再表2017-150516IP Force 特許公報全文掲載

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年9月8日
【発行日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】生体試料中の測定対象物質を定量するためのキット及び生体試料中の測定対象物質を定量する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20181130BHJP
【FI】
   G01N33/543 501J
   G01N33/543 501M
   G01N33/543 575
   G01N33/543 595
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】35
【出願番号】特願2018-503322(P2018-503322)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年2月28日
(31)【優先権主張番号】特願2016-37300(P2016-37300)
(32)【優先日】2016年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】笠置 典之
(72)【発明者】
【氏名】知久 浩之
(57)【要約】
本発明の課題は、血中に存在する抗血清アルブミン抗体などの抗体の影響を回避して、生体試料中の測定対象物質を高い精度で定量することができるキット及び方法を提供することである。本発明によれば、測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質と第一のブロッキング剤とを有する標識粒子;及び測定対象物質又は第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質と第二のブロッキング剤とを有する検出領域を含む基板;を含む生体試料中の測定対象物質を定量するためのキットであって、第一のブロッキング剤と第二のブロッキング剤とがそれぞれ互いに異なる、キットが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質と第一のブロッキング剤とを有する標識粒子;及び
前記測定対象物質又は前記第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質と第二のブロッキング剤とを有する検出領域を含む基板;
を含む生体試料中の測定対象物質を定量するためのキットであって、前記第一のブロッキング剤と前記第二のブロッキング剤とがそれぞれ互いに異なる、キット。
【請求項2】
前記第一のブロッキング剤と前記第二のブロッキング剤とがそれぞれ互いに異なるタンパク質である、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記第一のブロッキング剤が、アルブミン及びグロブリンの一方であり、前記第二のブロッキング剤が、アルブミン及びグロブリンの他方である、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
前記第一のブロッキング剤がグロブリンであり、前記第二のブロッキング剤がアルブミンである、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
前記アルブミンが、ウシ血清アルブミンである、請求項3又は4に記載のキット。
【請求項6】
前記グロブリンが、前記測定対象物質と結合性を有する免疫グロブリン以外の免疫グロブリンである、請求項3から5の何れか一項に記載のキット。
【請求項7】
前記標識粒子が蛍光粒子であり、前記検出領域が金膜上にある、請求項1から6の何れか一項に記載のキット。
【請求項8】
生体試料中の測定対象物質を定量する方法であって、
生体試料を、測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質と第一のブロッキング剤とを有する標識粒子と反応させる反応工程;及び
前記測定対象物質又は前記第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質と第二のブロッキング剤とを有する検出領域を含む基板に、前記反応工程で得られた反応産物を接触させて、標識粒子を基板上に捕捉させ、前記測定対象物質の量に関連した標識情報を取得する、測定対象物質関連標識情報取得工程;
を含み、前記第一のブロッキング剤と前記第二のブロッキング剤とがそれぞれ互いに異なる、方法。
【請求項9】
前記第一のブロッキング剤と前記第二のブロッキング剤とがそれぞれ互いに異なるタンパク質である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第一のブロッキング剤が、アルブミン及びグロブリンの一方であり、前記第二のブロッキング剤が、アルブミン及びグロブリンの他方である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記第一のブロッキング剤がグロブリンであり、前記第二のブロッキング剤がアルブミンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アルブミンが、ウシ血清アルブミンである、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記グロブリンが、前記測定対象物質と結合性を有する免疫グロブリン以外の免疫グロブリンである、請求項10から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記標識粒子が蛍光粒子であり、前記検出領域が金膜上にある、請求項8から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
表面プラズモン励起による蛍光検出により、測定対象物質の量に関連した標識情報を取得する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料中の測定対象物質を定量するためのキット及び生体試料中の測定対象物質を定量する方法
【背景技術】
【0002】
生体試料に含まれるタンパク質、酵素又は無機化合物などの測定対象物質を定量するための高感度かつ容易な測定法として蛍光検出法が広く用いられている。蛍光検出法は、特定波長の光により励起されて蛍光を発する測定対象物質を含むと考えられる試料に特定波長の励起光を照射した際に発する蛍光を検出することによって測定対象物質の存在を確認する方法である。測定対象物質が蛍光体でない場合、測定対象物質と特異的に結合する物質を蛍光色素で標識した物質を、試料に接触させ、その後と同様にして、励起光を照射した際に発する蛍光を検出することにより、測定対象物質の存在を確認することができる。
【0003】
の蛍光検出法において、検出の感度を向上させるため、プラズモン共鳴による電場増強の効果を利用する方法が知られている。この方法では、プラズモン共鳴を生じさせるため、透明な支持体上の所定領域に金属膜を設けたセンサチップを用意する。そして、支持体と金属膜との界面に対して支持体における金属膜形成面の反対面側から全反射角以上の角度で励起光を入射させる。この励起光の照射により金属膜に表面プラズモンが発生し、この表面プラズモンの発生による電場増強作用によって蛍光が増強され、シグナル/ノイズ比(S/N比)が向上することとなる。表面プラズモン励起による蛍光検出法(Surface Plasmon Fluorescence、以下、「SPF法」とする)は、落射励起による蛍光検出法(以下、「落射蛍光法」とする)と比較して約10倍のシグナル増強度が得られ、高感度に測定することができる。
【0004】
したような測定対象物質の定量においては、ブロッキング剤としてアルブミンを使用することが知られている。特許文献1には、 蛍光ナノ粒子を用いた免疫染色により、含アミノ基シランカップリング剤で処理した基材ガラスの表面に固定した病理組織中の抗原を検出する免疫染色方法であって、含アミノ基シランカップリング剤で処理した基材ガラスの表面に固定した病理組織に対して、ブロッキング剤を添加する工程と、抗原に反応する抗体を病理組織に添加する工程と、含アミノ基シランカップリング剤中のアミノ基と反応可能な官能基を有する化合物(1)を添加し、室温下に所定時間静置する工程と、抗体と反応して結合可能な官能基を有する蛍光ナノ粒子を添加する工程とからなることを特徴とする免疫染色方法が記載され、ブロッキング剤の一例としてウシ血清アルブミンが記載されている。特許文献2には、水分散型高分子粒子を担体とし、担体の表面に被検物質に対する特異的結合物質と、非特異的吸着のブロッキング剤とを有してなる特異的結合体が記載されており、非特異的吸着のブロッキング剤の一例として、ウシ血清アルブミンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−235081号公報
【特許文献2】特開2001−21563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
のとおり、簡易的な測定方法で高感度に測定が可能な方法としては、表面プラズモン励起による蛍光検出法が知られているが、測定精度は十分に満足のいくものではなかった。即ち、常に精度よく測定対象物質を定量するためには、更に再現性の高い簡易的な測定方法が望まれている。
【0007】
本発明は、血中に存在する抗血清アルブミン抗体などの抗体の影響を回避して、生体試料中の測定対象物質を高い精度で定量することができるキット及び方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは課題を解決するために鋭意検討した結果、測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質と第一のブロッキング剤とを有する標識粒子、及び測定対象物質又は第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質と、第一のブロッキング剤とは異なる第二のブロッキング剤とを有する検出領域を含む基板を用いて、生体試料中の測定対象物質を定量することによって、課題を解決できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
【0009】
(1) 測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質と第一のブロッキング剤とを有する標識粒子;及び
測定対象物質又は第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質と第二のブロッキング剤とを有する検出領域を含む基板;
を含む生体試料中の測定対象物質を定量するためのキットであって、第一のブロッキング剤と第二のブロッキング剤とがそれぞれ互いに異なる、キット。
(2) 第一のブロッキング剤と第二のブロッキング剤とがそれぞれ互いに異なるタンパク質である、(1)に記載のキット。
(3) 第一のブロッキング剤が、アルブミン及びグロブリンの一方であり、第二のブロッキング剤が、アルブミン及びグロブリンの他方である、(1)又は(2)に記載のキット。
(4) 第一のブロッキング剤がグロブリンであり、第二のブロッキング剤がアルブミンである、(3)に記載のキット。
(5) アルブミンが、ウシ血清アルブミンである、(3)又は(4)に記載のキット。
(6) グロブリンが、測定対象物質と結合性を有する免疫グロブリン以外の免疫グロブリンである、(3)から(5)の何れか一に記載のキット。
(7) 標識粒子が蛍光粒子であり、検出領域が金膜上にある、(1)から(6)の何れか一に記載のキット。
(8) 生体試料中の測定対象物質を定量する方法であって、
生体試料を、測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質と第一のブロッキング剤とを有する標識粒子と反応させる反応工程;及び
測定対象物質又は第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質と第二のブロッキング剤とを有する検出領域を含む基板に、反応工程で得られた反応産物を接触させて、標識粒子を基板上に捕捉させ、測定対象物質の量に関連した標識情報を取得する、測定対象物質関連標識情報取得工程;
を含み、第一のブロッキング剤と第二のブロッキング剤とがそれぞれ互いに異なる、方法。
(9) 第一のブロッキング剤と第二のブロッキング剤とがそれぞれ互いに異なるタンパク質である、(8)に記載の方法。
(10) 第一のブロッキング剤が、アルブミン及びグロブリンの一方であり、第二のブロッキング剤が、アルブミン及びグロブリンの他方である、(8)又は(9)に記載の方法。
(11) 第一のブロッキング剤がグロブリンであり、第二のブロッキング剤がアルブミンである、(10)に記載の方法。
(12) アルブミンが、ウシ血清アルブミンである、(10)又は(11)に記載の方法。
(13) グロブリンが、測定対象物質と結合性を有する免疫グロブリン以外の免疫グロブリンである、(10)から(12)の何れか一に記載の方法。
(14) 標識粒子が蛍光粒子であり、検出領域が金膜上にある、(8)から(13)の何れか一に記載の方法。
(15) 表面プラズモン励起による蛍光検出により、測定対象物質の量に関連した標識情報を取得する、(14)に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のキット及び方法によれば、生体試料中の測定対象物質を高い精度で定量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明のキットに含まれるセンサチップの概略図を示す。
【図2】図2は、本発明のキットに含まれるセンサチップの分解図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
[生体試料中の測定対象物質を定量するためのキット]
本発明による生体試料中の測定対象物質を定量するためのキットは、測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質と第一のブロッキング剤とを有する標識粒子;及び測定対象物質又は第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質と第二のブロッキング剤とを有する検出領域を含む基板;を含み、第一のブロッキング剤と第二のブロッキング剤とがそれぞれ互いに異なる、キットである。
【0013】
測定精度をさらに改善するという課題に鑑みて、本発明においては、標識粒子上のブロッキング剤(第一のブロッキング剤)及び基板の検出領域上のブロッキング剤(第二のブロッキング剤)として、それぞれ互いに異なるブロッキング剤を使用することによって、測定精度が高い定量キット及び定量方法を提供することが可能になった。即ち、本発明においては、第一のブロッキング剤及び第二のブロッキング剤がそれぞれ互いに異なることにより、生体試料中に存在する可能性がある抗体成分の影響を回避することができ、これにより測定精度の向上を達成している。例えば、第一のブロッキング剤及び第二のブロッキング剤としてウシ血清アルブミン(BSA)を使用した場合には、生体試料中に抗BSA抗体が存在すると、基板の検出領域と標識粒子とが抗BSA抗体を介して結合してしまい、正確な定量を行なえなくなるが、本発明の構成を採用することにより、したような抗BSA抗体を介した結合は回避することができる。
【0014】
(生体試料)
生体試料としては、測定対象物質を含む可能性のある試料である限り、特に限定されるものではなく、例えば、生物学的試料、特には動物(例えば、ヒト、イヌ、ネコなど)の体液(例えば、血液、血清、血漿、髄液、涙液、汗、尿、膿、鼻水、又は喀痰)若しくは排泄物(例えば、糞便)、臓器、組織、粘膜や皮膚などを挙げることができる。
【0015】
(測定対象物質)
測定対象物質としては、特に限定されないが、例えば、胆汁酸、コルチゾール、コレステロール、タンパク質などが挙げられる。
【0016】
胆汁酸は、哺乳類の胆汁に存在するステロイド誘導体でコラン酸骨格を有する化合物の総称であり、代表的なものとして、コール酸、デオキシコール酸、及びケノデオキシコール酸が挙げられる。
胆汁酸の主な役割は、消化管内でミセルの形成を促進し、食物脂肪をより吸収しやすくするものである。肝臓で生合成されたものを一次胆汁酸という。また一部は腸管で微生物による変換を受け、その代謝物は二次胆汁酸と呼ばれる。胆汁酸は、通常グリシンやタウリンと結び付いており、これらは抱合胆汁酸(胆汁酸塩)と呼ばれる。
【0017】
イヌ及びネコにおける血清胆汁酸濃度を測定する迅速で簡便な方法は、肝細胞機能及び腸肝門脈循環を反映する高感度で特異的な検査として認識されるようになった。血清胆汁酸に関する研究では、特に、臨床兆候が不明瞭で解釈できない高い肝酵素活性を示しているが黄疸を伴わないイヌとネコにおいて、臨床的に確定診断が必要な肝胆道系疾患を検出するために血清胆汁酸の有用性が示されている。また、先天性門脈体循環シャントの診断において診断率を高めるために空腹時及び食後の胆汁酸定量が勧められている。胆汁酸濃度が、高値の場合は、急性肝炎、慢性肝疾患、胆汁うっ帯、腸内細菌過剰増殖、門脈シャント(portosystemic shunt;PSS) 等が疑われる。一方、胆汁酸濃度が、低値の場合は、腸管吸収不良が疑われる。
【0018】
このような胆汁酸は、わずかに構造が異なる化合物の集合体として存在し、具体的には10種類の化合物が存在する。イヌ及びネコの場合には、胆汁酸としては、 コール酸、デオキシコール酸及びケノデオキシコール酸の3種類でほぼ100%が占められている。例えば、イヌの血液中の3種類の構造違いの胆汁酸の比率は、平均値で表すと、コール酸:デオキシコール酸:ケノデオキシコール酸=74%:20%:6%の割合となる(日本獣医学雑誌、52(2)1990)。コール酸、デオキシコール酸及びケノデオキシコール酸の構造を以下に示す。
【0019】
【化1】
【0020】
(第一の結合物質)
本発明で用いる第一の結合物質は、測定対象物質と結合性を有する物質である。第一の結合物質としては、抗原、抗体、又はこれらの複合体を使用できるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、第一の結合物質は抗体である。第一の結合物質が抗体である場合は、測定対象物質と結合性を有する抗体として、例えば、その測定対象物質によって免疫された動物の血清から調製する抗血清や、抗血清から精製された免疫グロブリン画分、その測定対象物質によって免疫された動物の脾臓細胞を用いる細胞融合によって得られるモノクローナル抗体、あるいは、それらの断片[例えば、F(ab’)2、Fab、Fab’、又はFv]などを用いることができる。これらの抗体の調製は、常法により行なうことができる。さらに、その抗体がキメラ抗体などの場合のように、修飾を加えられたものでもよいし、また市販の抗体でも、動物血清又は培養上清から公知の方法により調製した抗体でも使用可能である。
【0021】
例えば、測定対象物質が胆汁酸である場合、第一の結合物質としては、胆汁酸に結合性を有する(好ましくは、胆汁酸を特異的に認識する)抗胆汁酸抗体を使用する。胆汁酸には、コール酸、デオキシコール酸及びケノデオキシコール酸が含まれることから、本発明においては、第一の結合物質として、抗コール酸抗体、抗デオキシコール酸抗体及び抗ケノデオキシコール酸抗体を作製し、3種類の抗体を使用することができる。
【0022】
抗コール酸抗体、抗デオキシコール酸抗体及び抗ケノデオキシコール酸抗体の具体的な作製方法として、例えば抗コール酸抗体の作製方法を例に挙げて以下に説明する。
コール酸と、牛血清アルブミン(Bovine Serum Albumin、以下BSAと略す)と、縮合剤を混合してコール酸・BSA結合体を作製することができる。結合体をマウス免疫感作抗原として用いて、数回、マウス背部皮下に免疫する。この場合、完全アジュバント(Complete Freund‘s Adjuvant:CFA)、及び/又は不完全アジュバント(Incomplete Freund‘s Adjuvant:IFA)を適宜選択して免疫感作抗原と混合して使用することができる。完全アジュバントとは、免疫を刺激する物質であって、パラフィンとアラセルの混合物である。不完全アジュバントとは、完全アジュバントに死滅したミコバクテリア又は結核菌の死菌を加え、抗原性をさらに増強させたものである。数週間で数回、適宜免疫感作を行った後にマウスから採血し抗体価の測定を実施する。抗体価の十分な上昇が認められた場合に腹腔内に抗原を投与し、数日後に脾臓を摘出する。こうして免疫マウスより摘出した脾臓細胞を、変異株骨髄腫細胞(ミエローマ)と融合させることで、抗体産生能力を備えた融合細胞を作製することができる。この融合細胞の中から目的とする抗原に対する抗体産生細胞のみを選択し、さらにその細胞株だけを増殖するために限界希釈を行う。希釈後の細胞の培養(クローニング)を行うことができる。このようにして得られる融合細胞株を、マウスの腹腔内に注射して、腹水型の抗体産生細胞を増殖させることによってモノクローナル抗体を腹水中に産生することが可能となり、これらの抗体を回収することで、目的の抗体を入手することができる。
【0023】
測定対象物質がコルチゾールである場合、第一の結合物質としては、コルチゾールに結合性を有する(好ましくは、コルチゾールを特異的に認識する)抗コルチゾール抗体を使用することができる。抗コルチゾール抗体の製造は、した抗コール酸抗体の作製方法に準じて行うことができる。
【0024】
(標識粒子)
本発明で用いる標識粒子としては、免疫反応に通常用いられ得る標識を有する粒子を使用することができる。標識粒子としては、免疫反応に通常用いられ得る蛍光で着色された蛍光粒子を使用することができ、あるいは酵素で標識された粒子、などを使用することもできる。
【0025】
蛍光粒子としては、例えば、蛍光ポリスチレンビーズなどの蛍光高分子粒子、蛍光ガラスビーズ等の蛍光ガラス粒子を用いることができる。蛍光粒子の材質の具体例としては、スチレン、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、ブタジエン、塩化ビニル、酢酸ビニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、又はブチルメタクリレートなどのモノマーを用いた高分子、又は2種以上のモノマーを用いた共重合体などの合成高分子粉末があり、これらを均一に懸濁させたラテックスが好ましい。また、その他の有機高分子粉末、無機物質粉末、微生物、血球、細胞膜片、又はリポソームなどが挙げられる。
【0026】
標識粒子としてラテックス粒子を使用する場合、ラテックスの材質の具体例としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、及びポリ酢酸ビニルアクリレートなどが挙げられる。ラテックスとしては、単量体としてスチレンを少なくとも含む共重合体が好ましく、スチレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が特に好ましい。ラテックスの作製方法は特に限定されず、任意の重合方法により作製することができる。但し、抗体標識の際に界面活性剤が存在すると抗体固定化が困難となるため、ラテックスの作製は、無乳化剤乳化重合、即ち界面活性剤などの乳化剤を用いない乳化重合により行うことが好ましい。
【0027】
重合により得られたラテックス自体が蛍光性である場合には、そのまま蛍光ラテックス粒子として使用することができる。重合により得られたラテックスが非蛍光性の場合には、ラテックスに蛍光物質(蛍光色素など)を添加することによって、蛍光ラテックス粒子を作製することができる。即ち、蛍光ラテックス粒子は、水及び水溶性有機溶剤を含むラテックス粒子の溶液に蛍光色素を添加して攪拌することなどにより製造できる。
【0028】
蛍光色素を含有したリポゾ−ムやマイクロカプセル等も蛍光粒子として使用することができる。蛍光発色は、紫外光等を吸収して励起し、基底状態に戻る際に放出されるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、黄緑(励起波長505nm/放出波長515nm、以下同じ)、青(350〜356nm/415〜440nm)、赤(535〜580nm/575〜605nm)、オレンジ(540nm/560nm)、レッド・オレンジ(565nm/580nm)、クリムゾン(625nm/645nm)、ダークレッド(660nm/680nm)などの蛍光発色が用いられ得る。これらの蛍光を発する蛍光粒子は、例えば、Thermo Fisher 社から入手可能であり、同社においてFluoSpheres(登録商標)の商品名で市販されている。
【0029】
標識粒子の平均粒径は、粒子の材質や測定対象物質を定量する濃度範囲、測定機器などによって異なるが、0.001〜10μm(より好ましくは0.001〜1μm)の範囲が好ましい。
【0030】
(平均粒径の測定方法)
標識粒子の平均粒径は、市販の粒度分布計等で計測することが可能である。粒度分布の測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
【0031】
粒径範囲及び測定の容易さから、本発明においては動的光散乱法を用いることが好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))、ZETA SIZER Nano series(マルバーン社)等が挙げられ、本発明においては、25℃の測定温度で測定したメジアン径(d=50)の値として求める。
【0032】
(第一の結合物質による標識粒子の修飾)
第一の結合物質を標識粒子に固定化する方法は、例えば、特開2000−206115号公報やThermo Fisher 社FluoSpheres(登録商標)ポリスチレンマイクロスフィアF8813に添付のプロトコールなどに記載されており、免疫凝集反応用試薬を調製する公知の方法がいずれも使用可能である。また、結合物質として抗体を粒子に固定化する原理として、物理吸着及び共有結合による化学結合のいずれの原理も採用可能である。抗体を粒子に固定させた後に抗体が被覆されていない粒子表面を覆うブロッキング剤(即ち、第一のブロッキング剤)としては、例えば、アルブミン(BSAなど)、スキムミルク、カゼイン、大豆由来成分、魚由来成分、又はポリエチレングリコールなど、並びに物質又は物質と性質が同じである物質を含む市販の免疫反応用ブロッキング剤などが使用可能である。これらのブロッキング剤は、必要に応じて熱や酸・アルカリ等により部分変性などの前処理を施すことも可能である。さらに、第一のブロッキング剤としては、測定対象物質と結合性を有しない抗体(グロブリン)、あるいはテストエリアに使用しないタンパク質(Protein A、Protein G)などを使用することもできる。
【0033】
抗体を粒子に固定化する具体的な方法を、以下に例示する。粒子の固形分濃度が0.1〜10質量%になるよう分散させた液に、0.01〜20mg/mLの濃度に調整した抗体溶液を添加して、混合する。温度4〜50℃の条件下で5分間〜48時間撹拌を継続する。次いで遠心分離その他の方法により粒子と溶液を分離して、溶液に含まれている、粒子に結合しなかった抗体を十分に除去する。その後、粒子を緩衝液にて洗浄する操作を0〜10回繰り返す。粒子と抗体とを混合して、粒子に抗体を結合させる操作を実施した後に、抗原抗体反応に関与しない成分、好ましくはタンパク質、より好ましくはグロブリン、アルブミン、ブロックエース(登録商標)、スキムミルク及びカゼインなどのブロッキング剤を使用して粒子表面の抗体が結合していない部分を保護することが望ましい。
【0034】
抗原や抗体等を粒子に固定化する際に、安定化剤を必要に応じて添加可能である。安定化剤とは、ショ糖や多糖類などの合成高分子あるいは天然高分子など、抗原や抗体を安定化するものであれば特に制限されず、Immunoassay Stabilizer(Advanced Biotechnologies Inc (ABI社))などの市販の安定化剤も使用可能である。
【0035】
第一の結合物質を有する標識粒子は本発明のキットに含まれており、キットの一部である容器、たとえばカップに含まれている態様が好ましい。この場合、生体試料を、標識粒子を含む容器に注入して混合、攪拌することにより、生体試料中の測定対象物質と第一の結合物質とを結合させることができる。
【0036】
(基板)
本発明では、高感度な測定を達成するために、後述する表面プラズモン蛍光(SPF)検出を行う測定法を採用することが好ましい。この場合における基板としては、表面に金属膜を有する基板を使用することが好ましい。金属膜を構成する金属としては、表面プラズモン共鳴が生じ得るようなものであれば特に限定されない。好ましくは金、銀、銅、アルミニウム、又は白金等の自由電子金属が挙げられ、特に金が好ましい。金を使用する場合、後記する検出領域は、金膜上にある。の金属は単独又は組み合わせて使用することができる。また、基板への付着性を考慮して、基板と金属からなる層との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。金属膜の膜厚は任意であるが、例えば、1nm以上500nm以下であるのが好ましく、特に10nm以上200nm以下であるのが好ましい。500nmを超えると、媒質の表面プラズモン現象を十分検出することができない。また、クロム等からなる介在層を設ける場合、その介在層の厚さは、0.1nm以上、10nm以下であることが好ましい。
【0037】
金属膜の形成は常法によって行えばよく、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気めっき法、又は無電解めっき法等によって行うことができるが、基板材質と金属膜との混合層を設けて、金属膜の密着性を良くするためには、スパッタ法により金属膜を作製することが好ましい。この場合、基板材質と金属膜との混合層の厚さは十分な密着性が確保できれば特に制限はないが、10nm以下が好ましい。
【0038】
金属膜は好ましくは基板上に配置されている。ここで、「基板上に配置される」とは、金属膜が基板上に直接接触するように配置されている場合のほか、金属膜が基板に直接接触することなく、他の層を介して配置されている場合をも含む。本発明で使用することができる基板の材質としては例えば、一般的な光学ガラスの一種であるBK7(ホウ珪酸ガラス)等の光学ガラス、あるいは合成樹脂、具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、又はシクロオレフィンポリマーなどのレーザー光に対して透明な材料からなるものが使用できる。このような基板は、好ましくは、偏光に対して異方性を示さずかつ加工性の優れた材料が望ましい。
【0039】
SPF検出のための基板の好ましい態様としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に金膜を蒸着した基板などを挙げることができる。
【0040】
基板は、測定対象物質又は第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質を有する検出領域を備えている。
【0041】
(第二の結合物質)
第二の結合物質は、測定対象物質と結合性を有する物質であるか、又は第一の結合物質と結合性を有する物質である。定量をサンドイッチアッセイ法で行う場合には、第二の結合物質として、測定対象物質と結合性を有する物質を使用することができる。定量を競合法で行う場合には、第二の結合物質として、第一の結合物質と結合性を有する物質を使用することができる。本発明においては、定量を競合法で行うことが好ましく、第二の結合物質として、第一の結合物質と結合性を有する物質を使用することが好ましい。
【0042】
第二の結合物質としては、特に限定されないが、好ましい例としては、抗原、抗体、又はこれらの複合体が挙げられるが、好ましくは、抗原であり、第二の結合物質として、測定対象物質(これは、第一の結合物質と結合性を有する物質である)を使用することが特に好ましい。
【0043】
第二の結合物質として、測定対象物質を使用する場合には、第二の結合物質は、測定対象物質とキャリアとの結合体であることが好ましい。キャリアとは、測定対象物質の複数の分子が結合可能な物質を意味する。好ましいキャリアの一例としては、タンパク質などが挙げられ、その中でも具体的には、ウシ血清アルブミン等を挙げることができる。
【0044】
測定対象物質が胆汁酸である場合、第二の結合物質は、コール酸及び/又はコール酸アルブミン結合体、デオキシコール酸及び/又はデオキシコール酸・アルブミン結合体、並びにケノデオキシコール酸及び/又はケノデオキシコール酸・アルブミン結合体を含むことが特に好ましい。また、測定対象物質がコルチゾールである場合は、第二の結合物質は、コルチゾール・アルブミン結合体であることが好ましい。
【0045】
(第二の結合物質を基板に固定化する方法)
第二の結合物質を基板に固定化する方法は、例えば、Nunc社の提供するTech Notes Vol.2−12などに記載されており、一般的なELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay:酵素結合免疫吸着法)試薬を調製する公知の方法がいずれも使用可能である。また、基板上に自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembled Monolayer)などを配することによる表面修飾を施しても良く、第二の結合物質を基板に固定化する方法としては、物理吸着を用いた方法、及び共有結合による化学結合を用いた方法のいずれの方法も採用可能である。第二の結合物質を基板に固定させた後に、第二の結合物質が被覆されていない基板表面を覆うブロッキング剤(第二のブロッキング剤)としては、公知の物質、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、グロブリン、スキムミルク、カゼイン、大豆由来成分、魚由来成分又はポリエチレングリコールなど、並びに物質又は物質と性質が同じである物質を含む市販の免疫反応用ブロッキング剤などが使用可能である。これらのブロッキング剤は、必要に応じて熱や酸・アルカリ等により部分変性などの前処理を施すことも可能である。
【0046】
(検出領域<テストエリア>)
本発明は、基板上に生体試料中の測定対象物質の有無を検出するテストエリアを設けることができる。このテストエリアでは、例えば測定対象物質である抗原を捕まえて、抗原に結合した標識の量を検出し定量することで、抗原を定量することが可能となる。あるいは、抗原に結合した標識のみを結合できないようにし、抗原に結合していない標識のみを捕獲して、抗原の結合した標識の量を算出する方法により、抗原を定量することが可能となる。この検出方法は競合法と呼ばれているが、ここでは、競合法に関する基板について説明する。
【0047】
基板のテストエリアには、標識粒子上に存在する結合物質(例えば抗体)と反応するサイトを有することが好ましい。本発明の好ましい一態様としては、生体試料中に存在する抗原を、基板のテストエリア上に有する態様が好ましい。この場合、抗原とBSAを縮合剤の存在下で反応させて、抗原・BSA結合体を作製し、この結合体をテストエリア上に吸着させることでテストエリアを作製することが可能となる。測定対象物質である抗原−BSA結合体は、緩衝液に溶解させて、基板上に点着して、一定時間放置した後、上清を吸引し、乾燥させるなどの方法で基板上のテストエリアに結合させることが可能である。
【0048】
(参照領域<コントロールエリア>)
本発明では、測定環境、特に測定温度の影響を極力抑えるために、基板上にコントロールエリアを有し、テストエリアの情報を、コントロールエリアの情報で規格化することによって、環境依存性を非常に低く抑えることが可能となる。コントロールエリアとしては、使用する生体試料の中に存在する測定対象物質の量に依存せず、すべての標識と結合することが可能なように設計されていることが好ましい。標識粒子上に存在する抗体すべてに相互作用する抗体を有することが好ましい。このように設計することによって、テストエリアの情報をコントロールエリアの情報で規格化することにより、例えば、低温環境で、生体試料の流れや、反応速度が影響を受けた場合でも、規格化によってその影響をキャンセルして、常に精度よく、測定環境に影響されない結果を得ることが可能になる。
【0049】
コントロールエリアに存在させる好ましい抗体としては、標識粒子上に存在する結合物質(例えば、抗体)を認識する機能をもち、その抗体がマウス由来であれば、抗マウス抗体であることが好ましく、標識粒子上の抗体が、ヤギ由来であれば、抗ヤギ抗体であることが好ましい。これらコントロールエリア上の抗体は、緩衝液に溶解させて、基板上に点着して、一定時間放置した後、上清を吸引し、乾燥させるなどの方法で基板に結合させることが可能である。
【0050】
(ブロッキング剤)
例えば、競合法において、測定対象物質を含まない陰性となる生体試料だけでなく、測定対象物質を含む陽性となる生体試料に対しても反応して陰性となる生体試料が存在しており、高値乖離の問題の解決が課題として認識されている。このような擬陰性を示す原因は明確にはなっていないが、抗体に覆われていない標識粒子表面と、検出領域(テストエリア)との非特異的な相互作用により、本来結合してほしくない標識粒子が存在することが原因の一つではないかと考えられている。また、テストエリア上に存在する物質と同じ物質が標識粒子表面上に存在する場合にも、遊離した抗体などが生体試料中に存在する場合には、その抗体が、テストエリア上に存在する物質と、標識粒子表面上の物質のどちらにも結合することで、測定対象物質を含む陽性となる生体試料を測定した場合においても陰性として検出される場合がある。
一般的に、固相表面(例えば標識粒子表面、基板の金膜表面)、への非特異吸着抑制のためにBSAでのブロッキングが用いられているが、ある特定の生体試料中にBSAに反応する抗BSA抗体が存在する場合には、標識粒子上のBSAと基板上のBSAとの間で架橋するように反応し、高値乖離を起こす場合がある。
【0051】
本発明においては、第一のブロッキング剤と第二のブロッキング剤とがそれぞれ互いに異なるものとすることによって、問題を解決している。
好ましくは、第一のブロッキング剤と第二のブロッキング剤とはそれぞれ互いに異なるタンパク質である。第一のブロッキング剤と第二のブロッキング剤の具体例は、本明細書中の通りである。好ましくは、第一のブロッキング剤は、アルブミン及びグロブリンの一方であり、第二のブロッキング剤が、アルブミン及びグロブリンの他方である。より好ましくは、第一のブロッキング剤がグロブリン(より好ましくは、測定対象物質と結合性を有する免疫グロブリン以外の免疫グロブリン)であり、第二のブロッキング剤がアルブミン(より好ましくはウシ血清アルブミン)である。
【0052】
測定対象物質と結合性を有する免疫グロブリン以外の免疫グロブリンとして具体的には、測定対象物質とは異なる抗原によって免疫された動物の血清から調製する抗血清、抗血清から精製された免疫グロブリン画分、その測定対象物質によって免疫された動物の脾臓細胞を用いる細胞融合によって得られるモノクローナル抗体、あるいは、それらの断片[例えば、F(ab’)2、Fab、Fab’、又はFv]などを用いることが可能である。これらの抗体の調製は、常法により行なうことができる。さらに、その抗体がキメラ抗体などの場合のように、修飾を加えられたものでもよいし、また市販の抗体でも、動物血清や培養上清から公知の方法により調製した抗体も使用可能である。本発明では、第一のブロッキング剤として、特に抗CRP(C反応性蛋白)抗体を使用する態様が好ましい。
【0053】
(抗体)
本発明において、抗体は、その動物種やサブクラス等によらず使用できる。例えば、本発明に用いることが可能な抗体は、マウス、ラット、ハムスター、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ウシ、ニワトリなど免疫反応が起こり得る生物に由来する抗体、具体的には、マウスIgG、マウスIgM、ラットIgG、ラットIgM、ハムスターIgG、ハムスターIgM、ウサギIgG、ウサギIgM、ヤギIgG、ヤギIgM、ヒツジIgG、ヒツジIgM、ウシIgG、ウシIgM、トリIgY等であり、ポリクローナル又はモノクローナルのどちらも使用可能である。断片化抗体は、少なくとも1つの抗原結合部位を持つ、完全型抗体から導かれた分子であり、具体的にはFab、F(ab’)2等である。これらの断片化抗体は、酵素あるいは化学的処理によって、もしくは遺伝子工学的手法を用いて得られる分子である。
【0054】
(キットの他の要素)
本発明のキットは、測定対象物質を測定する方法に用いられるものであり、測定対象物質が胆汁酸である場合には、胆汁酸測定診断用のキットであり、測定対象物質がコルチゾールである場合には、コルチゾール測定診断用のキットである。本発明において、測定対象物質の測定を実施するに当たり、第二の結合物質を固定した基板と、蛍光粒子などの標識粒子を保持した部材を含むセンサチップを含むものであるが、表面プラズモン励起装置、及び蛍光測定デバイスなどの、測定対象物質の測定に使用される各種の器材又は装置を含めてもよい。さらに、キットの要素として、既知量の測定対象物質を含む試料、取扱説明書などを含めてもよい。
【0055】
[生体試料中の測定対象物質を定量する方法]
本発明による生体試料中の測定対象物質を定量する方法は、
生体試料を、測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質と第一のブロッキング剤とを有する標識粒子と反応させる反応工程;及び
測定対象物質又は第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質と第二のブロッキング剤とを有する検出領域を含む基板に、反応工程で得られた反応産物を接触させて、標識粒子を基板上に捕捉させ、測定対象物質の量に関連した標識情報を取得する、測定対象物質関連標識情報取得工程;
を含み、第一のブロッキング剤と第二のブロッキング剤とがそれぞれ互いに異なる、方法である。
【0056】
本発明においては、測定対象物質の量に関連した標識情報を取得する測定対象物質関連標識情報取得工程により、測定対象物質を定量する。
本発明における定量は、測定対象物質の量の測定である限り、最も広い概念として解釈される。測定方法の具体的な実施態様としては、競合法及びサンドイッチ法が挙げられるが、競合法が好ましい。
【0057】
競合法の一例として、胆汁酸を定量する場合を以下に説明する。胆汁酸以外の物質を定量する場合も、同様に実施することができる。
競合法では、先ず、胆汁酸/アルブミン比が7以上14以下である胆汁酸・アルブミン結合体が固定化されている胆汁酸免疫測定用基板に、胆汁酸を含む生体試料及び抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子を接触させる。その生体試料中に胆汁酸が存在しない場合には、抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子と、基板上の胆汁酸(即ち、胆汁酸・アルブミン結合体中の胆汁酸)とにより、基板上で抗原抗体反応が起こる。一方、生体試料中に胆汁酸が存在する場合には、生体試料中の胆汁酸と抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子との間で抗原抗体反応が起こり、抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子と、基板上の胆汁酸(即ち、胆汁酸・アルブミン結合体中の胆汁酸)との間の抗原抗体反応が阻害される。の反応が終了した後、基板上のアルブミンに結合しなかった抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子を除去する。次いで基板上の免疫複合体(即ち、抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子と、基板上の胆汁酸・アルブミン結合体中の胆汁酸との複合体)の形成の度合いを蛍光強度として検出することにより、生体試料中の胆汁酸の濃度などを測定することができる。
【0058】
競合法における蛍光の測定形態は、プレートリーダー測定、あるいはフロー測定のいずれかの測定を採用することが可能であり、例えば、以下の方法により測定することができる。予め、胆汁酸濃度が異なる胆汁酸量既知の試料を複数用意し、この試料及び抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子を予め混合する。この混合液を、胆汁酸・アルブミン結合体が固定化されている領域に接触させる。胆汁酸・アルブミン結合体が固定化されている領域からの蛍光信号を、特定の時間間隔で混合液が結合体に接触している間、複数の蛍光信号として測定する。この複数の蛍光信号から、各胆汁酸濃度において、蛍光量の時間変化(傾き)を求める。この時間変化をY軸、胆汁酸濃度をX軸としてプロットし、最小二乗法等の適宜ふさわしいフィッティング方法を用いて、蛍光量の時間変化に対する胆汁酸濃度の関係式を取得する。このように取得した関係式に基づき、検査目的とする生体試料を用いた蛍光量の時間変化の結果を用いて、生体試料に含まれる胆汁酸量を定量することができる。
【0059】
この胆汁酸量の定量は、短時間で行うことが好ましい。具体的には、10分以内に行われることが好ましく、8分以内がより好ましく、更には6分以内で行われることが好ましい。この定量時間には、最小二乗法等の適宜ふさわしいフィッティング方法を用いて予め取得した蛍光量の時間変化と胆汁酸濃度との関係式を利用して、試料及び抗胆汁酸抗体標識蛍光粒子を、胆汁酸・アルブミン結合体が固定化されている検出領域に接触させてから、検査目的とする生体試料を用いた蛍光量の時間変化の結果を基に生体試料に含まれる胆汁酸量を換算する時間が含まれていることが好ましい。
【0060】
サンドイッチ法では、特に限定されるものではないが、例えば、以下の手順により測定対象物質を測定することができる。測定対象物質を含む可能性のある生体試料と、測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質を有する蛍光粒子とを、基板上で接触させる。生体試料に測定対象物質が存在する場合には、測定対象物質と蛍光粒子と基板との間で結合反応(抗原抗体反応など)が生じる。その結果、生体試料中に測定対象物質が存在する場合には、基板に結合した第二の結合物質と、測定対象物質と、第一の結合物質を有する蛍光粒子とからなる免疫複合体が形成される。サンドイッチ法では、第二の結合物質と、測定対象物質と、第一の結合物質を有する蛍光粒子との反応が終了した後、免疫複合体を形成しなかった、第一の結合物質を有する蛍光粒子を除去し、洗浄する。次いで免疫複合体の形成の度合いを蛍光強度として検出することにより、測定対象物質の濃度などを測定することができる。なお、蛍光強度と測定対象物質の濃度は、正の相関関係がある。
【0061】
(流路)
本発明の好ましい態様においては、測定対象物質を含む可能性のある生体試料と、第一の結合物質を有する標識粒子とを混合した混合液を、基板上に適用し、流路に展開することができる。流路とは、生体試料と、第一の結合物質を有する標識粒子とを、検出領域まで流下する通路であれば、特に制限はない。好ましい流路の態様としては、第一の結合物質を有する標識粒子を含む生体試料液を点着する点着口、検出領域としての金属膜、及び金属膜を超えて流路が存在し、生体試料が、金属膜上を通過できる構造を有するものである。好ましくは、金属膜に対して、点着口とは反対側に、吸引口を設けることができる。
【0062】
(表面プラズモン蛍光測定)
本発明における蛍光などの標識の検出方法としては、特に限定されないが、例えば、蛍光強度を検出することができる機器、具体的には、マイクロプレートリーダー、又は表面プラズモン励起による蛍光検出(SPF)を行うためのバイオセンサーなどを用いて蛍光強度を検出することが好ましい。好ましくは、表面プラズモン共鳴による蛍光検出により、測定対象物質の量に関連した標識情報を取得することができる。
【0063】
なお、蛍光の測定の形態は、プレートリーダー測定でもよいし、フロー測定でもよい。表面プラズモン励起による蛍光検出法(SPF法)は、落射励起による蛍光検出法(落射蛍光法)よりも高感度に測定することができる。
【0064】
表面プラズモン蛍光(SPF)バイオセンサーとしては、例えば、特開2008−249361号公報に記載されているような、所定波長の励起光を透過させる材料から形成された光導波路と、この光導波路の一表面に形成された金属膜と、光ビームを発生させる光源と、光ビームを光導波路に通し、光導波路と金属膜との界面に対して表面プラズモンを発生させる入射角で入射させる光学系と、表面プラズモンによって増強されたエバネッセント波によって励起されることによって発生する蛍光を検出する蛍光検出手段とを備えたセンサーを用いることができる。
【0065】
本発明の蛍光粒子を用いた表面プラズモン励起による蛍光検出(SPF)系は、好ましくは、基板上の金属膜上に固定化された測定対象物質の量に依存した蛍光物質からの蛍光を検出するアッセイ方法であり、例えば、溶液中での反応の進行により、光学的な透明度の変化を濁度として検出する、いわゆるラテックス凝集法とは異なる方法である。ラテックス凝集法は、ラテックス試薬中の抗体感作ラテックスと生体試料中の抗原が、抗体反応により結合し凝集する。この凝集塊は時間と共に増大し、この凝集塊に近赤外光を照射して得られた単位時間当たりの吸光度変化から、抗原濃度を定量化する方法である。本発明では、ラテックス凝集法に比べて、非常に簡便な測定対象物質の検出方法を提供できる。
【0066】
(規格化)
さらに本発明の方法は、
標識粒子の量に関連した標識情報を取得する、標識粒子関連標識情報取得工程;及び
測定対象物質の量に関連した標識情報を取得する測定対象物質関連標識情報取得工程で取得した標識情報を、標識粒子関連標識情報取得工程で取得した標識情報により規格化する、規格化工程を含む方法でもよい。
【0067】
ここで、生体試料と、測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質を有する標識粒子とを含む混合液を、検出領域(テストエリア)と参照領域(コントロールエリア)とを有する基板に接触させて検出領域と参照領域上に表面プラズモンを発生させ、放出された蛍光の強度を測定する工程のうち、検出領域上で発生する表面プラズモンによる蛍光の強度を測定する工程が、測定対象物質の量に関連した標識情報を取得する測定対象物質関連標識情報取得工程であり、参照領域上で発生する表面プラズモンによる蛍光の強度を測定する工程が、標識粒子関連標識情報取得工程である。この2つの工程で取得した蛍光強度の単位時間における増加速度を蛍光シグナル値の変化率として求め、検出領域のシグナル値の変化率を参照領域のシグナル値の変化率で除する工程が規格化工程である。
【0068】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
実施例1:
(1)胆汁酸・ウシ血清アルブミン結合体の調製
(1−1)コール酸・ウシ血清アルブミン結合体の調製
超脱水ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記す。和光純薬工業(株)社製)1.2mLにコール酸(和光純薬工業(株)社製)50mg、N−ヒドロキシスクシンイミド(以下、NHSと記す。和光純薬工業(株)社製)67mg、及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(以下、EDCと記す。和光純薬(株)社製)110mgを加えて混合し、コール酸を活性エステル化した。この活性エステル化したコール酸を、アルブミンの1種であるウシ血清アルブミン(以下、BSAと記す。和光純薬工業(株)社製)322mgを溶解したリン酸緩衝液(以下、PBSと記す。和光純薬工業(株)社製)65mLの水溶液に滴下し反応させた。反応終了後、反応溶液をアセトニトリル(以下、ACNと記す。和光純薬工業(株)社製)/水の比率が1/3の溶液1Lを用いて透析により精製した。最後に、凍結乾燥し、白色の固体を得た。
【0070】
【化2】
【0071】
(1−2)デオキシコール酸・BSA結合体の調製
超脱水DMF1.2mLにデオキシコール酸(和光純薬工業(株)社製)50mg、NHS 67mg、及びEDC 110mgを加えて混合し、デオキシコール酸を活性エステル化した。この活性エステル化したデオキシコール酸を、BSA 322 mgを溶解したPBS 65mLの水溶液に滴下し反応させた。反応終了後、反応溶液をACN/水の比率が1/3の溶液 1Lを用いて透析により精製した。最後に、凍結乾燥し、白色の固体を得た。
【0072】
(1−3)ケノデオキシコール酸・BSA結合体の調製
超脱水DMF1.2mLにケノデオキシコール酸(和光純薬工業(株)社製)50mg、NHS 67mg、及びEDC 110mgを加えて混合し、ケノデオキシコール酸を活性エステル化した。この活性エステル化したケノデオキシコール酸を、BSA 322 mgを溶解したPBS 65mLの水溶液に滴下し反応させた。反応終了後、反応溶液をACN/水の比率が1/3の溶液 1Lを用いて透析により精製した。最後に、凍結乾燥し、白色の固体を得た。
【0073】
(2)MALDI−TOF−MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計)による胆汁酸/BSA標識モル比(結合体の胆汁酸/アルブミン比)の測定
(測定手順)
(1−1)から(1−3)で調製した結合体を0.1質量%トリフルオロ酢酸(TFA):ACNの比率が2/1の溶液に溶解し、1mg/mLの濃度に調整した。この溶液1μLと、マトリックス(SA;シナピン酸(和光純薬工業(株)社製))4μLとを混合し、金プレート上に1μLとして4点を点着した。自然乾燥した後に、MALDI−TOF−MS装置(Applied Bio Systems社品 Voyager)に金プレートを挿入し、1スポットごとに積算900ショットを行い質量情報となるデータを取得(N=4)した。このデータを用いて、胆汁酸・BSA結合体に対応するピークの、ピーク強度の最大の値の50%強度での分子量中心値をBSA結合体のピークとして採用し、このピーク値から垂直に降ろした位置を胆汁酸・BSA結合体の分子量と見なして、N=4の平均値を取り、(胆汁酸・BSA結合体の分子量−native BSAの分子量)/胆汁酸の分子量(例えば、コール酸の場合408−18=390)でBSAに対する胆汁酸の結合数を計算した。得られた結合体の胆汁酸/BSA比を表1に示した。
【0074】
【表1】
【0075】
(3)コール酸に対する抗体、デオキシコール酸に対する抗体、又はケノデオキシコール酸に対する抗体を産生するハイブリドーマの作製、並びに抗体産生
(3−1)免疫原
で作製したコール酸・BSA結合体、デオキシコール酸・BSA結合体及びケノデオキシコール酸・BSA結合体の各々2mgずつを、マウス免疫感作の免疫原として使用した。
【0076】
(3−2)ハイブリドーマの調製
マウス免疫感作の免疫原として、コール酸・BSA結合体を使用した。
初回の免疫を100μg/匹の量とし、2回目以降の免疫を50μg/匹の量とし、コール酸・BSA結合体を、マウス背部皮下に投与して免疫を行った。免疫においては、完全アジュバント(CFA)と混合したエマルジョンを初回投与し、2〜4回目の免疫には不完全アジュバント(IFA)と混合したエマルジョンを投与した。2週間隔で4回免疫を行った。別途、3回目、4回目の免疫の翌週に採血を行い、採血清100μLを用いてELISA測定にて抗体価の測定を行った。抗体価が目的の値であることを確認し、4回目の免疫から2週間後の免疫を最終免疫として、抗原である結合体をリン酸緩衝液(PBS、和光純薬工業(株)社製、pH7.1〜7.3)1mLで希釈溶解し、マウスの腹腔内に投与する形で行った。投与の3日後にマウスの脾臓を摘出した。
【0077】
マウスより摘出した脾臓細胞と変異株骨髄腫細胞(ミエローマ:P3−X63−Ag8−U1)を、7:1の細胞数の割合で混合した後に、ポリエチレングリコール(PEG)を添加し、遠心分離後に培地(RPMI−1640(ロズウェルパーク記念研究所培地:Roswell Park Memorial Institute Medium)+10質量%ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS))に浮遊させた。この浮遊した脾臓細胞を、細胞数として1.0×105(cell/well)となるように、96wellプレートに播種した。翌日、HAT培地(ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン培地)を添加し、増殖したハイブリドーマの培養上清を抗体測定系のELISAでスクリーニングを行った。測定用抗原であるコール酸・BSA結合体を500ng/mLとなるようPBSで希釈し、ELISAのカップに添加して静置して、カップの底に測定用抗原を固定化し、上澄み液を除去した。測定対象となる脾臓細胞が産生した抗体に対する二次抗体として抗マウスIgG HRP標識抗体を用いた。IgGはイムノグロブリンGを示し、HRPは西洋ワサビペルオキシダーゼを示す。ELISAの結果から陽性であったウェルを24ウェルプレートを用いて培養し、培養上清を各1mL採取した。再度、同じ抗体測定系のELISAで二次スクリーニングを行った。細胞融合時の同一ウェル中で、ELISAシグナルの高い上位の6ウェルを選択してバイアル瓶に入れた。
【0078】
それぞれのバイアル中の細胞を、10質量%のFBSを含む基礎培地RPMI1640を用いて限界希釈して希釈物を調製した。6個の96ウェルプレートのそれぞれのウェルに希釈物1滴ずつピペットで添加した。それぞれのウェルを顕微鏡で観察し、それぞれのウェル中の細胞がシングルセルであることを確認した。3週間培養した後、と同様にして、増殖したハイブリドーマの培養上清を抗体測定系のELISAでスクリーニングを行った。ELISAシグナルの高い上位の10ウェルを選択し、ハイブリドーマの調製を終了した。得られた抗体のサブクラスの決定は、Isotyping kit(ロッシュ社製)を用いた。
【0079】
(3−3)マウス腹水法による抗体の産生
選択した10ウェルの細胞を、さらに同様にELISAスクリーニングを行って、シグナルの高かった上位1ウェルの細胞についてマウス腹水法(マウス2匹を使用)により抗体を作製した。得られた抗体を、抗コール酸抗体-1と称する。
【0080】
(3−4)デオキシコール酸に対する抗体、及びケノデオキシコール酸に対する抗体の調製
デオキシコール酸に対する抗体、及びケノデオキシコール酸に対する抗体の調製も、と同様に行った。得られた抗体をそれぞれ、抗デオキシコール酸抗体-1及び抗ケノデオキシコール酸抗体-1と称する。
【0081】
(3−5)抗体のサブクラスと抗体産生量
で調製した抗体のサブクラスと抗体産生量を表2に示した。
【0082】
【表2】
【0083】
(4)抗マウス抗体の作製
マウス由来のグロブリン(LAMPIRE Biological Laboratories社製、カタログ番号7404302、Mouse Gamma Globulin Salt Fractionation、500mg)を準備し、完全フロイントアジュバント(CFA)と混合したエマルジョンを初回投与し、2〜4回目の免疫には不完全アジュバント(IFA)と混合したエマルジョンを投与する方法で、ヤギへ免疫感作(皮下免疫)を2週間隔で4回免疫を行った。その後、ELISA測定を行って抗体価の上昇を確認した後に全採血を行い、遠心分離により抗血清を得た。その後、Protein Aカラム(Thermo scientific社製Pierce ProteinA Columns、カタログ番号20356)により精製し、目的の抗マウス抗体を取得した。
【0084】
(5)抗CRP抗体の作製
rCRP抗原(Recombinant CRP:オリエンタル酵母社製、製品番号47191000、5mg)を準備し、完全アジュバント(CFA)と混合したエマルジョンを初回投与し、2〜4回目の免疫には不完全アジュバント(IFA)と混合したエマルジョンを投与する方法で、マウスへ免疫感作(皮下免疫)を2週間隔で4回免疫を行った。その後、ELISA測定を行って抗体価の上昇を確認した後に全採血を行い、遠心分離により抗血清を得た。その後、ProteinAカラム(Thermo scientific社製 Pierce ProteinA Columns、カタログ番号20356)により精製し、目的の抗CRP抗体−1を取得した。
【0085】
(6)抗胆汁酸抗体で標識した蛍光粒子の調製
(6−1)抗CRP抗体−1でブロッキングした蛍光粒子1の調製
抗CRP抗体−1でブロッキングした蛍光粒子を、以下の通り調製した。
2質量%(固形分濃度)蛍光ラテックス粒子水溶液(Invitrogen社製、平均粒径200nm)357μLに、50mmol/LのMES(2−Morpholinoethanesulfonic acid)緩衝液(pH6.0)溶液282μLを加え、5mg/mLの抗コール酸抗体-1 (で作製したもの)5.3μL、5mg/mLの抗デオキシコール酸抗体-1(で作製したもの)5.3μLと、5mg/mLの抗ケノデオキシコール酸抗体−1(で作製したもの)6.9μL、及び、5mg/mLの抗CRP抗体−1(で作製したもの)75.5μLを添加し、室温で15分間攪拌した。その後、10mg/mLのEDC水溶液7.5μLを加え、室温で1.5時間撹拌した。2mol/LのGlycine(和光純薬社製)水溶液37.5μLを添加して15分間撹拌した後、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行い、蛍光ラテックス粒子を沈降させた。rpmは回毎分(revolution per minute)を示し、1rpm=1min-1 である。その後、上清を取り除き、PBS(pH7.4)750μLを加え、超音波洗浄機により蛍光ラテックス粒子を再分散させた。再度、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行って上清を除いた後、PBS(pH7.4)750μLを加えて、蛍光ラテックス粒子を再分散させることで、3種の抗胆汁酸抗体と抗CRP抗体が結合した蛍光粒子1の1質量%溶液を調製した。
【0086】
(6−2)BSAでブロッキングした蛍光粒子2の調製
BSAでブロッキングした蛍光粒子を、以下の通り調製した。
2質量%(固形分濃度)蛍光ラテックス粒子水溶液(Invitrogen社製、平均粒径200nm)357μLに、50mmol/LのMES緩衝液(pH6.0)溶液282μLを加え、5mg/mLの抗コール酸抗体-1 (で作製したもの)51.2μL、5mg/mLの抗デオキシコール酸抗体-1(で作製したもの)66.6μLと、5mg/mLの抗ケノデオキシコール酸抗体−1(で作製したもの)83.4μLとを添加し、室温で15分間攪拌した。その後、10mg/mLのEDC水溶液7.5μLを加え、室温で1.5時間撹拌した。2mol/LのGlycine(和光純薬社製)水溶液37.5μLを添加して15分間撹拌した後、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行い、蛍光ラテックス粒子を沈降させた。rpmは回毎分(revolution per minute)を示し、1rpm=1min-1 である。その後、上清を取り除き、PBS溶液(pH7.4)750μLを加え、超音波洗浄機により蛍光ラテックス粒子を再分散させた。再度、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行って上清を除いた後、1質量BSAを含むPBS(pH7.4)750μLを加えて、蛍光ラテックス粒子を再分散させることで、BSAでブロッキングした蛍光粒子2の1質量%溶液を調製した。
【0087】
(7)基板の作製
ポリメチルメタクリレート(PMMA)の基体(三菱レイヨン(株)社製、アクリペット(登録商標)VH)を用意した。マグネトロンスパッタ法により、検出領域と参照領域の2箇所に、それぞれ厚さ45nmの金膜を片面に幅4mm、長さ3mmとなるように作製し、これを、基板を構成するためのチップとして使用した。このチップの検出領域の金膜面上に、結合体−1、結合体−2及び結合体−3を含有比率(質量比で1:1:1)で含む液(濃度:50μg/mL in 50mmol/L MES緩衝液 pH6,150mmol/L NaCl)と、ブロッキング剤としてBSA(150mg)を含む液を点着し、乾燥させ、3種の結合体を固定化した基板1を複数作製した。また、それぞれの基板の参照領域には、(4)で作製した抗マウス抗体を含む液(濃度:50μg/mL in 50mmol/L MES緩衝液 pH6,150mmol/L NaCl)を点着して、乾燥させた。また、同様にブロッキング剤として抗CRP抗体−1(150mg)を用いた基板も作製した。
【0088】
このように調製した3種類の複数の基板をセンサチップの流路として使用する前に、予め調製した洗浄用溶液(0.05質量%Tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウラート、和光純薬社製)を含むPBS(pH7.4))300μLを用いて3回繰り返し洗浄した。
【0089】
(8)流路型センサチップの作製
特開2010−190880号公報の第2の実施形態の構成となるように、流路型センサチップを作製した。その概略図を図1及び図2に示した。図1は、センサチップ1の概略図であり、図2は、センサチップ1の分解図である。センサチップ1は、上部部材2、中間部材3及び基板4から構成されている。上部部材2には、第一の容器5及び第二の容器6が設けられている。なお、第一の容器5及び第二の容器6を併せて、容器群7と称する。基板4には、流路10が形成されており、流路10の上には、検出領域8及び参照領域9が形成されている。
【0090】
(9)大型機(既存の胆汁酸測定試薬)での測定
免疫測定で、当業者により広く使用されている大型機である日立自動分析装置7170により、取り扱い説明書に従い、胆汁酸の量が既知である試料の測定を行い、胆汁酸の測定値を得た。
【0091】
(10)蛍光粒子を用いた胆汁酸の免疫測定
25℃の環境下で実験準備を行った。その2時間後に、(9)で測定した胆汁酸の量が既知である試料を、(6−1)及び(6−2)で調製した蛍光粒子1又は蛍光粒子2を含むカップにおいて予め10分間攪拌しながら混合した。次に、(7)で作製した基板1を封入した流路型センサチップにそれぞれ点着した。点着後、ポンプ吸引を行いながら混合液を10μL/分の速度で流下させ、胆汁酸・BSA結合体を固定した金膜面上に接触させてから1.5分間継続して蛍光強度を測定した。各基板において得られた検出領域と参照領域のそれぞれの蛍光強度の単位時間における増加速度を蛍光シグナル値として求め、検出領域のシグナル値を参照領域のシグナル値で除することで規格化を行った。また、胆汁酸濃度0の試料を用意して同様にして蛍光シグナル値の規格化を行い、胆汁酸を含まない試料からのシグナル値の規格化を行った。
【0092】
(11)検量線の作成
(10)で求めた胆汁酸の量が既知である試料の規格化した蛍光シグナル値と、(9)で求めた大型機での測定値、との対応関係を求めることで、(1−1)から(1−3)で調製した、胆汁酸・BSA結合体−1〜3を用いた基板に対して、それぞれ検量線を作成した。
【0093】
(12)胆汁酸の量が未知である試料の測定結果
北山ラベス(株)からイヌの血清1〜4を入手し、表3に示すような蛍光粒子と基板の組み合わせでそれぞれ実験を行い、(11)で作成した検量線を使用して胆汁酸の測定値を得た。また、血清1〜4について、大型機を用いて胆汁酸の測定値を求めた。
大型機の測定値を基準にして、その値からどれだけ測定値が乖離したかを以下の計算式1で計算し、結果を表3にまとめた。
【0094】
大型機との乖離幅%の計算式
【数1】
【0095】
【表3】
【0096】
表3の結果から、基板上の金膜(固相)上のブロッキング剤と、標識を有する粒子上のブロッキング剤とが異なる場合に、すべての検体において、正常な値での測定が可能であることがわかり、本発明の効果が確認された。
【0097】
実施例2:
(1)コルチゾールのオキシム誘導体の合成
文献(STEROIDS, 1974, Jan. 49-64)に従い、コルチゾールをエナミン化し、ヒドロキシルアミン誘導体と反応させることで、コルチゾールのオキシム誘導体−1の合成を行った。
【化3】
【0098】
コルチゾール(1g)のメタノール懸濁液に対してピロリジンを1当量滴下し、室温で5分間攪拌した。反応系中でエナミンが生じ、溶液が赤変した。その後、もう1当量のピロリジン、及びヒドロキシルアミン誘導体(NH2−O−CH2−COOH)(0.35g)を加えると消色し、反応温度を55℃にて攪拌、オキシム化を行った。反応はスムーズに進行し、コルチゾールのオキシム誘導体−1(1.1g:84%)が得られた。
【0099】
(2)コルチゾール-BSA結合体の調整
で合成したコルチゾールのオキシム誘導体−1を使用して、以下の方法でコルチゾール−BSA結合体−1を調製した。
【化4】
【0100】
乾燥DMFにオキシム誘導体−1(50mg、115μmol)と過剰量のNHS及びWSC(water soluble carbodiimide)を用いて活性エステル化した。その後、BSA(193mg)のPBS溶液に滴下した。反応終了後、反応溶液をアセトニトリル/水=1/1(0.1%TFA含有)溶液中(5L)で透析精製を行った。最後に、凍結乾燥し、コルチゾール−BSA結合体−1の白色の固体を得た。
【0101】
(3)コルチゾールとBSAのモル比の測定
(2)で調製したコルチゾール−BSA結合体−1を0.1質量%TFA: アセトニトリル=2/1の溶液に溶解し、1mg/mLの濃度に調整した。この溶液1μLと、マトリックス(SA;シナピン酸)4μLとを混合し、金プレート上に1μl×4点着した。自然乾燥した後に、MALDI−TOF−MS装置(Applied Bio Systems社品 Voyger)に金プレートを挿入し、1スポットごとに積算900ショットを行い質量情報となるデータを取得(N=4)した。このデータを用いて、コルチゾール−BSA結合体−1に対応するピークの、ピーク強度の最大の値の50%強度での分子量中心値をBSA結合体のピークとして採用し、このピーク値から垂直に降ろした位置をコルチゾール−BSA結合体−1の分子量と見なして、N=4の平均値を取り、(コルチゾール−BSA結合体−1の分子量−native BSAの分子量)/コルチゾールの分子量(例えば、コルチゾールの場合435−18=417)でBSAに対するコルチゾールの結合数を計算した。得られた結合体のコルチゾール/BSA比を表4に示した。
【0102】
【表4】
【0103】
(4)抗体産生ハイブリドーマ及びコルチゾールモノクローナル抗体−1の作製
免疫感作の抗原として、コルチゾール−BSA結合体−1を使用した。コルチゾール−BSA結合体−1をマウス免疫感作抗原として用いて、数回、マウス背部皮下に結合体を初回の免疫を100μg/匹の量、2回目以降の免疫を50μg/匹の量で免疫を行った。この免疫は、完全アジュバント(CFA)と混合したエマルジョンを初回投与し、2〜4回目の免疫には不完全アジュバント(IFA)と混合したエマルジョンを投与した。2週間隔で4回免疫を行った。別途、3回目、4回目の免疫の翌週に採血を行い、採血血清100μLをELISA測定にて抗体価の測定を実施した。抗体価が目的の値であることを確認し、4回目の免疫から2週間後の免疫を最終免疫として、抗原である結合体をリン酸緩衝液(PBS、和光純薬工業(株)社製、pH7.1〜7.3)1mLで希釈溶解し、マウスの腹腔内に投与する形で行った。投与の3日後にマウスの脾臓を摘出した。
【0104】
マウスより摘出した脾臓細胞と変異株骨髄腫細胞(ミエローマ:P3−X63−Ag8−U1)を、7:1の割合で混合した後に、ポリエチレングリコール(PEG)を添加し、遠心分離後に培地(RPMI−1640+10質量%FBS)に浮遊させた。この浮遊した脾臓細胞を、細胞数として1.0×105(cell/well)となるように、96wellプレートに播種した。翌日、HAT倍地を添加し、増殖したハイブリドーマの培養上清を抗体測定系のELISAでスクリーニングを行った。測定用抗原が500ng/mLとなるようPBS溶液で希釈し、ELISAのカップに添加して静置して、カップの底に測定用抗原を固定化し、上澄み液を除去した。測定対象となる脾臓細胞が産生した抗体に対する2次抗体として抗マウスIgG HRP(horseradish peroxidase)標識抗体を用いた。ELISAの結果から陽性であったウェルを24ウェルプレートを用いて培養し、培養上清を各1mL採取した。再度、同じ抗体測定系のELISAで二次スクリーニングを行った。細胞融合時の同一ウェル中で、ELISAシグナルの高い上位の6ウェルを選択してバイアル瓶に入れた。
【0105】
それぞれのバイアル中の細胞を、10質量%のウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS)を含む基礎培地RPMI1640(ロズウェルパーク記念研究所培地:Roswell Park Memorial Institute Medium)を用いて限界希釈し、6個の96ウェルプレートのそれぞれのウェルに1滴ずつピペットで添加し、それぞれのウェルを顕微鏡で観察し、それぞれのウェル中の細胞がシングルセルであることを確認した。3週間培養した後、と同様にして、増殖したハイブリドーマの培養上清を抗体測定系のELISAでスクリーニングを行った。ELISAシグナルの高い上位の10ウェルを選択し、ハイブリドーマの調製を終了した。得られた抗体のサブクラスの決定は、Isotyping kit(ロッシュ社製)を用いた。
【0106】
選択した15ウェルの細胞を、さらに同様にELISAスクリーニングを行って、シグナルの高かった上位1ウェルの細胞についてマウス腹水法(マウス2匹を使用)により抗体を作製した。
で調製した抗体のサブクラスと抗体産生量を表5に示した。
【0107】
【表5】
【0108】
(5)抗マウス抗体−1の作製
マウス由来のグロブリン(LAMPIRE Biological Laboratories社製、カタログ番号7404302、Mouse Gamma Globulin Salt Fractionation、500mg)を準備し、完全アジュバント(CFA)と混合したエマルジョンを初回投与し、2〜4回目の免疫には不完全アジュバント(IFA)と混合したエマルジョンを投与する方法で、ウサギへ免疫感作(皮下免疫)を2週間隔で4回免疫を行った。その後、ELISA測定を行って抗体価の上昇を確認した後に全採血を行い、遠心分離により抗血清を得た。その後、ProteinAカラム(Thermo scientific社製Pierce ProteinA Columns、カタログ番号20356)により精製し、目的の抗マウス抗体−1を取得した。
【0109】
(6)抗CRP抗体−1の作製
rCRP抗原(Recombinant CRP:オリエンタル酵母社製,製品番号47191000、5mg)を準備し、完全アジュバント(CFA)と混合したエマルジョンを初回投与し、2〜4回目の免疫には不完全アジュバント(IFA)と混合したエマルジョンを投与する方法で、マウスへ免疫感作(皮下免疫)を2週間隔で4回免疫を行った。その後、ELISA測定を行って抗体価の上昇を確認した後に全採血を行い、遠心分離により抗血清を得た。その後、ProteinAカラム(Thermo scientific社製 Pierce ProteinA Columns、カタログ番号20356)により精製し、目的の抗CRP抗体−1を取得した。
【0110】
(7)蛍光粒子の調製
(7−1)抗CRP抗体−1でブロッキングした蛍光粒子−1の調製
抗CRP抗体−1でブロッキングした蛍光粒子を、以下の通り調製した。
2質量%(固形分濃度)蛍光ラテックス粒子水溶液(Invitrogen社製、平均粒径200nm)357μLに、50mMのMES緩衝液(pH6.0)溶液282μLを加え、(4)で調製した5mg/mLのコルチゾールモノクローナル抗体−1の溶液15μL、及び5mg/mLのCRP抗体−1の溶液75.5μLを添加し、室温で15分間攪拌した。その後、10mg/mLの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)水溶液を7.5μL加え、室温で1.5時間撹拌した。2mol/Lのグリシン(Glycine:和光純薬工業(株)社製)水溶液を37.5μL添加して15分間撹拌した後、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行い、蛍光ラテックス粒子を沈降させた。その後上清を取り除き、PBS溶液(pH7.4)を750μL加え、超音波洗浄機により蛍光ラテックス粒子を再分散させた。再度、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行って上清を除いた後、PBS(pH7.4)750μL加えて、蛍光ラテックス粒子を再分散させることで、抗CRP抗体でブロッキングした抗コルチゾール抗体結合蛍光ラテックス粒子(蛍光粒子−1)の1質量%溶液を調製した。
【0111】
(7−2)BSAでブロッキングした蛍光粒子−2の調製
比較例として使用する、BSAでブロッキングした蛍光粒子を、以下の通り調製した。
2質量%(固形分濃度)蛍光ラテックス粒子水溶液(Invitrogen社製、平均粒径200nm)357μLに、50mMのMES緩衝液(pH6.0)溶液282μLを加え、(4)で調製した5mg/mLのコルチゾールモノクローナル抗体−1の溶液15μL、及び5mg/mLのBSAの溶液150μLを添加し、室温で15分間攪拌した。その後、10mg/mLのEDC水溶液を7.5μL加え、室温で1.5時間撹拌した。2mol/Lのグリシン(Glycine:和光純薬社製)水溶液を37.5μL添加して15分間撹拌した後、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行い、蛍光ラテックス粒子を沈降させた。その後上清を取り除き、PBS溶液(pH7.4)を750μL加え、超音波洗浄機により蛍光ラテックス粒子を再分散させた。再度、遠心分離(15,000rpm、4℃、15分)を行って上清を除いた後、1質量%BSAを含むPBS(pH7.4)溶液750μL加えて、蛍光ラテックス粒子を再分散させることで、BSAでブロッキングした3種の抗コルチゾール抗体結合蛍光ラテックス粒子(蛍光粒子−2)の1質量%溶液を調製した。
【0112】
(8)流路型センサチップの作製
ポリメチルメタクリレート(PMMA)の基体(三菱レイヨン(株)社製、アクリペットVH)を用意し、マグネトロンスパッタ法により、検出領域と参照領域の2箇所に、それぞれ厚さ45nmの金膜を片面に幅4mm、長さ3mmとなるように作製して基板を構成するためのチップを作製した。このチップの検出領域の金膜面上に、(2)で調製したコルチゾール−BSA結合体−1(濃度:50μg/mL in 50mM MES緩衝液 pH6、150mM NaCl)と、ブロッキング剤としてBSA(2mg)を含む液を点着し、乾燥させることで、基板1を複数作製した。また、それぞれの基板の参照領域には、(5)で作製した抗マウス抗体−1を含む液(濃度:50μg/mL in 50mM MES緩衝液pH6、150mM NaCl)を点着して、乾燥させた。また、同様にブロッキング剤として抗CRP抗体−1(2mg)を用いた基板も作製した。
この後、実施例1と同様にして、基板の洗浄を行い、流路に封入して流路型センサチップを作製した。その概略図を図1及び図2に示した。
【0113】
(9)大型機(既存のコルチゾール測定試薬)での測定
免疫測定で、当業者により広く使用されている大型機であるシーメンス社イムライズ1000により、取り扱い説明書に従い、コルチゾールの量が既知である試料の測定を行い、コルチゾールの測定値を得た。
【0114】
(10)蛍光粒子を用いたコルチゾールの免疫測定
25℃の環境下で実験準備を行った。その2時間後に、(9)で測定したコルチゾールの量が既知である試料を、(7−1)で調製したラテックス粒子−1、又は(7−2)で調製したラテックス粒子−2を含むカップにおいてそれぞれ、予め10分間攪拌しながら混合した。次に、(8)で作製した基板1を封入した流路型センサチップにそれぞれ点着した。点着後、ポンプ吸引を行いながら混合液を10μL/minの速度で流下させ、コルチゾール−BSA結合体−1を固定した金膜面上に接触させてから1.5分間継続して蛍光強度を測定した。各基板において得られた検出領域と参照領域のそれぞれの蛍光強度の単位時間における増加速度を蛍光シグナル値として求め、検出領域のシグナル値を参照領域のシグナル値で除することで規格化を行った。また、コルチゾール濃度0の試料を用意して同様にして蛍光シグナル値の規格化を行い、コルチゾールを含まない試料からのシグナル値の規格化を行った。
【0115】
(11)検量線の作成
(10)で求めたコルチゾールの量が既知である試料の規格化した蛍光シグナル値と、(9)で求めた大型機での測定値、との対応関係を求めることで、(2)で調製したコルチゾール−BSA結合体―1を用いた基板に対して、それぞれ検量線を作成した。
【0116】
(12)コルチゾール量が未知である試料の測定結果
北山ラベス(株)から検体としてイヌの血清1〜8を入手し、表4に示すような蛍光粒子と基板の組み合わせでそれぞれ実験を行い、(11)で求めた検量線を使用して得られたコルチゾールの測定値と、大型機を用いてコルチゾールの測定値を求めた。
大型機の測定値を基準にして、その値からどれだけ測定値が乖離したかを以下の計算式2で計算し、結果を表6にまとめた。
【0117】
大型機との乖離幅%の計算式
【数2】
【0118】
【表6】
【0119】
表6の結果から、基板上の金膜(固相)上のブロッキング剤と、標識を有する粒子上のブロッキング剤が異なる場合に、すべての検体において、正常な値での測定が可能であることがわかり、本発明の効果が確認された。
【符号の説明】
【0120】
1 センサチップ
2 上部部材
3 中間部材
4 基板
5 第一の容器
6 第二の容器
7 容器群
8 検出領域
9 参照領域
10 流路
【図1】
【図2】

【手続補正書】
【提出日】2017年12月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質と第一のブロッキング剤とを有する標識粒子;及び
前記測定対象物質又は前記第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質と第二のブロッキング剤とを有する検出領域を含む基板;
を含む生体試料中の測定対象物質を定量するためのキットであって、前記第一のブロッキング剤と前記第二のブロッキング剤とがそれぞれ互いに異なり、
前記第一のブロッキング剤が、アルブミン、及び前記測定対象物質と結合性を有する免疫グロブリン以外の免疫グロブリンの一方であり、
前記第二のブロッキング剤が、アルブミン、及び前記測定対象物質と結合性を有する免疫グロブリン以外の免疫グロブリンの他方であり、
前記標識粒子が、乳化剤を有しない標識粒子である、
キット。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
前記アルブミンが、ウシ血清アルブミンである、請求項1に記載のキット。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記標識粒子が蛍光粒子であり、前記検出領域が金膜上にある、請求項1または5に記載のキット。
【請求項8】
生体試料中の測定対象物質を定量する方法であって、
生体試料を、測定対象物質と結合性を有する第一の結合物質と第一のブロッキング剤とを有する標識粒子と反応させる反応工程;及び
前記測定対象物質又は前記第一の結合物質の何れかと結合性を有する第二の結合物質と第二のブロッキング剤とを有する検出領域を含む基板に、前記反応工程で得られた反応産物を接触させて、標識粒子を基板上に捕捉させ、前記測定対象物質の量に関連した標識情報を取得する、測定対象物質関連標識情報取得工程;
を含み、
前記第一のブロッキング剤が、アルブミン、及び前記測定対象物質と結合性を有する免疫グロブリン以外の免疫グロブリンの一方であり、
前記第二のブロッキング剤が、アルブミン、及び前記測定対象物質と結合性を有する免疫グロブリン以外の免疫グロブリンの他方であり、
前記標識粒子が、乳化剤を有しない標識粒子である、
方法。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
(削除)
【請求項12】
前記アルブミンが、ウシ血清アルブミンである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
前記標識粒子が蛍光粒子であり、前記検出領域が金膜上にある、請求項8または12に記載の方法。
【請求項15】
表面プラズモン励起による蛍光検出により、測定対象物質の量に関連した標識情報を取得する、請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】

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