(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
本発明は、褐色脂肪細胞及びその調製方法、褐色脂肪細胞を含む移植材料、褐色脂肪細胞を含む各種疾患、状態の予防剤又は治療剤、使用を提供することを課題とする。斯かる課題を解決する手段として、哺乳動物の分化した体細胞を培地中、(1)TGFβ/SMADパスウェイ阻害剤、(2)カゼインキナーゼ1阻害剤、(3)cAMP誘導剤、及び(4)MEK/ERKパスウェイ阻害剤からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の存在下に培養して前記体細胞を褐色脂肪細胞に変換することを特徴とする、褐色脂肪細胞を調製する方法を提供する。
肥満、糖尿病、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患、メタボリックシンドロームの予防又は治療剤であって、請求項1〜3のいずれかに記載の方法により調製された褐色脂肪細胞を有効成分とする、予防又は治療剤。
請求項1〜3のいずれかに記載の方法により調製された褐色脂肪細胞を用いた、肥満、糖尿病、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患、メタボリックシンドロームの予防又は治療のための使用。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、哺乳動物の分化した体細胞を褐色脂肪細胞にコンヴァートする方法に関する。当該方法により、体細胞を原材料として褐色脂肪細胞が調製される。「コンヴァート」とは、体細胞を目的の褐色脂肪細胞へと変換することを意味する。本発明の方法の好ましい態様の1つは、「ダイレクトリプログラミング」、「ダイレクトコンヴァージョン」ともよばれる、iPS細胞の作製に代表される細胞の初期化の工程を経ることなく、体細胞を褐色脂肪細胞にコンヴァートする方法である。
【0031】
褐色脂肪細胞
本発明は、褐色脂肪細胞の調整方法を提供する。褐色脂肪細胞とは、白色脂肪細胞とともに、ほ乳類に存在する脂肪細胞の2つのタイプの1つである。褐色脂肪細胞と類似の形態と機能をもつ細胞として、ベージュ(Beige)細胞やブライト(Brite)細胞と呼ばれる細胞も知られており、本明細書においてこれらの細胞も「褐色脂肪細胞」に包含される。
【0032】
褐色脂肪細胞の存在は、公知の手法で確認をすることができる。例えば、細胞中の脂肪滴を検出できる蛍光色素での染色、褐色脂肪細胞において発現する遺伝子産物(mRNA又はタンパク質)の検出が挙げられる。細胞中の脂肪滴を検出できる蛍光色素としては、Oil Red O、BODIPYなどが挙げられる。褐色脂肪細胞において発現する遺伝子産物としては、UCP-1、CIDEA、PCG-1α、DIO2、Cox8b、Otop、AdipoQなどが挙げられる。中でも、UCP-1(Uncoupling protein 1)は、褐色脂肪細胞に特異的に発現する遺伝子であり、酸化的リン酸化を脱共役させるミトコンドリア内膜タンパク質をコードし、褐色脂肪細胞の機能の根幹を担うと考えられるため、褐色脂肪細胞の指標として特に好ましいものの1つである。
【0033】
体細胞
本発明の方法の対象となる哺乳動物の分化した体細胞としては、哺乳動物由来であって、褐色脂肪細胞そのもの及び生体内で褐色脂肪細胞へと分化する能力を有する細胞でない限り、特に限定されない。
【0034】
体細胞の種類としては、例えば、線維芽細胞、上皮細胞(皮膚表皮細胞、口腔粘膜上皮細胞、気道粘膜上皮細胞、腸管粘膜上皮細胞など)、表皮細胞、歯肉細胞(歯肉線維芽細胞、歯肉上皮細胞)、歯髄細胞、白色脂肪細胞、皮下脂肪、内臓脂肪、筋肉、血液細胞などが挙げられ、好ましくは線維芽細胞、歯肉細胞、口腔粘膜上皮細胞、歯髄細胞、脂肪細胞、表皮細胞(ケラチノサイト)、血液細胞などが挙げられる。
【0035】
また、間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell: MSC)、神経幹細胞(Neural stem cell)、肝幹細胞(hepatic stem cell)、腸幹細胞、皮膚幹細胞、毛包幹細胞、色素細胞幹細胞などの体性幹細胞から分化誘導し、あるいは脱分化させ、あるいはリプログラミングさせて作製した体細胞も挙げられる。また、さまざまな体細胞から分化誘導し、あるいは脱分化させ、あるいはリプログラミングさせて別の体細胞に誘導した細胞も挙げられる。また、生殖系列の細胞から分化誘導し、あるいは脱分化させ、あるいはリプログラミングさせて誘導した体細胞も挙げられる。
【0036】
また、胎性幹細胞(Embryonic stem cell:ES細胞)や人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPS細胞)から分化誘導し、あるいはリプログラミングさせて誘導した体細胞も挙げられる。
【0037】
また、厳密には体細胞ではないが、ES細胞、iPS細胞、あるいは生殖系列の細胞も本発明の「体細胞」に包含される(その際には、「体細胞」を「ES細胞」、「iPS細胞」あるいは「生殖系列の細胞」と読み替えるものとする)。
【0038】
また、培養細胞も挙げられ、培養細胞から分化誘導し、あるいは脱分化させ、あるいはリプログラミングさせて誘導した体細胞も挙げられる。
【0039】
哺乳動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ヒト、イヌ、ネコ、サル、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタなどが挙げられる。体細胞は、ヒト由来であることが特に好ましい。体細胞が由来する個体の年齢は限定されず、成人であっても小児であっても胎児であってもよい。なお、本明細書において、胎児由来の細胞、並びに、胎盤、羊膜、臍帯等由来の細胞も「体細胞」に包含される。
【0040】
調製した褐色脂肪細胞を生体に移植する場合には、移植される被験体由来の体細胞(自家細胞)を用いることが、感染や拒絶応答等の危険を低減させるために好ましい。しかしながら、自家細胞でなく、他人や他の動物の体細胞から作った褐色脂肪細胞を移植に用いることができる。またはあらかじめ準備しておいた他人や他の動物の体細胞から褐色脂肪細胞を作り、移植に用いることができる。または他人や他の動物の体細胞からあらかじめ作っておいた褐色脂肪細胞を、移植に用いることができる。すなわち、褐色脂肪細胞バンク、または褐色脂肪細胞前駆細胞のバンクを作っておき移植目的に供することができる。このような場合、拒絶応答等の危険を低減させるために、あらかじめ血液型とMHCをタイピングしておくことができる。また、あらかじめ褐色脂肪細胞のキャラクターや造腫瘍性などを確認しておくことができる。
【0041】
培地
本発明の方法で用いる培地は、特に限定されない。DMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)、EMEM(Eagle's minimal essential medium)などの通常の液体培地を用いることができる。必要に応じて、血清成分(Fetal Bovine Serum(FBS)、Human Serum(Serum))、ストレプトマイシン、ペニシリンなどの抗生剤、Non-Essential Amino Acid等の成分を添加することができる。
【0042】
褐色脂肪細胞を調製できる効率が高いとの観点から、培地として脂肪細胞を分化させるための分化誘導培地を用いることが好ましい。「脂肪細胞を分化させるための分化誘導培地」とは、多能性幹細胞(ES細胞、iPS細胞など)を脂肪細胞へと分化させることができる成分を含む培地を指す。分化誘導培地は、上記の通常の液体培地(必要に応じて加える成分を加えてもよい)に、下記の成分(1種又は2種以上)を添加したものが挙げられる:
インスリン(Insulin)(例えば濃度0.01〜100μg/mL程度、より好ましくは0. 1〜10μg/mL程度);3-イソブチル-1-メチルキサンチン(3-isobutyl-1-methylxanthine;IBMX)(例えば濃度0.01〜100 mM程度、より好ましくは0.1〜10mM程度); デキサメタゾン(Dexametazone)(例えば濃度0.01〜100 μM程度、より好ましくは0.1〜10 μM程度)。また、インドメタシン(Indometacin)(例えば濃度0.001〜10 mM程度、より好ましくは0.01〜1 mM程度) を添加しても良い。
【0043】
具体例として、10% FBS添加DMEM+MDI培地(0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexametazone、および1 μg/mL Insulinを添加した、10% FBS添加DMEM)を、脂肪細胞誘導培地として用いることができるが、これに限定されない。
【0044】
脂肪細胞誘導培地に、褐色脂肪細胞にコンヴァートさせる効率が高いとの観点から、さらにトリヨードサイロニン(Triiodothyronine, T3)、サイロキシン(Thyroxine, T4)などの甲状腺ホルモン(例えば濃度0.01〜100 nM程度、より好ましくは0.1〜10nM程度)またはPeroxisome Proliferator-Activated Receptor-γ (PPAR-γ)アゴニスト(例えば濃度0.01〜100 μM程度、より好ましくは0.1〜10 μM程度)を加えることが好ましく、両者を加えることがさらに好ましい。
【0045】
PPAR-γアゴニストとしては、Rosiglitazone、Ciglitazone、GW1929、nTZDpa、Pioglitazone Hydrochloride、Troglitazoneなどのチアゾリジンジオン化合物が例示される。
【0046】
褐色脂肪細胞を誘導するための培地の好ましい態様としては、[1] FBS 10%, 0.5 mM IBMX, 125 nM Indomethacin, 1 microM Dexamethasone, 850 nM insulin 、トリヨードサイロニン(Triiodothyronine, T3)、サイロキシン(Thyroxine, T4)などの甲状腺ホルモン(例えば濃度0.01〜100 nM程度、より好ましくは0.1〜10nM程度)1 μM Rosiglitazoneを添加したDMEM培地、[2] 10% FBS, 850 nM insulin, 1 nM T3, Peroxisome Proliferator-Activated Receptor-γ (PPAR-γ)アゴニスト(例えば濃度0.01〜100 μM程度、より好ましくは0.1〜10 μM程度)を添加したDMEM培地が例示される。第1〜2日に[1]を、第3日以降に[2]を用いることが特に望ましい。しかしこれらに限定されない。
【0047】
化合物
本発明の方法において、哺乳動物の分化した体細胞を培地中、
(1)TGFβ/SMADパスウェイ阻害剤、
(2)カゼインキナーゼ1阻害剤、
(3)cAMP誘導剤、及び
(4)MEK/ERKパスウェイ阻害剤
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の存在下に培養する。以下、各化合物について説明する。
【0048】
TGF-β/SMADパスウェイ阻害剤
TGF-β/SMADパスウェイ阻害剤は、TGF-β/SMADパスウェイに属するタンパク質の活性を阻害できる化合物を意味する。TGF-β/SMADパスウェイは
図11に模式的に示す、当業者に公知のシグナル経路である。
【0049】
TGF-β/SMADパスウェイは、TGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質から構成されるリガンド(TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、アクチビン-βA、アクチビン-βB、アクチビン-βC、アクチビン-βε、nodal、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8A、BMP8B、BMP10, BMP15、GDF1、GDF2、GDF3、GDF5、GDF6、GDF7、GDF8、GDF9、GDF10、GDF11、GDF15、AMH (MIS)など)、ヘテロ二量体型の受容体を構成するTGF-β type I receptorファミリーに属するタンパク質及びTGF-β type II receptorファミリーに属するタンパク質、並びに、細胞内のシグナル分子(エフェクター)であるSMADファミリーに属するタンパク質(とくにSMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD1、SMAD5、またはSMAD8) が主に構成する。
【0050】
TGF-β/SMADパスウェイにおいては、リガンドが二量体型の受容体に結合すると、キナーゼ型受容体であるTGF-β type I receptorタンパク質が、SMADタンパク質をリン酸化して、下流にシグナルを伝達する。したがって本明細書では、TGF-βスーパーファミリーのサイトカイン、TGF-β type I receptorファミリー、TGF-β type II receptorファミリー、SMADファミリータンパク(とくにSMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD1、SMAD5、またはSMAD8)のいずれかを抑制する分子を、TGF-β/SMADパスウェイ阻害剤と呼ぶ。
【0051】
「TGF-β/SMADパスウェイ阻害剤」は狭義の阻害剤である低分子化合物に止まらず、受容体のアンタゴニスト、可溶性受容体、パスウェイのタンパク質に結合しその作用を阻害する活性を有する抗体、アプタマー、ペプチド、ドミナントネガティブとして働く変異体タンパク質やペプチドやその類似体、パスウェイのタンパク質の発現を抑制するsiRNA、shRNA、マイクロRNAなどを包含する。
【0052】
TGF-β/SMADパスウェイ阻害剤の態様の1つとして、TGF-β type I receptorファミリー(Activin receptor like kinase(ALK)ファミリーともいう)に属するALKタンパク質(ALK1、ALK2、ALK3、ALK4、ALK5、ALK6、ALK7)の阻害剤(ALK阻害剤)が例示される。また、TGF-β type II receptorファミリーに属するタンパク質(TGF-βRII(AAT3)、ACTRII、ACTRIIB、BMPRII、AMHRII)の阻害剤が例示される。
【0053】
具体的には、ALK5の阻害剤であるD4476(4-[4-(2,3-dihydro-1,4-benzodioxin-6-yl)-5-(2-pyridinyl)1H-imidazol-2-yl]-benzamide)、ALK5 Inhibitor II(2-(3-(6-Methylpyridin-2-yl)-1H-pyrazol-4-yl)-1,5-naphthyridine;別名RepSox)、GW788388、SD-208;ALK5とTGF-βRII(AAT3)の阻害剤であるLY2109761、LY2157299(Galunisertiv, 4-[5,6-dihydro-2-(6-methyl-2-pyridinyl)-4H-pyrrolo[1,2-b]pyrazol-3-yl]-6-quinolinecarboxamide)、LY364947;ALK4及びALK5の阻害剤であるSM16 (4-(5-(benzo[d][1,3]dioxol-5-yl)-4-(6-methylpyridin-2-yl)-1H-imidazol-2-yl)bicyclo[2.2.2]octane-1-carboxamide)、EW-7197、SB525334;ALK4、ALK5及びALK7阻害剤であるSB431542(4-[4-(1,3-Benzodioxol-5-yl)-5-(pyridin-2-yl)-1H-imidazol-2-yl]benzamide)、SB505124、A83-01;ALK2及びALK3の阻害剤であるLDN-193189、Apigenin、DMH1、ML347;ALK1及びALK2の阻害剤であるLDN-214117;ALK1、ALK2及びALK3の阻害剤であるLDN-212854;ALK1、ALK2、ALK3及びALK6の阻害剤であるK02288が例示される。
【0054】
ALK阻害剤としては、効果が高いとの観点から、少なくともALK5に対する阻害活性を有するもの(ALK5阻害剤)が好ましい。効果が特に高いとの観点から、ALK4及びALK5、又はALK5に対する特異的な阻害活性を有するもの(ALKタンパク質のうち、当該タンパク質への阻害活性が顕著に高いもの)が好ましい。
【0055】
TGF-β/SMADパスウェイ阻害剤の別の態様として、SMADタンパク質の阻害剤が例示される。
【0056】
中でも、ALK5の下流に位置するSMAD2及びSMAD3、さらにはSMAD4の阻害剤が好ましい。
【0057】
TGF-β/SMADパスウェイ阻害剤は、上記の化合物の誘導体も包含する。例えば、D4476に替えてその誘導体を使用することもできる。誘導体は、必ずしも、ALK5を阻害する活性を有さなくてもよい。例えば、WO00/61576号に記載の下記式(I)で表されるD4476の誘導体を使用することができる:
【0059】
[式中、R
1は、ハロゲン、C
1-6アルコキシ(−O−C
1-6アルキル)、C
1-6アルキルチオ(−S−C
1-6アルキル)、C
1-6アルキル、−O−(CH
2)
n−Ph、−S−(CH
2)
n−Ph、シアノ、フェニル(Ph)、およびCO
2R(ここで、Rは、水素またはC
1-6アルキルであり、nは、0、1、2または3である)からなる群から選択される1個またはそれ以上の置換基で置換されていてもよいナフチル、アントラセニル、またはフェニルであるか;またはR
1は、N、OおよびSから独立して選択される2個までのヘテロ原子を含有していてもよい5〜7員の芳香環または非芳香環と縮合したフェニルであり;
R
2は、H、NH(CH
2)
n−PhまたはNH−C
1-6アルキルであり(ここで、nは、0、1、2または3である);
R
3は、CO
2H、CONH
2、CN、NO
2、C
1-6アルキルチオ、−SO
2−C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、SONH
2、CONHOH、NH
2、CHO、CH
2OH、CH
2NH
2、またはCO
2Rであり(ここで、Rは、水素またはC
1-6アルキルである); X
1およびX
2のうち一方は、NまたはCR'であり、他方は、NR'またはCHR'である(ここで、R'は、水素、OH、C
1-6アルキル、またはC
3-7シクロアルキルである)か;またはX
1およびX
2のうち一方がNまたはCR'である場合、他方は、SまたはOであってもよい]。
【0060】
C
1-6アルキルとしては、直鎖状又は分枝鎖状の炭素数1〜6のアルキル、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシルを挙げることができる。
【0061】
C
3-7シクロアルキルとしては、炭素数3〜7のシクロプロピル、具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルが挙げられる。
【0062】
R
1が、N、OおよびSから独立して選択される2個までのヘテロ原子を含有していてもよい5〜7員の芳香環または非芳香環と縮合したフェニルである場合、具体例としては、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]ジオキシニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾ[1,2,5]オキサジアゾリル、ベンゾ[1,2,5]チアジアゾリル、ジヒドロベンゾフラニルが挙げられる。
【0063】
このようなD4476の誘導体として、下記の化合物が例示される:
4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1−ヒドロキシ−1H−イミダゾール−2−イル]ベンゾニトリル;
4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1H−イミダゾール−2−イル]ベンゾニトリル;
4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1H−イミダゾール−2−イル]安息香酸;
4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1H−イミダゾール−2−イル]安息香酸メチル;
4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−ピリジル)−1H−イミダゾール−2−イル]安息香酸エチル;
4−(4−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−1−ヒドロキシ−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル)ベンゾニトリル;
4−(4−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル)ベンゾニトリル;
4−(4−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル)安息香酸;
2−[4−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−2−(4−ニトロフェニル)−1H−イミダゾール−5−イル]ピリジン;
3−(4−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル)フェニルアミン;
4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−ニトロフェニル)−1H−イミダゾール−5−イル]ピリジン;
4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル)フェニルアミン;
4−(4−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル)フェニル]メタノール;
4−(4−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル)ベンズアミド;
4−[4−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イル)−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル]−ベンゾニトリル;
4−[4−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−5−イル)−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル]ベンズアミド;
3−[4−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル)ベンゾニトリル;
4−[4−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−6−イル)−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル]ベンゾニトリル;
4−[4−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフラン−6−イル)−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル]ベンズアミド;
3−(4−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル)安息香酸;
4−[4−(4−メトキシフェニル)−5−(2−ピリジル)−1H−イミダゾール−2−イル]ベンゾニトリル;
4−[4−(2,2−ジフルオロ−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル)−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル]ベンズアミド;
4−[4−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イル)−1−メチル−5−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル]ベンズアミド;
4−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イル)−1−メチル−4−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル]ベンズアミド;
4−(5−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−4−ピリジン−2−イル−オキサゾール−2−イル)ベンゾニトリル;
4−(5−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−4−ピリジン−2−イル−オキサゾール−2−イル)ベンズアミド;および 4−(4−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−5−ピリジン−2−イル−1H−ピロール−2−イル)ベンズアミド。
【0064】
カゼインキナーゼ阻害剤
カゼインキナーゼ阻害剤は、カゼインキナーゼ1、カゼインキナーゼ2などのサブタイプが存在するカゼインキナーゼに対する阻害剤を広く包含する。カゼインキナーゼ阻害剤は狭義の阻害剤である低分子化合物に止まらず、カゼインキナーゼに結合しその作用を阻害する活性を有する抗体、アプタマー、ペプチド、ドミナントネガティブとして働く変異体タンパク質やその類似体、カゼインキナーゼの発現を抑制するsiRNA、shRNA、マイクロRNAなどを包含する。
【0065】
褐色脂肪細胞を誘導する効果が高いとの観点から、カゼインキナーゼ1阻害剤が好ましい態様として挙げられる。
【0066】
カゼインキナーゼ1阻害剤としては、D4476、IC261、CK1-7、A3、SB-431542、DRB、ハイメニアルディシン、マタイレジノール、5-ヨードツベルジシン、メリジアニン、SB-203580などの化合物(カゼインキナーゼ1を特異的に阻害する化合物を含む。)が、好適な例として挙げられる。
【0067】
その他、ファスジル、ヒドロキシファスジル、フェンレチニド、PKZ-ζペプチド偽基質、ジメチルスフィンゴシン、CVS-3989、AG1024、648450、K252a、C3トランスフェラーゼ、553502、LY333531、ルボキシスタウリン、Go-6976、IWR-1-endo(IWR1e)、IWP-2などのカゼインキナーゼ1を阻害する活性を有する化合物も挙げられる。
【0068】
カゼインキナーゼ2阻害剤としては、CX-4945が例示される。
【0069】
また、カゼインキナーゼ阻害剤は上記の化合物の誘導体も包含する。
【0070】
cAMP誘導剤
cAMP誘導剤(アデニル酸シクラーゼ活性化剤と換言することもできる)としては、アデニル酸シクラーゼの活性化作用により細胞内のcAMP(サイクリックAMP)レベルを上昇させる化合物を広く包含し、例えば、フォルスコリン(FSK)、イソプロテレノール、NKH 477、PACAP 1-27、PACAP 1-38などが挙げられる。
【0071】
また、cAMP誘導剤は上記の化合物の誘導体も包含する。
【0072】
MEK/ERKパスウェイ阻害剤
MEK/ERKパスウェイ阻害剤は、MEK/ERKパスウェイに属するタンパク質の機能発現を阻害できる化合物を意味する。MEK/ERKパスウェイは
図12に示す、当業者に公知のシグナル経路である。
【0073】
MEK/ERKパスウェイは、サイトカインや成長因子(Growth factors)が結合することによって活性化するレセプターである、EGFレセプター、HER2、IGF1レセプター、VEGFレセプター、Flt-3、c-kit、PDGF-R等のレセプター;これらレセプターによって活性化するRas;Rasシグナルを受けて活性化するMAPKKKタンパク質であるA-Raf、B-Raf、c-Raf、Mos、Tpl;MAPKKKによってリン酸化(活性化)されるMAPKKタンパク質であるMEK1、MEK2(MEK1/2)、MAPKKによってリン酸化されるMAPKタンパク質であるERK1、ERK2(ERK1/2);下流の転写因子等であるElk-1、Est2、RSK、MNK、MSK、cPLA2、CREB、Fos、 globin transcription factor 1等が主に構成する。
【0074】
MEK/ERKパスウェイ阻害剤としては、上記の分子のいずれか(MEKの上流のサイトカインや成長因子とそのレセプター、Ras、Raf、MEK1/2、ERK1/2、ERKの下流の因子等)を阻害するものが含まれる。中でも、MAPKKタンパク質のMEK1、MEK2及び、MAPKタンパク質のERK1、ERK2の機能発現を阻害する化合物(阻害剤)が好ましく、MEK1、MEK2に対する阻害剤が特に好ましい。
【0075】
MEK/ERKパスウェイ阻害剤としては、PD0325901(N-[(2R)-2,3-dihydroxypropoxy-3,4-difluoro-2-[(2-fluoro-4-iodophenyl)amino]-benzamide;MEK1/2に対する阻害剤である)、AS703026、AZD8330、BIX02188、BIX02189、CI-1040、Cobimetinib、GDC-0623、MEK162、PD318088、PD98059、Refametinib、RO4987655、SCH772984、Selumetinib、SL327、Trametinib、ARRY-142886 、XL518,RDEA119などが例示される。
【0076】
また、MEK/ERKパスウェイ阻害剤は上記の化合物の誘導体も包含する。MEK/ERKパスウェイ阻害剤は狭義の阻害剤である低分子化合物に止まらず、MEK/ERKパスウェイのたんぱく(たとえばMEK1,MEK2,ERK1,ERK2)に結合しその作用を阻害する活性を有する抗体、アプタマー、ペプチド、ドミナントネガティブとして働く変異体たんぱくやその類似体、MEK/ERKパスウェイのたんぱく(たとえばMEK1,MEK2,ERK1,ERK2)の発現を抑制するsiRNA、shRNA、マイクロRNAなどを包含する。
【0077】
上記(1)〜(4)からなる群から選択される化合物の培地中の濃度は、当業者が適宜設定することができる。通常は、0.01 μM〜100μM程度、特に0.1 μM〜10 μM程度である。
【0078】
培養
本発明の方法において、哺乳動物の分化した体細胞を培地中、上記(1)〜(4)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の存在下に培養する。
【0079】
培養は、細胞及び培地を格納するための適切な容器中で行なうことができる。好適な培養を行なう手法として、約37℃程度および二酸化炭素濃度約5%程度の条件下で培養する手法が例示されるが、これに限定されるものではない。上記条件での培養は、例えば公知のCO
2インキュベータを用いて行なうことができる。
【0080】
上記(1)〜(4)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物は、全培養期間の内の一部の期間のみで添加してもよい。哺乳動物の分化した体細胞を、通常培地中上記化合物の存在下に培養した後で、誘導培地中上記化合物の非存在下に培養してもよい。また、通常培地中上記化合物の存在下に培養した後で、通常培地中上記化合物の非存在下に培養し、その後誘導培地中上記化合物の非存在下に培養してもよい。また、通常培地中上記化合物の存在下に培養した後で、誘導培地中上記化合物の存在下に培養し、その後誘導培地中上記化合物の非存在下に培養してもよい。このように、上記化合物の存在下で培養することと、誘導培地で培養することの両方の過程を含んでさえいれば、それらは同時でなくてもよいし、それぞれは全培養期間の一部だけであってもよい。
【0081】
培養を行う期間は、本発明の効果を損なわない範囲で、特に限定されるものではない。例えば、24時間から60日間程度、好ましくは3〜30日、より好ましくは10〜20日程度、特に好ましくは14日程度とすることができる。
【0082】
効果が高いとの観点から、全培養期間中、(例えば6〜10日程度、特に8日程度)誘導培地中上記化合物の存在下での培養をし、その後誘導培地中上記化合物の非存在下での培養とすることができる。この場合の上記化合物の存在下での培養は、全培養期間中、培養開始からであっても、所定期間上記化合物の非存在下で培養した後であってもよい。
【0083】
培養において、必要において継代を行うことができる。継代を行う場合は、コンフルエント状態に到達する前または直後に細胞を回収し、細胞を新しい培地に播種する。また、本発明の培養において、培地を適宜交換することもできる。
【0084】
かくして、体細胞が褐色脂肪細胞にコンヴァートし、褐色脂肪細胞が調製される。
【0085】
褐色脂肪細胞が得られたことは、前述の細胞中の脂肪滴を検出できる蛍光色素での染色、褐色脂肪細胞において発現する遺伝子産物の検出により確認することができる。
【0086】
具体的には、褐色脂肪細胞が得られたことは、Oil Red O染色やBodipy染色で染められる、多房性脂肪滴を有する特有の形態や、UCP-1、CIDEA、KCNK3、PCG-1α、Cox8b、Otop、ELOVL3遺伝子などの発現によって検出することができる。中でも、UCP-1(Uncoupling protein 1)は、褐色脂肪細胞に特異的に発現する遺伝子であり、酸化的リン酸化を脱共役させるミトコンドリア内膜タンパク質をコードし、褐色脂肪細胞の機能の根幹を担うと考えられるため、褐色脂肪細胞の指標として特に好ましいものの1つである。
【0087】
治療又は予防剤;移植材
本発明の方法により調製される褐色脂肪細胞は、生体に移植することで、肥満、メタボリックシンドローム、或いはこれらに関連する疾患又は状態の予防又は治療に使用することができる。
【0088】
対象とする疾患には、I型糖尿病、II型糖尿病、糖尿病性合併症(網膜症、末梢神経症、腎症、大血管障害、糖尿病性壊疽、骨粗鬆症、糖尿病性昏睡等)、耐糖能異常、インスリン抵抗性、アシドーシス、ケトーシス、ケトアシドーシス、肥満、中枢性肥満とその合併症、内臓肥満症候群、高血圧、食後高脂血症、脳血管障害、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、メタボリック・シンドローム、脂質異常症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDL血症、腎臓疾患 (糖尿病性ネフロパシー、ネフローゼ症候群等)、動脈硬化症、血栓性疾患、心筋梗塞、虚血性心疾患、狭心症、心不全、脳血管障害(脳梗塞、脳卒中等)、末梢血行障害、知覚障害、高尿酸血症、痛風、感染症(呼吸器感染症、尿路感染症、消化管感染症、皮膚感染症、軟部組織感染症等)、悪性腫瘍、白内障、脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎、骨粗鬆症が含まれる。褐色脂肪細胞による脂質の燃焼と糖・脂質代謝異常の改善によって、これら疾患に対する予防と治療効果が得られると考えられる。
【0089】
また、褐色脂肪細胞は、腹部や顎の周り、太ももなどの脂肪を除去する美容的な用途にも使用できる。褐色脂肪細胞は、乳房などに導入する美容的処置の移植材料として使用することもできる。
【0090】
褐色脂肪細胞を投与すると、脂肪量、特に内臓脂肪、皮下脂肪などの白色脂肪細胞が減少し、また高カロリー食を摂取した場合にも体重増加が抑制されるため、肥満、メタボリックシンドローム、或いはこれらの関連する疾患又は状態の予防と治療の両方に有用である。本発明はまた、疾患の予防又は治療に限らず、健康増進や美容(例えば腹部、顎、腕、太ももなどの内臓脂肪、皮下脂肪の除去)等の目的で用いることもできる。その際、ヒトに対する処置も、本明細書では便宜上治療と呼び、「患者」は「健常者」あるいは「ヒト」、「疾患」は「健康増進」や「美容」等と読み替えることができる。
【0091】
本発明はまた、ヒトだけでなく、イヌ、ネコ等の愛玩動物やウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ等の家畜の疾患の治療にも用いることが可能である。その場合、「患者」あるいは「ヒト」を「患畜」あるいは「動物」と読み替えることとする。
【0092】
移植材料とは、褐色脂肪細胞を生体内に導入する材料をいう。褐色脂肪細胞は、乳房などに導入する美容的処置の移植材料として使用することもできる。移植材料は、インビトロで体細胞から褐色脂肪細胞に変換した後、同一または別の個体に移植する材料を包含する。
【0093】
また、得られた褐色脂肪細胞を用いれば、糖尿病(特にII型糖尿病)、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患などに対する新しい作用機序に基づく創薬開発等を行うことができる。
【実施例】
【0094】
以下に実施例を示すが、本発明はこの実施例だけに限定されるものではない。
【0095】
以下に、実施例で用いた化合物の構造を示す。
【0096】
【化2】
【0097】
【化3】
【0098】
以下、本明細書中及び図中において、「ALK5 Inhibitor II」を「ALK5 Inhibitor」、「ALK5IH」または「ALK5i」と記載する場合がある。
【0099】
実施例1
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBSを添加したDulbecco’s modified minimum essential medium; DMEM)に縣濁した。これを1×10
4cells/wellの濃度で24-well plateに播種し(day 0)、5% CO
2/95% humidified air、37℃で培養を開始した。翌日、培養上清を吸引除去し、図中に記載のとおり、通常培地、脂肪細胞誘導培地、または化合物等を加えた脂肪細胞誘導培地を、500 μL/well加えた。
【0100】
脂肪細胞誘導培地は、10% FBS添加DMEM+MDI培地(0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、および1 μg/mL Insulinを添加した、10% FBS添加DMEM)である。
【0101】
添加物の濃度は以下のとおりである:
T3: 1 nM
Rosiglitazone: 1 μM
D4476: 2 μM
Pifithrin alpha[p53阻害剤]: 5 μM
SB431542: 2 μM
ALK5 Inhibitor II: 2 μM。
【0102】
3〜4日に1度、培養液をフレッシュなものに置換し、day 14まで培養した。
【0103】
Day 14に、各wellから培養液を吸引除去し、PBS(−)で洗浄後、10%ホルマリンにて固定した。滅菌蒸留水で3回洗浄した後、Oil Red O染色液を加え、室温で15分間インキュベートした。その後滅菌蒸留水にて洗浄し、位相差顕微鏡で100倍の倍率で撮影した。
【0104】
結果を
図1に示す。脂肪細胞誘導培地にT3およびRosiglitazoneに加えて、D4476、SB431542、ALK5 Inhibitor IIのいずれかを添加培養した場合に、顕著なOil Red O染色が観察された(図中、#4、#6、#7)。一方、通常培地、T3およびRosiglitazoneを添加しない脂肪細胞誘導培地、並びに、p53阻害剤であるPifithrin alphaを添加した脂肪細胞誘導培地の場合には、殆どOil Red O染色が観察できなかった。また、T3およびRosiglitazoneのみを添加した脂肪細胞誘導培地ではOil Red O染色の程度が低かった。以上のことから、T3およびRosiglitazoneに加えて、D4476、SB431542、ALK5 Inhibitor IIのいずれかを添加培養することにより、線維芽細胞が褐色脂肪細胞にコンヴァートしたことがわかる。
【0105】
実施例2
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBSを添加したDulbecco’s modified minimum essential medium; DMEM)に縣濁した。これを1×10
4 cells/wellの濃度で24-well plateに播種し(day 0)、5% CO
2 /95% humid air 37℃で培養を開始した。翌日、培養上清を吸引除去し、図中に記載のとおり、通常培地、脂肪細胞誘導培地、または各小分子化合物等を加えた脂肪細胞誘導培地を、500 μL/well加えた。
【0106】
脂肪細胞誘導培地は、10% FBS添加DMEM+MDI培地(0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、および1 μg/mL Insulinを添加した、10% FBS添加DMEM)である。
【0107】
添加物の濃度は以下のとおりである:
T3: 1 nM
Rosiglitazone: 1 μM
D4476: 2 μM
Pifithrin alpha[p53阻害剤]: 5 μM
Forskolin(FSK): 2 μM
PD0325901: 1 μM
SB431542: 2 μM。
【0108】
3〜4日に1度、培養液をフレッシュなものに置換し、day 14まで培養した。
【0109】
Day 14に、各wellから培養液を吸引除去し、PBS(−)で洗浄後、細胞からISOGEN IIにてtotal RNAを抽出した。このRNAから、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mixを用いてcDNAを合成した。このcDNAにReal-time PCR Master Mixと、UCP1遺伝子またはβアクチン遺伝子に特異的なprimersとTaqman probeを混和した。AB7300 Real-time PCR systemを用いてqRT-PCR(定量的RT-PCR)を行った。UCP1遺伝子のmRNAレベルをβアクチン遺伝子mRNAに対する比として定量し、通常培地で培養した線維芽細胞の値を1として算出した。
【0110】
その結果を
図2に示す。T3およびRosiglitazoneに加えて、D4476、FSK、PD0325901またはSB431542のいずれかを添加培養することにより、線維芽細胞がUCP1遺伝子のmRNAを発現する褐色脂肪細胞に誘導されたことがわかる。さらに、D4476とFSKの共添加により、もっともUCP1を強く発現する細胞にコンヴァートしたことがわかる。
【0111】
実施例3
実施例2と同様の実験を行い、通常培地で培養した細胞、T3とRosiglitazoneを添加した脂肪細胞誘導培地で14日間培養した細胞と、T3、RosiglitazoneとD4476 を添加した脂肪細胞誘導培地で14日間培養した細胞を準備した。これら細胞に、図中に記載のように10 μMのIsoproterenol、またはFSKを添加した。コントロールとして添加しない群も作った。5時間後に各wellから培養液を吸引除去し、PBS(−)で洗浄後、細胞からISOGEN IIにてtotal RNAを抽出した。実施例2と同様にqRT-PCRを行った。UCP1遺伝子のmRNAレベルをβアクチン遺伝子mRNAに対する比として定量し、通常培地で培養した線維芽細胞の値を1として算出した。
【0112】
その結果を
図3に示す。T3およびRosiglitazoneに加えて、D4476 を添加した脂肪細胞誘導培地で14日間培養した細胞は、Isoproterenol、またはFSKの刺激によりUCP1のmRNAをさらに強く発現することがわかり、これら刺激に対して褐色脂肪細胞様の応答能を有することがわかる。
【0113】
実施例4
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBSを添加したDulbecco’s modified minimum essential medium; DMEM)に縣濁した。これを1×10
4cells/wellの濃度で24-well plateに播種し(day 0)、5% CO
2 /95% humid air 37℃で培養を開始した。翌日、培養上清を吸引除去し、図中に記載のとおり、通常培地、脂肪細胞誘導培地、または各化合物等を加えた脂肪細胞誘導培地を、500 μL/well加えた。
【0114】
脂肪細胞誘導培地は、10% FBS添加DMEM+MDI培地(0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、および1 μg/mL Insulinを添加した、10% FBS添加DMEM)である。
【0115】
添加物の濃度は以下のとおりである:
T3: 1 nM
Rosiglitazone: 1 μM
D4476: 2 μM
Pifithrin alpha[p53阻害剤]: 5 μM
SB431542: 2 μM
ALK5 Inhibitor II: 2 μM。
【0116】
3〜4日に1度、培養液をフレッシュなものに置換し、day 14まで培養した。
Day 14に、各wellから培養液を吸引除去し、PBS(−)で洗浄後、細胞からISOGEN IIにてtotal RNAを抽出した。このRNAから、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mixを用いてcDNAを合成した。このcDNAにReal-time PCR Master Mixと、CIDEA遺伝子またはβアクチン遺伝子に特異的なprimersとTaqman probeを混和した。AB7300 Real-time PCR systemを用いてqRT-PCRを行った。CIDEA遺伝子のmRNAレベルをβアクチン遺伝子mRNAに対する比として定量し、通常培地で培養した線維芽細胞の値を1として算出した。
【0117】
その結果を
図4に示す。T3およびRosiglitazoneに加えて、D4476、SB431542、またはALK5 Inhibitor のいずれかを添加培養することにより、線維芽細胞がCIDEA遺伝子のmRNAを発現する褐色脂肪細胞にコンヴァートしたことがわかる。
【0118】
実施例5
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBSを添加したDulbecco's modified minimum essential medium; DMEM)に縣濁した。これを1×10
4cells/wellの濃度で24-well plateに播種し(day 0)、5% CO
2 /95% humid air 37℃で培養を開始した。翌日、培養上清を吸引除去し、図中に記載のとおり、通常培地、脂肪細胞誘導培地、または各化合物等を加えた脂肪細胞誘導培地を、500 μL/well加えた。
【0119】
脂肪細胞誘導培地は、10% FBS添加DMEM+MDI培地(0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、および1 μg/mL Insulinを添加した、10% FBS添加DMEM)である。
【0120】
添加物の濃度は以下のとおりである:
T3: 1 nM
Rosiglitazone: 1 μM
Pifithrin alpha[p53阻害剤]: 5 μM
Forskolin(FSK): 2 μM
PD0325901: 1 μM。
【0121】
3〜4日に1度、培養液をフレッシュなものに置換し、day 14まで培養した。
【0122】
Day 14に、各wellから培養液を吸引除去し、PBS(−)で洗浄後、細胞からISOGEN IIにてtotal RNAを抽出した。このRNAから、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mixを用いてcDNAを合成した。このcDNAにReal-time PCR Master Mix、および、PGC-1alphaまたはβアクチン遺伝子に特異的なprimersとTaqman pobeを混和した。AB7300 Real-time PCR systemを用いてqRT-PCRを行った。PGC-1alpha遺伝子のmRNAレベルをβアクチン遺伝子mRNAに対する比として定量し、通常培地で培養した線維芽細胞の値を1として算出した。
【0123】
その結果を
図5に示す。T3およびRosiglitazoneに加えて、Forskolin(FSK)またはPD0325901のいずれかを添加培養することにより、線維芽細胞がPGC-1alpha遺伝子のmRNAを発現する褐色脂肪細胞にコンヴァートしたことがわかる。
【0124】
実施例6
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBSを添加したDulbecco's modified minimum essential medium; DMEM)に縣濁した。これを1×10
4cells/wellの濃度で24-well plateに播種し(day 0)、5% CO
2 /95% humid air 37℃で培養を開始した。翌日、培養上清を吸引除去し、図中に記載のとおり、通常培地、脂肪細胞誘導培地、または各小分子化合物等を加えた脂肪細胞誘導培地を、500 μL/well加えた。
【0125】
脂肪細胞誘導培地は、10% FBS添加DMEM+MDI培地(0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、および1 μg/mL Insulinを添加した、10% FBS添加DMEM)である。
【0126】
添加物の濃度は以下のとおりである:
T3: 1 nM
Rosiglitazone: 1 μM
D4476: 2 μM。
Pifithrin alpha[p53阻害剤]: 5 μM
PD0325901: 1 μM
SB431542: 2 μM
ALK5 Inhibitor II: 2 μM。
【0127】
3〜4日に1度、培養液をフレッシュなものに置換し、day 14まで培養した。
【0128】
Day 14に、各wellから培養液を吸引除去し、PBS(−)で洗浄後、細胞からISOGEN IIにてtotal RNAを抽出した。このRNAから、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mixを用いてcDNAを合成した。このcDNAにReal-time PCR Master Mix、および、AdipoQまたはβアクチン遺伝子に特異的なprimersとTaqman pobeを混和した。AB7300 Real-time PCR systemを用いてqRT-PCRを行った。AdipoQ遺伝子のmRNAレベルをβアクチン遺伝子mRNAに対する比として定量し、通常培地で培養した線維芽細胞の値を1として算出した。
【0129】
その結果を
図6に示す。T3およびRosiglitazoneに加えて、D4476、PD0325901、SB431542またはALK5 Inhibitor IIのいずれかを添加培養することにより、線維芽細胞がAdipoQ遺伝子のmRNAを発現する褐色脂肪細胞にコンヴァートしたことがわかる。
【0130】
実施例7
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBSを添加したDulbecco's modified minimum essential medium; DMEM)に縣濁した。これを1×10
4cells/wellの濃度で24-well plateに播種し(day 0)、5% CO
2/95% humidified air、37℃で培養を開始した。翌日、培養上清を吸引除去し、図中に記載のとおり、通常培地、脂肪細胞誘導培地、または各小分子化合物等を加えた脂肪細胞誘導培地を、500 μL/well加えた。
【0131】
脂肪細胞誘導培地は、10% FBS添加DMEM+MDI培地(0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、および1 μg/mL Insulinを添加した、10% FBS添加DMEM)である。
【0132】
添加物の濃度は以下のとおりである:
T3: 1 nM
Rosiglitazone: 1 μM
D4476: 2 μM
SB431541: 2 μM
ALK5 inhibitor II: 2 μM。
【0133】
3〜4日に1度、培養液をフレッシュなものに置換し、day 14まで培養した。
【0134】
Day 14に、各wellから培養液を吸引除去し、PBS(−)で洗浄した。その後、4%パラホルムアルデヒドで固定し、PBS(−)にて洗浄した後、BODIPY 493/503 (Invitrogen)/PBS溶液にて室温で5分間反応させ、PBSで3回Washした。蛍光顕微鏡を用いて倍率200倍で写真撮影を行い、また蛍光強度を計測した。
【0135】
その結果を
図7A(蛍光顕微鏡像)と
図7B(蛍光強度)に示す。T3およびRosiglitazoneに加えて、D4476、SB431541、またはALK5 inhibitor IIのいずれかを添加培養することにより、線維芽細胞がBODIPYで染色される脂肪滴を有する褐色脂肪細胞にコンヴァートしたことがわかる。
【0136】
実施例8
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBSを添加したDulbecco's modified minimum essential medium; DMEM)に縣濁した。これを1×10
4cells/wellの濃度で24-well plateに播種し(day 0)、5% CO
2/95% humidified air、37℃で培養を開始した。翌日、培養上清を吸引除去し、図中に記載のとおり、通常培地、脂肪細胞誘導培地、または各化合物等を加えた脂肪細胞誘導培地を、500 μL/well加えた。
【0137】
脂肪細胞誘導培地は、10% FBS添加DMEM+MDI培地(0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、および1 μg/mL Insulinを添加した、10% FBS添加DMEM)である。
【0138】
添加物の濃度は以下のとおりである:
T3: 1 nM
Rosiglitazone: 1 μM
D4476: 2 μM
SB431541: 2 μM
ALK5 inhibitor II: 2 μM
PD0325901: 1 μM
Forskolin(FSK): 2 μM。
【0139】
3〜4日に1度、培養液をフレッシュなものに置換し、day 14まで培養した。
【0140】
Day 14に、各wellから培養液を吸引除去し、PBS(−)で洗浄した。4%パラホルムアルデヒドで固定後、PBS(−)にて洗浄し、Perm Buffer(0.2% Triton-X添加PBS)を加えて15分間インキュベートした。PBS(−)にて3回洗浄した後、Blocking Oneを加えて、室温で60分間インキュベートした。
【0141】
抗USP-1抗体を加えて室温で2時間反応させた後、Wash bufferにて3回washした。Alexa 546-conjugated anti-mouse Ig抗体を加えて室温で1時間反応させた後、Wash bufferにて5回washした。蛍光顕微鏡を用いて倍率200倍で写真撮影を行い、また蛍光強度を計測した。
【0142】
その結果を
図8A及び
図8C(蛍光顕微鏡像)と
図8B(蛍光強度)に示す。T3およびRosiglitazoneに加えて、D4476、SB431541、ALK5 inhibitor II、PD0325901、またはForskolin(FSK)のいずれかを添加培養することにより、線維芽細胞がUCP1たんぱくを発現する褐色脂肪細胞に誘導されたことがわかる。またPD0325901またはForskolinを添加培養することにより、UCP-1たんぱく発現が増加することが分かる。さらに、T3およびRosiglitazoneに加えて、D4476とForskolinを共添加して培養することにより、線維芽細胞がよりUCP1たんぱくを強く発現する褐色脂肪細胞にコンヴァートしたことがわかる。
【0143】
実施例9
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBSを添加したDulbecco’s modified minimum essential medium; DMEM)に縣濁した。これを1×10
4 cells/wellの濃度で24-well plateに播種し(day 0)、5% CO
2/95% humidified air、37℃で培養を開始した。翌日、培養上清を吸引除去し、図中に記載のとおり、通常培地、脂肪細胞誘導培地、または各小分子化合物等を加えた脂肪細胞誘導培地を、500 μL/well加えた。
【0144】
脂肪細胞誘導培地は、10% FBS添加DMEM+MDI培地(0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、および1 μg/mL Insulinを添加した、10% FBS添加DMEM)である。
【0145】
添加物の濃度は以下のとおりである:
T3: 1 nM
Rosiglitazone: 1 μM
D4476: 2 μM。
【0146】
3〜4日に1度、培養液をフレッシュなものに置換し、day 14まで培養した。
【0147】
Day 14に、各wellから培養液を吸引除去し、PBS(−)で洗浄後、10%ホルマリンにて固定した。滅菌蒸留水で3回洗浄した後、Oil Red O染色液を加え、室温で15分間インキュベートした。その後滅菌蒸留水にて洗浄し、顕微鏡で100倍の倍率で撮影した。
【0148】
結果を
図9に示す。RosiglitazoneおよびT3に加えてD4476を添加培養することにより、線維芽細胞が対照と比べて顕著なOil Red O染色が観察される褐色脂肪細胞にコンヴァートしたことがわかる。
【0149】
実施例10
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBSを添加したDulbecco’s modified minimum essential medium; DMEM)に縣濁した。これを1×10^4 cells/wellの濃度で24-well plateに播種し(day 0)、5% CO2/95% humidified air、37℃で培養を開始した。翌日、培養上清を吸引除去し、図中に記載のとおり、通常培地、脂肪細胞誘導培地、または各小分子化合物等を加えた脂肪細胞誘導培地を、500 μL/well加えた。
【0150】
脂肪細胞誘導培地は、10% FBS添加DMEM+MDI培地(0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、および1 μg/mL Insulinを添加した、10% FBS添加DMEM)である。
【0151】
添加物の濃度は以下のとおりである:
T3: 1 nM
Rosiglitazone: 1 μM
D4476: 2 μM。
【0152】
3〜4日に1度、培養液をフレッシュなものに置換し、day 14まで培養した。
【0153】
Day 14に、各wellから培養液を吸引除去し、PBS(−)で洗浄した。4%パラホルムアルデヒドで固定後、PBS(−)にて洗浄し、Perm Buffer(0.2% Triton-X添加PBS)を加えて15分間インキュベートした。PBS(−)にて3回洗浄した後、Blocking Oneを加えて、室温で60分間インキュベートした。
【0154】
抗USP-1抗体を加えて室温で2時間反応させた後、Wash bufferにて3回washした。Alexa 546-conjugated anti-mouse Ig抗体を加えて室温で1時間反応させた後、Wash bufferにて5回washした。その後、BODIPY 493/503 (Invitrogen)/PBS溶液にて室温で5分間反応させ、PBSで3回Washし、DAPIで染色した。蛍光顕微鏡を用いて倍率200倍で写真撮影を行った。
【0155】
その結果を
図10A及び
図10Bに示す。T3およびRosiglitazoneに加えて、D4476を添加培養することにより、線維芽細胞がBodipyで染色される脂肪滴とUCP1たんぱくを発現する褐色脂肪細胞にコンヴァートしたことがわかる。
【0156】
実施例13(図13)
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBS を添加したDulbecco's modified minimum essential medium(DMEM))に縣濁した。これを 3×10
4 cells/well の濃度で12-well plate に播種し、5% CO2/95% humidified air、37℃で培養を開始した。翌日(Day 0)、培養上清を吸引除去し、通常培地(群1)、、脂肪細胞誘導培地(群2)、またはALK5 inhibitor IIを4 μMの濃度で添加した脂肪細胞誘導培地(群3〜8)を、1 mL/well 加えた。
【0157】
脂肪細胞誘導培地は、1 nM T3, 1 μM Rosiglitazone, 0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、1 μg/mL Insulin および10% FBSを添加したDMEMである。
【0158】
2 日に1 度、培地をフレッシュなものに置換した。群3〜7は、それぞれDays 0〜2、Days 0〜4、Days 0〜6、Days 0〜8、Days 0〜10の期間のみALK5 inhibitor IIを添加した脂肪細胞誘導培地で培養し、その後はALK5 inhibitor IIを添加しない脂肪細胞誘導培地で培養した。群8は、Days 0〜14の全期間、ALK5 inhibitor IIを添加した脂肪細胞誘導培地で培養した。Day 14 に、各well から培地を吸引除去し、PBS(−)で洗浄後、細胞からQiagen社製 RNA easy Mini Kitを用いてtotal RNA を抽出した。このRNA から、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mix を用いてcDNA を合成した。このcDNA にReal-time PCR Master Mix と、UCP-1遺伝子またはβ アクチン遺伝子に特異的なprimers とTaqman probe を、混和した。AB7300 Real-time PCR system を用いてqRT-PCR を行った。UCP1 遺伝子のmRNA レベルをβ アクチン遺伝子mRNAレベルに対する比として定量し、通常培地で培養した線維芽細胞の値を1として算出した。
【0159】
結果を
図13に示す。脂肪細胞誘導培地中で、ALK5 inhibitor IIを添加培養することにより、線維芽細胞がUCP1 遺伝子を強発現する褐色脂肪細胞に誘導されたことがわかる。とくにALK5 inhibitor IIを0-8日間加え、その後、ALK5 inhibitor IIを含まない脂肪細胞誘導培地で6日間培養した群(群6)において最も高くUCP1 遺伝子の発現が誘導され、もっとも強く線維芽細胞を褐色脂肪細胞に誘導することがわかる。ALK5 inhibitor IIの存在下で培養を行った他の条件(群3〜5、7、8)においてもUCP1遺伝子の高い発現が誘導された。
【0160】
実施例14(図14)
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBS を添加したDulbecco's modified minimum essential medium(DMEM))に縣濁した。これを 3×10
4 cells/well の濃度で12-well plate に播種し、5% CO2/95% humidified air、37℃で培養を開始した。翌日(Day 0)、培養上清を吸引除去し、通常培地(群1)、脂肪細胞誘導培地(群2)、またはALK5 inhibitor IIを4 μMの濃度で添加した脂肪細胞誘導培地(群3〜8)を、1 mL/well 加えた。
【0161】
脂肪細胞誘導培地は、1 nM T3, 1 μM Rosiglitazone, 0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、1 μg/mL Insulin および10% FBSを添加したDMEMである。
【0162】
2 日に1 度、培地をフレッシュなものに置換した。群3〜7については、それぞれDays 0〜2、Days 0〜4、Days 0〜6、Days 0〜8、Days 0〜10の期間のみALK5 inhibitor IIを添加した脂肪細胞誘導培地で培養し、その後はALK5 inhibitor IIを添加しない脂肪細胞誘導培地で培養した。群8は、Days 0〜14の全期間、ALK5 inhibitor IIを添加した脂肪細胞誘導培地で培養した。Day 14 に、各well から培養液を吸引除去し、PBS(−)で洗浄後、Day 14 に、各well から培養液を吸引除去し、PBS(−)で洗浄した。4%パラホルムアルデヒドで固定後、PBS(−)にて洗浄し、Perm Buffer(0.2% Triton-X 添加PBS)を加えて15 分間インキュベートした。PBS(−)にて3 回洗浄した後、Blocking One を加えて、室温で60 分間インキュベートした。抗UCP-1 抗体(RD MAB6158)を加えて室温で2 時間反応させた後、Wash buffer にて3 回wash した。CF488-conjugated anti-mouse Ig 抗体(Biotum 20014)を加えて室温で2 時間反応させた後、PBS(-) にて3 回wash した。Lifetechnology社製SlowFade Gold antifade reagent with DAPIで核染色したのち蛍光顕微鏡を用いて倍率100 倍で写真撮影を行った。
【0163】
結果を
図14A及び14B(蛍光顕微鏡像)に示す。ALK5 inhibitor IIを加えた群では、線維芽細胞がUCP1タンパク質を高発現する褐色脂肪細胞に誘導されたことがわかる。とくにALK5 inhibitor IIを0-8日間加え、その後、ALK5 inhibitor IIを含まない脂肪細胞誘導培地で6日間培養した群(図中、#6)においてUCP1タンパク質の染色強度が高くかつ染色陽性の細胞が多く、もっとも強く線維芽細胞を褐色脂肪細胞に誘導することがわかる。ALK5 inhibitor IIの存在下で培養を行った他の条件(図中、#2〜5、7、8)においてもUCP1タンパク質の高発現が検出された。
【0164】
実施例15(図15)
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBS を添加したDulbecco's modified minimum essential medium; DMEM)に縣濁した。これを 3×10
4 cells/well の濃度で12-well plate に播種し、5% CO2/95% humidified air、37℃で培養を開始した(Day -1)。コントロール(Ctrl)群は、翌日(Day 0)培養上清を吸引除去し、2 日に1 度培地をフレッシュなものに置換しながら、Day 14まで通常培地で培養した。コントロール(Ctrl)群以外の群は、Day 0に培養上清を吸引除去し、脂肪細胞誘導培地、またはALK5 inhibitor II、SB431542、LY2157299及びD4476のいずれかの化合物をそれぞれ4 μM、8 μM、12 μM、16 μMの濃度で添加した脂肪細胞誘導培地を、1mL/well 加えた。
【0165】
脂肪細胞誘導培地は、1 nM T3, 1 μM Rosiglitazone, 0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、1 μg/mL Insulin および10% FBSを添加したDMEMである。
【0166】
2 日に1 度、培地をフレッシュなものに置換してDay 9まで培養した。その後、Day 9 − Day 14は、ALK5 inhibitor II、SB431542、LY215799及びD4476のいずれの化合物も含まない脂肪細胞誘導培地で培養した。Day 14 に、すべての群のwell から培地を吸引除去し、PBS(−)で洗浄後、細胞からQiagen社製 RNA easy Mini Kitを用いてtotal RNA を抽出した。このRNA から、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mix を用いてcDNA を合成した。このcDNA にReal-time PCR Master Mix と、UCP-1遺伝子またはβ アクチン遺伝子に特異的なprimers とTaqman probe を、混和した。AB7300 Real-time PCR system を用いてqRT-PCR を行った。UCP1 遺伝子のmRNA レベルをβ アクチン遺伝子mRNAレベルに対する比として定量し、通常培地で培養した線維芽細胞の値を1として算出した。
【0167】
結果を
図15に示す。ALK5 inhibitor II、SB431541、LY2157299及びD4476のいずれかを添加して培養することにより、線維芽細胞がUCP1 遺伝子を強発現する褐色脂肪細胞に誘導されたことがわかる。とくにALK5 inhibitor IIがもっとも強く線維芽細胞を褐色脂肪細胞に誘導し、LY2157299がそれに次ぐことがわかる。本実施例においては、褐色脂肪細胞への誘導効率はALK5 inhibitor II>LY2157299>SB431541>D4476の順であった。
【0168】
実施例16(図16)
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBS を添加したDulbecco's modified minimum essential medium; DMEM)に縣濁した。これを 3×10
4 cells/well の濃度で12-well plate に播種し、5% CO2/95% humidified air、37℃で培養を開始した。翌日(Day 0)、培養上清を吸引除去し、ALK5 inhibitor II (4 μM)、LY2157299 (8 μM)、SB431542 (4 μM)及びD4476 (4 μM)のいずれかの化合物を加えた脂肪細胞誘導培地を、1mL/well 加えた。
【0169】
脂肪細胞誘導培地は、1 nM T3, 1 μM Rosiglitazone, 0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、1 μg/mL Insulin および10% FBSを添加したDMEMである。
2 日に1 度、培地をフレッシュなものに置換してDay 9まで培養した。その後、Day 9からDay 14は、ALK5 inhibitor II、SB431542、LY215799及びD4476のいずれの化合物も含まない脂肪細胞誘導培地で培養した。Day 14 に、各well から培地を吸引除去し、PBS(−)で洗浄した。4%パラホルムアルデヒドで固定後、PBS(−)にて洗浄し、Perm Buffer(0.2% Triton-X 添加PBS)を加えて15 分間インキュベートした。PBS(−)にて3 回洗浄した後、Blocking One を加えて、室温で60 分間インキュベートした。抗UCP-1 抗体(RD MAB6158)を加えて室温で2 時間反応させた後、Wash buffer にて3 回wash した。CF488-conjugated anti-mouse Ig 抗体(Biotum 20014)を加えて室温で2 時間反応させた後、PBS (-) にて3 回wash した。Lifetechnology社製SlowFade Gold antifade reagent with DAPIで核染色したのち蛍光顕微鏡を用いて倍率100 倍で写真撮影を行った。
【0170】
その結果を
図16A及び
図16B(蛍光顕微鏡像)に示す。ALK5 inhibitor II、LY2157299、SB431541、D4476、のいずれかを添加培養することにより、線維芽細胞がUCP1 たんぱくを発現する褐色脂肪細胞に誘導されたことがわかる。とくに、AKL5 inhibitor IIがもっとも強くUCP1遺伝子の発現を誘導し、LY2157299がそれに次ぐことがわかる。
【0171】
実施例17(図17)
ヒト正常皮膚由来線維芽細胞(human dermal fibroblasts; HDFs)を通常培地(10% FBS を添加したDulbecco's modified minimum essential medium; DMEM)に縣濁した。これを 3×10
4 cells/well の濃度で12-well plate に播種し、5% CO2/95% humidified air、37℃で培養を開始した(Day -1)。コントロール(Ctrl)群は、翌日(Day 0)培養上清を吸引除去し、2 日に1 度培地をフレッシュなものに置換しながら、Day 14まで通常培地で培養した。コントロール(Ctrl)群以外の群は、Day 0に培養上清を吸引除去し、ALK5 inhibitor II(4μM)及びLY2157299(8μM)のいずれかの化合物を添加した脂肪細胞誘導培地を、1 mL/well 加えた。
【0172】
脂肪細胞誘導培地は、1 nM T3, 1 μM Rosiglitazone, 0.5 mM isobutylmethylxanthine(IBMX)、0.5 μM dexamethason、1 μg/mL Insulin および 10% FBSを添加したDMEMである。
2 日に1 度、培地をフレッシュなものに置換してDay 9まで培養した。その後、Day 9 − Day 14は、ALK5 inhibitor IIとLY215799のいずれの化合物も含まない脂肪細胞誘導培地で培養した。Day 14 に、すべての群のwellから培地を吸引除去し、PBS(−)で洗浄後、細胞からQiagen社製 RNA easy Mini Kitを用いてtotal RNA を抽出した。このRNA から、Rever Tra Ace qPCR RT Master Mix を用いてcDNA を合成した。このcDNA にReal-time PCR Master Mix と、UCP-1遺伝子、CIDEA遺伝子、KCNK3遺伝子またはβ アクチン遺伝子に特異的なprimers とTaqman probe を混和した。AB7300 Real-time PCR system を用いてqRT-PCR を行った。UCP1 遺伝子のmRNA レベルをβアクチン遺伝子mRNAに対する比として定量し、通常培地で培養した線維芽細胞の値を1として算出した。
【0173】
結果を
図17に示す。ALK5 inhibitor II、LY2157299、のいずれかを8日間添加して培養することにより、線維芽細胞がUCP1遺伝子、CIDEA遺伝子及びKCNK3遺伝子発現がする褐色脂肪細胞に誘導されたことがわかる。とくに、AKL5 inhibitor IIがより強くUCP1遺伝子の発現を誘導したことがわかる。
哺乳動物の分化した体細胞を培地中、TGFβ/SMADパスウェイ阻害剤の存在下に培養して前記体細胞を褐色脂肪細胞にコンヴァートさせることを特徴とする、褐色脂肪細胞を調製する方法であって、前記培地が、甲状腺ホルモン及びPPARγアゴニストを添加した脂肪細胞誘導培地である方法。
哺乳動物の分化した体細胞を培地中、TGFβ/SMADパスウェイ阻害剤及びフォルスコリンの存在下に培養して前記体細胞を褐色脂肪細胞にコンヴァートさせることを特徴とする、褐色脂肪細胞を調製する方法。
TGFβ/SMADパスウェイ阻害剤、並びに、甲状腺ホルモン及びPPARγアゴニストを添加した脂肪細胞誘導培地を含む分化した体細胞を褐色脂肪細胞にコンヴァートするためのキット。
肥満、糖尿病、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患、メタボリックシンドロームの予防又は治療剤であって、請求項1〜3、10及び11のいずれかに記載の方法により調製された褐色脂肪細胞を有効成分とする、予防又は治療剤。
請求項1〜3、10及び11のいずれかに記載の方法により調製された褐色脂肪細胞を用いた、肥満、糖尿病、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化性疾患、高血圧、高尿酸血症、痛風、非アルコール性脂肪性肝疾患、メタボリックシンドロームの予防又は治療のための使用。
TGFβ/SMADパスウェイ阻害剤が、D4476、ALK5 Inhibitor II、SB431541及びLY2157299から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
TGFβ/SMADパスウェイ阻害剤が、D4476、ALK5 Inhibitor II、SB431541及びLY2157299から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の方法。