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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2017年12月28日
【発行日】2019年4月11日
(54)【発明の名称】褐変抑制用組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/00 20160101AFI20190315BHJP
   A23L 5/20 20160101ALI20190315BHJP
   A23L 2/70 20060101ALI20190315BHJP
   A23F 3/20 20060101ALI20190315BHJP
【FI】
   A23L29/00
   A23L5/20
   A23L2/70 101Z
   A23F3/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】54
【出願番号】特願2018-523714(P2018-523714)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2017年6月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-125225(P2016-125225)
(32)【優先日】2016年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 克
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 由美
(72)【発明者】
【氏名】松尾 嘉英
【テーマコード(参考)】
4B027
4B035
4B117
【Fターム(参考)】
4B027FB13
4B027FC03
4B027FC05
4B027FK02
4B035LC05
4B035LE03
4B035LG31
4B035LK19
4B117LC01
4B117LE10
4B117LG18
(57)【要約】
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する褐変抑制用組成物に関する。
(下記式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、R23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、R25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、R22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、R25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、Xは、酸素原子又は−CH−を表し、破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
[化1]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする褐変抑制用組成物。
【化1】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)において、前記R21が結合している炭素原子及びR23が結合している炭素原子のいずれかが、アルデヒドと反応する請求項1に記載の褐変抑制用組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が、アルデヒドとの反応で、下記一般式(2)で表される化合物を実質的に生成しない化合物である請求項1又は2に記載の褐変抑制用組成物。
【化2】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、R11及びR12、R12及びR13、又は、R13及びR14は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、R16及びR17、R17及びR18、又は、R18及びR19は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよい。)
【請求項4】
前記一般式(1)において、ベンゼン環に結合している水素原子に隣接する位置(オルト位)がいずれも水酸基ではない請求項1〜3のいずれかに記載の褐変抑制用組成物。
【請求項5】
前記一般式(1)において、ベンゼン環に結合している水素原子に隣接する位置(オルト位)の一方が水酸基であり、かつ、ベンゼン環に少なくとも1つ立体障害性置換基が結合している請求項1〜3のいずれかに記載の褐変抑制用組成物。
【請求項6】
前記水酸基に隣接する位置(オルト位)が、立体障害性置換基である請求項5に記載の褐変抑制用組成物。
【請求項7】
前記一般式(1)において、R21が水素原子を表し、R22及びR23がそれぞれ独立して置換基を表す請求項1〜4のいずれかに記載の褐変抑制用組成物。
【請求項8】
前記一般式(1)において、R23が水素原子を表し、R22及びR24が、それぞれ独立して置換基を表す請求項1〜4のいずれかに記載の褐変抑制用組成物。
【請求項9】
前記一般式(1)において、R21が水素原子を表し、R22が水素原子を表し、R23が立体障害性置換基を表す請求項1〜3及び5〜6のいずれかに記載の褐変抑制用組成物。
【請求項10】
前記一般式(1)において、R23が水素原子を表し、R21が立体障害性置換基を表し、R22が水素原子を表し、R24が置換基を表す請求項1〜3及び5〜6のいずれかに記載の褐変抑制用組成物。
【請求項11】
前記一般式(1)において、R23が水素原子を表し、OR22が立体障害性置換基を表し、R24が水素原子を表す請求項1〜3及び5のいずれかに記載の褐変抑制用組成物。
【請求項12】
前記立体障害性置換基が、環構造を有する炭素数6〜30の有機基又は炭素数10〜30の直鎖若しくは分岐状構造を有する有機基である請求項5〜6及び9〜11のいずれかに記載の褐変抑制用組成物。
【請求項13】
前記置換基が、水酸基、炭素数1〜50の有機基、アミノ基、チオール基、ニトロ基又はハロゲン原子である請求項1〜12のいずれかに記載の褐変抑制用組成物。
【請求項14】
前記置換基が、水酸基又は炭素数1〜50の有機基である請求項1〜13のいずれかに記載の褐変抑制用組成物。
【請求項15】
ポリフェノールを含有する組成物の褐変を抑制するために使用される請求項1〜14のいずれかに記載の褐変抑制用組成物。
【請求項16】
前記ポリフェノールを含有する組成物が、ポリフェノールを含有する飲食品である請求項15に記載の褐変抑制用組成物。
【請求項17】
前記ポリフェノールが、カテキン類である請求項15又は16に記載の褐変抑制用組成物。
【請求項18】
前記ポリフェノールを含有する組成物が、緑茶飲料である請求項15〜17のいずれかに記載の褐変抑制用組成物。
【請求項19】
下記一般式(1)で表される化合物と、ポリフェノールを含有する組成物とを混合することを特徴とするポリフェノールを含有する組成物の褐変抑制方法。
【化3】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
【請求項20】
前記ポリフェノールを含有する組成物が、ポリフェノールを含有する飲食品である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリフェノールが、カテキン類である請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリフェノールを含有する組成物が、緑茶飲料である請求項19〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
下記一般式(1)で表される化合物と、ポリフェノールを含有する飲食品とを混合することを特徴とする飲食品の製造方法。
【化4】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
【請求項24】
前記一般式(1)で表される化合物の配合量が、前記飲食品に対して0.001〜10質量%である請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
前記ポリフェノールが、カテキン類である請求項23又は24に記載の製造方法。
【請求項26】
前記ポリフェノールを含有する飲食品が、緑茶飲料である請求項23〜25のいずれかに記載の製造方法。
【請求項27】
下記一般式(1)で表される化合物を配合してなることを特徴とする飲食品。
【化5】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
【請求項28】
前記一般式(1)で表される化合物の配合量が、飲食品に対して0.001〜10質量%である請求項27に記載の飲食品。
【請求項29】
緑茶飲料である請求項27又は28に記載の飲食品。
【請求項30】
前記緑茶飲料は、常温で9か月保管したときに、400〜600nmの間の波長の光を用いて測定した場合の吸光度スペクトルの面積変化率、又は、487nmの波長の光を用いて吸光度を測定した場合の、前記吸光度の変化率が150%未満である請求項29に記載の飲食品。
【請求項31】
ポリフェノールを含有する組成物と、下記一般式(1)で表される化合物とを混合することを特徴とする前記ポリフェノールを含有する組成物におけるポリフェノールの減少抑制方法。
【化6】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
【請求項32】
ポリフェノールを含有する組成物と、下記一般式(1)で表される化合物とを混合することを特徴とする前記ポリフェノールを含有する組成物における下記一般式(2)で表される化合物の生成抑制方法。
【化7】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
【化8】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、R11及びR12、R12及びR13、又は、R13及びR14は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、R16及びR17、R17及びR18、又は、R18及びR19は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよい。)
【請求項33】
下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とするアルデヒド捕捉用組成物。
【化9】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
【請求項34】
前記一般式(1)において、前記R21が結合している炭素原子及びR23が結合している炭素原子のいずれかが、アルデヒドと反応する請求項33に記載のアルデヒド捕捉用組成物。
【請求項35】
前記一般式(1)で表される化合物が、アルデヒドとの反応で、下記一般式(2)で表される化合物を実質的に生成しない化合物である請求項33又は34に記載のアルデヒド捕捉用組成物。
【化10】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、R11及びR12、R12及びR13、又は、R13及びR14は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、R16及びR17、R17及びR18、又は、R18及びR19は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよい。)
【請求項36】
請求項33〜35のいずれかに記載のアルデヒド捕捉用組成物を含有することを特徴とする消臭用組成物。
【請求項37】
アルデヒド由来の臭いの消臭用である請求項36に記載の消臭用組成物。
【請求項38】
ポリフェノール、アルデヒド及び候補化合物を含有する試料溶液を調製する工程、及び、
前記試料溶液における下記一般式(2)で表される化合物の生成を指標として、前記候補化合物の褐変抑制効果を判定する工程を含むことを特徴とするポリフェノールを含有する組成物の褐変抑制作用を有する化合物のスクリーニング方法。
【化11】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、R11及びR12、R12及びR13、又は、R13及びR14は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、R16及びR17、R17及びR18、又は、R18及びR19は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよい。)
【請求項39】
前記一般式(2)で表される化合物の生成を、400〜600nmの間の波長の光を用いて試料溶液の吸光度スペクトルを測定し、前記吸光度スペクトルの面積変化量により検出する、又は487nmの波長の光を用いて試料溶液の吸光度を測定し、前記吸光度の変化量により検出する請求項38に記載のスクリーニング方法。
【請求項40】
前記一般式(2)で表される化合物の生成を、487nmの波長の光を用いて試料溶液の吸光度を測定し、前記吸光度の変化により検出する請求項38又は39に記載のスクリーニング方法。
【請求項41】
褐変抑制のための、下記一般式(1)で表される化合物の使用。
【化12】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
【請求項42】
アルデヒドを捕捉するための、下記一般式(1)で表される化合物の使用。
【化13】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
【請求項43】
消臭のための、下記一般式(1)で表される化合物の使用。
【化14】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
【請求項44】
下記一般式(1)で表される化合物を、アルデヒドを含む気体又は液体と接触させることを特徴とするアルデヒドの捕捉方法。
【化15】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
【請求項45】
下記一般式(1)で表される化合物を、アルデヒドを含む気体又は液体と接触させることを特徴とする消臭方法。
【化16】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、褐変抑制用組成物及びその用途等に関する。本発明はまた、ポリフェノールを含有する組成物の褐変抑制方法、飲食品の製造方法、飲食品、ポリフェノールを含有する組成物におけるポリフェノールの減少抑制方法、ポリフェノールを含有する組成物におけるキサンチリウム構造を有する化合物の生成抑制方法、アルデヒド捕捉用組成物、アルデヒドの捕捉方法、消臭用組成物、消臭方法、ポリフェノールを含有する組成物の褐変抑制作用を有する化合物のスクリーニング方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
緑茶、ほうじ茶、紅茶等の茶飲料は、ペットボトル、缶、紙容器等に殺菌充填されて販売されている。これらの茶飲料は、製造されてから飲用されるまでに長期間かかることがあり、その液色が褐色に変化する(以下、褐変という)場合があることが知られている。特に緑茶飲料は、室温で保存すると茶抽出液の色が薄緑色又は薄黄色から次第に黄褐色〜赤褐色に変化するため、他の飲料と比較して色調の変化が目立ちやすく、問題とされている。この茶飲料の褐変は、室温下で起こるだけでなく、飲料の製造において茶抽出液を加熱殺菌する際にも進行し、製造後の貯蔵期間中にさらに進行する。
【0003】
また、最近では飲料の容器として透明のペットボトルが多く使用されるようになってきた。このペットボトルを使用した飲料は中身が外から見えるため、褐変が起こると外観を損ねてしまい、商品価値の低下を招くことになる。
【0004】
このような飲料の色の変化は、成分の酸化が原因であると考えられている。そこで、飲料の褐変を抑制するために、一般的には、アスコルビン酸等の酸化防止剤を添加したり、製造工程中に飲料中の酸素を除去したりする方法により酸素を除去することが行われている。しかしながら、ペットボトルの材質(ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂)自体が酸素透過性であり、上記の方法では緑茶飲料の褐変を充分に抑制できていない。
【0005】
食品の変色を抑制する技術として、例えば特許文献1には、ルチン及び/又はルチン誘導体とジヒドロケルセチン及び/又はジヒドロケルセチン誘導体とを含有するフラボノイド組成物が記載されており、この組成物が抗酸化、退色防止等の機能性を発揮できると記載されている。特許文献2及び3には、ルチンを含む調味料を卵料理に用いると、卵の黄色が褐色に変化するが、調味料に特定のフラボノイド類を特定の割合で使用することにより、食品の色調変化が抑制されると記載されている。特許文献4には、調理時の着色が抑制された調味料として、リン酸系化合物とカテコール骨格を有するポリフェノール類を特定の割合で含む液体調味料が記載されている。
【0006】
また、白ワインの褐変の原因の1つとして、カテキンと酒石酸由来のグリオキシル酸との反応により生成するキサンチリウム塩が報告されている(非特許文献1〜4)。非特許文献5には、グリオキシル酸とカテキンの反応で生成するキサンチリウム塩に複数種の異性体が存在することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−92869号公報
【特許文献2】特開2007−267724号公報
【特許文献3】特開2007−325588号公報
【特許文献4】特開2008−289438号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H Li et al., Food Chem 108(2008) 1−13
【非特許文献2】C Barril et al., Anal Chim Acta 621(2008) 44−51
【非特許文献3】NE Es−Safi et al., J Agric Food Chem 47(1999) 5211−5217
【非特許文献4】H Fulcrand et al., Am J Enology and Viticulture 57(2006) 289−297
【非特許文献5】NE Es−Safi et al., J Agric Food Chem 48(2000) 4233−4240
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、特許文献1〜4では、飲食品の変色を抑制する技術について検討されているが、緑茶飲料の褐変の抑制については検討されていない。非特許文献1〜5にも、緑茶飲料の褐変を抑制することについて検討されていない。緑茶飲料の褐変を効果的に抑制することができる技術が求められているが、緑茶飲料の褐変の原因については明らかにされていない。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、緑茶飲料等のポリフェノールを含有する組成物において褐変を抑制することができる褐変抑制用組成物及び褐変抑制方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、緑茶飲料の褐変の原因について鋭意研究を行ったところ、緑茶飲料に含まれるL−アスコルビン酸(ビタミンC)が分解して生じるアルデヒドと、カテキン類との反応によって生成するキサンチリウム構造を有する化合物が褐変の原因物質であることを見出した。また、アルデヒドと反応し、かつ、該反応によりキサンチリウム構造を有する化合物を実質的に生成しない化合物を使用してアルデヒドを捕捉すると、緑茶飲料等のポリフェノールを含有する組成物の褐変を抑制することができることを見出した。このようにアルデヒドの捕捉により褐変を抑制する技術は、酸化防止剤の添加等により酸素を除去して褐変を抑制する技術とは別異の技術である。本発明者らはこれらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成させた。
【0012】
本発明の褐変抑制用組成物は、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
本明細書中、上記一般式(1)で表される化合物を、化合物(1)ともいう。
【0015】
本発明においては、上記一般式(1)において、上記R21が結合している炭素原子及びR23が結合している炭素原子のいずれかが、アルデヒドと反応することが好ましい。また、上記化合物(1)は、アルデヒドとの反応で、下記一般式(2)で表される化合物を実質的に生成しない化合物であることが好ましい。
【0016】
【化2】
【0017】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、R11及びR12、R12及びR13、又は、R13及びR14は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、R16及びR17、R17及びR18、又は、R18及びR19は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよい。)
本明細書中、上記一般式(2)で表される化合物を、化合物(2)ともいう。
【0018】
本発明の実施態様の一例においては、上記一般式(1)において、ベンゼン環に結合している水素原子に隣接する位置(オルト位)がいずれも水酸基ではないことが好ましい。
本発明の実施態様の別の一例においては、上記一般式(1)において、ベンゼン環に結合している水素原子に隣接する位置(オルト位)の一方が水酸基であり、かつ、ベンゼン環に少なくとも1つ立体障害性置換基が結合していることが好ましく、上記水酸基に隣接する位置(オルト位)が、立体障害性置換基であることがより好ましい。
【0019】
本発明の実施態様の一例においては、上記一般式(1)において、R21が水素原子を表し、R22及びR23がそれぞれ独立して置換基を表すことが好ましい。実施態様の別の一例においては、上記一般式(1)において、R23が水素原子を表し、R22及びR24が、それぞれ独立して置換基を表すことが好ましい。
【0020】
実施態様のさらに別の一例においては、上記一般式(1)において、R21が水素原子を表し、R22が水素原子を表し、R23が立体障害性置換基を表すことが好ましい。実施態様のさらに別の一例においては、上記一般式(1)において、R23が水素原子を表し、R21が立体障害性置換基を表し、R22が水素原子を表し、R24が置換基を表すことが好ましい。実施態様のさらにまた別の一例においては、上記一般式(1)において、R23が水素原子を表し、OR22が立体障害性置換基を表し、R24が水素原子を表すことも好ましい。
本発明において、上記立体障害性置換基は、環構造を有する炭素数6〜30の有機基又は炭素数10〜30の直鎖若しくは分岐状構造を有する有機基であることが好ましい。
【0021】
本発明においては、上記置換基が、水酸基、炭素数1〜50の有機基、アミノ基、チオール基、ニトロ基又はハロゲン原子であることが好ましい。上記置換基は、水酸基又は炭素数1〜50の有機基であることがより好ましい。
【0022】
本発明の褐変抑制用組成物は、ポリフェノールを含有する組成物の褐変を抑制するために好適に使用される。上記ポリフェノールを含有する組成物は、ポリフェノールを含有する飲食品であることが好ましい。上記ポリフェノールは、カテキン類であることが好ましい。上記ポリフェノールを含有する組成物は、緑茶飲料であることが好ましい。
【0023】
本発明のポリフェノールを含有する組成物の褐変抑制方法は、上記一般式(1)で表される化合物と、ポリフェノールを含有する組成物とを混合することを特徴とする。本発明の褐変抑制方法においては、上記ポリフェノールを含有する組成物が、ポリフェノールを含有する飲食品であることが好ましい。上記ポリフェノールは、カテキン類であることが好ましい。また、上記ポリフェノールを含有する組成物が、緑茶飲料であることが好ましい。
【0024】
本発明の飲食品の製造方法は、上記一般式(1)で表される化合物と、ポリフェノールを含有する飲食品とを混合することを特徴とする。
本発明の製造方法において、上記一般式(1)で表される化合物の配合量は、上記飲食品に対して0.001〜10質量%であることが好ましい。上記ポリフェノールは、カテキン類であることが好ましい。本発明の製造方法においては、上記ポリフェノールを含有する飲食品が、緑茶飲料であることが好ましい。
【0025】
本発明の飲食品は、上記一般式(1)で表される化合物を配合してなることを特徴とする。
上記一般式(1)で表される化合物の配合量は、上記飲食品に対して0.001〜10質量%であることが好ましい。本発明の飲食品は、好ましくは緑茶飲料である。
上記緑茶飲料は、常温で9か月保管したときに、400〜600nmの間の波長の光を用いて測定した場合の吸光度スペクトルの面積変化率、又は、487nmの波長の光を用いて吸光度を測定した場合の、上記吸光度の変化率が150%未満であることが好ましい。
【0026】
本発明のポリフェノールを含有する組成物におけるポリフェノールの減少抑制方法は、ポリフェノールを含有する組成物と、上記一般式(1)で表される化合物とを混合することを特徴とする。
本発明のポリフェノールを含有する組成物における上記一般式(2)で表される化合物の生成抑制方法は、ポリフェノールを含有する組成物と、上記一般式(1)で表される化合物とを混合することを特徴とする。
【0027】
本発明のアルデヒド捕捉用組成物は、上記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
本発明のアルデヒド捕捉用組成物においては、上記一般式(1)において、上記R21が結合している炭素原子及びR23が結合している炭素原子のいずれかが、アルデヒドと反応することが好ましい。また、上記化合物(1)が、アルデヒドとの反応で、上記一般式(2)で表される化合物を実質的に生成しない化合物であることが好ましい。
本発明の消臭用組成物は、本発明のアルデヒド捕捉用組成物を含有することを特徴とする。
本発明の消臭用組成物は、アルデヒド由来の臭いの消臭用であることが好ましい。
【0028】
本発明のポリフェノールを含有する組成物の褐変抑制作用を有する化合物のスクリーニング方法は、ポリフェノール、アルデヒド及び候補化合物を含有する試料溶液を調製する工程、及び、上記試料溶液における上記一般式(2)で表される化合物の生成を指標として、上記候補化合物の褐変抑制効果を判定する工程を含むことを特徴とする。
本発明のスクリーニング方法においては、上記一般式(2)で表される化合物の生成を、400〜600nmの間の波長の光を用いて試料溶液の吸光度スペクトルを測定し、上記吸光度スペクトルの面積変化量により検出する、又は487nmの波長の光を用いて試料溶液の吸光度を測定し、上記吸光度の変化量により検出することが好ましい。
より好ましくは、上記一般式(2)で表される化合物の生成を、487nmの波長の光を用いて試料溶液の吸光度を測定し、上記吸光度の変化により検出する。
【0029】
本発明は、以下の使用等も包含する。
褐変抑制のための、上記一般式(1)で表される化合物の使用。
アルデヒドを捕捉するための、上記一般式(1)で表される化合物の使用。
消臭のための、上記一般式(1)で表される化合物の使用。
上記一般式(1)で表される化合物を、アルデヒドを含む気体又は液体と接触させることを特徴とするアルデヒドの捕捉方法。
上記一般式(1)で表される化合物を、アルデヒドを含む気体又は液体と接触させることを特徴とする消臭方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、緑茶飲料等のポリフェノールを含有する組成物の褐変を抑制することができる褐変抑制用組成物及び褐変抑制方法等を提供することができる。本発明によれば、長期間貯蔵しても褐変しにくい緑茶飲料等のポリフェノールを含有する組成物及びその製造方法、並びに、ポリフェノールを含有する組成物の褐変抑制方法を提供することができる。また、本発明によれば、アルデヒド捕捉用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、室温で6日、22日、5カ月、7カ月及び9カ月貯蔵したペットボトル入りの緑茶飲料の外観を示す写真である。
図2図2は、図1に示す各緑茶飲料の可視吸収スペクトルを示す図である。
図3図3は、アスコルビン酸を0.4g/L添加した調合液の条件2の劣化試験前後の可視吸光スペクトルである。
図4図4は、劣化試験後の各調合液の可視吸光スペクトルを示す図である((a):条件1(窒素置換、4℃で1時間)、(b):条件2(121℃、14分)、(c):条件3(酸素曝気後、123℃で30分))。
図5図5は、緑茶及びモデル液(カテキン4種混合)中のエピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)及びエピガロカテキンガレート(EGCg)濃度を示す図である。
図6図6の(a)は、加速劣化試験前の緑茶及びモデル液(カテキン4種混合)の可視吸収スペクトルを示す図であり、(b)は、緑茶及びモデル液の加速劣化前後の吸収の変化量(ΔABU)を示す図である。
図7図7は、CNET誘導体化したアスコルビン酸の分解物を、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)によりスキャンモードで分析したクロマトグラム(SCANデータ)及びSIM(選択的イオンモニタリング)モードで分析したクロマトグラム(SIMデータ)を示す図である((a):SCANデータ、(b):SIMデータ)。
図8図8の(a)〜(d)は、加速劣化させた緑茶モデルで検出されたエピカテキン、エピカテキン1分子とグリオキサール1分子が結合した化合物、及び、エピカテキン2分子とグリオキサール1分子が結合したキサンチリウム構造の化合物を、LC−MSによりSIMモードで分析したクロマトグラムを示す図である((a):エピカテキンのクロマトグラム、(b):エピカテキン1分子とグリオキサール1分子が結合した化合物のクロマトグラム、(c):エピカテキン2分子とグリオキサール1分子が結合したキサンチリウム構造の化合物のクロマトグラム、(d):(a)〜(c)のクロマトグラムを重ねて示した図)。
図9図9は、バイカリン添加によるモデル溶液の可視吸収スペクトルの変化を示す図である。
図10図10は、バイカリン及びグリオキサールの混合液(B+G)、バイカリン、エピカテキン及びグリオキサールの混合液(B+C+G)、エピカテキン及びグリオキサールの混合液(C+G)の、加速劣化後の外観を示す写真及び可視吸収スペクトルを示す図である((a):写真、(b):可視吸収スペクトル)。
図11図11は、加速劣化後の混合液(B+C+G)及び混合液(C+G)中のカテキン残存量(mM)を示す図である。
図12図12は、バイカリン及びグリオキサールの混合液を加速劣化させた溶液で検出された化合物をLC−MSによりSIMモードで分析したクロマトグラムを示す図である((a):グリオキサール1分子とバイカリン1分子とが結合した化合物、(b):バイカリン)。
図13図13は、配糖化バイカリンを含む画分を、LC−MSによりSIMモードで分析したクロマトグラム(SIMデータ)である。
図14図14は、スクリーニングに使用したBr値及びXt値を説明するための図である。
図15図15は、化合物(A−1)〜(A−5)の褐変抑制作用の評価結果を示す図である。
図16図16は、スクテラリン、チャフロサイドA及びイカリインの褐変抑制作用の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の褐変抑制用組成物は、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【0033】
【化3】
【0034】
(式中、R21、R22、R23、R24、R26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、かつ、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子であり、
23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれかは置換基を表し、
25は、水素原子、酸素原子又は置換基を表し、
22及びR23、又は、R23及びR24は、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成していてもよく、
25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、
Xは、酸素原子又は−CH−を表し、
破線は、二重結合であってもよいことを表す。)
本明細書中、一般式(1)中のR21及びR23が結合しているベンゼン環を、ベンゼン環Aともいう。
本発明の褐変抑制用組成物は、上記化合物(1)を有効成分として含有する。
【0035】
上記一般式(1)において、R21及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。また、少なくともR21及びR23のいずれかは水素原子である。少なくともR21及びR23のいずれかが水素原子であるとは、R21及び/又はR23が水素原子であることを意味する。
ベンゼン環Aにおいて、R21が結合している炭素原子に隣接するオルト位の少なくとも一方は水酸基ではない。R22及びR24は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表すが、R23が水素原子を表す場合には、少なくともR22及びR24のいずれか(R22及び/又はR24)は置換基を表す。
このように、化合物(1)では、ベンゼン環Aに結合している水素原子に隣接する位置(オルト位)の少なくとも一方は水酸基ではない。
【0036】
本発明における化合物(1)は、アルデヒドと反応する化合物であり、例えば、pH5〜9の溶液中でアルデヒドと反応することが好ましい。一態様において、化合物(1)は、pH6〜6.5の溶液中でアルデヒドと反応することも好ましい。化合物(1)においては、ベンゼン環Aを構成する炭素原子のうち、水素原子と結合している炭素原子が、アルデヒドと反応する。この反応は、好ましくはアルデヒドのカルボニル炭素への求核付加である。ベンゼン環Aがアルデヒドと反応し得る位置(すなわち、水素原子に結合している炭素原子)は、R21及びR23のいずれか一方が水素原子の場合は、1個、R21及びR23が水素原子である場合は、2個であるが、好ましくは1個である。ベンゼン環Aに結合している水素原子は、1又は2個であるが、好ましくは1個である。化合物(1)においては、通常、少なくとも、R21が結合している炭素原子及びR23が結合している炭素原子のいずれかが、アルデヒドと反応するが、R21が結合している炭素原子又はR23が結合している炭素原子がアルデヒドと反応することが好ましい。
【0037】
本発明における化合物(1)は、通常、アルデヒドとの反応で、下記一般式(2)で表される化合物(化合物(2))を実質的に生成しない化合物である。アルデヒドとの反応で化合物(2)を実質的に生成しないとは、化合物(1)がアルデヒドとの反応で化合物(2)を生成しないか、又は、化合物(2)を生成しても、その生成量が実質的に褐変を生じない量であることを意味する。
なお、本発明の褐変抑制用組成物は、通常、化合物(2)を含まない。
【0038】
【化4】
【0039】
(式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表し、R11及びR12、R12及びR13、又は、R13及びR14は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよく、R16及びR17、R17及びR18、又は、R18及びR19は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよい。)
【0040】
化合物(2)は、一般式(2)で表されるキサンチリウム構造により黄褐色〜赤褐色を呈する。化合物(2)におけるキサンチリウム構造は、弱酸性付近(pH5付近)では440nmあたりに吸収極大をもち、pH6.0〜8.9では、486〜487nm付近に吸収極大を有する(NE Es−Safi et al., Food Chem 88(2004) 367−372)。このため、化合物(2)が生成することにより、褐変が進行する。
【0041】
以下に、化合物(2)が生成する反応の一例を示す。化合物(2)は通常、カテキン類等のポリフェノールとアルデヒドとの反応により生成する。以下の反応スキームは、緑茶飲料において化合物(2)の一例の化合物が生成する反応の一例である。下記反応スキームでは、緑茶飲料に含まれるカテキン類の一例として、エピカテキン(EC)とアルデヒド(R−CHO)との反応の一例を示している。
【0042】
【化5】
【0043】
上記に示すように、まずアルデヒド1分子とエピカテキン1分子とが反応して化合物1が生成する。この反応は、アルデヒドとエピカテキンのベンゼン環(A環)との反応である。化合物1のアルデヒド由来の部分がさらにもう1分子のエピカテキン(EC)と反応して、カテキン2分子が、アルデヒド由来の構造(−CR−)を介して結合した化合物2が生成する。この化合物2は無色である。化合物2において、カテキン由来の水酸基が脱水反応して閉環することにより、化合物3(無色)が生成し、さらに化合物3からキサンチリウム構造を有する化合物4が生成する。化合物4は、本発明における化合物(2)であり、緑茶飲料において黄褐色を呈する。
【0044】
ポリフェノール2分子とアルデヒド1分子との反応で生成する化合物(2)についてさらに説明する。一般式(2)において、R15が結合している炭素原子は、ポリフェノールと反応したアルデヒド由来の炭素原子である。R15で表される置換基は、アルデヒド由来の残基である。例えば、アルデヒドがホルムアルデヒドであれば、R15は水素原子であり、アセトアルデヒドであれば、R15はメチル基であり、アルデヒドがグリオキサールであれば、アルデヒド基(−CHO)である。一般式(2)において、R15が結合している炭素原子及びR15以外の部分は、アルデヒドと反応したポリフェノールに由来する。例えば、化合物(2)が上記のアルデヒド1分子及びエピカテキン2分子の反応による化合物4である場合には、R11及びR19は水素原子であり、R12及びR18は水酸基である。
【0045】
化合物(1)1分子とアルデヒド(R−CHO)1分子との反応で生成する化合物は、ベンゼン環Aの水素原子がアルデヒドで置換された構造を有する。この化合物中のアルデヒド由来の炭素原子が、さらにもう1分子の化合物(1)のベンゼン環Aと反応する場合がある。この場合には、化合物(1)2分子が、アルデヒド由来の構造(−CR−)を介して結合した化合物(1)の二量体が生成する。ここで、二量体を形成した化合物(1)のベンゼン環Aにおいて、アルデヒドとの結合位置(一般式(1)においてR21又はR23が結合している炭素原子)に隣接する位置(オルト位)がいずれも水酸基であると、二量体において、該水酸基が縮合して化合物(2)が生成する場合がある。本発明においては、ベンゼン環Aに結合している水素原子(アルデヒドと反応する位置)に隣接する位置(オルト位)の少なくとも一方は水酸基ではないことにより、化合物(1)はアルデヒドと反応しても化合物(2)を実質的に生成しない。従って、化合物(1)により、アルデヒドを捕捉して褐変を抑制することができる。また、化合物(1)がアルデヒドを捕捉することにより、ポリフェノールとアルデヒドとの反応が低減され、化合物(2)の生成が抑制される。本発明における化合物(1)は、褐変抑制用組成物の有効成分として有用である。
【0046】
本発明における化合物(1)は、1分子中に一般式(1)で表されるベンゼン環Aを含む複素環(C6−C3)構造を1個有していてもよく、2個以上有していてもよい。好ましくは、上記複素環構造を1個有する。また、化合物(1)は、ベンゼン環を構成する炭素原子のうち、水素原子と結合している炭素原子に隣接する位置(オルト位)がいずれも水酸基であるベンゼン環構造を、有さないことが好ましい。
【0047】
本発明においては、化合物(1)が、アルデヒドとの反応で化合物(2)を実質的に生成しない化合物であることから、アルデヒドを捕捉し、かつ、化合物(2)の生成を抑制して、褐変を抑制することができる。
本発明における化合物(1)は、pH2〜13で無色であることが好ましい。このような化合物であると、より優れた褐変抑制効果を発揮することができる。
【0048】
化合物(1)がアルデヒドとの反応により化合物(2)を実質的に生成しないことは、例えば、化合物(1)の溶液にアルデヒドを添加した場合に、添加前後において溶液の400〜600nmの可視吸収スペクトルが実質的に変化しないことにより確認することができる。
【0049】
上記一般式(1)及び一般式(2)における置換基は特に限定されないが、例えば、水酸基、炭素数1〜50の有機基、アミノ基(−NH)、チオール基(−SH)、ニトロ基(−NO)又はハロゲン原子が好ましい。中でも、置換基は、水酸基又は炭素数1〜50の有機基であることがより好ましい。一態様において、有機基の炭素数は、1〜30がより好ましく、1〜20がさらに好ましく、1〜15が特に好ましい。有機基とは、炭素原子を含む基であり、炭素原子以外の原子、例えば、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、リン原子等を含んでもよい。本発明における有機基としては、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる有機基、又は、炭素原子及び水素原子からなる有機基がより好ましい。
【0050】
炭素数1〜50の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アリール基、アリールアルキル基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アリールチオ基、アリールアミノ基、アリールアルキルチオ基、複素環基、複素環オキシ基、シアノ基、カルボキシル基等が挙げられ、これらの基は1又は2以上の置換基により置換されていてもよい。これらの基が置換基により置換されている場合には、該置換基も含めて、炭素数が上記範囲であることが好ましい。置換基により置換されているとは上記有機基中の水素原子が、置換基で置換されていることを意味する。有機基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれの構造であってもよい。
【0051】
本発明における化合物(1)において幾何学異性が存在する場合、本発明はその幾何学異性体のいずれも包含する。また、化合物(1)において1つ以上の不斉炭素原子が存在する場合、本発明は各々の不斉炭素原子がR配置の化合物、S配置の化合物及びそれらの任意の組み合せの化合物のいずれも包含する。またそれらのラセミ化合物、ラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物のいずれも本発明に包含される。
【0052】
化合物(1)についてより詳細に説明する。
化合物(1)においては、ベンゼン環Aに結合している酸素原子の数が多いほど、ベンゼン環Aとアルデヒドとの反応性が高くなる傾向がある。ベンゼン環Aには、OR22及びOR24により、少なくとも2個の酸素原子が結合している。一態様において、ベンゼン環Aに結合している酸素原子は、3個又は4個が好ましい。このような化合物として、例えば、Xが酸素原子である、及び/又は、R21又はR23がORa1(Ra1は、水素原子又は置換基を表す)で表される置換基である化合物が好ましい。例えば、R21が水素原子である場合、Xが酸素原子である、及び/又は、R23がORa1(Ra1は、上記と同義である)で表される置換基であることが好ましい。別の一態様において、R23が水素原子である場合、Xが酸素原子である、及び/又は、R21がORa1(Ra1は、上記と同義である)で表される置換基であることが好ましい。Ra1における置換基としては上述したものが挙げられる。
【0053】
一般式(1)の好ましい態様の一例において、ベンゼン環(ベンゼン環A)に結合している水素原子に隣接する位置(オルト位)がいずれも水酸基ではないことが好ましい。上述したように、化合物(1)はベンゼン環Aを構成する炭素原子のうち、水素原子と結合している炭素原子がアルデヒドと反応する。アルデヒドと反応する位置のオルト位がいずれも水酸基でないことにより、化合物(1)2分子がアルデヒド1分子と反応しても、通常化合物(2)の生成が起こらない。従って、化合物(1)が優れた褐変抑制効果を発揮することができる。一態様において、例えば、R21が水素原子の場合には、R22が置換基であることが好ましい。R23が水素原子の場合には、R22及びR24が、それぞれ独立して置換基であることが好ましい。
【0054】
一般式(1)において、ベンゼン環(ベンゼン環A)に結合している水素原子に隣接する位置(オルト位)の一方が水酸基である場合には、該ベンゼン環に少なくとも1つ立体障害性置換基が結合していることが好ましく、該水酸基に隣接する位置(オルト位)が、立体障害性置換基であることがより好ましい。化合物(1)がこのような化合物であると、褐変抑制効果が向上する。
立体障害性置換基とは、ベンゼン環Aを構成する炭素原子がアルデヒドと反応した場合に、その立体障害により、該アルデヒドとの反応位置に隣接する位置(オルト位)の炭素原子に結合している水酸基と、他の水酸基との反応性を低下させる基を意味する。
【0055】
上述したように、化合物(1)とアルデヒド(R−CHO)との反応によって、化合物(1)2分子が、アルデヒド由来の構造(−CR−)を介して結合した化合物(1)の二量体が生成する場合がある。ここで、二量体を形成した化合物(1)2分子のベンゼン環Aがいずれも、アルデヒドとの結合位置の一方のオルト位に水酸基を有していても、ベンゼン環Aに少なくとも1つ立体障害性置換基が結合していると、上記二量体において、化合物(1)に由来する2つの水酸基の縮合が阻害される。また、ベンゼン環Aに結合している水素原子に隣接する位置(オルト位)の一方が水酸基である場合に、該水酸基に隣接する位置(オルト位)が立体障害性置換基であると、上記二量体において、化合物(1)由来の2つの水酸基の縮合がより充分に阻害される。その結果、通常化合物(2)の生成が起こらず、褐変が抑制される。
例えば、R21が水素原子であり、R22が水素原子の場合には、R23及び/又はOR24が立体障害性置換基であることが好ましく、R23が立体障害性置換基であることがより好ましい。
【0056】
立体障害性置換基は、上記の水酸基の反応性を低下させる基であればよい。好ましくは、環構造を有する炭素数6〜30の有機基又は炭素数10〜30の直鎖若しくは分岐状構造を有する有機基であり、より好ましくは環構造を有する炭素数6〜30の有機基である。環構造は、好ましくは6員環である。環構造を有する炭素数6〜30の有機基の炭素数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜15である。環構造を有する炭素数6〜30の有機基の一例として、ガレート基、糖(糖残基)等が挙げられる。糖は、単糖又は多糖(好ましくは二糖〜五糖、より好ましくは二糖)であってよい。
【0057】
化合物(1)においては、R21又はR23が水素原子であることが好ましい。このような化合物は、褐変抑制効果が高いため好ましい。一般式(1)において、R21が水素原子であり、R23が置換基である、又は、R23が水素原子であり、R21が置換基である化合物は、本発明における化合物(1)として好ましい。
【0058】
化合物(1)として、例えば、以下の(i)〜(v)の化合物等が好ましい。
一般式(1)において、
(i)R21が水素原子を表し、R22及びR23がそれぞれ独立して置換基を表す;
(ii)R23が水素原子を表し、R22及びR24が、それぞれ独立して置換基を表す;
(iii)R21が水素原子を表し、R22が水素原子を表し、R23が立体障害性置換基を表す;
(iv)R23が水素原子を表し、R21が立体障害性置換基を表し、R22が水素原子を表し、R24が置換基を表す;又は
(v)R23が水素原子を表し、OR22が立体障害性置換基を表し、R24が水素原子を表す。
上記(i)及び(ii)の化合物では、アルデヒドと反応する位置のオルト位がいずれも水酸基でないことにより、化合物(1)がアルデヒドと反応しても、通常化合物(2)の生成が起こらない。(ii)の化合物は、より好ましくはR21が水素原子である。(iii)、(iv)及び(v)の化合物では、立体障害性置換基により通常化合物(2)の生成が起こらない。このような化合物(1)は、優れた褐変抑制効果を発揮することができる。立体障害性置換基やその好ましい態様は、上述したとおりである。(iii)、(iv)及び(v)の化合物の中で、(iii)、(iv)の化合物がより好ましい。
(i)〜(v)における置換基の一例として、水酸基又は炭素数1〜10(炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6)の有機基が好ましい。
【0059】
22及びR23、又は、R23及びR24が、互いに結合してそれらが結合している酸素原子及び炭素原子と共に環を形成している場合には、環は、6員環が好ましく、環は置換基により置換されていてもよい。
【0060】
一般式(1)において、R25は、酸素原子又は置換基であることが好ましい。
26及びR27は、それぞれ独立して、水素原子又は置換基を表す。R25及びR26、又は、R26及びR27は、互いに結合してそれらが結合している炭素原子と共に環構造を形成していてもよい。
25、R26及びR27における好ましい置換基として、炭素数1〜15の有機基が挙げられる。該有機基として、アリール基、上記の糖残基が好ましい。一態様においては、R25、R26及びR27のいずれかが、アリール基であることが好ましい。好ましい態様の一例として、R25が酸素原子又はアリール基であり、R25が酸素原子である場合、R26又はR27がアリール基であることが挙げられる。アリール基は、1又は2以上の置換基により置換されていてもよく、例えば、1又は2以上の置換基により置換されていてもよい炭素数6〜15のアリール基が好ましい。
上記の(i)〜(v)の化合物において、R25、R26及びR27が上記である化合物は、本発明における化合物(1)の好ましい態様の一例である。
【0061】
本発明における化合物(1)の一例として、下記式(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−4)及び(A−5)の各化合物、バイカリン及びバイカリン配糖体(例えば、バイカリンの糖部分にグルコースが1〜3個結合した化合物)、チャフロサイドA、イカリイン、スクテラリン等が挙げられる。これらの化合物は、本発明における化合物(1)として好ましい。
【0062】
【化6】
【0063】
本発明における化合物(1)として、下記式(A−6)、(A−7)、(A−8)、(A−9)の各化合物も挙げられる。式(A−6)〜(A−9)の各化合物は、化合物(1)の一例でもある。
【0064】
【化7】
【0065】
本発明における化合物(1)は、水に対し、0.01質量%以上溶解することが好ましい。より好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜40質量%、特に好ましくは0.5〜30質量%、最も好ましくは1〜20質量%溶解する。好ましくは、20℃における水に対する溶解性がこのような範囲にあることである。水に対する溶解性が上記範囲であると、各種飲食品等において褐変抑制効果を充分に発揮することができる。
【0066】
本発明の褐変抑制用組成物は、化合物(1)を1種含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
本発明における化合物(1)の製造方法は特に限定されず、公知の有機合成法により製造することができる。また、市販品を使用することもできる。天然物から公知の方法により単離することもできる。
【0067】
本発明においては、化合物(1)をそのまま褐変抑制用組成物(褐変抑制剤ということもできる)として用いてもよい。本発明の褐変抑制用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、所望により、化合物(1)以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては公知のものを使用することができる。他の成分の一例として、添加剤等が挙げられる。例えば、褐変抑制用組成物を飲食品に添加する場合には、飲食品に使用される公知の添加剤をさらに含んでいてもよい。飲食品用の添加剤として、例えば、増量剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色剤、香料、矯味剤、界面活性剤(乳化剤)、溶解補助剤、保存剤、糖類、甘味料、酸味料、ビタミン類等が挙げられる。また、本発明の褐変抑制用組成物と共に、他の褐変抑制剤を用いてもよい。
本発明の褐変抑制用組成物、並びに、後述するアルデヒド捕捉用組成物及び消臭用組成物は、一例として、剤の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。当該剤をそのまま組成物として、又は、当該剤を含む組成物として提供することもできる。
【0068】
本発明の褐変抑制用組成物の形態は特に限定されない。例えば、粉末状、顆粒状、ペースト状、固形状等であってもよく、液状であってもよい。
本発明の褐変抑制用組成物中の化合物(1)の含量は特に限定されないが、一態様において、例えば、0.01〜99.9質量%が好ましく、1〜50質量%がより好ましい。
【0069】
化合物(1)を、ポリフェノールを含有する組成物に配合することにより、ポリフェノールを含有する組成物の褐変を抑制することができる。本発明の褐変抑制用組成物は、ポリフェノールを含有する組成物の褐変を抑制するために好適に使用される。
化合物(1)と、ポリフェノールを含有する組成物とを混合するポリフェノールを含有する組成物の褐変抑制方法も、本発明に包含される。
【0070】
本発明において、ポリフェノールを含有する組成物は、ポリフェノールを含有する飲食品であることが好ましい。化合物(1)を使用することにより、褐変が抑制された飲食品等を製造することができる。化合物(1)と、ポリフェノールを含有する飲食品とを混合する飲食品の製造方法も、本発明に包含される。ポリフェノールを含有する組成物、例えば飲食品には、通常、原料等の成分にアルデヒドが含まれるか、又は、該成分が経時的に分解等することによりアルデヒドが生成する。化合物(1)は、このアルデヒドを捕捉することにより、褐変を抑制することができる。化合物(1)は、1種使用してもよく、2種以上を使用してもよい。上述した本発明の褐変抑制用組成物は、褐変抑制方法、飲食品の製造方法、後述する飲食品等に好適に使用される。飲食品には、飲食品原料も含まれる。
【0071】
本発明におけるポリフェノールとは、植物又はその加工品由来のポリフェノールである。ここでポリフェノールとは、同一ベンゼン環に2個以上の水酸基を有するフェノールを意味し、その配糖体もポリフェノールとして含む。なお、本発明における化合物(1)は、通常、本発明におけるポリフェノールには含まれない。また、本発明におけるポリフェノールは、アルデヒドとの反応により化合物(2)を生成する化合物であることが好ましい。このようなポリフェノールとして、ベンゼン環を構成する炭素原子のうち、水素原子と結合している炭素原子に隣接する位置(オルト位)がいずれも水酸基であるベンゼン環構造を有するポリフェノールが挙げられる。
【0072】
上記ポリフェノールとしては、例えば、フラバン−3−オール類、フラボン類、イソフラボン類、フラボノール類、フラバノン類、フラバノノール類、フラバン−3,4−ジオール類等のフラボノイド類、及びそれらの関連化合物を挙げることができる。フラボノイド類の関連化合物として、例えば、フラボノイド配糖体が挙げられる。
例えば、茶飲料に含まれるポリフェノールとして、フラバン−3−オール類及びその関連化合物が挙げられ、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、ガロカテキン、ガロカテキンガレート、カテキン、カテキンガレート等のカテキン類;テアフラビン、テアフラビンガレートA、テアフラビンガレートB、テアフラビンジガレート等のテアフラビン類を挙げることができる。
本発明におけるポリフェノールとしては、カテキン類が好ましい。化合物(1)は、カテキン類を含有する組成物の褐変の抑制に特に好適に使用される。
【0073】
ポリフェノールを含有する飲食品は特に限定されず、緑茶飲料、ソバ茶飲料、麦茶飲料、紅茶飲料、プーアール茶飲料、烏龍茶飲料、ほうじ茶飲料等の茶飲料;ブドウ、リンゴ、ミカン、モモ等の果汁や果汁入り清涼飲料;上記果汁又は茶飲料入りアルコール飲料等の飲料;味噌、豆乳飲料等の大豆製品等が挙げられる。果汁又は茶飲料入りのアルコール飲料として、上記の果汁又は茶飲料を配合したビール、チューハイ、リキュール、カクテル等のアルコール飲料が挙げられる。中でも、化合物(1)は、ポリフェノールを含有する飲料の褐変を抑制するために好適に使用され、茶飲料により好適であり、緑茶飲料にさらに好適である。
【0074】
茶飲料は、チャノキ(茶樹、学名Camellia sinensis)の主に葉や茎を用いて製造された紅茶、烏龍茶、プーアール茶、緑茶等の茶、又は、これら茶にさらに玄米、麦類、その他各種植物原料をブレンドしたものを、熱水、温水、冷水、エタノール、含水エタノール等で抽出して得ることができる。抽出液の褐変は、上記いずれの茶飲料においても起こるが、本発明は、特に、褐変による液色の変化が目立ちやすい緑茶飲料に有用である。本発明の褐変抑制用組成物及び褐変抑制方法は、緑茶飲料の褐変の抑制に特に好適に使用される。本発明の飲食品の製造方法は、緑茶飲料の製造に特に好適である。本発明における緑茶飲料は、緑茶を抽出した液を配合した茶飲料であればよい。
【0075】
化合物(1)と、ポリフェノールを含有する飲食品とを混合する場合、化合物(1)を混合するタイミングは特に限定されず、飲食品の製造段階で化合物(1)を混合してもよく、飲食品を製造後に化合物(1)と混合することもできる。化合物(1)と飲食品とを混合する方法も特に限定されない。
例えば、茶飲料の製造方法の一例を説明すると、以下の通りである。
原料(茶葉等)を温水又は熱水で抽出した後、濾過等により茶殻や微粒子を取り除く。次いで、抽出液を適当な濃度に希釈し、希釈液にアスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウムを添加する。希釈液には、アスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウムに加えて、重曹(炭酸水素ナトリウム)等のpH調整剤を添加することが好ましい。このアスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウムを添加した茶抽出液の希釈液を、調合液と呼ぶ。なお、抽出液を希釈する前にアスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウムを添加して調合液を調製してもよい。調合液は、加熱殺菌することが好ましく、超高温加熱処理法(UHT法)により殺菌することも好ましい。容器としてペットボトル等を使用する場合には、容器に充填する前に調合液の加熱殺菌を行うことが好ましい。一方、缶等に充填する場合には、充填後の容器ごと加熱殺菌を行うことが好ましい。また、充填の際には、ヘッドスペース中の空気を窒素ガスで置換することもできる。
例えば、茶飲料の製造において化合物(1)を混合する場合には、加熱殺菌までに化合物(1)を混合することが好ましく、化合物(1)を抽出用の温水又は熱水と混合しておいてもよく、抽出液と混合してもよく、調合液と混合してもよいが、好ましくは、調合液と混合する。
【0076】
本発明における好ましい実施態様の一例として、以下の工程:緑茶の茶葉を含む原料を温水又は熱水(好ましくは、65〜90℃)で抽出する工程、抽出液を濾過する工程、濾過した抽出液を水で希釈する工程、希釈液にアスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウム(好ましくは、0.1〜1g/L、より好ましくは0.3〜0.5g/L)、重曹(好ましくは0.1〜1g/L、より好ましくは0.3〜0.4g/L)及び化合物(1)を混合して調合液を得る工程、及び、調合液を加熱殺菌(好ましくは、100〜135℃、10〜120秒)する工程、を含む緑茶飲料の製造方法が挙げられる。上記の工程を含む方法は、緑茶飲料の褐変抑制方法としても好ましい。また、上記方法において、加熱殺菌後の緑茶飲料をペットボトル等の容器に充填する工程を行うことにより、容器詰緑茶飲料を製造することができる。
【0077】
化合物(1)は、茶抽出液を濃縮した茶エキスにも好適に使用される。茶エキスの場合、濃縮前の茶抽出液と化合物(1)とを混合してもよく、濃縮後に混合してもよい。また、この茶エキスを乾燥させて粉末化し、粉末(粉末茶)を製造することもできる。茶抽出液に化合物(1)を配合しておけば、茶エキスや粉末においても褐変進行を抑制することができる。茶エキスや粉末は、水等で希釈することにより飲料として使用することができる。また、茶エキスや粉末を、茶飲料以外の飲食品に使用することもできる。茶エキスや粉末を飲食品に使用した場合にも、褐変抑制効果が持続される。
【0078】
ポリフェノールを含有する組成物(好ましくはポリフェノールを含有する飲食品)と化合物(1)とを混合する場合、化合物(1)の使用量は特に限定されず、適宜有効量を使用すればよい。例えば、化合物(1)の配合量が、ポリフェノールを含有する組成物に対して0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。このような範囲であると、良好な褐変抑制効果を得ることができる。例えば、ポリフェノールを含有する組成物が茶飲料であれば、茶飲料に対して化合物(1)を0.001〜10質量%使用することが好ましく、0.01〜1質量%使用することがより好ましい。
化合物(1)と、ポリフェノールを含有する緑茶飲料等とを混合することにより、ペットボトル等の透明容器に適した飲料を提供することができる。化合物(1)を使用する際に、さらに飲料のヘッドスペース中の空気を窒素ガスと置換したり、他の褐変抑制剤を併用したりしてもよい。
【0079】
化合物(1)を配合してなる飲食品も、本発明の1つである。飲食品は、特に限定されず、上述したポリフェノールを含有する飲食品が挙げられ、好ましくは飲料であり、より好ましくは茶飲料であり、さらに好ましくは緑茶飲料である。
また、本発明における飲料は、希釈せずにそのまま飲用できるもの以外にも、飲料販売時には粉末の形態で飲用時に適宜の濃度に水等に溶解して飲用する粉末清涼飲料や、水等で希釈して飲用する濃縮タイプの飲料であってもよい。
化合物(1)の配合量は特に限定されないが、例えば、飲食品中に化合物(1)の配合量が0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
【0080】
本発明の飲食品は容器詰飲料であることが好ましい。容器詰飲料に使用される容器は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるペットボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等が挙げられる。中でも本発明は、特にペットボトル、ガラス瓶等の透明な容器を使用した容器詰飲料に有用である。
【0081】
本発明における緑茶飲料は、常温で9か月保管したときに、400〜600nmの間の波長の光を用いて測定した場合の吸光度スペクトルの面積変化率、又は、487nmの波長の光を用いて試料溶液の吸光度を測定した場合の、上記吸光度の変化率が150%未満であることが好ましい。上記面積変化率又は吸光度の変化率が150%未満である緑茶飲料は、褐変が抑制された緑茶飲料として好ましい。常温とは、通常1〜30℃、好ましくは15〜25℃である。
【0082】
上記一般式(1)で表される化合物及びカテキン類を含む緑茶飲料であって、常温で9か月保管したときに、400〜600nmの間の波長の光を用いて測定した場合の吸光度スペクトルの面積変化率、又は、487nmの波長の光を用いて吸光度を測定した場合の、上記吸光度の変化率が150%未満である緑茶飲料は、本発明の好ましい態様の一例である。このような緑茶飲料も、本発明に包含される。
上記吸光度スペクトルの面積変化率は、保管前の緑茶飲料の400〜600nmの吸光度スペクトルの面積(S0)と、該緑茶飲料を常温で9か月保管後の400〜600nmの吸光度スペクトルの面積(S1)とから、下記式により求められる。
吸光度スペクトルの面積変化率(%)=100×(S1−S0)/S0
上記吸光度スペクトルの面積変化率は、好ましくは50%未満である。
487nmの波長の吸光度の変化率は、保管前の緑茶飲料の487nmの吸光度(A0)と、該緑茶飲料を常温で9か月保管後の487nmの吸光度(A1)とから、下記式により求められる。
487nmの波長の吸光度の変化率(%)=100×(A1−A0)/A0
上記487nmの波長の吸光度の変化率は、好ましくは50%未満である。
【0083】
化合物(1)による褐変の抑制は、上述したように化合物(1)がアルデヒドを捕捉することによるものである。従って化合物(1)は、アルデヒド捕捉用組成物の有効成分として有用である。本発明の褐変抑制用組成物を、アルデヒド捕捉用組成物として使用することもできる。
【0084】
本発明のアルデヒド捕捉用組成物は、上記化合物(1)を含有する。本発明のアルデヒド捕捉用組成物は、化合物(1)を有効成分として含有する。アルデヒド捕捉用組成物は、化合物(1)を1種含んでもよく、2種以上を含んでもよい。化合物(1)及びその好ましい態様は、上述した褐変抑制用組成物におけるものと同じである。例えば、一般式(1)において、R21が結合している炭素原子及びR23が結合している炭素原子のいずれかが、アルデヒドと反応することが好ましい。また、化合物(1)が、アルデヒドとの反応で、化合物(2)を実質的に生成しない化合物であることが好ましい。
本発明においては、化合物(1)をそのままアルデヒド捕捉用組成物(アルデヒド捕捉剤ということもできる)として用いてもよい。アルデヒド捕捉用組成物には、本発明の効果を損なわない限り、所望により化合物(1)以外の成分(他の成分)を配合してもよい。他の成分は、アルデヒド捕捉用組成物の使用形態等に応じて適宜選択することができ、一例として添加剤等が挙げられる。
一態様において、アルデヒド捕捉用組成物中の化合物(1)の含量は、例えば、0.01〜99.9質量%が好ましく、1〜50質量%がより好ましい。
アルデヒド捕捉用組成物は、例えば、空気中、溶液中等のアルデヒドを捕捉するために好適に使用される。例えば、アルデヒド捕捉用組成物を、アルデヒドを含む気体又は液体と接触させることにより、該気体又は液体中のアルデヒドを捕捉することができる。アルデヒド捕捉用組成物は、例えば、アルデヒド由来の臭いの消臭用等として好適に使用することができる。また、生体内のアルデヒドを捕捉するためや、シックハウスの原因物質であるアルデヒドの捕捉にも使用することができる。
【0085】
本発明のポリフェノールを含有する組成物におけるポリフェノールの減少抑制方法は、ポリフェノールを含有する組成物と、化合物(1)とを混合することを特徴とする。化合物(1)及びその好ましい態様は、上述した通りである。化合物(1)は、1種使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
ポリフェノールを含有する組成物と、化合物(1)とを混合すると、該組成物中のポリフェノールとアルデヒドとの反応が抑制され、該組成物中のポリフェノールの減少を抑制することができる。
化合物(1)の使用量は特に限定されず、ポリフェノールを含有する組成物に応じて適宜選択すればよいが、例えば、ポリフェノールを含有する組成物に対して0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。例えば、ポリフェノールを含有する組成物が茶飲料であれば、茶飲料に対して化合物(1)が0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
【0086】
ポリフェノールを含有する組成物は、好ましくはポリフェノールを含有する飲食品である。また、該組成物は、好ましくは、カテキン類を含有する組成物であり、より好ましくは茶飲料であり、さらに好ましくは緑茶飲料である。本発明のポリフェノールの減少抑制方法は、緑茶飲料中のカテキン類の減少抑制方法として有用である。
例えば、緑茶飲料は、製造直後には爽快な苦味を呈するが、長期間貯蔵すると、この爽快な苦味が減少することがある。この香味の変化の原因の1つとして、貯蔵中にカテキン類がアルデヒドと反応して減少したことが考えられる。本発明によれば、長期間貯蔵しても、カテキン類の減少が抑制され、香味の変化及び褐変が抑制された緑茶飲料を提供することができる。
【0087】
本発明のポリフェノールを含有する組成物における上記一般式(2)で表される化合物の生成抑制方法は、ポリフェノールを含有する組成物と、化合物(1)とを混合することを特徴とする。上述したように、化合物(1)を使用することにより、ポリフェノールを含有する組成物における化合物(2)の生成を抑制することができる。
化合物(1)及びその好ましい態様は、上述した通りである。化合物(1)は、1種使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
化合物(1)の使用量は特に限定されず、ポリフェノールを含有する組成物に応じて適宜選択すればよいが、例えば、ポリフェノールを含有する組成物に対して0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。例えば、ポリフェノールを含有する組成物が茶飲料であれば、茶飲料に対して化合物(1)が0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
【0088】
本発明の消臭用組成物は、上述した本発明のアルデヒド捕捉用組成物を含有することを特徴とする。
本発明の消臭用組成物は、化合物(1)によりアルデヒドを捕捉して、アルデヒド由来の臭いを効果的に低減させることができる。このため本発明の消臭用組成物は、アルデヒド由来の臭いの消臭用組成物として好適に使用される。化合物(1)は、消臭用組成物の有効成分として好適に使用される。
化合物(1)及びその好ましい態様は、上述した通りである。例えば、一般式(1)において、R21が結合している炭素原子及びR23が結合している炭素原子のいずれかが、アルデヒドと反応することが好ましい。また、化合物(1)が、アルデヒドとの反応で、化合物(2)を実質的に生成しない化合物であることが好ましい。消臭用組成物は、化合物(1)を1種含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
【0089】
本発明の消臭用組成物は、例えば、体臭(腋臭、足臭、汗臭、頭皮の臭い等)、台所の臭い、冷蔵庫の臭い、魚や野菜等食品の臭い、タバコの臭い、衣服の臭い、靴の臭い等の様々な臭いに対して効果を有する。このため本発明の消臭用組成物は、例えば、口臭用、体臭用、台所用、室内用、生活用、車内用、工業用の消臭用組成物等として使用することができる。
【0090】
また、化合物(1)は、アルデヒドとの反応で、化合物(2)を実質的に生成しない化合物であることから、化合物(1)が臭い成分のアルデヒドを捕捉しても褐変が起こらない。このため、本発明の消臭用組成物を例えば衣服や家具等の布製品に繰り返し使用しても、布製品が褐変しにくいという効果も奏する。このため本発明の消臭用組成物は、例えば、布地用消臭用組成物等として好適に使用される。
【0091】
本発明においては、アルデヒド捕捉用組成物をそのまま消臭用組成物として用いてもよい。化合物(1)をそのまま消臭用組成物(消臭剤ということもできる)とすることもできる。消臭用組成物中の化合物(1)の含量は特に限定されず、一態様において、例えば、0.01〜99.9質量%が好ましく、より好ましくは1〜50質量%である。
消臭用組成物には、必要に応じて、化合物(1)以外の成分、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、殺菌剤、防カビ剤、防虫剤、顔料、着色剤、着香料等の一般的な添加剤を配合することができる。
【0092】
消臭用組成物の製品形態としては特に限定されないが、例えばスプレー、ゲル状、液体状又は固形状であってよい。本発明の消臭用組成物を用いて悪臭を消臭する際には、公知の方法を適用することができる。例えば、本発明の消臭用組成物の固形状物、ゲル状物又は液状物を、悪臭成分(特に、アルデヒド)が存在する部位・場所、又は、悪臭成分が発生するであろうと予測される部位・場所に、直接散布する、振り掛ける、ふき取る、漬け込む、放置するなどの方法により適用すると、悪臭成分の除去又は発生を予防することができる。本発明の消臭用組成物をスプレーにより適用してもよい。
【0093】
本発明は、ポリフェノールを含有する組成物の褐変抑制作用を有する化合物のスクリーニング方法も包含する。本発明のスクリーニング方法は、ポリフェノール、アルデヒドを及び候補化合物を含有する試料溶液を調製する工程、及び、
上記試料溶液における上記一般式(2)で表される化合物の生成を指標として、上記候補化合物の褐変抑制効果を判定する工程を含む。
一般式(2)で表される化合物(化合物(2))は、上述したとおりである。
【0094】
試料溶液の調製方法は特に限定されないが、例えば、ポリフェノール及び候補化合物を含有する溶液を調製し、該溶液とアルデヒドとを混合する方法が好ましい。
ポリフェノールとしては、アルデヒドとの反応により化合物(2)を生成する化合物であればよく、目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、緑茶飲料において褐変抑制効果を有する化合物をスクリーニングする場合には、上述した緑茶飲料に含まれるカテキン類等のポリフェノールを使用すればよい。ポリフェノールは1種使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
アルデヒドは特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、緑茶飲料における褐変抑制効果を有する化合物をスクリーニングする場合には、例えば、グリオキサール、メチル−グリオキサール、ジアセチル、L−トレオニン及び3−デオキシ−L−トレオニンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、グリオキサールがより好ましい。これらのアルデヒドは、緑茶飲料に通常添加されるL−アスコルビン酸の分解物であるため、緑茶飲料における褐変抑制に有効な候補化合物のスクリーニングに好適である。
【0095】
本発明においては、試料溶液を調製後、該溶液における化合物(2)の生成を経時的にモニターすることが好ましい。モニターする時間は特に限定されず、適宜設定すればよい。例えば、加速試験等により試料溶液を高温下(例えば、オートクレーブ等を使用して、50〜120℃、好ましくは60〜110℃、より好ましくは70〜100℃)におくことにより、反応を加速することもできる。
【0096】
化合物(2)の生成を検出する方法は特に限定されず、試料溶液の液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)、吸光度測定等により行うことができる。操作が簡便であることから、吸光度測定により行うことが好ましい。
化合物(2)は、通常400〜600nmに吸収極大を有するため、上記波長の吸光度を測定することにより、化合物(2)の生成を検出することができる。例えば、400〜600nmのスペクトル面積値の変化により、化合物(2)の生成を検出することができる。また、上述したように化合物(2)は、pHによって極大がシフトする性質があり、例えば弱酸性付近(pH5付近)では440nmあたりに吸収極大をもち、pH6.0〜8.9では486〜487nm付近に吸収極大を有する(NE Es−Safi et al., Food Chem 88(2004) 367−372)。このため、溶液のpHに応じて、適宜化合物(2)の検出に使用する波長を設定することが好ましい。化合物(2)の検出は、該溶液における極大波長とすることが好ましい。例えば緑茶飲料は、通常pHが6〜8である。緑茶飲料における褐変抑制効果を有する化合物をスクリーニングする場合には、487nmの吸光度を測定し、487nmの吸光度の変化により化合物(2)の生成を検出することが好ましい。
【0097】
本発明においては、化合物(2)の生成を、400〜600nmの間の波長の光を用いて試料溶液の吸光度スペクトルを測定し、該吸光度スペクトルの面積変化量により検出することが好ましい。また、化合物(2)の生成を、487nmの波長の光を用いて試料溶液の吸光度を測定し、上記吸光度の変化量により検出することも好ましい。中でも、化合物(2)の生成は、487nmの波長の光を用いて試料溶液の吸光度を測定し、上記吸光度の変化により検出することが好ましい。
【0098】
本発明のスクリーニング方法においては、試料溶液と、ポリフェノール及びアルデヒドを含有し、候補化合物を含有しないコントロール溶液とにおける化合物(2)の生成量を比較することが好ましい。化合物(2)の生成量の比較は、例えば、400〜600nmの間の波長の光を用いて、試料溶液及びコントロール溶液の吸光度の変化量を比較することにより行うことができる。また、候補化合物を含むことにより、該化合物を含まない場合(コントロール溶液)と比較して、化合物(2)の生成量が少ない(生成が抑制された)場合(試料溶液において、コントロール溶液と比較して化合物(2)の生成量が少ない場合)に、該候補化合物が褐変抑制効果を有すると判定することが好ましい。例えば、候補化合物を含むことにより、含まない場合と比較して、400〜600nmの吸光度スペクトル面積変化量が少ない場合(試料溶液において、コントロール溶液と比較して400〜600nmの吸光度スペクトル面積変化量が少ない場合)に、使用した候補化合物が褐変抑制効果を有すると判定することができる。また、例えば緑茶飲料における褐変抑制効果を有する化合物をスクリーニングする場合には、候補化合物を含むことにより、該化合物を含まない場合と比較して、487nmの吸光度の変化量が少ない場合(試料溶液において、コントロール溶液と比較して487nmの吸光度の変化量が少ない場合)に、使用した候補化合物を褐変抑制効果を有すると判定し、褐変抑制物質として選抜することが好ましい。
本発明のスクリーニング方法により褐変抑制効果を有すると判定された物質は、上述した褐変抑制のため、アルデヒド捕捉のため、消臭のため等に使用することができ、例えば、褐変抑制用組成物、アルデヒド捕捉用組成物、消臭用組成物の有効成分として好適に使用される。
【0099】
本発明は、上記化合物(1)の以下の使用等も包含する。
褐変抑制のための、上記一般式(1)で表される化合物の使用。
褐変抑制用組成物を製造するための、上記一般式(1)で表される化合物の使用。
アルデヒドを捕捉するための、上記一般式(1)で表される化合物の使用。
アルデヒド捕捉用組成物を製造するための、上記一般式(1)で表される化合物の使用。
消臭のための、上記一般式(1)で表される化合物の使用。
消臭用組成物を製造するための、上記一般式(1)で表される化合物の使用。
ポリフェノールを含有する組成物におけるポリフェノールの減少抑制ための、上記一般式(1)で表される化合物の使用。
ポリフェノールを含有する組成物における上記一般式(2)で表される化合物の生成抑制ための、上記一般式(1)で表される化合物の使用。
上記一般式(1)で表される化合物を、アルデヒドを含む気体又は液体と接触させる、アルデヒド捕捉方法。
上記一般式(1)で表される化合物を、アルデヒドを含む気体又は液体と接触させる、消臭方法。
化合物(1)及びその好ましい態様等は、上述した通りである。褐変抑制は、好ましくは、上述したポリフェノールを含有する組成物の褐変抑制である。化合物(1)は、アルデヒド由来の臭いの消臭に好適に使用される。
【実施例】
【0100】
以下、本発明をより具体的に説明する実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0101】
可視吸収スペクトル(400〜700nm)の測定には、紫外可視分光光度計 UV−1700((株)島津製作所製)を使用した。
実施例中、可視吸収スペクトルを、単に吸収スペクトルともいう。
LC−MS分析には、液体クロマトグラフ質量分析計 LC−MS2020((株)島津製作所製)を使用した。
【0102】
<試験例1>
2Lペットボトル入りの緑茶飲料を製造し、未開封の状態で室温で貯蔵して、目視及び可視吸収スペクトルの測定により、経時的な色の変化を確認した。
【0103】
2Lペットボトル入り緑茶飲料は、以下の方法で製造した。
緑茶葉を30倍量のイオン交換水(70℃)にて5分間抽出した。抽出0分、1分、2分、3分、4分のタイミングで、撹拌(1回あたり5回を15秒で撹拌)を行った。抽出時間5分のタイミングで、20メッシュのフィルターで茶葉抽出液を濾過して茶葉を除去して、「抽出液」を得た。この抽出液を、イオン交換水を用いて、抽出に用いたイオン交換水の量までメスアップし、流水で30℃程度まで冷却した。冷却した抽出液を6000rpm、10分遠心分離し、上清を回収し、抽出液の希釈液とした。抽出液の希釈液をキュノフィルター(3M社製)に通し、回収した溶液にアスコルビン酸を添加し、pH調整剤として重曹を加え、pH6.4に調整した。さらに、Brix値0.21となるようにイオン交換水で希釈して、「調合液」とした。アスコルビン酸は、調合液中のアスコルビン酸濃度が0.4g/Lとなるように添加した。調合液を超高温加熱処理殺菌機(UHT殺菌機)により132.5℃で60秒間殺菌し、2Lの透明なペットボトルに充填した。
【0104】
製造後6日の緑茶飲料は薄黄色であったが、貯蔵期間が長いほど黄褐色となった。これらの緑茶飲料の可視吸収スペクトルを測定したところ、目視での色みの変化に伴い、487nmに極大波長を持つ吸収スペクトルが増加することが明らかとなった。図1は、室温で6日、22日、5カ月、7カ月及び9カ月貯蔵したペットボトル入りの緑茶飲料の写真である。図2は、図1に示す各緑茶飲料の可視吸収スペクトルを示す図である。これらの結果から、緑茶飲料の褐変の指標として487nmの吸収強度を使用することにした。
【0105】
<試験例2>
緑茶葉を30倍量のイオン交換水(70℃)にて5分間抽出した。抽出0分、1分、2分、3分、4分のタイミングで、撹拌(1回あたり5回を15秒で撹拌)を行った。抽出時間5分のタイミングで、20メッシュのフィルターで茶葉抽出液を濾過して茶葉を除去して、「抽出液」を得た。この抽出液を、イオン交換水を用いて、抽出に用いたイオン交換水の量までメスアップし、流水で30℃程度まで冷却した。冷却した抽出液を6000rpm、10分遠心分離し、上清を回収し、抽出液の希釈液とした。抽出液の希釈液をキュノフィルター(3M社製)に通し、回収した溶液にアスコルビン酸を添加し、pH調整剤として重曹を加え、pH6.4に調整した。さらに、Brix値0.21となるようにイオン交換水で希釈して、「調合液」とした。アスコルビン酸は、調合液中のアスコルビン酸濃度が0、0.04、0.4又は1.2g/Lとなるように添加した。
【0106】
上記で調製した調合液について以下の条件で劣化試験を行った後、可視吸光スペクトルを測定した。
条件1:窒素置換、4℃で1時間
条件2:121℃、14分
条件3:酸素曝気後、123℃で30分
条件2及び3は、オートクレーブを使用した加速劣化試験である。条件2は、緑茶飲料製造時の殺菌を想定した条件である。条件2は、酸素、窒素置換はしなかった。条件3は、酸素過多で褐変反応が最大まで進んだ状態を想定した条件である。
【0107】
図3及び図4に結果を示す。
図3は、アスコルビン酸を0.4g/L添加した調合液の条件2の劣化試験前後の可視吸光スペクトルを示す図である。図3中、実線が条件2の試験前のスペクトル、破線が試験後のスペクトルである。
【0108】
図4は、劣化試験後の各調合液の可視吸光スペクトルを示す図である((a):条件1(窒素置換、4℃で1時間)、(b):条件2(121℃、14分)、(c):条件3(酸素曝気後、123℃で30分))。
図4の(a)〜(c)において、実線は、アスコルビン酸の添加量が0g/Lの調合液;破線は、アスコルビン酸の添加量が0.04g/Lの調合液;点線は、アスコルビン酸の添加量が0.4g/Lの調合液;一点鎖線は、アスコルビン酸の添加量が1.2g/Lの調合液の可視吸収スペクトルである。
【0109】
図3から、調合液を条件2(121℃、14分)におくと、450〜550nmの吸収が増加することがわかった。特に487nmの吸収極大の増加が顕著であった。
図4の(a)から、条件1(窒素置換、4℃)では、400〜450nmにおける吸収の差はあるものの、吸収極大を示すスペクトルを示さなかった。
【0110】
条件2(121℃、14分)の結果(図4の(b))から、アスコルビン酸を添加した調合液では、500〜600nm付近での吸収がアスコルビン酸を添加しないものよりも低かった。500〜600nm付近の吸収波長帯は目視では赤色に見えるため、アスコルビン酸の添加によって赤色を呈する化合物(カテキン自身の酸化重合によって生ずるプロアントシアニジジンなど)の生成が抑えられると考えられた。
サンプルの目視確認においてもアスコルビン酸無添加の調合液のみが顕著に赤色を呈していることから、緑茶由来の成分どうしが反応して赤色の化合物が生成すると考えられた。
【0111】
また、図4の(b)の条件2の結果から、アスコルビン酸の添加量に応じて450〜500nm付近(487nm吸収極大値)での吸収が高かった。450〜500nm付近の吸収波長帯は目視で黄〜褐色に見えるため、アスコルビン酸の添加によって黄〜褐色を呈する化合物が生成していると考えられた。
サンプルの目視確認においてもアスコルビン酸添加に応じて、黄褐色を呈していることから、アスコルビン酸を基質として黄褐色の化合物が生成すると考えられた。
【0112】
条件3(酸素曝気後、123℃で30分)の結果(図4の(c))から、褐変反応が限界まで進むとアスコルビン酸の添加量が少ない調合液では、アスコルビン酸無添加の調合液と同様のスペクトルを示した。アスコルビン酸が消失して酸化抑制効果が失われると、アスコルビン酸無添加の場合と同様の反応生成物が生じると考えられた。
アスコルビン酸の濃度が0.4g/L以上の調合液も、さらに酸素曝気と加熱を行えば、最終的には同じ状態に近づくと考えられた。
これらの結果から、加速劣化に関しては高温条件により時間短縮ができ、褐変現象をトレースできることが示された。一方で、アスコルビン酸が、色調劣化に大きく寄与していることと、褐変の評価指標として使用する487nmの吸収極大(黄褐色化)の増加に寄与する基質であることが判明した。
【0113】
<試験例3>
緑茶飲料の褐変を生じる反応において、アスコルビン酸が基質であることが示されたことから、別の実験にてそのアスコルビン酸と反応し、黄褐色化を担うもう一方の化合物を天然物化学的な手法を用い、探索した。その結果、ポリフェノールの一種であるカテキン類が挙げられた。カテキン類はエピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)及びエピガロカテキンガレート(EGCg)の4種が候補として挙がった。尚、加熱殺菌することでこれらはエピメル化を起こし、異性体であるカテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(Cg)及びガロカテキンガレート(GCg)を生じる。
以下のモデル実験を行い、緑茶の褐変を化合物レベルで検証した。
【0114】
緑茶として、試験例2の抽出液の希釈液を用いた。モデル液として4種のカテキン類をこの緑茶相当の濃度に調整したもの(カテキン4種混合)を用いた。図5は、緑茶及びモデル液(カテキン4種混合)中のエピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)及びエピガロカテキンガレート(EGCg)濃度を示す図である。これらの濃度は、LC−MSにより測定した。
【0115】
カテキン類のLC−MS測定条件
LC
カラム:2.5 Cholester(ナカライテスク製)(100mmL.×2.0I.D.)
移動相:
A:0.1%ギ酸/H
B:0.1%ギ酸/CHCN
グラジエント溶出法
タイムプログラム(B液濃度は体積%):B5%(0−0.5分)→B32%(20分)→B100%(25−27.5分)→B5%(27.51−30分)
流量:0.25mL/分
カラム温度:40℃
試料注入量:2μL
【0116】
MS
プローブ電圧:+4.5kV(ESI Positive Mode)
−3.5kV(ESI Negative Mode)
ネプライザーガス流量:1.5L/分
ドライングガス流量:20L/分
DL温度:250℃
DL電圧/Q−aray電圧:デフォルト値
SIM:m/z289(Negative)(EC)
m/z305(Negative)(EGC)
m/z441(Negative)(ECg)
m/z457(Negative)(EGCg)
【0117】
これらの緑茶及びモデル液に、反応基質としてデヒドロアスコルビン酸を0.4g/LとpH調整剤として重曹を適宜加え、pH6.4に調整し、加速劣化試験に供した。種々の実験結果より、アスコルビン酸の酸化物であるデヒドロアスコルビン酸により褐変が促進することが判明しており、酸化防止剤としてアスコルビン酸が全て酸化された状態を模した実験系にした。
オートクレーブを用い、試験例2の条件3(酸素曝気後、123℃で30分)で緑茶及びモデル液(カテキン4種混合)を加速劣化し、可視吸収スペクトルの挙動を観察した。
【0118】
図6の(a)は、加速劣化試験前の緑茶及びモデル液(カテキン4種混合)の可視吸収スペクトルを示す図であり、(b)は、緑茶及びモデル液の加速劣化前後の吸収の変化量(ΔABU)を示す図である。図6の(a)及び(b)中、実線が緑茶であり、破線がモデル液(カテキン4種混合)である。
図6の(a)及び(b)に示すように、加速劣化前後の緑茶とカテキン4種混合のモデル液のスペクトルを比較すると、加速劣化前後の変化量ΔABUがほぼ一致した。また、487nm吸収極大が増加する現象としても一致度が高いことから、モデル液により緑茶の褐変反応に近いものを再現できたといえる。これらの結果より、緑茶中の褐変を担う成分群としてカテキン類とアスコルビン酸(と重曹)が見出された。
【0119】
<試験例4>
アスコルビン酸の分解経路として、酸化によってデヒドロアスコルビン酸を経てアルデヒドが生じる経路と、非酸化的にデヒドロアスコルビン酸を経ずアルデヒドが生じる経路の二種類存在する。いずれの経路においても、分解物として、グリオキサール、メチル−グリオキサール、ジアセチル、L−トレオニン、3−デオキシ−L−トレオニン等のアルデヒドが生じることが報告されている(A Schulz et al., Int J Mass Spec 262(2007)169−173)。
実際に、アスコルビン酸及び重曹の存在下において、どのようなアルデヒドが生じるかを検証した。
【0120】
緑茶飲料に使用される添加物のアスコルビン酸(0.4g/L)と重曹(0.37g/L)を混合した溶液を準備した。その溶液について、試験例2の条件3(酸素曝気後、123℃で30分)で加速劣化試験を行い、生じたアルデヒド類をLC−MSで分析した。アルデヒド類はo−(4−シアノ−2−エトキシベンジル)ヒドロキシルアミン(CNET)硫酸塩により誘導体化し、LC−MSで検出した。CNET硫酸塩による誘導体化は、1%CNET硫酸塩水溶液(林純薬工業(株)、製品名CNETグリオキサール標準溶液)0.5mLを試料5mLに添加し、室温で2時間反応させることにより行った。反応後の溶液をフィルター(0.2μ)で濾過し、下記条件でLC−MSに供した。LC−MS測定結果を図7に示す。
【0121】
LC−MS測定条件
LC
カラム:C18M 2D(Shodex製)(100mmL.×2.0I.D.)
移動相:
A:0.1%ギ酸/H
B:0.1%ギ酸/CHCN
グラジエント溶出法
タイムプログラム(B液濃度は体積%):B5%(0−2分)→B60%(7.5分)→B100%(17−21分)→B5%(22−30分)
流量:0.2mL/分
カラム温度:40℃
試料注入量:2μL
【0122】
MS
プローブ電圧:+1.6kV(ESI Positive Mode)
−1.6kV(ESI Negative Mode)
ネプライザーガス流量:1.5L/分
ドライングガス流量:20L/分
DL温度:250℃
DL電圧/Q−aray電圧:デフォルト値
SIM:m/z195(Negative)
m/z249(Negative)
m/z407(Positive)
【0123】
図7は、CNET誘導体化したアスコルビン酸の分解物を、LC−MSによりスキャンモードで分析したクロマトグラム(SCANデータ)及びSIM(選択的イオンモニタリング)モードで分析したクロマトグラム(SIMデータ)を示す図である((a):SCANデータ、(b):SIMデータ)。検出されたピークはCNET誘導体化されたグリオキサールであることが定性的に確認された。この結果より、緑茶中においてアスコルビン酸から、アルデヒド類であるグリオキサールが生じることがわかった。
【0124】
<試験例5>
試験例1〜4の結果から、反応基質としてカテキン類とアスコルビン酸から生じるグリオキサールとの反応によって生じる化合物が緑茶褐色物質である可能性が高いと考えられた。その検証実験を行うこととした。
【0125】
エピカテキン(EC)(0.5g/L)とグリオキサール(0.01g/L)を混合した溶液(緑茶モデル)を、試験例2の条件3(酸素曝気後、123℃で30分)で加速劣化させ、下記条件でLC−MSにより分析を行った。
【0126】
LC−MS測定条件
LC
カラム:2.5 Cholester(ナカライテスク製)(100mmL.×2.0I.D.)
移動相:
A:0.1%ギ酸/H
B:0.1%ギ酸/CHCN
グラジエント溶出法
タイムプログラム(B液濃度は体積%):B5%(0−0.5分)→B32%(20分)→B100%(25−27.5分)→B5%(27.51−30分)
流量:0.25mL/分
カラム温度:40℃
試料注入量:2μL
【0127】
MS
プローブ電圧:+4.5kV(ESI Positive Mode)
−3.5kV(ESI Negative Mode)
ネプライザーガス流量:1.5L/分
ドライングガス流量:20L/分
DL温度:250℃
DL電圧/Q−aray電圧:デフォルト値
SCAN:m/z100−800(Positive, Negative)
SIM:m/z289(Negative)(EC)
m/z347(Negative)
m/z601(Negative)
【0128】
図8の(a)〜(d)は、加速劣化させた緑茶モデルで検出されたエピカテキン、エピカテキン1分子とグリオキサール1分子が結合した化合物、及び、エピカテキン2分子とグリオキサール1分子が結合したキサンチリウム構造の化合物を、LC−MSによりSIMモードで分析したクロマトグラムを示す図である((a):エピカテキンのクロマトグラム、(b):エピカテキン1分子とグリオキサール1分子が結合した化合物のクロマトグラム、(c):エピカテキン2分子とグリオキサール1分子が結合したキサンチリウム構造の化合物のクロマトグラム、(d):(a)〜(c)のクロマトグラムを重ねて示した図)。図8の(a)〜(d)より、未反応のエピカテキン(単量体)(化学式C1514、分子量290.08、図8の(a))に加えて、加速劣化により生じた化合物として、エピカテキン1分子とグリオキサール1分子が結合した化合物(化学式C1716、分子量348.08、図8の(b))(無色)及びエピカテキン2分子とグリオキサール1分子が結合したキサンチリウム構造の化合物(褐色)(化学式C322612、分子量602.14、図8の(c))が検出された。
この結果より、緑茶の褐変反応を、化合物をモデルとし、トレースすることができた。
このキサンチリウム構造の化合物は、緑茶飲料のpHである中性付近では487nm付近に吸収極大を有する(NE Es−Safi et al., Food Chem 88(2004) 367−372)。従って、緑茶飲料等のpHが中性付近の溶液におけるキサンチリウム構造の化合物の生成(褐変)は、487nmの吸収の変化により評価することができる。
【0129】
<実施例1>
緑茶の褐変現象がカテキン類とアルデヒド類との反応によって生じることが判明した。このアルデヒドとの反応は、カテキン類以外のフラボノイド骨格をもつ化合物でも起こることが別の実験から明らかになった。
このフラボノイド骨格を有する化合物の性質を利用し、緑茶中のカテキンとの競合下でもアルデヒドと反応し、生成物が色を呈さないようなフラボノイドの化合物を探索した。
【0130】
試験例5で検出されたキサンチリウム構造の化合物(褐色)は、アルデヒド1分子とカテキン2分子との反応により生成したカテキンのカルボキシメチン架橋二量体において、カテキン由来の水酸基(アルデヒドと反応した炭素原子に隣接する炭素原子に結合した水酸基)が脱水反応して閉環することにより形成されたものであった。このため、褐変抑制作用を有する化合物の1つの例として、フラボン骨格を有する化合物の場合、アルデヒドと反応するA環の炭素原子のオルト位の炭素原子に結合している水酸基が保護されている化合物が有効であると考えられた。具体的には、以下の一般式(I)の構造の化合物を候補化合物の1例として考えた。
【0131】
【化8】
【0132】
上記式中、破線は、二重結合であってもよいことを表す。上記一般式の化合物においては、少なくとも、A環(ベンゼン環)の8位がアルデヒドと反応する位置である。RA1は置換基である。アルデヒドと反応する8位に隣接する7位の水酸基は保護されている(ORA1)。RA2は、水素原子又は置換基である。RA2が水素原子である場合には、RA2が結合している炭素原子がアルデヒドと反応することができるが、この場合には、RA3は置換基である。RA4は、水素原子、酸素原子又は置換基である。RA5及びRA6は、それぞれ独立して、水素原子、置換基等である。
上記構造を有するフラボノイドとして、バイカリン(和光純薬工業(株))を使用して実験を行った。バイカリンの構造式を以下に示す。
【0133】
【化9】
【0134】
エピカテキン(0.5g/L)とグリオキサール(0.01g/L)を混合したモデル溶液にバイカリン(0.5g/L)を添加した。試験例2の条件3(酸素曝気後、123℃で30分)で加速劣化させ、加速劣化前後の可視吸収スペクトルの変化量ΔABUを算出した。
【0135】
図9は、バイカリン添加によるモデル溶液の可視吸収スペクトルの変化を示す図である。
図9より、バイカリンを添加しない場合(実線)と比較して、バイカリン添加(破線)により、加速劣化前後の可視吸収スペクトルの変化量ΔABUが有意に減少した。
【0136】
<実施例2>
以下の3種類の溶液を調製した。
B+G:バイカリン(0.5g/L)及びグリオキサール(0.01g/L)の混合液
B+C+G:バイカリン(0.5g/L)、エピカテキン(0.5g/L)及びグリオキサール(0.01g/L)の混合液
C+G:エピカテキン(0.5g/L)及びグリオキサール(0.01g/L)の混合液
上記の溶液を、オートクレーブで121℃で15分保持して加速劣化させた。加速劣化後、目視により色の変化を確認し、さらに可視吸収スペクトルを測定した。図10に結果を示す。
【0137】
図10は、バイカリン及びグリオキサールの混合液(B+G)、バイカリン、エピカテキン及びグリオキサールの混合液(B+C+G)、エピカテキン及びグリオキサールの混合液(C+G)の、加速劣化後の写真及び可視吸収スペクトルを示す図である((a):写真、(b):可視吸収スペクトル)。図10の(b)中、実線が混合液(B+G)、破線が混合液(B+C+G)、一点鎖線が混合液(C+G)である。
混合液(B+G)と(B+C+G)と(C+G)の色を目視により確認すると、(B+G)は薄黄色であり、(C+G)は褐色であった。このときの混合液(B+C+G)は(B+G)と(C+G)の間の黄褐色であった。図10の(b)の混合液(B+C+G)と(C+G)との比較から、バイカリンの添加により、487nmの吸収が顕著に減少することが分かる。このことから、バイカリンにより、エピカテキンとアルデヒドから生じる褐変を抑制されたといえる。
実施例1及び実施例2の上記結果から、バイカリンによる褐変抑制効果が証明された。
【0138】
さらに、加速劣化後に、混合液(B+C+G)、混合液(C+G)中のエピカテキン量(カテキン残存量)を試験例3と同じ条件で、LC−MSにより測定した。
図11に、加速劣化後の混合液(B+C+G)及び混合液(C+G)中のカテキン残存量(mM)を示す。図11より、バイカリン添加により、溶液中のカテキン残存量が増加することが分かった。
【0139】
<実施例3>
バイカリンによる褐変抑制効果について、メカニズムを検証した。
バイカリン(0.5g/L)及びグリオキサール(0.01g/L)の混合液を、試験例2の条件3(酸素曝気後、123℃で30分)で加速劣化させ、LC−MSにより分析を行った。LC−MS測定条件は、試験例5と同じである。
【0140】
図12は、バイカリン及びグリオキサールの混合液の加速劣化させた溶液で検出された化合物をLC−MSによりSIMモードで分析したクロマトグラムを示す図である((a):グリオキサール1分子とバイカリン1分子とが結合した化合物、(b):バイカリン)。図12の(a)中の矢印で示すピークは、バイカリン(未反応のバイカリン)であった。図12の(b)中の矢印で示すピークは、バイカリン1分子とグリオキサール1分子が結合した下記構造式(II)の化合物であった。グリオキサールとバイカリンの反応及び反応生成物を下記に示す。
【0141】
【化10】
【0142】
褐色を呈するキサンチリウム構造を有する化合物は検出されなかったことから、緑茶中のカテキンとの競合下でバイカリンがアルデヒドのグリオキサールと反応し、キサンチリウム構造を有する化合物を生じないことが推察された。
【0143】
<調製例1>
バイカリンの水への溶解性を上げるため、以下の方法によりバイカリン配糖体を作製した。
アスコルビン酸ナトリウム2.5gを蒸留水500mLに溶解させた。これに1N NaOHを20mL加え、pH12に調整し、アスコルビン酸ナトリウム水溶液を調製した。バイカリン(和光純薬工業(株))500mg及びデキストリン(トウモロコシ由来)2500mgに上記のアスコルビン酸ナトリウム水溶液500mLを加えた。これに1N HClを4mL加えてpH7.0にした後、糖転移酵素(コンチザイム、天野エンザイム)を100U添加した。68℃で35時間反応させた後、95℃で30分加熱して酵素を失活させた。
反応液を、ダイヤイオンHP20(三菱化学(株))1000mLを充填したカラム(予め、食添用エタノール2Lを通液後、蒸留水2Lを通液したもの)に通液し、次いで蒸留水2Lを通液後、80%エタノール2Lで溶出させた。80%エタノール画分をエバポレータにて濃縮し、凍結乾燥した。また、80%エタノール画分(フラクションNo.1〜8)を下記条件でLC−MSに供して分析し、バイカリンを定量した。80%エタノール画分(フラクションNo.1〜8)中のバイカリン配糖体(配糖化されたバイカリン)収量を表1に示す。
【0144】
バイカリンのLC−MS分析条件
LC
カラム:C18M 2D(Shodex製)(100mmL.×2.0I.D.)
移動相:
A:0.1%ギ酸/H
B:0.1%ギ酸/CHCN
グラジエント溶出法
タイムプログラム(B液濃度は体積%):B5%(0−2分)→B28%(10分)→B50%(15分)→B100%(18分)→B5%(20−26分)
流量:0.2mL/分
カラム温度:25℃
試料注入量:2μL
【0145】
MS
インタフェース DUIS(ESI&APCI)
ネプライザーガス流量:1.5L/分
ドライングガス流量:20L/分
DL温度:250℃
DL電圧/Q−aray電圧:デフォルト値
SIM:m/z447(Positive)(バイカリン)
【0146】
配糖化の有無は、以下の測定条件でLC−MSにて確認した。
バイカリン配糖体のLC−MS分析条件
LC
カラム:C18M 2D(Shodex製)(100mmL.×2.0I.D.)
移動相:
A:0.1%ギ酸/H
B:0.1%ギ酸/CHCN
グラジエント溶出法
タイムプログラム(B液濃度は体積%):B12.5%(0−0.5分)→B25%(10分)→B50%(20−22分)→B12.5%(24−26分)
流量:0.2mL/分
カラム温度:25℃
試料注入量:2μL
MS
インタフェース DUIS(ESI&APCI)
ネプライザーガス流量:1.5L/分
ドライングガス流量:20L/分
DL温度:250℃
DL電圧/Q−aray電圧:デフォルト値
SIM:m/z447(Positive) バイカリン
m/z609(Positive) バイカリンモノグルコシド
m/z771(Positive) バイカリンジグルコシド
m/z933(Positive) バイカリントリグルコシド
【0147】
【表1】
【0148】
表1中の「質量(g)」は、フラクションごとの「固形分量」である。バイカリン又はバイカリン配糖体が定性的に確認されたフラクションの「固形分量」から「バイカリン量」を引くことより、バイカリン配糖体の量を求めた。80%エタノール画分には、未反応のバイカリン(m/z447)及びバイカリンの配糖体(バイカリンの糖部分にグルコースが1〜3個結合した化合物:バイカリンモノグルコシド(m/z609)、バイカリンジグルコシド(m/z771)、バイカリントリグルコシド(m/z933))が含まれていた。
【0149】
図13は、バイカリン配糖体を含む画分を、LC−MSによりSIMモードで分析したクロマトグラム(SIMデータ)である。図13中の各ピークは、左からバイカリントリグルコシド(m/z933)、バイカリンジグルコシド(m/z771)、バイカリンモノグルコシド(m/z609)、バイカリン(m/z447)である。
【0150】
<実施例4>
アルデヒド捕捉物質のスクリーニングを行った。
(アッセイ系の構築)
モデルアルデヒドをグリオキサール、反応基質をエピカテキンとし、これに加える候補物質がどれだけ褐変を抑制できるかにより、アルデヒド捕捉能を評価した。ネガティブコントロールには、蒸留水を使用した。また、ポジティブコントロールとして、調製例1で得たフラクション6、7及び8(バイカリン及びバイカリン配糖体(バイカリンの糖部分にグルコースが1〜3個結合した化合物)を含む混合物)を使用した。
試薬には、グリオキサール水溶液(39%(v/v))及びエピカテキンを使用した。
サンプル液は、候補物質を水に溶解させ、該候補物質由来のトータルフェノール量が600ppmとなるように調整して作製した。トータルフェノール量は、没食子酸を標準物質として使用し、フォーリン・デニス法により測定した。なお、候補物質の使用量(トータルフェノール量)は、ポジティブコントロールが褐変抑制活性を示す濃度の5倍量を目安として設定した。
【0151】
エピカテキンの1mg/mL水溶液を調製し、A液とした。グリオキサール水溶液(39% v/v)100μLを蒸留水で300mLに希釈し、B液とした。96穴マイクロプレートにA液60μL、サンプル液10μL、蒸留水50μL、B液60μLの順に分注した。プレートにプレートシール(BMPCR−TS(BMBio社製))を隙間なく貼り付けた。
70℃で16時間加速劣化させ、400〜600nmのスペクトル面積値、487nmの吸光度を測定した。
加速劣化前後における可視吸光度変化を算出した。褐変抑制の活性値の指標として、Br値(Browning)とXt値(キサンチリウム)の2つを設定した。Br値は400〜600nmのスペクトル面積値の変化量Δを示し、Xt値は487nmの吸光度変化量Δを示している。図14は、スクリーニングに使用したBr値及びXt値を説明するための図である。図14中、実線がアルデヒド捕捉作用を有する物質(褐変抑制作用を有する物質)を添加した場合の吸光度であり、破線がネガティブコントロールの吸光度である。
ネガティブコントロールに比べてBr値及びXt値が大きいほど、アルデヒド捕捉能が高く、褐変抑制作用が高いことを意味する。
【0152】
構造特徴に基づいて天然物データベースから取得した以下の化合物5種(化合物(A−1)〜(A−5)を候補物質として、上記の方法でアルデヒド捕捉能を評価した。これらの化合物は、いずれもAnalytiCon社製である。
【0153】
【化11】
【0154】
化合物(A−1)〜(A−5)の褐変抑制作用の評価結果を図15に示す。結果は、ネガティブコントロールのBr値及びXt値を1とした場合の、候補化合物のBr値及びXt値の比率で示した。図15中、N.C.はネガティブコントロール、P.C.はポジティブコントロール(バイカリン及びバイカリン配糖体)である。黒いバーがBr値、白いバーがXt値を表す。図15の結果は、3回の試験(N=3)の平均値である。
化合物(A−1)〜(A−5)は、いずれもアルデヒド捕捉能を有し、褐変抑制作用を示すことが分かった。
【0155】
<実施例5>
候補物質として、チャフロサイドA、イカリイン(Ark Pharm, Inc.製)及びスクテラリン(Sigma−Aldrich製)の各化合物を用いた。これ以外は、実施例4と同じ方法でアルデヒド捕捉能及び褐変抑制作用を評価した。チャフロサイドAは下記式(B−1)の化合物であり、イカリインは、下記式(B−2)の化合物であり、スクテラリンは、下記式(B−3)の化合物である。
【0156】
【化12】
【0157】
スクテラリン、チャフロサイドA及びイカリインの褐変抑制作用の評価結果を図16に示す。結果は、ネガティブコントロールのBr値及びXt値を1とした場合の、候補化合物のBr値及びXt値の比率で示した。図16の結果は、3回の試験の平均値である。図16中、黒いバーがBr値、白いバーがXt値を表す。Sucはスクテラリン、ChaAはチャフロサイドA、Icaはイカリインである。N.C.はネガティブコントロール(蒸留水)、P.C.はポジティブコントロール(バイカリン及びバイカリン配糖体)である。
チャフロサイドA、イカリイン及びスクテラリンについてアルデヒド捕捉効果を確認した。なお、これら化合物は本法の濃度では難水溶性を示し、溶け切らなかったものはフィルターにて除去した。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、飲食品分野等において有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】