯体層を形成させ得るスラリーを基板に塗工する方法も挙げられる。塗工方法としてはディップコート、スピンコート等の既知の方法が利用可能である。
【0114】
<多孔性高分子金属錯体導電体の調製方法>
本発明の多孔性高分子金属錯体導電体は、多孔性高分子金属錯体に導電性助剤を添加する事で調製が可能である。
【0115】
多孔性高分子金属錯体に導電性助剤を添加する手法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)含浸法
導電性助剤を溶解した溶液に多孔性高分子金属錯体を含浸させる含浸法が挙げられる。含浸法は、多様な導電性助剤を多孔性高分子金属錯体に添加する事ができる点で優れている。また導電性助剤の添加量を、導電性助剤の濃度や、含浸時間、温度を制御することで制御可能である点でも優れている。
【0116】
(2)シップインボトル法
また別の手法として、多孔性高分子金属錯体を合成する際に、導電性助剤を共存させ、多孔性高分子金属錯体の細孔内に導電性助剤を導入する方法も挙げられる。シップインボトル法により多孔性高分子金属錯体の細孔内に導電性助剤を導入する方法は知られていないが、触媒を多孔性高分子金属錯体の細孔内に導入するシップインボトル法は公知である(Zawarotkoら、J. Am. Chem. Soc., (2011) 10356)。具体的には溶液に多孔性高分子金属錯体の原料となる金属塩、配位子物質および導電性助剤を溶解させ、加温等で多孔性高分子金属錯体を調製する方法である。
【0117】
多孔性高分子金属錯体の中には、細孔にくびれがあるものがあり、このような多孔性高分子金属錯体では、くびれが邪魔をして導電性助剤が細孔の中に入らない場合があるが、本方法によれば、このようなタイプの多孔性高分子金属錯体の細孔に導電性助剤を導入する事が可能となる。この結果、多量の導電性助剤を細孔内に導入することが可能となり、優れたメモリ保持時間を有する材料が得られやすい。導電性助剤の添加量は、合成時に、共存させる導電性助剤の量を制御する事で制御可能である。
【0118】
本発明は、導電性多孔性高分子金属錯体と酸化還元電位が異なる二種類の電極金属とから形成される微小スイッチである。以下で、二種類の電極金属に関する説明と、それらの金属と多孔性高分子金属錯体導電体から形成される微小スイッチの形成方法を以下に説明する。
【0119】
<電極金属>
本発明の微小スイッチでは、酸化還元電位が異なる二種類の金属を電極に用いる。電極金属として、酸化還元電位の差が0eV以上〜5.0eV以下となる金属を組み合わせることが好ましく、0.01eV以上〜1.0eV以下となる金属を組み合わせることがより好ましい。
【0120】
第1電極に用いることができる金属の例としては、Au、Pt、W、Ru、In、Rh、およびシリコンを挙げることができる。これらの金属は、溶媒に対する溶出等が起きにくく、電気的に安定である。Pt、Au、Ru、Ir、Wが化学的に安定的で溶けにくいので好ましく、中でもAu、Ptが、電気化学的に安定である点でより好ましい。
【0121】
また、第1電極として、酸化インジウムスズ(ITO:Tin−doped InO3)、Nb等をドープした酸化チタン、GaやAl等をドープした酸化亜鉛、Nb等をドープしたSrTiO、SrRuO、RuO、IrO等の酸化物を用いることができる。
【0122】
第2電極に用いることができる金属としては、低電圧で溶出する金属であって、電気化学的に活性な導電性金属で構成され、Ag、Cu、Pb、Sn、Zn、Niのいずれかまたはそれらの組み合わせから選ばれる金属を用いることができる。Ag、Cuが、導電性の高さで特に好ましい。
【0123】
また、第1電極にPCP層の細孔内をイオンマイグレーションし難い金属を、第2電極にPCP層の細孔内をイオンマイグレーションし易い金属を用いることもある。また、第1電極と第2電極との組み合わせの際には、PCP層の細孔内における電極金属のイオン化のし易さとイオンマイグレーションのし易さが共に第一金属<第二金属である必要がある。
【0124】
第1電極、第2電極の厚みは用途に応じて選べば良いが、0.1nm〜100μmであることが好ましく、1nm〜500nmであることがより好ましい。メモリの小型化のためには、第1電極、第2電極の厚みはできるだけ薄い方が好ましく、500nm以下とすることが好ましい。しかしながら、本方法には、PCPの形成の際に金属を溶出させて、その溶出したイオンをPCPの原料として使用する方法が含まれているため、極端に薄い場合は、金属がすべて溶け出してしまい電極が無くなる恐れがある。よって、金属イオンの供給源としての原子数を確保し、安定的な繰り返し特性(耐久性)を得るためには、第1電極、第2電極の厚みを1nm以上とすることが好ましい。
【0125】
<回路の構成>
回路構成としては、図4に示すように、積層型、平面型、サンドイッチ型が、挙げられる。平面型はプリンタブル技術を利用した回路形成に好ましい。サンドイッチ型は、高集積化に有利である。積層型はさらなる高度化、高機能化に有利である。
【0126】
<微小スイッチの形成方法>
図4に示す微小スイッチを形成できれば何れの形成方法も用いることができる。第1電極金属、第2電極金属に多孔性高分子金属錯体導電体を接触させる必要があるが、多孔性高分子金属錯体は、膜状、粒子状のいずれであってもよい。また、多孔性高分子金属錯体を調製した後、一種または二種の金属に接触させた後、これに導電性助剤を添加する事で多孔性高分子金属錯体を多孔性高分子金属錯体導電体に変換して、本発明の微小スイッチを形成しても良い。
【0127】
具体的にはたとえば、以下の(1)〜(4)の方法が挙げられる。
(1)酸化還元電位の異なる二種類の金属の一方の金属板の上に多孔性高分子金属錯体導電体層を形成し、もう一方の金属電極をその上にスパッタ、蒸着等で形成する方法。
(2)酸化還元電位の異なる二種類の金属板の一方の金属板の上に多孔性高分子金属錯体を形成し、これに導電性助剤を作用させて多孔性高分子金属錯体を導電体化した後、導電体化した多孔性高分子金属錯体の上にもう一方の金属をスパッタ、蒸着等で電極を形成する方法。
(3)酸化還元電位の異なる二種金属のギャップをあらかじめ構成しておき、そこに膜または粒子状の多孔性高分子金属錯体を形成させ、これに導電性助剤を作用させて多孔性高分子金属錯体を導電体化させる方法。
(4)酸化還元電位の異なる二種金属のギャップをあらかじめ構成しておき、そこに膜または粒子状の多孔性高分子金属錯体導電体を形成させる方法。
【0128】
<微小スイッチの構造>
微小スイッチの構造としては、図5A図5Dに挙げられるような、多孔性高分子金属錯体導電体(図中では「PCP」で表している)に対して複数の電極が取り付けられている構造を挙げることが出来る。多孔性高分子金属錯体導電体に対する電極の位置としては、図5A図5Bの様なサンドイッチ構造の他、図5Cの様な位置関係、あるいは、図5Dの様な、同一面上に設置する方法が挙げられる。これらの内、どのような構造にするかは、目的とする微小スイッチの機能および、組み込む装置等の構造により選ぶことが出来るが、構造を薄く出来る点からは図5A図5Bの構造が好ましく、応答速度を電極間が短く、応答速度を上げられる観点からは図5Aの構造が好ましく、電極が同一面にあり、製造が容易という点では、図5Dの構造が好ましい。
【0129】
<微小スイッチへのアクセス方法>
従来のNANDフラッシュ等で利用されている技術を利用することができる。
【0130】
本発明の微小スイッチで、ドーパントを局所ドーピングする事で、回路の形成、トランジスタの形成等への応用が可能となる。以下、回路の形成、トランジスタの形成等への応用を説明する。
【0131】
<ドーパントの局所ドープ方法と大きさ>
ドーパントを局所ドープする事でpn接合等の形成が可能となる。その形成方法は特に限定されない。フォトリソグラフの技術を用いてマスキングを行った後に浸漬法でドーピングする方法が挙げられる。ドーパントを局所ドープする事でLSIを形成する事が可能である。
【0132】
局所ドープ方法としては、MOF(Metal-Organic Framework)膜に対し、プリンタブル技術を応用し、局所に目的とするドーパントをドープする事が必要である。インクジェットを利用した場合、数百nm〜数百μm程度のドープが行える。但し、機能発現の為にはPCPで構成される1セルに対し、1分子のドーパントの添加があれば最低限可能となる。
【0133】
<pn接合の形成方法>
プリンタブル技術によって、p型ドーパント、n型ドーパントを任意の場所に入れ分けることで、本発明の微小スイッチをpn接合素子として利用する事が可能である。
【0134】
別の入れ分け方法としては、マスキングして回路を形成した後に、p型ドーパントを浸漬させ、脱マスクを行い、そこにn型ドーパントをドーピングする手法および、その反対の手法が挙げられる。また多孔性高分子錯体には、異方性が存在する物が存在するため、p型ドーパントを浸漬させ、p型ドーパントがドープされた多孔高分子錯体を調製した後、溶液に接触させると、特定面のみから脱ドーパント現象が生じる。本性質を利用して、脱ドーパント領域にn型ドーパントをドーピングする事でpn接合を形成する事が可能となる。
【0135】
<トランジスタの形成方法>
上記同様の方法でpnp型接合、npn型接合を形成させれば、トランジスタとしての利用が可能となる。
【0136】
<バルクへテロジャンクション型太陽電池>
上記技術を利用することで、pn接合面の数を非常に増加させた素子を調製することが可能となる。本材料は、高性能なバルクへテロジャンクション型の太陽電池として利用することが可能である。
【0137】
本発明の多孔性高分子金属錯体導電体は、多孔性高分子金属錯体に、導電性助剤を添加してなる材料である。導電性助剤は、多孔性高分子金属錯体の金属イオンや配位子に含まれる酸素、窒素等の極性を有している部位と相互作用することで、導電性を向上させる。また、多孔性高分子金属錯体の細孔の内部で比較的アスペクト比が大きい導電性助剤が、電圧印加に伴い、回転し、もしくは細孔内の位置の変化が生じ、細孔内の実効的な容積が変化し、この実効的な細孔容積の変化と、電圧印加に伴う電極の金属イオンの細孔内拡散及びこれの還元に基づく金属ナノワイヤの生成並びにこの逆反応に基づく金属ナノワイヤの消失とにより、スイッチ効果を発現していると考えられる。
【0138】
多孔性高分子金属錯体導電体は、電圧の印加によって、実効的に分解しない堅牢性を有している事が重要である。導電性助剤の細孔内での回転や位置の変化、さらにはナノワイヤの生成の為には、導電性助剤が比較的アスペクト比が大きい形状を有しており、且つ、細孔内で導電性助剤分子が移動できる程度の空隙が生じる程度の大きさであることが重要であると考えられる。しかし、本発明はこの理論に拘束されるものではなく、本発明の多孔性高分子金属錯体の特性もこの理論によって制限されるものではない。
【0139】
<多孔性高分子金属錯体の分析>
多孔性高分子金属錯体の分析には種々の条件があり、一義的に決定できるものではないが、単結晶の場合は単結晶X線構造解析が利用できる。既知の多孔性高分子金属錯体は、単結晶の場合および粉末サンプルの場合いずれも粉末X線回折により、既知の粉末X線回折パターンと照合することで、分析が可能である。また、多孔性高分子金属錯体の多孔性は、熱重量分析により、細孔内に含まれている溶媒等の量を測定することで、およその多孔性の予測が可能である。粉末X線回折測定には、ブルカーAX(株)社製粉末X線装置DISCOVER D8 with GADDS、及びリガク(株)社製粉末X線装置SmartLabを用いることができる。TG測定にはリガク熱重量分析機TG8120を用いることができる。
【0140】
<PCPの基板上への形成>
多孔性高分子金属錯体(PCP)の基板上への形成方法は、既知の手法が利用でき、緻密な多孔性高分子金属錯体が形成できればよい。例として配位子と金属イオンが溶解した溶液に基板を浸漬する方法(Fiscerら、Chem. Commun. 2009, 1031)、配位子溶液と金属イオン溶液に交互に基板を浸漬するステップバイステップで多孔性高分子金属錯体を形成する方法(Fiscerら、Angew. Chem. Int. Ed.2009, 48, 5038)、基板と配位子を反応させる方法(Kitagawaら、Nature Mater. (2012)717), CVD法を利用する方法(Fiscerら、J. Am. Chem. Soc., 2008,130, 6119)等が挙げられる。膜厚の分析は、一般的なPtデポジション後、SEMによる断面観察が利用できる。
【0141】
<メモリとしての評価手法>
電圧掃引−電流測定によって抵抗ヒステリシスを確認することで、メモリとしての動作を確認する。測定には半導体パラメータ・アナライザAgilent 4155Cを用いることができる。
【0142】
回路は電極/PCP/電極(GND)型の素子に、二端子コンタクトを取ることで形成した。コンタクトは日本マイクロニクスHFP−120A−201尖端径3umのタングステン同軸プローブを用いることができる。
【0143】
半導体パラメータ・アナライザAgilent 4155Cによる電圧掃引はAgilent VEEによる自作プログラムにて20mVステップで電圧を変化させながら行っている。ここで、印加電圧は素子構造及び特性に応じて0−20V、電圧印加速度は64us/20mV、set時に素子破壊を防ぐための制限電流値Icompは1mAと設定した。また、メモリ素子の抵抗値Rregの読み出し電圧Vreadは0.2Vであり、Set動作、Reset動作の電圧上昇及び降下時に計測している(式A参照)。Rreg=V(0.2V)/I(0.2V) …(式A)
【0144】
図1は、本発明の微小スイッチから作製したメモリ素子のデータ保持特性の評価を表したグラフである。データ保持特性の評価では0.2Vの電圧を低抵抗時にはReset方向に、高抵抗時にはSet方向に印加しその時の抵抗値を(式A)の方法で導出することで、評価している。測定間隔は10秒刻みであり、測定時間は1分から24時間で行った。また、繰り返し動作特性の評価においては、ここに記述した電圧印加を繰り返すことで確認している。
【実施例】
【0145】
以下、本発明の好ましい例を説明するが、本発明はこれら例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
【0146】
実施例(発明例)および比較例の微小スイッチの多孔性導電体、第1電極、第2電極の詳細を、以下の各表に示す。表中の略語は以下の通りである。
TCNQ:テトラシアノキノジメタン
TCNE:テトラシアノエチレン
TTF:テトラチアフルバレン
BEDT-TTF:ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン-テトラチアフルバレン複合体
TDAE:テトラキス(ジメチルアミノ)エチレン
BMIB:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド
TMATFB:テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレート
TMAHFP:テトラメチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート
【0147】
<電気化学的評価項目>
<メモリ機能の定義>
低抵抗状態の抵抗値をRL、高抵抗状態の抵抗値をRHと定義し、メモリ機能を以下のように評価した。
【0148】
抵抗比RH/RLを、
100以上:A
10以上、100未満:B
1.5以上、10未満:C
1.5未満:D
と評価した。
【0149】
<メモリの耐久性>
メモリの耐久性は、材料調製後、3日以内のI−V評価の値(初期値)に対し、1ヶ月後の評価の値で定義できる。初期値に対し、80%以上の値を保持しているものをA、50%以上80%未満の値を保持しているものをB、30%以上50%未満の値を保持しているものをC、30%未満の値を保持しているものをDとした。
【0150】
<メモリの応答速度(スイッチング素子の応答速度)>
メモリの応答速度は、ある幅を持つ電圧パルス(又は電流パルス)をメモリ素子に印加し、スイッチング(リセット又はセット)が生じるまでパルス高さを徐々に増加させることで見積もられる。リセット或いはセット発生の判断基準は(1)メモリ機能の定義に示した通りである。
【0151】
複数のパルス幅に対してスイッチングが生じるパルス高さを求めることで、パルス幅、即ち、メモリの応答速度とパルス高さの関係が得られる。この関係を内挿或いは外挿することで、任意のパルス高さに対するメモリ応答速度を見積もることができる。同様に、ある高さを持つ電圧パルス(又は電流パルス)をメモリ素子に印加し、スイッチング(リセット又はセット)が生じるまでパルス幅を徐々に増加させることによっても、パルス高さとメモリ応答速度の関係を求めることが可能である。高さ3Vのパルス電圧を印加した際の応答速度により、以下の基準で性能を判断する。
【0152】
10ns以上、1μs未満:A
1μs以上、10μs未満:B
10μs以上、100μs未満:C
100μs以上:D
【0153】
<メモリの保持時間>
メモリのデータ保持時間は、一定電圧或いは一定電流を保持した状態でメモリ素子の抵抗推移をモニターし、モニター下にあるメモリの抵抗が低抵抗或いは高抵抗と定義された抵抗値の範囲を外れるまでの時間を評価することで見積もられる。温度或いは湿度を上げることで加速試験を行うケースが多い。
【0154】
評価基準として、定義された抵抗値の範囲を外れるまでの時間が、24時間以上をA、5000秒以上24時間未満をB、100秒以上5000秒未満をC、100秒未満をDとして評価した。
【0155】
<メモリの書き換え回数(繰り返し可能回数)>
メモリの書き換え回数(繰り返し可能回数)の見積もりは、電圧掃引(又は電流掃引)或いはパルス電圧(又はパルス電流)を印加し、低抵抗化(セット)と高抵抗化(リセット)を交互に繰り返すことで評価される。セット或いはリセットが起こるべき場面において、電圧掃引(又は電流掃引)或いはパルス電圧(又はパルス電流)印加後の抵抗値が、低抵抗或いは高抵抗と識別される抵抗の範囲内にスイッチしない時、これをエラーとみなし、ここまでのスイッチング回数を繰り返し可能回数と定義する。±1V/sの一定速度で、電圧を±3Vまで繰り返し掃引することで、リセットを交互に発生させる。動作不能となるまでスイッチングを繰り返し、次の条件で繰り返し、特性の優劣をランク分けして評価した。
A:10回以上
B:10回未満〜10回以上
C:10回未満〜10回以上
D:10回未満
【0156】
実施例1(発明例)
通称HKUST−1と呼ばれる、銅イオンを含有し、三次元等方性のネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体を、Fiscerら、Chem. Commun. 2009, 1031等の論文の条件で、但し、電極金属の存在下で合成することで、電極上にHKUST−1の薄層(厚み0.1〜1ミクロン)を形成した。ここで三次元等方性のネットワーク構造とは、X線構造解析により明らかにされた結晶構造が、X、Y、Zのいずれの軸から見ても等しい構造である構造を意味する。本多孔性高分子金属錯体を表面に積層した電極を、導電性助剤であるテトラシアノキノジメタンのジクロロメタン飽和溶液に、室温で24時間浸漬した。この導電性助剤を添加することにより形成された多孔性高分子金属錯体導電体を表面に有する電極を、前述の方法にてメモリ回路に形成し、上述した電圧掃引−電流測定によって抵抗ヒステリシスを確認することでメモリ効果を確認した。
この例では、スイッチング素子の応答速度は問題ないが、耐久性は低かった。これは、HKUST−1の細孔のサイズに対し、ドーパントのテトラシアノキノジメタンが小さく、またHKUST−1に含まれている銅イオンとテトラシアノキノジメタンの相互作用が弱いため、HKUST−1の細孔の中でドーパントのテトラシアノキノジメタンが移動してしまい、メモリ効果が失われたと推測される。
【0157】
実施例2〜10(発明例)
実施例1と同様にして、各種導電助剤を含有する材料を調製し、実施例1と同様の方法にて評価した。その結果メモリ効果を確認した。
【0158】
実施例11〜20(発明例)
Caskeyら、J.J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 10870に「CPO-27-Ni」と記載の、ニッケルイオンを含有し、三次元等方性のネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体を文献記載の方法で合成し、実施例1〜10と同様に導電性材料に調製し、メモリ効果の評価を行った。その結果優れたメモリ効果を確認した。
【0159】
実施例21〜32(発明例)
Kimら、Angew. Chem. Int. Ed. (2004) 5033に記載の、亜鉛イオンを含有し、三次元異方性のネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体(文献に化合物1と記載)を含有し、文献記載の方法で合成し、実施例1〜10と同様に導電性材料に調製し、メモリ効果の評価を行った。その結果優れたメモリ効果を確認した。ここで三次元異方性のネットワーク構造とは、X線構造解析により明らかにされた結晶構造が、X、Y、Zのいずれかの軸から見ると、他の軸から見た構造と異なる構造であること意味する。
【0160】
実施例33〜41(発明例)
Burrowsら、Dalton Trans. (2008) 6788に記載の、銅イオンを含有し、2次元ネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体(文献に化合物1と記載)を含有し、文献記載の方法で合成し、実施例1〜10と同様に導電性材料に調製して、メモリ効果の評価を行った。その結果、優れたメモリ効果を確認した。
【0161】
実施例42〜50(発明例)
森ら、Chem. Lett., (2002)12に記載の、ロジウムイオンを含有し、1次元ネットワーク構造を有している多孔性高分子金属錯体(文献に化合物1と記載)を含有し、文献記載の方法で合成し、実施例1〜10と同様に導電性材料に調製し、メモリ効果の評価を行った。その結果、優れたメモリ効果を確認した。
【0162】
【表1】
【0163】
実施例51〜100(発明例)
実施例1〜50と同様に、各種ドーパントを含有する多孔性高分子金属錯体を合成し、メモリ効果を確認した。但し、実施例1〜50の様に、多孔性高分子金属錯体を合成したのちに、導電性助剤を添加するのでは無く、Zawarotkoら、J. Am. Chem. Soc., (2011) 10356に記載のように、多孔性高分子金属錯体を合成する溶液中に目的とする導電性助剤を共存させることで、多孔性高分子金属錯体の細孔内に導電性助剤を取り込ませる、シップインボトルの方法にて、導電性助剤−多孔性高分子金属錯体の複合体を合成している。
【0164】
【表2】
【0165】
実施例(発明例)の評価結果を以下の各表に示す。
【表3】
【0166】
【表4】
【0167】
比較例1〜5
比較例1〜5として、上記実施例1、11、21、33、42と同様の方法で多孔性高分子金属錯体を合成し、但し、導電性助剤を添加すること無く調製した。これらの評価を行った結果を表5に示す。いずれの比較例も、メモリ機能は評価がDとなった。また、十分なメモリ機能が得られていないため、耐久性及びスイッチング素子の応答速度については評価することができなかった。
【0168】
【表5】
【0169】
実施例(発明例)および比較例の微小スイッチの多孔性導電体、第一電極、第二電極の詳細を表6および表7に示す。
【0170】
【表6】
【0171】
【表7】
【0172】
表6,7の中の略語は以下の通りである。
TCNQ:テトラシアノキノジメタン
BEDT-TTF:ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン
btc:トリメシン酸
tpa:テレフタル酸
btb:1,3,5−(4−カルボキシフェニル)ベンゼン
bpy:4,4’−ビピリジル
Hatz:3−アミノ−1,2,4−トリアゾール
Bpe:1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン
Dabco:1,8-ジアザビシクロオクタン
3,6−ビス−(ピリジン−4−イル)−1,2,4,5−テトラジン
ipa:イソフタル酸
pyz:ピラジン
【0173】
表6,7中「多孔性高分子金属錯体ネットワーク」とは、多孔性高分子金属錯体の骨格の次元性(1次元、2次元、3次元)を意味する。「細孔タイプ」とは、多孔性高分子金属錯体が有する細孔の次元性(1次元、2次元、3次元)を意味する。
【0174】
実施例101
通称HKUST−1と呼ばれる多孔性高分子金属錯体(Williamsら、Science (1999) 283, 1148のHKUST-1と記載の化合物)を、活性金属の存在下で合成する事で、活性金属の表面にHKUST−1の薄膜(約100ミクロン厚)を形成させた。本材料を、導電性助剤であるテトラシアノキノジメタンのジクロロメタン飽和溶液に、室温で24時間浸漬した。本導電性助剤を添加することにより形成された多孔性高分子金属錯体導電体を表面に有する電極を、前述の方法にてメモリ回路に形成し、上述した電圧掃引−電流測定によって抵抗ヒステリシスを確認することでメモリ効果を確認した。
【0175】
実施例102〜121
表6に記載の文献の方法に従い、活性金属表面に合成し、実施例101と同様の手法により、表6に記載の導電性助剤1飽和溶液に含浸して多孔性高分子金属錯体導電体を表面に有する電極を作成し、さらに実施例101と同様にしてメモリ回路を形成した。評価結果を表8に記載する。多孔性高分子金属錯体を構成する金属イオンが銅イオンの場合は、繰り返し可能回数が比較的低い傾向が見られた。多孔性高分子金属錯体ネットワークが3次元の物は、比較的メモリ保持時間が短い傾向が見られた。
【0176】
実施例122〜124
表6に記載の方法で、実施例102〜121と同様にしてメモリ回路を形成した。ただし、実施例102〜120とはドーパントが異なっている。評価結果を表に記載する。
【0177】
実施例125〜127
表6に記載の方法で、実施例102〜120と同様にしてメモリ回路を形成した。ただし、導電性助剤1の飽和溶液に、テトラフルオロほう酸テトラエチルアンモニウムを導電性助剤2として、飽和濃度で共存させた溶液を使用した。評価結果を表に記載する。
導電性助剤2がある条件では、多孔性高分子金属錯体を構成する金属イオンが銅イオンであってもすぐれた繰り返し可能回数であった。
【0178】
実施例128〜130
表6に記載の方法で、実施例102〜120と同様にしてメモリ回路を形成した。ただし、多孔性高分子金属錯体を合成する際に、表6に記載の導電性助剤1を飽和濃度の1/10の濃度で共存させた(シップインボトル法)。評価結果を表8に記載する。シップインボトル法で製造した場合には、多孔性高分子金属錯体ネットワークが3次元であってもメモリ保持時間が優れていた。
【0179】
実施例131
金属銅板を、0.2mM濃度のトリメシン酸エタノール溶液50mLに浸漬し、40℃で6時間反応させた後、銅板を溶液からピンセットで取り出し、無水エタノール溶液に3回、10秒ずつ浸漬して洗浄し、室温で減圧乾燥した。粉末X線の解析の結果、Williamsら、Science (1999) 283, 1148にHKUST-1と記載の化合物であることを確認した。本材料
を実施例101と同様にしてメモリ回路を構成した。
【0180】
実施例132
実施例131と同様に、ただし、導電性助剤1としてBEDT-TTFを使用してメモリ回路を構成した。
【0181】
実施例133
実施例131と同様に、ただしトリメシン酸のかわりにテレフタル酸をもちいた。銅板上に形成された化合物が、Tannenbaumら、Eur. J. Inorg. Chem., 2009, 2338に記載の化合物(Cu2+イオン、テレフタル酸、およびゲスト分子のDMFから構成されたCu(tpa)・(dmf)と表記されている多孔性高分子金属錯体)であることを確認した。本材料を用いてメモリ回路を構成した。
【0182】
実施例134
実施例133と同様に、ただし、導電性助剤1としてBEDT-TTFを使用してメモリ回路を構成した。
【0183】
比較例6
実施例101と同様にメモリ回路を構成した。ただし、導電性助剤の溶液への含浸は行わなかった。本メモリ回路はメモリ効果を発現しなかった。
【0184】
比較例7
実施例101と同様にメモリ回路を構成した。ただし、活性金属は使用せず、両電極ともプラチナを使用した。本メモリ回路はメモリ効果を発現しなかった。
【0185】
比較例8
表7記載の文献に従い、材料を調製し、実施例101と同様にメモリ回路を構成した。すなわち、金属イオンにBi(15族)を使用した。本メモリ回路はメモリ効果を発現しなかった。
【0186】
【表8】
【0187】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明は、多孔性高分子金属錯体に、導電性助剤を添加して得られる新規な多孔性高分子金属錯体導電体と、二種類の電極金属から構成される微小スイッチを提供することができる。本発明の多孔高分子金属錯体導電体と二種の金属から形成される微小スイッチは、メモリとして利用する事が可能である。また本発明はランダムアクセスメモリ、ストレージクラスメモリ及びそれを活用した集積回路(メモリチップ、LSI)、記憶装置(SSD、SDカード、USBメモリ等のこと)、学習機能を備えたメモリ回路、FPGA(Field Programmable Gate Array)用の回路切り替えスイッチ、その他装置(センサ)として利用する事が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D

【手続補正書】
【提出日】2018年7月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
【非特許文献1】北川進、集積型金属錯体、講談社サイエンティフィク、2001年214-218頁
【非特許文献2】Yaghiら、Science (2008)939
【非特許文献3】Rosseinskyら、Microporous and mesoporous Mater.73,(2004),15
【非特許文献4】Volkmerら、Adv. Funct. Mater. (2014) 3885
【非特許文献5】Veciana/maspocら、Chem. Soc. Rev. (2007)36, 770
【非特許文献6】JaniakらDalton trans. (2003) 2781
【非特許文献7】Kepert,C,JらChem. Commun. (2006) 695
【非特許文献8】Allendorfら、Science (2014) 343, 66
【非特許文献9】Dunbarら、Angew. Chem. Int. Ed. Eng. (2011) 6543
【非特許文献10】北川ら、Inorg. Chem. (2011) 172
【非特許文献11】北川ら、J. Am. Chem. Soc. (2006) 16416
【非特許文献12】北川ら、J. Am. Chem. Soc. (2007) 10990
【非特許文献13】酒田ら、Science 2013, 339, 193-196.
【非特許文献14】金子ら、J. Am. Chem. Soc. (2010) 2112
【非特許文献15】Longら、J. Am. Chem. Soc. (2011) 14522
【非特許文献16】Liら、Adv. Funct. Mater. (2015) 2677
【非特許文献17】S. Hasegawa, K. Kinoshita, S. Tsuruta, S. Kishida, ECS Trans. 2013, 50, 61.
【非特許文献18】Rogersら、Chem. Commun. (2006) 4767
【国際調査報告】