(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年8月31日
【発行日】2019年1月31日
(54)【発明の名称】カバーガラスの積層構造、カメラ構造、撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20190104BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20190104BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20190104BHJP
G02B 1/115 20150101ALI20190104BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20190104BHJP
G02B 1/118 20150101ALI20190104BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20190104BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20190104BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20190104BHJP
H04N 5/335 20110101ALI20190104BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/26
G02B5/28
G02B1/115
G02B1/18
G02B1/118
G02B1/11
H01L27/146 D
H04N5/225 400
H04N5/225 700
H04N5/335
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】31
【出願番号】特願2018-501794(P2018-501794)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-33169(P2016-33169)
(32)【優先日】2016年2月24日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】300075751
【氏名又は名称】株式会社オプトラン
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】小泉 達也
(72)【発明者】
【氏名】小泉 直哉
(72)【発明者】
【氏名】島田 修一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 大刀夫
【テーマコード(参考)】
2H148
2K009
4M118
5C024
5C122
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA17
2H148CA23
2H148CA24
2H148FA05
2H148FA09
2H148FA12
2H148FA18
2H148FA22
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2H148GA04
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2H148GA32
2H148GA61
2K009AA01
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2K009CC03
2K009EE05
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4M118HA02
4M118HA30
5C024CX01
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5C024EX51
5C122DA09
5C122EA54
5C122FB20
5C122GE17
5C122HB06
(57)【要約】
撮像装置、例えば情報通信機器の内部構造を外界から保護するカバーガラスの積層構造であって、光を透過する透明基板と、近赤外領域の光を吸収する近赤外光吸収膜と、近赤外領域の光を反射する近赤外光反射膜と、を備えることを特徴とするカバーガラスの積層構造を提供する。これにより光学フィルタを取り除いた新たなカメラ構造を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置の内部機構を外界から保護するカバーガラスの積層構造であって、
光を透過する透明基板と、
近赤外領域の光を吸収する近赤外光吸収膜と、
近赤外領域の光を反射する近赤外光反射膜と、
を備えることを特徴とするカバーガラスの積層構造。
【請求項2】
前記透明基板は、結晶化ガラスであることを特徴とする請求の範囲1に記載のカバーガラスの積層構造。
【請求項3】
前記近赤外光吸収膜には、有機色素が含まれることを特徴とする請求の範囲1または請求の範囲2に記載のカバーガラスの積層構造。
【請求項4】
前記近赤外光反射膜は、誘電体多層膜であることを特徴とする請求の範囲1から請求の範囲3のいずれか一の請求の範囲に記載のカバーガラスの積層構造。
【請求項5】
前記誘電体多層膜は、屈折率が互いに異なる複数種類の酸化膜を複数積層することで形成され、隣接する前記酸化膜は互いに異なる種類の酸化膜であることを特徴とする請求の範囲4に記載のカバーガラスの積層構造。
【請求項6】
紫外領域の光を反射し、且つ、可視領域の光の反射を抑止する反射防止膜をさらに備えることを特徴とする請求の範囲1から請求の範囲5のいずれか一の請求の範囲に記載のカバーガラスの積層構造。
【請求項7】
前記反射防止膜は、誘電体多層膜であり、且つ、窒化膜と酸化膜を交互に積層して構成されることを特徴とする請求の範囲6に記載のカバーガラスの積層構造。
【請求項8】
前記透明基板を基準として、光の入射側に前記反射防止膜が形成され、且つ、
前記透明基板を基準として、光の出射側に、前記透明基板から最も遠い側から順に、
前記近赤外光反射膜と、
前記近赤外光吸収膜と、
が形成されることを特徴とする請求の範囲6または請求の範囲7に記載のカバーガラスの積層構造。
【請求項9】
光が入射する側の最も外側に、外界からの汚れを防止するための防汚コート膜をさらに備えることを特徴とする請求の範囲1から請求の範囲8のいずれか一の請求の範囲に記載のカバーガラスの積層構造。
【請求項10】
前記撮像装置は、情報通信機器であり、
前記カバーガラスは、情報通信機器の筐体に連続して設置されることを特徴とする、請求の範囲1から請求の範囲9に記載のカバーガラスの積層構造。
【請求項11】
請求の範囲1から請求の範囲9に記載のカバーグラスの積層構造を有するカバーガラスを備えるカメラ構造であって、
前記カバーガラス側に配置される光学レンズ群と
前記カバーガラス及び前記光学レンズ群を介して入射した光を受光する撮像素子と、
を備え、
前記光学レンズ群から前記撮像素子までの光路間に近赤外領域の光をカットする近赤外光カットフィルタを配置しないことを特徴とするカメラ構造。
【請求項12】
請求の範囲11に記載のカメラ構造を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
撮像装置の内部機構を外界から保護するカバーガラスの積層構造であって、
光を透過する透明基板と、
近赤外領域の光を反射する近赤外光反射膜と、
を備えることを特徴とするカバーガラスの積層構造。
【請求項14】
紫外領域の光を反射し、且つ、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止膜をさらに備えることを特徴とする請求の範囲13に記載のカバーガラスの積層構造。
【請求項15】
請求の範囲13または請求の範囲14に記載のカバーグラスの積層構造を有するカバーガラスを備えるカメラ構造であって、
前記カバーガラス側に配置される光学レンズ群と、
前記カバーガラス及び前記光学レンズ群を介して入射した光を受光する撮像素子と、
前記光学レンズ群と前記撮像素子の間に配置され、光を透過する内側透明プレートと
を備えることを特徴とするカメラ構造。
【請求項16】
前記内側透明プレートは、合成樹脂フィルムであることを特徴とする請求の範囲15に記載のカメラ構造。
【請求項17】
前記内側透明プレートの厚みは、0.2mm以下であることを特徴とする請求の範囲15または請求の範囲16に記載のカメラ構造。
【請求項18】
前記内側透明プレートは、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止層を備えることを特徴とする請求の範囲15から請求の範囲17のうちのいずれかに記載のカメラ構造。
【請求項19】
前記内側透明プレートの両面に、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止層を備えることを特徴とする請求の範囲15から請求の範囲17のうちのいずれかに記載のカメラ構造。
【請求項20】
前記反射防止層は、前記内側透明プレートの表面に形成される微細な突起からなる微細突起構造であることを特徴とする請求の範囲18または請求の範囲19に記載のカメラ構造。
【請求項21】
前記反射防止層は、前記内側透明プレートの表面に形成される塗膜であることを特徴とする請求の範囲18または請求の範囲19に記載のカメラ構造。
【請求項22】
前記内側透明プレートは、近赤外領域の光を吸収する近赤外光吸収部をさらに備えることを特徴とする請求の範囲15から請求の範囲21のうちのいずれかに記載のカメラ構造。
【請求項23】
前記近赤外光吸収部は、有機色素を含むことを特徴とする請求の範囲22に記載のカメラ構造。
【請求項24】
請求の範囲15から請求の範囲23に記載のカメラ構造を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置に設けられるカバーガラスの積層構造に関する。
【背景技術】
【0002】
今世紀に入り、撮像装置、すなわちカメラは、固体撮像素子(撮像素子)を用いた撮像装置、いわゆるデジタルカメラが主流になった。また近年、パーソナルコンピューター(PC)、タブレットPCやスマートフォン等の情報通信機器が普及し、日常的に使用されるようになっている。これら情報通信機器は、小型のカメラモジュールを内蔵することが多く、現在は、撮像素子の画素数が1000万を超える高性能なものを備えることもある(
図11(A)参照)。情報通信機器、特に携帯通信機器であるスマートフォンは薄く軽くなる傾向が強く、その部品であるカメラモジュールも光軸方向の長さが短いことが求められるようになっており、小型化、省スペース化の要求も強い。
【0003】
なお本明細書では光学レンズ群を含むレンズユニット、レンズキャリア、撮像素子、マグネットホルダなど、撮像に必須な撮像装置の内部機構をカメラモジュールと定義する。またカメラモジュールに、撮像装置の内部機構を外界から保護するカバーガラスを含めたものを、カメラ構造と定義する。
【0004】
図11(B)のように、カメラモジュール1は、レンズユニット50、レンズキャリア40、マグネットホルダ30、光学フィルタ60、撮像素子70から主に構成される(例えば、特開2013−153361号公報参照)。このうち光学フィルタは、主として近赤外領域の光をカットする役割を果たしている。人間の目は波長380nm〜780nmの可視領域の光(可視光)に対して感度を持つ。一方、撮像素子は一般に可視光を含め、より長波長の光、すなわち波長約1.1μmの光まで感度を持つ。したがって撮像素子に捉えられた画像をそのまま写真にすると、人間の目には自然な色合いには見えず、違和感が生じさせる原因になる。そこでカメラモジュールは、近赤外領域の光をカットする光学フィルタ(近赤外光カットフィルタ)を内蔵する構成としてきた。
【0005】
近赤外光カットフィルタとしては、例えばブルーガラスと呼ばれる近赤外領域の光を吸収するリン酸塩あるいは弗リン酸塩を含むガラスが用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようにカメラモジュール1の小型化、省スペース化の要求が強まっているため、カメラモジュール1を含むカメラ構造の長さD1(
図11(B)参照)を短く薄くする努力がなされている。その一環として光学フィルタ60について、肉厚の薄いものが開発されているが、上記ブルーガラスは強度が低く、0.2mm以下の薄板に加工することは、技術的に困難であり、脆いため簿肉化するとハンドリングすることも難しい。また薄く研磨加工をする過程や実装工程で生じるパーティクルと呼ばれる粒状のゴミが、光学フィルタ直下に配置される撮像素子上に落ちると、画質を落とす原因になる。ブルーガラスで薄いパーティクルの少ない高品質な近赤外光カットフィルタを作ること自体、歩留まりが悪くなり、高コストになる。本発明は、斯かる実情に鑑み、光学フィルタを取り除いた新たなカメラ構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は、撮像装置の内部機構を外界から保護するカバーガラスの積層構造であって、光を透過する透明基板と、近赤外領域の光を吸収する近赤外光吸収膜と、近赤外領域の光を反射する近赤外光反射膜と、を備えることを特徴とするカバーガラスの積層構造を提供する。
【0008】
上記(1)の発明によれば、撮像装置、例えばデジタルカメラの内部機構を外界から保護するカバーガラスは、近赤外線領域の光をカットすることが可能になり、カメラ内部に近赤外光カットフィルタを内蔵することなく、画像の向上が得られるという効果を奏する。
【0009】
(2)本発明は、前記透明基板が、結晶化ガラスであることを特徴とする上記(1)に記載のカバーガラスの積層構造を提供する。
【0010】
上記(2)の発明によれば、加工性が良く、且つ、耐衝撃性の高い高強度なカバーガラスを製造することができる。
【0011】
(3)本発明は、前記近赤外光吸収膜には、有機色素が含まれることを特徴とする上記(1)または(2)のいずれかに記載のカバーガラスの積層構造を提供する。
【0012】
上記(3)の発明によれば、近赤外領域の光を吸収するためのフィルタの材料として一般に使用されるブルーガラスを用いることなく、光吸収について入射角度依存性無しで、近赤外線領域の光をカットすることが可能になるという効果を奏する。
【0013】
(4)本発明は、前記近赤外光反射膜が、誘電体多層膜であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のカバーガラスの積層構造を提供する。
【0014】
人間の目は、波長380nm〜780nmのいわゆる可視光に対して感度を持つ。一方、撮像素子は、一般に可視光を含め、より長波長の光、すなわち波長約1.1μmの光まで感度を持つ。したがって撮像素子で捉える画像をそのまま写真にすると、自然な色合いには見えず、違和感を生じる原因になる。上記(4)の発明によれば、誘電体多層膜による近赤外光反射膜を備えることにより、近赤外光吸収膜では吸収しきれない700nm以上の長さの波長の光をカットして、自然な色合いの画像を取得することが可能になる。
【0015】
(5)本発明は、誘電体多層膜が、屈折率が互いに異なる複数種類の酸化膜を複数積層させることで形成され、隣接する前記酸化膜は互いに異なる種類の酸化膜であることを特徴とする上記(4)に記載のカバーガラスの積層構造を提供する。
【0016】
上記(5)の発明によれば、酸化膜を構成する材料、膜厚、積層数を変えることで、反射したい光の波長を制御することができる効果を奏する。
【0017】
(6)本発明は、紫外領域の光を反射し、且つ、可視領域の光の反射を抑止する反射防止膜をさらに備えることを特徴とする上記(1)乃至(5)のいずれかに記載のカバーガラスの積層構造を提供する。
【0018】
上記(6)の発明によれば、機器内のカメラを外界から保護するカバーガラスが紫外領域の光をカットすることができるので、カメラの構成部品である合成樹脂で形成された光学レンズが紫外線によって劣化することを防ぐことができ、可視領域の光に対する反射防止機能により、入射光をより多く取り込むことが可能になり、より明るい画像を取得できる。
【0019】
(7)本発明は、前記反射防止膜が、誘電体多層膜であり、窒化膜と酸化膜を交互に積層して構成されることを特徴とする上記(6)に記載のカバーガラスの積層構造。
【0020】
一般に窒化膜は、酸化膜と比べて高硬度である。上記(7)の発明によれば、反射防止膜を構成する材質として窒化膜を用いることで、耐傷性を高める効果を奏する。
【0021】
(8)本発明は、前記透明基板を基準として、光の入射側に前記反射防止膜が形成され、且つ、前記透明基板を基準として、光の出射側に、前記透明基板から最も遠い側から順に、前記近赤外光反射膜と、前記近赤外光吸収膜と、が形成されることを特徴とする上記(6)または(7)に記載のカバーガラスの積層構造を提供する。
【0022】
上記(8)の発明によれば、光の入射側に、紫外領域の光を反射し、且つ、可視領域の光の反射を抑止する反射防止膜を備えるので、反射防止膜よりも撮像素子側に形成される近赤外光吸収膜が紫外領域の光によって劣化することを防ぐ。また、光の出射側で透明基板から最も遠い側に近赤外光反射膜を備えるため、近赤外反射膜よりも透明基板側に形成される近赤外光吸収膜に水分等、劣化の原因になる物質が侵入しにくいという効果を奏する。
【0023】
(9)本発明は、光が入射する側の最も外側に、外界からの汚れを防止するための防汚コート膜をさらに備えることを特徴とする上記(1)乃至(7)のいずれかに記載のカバーガラスの積層構造を提供する。
【0024】
撮像装置のカバーガラスは、日常的に服や指に触れるなどの汚染の機会が多い。カバーガラスが汚染されると、カメラで撮像した画像の悪化を招く。上記(9)の発明によれば、カバーガラスの最も外側を防汚コート膜で覆うことで、汚れを落としやすくして常に優れた画質の画像を撮像することができるという効果を奏する。
【0025】
(10)本発明は、前記撮像装置が、情報通信機器であり、前記カバーガラスは、情報通信機器の筐体に連続して設置されることを特徴とする、上記(1)乃至(9)に記載のカバーガラスの積層構造を提供する。
【0026】
上記(10)の発明によれば、例えばタブレットPCやスマートフォンといった情報通信機器に付属するカメラに関して、従来は、汚れや衝撃から、内部機構を保護する役割を主に果たしてきたカバーガラスに、光学フィルタ機能を付け加えることで、近赤外線領域の光をカットすることが可能になる。そして、カメラ内部に近赤外光カットフィルタを内蔵することなく、画像の向上が得られるという著しい効果を奏する。この効果は、カメラモジュールの小型化要請の強い携帯通信端末であるスマートフォンのカメラモジュールについて特に大きい。
【0027】
(11)本発明は、上記(1)乃至(9)に記載のカバーグラスの積層構造を有するカバーガラスを備えるカメラ構造であって、前記カバーガラス側に配置される光学レンズ群と前記カバーガラス及び前記光学レンズ群を介して入射した光を受光する撮像素子と、を備え、前記光学レンズ群から前記撮像素子までの光路間に近赤外領域の光をカットする近赤外光カットフィルタを配置しないことを特徴とするカメラ構造を提供する。
【0028】
上記(11)の発明によれば、近赤外光カットフィルタを内蔵する必要がなくなるため、カメラ構造全体の長さを短く小型にすることができ、また、撮像素子の近傍に近赤外光カットフィルタを配置しないため、近赤外光カットフィルタの製造過程で、該フィルタの表面に付着する粒状のゴミ(パーティクル)が、撮像素子の表面に落下して画像を悪化させることもなくなる著しい効果を奏する。また、カメラモジュールの組立工程において、近赤外光カットフィルタを配置、組み付けるための工程も必要なくなり、一層のコスト低減、歩留まりの向上、作業の効率化に資する。
【0029】
(12)本発明は、上記(11)に記載のカメラ構造を有することを特徴とする撮像装置を提供する。
【0030】
上記(12)の発明によれば、近赤外領域の光をカバーガラスでカットすることができるので、近赤外光カットフィルタを内蔵しない小型で安価なカメラ構造を搭載する撮像装置が実現できる。
【0031】
(13)本発明は、撮像装置の内部機構を外界から保護するカバーガラスの積層構造であって、光を透過する透明基板と、近赤外領域の光を反射する近赤外光反射膜を備えることを特徴とするカバーガラスの積層構造を提供する。
【0032】
上記(13)の発明によれば、カバーガラスが、光を反射する近赤外光反射膜を有するので、外界からの近赤外光を撮像装置の内部機構に入射させない効果を奏しうる。また、撮像素子に近接した領域に、近赤外光反射膜を備えた部材を入れる必要が無くなるので、撮像装置の内部機構に入射した光の反射を抑制することができ、結果として迷光を抑え、ゴーストやフレアの原因を減少させる著しい効果を奏しうる。
【0033】
(14)本発明は、紫外領域の光を反射し、且つ、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止膜をさらに備えることを特徴とする上記(13)に記載のカバーガラスの積層構造を提供する。
【0034】
上記(14)の発明によれば、撮像装置の内部機構を外界から保護するカバーガラスが紫外領域の光をカットすることができるので、カメラの構成部品である合成樹脂で形成された光学レンズ等が紫外線によって劣化することを防ぐことができ、長寿命化に資する。また、カバーガラスが少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止機能を有することにより、入射光をより多く取り込むことが可能になり、より明るい画像を取得できるという顕著な効果を奏する。
【0035】
(15)本発明は、上記(13)または(14)に記載のカバーグラスの積層構造を有するカバーガラスを備えるカメラ構造であって、前記カバーガラス側に配置される光学レンズ群と、前記カバーガラス及び前記光学レンズ群を介して入射した光を受光する撮像素子と、前記光学レンズ群と前記撮像素子の間に配置され、光を透過する内側透明プレートとを備えることを特徴とするカメラ構造を提供する。
【0036】
上記(15)の発明によれば、当該カメラ構造は、光学レンズ群と撮像素子の間に配置され、光を透過する内側透明プレートを備えるので、撮像素子の表面に付着するダストを減少させることができ、結果として画質の向上という顕著な効果を奏しうる。
【0037】
(16)本発明は、前記内側透明プレートが、合成樹脂フィルムであることを特徴とする上記(15)に記載のカメラ構造を提供する。
【0038】
タブレットPCやスマートフォン等の情報通信機器に内蔵されている小型のカメラモジュールの多くにおいては、光学レンズ群と撮像素子の光路内の撮像素子近傍に主として近赤外領域の光をカットする近赤外光カットフィルタを設けていた。近赤外光カットフィルタは、近赤外光を反射する近赤外光反射膜、及び、近赤外光を吸収する近赤外光吸収膜を備えることが必要である。
【0039】
これまでの近赤外光カットフィルタは、ブルーガラスと呼ばれる近赤外領域の光を吸収するリン酸塩あるいは弗リン酸塩を含むガラスが用いられることが多かったが、一般にブルーガラスは脆く、ダストパーティクルの少ない厚さ200μm以下のものを歩留まり良く製造することは困難であった。またガラスの代わりに合成樹脂フィルムを使用することも考えられるが、近赤外光反射膜は、スパッタリング等で誘電体多層構造を形成しなければならず、合成樹脂フィルム上に均一性の良い膜を形成することは困難であった。
【0040】
上記(16)の発明によれば、近赤外光反射機能をカバーガラスに担わせることができるので、内側透明プレートに合成樹脂フィルムを使用することができる。合成樹脂フィルムは、厚さ100μm以下の薄さのものまで作成することが可能であり、カメラ構造の長さを短く薄くでき、結果としてカメラを内蔵する情報通信機器の厚みをより薄くすることができるという顕著な効果を奏する。
【0041】
(17)本発明は、前記内側透明プレートの厚みが、0.2mm以下であることを特徴とする上記(15)または(16)に記載のカメラ構造を提供する。
【0042】
上記(17)の発明によれば、内側透明プレートの厚み0.2mm以下と薄いので、カメラ構造の長さを短く薄くでき、結果としてカメラを内蔵する情報通信機器の厚みをより薄くすることができるという効果を奏する。
【0043】
(18)本発明は、前記内側透明プレートが、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止層を備えることを特徴とする上記(15)乃至(17)のいずれかに記載のカメラ構造を提供する。
【0044】
上記(18)の発明によれば、反射防止層を内側透明プレートのレンズ群側表面に設けたならば、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止機能により、入射光をより多く取り込むことが可能になり、より明るい画像を取得できるという効果を奏する。また反射防止膜を内側透明プレートの撮像素子側に設けたならば、内側透明プレートに起因する反射光、特に撮像素子自身からの反射光が、さらに内側透明プレートに反射されて撮像素子に戻ることを防止し、画質が向上しうるという顕著な効果を奏する。
【0045】
(19)本発明は、前記内側透明プレートの両面に、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止層を備えることを特徴とする上記(15)乃至(17)のうちのいずれかに記載のカメラ構造を提供する。
【0046】
上記(19)の発明によれば、入射光をより多く取り込むことが可能になり、且つ、内側透明プレートに起因する反射光、特に撮像素子自身からの反射光が、さらに内側透明プレートに反射されて撮像素子に戻ることを防止し、画質が向上しうるという顕著な効果を奏する。
【0047】
(20)本発明は、前記反射防止層が、前記内側透明プレートの表面に形成される微細な突起からなる微細突起構造であることを特徴とする上記(18)または(19)に記載のカメラ構造を提供する。
【0048】
内側透明プレートの表面に形成される微細な突起からなる微細突起構造、いわゆるモスアイ構造の反射防止層は、広帯域に渡って光の反射を防止する。したがって上記(20)の発明によれば、モスアイ構造の反射防止膜を形成することで、内側透明プレートに起因する反射光が広帯域に渡って著しく低減され、画質が向上されうるという顕著な効果を奏する。
【0049】
(21)本発明は、前記反射防止層は、前記内側透明プレートの表面に形成される塗膜であることを特徴とする上記(18)または(19)に記載のカメラ構造を提供する。
【0050】
互いに異なる光の屈折率を持つ2種類の薄膜を交互に積層した多層膜は、光の反射防止膜を形成しうる。そしてこのような多層膜は、合成樹脂を塗布することでも得られることが知られている。上記(21)の発明によれば、安価で大量に安定した品質の反射防止膜を備えた内側透明プレートを製造できるという著しい効果を奏する。
【0051】
(22)本発明は、前記内側透明プレートが、近赤外領域の光を吸収する近赤外光吸収部をさらに備えることを特徴とする上記(15)乃至(21)のうちのいずれかに記載のカメラ構造を提供する。
【0052】
上記(22)の発明によれば、光の入射角度依存性が少ない状態で、近赤外線領域の光を抑止することが可能になるという効果を奏する。
【0053】
(23)本発明は、前記近赤外光吸収部が、有機色素を含むことを特徴とする上記(21)に記載のカメラ構造を提供する。
【0054】
上記(23)の発明によれば、近赤外領域の光を吸収するためのフィルタの材料として一般に使用されるブルーガラスを用いることなく、光吸収について入射角度依存性無しで、近赤外線領域の光をカットすることが可能になるという効果を奏する。
【0055】
(24)本発明は、上記(15)乃至(23)に記載のカメラ構造を有することを特徴とする撮像装置を提供する。
【0056】
上記(24)の発明によれば、カバーガラスが、光を反射する近赤外光反射膜を有するので、外界からの近赤外光を撮像装置の内部機構に入射させない効果を奏しうる。また、撮像素子に近接した領域に、近赤外光反射膜を備えた部材を入れる必要が無くなるので、撮像装置の内部機構に入射した光の反射を抑制することができ、結果として迷光を抑え、ゴーストやフレアの原因を減少させる効果を奏しうる。さらに光学レンズ群と撮像素子の間に配置され、光を透過する内側透明プレートを備えるので、撮像素子の表面に付着するダストを減少させることができる。したがって、従来よりも画質が向上し、小型なカメラ構造を搭載する撮像装置が安価に実現できるという著しい効果を奏する。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、撮像装置、特に携帯通信機器に備えられるカメラの内部機構を外界から保護するカバーガラスが、近赤外線領域の光をカットできるようになり、カメラ内部に近赤外光カットフィルタを内蔵することなく、画像の画質向上が得られるとともに小型化、コストの低減、組み立て工程の簡素化という著しい効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】(A)本発明の第一の実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造の断面図である。(B)光学フィルタ機能付きカバーガラスの構造図である。(C)反射防止膜を複数備えた光学フィルタ機能付きカバーガラスの構造図である。
【
図2】(A)近赤外光反射膜についての分光透過率の入射角度依存性を示す図である。(B)入射角度の定義を説明する説明図である。
【
図3】近赤外光吸収膜と近赤外光反射膜を備えた光学フィルタ機能付きカバーガラスにおける分光透過率の入射角度依存性を示す図である。
【
図4】光学フィルタ機能付きカバーガラス、近赤外光吸収膜を備えたガラス、近赤外光反射膜を備えたガラスについて分光透過率を比較した図である。
【
図5】デュアルバンドのカバーガラスについての分光透過率を説明する説明図である。
【
図6】(A)本発明の第三の実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造の断面図である。(B)光学フィルタ機能付きカバーガラスの構造図である。(C)透明ガラスを基材として反射防止膜を複数備えた内側透明プレートの構造図である。(D)透明合成樹脂フィルムを基材として両面に反射防止機能を発揮するモスアイ構造を備えた内側透明プレートの構造図である。
【
図7】(A)本発明の第四の実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造の断面図である。(B)近赤外光反射機能付きカバーガラスの構造図である。(C)透明ガラスを基材として反射防止膜を複数備えた内側透明プレートの構造図である。
【
図8】(A)本発明の第五の実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造の断面図である。(B)近赤外光反射機能付きカバーガラスの構造図である。(C)反射防止膜を複数備え、近赤外光吸収膜をさらに備える内側透明プレートの構造図である。
【
図9】(A)本発明の第六の実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造の断面図である。(B)近赤外光反射機能付きカバーガラスの構造図である。(C)近赤外光吸収機能付きプレートの構造図である。(D)透明ガラスを基材として反射防止膜を複数備えた内側透明プレートの構造図である。
【
図10】(A)従来のカメラ構造による実験方法を説明する説明図である。(B)従来のカバーガラスの断面図である。(C)従来の近赤外光カットフィルタの断面図である。(D)従来のカメラ構造によって撮像した画像である。(E)本発明に係るカメラ構造による実験方法を説明する説明図である。(F)本発明に係るカメラ構造における光学フィルタ機能付きカバーガラスの断面図である。(G)本発明に係るカメラ構造における内側透明プレートの断面図である。(H)本発明に係るカメラ構造によって撮像した画像である。
【
図11】(A)携帯通信機器における従来のカメラ構造を説明する説明図である。(B)携帯通信機器における従来のカメラ構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0060】
図1〜
図10は発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。
【0061】
図1(A)に、本発明の第一実施形態に係る撮像装置に適用されるカメラ構造を示す。本実施形態の場合、撮像装置は情報通信機器、携帯通信機器Aである。カメラ構造は、光の入射する側から、光学フィルタ機能付きカバーガラス100と、スマートフォン等の携帯通信機器Aの筐体20内に収容されるカメラモジュール1を有する。カメラモジュール1は、光学フィルタ機能付きカバーガラス100側に配置される光学レンズ群であるレンズユニット50と、光学フィルタ機能付きカバーガラス100及びレンズユニット50を介して入射した光を受光する撮像素子70とを備え、レンズユニット50から撮像素子70までの光路間に近赤外領域の光をカットする近赤外光カットフィルタを配置しないことを特徴としている。詳細には
図1(A)のように、光学フィルタ機能付きカバーガラス100、レンズユニット50、レンズキャリア40、マグネットホルダ30。撮像素子70、そして基板80から主に構成され、スマートフォン筐体20に固定される。撮像素子70と基板80の接続についてはワイヤボンディングでつないでも、フリップチップ実装をおこなっても良い。
【0062】
図11(B)の従来のカメラ構造と大きく違うのは、従来、画質向上のために必要だった近赤外光をカットする光学フィルタ60(
図11(B)参照)を省略した点である。その代わりに従来は、カメラモジュール1を保護する役割を主に担っていたカバーガラス10に近赤外領域の光をカットするフィルタ機能を付加した。このような構造にすることで、カメラ構造全体の長さD2を従来のD1(
図11(B)参照)よりも短くすることができるとともに、撮像素子70の近傍に光学フィルタ60を配置しないため、光学フィルタ60の製造過程で、該フィルタの表面に付着する粒状のゴミ(パーティクル)が、撮像素子70の表面に落下して画像を悪化させることもなくなる著しい効果を奏する。また、カメラモジュール1の組立工程において、近赤外光カットフィルタ60を配置、組み付けるための工程も必要なくなり、一層のコスト低減、歩留まりの向上、作業の効率化に資する。
【0063】
また
図1(A)のカメラ構造を備えることで、携帯通信機器Aは、より小型に、より薄く、より安価に製造できる効果を奏する。
【0064】
図1(B)に、携帯通信機器Aの筐体に連続して設置され、内部機構であるカメラモジュールを外界から保護する光学フィルタ機能付きカバーガラス100の積層構造を示す。光学フィルタ機能付きカバーガラス100は、光を透過する透明基板として結晶化ガラス130を使用し、紫外領域の光を反射し、且つ、可視領域の光の反射を抑止する反射防止膜120が、結晶化ガラス130を基準として光の入射側に形成される。そして光が入射する側の最も外側に、外界からの汚れを防止するための防汚コート膜110を備える。光の出射側に、結晶化ガラス130を基準として最も遠い側から順に、近赤外領域の光を反射する近赤外光反射膜150と、近赤外領域の光を吸収する近赤外光吸収膜140とが形成される。光の出射側の最も遠い側に、さらに反射防止膜120を形成しても良い(
図1(C)参照)。
【0065】
一般に結晶化ガラスは、結晶粒子が大きいため光を通しにくかった。しかし最近の技術の進歩により、例えば株式会社オハラ社製の耐衝撃・高硬度クリアガラスセラミックスのように、結晶粒子をナノメートルサイズに制御することが可能になり光の透過率が高まった(株式会社オハラ、[online]、新着情報>耐衝撃・高硬度クリアガラスセラミックス発売のご案内(プレスリリース配信)、[平成28年2月9日検索]、インターネット(URL:http://www.ohara−inc.co.jp/jp/news/dl/pressrelease151216.pdf)参照)。このような結晶化ガラスを使えば、耐衝撃性とクラックが入りにくい破壊靱性を兼ね備えたカバーガラスを製造することができる。そしてこのようなカバーガラスに上記の積層構造を形成することで光学フィルタ機能付きカバーガラス100が実現される。なお光学フィルタ機能付きカバーガラス100としてブルーガラスを使用することも理論上は考えられるが、耐衝撃性が低く、またクラックが入りにくい破壊靱性に欠けるため適切でない。強化ガラスに、後述する近赤外光吸収膜140や近赤外光反射膜150を成膜して光学フィルタ機能付きカバーガラス100とすることも考えられるが、結晶化ガラス130を使う場合に比べて耐衝撃性が低い欠点を持つ。また硬度が高いサファイアガラスに、近赤外光吸収膜140や近赤外光反射膜150を成膜して光学フィルタ機能付きカバーガラス100とすることも考えられるが、コストが著しく上がり、また結晶化ガラス130を使う場合に比べて加工性が低い。
【0066】
防汚コート膜110は、指紋汚れ、皮脂汚れを防ぐとともに、汚れを拭き取りやすくする。防汚コート膜110はフッ素系のコーティング剤等で形成され、塗布やスプレーにより、カバーガラスの積層構造において光の入射側の最も外側に成膜される。
【0067】
反射防止膜120は、紫外領域の光を反射し、且つ、可視領域の光の反射を抑止する。反射防止膜120は誘電体多層膜であり、且つ、窒化膜と酸化膜を交互に積層して構成される。反射防止膜120を構成する誘電体膜は、窒化膜と酸化膜を交互に複数積層して構成される。窒化膜としては、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素または窒化アルミニウムなどを用いることができる。酸窒化ケイ素を用いる場合には、酸素と窒素との化学量論比(酸素/窒素)が1以下であることが望ましい。酸化膜としては、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)などを用いることができる。反射防止膜120の膜として窒化ケイ素または酸窒化ケイ素を用いることにより、後述する近赤外光反射膜150と同じ成膜方法及び成膜装置を用いて反射防止膜120を形成することができるのでプロセス的に有利である。
【0068】
反射防止膜120は、窒化膜の代わりに酸化膜を用いることもできる。このような酸化膜の材質としては、酸化ケイ素の他に、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ニオブ(Nb2O5)などを用いることができる。なお反射防止膜120を屈折率の異なる複数種類の酸化膜で構成する場合には、前記酸化物から適宜選択する。
【0069】
反射防止膜120は、公知の成膜方法、たとえば真空蒸着法、スパッタ法、イオンビームアシスト蒸着法(IAD法)、イオンプレーティング法(IP法)、イオンビームスパッタ法(IBS法)などを用いることができる。窒化膜の成膜には、スパッタ法、イオンビームスパッタ法を用いることが望ましい。
【0070】
近赤外光吸収膜140は、結晶化ガラス130において上述の反射防止膜120とは反対側の面、すなわち光学フィルタ機能付きカバーガラス100の撮像素子70側に形成される。近赤外光吸収膜140は、可視領域の光を透過するとともに、赤色領域から近赤外領域の光の一部を吸収する機能を有する。近赤外光吸収膜140には、有機色素が含まれ、650nmから750nmの範囲に最大吸収波長を有する樹脂膜から構成される(
図4破線参照)。近赤外光吸収膜140は、結晶化ガラス130に隣接するため、両者の屈折率差を小さくして界面での反射率を低下させることが望ましい。このような近赤外光吸収膜140を有することにより、入射角度による分光透過率特性の依存性を低減して優れた近赤外光カット性を有することができる。
【0071】
有機色素としては、アゾ系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、ジイ
モニウム系化合物などを用いることができる。近赤外光吸収膜140を構成するバインダー(色素の結着剤)としての樹脂材料としては、ポリアクリル、ポリエステル、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリオレフィンなどを用いることができる。樹脂材料は、複数の樹脂を混合してもよく、また上記樹脂のモノマーを用いた共重合体であってもよい。また、樹脂材料は、可視領域の光に対して透過率の高いものであればよく、有機色素との相性、成膜プロセス、コスト等を考慮して選択される。また、近赤外光吸収膜140の耐紫外線性を向上させるために、樹脂材料に硫黄化合物などのクエンチャー(消光色素)を添加してもよい。
【0072】
近赤外光吸収膜140の形成には、たとえば以下の方法を用いることができる。まず、樹脂バインダーをメチルエチルケトン、トルエン等の公知の溶剤によって溶解し、さらに上述の有機色素を添加して塗布液を調製する。次いで、この塗布液をたとえばスピンコート法により結晶化ガラス130に所望の膜厚で塗布し、乾燥炉にて乾燥、硬化させる。
【0073】
近赤外光反射膜150は、反射防止膜120と同様に屈折率の異なる誘電体を交互に複数積層して形成される誘電体多層膜である。ただし近赤外光反射膜150を構成する誘電体多層膜は、屈折率が互いに異なる複数種類の酸化膜を複数積層させることで形成され、隣接する前記酸化膜は互いに異なる種類の酸化膜である。本第一実施形態で近赤外光反射膜150は、2種類の酸化膜を交互に数十層積層して形成される。酸化膜としては酸化ケイ素の他に、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ニオブ(Nb2O5)などを用いる。
【0074】
近赤外光反射膜150において、それぞれの酸化膜の膜厚は、反射をしたい光の波長をλとして、λ/4の厚みで形成する。こうすることで交互層のすべての界面から反射された光は、入射面に達すると同じ位相になり、光は強め合う結果になる、つまり波長λ付近で反射率が大きくなって光反射膜として機能する。本実施形態においては、λとして近赤外領域の光を反射するように膜の設計を行えば良い。なお近赤外光反射膜150についても、上述の反射防止膜120と同様の成膜方法及び成膜装置を用いて成膜する。
【0075】
人間の目は、波長380nm〜780nmのいわゆる可視光に対して感度を持つ。一方、撮像素子は、一般に可視光を含め、より長波長の光、すなわち波長約1.1μmの光まで感度を持つ。したがって撮像素子で捉える画像をそのまま写真にすると、自然な色合いには見えず、違和感を生じる原因になる。
【0076】
光学フィルタ機能付きカバーガラス100を上記
図1(B)や
図1(C)のような積層構造にすると、誘電体多層膜による近赤外光反射膜150を備えるため、近赤外光吸収膜140では吸収しきれない700nm以上の長さの波長の光をカットして、自然な色合いの画像を取得することが可能になる。また近赤外光反射膜150だけで近赤外領域の光をカットしようとすると、後述するように入射光の入射角度により反射率が大きく変化してしまう。近赤外光反射膜150と、光吸収率について入射角度依存性のない近赤外光吸収膜140とを組み合わせることで、光の透過率が、光の入射角度に対して依存性の少ない近赤外光カットフィルタを構成することが可能になる。
【0077】
また、スマートフォン筐体20内のカメラを外界から保護するカバーガラス100が反射防止膜120により紫外領域の光をカットすることができるので、カメラの構成部品である合成樹脂で形成された光学レンズ群(レンズユニット50)が紫外線によって劣化することを防ぐことができ、且つ、有機色素を含む近赤外光吸収膜140が紫外線により劣化することも防ぐことができる。また、可視領域の光に対する反射防止機能により、入射光をより多く取り込み、明るい画像を取得できる。
【0078】
なお反射防止膜120は、窒化膜と酸化膜を交互に積層して構成されるが、一般に窒化膜は、酸化膜と比べて高硬度であり、鉛筆硬度試験において、9H以上の硬度に達する。したがって反射防止膜120を窒化膜も含めて構成することで、耐傷性を高める効果を奏する。また窒化膜は、酸化膜と比べて充填密度が高く緻密である。成分として酸素を含まないため、酸素の供給源にもならない。したがって窒化膜を近赤外光吸収膜140より外側に設けることで、近赤外光吸収膜140への酸素および水分の侵入を防ぎ、近赤外光吸収膜140の劣化を抑制する効果を奏する。
【0079】
一般に光学フィルタは、多数の光学境界面を持っている。一方レンズには高度な反射防止膜を施している。近赤外領域の光をカットする光学フィルタでレンズ並みの透過率を実現することは難しく、レンズ側に反射光を戻すことが生じる。これが画像にゴーストを生む迷光の原因になる。従来のカメラ構造においては、光学フィルタ60がレンズユニット50と撮像素子70の間の光路上で、撮像素子70直近に置かれているため、上記のようなゴーストを生じることは避けがたかった。しかし本実施形態に係るカメラ構造によれば、上述のような迷光を生じることはないため画質を向上させる著しい効果を奏する。
【0080】
次に光学フィルタ機能付きカバーガラス100の分光透過率特性について説明する。
【0081】
図2(A)は、誘電体膜によって構成された近赤外光反射膜の分光透過率特性が、光の入射角度に対してどのように依存するかについての実験結果を示す。入射角度Aは
図2(B)のように定義する。また、縦軸の「T」は、分光透過率を示し、単位は%(パーセント)である。また横軸の「λ」は光の波長を示し、単位はnm(ナノメートル)である(以下の図でも同様)。サンプルはガラスに二酸化チタン(TiO2)と二酸化ケイ素(SiO2)とを所定の膜厚で交互に40層積層したものである。実線が光の入射角度0度の場合、破線が光の入射角度が30度の場合の分光透過率を示す。
図2から赤色領域である波長700nm付近の光に対して、光の入射角度0度と30度で著しい分光透過率の差が生じてしまうことが確認された。このような差があると、画像の色合いが画像中心と周辺部で大きく変わってしまうことにつながり、最終的な画質低下の原因となる。
【0082】
図3は、近赤外光吸収膜と近赤外反射膜の両者を備えた本実施形態に係る光学フィルタ機能付きカバーガラス100の分光透過率が、光の入射角度に対してどのように依存するかについての実験結果を示す。近赤外光吸収膜としては、有機色素を含む厚さ5μm以下の樹脂膜を用いており、近赤外光反射膜としては
図2と同様の構成である。実線が光の入射角度0度の場合、破線が光の入射角度が15度の場合、一点鎖線が光の入射角度が30度の場合の分光透過率を示す。
図2の場合と比べて入射角度依存性が小さくなっているのが確認できる。
【0083】
図4は、近赤外光吸収膜140及び近赤外光反射膜150を備えた光学フィルタ機能付きカバーガラス100(実線)と、近赤外光吸収膜140のみを形成したカバーガラス(破線)と、近赤外光反射膜150のみを形成したカバーガラス(一点鎖線)の分光透過率測定における実験結果を比較した図である。近赤外光吸収膜140と近赤外光反射膜150の構成は
図2、
図3の場合と同様なので説明を省略する。ただしすべて光の入射角度は0度である。近赤外光吸収膜140のみの場合だと、650〜750nmの光については、強い光吸収をするが、800nm以上の光は、ほとんど透過してしまう。前述のように人間の目は、波長380nm〜780nmのいわゆる可視光に対して主に感度を持つため、撮像素子70が感度を持つ800nm以上の領域まで画像化すると上述のように人間の目には不自然な画像となる。近赤外光反射膜150は、波長700nm以上の光についてはカットするように設計されており、実際に700nm付近で急峻な分光透過率の減少が測定されている。近赤外光吸収膜140と近赤外光反射膜150を組み合わせて、構成したのが光学フィルタ機能付きカバーガラス100であり、
図4の実線で示すように、可視領域の光のうち400〜650nmについては、高い透過率を実現し、且つ、波長700nm以上の光をカットしていることが確認できる。
【0084】
図5は、本発明の第二実施形態に係るカメラ構造が有する光学フィルタ機能付きカバーガラスの分光透過率を示す図である。本実施形態では、夜間でも画像を取得できる、いわゆるデュアルバンドの光学フィルタ機能付きカバーガラスとカメラ構造を提供する。カメラ構造の基本構成は第一実施形態と同様だが、光学フィルタ機能付きカバーガラス100は、近赤外領域の光の一部について光透過率を高くした近赤外光反射膜Dを備える。近赤外光反射膜Dの膜構造は公知技術なので説明を省略する。
【0085】
図5の破線で示す近赤外光吸収膜140と、
図5の一点鎖線で示す近赤外領域の光の一部について光透過率を高くした近赤外反射膜Dを組み合わせると、
図5の実線のように可視領域の光と近赤外領域の光の一部を透過するデュアルバンドカバーガラスを実現できる。ただし
図5において、近赤外光反射膜D及びデュアルバンドカバーガラスの分光透過率については、750nm以上の波長においては、計算値を表している。このようなデュアルバンドカバーガラスを備えたカメラ構造によれば、夜間の道路において車線境界線や車道外側線が見えやすくなるという著しい効果が得られるため、車載カメラに好適である。
【0086】
図6(A)は、本発明の第三実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造の断面図である。当該カメラ構造は、撮像装置の内部機構を外界から保護する光学フィルタ機能付きカバーガラス210と、カメラモジュール1を備える。カメラモジュール1は、撮像装置の内部機構である光学レンズ群、すなわちレンズユニット50と、レンズユニット50を保持するレンズキャリア40と、自動焦点機能を実現するためにレンズユニット50を軸方向に移動させるマグネットホルダ30と、光学フィルタ機能付きカバーガラス210及びレンズユニット50を介して入射した光を受光する撮像素子70と、レンズユニット50と撮像素子70の間に配置され、光を透過する透明ガラスを基材とした、内側透明プレート240を備える。内側透明プレート240は薄板状の構造を持ち、軸方向、レンズユニット50側から撮像素子70を見たときに、撮像素子70表面の少なくとも一部分を覆っている。
【0087】
図6(B)は、光学フィルタ機能付きカバーガラス210の構造図である。光学フィルタ機能付きカバーガラス210は、光を透過する透明基板として結晶化ガラス130を使用し、紫外領域の光を反射し、且つ、可視領域の光の反射を抑止する反射防止膜120が、結晶化ガラス130を基準として光の入射側に形成される。そして光が入射する側の最も外側に、外界からの汚れを防止するための防汚コート膜110を備える。光の出射側に、結晶化ガラス130を基準として最も遠い側から順に、近赤外領域の光を反射する近赤外光反射膜150と、近赤外領域の光を吸収する近赤外光吸収膜140とが形成される。。光の出射側の最も遠い側に、さらに反射防止膜120を形成しても良い(
図1(C)参照)。
【0088】
すなわち、光学フィルタ機能付きカバーガラス210は、撮像装置の内部機構を外界から保護するカバーガラスの積層構造であって、光を透過する透明基板である結晶化ガラス130と、近赤外領域の光を反射する近赤外光反射膜150とを備えることを特徴とするカバーガラスの積層構造を有する。また光学フィルタ機能付きカバーガラス210は、紫外領域の光を反射し、且つ、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止膜120をさらに備える。
【0089】
さらに光学フィルタ機能付きカバーガラス210は、近赤外領域の光を吸収する近赤外光吸収膜140を備え、近赤外光吸収膜140には、有機色素が含まれる。
【0090】
本発明の第三実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造は、上記の光学フィルタ機能付きカバーガラス210を備え、光学フィルタ機能付きカバーガラス210側に配置される光学レンズ群(レンズユニット50)と、光学フィルタ機能付きカバーガラス210及びレンズユニット50を介して入射した光を受光する撮像素子70と、レンズユニット50と撮像素子70の間に配置され、光を透過する内側透明プレート240とを備える
【0091】
近赤外反射膜150、近赤外吸収膜140、反射防止膜120の作製方法は第一実施形態と同様なので記載を省略する。
【0092】
図6(C)は、透明ガラス220を基材として反射防止膜を複数備えた内側透明プレート240の構造図である。内側透明プレート240は、透明ガラス220の両面に、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止層230を備える。反射防止層230は、反射防止膜120と同様な方法で作成される。
【0093】
すなわち本発明の第三実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造は、撮像装置の内部機構を外界から保護するカバーガラスの積層構造であって、光を透過する透明基板である結晶化ガラス130と、近赤外領域の光を反射する近赤外光反射膜150と、紫外領域の光を反射し、且つ、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止膜120と、近赤外領域の光を吸収する近赤外光吸収膜140を備える光学フィルタ機能付きカバーガラス210と、光学フィルタ機能付きカバーガラス210側に配置される光学レンズ群と、光学フィルタ機能付きカバーガラス210及び光学レンズ群を介して入射した光を受光する撮像素子70と、光学レンズ群と撮像素子70の間に配置され、光を透過する透明ガラス220を基材とした、内側透明プレート240とを備えることを特徴とするカメラ構造である。
【0094】
本発明の第三実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、光学フィルタ機能付きカバーガラス210が、光を反射する近赤外光反射膜150を有するので、外界からの近赤外光を撮像装置の内部機構に入射させない効果を奏しうる。また、撮像素子70に近接した領域に、近赤外光反射膜150を備えた部材を入れる必要が無くなるので、撮像装置の内部機構に入射した光の反射を抑制することができ、結果として迷光を抑え、ゴーストやフレアの原因を減少させる著しい効果を奏しうる。
【0095】
本発明の第三実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、撮像装置の内部機構を外界から保護する光学フィルタ機能付きカバーガラス210が紫外領域の光をカットすることができるので、カメラの構成部品である合成樹脂で形成された光学レンズ等が紫外線によって劣化することを防ぐことができ、長寿命化に資する。また、光学フィルタ機能付きカバーガラス210が少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止膜120を有することにより、入射光をより多く取り込むことが可能になり、より明るい画像を取得できるという顕著な効果を奏する。
【0096】
本発明の第三実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、光学フィルタ機能付きカバーガラス210に形成される近赤外光吸収膜140には、近赤外光を吸収する有機色素が含まれるので、近赤外領域の光を吸収するためのフィルタの材料として一般に使用されるブルーガラスを用いることなく、光の入射角度依存性が少ない状態で、近赤外線領域の光を抑止することが可能になるという効果を奏する。
【0097】
本発明の第三実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、当該カメラ構造は、光学レンズ群と撮像素子70の間に配置され、光を透過する内側透明プレート240を備えるので、撮像素子の表面に付着するダストを減少させることができ、結果として画質の向上という顕著な効果を奏しうる。
【0098】
本発明の第三実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、内側透明プレート240の両面に、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止層230を備えるので、入射光をより多く取り込むことが可能になり、且つ、内側透明プレート240に起因する反射光、特に撮像素子70自身からの反射光が、さらに内側透明プレート240に反射されて撮像素子70に戻ることを防止し、画質が向上しうるという顕著な効果を奏する。
【0099】
なお近赤外反射膜150、近赤外吸収膜140、反射防止膜120、反射防止層230の具体的な構造、作製方法は第一実施形態と同様なので記載を省略する。
【0100】
図6(D)は、第三実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造において、透明ガラスを基材とした内側透明プレート240を、透明合成樹脂フィルムを基材とした内側透明プレート242に置き換えた変形実施例の一部である。すなわち、透明合成樹脂フィルム222を基材として、両面に反射防止機能を発揮するモスアイ構造を備えた透明合成樹脂フィルムを基材とした内側透明プレート242の構造図である。透明合成樹脂フィルムを基材とした内側透明プレート242の厚みは、0.2mm以下である。透明合成樹脂フィルムを基材とした内側透明プレート242は、少なくとも可視領域の光の反射を防止するモスアイ構造232を両面に備える。
【0101】
モスアイ構造とは、誘電体多層膜のように干渉効果を利用して反射を低減するのでは無く、屈折率が急激に変化する境界面を排除することで反射を低減する。具体的には、表面に数百nm程度の高さを持つ多数の微細な突起からなる微細突起構造が形成され、その突起の繰り返し周期が反射低減の効果の現れる波長範囲と関連する。モスアイ構造については周知技術なので記載を省くが、本変形実施例の場合、例えば、透明合成樹脂フィルム222として透明なアクリル樹脂を使用し、転写や成型加工によってモスアイ構造を形成することで反射防止機能を実現する。
【0102】
すなわち透明合成樹脂フィルムを基材とした内側透明プレート242の表面に形成される微細な突起からなる微細突起構造、いわゆるモスアイ構造の反射防止膜232は、広帯域に渡って光の反射を防止する。モスアイ構造232は、少なくとも可視領域の光の反射防止機能を有し、紫外領域の光と、近赤外領域の光についても反射防止機能を有することが望ましい。
【0103】
さらに内側透明プレート240についての他の変形実施例としては、基材である透明合成樹脂フィルム222の表面に反射防止層として、合成樹脂を塗布することで得られる多層膜を形成したものも考えられる。一般に互いに異なる光の屈折率を持つ2種類の薄膜を交互に積層して得られる多層膜は、光の反射防止膜を形成しうる。そしてこのような多層膜は、合成樹脂を塗布することでも得られることが知られている。
【0104】
例えば、光の屈折率が互いに異なる2種類の合成樹脂であって、それらの屈折率が、いずれも空気の屈折率より大きく、且つ、透明合成樹脂フィルム222の屈折率より小さいものを用意する。これらを交互に透明合成樹脂フィルム222に塗布することで、安価に安定した品質の反射防止膜を備えた内側透明プレート240を製造しうる。透明合成樹脂フィルム222への合成樹脂の塗布の方法としては、例えばローラーコート法などが考えられる。本変形実施例によれば、反射防止膜を備えた内側透明プレートを、安定した品質のもと、大量に、しかも安価に製造できるという著しい効果を奏する。
【0105】
本発明の第三実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、透明合成樹脂フィルムを基材とした内側透明プレート242の両面にモスアイ構造の反射防止膜232を形成することで、透明合成樹脂フィルムを基材とした内側透明プレート242に起因する反射光が可視光領域を含む広帯域に渡って著しく低減され、画質が向上されうるという顕著な効果を奏する。
【0106】
図7(A)は、本発明の第四実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造の断面図である。本カメラ構造は、近赤外光を反射する近赤外光反射機能付きカバーガラス215と、透明ガラスを基材とした内側透明プレート240を備える。他の構成は、前述の第三実施形態と同様であるから記載を省略する。
【0107】
図7(B)は、近赤外光反射機能付きカバーガラス215の構造図である。近赤外光反射機能付きカバーガラス215は、光を透過する透明基板として結晶化ガラス130を使用し、紫外領域の光を反射し、且つ、可視領域の光の反射を抑止する反射防止膜120が、結晶化ガラス130を基準として光の入射側に形成される。そして光が入射する側の最も外側に、外界からの汚れを防止するための防汚コート膜110を備える。結晶化ガラス130を基準として光の出射側に、近赤外領域の光を反射する近赤外光反射膜150を形成する。光の出射側の最も遠い側に、さらに反射防止膜120を形成しても良い(
図1(C)参照)。
【0108】
図7(C)は、透明ガラス220を基材として反射防止層230を複数備えた内側透明プレート240の構造図である。内側透明プレート240は、透明ガラス220の両面に反射防止層230を備える。
【0109】
すなわち本発明の第四実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造は、撮像装置の内部機構を外界から保護するカバーガラスの積層構造であって、光を透過する透明基板である結晶化ガラス130と、近赤外領域の光を反射する近赤外光反射膜150と、紫外領域の光を反射し、且つ、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止膜120を備える、近赤外光反射機能付きカバーガラス215と、近赤外光反射機能付きカバーガラス215側に配置される光学レンズ群と、近赤外光反射機能付きカバーガラス215及び光学レンズ群を介して入射した光を受光する撮像素子70と、光学レンズ群と撮像素子70の間に配置され、光を透過する透明ガラス220を基材とした、内側透明プレート240とを備えることを特徴とするカメラ構造である。
【0110】
なお透明ガラス220を基材とした内側透明プレート240を、透明合成樹脂フィルムを基材とした内側透明プレート242に置き換えてもよい(
図6(D)参照)。
【0111】
本発明の第四実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、近赤外光反射機能付きカバーガラス215が、光を反射する近赤外光反射膜150を有するので、外界からの近赤外光を撮像装置の内部機構に入射させない効果を奏しうる。また、撮像素子70に近接した領域に、近赤外光反射膜150を備えた部材を入れる必要が無くなるので、撮像装置の内部機構に入射した光の反射を抑制することができ、結果として迷光を抑え、ゴーストやフレアの原因を減少させる著しい効果を奏しうる。
【0112】
本発明の第四実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、撮像装置の内部機構を外界から保護する近赤外光反射機能付きカバーガラス215が紫外領域の光をカットすることができるので、カメラの構成部品である合成樹脂で形成された光学レンズ等が紫外線によって劣化することを防ぐことができ、長寿命化に資する。また、近赤外光反射機能付きカバーガラス215が少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止膜120を有することにより、入射光をより多く取り込むことが可能になり、より明るい画像を取得できるという顕著な効果を奏する。
【0113】
本発明の第四実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、当該カメラ構造は、光学レンズ群と撮像素子70の間に配置され、光を透過する内側透明プレート240を備えるので、撮像素子の表面に付着するダストを減少させることができ、結果として画質の向上という顕著な効果を奏しうる。
【0114】
本発明の第四実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、内側透明プレート240の両面に、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止層230を備えるので、入射光をより多く取り込むことが可能になり、且つ、内側透明プレート240に起因する反射光、特に撮像素子70自身からの反射光が、さらに内側透明プレート240に反射されて撮像素子70に戻ることを防止し、画質が向上しうるという顕著な効果を奏する。
【0115】
図8(A)は、本発明の第五の実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造の断面図である。本カメラ構造は、近赤外光を反射する近赤外光反射機能付きカバーガラス215と、透明ガラスを基材とした近赤外光吸収機能付き内側透明プレート244を備える。他の構成は、前述の第三実施形態と同様であるから記載を省略する。
【0116】
図8(B)は、近赤外光反射機能付きカバーガラス215の構造図である。近赤外光反射機能付きカバーガラス215は、光を透過する透明基板として結晶化ガラス130を使用し、紫外領域の光を反射し、且つ、可視領域の光の反射を抑止する反射防止膜120が、結晶化ガラス130を基準として光の入射側に形成される。そして光が入射する側の最も外側に、外界からの汚れを防止するための防汚コート膜110を備える。結晶化ガラス130を基準として光の出射側に、近赤外領域の光を反射する近赤外光反射膜150を形成する。光の出射側の最も遠い側に、さらに反射防止膜120を形成しても良い(
図1(C)参照)。
【0117】
図8(C)は、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止層230を複数備え、近赤外光吸収部である近赤外光吸収膜140をさらに備える近赤外光吸収機能付き内側透明プレート244の構造図である。近赤外光吸収機能付き内側透明プレート244は、透明ガラス220を基材とし、透明ガラス220に近赤外光吸収膜140が設けられる。
【0118】
反射防止層230が、透明ガラス220を基準として光の入射側に形成され、光の出射側に、透明ガラス220を基準として最も遠い側から順に、反射防止層230と、近赤外光吸収膜140が備えられる。近赤外光吸収膜140は、有機色素を含む
【0119】
なお近赤外反射膜150、近赤外吸収膜140、反射防止膜120、反射防止層230の具体的な構造、作製方法は第一実施形態と同様なので記載を省略する。
【0120】
また近赤外光吸収機能付き内側透明プレート244を、透明合成樹脂フィルムを基材とした内側透明プレート242に類似するものに置き換えてもよい(
図6(D)参照)。ただし、このとき透明合成樹脂フィルム222に隣接して近赤外光吸収膜140を備えることが望ましい。すなわち反射防止膜であるモスアイ構造232が、透明合成樹脂フィルム222を基準として光の入射側に形成され、光の出射側に、透明合成樹脂フィルム222を基準として最も遠い側から順に、モスアイ構造232と、近赤外光吸収膜140が備えられることが望ましい。
【0121】
なお、近赤外光吸収機能付き内側透明プレート244を実現する手段としては、例えば基材として、近赤外領域の光を吸収する有機色素を少なくとも一部に含有する合成樹脂の薄板を使用しても良い。また従来の近赤外光カットフィルタと同様に、近赤外領域の光を吸収するいわゆるブルーガラスのプレートを使用しても良い。透明なプレートに近赤外光をカットするフィルムを貼り付けて実現することも考えられる。
【0122】
本発明の第五実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、近赤外光反射機能付きカバーガラス215が、光を反射する近赤外光反射膜150を有するので、外界からの近赤外光を撮像装置の内部機構に入射させない効果を奏しうる。また、撮像素子70に近接した領域に、近赤外光反射膜150を備えた部材を入れる必要が無くなるので、撮像装置の内部機構に入射した光の反射を抑制することができ、結果として迷光を抑え、ゴーストやフレアの原因を減少させる著しい効果を奏しうる。
【0123】
本発明の第五実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、撮像装置の内部機構を外界から保護する近赤外光反射機能付きカバーガラス215が紫外領域の光をカットすることができるので、カメラの構成部品である合成樹脂で形成された光学レンズ等が紫外線によって劣化することを防ぐことができ、長寿命化に資する。また、近赤外光反射機能付きカバーガラス215が少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止膜120を有することにより、入射光をより多く取り込むことが可能になり、より明るい画像を取得できるという顕著な効果を奏する。
【0124】
本発明の第五実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、近赤外光吸収機能付き内側透明プレート244に形成される近赤外光吸収膜140には、近赤外光を吸収する有機色素が含まれるので、近赤外領域の光を吸収するためのフィルタの材料として一般に使用されるブルーガラスを用いることなく、光吸収について入射角度依存性無しで、近赤外線領域の光をカットすることが可能になるという効果を奏する。
【0125】
本発明の第五実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、近赤外光吸収機能付き内側透明プレート244の両面に、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止層230を備えるので、入射光をより多く取り込むことが可能になる。また近赤外光吸収機能付き内側透明プレート244に起因する反射光、特に撮像素子70自身からの反射光が、さらに近赤外光吸収機能付き内側透明プレート244に反射されて撮像素子70に戻ることを防止することができるので、画質が向上しうるという顕著な効果を奏する。
【0126】
図9(A)は、本発明の第六の実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造の断面図である。本カメラ構造は、光の入射側から順に、近赤外光を反射する近赤外光反射機能付きカバーガラス215と、近赤外光を吸収する近赤外光吸収機能付きプレート217と、透明ガラスを基材とした内側透明プレート240を備える。他の構成は前述の第三実施形態と同様であるから記載を省略する。
【0127】
図9(B)は、近赤外光反射機能付きカバーガラス215の構造図である。近赤外光反射機能付きカバーガラス215は、光を透過する透明基板として結晶化ガラス130を使用し、紫外領域の光を反射し、且つ、可視領域の光の反射を抑止する反射防止膜120が、結晶化ガラス130を基準として光の入射側に形成される。そして光が入射する側の最も外側に、外界からの汚れを防止するための防汚コート膜110を備える。結晶化ガラス130を基準として光の出射側に、近赤外領域の光を反射する近赤外光反射膜150を形成する。光の出射側の最も遠い側に、さらに反射防止膜120を形成しても良い(
図1(C)参照)。
【0128】
図9(C)は、近赤外光吸収機能付きプレート217の構造図である。近赤外光吸収機能付きプレート217は、薄板状の構造を持ち、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止層230を複数備え、近赤外光吸収膜140をさらに備える近赤外光吸収機能付きプレート217は、透明ガラス220を基材とし、透明ガラス220に隣接して近赤外光吸収膜140が設けられる。反射防止層230が、透明ガラス220を基準として光の入射側に形成され、光の出射側に、透明ガラス220を基準として最も遠い側から順に、反射防止層230と、近赤外光吸収膜140が備えられる。
【0129】
近赤外光吸収機能付きプレート217は、近赤外光反射機能付きカバーガラス215より、内部構造側に配置される。
【0130】
なお、近赤外光吸収機能付きプレート217を実現する手段としては、例えば基材として、近赤外領域の光を吸収する有機色素を少なくとも一部に含有する合成樹脂の薄板を使用しても良い。また従来の近赤外光カットフィルタと同様に、近赤外領域の光を吸収するいわゆるブルーガラスのプレートを使用しても良い。透明なプレートに近赤外光をカットするフィルムを貼り付けて実現することも考えられる。
【0131】
図9(D)は、透明ガラス220を基材として反射防止層230を複数備えた、透明ガラスを基材とした内側透明プレート240の構造図である。内側透明プレート240は、透明ガラス220の両面に反射防止層230を備える。
【0132】
なお透明ガラス220を基材とした内側透明プレート240を、透明合成樹脂フィルムを基材とした内側透明プレート242に置き換えてもよい(
図6(D)参照)。
【0133】
本発明の第六実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、近赤外光反射機能付きカバーガラス215が、光を反射する近赤外光反射膜150を有するので、外界からの近赤外光を撮像装置の内部機構に入射させない効果を奏しうる。また、撮像素子70に近接した領域に、近赤外光反射膜150を備えた部材を入れる必要が無くなるので、撮像装置の内部機構に入射した光の反射を抑制することができ、結果として迷光を抑え、ゴーストやフレアの原因を減少させる著しい効果を奏しうる。
【0134】
本発明の第六実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、撮像装置の内部機構を外界から保護する近赤外光反射機能付きカバーガラス215が紫外領域の光をカットすることができるので、カメラの構成部品である合成樹脂で形成された光学レンズ等が紫外線によって劣化することを防ぐことができ、長寿命化に資する。また、近赤外光反射機能付きカバーガラス215が少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止膜120を有することにより、入射光をより多く取り込むことが可能になり、より明るい画像を取得できるという顕著な効果を奏する。
【0135】
本発明の第六実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、近赤外光吸収機能付きプレート217に形成される近赤外光吸収膜140には、近赤外光を吸収する有機色素が含まれるので、近赤外領域の光を吸収するためのフィルタの材料として一般に使用されるブルーガラスを用いることなく、光吸収について入射角度依存性無しで、近赤外線領域の光をカットすることが可能になるという効果を奏する。
【0136】
本発明の第六実施形態に係る撮像装置である携帯通信機器Aに適用されるカメラ構造によれば、透明ガラス220を基材とした内側透明プレート240の両面に、少なくとも可視領域の光の反射を防止する反射防止層230を備えるので、入射光をより多く取り込むことが可能になり、且つ、内側透明プレート240に起因する反射光、特に撮像素子70自身からの反射光が、さらに内側透明プレート240に反射されて撮像素子70に戻ることを防止し、画質が向上しうるという顕著な効果を奏する。
【0137】
図10は、従来のカメラ構造で撮像した画像と、本発明の第三実施形態に係るカメラ構造で撮像した画像を比較して、本発明の効果を説明する図である。
【0138】
図10(A)には、従来のカメラ構造でおこなった実験の実験方法を説明する説明図を示す。実験は特定の中心波長を有する発光ダイオードを光源として、その発光を撮像した。実験では、光源300として中心波長460nmの発光ダイオードを使用した。発生するフレア現象やゴースト現象を見やすくするために、光源300の背景には低反射材320を配置し、低反射材320の周囲に高反射材310を置いた。
【0139】
なお光強度の大きな光源方向にレンズを向けると、レンズ面等に光が反射を繰り返して、不要な画像が写り込む現象をフレア現象、ゴースト現象と呼ぶ。画像の一部が過度に露光される現象をフレア現象と呼び、レンズ面で光が反射を繰り返してはっきりとした不要画像が映り込む現象をゴースト現象と呼ぶ。
【0140】
従来のカメラ構造は、光の入射側から順に、カバーガラス350と、光学レンズ群330と、近赤外光カットフィルタ340と、撮像素子70を備える。近赤外光カットフィルタ340は光学レンズ群330と撮像素子70の間に配置される。
【0141】
図10(B)は、従来のカバーガラス350の断面図である。カバーガラス350は、透明ガラス360に反射防止膜120を備える。反射防止膜120は透明ガラス360の光学レンズ群330側に設けられる。
【0142】
図10(C)は、従来の近赤外光カットフィルタ340の断面図である。近赤外光カットフィルタ340は、基材であるブルーガラス380を基準として、光の入射側に近赤外光反射膜390を備え、撮像素子70側に、反射防止層230を有する。ここでブルーガラス380は近赤外領域の光を吸収する機能を有する。
【0143】
図10(D)は、
図10(A)〜
図10(C)で説明した従来のカメラ構造の撮像素子70によって撮像した画像である。光源300を中心として花びら様のゴーストGが生じており、画質が劣化していることがわかる。このようなゴースト現象は、光源300の中心波長を420nm〜660nmと変えても生じうる。
【0144】
図10(E)は、本発明の第三実施形態に係るカメラ構造でおこなった実験の実験方法を説明する説明図である。実験では、前述した
図10(A)〜
図10(D)の実験と同様、光源300として中心波長460nmの発光ダイオードを使用した。本発明の第三実施形態に係るカメラ構造は、光の入射側から順に、光学フィルタ機能付きカバーガラス400と、光学レンズ群330と、内側透明プレート450と、撮像素子70を備える。内側透明プレート450は光学レンズ群330と撮像素子70の間に配置される。
【0145】
図10(F)は、本発明の実施形態に係るカメラ構造における光学フィルタ機能付きカバーガラス400の断面図である。光学フィルタ機能付きカバーガラス400は、透明ガラス360を基材とし、透明ガラス360を基準として、光の入射側に反射防止膜120を備え、光学レンズ群330側に近赤外光カット層395を有する。近赤外光カット層395について、ここでは詳述しないが、近赤外光吸収膜140と近赤外光反射膜150を有する(
図6(B)参照)。
【0146】
図10(G)は、本発明の実施形態に係るカメラ構造における内側透明プレート450の断面図である。内側透明プレート450は透明ガラス360を基材としており、透明ガラス360の両面に反射防止層230を設ける。
【0147】
なお、近赤外反射膜150、近赤外吸収膜140、反射防止層230の具体的な構造、作製方法は第一実施形態と同様なので記載を省略する。
【0148】
図10(H)は、本発明の実施形態に係るカメラ構造によって撮像した画像である。光源300を中心に強い光を受光しているが、
図10(D)のようなゴーストは生じておらず、画質が改善していることがわかる。
【0149】
尚、本発明に係るカメラ構造、撮像装置、およびカバーガラスの積層構造は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0150】
例えば、スマートフォン等の携帯通信機器のカメラとして用いられる二つのカメラモジュールを組み合わせた、いわゆるデュアルカメラに、本発明に係るカバーガラスの積層構造およびカメラ構造を適用することは大きな効果を奏する。デュアルカメラにおいては、通常2つのカメラモジュールを並べて配置する。デュアルカメラでは、二つ異なった条件で画像を記録して、それらを合成することで一眼レフカメラ並の露出や絞りの調整が可能になる。従来のカメラ構造では、2枚の光学フィルタを必要とするが、本発明に係る光学フィルタ機能付きカバーガラスを用いれば、カメラモジュール内の光学フィルタを省けるため、組み立て工程が簡略化される上に、1枚のカバーガラスだけで、光学フィルタを用いる場合よりも優れた画質の画像を取得することが可能になる。
【0151】
また、通常、スマートフォン等の携帯通信機器のカメラのカバーガラスは、
図11(A)のように、スマートフォン筐体20とは独立に設けられている。しかし、デザイン性向上のため、スマートフォン筐体20の表面を、一枚の連続した光学フィルタ機能付きのガラスで覆うといったことも考えられる。その場合には、本発明の第一実施形態に係る光学フィルタ機能付きカバーガラス100や、光学フィルタ機能付きカバーガラス210や、近赤外光反射機能付きカバーガラス215と同様な積層構造のガラスを用いれば良い。このような構造にすることで、カメラ部分も含めて一体の滑らかな表面を持つスマートフォン筐体20を実現することができる。
【0152】
別の変形実施例としては、近赤外光吸収膜140と近赤外光反射膜150の積層順を逆にすることも考えられる。すなわち撮像素子70側から順に近赤外光吸収膜140、近赤外光反射膜150、結晶化ガラス130のように構成される。このような構成にすると、比較的熱に弱い近赤外光吸収膜140を、近赤外光反射膜150を積層した後に成膜できるので、近赤外光反射膜150を形成する際に、安価だが高温になりやすい蒸着装置等の成膜手段を用いることができる。また近赤外光吸収機能、近赤外光反射機能、反射防止機能などを有するフィルム等を、それぞれ基材であるガラスや合成樹脂フィルムに貼り付けることで、本発明に係るカバーガラス構造や、内側透明プレートが実現できればそのような方法を利用しても良い。
【0153】
例えば、近赤外光吸収機能を実現する手段としては、例えば基材として、近赤外領域の光を吸収する有機色素を少なくとも一部に含有する合成樹脂の薄板を使用しても良い。また従来の近赤外光カットフィルタと同様に、近赤外領域の光を吸収するいわゆるブルーガラスのプレートを使用しても良い。透明なプレートに近赤外光をカットするフィルムを貼り付けて実現することが考えられる。
【符号の説明】
【0154】
1 カメラモジュール
10 カバーガラス
20 スマートフォン筐体
30 マグネットホルダ
40 レンズキャリア
50 レンズユニット
60 光学フィルタ
70 撮像素子
80 基板
100 光学フィルタ機能付きカバーガラス
110 防汚コート膜
120 反射防止膜
130 結晶化ガラス
140 近赤外光吸収膜
150 近赤外光反射膜
160 入射面
170 出射面
180 測定対象
190 入射光
200 垂直軸
210 光学フィルタ機能付きカバーガラス
215 近赤外光反射機能付きカバーガラス
217 近赤外光吸収機能付きプレート
220 透明ガラス
222 透明合成樹脂フィルム
230 反射防止膜
232 モスアイ構造
240 内側透明プレート
242 透明合成樹脂フィルムを基材とした内側透明プレート
244 近赤外光吸収機能付き内側透明プレート
300 光源
310 高反射材
320 低反射材
330 光学レンズ群
340 近赤外光カットフィルタ
350 カバーガラス
360 透明ガラス
370 反射防止膜
380 ブルーガラス
390 近赤外光反射膜
395 近赤外光カット層
400 光学フィルタ機能付きカバーガラス
450 内側透明プレート
A 携帯通信機器
G ゴースト
【国際調査報告】