特表-17142042IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年8月24日
【発行日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】フロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20181130BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20181130BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20181130BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20181130BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20181130BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20181130BHJP
   H01M 10/28 20060101ALN20181130BHJP
   H01M 4/24 20060101ALN20181130BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20181130BHJP
【FI】
   H01M8/18
   H01M10/04 Z
   H01M8/1004
   H01M4/86 M
   H01M4/90 M
   H01M4/02 Z
   H01M10/28 Z
   H01M4/24 H
   H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
【出願番号】特願2018-500208(P2018-500208)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年2月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-27041(P2016-27041)
(32)【優先日】2016年2月16日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-169788(P2016-169788)
(32)【優先日】2016年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐郷 文昭
(72)【発明者】
【氏名】梅里 計匡
(72)【発明者】
【氏名】西原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 元
(72)【発明者】
【氏名】山口 直昭
(72)【発明者】
【氏名】山下 祥二
【テーマコード(参考)】
5H018
5H028
5H050
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA08
5H018EE02
5H028AA07
5H028AA08
5H028CC07
5H028CC26
5H028EE10
5H050AA09
5H050BA08
5H050BA11
5H050CA03
5H050CB13
5H050DA19
5H050FA04
5H050FA08
5H050FA10
5H126AA02
5H126BB10
(57)【要約】
実施形態に係るフロー電池は、正極および負極と、隔膜と、反応室と、電解液と、流動装置とを備える。隔膜は、正極と負極との間に配置される。反応室は、正極および負極を収容する。電解液は、反応室の内部に収容され、正極および負極に接触する。流動装置は、反応室中の電解液を流動させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極と、
前記正極と前記負極との間に配置された隔膜と、
前記正極および前記負極を収容する反応室と、
前記反応室の内部に収容され、前記正極および前記負極に接触する電解液と、
前記反応室中の前記電解液を流動させる流動装置と
を備えることを特徴とするフロー電池。
【請求項2】
前記流動装置は、前記負極と前記隔膜との間に前記電解液を供給する電解液供給部を含むことを特徴とする請求項1に記載のフロー電池。
【請求項3】
前記負極は、前記電解液に接触する角部が丸められていることを特徴とする請求項1または2に記載のフロー電池。
【請求項4】
前記反応室は、前記負極が収容される負極室と、前記正極が収容され、前記負極室と連通する正極室とを含み、
前記負極室が前記正極室の下流側に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のフロー電池。
【請求項5】
前記反応室は、前記負極が収容される負極室と、前記正極が収容される正極室とを含み、
前記電解液は、前記負極室に収容された負極電解液と、前記正極室に収容された正極電解液とを含み、
前記流動装置は、前記負極室に前記電解液を供給する第1供給部と、前記正極室に前記電解液を供給する第2供給部とを含むことを特徴とする請求項1に記載のフロー電池。
【請求項6】
前記負極室と前記正極室との間に配置されたセパレータをさらに備え、
前記隔膜は、前記正極を被覆する被膜であること
を特徴とする請求項4または5に記載のフロー電池。
【請求項7】
前記流動装置は、前記負極と前記隔膜との間の前記電解液に気泡を発生させる気泡発生部と、前記気泡発生部に気体を供給する気体供給部とを含むことを特徴とする請求項1に記載のフロー電池。
【請求項8】
前記気体は、前記反応室の内部から回収されることを特徴とする請求項7に記載のフロー電池。
【請求項9】
前記正極は、前記負極と向かい合う面に複数の凸部を有することを特徴とする請求項7または8に記載のフロー電池。
【請求項10】
前記正極は、前記負極と向かい合う面が前記気泡の流動する方向から見て凸形状であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載のフロー電池。
【請求項11】
前記正極および前記負極は、前記正極と前記負極との間の幅を大きくする切り欠き状の下端部を有すること
を特徴とする請求項7〜10のいずれか1つに記載のフロー電池。
【請求項12】
前記正極および前記負極の側面を両側から挟むようにそれぞれ支持する板状の第1枠体および第2枠体を含み、前記反応室に収容される支持枠をさらに備え、
前記気泡は、前記第1枠体と前記第2枠体との間の前記電解液中を流動すること
を特徴とする請求項7〜11のいずれか1つに記載のフロー電池。
【請求項13】
前記第1枠体および前記第2枠体は、前記第1枠体と前記第2枠体との間の幅を大きくする切り欠き状の下端部を有すること
を特徴とする請求項12に記載のフロー電池。
【請求項14】
前記第1枠体および前記第2枠体は、前記正極および前記負極を支持する面に複数の凸部を有すること
を特徴とする請求項12または13に記載のフロー電池。
【請求項15】
前記気泡は、平面視して前記正極、前記負極、および前記正極と前記負極との間に挟まれた電極間領域、を含む電極領域と、前記反応室の内壁との間の前記電解液中を流動することを特徴とする請求項7〜10のいずれか1つに記載のフロー電池。
【請求項16】
前記正極および前記負極の側面を両側から挟むようにそれぞれ支持する板状の第1枠体および第2枠体を含み、前記反応室に収容される支持枠をさらに備え、
前記気泡は、前記電極領域と向かい合う前記反応室の第1内壁と前記第1枠体との間、および前記電極領域と向かい合う前記反応室の第2内壁と前記第2枠体との間の前記電解液中をそれぞれ流動すること
を特徴とする請求項15に記載のフロー電池。
【請求項17】
前記負極は、前記正極と向かい合う電極表面の第1領域で囲まれた、亜鉛を含有する被覆層を前記電極表面に備える第2領域を含むことを特徴とする請求項7〜16のいずれか1つに記載のフロー電池。
【請求項18】
前記負極は、前記正極と向かい合う電極表面の第3領域に隣接し、亜鉛を含有する被覆層を前記電極表面に備える第4領域を含み、
前記第3領域の少なくとも一部は、前記電解液の液面上に設けられた気体層に露出することを特徴とする請求項7〜17のいずれか1つに記載のフロー電池。
【請求項19】
前記気泡を構成する前記気体は、前記電解液、前記負極および前記正極に対して不活性であることを特徴とする請求項7〜18のいずれか1つに記載のフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、フロー電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正極と負極との間に、テトラヒドロキシ亜鉛酸イオン([Zn(OH)2−)を含有する電解液を循環させるフロー電池が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Y. Ito. et al.: Zinc morphology in zinc-nickel flow assisted batteries and impact on performance, Journal of Power Sources, Vol. 196, pp. 2340-2345, 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記に記載の電池は、依然として負極と正極とが導通する懸念があった。
【0005】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、負極と正極との導通を低減することができるフロー電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係るフロー電池は、正極および負極と、隔膜と、反応室と、電解液と、流動装置とを備える。隔膜は、前記正極と前記負極との間に配置される。反応室は、前記正極および前記負極を収容する。電解液は、前記反応室の内部に収容され、前記正極および前記負極に接触する。流動装置は、前記反応室中の前記電解液を流動させる。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様のフロー電池によれば、負極と正極との導通を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは、第1の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。
図1B図1Bは、第1の実施形態に係るフロー電池が備える反応室の概略を示す図である。
図1C図1Cは、第1の実施形態に係るフロー電池における電解液の流動について説明する図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るフロー電池における電極間の接続の一例について説明する図である。
図3図3は、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える支持枠の概略を示す図である。
図4A図4Aは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池の概略を示す図である。
図4B図4Bは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える反応室の概略を示す図である。
図4C図4Cは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池における電解液の流動について説明する図である。
図4D図4Dは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池の電極間の接続の一例について説明する図である。
図5図5は、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える気泡発生部の概略を示す図である。
図6A図6Aは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える気泡発生部の概略を示す図である。
図6B図6Bは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える気泡発生部の概略を示す図である。
図7A図7Aは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える正極の概略を示す図である。
図7B図7Bは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える正極の概略を示す図である。
図8A図8Aは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える正極の概略を示す図である。
図8B図8Bは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える正極の概略を示す図である。
図8C図8Cは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える正極の概略を示す図である。
図8D図8Dは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える正極の概略を示す図である。
図9A図9Aは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える正極の概略を示す図である。
図9B図9Bは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える正極の概略を示す図である。
図10図10は、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える正極の概略を示す図である。
図11図11は、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える反応室の概略を示す図である。
図12図12は、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える反応室の概略を示す図である。
図13A図13Aは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。
図13B図13Bは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。
図14図14は、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。
図15A図15Aは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。
図15B図15Bは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。
図16図16は、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。
図17A図17Aは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える反応室の概略を示す図である。
図17B図17Bは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池が備える負極の概略を示す図である。
図18A図18Aは、第2の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。
図18B図18Bは、第2の実施形態に係るフロー電池が備える反応室の概略を示す図である。
図18C図18Cは、第2の実施形態に係るフロー電池における電解液の流動について説明する図である。
図19図19は、第2の実施形態の変形例に係るフロー電池における電解液の流動について説明する図である。
図20図20は、第3の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。
図21図21は、第3の実施形態の変形例に係るフロー電池の概略を示す図である。
図22図22は、第4の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。
図23A図23Aは、第5の実施形態に係るフロー電池が備える負極を示す図である。
図23B図23Bは、第5の実施形態に係るフロー電池が備える負極を示す図である。
図23C図23Cは、第5の実施形態に係るフロー電池が備える負極を示す図である。
図24図24は、第6の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。
図25図25は、第7の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するフロー電池の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
図1Aは、第1の実施形態に係るフロー電池の概略を示す図である。図1Aに示すフロー電池100は、正極2と、負極3a,3bと、隔膜4と、電解液5と、反応室10と、流動装置としての気体供給部11と、供給流路12と、供給口13a,13bと、回収口14a,14bと、回収流路15とを備える。
【0011】
なお、説明を分かりやすくするために、図1Aには、鉛直上向きを正方向とし、鉛直下向きを負方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。
【0012】
正極2は反応室10に収容されている。正極2は、例えば、ニッケル化合物またはマンガン化合物を正極活物質として含有する導電性の部材である。ニッケル化合物は、例えば、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、コバルト含有水酸化ニッケル等が好ましい。マンガン化合物は、例えば、二酸化マンガン等が好ましい。また、正極2は、コバルト化合物、黒鉛、カーボンブラック、導電性樹脂等を含んでもよい。電解液5が分解される酸化還元電位の観点からは、正極2はニッケル化合物を含有することが好ましい。
【0013】
負極3a,3bは、反応室10に収容されている。負極3a,3bは、負極活物質を金属亜鉛または亜鉛化合物として含む。負極3a,3bは、例えば、ステンレスや銅などの金属板や、ステンレスや銅板の表面をニッケルやスズ、亜鉛でメッキ処理したものを使用することができる。また、メッキ処理された表面が一部酸化されたものを負極3a,3bとして使用してもよい。
【0014】
隔膜4は、正極2を被覆している。隔膜4は、水酸化物イオン伝導性を有しており、電極反応に関与する水酸化物イオンを伝導する。また、隔膜4は、金属亜鉛が通過しないように緻密に構成されていることが好ましい。これにより、成長したデンドライトが隔膜4を貫通することで正極2と負極3a,3bとが導通する不具合をさらに低減することができる。ここで、緻密とは、アルキメデス法で算出して、90%以上の相対密度を有することをいい、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは95%以上である。また、隔膜4の厚みは、好ましくは10μm〜1000μmであり、より好ましくは100μm〜500μmである。ただし、隔膜4の相対密度および厚みは、デンドライトの貫通を低減することができるものであれば上記したものに限定されない。
【0015】
隔膜4は、水酸化物イオンを選択的に透過する一方、水酸化物イオンよりもイオン半径の大きな[Zn(OH)2−等の金属イオンの透過を低減することが好ましい。このように隔膜4が[Zn(OH)2−等の金属イオンの透過を低減すると、隔膜4の内部および正極2近傍におけるデンドライトの生成が低減されるため、正極2と負極3a,3bとの導通をさらに低減することができる。
【0016】
隔膜4は、例えば、有機ヒドロゲルのような三次元構造を有するゲル状の陰イオン伝導性材料や固体高分子型陰イオン伝導材料を用いて形成されるものが好ましい。ここで、固体高分子型陰イオン伝導材料は、例えば、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族から選択される1種以上の元素を含有する、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、硫酸化合物およびリン酸化合物からなる群より選択される1以上の化合物とを含む。
【0017】
電解液5は、正極2および負極3a,3bに接触するように反応室10の内部に収容されている。電解液5は、例えば、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である。電解液5中の亜鉛種は、[Zn(OH)2−として電解液5中に溶存している。電解液5は、例えば、KやOHを含むアルカリ水溶液に酸化亜鉛を飽和させたものを使用することができる。ここで、アルカリ水溶液としては、例えば、6.7moldm−3の水酸化カリウム水溶液を使用することができる。また、1dm−3の水酸化カリウム水溶液に対し、ZnOが飽和するまで添加することにより電解液5を調製することができる。
【0018】
反応室10は、ケース8と、上板9とを備える。ケース8および上板9は、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレンなど、耐アルカリ性および絶縁性を有する樹脂材料で構成される。ケース8および上板9は、好ましくは互いに同じ材料で構成されるが、異なる材料で構成されてもよい。
【0019】
ケース8には、正極2、負極3a,3bおよび電解液5が収容されている。また、ケース8には、供給流路12を構成する配管を挿通または接続させる開口が設けられている。また、上板9の下面9aと電解液5の液面との間には空間を有しており、気体層7を構成する。
【0020】
気体供給部11は、例えば気体を移送可能なポンプ(気体ポンプ)、コンプレッサまたはブロワであり、回収流路15を介して反応室10から回収された気体を、供給流路12を介して供給口13a,13bに送り出す。気体供給部11は、気泡6の発生源である気体や電解液5に由来する水蒸気を外部に漏出させることでフロー電池100の発電性能を低減させないよう高い気密性を有するものが好ましい。
【0021】
供給口13a,13bは、反応室10の下部にそれぞれ設けられている。供給口13a,13bは、一方は分岐流路12a,12bを含む供給流路12を介して気体供給部11に接続されており、他方は電解液5を収容した反応室10の内部に開口している。供給口13a,13bは、気体供給部11から送られた気体を電解液5中に供給し、気泡6を発生させる。すなわち、実施形態に係るフロー電池100は、気体供給部11および気泡発生部としての供給口13a,13bを含む気泡発生装置を備える。
【0022】
気泡6は、例えば正極2、負極3a,3bおよび電解液5に対して不活性な気体で構成される。このような気体としては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、またはアルゴンガスなどが挙げられる。電解液5に不活性な気体の気泡6を発生させることにより、電解液5の変性を低減することができる。また、例えば、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である電解液5の劣化を低減し、電解液5のイオン伝導度を高く維持することができる。なお、気体は空気であってもよい。供給口13aから供給された気体により発生した気泡6は、正極2と負極3aとの間、より具体的には隔膜4と負極3aとの間において、電解液5中を上方に向かって流動する。また、供給口13bから供給された気体により発生した気泡6は、正極2と負極3bとの間、より具体的には隔膜4と負極3bとの間において、電解液5中を上方に向かって流動する。電解液5中を気泡6として流動した気体は、電解液5の液面で消滅し、反応室10における電解液5の上方に気体層7を構成する。
【0023】
回収口14a,14bは、反応室10の上方にそれぞれ設けられている。回収口14a,14bは、一方は分岐流路15a,15bを含む回収流路15を介して気体供給部11に接続されており、他方は反応室10内の気体層7に開口している。回収口14a,14bは、反応室10から回収された気体を反応室10の外部に排出し、気体供給部11に送り出す。図1Aに示す例では、回収口14a,14bはZ軸方向から見て供給口13a,13bと重なる位置にそれぞれ配置されているが、これに限らず、気体層7に面するように開口していればいかなる位置に配置されていてもよい。また、図1Aに示す例では、回収口14a,14bは2箇所に配置されているが、これに限らず、1または3以上の回収口を配置するように構成されてもよい。
【0024】
ここで、反応室10における電極反応について、正極活物質として水酸化ニッケルを適用したニッケル亜鉛フロー電池を例に挙げて説明する。充電時における正極および負極での反応式はそれぞれ、以下のとおりである。
【0025】
正極:Ni(OH) + OH → NiOOH + HO + e
負極:[Zn(OH)2− + 2e → Zn +4OH
【0026】
反応式から明らかなように、負極3a,3bでは、充電により亜鉛が析出するのに伴い、負極3a,3bの近傍における電解液5中の[Zn(OH)2−の濃度が低下する。そして、[Zn(OH)2−の濃度が低下した電解液5が負極3a,3bの近傍に滞留すると、負極3a,3bに析出した亜鉛がデンドライトとして成長する一因となる。すなわち、充電反応により[Zn(OH)2−の濃度が局所的に低下した電解液5を負極3a,3bの近傍に滞留させることなく速やかに流動させると、デンドライトの成長が低減される。
【0027】
そこで、第1の実施形態に係るフロー電池100では、反応室10の内部に開口した気泡発生装置の供給口13a,13bから電解液5中に気体を供給して気泡6を発生させる流動装置を備えることとした。気泡6は、負極3aと正極2との間、および正極2と負極3bとの間のそれぞれにおいて反応室10の下方から上方に向かって電解液5中を上昇するように流動する。
【0028】
また、電極間における上記した気泡6の流動に伴い、電解液5には上昇液流が発生し、負極3aと正極2との間、および正極2と負極3bとの間では反応室10の下方から上方に向かって電解液5が流動する。そして、電解液5の上昇液流に伴い、反応室10の内壁8cと負極3aとの間、および反応室10の内壁8dと負極3bとの間では下降液流が発生し、電解液5が反応室10の上方から下方に向かって流動する。すなわち、電解液5は、反応室10の内部を図1Aに示すYZ平面に沿うように循環する。
【0029】
このように第1の実施形態に係るフロー電池100では、[Zn(OH)2−の濃度が局所的に低下した電解液5を速やかに循環させることで電解液5中の[Zn(OH)2−の濃度を均一に保つことができ、デンドライトの成長に伴う負極3a,3bと正極2との導通を低減することができる。
【0030】
ここで、負極3aと隔膜4との間隔、および、負極3bと隔膜4との間隔は、好ましくは1cm以下となるように設けられる。負極3aまたは3bと隔膜4との間隔を1cm以下とすることにより、電極間のイオン伝導に伴う電圧低下を低減することができる。また、気泡6を負極3a,3bの近傍により確実に流動させることができることから、電解液5中の[Zn(OH)2−の濃度を速やかに均一化することができ、デンドライトの成長に伴う負極3aと正極2、負極3bと正極2との導通を低減することができる。
【0031】
上記した実施形態では、電解液5は反応室10の内部を図1Aに示すYZ平面に沿うように循環するとして説明したが、気泡6の流動に伴い電解液5に発生する液流が循環する方向は、図1Aに示したものに限らない。この点について、図1B図1Cを用いて説明する。
【0032】
図1Bは、第1の実施形態に係るフロー電池100が備える反応室10の概略を示す図であり、図1Cは、第1の実施形態に係るフロー電池100における電解液5の流動について説明する図である。なお、図1Bでは、図1Aに示す隔膜4および回収口14aに対応する部材の図示は省略している。以下、特に断りのない限り、隔膜4の図示および説明は省略する。
【0033】
図1Bは、図1Aに示す反応室10のI−I断面図である。図1Bに示すように、正極2と負極3aとの間を流動する気泡6を発生させる供給口13aは、図示しない分岐流路15aを介して接続された3つの開口13a1,13a2,13a3がX軸方向に並ぶように配置されている。また、正極2と負極3bとの間を流動する気泡6を発生させる供給口13bについても供給口13aと同様の構成を有している。
【0034】
上記したように、気泡6は、負極3aと正極2との間、および正極2と負極3bとの間のそれぞれにおいて反応室10の下方から上方に向かって電解液5中を上昇するように流動する。このような気泡6の流動に伴い、電解液5には上昇液流が発生し、負極3aと正極2との間、および正極2と負極3bとの間では反応室10の下方から上方に向かって電解液5が流動する。そして、電解液5の上昇液流に伴い、反応室10の内壁8aおよび内壁8bの近傍では下降液流が発生し、電解液5が反応室10の上方から下方に向かって流動する。すなわち、電解液5は、反応室10の内部を図1Bに示すZX平面に沿うように循環する。
【0035】
また、図1Cは、図1Aに示すケース8の内部をZ軸正方向側から平面視した図に相当する。気泡発生装置の供給口13aは、負極3aと正極2との間の領域141に配置されており、供給口13bは、正極2と負極3bとの間の領域142に配置されている。
【0036】
領域141,142を含む電極間領域140では、供給口13a,13bから電解液5中に供給された気体により発生する気泡6の上方への流動に伴い、電解液5には上昇液流が発生する。一方、正極2および負極3a,3bならびに電極間領域140を含む電極領域とケース8の内壁8a,8b,8c,8dとの間の領域130では、電解液5には電極間領域140における上昇液流に対応した下降液流が発生する。このように、第1の実施形態に係るフロー電池100によれば、電極間に気泡6を流動させることにより、反応室10の全体にわたり電解液5を循環させることができる。このため、負極3a,3bの近傍における[Zn(OH)2−の局所的な濃度低下を低減することができ、負極3a,3bと正極2との導通を低減することができる。
【0037】
次に、フロー電池100における電極間の接続について説明する。図2は、第1の実施形態に係るフロー電池100の電極間の接続の一例について説明する図である。
【0038】
図2に示すように、負極3aおよび負極3bは並列接続されている。このように負極を並列に接続することにより、正極および負極の総数が異なる場合であってもフロー電池100の各電極間を適切に接続し、使用することができる。
【0039】
また、第1の実施形態に係るフロー電池100では、正極2を挟んで互いに向かい合うように配置された負極3a,3bを備える。このように1つの正極2に対して2つの負極3a,3bが対応したフロー電池100では、正極と負極とが1:1で対応するフロー電池と比較して負極1つ当たりの電流密度が低下する。このため、第1の実施形態に係るフロー電池100によれば、負極3a,3bでのデンドライトの生成がさらに低減されるため、負極3a,3bと正極2との導通をさらに低減することができる。
【0040】
上記した実施形態では、1つの正極2を備えるフロー電池100について説明したが、複数の正極2を備えてもよい。また、かかる場合には、電極の交換作業を容易とするために複数の電極を配置した支持枠を反応室10に収容させることが好ましい。以下では、複数の負極および正極を配置した支持枠を備えるフロー電池100について、図3図4Dを用いて説明する。
【0041】
図3は、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池100が備える支持枠の概略を示す図であり、図4Aは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池100の概略を示す図であり、図4Bは、図4Aに示すフロー電池100が備える反応室10をY軸負方向側から見た図である。また、図4Cは、図4Aに示すフロー電池100が備える反応室10をZ軸正方向側から見た図に相当する。
【0042】
まず、支持枠について説明する。支持枠25は、板状の枠体25a〜25dで構成される。支持枠25は、正極2A,2B、負極3A,3B,3Cの側面を両側から挟むようにそれぞれ支持する第1枠体25aおよび第2枠体25bと、第1枠体25aおよび第2枠体25bの側面を両側から挟むようにそれぞれ支持する第3枠体25cおよび第4枠体25dとを備える。第1枠体25aおよび第2枠体25bは、第3枠体25cおよび第4枠体25dよりもZ軸方向の長さが短くなるように構成されており、反応室10に収容したときに第1枠体25aおよび第2枠体25bとケース8の底面8eとの間を電解液5が流通できるようになっている。
【0043】
また、図4Aに示すように、反応室10には、負極3A、正極2A、負極3B、正極2B、負極3Cの順に複数の電極がY軸方向に沿って正負極が交互に配置されている。また、図4Aに示すフロー電池100は、図1Aに示すフロー電池100の分岐流路12a,12bおよび供給口13a,13bに代えて、気泡発生部20を備える。さらに、図4Aに示すフロー電池100は、図1Aに示すフロー電池100の回収口14a,14bおよび分岐流路15aに代えて、回収口14を備える。回収口14はZ軸方向から見て気泡発生部20と重なるように配置されているが、これに限らず、気体層7に面するように開口していればいかなる位置に配置されていてもよい。また、回収口14は1つであってもよく、2以上の回収口を配置するように構成されてもよい。
【0044】
ここで、気泡発生部20の構成例について、図5を用いて説明する。図5は、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池100が備える気泡発生部20の概略を示す図である。図5に示す気泡発生部20は、複数の開口21を有している。気泡発生部20は、反応室10の下部、より具体的には電解液5を収容したケース8の底面8e上に配置され、あるいは反応室10の底部に埋設される。図4Aでは、気泡発生部20を反応室10の底部に埋設した状態を示す。気泡発生部20を底部に埋設させるように構成すると、反応室10を小型化することができる。
【0045】
気泡発生部20は、気体供給部11から供給流路12を介して供給された気体により、開口21から電解液5中に気泡6を発生させる。開口21は、発生した気泡6を負極3Aと正極2Aとの間、正極2Aと負極3Bとの間、負極3Bと正極2Bとの間、正極2Bと負極3Cとの間にそれぞれ適切に流動させることができればいかなる配置であってもよい。
【0046】
気泡発生部20は1つに限らず、例えば図6Aに示すように複数の気泡発生部20a〜20dによって構成されてもよい。かかる場合、気泡6を流動させる電極間の幅に応じて開口21a〜21dの大きさや形状を変更するように構成してもよい。
【0047】
また、図6Bに示すように、例えばセラミックスなどで構成された多孔質体を気泡発生部20として用いてもよい。かかる場合、開口21に相当する構成は不要となる。
【0048】
図4A図4Cに戻り、気泡6の流動に伴う電解液5の循環についてさらに説明する。上記したように、気泡発生部20からの気体の供給によって発生した気泡6は、電極間を上方に流動する。これに伴い、電極間の電解液5には、図4Cにおいて、負極3Aと正極2Aとの間の領域111、正極2Aと負極3Bとの間の領域112、負極3Bと正極2Bとの間の領域113、および正極2Bと負極3Cとの間の領域114を含む電極間領域110において、電解液5が反応室10の下方から上方に向かって流動する上昇液流が発生する。
【0049】
電極間領域110を反応室10の上方に流動した電解液5は、第1枠体25aおよび第2枠体25bをそれぞれ乗り越えるようにしてケース8の内壁8a,8bに向かって水平方向に流動する。そして、第1枠体25aとケース8の内壁8aとの間の領域121および第2枠体25bとケース8の内壁8bとの間の領域122を含む枠外領域120では、電解液5には電極間領域110における上昇液流に対応した下降液流が発生する。このように、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池100によれば、電極間に気泡6を流動させることにより、反応室10の全体にわたり電解液5を循環させることができる。このため、負極3A,3B,3Cの近傍における[Zn(OH)2−の局所的な濃度低下を低減することができ、負極3A,3Bと正極2A、負極3B,3Cと正極2Bの導通をそれぞれ低減することができる。
【0050】
次に、フロー電池100における電極間の接続について説明する。図4Dは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池100の電極間の接続の一例について説明する図である。
【0051】
図4Dに示すように、負極3A、負極3Bおよび負極3Cは並列接続されている。また、正極2Aおよび正極2Bは並列接続されている。このように負極および正極をそれぞれ並列に接続することにより、負極および正極の総数がそれぞれ異なるフロー電池100の各電極間を適切に接続し、使用することができる。
【0052】
なお、上記した実施形態では、合計5枚の電極が負極および正極が交互に配置されるように構成されたが、これに限らず、5枚以上の電極を交互に配置するようにしてもよく、正極および負極をそれぞれ1枚ずつ配置させてもよい。また、上記した実施形態では、両端がともに負極(3A,3C)となるように構成されたが、これに限らず、両端がともに正極となるように構成してもよい。
【0053】
さらに、一方を正極、他方を負極となるように同枚数の負極および正極をそれぞれ交互に配置してもよい。かかる場合、電極間の接続は並列であってもよく、直列であってもよい。
【0054】
なお、上記した実施形態では、正極は略平板状の部材として構成されたが、これに限らない。以下、この点について図7A図10を用いて説明する。
【0055】
図7A図7Bは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池100が備える正極の概略を示す図である。図7Aに示す正極2aは、負極3aと向かい合う面に四角錐形状の複数の凸部31を有することを除き、図1Aに示す正極2と同様の構成を有している。このように構成された正極2aを複数の凸部31が負極3aと向かい合うように配置すると、気泡6が凸部31に当接または近接することで電解液5に乱流が生じ、正極2aと向かい合う負極3aの全面にわたって電解液5の滞留を低減することができる。このため、このような正極2aを適用することにより、負極3aでのデンドライトの生成がさらに低減されるため、負極3aと正極2aとの導通をさらに低減することができる。
【0056】
なお、上記した実施形態では、複数の凸部31は互いに接触するように構成されたが、これに限らず、例えば、図8Aに示すように所定の間隔を隔てて複数の凸部32を設けるようにしてもよい。
【0057】
また、上記した実施形態では、複数の凸部31および凸部32はいずれも四角錐形状として構成されたが、これに限らない。また、上記した実施形態では、複数の凸部32は等間隔で配列されるように構成されたが、これに限らない。すなわち、例えば、図8Bに示すように椀形状の複数の凸部33を、ランダムに配置するようにしてもよい。
【0058】
さらに、例えば図8C図8Dに示すようにX軸方向に延在する凸部34,35を複数並列させた構成としてもよい。すなわち、電極間を流動する電解液5や気泡6に乱流を生じさせることで負極3aの近傍において局所的に[Zn(OH)2−の濃度低下が生じた電解液5を滞留させることなく速やかに流動させる構成であれば図示したものに限定されず、いかなる態様のものであっても構わない。
【0059】
上記したように、図1Aに示す負極3aと正極2との間隔は、1cm以下程度であり、負極3aと正極2との間を流動する気泡6を、負極3aの全面にわたり均等に行き渡らせて電解液5を迅速に流動させることが困難な場合がある。そこで、例えば図9A図9Bに示すように構成された正極2bを図1Aに示す正極2に代えて配置させることが好ましい。図9A図9Bに示す正極2bは、負極3aと向かい合う面41が、気泡6の流動する方向、すなわちZ軸方向から見て凸形状となるように構成されたことを除き図1Aに示す正極2と同様の構成を有している。
【0060】
負極3aと面41とを向かい合わせるように配置することにより、負極3aの端部における正極2bと負極3aとの間隔d2が、負極3aの中央部分における正極2bと負極3aとの間隔d1よりも広くなる。このため、負極3aと正極2との間を流動する気泡6を、負極3aの全面にわたり均等に行き渡らせることができ、電解液5中の[Zn(OH)2−の濃度を速やかに均一化させることで、デンドライトの成長に伴う負極3aと正極2bとの導通を低減することができる。
【0061】
さらに、図7A図8Dに示す複数の凸部を有する正極2aと、図9A図9Bで示したZ軸方向から見て凸形状の面を有する正極2bとを組み合わせてもよい。すなわち、図10に示す正極2abは、負極3aと向かい合う面42が、Z軸方向から見て凸形状となるように構成されており、かつ、負極3aと向かい合う面にX軸方向に延在する複数の凸部36を有する構成を有している。かかる構成を有する正極2abを適用することにより、負極3aの近傍における電解液5中の[Zn(OH)2−の濃度を速やかに均一化させることで、デンドライトの成長に伴う負極3aと正極2abとの導通を低減することができる。
【0062】
なお、図7A図10に示す正極2a、2bおよび2abは、図1Aに示す負極3aと向かい合う面に特徴的な構成を有するとして説明したが、負極3bと向かい合う面についても同様の構成を有してよい。また、図7A図10に示す正極2a、2bおよび2abを、図4A図4Dに示す正極2A、2Bに代えて配置するように構成してもよい。
【0063】
上記した実施形態では、正極の外観形状を変更することで負極3aと正極2aとの導通を低減する点について説明したが、支持枠25や電極の端部形状を変更することで負極3aと正極2aとの導通を低減するように構成されてもよい。この点について、図11図12を用いて説明する。
【0064】
図11は、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池100が備える反応室10の概略を示す図である。図11に示す反応室10は、第1枠体25aおよび第2枠体25bがそれぞれ、切り欠き状の下端部51,52を有することを除き、図4Bに示す反応室10と同様の構成を有している。第1枠体25aおよび第2枠体25bがそれぞれ切り欠き状の下端部51,52を有することにより、第1枠体25aおよび第2枠体25bの下端面における第1枠体25aと第2枠体25bとの間隔d4は、第1枠体25aと第2枠体25bとの距離d3よりも広くなる。
【0065】
かかる構成を有する第1枠体25aおよび第2枠体25bを適用することにより、第1枠体25aおよび第2枠体25bの近傍を流動する気泡6および電解液5が第1枠体25aと第2枠体25bとの間の電極間領域110(図4C参照)に流れ込み易くなり、電極間領域110の電解液5を速やかに循環させることで、デンドライトの成長に伴う負極と正極との導通を低減することができる。
【0066】
図12は、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池100が備える反応室10の概略を示す図である。図12に示す反応室10は、負極3A、正極2A、負極3B、正極2Bおよび負極3Cがそれぞれ、切り欠き状の下端部61〜65を有することを除き、図4Aに示すフロー電池100が備える反応室10と同様の構成を有している。負極3A、正極2A、負極3B、正極2Bおよび負極3Cがそれぞれ切り欠き状の下端部61〜65を有することにより、隣り合う正極および負極の下端面における間隔は、隣り合う正極および負極の距離よりも広くなる。
【0067】
かかる構成を有する負極3A、正極2A、負極3B、正極2Bおよび負極3Cを適用することにより、負極3A、正極2A、負極3B、正極2Bおよび負極3Cの近傍を流動する気泡6および電解液5が電極間領域110(図4C参照)に流れ込み易くなり、電極間領域110の電解液5を速やかに循環させることで、デンドライトの成長に伴う負極と正極との導通を低減することができる。
【0068】
上記した実施形態では、負極3a,3bは金属板あるいは金属表面を一様にメッキ処理されたものとして説明したが、これに限らない。以下では、この点について、図13A図17Bを用いて説明する。
【0069】
図13Aは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池100が備える負極3Baの概略を示す図であり、図13Bは、図13Aに示す負極3BaのII−II断面図である。
【0070】
負極3Baは、例えば、図4Aに示す負極3Bに代えて適用することができる。負極3Baは、正極2AのY軸方向から見て負極3Baの縁部を構成する第1領域R1と、第1領域R1で囲まれた第2領域R2とを含む。また、負極3Baは、金属層70と、金属層70全体を覆う第1被覆層71と、第1被覆層71の一部を第2領域R2に対応するように被覆する第2被覆層72,73とを含む。
【0071】
金属層70は、例えば、銅やステンレスなどの金属で構成される。また、第1被覆層71は、例えば、ニッケルを含有するめっき層である。そして、第2被覆層72,73は、例えば、金属亜鉛または酸化亜鉛その他の亜鉛化合物を含有するようにめっきまたは塗布された被覆層である。
【0072】
電解液5に亜鉛を含有するフロー電池100では、充電時の負極における電池反応を円滑に進めるために電極表面を亜鉛メッキ処理することが知られている。一方、例えば平板状の負極3Bでは、例えば縁部や角部において電流が集中し、デンドライトの要因となりうる亜鉛の析出が起こりやすくなる。このため、図13A図13Bに示す負極3Baでは、縁部または角部である第1領域R1にはあえて亜鉛を含有させないこととした。
【0073】
このように正極と向かい合う電極表面の第1被覆層71が露出した第1領域R1で囲まれた、第2被覆層72,73を第1被覆層71上に備える第2領域R2を含むように構成された負極3Baを適用することにより、負極3Bの要部である第2領域R2では第2被覆層72,73に亜鉛を含有することで電池反応が円滑に行われる。一方、電流集中によりデンドライトが生じやすい傾向にある第1領域R1では亜鉛を含有しないことで充電時の亜鉛の析出が低減される。したがって、かかる構成を有する負極3Baを備えるフロー電池100によれば、負極と正極との導通を低減することができる。
【0074】
上記した実施形態では、負極3Baの第1領域R1は第1被覆層71が露出した構成を有するとして説明したが、これに限らない。図14は、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池100が備える負極の概略を示す図である。図14に示す負極3Baは、第1領域R1において第1被覆層71を被覆する樹脂被覆層74,75を有することを除き、図13A図13Bに示す負極3Baと同じ構成を有している。
【0075】
樹脂被覆層74,75は、例えばシリコーン樹脂やポリテトラフルオロエチレンなど、耐アルカリ性および絶縁性を有する樹脂材料で構成される。かかる構成を有する樹脂被覆層74,75を有することにより、図14に示す負極3Baは、第1領域R1の表面が電導性を有さないこととなるため、第1領域R1における充電時の亜鉛の析出がさらに低減される。また、金属層70の表面全体が複数の被覆層で覆われることとなるため、電解液5との接触に伴う負極3Baの劣化が低減される。
【0076】
また、上記したように、負極3Baの縁部や角部では、充電時の電流集中により亜鉛が析出しやすい。そこで、例えば図15A図16に示すように負極3Baの縁部や角部に丸みをつけるように構成してもよい。
【0077】
図15Aは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池100が備える負極3Baの概略を示す図であり、図15B図15AのIII−III断面図である。
【0078】
図15A図15Bに示す負極3Baは、図15Aに示す角部C1,C2,C3,C4を含む合計8箇所の角部と、図15Bに示す稜線L1,L2,L3,L4を含む合計8箇所の稜線がすべてR面取り状となるように構成された第1被覆層71を設けた点で図13A図13Bに示す負極3Baと相違する。このように負極3Baの角部および稜線をすべてR面取り状とすることで、充電時の電流集中に伴う亜鉛の析出をさらに低減することができる。
【0079】
また、図15Bに示すように第2領域R2を覆う第2被覆層72,73についても、第1領域R1と第2領域R2との境界部分における段差をなくすように第2被覆層72,73の厚さになだらかな傾斜を設けてもよい。かかる構成によれば、第1領域R1と第2領域R2との境界部分における電流集中に伴う亜鉛の析出をさらに低減することができる。
【0080】
また、図16に示す負極3Baは、図14に示す負極3Baを構成する合計8箇所の角部と、図16に示す稜線L1,L2,L3,L4を含む合計8箇所の稜線がすべてR面取り状となるように構成された樹脂被覆層74,75を設けた点で図14に示す負極3Baと相違する。このように負極3Baの角部および稜線をすべてR面取り状とすることで、充電時の電流集中に伴う亜鉛の析出をさらに低減することができる。
【0081】
上記した実施形態では、電極全体が電解液5中に浸漬されて使用される例について説明したが、これに限らず、電極上部が気体層7に露出した状態で使用してもよい。かかる点について、図17A図17Bを用いて説明する。
【0082】
図17Aは、第1の実施形態の変形例に係るフロー電池100が備える反応室10の概略を示す図であり、図17B図17AのIV−IV断面図である。図17Aに示す負極3Bbは、図4A図4Cに示す負極3A、3B、3Cに代えて適用することができる。
【0083】
図17A図17Bに示す負極3Bbは、電解液5の液面5c上に設けられた気体層7に露出する第3領域R3と、第3領域R3に隣接する第4領域R4とを含む。また、負極3Bbは、金属層80と、金属層80全体を覆う第1被覆層81と、第1被覆層81の一部を第4領域R4に対応するように被覆する第2被覆層82とを含む。
【0084】
金属層80は、例えば、銅やステンレスなどの金属で構成される。また、第1被覆層81は、例えば、ニッケルを含有するめっき層である。そして、第2被覆層82は、例えば、金属亜鉛または酸化亜鉛その他の亜鉛化合物を含有するようにめっきまたは塗布された被覆層である。
【0085】
電解液5中を流動する気泡6は、電解液5の液面5cで消滅する。このとき生じた飛沫の一部は、気体層7に露出した負極3Bbに付着する。このとき、電解液5の飛沫が付着した負極3Bbに亜鉛が含まれると、酸化亜鉛の結晶が析出しやすくなる。気体層7に露出した負極3Bbにおいて酸化亜鉛が析出すると、電解液5中の亜鉛濃度が不可逆的に低下し、電池性能が低下する。このため、気体層7に露出する第3領域R3に亜鉛を含有する第2被覆層82を設けないこととした。
【0086】
このように正極と向かい合う電極表面の第1被覆層81が露出した第3領域R3を気体層7に露出させることにより、電解液5に由来する亜鉛の析出が低減される。したがって、かかる構成を有する負極3Bbを備えるフロー電池100によれば、電池性能の低下を低減することができる。
【0087】
なお、上記した実施形態では、第3領域R3はその全体にわたり気体層7に露出するとして説明したが、これに限らず、第3領域R3の少なくとも一部が気体層7に露出すればよい。
【0088】
また、上記した実施形態では、負極3Bbは、図4Aに示す負極3Bに代えて適用することができるとして説明したが、これに限らず、例えば負極3A,3Cや、図1A図2に示す負極3a,3bに代えて適用するように構成してもよい。かかる場合、第2領域R2を覆う第2被覆層72,73や第4領域R4を覆う第2被覆層82は正極と向かい合う面にのみ配置されるよう構成してもよい。
【0089】
また、上記した各実施形態では、気泡6は正極と負極の間の電極間領域を流動するとして説明したが、これに限らない。以下、かかる点について図18A図19を用いて説明する。
【0090】
図18Aは、第2の実施形態に係るフロー電池100Aの概略を示す図であり、図18Bは、図18Aに示す反応室10のV−V断面図である。また、図18Cは、第2の実施形態に係るフロー電池100Aにおける電解液5の流動について説明する図である。図18Cは、図18Aに示すケースの内部をZ軸正方向側から平面視した図に相当する。供給口63aは、反応室10の内壁8cと負極3aとの間の領域213に配置されており、供給口63bは、反応室10の内壁8dと負極3bとの間の領域214に配置されている。なお、図18Bでは、図18Aに示す一部の部材の図示は省略している。
【0091】
第2の実施形態に係るフロー電池100Aは、供給口13a,13bおよび回収口14a,14bに代えて供給口63a,63bおよび回収口64a,64bを備えることを除き、図1A図1Cに示すフロー電池100と同様の構成を有している。
【0092】
供給口63a,63bは、反応室10の下部にそれぞれ設けられている。図18Bに示すように、供給口63aは、図示しない分岐流路15aを介して接続された5つの開口63a1〜63a5がX軸方向に並ぶように配置されている。また、供給口63bについても供給口63aと同様の構成を有している。供給口63aから反応室10の内部に供給された気体により発生した気泡6は、反応室10の内壁8cと負極3aとの間の領域213において、電解液5中を上方に向かって流動する。また、供給口63bから供給された気体により発生した気泡6は、反応室10の内壁8dと負極3bとの間の領域214において、電解液5中を上方に向かって流動する。
【0093】
回収口64a,64bは、反応室10の上部にそれぞれ設けられている。図18Aに示す例では、回収口64a,64bはZ軸方向から見て供給口63a,63bと重なる位置にそれぞれ配置されているが、これに限らず、気体層7に面するように開口していればいかなる位置に配置されていてもよい。また、図18Aに示す例では、回収口64a,64bは2箇所に配置されているが、これに限らず、1または3以上の回収口を配置するように構成されてもよい。
【0094】
また、上記した気泡6の流動に伴い、電解液5には上昇液流が発生し、領域213および領域214では反応室10の下方から上方に向かって電解液5が流動する。そして、電解液5の上昇液流に伴い、負極3aと正極2との間の領域211、および正極2と負極3bとの間の領域212を含む電極間領域210、内壁8aに面した領域215ならびに内壁8bに面した領域216では下降液流が発生し、電解液5が反応室10の上方から下方に向かって流動する。すなわち、電解液5は、反応室10の内部をYZ平面に沿うように循環する。
【0095】
このように、第2の実施形態に係るフロー電池100Aによれば、平面視して正極2、負極3a,3b、および電極間領域210を含む電極領域と、反応室10の内壁8c,8dとの間の電解液5中を流動させることにより、反応室10の全体にわたり電解液5を循環させることができる。このため、負極3a,3bの近傍における[Zn(OH)2−の局所的な濃度低下を低減することができ、負極3a,3bと正極2との導通を低減することができる。
【0096】
上記した実施形態では、図1Aに示すフロー電池100における供給口13a,13bの配置を変更した例について説明したが、同様に、図4A図4Cに示すフロー電池100における気泡発生部20の配置を変更するようにして構成することができる。この点について、図19を用いて説明する。
【0097】
図19は、第2の実施形態の変形例に係るフロー電池100Aにおける電解液5の流動について説明する図である。ここでは図示しない気泡発生部20は、内壁8aと第1枠体25aとの間の領域415と、内壁8bと第2枠体25bとの間の領域416に配置されている。気泡発生部20からの気体の供給によって発生した気泡6は、領域415,416を上方に流動する。これに伴い、領域415,416では、電解液5が反応室10の下方から上方に向かって流動する上昇液流が発生する。
【0098】
領域415,416を反応室10の上方に流動した電解液5は、第1枠体25aおよび第2枠体25bをそれぞれ乗り越えるようにして第1枠体25aと第2枠体25bとの間の電極領域に向かって水平方向に流動する。そして、負極3Aと正極2Aとの間の領域411、正極2Aと負極3Bとの間の領域412、負極3Bと正極2Bとの間の領域413、および正極2Bと負極3Cとの間の領域414を含む電極間領域410において、電解液5が反応室10の上方から下方に向かって流動する下降液流が発生する。このように、第2の実施形態の変形例に係るフロー電池100Aによれば、反応室10の全体にわたり電解液5を循環させることができる。このため、負極3A,3B,3Cの近傍における[Zn(OH)2−の局所的な濃度低下を低減することができ、負極3A,3Bと正極2A、負極3B,3Cと正極2Bの導通をそれぞれ低減することができる。
【0099】
なお、上記した実施形態では、隔膜4は正極を被覆しているとして説明したが、これに限らず、正極と負極との間に配置されていればよい。
【0100】
また、気体供給部11は、常時動作していてもよいが、電力消費を低減する観点から、電解液5中の電解質濃度に偏りが生じやすい充放電時にのみ動作させることが好ましく、デンドライトが生じやすい充電時にのみ動作させるのがより好ましい。また、電解液5中の[Zn(OH)2−の消費レートに応じて供給口または気泡発生部20から供給される気体の供給速度を変更するように構成してもよい。
【0101】
上記した各実施形態および変形例では、電解液5を流動させる流動装置は電解液5に気泡を発生させる気泡発生部20(供給口)と、気泡発生部20に気体を供給する気体供給部11とを含むとして説明したが、これに限らない。以下では、この点について図20図25を用いて順に説明する。
【0102】
図20は、フロー電池の第3の実施形態の概念図を示すものである。図20に示すように、第3の実施形態に係るフロー電池は、正極2および負極3と、正極2と負極3との間に配置されたセパレータ97と、正極電解液5aおよび負極電解液5bと、電解液供給部11aとを含む。正極電解液5aは、正極2とセパレータ97との間に存在し、負極電解液5bは、負極3とセパレータ97との間に存在する。電解液供給部11aは、負極3とセパレータ97との間に負極電解液5bを供給し、負極電解液5bを流動させることで循環させる流動装置を構成する。
【0103】
すなわち、第3の実施形態に係るフロー電池では、セパレータ97によって反応室1が正極室1aと負極室1bとに分離されており、正極室1aには正極2が収容され、負極室1bには負極3が収容されている。負極室1bには、Znを含有する負極電解液5bを貯留する負極電解液用のタンク23が配管16を介して接続されており、タンク23から電解液供給部11aによって負極電解液5bが負極室1bに供給され、負極室1bとタンク23との間を負極電解液5bが循環するように構成されている。
【0104】
正極室1aの正極電解液5aは、Znを含有する必要はないが、Znを含有してもよい。また、正極電解液5aは移動することなく、正極室1a内に滞留している。
【0105】
第3の実施形態に係るフロー電池は、正極2と負極3とを交互に複数配置して構成される。
【0106】
このようなフロー電池を図21に示す。この図21のフロー電池では、負極電解液5bが負極室1bを下から上に流れるように構成されている。複数の正極2および負極3は、正極室1a、負極室1bからそれぞれ上方に引き出され、外部に引き出される。
【0107】
以下に、第3の実施形態に係るフロー電池を構成する各部材について、詳細に説明する。
【0108】
正極2としては、上記した第1および第2の実施形態ならびに変形例に係る正極2,2A,2B,2a,2b,2abと同様のものを使用することができる。また、負極3としては、上記した各実施形態および変形例に係る負極3a,3b,3A〜3C,3Ba,3Bbと同様のものを使用することができる。
【0109】
セパレータ97としては、上記した第1および第2の実施形態ならびに変形例に係る隔膜4と同様のものを使用することができる。なお、セパレータ97および隔膜4の材料は同じであってもよく、また異なっていてもよい。
【0110】
負極室1b内を循環する負極電解液5bは、例えば、亜鉛種を含有するアルカリ水溶液である。上記した電解液5と同様のものを負極電解液5bとして使用してもよいが、異なっていてもよい。また、正極室1a内の正極電解液5aは、負極電解液5bと同じものを使用できるが、例えば、K、OHを含む水溶液など、[Zn(OH)2−を含まないアルカリ水溶液であってもよい。
【0111】
電解液供給部11aは、例えば負極電解液5bを移送可能なポンプであり、配管16を介して負極室1bから回収され、タンク23に貯留された負極電解液5bを、負極室1bの内部に送り出す。電解液供給部11aは、負極電解液5bを外部に漏出させることでフロー電池の発電性能を低減させないよう高い気密性を有するものが好ましい。
【0112】
第3の実施形態に係るフロー電池では、負極電解液5bを循環させることで、亜鉛デンドライトの形成を低減することが可能となるとともに、正極2と負極3との間にイオン伝導性のセパレータ97を有しているため、セパレータ97が障壁となって、充電時に形成されるデンドライトの進展を物理的に低減し、正負極間の導通を低減することができる。
【0113】
言い換えれば、蓄電する際に、負極電解液5b中のZnが負極3の表面に析出するとともに、負極3から正極2側に延びるデンドライトが生成しやすいが、負極3とセパレータ97との間の負極電解液5bが流れることで、デンドライトの生成およびデンドライトの正極2側への成長を低減することができる。また、仮にデンドライトが生成し、負極3から正極2側に延びたとしても、セパレータ97でデンドライトの成長を停止させることができ、正極2と負極3との導通を低減することができる。
【0114】
また、負極活物質に亜鉛を用いる二次電池の一つでもあるフロー電池は、充放電を繰り返すことで負極電解液5b中に亜鉛種の微粒子が形成される場合があり、亜鉛種の微粒子が正極2の表面に付着することで、二次電池特性の低下が生じる。第3の実施形態に係るフロー電池は、負極電解液5bと正極2がセパレータ97を介して隔離されているため、負極電解液5b中で発生した亜鉛種の微粒子が正極2の表面に付着することを物理的に低減することができる。
【0115】
また、第3の実施形態に係るフロー電池が備えるセパレータ97として、例えば多孔質膜やイオン伝導性材料を含み、水酸化物イオンは透過するが亜鉛イオンは透過できないといった選択性を有するセパレータを使用することで、亜鉛デンドライトの伸展を物理的に低減することができる。
【0116】
図22は、第4の実施形態に係るフロー電池を示すものである。図22に示すように、第4の実施形態では、正極2が、イオン伝導性の被膜である隔膜4で被覆されている点が、第3の実施形態と異なっている。他の点は、第3の実施形態と同じである。イオン伝導性の隔膜4としては、セパレータ97または上記した第1および第2の実施形態に係るフロー電池100,100Aが備える隔膜4と同様のものを使用することができる。
【0117】
第4の実施形態に係るフロー電池では、仮に、デンドライトが負極3から延び、セパレータ97を通過し、正極2に向かうように延びたとしても、正極2の表面の隔膜4により、デンドライトと正極2との接触が防止され、正極2と負極3との導通を低減することができる。
【0118】
なお、この第4の実施形態において、セパレータ97を有せず、正極2の表面の隔膜4を有するフロー電池であっても、正極2と負極3との導通を低減することができる。
【0119】
図23A図23Cは、第5の実施形態に係るフロー電池が備える負極3を示すものである。図23A図23Cに示すように、第5の実施形態では、負極電解液5bに晒される負極3の角部が丸められている点が、第3の実施形態と異なっている。他の点は、第3の実施形態と同じである。
【0120】
図23Aは矩形形状の負極3の主面を示す平面図であり、図23Bは負極3の第1側面を示す側面図であり、図23Cは負極3の第2側面を示す側面図である。これらの図からわかるように、負極3のすべての角は丸められている。
【0121】
デンドライトは、負極3の角部から生成し易いが、第5の実施形態に係るフロー電池では、負極3の角部が丸められているため、デンドライトの生成を低減することができる。
【0122】
図24は、第6の実施形態に係るフロー電池を示すものである。図24に示すように、第6の実施形態では、負極3が収容される負極室1bと、正極2が収容される正極室1aとが連通しており、負極室1bが正極室1aの下流側に位置している。
【0123】
すなわち、正極室1aおよび負極室1bに配管16がそれぞれ接続され、さらに、正極室1aと負極室1bとが配管37で直列に接続されている。配管16には電解液供給部11aが配置されており、電解液供給部11aが駆動することにより、電解液が正極室1aから負極室1bに流動し、タンク23を経由して循環することになる。
【0124】
このようなフロー電池では、正極2で発生した正極室1aの酸素を、負極室1bに供給し、Znと反応させ、ZnOとすることで、正極室1aの膨満を防止し、電解液漏れ等を防止することができる。
【0125】
図25は、第7の実施形態に係るフロー電池を示すものである。図25に示すように、第7の実施形態では、第3の実施形態に加えて、正極室1a内の正極電解液5aを循環させる電解液供給部91a、および正極電解液用のタンク93を別個に有している。
【0126】
このようなフロー電池では、正極室1aで発生した電解液中の酸素を、タンク93まで運び、大気中に放出することができ、正極室1aの膨満を防止し、電解液漏れ等を防止することができる。
【0127】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態および変形例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0128】
例えば、図7A図10図12図17Bに示す正極および負極の形状を、第3〜7の実施形態に係るフロー電池が備える正極2および負極3にそれぞれ適用してもよい。
【0129】
また、第3〜第7の実施形態に係るフロー電池が備える電解液供給部11aは、常時動作していてもよいが、電力消費を低減する観点から、負極電解液5bの電解質濃度に偏りが生じやすい充放電時にのみ動作させることが好ましく、デンドライトが生じやすい充電時にのみ動作させるのがより好ましい。また、負極電解液5b中の[Zn(OH)2−の消費レートに応じて電解液供給部11aによる負極電解液5bの循環速度を変更するように構成してもよい。また、第7の実施形態に係るフロー電池が備える電解液供給部91aは、電解液供給部11aの作動するタイミングに合わせて動作させてもよく、また電解液供給部11aとは独立した個別のタイミングで動作するように構成してもよい。
【0130】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0131】
1,10 反応室
1a 正極室
1b 負極室
2,2A,2B 正極
3,3a,3b,3A,3B,3C 負極
4 隔膜
5 電解液
5a 正極電解液
5b 負極電解液
6 気泡
7 気体層
8 ケース
9 上板
11 気体供給部
11a,91a 電解液供給部
97 セパレータ
100,100A フロー電池
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図24
図25
【国際調査報告】