(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
本発明は、式(I)、(II)、(III)もしくは(IV)で表される化合物またはそれらの医薬上許容される塩等のキサンチンオキシダーゼ阻害薬を有効成分として含有する、認知症の治療薬または予防薬を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子を意味する。
本発明において「アルキル基」とは、1価の飽和の直鎖、環状または分岐状脂肪族炭化水素基を意味する。
本発明において「アルキレン基」とは、前記「アルキル基」から任意の位置の水素原子をさらに1個除いて誘導される二価の基を意味する。
本発明において「アルコキシ基」とは、1価の飽和の直鎖、環状または分岐状脂肪族炭化水素オキシ基を意味する。
本発明において「アルコキシカルボニル基」は上記アルコキシ基とカルボニル基からなる基を意味する。「C2〜C7アルコキシカルボニル基」とは、C1〜C6のアルコキシ基とカルボニル基とからなる基を意味する。
本発明において「アリール基」とは、炭素数が6〜10個の単環性または二環性の1価の芳香族炭化水素基を意味する。
本発明において「ヘテロアレーン」とは、酸素原子、硫黄原子、および窒素原子より選択される1〜5個のヘテロ原子を有する単環性または二環性の芳香族複素環を意味する。「5または6員の単環性のヘテロアレーン」とは、上記「ヘテロアレーン」のうち、5または6員の単環性のものを意味する。
本発明において「ヘテロアリール基」とは、酸素原子、硫黄原子、および窒素原子より選択される1〜5個のヘテロ原子を有する単環性または1価の二環性の芳香族複素環基を意味する。
本発明において「置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基」とは、置換可能な位置に1または複数の置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を表す。置換基が複数存在する場合、各置換基は、同一でも異なっていてもよい。「置換されていてもよい」他の置換基も同様の意味を表す。
本発明において、アルキル基がアルコキシ基で置換されている場合、アルキル基とアルコキシが一緒になって含酸素飽和環を形成していてもよい。かかる環としては、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
【0024】
(式中、
R
1aは、C1〜C8アルコキシ基、モルホリノ基、4−メチルピペラジン−1−イル基またはピペリジノ基を表し、
R
2aは、ニトロ基またはシアノ基を表し、
X
aは、カルボキシル基またはC2〜C7アルコキシカルボニル基を表し、
Y
aは、水素原子またはC1〜C6アルキル基を表す。)
で表される2−フェニルチアゾール化合物またはそれらの医薬上許容される塩としては、例えば、2−(3−シアノ−4−イソブチルオキシフェニル)−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸(化合物A)が挙げられる。
【0025】
また、式(I)で表される化合物は、WO92/09279記載の方法など、公知の方法により製造することができる。
【0026】
上記式(I)中のR
1aにおける「C1〜C8アルコキシ基」の好ましい具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、n−ブチルオキシ、イソプロピルオキシ、イソブチルオキシ、sec−ブチルオキシ、tert−ブチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ基などが挙げられる。より好ましくは、イソブチルオキシ基が挙げられる。R
1aとして好ましい基は、C1〜C8アルコキシ基、より好ましい基はイソブチルオキシ基である。
R
2aとして好ましい基は、シアノ基である。
X
aにおける「C2〜C7アルコキシカルボニル基」の好ましい具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。X
aとして好ましい基は、カルボキシル基である。
上記式(I)中のY
aにおける「C1〜C6アルキル基」の好ましい具体例としては、メチル、エチル、プロピルおよびイソプロピル基などが挙げられる。より好ましくは、メチル基が挙げられる。Y
aとして好ましい基は、C1〜C6アルキル基であり、より好ましい基はメチル基である。
上記式(I)中の置換基の組み合わせは、それぞれについて上述した好ましい基同士を組み合わせたものが好ましく、より好ましい基同士を組み合わせた物がより好ましい。
【0027】
式(I)で表される化合物としては、上記化合物Aが好ましい。
【0028】
本発明における式(II)の化合物またはその医薬上許容される塩は次のとおりである。
【0030】
(式中、
R
1bは、OR
b、環を形成していてもよいNR
bR
b’、またはSR
bを表し、ここで、R
bおよびR
b’は、独立して、水素原子、1もしくは複数のC1〜C8のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくは水酸基で置換されていてもよいC1〜C8のアルキル基、1もしくは複数のC1〜C8のアルキル基、C1〜C8のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、または1もしくは複数のC1〜C8のアルキル基、C1〜C8のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
R
2bは、水素原子またはC1〜C8のアルキル基を表す。
X
1b、X
2b、およびX
3bは、独立して、CR
3bもしくは窒素原子であるか、またはX
1bがCR
3bもしくは窒素原子であり、X
2bとX
3bが一緒になってベンゼン環を形成する。)
X
2bとX
3bが一緒になってベンゼン環を形成する場合の式(II)の構造は次のとおりである。
【0032】
(R
3bは、
水素原子またはC1〜C8のアルキル基を表す。)
【0033】
式(II)で表されるアゾールベンゼン化合物またはそれらの医薬上許容される塩としては、例えば、
(B−1) 2−[3−(1H−イミダゾール−1−イル)−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−2) 4−メチル−2−[3−(2−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−3) 2−[3−(1H−1,3−ベンゾジアゾール−1−イル)−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−4) 4−メチル−2−[3−(3−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−5) 4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−6) 4−メチル−2−[3−(5−メチル−1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−7) 4−メチル−2−[4−(プロパン−2−イルオキシ)−3−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−8) 4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−9) 2−[4−(2,2−ジメチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−10) 2−[4−(シクロブチルメトキシ)−3−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−11) 2−[4−(プロパン−2−イルオキシ)−3−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−12) 2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−13) 4−メチル−2−[4−(プロパン−2−イルオキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−14) 4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−15) 2−[4−(2,2−ジメチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−16) 2−[4−(シクロブチルメトキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−17) 2−[4−(シクロペンチルオキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−18)2−[4−(3−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−19)2−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−20)2−[4−(プロパン−2−イルオキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−21) 2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−22) 4−メチル−2−[4−フェノキシ−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−23) 2−[4−(2−フルオロフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−24) 2−[4−(2−メトキシフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−25) 2−[4−(2,6−ジフルオロフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−26) 2−[4−(3−フルオロフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−27) 2−[4−(3−メチルフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−28) 2−[4−(2−クロロフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−29) 2−[4−(4−フルオロ−3−メチルフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−
カルボン酸
(B−30) 2−[4−(4−フルオロ−2−メチルフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−
カルボン酸
(B−31) 2−[4−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−32) 2−[4−(2−フルオロ−6−メトキシフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5
−カルボン酸
(B−33) 2−[4−(2−メチルフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−34) 2−[4−(4−メチルフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−35) 2−[4−(3−フルオロ−5−メチルフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−
カルボン酸
(B−36) 2−[4−(2,5−ジフルオロフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−37) 2−[4−(2−フルオロ−5−メチルフェノキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−
カルボン酸
(B−38) 4−メチル−2−{4−[(2−メチルプロピル)スルファニル]−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル}−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−39) 4−メチル−2−[4−(プロパン−2−イルスルファニル)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−40) 4−メチル−2−{4−[(4−メチルフェニル)スルファニル]−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル}−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−41) 2−[4−(N,N−ジエチルアミノ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(B−42) 4−メチル−2−[4−(ピロリジン-1-イル)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
が挙げられる。
【0034】
また、式(II)で表される化合物は、WO2014/119681記載の方法など、公知の方法により製造することができる。
【0035】
R
1bがOR
bまたはSR
bのとき、R
bは、好ましくは、1もしくは複数のC1〜C8のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくは水酸基で置換されていてもよいC1〜C8のアルキル基、または1もしくは複数のC1〜C8のアルキル基、C1〜C8のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基である。より好ましくは、1もしくは複数のC1〜C8のアルコキシ基もしくは水酸基で置換されていてもよいC1〜C8のアルキル基である。特に好ましくは、イソプロピル基、イソブチル基、ネオペンチル基である。R
1bが環を形成していてもよいNR
bR
b’において、「NR
bR
b’が環を形成する」とは、R
bおよびR
b’が、それらが結合する窒素原子と一緒になって含窒素飽和環を形成することをいう。式(IV)におけるNR
dR
d’でも同様である。R
1bが環を形成していてもよいNR
bR
b’のとき、R
bおよびR
b’は、独立して、水酸基で置換されていてもよいC1〜C8のアルキル基であることが好ましく、R
bおよびR
b’が、独立して、メチル基、エチル基、イソプロピル基であるか、またはR
bおよびR
b’が、それらが結合する窒素原子と一緒になってピロリジン−1−イル基、ピペリジン−1−イル基、モルホリン−1−イル基を形成する場合がより好ましい。
R
2bは、好ましくは、水素原子またはC1〜C3のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。より好ましくは、水素原子およびメチル基である。特に好ましくは、メチル基である。
X
1b、X
2b、およびX
3bは、独立して、CR
3bもしくは窒素原子であることが好ましい。より好ましくは、X
1bは窒素原子であり、X
2bはCR
3bもしくは窒素原子であり、X
3bはCR
3bである組み合わせである。いずれの組み合わせにおいても、R
3bは水素原子であることが好ましい。
【0036】
上記式(II)中の置換基の組み合わせは、それぞれについて上述した好ましい基同士を組み合わせたものが好ましく、より好ましい基同士を組み合わせた物がより好ましく、これに特に好ましい置換基を適用したものがさらに好ましい。また、好ましい置換基の組み合わせは、WO2014/119681にも記載されている。
【0037】
式(II)で表される化合物としては、化合物B−1からB−42の化合物が好ましく、化合物B−8、B−13、B−14およびB−15がより好ましい。
【0040】
(式中、
A
cは、C6〜C10のアリール基またはヘテロアリール基を表し、ここで、アリール基またはヘテロアリール基は、無置換であるか、または同一もしくは互いに異なって、ハロゲン原子、−CN、−NO
2、C1〜C6のアルキル基、C3〜C7のシクロアルキル基、C1〜C6のハロゲノアルキル基、フェニル基、−CH
2−O−R
2c、−O−R
2c、−O−(C1〜C6のハロゲノアルキル)、−O−ベンジル、−O−フェニル、−O−CO−R
2c、−NR
3cR
4c、−NH−CO−R
2c、−CO
2−R
2c、−CO−R
2c、−CO−NR
3cR
4c、−NH−SO
2−R
2c、−CO−アリール、−S−R
2c、−SO
2−(C1〜C6のアルキル)、および−SO
2−フェニルからなる群より選択される1〜3個の基Q
cで置換されていてもよい。
X
c、Y
c、およびZ
cはCR
5cまたは窒素原子を表し、ここで、X
c、Y
c、およびZ
cのうち1つは窒素原子を表し、残り2つはCR
5cを表す。
R
cは、水素原子、またはC1〜C6のアルキル基を表す。
R
1cは、水素原子、アミノ基またはC1〜C6のアルキル基を表す。
R
2cは、水素原子またはC1〜C6のアルキル基を表す。
R
3cおよびR
4cは、同一または互いに異なって、水素原子またはC1〜C6のアルキル基であり、ここで、R
3cおよびR
4cは一体となって、これらが結合する窒素原子と共に単環式含窒素飽和複素環を形成してもよい。
R
5cは、水素原子、ハロゲン原子またはC1〜C6のアルキル基を表す。)
で表されるピラゾール化合物またはそれらの医薬上許容される塩としては、例えば、
(C−1)1−(4−シアノ−5−フェニルピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−カルボン酸
(C−2)1−[4−シアノ−5−(2−フルオロフェニル)ピリジン−2−イル]−1H−ピラゾール−4−カルボン酸
(C−3)1−[4−シアノ−5−(3−メチルフェニル)ピリジン−2−イル]−1H−ピラゾール−4−カルボン酸
(C−4)1−[4−シアノ−5−(4−メチルフェニル)ピリジン−2−イル]−1H−ピラゾール−4−カルボン酸
(C−5)1−[4−シアノ−5−(2−フルオロ−3−メトキシフェニル)ピリジン−2−イル]−1H−ピラゾール−4−カルボン酸
(C−6)1−[4−シアノ−5−(チオフェン−3−イル)ピリジン−2−イル]−1H−ピラゾール−4−カルボン酸
(C−7)1−[4−シアノ−5−(2−フルオロ−4−メトキシフェニル)ピリジン−2−イル]−1H−ピラゾール−4−カルボン酸
が挙げられる。
【0041】
また、式(III)で表される化合物は、WO2014/157740記載の方法など、公知の方法により製造することができる。
【0042】
A
cの好ましい「アリール基」または「ヘテロアリール基」としては、フェニル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピラニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基等が挙げられ、フェニル基、チエニル基がより好ましい。
A
cは、無置換であるか、または同一もしくは互いに異なって、ハロゲン原子、−CN、−NO
2、C1〜C6のアルキル基、C3〜C7のシクロアルキル基、C1〜C6のハロゲノアルキル基、フェニル基、−CH
2−O−R
2c、−O−R
2c、−O−(C1〜C6のハロゲノアルキル)、−O−ベンジル、−O−フェニル、−O−CO−R
2c、−NR
3cR
4c、−NH−CO−R
2c、−CO
2−R
2c、−CO−R
2c、−CO−NR
3cR
4c、−NH−SO
2−R
2c、−CO−アリール、−S−R
2c、−SO
2−(C1〜C6のアルキル)、および−SO
2−フェニルからなる群より選択される1〜3個の基Q
cで置換されていてもよい。A
cがQ
cで置換される場合、Q
cの個数は1または2個であることが好ましい。A
cは、無置換であるか、ハロゲン原子、C1〜C6のアルキル基、C3〜C7のシクロアルキル基、C1〜C6のハロゲノアルキル基、フェニル基、−O−R
2c、および−O−(C1〜C6のハロゲノアルキル)からなる群より選択される基Q
cにより置換されていることが好ましい。A
cは、無置換であるか、ハロゲン原子、メチル基、およびメトキシ基からなる群より選択される基Q
cにより置換されていることがより好ましい。ハロゲン原子としてはフッ素原子が好ましい。
【0043】
特に好ましいA
cは、例えば以下の構造式で表すことができる。
【0045】
前記式(III)中、R
cは、水素原子、またはC1〜C6のアルキル基を表す。好ましい「C1〜C6のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、t−ペンチル基、およびイソヘキシル基等が挙げられ、R
cは、水素原子、またはメチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
前記式(III)中、R
1cの好ましい「C1〜C6のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、t−ペンチル基、およびイソヘキシル基等が挙げられ、R
1cは、水素原子、アミノ基またはメチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
R
2cは、好ましい「C1〜C6のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、t−ペンチル基、およびイソヘキシル基等が挙げられ、R
2cは、水素原子、またはメチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
R
3cおよびR
4cにおいて、好ましい「C1〜C6のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、t−ペンチル基、およびイソヘキシル基等が挙げられ、好ましい「単環式含窒素飽和複素環」としては、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、アゼパン、ジアゼパン、アゾカン、モルホリン、チオモルホリン、テトラヒドロピリジン環等が挙げられる。「単環式含窒素飽和複素環」は、水素原子、メチル基、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンがより好ましく、水素原子、メチル基およびモルホリンが特に好ましい。
X
c、Y
cおよびZ
cはCR
5cまたは窒素原子を表し、ここで、X
c、Y
cおよびZ
cのうち1つは窒素原子を表し、残り2つはCR
5cを表す。X
c、Y
c、Z
cのうちいずれかが窒素原子である場合、Y
cが窒素原子であることが好ましい。
R
5cとしては、水素原子、ハロゲン原子またはC1〜C6のアルキル基が挙げられ、水素原子が好ましい。
【0046】
上記式(III)中の置換基の組み合わせは、それぞれについて上述した好ましい基同士を組み合わせたものが好ましく、より好ましい基同士を組み合わせた物がより好ましく、これに特に好ましい置換基を適用したものがさらに好ましい。また、上記式(III)の好ましい置換基の組み合わせは、WO2014/157740にも記載されている。
【0047】
式(III)で表される化合物において、化合物C−1からC−7の化合物が好ましく、化合物C−1、C−3およびC−4がより好ましい。
【0050】
(式中、
R
0dは、次のR
01dまたはR
02dを表す。
【0052】
R
1dは、1もしくは複数のC1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、OR
d、環を形成していてもよいNR
dR
d’、またはSR
dを表し、ここで、R
dおよびR
d’は独立して、水素原子、1もしくは複数のC1〜C8のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくは水酸基で置換されていてもよいC1〜C8のアルキル基、1もしくは複数のC1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくはシアノ基で置換されていてもよいアリール基、または1もしくは複数のC1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいヘテロアリール基を表す。
R
2dは、水素原子、アミノ基、または1もしくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよいC1〜C8のアルキル基を表す。
X
1dは、CR
3または窒素原子を表し、ここで、R
3は水素原子、またはハロゲン原子を表す。
環A
dは、1もしくは複数のC1〜C3のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいC1〜C6のアルキル基、1もしくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよいC1〜C6のアルコキシ基、およびハロゲン原子からなる群より選択される1〜4個の基で置換されていてもよい5または6員の単環性のヘテロアレーンを表す。)
で表されるアゾールカルボン酸化合物またはそれらの医薬上許容される塩としては、例えば、
(D−1)2−(4−イソブトキシ−3−チアゾール−5−イル−フェニル)−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(D−2)2−(4−イソブトキシ−3−オキサゾール−5−イル−フェニル)−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
(D−3)2−[4−イソブトキシ−3−(1−メチルテトラゾール−5−イル)−フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボン酸
が挙げられる。
【0053】
また、式(IV)で表される化合物は、WO2016/017699記載の方法など、公知の方法により製造することができる。
【0054】
式(IV)中、R
1dは、好ましくは、OR
dである。R
1dがOR
dまたはSR
dのとき、R
dは、好ましくは、1もしくは複数のC1〜C8のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくは水酸基で置換されていてもよいC1〜C8のアルキル基、または1もしくは複数のC1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくはシアノ基で置換されていてもよいアリール基である。より好ましくは、1もしくは複数のC1〜C8のアルコキシ基またはハロゲン原子で置換されていてもよいC1〜C8のアルキル基である。特に好ましくは、イソプロピル基、イソブチル基、ネオペンチル基である。
R
1dが1もしくは複数のC1〜C6のアルキル基、C1〜C6のアルコキシ基、ハロゲン原子もしくはシアノ基で置換されていてもよいアリール基のとき、好ましくは、1もしくは複数のC1〜C3のアルキル基、C1〜C3のアルコキシ基もしくはハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基であり、より好ましくは、フッ素原子で置換されていてもよいフェニル基である。
R
2dは、好ましくは、水素原子またはC1〜C3のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。より好ましくは、水素原子およびメチル基である。特に好ましくは、メチル基である。
R
0dがR
01d、R
02dいずれの場合も、好ましいR
1dおよびR
2dは上記のとおりである。さらに、R
0dがR
02dの場合、好ましいR
2dとして、アミノ基および1もしくは複数のハロゲン原子で置換されていてもよいC1〜C3のアルキル基も挙げることができる。R
0dがR
02dのとき、より好ましいR
2dは水素原子およびアミノ基である。
X
1dはCR
3dまたは窒素原子を表し、R
3dは水素原子またはハロゲン原子を表す。
環A
dは、環A
d上の炭素原子により、X
1dを含むベンゼンまたはピリジン環と結合する。環A
dにおける5または6員の単環性のヘテロアレーンとしては、次のような構造を挙げることができる。
【0056】
環A
dは、好ましくは、1または2個のC1〜C3のアルコキシ基で置換されていてもよい1または2個のC1〜C3のアルキル基で置換されていてもよい5または6員の単環性のヘテロアレーンを表す。より好ましくは、1または2個のメチル基で置換されていてもよい5または6員の単環性のヘテロアレーンを表す。好ましい環A
dの具体例は、例えば、以下のとおりである。
【0058】
上記式(IV)中の置換基の組み合わせは、それぞれについて上述した好ましい基同士を組み合わせたものが好ましく、より好ましい基同士を組み合わせた物がより好ましく、これに特に好ましい置換基を適用したものがさらに好ましい。また、上記式(IV)の好ましい置換基の組み合わせは、WO2016/017699にも記載されている。
式(IV)で表される化合物において、化合物D−1、D−2およびD−3が好ましい。
【0059】
本発明における認知症とは、世界保健機関による国際疾病分類第10版(ICD−10)、米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル改訂第3版(DSM−III−R)および第4版テキスト改訂版(DSM−IV−TR)ならびにそれらの改定版により認知症と診断される疾患として定義され、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脳血管性認知症、若年性認知症、パーキンソン病等を含む。
本発明において、「予防」とは、未だ罹患または発症をしていない個体において、罹患または発症を未然に防ぐことであり、「治療」とは既に罹患または発症した個体において、疾患や症状を治癒、抑制または改善させることをいう。
【0060】
上記式(I)、(II)、(III)および(IV)で表される化合物は、必要に応じて医薬上許容される塩に変換することができる。かかる塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等の無機酸との塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p‐トルエンスルホン酸等の有機酸との塩;リジン、アルギニン、オルニチン、グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸との塩;ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属との塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アルミニウム、亜鉛、鉄等の金属との塩;メチルアミン、エチルアミン、t−オクチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルグルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン等の有機塩基との塩;アンモニウム塩等が挙げられる。
【0061】
本発明の有効成分は、固形製剤、半固形製剤、および液状製剤等のいずれの剤形、経口剤および非経口剤(注射剤、経皮剤、点眼剤、坐剤、経鼻剤、および吸入剤等)のいずれの適用製剤であっても使用することができる。
【0062】
本発明の化合物またはそれらの医薬上許容される塩を有効成分として含有するAD等の認知症の治療薬または予防薬は、通常製剤化に用いられる担体や賦形剤、その他の添加剤を用いて調製される。製剤用の担体や賦形剤としては、固体または液体いずれでもよく、例えば乳糖、ステアリン酸マグネシウム、スターチ、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、オリーブ油、ゴマ油、カカオバター、エチレングリコール等やその他常用のものが挙げられる。投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、あるいは静注、筋注等の注射剤、坐剤、経皮等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
【0063】
本発明の有効成分の投与量としては、AD等の認知症の治療または予防に有効な量であり、かつ、患者の症状、年齢、体重、併用療法の種類、治療の頻度、望まれる効果の種類、あるいは投与法等に応じて定めることができる。投与は、連日投与または間歇的に投与しても良く、投与回数は、通常1〜3回/日であり、通常成人1人あたり、1回につき0.5〜1000mg程度(好ましくは10〜120mg)であり、1日あたり0.5〜3000mg(好ましくは10〜360mg、より好ましくは10〜120mg)である。また、投与回数は、1〜3回/週でもよく、この場合、通常成人1人あたり、1回につき0.5〜1000mg程度とする。このような条件を満足するように製剤を調製するのが好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0065】
[実施例1] 2−(3−シアノ−4−イソブチルオキシフェニル)−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸(化合物A)のアルツハイマー病進行抑制作用
1.材料及び方法
キサンチンオキシダーゼを強力に阻害する作用を有する化合物として2−(3−シアノ−4−イソブチルオキシフェニル)−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸(化合物A)を使用した。
【0066】
化合物Aの濃度調製と投与量・投与方法は次の要領で行った。
基剤として、0.5%メチルセルロースを作製した。化合物A投与薬剤の調製は、微量薬剤の計量誤差と薬効の低下を回避するために、化合物Aを溶剤としての0.5%メチルセルロースに溶解する際に、10倍濃度のstock solutionを一旦作製した。即ち、化合物Aを瑪瑙製の乳鉢にてすりつぶした後、少量の0.5%メチルセルロースを加え、懸濁させた。その後、徐々に少量の0.5%メチルセルロースを加え、完全に懸濁・溶解させた。最終的に10mLの0.5%メチルセルロースに化合物A50mgを懸濁・溶解させ、50mg化合物A・0.5%メチルセルロース10mL(50mg/10mL)の10倍濃度のstock solutionを作製した。10倍濃度のstock solution[50mg化合物A・0.5%メチルセルロース10mL(50mg/10mL)]を1週間毎に作製して冷蔵保存し、投与当日その都度10倍濃度のstock solutionを十二分に撹拌しながら10倍希釈し、マウスに投与時にも撹拌した状態で薬剤を胃ゾンデに吸引して、投与濃度にした。
以上の方法により、即ち、投与濃度として、最終的に10mLの0.5%メチルセルロースに5mgの化合物Aが懸濁・溶解している濃度、即ち、5mg化合物A・0.5%メチルセルロース10mL(5mg/10mL)の試験液を作製し、化合物Aをマウス体重1kg当たり5mg(5mg/kg)を1日1回経口的に投与した。
プラセボとしては、溶剤である0.5%メチルセルロースのみをマウス体重1kg当たり10mL(10mL/kg)、即ち、薬剤投与マウスの溶剤と等容量を1日1回経口投与した。
経口投与の方法は、プラスチックシリンジにて正確に容量を測量し、プラスチックシリンジに直接マウス用胃ゾンデをつなげ、経口・経食道的に確実に投与した。
【0067】
実験動物として、ヒトアルツハイマー病のアミロイドβ前駆体タンパク質の695アミノ酸をコードする遺伝子のスウェーデン変異を有する遺伝子、及びヒトタウタンパク質遺伝子の301番目のプロリンがロイシンに変異した(P301L)の変異遺伝子の両ヒト遺伝子を高発現するTg(APPSWE)2576KhaTg(Prnp−MAPT*P301L)JNPL3HImc系統のアルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウス(Taconic Farms,Inc.,)を使用した。当該アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスはSPF(specific pathogen free:特定病原体のいない微生物制御状態)下で飼育され、およそ2年間生存可能である。
実験期間が長期間に及ぶために、自然定着の微生物を保有するマウスにおける感染症等を排除し、可能な限り、個体差を最小限にさせる目的で、当該アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスを購入後、個別に4週間隔離し、SPFであることを再度確認した。雄性マウス10匹を5匹ずつ2群(化合物A治療投与群(n=5)とコントロール群(n=5)であるメチルセルロース投与群)に分けた。
このマウスでは、自然経過として、生後1年齢(365日齢)以上の脳においてヒトアルツハイマー病の病理組織像のhallmarkである老人斑(Senile Plaque(SP))と神経原線維変化(Neurofibrillary Tangle)の出現が確認されるが、生後2年齢の正常マウスの脳においては、老人斑と神経原線維変化は認められない。この知見とヒトアルツハイマー病の神経病理所見に基づいて、このマウスは生後1年齢においてヒトにおけるアルツハイマー病に相当する疾病を発症していると結論づけた。この結論に基づいて、実際のヒトへの臨床応用をも考慮して、このマウスにおいてアルツハイマー病の病理組織像のhallmarkである老人斑と神経原線維変化が出現する生後1年齢の時点(アルツハイマー病発症後)に投与を開始した。
生後1年齢の時点までは経過観察を行い、生後1年齢の時点から、化合物A治療群(n=5)には化合物Aの5mg/kgを胃ゾンデを用いて連日経口投与した。0.5%メチルセルロースコントロール群(n=5)には0.5%メチルセルロースのみをマウス体重1kg当たり10mL(10mL/kg)を胃ゾンデを用いて連日経口投与した(
図1)。
生後690日以前の0.5%メチルセルロースコントロール群において1匹のマウスが突然死したため、生後690日以上生存した化合物A治療群の5匹と0.5%メチルセルロースコントロール群の4匹の合計9匹を実験動物として採用した。
生後690−700日齢の時点で、化合物A治療群のマウス5匹とコントロール群のマウス4匹の合計9匹の各個体の臓器組織のサンプリング方法を以下のごとく実施した。
9匹のマウスに個体体重1g当たり1mLのペントバルビタールナトリウム(商品名:ネンブタール;大日本住友製薬)を腹腔内注射して全身麻酔を施行した。完全に麻酔下にあることを確認した後、麻酔下にある各個体を二酸化炭素処理により安楽死させ、開腹及び開胸を行った。右心室からの採血後、左心室の大動脈経由により、生理的食塩水にて全身臓器の血液を除去した。その後直ちに、大脳の右前頭葉の一部分、脊髄の一部分、心臓の左右両心室の一部分、右肺の一部分、肝臓の一部分、左右腎臓の一部分、左精巣の各新鮮臓器を採取し、ドライアイスにて瞬間凍結させた。その後、各新鮮臓器と血清を−80℃の超低温フリーザーに保存した。各新鮮臓器の瞬間凍結操作と同時並行操作として、各新鮮臓器として採取した部分を除く残存臓器部分と他の全ての臓器を4%パラホルムアルデヒド・0.1Mカコジル酸緩衝液(pH7.3)にて直ちに浸潤固定した。
【0068】
大脳・小脳・脳幹・脊髄などの全臓器をパラフィンに包埋してミクロトームで薄切した。臓器組織の処理は、臓器組織の固定、脱水、脱エタノール、パラフィン浸透、パラフィン包埋、及びパラフィン切片作製の下記6ステップの操作にて実施した。
(1)臓器組織の固定は、各組織を4%パラホルムアルデヒド・0.1Mカコジル酸緩衝液(pH7.3)にて浸潤固定した。
(2)臓器組織の脱水は、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline:PBS)で3回洗浄した。その後、水道水の流水にて一晩洗浄後、70%エタノールにて12時間室温、80%エタノールにて12時間室温、90%エタノールにて12時間室温、99.5%エタノールにて12時間室温、もう一度99.5%エタノールにて12時間室温、100%エタノールにて12時間室温、無水エタノールにて12時間室温にて浸透させ、臓器組織の水分をエタノールに完全に置換した。
(3)脱水用のエタノールを除去するために、クロロホルムにて置換した。クロロホルム置換は、クロロホルム槽内にて室温で2時間3回浸透させた。
(4)臓器組織のパラフィン浸透工程は、臓器組織をクロロホルム槽から60℃パラフィン槽に移すことにより実施した。
(5)60℃パラフィン槽内にて、2時間4回浸透させることにより、完全にクロロホルムを抜き、臓器組織にパラフィン浸透を完全に実施した。その後、包埋用パラフィンにて、臓器組織をパラフィン内に包埋した。
(6)パラフィン切片の作製は、パラフィン包埋された臓器組織のパラフィンブロックを、ミクロトームにて6μm厚で薄切した。
マウスの大脳の神経病理組織像、特に、老人斑と神経原線維変化の神経病理組織像の正当性を評価する目的で、臨床神経病理学的確定診断がなされているアルツハイマー病の4例の剖検症例の大脳パラフィンブロックを使用した。
マウスの大脳を底面から観察して乳頭体を確認した。炭素鋼両刃(FA−10;フェザー安全剃刀)の中央にて、両刃を切断し、両刃を二つの片刃とした。このようにして作製した炭素鋼片刃を使用して、アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスの大脳の乳頭体中央部に、最初の冠状断の割面を作製した。
この乳頭体冠状割面から約2mm厚の大脳冠状割面を吻側方向と尾側方向の両方向に連続して切り出した。脳幹小脳の部位では、橋の左右の三叉神経を含み、且つ脳幹長軸に直角になる割面平面にて最初の割面を作製した。大脳と同様に約2mm厚の脳幹小脳割面を吻側方向と尾側方向の両方向に連続して切り出した。
【0069】
組織化学的染色と免疫組織化学的染色は以下の方法により行った。
(1)パラフィン切片の組織化学及び免疫組織化学的染色に先立ち、以下の脱パラフィン・親水操作を行った。脱パラフィン操作として、パラフィン切片をキシレン槽内に5分間4回入れ、次に親水操作として、脱パラフィン切片を100%エタノール槽内に5分間2回、95%エタノール槽内に5分間1回、90%エタノール槽内に5分間1回、80%エタノール槽内に5分間1回入れた。その後、水道水の流水にて洗浄を5分間行った。
(2)組織化学的染色としてヘマトキシリン・エオシン(hematoxylin and eosin:HE)染色を行った。HE染色操作後の切片は、脱水・透徹・封入の各工程を実施した。まず脱水工程を以下の手順で行った。50%エタノール1分間1回、70%エタノール1分間1回、80%エタノール1分間1回、90%エタノール1分間1回、95%エタノール1分間1回、100%エタノール5分間1回、及び無水エタノール5分間1回。透徹工程は、キシレン5分4回浸透させた。封入工程は、封入剤(New M・X;松浪硝子工業)をカバーグラスに少量たらし、空気を入れないように組織切片を覆った。
【0070】
(3)免疫組織化学染色に関して、老人斑のコア蛋白質であるアミロイドβタンパク質(Aβ)の検出と神経原線維変化のコア蛋白質であるリン酸化タウ蛋白の検出は以下の方法により実施した。
1)アミロイドβタンパク質検出方法:
アミロイドβプロテイン免疫組織化学染色キット(Code No.299−56701;和光純薬工業)を使用した。パラフィン切片におけるAβ40の検出には、キット内の抗アミロイドβプロテイン(1−40)マウスモノクローナル抗体(クローンNo.BA27)を使用した。Aβ42の検出には、キット内の抗アミロイドβ−プロテイン(1−42)マウスモノクローナル抗体(クローンNo.BC05)を使用した。最終的には、発色剤として、3,3’−diaminobenzidine tetrahydrochloride(DAB;Dako)を使用して可視化した。
2)リン酸化タウ蛋白の検出方法:
以下の一次抗体とABC(avidin−biotin−immunoperoxidase complex)法との組み合わせによって施行した。
一次抗体としては、抗リン酸化タウ蛋白(phosphorylated tau protein;PHF−tau)マウスモノクローナル抗体(クローン:AT8;Innogenetics(現社名 富士レビオ(Fujirebio))を使用した。ABCキットは、Vectastain ABC Kit(Vector Laboratories)を使用した。
最終的には、DABを発色剤として可視化した。封入工程は、HE染色と同様に封入剤にて組織切片を封入した。
HE染色・Aβ40免疫染色・Aβ42免疫染色・AT8免疫染色の各染色標本を、封入剤乾燥後、画像イメージ解析ソフト(FLVFS−LS Ver.1.12;オリンパス)搭載の3CCDデジタルカメラシステム(FX380:オリンパス)装備の光学顕微鏡(BX41:オリンパス)にて検鏡し、当該装置にて写真撮影と共に画像解析を実施した。
アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスの病態が神経病理学的にヒトアルツハイマー病と同一であることを証明するために、予備実験として、雄性マウス10匹を使用した。免疫組織化学的解析により、アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスにおいてはヒトアルツハイマー病の神経病理診断学的hallmarkであるAβ40とAβ42とがコア蛋白質であるアミロイド老人斑とリン酸化タウ蛋白質がコア蛋白質である神経原線維が690日齢以上のマウスにおいて多数出現していたが、Age−matchさせた正常マウスにおいては出現は認められなかった。アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスの老人斑に関しては、ルーチン染色であるHE染色のみで、ヒトアルツハイマー病の老人斑と同様にその構造を容易に同定することが可能であった。アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスにおいて出現する老人斑と神経原線維変化は、ヒトアルツハイマー病の神経病理組織学的hallmarkである老人斑や神経原線維変化と神経病理学的には、同一構造物であった(
図2)。
アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスにおける、免疫染色で同定されたAβ40及びAβ42がコア蛋白質であるアミロイド老人斑及びHE染色で同定された老人斑の好発部位は、海馬(Ammon角)、海馬台、大脳皮質(特に、entorhinal cortex(嗅内皮質))であった。リン酸化タウ蛋白質がコア蛋白質である神経原線維変化の好発部位は、視床下部、扁桃核であった。この神経病理学的解析予備実験に基づいて、薬剤治療効果の評価方法として、アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスの大脳割面と脳幹・小脳割面において、ヒトアルツハイマー病の神経病理組織学的hallmarkである老人斑と神経原線維変化の好発部位の割面を中心に、組織化学的及び免疫組織化学的に定量的に解析した(
図3)。
薬剤のアルツハイマー病に対する治療効果判定は、マウスにおける、ヒトアルツハイマー病の神経病理組織学的hallmarkである老人斑の出現数と神経原線維変化を有する神経細胞数の抑制を以下の方法に従って定量的に解析して判定した。
老人斑に関しては、老人斑数と老人斑の大きさ(老人斑の成長度合い)との二つの要素を考慮して検索した。即ち、老人斑の直径が100μm以上を大型老人斑、直径が50μm以下を小型老人斑、老人斑の直径が50μmと100μmの中間であった老人斑を中型老人斑とに分類したうえで、それぞれの数を計測した(
図4)。数の計測に際しては、double blindにて実施した。即ち、神経病理学的定量的解析では、標本に単なる個体識別番号しか記載せず、標本における細胞数を測定する際に、それがプラセボ又は化合物Aのいずれの投与群のものであったかを知ることができない状況にて実施した。
神経原線維変化に関しては、神経原線維変化を有している神経細胞の個数のみをもって評価した。数の計測に際しては、老人斑数と同様にdouble blindにて実施した。
老人斑の出現数と神経原線維変化を伴う神経細胞数の定量的数値は、平均値±標準偏差で表示した。当該研究に関しての統計解析はソフトウエアStatview(Ver.5.0,SAS Institute Inc.,)を用いて実施した。有意差検定にはMann−WhitneyのU検定またはKruskal−Wallis検定を用い、危険率P<0.05を持って統計的有意差があると判定した。
【0071】
2.結果
(1)老人斑
1)老人斑の神経病理学的形態的特徴
アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスの大脳における海馬を含む乳頭体冠状断割面の病理組織標本を
図5、
図6、
図7、
図8、
図9、および
図10に示す。 690日齢までと690日齢を超した正常マウスには出現しない老人斑が、アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスの海馬において、HE染色で容易に同定できた。アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスに出現する老人斑は、神経病理学的形態的特徴として、中心部がHE染色で濃く染色されるcoreと表現される部位が有り、その周辺がHE染色で淡く染色されるhalloを有する構造物からなるタイプの老人斑と、HE染色で淡く染色されるhaloのみからなる老人斑の二種類の老人斑が存在していた。ヒトアルツハイマー病で出現する老人斑とHE染色上は同一であった。HE染色上、アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスに出現する老人斑のうち、前者の老人斑は、ヒトアルツハイマー病で出現する老人斑のclassical type senile plaquesに相当し、後者の老人斑は、ヒトアルツハイマー病で出現する老人斑のdiffuse type senile plaquesに相当するものであった。
アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスに出現するHE染色で同定できた老人斑は、抗Aβ40抗体と抗Aβ42抗体のいずれか、あるいは両方の抗体で同定できた。0.5%メチルセルロース投与コントロール群に出現した老人斑(
図5、
図6、および
図7)と、化合物A治療群に出現した老人斑(
図8、
図9、および
図10)とは、神経病理学的形態的及び染色学的には同一であった。また、両群のアルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスに出現したAβ40・Aβ42免疫染色陽性老人斑は、ヒトアルツハイマー病で出現するAβ40・Aβ42免疫染色陽性老人斑と神経病理学的形態的及び染色学的に同一であった。
2)老人斑数の定量的解析結果
アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスにおける老人斑の神経病理組織学的特徴が、ヒトアルツハイマー病の老人斑の神経病理組織学的特徴と同一であり、且つコントロール群と化合物A治療群の両者における老人斑の神経病理組織学的特徴が同一であったことから、老人斑に関しては、老人斑数とその直径の大きさ(成長度合い)の定量的解析結果をもって、化合物Aによるヒトアルツハイマー病抑制の有効性を評価した。 アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスにおける老人斑の好発部位を考慮して、HE染色・Aβ40免疫染色・Aβ42免疫染色の三連続染色に基づいて、乳頭体の冠状断割面(海馬・海馬台を含む)とentorhinal cortex(嗅内皮質)の大脳冠状断割面(海馬・海馬台・entorhinal cortex(嗅内皮質)を含む大脳皮質)において出現している老人斑を計測した。
化合物A治療群の大脳1冠状断割面あたりの大型老人斑の数の平均値±標準誤差は、7.9±1.3、コントロール群は14.5±2.6、中型老人斑の数は、31.2±3.9、コントロール群は51.4±6.8、小型老人斑の数は、148.5±13.2、コントロール群は112.0±8.0であった(
図11)。
統計学的に解析した結果、大型老人斑の数と中型老人斑の数の比較では、化合物A治療群はコントロール群と比較して有意に老人斑の数は減少していた(p=0.033,p=0.006,Mann−WhitneyのU検定)。小型老人斑の数には有意差は認められなかった(p=0.055,Mann−WhitneyのU検定)(
図11)。
【0072】
(2)神経原線維変化
1)神経原線維変化の神経病理学的形態的特徴
アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスの大脳における扁桃核及び視床下部を含む大脳冠状断割面の病理組織標本を
図12、
図13、
図14、および
図15に示す。
700日齢までと700日齢を超した正常マウスには出現しない神経原線維変化が、アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスの視床下部と扁桃核において、神経原線維変化のコア蛋白質であるリン酸化タウ蛋白質を同定するAT8免疫染色にて容易に同定できた。0.5%メチルセルロース投与コントロール(対照)群のマウスに出現したAT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞(
図12(HE染色)、
図13(AT8染色))と、化合物A投与治療群のマウスに出現したAT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞(
図14(HE染色)、
図15(AT8染色))とは、神経病理学的形態的及び染色学的には同一であった。また、両群のマウスに出現したAT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞は、ヒトアルツハイマー病で出現するAT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞と神経病理学的形態的及び染色学的に同一であった。
アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスにおけるAT8免疫染色陽性神経原線維変化は、ルーチン染色のHE染色では同定困難であった。一方、ヒトアルツハイマー病で出現するAT8免疫染色陽性神経原線維変化は、ヒトアルツハイマー病に精通した神経病理学者においては、HE染色のみで、AT8免疫染色陽性神経原線維変化を有した神経細胞の一部は同定可能の構造物である。この経験的事実に基づけば、HE染色上は、アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスにおけるAT8免疫染色陽性神経原線維変化と、ヒトアルツハイマー病で出現するAT8免疫染色陽性神経原線維変化とは当該所見の点で同一でない点が認められた。しかしながら、ヒトアルツハイマー病で出現するAT8免疫染色陽性神経原線維変化もアルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスにおけるAT8免疫染色陽性神経原線維変化も共に、神経原線維変化の検出感度は、AT8免疫染色の方が、HE染色よりも遙かに高いという事実に基づき、神経原線維変化を有する神経細胞に関しては、AT8免疫染色陽性神経原線維変化をもって評価した。
2)AT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞数の定量的解析
アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスにおけるAT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞の神経病理組織学的特徴は、ヒトアルツハイマー病のAT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞の神経病理組織学的特徴と同一であり、且つコントロール群と化合物A治療群の両者におけるAT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞の神経病理組織学的特徴が同一であった。この結果に基づいて、AT8免疫染色陽性神経原線維変化に関しては、AT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞の定量的解析結果をもって、化合物Aによるヒトアルツハイマー病抑制の有効性を評価した。
アルツハイマー病モデルダブルトランスジェニックマウスにおけるAT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞の好発部位を考慮して、視床下部を含む大脳冠状断割面と扁桃核の最大径が出現する大脳冠状断割面において出現しているAT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞を計測した。
化合物A治療群の大脳1冠状断割面あたりのAT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞の数の平均値±標準誤差は、70.2±32.8であり、0.5%メチルセルロース投与コントロール群の大脳1冠状断割面あたりのAT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞の数は、287.3±29.3であった。
統計学的に解析した結果、化合物A治療群はコントロール群に比べて、有意にAT8免疫染色陽性神経原線維変化を有する神経細胞の数が減少していた(p=0.014,Kruskal−Wallis検定)(
図16)。
【0073】
以上のとおり、キサンチンオキシダーゼの選択的な阻害剤である化合物Aはアルツハイマー病の原因遺伝子に基づくモデルマウスに対してその病理学的所見から、疾病の進行を著しく抑制することが示された。すなわち、キサンチン酸化還元酵素の選択的な阻害剤である化合物Aは、経口投与によって、アルツハイマー病モデルマウスの大型老人斑と中型老人斑の数を有意に抑制することがわかった。また、化合物Aは、経口投与によって、アルツハイマー病モデルマウスにおける神経原線維変化、すなわち、リン酸化されたtauタンパクの神経細胞内への蓄積を大幅に抑制することがわかった。
【0074】
上記化合物Aと同様に、本実施例記載の方法で、本明細書に記載の他の化合物、例えば、化合物B−1〜B−42、C−1〜C−7およびD−1〜D−3についても薬効を確認することができる。
【0075】
以上より、式(I)、式(II)、式(III)もしくは式(IV)の化合物は、アルツハイマー病等の認知症の治療または予防に有用であると考えられる。