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  • 再表WO2017146009-微生物の酵素生産性を制御する方法 図000018
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年8月31日
【発行日】2018年12月13日
(54)【発明の名称】微生物の酵素生産性を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 13/00 20060101AFI20181116BHJP
   C12M 1/42 20060101ALI20181116BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20181116BHJP
   C12N 9/00 20060101ALI20181116BHJP
【FI】
   C12N13/00
   C12M1/42
   C12P21/02 A
   C12N9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
【出願番号】特願2018-501681(P2018-501681)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-33589(P2016-33589)
(32)【優先日】2016年2月24日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000216162
【氏名又は名称】天野エンザイム株式会社
【住所又は居所】愛知県名古屋市中区錦1丁目2番7号
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
【住所又は居所】山形県山形市小白川町1丁目4−12
(74)【代理人】
【識別番号】100114362
【弁理士】
【氏名又は名称】萩野 幹治
(72)【発明者】
【氏名】南谷 靖史
【住所又は居所】山形県米沢市城南四丁目3−16 国立大学法人山形大学内
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 敏行
【住所又は居所】愛知県北名古屋市九之坪半野27番地 天野エンザイム株式会社 名古屋工場内
【テーマコード(参考)】
4B029
4B033
4B050
4B064
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB01
4B029CC01
4B029DG10
4B033NG01
4B033NH09
4B033NJ01
4B033NK02
4B050CC07
4B050EE05
4B050EE10
4B050LL01
4B050LL02
4B064AG01
4B064CA01
4B064CC22
4B064DA01
4B064DA10
4B064DA11
(57)【要約】
微生物の酵素生産性を制御する新たな方法を提供することを課題とする。微生物にパルス電界を印加し、微生物の酵素生産性を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物にパルス電界を印加することを特徴とする、微生物の酵素生産性を制御する方法。
【請求項2】
微生物の培養中の培養液にパルス電界を印加する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
培養中において、前記パルス電界を発生させる電極部に培養液が循環する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
培養中に繰り返しパルス電界が印加される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記パルス電界のパルス波形が減衰振動波形である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記パルス電界の電界強度が10kV/cm〜50kV/cmである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アミラーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、セルラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、ホスファターゼ、ペプチダーゼ、ヌクレアーゼ、デアミナーゼ、オキシダーゼ、デヒドロゲナーゼ、グルタミナーゼ、ペクチナーゼ、カタラーゼ、デキストラナーゼ、トランスグルタミナーゼ、蛋白質脱アミド酵素及びプルラナーゼからなる群より選択される一以上の酵素の生産量が制御される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、セルラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、酸性ホスファターゼ、アルカリホスファターゼ、ロイシンペプチダーゼ、アラニンアミノペプチダーゼ、PPLアミノペプチダーゼ及びSAPAアミノペプチダーゼからなる群より選択される一以上の酵素の生産量が制御される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記微生物が、糸状菌、放線菌、酵母及び細菌からなる群より選択される微生物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記微生物が、アスペルギルス属、ムコール属、リゾムコール属、リゾプス属、ペニシリウム属、トラメテス属、ストレプトマイセス属、カンジダ属、サッカロマイセス属、スポロボロマイセス属、クルイベロマイセス属、ピケア属、クリプトコッカス属、バチルス属、ストレプトコッカス属、シュードモナス属、バークホルデリア属、クロストリジウム属、ミロセシウム属、クレブシエラ属、クリセオバクテリウム属及びエスケリチア属からなる群より選択される微生物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記微生物が、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、ムコール・ヤバニカス、バチルス・サチルス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・サーキュランス、ストレプトマイセス・グリセウス及びストレプトマイセス・サーモカルボキシダスからなる群より選択される微生物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記酵素生産性の制御が、以下の(1)〜(8)のいずれかである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法:
(1)前記微生物がアスペルギルス・オリゼであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期及び/又は定常期に実施され、α−アミラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、プロテアーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ及びPPLアミノペプチダーゼ、エステラーゼからなる群より選択される一以上の酵素の生産量が上方制御されるもの、前記パルス電界の印加が培養中の誘導期に実施され、α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、エステラーゼからなる群より選択される一以上の酵素の生産量が下方制御されるもの、或いは前記パルス電界の印加が培養中の対数期及び/又は定常期に実施され、SAPAアミノペプチダーゼの生産量が下方制御されるもの;
(2)前記微生物がアスペルギルス・ニガーであり、前記パルス電界の印加が培養中の定常期に実施され、α−アミラーゼ及び/又はプロテアーゼの生産量が上方制御されるもの;
(3)前記微生物がムコール・ヤバニカスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期及び/又は定常期に実施され、α−アミラーゼ及び/又はβ−グルコシダーゼの生産量が上方制御されるもの;
(4)前記微生物がバチルス・サチルスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、ロイシンアミノペプチダーゼの生産量が上方制御されるもの;
(5)前記微生物がバチルス・アミロリケファシエンスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期及び/又は定常期に実施され、リパーゼの生産量が上方制御されるもの或いはセルラーゼの生産量が下方制御されるもの;
(6)前記微生物がバチルス・サーキュランスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、β−ガラクトシダーゼの生産量が上方制御されるもの;
(7)前記微生物がストレプトマイセス・グリセウスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期及び/又は定常期に実施され、β−グルコシダーゼの生産量が上方制御されるもの、或いはα−アミラーゼの生産量が下方制御されるもの;
(8)前記微生物がストレプトマイセス・サーモカルボキシダスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、プロテアーゼの生産量が上方制御されるもの。
【請求項13】
前記パルス電界の印加が培養中の誘導期に実施され、β−ガラクトシダーゼの生産量が上方制御される、請求項1〜6、9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、α−アミラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、プロテアーゼ、ロイシンペプチダーゼ、PPLアミノペプチダーゼ及びリパーゼからなる群より選択される一以上の酵素の生産量が上方制御される、請求項1〜6、9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記パルス電界の印加が培養中の定常期に実施され、α−アミラーゼ及び/又はプロテアーゼの生産量が上方制御される、請求項1〜6、9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記微生物がアスペルギルス・オリゼであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、プロテアーゼの産生量が上方制御される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記微生物がアスペルギルス・オリゼであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、ペプチダーゼの産生量が上方制御される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記微生物がアスペルギルス・オリゼであり、前記パルス電界の印加が培養中の誘導期及び又は対数期に実施され、β-ガラクトシダーゼの産生量が上方制御される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記微生物がアスペルギルス・オリゼであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、α-ガラクトシダーゼの産生量が上方制御される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記微生物がアスペルギルス・オリゼであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、α-アミラーゼの産生量が上方制御される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記微生物がアスペルギルス・ニガーであり、前記パルス電界の印加が培養中の定常期に実施され、プロテアーゼの産生量が上方制御される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記微生物がアスペルギルス・ニガーであり、前記パルス電界の印加が培養中の定常期に実施され、α-アミラーゼの産生量が上方制御される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記微生物がバチルス・サチルスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、ペプチダーゼの産生量が上方制御される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記微生物がバチルス・サーキュランスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、β−ガラクトシダーゼの産生量が上方制御される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法を適用して培養した微生物の培養液及び/又は菌体より、酵素を回収する工程、を含む、酵素組成物の製造方法。
【請求項26】
請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法を適用して培養した微生物の培養液から菌体を除去する工程、を含む、酵素組成物の製造方法。
【請求項27】
菌体除去後の培養液を精製する工程を更に含む、請求項26に記載の製造方法。
【請求項28】
請求項25〜27のいずれか一項に記載の製造方法で得られた酵素組成物。
【請求項29】
請求項2に記載の方法に使用する培養システムであって、培養容器と、その電極が該培養容器の内部に設けられるパルス電界発生装置と、を含む培養システム。
【請求項30】
請求項3又は4に記載の方法に使用する培養システムであって、循環路を備えた培養容器と、前記循環路に送液するための送液手段と、パルス電界発生装置と、を含み、該パルス電界発生装置の電極部が前記循環路に付設されている、培養システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素生産系へのパルス電界の応用に関する。詳しくは、パルス電界を利用して微生物の酵素生産性を制御する方法に関する。本出願は、2016年2月24日に出願された日本国特許出願第2016−033589号に基づく優先権を主張するものであり、当該特許出願の全内容は参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
一般に、微生物を利用して酵素を生産するためには、適した培地成分を使用し、適した培養条件下で微生物を培養し、生産された酵素を回収する。通常、微生物は各種酵素を生産することから、目的の酵素をより多く得たいときや、或いは特定の酵素の生産を抑制したいときには培地成分や培養条件を変更し、酵素生産性、即ち生産される酵素の量や組成(バランス)を制御する。しかしながら、特に培地成分の変更に関しては、各種レギュレーション、アレルゲン性、残留農薬、有害物質、夾雑物、危険性、安定供給面、コスト面等が選択の制限になり、使用可能な成分が制約を受けることも多い。そのため、培地の変更は非常に手間を要するのが一般的であり、また、必ずしも最適な培地を設定できるとは限らない。その上、培地成分の変更に伴い、培養条件の再設定が必要な場合も多い。
【0003】
遺伝子組換え技術を利用して酵素生産性を制御することも行われている。但し、遺伝子が改変された膨大な微生物母集団から、目的に合致した特定の微生物をスクリーニングする必要がある。また、遺伝子の改変に伴い、その培養に適した培地成分や培養条件が変化することも多く、改めて培地や培養条件の検討が必要になることもある。
【0004】
尚、パルス電界を微生物や細胞の改変/制御などに利用した技術を以下に引用する(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−277060号公報
【特許文献2】特開2012−213353号公報
【特許文献3】特開2013−236600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、酵素の生産性を制御する方法はいくつか存在するものの、いずれの方法も多くの手間や時間を要し、また、十分に目的を達成できないことも多い。培地成分や培養条件、更には微生物の遺伝子改変を伴わずに酵素の生産性を制御できれば、汎用的で且つ非常に有効な酵素生産技術となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。具体的には、パルス電界に着目し、その酵素生産性制御への応用の可能性を検討した。微生物細胞内の有用物質の放出(特許文献1)、微生物の改変(特許文献2)、微生物の活性の制御(特許文献3)にパルス電界を利用した例はあるものの、微生物の酵素生産性の制御にパルス電界を用いた例は聞かない。
【0008】
様々な微生物に対してパルス電界を印加し、その効果を調べた結果、同一の微生物株、同一の培地、更には同一の培養条件であっても、パルス電界の印加の有無やその条件の如何によって、酵素生産性が変化するという現象が認められた。即ち、パルス電界を利用すれば、培地組成及び培養条件を変更することなく、且つ遺伝子改変を伴うこともなく、酵素の生産性を制御できることが判明した。以下の発明は、主として上記の知見に基づく。
[1]微生物にパルス電界を印加することを特徴とする、微生物の酵素生産性を制御する方法。
[2]微生物の培養中の培養液にパルス電界を印加する工程を含む、[1]に記載の方法。
[3]培養中において、前記パルス電界を発生させる電極部に培養液が循環する、[2]に記載の方法。
[4]培養中に繰り返しパルス電界が印加される、[2]又は[3]に記載の方法。
[5]前記パルス電界のパルス波形が減衰振動波形である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]前記パルス電界の電界強度が10kV/cm〜50kV/cmである、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]アミラーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシダーゼ、セルラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、ホスファターゼ、ペプチダーゼ、ヌクレアーゼ、デアミナーゼ、オキシダーゼ、デヒドロゲナーゼ、グルタミナーゼ、ペクチナーゼ、カタラーゼ、デキストラナーゼ、トランスグルタミナーゼ、蛋白質脱アミド酵素及びプルラナーゼからなる群より選択される一以上の酵素の生産量が制御される、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、セルラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、酸性ホスファターゼ、アルカリホスファターゼ、ロイシンペプチダーゼ、アラニンアミノペプチダーゼ、PPLアミノペプチダーゼ及びSAPAアミノペプチダーゼからなる群より選択される一以上の酵素の生産量が制御される、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[9]前記微生物が、糸状菌、放線菌、酵母及び細菌からなる群より選択される微生物である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10]前記微生物が、アスペルギルス属、ムコール属、リゾムコール属、リゾプス属、ペニシリウム属、トラメテス属、ストレプトマイセス属、カンジダ属、サッカロマイセス属、スポロボロマイセス属、クルイベロマイセス属、ピケア属、クリプトコッカス属、バチルス属、ストレプトコッカス属、シュードモナス属、バークホルデリア属、クロストリジウム属、ミロセシウム属、クレブシエラ属、クリセオバクテリウム属及びエスケリチア属からなる群より選択される微生物である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の方法。
[11]前記微生物が、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、ムコール・ヤバニカス、バチルス・サチルス、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・サーキュランス、ストレプトマイセス・グリセウス及びストレプトマイセス・サーモカルボキシダスからなる群より選択される微生物である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の方法。
[12]前記酵素生産性の制御が、以下の(1)〜(8)のいずれかである、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法:
(1)前記微生物がアスペルギルス・オリゼであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期及び/又は定常期に実施され、α−アミラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、プロテアーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ及びPPLアミノペプチダーゼ、エステラーゼからなる群より選択される一以上の酵素の生産量が上方制御されるもの、前記パルス電界の印加が培養中の誘導期に実施され、α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、エステラーゼからなる群より選択される一以上の酵素の生産量が下方制御されるもの、或いは前記パルス電界の印加が培養中の対数期及び/又は定常期に実施され、SAPAアミノペプチダーゼの生産量が下方制御されるもの;
(2)前記微生物がアスペルギルス・ニガーであり、前記パルス電界の印加が培養中の定常期に実施され、α−アミラーゼ及び/又はプロテアーゼの生産量が上方制御されるもの;
(3)前記微生物がムコール・ヤバニカスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期及び/又は定常期に実施され、α−アミラーゼ及び/又はβ−グルコシダーゼの生産量が上方制御されるもの;
(4)前記微生物がバチルス・サチルスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、ロイシンアミノペプチダーゼの生産量が上方制御されるもの;
(5)前記微生物がバチルス・アミロリケファシエンスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期及び/又は定常期に実施され、リパーゼの生産量が上方制御されるもの或いはセルラーゼの生産量が下方制御されるもの;
(6)前記微生物がバチルス・サーキュランスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、β−ガラクトシダーゼの生産量が上方制御されるもの;
(7)前記微生物がストレプトマイセス・グリセウスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期及び/又は定常期に実施され、β−グルコシダーゼの生産量が上方制御されるもの、或いはα−アミラーゼの生産量が下方制御されるもの;
(8)前記微生物がストレプトマイセス・サーモカルボキシダスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、プロテアーゼの生産量が上方制御されるもの。
[13]前記パルス電界の印加が培養中の誘導期に実施され、β−ガラクトシダーゼの生産量が上方制御される、[1]〜[6]、[9]〜[11]のいずれか一項に記載の方法。
[14]前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、α−アミラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、プロテアーゼ、ロイシンペプチダーゼ、PPLアミノペプチダーゼ及びリパーゼからなる群より選択される一以上の酵素の生産量が上方制御される、[1]〜[6]、[9]〜[11]のいずれか一項に記載の方法。
[15]前記パルス電界の印加が培養中の定常期に実施され、α−アミラーゼ及び/又はプロテアーゼの生産量が上方制御される、[1]〜[6]、[9]〜[11]のいずれか一項に記載の方法。
[16]前記微生物がアスペルギルス・オリゼであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、プロテアーゼの産生量が上方制御される、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[17]前記微生物がアスペルギルス・オリゼであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、ペプチダーゼの産生量が上方制御される、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[18]前記微生物がアスペルギルス・オリゼであり、前記パルス電界の印加が培養中の誘導期及び又は対数期に実施され、β-ガラクトシダーゼの産生量が上方制御される、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[19]前記微生物がアスペルギルス・オリゼであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、α-ガラクトシダーゼの産生量が上方制御される、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[20]前記微生物がアスペルギルス・オリゼであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、α-アミラーゼの産生量が上方制御される、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[21]前記微生物がアスペルギルス・ニガーであり、前記パルス電界の印加が培養中の定常期に実施され、プロテアーゼの産生量が上方制御される、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[22]前記微生物がアスペルギルス・ニガーであり、前記パルス電界の印加が培養中の定常期に実施され、α-アミラーゼの産生量が上方制御される、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[23]前記微生物がバチルス・サチルスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、ペプチダーゼの産生量が上方制御される、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[24]前記微生物がバチルス・サーキュランスであり、前記パルス電界の印加が培養中の対数期に実施され、β−ガラクトシダーゼの産生量が上方制御される、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[25][1]〜[24]のいずれか一項に記載の方法を適用して培養した微生物の培養液及び/又は菌体より、酵素を回収する工程、を含む、酵素組成物の製造方法。
[26][1]〜[24]のいずれか一項に記載の方法を適用して培養した微生物の培養液から菌体を除去する工程、を含む、酵素組成物の製造方法。
[27]菌体除去後の培養液を精製する工程を更に含む、[26]に記載の製造方法。
[28][25]〜[27]のいずれか一項に記載の製造方法で得られた酵素組成物。
[29][2]に記載の方法に使用する培養システムであって、培養容器と、その電極が該培養容器の内部に設けられるパルス電界発生装置と、を含む培養システム。
[30][3]又は[4]に記載の方法に使用する培養システムであって、循環路を備えた培養容器と、前記循環路に送液するための送液手段と、パルス電界発生装置と、を含み、該パルス電界発生装置の電極部が前記循環路に付設されている、培養システム。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明で使用できるパルス電界発生装置の一例。
図2】本発明で印加されるパルス電圧波形の一例。上は印加回数が100ショット、下は同400ショット。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.酵素生産性の制御方法、培養システム
本発明の第1の局面は、微生物の酵素生産性を制御する方法(以下、「本発明の制御方法」とも呼ぶ)に関する。本発明の制御方法は、酵素の生産に用いる微生物に対してパルス電界を印加する点に特徴を有する。典型的には、微生物の培養中の培養液にパルス電界を印加し、酵素生産性を制御する。本発明の制御方法に供する微生物のことを説明の便宜上、「生産株」と呼ぶことがある。培養方法は常法に従えばよく、通常は、使用する生産株の生育、増殖に適した培地及び培養条件(温度、酸素濃度等)を採用する。
【0011】
「酵素生産性」は、生産される酵素の種類及び各酵素の生産量によって規定される。従って、本発明の制御方法を適用すると、生産される酵素の種類の増加又は減少、生産される酵素の組成比ないしバランスの変化又は調整、特定の酵素(一又は二以上の酵素)の生産量の増加又は減少、酵素総生産量の増加又は減少等が、採用する条件に応じて可能となる。
【0012】
生産株培養中の培養液へのパルス電界の印加は、例えば、培養容器内部に設けられた電極を介して行うことができる。具体的には、まず、培養容器と、その電極が培養容器内部に設けられるパルス電界発生装置を含む培養システムを構築し、当該システムを用いて生産株の培養を開始する。そして、培養中の適切な時期にパルス電界を発生させ、培養液にパルス電界を印加する。
【0013】
循環路を備えた培養容器と、循環路に送液するための送液手段と、パルス電界発生装置とを含み、パルス電界発生装置の電極部が循環路に付設されている培養システムを構築し、培養中に培養液を循環路内に送液・循環させてパルス電界を印加することにしてもよい。当該システムによれば連続的な処理が可能になり、効率的にパルス電界を印加することができる。
【0014】
本発明で用いることができるパルス電界発生装置の回路の一例を図1に示す。また、この装置で出力されるパルス波形の一例を図2に示す。この装置は高圧電源、抵抗(2MΩ)、コンデンサC、インダクタンスL、トリガトロンギャップスイッチ及びトリガ回路で構成され、LとCは並列共振回路となっている。使用するコンデンサはC=90nFである。
【0015】
動作原理について説明する。初めに高電圧電源により2MΩの抵抗を通してキャパシタンスCに電荷が充電される。充電後、ギャップスイッチで放電を起こすことにより、Cに充電された電荷がRLC回路内に放出される。RLC回路内に流れる電流はCとLの共振によって減衰振動波形となり、並列に接続された試料液であるRに出力される。
【0016】
このパルス電界発生装置では図2に示したような減衰振動波形が出力されるが、インダクタンスLを取り外した回路にすることで、振動のない減衰波形を出力させることもできる。このような装置を本発明に使用することも可能である。
【0017】
パルス電界の印加で発生する熱の影響を最小限にするため、電極部を冷却する水冷装置を設置するとよい。例えば、アース側の電極内にポンプにより水が流れることで、アース側の電極を冷やすように水冷装置を設置する。さらに、高圧側に熱交換用冷却フィンを取り付け、熱を逃がしやすくするとよい。このような構成にすれば、電界印加中の試料の温度上昇を抑えることができる。
【0018】
細胞にパルス電界を印加すると、細胞の電気的特性においてコンデンサとして働く細胞膜に電荷が蓄積される。これにより細胞膜の両側には電位差が生じる。半径aの細胞に電界強度Eの電界を与えた時、電界方向と角度θの位置にある膜にかかる電位差Vmは次式で表される。電位差は細胞の直径と電界強度に比例し、電界方向に対する膜位置で異なることになる。
【数1】
【0019】
この電位差が1Vを超えると細胞膜に絶縁破壊が起きる。細胞膜に絶縁破壊が起きると細胞に細孔ができる。このようにパルス電界により細胞に細孔をあけることをエレクトロポレーションという。1Vの電位差は細胞膜に2×106V/cmという非常に大きな電界を発生させる。この細孔はあまり大きくなければ細胞自身によって修復される可逆的な破壊であるが、電界強度を大きくしたり、パルス幅を長くしたりして、加えるエネルギーを大きくすると、もはや自己では修復できない不可逆的な細胞膜破壊がおきる。そうすると細胞内の組織が外部に流出し、細胞が壊死する。直径の大きい細胞ほど細胞膜にかかる電位差は大きくなるので、細胞膜が破壊されやすい。例えば、酵母は大腸菌よりも直径が大きいので、パルス電界を印加したときに細胞膜にかかる電位差が大きくなる。
【0020】
酵素生産性の制御が可能である限り、パルス電界の電界強度は特に限定されないが、例えば10kV/cm〜50kV/cm、好ましくは10kV/cm〜30kV/cm、更に好ましくは20kV/cm〜30kV/cmである。また、パルス電界は複数回(即ち、繰り返し)、印加することが好ましい。そこで、印加回数を例えば10ショット(回)〜10000ショット(回)、好ましくは100ショット(回)〜2,000ショット(回)、更に好ましくは100ショット(回)〜1,500ショット(回)とする。尚、繰り返し数は溶液の温度が上昇しない範囲、例えば1pps〜1000ppsの範囲内で設定可能である。
【0021】
有用な酵素を産生する限り、本発明で使用する生産株は特に限定されない。「有用な酵素」とは、少なくとも一つの産業上の用途(例えば、工業用途、食品用途、医薬用途、診断用途など)を有する酵素である。本発明は汎用的な方法であり、様々な微生物を生産株として採用することができる。生産株の例を挙げると、糸状菌、放線菌、酵母、細菌であり、好ましくはアスペルギルス属(より好ましくはアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)(例えばRIB40株)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)(例えばNBRC 9455株))、ムコール属(より好ましくはムコール・ヤバニカス(Mucor javanicus)(例えばIAM 6108株))、リゾムコール属(Rhizomucor)、リゾプス属(Rhizopus)、ペニシリウム属(Penicillium)、トラメテス属(Trametes)、ストレプトマイセス属(より好ましくはストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)(例えばIFO 12875株)、ストレプトマイセス・サーモカルボキシダス(Streptomyces thermocarboxydus)(例えばJCM 10367株))、カンジダ属(Candida)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、スポロボロマイセス属(Sporobolomyces)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピケア属(Pichia)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、バチルス属(より好ましくはバチルス・サチルス(Bacillus subtilis)(例えばJCM 1465株)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefacience)(例えばIFO 3034株)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)(例えばATCC 21590株))、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、バークホルデリア属(Burkholderia)、クロストリジウム属(Clostridium)、ミロセシウム属(Myrothecium)、クレブシエラ属(Klebsiella)、クリセオバクテリウム属(Chryseobacterium)、エスケリチア属(より好ましくはエスケリチア・コリ(Escherichia coli))である。二種類以上の微生物を共培養することにしてもよい。
【0022】
生産株は一種又は二種以上の酵素を生産する。生産株が生産可能な酵素、即ち、本発明の方法でその生産量が制御される酵素の例を挙げると、アミラーゼ(α−アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ)、グルコシダーゼ(α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ)、ガラクトシダーゼ(α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ)、プロテアーゼ(酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ、アルカリプロテアーゼ)、ペプチダーゼ(ロイシンペプチダーゼ、PPL(L-ピログルタミル-L-フェニルアラニル-L-ロイシン)アミノペプチダーゼ、SAPA(スクシニル-L-アラニル-L-プロリル-L-アラニン)アミノペプチダーゼ)、リパーゼ、エステラーゼ、セルラーゼ、ホスファターゼ(酸性ホスファターゼ、アルカリホスファターゼ)、ヌクレアーゼ、デアミナーゼ、オキシダーゼ、デヒドロゲナーゼ、グルタミナーゼ、ペクチナーゼ、カタラーゼ、デキストラナーゼ、トランスグルタミナーゼ、蛋白質脱アミド酵素、プルラナーゼである。
【0023】
詳細な検討(後述の実施例を参照)の結果、以下に示す通り、特定の生産株について特に有効なパルス電界印加条件、及びそれによる効果が明らかとなった。
(1)生産株アスペルギルス・オリゼ(例えばRIB40株)
パルス電界の印加時期:誘導期、対数期、定常期
生産される酵素の例:α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、プロテアーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、PPLアミノペプチダーゼ、エステラーゼ、SAPAアミノペプチダーゼ、酸性ホスファターゼ、アルカリホスファターゼ
生産量が増加する酵素の例:α−アミラーゼ(好ましくは対数期にパルス電界を印加)、α−ガラクトシダーゼ(好ましくは対数期にパルス電界を印加)、β−ガラクトシダーゼ(好ましくは誘導期から対数期にかけて複数の時期にパルス電界を印加)、プロテアーゼ(好ましくは対数期にパルス電界を印加)、ロイシンアミノペプチダーゼ(好ましくは対数期にパルス電界を印加)、PPLアミノペプチダーゼ(好ましくは対数期にパルス電界を印加)、エステラーゼ(好ましくは対数期にパルス電界を印加)
生産量が減少する酵素の例:α−アミラーゼ(好ましくは誘導期にパルス電界を印加)、α−グルコシダーゼ(好ましくは誘導期にパルス電界を印加)、β−グルコシダーゼ(好ましくは誘導期から対数期にパルス電界を印加)、α−ガラクトシダーゼ(好ましくは誘導期にパルス電界を印加)、ロイシンアミノペプチダーゼ(好ましくは誘導期にパルス電界を印加)、SAPAアミノペプチダーゼ(好ましくは対数期〜定常期にパルス電界を印加)、エステラーゼ(好ましくは誘導期にパルス電界を印加)
【0024】
(2)生産株アスペルギルス・ニガー(例えばNBRC 9455株)
パルス電界の印加時期:対数期、定常期
生産される酵素の例:α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、プロテアーゼ、酸性ホスファターゼ、リパーゼ
生産量が増加する酵素の例:α−アミラーゼ(好ましくは定常期にパルス電界を印加)、プロテアーゼ(好ましくは定常期にパルス電界を印加)
生産量が減少する酵素の例:α−ガラクトシダーゼ(好ましくは定常期にパルス電界を印加)、β−ガラクトシダーゼ(好ましくは定常期にパルス電界を印加)
【0025】
(3)生産株ムコール・ヤバニカス(例えばIAM 6108株)
パルス電界の印加時期:対数期、定常期
生産される酵素の例:α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、プロテアーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、アラニンアミノペプチダーゼ、リパーゼ
生産量が増加する酵素の例:α−アミラーゼ(好ましくは定常期にパルス電界を印加)、β−グルコシダーゼ(好ましくは対数期にパルス電界を印加)
【0026】
(4)生産株バチルス・サチルス(例えばJCM 1465株)
パルス電界の印加時期:対数期
生産される酵素の例:α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ、プロテアーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、アルカリホスファターゼ、リパーゼ
生産量が増加する酵素の例:ロイシンアミノペプチダーゼ(好ましくは対数期にパルス電界を印加)
【0027】
(5)生産株バチルス・アミロリケファシエンス(例えばIFO 3034株)
パルス電界の印加時期:対数期、定常期
生産される酵素の例:α−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ、プロテアーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、アルカリホスファターゼ、リパーゼ
生産量が増加する酵素の例:リパーゼ(好ましくは対数期から定常期にパルス電界を印加)
生産量が減少する酵素の例:セルラーゼ(好ましくは対数期から定常期にパルス電界を印加)
【0028】
(6)生産株バチルス・サーキュランス(例えばATCC 21590株)
パルス電界の印加時期:対数期
生産される酵素の例:α−アミラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、プロテアーゼ
生産量が増加する酵素の例:β−ガラクトシダーゼ(好ましくは対数期にパルス電界を印加)
【0029】
(7)生産株ストレプトマイセス・グリセウス(例えばIFO 12875株)
パルス電界の印加時期:対数期、定常期
生産される酵素の例:α−アミラーゼ、β−グルコシダーゼ、プロテアーゼ
生産量が増加する酵素の例:β−グルコシダーゼ(好ましくは対数期にパルス電界を印加)
生産量が減少する酵素の例:α−アミラーゼ(好ましくは対数期から定常期にパルス電界を印加)
【0030】
(8)生産株ストレプトマイセス・サーモカルボキシダス(例えばJCM 10367株)
パルス電界の印加時期:対数期
生産される酵素の例:α−アミラーゼ、プロテアーゼ
生産量が増加する酵素の例:プロテアーゼ(好ましくは対数期にパルス電界を印加)
【0031】
2.酵素組成物の製造方法、酵素組成物
微生物を利用した酵素の生産系に本発明の制御方法を適用すると、適用しない場合とは異なる酵素生産性を示すことになる。従って、特徴的な酵素組成物を製造することが可能となる。そこで本発明の第2の局面は、本発明の制御方法の用途として、酵素組成物の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも呼ぶ)を提供する。尚、「酵素組成物」とは、少なくとも1種類の酵素を含む組成物である。従って、特定の1種類の酵素のみを含む(実質的な夾雑酵素活性がない)場合も、酵素組成物に該当する。
【0032】
本発明の製造方法の一態様では、本発明の制御方法を適用して培養した微生物の培養液又は菌体、或いはこの両者から酵素を回収する。培養液から回収する場合には、例えば培養上清をろ過、遠心処理等することによって不溶物を除去した後、限外ろ過膜による濃縮、硫安沈殿等の塩析、透析、イオン交換樹脂等の各種クロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて分離、精製を行うことにより酵素組成物を得ることができる。他方、菌体内から回収する場合には、例えば菌体を加圧処理、超音波処理などによって破砕した後、上記と同様に分離、精製を行うことにより酵素組成物を得ることができる。尚、ろ過、遠心処理などによって予め培養液から菌体を回収した後、上記一連の工程(菌体の破砕、分離、精製)を行ってもよい。
【0033】
以下、本発明の実施例(実験例)を示すが、本発明は、これにより何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0034】
各種微生物に対してパルス電界を印加し、酵素生産性に与える効果・影響を調べた。
【0035】
1.供試微生物菌株
アスペルギルス・オリゼRIB40株、アスペルギルス・ニガーNBRC 9455株、ムコール・ヤバニカスIAM 6108株、バチルス・サチルスJCM 1465、バチルス・アミロリケファシエンスIFO 3034株、バチルス・サーキュランスATCC 21590株、ストレプトマイセス・グリセウスIFO 12875株、ストレプトマイセス・サーモカルボキシダスJCM 10367株
【0036】
2.実験方法
各微生物菌株を培養し、所定の時期(誘導期、対数期前期、対数期後期、定常期)にパルス電界を印加した。その後、所定のタイミングで培養液又は菌体を回収し、酵素活性測定用のサンプルを調製した。培養液については、遠心分離により上清を回収し、細胞外サンプルとした。菌体内容物については、遠心分離による沈殿物を、酸化アルミニウム処理
により破砕し、その遠心上清を回収し、細胞内サンプルとした。各サンプルについて各種酵素活性を測定した。以下、微生物菌株毎に培地・培養条件、パルス電界の印加条件を示す。
(1)アスペルギルス・オリゼRIB40株
培地・培養条件:50% ふすま培地、28℃培養
高電界パルス印加条件:電界強度 15 kV/cm又は30 kV/cm;印加回数 100ショット;繰返し数 1 pps;波形 減衰振動波
【0037】
(2)アスペルギルス・ニガーNBRC 9455株
培地・培養条件:50% ふすま培地、28℃培養
高電界パルス印加条件:電界強度 15 kV/cm;印加回数 100ショット;繰返し数 1 pps;波形 減衰振動波
【0038】
(3)ムコール・ヤバニカスIAM 6108株
培地・培養条件:50% ふすま培地、28℃培養
高電界パルス印加条件:電界強度 15 kV/cm;印加回数 100ショット;繰返し数 1 pps;波形 減衰振動波
【0039】
(4)バチルス・サチルスJCM 1465株
培地・培養条件:SCD培地、28℃培養
高電界パルス印加条件:電界強度 15 kV/cm又は30 kV/cm;印加回数 100ショット;繰返し数 1 pps;波形 減衰振動波
【0040】
(5)バチルス・アミロリケファシエンスIFO 3034株
培地・培養条件:SCD培地、28℃培養
高電界パルス印加条件:電界強度 15 kV/cm又は30 kV/cm;印加回数 100ショット;繰返し数 1 pps;波形 減衰振動波
【0041】
(6)バチルス・アミロリケファシエンスIFO 3034株
培地・培養条件:YM broth培地、28℃培養
高 電界パルス印加条件:電界強度 30 kV/cm;印加回数 100ショット;繰返し数 1 pps;波形 減衰振動波
【0042】
(7)バチルス・サーキュランスATCC 21590株
培地・培養条件:YM broth培地、28℃培養
高電界パルス印加条件:電界強度 30 kV/cm;印加回数 100ショット;繰返し数 1 pps;波形 減衰振動波
【0043】
(8)ストレプトマイセス・グリセウスIFO 12875株
培地・培養条件:YM broth培地、28℃培養
高電界パルス印加条件1:電界強度 30 kV/cm;印加回数 100ショット;繰返し数 1 pps;波形 減衰振動波
高電界パルス印加条件2:電界強度 30 kV/cm;印加回数 400ショット;繰返し数 3 pps;波形 減衰振動波
【0044】
(9)ストレプトマイセス・サーモカルボキシダスJCM 10367株
培地・培養条件:YM broth培地、28℃培養
高電界パルス印加条件1:電界強度 30 kV/cm;印加回数 100ショット;繰返し数 1 pps;波形 減衰振動波
高電界パルス印加条件2:電界強度 30 kV/cm;印加回数 400ショット;繰返し数 3 pps;波形 減衰振動波
【0045】
尚、各微生物菌株について、培養時間と増殖時期の関係を以下の通り定義した。
<糸状菌(アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、ムコール・ヤバニカス)>
培養4時間後:誘導期
培養18時間後、培養22時間後:対数期前期
培養39時間後、培養44時間後:対数期後期
培養66時間後:定常期(静止期)
【0046】
<バチルス・サチルス、バチルス・アミロリケファシエンス>
培養21時間後、培養22時間後:対数期前期
培養43時間後、培養44時間後:対数期後期
培養65時間後:定常期(静止期)
【0047】
<バチルス・サーキュランス>
培養43時間後、培養44時間後:対数期前期
培養65時間後:対数期後期
*接種菌体量が少なく生育が遅れたため、他のバチルス属細菌と異なる
【0048】
<放線菌(ストレプトマイセス・グリセウス、ストレプトマイセス・サーモカルボキシダス)>
培養21時間後:対数期前期
培養43時間後:対数期後期
培養65時間後:定常期(静止期)
【0049】
各酵素の活性測定法は以下の通りとした。
<使用緩衝液>
100 mmol/L 酢酸緩衝液 pH 4.2
100 mmol/L 酢酸緩衝液 pH 5.0
100 mmol/L リン酸緩衝液 pH 7.0
100 mmol/L PIPES緩衝液 pH 7.1
100 mmol/L ホウ酸緩衝液 pH 9.2
【0050】
<α−アミラーゼ>
可溶性でんぷん(メルク製)を1.0 g/dLになるように緩衝液に溶解し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の5分の1量添加して反応開始した。酵素活性は、20 mmol/Lヨウ素溶液を反応液の6分の1量添加し、ヨウ素でんぷん反応による発色を540 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0051】
<α−グルコシダーゼ>
p-ニトロフェニルα-D-グルコピラノシド(シグマアルドリッチ製)を12 mmol/Lになるように緩衝液に溶解し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の4分の1量添加して反応開始した。酵素活性は、1 g/dL炭酸ナトリウム溶液を反応液の等量添加し、遊離したp-ニトロフェノールの発色を420 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0052】
<β−グルコシダーゼ>
p-ニトロフェニルβ-D-グルコピラノシド(シグマアルドリッチ製)を12 mmol/Lになるように緩衝液に溶解し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の4分の1量添加して反応開始した。酵素活性は、1 g/dL炭酸ナトリウム溶液を反応液の等量添加し、遊離したp-ニトロフェノールの発色を420 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0053】
<α−ガラクトシダーゼ>
p-ニトロフェニルα-D-ガラクトピラノシド(シグマアルドリッチ製)を12 mmol/Lになるように緩衝液に溶解し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の4分の1量添加して反応開始した。酵素活性は、1 g/dL炭酸ナトリウム溶液を反応液の等量添加し、遊離したp-ニトロフェノールの発色を420 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0054】
<β−ガラクトシダーゼ>
p-ニトロフェニルβ-D-ガラクトピラノシド(シグマアルドリッチ製)を12 mmol/Lになるように緩衝液に溶解し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の4分の1量添加して反応開始した。酵素活性は、1 g/dL炭酸ナトリウム溶液を反応液の等量添加し、遊離したp-ニトロフェノールの発色を420 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0055】
<セルラーゼ>
Cellazyme C tablets(セラザイム製)1錠あたり10 mLの緩衝液に懸濁し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の13分の1量添加して反応開始した。反応終了後、反応液をセルロースフィルターでろ過し、ろ液に含まれるアゾ色素結合低分子を590 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0056】
<エステラーゼ>
p-ニトロフェニル-アセテート(和光純薬工業製)を12 mmol/Lになるように、30 g/dLエタノールを含む緩衝液に溶解し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の4分の1量添加して反応開始した。酵素活性は、遊離したp-ニトロフェノールの発色を420 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0057】
<リパーゼ>
p-ニトロフェニル-ステアレート(シグマアルドリッチ製)を0.31 mmol/Lになるように、30 g/dLエタノールを含む緩衝液に溶解し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の4分の1量添加して反応開始した。酵素活性は、遊離したp-ニトロフェノールの発色を420 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0058】
<プロテアーゼ>
カゼイン(カルビオケム製)を0.1 g/dLになるように緩衝液に溶解または懸濁し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の10分の1量添加して反応開始した。酵素活性は、400 mmol/Lトリクロロ酢酸溶液を基質溶液の等量添加後、15,000回転、10分間遠心分離して得られた上清中の可溶化したペプチドを280 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0059】
<ホスファターゼ>
p-ニトロフェニル-ホスフェイト(和光純薬工業製)を2 mmol/Lになるように緩衝液に溶解し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の5分の1量添加して反応開始した。酵素活性は、1 g/dL炭酸ナトリウム溶液を反応液の等量添加し、遊離したp-ニトロフェノールの発色を420 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0060】
<ロイシンアミノペプチダーゼ>
L-ロイシン- p-ニトロアニリド(和光純薬工業製)を4.8 mmol/Lになるように5 g/dLのジメチルスルホキシド(和光純薬工業製)を含む緩衝液に溶解し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の4分の1量添加して反応開始した。酵素活性は、遊離したp-ニトロアニリドの発色を450 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0061】
<アラニンアミノペプチダーゼ>
L-アラニン- p-ニトロアニリド(和光純薬工業製)を4.8 mmol/Lになるように5 g/dLのジメチルスルホキシド(和光純薬工業製)を含む緩衝液に溶解し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の4分の1量添加して反応開始した。酵素活性は、遊離したp-ニトロアニリドの発色を450 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0062】
<PPLアミノペプチダーゼ>
L-ピログルタミル-L-フェニルアラニル-L-ロイシン- p-ニトロアニリド(和光純薬工業製)を2.4 mmol/Lになるように20 g/dLのジメチルスルホキシド(和光純薬工業製)を含む緩衝液に溶解し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の4分の1量添加して反応開始した。酵素活性は、遊離したp-ニトロアニリドの発色を450 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0063】
<SAPAアミノペプチダーゼ>
スクシニル-L-アラニル-L-プロリル-L-アラニン- p-ニトロアニリド(和光純薬工業製)を2.4 mmol/Lになるように10 g/dLのジメチルスルホキシド(和光純薬工業製)を含む緩衝液に溶解し、基質溶液とした。これに、適当希釈した酵素サンプル溶液を基質溶液の4分の1量添加して反応開始した。酵素活性は、遊離したp-ニトロアニリドの発色を450 nmの吸光度で測定し、各条件においてパルス電界を全く印加しなかった培養サンプルの測定値に対する相対値として見積もった。
【0064】
3.実験結果
(1)アスペルギルス・オリゼRIB40株(印加時期と電界強度の検討)
パルス電界の印加時期と電界強度が異なる以下の試験群を設定した。
(a)培養4時間後(誘導期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(b)培養4時間後に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
(c)培養4時間後と培養18時間後(対数期前期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(d)培養4時間後と培養18時間後に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
(e)培養18時間後に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(f)培養18時間後に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
(g)培養18時間後と培養39時間後(対数期後期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(h)培養18時間後と培養39時間後に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
【0065】
培養88時間後に培養液を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。尚、下線は活性の上昇、二重下線は活性の低下を表す。
【表1】
【0066】
誘導期のパルス電界印加にてほとんどの酵素生産量が低下した。一方、α−アミラーゼは対数期に電界強度15kV/cmのパルス電界印加で酵素生産量が増加した。また、α−ガラクトシダーゼは対数期にパルス電界を印加することで酵素生産量が増加した。β−ガラクトシダーゼについては、誘導期から対数期にかけて複数回、パルス電界を印加することで酵素生産量が増加した。プロテアーゼとペプチダーゼは対数期にパルス電界を印加すると酵素生産性が増加した。尚、電界強度15kV/cmと30kV/cmの間で、酵素生産量の変化に顕著な差は見られなかった。
【0067】
(2)アスペルギルス・オリゼRIB40株(細胞内酵素と細胞外酵素の比較)
パルス電界の印加時期が異なる以下の試験群を設定した。
(a)培養44時間後(対数期後期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(b)培養66時間後(定常期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
【0068】
培養88時間後に培養液と菌体を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。尚、下線は活性の上昇、二重下線は活性の低下を表す。
【表2】
【0069】
ペプチダーゼは、対数期から定常期にかけてパルス電界を印加すると酵素生産量が減少した。いずれの酵素も細胞内と細胞外で同等の相対活性を示しており、パルス電界の印加によって細胞からの酵素抽出効率が向上したのではなく、酵素の生産性が影響を受けたことがわかる。
【0070】
(3)アスペルギルス・ニガーNBRC 9455株(印加時期の検討)
パルス電界の印加時期が異なる以下の試験群を設定した。
(a)培養22時間後(対数期前期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(b)培養44時間後(対数期後期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(c)培養66時間後(定常期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
【0071】
培養88時間後に培養液を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。尚、下線は活性の上昇、二重下線は活性の低下を表す。
【表3】
【0072】
α−アミラーゼは定常期にパルス電界を印加すると酵素生産量が増加した。プロテアーゼも同様に、定常期にパルス電界を印加すると酵素生産量が増加した。
【0073】
(4)ムコール・ヤバニカスIAM 6108株(印加時期の検討)
パルス電界の印加時期が異なる以下の試験群を設定した。
(a)培養22時間後(対数期前期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(b)培養44時間後(対数期後期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(c)培養66時間後(定常期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
【0074】
培養88時間後に培養液を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。尚、下線は活性の上昇を表す。
【表4】
【0075】
α−アミラーゼは定常期にパルス電界を印加すると酵素生産量が増加した。β−グルコシダーゼについては対数期にパルス電界を印加すると酵素生産量が増加した。
【0076】
(5)ムコール・ヤバニカスIAM 6108株(細胞内酵素と細胞外酵素の比較)
パルス電界の印加時期が異なる以下の試験群を設定した。
(a)培養22時間後(対数期前期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(b)培養44時間後(対数期後期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(c)培養66時間後(定常期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
【0077】
培養88時間後に培養液及び菌体を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。
【表5】
【0078】
いずれの酵素も細胞内と細胞外で同等の活性を示しており、パルス電界の印加によって細胞からの酵素抽出効率が向上したのではなく、酵素の生産性が影響を受けたことがわかる。
【0079】
(6)バチルス・サチルスJCM 1465株(印加時期と電界強度の検討)
パルス電界の印加時期と電界強度が異なる以下の試験群を設定した。
(a)培養22時間後(対数期前期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(b)培養22時間後に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
(c)培養44時間後(対数期後期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(d)培養44時間後に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
【0080】
培養66時間後に培養液を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。尚、下線は活性の上昇、二重下線は活性の低下を表す。
【表6】
【0081】
ペプチダーゼは対数期にパルス電界を印加すると酵素生産量が増加した。
【0082】
(7)バチルス・アミロリケファシエンスIFO 3034株(SCD培地)(印加時期と電界強度の検討)
パルス電界の印加時期と電界強度が異なる以下の試験群を設定した。
(a)培養22時間後(対数期前期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(b)培養22時間後に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
(c)培養44時間後(対数期後期)に電界強度15kV/cmのパルス電界を印加
(d)培養44時間後に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
【0083】
培養66時間後に培養液を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。尚、下線は活性の上昇、二重下線は活性の低下を表す。
【表7】
【0084】
リパーゼは対数期にパルス電界を印加することで酵素生産量が増加した。
【0085】
(8)バチルス・アミロリケファシエンスIFO 3034株(YM broth培地)(印加時期と培地の検討)
パルス電界の印加時期が異なる以下の試験群を設定した。
(a)培養21時間後(対数期前期)に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
(b)培養43時間後(対数期後期)に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
(c)培養21時間後と培養43時間後に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
(d)培養21時間後と培養43時間後と培養65時間後(定常期)に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
(e)培養43時間後と培養65時間後に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
【0086】
試験群(a)、(b)、(c)について培養65時間後に培養液を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。
【表8】
【0087】
一方、試験群(a)、(c)、(d)、(e)について培養87時間後に培養液を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。尚、二重下線は活性の低下を表す。
【表9】
【0088】
異なる培地で培養しても同様の結果が得られた。セルラーゼは対数期にパルス電界を印加することで酵素生産量が減少した。リパーゼについてはパルス電界を複数の時期に印加することで酵素生産量が増加した。
【0089】
(9)バチルス・サーキュランスATCC 21590株(印加時期の検討)
パルス電界の印加時期が異なる以下の試験群を設定した。
(a)培養43時間後(対数期前期)に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
(b)培養43時間後と培養65時間後(対数期後期)に電界強度30kV/cmのパルス電界を印加
【0090】
試験群(a)について培養65時間後に培養液を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。尚、下線は活性の上昇を表す。
【表10】
【0091】
一方、試験群(a)、(b)について培養87時間後に培養液を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。尚、下線は活性の上昇を表す。
【表11】
【0092】
β−ガラクトシダーゼは対数期にパルス電界を印加すると酵素生産量が増加した。
【0093】
(10)ストレプトマイセス・グリセウスIFO 12875株(印加時期と印加回数の検討)
パルス電界の印加時期及びショット回数が異なる以下の試験群を設定した。
(a)培養21時間後(対数期前期)に電界強度30kV/cm、ショット回数100のパルス電界を印加
(b)培養21時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数400のパルス電界を印加
(c)培養43時間後(対数期後期)に電界強度30kV/cm、ショット回数100のパルス電界を印加
(d)培養43時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数400のパルス電界を印加
(e)培養21時間後と培養43時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数100のパルス電界を印加
(f)培養21時間後と培養43時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数400のパルス電界を印加
(g)培養21時間後と培養43時間後と培養65時間後(定常期)に電界強度30kV/cm、ショット回数100のパルス電界を印加
(h)培養21時間後と培養43時間後と培養65時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数400のパルス電界を印加
(i)培養43時間後と培養65時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数100のパルス電界を印加
(j)培養43時間後と培養65時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数400のパルス電界を印加
【0094】
試験群(a)〜(f)について培養65時間後に培養液を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。尚、下線は活性の上昇を表す。
【表12】
【0095】
一方、試験群(a)、(b)、(e)〜(j)について培養87時間後に培養液を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。尚、下線は活性の上昇、二重下線は活性の低下を表す。
【表13】
【0096】
ショット回数の違いによる顕著な差は見られなかった。α−アミラーゼは対数期から定常期にかけてパルス電界を印加すると酵素生産量が減少した。β−グルコシダーゼについて対数期にパルス電界を印加すると酵素生産量が増加した。
【0097】
(11)ストレプトマイセス・サーモカルボキシダスJCM 10367株(印加時期と印加回数の検討)
パルス電界の印加時期及びショット回数が異なる以下の試験群を設定した。
(a)培養21時間後(対数期前期)に電界強度30kV/cm、ショット回数100のパルス電界を印加
(b)培養21時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数400のパルス電界を印加
(c)培養43時間後(対数期後期)に電界強度30kV/cm、ショット回数100のパルス電界を印加
(d)培養43時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数400のパルス電界を印加
(e)培養21時間後と培養43時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数100のパルス電界を印加
(f)培養21時間後と培養43時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数400のパルス電界を印加
(g)培養21時間後と培養43時間後と培養65時間後(定常期)に電界強度30kV/cm、ショット回数100のパルス電界を印加
(h)培養21時間後と培養43時間後と培養65時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数400のパルス電界を印加
(i)培養43時間後と培養65時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数100のパルス電界を印加
(j)培養43時間後と培養65時間後に電界強度30kV/cm、ショット回数400のパルス電界を印加
【0098】
試験群(a)〜(f)について培養65時間後に培養液を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。尚、下線は活性の上昇を表す。
【表14】
【0099】
一方、試験群(a)、(b)、(e)〜(j)について培養87時間後に培養液を回収してサンプルを調製し、各種酵素活性を測定した。測定結果を以下の表に示す。尚、下線は活性の上昇を表す。
【表15】
【0100】
ショット回数の違いによる顕著な差は見られなかった。プロテアーゼは対数期にパルス電界を印加すると酵素生産量が増加した。
【0101】
以上の通り、パルス電界の印加によって、各種微生物の酵素生産性を変化させることが可能であった。換言すれば、微生物の酵素生産性を制御する手段としてパルス電界の印加が有効であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0102】
微生物の酵素生産性の制御にパルス電界を利用する本発明は、様々な微生物、様々な酵素に適用可能な汎用性の高い技術となる。本発明によれば、特定の酵素生産量を増加させたり、特定の酵素生産量を抑制させたりすることにより、目的の酵素組成(即ち、酵素組成が制御された)の酵素組成物や酵素製剤を得ることが可能となる。
【0103】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
図1
図2
【国際調査報告】