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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年10月5日
【発行日】2018年12月13日
(54)【発明の名称】内燃機関のバランサ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/26 20060101AFI20181116BHJP
   F16H 48/08 20060101ALI20181116BHJP
   F16D 41/02 20060101ALI20181116BHJP
   F02B 77/00 20060101ALI20181116BHJP
   F02B 67/04 20060101ALI20181116BHJP
   F02N 11/08 20060101ALI20181116BHJP
【FI】
   F16F15/26 B
   F16H48/08
   F16D41/02 A
   F02B77/00 L
   F02B67/04 C
   F02N11/08 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
【出願番号】特願2018-509705(P2018-509705)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2016-71041(P2016-71041)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長 正樹
(72)【発明者】
【氏名】片岡 大
(72)【発明者】
【氏名】滝 悠子
(72)【発明者】
【氏名】江口 洋介
(72)【発明者】
【氏名】千葉 一彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 武久
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA36
3J027FB01
3J027HA10
3J027HB07
3J027HC03
(57)【要約】
内燃機関の振動低減の性能向上を図る。
内燃機関のバランサ装置は、クランク軸16と同方向に回転する駆動歯車39と、駆動歯車39の回転動力を伝達する動力伝達機構48と、動力伝達機構48から動力を受けてクランク軸16とは逆方向に回転する被動歯車50と、被動歯車50に設けられるバランサウェイト54とを備え、動力伝達機構48は、外周に設けられた歯車部67を介して内燃機関の始動モータ60との間で動力伝達を行うキャリア部材40と、キャリア部材40によって回転可能に軸支され、駆動歯車39及び被動歯車50と噛み合うかさ歯車45とを備え、キャリア部材40は突起部70を有し、突起部70を検出するセンサ71を備え、センサ71による検出に基づいてキャリア部材40の位相を検知する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸(16)のクランクピン(16c)及びカウンタウェイト(16d)を収容するクランク室(13c)を有するクランクケース(11)と、前記クランク軸(16)の回転方向とは逆方向に回転するバランサウェイト(54)とを備えた内燃機関のバランサ装置において、
前記バランサ装置は、前記クランク軸(16)と連結されて当該クランク軸(16)と同方向に回転する駆動歯車(39)と、前記駆動歯車(39)の回転動力を伝達する動力伝達機構(48)と、前記動力伝達機構(48)から動力を受けて前記クランク軸(16)とは逆方向に回転する被動歯車(50,250)と、前記被動歯車(50,250)に設けられる前記バランサウェイト(54)とを備え、
前記動力伝達機構(48)は、外周に設けられた歯車部(67)を介して前記内燃機関の始動モータ(60)との間で動力伝達を行うキャリア部材(40)と、当該キャリア部材(40)によって回転可能に軸支され、前記駆動歯車(39)及び前記被動歯車(50,250)と噛み合うかさ歯車(45)と、前記キャリア部材(40)と前記駆動歯車(39)との間に介装される一方向クラッチ(68)とを備え、
前記キャリア部材(40)または前記被動歯車(250)は被検出部(70,250b)を有し、
前記被検出部(70,250b)を検出するセンサ(71,81)を備え、
前記センサ(71,81)による検出に基づいて前記キャリア部材(40)または前記被動歯車(250)の位相を検知することを特徴とする内燃機関のバランサ装置。
【請求項2】
前記センサ(71,81)による検出に基づいて検知される前記キャリア部材(40)または前記被動歯車(250)の位相に基づいて、前記始動モータ(60)によって前記キャリア部材(40)または前記被動歯車(250)を所定の位相に回転させることを特徴とする請求項1記載の内燃機関のバランサ装置。
【請求項3】
前記始動モータ(60)は、前記内燃機関の始動直後に、前記キャリア部材(40)の前記被検出部(70)が前記センサ(71)の位置に停止するように駆動されることを特徴とする請求項2記載の内燃機関のバランサ装置。
【請求項4】
前記始動モータ(60)は、前記内燃機関の停止中に、前記キャリア部材(40)が前記駆動歯車(39)に前記一方向クラッチ(68)を介して噛み合う回転方向とは逆向きに前記キャリア部材(40)が回転するように駆動され、前記キャリア部材(40)が前記所定の位相に回転させられることを特徴とする請求項2または3記載の内燃機関のバランサ装置。
【請求項5】
前記被動歯車(50,250)の回転速度は、前記クランク軸(16)の回転速度と同速度であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の内燃機関のバランサ装置。
【請求項6】
前記始動モータ(60)の出力歯車(62)と前記キャリア部材(40)の前記歯車部(67)との間に減速歯車(65)を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の内燃機関のバランサ装置。
【請求項7】
前記キャリア部材(40)は、両側面を貫通する窓部(43)を備え、前記かさ歯車(45)は、その歯部を前記窓部(43)に臨ませて配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の内燃機関のバランサ装置。
【請求項8】
前記駆動歯車(39)は、前記クランク軸(16)に連結されたフライホイール(33)の側面に形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の内燃機関のバランサ装置。
【請求項9】
前記キャリア部材(40)は、半径方向内側に前記クランク軸(16)を収容する筒状部(41)を有し、前記筒状部(41)の半径方向外側に前記被動歯車(50,250)が配置され、前記筒状部(41)の端部にサークリップ(52)が設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の内燃機関のバランサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のバランサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンなどの内燃機関においては、ピストンの往復運動により振動が発生することが知られている。このような内燃機関において、振動を低減させるために、バランサ装置を搭載したものが多く用いられている。
このようなバランサ装置として、内燃機関の運転時に、クランク軸の回転方向と逆方向に回転するバランサウェイトをクランク軸と同軸上に配置したものがある。
このような従来の技術として、例えば、クランク軸の回転をドライブギアとドリブンギアで逆転させた後、チェーン駆動機構を介してクランク軸上のバランサ歯車に回転方向を変えずに動力を伝達するものが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
また、その他の技術として、例えば、クランク軸の回転をドライブギアとドリブンギアとで逆転させた後、アイドルギアを介してクランク軸上のバランサ歯車に動力を伝達するものが開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭50−032641号公報
【特許文献2】特開2006−214551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、いずれの技術においても、バランサウェイトの回転方向がクランク軸の回転方向に対して逆方向になるように動力伝達機構を設ける必要があるため、部品点数の増加や軸部材の追加による内燃機関の大型化を招くとともに、レイアウトの自由度が制限されてしまうという問題を有している。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、内燃機関の小型化やレイアウトの自由度を確保するとともに、内燃機関の振動低減の性能向上を図ることのできる内燃機関のバランサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この明細書には、2016年3月31日に出願された日本国特許出願・特願2016−071041の全ての内容が含まれる。
上記目的を達成するため、本発明は、クランク軸(16)のクランクピン(16c)及びカウンタウェイト(16d)を収容するクランク室(13c)を有するクランクケース(11)と、前記クランク軸(16)の回転方向とは逆方向に回転するバランサウェイト(54)とを備えた内燃機関のバランサ装置において、前記バランサ装置は、前記クランク軸(16)と連結されて当該クランク軸(16)と同方向に回転する駆動歯車(39)と、前記駆動歯車(39)の回転動力を伝達する動力伝達機構(48)と、前記動力伝達機構(48)から動力を受けて前記クランク軸(16)とは逆方向に回転する被動歯車(50,250)と、前記被動歯車(50,250)に設けられる前記バランサウェイト(54)とを備え、前記動力伝達機構(48)は、外周に設けられた歯車部(67)を介して前記内燃機関の始動モータ(60)との間で動力伝達を行うキャリア部材(40)と、当該キャリア部材(40)によって回転可能に軸支され、前記駆動歯車(39)及び前記被動歯車(50,250)と噛み合うかさ歯車(45)と、前記キャリア部材(40)と前記駆動歯車(39)との間に介装される一方向クラッチ(68)とを備え、前記キャリア部材(40)または前記被動歯車(250)は被検出部(70,250b)を有し、前記被検出部(70,250b)を検出するセンサ(71,81)を備え、前記センサ(71,81)による検出に基づいて前記キャリア部材(40)または前記被動歯車(250)の位相を検知することを特徴とする。
本発明によれば、内燃機関のバランサ装置は、駆動歯車の回転動力をかさ歯車によって被動歯車に伝達する動力伝達機構を備え、かさ歯車を支持するキャリア部材または被動歯車は被検出部を有し、被検出部を検出するセンサを備え、センサによる検出に基づいてキャリア部材または被動歯車の位相を検知する。これにより、キャリア部材によって回転可能に軸支されるかさ歯車によって駆動歯車の回転を被動歯車に伝達し、被動歯車のバランサウェイトをクランク軸に対して逆回転させることができるため、コンパクトな構造で振動を低減できる。このため、内燃機関の小型化やレイアウトの自由度を確保することができる。また、キャリア部材または被動歯車の被検出部を検出するセンサによる検出に基づいてキャリア部材または被動歯車の位相を検知するため、この検知した位相に基づいて内燃機関の振動を低減できる。
また、本発明は、前記センサ(71,81)による検出に基づいて検知される前記キャリア部材(40)または前記被動歯車(250)の位相に基づいて、前記始動モータ(60)によって前記キャリア部材(40)または前記被動歯車(250)を所定の位相に回転させることを特徴とする。
本発明によれば、センサによる位相の検知結果に基づいて、始動モータによってキャリア部材または被動歯車を所定の位相に回転させるため、バランサウェイトの位相がずれてしまった場合であっても、始動モータによってキャリア部材または被動歯車を回転させることで、バランサウェイトの位相を調節できる。このため、効果的に振動を低減できる。
【0006】
また、本発明は、前記始動モータ(60)は、前記内燃機関の始動直後に、前記キャリア部材(40)の前記被検出部(70)が前記センサ(71)の位置に停止するように駆動されることを特徴とする。
本発明によれば、始動モータは、内燃機関の始動直後に、キャリア部材の被検出部がセンサの位置に停止するように駆動されるため、内燃機関の始動直後に被検出部を基準にして簡単な構成でバランサウェイトの位相を調節できる。
また、本発明は、前記始動モータ(60)は、前記内燃機関の停止中に、前記キャリア部材(40)が前記駆動歯車(39)に前記一方向クラッチ(68)を介して噛み合う回転方向とは逆向きに前記キャリア部材(40)が回転するように駆動され、前記キャリア部材(40)が前記所定の位相に回転させられることを特徴とする。
本発明によれば、始動モータは、内燃機関の停止中に、キャリア部材が駆動歯車に一方向クラッチを介して噛み合う回転方向とは逆向きにキャリア部材が回転するように駆動され、キャリア部材が所定の位相に回転させられる。これにより、内燃機関の停止中であっても一方向クラッチを逆方向に回転させることでキャリア部材を回転させることができ、バランサウェイトの位相を調節できる。
【0007】
さらに、本発明は、前記被動歯車(50,250)の回転速度は、前記クランク軸(16)の回転速度と同速度であることを特徴とする。
本発明によれば、被動歯車の回転速度は、クランク軸の回転速度と同速度であるため、バランサウェイトを被動歯車に設けてクランク軸の振動を低減することができる。
また、本発明は、前記始動モータ(60)の出力歯車(62)と前記キャリア部材(40)の前記歯車部(67)との間に減速歯車(65)を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、始動モータの出力歯車とキャリア部材の歯車部との間に減速歯車を備えたため、始動モータのトルクを減速歯車で増幅してキャリア部材に伝達し、キャリア部材を介して内燃機関を始動させることができる。また、キャリア部材から減速歯車を介して始動モータに回転を伝達する場合には、増速歯車として機能するため、キャリア部材から始動モータに伝達されるトルクを小さくできる。このため、始動モータが停止している状態では、始動モータの回転抵抗によってキャリア部材を固定しておくことができ、キャリア部材が支持するかさ歯車によって、被動歯車を逆回転させることができる。
【0008】
また、前記キャリア部材(40)は、両側面を貫通する窓部(43)を備え、前記かさ歯車(45)は、その歯部を前記窓部(43)に臨ませて配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、かさ歯車は、その歯部をキャリア部材の窓部に臨ませて配置されているため、窓部を通るかさ歯車を介して駆動歯車と被動歯車とを噛み合わせることができる。
また、前記駆動歯車(39)は、前記クランク軸(16)に連結されたフライホイール(33)の側面に形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、駆動歯車は、クランク軸に連結されたフライホイールの側面に形成されているため、部品点数を削減でき、小型化を図ることができる。
さらに、本発明は、前記キャリア部材(40)は、半径方向内側に前記クランク軸(16)を収容する筒状部(41)を有し、前記筒状部(41)の半径方向外側に前記被動歯車(50,250)が配置され、前記筒状部(41)の端部にサークリップ(52)が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、キャリア部材の筒状部の半径方向外側に被動歯車が配置され、筒状部の端部にサークリップが設けられている。これにより、キャリア部材の筒状部の半径方向外側に配置される被動歯車をサークリップで固定でき、キャリア部材と被動歯車とを一つの組体として構成できる。このため、小型化及び組立性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る内燃機関のバランサ装置では、内燃機関の小型化やレイアウトの自由度を確保することができるとともに、バランサウェイトの位相を調節して効果的に振動を低減できる。
また、内燃機関の始動直後に被検出部部を基準にして簡単な構成でバランサウェイトの位相を調節できる。
また、内燃機関の停止中であっても一方向クラッチを逆方向に回転させることでキャリア部材を回転させることができ、バランサウェイトの位相を調節できる。
さらに、クランク軸の回転速度と同速度で回転する被動歯車にバランサウェイトを設けて振動を低減できる。
また、減速歯車を介して備えたため、始動モータで内燃機関を容易に始動させることができる。また、始動モータの回転抵抗によってキャリア部材を固定しておくことができる。
また、キャリア部材の窓部を通るかさ歯車を介して駆動歯車と被動歯車とを簡単な構造で噛み合わせることができる。
また、部品点数を削減でき、バランサ装置の小型化を図ることができる。
さらに、サークリップによってキャリア部材と被動歯車とを一つの組体として構成でき、組立性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態に係るバランサ装置を適用した内燃機関の概略断面図である。
図2図2は、駆動歯車側からキャリア部材を見た側面図である。
図3図3は、エンジンの始動時の動力伝達機構等の状態を示す断面図である。
図4図4は、エンジンの運転中おける動力伝達機構等の状態を示す断面図である。
図5図5は、エンジンの一次振動のバランス状態を示す図である。
図6図6は、ウェイト位相調節処理のフローチャートである。
図7図7は、本発明の第2の実施の形態に係るバランサ装置を適用した内燃機関の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るバランサ装置を適用した内燃機関の概略断面図である。
図1に示すように、本実施形態における内燃機関であるエンジン10は、単気筒の4サイクル空冷エンジンである。エンジン10は、始動モータ60によって始動される。エンジン10は、例えば、自動二輪車等の鞍乗り型車両に搭載される。
【0012】
エンジン10は、クランクケース11と、クランクケース11の上面から上方に延びるシリンダ部12(図2)とを備える。
クランクケース11は、内部にクランク軸16を収容するクランクケース本体13と、クランクケース本体13の側面に取り付けられるクランクケースカバー14とを備える。
クランクケース本体13は、クランク軸16の軸方向(車両の左右方向)に分割された一側クランクケース13aと他側クランクケース13bとを備え、左右2分割構造で形成されている。
【0013】
クランクケース本体13の内部には、クランク室13cが形成されている。
クランクケース本体13は、一側クランクケース13a及び他側クランクケース13bに支持された左右一対の軸受15,15を備える。クランク軸16は、軸受15,15によって支持され、その軸心を車両進行方向と直交させて横向きに配置されている。
クランク軸16は、軸受15,15に支持されて回転中心となるクランクジャーナル16aと、クランクジャーナル16aよりも大径に形成されるクランクウェブ16bと、クランクウェブ16bを介して支持されるクランクピン16cとを備える。クランクウェブ16bは、クランクジャーナル16aを跨いでクランクピン16cの反対側の位置に、回転バランスをとるためのカウンタウェイト16dを備える。
クランクピン16c、クランクウェブ16b及びカウンタウェイト16dは、クランク室13c内に収容されており、左右の軸受15,15の間に配置されている。クランクジャーナル16aは、クランク室13cの外側に延出している。
【0014】
シリンダ部12は、クランクケース11側から順に、シリンダブロック20(図2)、シリンダヘッド(不図示)、及び、シリンダヘッドカバー(不図示)を備える。上記シリンダヘッドの内部には、燃焼室(不図示)が形成されている。
シリンダブロック20の内部には、ピストン21(図5)が摺動自在に収容されている。ピストン21は、コンロッド22(図5)によってクランク軸16のクランクピン16cに連結されている。クランク軸16は、上記燃焼室における燃焼によるピストン21の往復運動がコンロッド22を介して伝達されることで回転駆動される。
【0015】
また、クランク軸16には、スプロケット23が取り付けられており、このスプロケット23と上記ヘッドカバーの内部のカム軸に設けられたカム軸スプロケット(図示せず)との間には、カムチェーン24が掛け渡されている。カム軸は、カムチェーン24を介してクランク軸16によって駆動され、これにより、上記シリンダヘッドに設けられた吸排気バルブ(不図示)を動作させる動弁機構が駆動される。
【0016】
クランクケースカバー14が一側クランクケース13aの側面に取り付けられることで、クランクケースカバー14とクランクケース本体13との間には、発電機室26が形成されている。
発電機室26には、クランク軸16の回転により発電する発電機30と、クランク軸16のフライホイール33とが収容されている。
フライホイール33は、キー32を介してクランク軸16の軸端部に固定されている。フライホイール33は、クランク軸16に嵌合して固定されるフランジ部37と、フランジ部37から径方向外側に延出する円板状の回転部38とを備える。フライホイール33は、クランク軸16と一体に回転する。
【0017】
また、フライホイール33の回転部38における内側面、すなわちクランク室13c側の面には、環状に形成された駆動歯車39がフライホイール33と一体に設けられている。駆動歯車39は、クランク軸16の周囲を一周するように環状に配列された駆動側歯部39aを備える。駆動側歯部39aは、クランクケース本体13側に突出している。
発電機30は、フライホイール33の回転部38の外側面に固定された円筒状のロータ34と、ロータ34の内側に配置され、クランクケースカバー14に固定されたステータ36とを備える。
【0018】
クランク軸16上においてフライホイール33とクランクケース本体13との間には、クランク軸16に対して相対回転可能な被動歯車50と、フライホイール33の駆動歯車39の回転動力を被動歯車50に伝達する動力伝達機構48とが配置されている。
動力伝達機構48は、クランク軸16に対して相対回転可能に設けられる円板状のキャリア部材40と、キャリア部材40によって支持される複数のかさ歯車45,45…と、キャリア部材40と駆動歯車39との間に介装される一方向クラッチ68とを備えて構成される。
【0019】
図2は、駆動歯車39側からキャリア部材40を見た側面図である。図2では、駆動歯車39、フライホイール33及びクランクケースカバー14は不図示である。
図1及び図2を参照し、キャリア部材40は、クランク軸16の外周部に嵌合する筒状部41と、筒状部41から径方向外側に延出する円板部42とを一体に備える。
キャリア部材40の筒状部41は、一方向クラッチ68を介して駆動歯車39に接続されるクラッチ接続部41aと、被動歯車50を支持する被動歯車支持部41bとを備える。軸方向において、クラッチ接続部41aは、円板部42を挟んでフライホイール33側に設けられ、被動歯車支持部41bは、円板部42を挟んでクランクケース本体13側に設けられる。
また、筒状部41は、内周部に設けられるベアリング66を介してクランク軸16の外周部に支持されている。このため、キャリア部材40は、クランク軸16に対して相対回転自在である。
すなわち、キャリア部材40は、筒状部41の半径方向内側にクランク軸16を収容し、筒状部41の半径方向外側に被動歯車50を支持する。
【0020】
キャリア部材40の円板部42には、円板部42の両側面を貫通する窓部43,43…が複数形成されている。窓部43,43…は、円板部42の外周部寄りに形成されているとともに、周方向に所定の間隔をあけて複数(本実施の形態では4カ所)形成されている。
また、円板部42において窓部43,43…の径方向外側の位置には、駆動歯車39側へ延びる支持部44,44…が形成されている。各支持部44の先端部には、クランク軸16に直交する姿勢でクランク軸16側へ延びる軸支部材44aが設けられている。
各かさ歯車45は、中心部を軸支部材44aに軸支され、軸支部材44aを中心に回転する。
キャリア部材40の円板部42の外周面には、始動モータ60側の動力が入力される歯車部67が全周に形成されている。
【0021】
キャリア部材40は、円板部42の側面からフライホイール33側に突出する柱状の突起部70(被検出部)を1つ備える。突起部70は、クランク軸16と平行に延びている。突起部70は、円板部42の外周面の近傍に設けられており、クランク軸16の軸方向視では、径方向で歯車部67に略重なる位置に設けられている。突起部70はキャリア部材40と一体に回転する。
【0022】
エンジン10は、突起部70を検知するセンサ71を備える。センサ71は、キャリア部材40の外周面よりも径方向の外側においてクランクケースカバー14に固定されている。センサ71は接触式のセンサであり、クランクケースカバー14に挿通される円柱状の本体部71aと、本体部71aの先端に設けられて突起部70に接触する検出部71bと、センサ71をエンジン10の制御部75に接続する配線部71cとを備える。
センサ71は、検出部71bが突起部70の回転軌跡上に位置するように配置されている。
図2では、紙面の上方向がエンジン10の上方向であり、センサ71は、クランク軸16の軸線16eよりも下方に配置され、クランクケースカバー14の下面部14aに下方から差し込まれている。これにより、クランクケースカバー14の上部で雨を遮ることができるとともに、クランクケースカバー14の下面には雨水が溜まり難いため、センサ71の取り付け部に雨水等が入ることを抑制できる。
制御部75は、センサ71の検出結果に基づいて、キャリア部材40の回転の位相を検知する。
【0023】
被動歯車50は、円板状に形成されており、中心部に設けられるベアリング51を介してキャリア部材40の被動歯車支持部41bの外周部に支持される。被動歯車50は、キャリア部材40に対して相対回転自在である。
被動歯車50は、キャリア部材40側の側面に、環状に配列された被動側歯部50aを備える。被動側歯部50aは、駆動歯車39の駆動側歯部39aに対向して設けられる。また、被動側歯部50aの歯数と駆動側歯部39aの歯数とは同一である。
被動歯車50のクランクケース本体13側の面の一部には、バランサウェイト54が一体に設けられている。
【0024】
被動歯車50は、被動歯車支持部41bにおけるクランクケース本体13側の軸端に係合されるサークリップ52によって軸方向に位置決めされ、キャリア部材40に一体に組み付けられている。このように、キャリア部材40に被動歯車50を嵌合させてサークリップ52で被動歯車50を固定するため、キャリア部材40と被動歯車50とを1つのユニットとして組み付けておくことができる。このため、コンパクト化及び組立性の向上を図ることができる。
被動歯車50は、クランク軸16の軸方向に配列される駆動歯車39、キャリア部材40及び被動歯車50の内、最もクランクケース本体13側の位置に配置されている。
【0025】
各かさ歯車45は、各窓部43に臨むように配置されており、駆動歯車39の駆動側歯部39aは、フライホイール33側から各かさ歯車45に噛み合う。また、各かさ歯車45は、各窓部43を通ってクランクケース本体13側に露出し、被動歯車50の被動側歯部50aに噛み合う。
クランク軸16の回転に伴って駆動歯車39が回転すると、駆動歯車39の回転は各かさ歯車45を介して被動歯車50に伝達され、被動歯車50は駆動歯車39の回転方向に対して逆向きに回転する。ここで、被動側歯部50aの歯数と駆動側歯部39aの歯数とは同一であるため、被動歯車50は、クランク軸16の回転に対して逆方向且つクランク軸16の回転速度と同速度で回転する。すなわち、クランク軸16の回転数と被動歯車50の回転数とは同一となる。
【0026】
図1に示すように、エンジン10は、クランクケース11の近傍に配置される始動モータ60と、始動モータ60の回転を減速してキャリア部材40に伝達する減速部材63とを備える。
始動モータ60の出力軸61は、クランク軸16と平行に延び、出力軸61には、減速部材63に噛み合う出力歯車部62(出力歯車部)が設けられている。
減速部材63は、出力歯車部62に噛み合う入力歯車部64と、キャリア部材40の外周の歯車部67に噛み合う減速歯車部65(減速歯車)とを一体に備える。減速部材63を介して始動モータ60の回転を減速してキャリア部材40に伝達するため、クランク軸16に伝達されるトルクを大きくでき、エンジン10を容易に始動できる。
【0027】
一方向クラッチ68は、キャリア部材40の筒状部41のクラッチ接続部41aと駆動歯車39の内周部の歯車側クラッチ接続部39bとの間に介装されるリング状に形成されている。
一方向クラッチ68は、キャリア部材40と駆動歯車39(フライホイール33)との間の回転(トルク)の伝達方向を一方向に制限するクラッチ機構である。
詳細には、一方向クラッチ68は、始動モータ60によってクランク軸16を回転させてエンジン10を始動する際に、始動モータ60の動力をキャリア部材40から駆動歯車39に伝達する回転方向では、クラッチが噛み合って回転(トルク)の伝達を可能とする。
【0028】
また、一方向クラッチ68は、エンジン10の始動後に始動モータ60が停止する等の理由によりクランク軸16の回転速度がキャリア部材40の回転速度より速くなると、すなわち回転の伝達方向が上記のエンジン10の始動時とは反対になると、クラッチが滑り、回転(トルク)の伝達を切断する。このため、エンジン10の運転によって始動モータ60が回転させられることが防止される。
エンジン10の運転中に始動モータ60が停止した状態では、キャリア部材40は、減速部材63を介してキャリア部材40に伝達される始動モータ60の抵抗によって固定されており、回転しない。すなわち、エンジン10の運転中に始動モータ60が停止した状態では、キャリア部材40は固定されて回転せず、駆動歯車39はキャリア部材40に対して空回りする。
本実施の形態では、キャリア部材40から減速部材63を介して始動モータ60に回転を伝達する場合には、増速方向となり、キャリア部材40のトルクは減速部材63によって減ぜられて始動モータ60に伝わる。このため、停止した始動モータ60によってキャリア部材40を固定しておくことができる。
【0029】
次に、エンジン10の始動時及び運転時における動力伝達機構48等の動作を説明する。
図3は、エンジン10の始動時の動力伝達機構48等の状態を示す断面図である。図3では、始動モータ60の回転によるトルクの伝達方向が矢印で図示されている。
図3を参照し、エンジン10を始動する際には、制御部75によって燃料の噴射量や点火時期が制御されるとともに、始動モータ60が駆動される。始動モータ60の回転は、減速部材63を介してキャリア部材40に伝達され、キャリア部材40から一方向クラッチ68を介して駆動歯車39(フライホイール33)に伝達され、クランク軸16が回転させられる。この状態では、一方向クラッチ68が噛み合ってキャリア部材40とフライホイール33とが一体に回転するため、かさ歯車45は回転しない。このため、エンジン10を始動する際には、通常、キャリア部材40、フライホイール33及び被動歯車50は一体に回転する。
【0030】
図4は、エンジン10の運転中おける動力伝達機構48等の状態を示す断面図である。図4では、クランク軸16から被動歯車50へのトルクの伝達方向が矢印で図示されている。
図4を参照し、エンジン10が運転中で始動モータ60の駆動が停止されている状態では、キャリア部材40は、始動モータ60の回転抵抗によって回転を規制されており、回転しない。また、一方向クラッチ68が切断されるため、駆動歯車39からキャリア部材40には回転が伝達されず、駆動歯車39は、固定されたキャリア部材40に対して相対回転するだけである。
この状態では、クランク軸16の回転は、駆動歯車39及び各かさ歯車45を介して被動歯車50に伝達され、被動歯車50は、駆動歯車39及びクランク軸16に対して逆方向に回転する。すなわち、エンジン10の運転中には、被動歯車50は、クランク軸16と逆方向に且つクランク軸16の回転速度と同速度(同一回転数)で回転し続ける。
【0031】
本実施の形態では、バランサウェイト54を備えた被動歯車50をクランク軸16上にクランク軸16と同軸に設け、フライホイール33の駆動歯車39の回転を、クランク軸16上に設けられるキャリア部材40に支持される各かさ歯車45を介して被動歯車50に伝達する。これにより、被動歯車50を支持するための専用の軸部材が必要ないため、バランサウェイト54によって振動を低減可能なエンジン10をコンパクトに構成できる。
また、被動歯車50は、クランク軸16の軸方向に配列される駆動歯車39、キャリア部材40及び被動歯車50の内、最もクランクケース本体13側の位置に配置されている。このため、クランク軸16の軸方向におけるバランサウェイト54とカウンタウェイト16dとの間の距離を小さくでき、カップリング振動を低減できる。
また、各かさ歯車45によって駆動歯車39の回転を被動歯車50に伝達するため、簡単な構造で被動歯車50をクランク軸16に対して逆方向に回転させることができる。このため、被動歯車50にバランサウェイト54を設けてバランサとして効果的に機能させることができる。
【0032】
図5は、エンジン10の一次振動のバランス状態を示す図である。
図5では、カウンタウェイト16dを含むクランク軸16の各位相に対応して、紙面の上部から順に、バランサウェイト54の位相、ピストン21及びコンロッド22の慣性力を合成したピストン側合成慣性力F1、バランサウェイト54の慣性力F2、及び、ピストン側合成慣性力F1とバランサウェイト54の慣性力F2とを合成した合成慣性力F3が図示されている。また、図5では、ピストン21が上死点から下死点を経て上死点に戻るまでのサイクル(クランク軸16の1回転に相当)が、紙面の左側から順に45°毎に示されている。
【0033】
エンジン10では、ピストン21及びコンロッド22により構成される往復運動部の仮想質量55を100%とした場合に、カウンタウェイト16dの質量は50%に設定され、バランサウェイト54の質量は50%に設定されている。
ピストン21が上死点の状態では、カウンタウェイト16dは、クランクウェブ16b上においてクランク軸16の回転中心を挟んでクランクピン16cの反対側の位置、すなわちクランクピン16cとは180°だけ回転の位相が異なる位置に配置されている。
ピストン21が上死点の状態では、クランク軸16の回転により振動を発生させる仮想質量55は、カウンタウェイト16dに対して位相が180°異なる位置に位置する。
ピストン21が上死点の状態では、バランサウェイト54の位相は、カウンタウェイト16dの位相と同一であり、クランクピン16cとは180°だけ位相が異なる。
【0034】
クランク軸16は、矢印で示す回転方向Aに回転する。仮想質量55は、クランク軸16とは逆方向に回転する。すなわち、仮想質量55は、回転方向Aとは逆の逆回転方向Bに、クランク軸16と同速度で回転する。
クランク軸16と一体に回転するカウンタウェイト16dは、回転方向Aにクランク軸16と同速度で回転する。
バランサウェイト54は、クランク軸16と逆回転する被動歯車50に設けられているため、逆回転方向Bにクランク軸16と同速度で回転する。
バランサウェイト54と仮想質量55とは、互いに180°異なる位相で逆回転方向Bに同速度で回転する。
【0035】
カウンタウェイト16dの質量が仮想質量55の50%であるため、仮想質量55の慣性力はカウンタウェイト16dによっては完全に打ち消されずに50%が残る。このため、ピストン側合成慣性力F1は、クランク軸16の回転中心から仮想質量55が位置する方向に指向する。例えば、上死点の状態では、ピストン側合成慣性力F1は、ピストン21が位置する上方側に指向している。ピストン側合成慣性力F1は、仮想質量55と同様に逆回転方向Bにクランク軸16と同速度で回転する。
バランサウェイト54の慣性力F2は、クランク軸16の回転中心からバランサウェイト54が位置する方向に指向する。例えば、上死点の状態では、ピストン側合成慣性力F1は、ピストン21が位置する側とは反対の下方側に指向している。バランサウェイト54の慣性力F2は、バランサウェイト54と同様に逆回転方向Bにクランク軸16と同速度で回転する。
【0036】
図5の状態では、ピストン側合成慣性力F1とバランサウェイト54の慣性力F2とが互いに180°異なる位相で逆回転方向Bに同速度で回転するとともに、ピストン側合成慣性力F1の大きさとバランサウェイト54の慣性力F2の大きさとが等しい。これにより、ピストン側合成慣性力F1とバランサウェイト54の慣性力F2とが全ての位相に亘って互いに打ち消し合うため、合成慣性力F3は全ての位相において0となる。このため、エンジン10の一次振動を効果的に低減できる。例えば、上死点の状態からクランク軸16が180°だけ回転方向Aに回転した下死点の状態では、ピストン側合成慣性力F1はピストン21側とは反対の下方に指向するが、バランサウェイト54の慣性力F2はピストン側合成慣性力F1とは反対方向を指向する。これにより、ピストン21が往復運動する方向の振動を打ち消すことができる。
また、上死点の状態からクランク軸16が90°だけ回転方向Aに回転した状態では、ピストン側合成慣性力F1はピストン21が往復運動する方向に直交する方向に指向するが、バランサウェイト54の慣性力F2はピストン側合成慣性力F1とは反対方向を指向する。これにより、ピストン21が往復運動する方向に直交する方向の振動を打ち消すことができる。
【0037】
本実施の形態では、バランサウェイト54が仮想質量55に対して180°異なる位相にある位置状態をバランサウェイト54の「初期位置」と呼ぶ。バランサウェイト54が「初期位置」の状態で、ピストン21が上死点の状態にある場合、バランサウェイト54の位相はカウンタウェイト16dの位相と同一である。バランサウェイト54を「初期位置」に位置させることで、クランク軸16の360°の回転の内の全ての位相において合成慣性力F3を0にでき、エンジン10の振動を低減できる。
【0038】
本実施の形態では、かさ歯車45を支持するキャリア部材40が回転可能であるため、キャリア部材40の回転の位相が変化すると、かさ歯車45を介して被動歯車50が回転され、駆動歯車39(クランク軸16の側)に対する被動歯車50の位相が変化する。被動歯車50の位相が変化することで、クランク軸16側に対するバランサウェイト54の位相が変化する。すなわち、キャリア部材40の位相とバランサウェイト54の位相は直接に対応しており、キャリア部材40の位相を調節することでバランサウェイト54の位相を調節できる。
【0039】
このように、キャリア部材40が回転可能であるため、キャリア部材40の位相が所定の位相からずれると、クランク軸16に対するバランサウェイト54の位相が変化し、バランサ装置による振動を低減する性能が変化してしまう。
本実施の形態では、キャリア部材40は、所定の位相、すなわち、バランサウェイト54が「初期位置」に位置することになる位相に設定される。
【0040】
制御部75は、センサ71の検出に基づいてキャリア部材40の位相を検知し、始動モータ60によってキャリア部材40を所定の位相に回転させ、バランサウェイト54を「初期位置」に戻すウェイト位相調節処理を行う。ここで、キャリア部材40は、エンジン10の運転中及び停止中のいずれの状態であっても、始動モータ60によって駆動されることで、回転の位相を変更されることができる。
キャリア部材40の突起部70及びセンサ71は、センサ71によって突起部70が検出される位相にキャリア部材40を位置させると、バランサウェイト54が「初期位置」に位置するように配置されている。すなわち、センサ71によって突起部70が検出される位相がキャリア部材40の所定の位相であり、キャリア部材40が所定の位相に位置すると、バランサウェイト54は「初期位置」に位置する。
【0041】
図6は、ウェイト位相調節処理のフローチャートである。
まず、制御部75は、エンジン10が搭載された鞍乗り型車両の主電源がオンになったことを検知し(ステップS1)、例えばエンジンスタートボタンの操作等による始動の指令に基づいて始動モータ60を駆動してエンジン10を始動し、エンジン10の始動直後に、センサ71によってキャリア部材40の突起部70が検知されているか否かを判別する(ステップS2)。なお、エンジン10が始動したことは、例えば、クランク軸16の回転を検出するクランク角センサの検出値に基づいて検出される。
ステップS2では、制御部75は、キャリア部材40の位相を検知している。すなわち、センサ71によってキャリア部材40の突起部70が検知されていれば、キャリア部材40は所定の位相に位置し、この状態では、バランサウェイト54は「初期位置」にある。また、センサ71によってキャリア部材40の突起部70が検知されていなければ、キャリア部材40は、所定の位相以外の位相にあり、この状態では、バランサウェイト54は「初期位置」に位置していない。
【0042】
センサ71によってキャリア部材40の突起部70が検知されている場合(ステップS2:YES)、制御部75は処理を終了する。この場合、バランサウェイト54は「初期位置」にあり、適正位置にあるため、バランサウェイト54の位相を調節する必要はない。
センサ71によってキャリア部材40の突起部70が検知されていない場合(ステップS2:NO)、制御部75は、エンジン10の始動直後に、始動モータ60をエンジン10を始動させる方向とは逆方向、すなわち、一方向クラッチ68が切断される方向に駆動する(ステップS3)。
【0043】
続いて、制御部75は、ステップS2に戻り、センサ71によってキャリア部材40の突起部70が検知されているか否かを判別する。すなわち、制御部75は、センサ71によってキャリア部材40の突起部70が検知されるまで、始動モータ60の駆動を継続する。つまり、始動モータ60は、キャリア部材40の突起部70がセンサ71の位置に停止するように駆動される。そして、制御部75は、センサ71によって突起部70が検知されると始動モータ60を停止し、処理を終了する。
これにより、エンジン10の始動直後の段階で、バランサウェイト54を「初期位置」に位置するように調節できる。このため、エンジン10の振動を低減できる。
【0044】
以上説明したように、本発明を適用した第1の実施の形態によれば、エンジン10のバランサ装置は、クランク軸16のクランクピン16c及びカウンタウェイト16dを収容するクランク室13cを有するクランクケース11と、クランク軸16の回転方向とは逆方向に回転するバランサウェイト54とを備え、クランク軸16と連結されてクランク軸16と同方向に回転する駆動歯車39と、駆動歯車39の回転動力を伝達する動力伝達機構48と、動力伝達機構48から動力を受けてクランク軸16とは逆方向に回転する被動歯車50と、被動歯車50に設けられるバランサウェイト54とを備え、動力伝達機構48は、外周に設けられた歯車部67を介してエンジン10の始動モータ60との間で動力伝達を行うキャリア部材40と、キャリア部材40によって回転可能に軸支され、駆動歯車39及び被動歯車50と噛み合うかさ歯車45,45…と、キャリア部材40と駆動歯車39との間に介装される一方向クラッチ68とを備え、キャリア部材40は突起部70を有し、クランクケース11に設けられて突起部70を検出するセンサ71を備え、センサ71による検出に基づいてキャリア部材40の位相を検知する。これにより、キャリア部材40によって回転可能に軸支されるかさ歯車45,45…によって駆動歯車39の回転を被動歯車50に伝達し、被動歯車50のバランサウェイト54をクランク軸16に対して逆回転させることができるため、コンパクトな構造で振動を低減できる。このため、エンジン10の小型化やレイアウトの自由度を確保することができる。また、キャリア部材40の突起部70を検出するセンサ71による検出に基づいてキャリア部材40の位相を検知するため、この検知の結果をエンジン10の振動の低減に利用できる。
また、エンジン10のバランサ装置は、センサ71による検出に基づいて検知したキャリア部材40の位相に基づいて、始動モータ60によってキャリア部材40を所定の位相に回転させるため、バランサウェイト54の位相がずれてしまった場合であっても、始動モータ60によってキャリア部材40を回転させることで、バランサウェイト54の位相を調節できる。このため、エンジン10の振動を効果的に低減できる。
【0045】
また、始動モータ60は、エンジン10の始動直後に、キャリア部材40の突起部70がセンサ71の位置に停止するように駆動されるため、エンジン10の始動直後にキャリア部材の突起部70を基準にして簡単な構成でバランサウェイト54の位相を調節できる。
また、始動モータ60は、エンジン10の停止中に、キャリア部材40が駆動歯車39に一方向クラッチ68を介して噛み合う回転方向とは逆向きにキャリア部材40が回転するように駆動され、キャリア部材40が所定の位相に回転させられる。これにより、エンジン10の停止中であっても一方向クラッチ68を逆方向に回転させることでキャリア部材40を回転させることができ、バランサウェイト54の位相を調節できる。
【0046】
さらに、被動歯車50の回転速度は、クランク軸16の回転速度と同速度であるため、バランサウェイト54を被動歯車50に設けてクランク軸16の振動を低減することができる。
また、始動モータ60の出力歯車部62とキャリア部材40の歯車部67との間に減速歯車部65を備えたため、始動モータ60のトルクを減速歯車部65で増幅してキャリア部材40に伝達し、キャリア部材40を介してエンジン10を始動させることができる。また、キャリア部材40から減速歯車部65を介して始動モータ60に回転を伝達する場合には、減速歯車部65は増速歯車として機能するため、キャリア部材40から始動モータ60に伝達されるトルクを小さくできる。このため、始動モータ60が停止している状態では、始動モータ60の回転抵抗によってキャリア部材40を固定しておくことができ、キャリア部材40が支持するかさ歯車45,45…によって、被動歯車50を逆回転させることができる。
【0047】
また、キャリア部材40は、両側面を貫通する窓部43,43…を備え、かさ歯車45,45…は、その歯部を窓部43,43…に臨ませて配置されているため、窓部43,43…を通るかさ歯車45,45…を介して駆動歯車39と被動歯車50とを噛み合わせることができる。
また、駆動歯車39は、クランク軸16に連結されたフライホイール33の側面に形成されているため、部品点数を削減でき、小型化を図ることができる。
さらに、キャリア部材40は、半径方向内側にクランク軸16を収容する筒状部41を有し、筒状部41の半径方向外側に被動歯車50が配置され、筒状部41の端部にサークリップ52が設けられている。これにより、キャリア部材40の筒状部41の半径方向外側に配置される被動歯車50をサークリップ52で固定でき、キャリア部材40と被動歯車50とを一つの組立体として構成できる。このため、小型化及び組立性の向上を図ることができる。
【0048】
[第2の実施の形態]
以下、図7を参照して、本発明を適用した第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態において、上記第1の実施の形態と同様に構成される部分については、同符号を付して説明を省略する。
上記第1の実施の形態では、センサ71による検出に基づいてキャリア部材40の位相を検知する構成について説明したが、本第2の実施の形態は、センサ81によって被動歯車250の位相を検知する構成について説明する。
【0049】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係るバランサ装置を適用した内燃機関の概略断面図である。
第2の実施の形態では、キャリア部材40の突起部70を検出するセンサ71に替えて、センサ81が設けられ、被動歯車50に替えて被動歯車250が設けられる。
被動歯車250は、被動側歯部50aと、バランサウェイト54と、その外周部から径方向外側に突出する被検出部250bとを備える。被動歯車250は、被検出部250bを備える点以外は、上記第1の実施の形態の被動歯車50と同様に構成されている。
【0050】
センサ81は、被動歯車250の被検出部250bを検出する。センサ81は、一側クランクケース13aの内側に配置されており、被動歯車250の径方向外側から被検出部250bに近接する。センサ81は、例えばボルトによって一側クランクケース13aに固定される。
センサ81は、被検出部250bを検出することで、被動歯車250のバランサウェイト54の位相を検知する。
センサ81は、例えば磁力を利用した非接触式のセンサである。センサ81は、配線部271cを介して制御部75に接続される。センサ81は、被動歯車250の回転に伴って被検出部250bがセンサ81の近傍を通過する際に生じる磁束の変化を、被動歯車250の回転に応じたパルス波として制御部75に出力する。
【0051】
発電機室26内においてクランクケースカバー14には、クランク軸16の回転を検出するクランク角センサ90が設けられる。
クランク軸16と一体に回転するフライホイール33に固定された円筒状のロータ34の外周面には、径方向外側に突出するクランク角用被検出部34aが設けられている。
クランク角センサ90は、ロータ34のクランク角用被検出部34aを検出することで、クランク軸16の回転の位相を検知する。クランク角センサ90は、例えばボルトによってクランクケースカバー14に固定される。
クランク角センサ90は、例えば磁力を利用した非接触式のセンサである。クランク角センサ90は、配線部271dを介して制御部75に接続される。クランク角センサ90は、クランク軸16の回転に伴ってクランク角用被検出部34aがクランク角センサ90の近傍を通過する際に生じる磁束の変化を、クランク軸16の回転に応じたパルス波として制御部75に出力する。
【0052】
制御部75は、センサ81によって検知したバランサウェイト54の位相と、クランク角センサ90によって検知したクランク軸16の位相とを比較する。そして、制御部75は、上記比較の結果に基づいて始動モータ60を駆動してキャリア部材40を回転させ、バランサウェイト54を「初期位置」の位相にする。これにより、エンジン10の振動を効果的に低減できる。
すなわち、上記第1の実施の形態では、キャリア部材40の位相を検出することで間接的にバランサウェイト54の位相を検知するが、第2の実施の形態では、センサ81によってバランサウェイト54の位相を直接的に検知する。
また、制御部75は、上記比較の結果に基づいて始動モータ60を駆動してキャリア部材40を回転させ、バランサウェイト54を任意の位相に変更しても良い。これにより、バランサ装置による振動低減の性能を変化させることができ、エンジン10に発生する振動の大きさを任意に調節できる。
【0053】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、始動モータ60は、エンジン10の始動直後に、キャリア部材40の突起部70がセンサ71の位置に停止するように駆動されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。始動モータ60は、エンジン10が停止されている状態であっても駆動されることができ、この駆動によって、キャリア部材40の突起部70をセンサ71の位置に停止させても良い。この場合、制御部75は、例えば、エンジン10が停止された後に、センサ71によってキャリア部材40の突起部70を検知し、突起部70が検知されていない場合に、始動モータ60を駆動し、キャリア部材40を所定の位相まで回転させ、その後、鞍乗り型車両の主電源をオフにする。
【符号の説明】
【0054】
10 エンジン(内燃機関)
11 クランクケース
13c クランク室
16 クランク軸
16c クランクピン
16d カウンタウェイト
33 フライホイール
39 駆動歯車
40 キャリア部材
41 筒状部
43 窓部
45 かさ歯車
48 動力伝達機構
50,250 被動歯車
52 サークリップ
54 バランサウェイト
60 始動モータ
62 出力歯車部(出力歯車)
65 減速歯車部(減速歯車)
67 歯車部
68 一方向クラッチ
70 突起部(被検出部)
71,81 センサ
250b 被検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】