特表-17150377IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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再表2017-150377ポリイミドフィルム、ポリイミドフィルムの製造方法、及びポリイミド前駆体樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年9月8日
【発行日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】ポリイミドフィルム、ポリイミドフィルムの製造方法、及びポリイミド前駆体樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20181130BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20181130BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20181130BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20181130BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   C08J5/18CFG
   C08L79/08 A
   C08K3/00
   C08K3/26
   C08G73/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】46
【出願番号】特願2018-503105(P2018-503105)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-41542(P2016-41542)
(32)【優先日】2016年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】坂寄 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 義弘
(72)【発明者】
【氏名】脇田 敬輔
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 綾子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 滉大
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AB21
4F071AC12
4F071AC13
4F071AE17
4F071AE19
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4F071AF30
4F071AF31
4F071AF34
4F071AF35
4F071AF62
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4J002CM041
4J002DE236
4J002DE246
4J002FD016
4J002GP00
4J002GQ00
4J043PA02
4J043PC145
4J043PC146
4J043QB26
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA041
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA151
4J043UB022
4J043UB061
4J043UB131
4J043UB221
4J043UB301
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA011
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4J043VA022
4J043VA031
4J043VA032
4J043VA041
4J043VA042
4J043VA061
4J043XA16
4J043YA06
4J043ZA31
4J043ZA33
4J043ZA35
4J043ZA52
4J043ZA55
4J043ZB21
4J043ZB23
(57)【要約】
本発明は、剛性と耐屈曲性が向上し、光学的歪みが低減した樹脂フィルムを提供することを主目的とする。
芳香族環を含むポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子とを含有し、
25℃から10℃/分で単調昇温した際に250℃以上400℃以下のいずれかで、少なくとも一方向における下記式で示される寸法収縮率が0.1%以上を示すものであり、
寸法収縮率(%)=[{(25℃の寸法)−(昇温後の寸法)}/(25℃の寸法)]×100
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であり、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚み10μmにおいて、80%以上である、ポリイミドフィルム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族環を含むポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子とを含有し、
25℃から10℃/分で単調昇温した際に250℃以上400℃以下のいずれかで、少なくとも一方向における下記式で示される寸法収縮率が0.1%以上を示すものであり、
寸法収縮率(%)=[{(25℃の寸法)−(昇温後の寸法)}/(25℃の寸法)]×100
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であり、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚み10μmにおいて、80%以上である、ポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記ポリイミドが、下記一般式(1)及び下記一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有する、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【化1】
(一般式(1)において、Rはテトラカルボン酸残基である4価の基、Rは、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans-1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を表す。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【化2】
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
【化3】
(一般式(3)において、Rはシクロヘキサンテトラカルボン酸残基、シクロペンタンテトラカルボン酸残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸残基、及び4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基、Rは、ジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【請求項3】
前記ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である、請求項1又は2に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記無機粒子が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ジルコニウム、炭酸ストロンチウム、炭酸コバルト、及び炭酸マンガンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
芳香族環を含むポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子とを含有し、
線熱膨張係数が−10ppm/℃以上40ppm/℃以下であり、
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であり、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚み10μmにおいて、80%以上であり、
前記ポリイミドが、下記一般式(1)及び下記一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有するポリイミドフィルム。
【化4】
(一般式(1)において、Rはテトラカルボン酸残基である4価の基、Rは、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans-1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を表す。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【化5】
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
【化6】
(一般式(3)において、Rはシクロヘキサンテトラカルボン酸残基、シクロペンタンテトラカルボン酸残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸残基、及び4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基、Rは、ジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【請求項6】
前記ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である、請求項5に記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
前記無機粒子が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ジルコニウム、炭酸ストロンチウム、炭酸コバルト、及び炭酸マンガンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項5又は6に記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】
芳香族環を含むポリイミド前駆体と、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、有機溶剤とを含み、且つ含有水分量1000ppm以下であるポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程と、
前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する工程と、を含む、
ポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子とを含有し、25℃から10℃/分で単調昇温した際に250℃以上400℃以下のいずれかで少なくとも一方向における下記式で示される寸法収縮率が0.1%以上を示すものであり、
寸法収縮率(%)=[{(25℃の寸法)−(昇温後の寸法)}/(25℃の寸法)]×100
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であり、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚み10μmにおいて、80%以上である、ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜を延伸する工程を含む、請求項8に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項10】
芳香族環を含むポリイミド前駆体と、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、有機溶剤を含み、且つ含有水分量1000ppm以下であるポリイミド前駆体樹脂組成物。
【請求項11】
芳香族環を含むポリイミド前駆体と、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、窒素原子を含む有機溶剤を含む、ポリイミド前駆体樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(1’)及び下記一般式(3’)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有する、請求項10又は11に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
【化7】
(一般式(1’)において、Rはテトラカルボン酸残基である4価の基、Rは、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans-1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を表す。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【化8】
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
【化9】
(一般式(3’)において、Rはシクロヘキサンテトラカルボン酸残基、シクロペンタンテトラカルボン酸残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸残基、及び4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基、Rは、ジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【請求項13】
前記ポリイミド前駆体に含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である、請求項10〜12のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
【請求項14】
前記無機粒子が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ジルコニウム、炭酸ストロンチウム、炭酸コバルト、及び炭酸マンガンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項10〜13のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドフィルム、ポリイミドフィルムの製造方法、及びポリイミド前駆体樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄い板ガラスは、剛性、耐熱性等に優れている反面、曲げにくく、落とすと割れやすく、加工性に問題があり、また、プラスチック製品と比較して重いといった欠点があった。このため、近年、樹脂基材や樹脂フィルム等の樹脂製品が、加工性、軽量化の観点でガラス製品と置き換わりつつあり、ガラス代替製品となる樹脂製品の研究が行われてきている。
【0003】
例えば、液晶や有機EL等のディスプレイや、タッチパネル等のエレクトロニクスの急速な進歩に伴い、デバイスの薄型化や軽量化、更には、フレキシブル化が要求されるようになってきた。これらのデバイスには従来、薄い板ガラス上に様々な電子素子、例えば、薄型トランジスタや透明電極等が形成されているが、この薄い板ガラスを樹脂フィルムに変えることにより、パネル自体のフレキシブル化、薄型化や軽量化が図れる。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの透明樹脂基材がタッチパネルの薄い板ガラスの代替として用いられていることが記載されている。
また、特許文献2には、ポリカーボネートシートの剛性と耐衝撃性を向上することを目的として、特定の曲げ弾性率を有する透明硬質樹脂層の両面にポリカーボネート樹脂層を有する、透明導電膜基材用の透明多層合成樹脂シートが記載されている。
【0005】
一方で、特許文献3には、ポリイミドを含んでなる位相差フィルムの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−158911号公報
【特許文献2】特開2011−201093号公報
【特許文献3】特開2006−3715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に示される他、従来の樹脂フィルム等では、未だ耐熱性や剛性、並びに耐屈曲性が不十分であり、優れた剛性と耐屈曲性とを両立した樹脂フィルムがなかった。また、特許文献3に示される位相差フィルムは、そもそも本質的に大きな光学的歪みを有するフィルムであるため、光学的歪みの小さいガラスの代替として用いることはできない。また、特許文献3に記載されている位相差フィルムでは剛性も不十分であった。
以上のことから、剛性と耐屈曲性が向上し、光学的歪みが低減した樹脂フィルムが求められている。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、剛性と耐屈曲性が向上し、光学的歪みが低減した樹脂フィルムを提供することを主目的とする。
また、本発明は、前記樹脂フィルムの製造方法、及び、前記樹脂フィルムの製造に適したポリイミド前駆体樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様の樹脂フィルムとしては、芳香族環を含むポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子とを含有し、
25℃から10℃/分で単調昇温した際に250℃以上400℃以下のいずれかで、少なくとも一方向における下記式で示される寸法収縮率が0.1%以上を示すものであり、
寸法収縮率(%)=[{(25℃の寸法)−(昇温後の寸法)}/(25℃の寸法)]×100
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であり、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚み10μmにおいて、80%以上である、ポリイミドフィルムを提供する。
【0010】
また、本発明の第二の態様の樹脂フィルムとしては、芳香族環を含むポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子とを含有し、
線熱膨張係数が−10ppm/℃以上40ppm/℃以下であり、
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であり、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚み10μmにおいて、80%以上であり、
前記ポリイミドが、下記一般式(1)及び下記一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有するポリイミドフィルムを提供する。
【0011】
【化1】
(一般式(1)において、Rはテトラカルボン酸残基である4価の基、Rは、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans-1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を表す。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【0012】
【化2】
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
【0013】
【化3】
(一般式(3)において、Rはシクロヘキサンテトラカルボン酸残基、シクロペンタンテトラカルボン酸残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸残基、及び4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基、Rは、ジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【0014】
また、本発明の第一の態様のポリイミドフィルムの製造方法は、
芳香族環を含むポリイミド前駆体と、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、有機溶剤とを含み、且つ含有水分量1000ppm以下であるポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程と、
前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する工程と、を含む、
ポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子とを含有し、25℃から10℃/分で単調昇温した際に250℃以上400℃以下のいずれかで少なくとも一方向における下記式で示される寸法収縮率が0.1%以上を示すものであり、
寸法収縮率(%)=[{(25℃の寸法)−(昇温後の寸法)}/(25℃の寸法)]×100
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であり、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚み10μmにおいて、80%以上であるポリイミドフィルムの製造方法である。
【0015】
また、本発明の第一の態様のポリイミドフィルム及びその製造方法においては、前記ポリイミドが、前記一般式(1)及び下記一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有することが、光透過性と、耐熱性及び剛性との点から好ましい。
【0016】
また、本発明の第一の態様のポリイミドフィルム及びその製造方法、並びに、第二の態様のポリイミドフィルムにおいては、前記ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であることが、光透過性と、耐熱性及び剛性との点から好ましい。
【0017】
また、本発明の第一の態様のポリイミドフィルム及びその製造方法、並びに、第二の態様のポリイミドフィルムにおいては、前記無機粒子が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ジルコニウム、炭酸ストロンチウム、炭酸コバルト、及び炭酸マンガンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが、光学的歪みを低減し易い点から好ましい。
【0018】
また、本発明においては、芳香族環を含むポリイミド前駆体と、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、有機溶剤を含み、且つ含有水分量1000ppm以下であるポリイミド前駆体樹脂組成物も提供する。
更に、本発明においては、芳香族環を含むポリイミド前駆体と、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、窒素原子を含む有機溶剤を含む、ポリイミド前駆体樹脂組成物も提供する。
【0019】
また、本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物においては、前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(1’)及び下記一般式(3’)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有することが、光透過性と、耐熱性及び剛性との点から好ましい。
【0020】
【化4】
(一般式(1’)において、Rはテトラカルボン酸残基である4価の基、Rは、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans-1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を表す。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【0021】
【化5】
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
【0022】
【化6】
(一般式(3’)において、Rはシクロヘキサンテトラカルボン酸残基、シクロペンタンテトラカルボン酸残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸残基、及び4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基、Rは、ジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【0023】
また、本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物においては、前記ポリイミド前駆体に含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であることが、光透過性と、耐熱性及び剛性との点から好ましい。
【0024】
また、本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物においては、前記無機粒子が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ジルコニウム、炭酸ストロンチウム、炭酸コバルト、及び炭酸マンガンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが、光学的歪みを低減し易い点から好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、剛性と耐屈曲性が向上し、光学的歪みが低減した樹脂フィルムを提供することができる。
また、本発明は、前記樹脂フィルムの製造方法、及び、前記樹脂フィルムの製造に適したポリイミド前駆体樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
I.ポリイミドフィルム
本発明の第一の態様のポリイミドフィルムは、ポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子とを含有し、
25℃から10℃/分で単調昇温した際に250℃以上400℃以下のいずれかで、少なくとも一方向における下記式で示される寸法収縮率が0.1%以上を示すものであり、
寸法収縮率(%)=[{(25℃の寸法)−(昇温後の寸法)}/(25℃の寸法)]×100
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であり、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚み10μmにおいて、80%以上である、ポリイミドフィルムである。
【0027】
ここで、前記寸法収縮率は、ポリイミドフィルムの少なくとも一方向で示されれば良い。寸法収縮は通常、ポリイミドフィルムの面内方向で観測される。前記寸法収縮率が0.1%以上であることから、当該ポリイミドフィルムは延伸フィルムであることが示される。
当該寸法収縮率は、0.3%以上であることが好ましく、一方で、大きすぎると加熱によるしわの発生などの恐れがある点から、60%以下が好ましく、40%以下が更に好ましい。
本発明における寸法収縮率は、熱機械的分析装置(TMA)により、窒素雰囲気中で25℃から10℃/分の昇温速度で、400℃まで温度を上昇させていくことにより求めることができる。通常の正の線熱膨張係数を有するポリイミドフィルムは、温度の上昇に伴い、寸法が単調増加し、軟化温度に達した時に、急激に寸法が大きくなる。一方、イミド化後に延伸処理を行ったポリイミドフィルムは、温度上昇に伴い、その延伸処理を行った温度に対応する温度付近で、寸法が収縮する。その250℃以上400℃以下のいずれかで収縮した時のサンプル寸法と、25℃の時のサンプル寸法とを用いて前記式により、寸法収縮率を求める。
250℃以上400℃以下の範囲のいずれかの温度で、上記寸法収縮率を満たせばよい。
収縮率であるので、250℃以上400℃以下の温度範囲での各温度におけるサンプル寸法が、25℃の時のサンプル寸法より小さくなった時に正の値として得られる。一般に、250℃以上400℃以下の温度範囲に寸法収縮率の極大値を示すとそうでない場合があるが、極大値を取る場合だけではなく、単純に各温度の寸法と25℃の時の寸法の比率から計算される。
吸湿の大きいフィルムを測定したときなどは、水分の揮発による寸法収縮が100℃付近に見受けられる場合がある。本発明のポリイミド樹脂組成物は、それらと区別するため250℃以上400℃以下の範囲のいずれかで収縮挙動を示すことを特徴とする。中でも、280℃以上400℃以下の範囲のいずれかの温度で、上記寸法収縮率を満たすことが好ましい。
【0028】
また、前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は0.020以下である。このような複屈折率を有することから、本態様のポリイミドフィルムは光学的歪みが低減したものである。前記波長590nmにおける複屈折率は、より小さい方が好ましく、0.015以下であることが好ましく、更に0.010以下であることが好ましく、より更に0.008未満であることが好ましい。
なお、本発明のポリイミドフィルムの前記波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、以下のように求めることができる。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA−WR」)を用いて、23℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定する。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出する。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定する。
ポリイミドフィルムの厚み方向の複屈折率は、式:Rth/dに代入して求めることができる。前記dは、ポリイミドフィルムの膜厚(nm)を表す。
なお、厚み方向位相差値は、フィルムの面内方向における遅相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、及びフィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたときに、Rth[nm]={(nx+ny)/2−nz}×dと表すことができる。
【0029】
また、前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、厚み10μmにおいて、80%以上である。このように透過率が高いことから、透明性が良好になり、ガラス代替材料となり得る。前記JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、厚み10μmにおいて、更に83%以上であることが好ましく、より更に88%以上であることが好ましい。
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。厚みが10μmでない場合は、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができ、それを利用することができる。
【0030】
また、本発明の第二の態様のポリイミドフィルムとしては、ポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子とを含有し、
線熱膨張係数が−10ppm/℃以上40ppm/℃以下であり、
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であり、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚み10μmにおいて、80%以上であり、
前記ポリイミドが、下記一般式(1)及び下記一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有するポリイミドフィルムである。
【0031】
【化7】
(一般式(1)において、Rはテトラカルボン酸残基である4価の基、Rは、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans-1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を表す。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【0032】
【化8】
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
【0033】
【化9】
(一般式(3)において、Rはシクロヘキサンテトラカルボン酸残基、シクロペンタンテトラカルボン酸残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸残基、及び4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基、Rは、ジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【0034】
前記線熱膨張係数が−10ppm/℃以上40ppm/℃以下であることから、線熱膨張係数は小さく、すなわち剛直な化学構造が配向されていることが示される。前記線熱膨張係数としては、20ppm/℃以下であることが更に好ましく、10ppm/℃以下であることがより更に好ましい。
ここで本発明における線熱膨張係数は、熱機械分析装置(例えばTMA−60(島津製作所株式会社製)によって、昇温速度を10℃/分、評価サンプルの断面積当たりの荷重が同じになるように引張り荷重を9g/0.15mm2として、100℃〜150℃の範囲の線熱膨張係数を算出して得られる値である。例えば、サンプル幅を5mm、チャック間距離を15mmとして測定することができる。
また、第二の態様のポリイミドフィルムにおける前記複屈折率、前記全光線透過率は、第一の態様における前記複屈折率、前記全光線透過率と同様である。
【0035】
本発明の第一の態様によれば、芳香族環を含むポリイミドと特定の分極軸を有する無機粒子とを含有し、前記特定の寸法収縮率、前記特定の複屈折率、及び前記特定の全光線透過率とを有するポリイミドフィルムとしたことにより、剛性と耐屈曲性が向上し、光学的歪みが低減した樹脂フィルムを提供することができる。
また、本発明の第二の態様によれば、芳香族環を含み特定の構造を有するポリイミドと特定の分極軸を有する無機粒子とを含有し、前記特定の線熱膨張係数、前記特定の複屈折率、及び前記特定の全光線透過率とを有するポリイミドフィルムとしたことにより、剛性と耐屈曲性が向上し、光学的歪みが低減した樹脂フィルムを提供することができる。
この理由については、前述の他、以下のように推定される。
【0036】
本発明者らは、樹脂の中でもポリイミドに着目した。ポリイミドは、その化学構造に由来し耐熱性が優れることが知られている。また、芳香族環を含むポリイミドは耐熱性に優れるだけでなく、その剛直な骨格から金属やセラミックスやガラス並みの小さい線熱膨張係数を示すものもある。また、ポリイミドフィルムは、内部の分子鎖の配置が一定の秩序構造を形成することが知られており、そのおかげで耐屈曲性に優れ、フレキシブルプリント基板などへ適用が進められてきた。しかしながら、本発明者らが研究を進める中で、耐屈曲性や剛性が大きく線熱膨張が小さいポリイミドは剛直な化学構造を有しており、その結果として、剛性が高いポリイミドフィルムは大きな光学的歪み(複屈折)を生じることが確認された。一方で、複屈折が小さなポリイミドフィルムは剛性が小さくなり、ポリイミドフィルムの剛性と、複屈折は、トレードオフの関係にあることを見出した。剛直な骨格で配向性が高いポリイミドのフィルムは、剛性が高くなるが、剛直な化学構造が配向することから複屈折が大きくなり、一方、直線性の低い骨格を有するポリイミドのフィルムは、直線性の低い化学構造がランダムに配置することから、分極成分が等方的に存在するため、複屈折は小さくなるが、剛性が低くなるためと推定される。
それに対して、本発明によれば、延伸フィルムとすることにより芳香族環を含むポリイミドの分子鎖を高密度に配向させて剛性を向上(第一の態様)、または、芳香族環を含み、特定の剛直な化学構造を有することにより低い線熱膨張係数を有し、高い配向性を有するポリイミドを選択することにより剛性を向上(第二の態様)させ、更に、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子を組み合わせることにより、当該無機粒子は、長径が、ポリイミドの高分子鎖が延伸乃至配向された方向に配向する。これにより、前記無機粒子の長径方向と直交する方向のより大きい屈折率が、ポリイミドの高分子鎖の配向による位相差を打ち消すことができる。
その結果、本発明によれば、剛性と耐屈曲性が向上し、光学的歪みが低減した樹脂フィルムを提供することができる。このようにポリイミドの分子鎖を高密度に配向させたポリイミドフィルムは、耐衝撃性にも優れたものになる。このような本発明のポリイミドフィルムは、樹脂フィルムの中でも実現が困難な、折り癖や折り跡が残らない程優れた耐屈曲性と、高い剛性を両立した、光学的歪みが低減した樹脂フィルムとすることもできる。
以上のことから、本発明のポリイミドフィルムによれば、耐衝撃性乃至耐屈曲性を有し、且つ耐熱性及び剛性が向上した、透明で光学的歪みが低減した樹脂フィルムとすることができる。
【0037】
以下、本発明に係るポリイミドフィルムについて詳細に説明する。
本発明に係るポリイミドフィルムは、芳香族環を含むポリイミドと、前記特定の無機粒子とを含有し、前記特定の特性を有するものである。本発明の効果が損なわれない限り、更にその他の成分を含有していても良いし、他の構成を有していても良い。
【0038】
1.ポリイミド
ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものである。テトラカルボン酸成分とジアミン成分の重合によってポリアミド酸を得てイミド化することが好ましい。イミド化は、熱イミド化で行っても、化学イミド化で行ってもよい。また、熱イミド化と化学イミド化とを併用した方法で製造することもできる。
本発明で用いられるポリイミドは、芳香族環を含むポリイミドであり、テトラカルボン酸成分及びジアミン成分の少なくとも一方に芳香族環を含むものである。
【0039】
テトラカルボン酸成分の具体例としては、テトラカルボン酸二無水物が好適に用いられ、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0040】
ジアミン成分の具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、
【0041】
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、
【0042】
trans−シクロヘキサンジアミン、trans-1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、また、上記ジアミンの芳香族環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0043】
光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から、本発明に用いられるポリイミドとしては、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士の電子共役を切断する連結基からなる群から選択される少なくとも1つを含むポリイミドであることが好ましい。ポリイミドに芳香族環を含むと配向性が高まり、剛性が向上するが、芳香族環の吸収波長によって透過率が低下する傾向がある。
ポリイミドに(i)フッ素原子を含むとポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(ii)脂肪族環を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。
ポリイミドに(iii)芳香族環同士の電子共役を切断する連結基を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点からの点から光透過性が向上する。このような芳香族環同士の電子共役を切断する連結基としては、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、アミド結合、スルホニル結合、及び、スルフィニル結合、並びに、フッ素で置換されていても良いアルキレン基等の2価の連結基が挙げられる。
【0044】
中でも、芳香族環を含み、且つフッ素原子を含むポリイミドであることが、光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から好ましく用いられる。
フッ素原子の含有割合は、ポリイミド表面をX線光電子分光法により測定したフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上であることが好ましく、更に0.05以上であることが好ましい。一方でフッ素原子の含有割合が高すぎるとポリイミド本来の耐熱性などが低下する恐れがあることから、前記フッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が1以下であることが好ましく、更に0.8以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
【0045】
また、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドであることが、光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から好ましく用いられる。ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、更に、80%以上であることが好ましく、より更に85%以上であることが好ましい。
ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、大気中における加熱工程を経ても、例えば200℃以上で延伸を行っても、光学特性、特に全光線透過率や黄色度YI値の変化が少ない点から好ましい。ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、酸素との反応性が低いため、ポリイミドの化学構造が変化し難いことが推定される。ポリイミドフィルムはその高い耐熱性を利用し、加熱を伴う加工工程が必要なデバイスなどに用いられる場合が多いが、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、これら後工程を透明性維持のために不活性雰囲気下で実施する必要が生じないので、設備コストや雰囲気制御にかかる費用を抑制できるというメリットがある。
ここで、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミドの分解物を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。例えば、サンプルを、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解し、得られた分解物を、高速液体クロマトグラフィーで分離し、当該分離した各ピークの定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計及びNMR等を用いて行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することでポリイミドに含まれる全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合を求めることができる。
【0046】
また、光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から、本発明に用いられるポリイミドとしては、中でも、下記一般式(1)及び下記一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有することが好ましい。
【0047】
【化10】
(一般式(1)において、Rはテトラカルボン酸残基である4価の基、Rは、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans-1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を表す。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【0048】
【化11】
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
【0049】
【化12】
(一般式(3)において、Rはシクロヘキサンテトラカルボン酸残基、シクロペンタンテトラカルボン酸残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸残基、及び4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基、Rは、ジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【0050】
ここで、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシル基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表す。
また、ジアミン残基とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
【0051】
一般式(1)における、Rはテトラカルボン酸残基であり、前記例示されたようなテトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基とすることができる。
一般式(1)における、Rとしては、中でも、光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸残基、ピロメリット酸残基、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基、4,4'-オキシジフタル酸残基、シクロヘキサンテトラカルボン酸残基、及びシクロペンタンテトラカルボン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、更に、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、4,4’-オキシジフタル酸残基、及び3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。Rにおいて、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
また、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸残基、及びピロメリット酸残基からなる群から選択される少なくとも1種のような剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)と、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基、4,4'-オキシジフタル酸残基、シクロヘキサンテトラカルボン酸残基、及びシクロペンタンテトラカルボン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種のような透明性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)とを混合して用いることも好ましい。この場合、前記剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)と、透明性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)との含有比率は、透明性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)1モルに対して、前記剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)が0.05モル以上9モル以下であることが好ましく、更に0.1モル以上5モル以下であることが好ましく、より更に0.3モル以上4モル以下であることが好ましい。
【0052】
一般式(1)における、Rとしては、中でも、光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、及び前記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましく、更に、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、及び、R及びRがパーフルオロアルキル基である前記一般式(2)で表される2価の基においてからなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましい。
【0053】
一般式(3)における、Rはジアミン残基であり、前記例示されたようなジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。
一般式(3)における、Rとしては、中でも、光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、1,4−ビス[4−アミノ−2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ベンゼン残基、2,2−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、4,4’−ジアミノ−2−(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、4,4’−ジアミノベンズアニリド残基、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド残基、及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を含むことが好ましく、更に、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、及び4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を含むことが好ましい。Rにおいて、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
また、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’−ジアミノベンズアニリド残基、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド残基、パラフェニレンジアミン残基、メタフェニレンジアミン残基、及び4,4’−ジアミノジフェニルメタン残基からなる群から選択される少なくとも1種のような剛直性を向上するのに適したジアミン残基群(グループC)と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、1,4−ビス[4−アミノ−2−(トリフルオロメチル)フェノキシ]ベンゼン残基、2,2−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、4,4’−ジアミノ−2−(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、及び9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン残基からなる群から選択される少なくとも1種のような透明性を向上するのに適したジアミン残基群(グループD)とを混合して用いることも好ましい。この場合、前記剛直性を向上するのに適したジアミン残基群(グループC)と、透明性を向上するのに適したジアミン残基群(グループD)との含有比率は、透明性を向上するのに適したジアミン残基群(グループD)1モルに対して、前記剛直性を向上するのに適したジアミン残基群(グループC)が0.05モル以上9モル以下であることが好ましく、更に0.1モル以上5モル以下であることが好ましく、より更に0.3モル以上4モル以下であることが好ましい。
【0054】
一般式(3)における、Rとしては、中でも、光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から、4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基、及びオキシジフタル酸残基を含むことが好ましい。Rにおいて、これらの好適な残基を、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
【0055】
前記一般式(1)及び前記一般式(3)で表される構造において、n及びn’はそれぞれ独立に、繰り返し単位数を表し、1以上である。
ポリイミドにおける繰り返し単位数nは、後述する好ましいガラス転移温度を示すように、構造に応じて適宜選択されれば良く、特に限定されない。
平均繰り返し単位数は、通常10〜2000であり、更に15〜1000であることが好ましい。
【0056】
また、本発明に用いられるポリイミドは、本発明の効果が損なわれない限り、その一部にポリアミド構造を含んでいても良い。含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
【0057】
本発明に用いられるポリイミドは、耐熱性の点から、ガラス転移温度が250℃以上であることが好ましく、更に、270℃以上であることが好ましい。一方、延伸の容易さやベーク温度低減の点から、ガラス転移温度が400℃以下であることが好ましく、更に、380℃以下であることが好ましい。
本発明に用いられるポリイミドのガラス転移温度は、後述のポリイミドフィルムのガラス転移温度と同様にして測定することができる。
【0058】
2.無機粒子
本発明に用いられる無機粒子は、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子である。本発明に用いられる無機粒子は、長径と短径を有する形状異方性を有する無機粒子であり、長径とは無機粒子の最も長い径を意味し、短径とは長径に垂直な軸のうち最も短い径を意味する。長径の方向をa軸、短径の方向をb軸、長径と短径の両方に垂直な径の方向をc軸とした場合に、長径方向と直交する方向の平均屈折率は、b軸方向とc軸方向の屈折率の平均値を表す。
【0059】
無機粒子は、長径と短径とのアスペクト比(長径/短径)が、1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることが更に好ましく、3.0以上であることがより好ましい。一方、無機粒子の前記アスペクト比は、通常1000以下であり、100以下であることが好ましい。また、長径と短径の両方に垂直な径と、短径との比(長径と短径の両方に垂直な径/短径)は、1.0以上1.5以下であることが好ましく、1.0以上1.3以下であることが更に好ましい。
長径と短径とのアスペクト比(長径/短径)が上記範囲であると、ポリイミドフィルムにおけるポリイミド高分子鎖の配向方向に無機粒子が配置しやすくなり、ポリイミドフィルムの光学歪みを低減し易くなる。
【0060】
無機粒子の平均長径は、光透過性を向上する点から、500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることが更に好ましく、350nm以下であることがより更に好ましい。ここで、平均長径は、電子顕微鏡写真により測定することができる。例えば、透過型電子顕微鏡観察により測定した粒子100個について長径を測定し、それらの平均値を平均長径とする。
【0061】
本発明で用いられる無機粒子において、長径方向と直交する方向の平均屈折率と、長径方向の屈折率との差は、0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることが更に好ましく、0.10以上であることがより更に好ましい。前記屈折率差がこのような範囲にあると、光透過性が良好な状態で、ポリイミドフィルムの膜厚方向の屈折率と膜面平行方向の屈折率との差を容易に制御することができる。
【0062】
長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さいという複屈折性を有する無機粒子としては、粒子を形成した場合に長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さくなる無機化合物を主成分とする粒子であれば良い。このような無機粒子としては、粒子を形成した場合に粒子の長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さくなる無機化合物を適宜選択して用いればよい。
このような無機化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ジルコニウム、炭酸ストロンチウム、炭酸コバルト、炭酸マンガン等の炭酸塩、等が挙げられる。
中でも、上記複屈折性が大きく、少量添加しただけでポリイミドフィルムの光学歪みを低減でき、光透過性を向上しやすい点から、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ジルコニウム、炭酸ストロンチウム、炭酸コバルト、及び炭酸マンガンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特に炭酸ストロンチウムが好ましい。
【0063】
無機粒子は、分散性やポリイミドフィルムとの密着性を向上させるために、カップリング剤などの処理剤で表面処理してもよい。
表面処理剤としては、従来公知の表面処理剤を適宜選択して用いることができ、シラン系表面処理剤やカップリング剤が挙げられる。これらの表面処理剤は、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0064】
ポリイミドフィルム中の前記無機粒子の含有量は、ポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であるように適宜調整すればよく、特に限定されない。
前記無機粒子は、前記複屈折率が0.020以下であるようにするため、ポリイミドフィルム全量に対して、通常0.01質量%以上で含有され、更に0.05質量%以上で含有されることが好ましい。
一方、前記無機粒子の含有量が多すぎると、光透過性が低下したり、別の光学的歪みが生じる恐れがある点から、前記無機粒子は、ポリイミドフィルム全量に対して、50質量%以下で含有されることが好ましく、より更に30質量%以下で含有されることが好ましい。
【0065】
ポリイミドフィルムには、本発明の効果が損なわれない限り、その他の成分が含まれていても良い。その他の成分としては、例えば、巻き取りを円滑にするためのシリカフィラーや、製膜性や脱泡性を向上させる界面活性剤等が挙げられる。
【0066】
3.ポリイミドフィルムの特性
第一の態様のポリイミドフィルムにおける寸法収縮率、第一及び第二の態様のポリイミドフィルムにおける複屈折率及び全光線透過率、並びに、第二の態様のポリイミドフィルムにおける線熱膨張係数については、前述したのでここでの記載を省略する。
第一の態様のポリイミドフィルムにおいても、第二の態様のポリイミドフィルムにおける線熱膨張係数と同様に、線熱膨張係数が−10ppm/℃以上40ppm/℃以下であることが好ましく、20ppm/℃以下であることが更に好ましく、10ppm/℃以下であることがより更に好ましい。
本発明におけるポリイミドフィルムの特性は、膜厚が200μm以下で達成されることが好ましく、更に100μm以下で達成されることが好ましい。
【0067】
第一及び第二の態様のポリイミドフィルムにおいて、ガラス転移温度は、耐熱性の点から、250℃以上であることが好ましく、更に、270℃以上であることが好ましい。一方、延伸の容易さやベーク温度低減の点から、ガラス転移温度が400℃以下であることが好ましく、更に、380℃以下であることが好ましい。
なお、前記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定によって、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))のピーク温度から求められるものである。動的粘弾性測定としては、例えば、動的粘弾性測定装置 RSA III(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))によって、測定範囲を25℃〜400℃として、周波数1Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。また、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして測定することができる。
【0068】
第一及び第二の態様のポリイミドフィルムにおいて、剛性の点から、鉛筆硬度は、2B以上であることが好ましく、B以上であることがより好ましく、HB以上であることがより更に好ましい。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(9.8N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
【0069】
第一及び第二の態様のポリイミドフィルムは、耐屈曲性の点から、JIS K5600−5−1に記載の耐屈曲性試験(円筒形マンドレル法)により、割れ及び折れを起こし始めるマンドレルの直径が5mm以下であることが好ましく、更に前記マンドレルの直径が2mm以下であることが好ましい。
耐屈曲性試験は、JIS K5600−5−1 タイプ1に準拠して行うことができ、塗膜屈曲試験器 No.514((株)安田精機製作所製)を用いることができる。測定サンプルとしては、例えば、寸法 100mm×50mmの長方形のサンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、用いることができる。
【0070】
第一及び第二の態様のポリイミドフィルムのヘイズ値は、光透過性の点から、10以下であることが好ましく、8以下であることが更に好ましく、5以下であることがより更に好ましい。当該ヘイズ値は、ポリイミドフィルムの厚みが10μm以上80μm以下で達成できることが好ましい。
前記ヘイズ値は、JIS K−7105に準拠した方法で測定することができ、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定することができる。
【0071】
第一及び第二の態様のポリイミドフィルムの黄色度YI値は、黄色味の着色の抑制、及び光透過性の点から、20以下であることが好ましく、15以下であることが更に好ましく、10以下であることがより更に好ましい。
前記YI値は、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光(株) V−7100)を用い、視野2度、光源としてJIS Z8701−1999に準拠したC光源を用いた測定により、JIS K7105−1981に準拠した方法で求めることができる。
【0072】
また好ましい一形態としては、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上1以下であることが好ましく、更に0.05以上0.8以下であることが好ましい。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)と窒素原子数(N)の比率(F/N)が、0.1以上20以下であることが好ましく、更に0.5以上15以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
【0073】
4.ポリイミドフィルムの構成
ポリイミドフィルムの厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、0.5μm以上であることが好ましく、更に1μm以上であることが好ましい。一方、200μm以下であることが好ましく、更に150μm以下であることが好ましい。
厚みが薄いと強度が低下し破断しやすくなり、厚みが厚いと屈曲時の内径と外径の差が大きくなり、フィルムへの負荷が大きくなることから耐屈曲性が低下する恐れがある。
【0074】
また、ポリイミドフィルムには、例えば、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理、火炎処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0075】
5.ポリイミドフィルムの用途
本発明のポリイミドフィルムの用途は特に限定されるものではなく、従来ガラス基材等ガラス製品が用いられていた剛性が要求される基材や部材として用いることができる。
例えば、本発明のポリイミドフィルムは、剛性、及び、耐屈曲性乃至耐衝撃性が優れたものであるため、曲面に対応できるディスプレイとして、例えば、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等に好適に用いることができる。また、本発明のポリイミドフィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
【0076】
II.ポリイミドフィルムの製造方法
第一の態様のポリイミドフィルムの製造方法は、芳香族環を含むポリイミド前駆体と、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、有機溶剤とを含み、且つ含有水分量1000ppm以下であるポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程という)と、
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程(以下、イミド化工程という)と、
前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する工程(以下、延伸工程という)と、を含む、
ポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子とを含有し、25℃から10℃/分で単調昇温した際に250℃以上400℃以下のいずれかで少なくとも一方向における下記式で示される寸法収縮率が0.1%以上を示すものであり、
寸法収縮率(%)=[{(25℃の寸法)−(昇温後の寸法)}/(25℃の寸法)]×100
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であり、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚み10μmにおいて、80%以上である、ポリイミドフィルムの製造方法である。
【0077】
第一の態様のポリイミドフィルムの製造方法においては、ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程を、芳香族環を含むポリイミド前駆体と、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、窒素原子を含む有機溶剤を含む、ポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程とする製造方法も、好ましい。
【0078】
ポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子とを含有し、前記特定の寸法収縮率、前記特定の複屈折率、及び前記特定の全光線透過率を示すポリイミドフィルムについては、前述したのでここでは省略する。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0079】
1.ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程
本発明のポリイミドフィルムの製造に好適に用いられる第一のポリイミド前駆体樹脂組成物は、芳香族環を含むポリイミド前駆体と、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、有機溶剤とを含み、且つ含有水分量1000ppm以下であるポリイミド前駆体樹脂組成物である。
溶剤に溶解し難いポリイミドを用いる場合、無機粒子の分散ができない若しくは不十分になる恐れがある。それに対して、ポリイミド前駆体は溶剤溶解性が良好であることから、有機溶剤中でポリイミド前駆体を溶解させつつ、無機粒子を良好に分散させると、均一で剛性と耐屈曲性が向上し、光学的歪みが低減したポリイミドフィルムを得ることが容易になる。
ポリイミド前駆体樹脂組成物中に水分を多く含むと、ポリイミド前駆体が分解しやすく、また、前記無機粒子が溶解して、屈折率を調整する成分として機能しなくなる恐れがある。それに対して、本発明によれば、含有水分量1000ppm以下であるポリイミド前駆体樹脂組成物を用いることにより、前記無機粒子の溶解を抑制でき、ポリイミド前駆体樹脂組成物の保存安定性が良好になり、生産性を向上することができる。
なお、ポリイミド前駆体樹脂組成物の含有水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば、三菱化学株式会社製、微量水分測定装置CA−200型)を用いて求めることができる。
【0080】
また、本発明のポリイミドフィルムの製造に好適に用いられる第二のポリイミド前駆体樹脂組成物は、芳香族環を含むポリイミド前駆体と、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、窒素原子を含む有機溶剤を含む、ポリイミド前駆体樹脂組成物である。
ポリイミド前駆体がポリアミド酸である場合、ポリアミド酸が酸性であることから、無機粒子が溶解し易く、粒子形状が変化するという恐れがある。それに対して、本発明によれば、窒素原子を含む有機溶剤を含むことにより、当該溶剤がポリアミド酸を中和し、前記無機粒子の溶解を抑制できるため、ポリイミド前駆体樹脂組成物の保存安定性が良好になり、生産性を向上することができる。
中でも、窒素原子を含む有機溶剤を含み、含有水分量1000ppm以下であるポリイミド前駆体樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0081】
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物に用いられるポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の重合によって得られるポリアミド酸であることが好ましい。
ここで、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とは、前記ポリイミドにおいて説明したのと同様のものが挙げられるので、ここでの説明を省略する。
ポリイミドフィルムの光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から、本発明に用いられるポリイミド前駆体としては、前記ポリイミドで説明したのと同様に、芳香族環を含み、且つ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士の電子共役を切断する連結基からなる群から選択される少なくとも1つを含むポリイミド前駆体であることが好ましい。
【0082】
中でも、芳香族環を含み、且つフッ素原子を含むポリイミド前駆体であることが、光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から好ましく用いられる。
フッ素原子の含有割合は、ポリイミド前駆体の塗膜を作製し、ポリイミド前駆体塗膜表面をX線光電子分光法により測定したフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上であることが好ましく、更に0.05以上であることが好ましい。一方でフッ素原子の含有割合が高すぎると耐熱性などが低下する恐れがあることから、前記フッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が1以下であることが好ましく、更に0.8以下であることが好ましい。
ここで、ポリイミド前駆体塗膜は、例えば、ポリイミド前駆体溶液をガラス上に塗布し、120℃の循環オーブンで溶剤を乾燥して厚み3.5μmで作製する。X線光電子分光法(XPS)の測定は、前記ポリイミドにおけるフッ素の含有割合と同様に行うことができる。
【0083】
また、ポリイミド前駆体に含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミド前駆体であることが、光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から好ましく用いられる。ポリイミド前駆体に含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、更に、80%以上であることが好ましく、より更に85%以上であることが好ましい。
ここで、ポリイミド前駆体に含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミド前駆体の分解物を、前記ポリイミドの分解物と同様にして、高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。
【0084】
また、光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から、ポリイミド前駆体は、下記一般式(1’)及び下記一般式(3’)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有することが好ましい。
【0085】
【化13】
(一般式(1’)において、Rはテトラカルボン酸残基である4価の基、Rは、trans−シクロヘキサンジアミン残基、trans-1,4−ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン残基、及び下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を表す。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【0086】
【化14】
(一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。)
【0087】
【化15】
(一般式(3’)において、Rはシクロヘキサンテトラカルボン酸残基、シクロペンタンテトラカルボン酸残基、ジシクロヘキサン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸残基、及び4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基、Rは、ジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。)
【0088】
前記一般式(1’)及び下記一般式(3’)で表される構造において、R〜Rは、それぞれ、前述したポリイミドにおいて説明したのと同様のものを好適に用いることができる。
【0089】
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、フィルムとした際の強度の点から、2000以上であることが好ましく、更に4000以上であることが好ましい。一方、数平均分子量が大きすぎると、高粘度となり作業性が低下の恐れがある点から、1000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、NMR(例えば、BRUKER製、AVANCEIII)により求めることができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液をガラス板に塗布して100℃で5分乾燥後、固形分10mgをジメチルスルホキシド−d6溶媒7.5mlに溶解し、NMR測定を行い、芳香族環に結合している水素原子のピーク強度比から数平均分子量を算出することができる。
【0090】
ポリイミド前駆体溶液は、上述のテトラカルボン酸二無水物と、上述のジアミンとを、溶剤中で反応させて得られるが、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の合成に用いる溶剤としては、上述のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを溶解可能であれば特に制限はなく、例えば非プロトン性極性溶剤または水溶性アルコール系溶剤等を用い得る。本発明においては、中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等を用いることが好ましい。中でも、ポリアミド酸溶液をそのままポリイミド前駆体樹脂組成物の調製に用いる場合に、組み合わせる前記無機粒子の溶解を抑制する点から、窒素原子を含む有機溶剤を用いることが好ましく、中でも、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンもしくはこれらの組み合わせを用いることが好ましい。なお、有機溶剤とは、炭素原子を含む溶剤である。
【0091】
溶剤中のジアミンのモル数をX、テトラカルボン酸二無水物のモル数をYとしたとき、Y/Xを0.9以上1.1以下とすることが好ましく、0.95以上1.05以下とすることがより好ましく、0.97以上1.03以下とすることがさらに好ましく、0.99以上1.01以下とすることが特に好ましい。このような範囲とすることにより得られるポリアミド酸の分子量(重合度)を適度に調整することができる。
重合反応の手順は、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
また、合成反応により得られたポリイミド前駆体溶液をそのまま用い、そこに必要に応じて他の成分を混合しても良いし、ポリイミド前駆体溶液の溶剤を乾燥させ、別の溶剤に溶解して用いても良い。
【0092】
本発明のポリイミド前駆体溶液の15重量%濃度の25℃での粘度は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、500cps以上100000cps以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で測定することができる。
【0093】
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物に用いられる前記無機粒子は、前述のポリイミドフィルムにおいて説明したものと同様のものを用いることができるので、ここでの説明を省略する。
【0094】
また、本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物に用いられる有機溶剤は、前記ポリイミド前駆体が溶解可能であり、前記無機粒子が分散可能であれば特に制限はない。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の窒素原子を含む有機溶剤;γ−ブチロラクトン等を用いることができるが、中でも、前述した理由により窒素原子を含む有機溶剤を用いることが好ましい。
【0095】
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物中の前記ポリイミド前駆体は、均一な塗膜及びハンドリング可能な強度を有するポリイミドフィルムを形成する点から、樹脂組成物の固形分中に50質量%以上であることが好ましく、更に60質量%以上であることが好ましく、上限は含有成分により適宜調整されればよく限定されるものではないが、前記無機粒子を含有する点から、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることが好ましい。
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物中の前記無機粒子は、求める光学特性に応じて適宜設定するが、光学特性を制御する点から、樹脂組成物の固形分中に0.01質量%以上であることが好ましく、更に0.05質量%以上であることが好ましく、また50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることが好ましい。
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物中の有機溶剤は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、樹脂組成物中に40質量%以上であることが好ましく、更に50質量%以上であることが好ましく、また99質量%以下であることが好ましい。
【0096】
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物を調整する方法としては、1)ポリイミド前駆体溶液に、前記無機粒子を分散して均一化する方法、2)ポリイミド前駆体溶液と前記無機粒子を分散させた有機溶剤とを混合して均一化する方法、3)前記無機粒子を分散させた有機溶剤に、ポリイミド前駆体を溶解させて均一化する方法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前述のように含有水分量1000ppm以下とするには、無機粒子を事前に乾燥させてから用いたり、使用する有機溶剤を脱水したり、水分量が管理されたものを用いた上で、湿度5%以下の環境下で取り扱うことが好ましい。
【0097】
前記無機粒子を有機溶剤中に分散させる方法としては、撹拌、超音波照射等の公知の方法を用いることができる。中でも、水分混入防止の点から、無機ビーズなどの媒体を使わない分散方法が好ましく、超音波照射や振動などによる分散の方法が好適に用いられる。
【0098】
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物の固形分15重量%濃度の25℃での粘度は、均一な塗膜及びポリイミドフィルムを形成する点から、500cps以上100000cps以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体樹脂組成物の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定することができる。
【0099】
2.ポリイミド前駆体樹脂塗膜形成工程
ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する。
支持体としては、表面が平滑で耐熱性および耐溶剤性のある材料であれば特に制限はない。例えばガラス板などの無機材料、表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
【0100】
塗布手段は目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えばダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータ等の公知のものを用いることができる。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
【0101】
ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布後、塗膜がタックフリーとなるまで、150℃以下の温度、好ましくは30℃以上120℃以下で前記塗膜中の溶剤を乾燥する。溶剤の乾燥温度を150℃以下とすることにより、ポリアミド酸のイミド化を抑制することができる。
【0102】
乾燥時間は、ポリイミド前駆体樹脂塗膜の膜厚や、溶剤の種類、乾燥温度等に応じて適宜調整されれば良いが、通常1分〜60分、好ましくは2分〜30分とすることが好ましい。上限値を超える場合には、ポリイミドフィルムの作製効率の面から好ましくない。一方、下限値を下回る場合には、急激な溶剤の乾燥によって、得られるポリイミドフィルムの外観等に影響を与える恐れがある。
【0103】
溶剤の乾燥方法は、上記温度で溶剤の乾燥が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、乾燥炉、ホットプレート、赤外線加熱等を用いることが可能である。
光学特性の高度な管理が必要な場合、溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
【0104】
3.イミド化工程
当該製造方法においては、加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する。
イミド化工程は、後述する延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、後述する延伸工程後の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜中のポリイミド前駆体及び延伸工程後の膜中に存在するポリイミド前駆体の両方に対して行っても良い。
【0105】
イミド化の温度は、ポリイミド前駆体の構造に合わせて適宜選択されれば良い。
通常、昇温開始温度を30℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、昇温終了温度は250℃以上とすることが好ましい。また昇温終了温度は400℃以下とすることが好ましく、360℃以下とすることがより好ましい。
【0106】
昇温速度は、得られるポリイミドフィルムの膜厚によって適宜選択することが好ましく、ポリイミドフィルムの膜厚が厚い場合には、昇温速度を遅くすることが好ましい。
ポリイミドフィルムの製造効率の点から、5℃/分以上とすることが好ましく、10℃/分以上とすることが更に好ましい。一方、昇温速度の上限は、通常50℃/分とされ、好ましくは40℃/分以下、さらに好ましくは30℃/分以下である。上記昇温速度とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化をコントロールでき、光透過性が向上する点から好ましい。
【0107】
昇温は、連続的でも段階的でもよいが、連続的とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化のコントロールの面から好ましい。また、上述の全温度範囲において、昇温速度を一定としてもよく、また途中で変化させてもよい。
【0108】
イミド化の昇温時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
ただし、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合は、光学特性に対する酸素の影響が少なく、不活性ガス雰囲気を用いなくても光透過性の高いポリイミドが得られる。
【0109】
イミド化のための加熱方法は、上記温度で昇温が可能であれば特に制限はなく、例えばオーブンや、加熱炉、赤外線加熱、電磁誘導加熱等を用いることが可能である。
【0110】
中でも、延伸工程前に、ポリイミド前駆体のイミド化率を50%以上とすることがより好ましい。延伸工程前にイミド化率を50%以上とすることにより、当該工程後に延伸を行い、その後さらに高い温度で一定時間加熱を行い、イミド化を行った場合であっても、フィルムの外観不良や白化が抑制される。中でもポリイミドフィルムの剛性が向上する点から、延伸工程前に、当該イミド化工程において、イミド化率を80%以上とすることが好ましく、90%以上、さらには100%まで反応を進行させることが好ましい。イミド化後に延伸することにより、剛直な高分子鎖が配向しやすいことから剛性が向上すると推定される。
なお、イミド化率の測定は、赤外測定(IR)によるスペクトルの分析等により行うことができる
【0111】
最終的なポリイミドフィルムを得るには、イミド化を90%以上、さらには95%以上、さらには100%まで反応を進行させることが好ましい。
イミド化を90%以上、さらには100%まで反応を進行させるには、昇温終了温度で一定時間保持することが好ましく、当該保持時間は、通常1分〜180分、更に、5分〜150分とすることが好ましい。
【0112】
4.延伸工程
前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する工程である。
中でも、イミド化後塗膜を延伸する工程を含むことが、ポリイミドフィルムの剛性が向上する点から好ましい。
【0113】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法では、延伸を実施する前の初期の寸法を100%とした時に101%以上10000%以下延伸する工程を、80℃以上で加熱しながら行うことが好ましい。
延伸時の加熱温度は、ポリイミド乃至ポリイミド前駆体のガラス転移温度±50℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移温度±40℃の範囲内であることが好ましい。延伸温度が低すぎるとフィルムが変形せず充分に配向を誘起できない恐れがある。一方で、延伸温度が高すぎると延伸によって得られた配向が温度で緩和し、充分な配向が得られない恐れがある。
延伸工程は、イミド化工程と同時に行っても良い。イミド化率80%以上、更に90%以上、より更に95%以上、特に実質的に100%イミド化を行った後のイミド化後塗膜を延伸することが、ポリイミドフィルムの剛性を向上する点から好ましい。
【0114】
ポリイミドフィルムの延伸倍率は、好ましくは101%以上10000%以下であり、さらに好ましくは101%以上500%以下である。上記範囲で延伸を行うことにより、得られるポリイミドフィルムの剛性をより向上することができる。
【0115】
延伸時におけるポリイミドフィルムの固定方法は、特に制限はなく、延伸装置の種類等に合わせて選択される。また、延伸方法は特に制限はなく、例えばテンター等の搬送装置を有する延伸装置を用い、加熱炉を通しながら延伸することが可能である。ポリイミドフィルムは、一方向のみに延伸(縦延伸または横延伸)してもよく、また同時2軸延伸、もしくは逐次2軸延伸、斜め延伸等によって、二方向に延伸処理を行ってもよい。
【0116】
5.第一の態様のポリイミドフィルムの製造方法の第二の製造方法
また、第一の態様のポリイミドフィルムの製造方法の第二の製造方法としては、
芳香族環を含むポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、有機溶剤とを含み、且つ含有水分量1000ppm以下であるポリイミド樹脂組成物を調製する工程(以下、ポリイミド樹脂組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド樹脂塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド樹脂塗膜形成工程という)と、
前記ポリイミド樹脂塗膜を延伸する工程(以下、延伸工程という)と、を含む、
ポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子とを含有し、25℃から10℃/分で単調昇温した際に250℃以上400℃以下のいずれかで少なくとも一方向における下記式で示される寸法収縮率が0.1%以上を示すものであり、
寸法収縮率(%)=[{(25℃の寸法)−(昇温後の寸法)}/(25℃の寸法)]×100
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であり、JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚み10μmにおいて、80%以上である、ポリイミドフィルムの製造方法が挙げられる。
【0117】
芳香族環を含むポリイミドが有機溶剤に良好に溶解する場合には、ポリイミド前駆体樹脂組成物ではなく、前記ポリイミドを有機溶剤に溶解させ、前記無機粒子を分散させたポリイミド樹脂組成物も好適に用いることができる。
芳香族環を含むポリイミドが25℃で有機溶剤に5質量%以上溶解するような溶剤溶解性を有する場合には、当該製造方法を好適に用いることができる。
【0118】
ポリイミド樹脂組成物調製工程において、芳香族環を含むポリイミドは、前記ポリイミドフィルムにおいて説明したのと同様のポリイミドの中から、前述した溶剤溶解性を有するポリイミドを選択して用いることができる。イミド化する方法としては、ポリイミド前駆体の脱水閉環反応について、加熱脱水の代わりに、化学イミド化剤を用いて行う化学イミド化を用いることが好ましい。化学イミド化を行う場合は、脱水触媒としてピリジンやβ―ピコリン酸等のアミン、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド、無水酢酸等の酸無水物等、公知の化合物を用いても良い。酸無水物としては無水酢酸に限らず、プロピオン酸無水物、n−酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物等が挙げられるが特に限定されない。また、その際にピリジンやβ―ピコリン酸等の3級アミンを併用してもよい。
【0119】
ポリイミド樹脂組成物調製工程において、前記無機粒子は、前記ポリイミドフィルムにおいて説明したのと同様のものを用いることができる。
ポリイミド樹脂組成物調製工程において、前記有機溶剤は、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明したのと同様のものを用いることができる。
含有水分量1000ppm以下とする方法は、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明したのと同様のものを用いることができる。
【0120】
ポリイミド樹脂塗膜形成工程において、支持体や、塗布方法は前記塗膜形成工程において説明したのと同様のものを用いることができる。
ポリイミド樹脂塗膜形成工程において、乾燥温度としては、常圧下では80℃〜150℃とすることが好ましい。減圧下では10℃〜100℃の範囲とすることが好ましい。
【0121】
ポリイミド樹脂塗膜を延伸する工程は、前記延伸工程において説明したのと同様のものを用いることができる。
【0122】
6.第二の態様のポリイミドフィルムの製造方法
第二の態様のポリイミドフィルムの製造方法としては、
芳香族環を含むポリイミド前駆体と、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、有機溶剤とを含み、且つ含有水分量1000ppm以下であるポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程と、
加熱をすることにより、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程と、を含む、
芳香族環を含むポリイミドと、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子とを含有し、
線熱膨張係数が−10ppm/℃以上40ppm/℃以下であり、
波長590nmにおける厚み方向の複屈折率が0.020以下であり、
JIS K7361−1に準拠して測定する全光線透過率が、厚み10μmにおいて、80%以上であり、
前記ポリイミドが、前記一般式(1)及び前記一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有するポリイミドフィルムの製造方法が挙げられる。
当該第二の態様のポリイミドフィルムの製造方法においては、更に、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する工程を有していても良い。
【0123】
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を調製する工程としては、ポリイミド前駆体として、前記一般式(1’)及び前記一般式(3’)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有するポリイミド前駆体を必須成分として用いれば、その他は、前記第一の態様のポリイミドフィルムの製造方法と同様に行うことができる。
【0124】
また、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成する工程、及び、前記ポリイミド前駆体をイミド化する工程については、前記第一の態様のポリイミドフィルムの製造方法と同様に行うことができる。
更に、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体樹脂塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する工程を有する場合についても、前記第一の態様のポリイミドフィルムの製造方法と同様に行うことができる。
【0125】
III.ポリイミド前駆体樹脂組成物
本発明の第一の態様のポリイミド前駆体樹脂組成物は、芳香族環を含むポリイミド前駆体と、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、有機溶剤を含み、且つ含有水分量1000ppm以下であることを特徴とする。
本発明の第一の態様のポリイミド前駆体樹脂組成物は、剛性と耐屈曲性が向上し、光学的歪みが低減したポリイミドフィルムを提供するのに適した樹脂組成物である。
ポリイミド前駆体は溶剤溶解性が良好であることから、有機溶剤中でポリイミド前駆体を溶解させつつ、無機粒子を良好に分散させることにより、均一で剛性と耐屈曲性が向上し、光学的歪みが低減したポリイミドフィルムを得ることが容易になる。
更に、ポリイミド前駆体樹脂組成物中に水分を多く含むと、ポリイミド前駆体が分解しやすく、また、前記無機粒子が溶解して、屈折率を調整する成分として機能しなくなる恐れがあるが、本発明の含有水分量1000ppm以下であるポリイミド前駆体樹脂組成物を用いることにより、前記無機粒子の溶解を抑制でき、ポリイミド前駆体樹脂組成物の保存安定性が良好になり、生産性を向上することができる。
【0126】
また、本発明の第二の態様のポリイミド前駆体樹脂組成物は、芳香族環を含むポリイミド前駆体と、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さい無機粒子と、窒素原子を含む有機溶剤を含むことを特徴とする。
ポリイミド前駆体がポリアミド酸である場合、ポリアミド酸が酸性であることから、無機粒子が溶解し易く、粒子形状が変化するという恐れがある。それに対して、本発明によれば、窒素原子を含む有機溶剤を含むことにより、ポリアミド酸を中和し、前記無機粒子の溶解を抑制でき、ポリイミド前駆体樹脂組成物の保存安定性が良好になり、生産性を向上することができる。
中でも、窒素原子を含む有機溶剤を含み、含有水分量1000ppm以下であるポリイミド前駆体樹脂組成物であることが好ましい。
【0127】
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物における各構成は、前記ポリイミドフィルムの製造方法のポリイミド前駆体樹脂組成物調製工程において説明したものと同様のものとすることができるので、ここでの説明を省略する。
【0128】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0129】
[評価方法]
<ポリイミド前駆体の数平均分子量>
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、NMR(例えば、BRUKER製、AVANCEIII)により求めた。より具体的には、ポリイミド前駆体溶液をガラス板に塗布して100℃で5分乾燥後、固形分10mgをジメチルスルホキシド−d6溶媒7.5mlに溶解し、NMR測定を行い、芳香族環に結合している水素原子のピーク強度比から数平均分子量を算出した。
<ポリイミド前駆体溶液の粘度>
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE−22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
【0130】
<全光線透過率>
JIS K7361−1に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。また、以下のように、ランベルトベールの法則により、厚み10μmにおける換算値を求めた。
具体的には、ランベルトベールの法則によれば、透過率Tは、
Log10(1/T)=kcb
(k=物質固有の定数、c=濃度、b=光路長)で表される。
フィルムの透過率の場合、膜厚が変化しても密度が一定であると仮定するとcも定数となるので、上記式は、定数fを用いて
Log10(1/T)=fb
(f=kc)と表すことができる。ここで、ある膜厚の時の透過率がわかれば、各物質の固有の定数fを求めることができる。従って、T=1/10f・b の式を用いて、fに固有の定数、bに目標の膜厚を代入すれば、所望の膜厚の時の透過率を求めることができる。
<YI値>
YI値は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V−7100)を用い、視野2度、光源としてJIS Z8701−1999に準拠したC光源を用い、JIS K7105−1981に準拠した方法で求めた。
【0131】
<複屈折率>
位相差測定装置(王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA−WR」)を用いて、23℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定した。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出した。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定した。
ポリイミドフィルムの複屈折率は、式:Rth/d(ポリイミドフィルムの膜厚(nm))に代入して求めた。
<線熱膨張係数、寸法収縮率>
線熱膨張係数は、熱機械分析装置(例えばTMA−60(島津製作所株式会社製)によって、昇温速度を10℃/分、評価サンプルの断面積当たりの荷重が同じになるように引張り荷重を9g/0.15mm2として、25℃から400℃までの寸法変化を測定した。線熱膨張係数は、昇温時の100℃〜150℃の範囲の線熱膨張係数を算出して得た。サンプル幅を5mm、チャック間距離を15mmとして測定した。
寸法収縮率は、上記、線熱膨張係数の測定の際に求められる、25℃の時のサンプル寸法と250℃以上400℃以下の温度範囲での各温度におけるサンプル寸法との差の25℃の時のサンプル寸法に対する比率を計算することで求めた。
寸法収縮率(%)=[{(25℃の寸法)−(昇温後の寸法)}/(25℃の寸法)]×100
【0132】
<鉛筆硬度>
鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS−S−6006が規定する試験用鉛筆を用い、東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いて、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(9.8N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行った。
<耐屈曲性>
耐屈曲性は、測定サンプル(寸法 100mm×50mmの長方形)を温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、(株)安田精機製作所社製 塗膜屈曲試験器を用いて、JIS K5600−5−1 タイプ1に規定する耐屈曲性試験を以下のように行うことにより評価した。
試験器を完全に広げ、必要なマンドレルを装着し、測定サンプルを挟み、折り曲げを実施した。折り曲げは測定サンプルを180°折り曲げた状態で1〜2秒保持した。折り曲げ終了後、測定サンプルを試験器からはずすことなく、測定サンプルの評価を行い、評価は目視で測定サンプルの割れ及び折れの確認できないものを合格、割れ及び折れが確認されたものを不合格と判定した。
測定サンプルの割れ及び折れが起こるまで,マンドレルの直径をより小さなものに変えて評価を行い、測定サンプルの割れ及び折れが初めて起こったマンドレルの直径を記録し、前記直径よりも一つ大きいマンドレルの直径を耐屈曲性(曲げ直径)とした。使用したマンドレルの直径は,2,3,4,5,6,8,10,12,16,20,25,32mmである。
【0133】
<ポリイミドフィルムに含まれる炭素原子に結合する水素原子のうち、芳香族環に直接結合する水素原子の割合>
以下のように前処理を行い、ポリイミドフィルムを超臨界メタノールにより分解して、ポリイミド分解物を得て、ポリイミド分解物についてGC−MSを用いて全体の定性分析を行った。次いで、ポリイミド分解物について高速液体クロマトグラフィーで分離し、各ピークを分取した。当該各ピークの分取物の定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて行った。各ピークの定性分析がされた高速液体クロマトグラフィーを用いて、ポリイミドフィルムに含まれる炭素原子に結合する水素原子のうち、芳香族環に直接結合する水素原子の割合を定量した。
(1)前処理
(i)ポリイミドフィルムをメスにて削り、ガラス管(Glass capsule b:外径2.5mm、FRONTIER LAB製)に、前記削り取ったポリイミドフィルムサンプル5μgを入れる。
(ii)サンプルを入れたガラス管にマイクロシリンジにてメタノールを15μl注入する。
(iii)バーナーにて、ポリイミドフィルムサンプルとメタノールが入ったガラス管を25mm以上34mm以下の長さとなるように封管する。
(iv)密封したガラス管を280℃の電気炉に入れ、10時間放置する。
(v)電気炉からガラス管を取り出し開管する。
(2)ガスクロマトグラフ質量分析
使用装置 GCMS:GCMS2020(島津製作所製)
電気炉:Wショットパイロライザー(FLONTIER LAB製)
電気炉温度:320℃
注入口温度:320℃
オーブン条件:50℃で5分保持−10℃/分で昇温−320℃で15分保持
インターフェース温度:320℃
イオン源温度:260℃
測定質量範囲:m/z:40〜650
カラム:UA(UltraAlloy)−5 長さ:30m 内径:0.25mm 膜厚:0.25μm
(3)高速液体クロマトグラフィー
使用装置 LC−20AD(低圧グラジエント仕様)システム(島津製作所製)
溶媒:アセトニトリル、水混合溶媒(グラジエントモード)
流量:0.2ml/分
カラム温度:40℃
検出器:フォトダイオードアレイ
測定波長範囲:200nm〜400nm
サンプル注入量:1μl
(4)NMR
使用装置 AVANCEIII(BRUKER製)
【0134】
(合成例1)
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたN−メチルピロリドン 159g、及び、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)17gを投入し、25℃でメカニカルスターラーで撹拌した。そこへ、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)23gを徐々に投入し、ポリイミド前駆体溶液1を合成した。ポリイミド前駆体溶液1の固形分20質量%25℃における粘度は25900cpsであり、ポリイミド前駆体の数平均分子量は130600であった。
【0135】
(合成例2〜8)
合成例1において、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)17gと4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)の代わりに、これらと等モル量の表1に示すジアミン成分及び酸二無水物成分をそれぞれ用いた以外は、合成例1と同様の手法で、ポリイミド前駆体溶液2〜8を合成した。得られたポリイミド前駆体溶液の固形分20質量%25℃における粘度、ポリイミド前駆体の数平均分子量を表1に併せて示す。
【0136】
(合成例9)
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたN−メチルピロリドン 166g、及び、trans−シクロヘキサンジアミン(trans−CHE)12gを投入し、25℃でメカニカルスターラーで撹拌し溶解させた後、モレキュラーシーブにより脱水した酢酸 14gを投入した。そこへ、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二酸無水物(BPDA)29gを徐々に投入し、投入終了後、25℃で12時間撹拌することにより、ポリイミド前駆体溶液9を合成した。得られたポリイミド前駆体溶液の固形分20質量%25℃における粘度、ポリイミド前駆体の数平均分子量を表1に併せて示す。
【0137】
【表1】
表中の略称はそれぞれ以下のとおりである
TFMB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
BAPS:ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン
BAPS−M:ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン
DDS:4,4’−ジアミノジフェニルスルホン
HFFAPP:2,2−ビス[4−{4−アミノ−2−(トリフルオロメチル)フェノキシ}フェニル]ヘキサフルオロプロパン
DABA:4,4’−ジアミノベンズアニリド
AMC:1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(cis−,trans−混合物)
trans−CHE:trans-シクロヘキサンジアミン
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二酸無水物
【0138】
[参考例1:ポリイミド前駆体の評価]
ポリイミド前駆体溶液1〜9を、下記(1)〜(3)の手順を行うことで、30μm±5μmの厚みのポリイミドフィルムA〜Iを作製した。
イミド化を行う(2)の工程を、窒素中(酸素濃度 50ppm以下)、及び大気中のそれぞれで実施し、作製したフィルムの全光線透過率(%)を比較した(表2)。
(1)ガラス上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥。
(2)昇温速度 10℃/分で、350℃まで昇温し、350℃で1時間保持後、室温まで冷却。
(3)ガラスより剥離。
【0139】
【表2】
【0140】
当該参考例によれば、ポリイミド前駆体に含まれる炭素原子に結合する水素原子のうち、芳香族環に直接結合する水素原子の割合が高いポリイミド前駆体である場合には、大気中においてイミド化工程を経ても、光学特性、特に全光線透過率の変化が少ないことが明らかにされた。
【0141】
[参考例2:ポリイミドの耐熱性評価]
上記参考例1の(2)のイミド化工程の雰囲気が窒素である、30μm±5μmの厚みのポリイミドフィルムA〜Iを用い、雰囲気が窒素中(酸素濃度 50ppm以下)、及び大気中のそれぞれで、室温から300℃まで昇温速度10℃/分で昇温し、その後、300℃で2時間加熱し、室温まで自然冷却する処理を行った。各サンプルの全光線透過率(%)を測定した。結果を表3に示す。
【0142】
【表3】
【0143】
当該参考例によれば、炭素原子に結合する水素原子のうち、芳香族環に直接結合する水素原子の割合が高いポリイミドである場合には、後工程で大気中において加熱しても、光学特性、特に全光線透過率の変化が少ないことが示された。
【0144】
(実施例1)
(1)ポリイミド前駆体樹脂組成物の調製
ポリイミド前駆体溶液1に、長径の平均長さ300nm、短径の平均長さ50nmの炭酸ストロンチウム粒子(堺化学製、長径方向の屈折率1.52、長径に垂直方向の平均屈折率1.66)を、樹脂組成物の固形分に対して0.7質量%となるように添加し、容器を密閉の上、超音波照射(アズワン製 USD−2R)を3時間実施し、炭酸ストロンチウムが分散されたポリイミド前駆体樹脂組成物1−1を調製した。なお、前記炭酸ストロンチウム粒子は、120℃で加熱して乾燥してから用いた。また、ポリイミド前駆体樹脂組成物の調製は湿度0%に保たれたグローブボックス内で行った。
得られたポリイミド前駆体樹脂組成物1−1の含有水分量を、カールフィッシャー水分計で測定した。
【0145】
(2)ポリイミドフィルムの製造
前記ポリイミド前駆体樹脂組成物1−1をガラス上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥してポリイミド前駆体樹脂塗膜を形成した後、当該樹脂塗膜を昇温速度 10℃/分で、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)、350℃まで昇温し、350℃で1時間保持後、室温まで冷却した。ガラスより剥離することで、膜厚37mmのイミド化後塗膜1−1を作製した。
前記イミド化後塗膜1−1について、下記の条件で延伸を行い、ポリイミドフィルム1−1を製造した。種々条件を検討した結果、ポリイミド前駆体1のポリイミドのガラス転移温度である340℃を中心に±10℃の範囲が、延伸倍率を大きくすることができ好適であった。
装置名:フィルム延伸装置(IMC−1901型:(株)井元製作所製)
延伸条件:延伸サンプルサイズ:40mm×40mm(チャック部含まない)、加熱温度:340℃(大気雰囲気下)、延伸速度:10mm/min、槽内滞在時間:160sec、延伸倍率:1.3倍
【0146】
(実施例2及び4)
実施例1のポリイミド前駆体樹脂組成物の調製において、炭酸ストロンチウム添加量を表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2及び4のポリイミド前駆体樹脂組成物1−2及び1−3を調製した。得られたポリイミド前駆体樹脂組成物1−2及び1−3の含有水分量を、カールフィッシャー水分計で測定した。
また、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物1−2及び1−3をそれぞれ用いて、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルム1−2及び1−3を製造した。
【0147】
【表4】
【0148】
(実施例3)
実施例2と同様にして、前記ポリイミド前駆体樹脂組成物1−2を用いてイミド化後塗膜1−2を作製した。延伸工程において、加熱温度340℃窒素雰囲気下で、延伸を行った以外は、実施例2と同様にして、ポリイミドフィルム1−2Nを製造した。
【0149】
(比較例1)
無機粒子を添加していない前記ポリイミドフィルムAについて、実施例1と同様にして延伸を行い、比較ポリイミドフィルムAを製造した。
【0150】
得られた実施例1〜4のポリイミドフィルム1−1、1−2、1−2N、1−3、及び、比較例1の比較ポリイミドフィルムAについて、寸法収縮率、複屈折率、全光線透過率、YI値、線熱膨張係数、硬度、耐屈曲性について、前記評価方法を用いて評価した。膜厚、延伸倍率、延伸雰囲気、寸法収縮率、複屈折率、全光線透過率、YI値、線熱膨張係数、硬度、耐屈曲性について、表5に示す。
【0151】
【表5】
【国際調査報告】