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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年9月28日
【発行日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】太陽電池セル
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0747 20120101AFI20181130BHJP
【FI】
   H01L31/06 455
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
【出願番号】特願2018-506769(P2018-506769)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2016年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-61965(P2016-61965)
(32)【優先日】2016年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 幹英
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA02
5F151AA05
5F151AA16
5F151BA16
5F151CA13
5F151CA14
5F151CB12
5F151CB15
5F151CB21
5F151DA03
5F151DA07
5F151DA10
5F151FA02
5F151FA04
5F151FA06
5F151FA15
5F151FA18
5F151GA04
5F151GA15
5F151HA03
(57)【要約】
実施形態の一例である太陽電池セル10は、n型結晶性シリコンウェーハ11と、当該ウェーハの受光面上に形成された第1窒化ケイ素層12と、当該裏面の第1領域上に形成されたn型非晶質シリコン層14と、n型非晶質シリコン層14上の一部に形成された第2窒化ケイ素層16と、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面の第2領域上、および第2窒化ケイ素層16上に形成されたp型非晶質シリコン層15とを備える。第2窒化ケイ素層16は、第1窒化ケイ素層12より屈折率が高い。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性シリコンウェーハと、
窒化ケイ素を主成分として構成され、前記結晶性シリコンウェーハの受光面上に形成された第1窒化ケイ素層と、
前記結晶性シリコンウェーハの裏面の第1領域上に形成された第1導電型の第1非晶質シリコン層と、
窒化ケイ素を主成分として構成され、前記第1非晶質シリコン層上の一部に形成された第2窒化ケイ素層と、
前記結晶性シリコンウェーハの裏面の第2領域上、および前記第2窒化ケイ素層上に形成された第2導電型の第2非晶質シリコン層と、
を備え、
前記第2窒化ケイ素層は、前記第1窒化ケイ素層より屈折率が高い、太陽電池セル。
【請求項2】
前記結晶性シリコンウェーハは、n型結晶性シリコンウェーハであり、
前記第1非晶質シリコン層は、n型非晶質シリコンを主成分として構成され、
前記第2非晶質シリコン層は、p型非晶質シリコンを主成分として構成される、請求項1に記載の太陽電池セル。
【請求項3】
実質的に真正な非晶質シリコンか、または前記第1非晶質シリコン層を構成するn型非晶質シリコンよりn型ドーパントの濃度が低い非晶質シリコンを主成分として構成され、前記結晶性シリコンウェーハと前記第1非晶質シリコン層との間に形成されたパッシベーション層をさらに備える、請求項2に記載の太陽電池セル。
【請求項4】
前記第2窒化ケイ素層は、波長633nmの光の屈折率が2.1以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池セル。
【請求項5】
前記第2窒化ケイ素層は、波長633nmの光の屈折率が2.5以下である、請求項4に記載の太陽電池セル。
【請求項6】
前記第2窒化ケイ素層は、前記第1窒化ケイ素層より水素濃度が高い、請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池セル。
【請求項7】
前記第2窒化ケイ素層は、前記第1窒化ケイ素層より密度が低い、請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、結晶性シリコンウェーハの裏面上にそれぞれ設けられたn型非晶質シリコン層およびp型非晶質シリコン層と、当該各シリコン層の間に介在する絶縁層である窒化ケイ素層とを備えた太陽電池セルが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の太陽電池セルでは、シリコンウェーハの裏面側のみに電極が設けられている。また、当該太陽電池セルでは、窒化ケイ素層と非晶質シリコン層との間に当該シリコン層への窒素の拡散を防止する拡散防止膜をさらに設けて、非晶質シリコン層とシリコンウェーハとの界面におけるパッシベーション性能の低下を抑制している。
【0003】
特許文献1の太陽電池セルのように、シリコンウェーハの裏面側のみに電極を設けた裏面接合型の構造とすれば、ウェーハの受光面側に電極を設ける場合と比較して光の入射量を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−6841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、太陽電池セルにおいて、シリコンウェーハに入射する光量を増加させると共に、開放電圧と短絡電流を向上させて出力特性を改善することは重要な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る太陽電池セルは、結晶性シリコンウェーハと、窒化ケイ素を主成分として構成され、結晶性シリコンウェーハの受光面上に形成された第1窒化ケイ素層と、結晶性シリコンウェーハの裏面の第1領域上に形成された第1導電型の第1非晶質シリコン層と、窒化ケイ素を主成分として構成され、第1非晶質シリコン層上の一部に形成された第2窒化ケイ素層と、結晶性シリコンウェーハの裏面の第2領域上、および第2窒化ケイ素層上に形成された第2導電型の第2非晶質シリコン層とを備え、第2窒化ケイ素層は、第1窒化ケイ素層より屈折率が高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る太陽電池セルは、開放電圧と短絡電流が高く、出力特性に優れる。また、シリコンウェーハに入射する光の量が多く、高い発電効率が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の一例である太陽電池セルを裏面側から見た図である。
図2図1中のAA線断面の一部を示す図である。
図3】第2窒化ケイ素層の屈折率とセルの開放電圧の関係を示す図である。
図4】第2窒化ケイ素層の屈折率と水素濃度の関係を示す図である。
図5】第2窒化ケイ素層の水素濃度とn型非晶質シリコン層および第1パッシベーション層の水素濃度の関係を示す図である。
図6A】実施形態の一例である太陽電池セルの製造方法を説明するための図である。
図6B】実施形態の一例である太陽電池セルの製造方法を説明するための図である。
図6C】実施形態の一例である太陽電池セルの製造方法を説明するための図である。
図6D】実施形態の一例である太陽電池セルの製造方法を説明するための図である。
図6E】実施形態の一例である太陽電池セルの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、太陽電池セルの出力特性をさらに改善すべく鋭意検討を行った結果、裏面側の窒化ケイ素層(第2窒化ケイ素層)の屈折率を受光面側の窒化ケイ素層(第1窒化ケイ素層)の屈折率より高くした新たなセル構造を見出した。かかる構造を採用することにより、光の入射量が減少することなく、開放電圧と短絡電流を向上させることが可能となる。本発明者らは、窒化ケイ素層の屈折率を高くすることで、太陽電池セルの出力特性が向上することをつきとめた。但し、窒化ケイ素層の屈折率を高くすると、特に短波長の光の吸収量が多くなる。そこで、本開示に係る太陽電池セルでは、受光面側の第1窒化ケイ素層の屈折率は高くせず、裏面側の第2窒化ケイ素層の屈折率を高くすることにより、シリコンウェーハに入射する光量を減少させることなく、出力特性の向上を図っている。
【0010】
本開示に係る太陽電池セルでは、第2窒化ケイ素層の屈折率を高くすることで、シリコンウェーハと第1非晶質シリコン層との界面におけるパッシベーション性能が向上して、出力特性が改善されたと考えられる。詳しくは後述するが、パッシベーション性能が向上する要因として、第2窒化ケイ素層に含まれる水素が第1非晶質シリコン層に拡散して、当該非晶質シリコン層の水素濃度が上昇することが考えられる。
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る太陽電池セルの実施形態の一例について詳細に説明する。なお、本開示に係る太陽電池セルは、以下で説明する実施形態に限定されない。実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0012】
本明細書において「略〜」との記載は、略全域を例に説明すると、全域はもとより実質的に全域と認められる場合を含む意図である。また、「〜上に形成された」との記載は、シリコンウェーハの受光面を例に説明すると、第1窒化ケイ素層がウェーハの受光面上に直接形成される場合だけでなく、受光面上に形成された他の層を介して第1窒化ケイ素層が形成される場合を含む意図である。また、n型ドーパントとはドナーとして機能する不純物を意味し、p型ドーパントとはアクセプターとして機能する不純物を意味する。
【0013】
以下で説明する実施形態では、結晶性シリコンウェーハとして、n型にドーピングされたn型結晶性シリコンウェーハを例示する。但し、結晶性シリコンウェーハには、p型にドーピングされたp型結晶性シリコンウェーハを用いることも可能である。この場合は、第1導電型の第1非晶質シリコン層としてp型非晶質シリコンを主成分とするp型非晶質シリコン層を用い、第2導電型の第2非晶質シリコン層としてn型非晶質シリコンを主成分とするn型非晶質シリコン層を用いることが好ましい。第1窒化ケイ素層および第2窒化ケイ素層には、n型結晶性シリコンウェーハを用いる場合と同様の構成を適用できる。
【0014】
図1は、実施形態の一例である太陽電池セル10を裏面側から見た図である。図2は、図1中のAA線断面の一部を示す図である。図1および図2では、太陽電池セル10の裏面に沿った一の方向をα方向、当該一の方向に直交する他の方向をβ方向、太陽電池セル10の厚み方向をγ方向としてそれぞれ表している。
【0015】
図1および図2に示すように、太陽電池セル10は、n型結晶性シリコンウェーハ11と、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面上に形成された電極とを備える。電極には、後述のn型領域からキャリアを収集する集電極20(n型領域集電極)と、後述のp型領域からキャリアを収集する集電極30(p型領域集電極)とが含まれる。太陽電池セル10では、n型結晶性シリコンウェーハ11の受光面側に電極が設けられず、裏面側のみに電極が設けられている。ここで、n型結晶性シリコンウェーハ11の「受光面」とは、光が主に入射(50%超過〜100%)する面を意味し、「裏面」とは受光面と反対側の面を意味する。
【0016】
n型結晶性シリコンウェーハ11は、n型多結晶シリコンウェーハであってもよいが、好ましくはn型単結晶シリコンウェーハである。n型結晶性シリコンウェーハ11におけるn型ドーパントの濃度は、例えば、1×1014〜1×1017atoms/cm3である。n型ドーパントには、一般的にリン(P)が用いられる。n型結晶性シリコンウェーハ11は、例えば、1辺が120〜160mmの略正方形の表面形状を有する。略正方形には、短辺と長辺とが交互に連続し、互いに平行な2組の長辺を備えた八角形が含まれる。n型結晶性シリコンウェーハ11の厚みは、例えば、50〜300μmである。
【0017】
n型結晶性シリコンウェーハ11の表面には、テクスチャ構造(図示せず)が形成されていることが好ましい。テクスチャ構造とは、表面反射を抑制してn型結晶性シリコンウェーハ11の光吸収量を増大させるための表面凹凸構造であって、受光面および裏面のうちの一方に、または、受光面および裏面の両方に形成される。本実施形態の太陽電池セル10は裏面接合型の構造を有するので、テクスチャ構造はn型結晶性シリコンウェーハ11の受光面側のみに設けられることが好ましい。テクスチャ構造は、アルカリ性溶液を用いて単結晶シリコンウェーハの(100)面を異方性エッチングすることで形成でき、単結晶シリコンウェーハの表面に(111)面を斜面としたピラミッド形状の凹凸構造が形成される。テクスチャ構造の凹凸の高さは、例えば、1〜15μmである。
【0018】
太陽電池セル10は、n型結晶性シリコンウェーハ11の受光面上に形成された第1窒化ケイ素層12を備える。本実施形態では、n型結晶性シリコンウェーハ11と第1窒化ケイ素層12の間に、パッシベーション層13が設けられている。また、太陽電池セル10は、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面側にそれぞれ形成されたn型非晶質シリコン層14と、p型非晶質シリコン層15と、第2窒化ケイ素層16とを備える。n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面上には、n型非晶質シリコン層14によってn型にドーピングされたn型領域が、p型非晶質シリコン層15によってp型にドーピングされたp型領域がそれぞれ形成されている。
【0019】
n型非晶質シリコン層14は、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面の第1領域上に形成される。他方、p型非晶質シリコン層15は、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面の第2領域上に形成される。言い換えると、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面上において、n型非晶質シリコン層14が形成される第1領域がn型領域となり、p型非晶質シリコン層15が形成される第2領域がp型領域となる。第2窒化ケイ素層16は、n型非晶質シリコン層14上の一部に形成される。そして、p型非晶質シリコン層15が、上記第2領域、および第2窒化ケイ素層16上に形成される。
【0020】
太陽電池セル10は、さらに、n型結晶性シリコンウェーハ11とn型非晶質シリコン層14の間に形成されたパッシベーション層17と、n型結晶性シリコンウェーハ11とp型非晶質シリコン層15の間に形成されたパッシベーション層18とを備える。パッシベーション層17はn型非晶質シリコン層14が形成される領域(第1領域)の略全域に形成され、パッシベーション層18はp型非晶質シリコン層15が形成される領域(第2領域および第2窒化ケイ素層16上)の略全域に形成される。パッシベーション層17,18を設けることで、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面側におけるパッシベーション性能が向上する。
【0021】
第1窒化ケイ素層12は、パッシベーション層13を介して、n型結晶性シリコンウェーハ11の受光面上に形成される。第1窒化ケイ素層12およびパッシベーション層13は、n型結晶性シリコンウェーハ11の受光面の略全域に形成される。1辺が120〜160mmの略正方形のn型結晶性シリコンウェーハ11を用いる場合、パッシベーション層13は、略正方形の全面を覆ってもよいし、略正方形の端から2mm以下の外周領域を除いた全面を覆ってもよい。第1窒化ケイ素層12の厚みは、例えば、50〜150nmである。パッシベーション層13の厚みは、例えば、1〜25nmである。
【0022】
第1窒化ケイ素層12は、n型結晶性シリコンウェーハ11の受光面およびパッシベーション層13を保護する保護層として、また入射光の反射を抑制する反射防止層として機能する。第1窒化ケイ素層12は、窒化ケイ素(SiN)を主成分として構成される。第1窒化ケイ素層12は、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素など、SiN以外の成分を含んでいてもよいが、SiNの含有量は層重量に対して50重量%以上であり、好ましくは80重量%以上、あるいは約100重量%である。第1窒化ケイ素層12は、CVDまたはスパッタリングにより成膜できる。
【0023】
第1窒化ケイ素層12は、波長633nmの光の屈折率が2.1未満であることが好ましく、1.9〜2.0が特に好ましい。第1窒化ケイ素層12の屈折率は、分光エリプソメーターを用いて測定される(第2窒化ケイ素層16の屈折率についても同様)。第1窒化ケイ素層12を構成するSiNの組成比Si/Nは、例えば、0.8〜1.2である。一般的に、Si/Nが高いほどSiNの屈折率が高くなる。第1窒化ケイ素層12には、例えば、2×1021〜1×1022atoms/cm3の水素が含まれる。
【0024】
パッシベーション層13は、n型結晶性シリコンウェーハ11の受光面側におけるキャリアの再結合を抑制する。パッシベーション層13は、実質的に真性な非晶質シリコン(以下、「i型非晶質シリコン」という場合がある)か、またはn型非晶質シリコン層14よりドーパント濃度が低い非晶質シリコンを主成分として構成されることが好ましい。パッシベーション層13は、例えば、i型非晶質シリコン層の単層構造であってもよく、i型非晶質シリコン層とn型非晶質シリコン層の積層構造であってもよい。パッシベーション層13は、CVDまたはスパッタリングにより成膜できる。
【0025】
n型非晶質シリコン層14は、パッシベーション層17を介して、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面の第1領域上に形成される。n型非晶質シリコン層14は、n型非晶質シリコンを主成分として構成される。n型非晶質シリコン層14におけるn型ドーパントの濃度は、例えば、1×1020atoms/cm3以上である。n型ドーパントは、特に限定されないが、一般的にはリン(P)が用いられる。n型非晶質シリコン層14の厚みは、例えば、1〜25nmであり、好ましくは1〜10nmである。
【0026】
n型非晶質シリコン層14は、CVDまたはスパッタリングにより成膜できる。また、p型非晶質シリコン層15、第2窒化ケイ素層16、パッシベーション層17,18についても、CVDまたはスパッタリングにより成膜できる。詳しくは後述するが、太陽電池セル10は、n型非晶質シリコン層14の全体を覆って第2窒化ケイ素層16、パッシベーション層18、およびp型非晶質シリコン層15を成膜した後、n型非晶質シリコン層14を覆う各層をパターニングして作製される。
【0027】
n型非晶質シリコン層14には、例えば、5×1021〜1×1022atoms/cm3以上の水素が含まれる。n型非晶質シリコン層14では、第2窒化ケイ素層16からの水素の拡散により、水素濃度が上昇していると考えられる。そして、かかる水素の拡散による水素濃度の上昇が、n型領域におけるパッシベーション性能の向上に寄与していると考えられる。
【0028】
p型非晶質シリコン層15は、パッシベーション層18を介して、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面の第2領域上、および第2窒化ケイ素層16上に形成される。p型非晶質シリコン層15は、p型非晶質シリコンを主成分として構成される。p型非晶質シリコン層15におけるp型ドーパントの濃度は、例えば、1×1020atoms/cm3以上である。p型ドーパントは、特に限定されないが、一般的にはボロン(B)が用いられる。p型非晶質シリコン層15の厚みは、例えば、1〜25nmであり、好ましくは1〜10nmである。p型非晶質シリコン層15には、例えば、5×1021〜1×1022atoms/cm3の水素が含まれる。
【0029】
n型非晶質シリコン層14およびp型非晶質シリコン層15は、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面の略全域に形成される。このため、n型非晶質シリコン層14の一部とp型非晶質シリコン層15の一部が重なって隙間なく形成される。本実施形態では、p型非晶質シリコン層15が第2窒化ケイ素層16を介してn型非晶質シリコン層14上にオーバーラップし、各シリコン層がn型結晶性シリコンウェーハ11の裏面のβ方向に交互に並んでストライプ状に形成されている。1辺が120〜160mmの略正方形のn型結晶性シリコンウェーハ11を用いる場合、各非晶質シリコン層は、略正方形の全面を覆ってもよいし、略正方形の端から2mm以下の外周領域を除いた全面を覆ってもよい。
【0030】
パッシベーション層17は、実質的に真正な非晶質シリコン(i型非晶質シリコン)か、またはn型非晶質シリコン層14を構成するn型非晶質シリコンよりn型ドーパントの濃度が低い非晶質シリコンを主成分として構成されることが好ましい。また、パッシベーション層18は、i型非晶質シリコンか、またはp型非晶質シリコン層15を構成するp型非晶質シリコンよりp型ドーパントの濃度が低い非晶質シリコンを主成分として構成されることが好ましい。パッシベーション層17,18は、例えば、i型非晶質シリコン層の単層構造である。パッシベーション層17,18の厚みは、例えば、1〜25nmであり、好ましくは1〜10nmである。
【0031】
パッシベーション層17には、例えば、5×1021〜1×1022atoms/cm3の水素が含まれる。パッシベーション層17についても、第2窒化ケイ素層16からの水素の拡散により、水素濃度が上昇していると考えられる。
【0032】
第2窒化ケイ素層16は、パッシベーション層17とn型非晶質シリコン層14を介して、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面上に形成される。第2窒化ケイ素層16は、n型非晶質シリコン層14とp型非晶質シリコン層15の間に介在し、各非晶質シリコン層が重なる部分において絶縁層として機能する。すなわち、n型非晶質シリコン層14上においてp型非晶質シリコン層15が重なる領域の略全域に、第2窒化ケイ素層16が形成される。
【0033】
第2窒化ケイ素層16は、第1窒化ケイ素層12と同様に、SiNを主成分として構成される。第2窒化ケイ素層16は、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素など、SiN以外の成分を含んでいてもよいが、SiNの含有量は層重量に対して50重量%以上であり、好ましくは80重量%以上、あるいは約100重量%である。第2窒化ケイ素層16は、第1窒化ケイ素層12と同様に、CVDまたはスパッタリングにより成膜できる。第2窒化ケイ素層16の厚みは、例えば、30〜100nmである。
【0034】
第2窒化ケイ素層16は、第1窒化ケイ素層12より屈折率が高い。波長633nmの光についての屈折率の比(第2窒化ケイ素層16の屈折率/第1窒化ケイ素層12の屈折率)は、例えば、1.05〜1.35である。太陽電池セル10は、n型結晶性シリコンウェーハ11の受光面側では第1窒化ケイ素層12の屈折率を低く抑えて光の入射量を増やし、裏面側では第2窒化ケイ素層16の屈折率を高くしてパッシベーション性能を向上させる。
【0035】
図3は、第2窒化ケイ素層16の波長633nmの光の屈折率と太陽電池セル10の開放電圧Vocの関係を示す図である。図3に示すように、本発明者らの検討により、第2窒化ケイ素層16の屈折率を高くすることで、太陽電池セル10のVocが向上し、出力特性が改善されることが見出された。特に、第2窒化ケイ素層16の屈折率が2.1以上においてVocが大幅に向上している。
【0036】
第2窒化ケイ素層16は、波長633nmの光の屈折率(以下、「屈折率(633nm)」と表記する場合がある)が2.1以上であることが好ましい。一方、第2窒化ケイ素層16の屈折率を高くし過ぎると、成膜の安定性が損なわれる場合があるため、第2窒化ケイ素層16の屈折率(633nm)は、2.5以下であることが好ましい。第2窒化ケイ素層16の屈折率(633nm)の好適な範囲は、2.1〜2.5であり、より好ましくは2.1〜2.2である。
【0037】
第2窒化ケイ素層16の屈折率を上記範囲内に調整する好適な方法としては、CVDで使用する原料ガス中の窒素ラジカル濃度を低くする方法が挙げられる。CVDによる第2窒化ケイ素層16の成膜には、例えば、原料ガスとしてシラン(SiH4)およびアンモニア(NH3)を使用するが、NH3/SiH4ガス流量比を下げることにより、第2窒化ケイ素層16の屈折率を高くすることができる。なお、成膜時の温度、圧力等を変更することによっても、第2窒化ケイ素層16の膜質を変えることができる。例えば、成膜時の温度を高くすると、第2窒化ケイ素層16の屈折率は高くなり易い。
【0038】
図4は、第2窒化ケイ素層16の屈折率(633nm)と水素濃度の関係を示す図である。ここで、第2窒化ケイ素層16の水素濃度は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)によって測定した相対値である。図4に示すように、第2窒化ケイ素層16の屈折率を高くすると、第2窒化ケイ素層16の水素濃度が高くなる。より詳しくは、第2窒化ケイ素層16の屈折率が2.1未満では屈折率を上げても水素濃度は略変化せず、屈折率が2.1以上の範囲で水素濃度と屈折率の比例関係がある。
【0039】
第2窒化ケイ素層16は、第1窒化ケイ素層12より水素濃度が高く、第2窒化ケイ素層16には、例えば、1.0×1022〜2.5×1022atoms/cm3の水素が含まれる。水素濃度が上昇し始める屈折率2.1で、太陽電池セル10のVocが大幅に向上することから、上述のように、第2窒化ケイ素層16の水素濃度がVocの向上に寄与していると考えられる。
【0040】
図5(a)は、第2窒化ケイ素層16の水素濃度とn型非晶質シリコン層14およびパッシベーション層17の水素濃度の関係を示す図である。図5(b)には、比較として従来例を示している。図5に示すように、第2窒化ケイ素層16は、従来の太陽電池セルの窒化ケイ素層と比べて屈折率が高く、水素濃度が高い。そして、水素濃度が高い第2窒化ケイ素層16に接するn型非晶質シリコン層14とパッシベーション層17には、例えば、p型非晶質シリコン層15およびパッシベーション層18の成膜時に加わる熱によって第2窒化ケイ素層16から水素の一部が拡散する。これにより、n型非晶質シリコン層14とパッシベーション層17の水素濃度が上昇し、n型領域のパッシベーション性能が向上して、太陽電池セル10の出力特性が改善されると考えられる。
【0041】
詳しくは後述するが、p型非晶質シリコン層15およびパッシベーション層18の成膜時には、n型非晶質シリコン層14およびパッシベーション層17の全体が第2窒化ケイ素層16によって覆われている。このため、n型非晶質シリコン層14とパッシベーション層17の全体に水素が略均一に拡散し、当該各層における水素濃度が層の全体で略均一になると考えられる。
【0042】
一方、従来の太陽電池セルでは、窒化ケイ素層の水素濃度が低いため、逆にn型非晶質シリコン層とパッシベーション層の水素が窒化ケイ素層に拡散し、n型非晶質シリコン層とパッシベーション層の水素濃度は成膜時より低下すると考えられる。なお、n型非晶質シリコン層14の水素濃度を高くする方法として、当該シリコン層の成膜時に水素を多く添加する方法も考えられるが、この場合は、当該シリコン層の成膜時にn型結晶性シリコンウェーハ11に水素が拡散して欠陥を生じるという不具合を招く。つまり、n型領域のパッシベーション性能を高めてセルの出力特性を向上させるには、第2窒化ケイ素層16からn型非晶質シリコン層14とパッシベーション層17に水素を拡散させることが重要であると考えられる。
【0043】
第2窒化ケイ素層16は、第1窒化ケイ素層12より密度が低い。第2窒化ケイ素層16の密度は、例えば、2.3〜2.7g/cm3であり、2.7g/cm3未満であることが好ましい。他方、第1窒化ケイ素層12の密度は、例えば、2.7〜2.9g/cm3である。なお、窒化ケイ素層の屈折率が高くなると、密度は低下する傾向にある。
【0044】
ここで、再び図1および図2を参照する。集電極20は、n型非晶質シリコン層14上に形成され、互いに略平行に延びた複数のフィンガー部21と、各フィンガー部21と略直交して各フィンガー部21の長手方向端部同士を接続するバスバー部22とを有する。集電極30は、p型非晶質シリコン層15上に形成される。集電極30は、集電極20と同様に、複数のフィンガー部31と、バスバー部32とを有する。n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面上において、フィンガー部21,31はα方向に延び、バスバー部22,32はβ方向に延びている。
【0045】
フィンガー部21,31は、β方向に交互に設けられる。フィンガー部31は、フィンガー部21より幅広に形成されている。そして、集電極20,30は、第2窒化ケイ素層16上に形成された溝35を隔てて互いに噛み合った平面視櫛歯形状を有する。なお、バスバー部22,32には、太陽電池セル10同士を直列接続してモジュール化する際に配線材が取り付けられる。
【0046】
集電極20,30は、導電性ペーストを用いて形成されてもよいが、好ましくは電解めっきにより形成される。集電極20,30は、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属から構成され、Ni層とCu層との積層構造であってもよく、耐食性を向上させるために最表面に錫(Sn)層を有していてもよい。集電極20,30の厚みは、例えば、50nm〜1μmであり、集電極20は集電極30より厚く形成される。
【0047】
太陽電池セル10は、さらに、n型非晶質シリコン層14と集電極20の間に形成された透明導電層23と、p型非晶質シリコン層15と集電極30の間に形成された透明導電層33とを備える。透明導電層23,33は、集電極20,30と同様に、溝35によって互いに分離されている。透明導電層23,33は、例えば酸化インジウム(In23)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物に、タングステン(W)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)等がドーピングされた透明導電性酸化物(IWO、ITO等)から構成される。透明導電層23,33の厚みは、例えば、30〜500nmである。
【0048】
図6A図6Eは、上記構成を備えた太陽電池セル10の製造方法の一例を説明するための図である。図6A図6Cでは、最終的な形状にパターニングされる前の各層の符号に「z」を付する。太陽電池セル10の製造工程では、まず初めに、テクスチャ構造が形成されたn型結晶性シリコンウェーハ11を準備する。n型結晶性シリコンウェーハ11には、例えば、受光面となる一方の面のみにテクスチャ構造が形成されたn型単結晶シリコンウェーハが用いられる。
【0049】
図6Aに示すように、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面となる他方の面上に、パッシベーション層17z、n型非晶質シリコン層14z、および第2窒化ケイ素層16zをこの順に形成する。これら各層は、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面の略全域に形成される。
【0050】
パッシベーション層17z、n型非晶質シリコン層14z、および第2窒化ケイ素層16zは、上述の通り、CVDまたはスパッタリングにより成膜される。CVDによるパッシベーション層17z(パッシベーション層13,18の場合も同様)の成膜には、例えば、シランを水素で希釈した原料ガスが使用される。また、n型非晶質シリコン層14zの場合は、例えば、シランにホスフィン(PH3)を添加し、水素で希釈した原料ガスを使用する。ホスフィンの混合濃度を変化させることにより、n型非晶質シリコン層14zのドーパント濃度を調整できる。
【0051】
CVDによる第2窒化ケイ素層16z(第1窒化ケイ素層12の場合も同様)の成膜には、原料ガスとしてシランおよびアンモニアを使用する。このとき、アンモニア/シランガス流量比を下げ、第2窒化ケイ素層16zの屈折率を高くする。太陽電池セル10の製造工程では、第2窒化ケイ素層16zの成膜時におけるアンモニア/シランガス流量比を第1窒化ケイ素層12の成膜時におけるアンモニア/シランガス流量比より低くする。これにより、第2窒化ケイ素層16の屈折率を第1窒化ケイ素層12の屈折率より高くすることができる。
【0052】
次に、図6Bに示すように、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面上に形成された上記各層をパターニングする。第2窒化ケイ素層16zは、例えば、レジスト膜をマスクとして、フッ化水素(HF)水溶液を用いてエッチングする。第2窒化ケイ素層16zのエッチング終了後、パターニングされた第2窒化ケイ素層16zをマスクとして、露出したn型非晶質シリコン層14zとパッシベーション層17zを水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を用いてエッチングする。この工程により、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面上にパターニングされたパッシベーション層17、n型非晶質シリコン層14、および第2窒化ケイ素層16zが形成される。
【0053】
次に、図6Cに示すように、パターニングされた第2窒化ケイ素層16z上を含むn型結晶性シリコンウェーハ11の裏面の略全域にパッシベーション層18z、およびp型非晶質シリコン層15zをこの順に形成する。p型非晶質シリコン層15の成膜には、例えば、シランにジボラン(B26)を添加し、水素で希釈した原料ガスが使用される。上述のように、p型非晶質シリコン層15zおよびパッシベーション層18zの成膜時に加わる熱によって、第2窒化ケイ素層16z中の水素がn型非晶質シリコン層14とパッシベーション層17に拡散すると考えられる。
【0054】
次に、図6Dに示すように、第2窒化ケイ素層16z上に形成されたp型非晶質シリコン層15zおよびパッシベーション層18zをパターニングすると共に、第2窒化ケイ素層16の露出した部分をエッチングする。p型非晶質シリコン層15zのエッチングには、一般的にn型非晶質シリコン層14zのエッチングに使用されるNaOH水溶液よりも高濃度のものが使用される。この工程でエッチングする領域は、後工程で透明導電層23および集電極20が形成される領域である。この工程により、n型結晶性シリコンウェーハ11の裏面上にパターニングされたパッシベーション層18、p型非晶質シリコン層15、および第2窒化ケイ素層16が形成される。
【0055】
次に、図6Eに示すように、n型結晶性シリコンウェーハ11の他方の面(受光面)上に、CVDまたはスパッタリングにより、パッシベーション層13、および第1窒化ケイ素層12をこの順に形成する。第1窒化ケイ素層12およびパッシベーション層13は、上述のように、n型結晶性シリコンウェーハ11の受光面の略全域に形成される。図示は省略するが、次に、n型非晶質シリコン層14上に透明導電層23と集電極20を形成し、p型非晶質シリコン層15上に透明導電層33と集電極30を形成して、太陽電池セル10が得られる。
【符号の説明】
【0056】
10 太陽電池セル、11 n型結晶性シリコンウェーハ、12 第1窒化ケイ素層、13,17,18 パッシベーション層、14 n型非晶質シリコン層、15 p型非晶質シリコン層、16 第2窒化ケイ素層、20,30 集電極、21,31 フィンガー部、22,32 バスバー部、23,33 透明導電層、35 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
【国際調査報告】