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再表2017-150264電気化学デバイスおよびこれに用いる負極とその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年9月8日
【発行日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】電気化学デバイスおよびこれに用いる負極とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/26 20130101AFI20181130BHJP
   H01G 11/50 20130101ALI20181130BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20181130BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20181130BHJP
【FI】
   H01G11/26
   H01G11/50
   H01G11/06
   H01G11/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
【出願番号】特願2018-503052(P2018-503052)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年2月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-38014(P2016-38014)
(32)【優先日】2016年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100170494
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩夫
(72)【発明者】
【氏名】永光 健一
(72)【発明者】
【氏名】白髪 充朗
【テーマコード(参考)】
5E078
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AA14
5E078AB06
5E078BA05
5E078BA06
5E078BA12
5E078BA20
5E078BA26
5E078BA49
5E078BA53
5E078BA71
5E078BA73
5E078BB33
5E078DA06
(57)【要約】
本発明における電気化学デバイス用負極は、負極集電体と、負極集電体の一方の面に担持された第1負極活物質層と、負極集電体の他方の面に担持された第2負極活物質層と、を具備し、第1負極活物質層の単位質量当たりの容量C1が、前記第2負極活物質層の単位質量当たりの容量C2よりも大きい。これにより、リチウムイオンを負極にプレドープすることにより製造される高容量の電気化学デバイスに適した負極を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、
前記負極集電体の一方の面に担持された第1負極活物質層と、
前記負極集電体の他方の面に担持された第2負極活物質層と、を具備し、
前記第1負極活物質層の単位質量当たりの容量C1が、前記第2負極活物質層の単位質量当たりの容量C2よりも大きい、電気化学デバイス用負極。
【請求項2】
前記第1負極活物質層および前記第2負極活物質層が、それぞれリチウムイオンのドープおよび脱ドープが可能な負極活物質と、結着剤とを含み、前記第1負極活物質層の単位質量当たりに含まれる前記結着剤の含有量X1が、前記第2負極活物質層の単位質量当たりに含まれる前記結着剤の含有量X2よりも少ない、請求項1に記載の電気化学デバイス用負極。
【請求項3】
前記第1負極活物質層の厚さT1が、前記第2負極活物質層の厚さT2よりも薄い、請求項1または2に記載の電気化学デバイス用負極。
【請求項4】
前記第1負極活物質層の単位面積当たりの容量Cs1と、前記第2負極活物質層の単位面積当たりの容量Cs2とが、0.99≦Cs1/Cs2≦1.01を満たす、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学デバイス用負極。
【請求項5】
正極、請求項1〜4のいずれか1項に記載の負極、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータおよびリチウムイオン伝導性の非水電解液を具備する、電気化学デバイス。
【請求項6】
前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の表面に担持された正極活物質層とを具備し、
前記正極集電体および前記負極集電体の少なくとも一方が、リチウムイオン透過性を有する、請求項5に記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
負極集電体と、前記負極集電体の一方の面に担持された第1負極活物質層と、前記負極集電体の他方の面に担持された第2負極活物質層と、を具備する負極を準備する工程と、
正極集電体と、前記正極集電体の表面に担持された正極活物質層とを具備する正極を準備する工程と、
前記第2負極活物質層の表面にリチウム箔を貼り付ける工程と、
前記正極と前記リチウム箔が貼り付けられた前記負極とを、セパレータを介して捲回または積層して電極群を形成する工程と、
前記電極群を非水電解液と接触させて、前記リチウム箔からリチウムを前記第1負極活物質層および前記第2負極活物質層にドープする工程と、を有し、
前記第1負極活物質層の単位質量当たりの容量C1が、前記第2負極活物質層の単位質量当たりの容量C2よりも大きい、電気化学デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記正極集電体および前記負極集電体の少なくとも一方が、リチウムイオン透過性を有する、請求項7に記載の電気化学デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記リチウム箔の厚さが、10μm以上である、請求項7または8に記載の電気化学デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンを負極にプレドープすることにより製造される電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーを蓄電する電気化学デバイスは、大きく分けて、ファラデー反応により充放電する高容量デバイスと、非ファラデー反応により充放電する高出力デバイスとに分類することができる。高容量デバイスとしては、リチウムイオン二次電池が主流となっており、高出力デバイスとしては、電気二重層キャパシタが代表的である。
【0003】
近年では、リチウムイオン二次電池と電気二重層キャパシタの中間的な性能を有する電気化学デバイスも注目を集めている。例えば、リチウムイオンキャパシタは、キャパシタに用いられる正極と、リチウムイオン二次電池に用いられる負極とを組み合わせた構造であり、両者の性能を併せ持っている。このような電気化学デバイスの場合、容量を確保するために、負極に予めリチウムイオンをドープ(プレドープ)して負極電位を低下させ、正極と負極との電位差が高められる。
【0004】
負極へのリチウムイオンのプレドープは、例えば、正極と負極とをセパレータを介して捲回して電極群を形成した後、十分な厚さを有するリチウム箔を電極群の最外周に貼り付け、リチウム箔と電極群とを非水電解液で短絡させて行われる。この方法は、単純ではあるが、リチウムイオンを負極の全体に均一に移動させることが困難であり、かつプレドープの完了までに長時間を要するという欠点がある。
【0005】
一方、負極の裏表両面に薄く圧延されたリチウム箔を配設した状態で、正極およびセパレータとともに捲回して電極群を形成し、その後、プレドープを行うことも提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−272585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、リチウム箔を負極表面に貼り付けるには、負極活物質層と負極集電体との間の結合力、負極活物質層内の活物質粒子間の結合力に加えて、負極活物質層とリチウム箔との間に十分な結合力を付与する必要がある。そのためには、負極活物質層に含ませる活物質量を制限しなければならず、負極容量の向上に制限が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑み、本発明の一局面は、負極集電体と、前記負極集電体の一方の面に担持された第1負極活物質層と、前記負極集電体の他方の面に担持された第2負極活物質層と、を具備し、前記第1負極活物質層の単位質量当たりの容量C1が、前記第2負極活物質層の単位質量当たりの容量C2よりも大きい、電気化学デバイス用負極に関する。
【0009】
本発明の別の局面は、正極、上記負極、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータおよびリチウムイオン伝導性の非水電解液を具備する、電気化学デバイスに関する。
【0010】
本発明の更に別の局面は、負極集電体と、前記負極集電体の一方の面に担持された第1負極活物質層と、前記負極集電体の他方の面に担持された第2負極活物質層と、を具備する負極を準備する工程と、正極集電体と、前記正極集電体の表面に担持された正極活物質層とを具備する正極を準備する工程と、前記第2負極活物質層の表面にリチウム箔を貼り付ける工程と、前記正極と前記リチウム箔が貼り付けられた前記負極とを、セパレータを介して捲回または積層して電極群を形成する工程と、前記電極群を非水電解液と接触させて、前記リチウム箔からリチウムを前記第1負極活物質層および前記第2負極活物質層にドープする工程と、を有し、前記第1負極活物質層の単位質量当たりの容量C1が、前記第2負極活物質層の単位質量当たりの容量C2よりも大きい、電気化学デバイスの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
電気化学デバイス用負極において、負極集電体の一方の面に担持された負極活物質層の単位質量当たりの容量を、他方の面に担持された負極活物質層よりも大きくすることにより、リチウム箔を負極に貼り付けてプレドープする場合でも、高容量の電気化学デバイスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る電気化学デバイスの断面模式図である。
図2】同電気化学デバイスの一部を展開した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る負極は、主としてリチウムイオンが関与するファラデー反応により容量を発現する電気化学デバイス用負極に関し、負極集電体と、負極集電体の一方の面に担持された第1負極活物質層と、負極集電体の他方の面に担持された第2負極活物質層と、を具備する。第1負極活物質層の単位質量当たりの容量C1は、第2負極活物質層の単位質量当たりの容量C2よりも大きくなるように設計されている。
【0014】
第2負極活物質層には、負極にプレドープされるリチウムイオンの供給源として、リチウム箔が貼り付けられる。そのため、第2負極活物質層にリチウム箔との十分な結合力を付与する必要がある。負極活物質は、それ自身ではリチウム箔との結合力が小さいため、第2負極活物質層が含有し得る負極活物質の量は制限される。一方、第1負極活物質層は、リチウム箔との結合力を必要としないため、第2負極活物質層よりも多くの負極活物質を含むことができる。
【0015】
第1負極活物質層および第2負極活物質層が、それぞれリチウムイオンのドープおよび脱ドープが可能な負極活物質と結着剤とを含む場合、第1負極活物質層の単位質量当たりに含まれる結着剤の含有量X1は、第2負極活物質層の単位質量当たりに含まれる結着剤の含有量X2よりも少量でよい。結着剤は、電気化学デバイスの容量に寄与しない抵抗成分である。X1をX2よりも少なくすることで、第1負極活物質層の抵抗が小さくなり、その分、電気化学デバイスの内部抵抗も小さくなる。また、X2をX1よりも多くすることで、第2負極活物質層の負極集電体から離れた表面の算術平均粗さRa2を、第1負極活物質層の負極集電体から離れた表面の算術平均粗さRa1より小さくできる。これにより、第2負極活物質層にリチウム箔を貼り付ける場合、第2負極活物質層の表面にリチウム箔を貼り付け易くなる。
【0016】
X1をX2よりも少なくする場合、第2負極活物質層の導電性は、第1負極活物質層の導電性より小さくなる。よって、少なくとも第2負極活物質層には、導電助剤を含ませることが好ましい。一方、第1負極活物質層および第2負極活物質層にそれぞれ導電助剤を含ませる場合、第1負極活物質層の単位質量当たりに含まれる導電助剤の含有量Y1は、第2負極活物質層の単位質量当たりに含まれる導電助剤の含有量Y2よりも少量でよい。
【0017】
C1がC2よりも大きい場合、第1負極活物質層の厚さT1を、第2負極活物質層の厚さT2よりも薄くしてもよい。これにより、負極全体の厚さが小さくなるため、電気化学デバイスの高容量化に有利となる。
【0018】
このとき、第1負極活物質層の単位面積当たりの容量Cs1と、第2負極活物質層の単位面積当たりの容量Cs2とが、0.99≦Cs1/Cs2≦1.01を満たすように、T1とT2とを設計することが望ましい。これにより、負極の裏表両面における容量バランスが良好になり、優れたサイクル特性を得やすくなる。
【0019】
次に、本発明に係る電気化学デバイスは、正極、上記の負極、正極と負極との間に介在するセパレータおよびリチウムイオン伝導性の非水電解液を具備する。
【0020】
正極は、正極集電体とその表面に担持された正極活物質層とを具備する。ここで、正極集電体および負極集電体の少なくとも一方は、リチウムイオン透過性を有することが好ましい。正極集電体がリチウムイオン透過性を有する場合には、リチウム箔から溶出したリチウムイオンは、正極を通過して、隣接する負極の第1負極活物質層に迅速に到達することができる。負極集電体がリチウムイオン透過性を有する場合には、リチウム箔から溶出したリチウムイオンは、負極集電体を通過して、裏面の第1負極活物質層に迅速に到達することができる。よって、第1負極活物質層にはプレドープ用のリチウム箔を貼り付けず、第2負極活物質層にリチウム箔を貼り付ける場合でも、プレドープが迅速に進行する。また、負極の全体に均一にリチウムイオンが到達しやすくなる。
【0021】
次に、本発明に係る電気化学デバイスの製造方法は、負極集電体と、負極集電体の一方の面に担持された第1負極活物質層と、負極集電体の他方の面に担持された第2負極活物質層と、を具備する負極を作製する工程と、正極集電体と、正極集電体の両面に担持された正極活物質層とを具備する正極を作製する工程と、第2負極活物質層の表面にリチウム箔を貼り付ける工程と、正極とリチウム箔が貼り付けられた負極とを、セパレータを介して捲回または積層して電極群を形成する工程と、電極群を非水電解液と接触させて、リチウム箔からリチウムを第1負極活物質層および第2負極活物質層にドープする工程と、を有する。上記製造方法では、既に述べたように、第1負極活物質層の単位質量当たりの容量C1を、第2負極活物質層の単位質量当たりの容量C2よりも大きくすることができる。
【0022】
上記製造方法において、正極集電体および負極集電体の少なくとも一方が、リチウムイオン透過性を有する場合、プレドープが迅速に進行し、かつ負極の全体に均一にリチウムイオンを到達させることができる。
【0023】
リチウム箔は、第1負極活物質層および第2負極活物質層にリチウムイオンをドープするだけの質量を有すればよい。金属状態のリチウムが残存すると、サイクル特性に影響を与えることがあるため、リチウム箔の質量は必要かつ十分な量であることが望ましい。この点、負極の両面にリチウム箔を貼り付ける場合には、厚さ10μm未満のリチウム箔を用いる必要があり、圧延の手間がかかってリチウム箔にかかるコストが高価になる。一方、第1負極活物質層の表面にはリチウム箔を貼り付けず、第2負極活物質層の表面にリチウム箔を貼り付ける場合、リチウム箔の厚さは10μm以上であればよい。よって、リチウム箔にかかるコストが安価になるとともに、リチウム箔の取り扱いも容易となる。
【0024】
以下、電気化学デバイスの構成要素ごとに、更に詳しく説明する。
(負極)
負極は、負極集電体と、負極集電体の一方の面に担持された第1負極活物質層と、負極集電体の他方の面に担持された第2負極活物質層と、を具備する。第1負極活物質層および第2負極活物質層は、単位質量当たりの容量が異なる点以外、同様に形成される。
【0025】
負極集電体には、例えば導電性のシート材料が用いられる。シート材料としては、金属箔、金属多孔体、パンチングメタルなどが用いられる。負極集電体の材質としては、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼などを用いることができる。負極集電体は、リチウムイオン透過性を有してもよい。リチウムイオン透過性を有する負極集電体としては、パンチングメタルやエッチングメタルのような表面に孔が形成された箔が好ましい。
【0026】
第1負極活物質層および第2負極活物質層は、いずれも負極活物質の他に、結着剤、導電助剤などを含み得る。よって、第1負極活物質層の単位質量当たりの容量C1および第2負極活物質層の単位質量当たりの容量C2は、負極活物質層に含まれる負極活物質と他の成分との質量比(組成)により、C1>C2となるように制御される。換言すれば、第1負極活物質層の単位質量当たりに含まれる負極活物質の質量M1は、第2負極活物質層の単位質量当たりに含まれる負極活物質の質量M2よりも大きくなっている。
【0027】
ただし、電気化学デバイスのサイクル特性を良好にする観点からは、第1負極活物質層の単位面積当たりの容量Cs1と、第2負極活物質層の単位面積当たりの容量Cs2とが、等しいことが望ましく、多少の相違があっても0.99≦Cs1/Cs2≦1.01を満たすことが望ましい。
【0028】
C1/C2比もしくはM1/M2比は、いずれも1より大きければよく、1.03より大きいことが好ましい。ただし、C1/C2比もしくはM1/M2比が大きすぎると、第1負極活物質層の単位面積当たりの容量Cs1と第2負極活物質層の単位面積当たりの容量Cs2とを合わせにくくなり、Cs1とCs2との差が大きくなりやすい。よって、C1/C2比もしくはM1/M2比は、1.05以下であることが望ましい
負極活物質としては、炭素材料、金属化合物、合金、セラミックス材料などが挙げられる。炭素材料としては、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、黒鉛などが好ましく、高出力を得る観点からは、ハードカーボンが特に好ましい。金属化合物としては、ケイ素酸化物、錫酸化物などが挙げられる。合金としては、ケイ素合金、錫合金などが挙げられる。セラミックス材料としては、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
導電助剤としては、カーボンブラック、炭素繊維などが挙げられる。中でも、カーボンブラックが好ましく、カーボンブラックの中でも導電性に優れる点で、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどを用いることが望ましい。
【0030】
結着剤は、樹脂成分であり、ゴム粒子、セルロース誘導体、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などが用いられる。ゴム材料としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが挙げられ、セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはその誘導体(CMCのNa塩、アンモニウム塩など)が挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などが挙げられる。アクリル樹脂としては、ポリアクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体などが挙げられる。結着剤の使用量は、負極活物質100質量部当たり、2〜5質量部が好ましい。
【0031】
負極活物質層は、負極活物質、結着剤などを含む負極合剤を液状成分(分散媒)に分散させてスラリーを調製し、スラリーを負極集電体の表面に塗布することにより形成される。分散媒に溶解する結着剤は、スラリーに粘性を付与する。結着剤が分散媒に溶解しないときは、スラリーに粘性を付与するために、分散媒に溶解する結着剤を併用することが望ましい。例えば、SBRを用いる場合、CMCまたはCMC誘導体を併用することが望ましい。この場合、CMCまたはCMC誘導体の使用量は、負極活物質100質量部当たり、1〜2質量部が好ましい。
【0032】
第1負極活物質層および第2負極活物質層が、それぞれ結着剤を含む場合、第1負極活物質層の単位質量当たりに含まれる結着剤の含有量X1を、第2負極活物質層の単位質量当たりに含まれる結着剤の含有量X2よりも少なくすることができる。これにより、第1負極活物質層により高容量を確保しつつ、第2負極活物質層にリチウム箔との十分な結合力を付与することができる。また、結着剤は、電気化学デバイスの容量に寄与しない抵抗成分であるため、X1をX2よりも少なくすることで、その分、電気化学デバイスの内部抵抗の増大が抑制される。X1/X2比は、1より小さければよく、0.33〜0.7の範囲内であることが望ましい。また、X2をX1よりも多くすることで、第2負極活物質層の負極集電体から離れた表面の算術平均粗さRa2を、第1負極活物質層の負極集電体から離れた表面の算術平均粗さRa1より小さくできる。リチウムイオンのプレドープの際にリチウム箔を第1負極活物質層に貼り付けず、第2負極活物質層に貼り付ける場合、第2負極活物質層の表面にリチウム箔を貼り付け易くなる。
【0033】
負極活物質として炭素材料を用い、結着剤としてSBRを用いる場合、第1負極活物質層においては、負極活物質(炭素材料)100質量部当たりのSBR量は、2〜3質量部が望ましい。一方、第2負極活物質層においては、負極活物質(炭素材料)100質量部当たりのSBR量は、5〜6質量部が望ましい。このとき、第1負極活物質層の単位質量当たりに含まれるSBRの含有量Z1と、第2負極活物質層の単位質量当たりに含まれるSBRの含有量Z2との比:Z1/Z2は0.33以上、0.6以下が好ましく、0.4以上、0.6以下がより好ましい。また、このとき、第2負極活物質層の負極集電体から離れた表面の算術平均粗さRa2は、3μm以上、5μm以下とすることが好ましい。
【0034】
負極活物質層には、導電助剤を含ませてもよい。導電助剤の使用量は、負極活物質100質量部当たり、0〜10質量部が好ましい。第1負極活物質層に含まれる結着剤の量を少なくする場合、第1負極活物質層における導電性は、第2負極活物質層における導電性よりも相対的に高くなる。第1負極活物質層と第2負極活物質層との導電性のバランスを考慮すると、少なくとも第2負極活物質層は導電助剤を含むことが望ましい。これにより、第2負極活物質層の導電性が向上し、レート特性やサイクル特性が向上する。
【0035】
第1負極活物質層および第2負極活物質層がそれぞれ導電助剤を含む場合は、第1負極活物質層の単位質量当たりに含まれる導電助剤の含有量Y1を、第2負極活物質層の単位質量当たりに含まれる導電助剤の含有量Y2よりも少なくすることが望ましい。すなわち、Y1/Y2比は、1より小さいことが望ましく、0〜0.1の範囲内であることがより望ましい。
【0036】
第1負極活物質層は第2負極活物質層に比べて結着剤などの含有量を低減できるため、第1負極活物質層の厚さT1を第2負極活物質層の厚さT2よりも薄くすることができる。すなわち、リチウムイオンのプレドープの際にリチウム箔を第1負極活物質層に貼り付けず、第2負極活物質層に貼り付ける場合、第1負極活物質層と第2負極活物質層の両方にリチウム箔を貼り付ける場合に比べて、電極群を小さくすることができる。よって、電気化学デバイスの高容量化に更に有利になる。T1/T2比は、例えば1より小さく、0.97以下であることが望ましく、0.85以上であることが望ましい。
(正極)
正極は、例えば、正極集電体と、正極集電体の表面に担持された正極活物質層とを具備する。
【0037】
正極集電体には、例えば導電性のシート材料が用いられる。シート材料としては、金属箔、金属多孔体、パンチングメタルなどが用いられる。正極集電体の材質としては、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ステンレス鋼などを用いることができる。正極集電体は、リチウムイオン透過性を有してもよい。リチウムイオン透過性を有する正極集電体としては、パンチングメタルやエッチングメタルのような表面に孔が形成された箔が好ましい。
【0038】
正極活物質層は、正極活物質として、炭素材料や導電性高分子を含むことが望ましい。炭素材料は、活性炭表面へのアニオンあるいはカチオンの静電的な吸着と脱離により容量を発現する。炭素材料を用いることで、高出力かつ電気二重層キャパシタよりも高容量の電気化学デバイスを得ることができる。炭素材料としては、比表面積の大きな材料が好ましく、活性炭、ポリアセン(PAS)、多環芳香族炭化水素(PAHs)などを用いることができる。
【0039】
また、導電性高分子は、アニオンのドープと脱ドープを伴う酸化還元反応により容量を発現する。導電性高分子を用いることで、高出力かつ電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタよりも高容量の電気化学デバイスを得ることができる。
【0040】
導電性高分子としては、π共役系高分子が好ましく、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリチオフェンビニレン、ポリピリジン、及び、これらの誘導体などを用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。導電性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000〜100000である。
【0041】
なお、上記π共役系高分子の誘導体は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリチオフェンビニレン、ポリピリジンなどを基本骨格とする高分子を意味する。例えば、ポリチオフェン誘導体には、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などが含まれる。
【0042】
導電性高分子は、予めアニオンをドーパントとしてドープすることで、優れた導電性を発現する。ドーパントとしては、導電性高分子から比較的脱ドープしにくいアニオンが好ましく、ハロゲン原子を含まないオキソ酸アニオンであることが望ましい。ハロゲン原子を含まないオキソ酸アニオンとしては、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、硼酸イオン、スルホン酸イオンなどを挙げることができる。スルホン酸イオンとしては、ベンゼンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などが挙げられる。中でも、導電性高分子中で安定しやすい点で、硫酸イオン、スルホン酸イオンなどが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
ドーパントは、高分子アニオンであってもよい。高分子アニオンとしては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸などのイオンが挙げられる。これらは単独重合体であってもよく、2種以上のモノマーの共重合体であってもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(リチウムイオン伝導性の非水電解液)
リチウムイオン伝導性を有する非水電解液は、リチウム塩と、リチウム塩を溶解させる非水溶媒とを含む。リチウム塩に由来するアニオンは、電気化学デバイスの充放電に伴って正極へのドープと脱ドープとを可逆的に繰り返す。一方、リチウム塩に由来するリチウムイオンは、電気化学デバイスの充放電に伴って負極に吸蔵または負極から放出される。
【0044】
リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiFSO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl4、LiN(FSO22、LiN(CF3SO22などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を
組み合わせて用いてもよい。非水電解液中のリチウム塩の濃度は、例えば0.2〜4mol/Lであればよく、特に限定されない。
【0045】
非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテル、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−プロパンサルトンなどを用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
非水電解液に、必要に応じて添加剤を含ませてもよい。例えば、負極表面にリチウムイオン伝導性の高い被膜を形成する添加剤として、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネートなどの不飽和カーボネートを添加してもよい。
(セパレータ)
セパレータとしては、セルロース繊維製の不織布、ガラス繊維製の不織布、ポリオレフィン製の微多孔膜、織布、不織布などが好ましく用いられる。セパレータの厚みは、例えば10〜300μmであり、10〜40μmが好ましい。
【0047】
次に、電気化学デバイスの製造方法の一例について説明する。ただし、電気化学デバイスの製造方法は次の例に限定されるものではない。
(i)負極を準備する工程
まず、負極活物質、結着剤および導電剤を含む負極合剤を液状成分(分散媒)に分散させて、組成の異なる第1スラリーと第2スラリーを調製する。分散媒には、水、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などが好ましく用いられる。
【0048】
このとき、第1スラリーに含まれる負極活物質100質量部当たりの結着剤および導電剤の質量を、第2スラリーに含まれる負極活物質100質量部当たりの結着剤および導電剤の質量よりも少なくする。第1スラリーは第1負極活物質層の原料であり、第2スラリーは第2負極活物質層の原料である。
【0049】
次に、各スラリーを負極集電体の一方の表面および他方の表面にそれぞれ塗布し、乾燥し、圧延することにより、第1負極活物質層および第2負極活物質層が形成される。塗布の際、第1負極活物質層の単位面積当たりの容量Cs1と、第2負極活物質層の単位面積当たりの容量Cs2とが、0.99≦Cs1/Cs2≦1.01を満たすように、第1負極活物質層を第2負極活物質層よりも薄く形成してもよい。例えば、第1負極活物質層の単位面積当たりに担持される負極活物質の質量Ms1と、第2負極活物質層の単位面積当たりに担持される負極活物質の質量Ms2とが、0.99≦Ms1/Ms2≦1.01を満たすように制御すればよい。
(ii)正極を準備する工程
正極は、例えば、正極集電体に導電性高分子を付着させることにより製造される。例えば、正極集電体を、導電性高分子の原料である重合性化合物(モノマーもしくはオリゴマ
ー)を含む溶液(重合液)に浸漬し、正極集電体の存在下で重合性化合物を重合することにより、正極集電体の表面を覆う導電性高分子の被膜が形成される。導電性高分子の被膜は、正極活物質層として機能する。
【0050】
重合性化合物の重合方法は、電解重合でもよく、化学重合でもよいが、被膜の厚さを制御しやすい点で、電解重合が望ましい。電解重合は、例えば、正極集電体を対向電極と対向させ、正極集電体をアノードとして対向電極との間に電流を流すことで進行する。
【0051】
重合液に正極集電体を浸漬する前に、正極集電体の表面をエッチングして粗面化してもよく、正極集電体の表面に導電性カーボン層を形成してもよい。導電性カーボン層は、正極集電体の表面にカーボンペーストを塗布し、乾燥させることで形成すればよい。カーボンペーストは、カーボンブラックと樹脂成分とを水や有機溶媒に分散させることにより得ることができる。
【0052】
重合液には、ドーパントとなるアニオンを存在させ、アニオンがドープされた導電性高分子を生成させてもよい。重合液に電解重合を促進する酸化剤を添加してもよい。重合液の溶媒には、水を用いてもよく、重合性化合物の溶解度を考慮して有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、アルコール類が望ましく、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを用いることができる。
【0053】
電解重合の条件は、特に限定されず、適宜選択すればよいが、重合液のpHは0〜6に、温度は0〜45℃に制御することが望ましい。電流密度は、特に限定されないが、0.1〜100mA/cm2が望ましい。重合液における重合性化合物の濃度は0.01〜3mol/Lが望ましく、ドーパントとなるアニオン濃度は0.01〜3mol/Lが望ましい。
【0054】
なお、導電性高分子は、化学重合により合成してもよく、例えば化学重合により合成された導電性高分子を、導電剤、結着剤などと混合してペーストを調製し、ペーストを正極集電体の表面に塗布することにより、正極活物質層を形成してもよい。
(iii)電極群を形成する工程
負極へのリチウムイオンのプレドープは、電極群にリチウム箔を組み込み、非水電解液とともに電極群を電気化学デバイスのケースに収容してから進行させることが効率的である。その際、電極群を形成する前に、負極の表面にリチウム箔が貼り付けられる。このとき、第1負極活物質層にはリチウム箔を貼り付けず、第2負極活物質層にリチウム箔を貼り付けることで、リチウム箔の貼り付け工程が簡略化されるとともに、厚さ10μm以上、更には15μm以上のリチウム箔を用いることが可能となり、製造コストを大きく削減することが可能になる。その後、正極とリチウム箔が貼り付けられた負極とを、セパレータを介して捲回または積層して、電極群が形成される。
(iv)負極にリチウムイオンをプレドープする工程
電極群は、非水電解液とともに、例えば、開口を有する有底ケースに収容される。その後、開口は封口体により塞がれ、電気化学デバイスが完成する。図1は、電気化学デバイスの一例の断面模式図であり、図2は、同電気化学デバイスの一部を展開した概略図である。すなわち、電極群は、ケース内で非水電解液と接触する。電極群に非水電解液が含浸され、リチウム箔と非水電解液とが接触すると、リチウムイオンが非水電解液に溶出し、電極群の内部を移動して、第1負極活物質層および第2負極活物質層に含まれる負極活物質にドープされる。このとき、正極集電体および負極集電体の少なくとも一方が、リチウムイオン透過性を有することで、リチウムイオンのプレドープが迅速に進行する。また、
リチウムイオンの移動の自由度が大きいため、リチウムイオンは負極の全体に均一にプレドープされ易くなる。
【0055】
電極群10は、図2に示すような捲回体であり、正極21と、負極22と、これらの間に介在するセパレータ23とを備える。捲回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。正極21は、リードタブ15Aと接続され、負極22は、リードタブ15Bと接続されている。電気化学デバイスは、電極群10と、電極群10を収容する有底ケース11と、有底ケース11の開口を塞ぐ封口体12と、封口体12から導出されるリード線14A、14Bと、非水電解液(図示せず)とを備える。リード線14A、14Bは、それぞれリードタブ15A、15Bと接続される。封口体12は、例えば、ゴム成分を含む弾性材料で形成されている。有底ケース11の開口端近傍は、内側に絞り加工され、開口端は封口体12にかしめるようにカール加工される。
【0056】
上記実施形態では、円筒形状の捲回型の電気化学デバイスについて説明したが、本発明の適用範囲は上記に限定されず、角形形状や、正極と負極がセパレータを介して積層された構成を有する電極群を備えた積層型の電気化学デバイスにも適用することができる。
[実験例]
本発明の効果を確認するために、以下の実験を行った。
《実験例1》
(1)正極の作製
約2cm角の平面形状を有し、厚さ30μm、開口率10%のアルミニウム箔を原料とするパンチングメタルを正極集電体として準備した。パンチングメタルの両面に、厚さ1.5μmの導電性カーボン層を形成した。導電性カーボン層は、カーボンブラック100質量部と結着剤30質量部との混合層である。
【0057】
一方、アニリン濃度1mol/L、硫酸濃度2mol/Lの重合液を準備した。重合液はpH0.6、温度25℃に調整した。そして、導電性カーボン層を有する正極集電体と、ステンレス鋼製の対向電極とを重合液に浸漬し、10mA/cm2の電流密度で電解重合を行ない、硫酸イオン(SO2−)がドープされた導電性高分子(ポリアニリン)の被膜を正極集電体の裏表の全面に付着させ、正極活物質層を形成した。その後、正極活物質層を蒸留水で洗浄し、乾燥させた。
(2)負極の作製
(第1負極)
約2cm角の平面形状を有し、厚さ20μmの銅箔を第1負極集電体として準備した。次に、ハードカーボン97質量部と、カルボキシセルロース(CMC)1.5質量部と、スチレンブタジエンゴム(SBR)2質量部とを混合した第1負極合剤を水に分散させ、固形分40質量%の第1スラリーを調製した。第1スラリーを第1負極集電体の一方の表面に塗布し、乾燥させた。乾燥後、圧延を行い、第1負極集電体の一方の表面に厚さ(T1)58μmの第1負極活物質層を有する第1負極を得た。
(第2負極)
第1負極集電体と同様の銅箔を第2負極集電体として準備した。次に、ハードカーボン93.5質量部と、カルボキシセルロース(CMC)1.5質量部と、スチレンブタジエンゴム(SBR)5質量部とを混合した第2負極合剤を水に分散させ、固形分40質量%の第2スラリーを調製した。第2スラリーを第2負極集電体の一方の表面に塗布し、乾燥させた。乾燥後、圧延を行い、第2負極集電体の一方の表面に厚さ(T2)60μmの第2負極活物質層を有する第2負極を得た。
【0058】
このとき、第1負極活物質層の単位面積当たりの容量Cs1と第2負極活物質層の単位面積当たりの容量Cs2とが同じになる(Cs1/Cs2=1)。
【0059】
得られた負極において、第1負極活物質層の単位質量当たりに含まれる負極活物質の質量(M1)は0.965g/gであり、第2負極活物質層の単位質量当たりに含まれる負極活物質の質量(M2)は0.935g/gであり、M1/M2比は1.032であった。よって、第1負極活物質層の単位質量当たりの容量C1は、第2負極活物質層の単位質量当たりの容量C2よりも大きく、C1/C2比はM1/M2比と同様であると考えられる。
【0060】
第1負極活物質層の単位質量当たりに含まれる結着剤の含有量X1(CMCとSBRの総量)は0.035g/gであり、第2負極活物質層の単位質量当たりに含まれる結着剤の含有量X2は0.065g/gであり、X1/X2は0.54であった。
【0061】
第1負極活物質層の単位質量当たりに含まれるSBRの含有量Z1は0.02g/gであり、第2負極活物質層の単位質量当たりに含まれるSBRの含有量Z2は0.05g/gであり、Z1/Z2は0.4であった。
(3)電極群の形成
第2負極活物質層の表面に、厚さ15μmのリチウム箔を貼り付けた。その後、正極、第1負極、第2負極にそれぞれリードタブを接続した。次に、セルロース製不織布のセパレータ(厚さ35μm)を介在させて、第1負極の第1負極活物質層と、正極の一方の表面に形成された正極活物質層とを対向させた。また、同様のセパレータを介在させて、正極の他方の面に形成された正極活物質層と、第2負極の第2負極活物質層(リチウム箔が貼り付けられた面)とを対向させた。このように、第1負極、セパレータ、正極、セパレータおよび第2負極を、この順で重ねて積層体を作製して電極群を得た。
(4)非水電解液
プロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとの体積比1:1の混合物に、ビニレンカーボネートを0.2質量%添加して、非水溶媒を調製した。得られた非水溶媒にLiPF6を2mol/Lの濃度で溶解させて、正極にドープおよび脱ドープされるアニオン
としてヘキサフルオロ燐酸イオン(PF)を有する非水電解液を調製した。
(5)電気化学デバイスの作製
電極群と非水電解液とをAlラミネートシートからなる袋状の外装体の中に収容し、封止することにより、電気化学デバイスを組み立てた。その後、25℃で24時間放置(エージング)して、リチウムイオンの負極へのプレドープを進行させることにより、電気化学デバイス(A1)を完成させた。
【0062】
なお、プレドープ完了後の非水電解液中での負極電位は、金属リチウムに対して0.2V以下となる。
《実験例2》
第1スラリーを用いて第2負極集電体の表面に厚さ58μmの第2負極活物質層を形成したこと以外、実験例1と同様に、電気化学デバイス(B1)を作製した。設計容量は実験例1と同じとした。
《実験例3》
第2スラリーを用いて第1負極集電体の表面に厚さ60μmの第2負極活物質層を形成したこと以外、実験例1と同様に、電気化学デバイス(B2)を作製した。設計容量は実験1と同じとした。
[評価]
電気化学デバイスの初期の放電容量(C0)と内部抵抗(R0)を25℃と−10℃において、放電電流25mA、電圧範囲3.8V〜3.0Vで測定した。
【0063】
上記の評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1が示すように、実験例1の25℃における内部抵抗は、実験例3から約16%低減し、−10℃での内部抵抗は実験例3から12%低減した。
【0066】
実験例2の場合、第2負極活物質層にリチウム箔を貼り付ける作業が困難であり、初期容量と内部抵抗の測定ができなかった。プレドープが十分に進行せず、初期容量が極端に減少し、内部抵抗も極端に増加したものと考えられる。
【0067】
上記実験例では、いずれの電気化学デバイスも同じ設計容量としたが、実験例1の負極は、実験例3の負極よりも薄くすることができるため、実験例3に比べてエネルギー密度を大きくすることができる。よって、電気化学デバイスの更なる高容量化も可能である。
【0068】
上記実験例のように、負極活物質層に導電助剤を含ませない場合には、負極活物質層における負極活物質(ハードカーボン)の密度を高くでき、負極容量を大きくすることができる。また、導電助剤を用いないことで、負極活物質層の表面における表面被膜(SEI)の生成を抑制できるので、SEIの生成による不可逆容量を低減することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る電気化学デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタより高容量であり、かつリチウムイオン二次電池より高出力が要求される用途に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0070】
10:電極群、11:有底ケース、12:封口体、14A,14B:リード線、15A,15B:リードタブ、21:正極、22:負極、23:セパレータ、24:巻止めテープ
図1
図2

【手続補正書】
【提出日】2018年7月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
なお、上記π共役系高分子の誘導体については、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリチオフェンビニレン、ポリピリジンなどを基本骨格とする高分子を意味する。例えば、ポリチオフェン誘導体には、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などが含まれる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
導電性高分子は、予めアニオンをドーパントとしてドープすることで、優れた導電性を発現する。ドーパントとしては、導電性高分子から比較的脱ドープしにくいアニオンが好ましく、ハロゲン原子を含まないオキソ酸アニオンであることが望ましい。ハロゲン原子を含まないオキソ酸アニオンとしては、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、硼酸イオン、スルホン酸イオンなどを挙げることができる。スルホン酸イオンとしては、ベンゼンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオンなどが挙げられる。中でも、導電性高分子中で安定しやすい点で、硫酸イオン、スルホン酸イオンなどが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
一方、アニリン濃度1mol/L、硫酸濃度2mol/Lの重合液を準備した。重合液はpH0.6、温度25℃に調整した。そして、導電性カーボン層を有する正極集電体と、ステンレス鋼製の対向電極とを重合液に浸漬し、10mA/cmの電流密度で電解重合を行ない、硫酸イオン(SO2−)がドープされた導電性高分子(ポリアニリン)の被膜を正極集電体の裏表の全面に付着させ、正極活物質層を形成した。その後、正極活物質層を蒸留水で洗浄し、乾燥させた。
(2)負極の作製
(第1負極)
約2cm角の平面形状を有し、厚さ20μmの銅箔を第1負極集電体として準備した。次に、ハードカーボン97質量部と、カルボキシメチルセルロース(CMC)1.5質量部と、スチレンブタジエンゴム(SBR)2質量部とを混合した第1負極合剤を水に分散させ、固形分40質量%の第1スラリーを調製した。第1スラリーを第1負極集電体の一方の表面に塗布し、乾燥させた。乾燥後、圧延を行い、第1負極集電体の一方の表面に厚さ(T1)58μmの第1負極活物質層を有する第1負極を得た。
(第2負極)
第1負極集電体と同様の銅箔を第2負極集電体として準備した。次に、ハードカーボン93.5質量部と、カルボキシメチルセルロース(CMC)1.5質量部と、スチレンブタジエンゴム(SBR)5質量部とを混合した第2負極合剤を水に分散させ、固形分40質量%の第2スラリーを調製した。第2スラリーを第2負極集電体の一方の表面に塗布し、乾燥させた。乾燥後、圧延を行い、第2負極集電体の一方の表面に厚さ(T2)60μmの第2負極活物質層を有する第2負極を得た。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
なお、プレドープ完了後の非水電解液中での負極電位は、金属リチウムに対して0.2V以下となる。
《実験例2》
第1スラリーを用いて第2負極集電体の表面に厚さ58μmの第2負極活物質層を形成したこと以外、実験例1と同様に、電気化学デバイス(B1)を作製した。設計容量は実験例1と同じとした。
《実験例3》
第2スラリーを用いて第1負極集電体の表面に厚さ60μmの第2負極活物質層を形成したこと以外、実験例1と同様に、電気化学デバイス(B2)を作製した。設計容量は実験1と同じとした。
[評価]
電気化学デバイスの初期の放電容量(C)と内部抵抗(R)を25℃と−10℃において、放電電流25mA、電圧範囲3.8V〜3.0Vで測定した。
【国際調査報告】